JP2021172838A - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
V(S)≦0.0001×TS2−0.4×TS+400・・・・(1)
上記(1)式における、V(S)はマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率(%)であり、フェライトや上部ベイナイト等が該当する。また、上記(1)式における、TSは引張強度(MPa)である。ここで、上記(1)式が適用されるTSの範囲は、1180〜2000MPaとする。
なお、以降の説明において、「熱延溶融亜鉛めっき鋼板」および「熱延合金化溶融亜鉛めっき鋼板」を含めて、「熱延めっき鋼板」と称する場合もある。
[1] 成分組成は、質量%で、
C:0.08〜0.40%、
Si:3.0%以下、
Mn:1.0〜4.0%、
P:0.030%以下、
S:0.0030%以下、
Al:1.5%以下、
N:0.0010〜0.010%、
B:0.0005〜0.010%を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
鋼組織は、マルテンサイトと下部ベイナイトの合計面積率が40〜100%、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率が0〜20%、パーライトの面積率が3%以下であり、
旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以下であり、
BNとして析出したB量が、質量%で0.0005〜0.010%であり、
前記マルテンサイト、前記下部ベイナイト、前記フレッシュマルテンサイトおよび前記残留オーステナイト以外の組織の合計面積率と引張強度との関係が、(1)式を満たすことを特徴とする高強度鋼板。
V(S)≦0.0001×TS2−0.4×TS+400・・・・(1)
ここで、(1)式における、V(S)はマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率(%)であり、TSは引張強度(MPa)である。
[2] 前記旧オーステナイト粒の平均結晶粒径が、5μm超であることを特徴とする[1]に記載の高強度鋼板。
[3] 前記BNとして析出したB以外のB量が、質量%で0.0003%以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の高強度鋼板。
[4] 前記成分組成が、さらに、質量%で、
Cr:2.0%以下、
Mo:2.0%以下、
V:2.0%以下、
Ni:2.0%以下、
Cu:2.0%以下、
Nb:0.20%以下、
Ca:0.0050%以下、
REM:0.0050%以下、
Sb:0.10%以下、
Sn:0.50%以下、
Zr:0.002%以下、
Mg:0.002%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載の高強度鋼板。
[5] [1]〜[4]のいずれか1つに記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、650℃超え800℃以下の温度域で1〜1000s滞留させた後、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
[6] [1]〜[4]のいずれか1つに記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延した後、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後、550℃超え650℃以下の温度域で巻き取ることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
[7] [1]〜[4]のいずれか1つに記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下の温度まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取り、
次いで、熱処理を施すに際し、
800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、
その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間に、(2)式を満たすように滞留処理し、かつ、めっき処理を施すことを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。
[8] 前記熱処理は、前記滞留処理の前、前記滞留処理の後、あるいは前記滞留処理の途中のいずれかで、
さらに、100℃〜Bs点まで5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後再加熱する工程を有することを特徴とする[7]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[9] [1]〜[4]のいずれか1つに記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取り、
次いで、冷間圧延を施し、
次いで、熱処理を施すに際し、
800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、
その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間に、(2)式を満たすように滞留処理することを特徴とする高強度法鋼板の製造方法。
10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。
[10] 前記熱処理は、前記滞留処理の前、前記滞留処理の後、あるいは前記滞留処理の途中のいずれかで、
さらに、100℃〜Bs点まで5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後再加熱する工程を有することを特徴とする[9]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[11] 前記熱処理中に、前記焼鈍後さらにめっき処理を施すことを特徴とする[9]または[10]に記載の高強度鋼板の製造方法。
本発明の高強度鋼板における成分組成を上記のように限定した理由を以下に説明する。なお、成分組成の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
Cは、マルテンサイトや下部ベイナイトを生成させ、TSを上昇させるのに有効な元素である。C量が0.08%未満ではこのような効果を十分に得られず、本発明で目的とする強度や鋼組織が得られない。一方、C量が0.40%を超えると、マルテンサイトの硬化や、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイトの増加を招き、耐遅れ破壊特性が劣化する。したがって、C量は0.08〜0.40%とする。好ましくは0.09%以上とし、好ましくは0.33%以下とする。より好ましくは0.10%以上とし、より好ましくは0.29%以下とする。
Siは、鋼の強化に有効であり、必要に応じて含有できるが、3.0%を超えて過剰に含有するとフェライトの生成が顕著になり、本発明の鋼組織が得られなくなる。したがって、Si量は3.0%以下とする。好ましくは2.5%以下とし、より好ましくは2.0%以下とする。TSを増加する観点から、Si量は0.10%以上とすることが好ましい。
Mnは、マルテンサイトや下部ベイナイトを生成させ、TSを上昇させるのに有効な元素である。Mn量が1.0%未満では、こうした効果が十分に得られない。一方、Mn量が4.0%を超えると鋼が脆化して、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性が得られない。したがって、Mn量は1.0〜4.0%とする。好ましくは1.5%以上とし、好ましくは3.5%以下とする。より好ましくは2.0%以上とし、より好ましくは3.3%以下とする。
Pは、粒界を脆化させて耐遅れ破壊特性を劣化させるため、その量は極力低減することが望ましいが、本願発明では0.030%まで許容できる。したがって、P量は0.030%以下とする。好ましくは0.010%以下とする。下限は特に規定しないが、P量が0.0005%未満では生産能率の低下を招くため、0.0005%以上が好ましい。
Sは、介在物を増加させて耐遅れ破壊特性を劣化させるため、その量は極力低減することが好ましいが、本願発明では0.0030%まで許容できる。したがって、S量は0.0030%以下とする。好ましくは0.0015%以下とする。下限は特に規定しないが、S量が0.0001%未満では生産能率の低下を招くため、0.0001%以上が好ましい。
Alは、AlNを形成し、異常粗大粒を抑制するため適宜添加することが好ましい。一方、Al量が1.5%を超えて含有するとフェライトが過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られない。したがって、Al量は1.5%以下とする。好ましくは1.0%以下とし、より好ましくは0.5%以下とする。下限は特に規定しないが、Al量が0.010%未満ではAlNの生成量が少なくなるため、0.010%以上が好ましい。
Nは、BN形成に必要な元素である。BNの形成には、Nの含有量を0.0010%以上とする必要がある。一方、N量が0.010%を超えると粗大なBNが生成して、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性が得られなくなる。したがって、N量は0.0010〜0.010%とする。好ましくは0.0015%以上とし、好ましくは0.0080%以下とする。
Bは、BN形成に必要な元素である。このような効果を得るには、Bの含有量を0.0005%以上とする必要がある。一方、Bの含有量が0.010%を超えると粗大なBNが生成して、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性が得られなくなる。したがって、B量は0.0005〜0.010%とする。好ましくは0.0010%以上とし、好ましくは0.0080%以下とする。より好ましくは0.0020%以上とし、より好ましくは0.0070%以下とする。
BNは拡散性水素の移動を妨げ、耐遅れ破壊特性の向上に必要な析出物である。BNを微細な状態で多量に分散させることで、遅れ破壊の起点となり得る箇所への水素の集中を抑制し、遅れ破壊を抑制することができる。本発明で目的とする耐遅れ破壊特性を得るには、BNとして析出したB量が0.0005%以上とする必要がある。一方、BNとして析出したB量が0.010%を超えると耐遅れ破壊特性に寄与しない粗大なBNばかりになり、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性が得られなくなる。したがって、BNとして析出したB量は、0.0005〜0.010%とする。好ましくは0.0010%以上とし、好ましくは0.0080%以下とする。より好ましくは0.0020%以上とし、好ましくは0.0070%以下とする。
V、Mo、Nbは、微細炭化物の形成によって耐遅れ破壊特性の向上に寄与する有効な元素である。こうした効果を得るため、V、Mo、Nbを含有する場合には、V、Mo、Nbから選ばれる1種または2種以上をそれぞれ0.005%以上とすることが好ましい。一方、V、Mo、Nbのそれぞれの含有量が上記上限値を超えると、析出物が粗大化して焼入れ性が低下し、本発明の鋼組織が得られなくなる場合がある。
Cr含有量は、より好ましくは0.10%以上とし、より好ましくは1.0%以下とする。Mo含有量は、より好ましくは0.05%以上とし、より好ましくは0.5%以下とする。V含有量は、より好ましくは0.01%以上とし、より好ましくは0.5%以下とする。Ni含有量は、より好ましくは0.10%以上とし、より好ましくは1.5%以下とする。Cu含有量は、より好ましくは0.10%以上とし、より好ましくは0.5%以下とする。Nb含有量は、より好ましくは0.01%以上とし、より好ましくは0.10%以下とする。Ca含有量は、より好ましくは0.0005%以上とし、より好ましくは0.0030%以下とする。REM含有量は、より好ましくは0.0005%以上とし、より好ましくは0.0030%以下とする。Sb含有量は、より好ましくは0.0030%以上とし、より好ましくは0.050%以下とする。Sn含有量は、より好ましくは0.0030%以上とし、より好ましくは0.10%以下とする。
なお、Zrおよび/またはMgは、合計で0.002%以下とすることがより好ましい。Zrは0.0005〜0.0015%とすることがさらに好ましく、Mgは0.0005〜0.0015%とすることがさらに好ましい。
本発明の高強度鋼板は、上記成分組成を有することに加えて、マルテンサイトと下部ベイナイトの合計面積率が40〜100%、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率が0〜20%、パーライトの面積率が3%以下であり、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以下であり、マルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率と引張強度との関係が後述する(1)式を満たす、鋼板組織を有する。
下部ベイナイトとマルテンサイトは、TSと優れた耐遅れ破壊特性を両立する観点から必要な組織である。各組織の面積率の合計が40%未満では、これらが両立できない。したがって、下部ベイナイトとマルテンサイトの合計面積率は40〜100%とする。好ましくは60〜100%とし、より好ましくは80〜99%とする。
フレッシュマルテンサイトや残留オーステナイトは、延性向上等を目的に含有してもよいが、各組織の面積率の合計が20%を超えると耐遅れ破壊特性の顕著な低下を招く。このため、その上限は20%とする。したがって、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率は0〜20%とする。好ましくは0〜15%とし、より好ましくは0〜10%とし、さらに好ましくは1〜6%とする。
パーライトは、Cが濃化したオーステナイトから発生し、硬質なフレッシュマルテンサイトに隣接して存在することで遅れ破壊の亀裂を助長する。その面積率が3%を超えると本発明の耐遅れ破壊特性が得られなくなる。したがって、パーライトは面積率で3%以下とする。好ましくは2%以下とし、より好ましくは1%以下とする。また、0%以上とすることが好ましい。
圧延方向に伸展した硬質な組織は耐遅れ破壊特性の観点から好ましくない。旧オーステナイト粒の平均アスペクト比で5.0を超えると、本発明の耐遅れ破壊特性が得られない。したがって、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比は5.0以下とする。好ましくは4.0以下とし、より好ましくは3.0以下とする。なお、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比の下限は特に規定しないが、下記の定義より1.0以上となる。
V(S)≦0.0001×TS2−0.4×TS+400・・・・(1)
ここで、(1)式における、V(S)はマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率(%)であり、TSは引張強度(MPa)である。
また、本発明の高強度鋼板のうち「熱延鋼板」の場合には、板厚が0.8mm以上10mm以下とすることが望ましく、「冷延鋼板」の場合には、板厚が0.4mm以上5.0mm未満とすることが望ましい。
次に、本発明の高強度鋼板の製造方法について説明する。
本発明の高強度鋼板のうち、熱延鋼板は、次の製造条件で製造できる。例えば、上記の成分組成を有するスラブを加熱し、次いで熱間圧延を施して、熱延鋼板を製造する。この熱間圧延を施すに際し、粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、650℃超え800℃以下の温度域で1〜1000s滞留させた後、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取る。以下、詳細に説明する。
仕上げ圧延終了温度が850℃未満になると偏平粒が増大し、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0超となり、本発明の鋼組織が得られない。また、フェライトが微細に出る等し、オーステナイト粒が微細化する場合がある。したがって、仕上げ圧延終了温度は850℃以上とする。好ましくは870℃以上とし、より好ましくは890℃以上とする。上限は特に規定しないが、表面性状の安定化の観点から、仕上げ圧延終了温度は1000℃以下とすることが好ましい。
巻取り温度が550℃以下の温度で、かつ焼鈍を行わない条件においては、上記の仕上げ圧延後に800℃まで冷却した後、650℃超え800℃以下の温度域で滞留中にBNを析出させる必要がある。滞留時間が1s未満ではBN析出が不十分となる。一方、滞留時間が1000sを超えるとフェライトやパーライト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得られない。したがって、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間は、1〜1000sとする。好ましくは2s以上とし、好ましくは600s以下とする。
上記した650℃超え800℃以下の温度域で滞留後の冷却は、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s未満ではフェライトやパーライト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得られない。したがって、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で、550℃以下の温度まで冷却する。好ましくは30℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、上記平均冷却速度が500℃/s以上では、鋼板の面内の温度ばらつきの制御が難しくなる。このため操業性の観点からは、上記平均冷却速度は500℃/s未満が好ましい。
上記した650℃超え800℃以下の温度域で滞留中にBNを析出させる製造条件では、巻取り温度は550℃以下とする必要がある。巻取り温度が550℃を超えると、フェライトやパーライト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得られなくなる。したがって、巻取り温度は550℃以下とする。より好ましくは500℃以下とする。下限は特に規定しないが、形状安定性の観点からは、巻取り温度は100℃以上とすることが好ましい。
本発明の高強度鋼板のうち、熱延鋼板は、次の製造条件でも製造できる。例えば、上記の成分組成を有するスラブを加熱し、次いで熱間圧延を施して、熱延鋼板を製造する。この熱間圧延を施すに際し、粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延した後、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後、550℃超え650℃以下の温度域で巻き取る。以下、詳細に説明する。
仕上げ圧延終了温度が850℃未満になると偏平粒が増大し、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0超となり、本発明の鋼組織が得られない。また、フェライトが微細に出る等し、オーステナイト粒が微細化する場合がある。したがって、仕上げ圧延終了温度は850℃以上とする。好ましくは870℃以上とし、より好ましくは890℃以上とする。上限は特に規定しないが、表面性状の安定化の観点から、仕上げ圧延終了温度は1000℃以下とすることが好ましい。
後述のように、巻取り温度が550℃超え650℃以下の温度域とする製造条件の場合、650℃超え800℃以下の温度域での滞留中にBNが析出するとフェライトやパーライト等の生成が促進されて、本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、上記の仕上げ圧延後に所定の温度まで冷却する際、上記温度域での滞留時間を1s未満とする条件で冷却する必要がある。したがって、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間は、1s未満とする。
上記した650℃超え800℃以下の温度域での滞留中にBNを析出させない製造条件では、巻取り中にBNを析出させる必要がある。巻取り温度が550℃以下では、BNの析出が不十分となる。一方、巻取り温度が650℃を超えると、フェライトやパーライト等の生成が促進されて本発明の鋼組織が得られなくなる。したがって、巻取り温度は550℃超え650℃以下とする。
本発明の高強度鋼板のうち、熱延鋼板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理した鋼板(HGI)、熱延鋼板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板(HGA)は、次の製造条件で製造できる。
10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。
上記した第2実施形態と同様の理由から、仕上げ圧延終了温度は850℃以上とする。好ましくは870℃以上とし、より好ましくは890℃以上とする。上限は特に規定しないが、表面性状の安定化の観点から、仕上げ圧延終了温度は1000℃以下とすることが好ましい。
後述のように、熱処理の工程でBNを析出させる製造条件では、熱間圧延時にBNを析出させると焼鈍時に粗大してフェライトやパーライト等が過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、上記の仕上げ圧延後に800℃まで冷却した後、上記温度域での滞留時間を1s未満とする条件で冷却する必要がある。したがって、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間は、1s未満とする。
550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s未満ではフェライトやパーライト等が過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られない。したがって、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で、550℃以下の温度まで冷却する。上記平均冷却速度は、好ましくは30℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、上記平均冷却速度が500℃/s以上では、鋼板の面内の温度ばらつきの制御が難しくなる。このため操業性の観点からは、上記平均冷却速度は500℃/s未満が好ましい。
後述するように、熱処理でBNを析出させる製造条件では、巻取り温度は550℃以下とする必要がある。巻取り温度が550℃を超えると、フェライトやパーライト等が過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られなくなる。したがって、巻取り温度は550℃以下とする。より好ましくは500℃以下とする。下限は特に規定しないが、形状安定性の観点からは、巻取り温度は100℃以上とすることが好ましい。
焼鈍温度が800℃未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、本発明の鋼組織が得られない。また、焼鈍温度は高いほどオーステナイト粒を粗大化できるため、高温焼鈍とする。したがって、焼鈍温度は800℃以上とする。好ましくは820℃以上とし、より好ましくは840℃以上とする。上限は特に規定しないが、エネルギー効率等の観点からは、焼鈍温度は1000℃以下が好ましい。
800℃以上の温度での滞留時間が30s未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、本発明の鋼組織が得られない。また、焼鈍温度は高いほどオーステナイト粒を粗大化できるため、長時間の焼鈍とする。したがって、800℃以上の温度での滞留時間は30s以上とする。好ましくは60s以上とする。上限は特に規定しないが、エネルギー効率等の観点からは、上記温度域での滞留時間は1000s以下が好ましい。
10(750−T)/120≦t≦1000 ・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での滞留時間(s)とする。
例えば、750℃で保持する場合には、1≦t≦1000となる。また例えば、750℃に1sずつ3回滞留する場合には、750℃で3s滞留したこととなる。後者の例の場合、(2)式に示す「t」が3sとなり、(2)式の左辺値が1となり、(2)式の右辺値が1000となるため、(2)式を満たすこととなる。
上記した800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度が0.5℃/s未満では、フェライトやパーライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度は、0.5℃/s以上が好ましく、より好ましくは1℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、500℃/s以下とすることが好ましい。
上記した第1冷却停止温度が450℃未満では、上部ベイナイトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第1冷却停止温度は450℃以上が好ましい。より好ましくは500℃以上とする。
第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度が1℃/s未満では、フェライト、パーライトおよび上部ベイナイト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度は、1℃/s以上が好ましく、より好ましくは5℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
上記した第2冷却停止温度が550℃超えでは、フェライトやパーライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第2冷却停止温度は550℃以下が好ましい。より好ましくは500℃以下とする。但し、第2冷却停止温度は第1冷却停止温度より低いものとする。
最終冷却の平均冷却速度が0.5℃/s未満では、パーライトや上部ベイナイト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、最終冷却の平均冷却速度は、0.5℃/s以上が好ましく、より好ましくは1.0℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
最終冷却の冷却停止温度が50℃超えでは、計量機器に支障をきたす場合があり、トラブル防止の観点から50℃以下とすることが好ましい。
上記した800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度が0.5℃/s未満では、フェライトやパーライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度は、0.5℃/s以上が好ましく、より好ましくは1.0℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、500℃/s以下とすることが好ましい。
上記した第1冷却停止温度が450℃未満では、上部ベイナイトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第1冷却停止温度は450℃以上が好ましい。より好ましくは500℃以上とする。
第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度が1℃/s未満では、フェライト、パーライトおよび上部ベイナイト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度は、1℃/s以上が好ましく、より好ましくは5℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
上記した第2冷却停止温度がBs点を超えると、フェライトやパーライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第2冷却停止温度はBs点以下が好ましい。より好ましくは(Bs点−50)℃以下とする。但し、第2冷却停止温度は第1冷却停止温度より低いものとする。
再加熱の平均加熱速度を1℃/s以上とすることで、炭化物の過剰な生成を抑制して延性に有効な残留オーステナイトを得やすくなる。したがって、再加熱の平均加熱速度は1℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
再加熱温度が100℃未満ではマルテンサイトの焼戻しが不十分となり、本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、再加熱温度は100℃以上とする。上限は特に規定しないが、550℃を超えると延性に有効な残留オーステナイトの分解を招いて延性が低下したり、マルテンサイトの焼戻しが過剰になって強度が低下する懸念がある。
最終冷却の平均冷却速度が0.5℃/s未満では、パーライトや上部ベイナイト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、最終冷却の平均冷却速度は、0.5℃/s以上が好ましく、より好ましくは1.0℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
最終冷却の平均冷却速度が50℃超えでは、計量機器に支障をきたす場合があり、トラブル防止の観点から50℃以下とすることが好ましい。
上記した熱処理工程では、焼鈍後、800℃未満の温度域でめっき処理を施す。本発明において「めっき処理」とは、主に溶融亜鉛めっき処理、溶融亜鉛めっきの合金化処理を指すが、これ以外のめっきを除外するものではない。
Bs点(℃)=830−270×[C]−90×[Mn]−37×[Ni]−70×[Cr]−83×[Mo]
ここで、上記の式における[X]は元素Xの質量%であり、含有されない場合はゼロとする。
スラブを上記条件で熱間圧延するにあたり、スラブを一旦室温まで冷却し、その後再加熱して熱間圧延を行ったり、スラブを室温まで冷却せずに加熱炉に装入して熱間圧延を行ったりしてもよい。あるいは、スラブにわずかの保熱を行った後に、直ちに熱間圧延する省エネルギープロセスも適用できる。
本発明の高強度鋼板のうち、冷延鋼板は、次の製造条件で製造できる。
仕上げ圧延終了温度が850℃未満になると偏平粒が増大し、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0超となり、本発明の鋼組織が得られない。また、フェライトが微細に出る等してオーステナイト粒が微細化する場合がある。したがって、仕上げ圧延終了温度は850℃以上とする。好ましくは870℃以上とし、より好ましくは890℃以上とする。上限は特に規定しないが、表面性状の安定化の観点から、仕上げ圧延終了温度は1000℃以下とすることが好ましい。
冷延鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理した鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板においては、熱間圧延時にBNが過剰に析出すると、その後の熱処理においてフェライトやパーライト等の生成が促進されて、本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、上記温度域ではBN析出を極力抑制する必要がある。650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s以上では、BN析出の抑制が不十分である。したがって、上記の仕上げ圧延後に800℃まで冷却した後、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間は1s未満とする。
冷延鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理した鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板においては、熱間圧延時にBNが過剰に析出すると、その後の熱処理においてフェライトやパーライト等の生成が促進されて、本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、BN析出を極力抑制する必要がある。550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s未満では、BN析出の抑制が不十分である。したがって、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却する。上記温度域の平均冷却速度は、好ましくは30℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、上記温度域の平均冷却速度が500℃/s以上では、鋼板の面内の温度ばらつきの制御が難しくなる。このため操業性の観点からは、上記温度域の平均冷却速度は500℃/s未満が好ましい。
冷延鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理した鋼板、冷延板を熱処理およびの溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板においては、熱間圧延時にBNが過剰に析出すると、その後の熱処理においてフェライトやパーライト等の生成が促進されて本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、BN析出を極力抑制する必要がある。巻取り温度が550℃を超えると、BN析出の抑制が不十分となる。したがって、巻取り温度は550℃以下とする。より好ましくは500℃以下とする。下限は特に規定しないが、形状安定性の観点からは、巻取り温度は100℃以上とすることが好ましい。
本発明では、熱間圧延後から焼鈍までの間に、冷間圧延を施す。冷間圧延は、例えば、圧下率を20%以上とすることが好ましい。圧下率が20%未満では、アスペクト比の大きいオーステナイトが生成する場合がある。より好ましくは30%以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、冷間圧延の圧下率は90%以下とすることが好ましい。なお、ここでの圧下率は、合計圧下率を指す。合計圧下率CRは、圧延前の板厚t0と圧延後の板厚t1から下記式より算出する。
CR(%)=100×(t0−t1)/t0
焼鈍温度:800℃以上
焼鈍温度が800℃未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、本発明の鋼組織が得られない。また、焼鈍温度は高いほどオーステナイト粒を粗大化できるため、高温焼鈍とする。したがって、焼鈍温度は800℃以上とする。好ましくは820℃以上とし、より好ましくは840℃以上とする。上限は特に規定しないが、エネルギー効率等の観点からは、焼鈍温度は1000℃以下が好ましい。
800℃以上の温度域での滞留時間が30s未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、本発明の鋼組織が得られない。また、焼鈍温度は高いほどオーステナイト粒を粗大化できるため、長時間の焼鈍とする。したがって、800℃以上の温度域での滞留時間は30s以上とする。好ましくは60s以上とする。上限は特に規定しないが、エネルギー効率等の観点からは、上記温度域での滞留時間は1000s以下が好ましい。
10(750−T)/120≦t≦1000 ・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での滞留時間(s)とする。
Bs=830−270×[C]−90×[Mn]−37×[Ni]−70×[Cr]−83×[Mo]
ここで、上記の式における[X]は元素Xの質量%であり、含有されない場合はゼロとする。
表1に示す成分組成の鋼(残部はFeおよび不可避的不純物である。)を実験室の真空溶解炉により溶製し、圧延して鋼スラブとした。これらの鋼スラブを表2−1〜表2−3に示す条件で熱間圧延を施し、厚さ3mmの熱延鋼板を作製した。
鋼組織の測定は、上記した方法で行った。測定結果を表3−1〜表3−3に示す。
BNとして析出したB量は、抽出残渣分析により求める。めっき鋼板(HGI、HGA)では、塩酸等によりめっき剥離を行った後、測定する。
熱延鋼板(HR)および熱延溶融亜鉛めっき鋼板(HGI、HGA)より40mm角のサンプルを採取し、10%Brメタノールに溶解して炭化物を溶解させ、ろ過することで、炭化物以外の析出物を抽出する。これを酸に溶解し、蒸留した後、ICP分析により求めたB量を、BNとして析出したB量とした。測定結果を表3−1〜表3−3に示す。
熱延鋼板(HR)および熱延溶融亜鉛めっき鋼板(HGI、HGA)より、圧延方向に対して直角方向にJIS5号引張試験片(JIS Z2201)を採取し、歪速度が10−3/sとするJIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行い、TSを求めた。TSを表3−1〜表3−3に示す。本発明では、TSが1180MPa以上を合格とした。
熱延鋼板(HR)および熱延溶融亜鉛めっき鋼板(HGI、HGA)より、圧延方向と平行な方向を幅方向とする試験片を採取した。試験片のサイズは、幅が30mm、長さが110mmとした。試験片は、稜線が圧延方向と平行となるように、15mmの曲げ半径で90゜V曲げ加工を行い、スプリングバックで開いた分だけボルトで締め込み、それをpH1の塩酸に浸漬し、割れが発生する時間(遅れ破壊時間)を調査した。浸漬時間は最大96hr(時間)とし、96hrの間、割れが発生しなかったサンプルについては「割れ発生無し」と評価した。なお、試験片の端面は、いずれも機械加工仕上げとした。
表4に示す成分組成の鋼(残部はFeおよび不可避的不純物である。)を実験室の真空溶解炉により溶製し、圧延して鋼スラブとした。これらの鋼スラブを表5に示す条件で熱間圧延を行い、厚さ3mmの熱延板を作製し、次いで、表5に示す条件で冷間圧延を行い、厚さ1.4mmの冷延板を作製した。鋼板No.27および28については熱延板の厚さをそれぞれ4.0mmおよび2.3mmとし、冷間圧延を行って、それぞれ厚さ1.4mmの冷延板とした。
Claims (11)
- 成分組成は、質量%で、
C:0.08〜0.40%、
Si:3.0%以下、
Mn:1.0〜4.0%、
P:0.030%以下、
S:0.0030%以下、
Al:1.5%以下、
N:0.0010〜0.010%、
B:0.0005〜0.010%を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
鋼組織は、マルテンサイトと下部ベイナイトの合計面積率が40〜100%、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率が0〜20%、パーライトの面積率が3%以下であり、
旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以下であり、
BNとして析出したB量が、質量%で0.0005〜0.010%であり、
前記マルテンサイト、前記下部ベイナイト、前記フレッシュマルテンサイトおよび前記残留オーステナイト以外の組織の合計面積率と引張強度との関係が、(1)式を満たすことを特徴とする高強度鋼板。
V(S)≦0.0001×TS2−0.4×TS+400・・・・(1)
ここで、(1)式における、V(S)はマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率(%)であり、TSは引張強度(MPa)である。 - 前記旧オーステナイト粒の平均結晶粒径が、5μm超であることを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
- 前記BNとして析出したB以外のB量が、質量%で0.0003%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼板。
- 前記成分組成が、さらに、質量%で、
Cr:2.0%以下、
Mo:2.0%以下、
V:2.0%以下、
Ni:2.0%以下、
Cu:2.0%以下、
Nb:0.20%以下、
Ca:0.0050%以下、
REM:0.0050%以下、
Sb:0.10%以下、
Sn:0.50%以下、
Zr:0.002%以下、
Mg:0.002%以下
のうちから選択される1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼板。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、650℃超え800℃以下の温度域で1〜1000s滞留させた後、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延した後、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後、550℃超え650℃以下の温度域で巻き取ることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下の温度まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取り、
次いで、熱処理およびめっき処理を施すに際し、
800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、
その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間に、(2)式を満たすように滞留処理し、かつ、めっき処理を施すことを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。 - 前記熱処理は、前記滞留処理の前、前記滞留処理の後、あるいは前記滞留処理の途中のいずれかで、
さらに、100℃〜Bs点を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後再加熱する工程を有することを特徴とする請求項7に記載の高強度鋼板の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取り、
次いで、冷間圧延を施し、
次いで、熱処理を施すに際し、
800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、
その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間に、(2)式を満たすように滞留処理することを特徴とする高強度法鋼板の製造方法。
10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。 - 前記熱処理は、前記滞留処理の前、前記滞留処理の後、あるいは前記滞留処理の途中のいずれかで、
さらに、100℃〜Bs点を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後再加熱する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の高強度鋼板の製造方法。 - 前記熱処理中に、前記焼鈍後さらにめっき処理を施すことを特徴とする請求項9または10に記載の高強度鋼板の製造方法。
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