JP2021169628A - 粘着フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた帯電防止性能を備え、低速度領域、及び高速度領域の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、耐久性能、及びリワーク性能にも優れた粘着フィルムを提供する。【解決手段】炭素数が4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とするアクリル系ポリマーの100重量部に対して、アルキル(メタ)アクリレートを85〜98.5重量部と、ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーを(500/101)〜15重量部と、カルボキシル基含有の共重合性モノマーを0.1〜(100/99.5)重量部と、架橋剤を0.1〜5重量部と、を含有してなり、酸価が0.01〜8.0であり、帯電防止剤が融点30〜50℃のイオン性化合物であり、ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有する粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層の表面抵抗率が5.0×10+11Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0〜0.5kVである。【選択図】なし

Description

本発明は、帯電防止性能を有する粘着剤組成物、及びその粘着剤組成物を用いて、樹脂フィルムの少なくとも片面に帯電防止性能を有する粘着剤層を形成した粘着フィルム、及び表面保護フィルムを提供することに関する。
また、本発明は、液晶ディスプレイの製造工程に利用される表面保護フィルムに関するものである。さらに詳しくは、液晶ディスプレイを構成する偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材の表面に貼着することにより、偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材の表面を保護するために使用される表面保護フィルム用の粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムに関するものである。
従来から、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材の製造工程においては、光学部材の表面を一時的に保護するための表面保護フィルムが貼着される。このような表面保護フィルムは、光学部材を製造する工程のみに使用され、光学部材を液晶ディスプレイに組み込む時点で、光学部材から剥離して除去される。このような光学部材の表面を保護するための表面保護フィルムは、製造工程においてのみに使用されるため、一般には、工程フィルムと呼ばれることもある。
このように、光学部材を製造する工程において使用される表面保護フィルムは、光学的に透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に粘着剤層が形成されているが、光学部材に貼り合わせるまで、その粘着剤層を保護するための剥離処理された剥離フィルムが、粘着剤層の上に貼り合わされている。
また、偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材は、表面保護フィルムを貼り合わされた状態で、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う製品検査を行うため、表面保護フィルムに対する要求性能としては、粘着剤層に気泡や異物が付着していないことが求められている。
また、近年では、偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときに、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念され、粘着剤層に対して優れた帯電防止性能が求められている。
また、偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材に表面保護フィルムを貼り合わせるときには、各種の理由により、一旦、表面保護フィルムを剥がして、再度、表面保護フィルムを貼り直すことがあり、そのときに被着体の光学部材から剥がし易いこと(リワーク性)が求められている。
また、このとき、被着体を汚染しないこと、いわゆる糊残りが起こらないことが求められている。
また、最終的に偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときには、速やかに剥離できることが求められている。いわゆる、高速度での剥離によっても、速やかに剥離できるように、粘着力が剥離速度によっても変化が少ないことが求められている。
このように、近年においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能として、(1)低速度領域、及び高速度領域の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生を防止すること、(3)優れた帯電防止性能を有すること、及び(4)リワーク性能を有することが、表面保護フィルムを使用するに当たっての使い易さの点から求められている。
しかし、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能である、これら(1)〜(4)のそれぞれ、個々の要求性能を満たすことは出来ても、表面保護フィルムの粘着剤層に求められる(1)〜(4)の全ての要求性能を、同時に満たすことは非常に困難な課題であった。
本明細書において、「低速度領域」とは、剥離速度が0.3m/min付近のことを指し、「高速度領域」とは、剥離速度が30m/min付近のことを指す。
例えば、(1)低速度領域、及び高速度領域の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、及び(2)糊残りの発生を防止することについては、次のような提案が知られている。
炭素数が7以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有の共重合性化合物との共重合体を主成分とし、これを架橋剤で架橋処理してなるアクリル系の粘着剤層では、長期間に渡り接着した場合に、粘着剤が被着体側へ移着し、また被着体に対する接着力が経時に大きく上昇するという問題があった。これを回避するため、炭素数が8〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルコ―ル性水酸基を有する共重合性化合物との共重合体を用い、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものが知られている(特許文献1)。
また、上記と同様の共重合体に(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有の共重合性化合物との共重合体を少量配合し、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものなどが提案されている。しかし、これらは、表面張力が低くて表面が平滑なプラスチック板などの表面保護に使用すると、加工時や保存時の加熱により浮きなどの剥離現象を生じるという問題や、手作業領域である高速度で剥離した時に、再剥離性が劣るという問題もあった。
これらの問題を解決するため、a)炭素数が8〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に、b)カルボキシル基含有の共重合性化合物1〜15重量部と、c)炭素数が1〜5の脂肪族カルボン酸のビニルエステル3〜100重量部とを加えてなる単量体混合物の共重合体に、上記のb)成分のカルボキシル基に対して当量以上の架橋剤を配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献2)。
特許文献2に記載の粘着剤組成物では、加工時や保存時において、浮きなどの剥離現象を生じることがなく、その上、接着力が経時に大きく上昇しないで、再剥離性に優れているとしている。また、長期保存、特に高温雰囲気下で長期保存しても小さな力で再剥離でき、その際、被着体上に糊残りを生じず、また高速度で剥離を行ったときでも小さな力で再剥離できるとしている。
また、(3)優れた帯電防止性能については、表面保護フィルムに帯電防止性を付与させるための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが示されている。帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献3)。
また、近年では、このような帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布するのではなく、直接に粘着剤層に含有させたりすることが提案されている。
また、(4)リワーク性能については、例えば、アクリル樹脂中に、イソシアネート系化合物の硬化剤と、特定のシリケートオリゴマーをアクリル系樹脂100重量部に対して0.0001〜10重量部で配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献4)。
特許文献4では、アルキル基の炭素数が2〜12程度のアクリル酸アルキルエステルやアルキル基の炭素数が4〜12程度のメタクリル酸アルキルエステル等を主モノマー成分とし、例えば、カルボキシル基含有モノマーなどの他の官能基含有モノマー成分を含むことができるとしている。一般的には、上記主モノマーを50重量%以上含有させることが好ましい、又、官能基含有モノマー成分の含有量は0.001〜50重量%であって、好ましくは0.001〜25重量%、更に好ましくは0.01〜25重量%であることが望まれる、としている。このような特許文献4に記載の粘着剤組成物は、高温下又は高温高湿下でも凝集力及び接着力の経時変化が小さく、かつ、曲面に対する接着力にも優れた効果を示すことから、リワーク性を有するとしている。
一般に、粘着剤層を柔らかい性状のものにすると、糊残りが発生し易くなり、リワーク性が低下しやすい。すなわち、誤って貼合したときに剥離し難く、貼り直しが困難となり易い。このことから、カルボキシル基などの官能基を有するモノマーを主剤に架橋させて、粘着剤層を一定の硬さにすることが、リワーク性を持たせるためには必要と考えられる。
特開昭63−225677号公報 特開平11−256111号公報 特開平11−070629号公報 特開平8−199130号公報
従来技術においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能として、
(1)低速度領域、及び高速度領域の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生を防止すること、(3)優れた帯電防止性能を有すること、及び(4)リワーク性能を有することが求められてきた。しかし、これら(1)〜(4)の、それぞれ、個々の要求性能を満たすことは出来ても、表面保護フィルムの粘着剤層に求められる全ての要求性能を満たすことは出来なかった。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、優れた帯電防止性能を備え、低速度領域、及び高速度領域の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、耐久性能、及びリワーク性能にも優れた粘着剤組成物、粘着フィルム、及び表面保護フィルムを提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)炭素数が4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上と、(B)ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーの少なくとも1種以上と、(C)カルボキシル基含有の共重合性モノマーの少なくとも1種以上と、(G)重合性官能基を有するポリエーテル化合物の少なくとも1種以上と、を共重合した共重合体からなり、前記(B)ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーが、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、前記(G)重合性官能基を有するポリエーテル化合物が、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル、ポリアルキレングリコールジアリルエーテル、アルコキシポリアルキレングリコールアリルエーテル、ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル、ポリアルキレングリコールジビニルエーテル、アルコキシポリアルキレングリコールビニルエーテルからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、前記粘着剤組成物が、さらに、HLB値が7〜15である(F)ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してなり、前記(F)ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量(Mw)が、600以上10000以下であり、前記帯電防止剤が、温度30℃で固体である、融点30℃超50℃以下のイオン性化合物であり、前記架橋剤が、3官能以上のイソシアネート化合物であることを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
また、前記(A)炭素数が4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された1種以上であることが好ましい。
また、前記ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーが、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
また、前記(C)カルボキシル基含有の共重合性モノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群から選択された、1種以上であることが好ましい。
また、前記架橋剤が3官能以上のイソシアネート化合物であることが好ましい。
また、本発明は、前記粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成してなることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
また、本発明は、前記粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面に形成してなることを特徴とする表面保護フィルムを提供する。
本発明によれば、従来技術では解決することのできなかった、表面保護フィルムの粘着剤層に要求される全ての性能を満足させることができ、なおかつ、優れた帯電防止性能が得られ、糊残りの発生を防止することが可能となった。
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物であって、炭素数が4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とするアクリル系ポリマーからなり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記主成分のアルキル(メタ)アクリレートを85〜98.5重量部と、ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーを0.1〜15重量部と、カルボキシル基含有の共重合性モノマーを0.1〜2重量部と、架橋剤を0.1〜5重量部と、を含有してなり、前記アクリル系ポリマーの酸価が0.01〜8.0であり、前記帯電防止剤が融点30〜50℃のイオン性化合物であり、HLB値が7〜15であるポリエーテル変性シロキサン化合物を含有することを特徴とする。
主成分のアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された1種以上であることが好ましい。
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、主成分のアルキル(メタ)アクリレートを85〜98.5重量部含有することが好ましい。
ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。
8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーを0.1〜15重量部含有することが好ましい。
カルボキシル基含有の共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群から選択された、1種以上が好ましい。
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、カルボキシル基含有の共重合性モノマーを0.1〜2重量部含有することが好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する際に粘着剤ポリマーを架橋することが好ましい。架橋反応をさせるための方法としては、紫外線(UV)など光架橋で架橋しても良いが、粘着剤組成物が架橋剤を含むことが好ましい。
架橋剤としては、2官能または3官能以上のイソシアネート化合物、2官能または3官能以上のエポキシ化合物、2官能または3官能以上のアクリレート化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。なかでも、ポリイソシアネート化合物(2官能または3官能以上のイソシアネート化合物)が好ましく、3官能以上のイソシアネート化合物がより好ましい。
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、架橋剤を0.1〜5重量部含有することが好ましい。
3官能以上のイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよい。ポリイソシアネート化合物には、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、非環式系イソシアネート、脂環式系イソシアネートなどの分類があるが、いずれでもよい。ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族系イソシアネート化合物や、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジメチルジフェニレンジイソシアネート(TOID)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系イソシアネート化合物が挙げられる。
3官能以上のイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン(TMP)やグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性能を付与するため、帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤は、常温(例えば30℃)で固体であることが好ましく、より具体的には、帯電防止剤が融点30〜50℃のイオン性化合物である。帯電防止剤は、アクリロイル基含有の4級アンモニウム塩型イオン性化合物であってもよい。
これらの帯電防止剤は、融点が低いため、また、長鎖のアルキル基を有するため、アクリル系ポリマーとの親和性は高いと推測される。
融点が30〜50℃のイオン性化合物である帯電防止剤としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等であり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF )、チオシアン酸塩(SCN)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(RCSO )、過塩素酸塩(ClO )、四フッ化ホウ酸塩(BF )等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。アルキル基の鎖長や置換基の位置、個数等の選択により、融点が30〜50℃のものを得ることができる。カチオンは、好ましくは4級含窒素オニウムカチオンであり、1−アルキルピリジニウム(2〜6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリジニウムカチオンや、1,3−ジアルキルイミダゾリウム(2,4,5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
融点が30〜50℃のイオン性化合物である帯電防止剤は、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.1〜5.0重量部含まれることが好ましい。
前記アクリロイル基含有の4級アンモニウム塩型イオン性化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム〔R−C2n−OCOCQ=CH、ただし、Q=HまたはCH、R=アルキル〕等の(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウムであり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF )、チオシアン酸塩(SCN)、有機スルホン酸塩(RSO )、過塩素酸塩(ClO )、四フッ化ホウ酸塩(BF )、F含有イミド塩(R )等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。F含有イミド塩(R )のRとしては、トリフルオロメタンスルホニル基、ペンタフルオロエタンスルホニル基等のパーフルオロアルカンスルホニル基やフルオロスルホニル基が挙げられる。F含有イミド塩としては、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩〔(FSO〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩〔(CFSO〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド塩〔(CSO〕等のビススルホニルイミド塩が挙げられる。
前記アクリロイル基含有の4級アンモニウム塩型イオン性化合物は、前記アクリル系ポリマー中に0.1〜5.0重量%共重合されることが好ましい。
帯電防止剤の具体例としては、特に限定されるものでないが、前記融点が30〜50℃であるイオン性化合物の具体例としては、1−オクチルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、1−ドデシルピリジニウム チオシアン酸塩、3−メチル−1−ドデシルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、1−ドデシルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、4−メチル−1−オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩等が挙げられる。
また、前記アクリロイル基含有の4級アンモニウム塩型イオン性化合物の具体例としては、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート 六フッ化リン酸メチル塩〔(CHCHOCOCQ=CH・PF 、ただし、Q=HまたはCH〕、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドメチル塩〔(CH(CHOCOCQ=CH・(CFSO、ただし、Q=HまたはCH〕、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート ビス(フルオロスルホニル)イミドメチル塩〔(CHCHOCOCQ=CH・(FSO、ただし、Q=HまたはCH〕等が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、HLB値が7〜15であるポリエーテル変性シロキサン化合物を含有する。ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリエーテル基を有するシロキサン化合物であり、通常のシロキサン単位〔−SiR −O−〕の他に、ポリエーテル基を有するシロキサン単位〔−SiR(RO(RO))−O−〕を有する。ここで、Rは1種又は2種以上のアルキル基又はアリール基、R及びRは1種又は2種以上のアルキレン基、Rは1種又は2種以上のアルキル基やアシル基等(末端基)を示す。ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基〔(CO)〕やポリオキシプロピレン基〔(CO)〕等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、10000以下であることが好ましい。アクリル系粘着剤への相溶性の観点からは、HLBが低く、分子量が低い方が相溶性は良好であるが、分子量が低いポリエーテル変性シロキサン化合物であれば、HLBが比較的高く(粘着剤への相溶性がやや低く)ても、優れた帯電防止性が得られる。
また、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記ポリエーテル変性シロキサン化合物が0.01〜0.5重量部含まれることが好ましい。
HLBとは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等に規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
ポリエーテル変性シロキサン化合物は、例えば、水素化ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体等が挙げられる。
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物を粘着剤組成物に配合することにより、粘着剤の粘着力及びリワーク性能を改善することができる。
本発明の粘着剤組成物は、架橋遅延剤を含有してもよい。架橋遅延剤としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ−ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ−ジケトンが挙げられる。これらはケトエノール互変異性化合物であり、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする粘着剤組成物において、架橋剤の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
前記架橋遅延剤は、ケトエノール互変異性化合物であるのが好ましく、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
前記架橋遅延剤は、添加する場合、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、1.0〜5.0重量部含まれることが好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、架橋触媒を含有してもよい。架橋触媒は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、前記アクリル系ポリマーと架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよく、第三級アミン等のアミン系化合物、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。
第三級アミンとしては、トリアルキルアミン、N,N,N’,N’−テトラアルキルジアミン、N,N−ジアルキルアミノアルコール、トリエチレンジアミン、モルホリン誘導体、ピペラジン誘導体等が挙げられる。
有機錫化合物としては、ジアルキル錫オキシドや、ジアルキル錫の脂肪酸塩、第1錫の脂肪酸塩等が挙げられる。
前記架橋触媒は、有機錫化合物であるのが好ましく、特にジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
前記架橋触媒は、添加する場合、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.01〜0.5重量部含まれることが好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、ポリエーテル化合物を含有してもよい。ポリエーテル化合物としては、ポリアルキレンオキサイド基を有する化合物であり、ポリアルキレングリコール等のポリエーテルポリオールやこれらの誘導体が挙げられる。ポリアルキレングリコール及びポリアルキレンオキサイド基の有するアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の2種以上のポリアルキレングリコールの共重合体であってもよい。ポリアルキレングリコールの共重合体としては、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコール等が挙げられ、該共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体であってもよい。
ポリアルキレングリコールの誘導体としては、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルやポリオキシアルキレンジアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテルやポリオキシアルキレンジアルケニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアリールエーテルやポリオキシアルキレンジアリールエーテル等のポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノ脂肪酸エステルやポリオキシアルキレングリコールジ脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミンなどが挙げられる。
ここで、ポリアルキレングリコール誘導体におけるアルキルエーテルとしては、メチルエーテルやエチルエーテル等の低級アルキルエーテル、ラウリルエーテルやステアリルエーテル等の高級アルキルエーテルが挙げられる。ポリアルキレングリコール誘導体におけるアルケニルエーテルとしては、ビニルエーテル、アリルエーテル、オレイルエーテル等が挙げられる。また、ポリアルキレングリコール誘導体における脂肪酸エステルとしては、酢酸エステルやステアリン酸エステル等の飽和脂肪酸エステル、(メタ)アクリル酸エステルやオレイン酸エステル等の不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。
ポリエーテル化合物が、エチレンオキシド基を含有する化合物であることが好ましく、ポリエチレンオキシド基を含有する化合物であることが好ましい。
ポリエーテル化合物が、重合性官能基を有する場合、(メタ)アクリル系ポリマーと共重合させることもできる。重合性官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基などのビニル性官能基が好ましい。重合性官能基を有するポリエーテル化合物としては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル、ポリアルキレングリコールジアリルエーテル、アルコキシポリアルキレングリコールアリルエーテル、ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル、ポリアルキレングリコールジビニルエーテル、アルコキシポリアルキレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
さらに、その他成分として、アルキレンオキサイドを含有する共重合可能な(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、ジアルキル置換アクリルアミドモノマー、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することが出来る。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
本発明の粘着剤組成物に用いられる主剤のアクリル系ポリマーは、炭素数が4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーと、カルボキシル基含有の共重合性モノマーとを共重合させることで合成することができる。アクリル系ポリマーの重合方法は特に限定されるものではなく、溶液重合、乳化重合等、適宜の重合方法が使用可能である。
アクリル系ポリマーには、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー、水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマー、アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマー、アクリロイル基含有の4級アンモニウム塩型イオン性化合物等の他のモノマーを共重合させてもよい。
本発明の粘着剤組成物は、上記のアクリル系ポリマーに、架橋剤、帯電防止剤、さらに適宜任意の添加剤を配合することで調製することができる。
また、アクリル系ポリマーの酸価が0.01〜8.0であることが好ましい。これにより、汚染性を改善し、糊残りの発生防止性能を向上することができる。
ここで、「酸価」とは、酸の含有量を表す指標の一つであり、カルボキシル基を含有するポリマー1gを中和するのに要する、水酸化カリウムのmg数で表される。
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、低速度領域の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.05〜0.1N/25mmであり、高速度領域の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることが好ましい。これにより、粘着力が剥離速度によっても変化が少ない性能が得られ、高速度での剥離によっても、速やかに剥離することが可能になる。また、貼り直しのため、一旦、表面保護フィルムを剥がすときにも、過大な力を必要とせず、被着体から剥がし易い。
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、表面抵抗率が5.0×10+11Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0〜0.5kVであることが好ましい。なお、本発明において、「±0〜0.5kV」とは、0〜−0.5kV及び0〜+0.5kV、すなわち、−0.5〜+0.5kVを意味する。表面抵抗率が大きいと剥離時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣るため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の電気制御回路等に影響することを抑制することができる。
本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層(架橋後の粘着剤)のゲル分率は、95〜100%であることが好ましい。このようにゲル分率が高いことにより、低速度領域の剥離速度において、粘着力が過大にならず、アクリル系ポリマーからの未重合モノマーあるいはオリゴマーの溶出が低減して、リワーク性や高温・高湿度における耐久性が改善され、被着体の汚染を抑制することができる。
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成してなる。また、本発明の表面保護フィルムは、本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面に形成してなる表面保護フィルムである。本発明の粘着剤組成物は、各成分がバランスよく配合されているため、優れた帯電防止性能を備え、低速度領域、及び高速度領域の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、耐久性能、及びリワーク性能(粘着剤層を介して表面保護フィルムの上をボールペンでなぞった後に被着体に汚染移行の無いこと)にも優れたものとなる。このため、偏光板、位相差板、反射防止フィルムの表面保護フィルムの用途として好適に使用することができる。
粘着剤層の基材フィルムや、粘着面を保護する剥離フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
剥離フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2−エチルヘキシルアクリレート90重量部、8−ヒドロキシオクチルアクリレート8.5重量部、アクリル酸1.0重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液1を得た。アクリル系ポリマーの一部を採取し、後述する酸価の測定試料として用いた。
[実施例2〜6及び比較例1〜3]
単量体の組成を各々、表1の(A)〜(C)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜3に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
なお、表1,2において(A)は、主成分のアルキル(メタ)アクリレートであり、(B)は、ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーであり、(C)は、カルボキシル基含有の共重合性モノマーである。
Figure 2021169628
<粘着剤組成物及び表面保護フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液1に対して、1−オクチルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩2.0重量部、HLBが7のポリエーテル変性シロキサン化合物(重量平均分子量Mwは10000)0.1重量部を加え撹拌したのち、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)1.0重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着シートを得た。
その後、一方の面に帯電防止及び防汚処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に粘着シートを転写させ、「帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の表面保護フィルムを得た。
[実施例2〜6及び比較例1〜3]
添加剤の組成を各々、表2の(D)〜(F)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の表面保護フィルムと同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜3の表面保護フィルムを得た。
なお、表1,2において、(D)は、架橋剤であり、(E)は、帯電防止剤であり、(F)は、ポリエーテル変性シロキサン化合物である。
Figure 2021169628
表1は、いずれも(A)〜(C)群の合計を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。ただし、実施例1では、(A)〜(C)群の合計が99.5重量部、実施例3では、同98.5重量部、実施例4では、同101重量部である。
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D−140N、D−127N、D−110Nは三井化学株式会社の商品名である。
<試験方法及び評価>
実施例1〜6及び比較例1〜3における表面保護フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させたものを、表面抵抗率の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を表出させた表面保護フィルムを、粘着剤層を介して液晶セルに貼られた偏光板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力、剥離帯電圧、リワーク性、及び耐久性の測定試料とした。
<酸価>
アクリル系ポリマーの酸価は、試料を溶剤(ジエチルエーテルとエタノールを体積比2:1で混合したもの)に溶かし、電位差自動滴定装置(京都電子工業製、AT−610)を用いて、0.1上記電位差滴定装置を用い、濃度が約0.1mol/lの水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行い、試料を中和するために必要な水酸化カリウムエタノール溶液の量を測定した。そして、下記式より、酸価を求めた。
酸価=(B×f×5.611)/S
B=滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f=0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S=試料の固形分の質量(g)
<粘着力>
上記で得られた測定試料(25mm幅の表面保護フィルムを偏光板の表面に貼り合わせたもの)を180°方向に引張試験機を用いて低速度領域の剥離速度(0.3m/min)及び高速度領域の剥離速度(30m/min)において剥がして測定した剥離強度を粘着力とした。
<表面抵抗率>
エージングした後、偏光板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP−HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
<剥離帯電圧>
上記で得られた測定試料を30m/minの引張速度で180°剥離した際に偏光板が帯電して発生する電圧(帯電圧)を高精度静電気センサSK−035、SK−200(株式会社キーエンス製)を用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧とした。
<リワーク性>
上記で得られた測定試料の表面保護フィルムの上をボールペンで(荷重500g、3往復)なぞった後、偏光板から表面保護フィルムを剥離して偏光板の表面を観察し、偏光板に汚染移行の無いことを確認した。評価目標基準は、偏光板に汚染移行の無い場合を「○」、ボールペンでなぞった軌跡に沿って少なくとも一部に汚染移行が確認された場合を「△」、ボールペンでなぞった軌跡に沿って汚染移行が確認され、粘着剤表面からも粘着剤の離脱が確認された場合を「×」と評価した。
<耐久性>
上記で得られた測定試料を60℃、90%RHの雰囲気下に250時間放置後、室温に取り出し、さらに12時間放置した後、粘着力を測定して初期の粘着力と比較して明らかな増加が無いことを確認した。評価目標基準は、試験後の粘着力が初期粘着力の1.5倍以下である場合を「○」、1.5倍を超えた場合を「×」と評価した。
表3に、評価結果を示す。なお、表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
Figure 2021169628
実施例1〜6の表面保護フィルムは、低速度領域の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.05〜0.1N/25mmであり、高速度領域の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であり、表面抵抗率が5.0×10+11Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0〜0.5kVであり、粘着剤層を介して表面保護フィルムの上をボールペンでなぞった後に被着体に汚染移行の無く、60℃、90%RHの雰囲気下に250時間放置したときの耐久性にも優れていた。
すなわち、(1)低速度領域、及び高速度領域の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生を防止すること、(3)優れた帯電防止性能を有すること、及び(4)リワーク性能を有することの全ての要求性能を、同時に満たしている。
比較例1の表面保護フィルムは、主成分のアルキル(メタ)アクリレートが過少、ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーが過多であり、カルボキシル基含有の共重合性モノマーを含まず、ポリエーテル変性シロキサン化合物のHLB値が過大であったためか、低速度領域の剥離速度0.3m/minでの粘着力が小さく、表面抵抗率と剥離帯電圧が高く、耐久性が劣っていた。
比較例2の表面保護フィルムは、主成分のアルキル(メタ)アクリレートに対してカルボキシル基含有の共重合性モノマーが過多であることから、ポットライフが短くなり過ぎ、塗布前に架橋が進行したため、塗工をすることができなかった。
比較例3の表面保護フィルムは、カルボキシル基含有の共重合性モノマーを含まず、ポリエーテル変性シロキサン化合物のMwが過大であったためか、表面抵抗率と剥離帯電圧が高く、リワーク性がやや劣っていた。
このように、比較例1〜3の表面保護フィルムでは、(1)低速度領域、及び高速度領域の剥離速度において、粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生を防止すること、(3)優れた帯電防止性能を有すること、及び(4)リワーク性能を有することの全ての要求性能を、同時に満たすことができなかった。

Claims (1)

  1. 炭素数が4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分とするアクリル系ポリマーからなり、
    前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記主成分のアルキル(メタ)アクリレートを85〜98.5重量部と、ヒドロキシル基含有の共重合性モノマーを(500/101)〜15重量部と、カルボキシル基含有の共重合性モノマーを0.1〜(100/99.5)重量部と、架橋剤を0.1〜5重量部と、を含有してなり、前記アクリル系ポリマーの酸価が0.01〜8.0であり、
    帯電防止剤が融点30〜50℃のイオン性化合物であり、
    ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有する粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成してなり、
    表面抵抗率が5.0×10+11Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0〜0.5kVであることを特徴とする粘着フィルム。
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