JP2021186872A - 液冷ジャケットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液冷ジャケットを低コストで製造することができる液冷ジャケットの製造方法を提供する。【解決手段】ジャケット本体2の周壁部11の両周壁段差部に封止体3A,3Bをそれぞれ載置することにより、第一突合せ部J1及び第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する第一回転ツールFAの攪拌ピンF2のみを一方の封止体3Aの表面3aから挿入し、第一突合せ部J1を摩擦攪拌するとともに、回転する第二回転ツールFBの攪拌ピンF2のみを他方の封止体3Bの表面3aから挿入し、第二突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、本接合工程において、一方の封止体3Aと他方の封止体3Bとを両外側から一対の保持部22,22で押圧して保持しつつ、ジャケット本体2及び封止体3A,3Bを回転又は平行移動させて摩擦攪拌する。【選択図】図4
Description
本発明は、液冷ジャケットの製造方法に関する。
摩擦攪拌接合を利用した液冷ジャケットの製造方法が行われている。例えば、特許文献1には、ジャケット本体と、ジャケット本体の開口部を封止する封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法が開示されている。当該液冷ジャケットの製造方法では、ジャケット本体及び封止体の側面から垂直に回転ツールを挿入し、ジャケット本体の廻りに一周させて摩擦攪拌を行っている。
ここで、枠状のジャケット本体と、ジャケット本体の両側を覆う二枚の封止体とで液冷ジャケットを形成する場合がある。この場合、枠状のジャケット本体と一方側の封止体とを架台にクランプし、一方側の封止体に対して摩擦攪拌接合を行った後、一旦クランプを解除する。そして、被接合部材を裏返し、他方側の封止体を載置するとともに、架台に被接合部材と他方側の封止体とを再度クランプし、他方側の封止体に対して摩擦攪拌接合を行う。つまり、ジャケット本体と二枚の封止体とを摩擦攪拌接合するため、作業工数が増え製造コストが高くなるという問題がある。また、枠状のジャケット本体と封止体とをクランプする治具が回転ツールの移動の妨げになり、摩擦攪拌接合をエリアごとに分けて行う必要があるため、より作業工数が増えるという問題がある。
このような観点から、本発明は、液冷ジャケットを低コストで製造することができる液
冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。
冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、枠状の周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の両側の開口部をそれぞれ封止する二枚の封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記二枚の封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、摩擦攪拌で用いる第一回転ツール及び第二回転ツールの攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、前記周壁部の両端面の内周縁のそれぞれに、段差底面と、前記段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成した前記ジャケット本体と、前記封止体と、を準備する準備工程と、前記周壁部の両端面に前記封止体をそれぞれ載置することにより、前記ジャケット本体の一方の端面の段差側面と一方の前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成し、前記周壁部の一方の端面の段差底面と一方の前記封止体の裏面とを重ね合わせて第一重合部を形成するとともに、前記周壁部の他方の端面の段差側面と他方の前記封止体の側面とを突き合わせて第二突合せ部を形成し、前記周壁部の他方の端面の段差底面と他方の前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二重合部を形成する載置工程と、回転する前記第一回転ツールの攪拌ピンのみを前記第一突合せ部に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記周壁部及び一方の前記封止体に接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って所定の深さで前記周壁部の廻りに相対的に一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌するとともに、回転する前記第二回転ツールの攪拌ピンのみを前記第二突合せ部に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記周壁部及び他方の前記封止体に接触させた状態で前記第二突合せ部に沿って所定の深さで前記周壁部の廻りに相対的に一周させて前記第二突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、前記本接合工程において、一方の前記封止体の表面と他方の前記封止体の表面とを両外側から一対の保持部で押圧して保持しつつ、前記保持部を用いて前記ジャケット本体及び二枚の前記封止体を回転又は平行移動させて、前記ジャケット本体と二枚の前記封止体とを摩擦攪拌することを特徴とする。
かかる製造方法によれば、枠状のジャケット本体と二枚の封止体とを一対の保持部で保持した状態でジャケット本体及び二枚の封止体を回転又は平行移動させるため、クランプ作業を複数回行う必要が無い。また、本接合工程中に保持部と第一回転ツール及び第二回転ツールとが干渉しない。つまり、ジャケット本体と二枚の封止体とを位置決めするための治具が第一回転ツール及び第二回転ツールの移動の妨げにならない。これにより、作業工数を減らすことができるとともに、第一回転ツール及び第二回転ツールを駆動させるための装置等の付帯設備を簡素なものとすることができ、液冷ジャケットを低コストで製造することができる。
また、他方の前記封止体の裏面には、複数のフィンが形成されており、前記本接合工程において、前記複数のフィンの少なくとも一部の先端を一方の前記封止体の裏面に接触させた状態で、前記ジャケット本体と二枚の前記封止体とを摩擦攪拌することが好ましい。
かかる製造方法によれば、フィンの先端が一方の封止体に当接することで、封止体の変形を抑制することができる。
また、前記本接合工程において、前記第一回転ツールの前記攪拌ピンの先端が前記第一重合部に達するように前記第一回転ツールを挿入することが好ましい。
また、前記本接合工程において、前記第二回転ツールの前記攪拌ピンの先端が前記第二重合部に達するように前記第二回転ツールを挿入することが好ましい。
また、前記本接合工程において、前記第二回転ツールの前記攪拌ピンの先端が前記第二重合部に達するように前記第二回転ツールを挿入することが好ましい。
かかる製造方法よれば、各突合せ部における接合強度を高めることができる。
また、前記本接合工程において、前記第一回転ツールの回転中心軸線と前記第二回転ツールの回転中心軸線とが実質的に一致するように、前記第一回転ツール及び前記第二回転ツールを相対移動させることが好ましい。
かかる製造方法によれば、二つの封止体を同時に接合することができるため、作業工数をより減らすことができる。また、第一回転ツール及び第二回転ツールの押圧力が被接合部材に均等に作用するため、バランス良く接合することができる。
また、前記本接合工程において前記第一回転ツールを右回転させる場合には、前記第二回転ツールを左回転させ、前記第一回転ツールを左回転させる場合には、前記第二回転ツールを右回転させることが好ましい。
かかる製造方法によれば、枠状のジャケット本体の表裏で第一回転ツール及び第二回転ツールの回転方向が一致するため、ジャケット本体と二枚の封止体との位置ずれを防ぎ、接合精度を高めることができる。
また、前記本接合工程では、所定の回転速度で前記攪拌ピンを回転させて摩擦攪拌を行い、前記本接合工程において前記攪拌ピンを引き抜くとき、前記所定の回転速度よりも徐々に回転速度を上げながら前記攪拌ピンを終了位置まで相対移動させることが好ましい。 また、前記本接合工程では、所定の回転速度で前記攪拌ピンを回転させて摩擦攪拌を行い、前記本接合工程において前記攪拌ピンを挿入するとき、前記所定の回転速度よりも高い速度で前記攪拌ピンを回転させ、徐々に回転速度を下げながら前記攪拌ピンを挿入することが好ましい。
かかる製造方法によれば、第一回転ツール及び第二回転ツールの挿入時又は離脱時における少ない押圧力を、回転速度で補うことができるため、摩擦攪拌を好適に行うことができる。
本発明に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、液冷ジャケットを低コストで製造することができる。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、下記の実施形態のみに限定されるものではない。また、各実施形態における構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を意味する。
本実施形態に係る液冷ジャケット1は、図1に示すように、ジャケット本体2と封止体3A,3Bとで構成されている。液冷ジャケット1は、内部に流体を流通させて、配置される発熱体(図示省略)を冷却する機器である。ジャケット本体2と封止体3A,3Bとは摩擦攪拌接合で一体化される。
ジャケット本体2は、枠状の周壁部11を有する。周壁部11は、矩形枠状を呈する。ジャケット本体2の内部は矩形状の中空部になっている。ジャケット本体2は、摩擦攪拌可能な金属(アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金等)であればよいが、本実施形態ではアルミニウム合金で形成されている。ジャケット本体2の角は直角でもよいが、本実施形態では丸面取り加工が施されている。
周壁部11の端面である端面11aには、ジャケット本体2の周壁部11の内周縁に沿って周壁段差部12が形成されている。周壁段差部12は、段差底面12aと、段差底面12aから立ち上がる段差側面12bとで構成される。段差底面12aは、端面11aから一段下がった位置に形成されている。また、ジャケット本体2の周壁部11の裏側の端面11bにも同様に周壁段差部12が形成されている。
封止体3A,3Bは、ジャケット本体2の開口部を封止する板状部材である。封止体3A,3Bは、矩形状を呈する。封止体3A,3Bの角は直角でもよいが、本実施形態では丸面取り加工が施されている。封止体3A,3Bは、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態ではアルミニウム合金を主に含んで形成されている。封止体3Bの裏面3bには、裏面3bに対して垂直に立ち上がる複数の板状のフィン31が形成されている。フィン31の高さ寸法は、端面11aの段差底面12aから端面11bの段差底面12aまでの高さ寸法と概ね同一になっている。
フィン31を備えた封止体3Bは、板状部材に複数のフィンをロウ付け等で接合して形成してもよいし、一の素形材を切削加工して形成してもよい。
次に、本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、載置工程と、本接合工程と、を行う。
準備工程は、ジャケット本体2及び封止体3A,3Bを準備する工程である。ジャケット本体2及び封止体3は、製造方法については特に制限されないが、ジャケット本体2は、例えば、ダイキャストで成形する。封止体3A,3Bは、例えば、素形材を切削加工して形成する。
載置工程は、図2に示すように、ジャケット本体2のそれぞれの周壁段差部12に封止体3A,3Bを載置する工程である。載置工程では、端面11aの周壁段差部12に封止体3Aを載置するとともに、端面11bの周壁段差部12に封止体3Bを載置する。端面11aの周壁段差部12の段差側面12bと、封止体3Aの側面3cとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。さらに、周壁段差部12の段差底面12aと、封止体3Aの裏面3bとが重ね合わされて第一重合部J2が形成される。端面11bの周壁段差部12の段差側面12bと、封止体3Bの側面3cとが突き合わされて第二突合せ部J3が形成される。さらに、周壁段差部12の段差底面12aと、封止体3Bの裏面3bとが重ね合わされて第二重合部J4が形成される。周壁部11の端面11a,11b及び封止体3A,3Bとはそれぞれ面一になっている。なお、ジャケット本体2と封止体3A,3Bとは溶接又は摩擦攪拌等により仮接合してもよい。
本接合工程は、図3〜図6に示すように、第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBを用いて第一突合せ部J1及び第二突合せ部J3をそれぞれ摩擦攪拌接合する工程である。本接合工程では、保持工程と、摩擦攪拌工程とを行う。保持工程は、一対の保持部22を備える挟持装置(治具)でジャケット本体2と封止体3A,3Bとを両外側から押圧して挟持する。本実施形態では、保持部22と封止体3Aとの間、保持部22と封止体3Bとの間にそれぞれ中間プレート21を介設している。保持部22は円柱状を呈し、その端面が中間プレート21,21にそれぞれ面接触する。中間プレート21を設けることで、保持部22の押圧力を分散させて、ジャケット本体2及び封止体3A,3Bを確実に保持することができる。なお、中間プレート21は省略してもよい。
挟持装置の保持部22とジャケット本体2及び封止体3A,3Bとは同期して回転又は平行移動する。つまり、当該挟持装置は、封止体3Aの表面3a及び封止体3Bの表面3aを保持部22,22でそれぞれ押圧し挟持した状態で、ジャケット本体2及び封止体3A,3Bを周方向に回転させるとともに、上下、左右及び前後方向に直線移動させることができる。
図4に示すように、第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBは同じ構造になっているため、第一回転ツールFAを例に説明する。第一回転ツールFAは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。第一回転ツールFAは、本実施形態では、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたロボットアーム(図示省略)に取り付けられている。
第一回転ツールFAは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、ロボットアーム(図示省略)の回転軸に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈し、ボルトが締結されるネジ孔(図示省略)が形成されている。
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の先端には、回転中心軸線Cに対して垂直であり、かつ、平坦な平坦面F3(図5参照)が形成されている。
攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。回転ツールを右回転させる場合は、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
なお、回転ツールを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンの先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(ジャケット本体2及び封止体3A,3B)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。なお、本実施形態では、後述する通り、第一回転ツールFAを右回転させるとともに、第二回転ツールFBを左回転させている。このため、第一回転ツールFAの螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されており、第二回転ツールFBの螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて右回りに形成されている。
本接合工程では、図3及び図4に示すように、挟持装置(治具)を用いてジャケット本体2及び封止体3A,3Bを保持する保持工程を行う。そして、ロボットアームを操作して、第一突合せ部J1及び第二突合せ部J3を同時に摩擦攪拌接合する摩擦攪拌工程を行う。つまり、摩擦攪拌工程では、封止体3Aの表面3aに設定された開始位置SP1に右回転させた第一回転ツールFAを挿入して第一突合せ部J1の摩擦攪拌接合を行うとともに、封止体3Bの表面3aに設定された開始位置(図示省略)に左回転させた第二回転ツールFBを挿入して第二突合せ部J3の摩擦攪拌接合を行う。第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBはジャケット本体2を挟んで同じ接合条件(ただし、回転方向を除く)で相対移動するため、ここでは、第一回転ツールFAを例示して説明する。
摩擦攪拌工程では、図4に示すように、押入区間と、本区間と、離脱区間とを連続して摩擦攪拌を行う。押入区間は、封止体3Aの表面3a上に設定された開始位置SP1から第一突合せ部J1に設定された中間点S1までの区間である。本区間は、中間点S1から第一突合せ部J1に沿って一周して中間点S1を通過した後、第一突合せ部J1に設定された中間点S2まで至る区間である。離脱区間は、中間点S2から封止体3Aの表面3a上に設定された終了位置EP1までの区間である。中間点S1,S2は、第一突合せ部J1に互いに離間して設定されている。また、開始位置SP1及び終了位置EP1は、封止体3Aの表面3aのうち、第一突合せ部J1よりも内側に設定されている。
押入区間では、開始位置SP1に第一回転ツールFAの回転中心軸線Cが垂直となるように配置し、中間点S1に向けて相対移動させながら所定の深さとなるまで攪拌ピンF2を徐々に押入していく。第一回転ツールFAが中間点S1に達したら、そのまま本区間に移行する。第一回転ツールFAの移動軌跡には塑性化領域W1が形成される。押入区間から本区間に第一回転ツールFAを移行させる際には、途中で第一回転ツールFAが停止したり、移動速度が低下したりしないように、直線状又は円弧状に第一回転ツールFAを移動させることが好ましい。
本区間では、第一回転ツールFAの回転中心軸線Cと封止体3Aの表面3a及びジャケット本体2の端面11aとが垂直となるようにしつつ、所定の深さを維持した状態で、第一回転ツールFAを第一突合せ部J1に沿って相対移動させて当該第一突合せ部J1を一周させる。「所定の深さ」とは、本区間において中間点S1から一周させて中間点S2までの第一回転ツールFAの攪拌ピンF2を差し込む深さを言う。本実施形態では、図5に示すように、第一回転ツールFAの攪拌ピンF2の平坦面F3が、端面11aの段差底面12aに達するように所定の深さを設定している。
ジャケット本体2及び封止体3Aの角部においては、保持部22,22を回転させながら(若しくは、ロボットアームを移動させてもよい)第一回転ツールFAを相対移動させる。また、ジャケット本体2及び封止体3Aの辺部においては、保持部22,22及びロボットアームの少なくとも一方を移動させながら直線状に第一回転ツールFAを相対移動させる。
本区間では、攪拌ピンF2のみを封止体3Aの表面3a及び周壁部11の端面11aの側から第一突合せ部J1に挿入して、攪拌ピンF2のみをジャケット本体2の周壁部11及び封止体3Aに接触させて、攪拌ピンF2の基端側を露出させた状態で、第一突合せ部J1を摩擦攪拌する。また、本区間では、第一突合せ部J1上における塑性化領域W1の始端と終端とをオーバーラップさせて第一回転ツールFAが中間点S2に達したら、そのまま離脱区間に移行する。本区間から離脱区間に第一回転ツールFAを移行させる際には、途中で第一回転ツールFAが停止したり、移動速度が低下したりしないように、平面視直線状又は円弧状に第一回転ツールFAを移動させることが好ましい。
離脱区間では、図6に示すように、中間点S2から終了位置EP1に相対移動させながら、攪拌ピンF2を徐々に引き抜いて終了位置EP1で離脱させる。
本実施形態では、本区間において、攪拌ピンF2の先端の平坦面F3が端面11aの段差底面12aに達するように設定したが、攪拌ピンF2と段差底面12aとが接触しない状態で摩擦攪拌接合を行ってもよい。この場合は、攪拌ピンF2と封止体3A及びジャケット本体2との摩擦熱によって第一重合部J2が塑性流動化して接合される。
摩擦攪拌工程では、第一回転ツールFAの回転中心軸線Cと、第二回転ツールFBの回転中心軸Cとが実質的に一致するように両者の移動ルートを設定する。つまり、第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBを用いて第一突合せ部J1及び第二突合せ部J3を同時に摩擦攪拌接合する。また、第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBの回転速度、移動速度、挿入深さ等の接合条件も同一に設定する。ただし、第一回転ツールFAは、第一回転ツールFAの基端側から見て右回転させ、第二回転ツールFBは、第二回転ツールFBの基端側から見て左回転させる。なお、第一回転ツールFAを左回転させる場合は、第二回転ツールFBを右回転させる。またこの場合、第一回転ツールFAの螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて右回りに形成され、第二回転ツールFBの螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成される。
以上説明した本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、枠状のジャケット本体2と封止体3A,3Bとを一対の保持部22で保持した状態でジャケット本体2及び封止体3A,3Bを回転又は平行移動させるため、保持作業は一度で済む。つまり、従来のようにクランプ作業を複数回行う必要が無い。また、本接合工程中に保持部22と第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBとが干渉しない。つまり、ジャケット本体2と封止体3A,3Bとを位置決めするための治具が第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBの移動の妨げにならず、開始位置SP1から終了位置EP1まで連続して摩擦攪拌接合を行うことができる。これにより、作業工数を減らすことができるとともに、第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBを駆動させるための装置等の付帯設備を簡素なものとすることができ、液冷ジャケット1を低コストで製造することができる。
また、本接合工程では、攪拌ピンF2のみを周壁部11及び封止体3A,3Bに接触させ、攪拌ピンF2の基端側は露出した状態で摩擦攪拌接合を行うため摩擦攪拌装置にかかる負荷を軽減することができる。
また、図2に示すように、フィン31は、端面11aの段差底面12aから端面11bの段差底面12aまでの高さ寸法と概ね同一に設定しているため、フィン31の先端が封止体3Aの裏面3bに当接する。これにより、封止体3A,3Bの変形を抑制することができる。また、フィン31を設けることで、液冷ジャケット1の熱交換効率を高めることができる。
また、本実施形態のように、本接合工程において、第一回転ツールFAの攪拌ピンF2の平坦面(先端)F3が端面11aの段差底面12aに達するように第一回転ツールFAを挿入することが好ましい。言い換えれば、第一回転ツールFAの攪拌ピンF2の平坦面(先端)F3が第一重合部J2に達するように第一回転ツールFAを挿入することが好ましい。また、本接合工程において、第二回転ツールFBの攪拌ピンF2の平坦面(先端)F3が端面11bの段差底面12aに達するように第二回転ツールFBを挿入することが好ましい。言い換えれば、第二回転ツールFBの攪拌ピンF2の平坦面(先端)F3が第二重合部J4に達するように第二回転ツールFBを挿入することが好ましい。かかる製造方法よれば、第一重合部J2及び第二重合部J4における接合強度を高めることができる。
また、本実施形態のように、本接合工程において、第一回転ツールFAの回転中心軸線Cと第二回転ツールFBの回転中心軸線Cとが実質的に一致するように、第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBを相対移動させることが好ましい。かかる製造方法によれば、封止体3A,3Bを同時に接合することができるため、作業工数をより減らすことができる。また、第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBの押圧力がジャケット本体2及び封止体3A,3Bに均等に作用するため、バランス良く接合することができる。
また、本実施形態のように、第一回転ツールFAを右回転させる場合には、第二回転ツールFBを左回転させ、第一回転ツールFAを左回転させる場合には、第二回転ツールFBを右回転させることが好ましい。かかる製造方法によれば、枠状のジャケット本体2の表裏で第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBの回転方向が一致するため、ジャケット本体2と封止体3A,3Bとの位置ずれを防ぎ、接合精度を高めることができる。
ここで、例えば、第一突合せ部J1に対応する封止体3Aの表面3a上に開始位置SP1を設定し、第一回転ツールFAを垂直に挿入して摩擦攪拌を行ってもよいが、この形態であると当該開始位置SP1に過大な摩擦熱が発生し、接合不良となるおそれがある。これに対し、本実施形態のように開始位置SP1を第一突合せ部J1よりも内側の封止体3Aの表面3a上に設定し、第一突合せ部J1に向けて攪拌ピンF2を相対移動させながら徐々に押入することで、第一突合せ部J1上で摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
同様に、第一突合せ部J1に対応する封止体3Aの表面3a上に終了位置EP1を設定し、当該終了位置EP1で回転ツールFを垂直に離脱させてもよいが、この形態であると終了位置EP1に過大な摩擦熱が発生し、接合不良となるおそれがある。これに対し、本実施形態のように終了位置EP1を第一突合せ部J1よりも内側の封止体3Aの表面3a上に設定し、攪拌ピンF2を相対移動させながら第一突合せ部J1から徐々に引き抜くことで、第一突合せ部J1上で摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
また、本接合工程では、塑性化領域W1の始端と終端とを第一突合せ部J1上でオーバーラップさせているため、液冷ジャケット1の気密性及び水密性を高めることができる。
また、本接合工程では、第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBの回転速度を一定としてもよいが、可変させてもよい。本接合工程の押入区間において、開始位置SP1における第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBの回転速度をV1とし、本区間における第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBの回転速度をV2とすると、V1>V2としてもよい。回転速度のV2は、本区間における予め設定された一定の回転速度である。つまり、開始位置SP1では、回転速度を高く設定しておき、押入区間内で徐々に回転速度を低減させながら本区間に移行してもよい。
また、本接合工程の離脱区間において、本区間における第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBの回転速度をV2、終了位置EP1において離脱させるときの第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBの回転速度をV3とすると、V3>V2としてもよい。つまり、離脱区間に移行したら、終了位置EP1に向けて徐々に回転速度を上げながら封止体3A,3Bから第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBを離脱させてもよい。第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBを封止体3に押し入れる際又は封止体3から離脱させる際に、前記のように設定することで、押入区間又は離脱区間時における少ない押圧力を、回転速度で補うことができるため、摩擦攪拌を好適に行うことができる。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では複数のフィン31の全部を封止体3Aの裏面3bに接触させたが、複数のフィン31の一部の先端を封止体3Aの裏面3bに接触させた状態であってもよい。また、フィン31は省略してもよい。
また、本接合工程では、本実施形態ではジャケット本体2の表裏で同時に摩擦攪拌接合を行ったが、別々に行ってもよい。また、ジャケット本体2の表裏で異なる回転ツールを用いて摩擦攪拌接合を行ってもよい。また、ジャケット本体2の表裏で、同一の回転ツールを用いて別々に摩擦攪拌接合を行ってもよい。
また、本実施形態では、開始位置SP1及び終了位置EP1を第一突合せ部J1(第二突合せ部J3)よりも内側に設定したが、第一突合せ部J1(第二突合せ部J3)上に設定してもよい。この場合は、第一突合せ部J1(第二突合せ部J3)上で第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBを相対移動させつつ徐々に押入してもよい。また、第一突合せ部J1(第二突合せ部J3)上で第一回転ツールFA及び第二回転ツールFBを相対移動させつつ徐々に引き抜いて離脱させてもよい。このようにすることで、第一突合せ部J1(第二突合せ部J3)上の一点で摩擦熱が過大となるのを防ぐことができる。
1 液冷ジャケット
2 ジャケット本体
3A 封止体
3B 封止体
22 保持部
FA 第一回転ツール
FB 第二回転ツール
F2 攪拌ピン
J1 第一突合せ部
J2 第一重合部
J3 第二突合せ部
J4 第二重合部
SP1 開始位置
EP1 終了位置
2 ジャケット本体
3A 封止体
3B 封止体
22 保持部
FA 第一回転ツール
FB 第二回転ツール
F2 攪拌ピン
J1 第一突合せ部
J2 第一重合部
J3 第二突合せ部
J4 第二重合部
SP1 開始位置
EP1 終了位置
Claims (8)
- 枠状の周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の両側の開口部をそれぞれ封止する二枚の封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記二枚の封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
摩擦攪拌で用いる第一回転ツール及び第二回転ツールの攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、
前記周壁部の両端面の内周縁のそれぞれに、段差底面と、前記段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成した前記ジャケット本体と、前記封止体と、を準備する準備工程と、
前記周壁部の両端面に前記封止体をそれぞれ載置することにより、前記ジャケット本体の一方の端面の段差側面と一方の前記封止体の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成し、前記周壁部の一方の端面の段差底面と一方の前記封止体の裏面とを重ね合わせて第一重合部を形成するとともに、前記周壁部の他方の端面の段差側面と他方の前記封止体の側面とを突き合わせて第二突合せ部を形成し、前記周壁部の他方の端面の段差底面と他方の前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二重合部を形成する載置工程と、
回転する前記第一回転ツールの攪拌ピンのみを前記第一突合せ部に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記周壁部及び一方の前記封止体に接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って所定の深さで前記周壁部の廻りに相対的に一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌するとともに、
回転する前記第二回転ツールの攪拌ピンのみを前記第二突合せ部に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記周壁部及び他方の前記封止体に接触させた状態で前記第二突合せ部に沿って所定の深さで前記周壁部の廻りに相対的に一周させて前記第二突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、
前記本接合工程において、一方の前記封止体の表面と他方の前記封止体の表面とを両外側から一対の保持部で押圧して保持しつつ、前記保持部を用いて前記ジャケット本体及び二枚の前記封止体を回転又は平行移動させて、前記ジャケット本体と二枚の前記封止体とを摩擦攪拌することを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。 - 他方の前記封止体の裏面には、複数のフィンが形成されており、
前記本接合工程において、前記複数のフィンの少なくとも一部の先端を一方の前記封止体の裏面に接触させた状態で、前記ジャケット本体と二枚の前記封止体とを摩擦攪拌することを特徴とする請求項1に記載の液冷ジャケットの製造方法。 - 前記本接合工程において、前記第一回転ツールの前記攪拌ピンの先端が前記第一重合部に達するように前記第一回転ツールを挿入することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記本接合工程において、前記第二回転ツールの前記攪拌ピンの先端が前記第二重合部に達するように前記第二回転ツールを挿入することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記本接合工程において、前記第一回転ツールの回転中心軸線と前記第二回転ツールの回転中心軸線とが実質的に一致するように、前記第一回転ツール及び前記第二回転ツールを相対移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記本接合工程において前記第一回転ツールを右回転させる場合には、前記第二回転ツールを左回転させ、前記第一回転ツールを左回転させる場合には、前記第二回転ツールを右回転させることを特徴とする請求項5に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記本接合工程では、所定の回転速度で前記攪拌ピンを回転させて摩擦攪拌を行い、
前記本接合工程において前記攪拌ピンを引き抜くとき、前記所定の回転速度よりも徐々に回転速度を上げながら前記攪拌ピンを終了位置まで相対移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。 - 前記本接合工程では、所定の回転速度で前記攪拌ピンを回転させて摩擦攪拌を行い、
前記本接合工程において前記攪拌ピンを挿入するとき、前記所定の回転速度よりも高い速度で前記攪拌ピンを回転させ、徐々に回転速度を下げながら前記攪拌ピンを挿入することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
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