JP2021186813A - 微細凹凸構造の形成方法および形成装置 - Google Patents

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隆文 大渕
Takafumi Obuchi
拓也 岡本
Takuya Okamoto
浩一 生杉
Koichi Namasugi
増文 連
Tseng-Wen Lian
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Abstract

【課題】加工物表面に微細構造を高効率かつ高精度に形成する方法を提供する。【解決手段】空間光位相変調器3に、レーザ光源2から出力される100ピコ秒以下のパルス幅を有する超短パルスレーザを入力するステップと、空間光位相変調器3から出力された位相変調後の超短パルスレーザを、所定の開口数と所定の焦点距離のレンズ5が設けられていて入力される光を複数のレーザビームに分割する集光光学系50に入力することで、基材7とレーザビームとの成す角度が所定の角度となるように設定するステップと、レーザビームの集光スポットの位置が基材7の表面から所定の深さとなるように調節するステップと、レーザビームを基材7に照射して所定方向に走査するステップとを含み、基材7の表面に、複数の第1の凹凸構造と、第1の凹凸構造の凸部の表面における第1の凹凸構造よりも幅の間隔が少ない複数の第2の凹凸構造とを同時に形成する。【選択図】図1

Description

本発明は微細凹凸構造の形成方法および形成装置に関し、特に超短パルスレーザを用いた微細凹凸構造の形成方法および形成装置に関する。
従来より、金属やセラミックス等の加工対象物である母材表面に微細加工を施すための技術として、レーザを加工対象物の表面に照射する方法が知られている。例えば、下記の特許文献1には、所定波長の超短パルスレーザを母材に照射して、所定波長よりも小さいサイズの微細構造を形成する加工方法が記載されている。
国際公開第2006/027850号明細書
上述のような従来技術では、レーザを母材表面に照射して微細構造を形成している。すなわち、一回の加工ではレーザは一点にしか集光されず、母材表面を一点ずつしか加工できない。また、母材にマイクロ構造の溝とナノ構造の溝との両者を形成しようとする場合には、たとえばマイクロ構造の溝を加工した後にレーザの照射条件を変更したうえでナノ構造の溝を改めて加工する必要がある。このため、母材全体の加工を行うのに膨大な数の点の加工が必要となり、加工に膨大な時間を要するために加工効率が極めて低いという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、母材表面に異なるサイズの凹凸構造を高効率かつ高精度に同時に形成することができる微細凹凸構造の形成方法および形成装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る微細凹凸構造の形成方法は、
複数の画素が所定間隔に配列された光学素子の画素それぞれにおいて光の位相を変調する空間光位相変調器に、レーザ光源から出力されるパルス幅100ピコ秒以下の超短パルスレーザ光を入力するステップと、
前記空間光位相変調器から出力された位相変調後の前記超短パルスレーザ光を、所定の開口数と所定の焦点距離のレンズを含む集光光学系に入力することで、複数のレーザビームに分岐するとともに、前記複数のレーザビームの集光スポット位置を、基材表面において所定間隔、かつ、前記基材表面から所定の深さとなるように調節するステップと、
前記基材に照射された複数のレーザビームを所定方向に走査するステップとを含み、
前記基材に所定の角度で入射するように設定された前記複数のレーザビームを前記基材に照射して所定方向に走査する際に、前記基材表面で前記レーザビームどうしが重なることで、前記基材の表面に、複数の第1の凹凸構造と、前記複数の第1の凹凸構造の凸部の表面における、前記第1の凹凸構造よりも凹部と凸部の幅が狭い複数の第2の凹凸構造とを同時に形成することを特徴とする。
上記の課題を解決するために、本発明の別の態様に係る微細凹凸構造の形成装置は、
パルス幅100ピコ秒以下の超短パルスレーザ光を発振させるレーザ光源と、
複数の画素が所定間隔に配列された光学素子の画素それぞれにおいて、入射された前記パルスレーザ光の位相を変調して出力させる空間光位相変調器と、
前記空間光位相変調器から出力された位相変調後の前記超短パルスレーザ光を、複数のレーザビームに分岐するとともに、前記複数のレーザビームを基材の表面に所定角度で照射させて、前記レーザビームの集光スポット位置が基材表面において所定間隔、かつ、前記基材表面から所定の深さとなるように調節し、さらに前記基材表面で前記レーザビームどうしに重なりを生じさせる集光光学系と、
前記基材に照射されている複数のレーザビームを前記基材に対して相対的に所定方向に走査させる走査装置とを備え、
前記集光光学系によって前記基材の表面で前記レーザビームどうしに重なりを生じさせたうえでの前記走査装置による走査により、前記基材の表面に、複数の第1の凹凸構造と、前記複数の第1の凹凸構造の凸部の表面における、前記第1の凹凸構造よりも凹部と凸部の幅が狭い複数の第2の凹凸構造とを同時に形成するものであることを特徴とする。
上記した本発明の一態様および別の態様によれば、母材表面に異なるサイズの凹凸構造を高効率かつ高精度に同時に形成することができる。
微細凹凸構造の形成装置の一実施形態の構成を示す図である。 微細凹凸構造の形成装置を用いた微細凹凸構造の形成方法の一例を示すフローチャートである。 複数のレーザビームによって加工した際の基材をY方向から見た図である。 複数のレーザビームによって加工した際の基材をZ方向から見た図である。 本発明によって得られる微細凹凸構造を示す図である。 複数のレーザビームを基材に照射した際のレーザビームの重なりと第1の凹凸構造との位置関係を模式的に表した図である。
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図5に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本発明の微細凹凸構造の形成方法は、超短パルスレーザを空間光位相変調器で位相を変調して強度分布を変化させたレーザビームについて、空間光位相変調器で設定した位相変調パターンによって基材の所定の位置に複数の集光点を形成し、基材に位相変調後のレーザビームを分岐して基材表面で重なり合うように照射することで、大きさが異なる複数の微細な凹凸構造を形成する方法である。すなわち、本発明の微細凹凸構造の形成方法は、基材表面に対して分岐しそれぞれエネルギーを有するレーザビームどうしの干渉によって基材表面を加工して、幅および/または高さが異なる微細な凹凸構造としての、第1の凹凸構造と第2の凹凸構造9(図4参照)とを同時に形成する方法である。ここで、第1の凹凸構造は、第2の凹凸構造9よりも幅と高さが大きい凹凸構造である。また、第2の凹凸構造9は、第1の凹凸構造よりも幅と高さが小さい凹凸構造である。例えば、第1の凹凸構造のサイズはマイクロメートルオーダーであり、第2の凹凸構造9のサイズはナノメートルオーダーからサブミクロンメートルオーダーである。以降、図面とともに本発明の微細凹凸構造の形成方法および微細凹凸構造の形成装置について説明する。
〔微細凹凸構造の形成装置の構成〕
まず、本実施形態に係る微細凹凸構造の形成装置1の基本的な構成を図1に基づいて説明する。図1は、微細凹凸構造の形成装置の一実施形態の構成を示す図である。本実施形態における微細凹凸構造の形成装置1は、微細凹凸構造の加工対象である基材7の表面または内部に複数の集光位置が設定され、その集光点にレーザ光を集光照射する装置であって、レーザ光源2と、空間光位相変調器3と、波長板4と、集光光学系50を構成するレンズ5と、走査装置としてのXYZステージ6とを含む。図1では、説明の都合上、X方向、Y方向およびZ方向を示している。X方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直である。なお、X方向は、基材7の表面に対して平行な方向であり、かつ図1の紙面に対して垂直方向である。Y方向は、集光光学系50の光軸に対して垂直方向であり、かつ図1の紙面の上下方向に相当する。Z方向は、集光光学系50の光軸方向であって、基材7の厚み方向に相当する。
レーザ光源2は、基材7の内部の複数の集光位置に集光照射するレーザ光を出力するものであり、例えば、ピコ秒レーザ光源やフェムト秒レーザ光源などのパルスレーザ光源が好ましい。なお、レーザ光のパルス幅は短い方が好ましく、100ピコ秒(10−10秒)以下であることが好ましい。また、1パルスあたりのパルスエネルギーは0.1〜100μJであることが好ましい。ただし、出力するレーザ光の波長においては、複数のレーザビームに分岐して、基材7の表面を加工できるエネルギーがあればよく、適宜選択が可能である。
そして、レーザ光源2から出力されたレーザ光は、例えばビームエキスパンダなどの光学素子によってレーザのビーム径を調整したうえで、反射ミラーなどを介して空間光位相変調器3に入力される。このとき、空間光位相変調器3に入力されるレーザ光は、前述のビームエキスパンダやホモジナイザなどの光学素子によって、レーザ光源1から出力されるレーザ光のエネルギー分布が均一化されていることが好ましい。
空間光位相変調器3は、レーザ光の位相を変調する装置である。本装置によって、レーザ光の位相が変調され、基材7に位相を変調したレーザ光を集光した際に、レーザ光の強度分布が変化する。
本実施形態における空間光位相変調器3は位相変調型を採用し、通信可能に接続された制御装置(図示省略)で設定された位相変調パターンに基づき、レーザ光源1から出力されたレーザ光を変調させる。そして、変調したレーザ光を基材7表面において集光した際に、基材7の集光位置においてレーザ光の強度分布を変化させるとともに、複数の集光点を形成させる。より詳細には、図示を省略した制御装置で設定する位相変調パターンに基づいたホログラムにより、レーザ光は、基材7に形成する微細凹凸構造のうちの第1の凹凸構造の凸部の幅に対応するように分岐され、これによって複数のレーザビームが生成される。
波長板4は、空間光位相変調器3から出力された位相変調後のレーザビームの偏光方向の調整を行う。このように偏光方向の調整を行う理由は、第2の凹凸構造9の凸部を、照射するレーザの偏光方向に依存して垂直または平行に形成させるためである。ここで、第2の凹凸構造9の凸部がレーザの偏光方向に対して垂直または平行に形成されるかは、材料に依存するところが大きく、このため照射する基材7の材料に応じて適宜選択する必要がある。
本実施形態では、位相変調後のレーザビームの偏光方向を微細凹凸構造の加工方向と直交する方向に設定する。具体的には、形成する第2の凹凸構造9の凸部の幅方向と平行になるように波長板4を回転させて所望の偏光方向に設定する。なお、波長板4を回転する量は、使用する基材7の材質に応じて適宜調節すれば良い。これにより、前述した偏光方向に設定したレーザビームを基材7に照射することで、レーザビームの偏光方向と直交する方向に微細凹凸構造が形成される。
本実施形態では、波長板4は1/2波長板を用いている。しかし、レーザビームの偏光状態(直線偏光または円偏光など)に応じて必要に応じて選択すればよい。本実施形態においては、レーザ光は直線偏光であり、1/2波長板を配置して偏光方向を制御することで、所望の偏光方向を設定している。
波長板4を通過して所望の偏光方向となっているレーザビームは、集光光学系50を構成するレンズ5(対物レンズ)へと伝搬される。そして、このレンズ5によって、基材7の表面または内部に設定された複数の集光スポット位置にレーザビームが集光照射される。このとき、基材7とレーザビームとの成す角度が所定の角度となる開口数のレンズ5である必要がある。この詳細については、後述の幾何学計算にて説明する。
なお、微細凹凸構造の形成装置1における光学系は、図1に示す構成に限らず、様々な構成を用いることが可能である。例えば、図1の構成に代えて、レンズ5を含めた複数のレンズで構成された光学系であってもよい。
走査装置としてのXYZステージ6は、基材7を保持して移動させる可動式のステージである。このXYZステージは、レーザ光を走査する方向に応じて基材7を移動させ、X方向、Y方向、およびZ方向のいずれの方向にも移動させる。
図1に示すように、基材7は、X方向、Y方向およびZ方向に移動可能に構成されたXYZステージに取り付けられている。ここで、基材7は、シート状または板状の部材である。基材7は、特に限定されるものではなく、金属材料や無機材料などが挙げられる。例えば、金属材料としては、ニッケル材、鋼材、アルミニウム材などを用いることができる。中でも、クロムめっきされた鋼材が好ましい。本実施形態では、基材7はクロムめっきされた鋼材であり、基材7の表面は平面状である。
制御装置(図示せず)は、空間光位相変調器3、波長板4、XYZステージ6の各部を統括して制御するものであり、上述の空間光位相変調器3に設定する位相変調パターンの読み込みや、XYZステージの移動方向の設定などの、微細凹凸構造の形成に必要な動作を制御する。
この制御装置は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、制御装置は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶した読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔微細凹凸構造の形成方法〕
次に、図2を参照して、本実施形態に係る微細凹凸構造の形成方法について説明する。図2は、微細凹凸構造の形成装置1を用いた微細凹凸構造の形成方法の一例を示すフローチャートである。
まず、基材7の面がXY平面に対して平行、かつ、XZ平面に対して垂直になるように、この基材7をXYZステージ6に取り付ける。そして、空間光位相変調器3から出力され、かつ基材7の表面または内部の集光スポット位置に集光されるレーザビームの間隔を決めるために、空間光位相変調器3における位相変調素子の位相変調パターンを設定する。所望の位相変調パターンを設定することで、集光位置において隣り合うレーザビームどうしの間隔が決まる。
空間光位相変調器3に、100ピコ秒以下のパルス幅の超短パルスレーザを発振するレーザ光源1から出力される超短パルスレーザを入力する(S11)。本実施形態で使用したレーザ光源1は、既述のように1パルスあたりのエネルギーが0.1μJ〜100μJであり、出力するレーザの波長が780nm、パルスの繰り返し周波数が1kHzのフェムト秒パルスレーザ光源である。なお、上記のように1パルスあたりのエネルギーは0.1μJ〜100μJであることが特に好ましいが、レーザ光の波長は、微細凹凸構造の形成に必要なエネルギーが得られればよい。したがって、レーザ光の波長は上記に限定されることはなく、適宜選択することができる。
空間光位相変調器3から出力された位相変調後の超短パルスレーザを、所定の開口数と焦点距離のレンズ5が設けられていて、入力される光を複数の集光ビームに分割する、集光光学系50に入力することで、基材7と集光ビームとの成す角度が所定の角度となるように設定する。このレンズ5の開口数は、形成する微細凹凸構造の間隔と高さに応じて決まる。詳細は、後述の幾何学計算で説明する。
空間光位相変調器3で分割された複数の集光ビーム40(図3A参照)の集光スポット位置40aが、基材7の表面から所定の深さとなるように調節する(S12)。なお、この集光スポット位置40aは、図3Aに示すようにZ方向に向かって基材7の表面の高さを基準としたときに、表面から30μmの深さであることが好ましい。
S12で集光スポット位置40aを調節したうえで、複数の集光ビーム40を基材7に照射して所定方向に走査する(S13)。このときの基材7に微細凹凸構造を形成する際の速度(以下、「加工速度」と称する)は、用いるレーザのパルスの繰り返し周波数が1kHzである場合に、等速で20μm/s以上100μm/s以下であることが好ましい。ただし、用いるレーザの繰り返し周波数が高くなれば、高くなった分だけ加工速度も速くなる。このため、加工速度は、用いるレーザのパルスの繰り返し周波数に応じて適宜設定すれば良く、上述の加工速度に限定されることはない。なお、本実施形態では、複数のレーザビームによって加工した際の基材7をZ方向から見た図3Bに示すように、複数のレーザビームをY方向に走査して基材7の表面に微細凹凸構造を形成している。
なお、上述の微細凹凸構造の形成方法において、サイズの大きい第1の凹凸構造と、第1の凹凸構造に比べてサイズの小さい第2の凹凸構造9とを同時に形成するために必要な調整パラメータは、微細凹凸構造の形成装置1において、レーザ光の照射条件と、基材7におけるレーザビームの集光位置の間隔と、レンズ5の開口数および焦点距離との3点である。具体的には、レーザ光の照射条件として、レーザ光の波長、繰り返し周波数、パルス幅、パルスエネルギー、ビームサイズ、加工速度、偏光方向などがある。その中でも特にパルスエネルギーと加工速度が加工に与える影響が大きく、これらを所定の範囲内で調節する必要がある。また、基材7におけるレーザビームの集光位置の間隔は、上述の空間光位相変調器3に通信可能に接続されている制御装置で設定する位相変調パターンに基づいたホログラムが形成され、形成されたホログラムにより基材基板7に形成する微細凹凸構造の第1の凹凸構造の凸部の幅に対応するようにレーザビームが分岐されることで、決定される。そして、レンズ5の開口数は、所望の第1の凹凸構造の高さと幅とに応じて、後述の幾何学計算から得られる開口数を採用する。
以上のS11〜S13のステップを実施することで、図4に示すところの、高さおよび幅が異なる第1の凹凸構造8と第2の凹凸構造9とを、基材7の表面に同時に形成することができる。ここで、第1の凹凸構造8と第2の凹凸構造9とは、図4において、第1の凹凸構造8の凹部が8a、凸部が8bである。また、第2の凹凸構造9の凹部が9a、凸部が9bである。
〔レンズの開口数の算出方法(レーザの集光位置の間隔決定方法)〕
上述のように、第1の凹凸構造8と第2の凹凸構造9とを同時に形成するためのレーザビームの集光位置の間隔を決定する調整パラメータの一つであるレンズ5の開口数は、以下に示す幾何学計算によって得られる。この幾何学計算は、図5を参照しながら説明する。
図5は、XZ平面における複数のレーザビーム41、42を基材7に照射した際の、レーザビーム41、42の重なりと、第1の凹凸構造8との位置関係を模式的に表した図である。図5のように、レーザビーム41、42が重なり合うように、レーザビーム41、42の照射位置を上述の方法を用いて設定したうえで、レーザビーム41、42を基材7に照射することで、第1の凹凸構造8だけでなく、図4に示す第2の凹凸構造9も同時に形成することが可能となる。
ここで、図5を参照しながら、第1の凹凸構造8と第2の凹凸構造9(図4参照)とを同時に形成するためのレーザビームのエネルギーおよび集光スポット位置の関係について、より具体的に述べる。まず、第1の凹凸構造8の形成を行うには、レーザビーム41、42の集光スポット位置においてこのレーザビーム41、42が所定の大きさのエネルギーを有することが必要となる。また、第2の凹凸構造9(図4参照)を形成するためには、第1の凹凸構造8の凸部表面47の付近においてレーザビーム41、42が所定の大きさのエネルギーを有することが必要となる。なお、この第2の凹凸構造9(図4参照)の形成に必要なエネルギーは、第1の凹凸構造8の形成に要するエネルギーよりも大きいことが必要である。そして、第1の凹凸構造8と第2の凹凸構造9(図4参照)とを同時に形成するために、第1の凹凸構造8の形成時に照射するレーザビーム41、42が重なり合うように集光スポット位置を調整し、隣り合うレーザビーム41、42の集光スポット位置の間隔が所定値となるようにする。加えて、隣り合うレーザビーム41、42が重なり合う位置(干渉位置)を第1の凹凸構造8の凸部表面47に位置するように設定する。
図5は、上述の複数のレーザビーム41、42を基材7に照射した際の、レーザビーム41、42の重なりと、第1の凹凸構造8との位置関係を模式的に表したものである。なお、説明を簡略化するために、照射されるレーザビーム41、42を2つとしている。図5において、レーザビーム41およびレーザビーム42は三角形状で表されており、また基材7には複数の凹凸構造8、8、・・・が形成されている。41a、42aは、レーザビーム41とレーザビーム42との集光スポットである。そして、θはレーザビーム41、42の中心角、bは基材7に対するレーザビーム41、42の入射角である。cは隣り合うレーザビーム41、42の集光スポット41a、42aの位置間距離、dは第1の微細凹凸構造8の凸部8bの幅、eは第1の微細凹凸構造8の凸部8bの高さである。
図5において、XY平面において隣り合うレーザビーム41、42の集光位置が近く、そのため隣り合うレーザビーム41、42同士が重なり合う場合は、集光スポット41a、42aだけでなく、集光スポット41a、42aの間の領域付近におけるレーザビーム41、42同士の干渉が強くなる。これにより、第1の凹凸構造8の凸部8bにおけるレーザビーム41、42のエネルギーが大きくなり、第1の凹凸構造8が形成されるとともに、第2の凹凸構造9(図4参照)が形成される。
ここで、上述のように隣り合うレーザビーム41、42が第1の凹凸構造8の凸部8bの表面47で重なり合うようにするためには、空間光位相変調器3で設定した、位相変調素子の位相変調パターンによって決まるレーザビーム41、42の集光スポット位置間距離と、レーザビーム41、42の基材7に対する入射角bの角度との、2つの条件が所定範囲になるように定める必要がある。これらの2つの条件のうち、前者の値は、既述のとおり、形成する微細凹凸構造8の大きさに応じて、位相変調素子の位相変調パターンを適宜選択することで決まる。そして、後者は、位相変調素子の位相変調パターンの間隔と、形成される第1の凹凸構造8の凸部8bの幅に基づいて得られる開口数のレンズ5とを選定することで、決定される。
まず、レーザビーム41、42の集光スポット41a、42aの位置間距離cは、既述のとおり、位相変調素子の位相変調パターンで定められる。
上述のレーザビーム41、42の基材7に対する入射角bの角度を定めるレンズ5の開口数については、レンズ5はスネルの法則に従うことから、NAをレンズ5の開口数、nを光が通過する媒体の屈折率、θを集光スポット41a、42aに集まるレーザビーム41、42が光軸となす角度として、下記の式(1)で表される。
NA ≦ nsinθ ・・・(1)
また、本実施形態では、レンズ5と基材7の表面との間の媒体は空気であり、n=1として、NA≦sinθと表される。
図5より、レーザビー41、42の重なり合う位置が第1の凹凸構造8の凸部8bに位置するときのレーザビーム41、42の入射角度θは、式(2)で表される。この式(2)において、図5に示すレーザビーム41、42の重なりと、第1の凹凸構造8との位置関係について述べたように、cは隣り合うレーザビーム41、42の集光スポット41a、42aの位置間距離、eは第1の微細凹凸構造8の凸部8bの高さである。そして、式(2)を式(1)に代入すると、式(3)で表される。
θ=[90−atan{e/(c/2)}] ・・・(2)
atan(e/(c/2))≦90−asin(NA) ・・・(3)
式(3)の関係を満たす開口数のレンズ5を選定することで、第1の凹凸構造8の凸部8bでレーザビーム41、42が重なり合い、レーザビーム41、42の干渉が生じる。これにより、第1の凹凸構造8の凸部8aにおけるレーザビーム41、42のエネルギーの大きさが、第1の凹凸構造8の凹部8aにおけるレーザビーム41、42の集光スポット41a、42aの位置でのエネルギーよりも大きくなり、第1の凹凸構造8よりも高さと幅が小さい第2の凹凸構造9(図4参照)に必要なエネルギーを得ることができる。
以上より、レーザ光源2から出力されるレーザ光のエネルギーと、隣り合うレーザビーム41、42の集光スポット41a、42aの位置間距離を定める位相変調素子の位相変調パターンとに加え、上述の幾何学計算から算出されるところの、開口数が所定値となるレンズ5(対物レンズ)を選定することで、基材7に、それぞれ高さと幅が異なる第1の凹凸構造8と第2の凹凸構造9(図4参照)とを同時に形成することができる。
図1に示す微細凹凸構造の形成装置1を用いて、クロムめっきされた鋼材を基材7として、基材7の表面に微細凹凸構造の形成を行った。本実施例におけるレーザ光の照射は、波長780nmで最大出力が1mW、パルス幅230fs(フェムト秒)、直線偏光の超短パルスレーザを用いて行った。また、開口数0.45のレンズを用いて、1集光点あたりの超短パルスレーザのパルスエネルギーが10μJとなるように設定した。なお、基材7の表面に照射したときの超短パルスレーザの1回あたりの照射におけるフルエンスを0.4J/cm以上1.8J/cm以下とした。レーザの偏光方向が、第1の凹凸構造8の長手方向(図1中のY方向)と直交する方向となるように、波長板4の角度を設定した。そして、レーザ光源2から出力されたレーザ光の分岐数を10とし、分岐されたレーザビームの集光スポット位置間の距離を、15μm以上30μm以下の範囲とした。また、レーザビームの集光スポット位置は、基材7の表面から基材7の厚み方向(図1中のZ方向)に−30μm以上30μm以下の範囲になるようにした。
このように設定し、レーザビームを第1の凹凸構造8の長手方向(図1中のY方向)に100μm/sの速度で走査させ、基材7の表面にレーザビームを照射した。以上の微細凹凸構造の形成条件と上述の形成方法の工程とにより、図4に示す基材7の表面に第1の凹凸構造8および第2の凹凸構造9を同時に形成した。このときの第1の凹凸構造8のサイズは、マイクロメートルオーダーであり、第2の凹凸構造9のサイズは、ナノメートルオーダーであった。
[変形例]
上述した空間光位相変調器3は、反射型のものでもあってもよく、透過型のものであってもよい。例えば、反射型のLCOS(Liquid Crystal on Silicon)や、透過型のLCD(Liquid Crystal Display)を利用することもできる。また、この空間光位相変調器3の位相変調素子は、レーザ光源1から出力されたレーザ光を基材7の内部で複数のレーザビームに分岐できればよく、透過型回析光学素子、反射型回折光学素子、屈折光学素子、反射光学素子などが使用できる。また、複数の画素を備えた位相変調素子に限定されることはない。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
1 微細凹凸構造の形成装置
2 レーザ光源
3 空間光位相変調器
5 レンズ
7 基材
8 第1の凹凸構造
8a 第1の凹凸構造の凹部
8b 第1の凹凸構造の凸部
9 第2の凹凸構造
9a 第2の凹凸構造の凹部
9b 第2の凹凸構造の凸部
50 集光光学系

Claims (4)

  1. 複数の画素が所定間隔に配列された光学素子の画素それぞれにおいて光の位相を変調する空間光位相変調器に、レーザ光源から出力されるパルス幅100ピコ秒以下の超短パルスレーザ光を入力するステップと、
    前記空間光位相変調器から出力された位相変調後の前記超短パルスレーザ光を、所定の開口数と所定の焦点距離のレンズを含む集光光学系に入力することで、複数のレーザビームに分岐するとともに、前記複数のレーザビームの集光スポット位置を、基材表面において所定間隔、かつ、前記基材表面から所定の深さとなるように調節するステップと、
    前記基材に照射された複数のレーザビームを所定方向に走査するステップとを含み、
    前記基材に所定の角度で入射するように設定された前記複数のレーザビームを前記基材に照射して所定方向に走査する際に、前記基材表面で前記レーザビームどうしが重なることで、前記基材の表面に、複数の第1の凹凸構造と、前記複数の第1の凹凸構造の凸部の表面における、前記第1の凹凸構造よりも凹部と凸部の幅が狭い複数の第2の凹凸構造とを同時に形成することを特徴とする微細凹凸構造の形成方法。
  2. 前記超短パルスレーザ光のパルスエネルギーを0.1μJ以上かつ100μJ以下とすることを特徴とする請求項1記載の微細凹凸構造の形成方法。
  3. 前記所定の角度をθとすると、このθは、前記第1の凹凸構造の短手方向に隣り合って存在する凹部どうしの中心位置の間隔をc、前記第1の凹凸構造の凸部の高さをe、前記レンズの開口数をNAとしたときに、下記の式(2)および式(3)の関係を満たす
    θ=[90−atan{e/(c/2)}]・・・式(2)
    atan(e/(c/2)) ≦ 90−asin(NA)・・・式(3)
    ことを特徴とする請求項1または2記載の微細凹凸構造の形成方法。
  4. パルス幅100ピコ秒以下の超短パルスレーザ光を発振させるレーザ光源と、
    複数の画素が所定間隔に配列された光学素子の画素それぞれにおいて、入射された前記パルスレーザ光の位相を変調して出力させる空間光位相変調器と、
    前記空間光位相変調器から出力された位相変調後の前記超短パルスレーザ光を、複数のレーザビームに分岐するとともに、前記複数のレーザビームを基材の表面に所定角度で照射させて、前記レーザビームの集光スポット位置が基材表面において所定間隔、かつ、前記基材表面から所定の深さとなるように調節し、さらに前記基材表面で前記レーザビームどうしに重なりを生じさせる集光光学系と、
    前記基材に照射されている複数のレーザビームを前記基材に対して相対的に所定方向に走査させる走査装置とを備え、
    前記集光光学系によって前記基材の表面で前記レーザビームどうしに重なりを生じさせたうえでの前記走査装置による走査により、前記基材の表面に、複数の第1の凹凸構造と、前記複数の第1の凹凸構造の凸部の表面における、前記第1の凹凸構造よりも凹部と凸部の幅が狭い複数の第2の凹凸構造とを同時に形成するものであることを特徴とする微細凹凸構造の形成装置。
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