以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
(無線電力伝送システムの構成)
図1に、本実施形態の無線電力伝送システムの構成例を示す。本システムは、例えば、無線充電システムである。本システムは、送電装置101と受電装置102とを含んで構成される。以下では、送電装置101をTXと呼び、受電装置102をRXと呼ぶ場合がある。RXは内蔵バッテリを有し、TXから受電した電力をその内蔵バッテリに充電する電子機器である。TXは、例えばTXの筐体の一部として用意される充電台103に載置されたRXに対して無線で送電する電子機器である。なお、充電台103はTXの一部であるため、以下では、「充電台103に戴置された」ことを「TX(送電装置101)に載置された」という場合がある。破線によって示されている範囲104は、RXがTXから受電が可能な範囲である。なお、TXとRXは、無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RXは、例えばスマートフォンであり、TXは、例えばそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。なお、TX及びRXは、タブレットや、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、TX及びRXは、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、RXは、例えば自動車等の車両であってもよいし、TXは自動車のコンソール等に設置される充電器であってもよい。
本システムでは、WPC規格に基づいて、無線充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行う。すなわち、TXとRXは、TXの送電アンテナとRXの受電アンテナとの間で、WPC規格に基づく無線充電のための無線電力伝送を行う。なお、本システムでは、無線電力伝送方式としてWPC規格で規定された方式が用いられるものとするが、これに限られず、他の方式が用いられてもよい。例えば、電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式などが用いられてもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
WPC規格では、受電装置102が送電装置101から受電する際に保証される電力の大きさが、Guaranteed Power(以下、「GP」と呼ぶ)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えば受電装置102と送電装置101の位置関係が変動して受電アンテナと送電アンテナとの間の送電効率が低下したとしても、受電装置102の負荷(例えば、充電用の回路、バッテリー等)への出力が保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電アンテナと送電アンテナの位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、送電装置101は、受電装置102内の負荷へ5ワットを出力することができるような制御を実行して送電を行う。
また、送電装置101から受電装置102へ送電を行う際に、送電装置101の近傍に受電装置ではない物体である異物が存在する場合、送電のための電磁波が異物に影響して異物の温度を上昇させ、場合によっては異物を破壊してしまいうる。そこで、WPC規格では、異物が存在する場合に送電を停止するなどの対処を行うために、送電装置101が例えば充電台103上に異物が存在することを検出する手法が規定されている。具体的には、送電装置101における送電電力と受電装置102における受電電力との関係によって異物を検出するPower Loss(パワーロス)法が規定されている。また、送電装置101における送電アンテナ(送電コイル)の品質係数(Q値)の変化により異物を検出するQ値計測法が規定されている。なお、送電装置101は、充電台103の上に存在する物体を異物として検出するのみならず、送電装置101の近傍に位置する異物を検出するようにしうる。例えば、送電装置101は、送電可能な範囲104に存在する異物を検出してもよい。
ここで、WPC規格で規定されているPower Loss法に基づく異物検出について、図10を用いて説明する。図10の横軸は送電装置101の送電電力、縦軸は受電装置102の受電電力である。なお、異物とは、送電装置101から受電装置102への送電に影響しうる、受電装置102以外の物体であり、例えば導電性を有する金属片等の物体である。
まず、送電装置101は、第1送電電力値Pt1で受電装置102に対して送電を行い、受電装置102は、第1受電電力値Pr1の受電電力を得られたものとする。なお、この状態は、Light Load状態(軽負荷状態)と呼ばれうる。そして、送電装置101は、第1送電電力値Pt1を記憶する。ここで、第1送電電力値Pt1又は第1受電電力値Pr1は、予め定められた最小の送電電力又は受電電力である。このとき、受電装置102は、受電する電力が最小の電力となるように、負荷を制御する。例えば、受電装置102は、受電した電力が負荷(充電回路及びバッテリ等)に供給されないように、受電アンテナから負荷を切断しうる。受電装置102は、第1受電電力値Pr1を送電装置101に報告する。送電装置101は、受電装置102から第1受電電力値Pr1を受信すると、送電装置101と受電装置102との間の電力損失がPt1−Pr1(Ploss1)であると算出し、Pt1とPr1との対応を示すキャリブレーションポイント1000を作成する。
続いて、送電装置101は、送電電力値を第2送電電力値Pt2に変更し、受電装置102に対して送電を行い、受電装置102は、第2受電電力値Pr2の受電電力を得られたものとする。なお、この状態は、Connected Load状態(負荷接続状態)と呼ばれうる。そして、送電装置101は、第2送電電力値Pt2を記憶する。ここで、第2送電電力値Pt2又は第2受電電力値Pr2は、予め定められた最大の送電電力又は受電電力である。このとき、受電装置102は、受電する電力が最大の電力となるように、負荷を制御する。たとえば、受電装置102は、受電した電力が負荷に供給されるように、受電アンテナと負荷とを接続する。受電装置102は、第2送電電力値Pr2を送電装置101に報告する。送電装置101は、受電装置102から第2送電電力値Pr2を受信すると、送電装置101と受電装置102との間の電力損失がPt2−Pr2(Ploss2)であると算出し、Pt2とPr2との対応を示すキャリブレーションポイント1001を作成する。
そして、送電装置101は、キャリブレーションポイント1000とキャリブレーションポイント1001との間を直線補間する直線1002を作成する。直線1002は、送電装置101と受電装置102の近傍に異物が存在しない状態における送電電力と受電電力の関係を示している。送電装置101は、直線1002に基づいて、異物がない状態において所定の送電電力で送電した場合に受電装置102が受電する電力値を予想することができる。例えば、送電装置101が第3送電電力値Pt3で送電した場合は、直線1002上のPt3に対応する点1003から、受電装置102が受電する第3受電電力値Pr3を推定することができる。
以上のように、負荷を変えながら測定された送電装置101の送電電力値と受電装置102の受電電力値との複数の組み合わせに基づいて、負荷に応じた送電装置101と受電装置102との間の電力損失を特定することができる。また、複数の組み合わせに基づく補間により、負荷に応じた送電装置101と受電装置102との間の電力損失の推定が可能となる。このように、送電装置101が、送電電力値と受電電力値との組み合わせを取得するために送電装置101と受電装置102とが行うキャリブレーション処理を、以下では「Power Loss法のCalibration処理(CAL処理)」と呼ぶ。
キャリブレーションの後、実際に送電装置101がPt3で受電装置102に送電した場合に、送電装置101が受電装置102から受電電力値Pr3’という値を受信したとする。送電装置101は異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から実際に受電装置102から受信した受電電力値Pr3’を引いた値Pr3−Pr3’(=Ploss_FO)を算出する。このPloss_FOは、送電装置101と受電装置102の近傍に異物が存在する場合に、その異物で消費される電力による電力損失と考えることができる。このため、送電装置101は、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOがあらかじめ決められた閾値を超えた場合に、異物が存在すると判定することができる。また、送電装置101は、事前に、異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から、送電装置101と受電装置102との間の電力損失Pt3−Pr3(Ploss3)を算出しておく。そして、送電装置101は、受電装置102から受信した受電電力値Pr3’を用いて、送電装置101と受電装置102との間の電力損失Pt3−Pr3’(Ploss3’)を算出する。そして、送電装置101は、Ploss3’−Ploss3(=Ploss_FO)を用いて、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOを推定してもよい。
上述のように、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOは、受電電力に基づいてPr3−Pr3’のように算出されてもよいし、電力損失の大きさに基づいてPloss3’−Ploss3のように算出されてもよい。なお、以下では、Ploss3’−Ploss3によりPloss_FOが算出されるものとするが、Pr3−Pr3’によりPloss_FOが算出されてもよい。
Power Loss法による異物検出は、後述するCalibrationフェーズにより得られたデータに基づいて、電力伝送中(後述のPower Transferフェーズの間)に実行される。また、Q値計測法による異物検出は、電力伝送前(後述のDigital Ping送信前、NegotiationフェーズまたはRenegotiationフェーズの間)に実行される。
本実施形態のRXとTXは、WPC規格に基づく送受電制御のための通信を行う。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと、実際の電力伝送前の1以上のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定され、各フェーズにおいて、送受電制御のための必要な通信が行われる。電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズを含みうる。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。以下、各フェーズの処理について説明する。
Selectionフェーズでは、TXが、Analog Pingを間欠的に送信し、物体がTXの充電台に載置されたこと(例えば充電台にRXや導体片等が載置されたこと)を検出する。TXは、Analog Pingを送信した時の送電アンテナの電圧値と電流値の少なくともいずれか一方を検出し、電圧値がある閾値を下回る場合又は電流値がある閾値を超える場合に物体が存在すると判断し、Pingフェーズに遷移する。
Pingフェーズでは、TXが、Analog Pingより電力が大きいDigital Pingを送信する。Digital Pingの電力の大きさは、TXの上に載置されたRXの制御部が起動するのに十分な電力である。RXは、受電電圧の大きさをTXへ通知する。このように、TXは、自装置が送信したDigital Pingを受信したRXからの応答を受信することにより、Selectionフェーズにおいて検出された物体がRXであることを認識する。TXは、受電電圧値の通知を受けると、I&Cフェーズに遷移する。また、TXは、Digital Pingを送信する前に、送電アンテナのQ値(Q−Factor)を測定する。この測定結果は、Q値計測法を用いた異物検出処理を実行する際に使用される。
I&Cフェーズでは、TXは、RXを識別し、RXから機器構成情報(能力情報)を取得する。RXは、ID Packet及びConfiguration Packetを送信する。ID PacketにはRXの識別子情報が含まれ、Configuration Packetには、RXの機器構成情報(能力情報)が含まれる。TXは、ID Packet及びConfiguration Packetを受信すると、アクノリッジ(ACK、肯定応答)で応答する。そして、I&Cフェーズが終了する。
Negotiationフェーズでは、RXが要求するGPの値やTXの送電能力等に基づいてGPの値が決定される。またTXは、例えばRXからの要求に従って、Q値計測法を用いた異物検出処理を実行する。また、WPC規格では、一度Power Transferフェーズに移行した後に、RXの要求があった場合に、再度Negotiationフェーズと同様の処理が行われることが規定されている。Power Transferフェーズに移行後に再度この処理が実行されるフェーズは、Renegotiationフェーズと呼ばれる。
Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいてCalibrationが実行される。また、RXが所定の受電電力値(軽負荷状態における受電電力値/最大負荷状態における受電電力値)をTXへ通知し、TXが、効率よく送電するための調整を行う。TXへ通知された受電電力値は、Power Loss法による異物検出処理のために使用されうる。
Power Transferフェーズでは、送電の開始、継続、及びエラーや満充電による送電停止等のための制御が行われる。TXとRXは、これらの送受電制御のために、WPC規格に基づいて無線電力伝送を行う際に使用する送電アンテナ及び受電アンテナを用いて、送電アンテナ又は受電アンテナから送信される電磁波に信号を重畳して通信を行う。なお、TXとRXとの間で、WPC規格に基づく通信が可能な範囲は、TXの送電可能範囲とほぼ同様である。
(送電装置101および受電装置102の構成)
続いて、本実施形態の送電装置101(TX)及び受電装置102(RX)の構成例について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部)が、他の同様の機能を有する他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、また、さらなる構成が追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。また、以下に示す機能ブロックはそれぞれ1つ以上のプロセッサがソフトウェア命令を実行することによって実現されうるが、各機能ブロックに含まれる一部または全部の機能がハードウェアによって実現されていてもよい。
図2は、本実施形態に係る送電装置101(TX)の構成例を示している。TXは、例えば、制御部201、電源部202、送電部203、通信部204、送電アンテナ205、メモリ206、共振コンデンサ207および212〜213、および、スイッチ208〜211を含んで構成される。なお、図2では、制御部201、電源部202、送電部203、通信部204、およびメモリ206が別個の機能ブロックとして記載されているが、これらのうちの2つ以上または全部の機能ブロックが、同一チップ内に実装されてもよい。
制御部201は、例えば、メモリ206に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TX全体の制御を実行する。すなわち、制御部201は、図2に示される各機能部の制御を実行する。制御部201は、さらに、TXにおける機器認証のための通信を含む送電制御に関する制御を実行する。また、制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部201は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(Field Programmable Gate Array)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に、記憶しておくべき情報をメモリ206に記憶させる。また、制御部201は、不図示のタイマを用いて時間を計測しうる。
電源部202は、各機能ブロックに電源を供給する。電源部202は、例えば、商用電源又はバッテリである。バッテリには、商用電源から供給される電力が蓄電される。
送電部203は、電源部202から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流周波数の電力に変換し、その電力を送電アンテナ205へ入力することによって、RXに受電させるための電磁波を発生させる。送電部203は、例えば、電源部202が供給する直流電圧を、FET(Field Effect Transister)を使用したハーフブリッジ又はフルブリッジ構成のスイッチング回路で交流電圧に変換する。この場合、送電部203は、FETのON/OFFを制御するゲ−トドライバを含む。送電部203は、さらに、送電アンテナ205に入力する電圧(送電電圧)又は電流(送電電流)、又はその両方を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧又は送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧又は送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、送電部203は、制御部201の指示に基づいて、送電アンテナ205からの送電が開始又は停止されるように、電力の出力制御を行う。また、送電部203は、WPC規格に対応した受電装置102(RX)の充電部に15ワット(W)の電力を出力するだけの電力を供給する能力があるものとする。
通信部204は、RXとの間で、上述のようなWPC規格に基づく送電制御のための通信を行う。通信部204は、送電アンテナ205から出力される電磁波を変調し、RXへ情報を伝送して、通信を行う。また、通信部204は、送電アンテナ205から送電されてRXが変調した電磁波を復調して、RXが送信した情報を取得する。すなわち、通信部204で行う通信は、送電アンテナ205から送電される電磁波に信号が重畳されて行われる。また、通信部204は、送電アンテナ205とは異なるアンテナを用いたWPC規格とは異なる規格による通信でRXと通信を行ってもよいし、複数の通信を選択的に用いてRXと通信を行ってもよい。
メモリ206は、制御部201によって実行される制御プログラムを記憶する。また、メモリ206は、TX及びRXの状態(送電電力値、受電電力値等)なども記憶しうる。例えば、TXの状態は、制御部201により取得され、RXの状態は、RXの制御部301により取得された情報が通信部204を介して受信されうる。
スイッチ208〜スイッチ211は、それぞれ、制御部201によって制御され、開放又は短絡を切り替えることによって、TXの回路の構成を切り替える。スイッチ208は、OFF状態になって開放される場合、送電アンテナ205と、その送電アンテナ205に接続されている共振コンデンサ207とが送電部203と切断される。また、スイッチ208がON状態になって短絡される場合、送電アンテナ205と共振コンデンサ207が送電部203と接続される。
スイッチ209〜スイッチ211は、それぞれ、対応する共振コンデンサを含んだ直列共振回路を構成可能とするスイッチである。スイッチ209は、ON状態になって短絡される場合、送電アンテナ205と共振コンデンサ207が直列共振回路となる。この直列共振回路は、特定の周波数f1で共振するように構成される。このとき、送電アンテナ205と共振コンデンサ207およびスイッチ209が形成する閉回路に電流が流れる。スイッチ210は、共振コンデンサ212が接続されており、ON状態になって短絡される場合に、送電アンテナ205と共振コンデンサ207および共振コンデンサ212を含んだ直列共振回路を構成する。この直列共振回路は、特定の周波数f2で共振するように構成される。このとき、送電アンテナ205、共振コンデンサ207、共振コンデンサ212、およびスイッチ210が形成する閉回路に電流が流れる。スイッチ211は、共振コンデンサ213が接続されており、ON状態になって短絡される場合に、送電アンテナ205と共振コンデンサ207および共振コンデンサ213を含んだ直列共振回路を構成可能である。この直列共振回路は、特定の周波数f3で共振するように構成される。このとき、送電アンテナ205、共振コンデンサ207、共振コンデンサ213、およびスイッチ211が形成する閉回路に電流が流れる。
スイッチ208がON状態となって短絡されると共にスイッチ209〜スイッチ211がOFF状態になって開放されると、送電アンテナ205と共振コンデンサ207には、送電部203から電力が供給される。
図3は、本実施形態による受電装置102(RX)の構成例を示すブロック図である。RXは、例えば、制御部301、UI(ユーザインタフェース)部302、受電部303、通信部304、受電アンテナ305、充電部306、バッテリ307、メモリ308、スイッチ309〜311および315、共振コンデンサ312〜314を含む。なお、図3で別個に示されている機能ブロックのうちの2つ以上または全部の機能ブロックが、同一チップ内に実装されてもよい。また、図3に示される複数の機能ブロックが1つのハードウェアモジュールによって実現されてもよい。
制御部301は、例えば、メモリ308に記憶されている制御プログラムを実行することにより、RX全体の制御を実行する。すなわち、制御部301は、図3に示される各機能部の制御を実行する。また、制御部301は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行いうる。制御部301は、例えば、CPU又はMPU等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部301は、実行中のOS(Operating System)との協働によりRX全体(RXがスマートフォンである場合にはそのスマートフォン全体)を制御するようにしてもよい。また、制御部301は、ASIC等のハードウェアによって構成されてもよい。また、制御部301は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部301は、各種処理を実行中に、記憶しておくべき情報をメモリ308に記憶させる。また、制御部301は、不図示のタイマを用いて時間を計測しうる。
UI部302は、ユーザに対する各種の出力を行う。各種の出力は、例えば、画面表示、LED(Light Emitting Diode)の点滅や色の変化、スピーカによる音声出力、RX本体の振動等の動作を含む。このため、UI部302は、例えば、液晶パネル、スピーカ、バイブレーションモータ等を含んで構成される。なお、UI部302は、例えば、ユーザからの操作を受け付けるための入力機構を有してもよい。
受電部303は、受電アンテナ305を介して、TXの送電アンテナ205から放射された電磁波に基づく電磁誘導によって生じた交流電力(交流電圧及び交流電流)を取得する。そして、受電部303は、交流電力を直流電力又は所定周波数の交流電力に変換して、バッテリ307を充電するための処理を行う充電部306に、変換後の電力を出力する。このために、受電部303は、例えば、RXにおける負荷に対して電力を供給するために必要な、整流部と電圧制御部を含む。上述のGPは、受電部303から出力されることが保証される電力量である。受電部303は、充電部306がバッテリ307を充電するための電力を供給し、充電部306に15ワットの電力を出力するだけの電力供給能力があるものとする。
通信部304は、TXが有する通信部204との間で、上述したようなWPC規格に基づく受電制御ための通信を行う。通信部304は、受電アンテナ305から入力された電磁波を復調してTXから送信された情報を取得する。また、通信部304は、その入力された電磁波を負荷変調することによってTXへ送信すべき情報に関する信号を電磁波に重畳することにより、TXへ情報を送信する。なお通信部304は、受電アンテナ305とは異なるアンテナを用いたWPC規格とは異なる規格による通信でTXと通信を行ってもよいし、複数の通信を選択的に用いてTXと通信を行ってもよい。
メモリ308は、制御部301によって実行される制御プログラムを記憶する。また、メモリ308は、TX及びRXの状態なども記憶する。例えば、RXの状態は制御部301により取得され、TXの状態はTXの制御部201により取得された情報が通信部304を介して受信されうる。
スイッチ309〜311および315は、それぞれ、制御部301によって制御され、開放又は短絡を切り替えることによって、RXの回路の構成を切り替える。
スイッチ309は、ON状態になって短絡される場合、受電アンテナ305と、その受電アンテナ305に接続された共振コンデンサ312が直列共振回路となる。この直列共振回路は、特定の周波数f4で共振するように構成される。このとき、受電アンテナ305、共振コンデンサ312、およびスイッチ309が形成する閉回路に電流が流れる。スイッチ310は、共振コンデンサ313が接続されており、スイッチ310がON状態になって短絡される場合、受電アンテナ305、共振コンデンサ312、および共振コンデンサ313が直列共振回路となる。この直列共振回路は、特定の周波数f5で共振するように構成される。このとき、受電アンテナ305、共振コンデンサ312、共振コンデンサ313、およびスイッチ310が形成する閉回路に電流が流れる。スイッチ311は、共振コンデンサ314が接続されており、スイッチ311がON状態になって短絡される場合に、受電アンテナ305、共振コンデンサ312、および共振コンデンサ314は直列共振回路となる。この直列共振回路は、特定の周波数f6で共振するように構成される。このとき、受電アンテナ305、共振コンデンサ312、共振コンデンサ314、およびスイッチ311が形成する閉回路に電流が流れる。
スイッチ309〜スイッチ311がOFF状態になり、開放されると、受電アンテナ305と共振コンデンサ312により受電した電力が受電部303へ供給される。
スイッチ315は、受電した電力を、負荷であるバッテリに供給するか否かを制御するために使用される。また、スイッチ315は、負荷の値を制御する機能も有する。スイッチ315がONとなり短絡される場合、受電アンテナ305によって受電された電力が、充電部306を介してバッテリ307に供給される。スイッチ315がOFFとなり開放される場合、受電アンテナ305によって受電された電力が、バッテリ307に供給されない。なお、スイッチ315は、図3では共振コンデンサ312と受電部303との間に配置されているが、受電部303と充電部306との間に配置されてもよい。また、スイッチ315は、充電部306とバッテリ307との間に配置されてもよい。また、図3ではスイッチ315が1つのブロックとして示されているが、スイッチ315は、充電部306の一部または受電部303の一部として実現されてもよい。
次に、図4を参照して、TXの制御部201の機能について説明する。制御部201は、例えば、通信制御部401、送電制御部402、測定部403、設定部404、および異物検出部405を含んで構成される。通信制御部401は、通信部204を介したWPC規格に基づいたRXとの制御通信を行う。送電制御部402は、送電部203を制御し、RXへの送電を制御する。測定部403は、後述する波形減衰指標を測定する。また、送電部203を介してRXに対して送電する電力を計測し、単位時間ごとに平均送電電力を測定する。また、測定部403は、送電アンテナ205のQ値を測定する。設定部404は、測定部403により測定された波形減衰指標に基づいて、例えば算出処理によって、異物検出のために用いる閾値を設定する。異物検出部405は、Power Loss法による異物検出機能や、Q値計測法による異物検出機能や、波形減衰法による異物検出処理を行う機能を有する。また、異物検出部405は、その他の手法を用いて異物検出処理を行う機能を有してもよい。例えば、NFC(Near Feald Communication)通信機能を有するTXにおける異物検出部405は、NFC規格による相手装置の検出機能を用いて異物検出処理を行ってもよい。また、異物検出部405は、異物を検出する以外の機能として、TX上の状態が変化したことを検出することもできる。例えば、TXは、TX上の受電装置102の数の増減を検出することが可能である。
設定部404は、TXが、Power Loss法や、Q値計測法や、波形減衰法による異物検出を行う際の異物の有無を判定するための基準となる閾値を設定する。また、設定部404は、その他の手法を用いた異物検出処理を行う際に必要となる、異物の有無の判定の基準となる閾値を設定する機能を有してもよい。異物検出部405は、設定部404によって設定された閾値と、測定部403によって測定された波形減衰指標や送電電力やQ値に基づいて、異物検出処理を行うことができる。
通信制御部401、送電制御部402、測定部403、設定部404、および異物検出部405は、制御部201において動作するプログラムとしてその機能が実現される。各機能部は、それぞれが独立したプログラムによって構成されうる。各機能部は、イベント処理等によってプログラム間の同期を確立しながら、並行して動作しうる。ただし、これらの処理部のうち2つ以上が1つのプログラムによって実現されてもよい。
(WPC規格に従った電力伝送のための処理の流れ)
WPC規格では、上述のように、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、I&Cフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズ、及びPower Transferフェーズが規定されている。以下では、これらのフェーズにおける、送電装置101及び受電装置102の動作について、図5を用いて説明する。
TXは、送電可能範囲内に存在する物体を検出するため、WPC規格のAnalog Pingを繰り返し間欠送信する(F501)。そして、TXは、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定されている処理を実行し、RXが載置されるのを待ち受ける。RXのユーザは、RX(例えばスマートフォン)を、充電のためにTXに近づける(F502)。例えば、ユーザは、RXをTXに載置することにより、RXをTXに近づける。TXは、送電可能範囲内に物体が存在することを検出すると(F503、F504)、WPC規格のDigital Pingを送信する(F505)。RXは、Digital Pingを受信すると、TXがRXを検知したことを把握することができる(F506)。また、TXは、Digital Pingに対する所定の応答があった場合に、検出された物体がRXであり、RXが充電台103に載置されたと判定することができる。
TXは、RXの載置を検出すると、WPC規格で規定されたI&Cフェーズの通信により、RXから識別情報と能力情報とを取得する(F507)。ここで、RXの識別情報には、Manufacturer CodeとBasic Device IDが含められる。RXの能力情報には、対応しているWPC規格のバージョンを特定可能な情報要素や、RXが負荷に供給できる最大電力を特定する値であるMaximum Power Value、WPC規格のNegotiation機能を有するかを示す情報が含められる。なお、TXは、WPC規格のI&Cフェーズの通信以外の方法でRXの識別情報と能力情報とを取得してもよい。また、識別情報は、Wireless Power ID等の、RXの個体を識別可能な任意の他の識別情報であってもよい。能力情報として、上述の情報以外の情報が含まれてもよい。
続いて、TXは、WPC規格で規定されたNegotiationフェーズの通信により、RXとの間でGPの値を決定する(F508)。なお、F508では、WPC規格のNegotiationフェーズの通信に限らず、GPを決定する他の手順が実行されてもよい。また、TXは、RXがNegotiationフェーズに対応していないことを示す情報を(例えばF507において)取得した場合に、Negotiationフェーズの通信を行わず、GPの値を(例えばWPC規格で予め規定された)小さな値としてもよい。本実施形態では、F508において、GP=5ワットと決定されたものとする。
TXは、GPの決定後、そのGPに基づいてCalibrationを実行する。Calibration処理では、まず、RXが、TXに軽負荷状態(負荷切断状態、送電電力が第1の閾値以下になる負荷状態)における受電電力を含む情報(以下では、この情報を「第1基準受電電力情報」と呼ぶ。)を送信する(F509)。本実施形態では、第1基準受電電力情報は、TXの送電電力が250ミリワットの時のRXの受電電力情報とする。第1基準受電電力情報は、WPC規格で規定されるReceived Power Packet(mode1)を用いて通知されるが、他のメッセージが通知に用いられてもよい。TXは、自装置の送電状態に基づいて、第1基準受電電力情報を受け入れるか否かを判定する。TXは、受け入れる場合は肯定応答(ACK)を、受け入れない場合は否定応答(NAK)を、RXへ送信する。
RXは、TXからACKを受信すると(F510)、TXに負荷接続状態(最大負荷状態、送電電力が第2の閾値以上になる負荷状態)における受電電力を含む情報(以下では、この情報を「第2基準受電電力情報」と呼ぶ。)を送信するための処理を行う。本実施形態では、GPが5ワットであることから、第2基準受電電力情報は、例えば、TXの送電電力が5ワットの時のRXの受電電力情報とされる。ここで、第2基準受電電力情報は、WPC規格で規定されるReceived Power Packet(mode2)を用いて通知されるが、他のメッセージを用いてこの通知が行われてもよい。RXは、TXからの送電電力を5ワットまで増加させるために、送電電力増加に対応する値(正の値)を含む送電出力変更指示を送信する(F511)。TXは、この送電出力変更指示を受信した際に、送電電力を増加させることが可能な場合には、RXへACKで応答すると共に、送電電力を増加する(F512、F513)。第2基準受電電力情報は、TXの送電電力が5ワットの時の受電電力情報である。このため、TXは、5ワットを超える電力増加要求をRXから受信した場合は、送電出力変更指示に対してNAKで応答して、送電出力の変更ができないことをRXへ通知する(F514)。これにより、規定以上の電力が送電されることを抑止することができる。RXは、TXからNAKを受信することにより、既定の送電電力に達したと判定し、負荷接続状態における受電電力に関する第2基準受電電力情報を、TXへ送信する(F516)。TXは、第1基準受電電力情報および第2基準受電電力情報によって示される受電電力値と、それらの受電電力値がそれぞれ得られた際のTXの送電電力値とに基づいて、負荷切断状態と負荷接続状態とにおけるTX−RX間の電力損失量を算出することができる。また、TXは、それらの電力損失量の関係に基づく補間により、TXの取り得るすべての送電電力(ここでは250ミリワットから5ワット)におけるTX−RX間の電力損失値を推定することができるようになる(F517)。TXは、RXからの第2基準受電電力情報に対してACKを送信し(F518)、Calibration処理を完了する。そして、TXがRXの充電処理を開始可能と判定した状態でRXへの送電処理を開始し、RXの充電が開始される。
なお、送電処理の開始前に、TXとRXが機器認証処理を行い(F519)、相互により大きなGPに対応可能であると判定した場合、GPが、例えば15ワット等のより大きな値に再設定されてもよい(F520)。この場合、RXとTXは、TXの送電電力を15ワットまで増加させるために、送電出力変更指示、ACK及びNAKを用いてTXの送電出力を上昇させる(F521〜F524)。そして、TX及びRXは、GP=15ワットとなったことに応じて、再度Calibration処理を実行する。すなわち、RXは、TXの送電電力が15ワットの時の、RXの負荷接続状態における受電電力を含む情報(以下では、この情報を「第3基準受電電力情報」と呼ぶ。)を送信する(F525)。TXは、第1基準受電電力情報、第2基準受電電力情報、及び第3の基準受電電力情報によって示される受電電力と、それぞれの受電電力が得られた際の送電電力に基づいてCalibrationを実行する。これにより、TXは、TXの取り得るすべての送電電力(ここでは250ミリワットから15ワット)におけるTX−RX間の電力損失量を推定することができるようになる(F526)。そして、TXは、RXからの第3基準受電電力情報に対してACKを送信し(F527)、Calibration処理を完了する。その後、TXがRXの充電処理を開始可能と判定した状態でRXへの送電処理を開始し、RXの充電が開始される(F528)。
Power Transferフェーズでは、TXは、RXへ送電する。また、Power Transferフェーズでは、上述のPower Loss法による異物検出が行われる。ここで、Power Loss法での異物検出は、送電を継続しながら異物検出を行うことができるため、送電効率を高く保つことができるが、送電装置102が大きな電力を送電しているときには異物検出の精度が低下する場合がありうる。このため、Power Loss法による異物検出のみでは、異物の誤検出の可能性や、異物が存在するにも関わらず異物なしと判定されてしまう誤判定の可能性がある。特に、Power TransferフェーズはTXが送電を行うフェーズであり、送電中にTXとRXの近傍に異物が存在すると異物からの発熱等が大きくなるため、このフェーズにおける異物検出精度を向上させることが要求される。そこで、本実施形態では、異物検出精度を向上させるために、Power Loss法とは異なる異物検出方法として、下記の波形減衰法を使用して、さらなる異物検出を実行するようにする。
(波形減衰法による異物検出方法)
Power Transferフェーズでは、送電装置101は、受電装置102に対して送電を行っている。このとき、この送電に関する送電波形(電圧の波形又は電流の波形)を用いて異物検出を行うことができれば、異物検出用信号等を新たに規定して使用することなく、異物を検出することが可能となる。このような手法として、本実施形態では、送電波形の減衰状態に基づいて異物検出を行う方法(この方法を「波形減衰法」と呼ぶ)を用いる。この波形減衰法による異物検出の原理について、図6を用いて説明する。ここでは、送電装置101(TX)から受電装置102(RX)への送電に係る送電波形を用いた異物検出を例に説明する。
図6において、波形は、TXの送電アンテナ205に印加される高周波電圧の電圧値600(以降、単に電圧値と言う)の時間経過に伴う変化を示している。図6の横軸は時間、縦軸は電圧値を表す。TXは、送電アンテナ205を介してRXに送電を行っている状態から、時間T0において送電を停止する。すなわち、時間T0において、電源部202からの送電用の電力供給が停止される。TXからの送電に係る送電波形の周波数は、所定の周波数であり、例えばWPC規格で使用される85kHzから205kHzの間の固定された周波数である。点601は、高周波電圧の包絡線上の点であり、時間T1における電圧値である。図中の(T1、A1)は、時間T1における電圧値がA1であることを示す。同様に、点602は、高周波電圧の包絡線上の点であり、時間T2における電圧値である。図中の(T2、A2)は、時間T2における電圧値がA2であることを示す。この送電アンテナ205の品質係数(Q値)は、時間T0以降の電圧値の時間変化に基づいて特定することができる。たとえば、電圧値の包絡線上の点601および点602における時間、電圧値および高周波電圧の周波数fに基づいて、式1によりQ値が算出される。
Q=πf(T2−T1)/ln(A1/A2) (式1)
このQ値は、TXとRXとの近傍に異物が存在する場合に低下する。これは、異物が存在する場合には、その異物によってエネルギーの損失が発生するためである。よって、電圧値の減衰の傾きに着目すると、異物が存在しない時よりも、異物が存在する時の方が、異物によるエネルギーの損失が発生するため、点601と点602を結ぶ直線の傾きが急になり、波形の振幅の減衰率が高くなる。すなわち、波形減衰法は、この点601と点602との間の電圧値の減衰状態に基づいて異物の有無の判定を行うものである。波形減衰法では、この減衰状態に対応する任意の数値の比較によって、実際の異物の有無の判定が行われうる。例えば、上述のQ値を用いて判定が行われうる。この場合、Q値が低くなることが、波形減衰率(単位時間当たりの波形の振幅の減少度合い)が高くなることを意味する。また、(A1−A2)/(T2−T1)によって算出される、点601と点602とを結ぶ直線の傾きを用いて判定が行われてもよい。また、電圧値の減衰状態を観測する時間(T1及びT2)が固定の場合、電圧値の差を表す値(A1−A2)や、電圧値の比を表す値(A1/A2)を用いて判定が行われてもよい。また、送電を停止した直後の電圧値A1が一定の場合、所定の時間経過後の、電圧値A2の値を用いて判定を行うこともできる。また、電圧値A1が所定の電圧値A2になるまでの時間(T2−T1)の値を用いて判定が行われてもよい。
以上のように、送電停止期間中の電圧値の減衰状態によって異物の有無を判定可能であり、その減衰状態を表す値は複数存在する。本実施形態では、これらの減衰状態を表す値のことを「波形減衰指標」と呼ぶ。例えば、上述のように、式1で算出されるQ値は、送電に係る電圧値の減衰状態を表す値であり「波形減衰指標」に含まれる。波形減衰指標はいずれも、波形減衰率に対応する値となる。なお、波形減衰法において、波形減衰率そのものが「波形減衰指標」として測定されてもよい。以下では、波形減衰率を波形減衰指標として用いる場合を中心に説明するが、その他の波形減衰指標を用いる場合も同様に本実施形態の内容を適用できる。
なお、図6の縦軸を、送電アンテナ205を流れる電流値としても、電圧値の場合と同様に、送電停止期間中の電流値の減衰状態が異物の有無によって変化する。そして、異物が存在する場合は異物が存在しない場合より波形減衰率が高くなる。このため、送電アンテナ205を流れる電流値の時間変化に関して上述の方法を適用することによっても、異物を検出することができる。すなわち、電流波形より求められるQ値、電流値の減衰の傾き、電流値の差、電流値の比、電流値の絶対値、及び所定の電流値になるまでの時間等を波形減衰指標として用いて、異物の有無を判定し、異物を検出することができる。また、電圧値の波形減衰指標と電流値の波形減衰指標とから算出される評価値を用いて異物の有無を判定するなど、電圧値の減衰状態と電流値の減衰状態との両方に基づく異物検出が行われてもよい。なお、上述の例では、TXが送電を一時停止した期間の波形減衰指標を測定するものとしたが、TXが、電源部202から供給される電力を、所定の電力レベルからそれより低い電力レベルまで一時的に下げた期間の波形減衰指標を測定してもよい。
波形減衰法により、送電中の送電波形に基づいて異物検出を行う方法について、図7を用いて説明する。図7では、波形減衰法による異物検出を行う際の送電波形が示され、横軸は時間を表し、縦軸は送電アンテナ205の電圧値を表す。なお、図6と同様に、縦軸が送電アンテナ205を流れる電流の電流値を表すものとしてもよい。なお、TXが送電を開始した直後の過渡応答期間は、送電波形が安定しないことが想定される。このため、この過渡応答期間の間は、RXは、TXに対して通信(負荷変調による通信)を行わないように制御する。また、TXはRXに対して通信(周波数偏移変調による通信)を行わないように制御する。TXは、異物検出を行うタイミングになると、送電を一時停止する。この送電を停止により送電波形の振幅が減衰するため、TXは、この減衰波形の波形減衰率を算出する。そして、TXは、算出した波形減衰率が所定の閾値を超えた場合に異物が存在すると判定する。TXは、所定の異物検出期間において異物が検出されなければ、その期間後に、送電を再開する。TXは、送電の再開後、上述の過渡応答期間の待機、異物検出タイミングの特定、送電停止、及び異物検出処理を繰り返し実行する。このようにして、Power Transferフェーズにおいて、Power Loss法に加えて、波形減衰法による異物検出を行うことができる。
(波形減衰法をWPC規格に適用した場合の送電装置の処理)
続いて、WPC規格にこの波形減衰法を適用して異物検出を行う場合の、送電装置101が実行する処理について説明する。波形減衰法による異物検出を実行する場合には、送電装置101は、異物が存在しない状態での波形減衰率を予め測定し、それを基準として閾値を算出する。その後、送電装置101は、波形減衰法による異物検出を実行し、測定された波形減衰率がその閾値より大きい場合には「異物が存在する」又は「異物が存在する可能性がある」と判定する。一方、送電装置101は、測定された波形減衰率がその閾値より小さい場合には「異物が存在しない」又は「異物が存在しない可能性が高い」と判定する。
なお、波形減衰法では、送電装置101が一時的に送電を停止し、送電波形の減衰率を観測して異物検出を行うため、送電の一時停止による送電効率の低下を招きうる。一方で、波形減衰法は、大きな電力を送電中であっても、高精度で異物検出が可能である。すなわち、Power Loss法で異物を精度よく検出することが困難な状況であっても、波形減衰法を用いることにより、異物をより高精度に検出することができる。
上述の例では、波形減衰法によって異物検出を実行する場合に、異物が存在しない状態での波形減衰率を送電開始前に測定し、それを基準として閾値を算出すると説明した。このために、送電開始後の異物が存在しないと推定されるタイミングにおいて測定した波形減衰率から求められる閾値を用いて、異物検出が実行されてもよい。例えば、TXは、送電中にPower Loss法によって異物が存在しないことを確認して、1回目の波形減衰率測定を実行し、測定された波形減衰率を基準とする閾値を算出する。この1回目の波形減衰率測定は、予めPower Loss法によって異物が存在しないことが確認された直後に実行されるため、測定された波形減衰率は、異物が存在しない状態の波形減衰率であるとみなすことができる。次に、TXは、送電を再開し、異物検出を行うべきと判断したタイミングで、2回目の波形減衰率測定を実行する。そして、2回目の波形減衰率測定の測定結果を、1回目の波形減衰率測定の測定結果又はそれを基準として算出された閾値と比較することにより、異物の有無を判定することができる。すなわち、波形減衰法により異物検出を実行する際には、その時点で測定した波形減衰率を、それ以前の異物が存在しない状態で測定された波形減衰率や対応する閾値と比較してもよい。
また、上述の例では、送電装置101からの送電に係る送電波形の周波数が、固定の周波数であるものとした。しかしながら、複数の周波数のそれぞれにおいて、上述の異物検出のための処理を実行し、それらの結果を組みわせることにより、異物の有無を判定してもよい。1つの周波数での波形減衰率だけでなく、複数の周波数での波形減衰率を用いて異物検出を行うことにより、より精度の高い異物検出を行うことが可能となる。これについては後述する。
また、本実施形態では、送電装置101が送電を停止した直後、または送電を開始した直後は、過渡応答で送電波形が不安定となるため、各動作に移行する前に待機時間を設けた。このように送電波形の不安定性は、送電の急な開始や急な停止によって引き起こされる。このため、送電装置101は、このような送電波形の不安定性を緩和するために、送電を開始する際に送電電力を段階的に上げるように、また、送電を停止する際には送電電力を段階的に下げるように、制御を行ってもよい。なお、送電装置101は、送電電力の増加と低減のいずれかのみを段階的に行ってもよいし、両方を段階的に行ってもよい。
(複数の周波数を用いた波形減衰法による異物検出方法)
送電装置101と受電装置102との間に混入する異物は、送電中に発熱等を引き起こすため、送電装置101は、異物が混入された場合に、その異物を早期に検出して、送電の停止や、送電電力の低減等の送電電力制御を行う必要がある。送電装置101と受電装置102との間に混入する異物は、様々な大きさや形状を有しうる。図6及び図7で説明した波形減衰法では、送電装置101は、所定の周波数で送電し、その送電を一時的に停止して送電波形の波形減衰率から異物を検出する。しかしながら、異物で消費されるエネルギーは、周波数によって異なりうる。すなわち、異物Aが存在する場合には周波数Xの波形の波形減衰率は大きいが周波数Yの波形の波形減衰率は小さく、異物Bが存在する場合には周波数Xの波形の波形減衰率は小さいが周波数Yの波形の波形減衰率は大きくなること等が想定される。異物の大きさや形状に依存して、異物によって消費されるエネルギーの周波数特性が異なるからである。上述の例において、波形に周波数Yを使用していた場合、異物Aが存在していても波形減衰率が小さく、異物Aが存在しているにもかかわらず、「異物は存在しない」と誤判定されてしまう可能性がある。このような誤判定を防ぐためには、異物Aにおいて、周波数Yの波形の波形減衰率だけで異物検出を行うのではなく、周波数Xの波形の波形減衰率も用いて異物検出を行うことが有効である。すなわち、複数の周波数の波形の減衰率を測定し、異物検出を行うことにより、誤判定が生じる確率を低下させることができる。以下では、このような異物検出を実行する際の送電装置101が実行する処理と、受電装置101が実行する処理について、図11及び図12を用いて説明する。図11は、送電装置101が実行する処理の流れの例を示しており、図12は、受電装置102が実行する処理の流れの例を示している。
送電装置101は、受電装置102に送電を行っている間に、受電装置102に対して、波形減衰法による異物検出を実行すべきことを、通信により所定のパケットを用いて伝える(S1101、S1102)。受電装置102は、そのパケットを受信すると、送電装置101に対して異物検出実行要求のコマンドを送信する。このコマンドには、送電装置101に異物検出を実行する時間(タイミング)を伝えるための時間情報が含まれうる。なお、異物検出が実行されるべき時間は、送電装置101から上述のパケットにより受電装置102へ通知されてもよい。これらのようにして、送電装置101と受電装置102は、異物検出を実行するタイミングの情報を共有する(S1102、S1202)。送電装置101は、異物検出を実行する時間において送電を停止する(S1103)。そして、送電装置101は、スイッチ209をONにして短絡し、周波数f1で共振する、送電アンテナ205と、共振コンデンサ207、およびスイッチ209で形成される閉ループ回路を形成する(S1104)。なお、送電装置101は、スイッチ209をONにして短絡したのちに、送電を停止するようにしてもよい。また、送電装置101は、スイッチ209をONにして短絡するのと同時に、送電を停止してもよい。一方、受電装置102は、異物検出を実行する時間において、スイッチ309をONにして短絡し、周波数f2で共振する、受電アンテナ305と、共振コンデンサ312、スイッチ309で形成される閉ループ回路を形成する(S1203)。これにより、送電装置101の送電アンテナ205と共振コンデンサ207において周波数f1の減衰波形が観測され(S1105)、受電装置102の受電アンテナ305と共振コンデンサ312において周波数f2の減衰波形が観測される(S1204)。
ここで、送電アンテナ205と受電アンテナ305は、それらによって無線電力伝送及び無線通信が行われることに裏付けられるように、互いが電磁的に結合している。このため、送電装置101に存在する送電アンテナ205と共振コンデンサ207で形成される回路においても、周波数f2の減衰波形を観測することができる(S1106)。また、受電装置102に存在する受電アンテナ305と共振コンデンサ312で形成される回路においても、周波数f1の減衰波形は観測可能である(S1205)。ここで、送電装置101の送電アンテナ205と共振コンデンサ207で形成される回路で観測される減衰波形、または、受電装置102の受電アンテナ305と共振コンデンサ312で形成される回路で観測される減衰波形を、図8に概略的に示す。送電装置101が送電を停止すると共にスイッチ209をONにして短絡し、受電装置102がスイッチ309をONにして短絡することにより、図8に示すように、異物検出期間において、周波数f1と周波数f2の混合波形が観測されうる。そして、送電装置101と受電装置102は、図6および図7を用いて説明したように、この波形減衰指標から異物の有無を検出することが可能となる(S1107、S1206)。送電装置101と受電装置102は、上述のような動作を行うことで、1つの周波数ではなく、2つの周波数の混合波の波形減衰を観測することができる。そして、送電装置101と受電装置102は、この混合波の波形減衰指標を観測することにより、異物検出の精度向上を図ることが可能となる。
2つの周波数の混合波から異物を検出する方法について説明する。図8に示すように、異物検出期間において、2つの周波数が混合した波形が観測される。混合波の減衰波形の時間波形を観測することにより、f1とf2のそれぞれの波形の減衰率を特定することができる。例えば、図8に示すように、周波数f1の波形の減衰状態と、周波数f2の波形の減衰状態とを、それぞれ特定することができる。これらの周波数f1およびf2のそれぞれの減衰波形から、波形減衰指標を特定する方法は、図6および図7に関連して上述した通りである。
送電装置101又は受電装置102は、周波数f1およびf2の異物が存在しない状態での波形減衰指標をそれぞれ予め算出しておく。そして、送電装置101又は受電装置102は、周波数f1の異物が存在しない状態での波形減衰指標に基づいて、周波数f1の閾値を算出し、周波数f2の異物が存在しない状態での波形減衰指標に基づいて、周波数f2の閾値を算出する。送電装置101又は受電装置102は、観測された周波数f1の減衰波形から特定される波形減衰指標と、周波数f1に関して算出しておいた閾値とを比較する。また、送電装置101又は受電装置102は、観測された周波数f2の減衰波形から特定される波形減衰指標と、周波数f2に関して算出しておいた閾値とを比較する。そして、送電装置101又は受電装置102は、周波数f1の波形減衰指標が閾値を超え、かつ、周波数f2の波形減衰指標が閾値を超える場合に、「異物が存在する」または「異物が存在する可能性が高い」と判定する。また、送電装置101又は受電装置102は、周波数f1の波形減衰指標が閾値を超えた場合、または、周波数f2の波形減衰指標が閾値を超えた場合に、「異物が存在する」または「異物が存在する可能性が高い」と判定してもよい。すなわち、送電装置101又は受電装置102は、周波数f1とf2とのいずれか一方の波形減衰指標が閾値を超えた場合に「異物が存在する」または「異物が存在する可能性が高い」と判定しうる。これにより、より確実に異物検出を行うことが可能となる。
なお、上述のように、周波数f1および周波数f2の混合波は、送電装置101と受電装置102との両方において観測可能である。このため、上述した「2つの周波数の混合波から異物を検出する方法」は、送電装置101と受電装置102とのいずれにおいても実行可能である。また、上述の実施形態では、周波数f1の閾値と周波数f2の閾値とがそれぞれ別個に設定される場合の例について説明した。しかしながら、これに限られず、これらの閾値として同一の値が設定されるようにしてもよい。また、送電装置101は、スイッチ209をONにした時に、スイッチ208をOFFにして、送電アンテナ205および共振コンデンサ207と、送電部203とを切断してもよい。これにより、波形減衰法により異物検出を行う際に、送電部の影響を除くことが可能となり、より高精度に異物を検出することが可能となる。また、受電装置102は、スイッチ309をONにした時に、スイッチ315をOFFとして、受電アンテナ305および共振コンデンサ312と、受電部303とを切断してもよい。これにより、波形減衰法により異物検出を行う際に、送電部の影響を除くことが可能となり、より高精度に異物を検出することが可能となる。
送電装置101と受電装置102との少なくともいずれかが以上のように動作して、複数の周波数における電圧又は電流の特性(ここでは減衰波形の波形減衰指標)に基づいて異物検出を行うことにより、より高精度に異物を検出することが可能となる。
(複数の周波数を用いた波形減衰法による異物検出方法の変形例1)
上述の例では、周波数f1の時間波形(減衰波形)と周波数f2の時間波形(減衰波形)とに基づいて異物を検出する方法について説明した。本変形例では、周波数f1およびf2の時間波形ではなく、周波数f1および周波数f2の信号スペクトルから異物を検出する。すなわち、時間波形に基づいて異物検出が行われる場合、ノイズが混入して時間波形に乱れが生じた場合に、波形減衰指標を特定することが容易でなくなってしまいうる。これに対して、本変形例では、時間波形に対して演算処理を実行して周波数ごとの信号スペクトル(信号強度、周波数スペクトル)を特定し、その信号スペクトルに基づいて異物を検出することにより、時間波形の乱れに対して堅牢な異物検出を実行可能とする。
本変形例では、例えば、送電装置101又は受電装置102が、図8に示すような解析対象区間の波形に対して演算処理を実行して、周波数領域における、少なくとも周波数f1およびf2の成分を特定可能な形式に変換する。送電装置101又は受電装置102は、例えば、解析対象区間の波形をフーリエ変換することにより、解析対象区間の周波数ごとの信号スペクトル(信号強度、周波数スペクトル)を特定することができる。解析対象区間の周波数ごとの信号スペクトル(信号強度、周波数スペクトル)は、例えば図9に示すように特定される。送電装置101と受電装置102との間に異物が存在している場合には異物においてエネルギーが消費されるため、図9に示すような信号スペクトルの強度も弱くなる。
このため、送電装置101又は受電装置102は、この特性を利用して異物検出を行う。例えば、送電装置101又は受電装置102は、異物が存在しない状態での周波数f1およびf2のそれぞれの信号スペクトルを特定しておく。そして、送電装置101又は受電装置102は、異物が存在しない状態での周波数f1の信号スペクトルに基づいて、周波数f1の閾値を算出する。また、送電装置101又は受電装置102は、異物が存在しない状態での周波数f2の信号スペクトルに基づいて、周波数f2の閾値を算出する。そして、送電装置101又は受電装置102は、観測された周波数f1の減衰波形から特定された信号スペクトルと、周波数f1の閾値とを比較する。また、送電装置101又は受電装置102は、観測された周波数f2の減衰波形から特定された信号スペクトルと、周波数f2の閾値とを比較する。そして、送電装置101又は受電装置102は、周波数f1の信号スペクトルが閾値を超え、かつ、周波数f2の信号スペクトルが閾値を超えた場合に、「異物が存在する」または「異物が存在する可能性が高い」と判定する。また、送電装置101又は受電装置102は、周波数f1の信号スペクトルが閾値を超えた場合、または、周波数f2の信号スペクトルが閾値を超えた場合に、「異物が存在する」または「異物が存在する可能性が高い」と判定する。すなわち、送電装置101又は受電装置102は、周波数f1と周波数f2との少なくともいずれかの信号スペクトルが閾値を超えた場合に「異物が存在する」または「異物が存在する可能性が高い」と判定する。
これにより、より確実に異物検出を行うことが可能となる。なお、上述のように、周波数f1および周波数f2の混合波は、送電装置101と受電装置102との両方において観測することができる。このため、本変形例に係る異物検出方法も、送電装置101と受電装置102とのいずれにおいても実行可能である。また、本変形例でも、周波数f1の閾値と周波数f2の閾値は、別個に設定されてもよいし同一の値となるように設定されてもよい。
このように、送電装置101と受電装置102との少なくともいずれかが以上のように動作して、複数の周波数の信号スペクトルに基づいて異物検出を行うことにより、より高精度に異物を検出することが可能となる。
(複数の周波数を用いた波形減衰法による異物検出方法の変形例2)
上述の構成では、周波数f1およびf2の混合波の時間波形又はその時間波形の周波数f1およびf2における信号スペクトルに基づいて異物を検出する方法について説明した。このとき、上述のような構成において、周波数f1とf2が非常に近い周波数である場合、異物によるエネルギー消費のこれら周波数における相関が高く、複数の周波数を用いて異物検出を行う際のメリットが少なくなってしまうからである。また、周波数f1と周波数f2の違いがわずかの場合、その合成波において「うなり」が発生し、上述のような異物検出は困難になりうる。このため、本変形例では、周波数f1およびf2に代えてこれらの周波数とは異なる周波数を用いて、または、周波数f1およびf2に加えてさらなる周波数を用いて、異物の検出を行う。
例えば、送電装置101の送電アンテナ205と共振コンデンサ207によって定まる周波数f1と、受電装置102の受電アンテナ305と共振コンデンサ312によって定まる周波数f2が、それぞれ所定の周波数範囲内に含まれるように規定する。ここで、周波数f1と周波数f2が予め所定の周波数幅だけ離間するように、所定の周波数範囲がそれぞれ規定される。そして、それぞれの周波数範囲に含まれるように、送電装置101の送電アンテナ205と共振コンデンサ207および受電装置102の受電アンテナ305と共振コンデンサ312におけるインダクタンス及びキャパシタンスの値が決定される。これにより、周波数f1と周波数f2を、所定の周波数幅だけ離間させることが可能となり、より精度の高い異物検出が可能となる。
また、送電装置101又は受電装置102は、図2及び図3のように複数の共振コンデンサを有し、それらを切り替えることによって、送電装置101における共振周波数と受電装置102における共振周波数とを予め所定の周波数幅だけ離間するようにしうる。送電装置101と受電装置102は、互いに通信を行って、送電装置101における第1の共振周波数と、受電装置102における第2の共振周波数とを決定する。このとき、第1の共振周波数と第2の共振周波数は、所定の周波数幅だけ離間するように設定される。送電装置101は、送電装置101と受電装置102との間で決定された第1の共振周波数を実現するために、例えば、共振コンデンサ212に接続されるスイッチ210と、共振コンデンサ213に接続されるスイッチ211とを制御する。送電装置101は、決定した第1の共振周波数が得られる回路構成となるように、スイッチ209〜スイッチ211の少なくともいずれかをONにする制御を実行する。また、受電装置102は、送電装置101と受電装置102との間で決定された第2の共振周波数を実現するために、例えば、共振コンデンサ313に接続されるスイッチ310と、共振コンデンサ314に接続されるスイッチ311とを制御する。受電装置102は、決定した第2の共振周波数が得られる回路構成となるように、スイッチ309〜スイッチ311の少なくともいずれかをONにする制御を実行する。このように、送電装置101と受電装置102は、複数の共振コンデンサとスイッチを有し、それらを送電装置101と受電装置102との間で決定された情報に基づいて適切に制御することにより、それぞれの共振周波数を離間させる。これにより、より高精度な異物検出を行うことが可能となる。なお、送電装置101および受電装置102の共振コンデンサおよびそれが接続されるスイッチは、図2や図3に示すより多く設けられてもよい。これにより、共振周波数の制御をより精密に行うことが可能となり、異物検出をさらに高精度化させることが可能となる。
なお、上述のようにして、共振回路における電圧又は電流の、3つ以上の周波数における特性(例えば時間波形の減衰率等)に基づいて異物検出を行うことができる。このとき、3つ以上の周波数のうちの1つにおける特性が閾値を超える場合に異物が存在すると判定されうる。また、3つ以上の周波数のうちの2つ以上(例えば全部)における特性が閾値を超える場合に異物が存在すると判定されてもよい。
また、送電装置101の送電アンテナ205と共振コンデンサ207によって定まる周波数f1が、NFC(Near Field Communication)で使用される周波数帯である13.56MHzあるいはその近傍になるように制御してもよい。これに代えて、または、これに加えて、受電装置102の受電アンテナ305と共振コンデンサ312によって定まる周波数f2が、NFCで使用される周波数帯である13.56MHzあるいはその近傍になるように制御してもよい。このために、送電装置101又は受電装置102は、上述のように、インダクタンスとキャパシタンスとの少なくともいずれかを適切に設定し、または、スイッチの制御によって、共振周波数が13.56MHzとなるように制御を行う。これにより、仮に送電装置101の上に、受電装置102ではない、NFCを使用する機器や、NFCタグが置かれた場合であっても、それを検知することが可能となる。なお、NFCは一例であり、他の無線規格において使用される周波数を、送電装置101又は受電装置102における共振周波数としてもよい。これにより、送電装置101又は受電装置102は、その無線規格に準拠する機器が載置されたことを検出することができるようになる。
上述の実施形態では、異物が存在しない状態での波形減衰指標や信号スペクトルを予め測定するタイミングについて説明する。WPC規格では、上述のようにNegotiationフェーズにおいて、Q値計測法による異物検出が行われる。そして、異物検出の結果、異物が存在しないと判定された場合に、Calibrationフェーズ、Power Transferフェーズへ遷移する。すなわち、Negotiationフェーズ以降のフェーズに遷移したことが、Q値計測法によって異物が存在しないと判定されたことを意味する。このため、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズ、Power Transferフェーズのいずれかにおいて波形減衰率を測定することにより、異物が存在しない状態での波形減衰率を測定することができる可能性が高い。このため、異物が存在しない状態での波形減衰率を測定するタイミングは、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズ、Power Transferフェーズのいずれかとすることができる。
一方で、NegotiationフェーズにおいてQ値計測法により異物が存在しないことを確認してから、異物が存在しない状態での波形減衰率の測定を実行するまでの間に、送電装置101と受電装置102との間に異物が混入する場合がありうる。そして、このような場合には、異物が存在しない状態での波形減衰率を精度よく測定できないことが想定される。このため、異物が存在しないことを確認できた直後に、この波形減衰率の測定が行われるようにすることが有用である。
このために、例えば、受電装置102は、送電装置101又は受電装置102の状態が変化したことを検知し、波形減衰法による異物検出に用いる閾値の更新・追加が必要であるか否かを判定する。そして、受電装置102は、閾値の更新・追加が必要であると判定した場合に、送電装置101へPower Loss法による異物検出実行のコマンドを送信する。送電装置101は、このコマンドを受信したことに応じて、Power Loss法による異物検出を実行し、異物の有無を判定する。そして、送電装置101は、異物が存在しない又は異物が存在しない可能性が高いと判定した場合に、受電装置102に対して異物がないことを通知する。受電装置102は、波形減衰法による異物検出に用いる閾値の設定や、閾値の更新・追加をするための動作を実行する。すなわち、受電装置102は、異物が存在しないことを通知された場合に、送電装置101に対して、波形減衰法による異物検出の閾値を設定するための測定の実行を要求するコマンドを送信する。そして、送電装置101は、このコマンドを受信したことに応じて送電を一時停止する。また、送電装置101と受電装置102は、上述のように回路を制御して、周波数f1およびf2の波形減衰指標や信号スペクトルを測定する。そして、送電装置101は、測定した波形減衰指標や信号スペクトルを用いて、波形減衰法による異物検出の閾値を算出して、閾値として設定する。
このように、受電装置102は、波形減衰法の閾値を更新・変更すると判定した場合には、そのための動作を行う直前に、Power Loss法によって異物が存在しないことを送電装置101に確認させる。そして、受電装置102は、異物が存在しないことが確認されたことに応じて、波形減衰法の閾値の更新・変更のための動作を実行する。これにより、波形減衰法による異物検出の閾値の設定のための測定の際に、異物が存在しない状態である確率を十分に高くすることができ、より精度よく異物検出閾値を設定することが可能となる。
上述の例では、波形減衰法の閾値を更新・変更するための動作を行う直前に、Power Loss法によって異物が存在しないことを確認する方法について説明した。しかし、Power Loss法においても、異物の有無を判定するための閾値が存在する。そして、このPower Loss法の閾値についても、波形減衰法と同様に、送電装置101又は受電装置102の状態が変化した場合に、その閾値を更新・追加することが必要となりうる。この閾値の更新・追加は、Power Transferフェーズにおいて行うことができる。すなわち、上述の方法と同様に、受電装置102は、Power Loss法の閾値の設定や更新・変更を行うと判定した場合に、そのための動作を行う直前に、波形減衰法によって異物が存在しないことを確認するための処理を実行する。そして、受電装置102は、波形減衰法によって異物が存在しないことが確認されたことに応じて、Power Loss法の閾値の更新・変更のための動作を実行しうる。受電装置102は、例えば、Power Loss法の異物検出に用いる閾値の更新・追加が必要であると判定した場合、送電装置101に対して、波形減衰法による異物検出実行のコマンドを送信する。送電装置101は、このコマンドを受信したことに応じて、波形減衰法による異物検出を実行し、異物の有無を判定する。そして、送電装置101は、異物が存在しない又は異物が存在しない可能性が高いと判定した場合に、受電装置102に対して異物がないことを通知する。受電装置102は、異物が存在しないことが通知された場合に、Power Loss法による異物検出に用いる閾値の更新・追加をするための動作を実行する。すなわち、受電装置102は、異物検出に用いる閾値の更新・追加をするために、Power Loss法による異物検出の閾値を設定するための測定の実行を要求するコマンドを送電装置101へ送信する。そして、受電装置102は、更新・追加をしたい閾値(ポイント)の送電電力に対応する構成となるように負荷を制御する。送電装置101は、そのコマンドを受信すると、Power Loss法による異物検出の閾値を算出して設定する。これにより、Power Loss法による異物検出の閾値を設定するための測定を実行する際に異物が存在しない状態である確率を十分に高くすることができ、より精度よく異物検出閾値の設定が可能となる。また以上の実施形態では異物検出のために送電を停止させるものとしたが、送電を完全に停止させるのではなく、例えばゼロに近い電力まで、電力を抑制させるものとしてもよい。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。