JP2021179983A - 生育状態予測方法及び生育状態予測プログラム、並びに情報処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜の生育状態を精度よく予測する。【解決手段】ステージ判定部は、定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜が、栽培期間における複数のステージのいずれのステージに属しているかを判定し、予測モデルのパラメータを判定したステージに基づいて決定する。そして、予測部は、予測モデルを用いて、予測対象の野菜の生育状態を予測する。【選択図】図4
Description
本発明は、生育状態予測方法及び生育状態予測プログラム、並びに情報処理装置に関する。
加工・業務用としての需要が伸びている葉ネギなどの葉野菜、キャベツやレタスなどの結球野菜、ブロッコリーなどの花野菜などは、露地で栽培されるため、気象の影響を受けやすい。このため、これらの野菜を扱う中間事業者は、気象変化による出荷量の過不足に対し、複数産地と契約して出荷調整を行うことで実需者への定時・定量供給を図っている。
しかし、各産地における生産情報は、数日前にならないと明らかにならないことが多い。例えば、葉ネギの栽培では、一般に苗を定植して栽培する定植栽培に加え、収穫適期に達した株の地上部のみを刈り取って収穫し、残った株元から再生したものを再度収穫する再生栽培が行われており、栽培が複雑化している。このため、圃場が多数に及ぶ大規模経営では、経営全体として出荷状況を的確に見込むことが難しくなっている。
中間事業者は、実際の出荷量が契約量に満たなければ不足分を調達せざるを得ない。また、産地経営者は、実際の出荷量が契約量を大幅に上回ると圃場廃棄せざるを得ない。
「九条系葉ネギの生育モデルの開発(第1報) 葉ネギ群落の日射利用効率推定による生育予測」,長澤一寿、佐藤文生、菅原幸治、逸見幸俊、加茂亮、岡田邦彦,園芸学研究 17(別1) 160.2017.
「九条系葉ネギの生育モデルの開発(第2報) 異なる作期における葉ネギ群落の葉面積、気温および日射量の関係解析」,長澤一寿、佐藤文生、菅原幸治、逸見幸俊、加茂亮、岡田邦彦,園芸学研究 17(別2) 224.2017.
上述したような状況に対し、収穫時期や収穫量を2週間〜1か月前に予測することができれば、中間事業者や産地経営者において適切な対策(新たな調達先や出荷先の確保など)を講じることができるようになる。したがって、精度よく野菜の生育状態を予測することが可能な技術の出現が望まれている。
そこで、本発明は、定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜の生育状態を精度よく予測することが可能な生育状態予測方法及び生育状態予測プログラム、並びに情報処理装置を提供することを目的とする。
本発明の生育状態予測方法は、定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜の生育状態を予測する生育状態予測方法であって、予測対象の野菜が、栽培期間に含まれる複数のステージのいずれに属しているかを判定し、気温と日射量とに基づいて前記予測対象の野菜の生育状態を予測するモデルのパラメータを、判定した前記ステージに基づいて決定し、決定した前記パラメータが設定された前記モデルを用いて、前記予測対象の野菜の生育状態を予測する、処理をコンピュータが実行する生育状態予測方法である。
定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜の生育状態を精度よく予測することができる。
以下、一実施形態に係る葉ネギの生育状態予測方法について、詳細に説明する。図1は、葉ネギの1つの圃場での栽培体系を模式的に示す図である。葉ネギは、図1に示すように、セルトレイ等に播種した後、育苗を行い、育苗後に圃場に定植する。そして、2〜3か月かけて定植栽培を行い、株の新鮮重が所定の重さになった段階で収穫する。また、収穫の際に、根元(ひこばえ)を残した状態で葉ネギを刈り取る場合は、残された株元から再生する株を1〜2か月かけて栽培する再生栽培が行われる。
図2(a)には、葉ネギの生育状態を予測する情報処理装置としての端末70のハードウェア構成が示されている。端末70は、図2(a)に示すように、CPU(Central Processing Unit)190、ROM(Read Only Memory)192、RAM(Random Access Memory)194、記憶部(ここではHDD(Hard Disk Drive))196、ネットワークインタフェース197、表示部193、入力部195、及び可搬型記憶媒体191の読み取りが可能な可搬型記憶媒体用ドライブ199等を備えている。これら端末70の構成各部は、バス198に接続されている。表示部193は、液晶ディスプレイ等を含み、入力部195は、キーボード、マウス、タッチパネル等を含む。端末70では、ROM192あるいはHDD196に格納されているプログラム(生育状態予測プログラムを含む)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ199が可搬型記憶媒体191から読み取ったプログラム(生育状態予測プログラムを含む)をCPU190が実行することにより、図2(b)に示す各部の機能が実現される。
図2(b)には、端末70の機能ブロック図が示されている。端末70では、CPU190がプログラムを実行することにより、図2(b)に示すステージ判定部20、予測部22、表示制御部24、としての機能が実現されている。なお、各部20、22、24の詳細については後述する。また、図2(b)に示されている予測DB30の詳細についても後述する。
図3には、本実施形態において葉ネギの生育状態予測に用いられる生育モデルのベースとなった生育モデルが示されている。図3の生育モデルは、物質生産モデルを基本としており、日射受光による葉での光合成による乾物生産を基点として、作物が複利的に拡大成長を繰り返すモデルとなっている。図3の生育モデルを用いて作物の当日(予測する1日)の新鮮重(g/株)を予測する際には、葉面積(m2/株)と当日の日積算日射量(MJ/m2)に基づいて、日積算日射遮蔽量(MJ/株)を算出し、算出した日積算日射遮蔽量(MJ/株)から、当日の乾物生産量(g/株)を算出する。そして、算出した当日の乾物生産量(g/株)と、前日の乾物重(g/株)との和を当日の乾物重(g/株)とし、当日の乾物重(g/株)と予め定められている乾物率とから、当日の新鮮重を算出する。また、当日の乾物重からは、翌日の葉面積を算出する。算出した葉面積は、翌日の新鮮重を予測する際に用いることができる。
本発明者は、図3の生育モデルをベースとして、野菜(葉ネギなど)の生育モデルを作成した。図4には、本発明者が作成した生育モデルが示されている。図4に示す葉ネギの生育モデルは、後述する作期移動試験の調査を通じて、葉ネギの物質生産特性の解析を行った結果得られた知見に基づいて開発したものである。
以下、図4の生育モデルの概要について説明する。なお、図4の生育モデルは、図2(b)の予測部22が保持しており、予測部22は、当該生育モデルに基づいて葉ネギの生育状態を予測する。
予測部22は、図4の生育モデルを用いてある日(予測する日)における生育状態として新鮮重を算出する場合、まず、ステップS10において、葉面積(m2/株)と、環境条件である予測する日の日積算日射量(MJ/m2)と、外部入力条件である植栽密度(株/m2)と、に基づいて、日積算日射遮蔽量(MJ/株)を算出する。なお、定植直後である場合には、葉面積の初期値をユーザが手入力してもよいし、葉面積の初期値として予め定められている値を用いることとしてもよい。なお、ユーザは、葉面積の初期値をユーザが手入力する代わりに、茎葉部新鮮重を手入力してもよい。この場合、予測部22は、手入力された茎葉部新鮮重に所定の係数を掛けることで、葉面積を算出する。
次いで、ステップS12では、予測部22は、算出した日積算日射遮蔽量(MJ/株)から、予測する日の日乾物生産量(g/株)を算出する。この日乾物生産量の算出においては、日射利用効率(g/MJ)を用いる。
次いで、ステップS14では、予測部22は、前日までの乾物重に、ステップS12で算出した日乾物生産量(g/株)を加算することで、株の乾物重(g/株)を算出する。
次いで、ステップS16では、予測部22は、株の乾物重(g/株)と、葉身部乾物分配率(%)とを用いて、葉身部乾物重(g/株)と、葉鞘部乾物重(g/株)を算出する。
次いで、ステップS18では、予測部22は、ステップS16で算出した葉身部乾物重(g/株)と葉身部乾物率(%)に基づいて、葉身部新鮮重(g/株)を算出する。また、ステップS20では、予測部22は、ステップS16で算出した葉鞘部乾物重(g/株)と葉鞘部乾物率(%)に基づいて、葉鞘部新鮮重(g/株)を算出する。
そして、ステップS22では、予測部22は、葉身部新鮮重(g/株)と葉鞘部新鮮重(g/株)の和を求め、株の新鮮重(g/株)とする。
また、ステップS24では、予測部22は、葉面積/葉身部新鮮重の比に対して、葉身部新鮮重(g/株)を掛けることにより、葉面積(m2/株)を更新する。
その後は、図4の処理を繰り返すことで、所定期間における葉ネギの生育状態の変化(新鮮重の変化)を予測することができる。
ここで、本発明者が後述する作期移動試験の結果を分析したところ、葉ネギには、図5に示すような生育段階(ステージ)があることが分かった。より具体的には、葉ネギの栽培には、定植栽培時期(第1期間)と、収穫(刈り取り)後の再生栽培時期(第2期間)があるが、定植栽培時期は、「生育初期(活着期)」ステージと、「生育盛期」ステージとに分けられ、再生栽培時期は、「内部転流期」ステージと、「生育初期(移行期)」ステージと、「生育盛期」ステージとに分けられることが分かった。
また、本発明者は、作期移動試験の結果から、葉ネギの生育状態を予測する際に、葉ネギが属するステージに応じて図4の生育モデルで用いるパラメータを異ならせることで、葉ネギが属するステージにかかわらず生育状態を精度よく予測できるという知見を得た。なお、パラメータの組み合わせについては、図6に示すようにステージごとに予め用意している。また、各パラメータは、後述する作期移動試験の結果に基づいて品種・品目ごとに設定する。
(作期移動試験について)
作期移動試験としては、図7(a)に示す定植日、刈取再生開始日において、定植栽培及び再生栽培を実施した。栽培期間中においては、図7(b)の左図に示すような複数株を調査対象として数回採取し、図7(b)の中央の図に示すような各株について、草丈、葉面積、茎葉部新鮮重、茎葉部乾物重、画像(株の投影画像)を取得した。また、作期移動試験の生育調査では、図7(b)の右図に示すように、1株を1本単位に分け、その1本ずつを、光合成をおこなう葉身部と、栄養分をため込む葉鞘部とに分けた。
作期移動試験としては、図7(a)に示す定植日、刈取再生開始日において、定植栽培及び再生栽培を実施した。栽培期間中においては、図7(b)の左図に示すような複数株を調査対象として数回採取し、図7(b)の中央の図に示すような各株について、草丈、葉面積、茎葉部新鮮重、茎葉部乾物重、画像(株の投影画像)を取得した。また、作期移動試験の生育調査では、図7(b)の右図に示すように、1株を1本単位に分け、その1本ずつを、光合成をおこなう葉身部と、栄養分をため込む葉鞘部とに分けた。
(葉ネギの日射遮蔽特性の解析)
まず、本発明者は、各生育段階で一定面積に降り注ぐ太陽光の何割を受光するのか、という群落日射遮蔽率を明らかにする調査を実施した。
まず、本発明者は、各生育段階で一定面積に降り注ぐ太陽光の何割を受光するのか、という群落日射遮蔽率を明らかにする調査を実施した。
群落日射遮蔽量の計測については、定植される葉ネギの1列分を1単位として、群落外の日射量のうち、群落内地表面に届く日射量の割合を、各部分毎に計測し、その平均値として求めた。なお、日射量の測定には、簡易積算日射量測定フィルム「オプトリーフ(登録商標)」のスタンダードタイプを使用した。
本発明者は、葉面積指数と日射遮蔽率の関係をプロットすることにより、図8に示すような群落日射遮蔽率特性を見出すことができた。この特性は、定植栽培と、再生栽培において共通の特性であると考えられる。
<定植栽培の解析>
((1)定植栽培における生育特性とモデル化)
図9(a)は、それぞれの作期における定植栽培時の株の生育(茎葉部乾物重(g/株)の変化)を示すグラフである。図9(a)からは、作期の違いによって茎葉部乾物重の増加速度が異なることが分かった。また、いずれの作期も生育初期の茎葉部乾物重の増加が緩慢な生育初期と、その後に茎葉部乾物重の増加が旺盛となる生育盛期があることが分かった。
((1)定植栽培における生育特性とモデル化)
図9(a)は、それぞれの作期における定植栽培時の株の生育(茎葉部乾物重(g/株)の変化)を示すグラフである。図9(a)からは、作期の違いによって茎葉部乾物重の増加速度が異なることが分かった。また、いずれの作期も生育初期の茎葉部乾物重の増加が緩慢な生育初期と、その後に茎葉部乾物重の増加が旺盛となる生育盛期があることが分かった。
((2)定植栽培の日射受光量あたりの乾物増加量(日射利用効率)について)
図9(b)には、定植栽培時における茎葉部乾物重と積算日射受光量との関係が示されている。いずれの作期においても茎葉部乾物重と積算日射受光量との間には直線関係が見られるものの、傾き(日射利用効率)は作期によって異なることが分かった。すなわち、図9(b)からは、日射利用効率は気温の影響を受けている可能性が高いことが示唆されている。
図9(b)には、定植栽培時における茎葉部乾物重と積算日射受光量との関係が示されている。いずれの作期においても茎葉部乾物重と積算日射受光量との間には直線関係が見られるものの、傾き(日射利用効率)は作期によって異なることが分かった。すなわち、図9(b)からは、日射利用効率は気温の影響を受けている可能性が高いことが示唆されている。
((3)日射利用効率と気温との関係)
図9(a)、図9(b)の結果から、日射利用効率に及ぼす気温の影響を解析するため、各作期の日射利用効率と気温との関係性を確認した。この結果、図10に示すように、生育初期と生育盛期では異なる曲線の関係性が認められた。したがって、日射利用効率には、生育初期、生育盛期のそれぞれに即した気温の影響を盛り込むこととし、図10の破線で示した曲線を生育初期の日射利用効率として用いるパラメータAとし、実線で示した曲線を生育盛期の日射利用効率として用いるパラメータBとした(図6参照)。
図9(a)、図9(b)の結果から、日射利用効率に及ぼす気温の影響を解析するため、各作期の日射利用効率と気温との関係性を確認した。この結果、図10に示すように、生育初期と生育盛期では異なる曲線の関係性が認められた。したがって、日射利用効率には、生育初期、生育盛期のそれぞれに即した気温の影響を盛り込むこととし、図10の破線で示した曲線を生育初期の日射利用効率として用いるパラメータAとし、実線で示した曲線を生育盛期の日射利用効率として用いるパラメータBとした(図6参照)。
((4)定植栽培における葉身部への乾物分配率の特徴)
図11には、茎葉部乾物重(g/株)と、葉身部への乾物分配率(%)との関係をプロットした結果が示されている。葉身部への乾物分配率は、生育初期と生育盛期で異なり、生育盛期は作期による違いが明瞭に認められた。
図11には、茎葉部乾物重(g/株)と、葉身部への乾物分配率(%)との関係をプロットした結果が示されている。葉身部への乾物分配率は、生育初期と生育盛期で異なり、生育盛期は作期による違いが明瞭に認められた。
葉身部への乾物分配率と気温との関係性を見たところ、図12に示すように、乾物分配率は気温との間に、生育初期と生育盛期で異なる関係性が認められた。そこで、生育初期、生育盛期とも葉身部への乾物分配率にはそれぞれ別個の式で気温の影響を盛り込むこととした。なお、図12の実線で示した曲線を、定植栽培の生育初期における葉身部への乾物分配率として用いるパラメータCとし、破線で示した曲線を、定植栽培の生育盛期における葉身部への乾物分配率として用いるパラメータDとした(図6参照)。
((5)定植栽培における葉身部乾物率の特徴)
図13には、茎葉部乾物重(g/株)と、葉身部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。葉身部乾物率についても、生育初期と生育盛期で異なり、生育盛期は作期による違いが明瞭に認められた。生育盛期について気温との関係性を見たところ、図14に示すように、葉身部乾物率は気温との間に、生育初期と生育盛期で異なる関係性が認められた。そこで、生育初期、生育盛期とも葉身部乾物率にはそれぞれ別個の式で気温の影響を盛り込むこととした。なお、図14の破線で示した曲線を、定植栽培の生育初期における葉身部乾物率として用いるパラメータEとし、実線で示した曲線を、定植栽培の生育盛期における葉身部乾物率として用いるパラメータFとした(図6参照)。
図13には、茎葉部乾物重(g/株)と、葉身部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。葉身部乾物率についても、生育初期と生育盛期で異なり、生育盛期は作期による違いが明瞭に認められた。生育盛期について気温との関係性を見たところ、図14に示すように、葉身部乾物率は気温との間に、生育初期と生育盛期で異なる関係性が認められた。そこで、生育初期、生育盛期とも葉身部乾物率にはそれぞれ別個の式で気温の影響を盛り込むこととした。なお、図14の破線で示した曲線を、定植栽培の生育初期における葉身部乾物率として用いるパラメータEとし、実線で示した曲線を、定植栽培の生育盛期における葉身部乾物率として用いるパラメータFとした(図6参照)。
((6)定植栽培における葉鞘部乾物率の特徴)
図15には、茎葉部乾物重(g/株)と、葉鞘部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。葉鞘部乾物率についても、生育初期と生育盛期で異なり、生育盛期は作期による違いが明瞭に認められた。生育初期と生育盛期それぞれについて気温との関係性を見たところ、図16に示すように、生育初期と生育盛期で異なる関係性が認められた。そこで、生育初期、生育盛期とも葉鞘部乾物率にはそれぞれ別個の式で気温の影響を盛り込むこととした。なお、図16の破線で示した曲線を、定植栽培の生育初期における葉鞘部乾物率として用いるパラメータGとし、実線で示した曲線を、定植栽培の生育盛期における葉鞘部乾物率として用いるパラメータHとした(図6参照)。
図15には、茎葉部乾物重(g/株)と、葉鞘部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。葉鞘部乾物率についても、生育初期と生育盛期で異なり、生育盛期は作期による違いが明瞭に認められた。生育初期と生育盛期それぞれについて気温との関係性を見たところ、図16に示すように、生育初期と生育盛期で異なる関係性が認められた。そこで、生育初期、生育盛期とも葉鞘部乾物率にはそれぞれ別個の式で気温の影響を盛り込むこととした。なお、図16の破線で示した曲線を、定植栽培の生育初期における葉鞘部乾物率として用いるパラメータGとし、実線で示した曲線を、定植栽培の生育盛期における葉鞘部乾物率として用いるパラメータHとした(図6参照)。
((7)葉身部新鮮重から葉面積への変換)
図4の生育モデルを繰り返し用いて各日の生育状態を順次予測するためには、乾物生産で増加した葉身部の新鮮重から葉面積を導き出す必要がある(図4のステップS26)。そこで、図17に示すように、茎葉部新鮮重に対する葉身部の葉面積/新鮮重の比の推移をプロットしたところ、定植栽培では一定の傾向があることが分かった。なお、「葉身部の葉面積/新鮮重の比」は、葉身部の新鮮重から葉身部の葉面積を算出する際に用いるパラメータである。
図4の生育モデルを繰り返し用いて各日の生育状態を順次予測するためには、乾物生産で増加した葉身部の新鮮重から葉面積を導き出す必要がある(図4のステップS26)。そこで、図17に示すように、茎葉部新鮮重に対する葉身部の葉面積/新鮮重の比の推移をプロットしたところ、定植栽培では一定の傾向があることが分かった。なお、「葉身部の葉面積/新鮮重の比」は、葉身部の新鮮重から葉身部の葉面積を算出する際に用いるパラメータである。
したがって、本実施形態では、定植栽培において、葉身部の新鮮重に基づいて葉身部の葉面積を算出する際には、気温の要素は盛り込む必要がないと判断した。
なお、図17に示す関係を、葉身部の新鮮重から葉身部の葉面積を算出するときに用いるパラメータIとした(図6参照)。
<再生栽培の解析>
((1)再生栽培の生育特性)
図18は、それぞれの作期における再生栽培時の株の生育(茎葉部乾物重(g/株)の変化)を示すグラフである。再生栽培においても、生育初期については定植栽培と同様に緩慢である。
((1)再生栽培の生育特性)
図18は、それぞれの作期における再生栽培時の株の生育(茎葉部乾物重(g/株)の変化)を示すグラフである。再生栽培においても、生育初期については定植栽培と同様に緩慢である。
図19(a)には、それぞれの作期における再生栽培時の葉身部乾物重の変化が示され、図19(b)には、それぞれの作期における再生栽培時の葉鞘部乾物重の変化が示されている。これら図19(a)、図19(b)からは、図9(a)とは異なる傾向が見られる。
すなわち、収穫直後の段階では葉身部は無いため、刈り取り後に残された葉鞘基部(ひこばえ)の栄養分を利用して株が成長することになる。この葉身部が葉鞘部の栄養分のみを利用している期間においては、図18において乾物重が増加していないことが分かる。その一方で、葉鞘部乾物重については、収穫直後の段階で、一時的に減少していることが分かる。この葉鞘部乾物重が減少し、増加に転じるまでの間を、本実施形態では、「内部転流期」と定義した(図18、図19(b)参照)。
((2)再生栽培における内部転流期の生育特性)
図19(b)から、葉鞘部乾物重が増加に転じる時期は、作期によって異なることが分かった。このとき、茎葉部の大部分は光が当たりにくい地際より下にあることから、葉鞘部乾物重が増加に転じる時期が変化するのは気温が原因であると推測し、図20に示すように、刈取後0日から葉鞘部乾物重が増加に転じるまでの日数を縦軸に、刈り取り時の一定期間平均気温を横軸にして関係性を確認した。この関係性に基づいて、内部転流期から生育初期に移行する期間を定義した。なお、この内部転流期の日射利用係数をパラメータJとした(図6参照)。
図19(b)から、葉鞘部乾物重が増加に転じる時期は、作期によって異なることが分かった。このとき、茎葉部の大部分は光が当たりにくい地際より下にあることから、葉鞘部乾物重が増加に転じる時期が変化するのは気温が原因であると推測し、図20に示すように、刈取後0日から葉鞘部乾物重が増加に転じるまでの日数を縦軸に、刈り取り時の一定期間平均気温を横軸にして関係性を確認した。この関係性に基づいて、内部転流期から生育初期に移行する期間を定義した。なお、この内部転流期の日射利用係数をパラメータJとした(図6参照)。
((3)再生栽培の日射受光量あたりの乾物増加量(日射利用効率))
図21(a)には、積算日射受光量と茎葉部乾物重との関係をプロットしたグラフが示されている。再生栽培においては、生育初期及び生育盛期にかかわらず、いずれの作期についても直線関係が確認できるが、傾きは作期によって異なることが分かる。すなわち、日射利用効率は気温の影響を受けている可能性が示唆される。
図21(a)には、積算日射受光量と茎葉部乾物重との関係をプロットしたグラフが示されている。再生栽培においては、生育初期及び生育盛期にかかわらず、いずれの作期についても直線関係が確認できるが、傾きは作期によって異なることが分かる。すなわち、日射利用効率は気温の影響を受けている可能性が示唆される。
((4)日射利用効率と気温との関係)
上述したように、日射利用効率は気温の影響を受けている可能性があるため、図21(b)に示すように、各作期の日射利用効率と気温との関係性を確認した。再生栽培においては、図21(b)の関係性から、日射利用効率を求めることとした。なお、日射利用効率については、前述のように再生栽培の生育初期と生育盛期の間に差異は無いため、生育初期と生育盛期のいずれにおいても、図21(b)の関係性を用いることとした。なお、図6においては、図21(b)に示す二次曲線を、再生栽培の生育初期と生育盛期における日射利用効率として用いるパラメータKとして示している。
上述したように、日射利用効率は気温の影響を受けている可能性があるため、図21(b)に示すように、各作期の日射利用効率と気温との関係性を確認した。再生栽培においては、図21(b)の関係性から、日射利用効率を求めることとした。なお、日射利用効率については、前述のように再生栽培の生育初期と生育盛期の間に差異は無いため、生育初期と生育盛期のいずれにおいても、図21(b)の関係性を用いることとした。なお、図6においては、図21(b)に示す二次曲線を、再生栽培の生育初期と生育盛期における日射利用効率として用いるパラメータKとして示している。
((5)再生栽培における生育初期の定義)
図22には、再生栽培における茎葉部乾物重(g/株)と、葉身部への乾物分配率(%)との関係が示されている。再生栽培における乾物重の増加に伴う葉身部への乾物分配率の推移をみると、乾物重が少ない時期は分配率が一貫して上昇する傾向があることが分かる。この傾向は、刈取後に残った葉鞘部からの転流による葉身部の形成(内部転流期)と、形成された葉身部の光合成産物による葉身部の形成で、葉ネギの本来の姿を反映した乾物分配率に戻る過程を示していると考えられる。
図22には、再生栽培における茎葉部乾物重(g/株)と、葉身部への乾物分配率(%)との関係が示されている。再生栽培における乾物重の増加に伴う葉身部への乾物分配率の推移をみると、乾物重が少ない時期は分配率が一貫して上昇する傾向があることが分かる。この傾向は、刈取後に残った葉鞘部からの転流による葉身部の形成(内部転流期)と、形成された葉身部の光合成産物による葉身部の形成で、葉ネギの本来の姿を反映した乾物分配率に戻る過程を示していると考えられる。
内部転流期終了後から葉身部への乾物分配率の上昇が収まるまでの期間を「生育初期」と定義することとした。なお、再生栽培における生育初期には、内部転流の作用も依然大きいと考えられるため、生育盛期と分けて扱うものとする。
((6)再生栽培における葉身部への乾物分配率の気温特性)
図23には、生育初期(内部転流期を含む)と生育盛期における葉身部への乾物分配率(%)と気温との関係が示されている。
図23には、生育初期(内部転流期を含む)と生育盛期における葉身部への乾物分配率(%)と気温との関係が示されている。
再生栽培の生育初期(及び内部転流期)と生育盛期に関しては、図23に示すように、乾物分配率と気温との関係を、それぞれ異なる曲線として表すことができる。
なお、図23に示す破線の曲線を、再生栽培の内部転流期と生育初期における葉身部への乾物分配率として用いるパラメータLとし、実線の曲線を、再生栽培の生育盛期における葉身部への乾物分配率として用いるパラメータMとした(図6参照)。
((7)再生栽培における葉身部乾物率の気温特性)
図24には、再生栽培における茎葉部乾物重(g/株)と、葉身部乾物率(%)との関係が示されている。これらのデータと気温との関係を解析したところ、図25に示すような生育ステージで異なる葉身部乾物率と気温との関係が示された。
図24には、再生栽培における茎葉部乾物重(g/株)と、葉身部乾物率(%)との関係が示されている。これらのデータと気温との関係を解析したところ、図25に示すような生育ステージで異なる葉身部乾物率と気温との関係が示された。
そこで、図25に示す破線の曲線を、再生栽培の内部転流期及び生育初期における葉身部乾物率として用いるパラメータNとし、実線の曲線を、再生栽培の生育盛期における葉身部乾物率として用いるパラメータOとした(図6参照)。
((8)再生栽培における葉鞘部乾物率の気温特性)
図26には、再生栽培における茎葉部乾物重(g/株)と、葉鞘部乾物率(%)との関係が示されている。これらのデータと気温との関係を解析したところ、図27に示すような生育ステージで異なる葉鞘部乾物率と気温との関係が示された。
図26には、再生栽培における茎葉部乾物重(g/株)と、葉鞘部乾物率(%)との関係が示されている。これらのデータと気温との関係を解析したところ、図27に示すような生育ステージで異なる葉鞘部乾物率と気温との関係が示された。
そこで、図27に示す破線の曲線を、再生栽培の内部転流期及び生育初期における葉鞘部乾物率として用いるパラメータPとし、実線の曲線を、再生栽培の生育盛期における葉身部乾物率として用いるパラメータQとした(図6参照)。
((9)葉身部の新鮮重から葉身部の葉面積への変換)
再生栽培においては、生育初期は生育盛期に比べて葉身部が肉厚であることから、葉身部の新鮮重(gFW/株)と、葉身部の葉面積/新鮮重の比との関係については、生育初期(及び内部転流期)と生育盛期とを分けて考える必要がある。図28には、生育初期(及び内部転流期)および生育盛期における、葉身部の新鮮重に対する葉身部の葉面積/新鮮重の比が示されている。この結果から、再生栽培の生育初期(及び内部転流期)には、「葉身部の葉面積/新鮮重の比」として、それぞれ異なる関数を用いることとした。
再生栽培においては、生育初期は生育盛期に比べて葉身部が肉厚であることから、葉身部の新鮮重(gFW/株)と、葉身部の葉面積/新鮮重の比との関係については、生育初期(及び内部転流期)と生育盛期とを分けて考える必要がある。図28には、生育初期(及び内部転流期)および生育盛期における、葉身部の新鮮重に対する葉身部の葉面積/新鮮重の比が示されている。この結果から、再生栽培の生育初期(及び内部転流期)には、「葉身部の葉面積/新鮮重の比」として、それぞれ異なる関数を用いることとした。
なお、図28において破線で示す関係を、再生栽培の生育初期(及び内部転流期)において葉身部の新鮮重から葉身部の葉面積を算出するときに用いるパラメータRとし、実線で示す関係を、再生栽培の生育盛期において葉身部の新鮮重から葉身部の葉面積を算出するときに用いるパラメータSとした(図6参照)。
(端末70の処理について)
本実施形態では、端末70は、各日における葉ネギの生育状態を図4の生育モデルを用いて予測するが、各日における葉ネギがどの生育ステージにあるかに応じて、図6に示すようにパラメータを変更することとしている。具体的には、端末70は、図29に示すフローチャートに沿って、各日における葉ネギの生育状態を予測する。
本実施形態では、端末70は、各日における葉ネギの生育状態を図4の生育モデルを用いて予測するが、各日における葉ネギがどの生育ステージにあるかに応じて、図6に示すようにパラメータを変更することとしている。具体的には、端末70は、図29に示すフローチャートに沿って、各日における葉ネギの生育状態を予測する。
図29の処理の前提として、端末70のユーザは、葉ネギの植栽密度や定植日などの諸条件を入力し、予測開始指示を入力する。なお、端末70では、図4の生育モデルを用いて1日ずつ生育状態を予測し(S118)、予測結果を表示部193上に表示する(S120)。そして、予め設定された全期間の予測が完了した段階で、処理を終了する。
図29の処理では、まず、ステップS100において、ステージ判定部20が、刈取スイッチがONになったか否かを判断する。刈取スイッチは、ユーザが刈取スイッチを押した場合にONになる。ユーザは、例えば、表示部193に表示される葉ネギの生育状態を見て、刈り取りのタイミングになったと判断した場合に、刈取スイッチを押す。なお、これに限らず、葉ネギの新鮮重が所定値になる度に刈取スイッチが自動的に押されるようにしてもよい。なお、最初の段階では刈取スイッチはOFFになっているため、ステップS102に移行する。
ステップS102に移行すると、ステージ判定部20は、乾物重が定植栽培の生育ステージを分ける所定重量以上か否かを判断する。この判断が否定された場合、すなわち、乾物重が所定重量未満である場合には、ステップS104に移行する。
ステップS104に移行すると、ステージ判定部20は、葉ネギの生育ステージが定植栽培の生育初期ステージであると判定し、パラメータを設定する。具体的には、ステージ判定部20は、図6の表を参照して、用いるパラメータを設定する。その後は、ステップS118に移行する。
一方、ステップS102の判断が肯定された場合、すなわち、乾物重が所定重量以上であった場合には、ステップS106に移行し、ステージ判定部20は、定植栽培の生育盛期と判定して、図6に基づいて、パラメータを設定する。その後は、ステップS118に移行する。
これに対し、ステップS100の判断が肯定された場合には、ステップS108に移行し、ステージ判定部20は、乾物重が上昇傾向か否かを判断する。このステップS108の判断が否定された場合には、ステップS110に移行し、ステージ判定部20は、再生栽培の内部転流期と判定して、図6に基づいて、パラメータを設定する。その後は、ステップS118に移行する。一方、ステップS108の判断が肯定された場合には、ステップS112に移行する。
ステップS112に移行すると、ステージ判定部20は、乾物重が再生栽培の生育ステージを分ける所定重量以上か否かを判断する。このステップS112の判断が否定された場合には、ステップS114に移行し、ステージ判定部20は、再生栽培の生育初期と判定して、図6に基づいてパラメータを設定する。一方、ステップS112の判断が肯定された場合には、ステップS116に移行し、ステージ判定部20は、再生栽培の生育盛期と判定して、図6に基づいてパラメータを設定する。ステップS114又はステップS116の処理の後は、ステップS118に移行する。
ステップS104、S106、S110、S114、S116のいずれかが実行されて、ステップS118に移行すると、予測部22は、設定されたパラメータを用いて、予測モデルから一日の生育状態を予測し、予測DB30に格納する。予測DB30には、各日における葉ネギの生育状態(図4の作物状態変数)が格納される。なお、予測部22は、環境条件(日平均気温や日積算日射量)として、過去データから予測される日平均気温や日積算日射量や、気象庁等が予測した日平均気温や日積算日射量を用いることができる。
次いで、ステップS120では、表示制御部24が、予測した葉ネギの生育状態を表示する。例えば、表示制御部24は、何日目において新鮮重が何gになるという情報を表示部193上に表示する。なお、ユーザは、表示部193を参照して、刈取時期になったと判断した場合には、刈取スイッチを押すことができる。
次いで、ステップS122では、予測部22が、終了か否かを判断する。例えば、予め設定された全期間の予測が終了した場合には、ステップS122の判断は肯定され、図29の全処理が終了する。一方、ステップS122の判断が否定された場合には、ステップS100に戻る。ステップS100に戻った場合には、上述した処理が繰り返し実行される。そして、ステップS122の判断が肯定されると、図29の全処理が終了する。
図30(a)には、異なる3地域、計16箇所の圃場について、定植日、或いは、調査1か月前の生育量を初期値とし、各地域の日々の日射量、気温を入力して、サンプリング時の重量に達するまでの栽培期間を本実施形態の方法により予測した結果(予測値)が、実測値と対応付けて示されている。また、図30(b)には、異なる3地域、計16箇所の圃場について、定植日、或いは、調査1か月前の生育量を初期値とし、各地域の日々の日射量、気温を入力して、サンプリングまでの期間栽培したときの株重量を予測した結果(予測値)が、実測値と対応付けて示されている。
本実施形態のようにして葉ネギの生育状態を予測することで、図30(a)、図30(b)に示すように、生育状態を精度よく予想することができることが分かる。
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、ステージ判定部20により、葉ネギが属するステージを判定する判定部、及び生育状態を予測する予測モデルのパラメータをステージに基づいて決定する決定部としての機能が実現されている。
図31(a)〜図31(d)には、異なる2地域、計4箇所の圃場について、定植日を初期値とし、各地域の日々の日射量、気温を入力して、定植日からの経過日数ごとに本実施形態の方法により葉ネギの株重量を予測した結果(予測値)と、実測値とが示されている。より具体的には、図31(a)及び図31(b)は、地域1での異なる2箇所の圃場についての予測値と実測値とを示し、図31(c)及び図31(d)は、地域2での異なる2箇所の圃場についての予測値と実測値とを示している。
本実施形態のようにして葉ネギの生育状態を予測することで、図31(a)〜図31(d)に示すように、定植栽培時期における生育状態を精度よく予想することができることが分かる。
また、図32(a)及び図32(b)には、異なる2地域の圃場について、刈取日を初期値とし、各地域の日々の日射量、気温を入力して、刈取日からの経過日数ごとに本実施形態の方法により葉ネギの株重量を予測した結果(予測値)と、実測値とが示されている。
本実施形態のようにして葉ネギの生育状態を予測することで、図32(a)及び図32(b)に示すように、再生栽培時期における生育状態を精度よく予想することができることが分かる。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、ステージ判定部20が、定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜(葉ネギなど)が、栽培期間に含まれる複数のステージのいずれのステージに属しているかを判定し、図4の予測モデルのパラメータをステージに基づいて決定する(S104、S106、S110、S114、S116)。そして、予測部22は、予測モデルを用いて、葉ネギの生育状態を予測する(S118)。これにより、本実施形態では、予測対象の葉ネギがどのステージに属しているかに応じて、予測モデルのパラメータを異ならせるため、葉ネギの生育状態を精度よく予測することができる。これにより、収穫時期や収穫量を事前に(例えば2週間〜1か月前に)予測することができるようになるため、中間事業者や産地経営者は予測結果に基づいて適切な対策(新たな調達先や出荷先の確保など)を講じることができるようになる。
また、本実施形態では、ステージ判定部20は、刈取スイッチを参照して、刈取スイッチがOFFであれば(S100:否定)、葉ネギの乾物重に基づいて(S102)、定植栽培の生育初期、又は定植栽培の生育盛期のいずれかに属すると判定する(S104、S106)。一方、ステージ判定部20は、刈取スイッチがONであれば(S100:肯定)、葉ネギの乾物重に基づいて(S108、S112)、再生栽培の内部転流期、生育初期、及び生育盛期のいずれかに属すると判定する(S110、S114、S116)。このように刈取スイッチと乾物重とに基づいてステージを判定することで、葉ネギの実体を加味して、葉ネギが属するステージを精度よく判定することができる。
また、本実施形態では、パラメータA〜Sは、予め実施した栽培試験(作期移動試験)の結果に基づいて設定している。これにより、栽培様式や品種ごとにパラメータとして適切な関数等を設定することができる。
なお、上記実施形態では、予測対象の野菜が属するステージを乾物重に基づいて判定する場合について説明したが、これに限らず、定植日からの積算気温等に基づいて、ステージを判定することとしてもよい。
なお、上記実施形態では、予測対象の野菜が葉ネギである場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、予測対象の野菜は、定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能なその他の野菜(例えば、ニラ、ホウレンソウ、ベビーリーフ等)であってもよい。この場合、予測対象の野菜に合わせてパラメータを適宜変更する必要がある。
また、予測対象の野菜は、再生栽培はしないが定植栽培する野菜、例えば、キャベツ及びレタス、ハクサイなどの結球野菜や、ブロッコリー、カリフラワーなどの花野菜であってもよい。
<花野菜の場合>
まず、ブロッコリーなどの花野菜について説明する。
まず、ブロッコリーなどの花野菜について説明する。
(花野菜の生育モデル)
図33には、本発明者が作成した花野菜の生育モデルが示されている。
図33には、本発明者が作成した花野菜の生育モデルが示されている。
以下、図33の生育モデルの概要について説明する。なお、図33の生育モデルは、図2(b)の予測部22が保持しており、予測部22は、当該生育モデルに基づいて花野菜の生育状態を予測する。
予測部22は、図33の生育モデルを用いてある日(予測する日)における生育状態として新鮮重を算出する場合、まず、ステップS30において、葉面積(m2/株)と、環境条件である予測する日の日積算日射量(MJ/m2)と、外部入力条件である植栽密度(株/m2)と、に基づいて、日積算日射遮蔽量(MJ/株)を算出する。なお、定植直後である場合には、葉面積の初期値をユーザが手入力してもよいし、葉面積の初期値として予め定められている値を用いることとしてもよい。なお、ユーザは、葉面積の初期値をユーザが手入力する代わりに、外葉部新鮮重を手入力してもよい。この場合、予測部22は、手入力された外葉部新鮮重に所定の係数を掛けることで、葉面積を算出する。
次いで、ステップS32では、予測部22は、算出した日積算日射遮蔽量(MJ/株)から、予測する日の日乾物生産量(g/株)を算出する。この日乾物生産量の算出においては、日射利用効率(g/MJ)を用いる。
次いで、ステップS34では、予測部22は、前日までの乾物重に、ステップS32で算出した日乾物生産量(g/株)を加算することで、株の乾物重(g/株)を算出する。
次いで、ステップS36では、予測部22は、株の乾物重(g/株)と、花蕾部乾物分配率(%)とを用いて、外葉部乾物重(g/株)と、花蕾部乾物重(g/株)と、を算出する。
次いで、ステップS38では、予測部22は、ステップS36で算出した外葉部乾物重(g/株)と外葉部乾物率(%)に基づいて、外葉部新鮮重(g/株)を算出する。また、ステップS40では、予測部22は、ステップS36で算出した花蕾部乾物重(g/株)と花蕾部乾物率(%)に基づいて、花蕾部新鮮重(g/株)を算出する。
また、ステップS44では、予測部22は、外葉部葉面積/新鮮重の比に対して、外葉部新鮮重(g/株)を掛けることにより、葉面積(m2/株)を更新する。
その後は、図33の処理を繰り返すことで、所定期間における花野菜の生育状態の変化(新鮮重の変化)を予測することができる。
(花野菜の生育ステージ)
花野菜は、図34(a)に示すような生育ステージを有する。より具体的には、花野菜の生育ステージは、「生育初期(活着期)」ステージと、「外葉展開期」ステージと、「花蕾肥大期」ステージと、に分けられる。
花野菜は、図34(a)に示すような生育ステージを有する。より具体的には、花野菜の生育ステージは、「生育初期(活着期)」ステージと、「外葉展開期」ステージと、「花蕾肥大期」ステージと、に分けられる。
この場合、定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜と同様、図34(b)に示すように、各生育ステージで用いるパラメータとして異なるパラメータを設定することで、精度よく生育状態を予測することができる。各ステージで用いる各パラメータは、葉ネギの場合と同様、予め実施した栽培試験(作期移動試験)の結果に基づいて設定されている。なお、図34(b)の表において、生育初期及び外葉展開期には花蕾は存在しないため、花蕾部乾物率のパラメータを設定しないこととした。
(作期移動試験について)
花野菜の一例としてのブロッコリーの作期移動試験としては、図35(a)に示す定植日において、定植栽培を実施した。いずれの作でも異なる2パターンの栽植密度(密植、疎植)を設けて栽培し、同じ作期での光条件の影響についても検証した。
花野菜の一例としてのブロッコリーの作期移動試験としては、図35(a)に示す定植日において、定植栽培を実施した。いずれの作でも異なる2パターンの栽植密度(密植、疎植)を設けて栽培し、同じ作期での光条件の影響についても検証した。
栽培期間中においては、複数株を調査対象として数回採取した。図35(b)に示す写真のように、採取した株の地上部を、葉柄を含む展開葉(ここでは外葉部と定義)と、主茎を含む花蕾(ここでは花蕾部と定義)に分け、それぞれの新鮮重と乾物重とを取得した。
((1)生育特性とモデル化)
図36(a)は、それぞれの作期における株の生育(地上部乾物重(g/株)の変化)を示すグラフである。図36(a)からは、作期の違いによって地上部乾物重の増加速度が異なることが分かった。
図36(a)は、それぞれの作期における株の生育(地上部乾物重(g/株)の変化)を示すグラフである。図36(a)からは、作期の違いによって地上部乾物重の増加速度が異なることが分かった。
((2)日射受光量あたりの乾物増加量(日射利用効率)について)
図36(b)には、地上部乾物重と積算日射受光量との関係が示されている。ブロッコリーの積算日射受光量は、葉ネギと同様の方法で群落日射遮蔽率曲線を作成し、日々の日射受光量を算出して推定した。
図36(b)には、地上部乾物重と積算日射受光量との関係が示されている。ブロッコリーの積算日射受光量は、葉ネギと同様の方法で群落日射遮蔽率曲線を作成し、日々の日射受光量を算出して推定した。
地上部乾物重と積算日射受光量との間にはいずれの作期、栽植密度とも直線関係が見られる。傾き(日射利用効率)は、いずれの作期とも栽植密度に関わらずほぼ同様であったが、作期によって異なることがわかった。すなわち、図36(b)からは、日射利用効率は気温の影響を受けている可能性が高いことが示唆されている。
((3)日射利用効率と気温との関係)
図36(a)、図36(b)の結果から、日射利用効率に及ぼす気温の影響を解析するため、各作期の日射利用効率と気温との関係性を確認した。この結果、図37に示すように、生育初期、外葉展開期、及び花蕾肥大期では異なる曲線の関係性が認められた。したがって、日射利用効率には、生育初期、外葉展開期、及び花蕾肥大期のそれぞれに即した気温の影響を盛り込むこととし、図37の破線で示した曲線を生育初期の日射利用効率として用いるパラメータαとし、点線で示した曲線を外葉展開期の日射利用効率として用いるパラメータβとし、実線で示した曲線を花蕾肥大期の日射利用効率として用いるパラメータγとした(図34(b)参照)。
図36(a)、図36(b)の結果から、日射利用効率に及ぼす気温の影響を解析するため、各作期の日射利用効率と気温との関係性を確認した。この結果、図37に示すように、生育初期、外葉展開期、及び花蕾肥大期では異なる曲線の関係性が認められた。したがって、日射利用効率には、生育初期、外葉展開期、及び花蕾肥大期のそれぞれに即した気温の影響を盛り込むこととし、図37の破線で示した曲線を生育初期の日射利用効率として用いるパラメータαとし、点線で示した曲線を外葉展開期の日射利用効率として用いるパラメータβとし、実線で示した曲線を花蕾肥大期の日射利用効率として用いるパラメータγとした(図34(b)参照)。
((4)地上部乾物重と定植後日数との関係)
図38には、地上部乾物重と定植後日数との関係をプロットした結果が示されている。地上部は外葉部と花蕾部とに分けられ、上段に外葉部乾物重が、下段に花蕾部乾物重が示されている。
図38には、地上部乾物重と定植後日数との関係をプロットした結果が示されている。地上部は外葉部と花蕾部とに分けられ、上段に外葉部乾物重が、下段に花蕾部乾物重が示されている。
ブロッコリーでは、外葉部の乾物重は、5g程度に達するまでは、比較的緩やかに増加し、その後苗が活着すると急速に増加する。さらに、定植後、一定期間が経過すると花蕾部の乾物重の増加が始まり、それとともに外葉部の乾物重の増加が緩やか、或いは、停止するという特徴がある。また、それぞれの乾物重の増加速度は、作期および栽植密度の違いによって異なることが分かった。
((5)花蕾部乾物分配率と栽培期間の積算温度(指標値)との関係)
図39は、花蕾部乾物分配率と栽培期間の積算温度(指標値)との関係をプロットした図である。図39から、ブロッコリーの花蕾部乾物分配率は、作期、栽植密度の違いに関わらず積算温度がある値に達した時点で急激に増加することが分かった。
図39は、花蕾部乾物分配率と栽培期間の積算温度(指標値)との関係をプロットした図である。図39から、ブロッコリーの花蕾部乾物分配率は、作期、栽植密度の違いに関わらず積算温度がある値に達した時点で急激に増加することが分かった。
図38と図39から、ブロッコリーでは、図33(a)における「生育初期」ステージは、定植後苗が活着するまでの外葉部の乾物重増加が緩やかな期間、「外葉展開期」ステージは、外葉部の乾物重増加が旺盛となる期間、「花蕾肥大期」ステージは、花蕾部の乾物重増加が始まる期間と定義できることが分かった。そして、「生育初期」ステージと「外葉展開期」ステージとは、乾物重を指標に分けることができ、「外葉展開期」ステージと「花蕾肥大期」ステージとは、積算温度を指標に分けられることが分かった。
また、図39から、花蕾部乾物分配率には「生育初期」および「外葉展開期」ステージでは、パラメータδを設定し、「花蕾肥大期」ステージでは、パラメータεを設定することとした(図34(b)参照)。
((6)外葉部乾物率の特徴)
図40(a)には、外葉部乾物重(g/株)と、外葉部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。外葉部乾物率は、外葉部乾物重に対し、ほぼ一定か、やや減少する傾向にあり、外葉部乾物重と外葉部乾物率との関係は作期により異なっていた。
図40(a)には、外葉部乾物重(g/株)と、外葉部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。外葉部乾物率は、外葉部乾物重に対し、ほぼ一定か、やや減少する傾向にあり、外葉部乾物重と外葉部乾物率との関係は作期により異なっていた。
外葉部乾物率とサンプリング時の気温との関係性を見たところ、図40(b)に示すように、外葉部乾物率は気温との間に、生育初期、外葉展開期、及び花蕾肥大期で異なる関係性が認められた。そこで、生育初期、外葉展開期、及び花蕾肥大期に対し、外葉部乾物率についてそれぞれ別個の式で気温の影響を盛り込むこととした。なお、図40(b)の実線で示した曲線を生育初期における外葉部乾物率として用いるパラメータζとし、点線で示した曲線を外葉展開期の外葉部乾物率として用いるパラメータηとし、破線で示した曲線を花蕾肥大期の外葉部乾物率として用いるパラメータθとした(図34(b)参照)。
なお、外葉部葉面積/新鮮重比については、ブロッコリーも葉ネギの図17に示した曲線と類似の関係性がみられることから、その曲線式を外葉部葉面積/新鮮重比のパラメータιとして盛り込むこととした。
((7)花蕾部乾物率の特徴)
図41(a)には、花蕾部乾物重(g/株)と、花蕾部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。花蕾部乾物率は、花蕾部乾物重に対し、ほぼ一定か、やや減少する傾向にあり、花蕾部乾物重と花蕾部乾物率との関係は、作期により異なっていた。
図41(a)には、花蕾部乾物重(g/株)と、花蕾部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。花蕾部乾物率は、花蕾部乾物重に対し、ほぼ一定か、やや減少する傾向にあり、花蕾部乾物重と花蕾部乾物率との関係は、作期により異なっていた。
花蕾部乾物率とサンプリング時の気温との関係性を見たところ、図41(b)に示すように、花蕾部乾物率は気温との間に、破線で示す曲線の関係があることから、当該曲線を花蕾部乾物率のパラメータκとした(図34(b)参照)。
<結球野菜の場合>
次に、キャベツなどの結球野菜の場合について説明する。
次に、キャベツなどの結球野菜の場合について説明する。
(結球野菜の生育モデル)
図42には、本発明者が作成した結球野菜の生育モデルが示されている。
図42には、本発明者が作成した結球野菜の生育モデルが示されている。
以下、図42の生育モデルの概要について説明する。なお、図42の生育モデルは、図2(b)の予測部22が保持しており、予測部22は、当該生育モデルに基づいて結球野菜の生育状態を予測する。
予測部22は、図42の生育モデルを用いてある日(予測する日)における生育状態として新鮮重を算出する場合、まず、ステップS50において、(投影)葉面積(m2/株)と、環境条件である予測する日の日積算日射量(MJ/m2)と、外部入力条件である植栽密度(株/m2)と、に基づいて、日積算日射遮蔽量(MJ/株)を算出する。なお、定植直後である場合には、(投影)葉面積の初期値をユーザが手入力してもよいし、(投影)葉面積の初期値として予め定められている値を用いることとしてもよい。なお、ユーザは、(投影)葉面積の初期値をユーザが手入力する代わりに、外葉部乾物重を手入力してもよい。この場合、予測部22は、手入力された外葉部乾物重に所定の係数を掛けることで、(投影)葉面積を算出する。
次いで、ステップS52では、予測部22は、算出した日積算日射遮蔽量(MJ/株)から、予測する日の日乾物生産量(g/株)を算出する。この日乾物生産量の算出においては、日射利用効率(g/MJ)を用いる。
次いで、ステップS54では、予測部22は、前日までの乾物重に、ステップS52で算出した日乾物生産量(g/株)を加算することで、株の乾物重(g/株)を算出する。
次いで、ステップS56では、予測部22は、株の乾物重(g/株)と、結球部乾物分配率(%)とを用いて、外葉部乾物重(g/株)と、結球部乾物重(g/株)を算出する。
次いで、ステップS60では、予測部22は、ステップS56で算出した結球部乾物重(g/株)と結球部乾物率(%)に基づいて、結球部新鮮重(g/株)を算出する。
また、ステップS64では、予測部22は、投影葉面積/外葉部乾物重の比に対して、外葉部乾物重(g/株)を掛けることにより、(投影)葉面積(m2/株)を更新する。
その後は、図42の処理を繰り返すことで、所定期間における結球野菜の生育状態の変化(新鮮重の変化)を予測することができる。
(結球野菜の生育ステージ)
結球野菜は、図43(a)に示すような生育ステージを有する。より具体的には、結球野菜の生育ステージは、「生育初期(活着期)」ステージと、「外葉展開期」ステージと、「結球肥大期」ステージと、に分けられる。
結球野菜は、図43(a)に示すような生育ステージを有する。より具体的には、結球野菜の生育ステージは、「生育初期(活着期)」ステージと、「外葉展開期」ステージと、「結球肥大期」ステージと、に分けられる。
この場合、定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜と同様、図43(b)に示すように、各生育ステージで用いるパラメータとして異なるパラメータを設定することで、精度よく生育状態を予測することができる。各ステージで用いる各パラメータは、葉ネギの場合と同様、予め実施した栽培試験(作期移動試験)の結果に基づいて設定されている。なお、図43(b)の表において、生育初期及び外葉展開期には結球葉は存在しないため、結球部乾物率のパラメータを設定しないこととした。
(作期移動試験について)
結球野菜の一例としてのキャベツの作期移動試験としては、図44(a)に示す定植日において、定植栽培を実施した。栽培期間中においては、複数株を調査対象として数回採取した。図44(b)に示す写真のように、採取した株の地上部を、葉柄及び主茎を含む展開葉(ここでは外葉部と定義)と、結球葉(ここでは結球部と定義)とに分け、それぞれの新鮮重と乾物重とを取得した。
結球野菜の一例としてのキャベツの作期移動試験としては、図44(a)に示す定植日において、定植栽培を実施した。栽培期間中においては、複数株を調査対象として数回採取した。図44(b)に示す写真のように、採取した株の地上部を、葉柄及び主茎を含む展開葉(ここでは外葉部と定義)と、結球葉(ここでは結球部と定義)とに分け、それぞれの新鮮重と乾物重とを取得した。
(キャベツの葉面積と日射遮蔽量の計測について)
キャベツは、葉ネギやブロッコリーのような草姿の野菜と異なり、茎や葉柄がほとんど立体的には伸長せず平面的に草姿が拡大する特徴がある。このため、キャベツでは、投影葉面積を算出し、投影葉面積と日積算日射量の積をその日の日射遮蔽量とした。
日積算日射遮蔽量(MJ/株)=投影葉面積(m2/株)×日日射量(MJ/m2)
キャベツは、葉ネギやブロッコリーのような草姿の野菜と異なり、茎や葉柄がほとんど立体的には伸長せず平面的に草姿が拡大する特徴がある。このため、キャベツでは、投影葉面積を算出し、投影葉面積と日積算日射量の積をその日の日射遮蔽量とした。
日積算日射遮蔽量(MJ/株)=投影葉面積(m2/株)×日日射量(MJ/m2)
図45(a)は、投影葉面積の算出について説明するための図である。図45(a)の左図に示すように、キャベツの株を上方から撮影する。なお、図45(a)の左側の写真において点線で囲んでいる物体は、面積算出のための指標物である。
次に、図45(a)の右図に示すように、キャベツを上方から撮影した写真に対し、株の投影画像を取得する。図45(a)の左側に示す投影画像において、灰色の部分の面積を指標物に基づき算出し、投影葉面積とする。
図45(b)は、定植後日数と投影葉面積との関係をプロットした図である。投影葉面積は、定植後、日数の経過とともに増加するが、キャベツの生育が進むにつれて葉が密集し、隣接する株との隙間がなくなると、それ以上増加しない。そのため、図45(b)に示すように、キャベツの投影葉面積は、ある時期以降一定の値をとる。
((1)生育特性とモデル化)
図46(a)は、それぞれの作期における株の生育(地上部乾物重(g/株)の変化)を示すグラフである。図46(a)からは、作期の違いによって地上部乾物重の増加速度が異なることが分かった。
図46(a)は、それぞれの作期における株の生育(地上部乾物重(g/株)の変化)を示すグラフである。図46(a)からは、作期の違いによって地上部乾物重の増加速度が異なることが分かった。
((2)日射受光量あたりの乾物増加量(日射利用効率)について)
図46(b)には、地上部乾物重と積算日射受光量との関係が示されている。いずれの作期においても地上部乾物重と積算日射受光量との間には直線関係が見られるものの、傾き(日射利用効率)は作期によって異なることが分かった。すなわち、図46(b)からは、日射利用効率は気温の影響を受けている可能性が高いことが示唆されている。
図46(b)には、地上部乾物重と積算日射受光量との関係が示されている。いずれの作期においても地上部乾物重と積算日射受光量との間には直線関係が見られるものの、傾き(日射利用効率)は作期によって異なることが分かった。すなわち、図46(b)からは、日射利用効率は気温の影響を受けている可能性が高いことが示唆されている。
日射利用効率と気温との関係性をそれぞれの生育ステージ別に確認したところ、ブロッコリーと同様に、生育初期、外葉展開期、及び結球肥大期で異なる曲線の関係性が認められた。したがって、日射利用効率には、それぞれの生育ステージに即した気温のパラメータを盛り込むこととした。具体的には、生育初期の日射利用効率をパラメータαとし、外葉展開期の日射利用効率をパラメータβとし、結球肥大期の日射利用効率をパラメータγとした(図44(b)参照)。
((3)地上部乾物重と定植後日数との関係)
図47には、地上部乾物重と定植後日数との関係をプロットした結果が示されている。地上部は外葉部と結球部とに分けられ、上段に外葉部乾物重が、下段に結球部乾物重が示されている。
図47には、地上部乾物重と定植後日数との関係をプロットした結果が示されている。地上部は外葉部と結球部とに分けられ、上段に外葉部乾物重が、下段に結球部乾物重が示されている。
キャベツにおいても、ブロッコリーと同様に、外葉部の乾物重は、5g程度に達するまでは、作期に関わらず比較的緩やかに増加し、その後苗が活着すると急速に増加する。そして、栽培が一定期間経過すると結球部の乾物重の増加が始まり、しばらくして外葉部の乾物重の増加が停止する。また、作期の違いによってそれぞれの乾物重の増加速度が異なるという特徴があることが分かった。
((4)結球部乾物分配率と栽培期間の積算温度(指標値)との関係)
図48は、結球部乾物分配率と栽培期間の積算温度(指標値)との関係をプロットした図である。図48から、結球部乾物分配率は、作期に関わらず積算温度がある値に達した時点で急激に増加することが分かった。
図48は、結球部乾物分配率と栽培期間の積算温度(指標値)との関係をプロットした図である。図48から、結球部乾物分配率は、作期に関わらず積算温度がある値に達した時点で急激に増加することが分かった。
図47と図48から、キャベツでは、定植後苗が活着するまでの生育が緩やかな「生育初期」ステージと、生育が旺盛となる「外葉展開期」ステージとは、乾物重を指標に分けることができ、「外葉展開期」ステージと、結球部が肥大する「結球肥大期」ステージとは、積算温度を指標に分けられることが分かった。
また、図48から、「生育初期」および「外葉展開期」ステージでは、結球部乾物分配率をパラメータδとし、「結球肥大期」ステージでは、結球部乾物分配率をパラメータεとした(図43(b)参照)。
((5)結球部乾物率の特徴)
図49には、結球部乾物重(g/株)と、結球部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。結球部乾物重と結球部乾物率との関係は、作期により差があり、気温の影響を受けている可能性が示唆される。
図49には、結球部乾物重(g/株)と、結球部乾物率(%)との関係をプロットした結果が示されている。結球部乾物重と結球部乾物率との関係は、作期により差があり、気温の影響を受けている可能性が示唆される。
また、ブロッコリーと同様に、結球部乾物率は平均気温との間に緩やかな曲線関係が認めらており(図省略)、これを結球部乾物率のパラメータとして盛り込むこととした。具体的には、結球部乾物率のパラメータをパラメータκとした(図43(b)参照)。
((6)投影葉面積/外葉部乾物重比と外葉乾物重(指標値)との関係)
図50には、キャベツの投影葉面積/外葉部乾物重比(cm2/g)と外葉乾物重(指標値)との関係が示されている。投影葉面積の場合も、葉ネギやブロッコリーと同様に、外葉部乾物重比と曲線の関係性があることから、外葉部乾物重から投影葉面積を推定するパラメータιとして盛り込むこととした(図43(b)参照)。
図50には、キャベツの投影葉面積/外葉部乾物重比(cm2/g)と外葉乾物重(指標値)との関係が示されている。投影葉面積の場合も、葉ネギやブロッコリーと同様に、外葉部乾物重比と曲線の関係性があることから、外葉部乾物重から投影葉面積を推定するパラメータιとして盛り込むこととした(図43(b)参照)。
なお、本例では外葉部乾物重から直接投影葉面積を推定しているが、葉ネギやブロッコリーと同様に、各生育ステージに即した気温パラメータ(パラメータθ)を盛り込んで乾物重を新鮮重に変換すると、より精度よく推定することができる。
(端末70の処理について)
図51は、各日の花野菜又は結球野菜の生育状態を予測するときに端末70が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図51は、各日の花野菜又は結球野菜の生育状態を予測するときに端末70が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図51の処理では、まず、ステップS200において、ステージ判定部20が、積算気温が生育ステージを分ける所定値以下であるか否かを判断する。積算気温が生育ステージを分ける所定値以下である場合、ステップS202に移行する。
ステップS202に移行すると、ステージ判定部20は、株の新鮮重が生育ステージを分ける所定重量以下か否かを判断する。この判断が肯定された場合、すなわち、新鮮重が所定重量以下である場合には、ステップS204に移行する。
ステップS204に移行すると、ステージ判定部20は、花野菜又は結球野菜の生育ステージが生育初期ステージであると判定し、パラメータを設定する。具体的には、ステージ判定部20は、図34(b)または図43(b)の表を参照して、用いるパラメータを設定する。その後は、ステップS210に移行する。
一方、ステップS202の判断が否定された場合、すなわち、新鮮重が所定重量よりも大きかった場合には、ステップS206に移行し、ステージ判定部20は、生育ステージが外葉展開期ステージであると判定して、図34(b)または図43(b)の表を参照して、パラメータを設定する。その後は、ステップS210に移行する。
これに対し、ステップS200の判断が否定された場合には、ステップS208に移行し、ステージ判定部20は、花野菜又は結球野菜の生育ステージが花蕾肥大期ステージ又は結球肥大期ステージであると判定し、図34(b)または図43(b)の表を参照して、パラメータを設定する。その後は、ステップS210に移行する。
ステップS204、S206、S208のいずれかが実行されて、ステップS210に移行すると、予測部22は、設定されたパラメータを用いて、予測モデルから一日の生育状態を予測し、予測DB30に格納する。予測DB30には、各日における花野菜又は結球野菜の生育状態(図33、図42の作物状態変数)が格納される。なお、予測部22は、環境条件(日平均気温や日積算日射量)として、過去データから予測される日平均気温や日積算日射量や、気象庁等が予測した日平均気温や日積算日射量を用いることができる。
次いで、ステップS212では、表示制御部24が、予測した花野菜又は結球野菜の生育状態を表示する。例えば、表示制御部24は、何日目において新鮮重が何gになるという情報を表示部193上に表示する。
次いで、ステップS214では、予測部22が、終了か否かを判断する。例えば、予め設定された全期間の予測が終了した場合には、ステップS214の判断は肯定され、図51の全処理が終了する。一方、ステップS214の判断が否定された場合には、ステップS200に戻る。ステップS200に戻った場合には、上述した処理が繰り返し実行される。そして、ステップS214の判断が肯定されると、図51の全処理が終了する。
図52(a)及び図52(b)には、異なる3作期の栽培について、定植日を初期値とし、日々の日射量、気温を入力して、定植日からの経過日数ごとに本実施形態の方法によりブロッコリーの主茎を含む花蕾部新鮮重を予測した結果(予測値)と、実測値とが示されている。図52(a)及び図52(b)では、予測値を実線または破線で示し、実測値を円または四角のプロットで示している。図52(a)及び図52(b)に示すように、本実施形態の方法によりブロッコリーの花蕾部新鮮重を精度よく予想することができる。
図53(a)及び図53(b)には、異なる4作期の栽培について、定植日を初期値とし、日々の日射量、気温を入力して、定植日からの経過日数ごとに本実施形態の方法によりキャベツの結球部新鮮重を予測した結果(予測値)と、実測値とが示されている。図53(a)及び図53(b)では、予測値を実線または破線で示し、実測値を円または四角のプロットで示している。図53(a)及び図53(b)に示すように、本実施形態の方法によりキャベツの結球部新鮮重を精度よく予想することができる。
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
70 端末(情報処理装置)
20 ステージ判定部(判定部、決定部)
22 予測部
20 ステージ判定部(判定部、決定部)
22 予測部
Claims (8)
- 定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜の生育状態を予測する生育状態予測方法であって、
予測対象の野菜が、栽培期間に含まれる複数のステージのいずれに属しているかを判定し、
気温と日射量とに基づいて前記予測対象の野菜の生育状態を予測するモデルのパラメータを、判定した前記ステージに基づいて決定し、
決定した前記パラメータが設定された前記モデルを用いて、前記予測対象の野菜の生育状態を予測する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする生育状態予測方法。 - 前記予測対象の野菜は、定植栽培後再生栽培が可能な野菜であり、
前記判定する処理では、前記予測対象の野菜が、前記定植栽培の第1期間に含まれる複数のステージと、前記再生栽培の第2期間に含まれる複数のステージのいずれのステージに属しているかを判定する、ことを特徴とする請求項1に記載の生育状態予測方法。 - 前記判定する処理では、
前記予測対象の野菜の刈取有無の情報を取得し、
前記予測対象の野菜が刈取りされていない場合には、前記予測対象の野菜の乾物重に基づいて、前記第1期間の生育初期と、前記第1期間の生育盛期のいずれかのステージに属すると判定し、
前記予測対象の野菜が刈り取りされている場合には、前記予測対象の野菜の乾物重に基づいて、前記第2期間の内部転流期、前記第2期間の生育初期、及び前記第2期間の生育盛期のいずれかのステージに属すると判定する、ことを特徴とする請求項2に記載の生育状態予測方法。 - 前記パラメータは、予め実施した栽培試験の結果に基づいて定められる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生育状態予測方法。
- 前記野菜は葉身部と葉鞘部を有し、
前記パラメータは、前記野菜において生産されると予測された乾物重から葉身部の乾物重及び葉鞘部の乾物重を推定する際に用いる乾物分配率と、推定された葉身部の乾物重から新鮮重を推定する際に用いる葉身部乾物率と、推定された葉鞘部の乾物重から新鮮重を推定する際に用いる葉鞘部乾物率と、を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の生育状態予測方法。 - 前記予測対象の野菜は結球野菜又は花野菜である、請求項1に記載の生育状態予測方法。
- 定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜の生育状態を予測する生育状態予測プログラムであって、
予測対象の野菜が、栽培期間に含まれる複数のステージのいずれのステージに属しているかを判定し、
気温と日射量とに基づいて前記予測対象の野菜の生育状態を予測するモデルのパラメータを、判定した前記ステージに基づいて決定し、
決定した前記パラメータが設定された前記モデルを用いて、前記予測対象の野菜の生育状態を予測する、
処理をコンピュータに実行させるための生育状態予測プログラム。 - 定植栽培又は定植栽培後再生栽培が可能な野菜の生育状態を予測する情報処理装置であって、
予測対象の野菜が、栽培期間に含まれる複数のステージのいずれのステージに属しているかを判定する判定部と、
気温と日射量とに基づいて前記予測対象の野菜の生育状態を予測するモデルのパラメータを、判定した前記ステージに基づいて決定する決定部と、
決定した前記パラメータが設定された前記モデルを用いて、前記予測対象の野菜の生育状態を予測する予測部と、
を備える情報処理装置。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020082063 | 2020-05-07 | ||
JP2020082063 | 2020-05-07 |
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JP2021076351A Pending JP2021179983A (ja) | 2020-05-07 | 2021-04-28 | 生育状態予測方法及び生育状態予測プログラム、並びに情報処理装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023145519A1 (ja) * | 2022-01-28 | 2023-08-03 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 | パラメータ算出方法及び農業支援情報出力方法、並びにパラメータ算出プログラム及び農業支援情報出力プログラム |
WO2023181758A1 (ja) * | 2022-03-24 | 2023-09-28 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 | 農業支援プログラム、農業支援方法及び農業支援装置 |
-
2021
- 2021-04-28 JP JP2021076351A patent/JP2021179983A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023145519A1 (ja) * | 2022-01-28 | 2023-08-03 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 | パラメータ算出方法及び農業支援情報出力方法、並びにパラメータ算出プログラム及び農業支援情報出力プログラム |
WO2023181758A1 (ja) * | 2022-03-24 | 2023-09-28 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 | 農業支援プログラム、農業支援方法及び農業支援装置 |
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