JP2021172838A - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高強度鋼板およびその製造方法を提供する。【解決手段】 本発明の高強度鋼板は、特定の成分組成からなり、鋼組織は、マルテンサイトと下部ベイナイトの合計面積率が40〜100%、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率が0〜20%、パーライトの面積率が3%以下であり、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以下であり、BNとして析出したB量が質量%で0.0005〜0.010%であり、マルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率(%)と引張強度(MPa)との関係が(1)式を満たす。V(S)≦0.0001×TS2−0.4×TS+400・・・・(1)【選択図】なし

Description

本発明は、自動車用部品の素材として好適な、高強度鋼板およびその製造方法に関する。
自動車の衝突安全性改善と燃費向上の観点から自動車用部品に用いられる鋼板の高強度化が求められている。しかしながら、引張強度(以下、TSと称する場合もある。)が1180MPaを超える高強度鋼板は、遅れ破壊が発生する強度域となるため、鋼板を部品の素材として適用するためには耐遅れ破壊特性が必要となる。このような理由から耐遅れ破壊特性に優れたTS1180MPa超級の鋼板が多く開発されてきた。
特許文献1には、Vを添加し、焼き戻しベイナイト組織中に析出したVを含む析出物を導入させることで、伸びフランジ性と耐遅れ破壊特性向上とを両立させた高強度薄鋼板に関する技術が開示されている。
特許文献2には、めっき層と鋼板との界面に内部酸化層の領域を含む軟質層と硬質層を有し、内部酸化層の厚みを制御することで、耐遅れ破壊特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板に関する技術が開示されている。
特開2010−18863号公報 特開2018−193614号公報
しかしながら、特許文献1に記載した技術では、微細なV系の析出物が鋼板の靭性を低下させてスラブ割れを生じやすくし、その結果、製造性が阻害される等の課題がある。
特許文献2に記載した技術では、内部酸化層の形成には特別な設備が必要である。さらに、熱間圧延で形成された内部酸化は冷間圧延時にピックアップ等の問題も生じやすく、また、焼鈍ラインでも焼鈍中に形成された内部酸化に起因したピックアップ等の問題も生じやすく、安定的な製造が困難となる課題がある。
また、これまで、安価で製造性への悪影響が小さいB系の析出物としてBNに着目し、特にBNの制御によって耐遅れ破壊特性の向上を試みる技術は提案されていなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、自動車用部品の素材として好適な、優れた耐遅れ破壊特性を実現する高強度鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
上述したように、これまで、特にBNの制御によって耐遅れ破壊特性の向上を試みる技術は提案されていない。その理由は次のように考えられる。Bは、固溶状態では焼き入れ性を向上させる元素としてよく知られている。BNの形成は固溶Bを低下させ、その結果、焼き入れ効果を低減させるためにむしろ避けられている。そのため、Ti等の添加によってもっぱらBNの形成を抑制することが図られてきた。
そこで、本発明者らは、焼き入れ性以外のBNの活用に注目し、上記した課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。
鋼板は、特定の成分組成を有し、マルテンサイトと下部ベイナイトの合計面積率が40〜100%、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率が0〜20%、パーライトの面積率が3%以下とし、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以下、かつマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率と引張強度との関係が(1)式を満たした上で、BをBNとして0.0005〜0.010質量%の範囲で析出させる鋼組織とすることで、1180〜2000MPaのTS範囲において優れた耐遅れ破壊特性を発現することを見出した。
V(S)≦0.0001×TS−0.4×TS+400・・・・(1)
上記(1)式における、V(S)はマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率(%)であり、フェライトや上部ベイナイト等が該当する。また、上記(1)式における、TSは引張強度(MPa)である。ここで、上記(1)式が適用されるTSの範囲は、1180〜2000MPaとする。
なお、本発明における「高強度」とは、TSが1180MPa以上の鋼板を指す。
また、本発明における「優れた耐遅れ破壊特性」とは、後述する実施例に記載の方法で評価し、YS(降伏強度)相当の応力を付加したV曲げボルト締めサンプルをpH1の塩酸に浸漬した際に、TSが1180MPa以上1550MPa未満の鋼板で96時間以上、1550MPa以上1750MPa未満の鋼板で10時間以上、1750MPa以上の鋼板で1時間以上の間、破壊が生じないことを指すものとする。
また、本発明における「鋼板」とは、熱延鋼板(HR)、熱延鋼板を熱処理および溶融亜鉛めっきした鋼板(HGI。以下、「熱延溶融亜鉛めっき鋼板」と称する場合もある。)、熱延鋼板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板(HGA。以下、「熱延合金化溶融亜鉛めっき鋼板」と称する場合もある。)、冷延鋼板(CR)、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっきした鋼板(CGI。以下、「冷延溶融亜鉛めっき鋼板」と称する場合もある。)、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板(CGA。以下、「冷延合金化溶融亜鉛めっき鋼板」と称する場合もある。)を含むものとする。
なお、以降の説明において、「熱延溶融亜鉛めっき鋼板」および「熱延合金化溶融亜鉛めっき鋼板」を含めて、「熱延めっき鋼板」と称する場合もある。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1] 成分組成は、質量%で、
C:0.08〜0.40%、
Si:3.0%以下、
Mn:1.0〜4.0%、
P:0.030%以下、
S:0.0030%以下、
Al:1.5%以下、
N:0.0010〜0.010%、
B:0.0005〜0.010%を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
鋼組織は、マルテンサイトと下部ベイナイトの合計面積率が40〜100%、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率が0〜20%、パーライトの面積率が3%以下であり、
旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以下であり、
BNとして析出したB量が、質量%で0.0005〜0.010%であり、
前記マルテンサイト、前記下部ベイナイト、前記フレッシュマルテンサイトおよび前記残留オーステナイト以外の組織の合計面積率と引張強度との関係が、(1)式を満たすことを特徴とする高強度鋼板。
V(S)≦0.0001×TS−0.4×TS+400・・・・(1)
ここで、(1)式における、V(S)はマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率(%)であり、TSは引張強度(MPa)である。
[2] 前記旧オーステナイト粒の平均結晶粒径が、5μm超であることを特徴とする[1]に記載の高強度鋼板。
[3] 前記BNとして析出したB以外のB量が、質量%で0.0003%以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の高強度鋼板。
[4] 前記成分組成が、さらに、質量%で、
Cr:2.0%以下、
Mo:2.0%以下、
V:2.0%以下、
Ni:2.0%以下、
Cu:2.0%以下、
Nb:0.20%以下、
Ca:0.0050%以下、
REM:0.0050%以下、
Sb:0.10%以下、
Sn:0.50%以下、
Zr:0.002%以下、
Mg:0.002%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載の高強度鋼板。
[5] [1]〜[4]のいずれか1つに記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、650℃超え800℃以下の温度域で1〜1000s滞留させた後、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
[6] [1]〜[4]のいずれか1つに記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延した後、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後、550℃超え650℃以下の温度域で巻き取ることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
[7] [1]〜[4]のいずれか1つに記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下の温度まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取り、
次いで、熱処理を施すに際し、
800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、
その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間に、(2)式を満たすように滞留処理し、かつ、めっき処理を施すことを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。
[8] 前記熱処理は、前記滞留処理の前、前記滞留処理の後、あるいは前記滞留処理の途中のいずれかで、
さらに、100℃〜Bs点まで5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後再加熱する工程を有することを特徴とする[7]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[9] [1]〜[4]のいずれか1つに記載の高強度鋼板の製造方法であって、
前記成分組成を有するスラブを加熱し、
次いで、熱間圧延を施すに際し、
粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取り、
次いで、冷間圧延を施し、
次いで、熱処理を施すに際し、
800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、
その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間に、(2)式を満たすように滞留処理することを特徴とする高強度法鋼板の製造方法。
10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。
[10] 前記熱処理は、前記滞留処理の前、前記滞留処理の後、あるいは前記滞留処理の途中のいずれかで、
さらに、100℃〜Bs点まで5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後再加熱する工程を有することを特徴とする[9]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[11] 前記熱処理中に、前記焼鈍後さらにめっき処理を施すことを特徴とする[9]または[10]に記載の高強度鋼板の製造方法。
本発明によれば、耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法を提供することができる。さらに、本発明の高強度鋼板は、自動車用部品の素材として好適である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
まず、本発明の高強度鋼板における成分組成および鋼組織について説明する。
1)成分組成
本発明の高強度鋼板における成分組成を上記のように限定した理由を以下に説明する。なお、成分組成の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.08〜0.40%
Cは、マルテンサイトや下部ベイナイトを生成させ、TSを上昇させるのに有効な元素である。C量が0.08%未満ではこのような効果を十分に得られず、本発明で目的とする強度や鋼組織が得られない。一方、C量が0.40%を超えると、マルテンサイトの硬化や、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイトの増加を招き、耐遅れ破壊特性が劣化する。したがって、C量は0.08〜0.40%とする。好ましくは0.09%以上とし、好ましくは0.33%以下とする。より好ましくは0.10%以上とし、より好ましくは0.29%以下とする。
Si:3.0%以下
Siは、鋼の強化に有効であり、必要に応じて含有できるが、3.0%を超えて過剰に含有するとフェライトの生成が顕著になり、本発明の鋼組織が得られなくなる。したがって、Si量は3.0%以下とする。好ましくは2.5%以下とし、より好ましくは2.0%以下とする。TSを増加する観点から、Si量は0.10%以上とすることが好ましい。
Mn:1.0〜4.0%
Mnは、マルテンサイトや下部ベイナイトを生成させ、TSを上昇させるのに有効な元素である。Mn量が1.0%未満では、こうした効果が十分に得られない。一方、Mn量が4.0%を超えると鋼が脆化して、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性が得られない。したがって、Mn量は1.0〜4.0%とする。好ましくは1.5%以上とし、好ましくは3.5%以下とする。より好ましくは2.0%以上とし、より好ましくは3.3%以下とする。
P:0.030%以下
Pは、粒界を脆化させて耐遅れ破壊特性を劣化させるため、その量は極力低減することが望ましいが、本願発明では0.030%まで許容できる。したがって、P量は0.030%以下とする。好ましくは0.010%以下とする。下限は特に規定しないが、P量が0.0005%未満では生産能率の低下を招くため、0.0005%以上が好ましい。
S:0.0030%以下
Sは、介在物を増加させて耐遅れ破壊特性を劣化させるため、その量は極力低減することが好ましいが、本願発明では0.0030%まで許容できる。したがって、S量は0.0030%以下とする。好ましくは0.0015%以下とする。下限は特に規定しないが、S量が0.0001%未満では生産能率の低下を招くため、0.0001%以上が好ましい。
Al:1.5%以下
Alは、AlNを形成し、異常粗大粒を抑制するため適宜添加することが好ましい。一方、Al量が1.5%を超えて含有するとフェライトが過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られない。したがって、Al量は1.5%以下とする。好ましくは1.0%以下とし、より好ましくは0.5%以下とする。下限は特に規定しないが、Al量が0.010%未満ではAlNの生成量が少なくなるため、0.010%以上が好ましい。
N:0.0010〜0.010%
Nは、BN形成に必要な元素である。BNの形成には、Nの含有量を0.0010%以上とする必要がある。一方、N量が0.010%を超えると粗大なBNが生成して、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性が得られなくなる。したがって、N量は0.0010〜0.010%とする。好ましくは0.0015%以上とし、好ましくは0.0080%以下とする。
B:0.0005〜0.010%
Bは、BN形成に必要な元素である。このような効果を得るには、Bの含有量を0.0005%以上とする必要がある。一方、Bの含有量が0.010%を超えると粗大なBNが生成して、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性が得られなくなる。したがって、B量は0.0005〜0.010%とする。好ましくは0.0010%以上とし、好ましくは0.0080%以下とする。より好ましくは0.0020%以上とし、より好ましくは0.0070%以下とする。
BNとして析出したB量:0.0005〜0.010%
BNは拡散性水素の移動を妨げ、耐遅れ破壊特性の向上に必要な析出物である。BNを微細な状態で多量に分散させることで、遅れ破壊の起点となり得る箇所への水素の集中を抑制し、遅れ破壊を抑制することができる。本発明で目的とする耐遅れ破壊特性を得るには、BNとして析出したB量が0.0005%以上とする必要がある。一方、BNとして析出したB量が0.010%を超えると耐遅れ破壊特性に寄与しない粗大なBNばかりになり、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性が得られなくなる。したがって、BNとして析出したB量は、0.0005〜0.010%とする。好ましくは0.0010%以上とし、好ましくは0.0080%以下とする。より好ましくは0.0020%以上とし、好ましくは0.0070%以下とする。
なお、本発明では、BNとして析出したB以外のB量を0.0003%以上とすることで、耐遅れ破壊特性をさらに向上させることができる。このメカニズムは明らかではないが、BNとして析出しなかったBの多くは固溶状態で粒界に偏析し、粒界強化することで耐遅れ破壊特性を向上させること等が考えられる。BNとして析出したB量以外のB量の上限は特に規定しないが、上記した本発明のB、N含有量の範囲内では、0.0090%以下であることが好ましい。BNとして析出したB以外のB量は、より好ましくは0.0005%以上とし、より好ましくは0.0050%以下とする。
本発明の高強度鋼板は、以上の成分を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である。
本発明の高強度鋼板は、上記した成分を基本の成分組成とする。上記した必須元素で本発明で目的とする特性は得られるが、強度や耐遅れ破壊特性の更なる向上を目的として、必要に応じて以下の元素を含有することができる。
Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、V:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cu:2.0%以下、Nb:0.20%以下、Ca:0.0050%以下、REM:0.0050%以下、Sb:0.10%以下、Sn:0.50%以下、Zr:0.002%以下、およびMg:0.002%以下のうちから選択される1種または2種以上
V、Mo、Nbは、微細炭化物の形成によって耐遅れ破壊特性の向上に寄与する有効な元素である。こうした効果を得るため、V、Mo、Nbを含有する場合には、V、Mo、Nbから選ばれる1種または2種以上をそれぞれ0.005%以上とすることが好ましい。一方、V、Mo、Nbのそれぞれの含有量が上記上限値を超えると、析出物が粗大化して焼入れ性が低下し、本発明の鋼組織が得られなくなる場合がある。
Cr、Ni、Cuは、鋼板の焼入れ性を高め、マルテンサイトや下部ベイナイトの増加に寄与する有効な元素である。こうした効果を得るため、Cr、Ni、Cuを含有する場合には、Cr、Ni、Cuから選ばれる1種または2種以上をそれぞれ0.005%以上とすることが好ましい。一方、Cr、Ni、Cuのそれぞれの含有量が上記上限値を超えると、介在物が増加して耐遅れ破壊特性の低下を招く場合がある。
Ca、REM(希土類元素)は、介在物の形状を球状化して鋼板の加工性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果を得るため、Ca、REMを含有する場合には、Ca、REMから選ばれる1種または2種をそれぞれ0.0001%以上とすることが好ましい。一方、Ca、REMのそれぞれの含有量が上記上限値を超えると、介在物が増加して耐遅れ破壊特性の低下を招く場合がある。
Sb、Snは、粒界に偏析して耐遅れ破壊特性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果を得るため、Sb、Snを含有する場合には、Sb、Snから選ばれる1種または2種をそれぞれ0.0010%以上とすることが好ましい。一方、Sb、Snのそれぞれの含有量が上記上限値を超えると、介在物の増加等により加工性の低下を招く場合がある。
Zr、Mgは、介在物制御による耐遅れ破壊特性の向上を目的として含有することができる元素である。こうした効果を得るため、Zr、Mgを含有する場合には、Zr、Mgから選ばれる1種または2種をそれぞれ上記上限値まで含んでも構わない。一方、Zr、Mgのそれぞれの含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
したがって、Cr、Mo、V、Ni、Cu、Nb、Ca、REM、Sb、Sn、ZrおよびMgのうちから選択される1種または2種以上を必要に応じて含有する場合、その含有量は、それぞれ、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、V:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cu:2.0%以下、Nb:0.20%以下、Ca:0.0050%以下、REM:0.0050%以下、Sb:0.10%以下、Sn:0.50%以下、Zr:0.002%以下、Mg:0.002%以下とすることが好ましい。また、それぞれ、Cr:0.005%以上、Mo:0.005%以上、V:0.005%以上、Ni:0.005%以上、Cu:0.005%以上、Nb:0.005%以上、Ca:0.0001%以上、REM:0.0001%以上、Sb:0.0010%以上、Sn:0.0010%以上、Zr:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上とすることが好ましい。
Cr含有量は、より好ましくは0.10%以上とし、より好ましくは1.0%以下とする。Mo含有量は、より好ましくは0.05%以上とし、より好ましくは0.5%以下とする。V含有量は、より好ましくは0.01%以上とし、より好ましくは0.5%以下とする。Ni含有量は、より好ましくは0.10%以上とし、より好ましくは1.5%以下とする。Cu含有量は、より好ましくは0.10%以上とし、より好ましくは0.5%以下とする。Nb含有量は、より好ましくは0.01%以上とし、より好ましくは0.10%以下とする。Ca含有量は、より好ましくは0.0005%以上とし、より好ましくは0.0030%以下とする。REM含有量は、より好ましくは0.0005%以上とし、より好ましくは0.0030%以下とする。Sb含有量は、より好ましくは0.0030%以上とし、より好ましくは0.050%以下とする。Sn含有量は、より好ましくは0.0030%以上とし、より好ましくは0.10%以下とする。
なお、Zrおよび/またはMgは、合計で0.002%以下とすることがより好ましい。Zrは0.0005〜0.0015%とすることがさらに好ましく、Mgは0.0005〜0.0015%とすることがさらに好ましい。
2)鋼板組織
本発明の高強度鋼板は、上記成分組成を有することに加えて、マルテンサイトと下部ベイナイトの合計面積率が40〜100%、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率が0〜20%、パーライトの面積率が3%以下であり、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以下であり、マルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率と引張強度との関係が後述する(1)式を満たす、鋼板組織を有する。
そこで、本発明において鋼板組織(以下、鋼組織と称する。)を上記のように限定した理由を以下に説明する。なお、ここでは、板厚tの1/4t深さ位置の鋼組織を規定する。
下部ベイナイトとマルテンサイトの合計面積率:40〜100%
下部ベイナイトとマルテンサイトは、TSと優れた耐遅れ破壊特性を両立する観点から必要な組織である。各組織の面積率の合計が40%未満では、これらが両立できない。したがって、下部ベイナイトとマルテンサイトの合計面積率は40〜100%とする。好ましくは60〜100%とし、より好ましくは80〜99%とする。
フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率:0〜20%
フレッシュマルテンサイトや残留オーステナイトは、延性向上等を目的に含有してもよいが、各組織の面積率の合計が20%を超えると耐遅れ破壊特性の顕著な低下を招く。このため、その上限は20%とする。したがって、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率は0〜20%とする。好ましくは0〜15%とし、より好ましくは0〜10%とし、さらに好ましくは1〜6%とする。
パーライトの面積率:3%以下
パーライトは、Cが濃化したオーステナイトから発生し、硬質なフレッシュマルテンサイトに隣接して存在することで遅れ破壊の亀裂を助長する。その面積率が3%を超えると本発明の耐遅れ破壊特性が得られなくなる。したがって、パーライトは面積率で3%以下とする。好ましくは2%以下とし、より好ましくは1%以下とする。また、0%以上とすることが好ましい。
なお、上記したマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織は、耐遅れ破壊特性の観点から、該組織の合計面積率を60%未満とすることが好ましい。より好ましくは50%以下とする。より好ましくは0%以上とする。本発明において「マルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織」とは、フェライトや上部ベイナイト、パーライト等が該当する。
旧オーステナイト粒の平均アスペクト比:5.0以下
圧延方向に伸展した硬質な組織は耐遅れ破壊特性の観点から好ましくない。旧オーステナイト粒の平均アスペクト比で5.0を超えると、本発明の耐遅れ破壊特性が得られない。したがって、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比は5.0以下とする。好ましくは4.0以下とし、より好ましくは3.0以下とする。なお、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比の下限は特に規定しないが、下記の定義より1.0以上となる。
本発明において「旧オーステナイト粒」とは、旧オーステナイト粒界、フェライトとマルテンサイトとの境界、フェライトと下部ベイナイトとの境界のいずれか1つ以上の境界によって囲まれるマルテンサイト粒あるいは下部ベイナイト粒とする。また、旧オーステナイト粒のアスペクト比は、該粒の長辺をL、長辺と直行する短辺をSとするとき、短辺に対する長辺の比(L/S)とする。長辺は粒内に引くことができる最も長い直線とし、短辺はそれに直行する線で、同粒内に引くことができる最も長い直線とする。
マルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率と引張強度との関係:(1)式を満たす
V(S)≦0.0001×TS−0.4×TS+400・・・・(1)
ここで、(1)式における、V(S)はマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率(%)であり、TSは引張強度(MPa)である。
高強度化にともなって、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性を達成するためには、許容できるマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の含有量が低下する。引張強度と、マルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率とが上記した(1)式を満たしていれば、本発明で目的とする耐遅れ破壊特性が得られる。したがって、本発明では、引張強度と、マルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率との関係は、(1)式を満たすこととする。ただし、(1)式が適用されるTSの範囲は、1180〜2000MPaとする。
本発明の鋼組織は、上記した構成に加えて、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を5μm超とすることで、耐遅れ破壊特性をさらに向上させることができる。このメカニズムは明らかではないが、微細なフェライト等の生成が促進されることでマルテンサイトへの元素濃化が促進されて硬質になり、遅れ破壊亀裂の進展を助長させることなどが考えられる。したがって、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を5μm超とすることが好ましい。より好ましくは6μm以上とする。上限は特に規定しないが、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径は50μmを超えると加工時の肌荒れ等の別の問題を生じる可能性があるため、50μm以下が好ましい。
本発明において、下部ベイナイト、マルテンサイト、フレッシュマルテンサイト、残留オーステナイトおよびパーライトの面積率とは、観察面積に占める各組織の面積の割合のことである。鋼組織におけるこれらの面積率は、次のように得られる。
まず、熱処理後の鋼板よりサンプルを切り出し、圧延方向に平行な板厚断面を研磨後、1%ナイタールで腐食し、鋼板表面近傍および鋼板表面から板厚方向に300〜400μm位置を、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて1500倍の倍率でそれぞれ3視野撮影する。次いで、得られた画像データからMedia Cybernetics社製のImage−Proを用いて各組織の面積率を求め、3視野の平均面積率を各組織の面積率とする。上記画像データにおいて、下部ベイナイトは、方位のそろった炭化物を含む暗灰色、灰色または明灰色として区別される。マルテンサイトは、複数の方位の炭化物を含む暗灰色、灰色または明灰色として区別される。フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイトは、炭化物を含まない白または明灰色として区別される。なお、本発明において、下部ベイナイトは焼戻しベイナイトであっても構わない。また、マルテンサイトはオートテンパードマルテンサイトや焼戻しマルテンサイトであっても構わない。炭化物は白色の点状または線状である。パーライトは、黒色のフェライトと白色の炭化物との層状組織として区別できる。なお、炭化物を含まないあるいは炭化物の少ない黒または暗灰色の組織は、フェライトまたは上部ベイナイトとして区別できる。
残留オーステナイトの面積率は、熱処理後の鋼板を板厚の1/4まで研削後、化学研磨によりさらに0.1mm研磨した面について、X線回折装置でMoのKα1線を用い、fcc鉄(オーステナイト)の(200)面、(220)面、(311)面と、bcc鉄(フェライト)の(200)面、(211)面、(220)面の積分反射強度を測定し、bcc鉄の各面からの積分反射強度に対するfcc鉄の各面からの積分反射強度の強度比から体積率を求め、これを残留オーステナイトの面積率とした。
なお、本発明における「高強度鋼板」とは、板厚が0.4mm以上の鋼板を指すものとする。自動車用部品の素材として適用する観点から、鋼板の板厚は0.5mm超えとすることが好ましく、0.6mm以上とすることがより一層好ましい。板厚の上限は特に限定されず、任意の厚さとすることができるが、10mm以下とすることが好ましい。
また、本発明の高強度鋼板のうち「熱延鋼板」の場合には、板厚が0.8mm以上10mm以下とすることが望ましく、「冷延鋼板」の場合には、板厚が0.4mm以上5.0mm未満とすることが望ましい。
3)高強度鋼板の製造方法
次に、本発明の高強度鋼板の製造方法について説明する。
以下に説明する第1実施形態〜第4実施形態は、本発明の鋼組織として重要なBNの析出過程がそれぞれ異なる製造方法である。
なお、以下の製造方法の説明では、温度に関する「℃」表示は、特に断らない限り、スラブや鋼板の表面温度とする。これらの表面温度は、例えば放射温度計等で測定することができる。また、スラブや鋼板の板厚中心位置(板厚1/2位置)の温度は、例えば、鋼板の板厚中心に熱電対を付けて測定することや、鋼板断面内の温度分布を伝熱解析により計算し、その結果を鋼板の表面温度によって補正することで求めることができる。
まず、熱延鋼板、熱延鋼板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理した鋼板、熱延鋼板を熱処理および溶融亜鉛めっき後に亜鉛めっきの合金化処理をした鋼板の製造方法の各実施形態について説明する。
<第1実施形態>
本発明の高強度鋼板のうち、熱延鋼板は、次の製造条件で製造できる。例えば、上記の成分組成を有するスラブを加熱し、次いで熱間圧延を施して、熱延鋼板を製造する。この熱間圧延を施すに際し、粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、650℃超え800℃以下の温度域で1〜1000s滞留させた後、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取る。以下、詳細に説明する。
仕上げ圧延終了温度:850℃以上
仕上げ圧延終了温度が850℃未満になると偏平粒が増大し、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0超となり、本発明の鋼組織が得られない。また、フェライトが微細に出る等し、オーステナイト粒が微細化する場合がある。したがって、仕上げ圧延終了温度は850℃以上とする。好ましくは870℃以上とし、より好ましくは890℃以上とする。上限は特に規定しないが、表面性状の安定化の観点から、仕上げ圧延終了温度は1000℃以下とすることが好ましい。
650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間:1〜1000s
巻取り温度が550℃以下の温度で、かつ焼鈍を行わない条件においては、上記の仕上げ圧延後に800℃まで冷却した後、650℃超え800℃以下の温度域で滞留中にBNを析出させる必要がある。滞留時間が1s未満ではBN析出が不十分となる。一方、滞留時間が1000sを超えるとフェライトやパーライト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得られない。したがって、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間は、1〜1000sとする。好ましくは2s以上とし、好ましくは600s以下とする。
550〜650℃の温度域の平均冷却速度:10℃/s以上
上記した650℃超え800℃以下の温度域で滞留後の冷却は、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s未満ではフェライトやパーライト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得られない。したがって、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で、550℃以下の温度まで冷却する。好ましくは30℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、上記平均冷却速度が500℃/s以上では、鋼板の面内の温度ばらつきの制御が難しくなる。このため操業性の観点からは、上記平均冷却速度は500℃/s未満が好ましい。
巻取り温度:550℃以下
上記した650℃超え800℃以下の温度域で滞留中にBNを析出させる製造条件では、巻取り温度は550℃以下とする必要がある。巻取り温度が550℃を超えると、フェライトやパーライト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得られなくなる。したがって、巻取り温度は550℃以下とする。より好ましくは500℃以下とする。下限は特に規定しないが、形状安定性の観点からは、巻取り温度は100℃以上とすることが好ましい。
<第2実施形態>
本発明の高強度鋼板のうち、熱延鋼板は、次の製造条件でも製造できる。例えば、上記の成分組成を有するスラブを加熱し、次いで熱間圧延を施して、熱延鋼板を製造する。この熱間圧延を施すに際し、粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延した後、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後、550℃超え650℃以下の温度域で巻き取る。以下、詳細に説明する。
仕上げ圧延終了温度:850℃以上
仕上げ圧延終了温度が850℃未満になると偏平粒が増大し、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0超となり、本発明の鋼組織が得られない。また、フェライトが微細に出る等し、オーステナイト粒が微細化する場合がある。したがって、仕上げ圧延終了温度は850℃以上とする。好ましくは870℃以上とし、より好ましくは890℃以上とする。上限は特に規定しないが、表面性状の安定化の観点から、仕上げ圧延終了温度は1000℃以下とすることが好ましい。
650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間:1s未満
後述のように、巻取り温度が550℃超え650℃以下の温度域とする製造条件の場合、650℃超え800℃以下の温度域での滞留中にBNが析出するとフェライトやパーライト等の生成が促進されて、本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、上記の仕上げ圧延後に所定の温度まで冷却する際、上記温度域での滞留時間を1s未満とする条件で冷却する必要がある。したがって、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間は、1s未満とする。
巻取り温度:550℃超え650℃以下
上記した650℃超え800℃以下の温度域での滞留中にBNを析出させない製造条件では、巻取り中にBNを析出させる必要がある。巻取り温度が550℃以下では、BNの析出が不十分となる。一方、巻取り温度が650℃を超えると、フェライトやパーライト等の生成が促進されて本発明の鋼組織が得られなくなる。したがって、巻取り温度は550℃超え650℃以下とする。
<第3実施形態>
本発明の高強度鋼板のうち、熱延鋼板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理した鋼板(HGI)、熱延鋼板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板(HGA)は、次の製造条件で製造できる。
例えば、上記の成分組成を有するスラブを加熱し、次いで熱間圧延を施し、次いで熱処理およびめっき処理を施して、熱延めっき鋼板(HGI、HGA)を製造する。この熱間圧延を施すに際し、粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下の温度まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取る。また、この熱処理およびめっき処理を施すに際し、800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間において、(2)式を満たすように滞留処理し、かつ、めっき処理を施す。
10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。
仕上げ圧延終了温度:850℃以上
上記した第2実施形態と同様の理由から、仕上げ圧延終了温度は850℃以上とする。好ましくは870℃以上とし、より好ましくは890℃以上とする。上限は特に規定しないが、表面性状の安定化の観点から、仕上げ圧延終了温度は1000℃以下とすることが好ましい。
650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間:1s未満
後述のように、熱処理の工程でBNを析出させる製造条件では、熱間圧延時にBNを析出させると焼鈍時に粗大してフェライトやパーライト等が過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、上記の仕上げ圧延後に800℃まで冷却した後、上記温度域での滞留時間を1s未満とする条件で冷却する必要がある。したがって、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間は、1s未満とする。
550〜650℃の温度域の平均冷却速度:10℃/s以上で、550℃以下の温度まで冷却
550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s未満ではフェライトやパーライト等が過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られない。したがって、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で、550℃以下の温度まで冷却する。上記平均冷却速度は、好ましくは30℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、上記平均冷却速度が500℃/s以上では、鋼板の面内の温度ばらつきの制御が難しくなる。このため操業性の観点からは、上記平均冷却速度は500℃/s未満が好ましい。
巻取り温度:550℃以下
後述するように、熱処理でBNを析出させる製造条件では、巻取り温度は550℃以下とする必要がある。巻取り温度が550℃を超えると、フェライトやパーライト等が過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られなくなる。したがって、巻取り温度は550℃以下とする。より好ましくは500℃以下とする。下限は特に規定しないが、形状安定性の観点からは、巻取り温度は100℃以上とすることが好ましい。
焼鈍温度:800℃以上
焼鈍温度が800℃未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、本発明の鋼組織が得られない。また、焼鈍温度は高いほどオーステナイト粒を粗大化できるため、高温焼鈍とする。したがって、焼鈍温度は800℃以上とする。好ましくは820℃以上とし、より好ましくは840℃以上とする。上限は特に規定しないが、エネルギー効率等の観点からは、焼鈍温度は1000℃以下が好ましい。
800℃以上の温度での滞留時間:30s以上
800℃以上の温度での滞留時間が30s未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、本発明の鋼組織が得られない。また、焼鈍温度は高いほどオーステナイト粒を粗大化できるため、長時間の焼鈍とする。したがって、800℃以上の温度での滞留時間は30s以上とする。好ましくは60s以上とする。上限は特に規定しないが、エネルギー効率等の観点からは、上記温度域での滞留時間は1000s以下が好ましい。
第3実施形態の製造条件では、上記焼鈍後の800℃未満の温度から室温まで冷却する間に、所定の条件で滞留処理し、かつ、めっき処理を施す。BNは、800℃未満の温度域での滞留処理中に析出させる。
800℃未満の温度域での滞留時間:(2)式を満たす条件
10(750−T)/120≦t≦1000 ・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での滞留時間(s)とする。
なお、温度は、1℃ごとに個別に保持時間が(2)式を満たすか否かを判定するものとし、同温度に複数回滞留される場合にはその積算値とする。ここで、連続冷却中の各温度(各滞留温度)における滞留時間は、冷却速度をQ(℃/s)としたとき、1/Q(s)とする。
例えば、750℃で保持する場合には、1≦t≦1000となる。また例えば、750℃に1sずつ3回滞留する場合には、750℃で3s滞留したこととなる。後者の例の場合、(2)式に示す「t」が3sとなり、(2)式の左辺値が1となり、(2)式の右辺値が1000となるため、(2)式を満たすこととなる。
800℃未満の温度域での滞留時間が(2)式を満たさないほど短い場合、BNの析出が不十分となる。一方、(2)式を満たさないほど長い場合、フェライトやパーライト等が過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られない。したがって、800℃未満の温度域での滞留時間が(2)式を満たすこととする。なお、この滞留処理は、焼鈍後の800℃未満の温度域であればどの時点で行ってもよく、例えば冷却中やめっき処理中であっても構わない。
なお、上記した本発明の鋼組織を得る観点からは、「焼鈍後、800℃未満の温度から室温まで冷却する間」のヒートパターンは、例えば、多段冷却とするパターンや、多段冷却および再加熱を行うパターンとすることが好ましい。
多段冷却の場合、例えば、450℃以上の第1冷却停止温度まで一定条件で冷却し、必要に応じて冷却停止保持した後(第1冷却の後)、550℃以下の第2冷却停止温度まで一定条件で冷却し、必要に応じて冷却停止保持した後(第2冷却の後)、室温まで冷却(最終冷却)する。第1冷却では、平均冷却速度が0.5℃/s以上、冷却停止温度が450℃以上とすることが好ましい。第2の冷却では、平均冷却速度が1℃/s以上、冷却停止温度が550℃以下とすることが好ましい。最終冷却では、平均冷却速度は0.5℃/s以上、冷却終了温度が50℃以下とすることが好ましい。
800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度:0.5℃/s以上
上記した800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度が0.5℃/s未満では、フェライトやパーライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度は、0.5℃/s以上が好ましく、より好ましくは1℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、500℃/s以下とすることが好ましい。
第1冷却停止温度:450℃以上
上記した第1冷却停止温度が450℃未満では、上部ベイナイトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第1冷却停止温度は450℃以上が好ましい。より好ましくは500℃以上とする。
第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度:1℃/s以上
第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度が1℃/s未満では、フェライト、パーライトおよび上部ベイナイト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度は、1℃/s以上が好ましく、より好ましくは5℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
第2冷却停止温度:550℃以下
上記した第2冷却停止温度が550℃超えでは、フェライトやパーライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第2冷却停止温度は550℃以下が好ましい。より好ましくは500℃以下とする。但し、第2冷却停止温度は第1冷却停止温度より低いものとする。
最終冷却の平均冷却速度:0.5℃/s以上
最終冷却の平均冷却速度が0.5℃/s未満では、パーライトや上部ベイナイト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、最終冷却の平均冷却速度は、0.5℃/s以上が好ましく、より好ましくは1.0℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
最終冷却の冷却停止温度:50℃以下
最終冷却の冷却停止温度が50℃超えでは、計量機器に支障をきたす場合があり、トラブル防止の観点から50℃以下とすることが好ましい。
多段冷却および再加熱を行う場合、例えば、450℃以上の温度まで一定条件で冷却し、必要に応じて冷却停止保持した後(第1冷却の後)、Bs点以下の温度に一定条件で冷却し、必要に応じて冷却停止した後(第2冷却の後)、100℃以上に再加熱し、必要に応じて加熱停止保持した後(再加熱の後)、室温まで冷却(最終冷却)する。第1冷却では、平均冷却速度が0.5℃/s以上、冷却停止温度が450℃以上とすることが好ましい。第2冷却では、平均冷却速度が1℃/s以上、冷却停止温度がBs点以下とすることが好ましい。再加熱では、平均加熱速度は1℃/s以上、加熱停止温度が100℃以上とすることが好ましい。最終冷却では、平均冷却速度が0.5℃/s以上、冷却終了温度が50℃以下とすることが好ましい。
800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度:0.5℃/s以上
上記した800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度が0.5℃/s未満では、フェライトやパーライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、800℃未満の温度域から第1冷却停止温度までの平均冷却速度は、0.5℃/s以上が好ましく、より好ましくは1.0℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、500℃/s以下とすることが好ましい。
第1冷却停止温度:450℃以上
上記した第1冷却停止温度が450℃未満では、上部ベイナイトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第1冷却停止温度は450℃以上が好ましい。より好ましくは500℃以上とする。
第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度:1℃/s以上
第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度が1℃/s未満では、フェライト、パーライトおよび上部ベイナイト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第1冷却停止温度から第2冷却停止温度までの平均冷却速度は、1℃/s以上が好ましく、より好ましくは5℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
第2冷却停止温度:Bs点以下
上記した第2冷却停止温度がBs点を超えると、フェライトやパーライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、第2冷却停止温度はBs点以下が好ましい。より好ましくは(Bs点−50)℃以下とする。但し、第2冷却停止温度は第1冷却停止温度より低いものとする。
再加熱の平均加熱速度:1℃/s以上
再加熱の平均加熱速度を1℃/s以上とすることで、炭化物の過剰な生成を抑制して延性に有効な残留オーステナイトを得やすくなる。したがって、再加熱の平均加熱速度は1℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
再加熱温度:100℃以上
再加熱温度が100℃未満ではマルテンサイトの焼戻しが不十分となり、本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、再加熱温度は100℃以上とする。上限は特に規定しないが、550℃を超えると延性に有効な残留オーステナイトの分解を招いて延性が低下したり、マルテンサイトの焼戻しが過剰になって強度が低下する懸念がある。
最終冷却の平均冷却速度:0.5℃/s以上
最終冷却の平均冷却速度が0.5℃/s未満では、パーライトや上部ベイナイト等が過剰に生成して本発明の鋼組織が得難くなる。したがって、最終冷却の平均冷却速度は、0.5℃/s以上が好ましく、より好ましくは1.0℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、1500℃/s以下とすることが好ましい。
最終冷却の冷却停止温度:50℃以下
最終冷却の平均冷却速度が50℃超えでは、計量機器に支障をきたす場合があり、トラブル防止の観点から50℃以下とすることが好ましい。
めっき処理
上記した熱処理工程では、焼鈍後、800℃未満の温度域でめっき処理を施す。本発明において「めっき処理」とは、主に溶融亜鉛めっき処理、溶融亜鉛めっきの合金化処理を指すが、これ以外のめっきを除外するものではない。
溶融亜鉛めっき鋼板は、上記した熱延鋼板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理を施すことで製造できる。溶融亜鉛めっき処理を施す場合は、例えば、400〜500℃の亜鉛めっき浴中に鋼板を浸漬し、溶融亜鉛めっき処理を施し、その後、ガスワイピング等によって、めっき付着量を調整することが好ましい。亜鉛めっき浴は、亜鉛を90mass%以上含有することが好ましい。
溶融亜鉛めっき合金板は、上記した溶融亜鉛めっき処理後、さらに亜鉛めっきの合金化処理を施すことで製造できる。合金化処理を施す場合は、例えば、400〜600℃の温度域で行うことが好ましい。
溶融亜鉛めっき処理後は鋼板を室温まで冷却し、表面性状やYS制御のために、伸長率1%以下で調質圧延を施すことが好ましい。形状やYSの調整のために、レベラー矯正を施しても構わない。
本発明では、上記熱処理の工程内において、さらに次の処理(QT工程)を行ってもよい。
上記した800℃未満の温度域での滞留処理の前、滞留処理の後、あるいは滞留処理の途中のいずれかで、さらに、100℃〜Bs点を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、0〜350℃の温度域で冷却停止し、その後100〜600℃の温度域に再加熱する工程(QT工程)を有することができる。この工程によって、マルテンサイトを焼き戻したり、残留オーステナイトを安定化させる等を行い、得られる鋼板の特性を適宜調整することができる。
なお、Bs点(ベイナイト変態開始点)は、例えば鋼の成分を用いた近似式によって求めることができる。本発明では以下の式を用いた。
Bs点(℃)=830−270×[C]−90×[Mn]−37×[Ni]−70×[Cr]−83×[Mo]
ここで、上記の式における[X]は元素Xの質量%であり、含有されない場合はゼロとする。
なお、上述した第1実施形態〜第3実施形態の熱延鋼板(HR)および熱延めっき鋼板(HGI、HGA)のそれぞれの製造方法における上記した条件以外の条件は、特に限定しない。例えば、以下の条件で行うことが好ましい。
スラブは、マクロ偏析を防止するため、連続鋳造法で製造することが好ましい。ただし、連続鋳造法に変えて、造塊法、薄スラブ鋳造法により製造することもできる。
スラブを上記条件で熱間圧延するにあたり、スラブを一旦室温まで冷却し、その後再加熱して熱間圧延を行ったり、スラブを室温まで冷却せずに加熱炉に装入して熱間圧延を行ったりしてもよい。あるいは、スラブにわずかの保熱を行った後に、直ちに熱間圧延する省エネルギープロセスも適用できる。
スラブの加熱温度は、スケールロスの増大を防止するため、1300℃以下とすることが好ましい。また、析出物を固溶させるためには1100℃以上とすることが好ましい。なお、スラブ温度は、スラブ表面の温度である。
スラブを熱間圧延する際には、粗圧延後の粗バーを加熱することもできる。また、粗バー同士を接合し、仕上げ圧延を連続的に行う、いわゆる連続圧延プロセスを適用できる。
熱間圧延では、圧延荷重の低減や、形状および材質の均一化のために、仕上げ圧延の全パスあるいは一部のパスで、摩擦係数が0.10〜0.25となる潤滑圧延を行うことが好ましい。
次に、冷延鋼板の製造方法について説明する。
<第4実施形態>
本発明の高強度鋼板のうち、冷延鋼板は、次の製造条件で製造できる。
例えば、上記の成分組成を有するスラブを加熱し、次いで熱間圧延を施し、次いで冷間圧延を施し、次いで熱処理を施して、冷延鋼板を製造する。この熱間圧延を施すに際し、粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取る。また、この熱処理を施すに際し、800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間において、(2)式を満たすように滞留処理を施す。以下、詳細に説明する。
仕上げ圧延終了温度:850℃以上
仕上げ圧延終了温度が850℃未満になると偏平粒が増大し、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0超となり、本発明の鋼組織が得られない。また、フェライトが微細に出る等してオーステナイト粒が微細化する場合がある。したがって、仕上げ圧延終了温度は850℃以上とする。好ましくは870℃以上とし、より好ましくは890℃以上とする。上限は特に規定しないが、表面性状の安定化の観点から、仕上げ圧延終了温度は1000℃以下とすることが好ましい。
650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間:1s未満
冷延鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理した鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板においては、熱間圧延時にBNが過剰に析出すると、その後の熱処理においてフェライトやパーライト等の生成が促進されて、本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、上記温度域ではBN析出を極力抑制する必要がある。650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s以上では、BN析出の抑制が不十分である。したがって、上記の仕上げ圧延後に800℃まで冷却した後、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間は1s未満とする。
550〜650℃の温度域の平均冷却速度:10℃/s以上
冷延鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理した鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板においては、熱間圧延時にBNが過剰に析出すると、その後の熱処理においてフェライトやパーライト等の生成が促進されて、本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、BN析出を極力抑制する必要がある。550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s未満では、BN析出の抑制が不十分である。したがって、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却する。上記温度域の平均冷却速度は、好ましくは30℃/s以上とする。上限は特に規定しないが、上記温度域の平均冷却速度が500℃/s以上では、鋼板の面内の温度ばらつきの制御が難しくなる。このため操業性の観点からは、上記温度域の平均冷却速度は500℃/s未満が好ましい。
巻取り温度:550℃以下
冷延鋼板、冷延板を熱処理および溶融亜鉛めっき処理した鋼板、冷延板を熱処理およびの溶融亜鉛めっき処理後に亜鉛めっきの合金化処理を施した鋼板においては、熱間圧延時にBNが過剰に析出すると、その後の熱処理においてフェライトやパーライト等の生成が促進されて本発明の鋼組織が得られなくなる。そのため、BN析出を極力抑制する必要がある。巻取り温度が550℃を超えると、BN析出の抑制が不十分となる。したがって、巻取り温度は550℃以下とする。より好ましくは500℃以下とする。下限は特に規定しないが、形状安定性の観点からは、巻取り温度は100℃以上とすることが好ましい。
冷間圧延
本発明では、熱間圧延後から焼鈍までの間に、冷間圧延を施す。冷間圧延は、例えば、圧下率を20%以上とすることが好ましい。圧下率が20%未満では、アスペクト比の大きいオーステナイトが生成する場合がある。より好ましくは30%以上とする。上限は特に規定しないが、形状安定性の観点から、冷間圧延の圧下率は90%以下とすることが好ましい。なお、ここでの圧下率は、合計圧下率を指す。合計圧下率CRは、圧延前の板厚tと圧延後の板厚tから下記式より算出する。
CR(%)=100×(t−t)/t
焼鈍温度:800℃以上
焼鈍温度が800℃未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、本発明の鋼組織が得られない。また、焼鈍温度は高いほどオーステナイト粒を粗大化できるため、高温焼鈍とする。したがって、焼鈍温度は800℃以上とする。好ましくは820℃以上とし、より好ましくは840℃以上とする。上限は特に規定しないが、エネルギー効率等の観点からは、焼鈍温度は1000℃以下が好ましい。
800℃以上の温度域での滞留時間:30s以上
800℃以上の温度域での滞留時間が30s未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、本発明の鋼組織が得られない。また、焼鈍温度は高いほどオーステナイト粒を粗大化できるため、長時間の焼鈍とする。したがって、800℃以上の温度域での滞留時間は30s以上とする。好ましくは60s以上とする。上限は特に規定しないが、エネルギー効率等の観点からは、上記温度域での滞留時間は1000s以下が好ましい。
800℃未満の温度域での滞留時間:(2)式を満たす条件
10(750−T)/120≦t≦1000 ・・・・(2)
ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での滞留時間(s)とする。
なお、温度は、1℃ごとに個別に保持時間が(2)式を満たすか否かを判定するものとし、同温度に複数回滞留される場合にはその積算値とする。ここで、連続冷却中の各温度(各滞留温度)における滞留時間は、冷却速度をQ(℃/s)としたとき、1/Q(s)とする。
焼鈍後、800℃未満の温度域での滞留時間が(2)式を満たさないほど短い場合、BNの析出が不十分となる。一方、(2)式を満たさないほど長い場合、フェライトやパーライト等が過剰に生成して、本発明の鋼組織が得られない。したがって、800℃未満の温度域での滞留時間が(2)式を満たすこととする。なお、滞留処理は焼鈍後の800℃未満の温度域であればどの時点でもよく、冷却中やめっき処理中であっても構わない。
なお、上記した本発明の鋼組織を得る観点からは、「焼鈍後、800℃未満の温度から室温まで冷却する間」のヒートパターンは、例えば、多段冷却とするパターンや、多段冷却および再加熱を行うパターンとすることが好ましい。ヒートパターンは、上記した第3実施形態と同様のため、説明は省略する。
第4実施形態では、上記熱処理の工程内において、さらに次の処理(QT工程)を行ってもよい。
上記した800℃未満の温度域での滞留処理の前、滞留処理の後、あるいは滞留処理の途中のいずれかで、さらに、100℃〜Bs点を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、0〜350℃の温度域で冷却停止し、その後100〜600℃の温度域に再加熱する工程を有することができる。この工程によって、マルテンサイトを焼き戻したり、残留オーステナイトを安定化させる等を行い、得られる鋼板の特性を適宜調整することができる。
なお、Bs点(ベイナイト変態開始点)は、例えば鋼の成分を用いた近似式によって求めることができる。本発明では以下の式を用いた。
Bs=830−270×[C]−90×[Mn]−37×[Ni]−70×[Cr]−83×[Mo]
ここで、上記の式における[X]は元素Xの質量%であり、含有されない場合はゼロとする。
また第4実施形態では、上記した熱処理の工程中に、焼鈍後、さらに次のめっき処理を行ってもよい。
冷延板に溶融亜鉛めっき処理を施す場合は、上記した熱処理の工程中の鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施すことで製造できる。溶融亜鉛めっき処理を施す場合は、例えば、400〜500℃の亜鉛めっき浴中に鋼板を浸漬し、溶融亜鉛めっき処理を施し、その後、ガスワイピング等によって、めっき付着量を調整することが好ましい。亜鉛めっき浴は、亜鉛を90mass%以上含有することが好ましい。
溶融亜鉛めっき合金板は、上記した溶融亜鉛めっき処理後、さらに亜鉛めっきの合金化処理を施すことで製造できる。合金化処理を施す場合は、例えば、400〜600℃の温度域で行うことが好ましい。
なお、上述した冷延鋼板(CR)、冷延めっき鋼板(CGI、CGA)のそれぞれの製造方法における上記した条件以外の条件は、特に限定しない。例えば、スラブの溶製方法、連続圧延プロセス、酸洗、調質圧延等の各条件は、上記した第1〜第3実施形態の各条件と同様である。そのため、説明は省略する。
以下、各実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の各実施例は、本発明の好適な例を示すものであり、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
表1に示す成分組成の鋼(残部はFeおよび不可避的不純物である。)を実験室の真空溶解炉により溶製し、圧延して鋼スラブとした。これらの鋼スラブを表2−1〜表2−3に示す条件で熱間圧延を施し、厚さ3mmの熱延鋼板を作製した。
得られた熱延鋼板の一部には、さらに熱処理およびめっき処理を施した。熱処理は、実験室にて熱処理とめっき処理を一連で行う装置を用いて表2−3に示す条件で行った。
熱延溶融亜鉛めっき鋼板は、465℃のめっき浴中に浸漬し、片面あたり付着量40〜60g/mのめっき層を鋼板両面に形成させることで作製した。また、熱延合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、上記した溶融亜鉛めっき処理後、さらに、540℃で1〜60s保持する合金化処理を行うことで作製した。
その後、熱延溶融亜鉛めっき鋼板および熱延合金化溶融亜鉛めっき鋼板には、室温まで冷却した後、伸長率0.1%の調質圧延を施した。なお、鋼板No.23〜25はめっき処理後に滞留処理を行った。
得られた熱延鋼板(HR)、熱延溶融亜鉛めっき鋼板(HGI)、熱延合金化溶融亜鉛めっき鋼板(HGA)は、以下の試験方法に従い、鋼組織の測定、BNとして析出したB量の測定、引張特性および耐遅れ破壊特性の評価をそれぞれ行った。
<鋼組織の測定>
鋼組織の測定は、上記した方法で行った。測定結果を表3−1〜表3−3に示す。
<BNとして析出したB量の測定>
BNとして析出したB量は、抽出残渣分析により求める。めっき鋼板(HGI、HGA)では、塩酸等によりめっき剥離を行った後、測定する。
熱延鋼板(HR)および熱延溶融亜鉛めっき鋼板(HGI、HGA)より40mm角のサンプルを採取し、10%Brメタノールに溶解して炭化物を溶解させ、ろ過することで、炭化物以外の析出物を抽出する。これを酸に溶解し、蒸留した後、ICP分析により求めたB量を、BNとして析出したB量とした。測定結果を表3−1〜表3−3に示す。
なお、表3−1〜表3−3に示す「BNとして析出したB量以外のB量」とは、表1に示す「B含有量」と、表3−1〜表3−3に示す「BNとして析出したB量」との差である。
<引張特性>
熱延鋼板(HR)および熱延溶融亜鉛めっき鋼板(HGI、HGA)より、圧延方向に対して直角方向にJIS5号引張試験片(JIS Z2201)を採取し、歪速度が10−3/sとするJIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行い、TSを求めた。TSを表3−1〜表3−3に示す。本発明では、TSが1180MPa以上を合格とした。
<耐遅れ破壊特性>
熱延鋼板(HR)および熱延溶融亜鉛めっき鋼板(HGI、HGA)より、圧延方向と平行な方向を幅方向とする試験片を採取した。試験片のサイズは、幅が30mm、長さが110mmとした。試験片は、稜線が圧延方向と平行となるように、15mmの曲げ半径で90゜V曲げ加工を行い、スプリングバックで開いた分だけボルトで締め込み、それをpH1の塩酸に浸漬し、割れが発生する時間(遅れ破壊時間)を調査した。浸漬時間は最大96hr(時間)とし、96hrの間、割れが発生しなかったサンプルについては「割れ発生無し」と評価した。なお、試験片の端面は、いずれも機械加工仕上げとした。
ここでは、TSが1180MPa以上1550MPa未満の鋼板では96時間以上、1550MPa以上1750MPa未満の鋼板では10時間以上、1750MPa以上2000MPa未満の鋼板では1時間以上の間、割れ発生が無かったものを、合格(耐遅れ破壊特性に優れる)とし、「記号:〇(合格)」を付与した。一方、それ以外には「記号:×(不合格)」を付与した。得られた結果を表3−1〜表3−3に示す。
Figure 2021172838
Figure 2021172838
Figure 2021172838
Figure 2021172838
Figure 2021172838
Figure 2021172838
Figure 2021172838
表3−1〜表3−3に示した結果から分かるように、本発明の製造条件を満たす発明例では、TSが1180MPa以上、かつ優れた耐遅れ破壊特性を有する高強度鋼板が得られた。一方、本発明の製造条件を外れる比較例では、本発明で目的とするTS、耐遅れ破壊特性のいずれか1つ以上が得られていなかった。
<実施例2>
表4に示す成分組成の鋼(残部はFeおよび不可避的不純物である。)を実験室の真空溶解炉により溶製し、圧延して鋼スラブとした。これらの鋼スラブを表5に示す条件で熱間圧延を行い、厚さ3mmの熱延板を作製し、次いで、表5に示す条件で冷間圧延を行い、厚さ1.4mmの冷延板を作製した。鋼板No.27および28については熱延板の厚さをそれぞれ4.0mmおよび2.3mmとし、冷間圧延を行って、それぞれ厚さ1.4mmの冷延板とした。
次いで、得られた冷延板に熱処理およびめっき処理を施して、冷延鋼板を作製した。熱処理は、実験室にて熱処理装置を用いて表5に示す条件で行った。
一部の冷延板は、熱処理とめっき処理を一連で行う装置を用いて熱処理および溶融亜鉛めっき処理を施して、冷延溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。溶融亜鉛めっき鋼板は、465℃のめっき浴中に浸漬し、片面あたり付着量40〜60g/mのめっき層を鋼板両面に形成させることで作製した。
また、一部の冷延溶融亜鉛めっき鋼板は、さらに合金化処理を施して、冷延合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。冷延合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、上記した溶融亜鉛めっき処理後、さらに、540℃で1〜60s保持する合金化処理を行うことで作製した。
その後、冷延溶融亜鉛めっき鋼板および冷延合金化溶融亜鉛めっき鋼板には、室温まで冷却した後、伸長率0.1%の調質圧延を施した。なお、鋼板No.1〜3はめっき処理後に滞留処理を行った。
得られた冷延鋼板(CR)、冷延溶融亜鉛めっき鋼板(CGI)、および冷延合金化溶融亜鉛めっき鋼板(CGA)は、鋼組織の測定、BNとして析出したB量の測定、引張特性および耐遅れ破壊特性の評価をそれぞれ行った。なお、これらの測定および評価は、上記した各試験方法と同様のため、説明を省略する。得られた結果を表6に示す。
Figure 2021172838
Figure 2021172838
Figure 2021172838
表6に示した結果から分かるように、本発明の製造条件を満たす発明例では、TSが1180MPa以上、かつ優れた耐遅れ破壊特性を有する高強度鋼板が得られた。一方、本発明の製造条件を外れる比較例では、本発明で目的とするTS、耐遅れ破壊特性のいずれか1つ以上が得られていなかった。
本発明の高強度鋼板を自動車部品用途に使用すると、自動車の衝突安全性改善と燃費向上に大きく寄与することができる。

Claims (11)

  1. 成分組成は、質量%で、
    C:0.08〜0.40%、
    Si:3.0%以下、
    Mn:1.0〜4.0%、
    P:0.030%以下、
    S:0.0030%以下、
    Al:1.5%以下、
    N:0.0010〜0.010%、
    B:0.0005〜0.010%を含み、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    鋼組織は、マルテンサイトと下部ベイナイトの合計面積率が40〜100%、フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトの合計面積率が0〜20%、パーライトの面積率が3%以下であり、
    旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が5.0以下であり、
    BNとして析出したB量が、質量%で0.0005〜0.010%であり、
    前記マルテンサイト、前記下部ベイナイト、前記フレッシュマルテンサイトおよび前記残留オーステナイト以外の組織の合計面積率と引張強度との関係が、(1)式を満たすことを特徴とする高強度鋼板。
    V(S)≦0.0001×TS−0.4×TS+400・・・・(1)
    ここで、(1)式における、V(S)はマルテンサイト、下部ベイナイト、フレッシュマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外の組織の合計面積率(%)であり、TSは引張強度(MPa)である。
  2. 前記旧オーステナイト粒の平均結晶粒径が、5μm超であることを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. 前記BNとして析出したB以外のB量が、質量%で0.0003%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼板。
  4. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Cr:2.0%以下、
    Mo:2.0%以下、
    V:2.0%以下、
    Ni:2.0%以下、
    Cu:2.0%以下、
    Nb:0.20%以下、
    Ca:0.0050%以下、
    REM:0.0050%以下、
    Sb:0.10%以下、
    Sn:0.50%以下、
    Zr:0.002%以下、
    Mg:0.002%以下
    のうちから選択される1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有するスラブを加熱し、
    次いで、熱間圧延を施すに際し、
    粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、650℃超え800℃以下の温度域で1〜1000s滞留させた後、550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有するスラブを加熱し、
    次いで、熱間圧延を施すに際し、
    粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延した後、650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後、550℃超え650℃以下の温度域で巻き取ることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有するスラブを加熱し、
    次いで、熱間圧延を施すに際し、
    粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下の温度まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取り、
    次いで、熱処理およびめっき処理を施すに際し、
    800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、
    その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間に、(2)式を満たすように滞留処理し、かつ、めっき処理を施すことを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
    10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
    ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。
  8. 前記熱処理は、前記滞留処理の前、前記滞留処理の後、あるいは前記滞留処理の途中のいずれかで、
    さらに、100℃〜Bs点を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後再加熱する工程を有することを特徴とする請求項7に記載の高強度鋼板の製造方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有するスラブを加熱し、
    次いで、熱間圧延を施すに際し、
    粗圧延後、850℃以上の仕上げ圧延終了温度で仕上げ圧延し、その後650℃超え800℃以下の温度域での滞留時間が1s未満となる条件で冷却し、その後550〜650℃の温度域の平均冷却速度が10℃/s以上で550℃以下まで冷却し、550℃以下の温度で巻き取り、
    次いで、冷間圧延を施し、
    次いで、熱処理を施すに際し、
    800℃以上の焼鈍温度に加熱し、800℃以上の温度で30s以上滞留させる焼鈍を施し、
    その後、800℃未満の温度から室温までの冷却の間に、(2)式を満たすように滞留処理することを特徴とする高強度法鋼板の製造方法。
    10(750−T)/120≦t≦1000・・・・(2)
    ここで、(2)式における、Tは800℃未満の温度域での滞留温度(℃)、tは各滞留温度での合計滞留時間(s)とする。
  10. 前記熱処理は、前記滞留処理の前、前記滞留処理の後、あるいは前記滞留処理の途中のいずれかで、
    さらに、100℃〜Bs点を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後再加熱する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の高強度鋼板の製造方法。
  11. 前記熱処理中に、前記焼鈍後さらにめっき処理を施すことを特徴とする請求項9または10に記載の高強度鋼板の製造方法。
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