JP2021175785A - 重合性液晶組成物、液晶硬化膜、楕円偏光板及び有機el表示装置 - Google Patents

重合性液晶組成物、液晶硬化膜、楕円偏光板及び有機el表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2021175785A
JP2021175785A JP2020150690A JP2020150690A JP2021175785A JP 2021175785 A JP2021175785 A JP 2021175785A JP 2020150690 A JP2020150690 A JP 2020150690A JP 2020150690 A JP2020150690 A JP 2020150690A JP 2021175785 A JP2021175785 A JP 2021175785A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
liquid crystal
group
polymerizable liquid
film
compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020150690A
Other languages
English (en)
Inventor
鈴鹿 住吉
Suzuka Sumiyoshi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Chemical Co Ltd filed Critical Sumitomo Chemical Co Ltd
Publication of JP2021175785A publication Critical patent/JP2021175785A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
  • Devices For Indicating Variable Information By Combining Individual Elements (AREA)
  • Polarising Elements (AREA)
  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、高い光学特性を示し、かつ、太陽光に暴露されるような環境下においても経時的な光学特性の低下を抑制し得る耐光性を有し、耐久性に優れる液晶硬化膜(位相差板)を形成するのに適した重合性液晶組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】重合性液晶化合物、重合開始剤及び有機硫黄化合物を含む重合性液晶組成物であって、
前記有機硫黄化合物が、式(I0):
【化1】
Figure 2021175785

[式(I0)中、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜25の脂環式基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜25の芳香族基を表し、該脂肪族炭化水素基、該脂環式基及び該芳香族基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよく、該芳香族基を構成する炭素原子は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置き換わっていてもよく、Ar’は、芳香族基又は複素芳香族基を表す]
で表されるチオエーテル構造を有する化合物である、重合性液晶組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、重合性液晶組成物、前記重合性液晶組成物の硬化物である液晶硬化膜、前記液晶硬化膜を含む楕円偏光板及び有機EL表示装置に関する。
フラットパネルディスプレイに用いられる位相差板として、逆波長分散性を示す位相差板が知られている(特許文献1)。特に近年では、フラットパネルディスプレイの薄型化が求められており、重合性液晶化合物を配向状態で紫外線照射により硬化させて形成された液晶硬化膜からなる位相差板が開発されている(特許文献2)。
特開2012−214801号公報 特開2015−163935号公報
近年、フラットパネルディスプレイは、カーナビゲーション装置やバックモニターなどの車載用の画像表示装置としても使用されるなど、その用途は広がっている。これに伴い、太陽光に暴露されるような環境下においても性能変化が生じ難い優れた耐久性を有する位相差板が求められている。特に、逆波長分散性を発現し得る重合性液晶化合物は、一般に光学特性に優れる位相差板を得るために好適な材料となり得る。そのため、その光学特性を十分に発現することができ、かつ、該光学特性の経時的な低下を抑制し得る技術が求められている。
そこで、本発明は、高い光学特性を示し、かつ、太陽光に暴露されるような環境下においても経時的な光学特性の低下を抑制し得る耐光性を有し、耐久性に優れる液晶硬化膜(位相差板)を形成するのに適した重合性液晶組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]重合性液晶化合物、重合開始剤及び有機硫黄化合物を含む重合性液晶組成物であって、
前記有機硫黄化合物が、式(I0):
Figure 2021175785
[式(I0)中、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜25の脂環式基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜25の芳香族基を表し、該脂肪族炭化水素基、該脂環式基及び該芳香族基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよく、該芳香族基を構成する炭素原子は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置き換わっていてもよく、Ar’は、芳香族基又は複素芳香族基を表す]
で表されるチオエーテル構造を有する化合物である、重合性液晶組成物。
[2]前記有機硫黄化合物が、式(I):
Figure 2021175785
[式(I)中、Aは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜25の脂環式基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜25の芳香族基を表し、該脂肪族炭化水素基、該脂環式基及び該芳香族基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよく、該芳香族基を構成する炭素原子は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置き換わっていてもよく、Aは前記と同義である]
で表されるチオエーテル構造を有する化合物である、前記[1]に記載の重合性液晶組成物。
[3]前記重合性液晶化合物は、エステル構造と(メタ)アクリロイル基とを有し、かつ波長300〜400nmに極大吸収を示す重合性液晶化合物である、前記[1]又は[2]に記載の重合性液晶組成物。
[4]前記有機硫黄化合物の分子量は140以上310以下である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[5]前記有機硫黄化合物の含有量は、前記重合性液晶化合物100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[6]前記重合開始剤の含有量は、前記重合性液晶化合物100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[7]前記重合性液晶化合物は、一方向に配向した状態で重合させたときに逆波長分散性の複屈折率を発現し得る液晶化合物である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の重合性液晶組成物の硬化物からなる液晶硬化膜。
[9]液晶硬化膜は、式(1)〜(3)
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm≦Re(550)≦180nm (3)
〔式中、Re(λ)は液晶硬化膜の波長λnmにおける面内位相差値を表し、Re=(nx(λ)−ny(λ))×dである(dは液晶硬化膜の厚み(nm)を表し、nx(λ)は、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に平行な方向の波長λnmにおける主屈折率を表し、ny(λ)は、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に対して平行であり、且つ、前記nxの方向に対して直交する方向の波長λnmにおける屈折率を表す)〕
で表される光学特性を有する、前記[8]に記載の液晶硬化膜。
[10]前記[8]又は[9]に記載の液晶硬化膜と偏光フィルムとを含む楕円偏光板。
[11]前記[9]に記載の楕円偏光板を含む有機EL表示装置。
本発明によれば、高い光学特性を示し、かつ、太陽光に暴露されるような環境下においても経時的な光学特性の低下を抑制し得る耐光性を有し、耐久性に優れる液晶硬化膜(位相差板)を形成するのに適した重合性液晶組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
<重合性液晶組成物>
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物、重合開始剤及び、式(I0)で表されるチオエーテル構造を有する有機硫黄化合物(以下、「有機硫黄化合物(I0)」ともいう)を含む。本発明の重合性液晶組成物は、特定の構造を有する有機硫黄化合物(I0)を含むことにより、光学特性に優れ、かつ、太陽光に暴露されるような環境下においても経時的な性能変化を生じ難い液晶硬化膜を得ることができる。
<重合性液晶化合物>
本発明の重合性液晶組成物は、少なくとも1種の重合性液晶化合物を含む。重合性液晶化合物としては、所望する光学特性を有する液晶硬化膜を形成し得るものであれば特に限定されず、光学フィルムの分野において従来公知の重合性液晶化合物を用いることができる。
本発明において重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物のうちの少なくとも1種は、分子構造中にエステル構造と(メタ)アクリロイル基とを有し、かつ、波長300〜400nmに極大吸収を示す重合性液晶化合物であることが好ましい。
分子構造中にエステル構造を有する重合性液晶化合物は、紫外線等の光が暴露されることにより該エステル構造部分で分解されて劣化を生じやすい。このため、例えば、硬化時の紫外線照射により、また、表示装置等に組み込まれた後、太陽光に暴露される環境下におかれることにより、該重合性液晶化合物から形成される液晶硬化膜の光学特性は低下しやすい傾向にある。本発明の重合性液晶組成物は、得られる液晶硬化膜の光劣化抑制効果に優れるため、光劣化を生じやすいエステル構造を有する重合性液晶化合物を用いる場合に本発明の効果を特に顕著に発揮し得る。
一方、重合性液晶組成物が光重合開始剤を含む場合、長期保管時に重合性液晶化合物の重合反応やゲル化が進行することがあるが、波長300〜400nmに極大吸収を示す重合性液晶化合物を含むことにより、保管中に紫外光が曝露されても、光重合開始剤からの反応活性種の発生及び該反応活性種による重合性液晶化合物の重合反応及びゲル化の進行を有効に抑制できる。したがって、重合性液晶組成物が光重合開始剤を含む場合においては、波長300〜400nmに極大吸収を示す重合性液晶化合物を用いることにより、重合性液晶組成物の長期安定性の点で有利となり、得られる液晶硬化膜の配向性及び膜厚の均一性を向上できる。なお、重合性液晶化合物の極大吸収波長は、溶媒中で紫外可視分光光度計を用いて測定できる。該溶媒は重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒であり、例えばクロロホルム等が挙げられる。
本発明において重合性液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物を意味する。重合性液晶化合物としては、一般に、該重合性液晶化合物を単独で特定方向に配向した状態で重合することにより得られる重合体(硬化物)が、正波長分散性を示す重合性液晶化合物と逆波長分散性を示す重合性液晶化合物とが挙げられる。本発明においては、どちらか一方の種類の重合性液晶化合物のみを使用してもよく、両方の種類の重合性液晶化合物を混合して用いてもよい。一般に光学特性に優れる液晶硬化膜が得られやすく、液晶硬化膜としての光学特性を向上させやすい観点から、本発明において重合性液晶組成物は、硬化して得られる液晶硬化膜が逆波長分散性を有するように重合性液晶化合物を選択することが好ましい。
本発明においては、逆波長分散性を示す液晶硬化膜を得やすい観点から、本発明の重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物のうちの少なくとも1種は、一方向に配向した状態で重合させたときに逆波長分散性の複屈折率を発現し得る重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)であることが好ましい。本発明において、重合性液晶化合物(A)は、対象とする重合性液晶化合物を単独で配向した状態で重合することにより得られる単独重合体(液晶硬化膜)が逆波長分散性を示す。逆波長分散性とは、短波長での面内位相差値の方が長波長での面内位相差値よりも小さくなる光学特性である。
本発明において逆波長分散性を示す重合性液晶化合物(A)とは、具体的には、対象とする重合性液晶化合物を、塗工面に対して水平方向に配向した状態で単独重合させて得られる硬化膜が、下記式:
Re(450)<Re(550)<Re(650)
〔Re(λ)は波長λ(nm)での硬化膜の面内位相差値を表す〕
を満たし得る化合物を意味する。なお、本明細書における「逆波長分散性を示す重合性液晶化合物」、「逆波長分散性を発現し得る重合性液晶化合物」などは、すべて上記と同様に、対象とする重合性液晶化合物を、塗工面に対して水平に配向した状態で単独重合させて得られる硬化膜が逆波長分散性を示す、すなわち、上記式を満たし得る化合物を意味する。
重合性液晶化合物(A)は、重合性基を有する液晶化合物である。重合性基は、重合開始剤から発生した反応活性種、例えば活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいい、例えばビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。本発明において重合性液晶化合物(A)は、分子内に2つ以上の重合性基を有することが好ましい。また、重合性液晶化合物(A)に含まれる重合性基の少なくとも1つが(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、重合性液晶化合物(A)に含まれる全ての重合性基が(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
本発明において、重合性液晶化合物(A)が示す液晶性はサーモトロピック性液晶であってもよいし、リオトロピック性液晶であってもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、サーモトロピック性液晶における相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。重合性液晶化合物(A)として、1種のみを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性液晶化合物(A)としては、例えば、下記(ア)〜(エ)の特徴を有する化合物が挙げられる。
(ア)ネマチック相又はスメクチック相を形成し得る化合物である。
(イ)該重合性液晶化合物の長軸方向(a)上にπ電子を有する。
(ウ)長軸方向(a)に対して交差する方向〔交差方向(b)〕上にπ電子を有する。
(エ)長軸方向(a)に存在するπ電子の合計をN(πa)、長軸方向に存在する分子量の合計をN(Aa)として下記式(i)で定義される重合性液晶化合物の長軸方向(a)のπ電子密度:
D(πa)=N(πa)/N(Aa) (i)
と、交差方向(b)に存在するπ電子の合計をN(πb)、交差方向(b)に存在する分子量の合計をN(Ab)として下記式(ii)で定義される重合性液晶化合物の交差方向(b)のπ電子密度:
D(πb)=N(πb)/N(Ab) (ii)
とが、式(iii)
0≦〔D(πa)/D(πb)〕<1 (iii)
の関係にある〔すなわち、交差方向(b)のπ電子密度が、長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きい〕。また、上記記載のように長軸及びそれに対して交差方向上にπ電子を有する重合性液晶化合物は、一般にT字型の分子構造となりやすい。いわゆるT字型またはH型の分子構造を有する重合性液晶化合物は逆波長分散性を発現しやすく、T字型の分子構造を有する重合性液晶化合物はより強い逆波長分散性を発現する傾向にある。
上記(ア)〜(エ)の特徴において、長軸方向(a)及びπ電子数Nは以下のように定義される。
・長軸方向(a)は、例えば棒状構造を有する化合物であれば、その棒状の長軸方向である。
・長軸方向(a)上に存在するπ電子数N(πa)には、重合反応により消失するπ電子は含まない。
・長軸方向(a)上に存在するπ電子数N(πa)には、長軸上のπ電子及びこれと共役するπ電子の合計数であり、例えば長軸方向(a)上に存在する環であって、ヒュッケル則を満たす環に存在するπ電子の数が含まれる。
・交差方向(b)に存在するπ電子数N(πb)には、重合反応により消失するπ電子は含まない。
上記を満たす重合性液晶化合物は、長軸方向にメソゲン構造を有している。このメソゲン構造によって、液晶相(ネマチック相、スメクチック相)を発現する。
上記(ア)〜(エ)を満たす重合性液晶化合物は、基材又は配向膜上に塗布し、相転移温度以上に加熱することにより、ネマチック相やスメクチック相を形成することが可能である。この重合性液晶化合物が配向して形成されたネマチック相又はスメクチック相では通常、重合性液晶化合物の長軸方向が互いに平行になるように配向しており、この長軸方向がネマチック相の配向方向となる。このような重合性液晶化合物を膜状とし、ネマチック相又はスメクチック相の状態で重合させると、長軸方向(a)に配向した状態で重合した重合体からなる重合体膜を形成することができる。この重合体膜は、長軸方向(a)上のπ電子と交差方向(b)上のπ電子により紫外線を吸収する。ここで、交差方向(b)上のπ電子により吸収される紫外線の吸収極大波長をλbmaxとする。λbmaxは通常300nm〜400nmである。π電子の密度は、上記式(iii)を満足していて、交差方向(b)のπ電子密度が長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きいので、交差方向(b)に振動面を有する直線偏光紫外線(波長はλbmax)の吸収が、長軸方向(a)に振動面を有する直線偏光紫外線(波長はλbmax)の吸収よりも大きな重合体膜となる。その比(直線偏光紫外線の交差方向(b)の吸光度/長軸方向(a)の吸光度の比)は、例えば1.0超、好ましくは1.2以上、通常30以下であり、例えば10以下である。
上記特徴を有する重合性液晶化合物は、一般に、一方向に配向した状態で重合させたときにその重合体の複屈折率が逆波長分散性を示すものであることが多い。
そのような重合性液晶化合物(A)として、具体的には例えば、下記式(A1):
Figure 2021175785
で表される化合物が挙げられる。
式(A1)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を有する二価の基を表す。ここでいう芳香族基とは、環構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4nn+2]個であるものをさし、例えば後述する(Ar−1)〜(Ar−23)で例示されるようなAr基を、二価の連結基を介して2個以上有していてもよい。ここでnnは整数を表す。−N=や−S−等のヘテロ原子を含んで環構造を形成している場合、これらヘテロ原子上の非共有結合電子対を含めてヒュッケル則を満たし、芳香族性を有する場合も含む。該芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。二価の基Arに含まれる芳香族基は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。芳香族基が1つである場合、二価の基Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基であってもよい。二価の基Arに含まれる芳香族基が2つ以上である場合、2つ以上の芳香族基は互いに単結合、−CO−O−、−O−などの二価の結合基で結合していてもよい。
及びGは、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。
及びLは、それぞれ独立に、エステル構造を有する二価の連結基である。
及びBは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基である。
k、lは、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、1≦k+lの関係を満たす。ここで、2≦k+lである場合、B及びB、G及びGは、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
及びEは、それぞれ独立に、炭素数1〜17のアルカンジイル基を表し、ここで、炭素数4〜12のアルカンジイル基がより好ましく、炭素数4〜8のアルカンジイル基がさらに好ましい。また、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−、−S−、−SiH−、−C(=O)−で置換されていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、光重合性基又は水素原子を表し、少なくとも1つは(メタ)アクリロイル基であると好ましい。
及びGは、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子及び炭素数1〜4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4−フェニレンジイル基、ハロゲン原子及び炭素数1〜4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4−シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4−フェニレンジイル基、無置換の1,4−フェニレンジイル基、又は無置換の1,4−trans−シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4−フェニレンジイル基、又は無置換の1,4−trans−シクロへキサンジイル基である。
また、複数存在するG及びGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、L又はLに結合するG及びGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
及びLは、それぞれ独立に、好ましくは−Ra1COORa2−(Ra1及びRa2はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表す)であり、より好ましくは−COORa2−1−(Ra2−1は単結合、−CH−、−CHCH−のいずれかを表す)であり、さらに好ましくは−COO−又は−COOCHCH−である。
及びBは、それぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−S−、−Ra3ORa4−、−Ra5COORa6−、−Ra7OCORa8−、又は−Ra9OC=OORa10−である。ここで、Ra3〜Ra10はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。B及びBはそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、−ORa4−1−、−CH−、−CHCH−、−COORa6−1−、又は−OCORa8−1−である。ここで、Ra4−1、Ra6−1、Ra8−1はそれぞれ独立に単結合、−CH−、−CHCH−のいずれかを表す。B及びBはそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、−O−、−CHCH−、−COO−、−COOCHCH−、−OCO−又は−OCOCHCH−である。
k及びlは、逆波長分散性発現の観点から2≦k+l≦6の範囲が好ましく、k+l=4であることが好ましく、k=2かつl=2であることがより好ましい。k=2かつl=2であると対称構造となるため好ましい。
又はPで表される光重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキシラニル基、及びオキセタニル基等が挙げられる。P又はPのうち、少なくとも1つはアクリロイル基又はメタクリロイル基であり、P及びPはいずれもアクリロイル基又はメタクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。
前記式(A1)表される重合性液晶化合物(A)において、下記式(A1−1)および(A1−2):
Figure 2021175785
[式中、P、P、E、E、B、B、G、G、L、L、k及びlは前記と同義であり、*はArとの結合手を表す。]
で表される、重合性基を有する側鎖(Arの両側にある部分構造;以下、「側鎖(A1−1)」、「側鎖(A1−2)」という)に関し、以下に具体例及び好適例を示すこととする。なお、重合性液晶化合物(A)において、側鎖(A1−1)と、側鎖(A1−2)とは互いに異なるものであってもよいが、重合性液晶化合物(A)をより容易に製造するという観点では、側鎖(A1−1)及び側鎖(A1−2)が同じであると好ましい。また、この側鎖(A1−1)及び側鎖(A1−2)を合わせて、「側鎖(A1−0)」ということがある。
以下、側鎖(A1−0)[側鎖(A1−1)及び側鎖(A1−2)]の具体例として、式(R−1)〜式(R−134)で表される基を挙げる。なお、これらの式(R−1)〜式(R−134)において、nは、kおよびlと同義である。上記のとおり、k=2かつl=2であることがより好ましいので、nは2であることが好ましい。
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
上記のとおり、側鎖(A1−1)におけるk、側鎖(A1−2)におけるlは2であることが好ましいので、式(R−1)〜式(R−134)で表される基の中では、式(R−1)〜式(R−24)で表される基、式(R−37)〜式(R−48)で表される基が好ましい。これらの中でも、上記のとおり、G及びGは、それぞれ独立に、無置換の1,4−フェニレンジイル基又は無置換の1,4−trans−シクロへキサンジイル基が特に好ましいので、式(R−1)、式(R−7)、式(R−13)、式(R−19)、式(R−37)、式(R−43)で表される基が好ましい。
続いて、前記式(A1)におけるArについて説明する。
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい複素芳香族環、及び電子吸引性基から選ばれる少なくとも1つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該複素芳香族環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、及びフェナンスロリン環等が挙げられる。なかでも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、又はベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。以下、このArを「二価芳香族基」という。
式(A1)中、Arで表される二価芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは32以下であり、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは26以下であり、特に好ましくは24以下である。
Arで表される二価芳香族基としては、例えば以下の式(Ar−1)〜式(Ar−23)で表されるいずれかの二価芳香族基、または、式(Ar−1)〜式(Ar−23)から選ばれる2つの基が結合してなる二価芳香族基が挙げられる。
Figure 2021175785
式(Ar−1)〜式(Ar−23)中、*印は連結部を表し、Z、Z及びZは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数1〜12のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。また、Z、Z及びZは、重合性基を含んでいてもよい。
及びQは、それぞれ独立に、−CR1’2’−、−S−、−NH−、−NR1’−、−CO−又は−O−を表し、R1’及びR2’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びJは、それぞれ独立に、炭素原子、又は窒素原子を表す。
、Y及びYは、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を表す。
及びWは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基又はハロゲン原子を表し、mは0〜6の整数を表す。
、Y及びYにおける芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。複素芳香族基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4〜20の複素芳香族基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
、Y及びYは、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系複素芳香族基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、又は芳香環集合に由来する基をいう。多環系複素芳香族基は、縮合多環系複素芳香族基、又は芳香環集合に由来する基をいう。
、Z及びZは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルコキシ基であることが好ましく、Zは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、Z及びZは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。また、Z、Z及びZは重合性基を含んでいてもよい。
及びQは、−NH−、−S−、−NR1’−、−O−が好ましく、R1’は炭化水素基であってもよいが、水素原子が好ましい。中でも−S−、−O−、−NH−が特に好ましい。
式(Ar−1)〜(Ar−23)の中でも、式(Ar−6)及び式(Ar−7)が分子の安定性の観点から好ましい。また、公知文献(例えば、特開2019−105851号公報、国際公開公報WO2017/154598号、特開2020−42149号公報、特開2020−42088号公報)に記載の方法により、重合性液晶化合物(A1)が製造しやすい点では、式(Ar−16)及び式(Ar−17)が好ましい。
式(Ar−16)〜(Ar−23)において、Yは、これが結合する窒素原子及びZと共に、複素芳香族基を形成していてもよい。複素芳香族基としては、Arが有していてもよい複素芳香族環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この複素芳香族基は、置換基を有していてもよい。また、Yは、これが結合する窒素原子及びZと共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系複素芳香族基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等から水素原子を取り去って結合手に置き換えた基が挙げられる。
上記重合性液晶化合物(A)の他に、本発明の重合性液晶組成物に用い得る重合性液晶化合物としては、例えば、特開2010−31223号公報、特開2010−270108号公報、特開2011−6360号公報及び特開2011−207765号公報に記載されるような重合性液晶化合物、正波長分散性を示す重合性液晶化合物などが挙げられる。このような重合性液晶化合物を単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70〜99.5質量部であり、好ましくは80〜99質量部であり、より好ましくは85〜98質量部であり、さらに好ましくは90〜95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。なお、本明細書において、重合性液晶組成物の固形分とは、重合性液晶組成物から有機溶媒等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
<重合開始剤>
本発明の重合性液晶組成物は重合開始剤を含む。重合開始剤は、熱または光の寄与によって反応活性種を生成し、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物であり、重合性液晶化合物が有する重合性基の種類により適宜、最適のものを選択することができる。反応活性種としては、ラジカルまたはカチオンまたはアニオン等の活性種が挙げられる。中でも反応制御が容易であるという観点から、光照射によってラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、オキシム化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられ、市販品を用いてもよい。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア127、イルガキュア2959、イルガキュア754、イルガキュア379EG(以上、BASFジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーN−1717、アデカオプトマーN−1919、アデカアークルズNCI−831、アデカアークルズNCI−930(以上、株式会社ADEKA製)、TAZ−A、TAZ−PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)およびTAZ−104(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
重合性液晶組成物において含まれる光重合開始剤は、少なくとも1種類であり、2種以上を組み合わせて用いてもよく、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物との関係において適宜選択すればよい。
光重合開始剤は、光源から発せられるエネルギーを十分に活用でき、生産性に優れるため、極大吸収波長が300nm〜400nmであると好ましく、300nm〜380nmであるとより好ましく、中でも、α−アセトフェノン系重合開始剤、オキシム系光重合開始剤が好ましい。
α−アセトフェノン化合物としては、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジルブタン−1−オンおよび2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−(4−メチルフェニルメチル)ブタン−1−オン等が挙げられ、より好ましくは2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オンおよび2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジルブタン−1−オンが挙げられる。α−アセトフェノン化合物の市販品としては、イルガキュア369、379EG、907(以上、BASFジャパン(株)製)およびセイクオールBEE(精工化学社製)等が挙げられる。
オキシムエステル系光重合開始剤は、光が照射されることによってフェニルラジカルやメチルラジカル等のラジカルを生成させる。このラジカルにより重合性液晶化合物の重合が好適に進行するが、中でもメチルラジカルを発生させるオキシムエステル系光重合開始剤は重合反応の開始効率が高い点で好ましい。また、重合反応をより効率的に進行させるという観点から、波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤を使用することが好ましい。波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤としては、オキシムエステル構造を含むトリアジン化合物やカルバゾール化合物が好ましい。オキシムエステル構造を含む光重合開始剤としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、イルガキュアOXE−01、イルガキュアOXE−02、イルガキュアOXE−03(以上、BASFジャパン株式会社製)、アデカオプトマーN−1919、アデカアークルズNCI−831(以上、株式会社ADEKA製)等が挙げられる。なお、本発明においては、重合開始剤が式(I0)または式(I)で表されるチオエーテル構造を有していてもよいが、その場合には、該チオエーテル構造を有する重合開始剤とは別に、重合開始剤としての機能を有しない有機硫黄化合物を含むことが好ましい。これにより酸化防止剤的に作用するチオエーテル構造が硬化膜内に存在しやすくなり、有機硫黄化合物が式(I0)または式(I)で表されるチオエーテル構造を有する重合開始剤のみである場合と比較して耐久性がより向上しやすくなると考えられる。
光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは7質量部以下である。上記範囲内であれば、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、重合性液晶化合物の配向を乱し難い。
<有機硫黄化合物>
本発明の重合性液晶組成物は、式(I0):
Figure 2021175785
[式(I0)中、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜25の脂環式基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜25の芳香族基を表し、該脂肪族炭化水素基、該脂環式基及び該芳香族基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよく、該芳香族基を構成する炭素原子は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置き換わっていてもよい。Ar’は、芳香族基又は複素芳香族基を表す。]
で表されるチオエーテル構造を有する化合物である。当該有機硫黄化合物の中でも、特に好ましくは、後述する式(I)で表される化合物であり、かかる有機硫黄化合物の詳細、特に、式(I0)中のAの具体例や好適例については後述する。
式(I0)において、Ar’は、芳香族基又は複素芳香族基であり、具体的には、芳香族化合物又は複素芳香族化合物から、水素原子を1個取り去って、硫黄原子との結合手に置き換えた基である。Ar’を構成する環の数(環数)は特に限定はないが、後述のように、本発明の重合性液晶組成物は、適当な溶媒に溶解してなるものが好ましく、溶媒への溶解性を考慮すると、環数は1又は2が好ましい。
式(I0)で表される有機硫黄化合物を例示すると、例えば、2−(メチルチオ)チアゾール、2−(メチルチオ)ベンゾチアゾール、5−クロロ−2−(メチルチオ)ベンゾチアゾール、2−(ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、2−(ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2−アミノ−5−[(5−ニトロ−2−チアゾリル)チオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−ベンゾチアゾリル ジエチルジチオカルバメート、2−(メチルチオ)ベンゾオキサゾール、チオアニソール、クロロチオアニソール、ジクロロチオアニソール、α−クロロチオアニソール、ペンタクロロチオアニソール、フェニルビニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、(メチルチオ)トルエン、(メチルチオ)安息香酸、(メチルチオ)アニリン、(メチルチオ)フェノール、(メチルチオ)クレゾール、(メチルチオ)アニソール、フロロチオアニソール、ブロモチオアニソール、フェニルチオアセトニトリル、(メチルチオ)アセトフェノン、(メチルチオ)アセトアニリド、(メチルチオ)フェニルボロン酸、アリルフェニルスルフィド、S−フェニルチオアセテート、(メチルチオ)ベンズアルデヒド、2−(フェニルチオ)エタノール、メトキシメチルフェニルスルフィド、(メチルチオ)ベンズアルコール、(メチルチオ)ベンゼンチオール、ジフルオロメチルフェニルスルフィド、(フェニルチオ)酢酸、クロロメチル−p−トルイルスルフィド、2−クロロエチルフェニルスルフィド、メチル(フェニルチオ)アセテート、(メチルチオ)フェニル酢酸、ジフェニルスルフィド、(イソプロピルチオ)フェニルボロン酸、エチル(フェニルチオ)アセテート、(フェニルチオメチル)トリメチルシラン、フェニル−p−トルイルスルフィド、ベンジル−p−トルイルスルフィド、アミノフェニルフェニルスルフィド、ビス(アミノフェニル)スルフィド、ビス(ニトロフェニル)スルフィド、2−ブロモエチルフェニルスルフィド、アセチルジフェニルスルフィド、ビス(フェニルチオ)メタン、ジクロロフェニルチオグリコール酸、S−(ニトロフェニル)システイン、t−ブチルフェニルスルフィド、フェニルチオメチル安息香酸、1,2−ビス(フェニルチオ)エタン、1,2−ビス(フェニルチオ)エテン、4−アミノ−4’−ニトロジフェニルスルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4,4’−チオビスベンゼンチオール、(8−クロロ−1−ナフチルチオ)酢酸、フェンベンダゾール、4−(p−トルイルチオ)チエノ[2,3−c]ピリジン−2−カルバミド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、5,5’−ジサリチル酸、ニトロフェニルフェニルスルフィド等が挙げられる。これらはいずれも市場から入手得可能である。
上記の有機硫黄化合物の中でも、本発明の重合性液晶組成物に用いられるものとしては、式(I):
Figure 2021175785
[式(I)中、Aは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜25の脂環式基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜25の芳香族基を表し、該脂肪族炭化水素基、該脂環式基及び該芳香族基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよく、該芳香族基を構成する炭素原子は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置き換わっていてもよい。Aは前記と同義である。]で表されるチオエーテル構造を有する有機硫黄化合物が好ましい。以下、この式(I)で表されるチオエーテル構造を有する有機硫黄化合物を「有機硫黄化合物(I)」という。
有機硫黄化合物(I)は、前記式(I0)において、Ar’−が、
Figure 2021175785
[Aは前記と同義である。]
に置き換えられたものに該当する。
重合性液晶組成物が有機硫黄化合物(I0)、特に有機硫黄化合物(I)を含むことにより、得られる液晶硬化膜の耐光性を向上させることができる。この作用機構は必ずしも明らかではないが、本発明の重合性液晶組成物から得られる液晶硬化膜においては、チオエーテル構造を有する有機硫黄化合物(I0)が液晶硬化膜中に存在することにより、該チオエーテル構造のイオウ原子が液晶硬化膜中に発生する過酸化物から酸素を奪い酸化することによる酸化防止剤として機能し得るため、得られる液晶硬化膜の耐光性が向上すると考えられる。特に、イオウ原子に隣り合って芳香環(ベンゼン環)が存在することにより、イオウ原子は電子リッチな状態、すなわち電子を受け渡す状態となり、液晶硬化膜中で還元反応を引き起こしやすく、酸素をよりトラップしやすくなるため、優れた酸化防止剤として機能し得ると考えられる。本発明の重合性液晶組成物は、有機硫黄化合物(I0)として1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。なお、本明細書において、単に「有機硫黄化合物」という場合は、有機硫黄化合物(I0)と有機硫黄化合物(I)の両方を意味するものとする。
式(I)中のAにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられる。
式(I0)および/または式(I)中のA及びAにおける炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基は、脂環式構造、芳香族環式構造および複素環式構造などの環状構造を有しない炭素数1〜25の炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、また、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよい。炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよく、該脂肪族炭化水素基が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子;ヒドロキシル基;カルボキシル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;シアノ基;アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等の1つ又は2つの水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基等が挙げられる。また、該脂肪族炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよい。このような脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜25のアルキル基、炭素数1〜25のアルコキシ基等が挙げられる。
式(I0)および/または式(I)中のA及びAにおける炭素数3〜25の脂環式基は、少なくとも1つの脂環式構造を有する炭素数3〜25の炭化水素基を意味し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜25のシクロアルキル基;シクロヘキシルメチル基等の炭素数4〜25のシクロアルキルアルキル基等が挙げられる。脂環式構造は、単環系であってもよく、多環系であってもよい。炭素数3〜25の脂環式基は置換基を有していてもよく、該脂環式基が有し得る置換基としては、炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基が有し得る置換基として先に例示した置換基が挙げられる。また、該脂環式基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよい。
式(I0)および/または式(I)中のA及びAにおける炭素数6〜25の芳香族基は、少なくとも1つの芳香族環構造を有する炭素数6〜25の炭化水素基を意味し、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6〜25のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜25のアラルキル基等が挙げられる。芳香族環構造は、単環系であってもよく、多環系であってもよく、多環系の場合、縮合型の多環系構造であってもよく、集合型の多環系構造であってもよい。炭素数6〜25の芳香族基は置換基を有していてもよく、該芳香族基が有し得る置換基としては、炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基が有し得る置換基として先に例示した置換基が挙げられる。また、該芳香族基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよく、該芳香族基を構成する炭素原子は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置き換わっていてもよい。
式(I)におけるAは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、および、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基のいずれかであり、より好ましくは水素原子およびハロゲン原子のいずれかである。
式(I0)および式(I)におけるAは、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、および、置換基を有していてもよい炭素数7〜25のアラルキル基のいずれかであり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基および置換基を有していてもよい炭素数7〜25のアラルキル基のいずれかである。前記アルキル基、アリール基、アラルキル基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−S−に置き換わっていてもよく、前記アリール基、アラルキル基を構成する炭素原子は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置き換わっていてもよい。
上記アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基およびアラルキル基が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、1つ又は2つの水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基等が挙げられる。
有機硫黄化合物(I)が、同一平面上には存在しない2つの芳香環を含むチオエーテル構造を有すると、該有機硫黄化合物(I)を含む重合性液晶組成物から液晶硬化膜を形成する際に有機硫黄化合物(I)が重合性液晶化合物と協調的に配向し難く、不要な複屈折率を生じ難い。このため、特に逆波長分散性を示し得る重合性液晶化合物と組み合わせて含むことにより、重合性液晶化合物が本来発現し得る高い初期光学特性を示す液晶硬化膜を得ることができ、かつ、その後太陽光に曝される環境下においても光学特性が経時的な変化を生じ難く、製膜時に得られた高い初期光学特性を長期間において維持し得る液晶硬化膜を得ることができる。したがって、式(I)におけるAが下記式(a):
Figure 2021175785
[式(a)中、nは0〜12の整数を表し、該−CH−は−S−に置き換わっていてもよく、A21は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、前記アルキル基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−S−に置き換わっていてもよく、*は式(I)中のイオウ原子との結合部を意味する。]
で表される基であることが特に好ましい。
有機硫黄化合物(I)としては、好ましくは、例えば以下の化合物(a1)〜(a7)が挙げられる。
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
有機硫黄化合物(I0)および有機硫黄化合物(I)において、その分子量は、好ましくは140以上、より好ましくは150以上、さらに好ましくは160以上、特に好ましくは170以上である。有機硫黄化合物の分子量が上記下限値以上であると、重合性液晶組成物を硬化させて液晶硬化膜を形成する工程において、加熱に起因して有機硫黄化合物が消失または蒸発し難くなるため、十分な量の有機硫黄化合物を得られる液晶硬化膜中に存在させることができる。これにより、得られる液晶硬化膜の耐光性を十分に向上させることができる。また、有機硫黄化合物の分子量は、好ましくは310以下、より好ましくは300以下、さらに好ましくは280以下、特に好ましくは250未満である。有機硫黄化合物の分子量が上記上限値以下であると、重合性液晶化合物の配向に乱れを生じ難く、高い光学特性を有する液晶硬化膜を得られる。
また、本発明の重合性液晶組成物において有機硫黄化合物は、光重合開始剤としての機能を有しない化合物であることが好ましい。光重合開始剤としての機能を有しない有機硫黄化合物は液晶硬化膜の作製時に重合反応に寄与しないため、液晶硬化膜中に酸化防止剤として機能し得るチオエーテル構造がより多く存在しやすくなる。これにより、重合開始剤とは別に有機硫黄化合物を含むことにより、より耐久性に優れる液晶硬化膜が得られやすい。
光重合開始剤としての機能を有さず、分子量が上記範囲内である有機硫黄化合物(I)としては、例えば、式(a2)〜(a7)に記載されるような化合物が挙げられる。
有機硫黄化合物の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。有機硫黄化合物を上記範囲内の量で含むと、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い光学特性を有する液晶硬化膜が得られるとともに、該液晶硬化膜の耐久性を向上させることができる。
本発明の重合性液晶組成物が有機硫黄化合物を2種以上含む場合、そのうちの少なくとも1種が有機硫黄化合物(I)であることが好ましく、全てが有機硫黄化合物(I)であってもよい。有機硫黄化合物を複数含む場合、重合性液晶組成物に含まれる全ての有機硫黄化合物の総量が上述した有機硫黄化合物の含有量の範囲内になることが好ましい。
<その他の成分(添加剤等)>
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物、重合開始剤及び有機硫黄化合物(I)に加えて、溶媒、レベリング剤、光増感剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性液晶組成物は、通常、溶媒に溶解した状態で基材等に塗布されるため、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒が好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶媒であることが好ましい。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、アルコール溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、塩素含有溶媒、アミド系溶媒及び芳香族炭化水素溶媒が好ましい。
重合性液晶組成物中の溶媒の含有量は、重合性液晶組成物100質量部に対して、好ましくは50〜98質量部、より好ましくは70〜95質量部である。従って、重合性液晶組成物100質量部に占める固形分は、2〜50質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。固形分が50質量部以下であると、重合性液晶組成物の粘度が低くなることから、膜の厚みが略均一になり、ムラが生じ難くなる傾向がある。上記固形分は、製造しようとする液晶硬化膜の厚みを考慮して適宜定めることができる。
レベリング剤とは、重合性液晶組成物の流動性を調整し、組成物を塗布して得られる塗膜をより平坦にする機能を有する添加剤であり、例えば、シリコーン系、ポリアクリレート系及びパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。レベリング剤として市販品を用いてもよく、具体的には、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22−161A、KF6001(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)、フロリナート(fluorinert)(登録商標)FC−72、同FC−40、同FC−43、同FC−3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)R−08、同R−30、同R−90、同F−410、同F−411、同F−443、同F−445、同F−470、同F−477、同F−479、同F−482、同F−483、同F−556(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S−381、同S−382、同S−383、同S−393、同SC−101、同SC−105、KH−40、SA−100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100、BYK−352、BYK−353及びBYK−361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)等が挙げられる。レベリング剤は単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
レベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がさらに好ましい。レベリング剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物を配向させることが容易であり、かつ得られる液晶硬化膜がより平滑となる傾向にあるため好ましい。
また、光増感剤を用いることにより、光重合開始剤を高感度化することができる。光増感剤としては、例えば、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセン及びアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類;フェノチアジン;ルブレンが挙げられる。光増感剤は単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。光増感剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.01〜10質量部であり、好ましくは0.05〜5質量部であり、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物、重合開始剤及び有機硫黄化合物と、必要に応じて溶媒や添加剤などの重合性液晶化合物、重合開始剤及び有機硫黄化合物以外の成分とを所定温度で撹拌等することにより得ることができる。
<重合性液晶組成物>
本発明の重合性液晶組成物は上述のとおり、重合性液晶化合物及び有機硫黄化合物を含む。以下、好適な重合性液晶化合物と、好適な有機硫黄化合物との組み合わせを具体的に列挙する。好適な重合性液晶組成物は、以下の表1〜表6に示す、組成物番号(a2−1)〜組成物番号(a2−24)、組成物番号(a3−1)〜組成物番号(a3−24)、組成物番号(a4−1)〜組成物番号(a4−24)、組成物番号(a5−1)〜組成物番号(a5−24)、組成物番号(a6−1)〜組成物番号(a6−24)、組成物番号(a7−1)〜組成物番号(a7−24)である。これらの重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物(A1)を、それを構成する二価芳香族基と、側鎖(A1−0)との組み合わせで示し、側鎖(A1−0)における側鎖(A1−1)と、側鎖(A1−2)とは互いに同じであるものを意味する。
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
Figure 2021175785
<液晶硬化膜>
本発明の重合性液晶組成物は、優れた光学特性を有するとともに、太陽光に暴露されるような環境下においても経時的な性能変化を生じ難い高い耐光性を示す液晶硬化膜を作製するのに好適に使用することができるため、これにより得られる液晶硬化膜は位相差板などの光学用途に好適である。したがって、本発明は、本発明の重合性液晶組成物の硬化物であって、該重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物が配向した状態で硬化してなる液晶硬化膜も対象とする。
本発明の一態様において、本発明の液晶硬化膜は、本発明の重合性液晶組成物の硬化物であり、下記式(1)、(2)及び(3)で表される光学特性を有する。該液晶硬化膜は、通常、重合性液晶化合物が該液晶硬化膜平面に対して水平方向に配向した状態で硬化してなる硬化物(以下、「水平配向液晶硬化膜」ともいう)である。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm≦Re(550)≦180nm (3)
〔式中、Re(λ)は液晶硬化膜の波長λnmにおける面内位相差値を表し、Re=(nx(λ)−ny(λ))×dである(dは液晶硬化膜の厚み(nm)を表し、nx(λ)は、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に平行な方向の波長λnmにおける主屈折率を表し、ny(λ)は、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に対して平行であり、且つ、前記nxの方向に対して直交する方向の波長λnmにおける屈折率を表す)。〕
水平配向液晶硬化膜が式(1)及び(2)を満たす場合、当該水平配向液晶硬化膜は、短波長での面内位相差値が長波長での面内位相差値よりも小さくなる、いわゆる逆波長分散性を示す。逆波長分散性が向上し、液晶硬化膜(位相差板)の光学特性がより向上することから、Re(450)/Re(550)は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.78以上であり、また、好ましくは0.92以下、より好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.88以下、特に好ましくは0.87以下、より特に好ましくは0.86以下である。また、Re(650)/Re(550)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.01以上であり、さらに好ましくは1.02以上である。
上記面内位相差値は、水平配向液晶硬化膜の厚みdによって調整することができる。面内位相差値は、上記式Re(λ)=(nx(λ)−ny(λ))×dによって決定されることから、所望の面内位相差値(Re(λ):波長λ(nm)における水平配向液晶硬化膜の面内位相差値)を得るには、3次元屈折率と膜厚dとを調整すればよい。
また、水平配向液晶硬化膜が式(3)を満たす場合、該水平配向液晶硬化膜を含む位相差板を備える楕円偏光板を有機EL表示装置に適用した場合の正面反射色相の向上効果(着色を抑制させる効果)に優れる。面内位相差値のより好ましい範囲は、120nm≦Re(550)≦170nmであり、さらに好ましい範囲は130nm≦Re(550)≦150nmである。
本発明の液晶硬化膜は、例えば、
本発明の重合性液晶組成物の塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、かつ、該重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物を配向させる工程、及び、
配向状態を保持したまま重合性液晶化合物を重合させ、液晶硬化膜を形成する工程
を含む方法により製造することができる。
重合性液晶組成物の塗膜は、基材上又は後述する配向膜上などに重合性液晶組成物を塗布することにより形成することができる。
基材としては、例えば、ガラス基材やフィルム基材等が挙げられるが、加工性の観点から樹脂フィルム基材が好ましい。フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びノルボルネン系ポリマーのようなポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びセルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドのようなプラスチックが挙げられる。このような樹脂を、溶媒キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して基材とすることができる。基材表面には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等から形成される保護層を有していてもよく、シリコーン処理のような離型処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
基材として市販の製品を用いてもよい。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、フジタックフィルムのような富士写真フィルム株式会社製のセルロースエステル基材;「KC8UX2M」、「KC8UY」、及び「KC4UY」のようなコニカミノルタオプト株式会社製のセルロースエステル基材などが挙げられる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、たとえば、「Topas(登録商標)」のようなTicona社(独)製の環状オレフィン系樹脂;「アートン(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)」、及び「ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)」のような日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「アペル」(登録商標)のような三井化学株式会社製の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。
市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、「エスシーナ(登録商標)」及び「SCA40(登録商標)」のような積水化学工業株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「ゼオノアフィルム(登録商標)」のようなオプテス株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「アートンフィルム(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材が挙げられる。
得られる積層体の薄型化、基材の剥離容易性、基材のハンドリング性等の観点から、基材の厚みは、通常、5〜300μmであり、好ましくは10〜150μmである。
重合性液晶組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法等の公知の方法が挙げられる。
次いで、溶媒を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。この際、重合性液晶組成物から得られた塗膜を加熱することにより、塗膜から溶媒を乾燥除去させるとともに重合性液晶化合物を塗膜平面に対して所望の方向(例えば、水平方向)に配向させることができる。塗膜の加熱温度は、用いる重合性液晶化合物及び塗膜を形成する基材等の材質などを考慮して、適宜決定し得るが、重合性液晶化合物を液晶相状態へ相転移させるために、通常、液晶相転移温度以上の温度であることが必要である。重合性液晶組成物に含まれる溶媒を除去しながら、重合性液晶化合物を所望の配向状態とするため、例えば、前記重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の液晶相転移温度(スメクチック相転移温度又はネマチック相転移温度)程度以上の温度まで加熱することができる。
なお、液晶相転移温度は、例えば、温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡や、示差走査熱量計(DSC)、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)等を用いて測定することができる。また、重合性液晶化合物として2種以上を組み合わせて用いる場合、上記相転移温度は、重合性液晶組成物を構成する全重合性液晶化合物を重合性液晶組成物における組成と同じ比率で混合した重合性液晶化合物の混合物を用いて、1種の重合性液晶化合物を用いる場合と同様にして測定される温度を意味する。また、一般に重合性液晶組成物中における重合性液晶化合物の液晶相転移温度は、重合性液晶化合物単体としての液晶相転移温度よりも下がる場合もあることが知られている。
加熱時間は、加熱温度、用いる重合性液晶化合物の種類、溶媒の種類やその沸点及びその量等に応じて適宜決定し得るが、通常、15秒〜10分であり、好ましくは0.5〜5分である。
塗膜からの溶媒の除去は、重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱と同時に行ってもよいし、別途で行ってもよいが、生産性向上の観点から同時に行うことが好ましい。重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱を行う前に、重合性液晶組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で塗膜中の溶媒を適度に除去させるための予備乾燥工程を設けてもよい。かかる予備乾燥工程における乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられ、該乾燥工程における乾燥温度(加熱温度)は、用いる重合性液晶化合物の種類、溶媒の種類やその沸点及びその量等に応じて適宜決定し得る。
次いで、得られた乾燥塗膜において、重合性液晶化合物の配向状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、所望の配向状態で存在する重合性液晶化合物の重合体である液晶硬化膜が形成される。重合方法としては、通常、光重合法が用いられる。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)及びその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線及びγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。
また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に液晶硬化膜を形成できる。また、光照射時の熱による不具合(基材の熱による変形等)が発生しない範囲で重合温度を高くすることにより重合反応を促進することも可能である。
光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた硬化膜を得ることもできる。
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380〜440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
紫外線照射強度は、通常、10〜3,000mW/cmである。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒〜10分であり、好ましくは0.1秒〜5分、より好ましくは0.1秒〜3分、さらに好ましくは0.1秒〜1分である。このような紫外線照射強度で1回又は複数回照射すると、その積算光量は、10〜3,000mJ/cm、好ましくは50〜2,000mJ/cm、より好ましくは100〜1,000mJ/cmである。
液晶硬化膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.2〜3μm、より好ましくは0.2〜2μmである。
重合性液晶組成物の塗膜は配向膜上に形成されてもよい。配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。例えば、本発明の重合性液晶組成物から、上記式(1)〜(3)を満たすような水平配向液晶硬化膜を作製する際には、重合性液晶化合物を水平方向に配向させる配向規制力を有する水平配向膜を用いることが好ましい。配向規制力は、配向膜の種類、表面状態やラビング条件等によって任意に調整することが可能であり、配向膜が光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。
配向膜としては、重合性液晶組成物の塗布等により溶解しない溶媒耐性を有し、また、溶媒の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜及び表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、配向角の精度及び品質の観点から光配向膜が好ましい。
配向性ポリマーとしては、例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶媒に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ということがある)を基材に塗布し、溶媒を除去する、又は、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶媒を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで得られる。溶媒としては、重合性液晶組成物に用い得る溶媒として先に例示した溶媒と同様のものが挙げられる。
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶媒に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1〜20%が好ましく、0.1〜10%程度がさらに好ましい。
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、重合性液晶組成物を基材へ塗布する方法として例示したものと同様のものが挙げられる。
配向性ポリマー組成物に含まれる溶媒を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を接触させる方法が挙げられる。ラビング処理を行う時に、マスキングを行えば、配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を配向膜に形成することもできる。
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶媒とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材に塗布し、溶媒を除去後に偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御することができる点でも有利である。
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応又は光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素−炭素二重結合(C=C結合)、炭素−窒素二重結合(C=N結合)、窒素−窒素二重結合(N=N結合)及び炭素−酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、複素芳香族環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、及び、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基及びカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶媒としては、重合性液晶組成物に用い得る溶媒として先に例示した溶媒と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマー又はモノマーの含有量は、ポリマー又はモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3〜10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶媒を除去する方法としては例えば、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
偏光を照射するには、基材上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶媒を除去したものに直接、偏光UVを照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250〜400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
なお、ラビング又は偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターン又は複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像及びリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、及び、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
配向膜(配向性ポリマーを含む配向膜又は光配向膜)の厚みは、通常10〜10000nmの範囲であり、好ましくは10〜1000nmの範囲であり、より好ましくは10〜500nm以下であり、さらに好ましくは10〜300nm、特に好ましい50〜250nmの範囲である。
本発明は、本発明の液晶硬化膜と偏光フィルムとを含む楕円偏光板を包含する。
偏光フィルムは、偏光機能を有するフィルムであり、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムや吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムを偏光子として含むフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として含むフィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造された偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して透明保護フィルムで挟み込むことで作製される。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000の範囲である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10〜150μm程度とすることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶媒を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性の有機染料としては、C.I.DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料及び、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常、0.01〜1質量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常、0.5〜20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。
この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常、1×10−4〜10質量部程度であり、好ましくは1×10−3〜1質量部であり、さらに好ましくは1×10−3〜1×10−2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2〜15質量部程度であり、好ましくは5〜12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1〜15質量部程度であり、好ましくは5〜12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度である。
また浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
水洗後に乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5〜20質量%程度であり、好ましくは8〜15質量%である。水分率が上記範囲内であると、適度な可撓性を有し、かつ、熱安定性に優れる偏光子が得られやすい。
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗及び乾燥をして得られる偏光子の厚さは好ましくは5〜40μmである。
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物又は、二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。当該フィルムは、好ましくは、その片面又は両面に保護フィルムを有する。
当該保護フィルムとしては、液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同一のものが挙げられる。
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムは薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5〜3μmである。
前記吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012−33249号公報等に記載のフィルムが挙げられる。
このようにして得られた偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤を介して透明保護フィルムを積層することにより偏光フィルムが得られる。透明保護フィルムとしては、液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同様の透明フィルムを好ましく用いることができる。
本発明の楕円偏光板は、本発明の液晶硬化膜と偏光フィルムとを含んで構成されるものであり、例えば、本発明の液晶硬化膜(位相差板)と偏光フィルムとを接着剤層又は粘着剤層等を介して積層させることにより本発明の楕円偏光板を得ることができる。
本発明の一態様においては、本発明の水平配向液晶硬化膜(位相差板)と偏光フィルムとが積層される場合、水平配向液晶硬化膜の遅相軸(光軸)と偏光フィルムの吸収軸との成す角が45±5°となるように積層することが好ましい。
本発明の楕円偏光板は、従来の一般的な楕円偏光板、又は偏光フィルム及び位相差板が備えるような構成を有していてよい。そのような構成としては、例えば、楕円偏光板を有機EL等の表示素子に貼合するための粘着剤層(シート)、偏光フィルムや位相差板(液晶硬化膜)の表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるプロテクトフィルム等が挙げられる。
本発明の楕円偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置及び投射型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に本発明の楕円偏光板は有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に好適に用いることができ、本発明の液晶硬化膜は液晶表示装置及びタッチパネル表示装置に好適に用いることができる。これらの表示装置は、光学特性に優れる本発明の楕円偏光板を備えることにより、良好な画像表示特性を発現することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%及び質量部を意味する。
1.実施例1
(1)水平配向膜形成用組成物の調製
下記繰り返し構造からなる光配向性材料5部(重量平均分子量:30000)とシクロペンタノン(溶媒)95部とを混合した。得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向膜形成用組成物を得た。
光配向性材料:
Figure 2021175785
(2)重合性液晶組成物の調製
特開2010−31223号公報に記載の方法に準じて重合性液晶化合物(A−1)を合成した。重合性液晶化合物(A−1)100質量部に対して、レベリング剤としてポリアクリレート化合物(BYK−361N;BYK−Chemie社製)0.1質量部、光重合開始剤として2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(イルガキュア369(Irg369);BASFジャパン株式会社製)5.0質量部、及び有機硫黄化合物(I)としてフェニル−p−トリルスルフィド(PTS;東京化成工業株式会社製)5.0質量部を添加し、混合した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、80℃で1時間攪拌することにより、重合性液晶組成物を得た。
重合性液晶化合物(A−1)の1mg/50mLテトラヒドロフラン溶液を調製し、光路長1cmの測定用セルに測定用試料として該溶液を入れ、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV−2450」)にセットして吸収スペクトルを測定した。得られた吸収スペクトルから吸光度が極大となる波長を読み取ったところ、波長300〜400nmの範囲における極大吸収波長λmaxは350nmであった。
重合性液晶化合物(A−1):
Figure 2021175785
有機硫黄化合物(PTS)
Figure 2021175785
(3)水平配向液晶硬化膜の作製
基材としてシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(ZF−14;日本ゼオン株式会社製)を準備した。基材の一方の面を、コロナ処理装置を用いてコロナ処理した。コロナ処理を施した基材の表面に、バーコーターを用いて上述した水平配向膜形成用組成物を塗布し、80℃で1分間乾燥した。偏光UV照射装置(SPOT CURE SP−9;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量が100mJ/cmの積算光量となるように、塗膜に偏光UV露光を施して水平配向膜を得た。
次いで、得られた水平配向膜上にバーコーターを用いて上記重合性液晶組成物を塗布し、120℃で90秒間熱をかけ、かつ熱風を当てて乾燥した。得られた重合性液晶組成物の塗膜付基材を、石英ガラス付きの密閉容器に入れ、密閉容器に窒素を充填し、気中の酸素濃度を100ppm以下とした。この酸素濃度100ppm以下の状況下で、高圧水銀ランプを用いて、重合性液晶組成物の塗布面側から紫外線を照射し、重合性液晶化合物を重合させた。照射された紫外線は、波長365nmにおける積算光量が300mJ/cmであった。このようにして、COPフィルム/水平配向膜/水平配向液晶硬化膜からなる光学フィルムを得た。得られた水平配向液晶硬化膜の極大吸収波長は350nmであった。
(4)水平配向液晶硬化膜の物性/特性評価
[面内位相差値測定]
得られた光学フィルムの波長450nm、波長550nm、並びに波長650nmの光に対する面内位相差値を、王子計測機器株式会社製のKOBRA−WRを用いて測定した。面内位相差値は、Re(450)=125nm、Re(550)=145nm、Re(630)=150nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であった。
得られた面内位相差値を光学フィルムの初期光学特性として表7に示す。
(5)楕円偏光板の作製
(i)水系接着剤の調製
水100質量部に対して、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(KL−318;株式会社クラレ製)を3質量部溶解させた。得られた混合物に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤(スミレーズレジン 650(30);田岡化学工業株式会社製、固形分濃度30%の水溶液)を1.5質量部添加し、撹拌して水系接着剤を調製した。
(ii)偏光フィルムの作製
厚み20μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約4倍に一軸延伸した。さらに緊張状態を保ったまま、フィルムを40℃の純水に40秒間浸漬した。フィルムをヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.052/5.7/100である水溶液に28℃で30秒間浸漬して、染色処理を行った。その後、フィルムをヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が11.0/6.2/100である水溶液に70℃で120秒間浸漬した。フィルムを8℃の純水で15秒間洗浄した。300Nの張力で保持した状態で、フィルムを60℃で50秒間、次いで75℃で20秒間乾燥した。このようにして、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚さ7μmの偏光子を得た。
偏光子の一方の面に水系接着剤を塗布し、保護フィルムA(COP25ST−HC;日本製紙株式会社製、厚さ25μmのノルボルネン樹脂からなる延伸フィルムと厚さ3μmのハードコート層とが積層されたフィルム)を貼り合わせた。このとき保護フィルムAの延伸方向が偏光子の吸収軸に対して45度となるように貼り合わせた。その後、乾燥させて偏光フィルムを得た。
上記で作製した光学フィルムにおける水平配向液晶硬化膜上に厚さ5μmの粘着剤A(NCF ♯L2;リンテック株式会社製)を積層した。次に、光学フィルムの基材側(COPフィルム側)の面に厚さ25μmの粘着剤B(P−3132;リンテック株式会社製)を積層した。このようにして、粘着剤B/COPフィルム/水平配向膜/水平配向液晶硬化膜/粘着剤Aからなる両面粘着剤付きの光学フィルムを作製した。
(iii)楕円偏光板の作製
上記で作製した偏光フィルムの偏光子上に、両面粘着剤付きの光学フィルムにおける粘着剤Aを介して、両面粘着剤付きの光学フィルムを貼り合わせた。この際、水平配向液晶硬化膜の遅相軸は、偏光子の吸収軸に対して45度であり、保護フィルムAの延伸方向に対して90度であった。このようにして、保護フィルムA、水系接着剤層、偏光子、粘着剤A、水平配向液晶硬化膜、水平配向膜、COPフィルム、および粘着剤Bからなる楕円偏光板を作製した。
水平配向液晶硬化膜の遅相軸が、長辺と平行になるように、楕円偏光板を140mm×70mmの大きさの長方形に裁断した。このとき、保護フィルムAの延伸方向は、短辺方向と平行であった。裁断した楕円偏光板を、粘着剤Bを介して、厚さ0.7mmのガラス板(EAGLE XG(登録商標);コーニング社製)へ貼り合わせ、光学積層体(1)を得た。
(6)楕円偏光板の特性評価
[耐光性評価]
得られた光学積層体(1)に対して、卓上キセノンアークランプ式促進耐光性試験機(ATLAS製、SUNTEST XLS+)を用いて、UV露光量が95400kJ/mとなるように紫外線を照射した。紫外線の照射は、光学フィルムを基準に光学積層体(1)の偏光フィルム側から行った。照射前後の光学積層体(1)の波長450nmの光及び波長550nmの光に対する面内位相差値を、王子計測機器株式会社製のKOBRA−WRを用いて測定した。得られたデータから、各光学積層体のΔRe(550)及びΔαを算出した。
ΔRe(550)=照射後のRe(550)−照射前のRe(550)
Δα=|照射後のRe(450)/Re(550)−照射前のRe(450)/Re(550)|
<評価基準>
○:ΔRe(550)が−5nm未満であるものを耐光性が良好であるとした。
×:ΔRe(550)が−5nm以上であるものを耐光性が低いとした。
2.実施例2
有機硫黄化合物(PTS)の添加量を表7に記載の添加量に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合性液晶化合物(A−1)を含む重合性液晶組成物を調製し、水平配向液晶硬化膜を含む光学フィルムを得た。
実施例1と同様の方法にて、楕円偏光板を作製し、耐光性を評価した。結果を表7に示す。
3.実施例3
有機硫黄化合物(PTS)の添加量を表7に記載の添加量に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合性液晶化合物(A−1)を含む重合性液晶組成物を調製し、水平配向液晶硬化膜を含む光学フィルムをそれぞれ得た。
実施例1と同様の方法にて、楕円偏光板を作製し、耐光性を評価した。結果を表7に示す。
4.実施例4
表7に記載の通り、重合性液晶化合物(A−1)を重合性液晶化合物(B−1)に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合性液晶化合物(B−1)を含む重合性液晶組成物を調製し、水平配向液晶硬化膜を含む光学フィルムを得た。重合性液晶化合物(B−1)は、特開2016−81035号公報を参考にして合成した。
重合性液晶化合物(B−1)の1mg/50mLテトラヒドロフラン溶液を調製した。
光路長1cmの測定用セルに測定用試料として該溶液を入れ、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV−2450」)にセットして吸収スペクトルを測定した。得られた吸収スペクトルから吸光度が極大となる波長を読み取ったところ、波長300〜400nmの範囲における極大吸収波長λmaxは352nmであった。
重合性液晶化合物(B−1):
Figure 2021175785
実施例1と同様の方法にて、得られた液晶硬化膜の波長450nm、波長550nmでの面内位相差値からRe(450)/Re(550)値を算出した。また、実施例1と同様の方法により楕円偏光板を作製し、耐光性を評価した。結果を表7に示す。
5.実施例5
表7に記載の通り、重合性液晶化合物(A−1)を重合性液晶化合物(C−1)に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合性液晶化合物(C−1)を含む重合性液晶組成物を調製し、水平液晶硬化膜を含む光学フィルムを得た。重合性液晶化合物(C−1)は、国際特許公開2015/025793号公報を参考にして合成した。
重合性液晶化合物(C−1)の1mg/50mLテトラヒドロフラン溶液を調製した。
光路長1cmの測定用セルに測定用試料として該溶液を入れ、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV−2450」)にセットして吸収スペクトルを測定した。得られた吸収スペクトルから吸光度が極大となる波長を読み取ったところ、波長300〜400nmの範囲における極大吸収波長λmaxは352nmであった。
重合性液晶化合物(C−1):
Figure 2021175785
実施例1と同様の方法にて、得られた液晶硬化膜の波長450nm、波長550nmでの面内位相差値からRe(450)/Re(550)値を算出した。また、実施例1と同様の方法により楕円偏光板を作製し、耐光性を評価した。結果を表7に示す。
6.実施例6
光重合開始剤をイルガキュアOXE−01(BASFジャパン株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合性液晶化合物(A−1)を含む重合性液晶組成物を調製し、水平配向液晶硬化膜を含む光学フィルムをそれぞれ得た。
実施例1と同様の方法にて、楕円偏光板を作製し、耐光性を評価した。結果を表7に示す。
7.比較例1
有機硫黄化合物(PTS)を含まなかったこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合性液晶化合物(A−1)を含む重合性液晶組成物を調製し、水平配向液晶硬化膜を含む光学フィルムをそれぞれ得た。
実施例1と同様の方法にて、楕円偏光板を作製し、耐光性を評価した。結果を表7に示す。
8.比較例2
有機硫黄化合物(PTS)を3,3’−ジチオジプロピオン酸(DTDPA;SC有機化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合性液晶化合物(A−1)を含む重合性液晶組成物を調製し、水平配向液晶硬化膜を含む光学フィルムをそれぞれ得た。
実施例1と同様の方法にて、楕円偏光板を作製し、耐光性を評価した。結果を表7に示す。
有機硫黄化合物(DTDPT)
Figure 2021175785
Figure 2021175785

Claims (11)

  1. 重合性液晶化合物、重合開始剤及び有機硫黄化合物を含む重合性液晶組成物であって、 前記有機硫黄化合物が、式(I0):
    Figure 2021175785
    [式(I0)中、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜25の脂環式基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜25の芳香族基を表し、該脂肪族炭化水素基、該脂環式基及び該芳香族基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよく、該芳香族基を構成する炭素原子は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置き換わっていてもよく、Ar’は、芳香族基又は複素芳香族基を表す]
    で表されるチオエーテル構造を有する化合物である、重合性液晶組成物。
  2. 前記有機硫黄化合物が、式(I):
    Figure 2021175785
    [式(I)中、Aは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜25の脂環式基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜25の芳香族基を表し、該脂肪族炭化水素基、該脂環式基及び該芳香族基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−C(=N)O−、−SO−又は−S−に置き換わっていてもよく、該芳香族基を構成する炭素原子は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置き換わっていてもよく、Aは前記と同義である]
    で表される化合物である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
  3. 前記重合性液晶化合物は、エステル構造と(メタ)アクリロイル基とを有し、かつ波長300〜400nmに極大吸収を示す重合性液晶化合物である、請求項1又は2に記載の重合性液晶組成物。
  4. 前記有機硫黄化合物の分子量は140以上310以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
  5. 前記有機硫黄化合物の含有量は、前記重合性液晶化合物100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
  6. 前記重合開始剤の含有量は、前記重合性液晶化合物100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
  7. 前記重合性液晶化合物は、一方向に配向した状態で重合させたときに逆波長分散性の複屈折率を発現し得る液晶化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の重合性液晶組成物の硬化物からなる液晶硬化膜。
  9. 前記液晶硬化膜は、式(1)〜(3)
    Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
    1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
    100nm≦Re(550)≦180nm (3)
    〔式中、Re(λ)は液晶硬化膜の波長λnmにおける面内位相差値を表し、Re=(nx(λ)−ny(λ))×dである(dは液晶硬化膜の厚み(nm)を表し、nx(λ)は、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に平行な方向の波長λnmにおける主屈折率を表し、ny(λ)は、液晶硬化膜が形成する屈折率楕円体において、液晶硬化膜の平面に対して平行であり、且つ、前記nxの方向に対して直交する方向の波長λnmにおける屈折率を表す)〕
    で表される光学特性を有する、請求項8に記載の液晶硬化膜。
  10. 請求項8又は9に記載の前記液晶硬化膜と偏光フィルムとを含む楕円偏光板。
  11. 請求項10に記載の楕円偏光板を含む有機EL表示装置。
JP2020150690A 2020-04-28 2020-09-08 重合性液晶組成物、液晶硬化膜、楕円偏光板及び有機el表示装置 Pending JP2021175785A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020079468 2020-04-28
JP2020079468 2020-04-28

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021175785A true JP2021175785A (ja) 2021-11-04

Family

ID=78300293

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020150690A Pending JP2021175785A (ja) 2020-04-28 2020-09-08 重合性液晶組成物、液晶硬化膜、楕円偏光板及び有機el表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021175785A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7166049B2 (ja) 楕円偏光板
JP6876638B2 (ja) 楕円偏光板
JP7420502B2 (ja) 重合性液晶混合組成物、位相差板、楕円偏光板および有機el表示装置
JP7461122B2 (ja) 積層体およびこれを含む楕円偏光板
JP2024009942A (ja) 積層体および垂直配向液晶硬化膜形成用組成物
TW201939133A (zh) 積層體及其製造方法
WO2020196080A1 (ja) 重合性液晶組成物、液晶硬化膜、楕円偏光板及び有機el表示装置
WO2022050003A1 (ja) 光学積層体およびこれを含む楕円偏光板
WO2020149357A1 (ja) 積層体、楕円偏光板および重合性液晶組成物
JP2021175785A (ja) 重合性液晶組成物、液晶硬化膜、楕円偏光板及び有機el表示装置
US11971566B2 (en) Horizontally oriented liquid crystal cured film and laminate including the same
TWI838520B (zh) 積層體及垂直配向液晶硬化膜形成用組合物
JP7405576B2 (ja) 光学異方性膜
JP2022017912A (ja) 重合性液晶組成物、液晶硬化膜およびその製造方法
WO2021193131A1 (ja) 重合性液晶化合物、重合性液晶組成物、位相差フィルム、楕円偏光板および有機el表示装置
WO2020149205A1 (ja) 重合性液晶組成物、位相差板、楕円偏光板および有機el表示装置
WO2022168607A1 (ja) 重合性液晶混合物、重合性液晶組成物
JP2020114911A (ja) 重合性液晶組成物、位相差板、楕円偏光板および有機el表示装置