以下、図面を参照しながら、原子炉および原子炉の除熱方法の実施形態について詳細に説明する。
図1の符号1は、本実施形態の原子力発電システムである。なお、図面では、理解を助けるために上下方向を規定している。しかしながら、この原子力発電システム1は、上下方向(鉛直方向)を区別しなくても良く、例えば、宇宙空間でも使用できる。つまり、この原子力発電システム1は、重力の影響を受けない装置となっている。なお、原子力発電システム1は、宇宙空間の他に、月面、火星、地球の極地などで用いることができる。また、理解を助けるために、断面を示すハッチングを省略している場合がある。
原子力発電システム1は、原子炉2と発電装置3とラジエータ4とを備える。本実施形態では、原子炉2の上部に発電装置3およびラジエータ4が設けられている。原子炉2で発生した熱を用いて発電装置3が発電を行う。そして、発電装置3で発電に用いられた熱をラジエータ4が外部に放出する。
原子炉2は、炉心5と中性子反射部6と遮蔽部7とを備える。炉心5には、核燃料が配置されている。この炉心5の全体形状は、例えば、円柱形状を成している。なお、炉心5の全体形状は、直方体形状を成しても良いし、錐体形状を成しても良い。本実施形態では、炉心5の円柱軸が上下方向に沿って延びる。
炉心5は、中性子反射部6により覆われている。中性子反射部6は、核燃料から発せられる中性子を反射する材質で形成されている。中性子は、中性子反射部6で反射されて、炉心5の内部に戻り、核分裂反応を促進させる。なお、中性子反射部6は、炉心5を収容する容器を兼ねる。
中性子反射部6は、遮蔽部7により覆われている。遮蔽部7は、炉心5で生じる放射線を遮蔽し、放射線が原子炉2の外部に漏れないようにしている。遮蔽部7は、中性子反射部6を収容する容器を兼ねる。
炉心5の中央には、中性子吸収材としての1本の安全棒8が挿入可能な挿入空間が設けられている。この安全棒8は、原子炉2の起動前において、核燃料が核分裂反応を起こさないために挿入される部材である。例えば、原子炉2を設置場所まで輸送するときには、安全棒8が炉心5に挿入された状態となる。また、原子炉2を起動するときには、安全棒8が炉心5から引き抜かれる。
なお、特に図示はしないが、原子炉2は、核分裂反応を制御する中性子吸収材としての複数本の制御棒を備える。これらの制御棒が炉心5に挿入されることで核分裂反応が抑制され、制御棒が炉心5から引き抜かれることで核分裂反応が活発になる。
炉心5には、複数本のメインヒートパイプ9が設けられている。メインヒートパイプ9は、上下方向に延びる棒状の装置である。それぞれのメインヒートパイプ9は、互いに平行を成すように配置されている。また、メインヒートパイプ9は、炉心5の径方向および周方向に並んでいる。なお、周方向に並ぶメインヒートパイプ9の列は、同心円状に配置されている。
これらのメインヒートパイプ9は、炉心5から上方に向かって直線状に延び、発電装置3に接続されている。これらのメインヒートパイプ9が、炉心5の核燃料で発生した熱を発電装置3まで移動させる。
発電装置3は、メインヒートパイプ9により運ばれた炉心5の熱に基づいて発電を行う。この発電装置3は、例えば、熱電変換素子を備える。発電装置3は、炉心5の熱と外部との温度差を利用して発電を行う。なお、発電装置3は、その他の態様で発電しても良い。例えば、炉心5の熱で所定の液体を気化し、その蒸気によりタービンを駆動して発電を行っても良い。また、炉心5の熱でスターリングエンジンを駆動して発電を行っても良い。
メインヒートパイプ9は、作動流体(作動液)を用いて熱を移動させるデバイスである。メインヒートパイプ9は、例えば、熱伝導性が高い材質から成るパイプケースと、このパイプケースの中に封入された揮発性の作動流体と、気化した作動流体が移動するための空洞と、パイプケースの内壁に設けられて毛細管構造を成すウィックとを備える。
なお、パイプケースおよびウィックには、アルミニウムまたは銅などを用いる。さらに、作動流体には、例えば、液体ナトリウムを用いる。また、作動流体として代替フロンを用いても良い。さらに、その他の物質を作動流体としても用いても良い。
メインヒートパイプ9の一端を高温部とし、他端を低温部とした場合に、高温部を加熱し、低温部を冷却することで、作動流体の蒸発(潜熱の吸収)と作動流体の凝縮(潜熱の放出)のサイクルが発生して熱を移動させる。
例えば、高温部の液体の作動流体が、加熱されることにより蒸発し、気体となって空洞を通り低温部に移動される。そして、低温部で作動流体の熱が奪われて凝縮して液体に戻る。さらに、この作動流体の液体が、毛細管現象によりウィックを通り高温部に移動される。この現象が繰り返されることで、高温部から低温部に熱が移動される。
本実施形態では、複数本のメインヒートパイプ9の高温部が炉心5に配置され、メインヒートパイプ9の低温部が発電装置3に配置される。そして、炉心5で発生する熱が、メインヒートパイプ9により発電装置3に移動され、この熱に基づいて作動ガス(冷媒)が加熱される。
図2に示すように、複数本のメインヒートパイプ9が炉心5に設けられている。なお、この図面では、理解を助けるために、炉心5の周囲に設けられている中性子反射部6の図示を省略している。
炉心5には、核燃料ユニット10と減速材ユニット11と熱拡散層12とが設けられている。本実施形態では、核燃料ユニット10と減速材ユニット11とが、メインヒートパイプ9の軸方向に沿って交互に並んで配置されている。なお、熱拡散層12は、平板状を成し、核燃料ユニット10と減速材ユニット11の間に設けられている。このようにすれば、炉心温度の制約を緩和しつつ、柔軟な炉心レイアウトが可能になる。つまり、設計上の制約が緩和される。
一方のメインヒートパイプ9に設けられた核燃料ユニット10は、隣り合う他方のメインヒートパイプ9に設けられた核燃料ユニット10と隣接している。さらに、一方のメインヒートパイプ9に設けられた減速材ユニット11は、隣り合う他方のメインヒートパイプ9に設けられた減速材ユニット11と隣接している。
炉心5では、核燃料ユニット10が並ぶ層と減速材ユニット11が並ぶ層とが上下方向に積層されている。なお、一方のメインヒートパイプ9と他方のメインヒートパイプ9とで、核燃料ユニット10および減速材ユニット11を互い違いに並べても良い。
図3から図4に示すように、所定の1本の円管状を成すメインヒートパイプ9の周囲を囲むように核燃料ユニット10と減速材ユニット11が配置されている。
本実施形態の核燃料ユニット10と減速材ユニット11は、中心軸に沿ってメインヒートパイプ9を通すための孔が開けられた六角柱形状を成している。つまり、核燃料ユニット10と減速材ユニットにおいて、メインヒートパイプ9の軸に垂直な断面(平面視)の形状が正六角形を成している。複数の核燃料ユニット10または複数の減速材ユニット11を平面視でハニカム状に並べる(平面充填させる)ことで炉心5が形成されている。なお、核燃料ユニット10と減速材ユニットの断面形状は、炉心5を臨界にできる形状であれば、その他の態様であっても良い。例えば、三角形でも良いし、四角形でも良いし、円形でも良い。
核燃料ユニット10は、核分裂反応により熱を発生させるものである。減速材ユニット11は、メインヒートパイプ9の軸方向に沿って核燃料ユニット10に隣接して並び、中性子を減速させるものである。熱拡散層12は、核燃料ユニット10の熱をメインヒートパイプ9に向けて移動させるものである。
核燃料ユニット10には、主たる核燃料物質としてウランが含まれている。核燃料ユニット10は、例えば、天然ウランを濃縮することで、235Uの含有量が3%から4%程度になるように高めてある。また、核燃料ユニット10には、239Pu、241Pu、242Am、243Cm、245Cmなどが含まれても良い。核燃料ユニット10は、少なくとも原子炉2を運転するために充分な量の核燃料物質を含むものであれば良い。さらに、核燃料ユニット10を構成する材料については、例えば、ウランまたはプルトニウムなどの酸化物、ケイ化物、炭化物、窒化物、塩化物、フッ化物、金属、合金などの様々なものが適用可能である。
1つの核燃料ユニット10は、メインヒートパイプ9を囲むように設けられたヒートパイプ周辺燃料(Heat Pipe Peripheral Fuel)としてのHPPF13と、HPPF13を囲むように設けられた主燃料部14とを備える。
HPPF13は、円筒形状を成す。このHPPF13の内周面がメインヒートパイプ9の外周面に接触する。主燃料部14は、核燃料ユニット10の体積と質量の大部分を占めており、平面視で正六角形を成している。なお、HPPF13と主燃料部14の体積比率については、設計条件に応じて様々なものが考えられるため、体積比率は本実施形態に限定されるものではない。
核燃料ユニット10は、第1濃度の核分裂物質を含む第1核燃料部と、第1核燃料部よりもメインヒートパイプ9から離れて配置され、第1濃度よりも低い第2濃度の核分裂物質を含む第2核燃料部とを備える。本実施形態では、HPPF13が第1核燃料部となっているとともに、主燃料部14が第2核燃料部となっている。核燃料ユニット10に含まれる核分裂物質の濃度が高い場合は、核分裂反応による発熱密度が大きくなる。つまり、HPPF13は、主燃料部14よりも発熱密度が大きくなっている。
図5から図6に示すように、高濃度の第1核燃料部としてのHPPF13は、メインヒートパイプ9の周囲を囲むように配置される。また、低濃度の第2核燃料部としての主燃料部14は、HPPF13よりもメインヒートパイプ9から離れて配置される。主燃料部14は、HPPF13を囲むように配置されている。つまり、HPPF13は、主燃料部14とメインヒートパイプ9の間に設けられている。
本実施形態では、HPPF13(第1核燃料部)が配置される領域が高反応度燃料領域を成し、主燃料部14(第2核燃料部)が配置される領域が低反応度燃料領域を成す。原子炉2が臨界となって燃料が発熱したときに、HPPF13の出力密度(熱量)は、主燃料部14の出力密度(熱量)よりも高くなる。これは核分裂物質の濃度が高いことに起因する。HPPF13は、主燃料部14よりもメインヒートパイプ9に近いので、主燃料部14からメインヒートパイプ9へ熱を輸送するために、HPPF13を熱が通過する必要がある。
本実施形態では、主燃料部14の核分裂物質の濃度をHPPF13よりも低くし、主燃料部14の出力をHPPF13の出力よりも小さくしている。そのため、HPPF13において、メインヒートパイプ9に接する面と、主燃料部14に接する面の間の温度差を小さくしても、所定の熱量をメインヒートパイプ9に輸送できる。
原子炉2の全体で発生させる出力が同一である場合には、核分裂物質の濃度が低い第2核燃料部をメインヒートパイプ9の近傍に設けるよりも、核分裂物質の濃度が高い第1核燃料部をメインヒートパイプ9の近傍に設けることの方が、炉心5の最高温度を抑制することができる。そしで、炉心5の内部の偏在的な温度上昇を抑制し、核燃料全体を充分に燃焼させることができる。その結果、炉心出力を高めることができる。
減速材ユニット11は、金属水素化物としての水素化カルシウムで形成されている。このようにすれば、中性子を効率的に減速させることができるため、原子炉2の小型化を図ることができる。なお、減速材ユニット11は、金属水素化物のみで形成されても良いし、金属水素化物以外の物質が含まれていても良い。また、減速材ユニット11は、熱膨張し難いセラミックスとして形成されても良い。
なお、水素化カルシウム以外の金属水素化物で減速材ユニット11を形成しても良い。例えば、減速材ユニット11を、水素化イットリウム、水素化ランタン、水素化ジルコニウム、水素化プラセオジウムなどの金属水素化物で形成しても良い。
図3に示すように、主燃料部14がメインヒートパイプ9を挟む2つの部材に分割されている。さらに、HPPF13がメインヒートパイプ9を挟む2つの部材に分割されている。つまり、平面視で正六角形を成す核燃料ユニット10は、その中心を通る1本の対角線を境界として分割されている。このようにすれば、核燃料ユニット10をメインヒートパイプ9に密接させることができるため、核燃料ユニット10からメインヒートパイプに熱が伝わり易くなる。
例えば、核燃料ユニット10を分割せずに、メインヒートパイプ9を通す孔を開けるのみとすると、メインヒートパイプ9を挿入するために、孔の内径をメインヒートパイプ9の直径よりも大きくする必要がある。そのため、核燃料ユニット10の内周面とメインヒートパイプ9の外周面との間にギャップが生じて接触熱抵抗が高まるおそれがある。これに対して本実施形態では、核燃料ユニット10が分割されていることで、孔の内径をメインヒートパイプ9の直径と同一にすることができる。そのため、核燃料ユニット10をメインヒートパイプ9に密接させることができ、接触熱抵抗を低減させることができる。
なお、分割された核燃料ユニット10を互いに固定する固定器具(図示略)を設けても良い。そして、核燃料ユニット10がメインヒートパイプ9を挟んだ状態で固定されるようにする。このようにすれば、固定器具で核燃料ユニット10をメインヒートパイプ9に密着させることができる。
また、核燃料ユニット10におけるメインヒートパイプ9に接触する面は、メインヒートパイプ9の外面に適合する形状となっている。本実施形態では、主燃料部14におけるメインヒートパイプ9に接する側面が半円形状に切り欠かれており、その切り欠かれた部分に、メインヒートパイプ9の外面に接する円筒形状のHPPF13が設けられている。つまり、主燃料部14におけるメインヒートパイプ9に接触する面がメインヒートパイプ9の外面に適合する形状となっている。さらに、HPPF13の内径は、メインヒートパイプ9の外径と同一であるため、HPPF13の内周面がメインヒートパイプ9の外周面に適合する形状となっている。このようにすれば、核燃料ユニット10とメインヒートパイプ9との間の接触熱抵抗を低減させることができる。
また、減速材ユニット11がメインヒートパイプ9を挟む2つの部材に分割されている。つまり、平面視で正六角形を成す減速材ユニット11は、その中心を通る1本の対角線を境界として分割されている。さらに、減速材ユニット11におけるメインヒートパイプ9に接触する面は、メインヒートパイプ9の外面に適合する形状となっている。
なお、分割された減速材ユニット11を互いに固定する固定器具(図示略)を設けても良い。そして、減速材ユニット11がメインヒートパイプ9を挟んだ状態で固定されるようにする。このようにすれば、固定器具で減速材ユニット11をメインヒートパイプ9に密着させることができる。
さらに、熱拡散層12についても、2つの部材に分割されている。なお、熱拡散層12は、核燃料ユニット10の上面または下面と同一面積となっている。つまり、熱拡散層12は、HPPF13と主燃料部14の両方に接触している。また、熱拡散層12は、減速材ユニット11の上面または下面と同一面積となっている。そして、熱拡散層12は、減速材ユニット11の上面または下面の全面に接触している。
熱拡散層12は、核燃料ユニット10または減速材ユニット11と比較して熱伝導率が大幅に大きな材料で形成されている。例えば、熱拡散層12を、グラファイトシートで形成しても良い。このようにすれば、熱拡散層12による除熱効率を高めつつ、熱拡散層12を薄く形成することができる。また、熱拡散層12を、平板状を成すサブヒートパイプで形成しても良い。なお、サブヒートパイプとは、メインヒートパイプ9と同様に、作動流体(作動液)を用いて熱を移動させるデバイスであって、薄型のヒートパイプである。このようにすれば、大量の熱を核燃料ユニット10からメインヒートパイプ9に伝達させることができる。
なお、熱拡散層12の一部をグラファイトシートで形成し、他の部分をサブヒートパイプで形成しても良い。例えば、グラファイトシートとサブヒートパイプを並べて設けても良いし、グラファイトシートとサブヒートパイプを積層して設けても良い。また、グラファイトシートまたはサブヒートパイプ以外の材料でも熱拡散層12を形成できるため、熱拡散層12の材料は本実施形態に限定されるものではない。
図7に示すように、核燃料ユニット10の上面および下面に熱拡散層12が接触されている。
核燃料ユニット10では、基本的に固体熱伝導、即ち固体内の温度差によって熱15がメインヒートパイプ9へ輸送される。仮に、熱拡散層12の場合を想定すると、核燃料ユニット10の内部において、メインヒートパイプ9の近傍では温度が低く、メインヒートパイプ9から距離が離れるほど温度が高くなる。
そこで、本実施形態では、熱拡散層12を設けるようにし、核燃料ユニット10の外縁部の高温領域から核燃料ユニット10のメインヒートパイプ9の近傍の低温領域へと熱拡散層12を通じて熱15を輸送する。このようにすれば、核燃料ユニット10の全体の温度の均一化を図ることができる。そして、核燃料ユニット10の内部の偏在的な温度上昇を抑制し、核燃料ユニット10の全体を充分に燃焼させることができる。その結果、炉心出力を高めることができる。
熱拡散層12には、銅のような均一に高い熱伝導率を持つものよりも、グラファイトシートまたはサブヒートパイプのように所定の方向に対しては大きな熱伝導率を持つが、他の方向にはそのような熱伝導率を持たないものが望ましい。
例えば、図8に示すように、熱拡散層12にグラファイトシートを用いた場合について説明する。グラファイトシートには、シートが広がる方向である水平方向16に対して1000W/mK以上の熱伝導率を有し、厚み方向である垂直方向17に対して30〜100W/mK程度の熱伝導率しか有さないものがある。このように、熱輸送の方向に指向性のあるグラファイトシートを熱拡散層12に用いることで、核燃料ユニット10から減速材ユニット11への伝熱を阻害することができる。そして、核燃料ユニット10において、その外縁部からメインヒートパイプ9の近傍の低温領域まで熱を輸送することができる。
図9から図10に示すように、変形例1の熱拡散層12Aは、接触部18と拡張部19とリブ20とを備える。
接触部18は、核燃料ユニット10および減速材ユニット11に接触する部分である。この接触部18は、核燃料ユニット10と減速材ユニット11の間に挟み込まれる。
拡張部19は、メインヒートパイプ9と減速材ユニット11の間まで拡張された部分である。この拡張部19は、メインヒートパイプ9と減速材ユニット11の境界面に設けられる。つまり、拡張部19は、メインヒートパイプ9と減速材ユニット11の間に挟み込まれる。このようにすれば、メインヒートパイプ9に熱拡散層12Aが接触される面積を拡張することができる。そのため、熱拡散層12Aからメインヒートパイプ9に熱を移動させる効率を向上させることができる。
リブ20は、核燃料ユニット10から離れる方向に向かって延びるとともにメインヒートパイプ9に向かって延びる部分である。このリブ20は、分割された減速材ユニット11の2つの部材の間に挟み込まれる。このようにすれば、リブ20を介して熱をメインヒートパイプ9に向かって効率的に移動させることができる。
減速材ユニット11は発熱しないため、この減速材ユニット11に挟まれたリブ20は、減速材ユニット11から熱を受け取ることがない。そのため、核燃料ユニット10から熱拡散層12Aに入り込んだ熱をリブ20により輸送する場合には、接触部18で熱を輸送する場合と比較して効率的に熱を輸送することができる。つまり、発熱している核燃料ユニット10から離れる方向に、リブ20を用いて多くの熱を輸送することができる。
なお、拡張部19またはリブ20の形状または寸法は、様々な態様が考えられるため、本変形例1に限定されるものではない。さらに、リブ20を外方に向かって延長し、このリブ20を、分割された核燃料ユニット10または減速材ユニット11を固定する固定器具の一部として用いても良い。
図11に示すように、変形例2では、減速材ユニット11と熱拡散層12の間に断熱部21が設けられている。この断熱部21は、核燃料ユニット10の熱を減速材ユニット11に伝わり難くするものである。このようにすれば、核燃料ユニット10から熱拡散層12に伝わった熱が、熱拡散層12から減速材ユニット11に伝わってしまうことを抑制することができる。そのため、熱拡散層12を用いてメインヒートパイプ9に熱を効率的に伝えることができる。
本変形例2の断熱部21は、平板状の断熱材で形成される。例えば、グラスウールなどの断熱材を用いて断熱部21を形成しても良い。また、内部を真空にした真空容器を平板状に形成して断熱部21としても良い。
なお、断熱部21は、核燃料ユニット10の熱を減速材ユニット11に伝わり難くするものであれば、その他の態様でも良い。例えば、減速材ユニット11と熱拡散層12の間にギャップを設けるようにし、このギャップを断熱部21としても良い。
図12に示すように、変形例3では、ユーロピウム(Eu)とカドミウム(Cd)の少なくともいずれか一方を含む金属箔22が、核燃料ユニット10と減速材ユニット11の間に設けられている。本変形例3では、2枚の金属箔22が、熱拡散層12を挟むようにして、その上面と下面に設けられている。このようにすれば、熱拡散層12の構成を変更せずに、ユーロピウムとカドミウムの少なくともいずれか一方を炉心内に配置することができる。ユーロピウムとカドミウムは、大きな吸収断面積を有しているため、熱拡散層12よりも薄く金属箔22を形成しても良い。
なお、金属箔22は、ユーロピウムまたはカドミウムのいずれか一方が含まれたものでも良いし、これらの両方が含まれたものでも良い。さらに、金属箔22は、ユーロピウムの酸化物またはカドミウムの酸化物のいずれか一方が含まれたものでも良いし、これらの両方が含まれたものでも良い。
なお、熱拡散層12がサブヒートパイプで構成される場合には、サブヒートパイプをユーロピウムとカドミウムの少なくともいずれか一方を含む材料で形成すれば良い。このようにすれば、サブヒートパイプを用いてユーロピウムとカドミウムの少なくともいずれか一方を炉心内に配置することができる。
また、熱拡散層12がグラファイトシートまたは他の金属材料で構成される場合には、熱拡散層12自体にユーロピウムとカドミウムの少なくともいずれか一方を添加しても良い。
図13に示すように、変形例4では、ユーロピウムとカドミウムの少なくともいずれか一方を含む金属構造材23,24が設けられている。なお、金属構造材23,24は、ユーロピウムの酸化物またはカドミウムの酸化物の少なくともいずれか一方を含むものでも良い。
本変形例4では、核燃料ユニット10または減速材ユニット11の側面に設けられている。例えば、減速材ユニット11の側面を取り囲むように板状を成す金属構造材23が設けられている。
また、炉心5の内部において、メインヒートパイプ9の軸方向の上端側と下端側には、核燃料ユニット10が設けられている。そして、最上端の核燃料ユニット10の上面と最下端の核燃料ユニット10の下面には、平板状を成す金属構造材24が設けられている。つまり、中性子反射部6(図1)に近接する位置に金属構造材24が設けられている。
図14は、横軸に運転温度を取り、縦軸に温度反応度係数を取ったグラフである。このグラフに示すように、炉心5の内部にユーロピウム(Eu)とカドミウム(Cd)の少なくともいずれか一方を設けることで、炉心5の温度反応度を負側に改善できる。特に、運転温度以上の高温域で負となる温度反応度を持つ炉心を構成することができる。
水素化カルシウムを減速材ユニット11として用いた炉心5において、熱拡散層12にEuを添加した場合とEuを添加しなかった場合の温度反応度係数Cを示す。この温度反応度係数Cは、以下の数式1で示される。ここで、ρT1およびρT2は、炉心温度T1および炉心温度T2の反応度である。
図14に示すように、Euを熱拡散層12に添加すると、800Kより高温のときに温度反応度係数Cがより負側になっていることが分かる。つまり、Euを添加した場合には、Euを添加しない場合と比較して、運転温度の領域で炉心5の制御性が良くなることが分かる。
この効果は、減速材ユニット11における熱中性子のスペクトル変化に伴って、Euなどの共鳴における中性子吸収量が増加することが主な要因となっている。なお、Cdを熱拡散層12に添加した場合についても、図14のグラフと同様の結果となるため、Euと同じ効果を得ることができる。
従って、EuまたはCdなどを炉心5に設ける場合に、EuまたはCdを設ける位置は、減速材ユニット11に近い方が良い。例えば、減速材ユニット11に隣接している熱拡散層12、熱拡散層12に近接する位置、減速材ユニット11の側面にEuまたはCdを設けると良い。
さらに、中性子反射部6(図1)の反射により中性子のインポータンスが高くなっている位置であって、最上端の核燃料ユニット10の上面と最下端の核燃料ユニット10の下面に(図13)、EuまたはCdを設けることで、その反応度価値を高めることができる。
次に、原子炉2の除熱方法について図15のフローチャートを用いて説明する。この原子炉2の動作によって受動的に生じる作用効果を含めて説明する。なお、前述の図面を適宜参照する。
まず、ステップS11において、核燃料ユニット10に含まれる核燃料物質の核分裂反応により熱が発生する。
次のステップS12において、核分裂反応により発生した中性子が減速材ユニット11により減速される。減速された中性子により核燃料ユニット10の核分裂反応が連鎖的に引き起こされる。
次のステップS13において、核燃料ユニット10の熱が熱拡散層12に移動される。さらに、熱拡散層12により核燃料ユニット10の熱をメインヒートパイプ9に向けて移動させる。
次のステップS14において、メインヒートパイプ9により炉心5の熱が、炉心5の外部の発電装置3に移動される。
次のステップS15において、発電装置3は、メインヒートパイプ9により移動された熱により発電を行う。
次のステップS16において、発電装置3で発電に用いられた熱がラジエータ4に移動される。そして、ラジエータ4により放熱される。
なお、本実施形態では、炉心5から熱を移動させるデバイスとして、作動流体を封入したメインヒートパイプ9を例示しているが、その他の態様のヒートパイプ(除熱部)を用いても良い。例えば、内部に空洞を有さない中実のヒートパイプを用いても良い。さらに、ヒートポンプ式の除熱装置を用いて炉心から熱を移動させても良い。
なお、本実施形態では、核燃料ユニット10、減速材ユニット11、熱拡散層12のそれぞれが、メインヒートパイプ9を挟む少なくとも2つの部材に分割されているが、その他の態様であっても良い。例えば、これらが3つ以上の部材に分割されても良い。さらに、本実施形態の「メインヒートパイプ9を挟む」という用語は、「メインヒートパイプ9を取り囲む」という意味を含む。
なお、本実施形態では、核燃料ユニット10が、核分裂物質の濃度が互いに異なるHPPF13と主燃料部14とを備えているが、その他の態様であっても良い。例えば、HPPF13の構成を省略し、主燃料部14のみで核燃料ユニット10を構成しても良い。
以上説明した実施形態によれば、核燃料ユニットと減速材ユニットとの間に設けられ、核燃料ユニットの熱をメインヒートパイプに向けて移動させる熱拡散層を備えることにより、ヒートパイプによる除熱効率を高めて炉心の出力を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。