JP2021167128A - タイヤ性能推定システム、タイヤ性能推定方法及びタイヤ性能推定プログラム - Google Patents

タイヤ性能推定システム、タイヤ性能推定方法及びタイヤ性能推定プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】車両に装着されているタイヤのタイヤ性能の変化をより正確かつリアルタイムに推定できるタイヤ性能推定システム、タイヤ性能推定方法及びタイヤ性能推定プログラムを提供する。【解決手段】タイヤ性能推定システムは、車両に装着されているタイヤの属性を認識し、認識したタイヤの属性に基づいて、タイヤの新品タイヤ性能のデータを取得する。タイヤ性能推定システムは、当該タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を判定し、新品タイヤ性能と、タイヤ状態の変化量とに基づいて、タイヤの現タイヤ性能を推定する。【選択図】図4

Description

本開示は、車両に装着されているタイヤの使用に伴うタイヤ性能の変化を推定するタイヤ性能推定システム、タイヤ性能推定方法及びタイヤ性能推定プログラムに関する。
従来、車両(具体的には、自動車)に装着された空気入りタイヤ(以下、タイヤと適宜省略する)のトレッドに形成された溝の深さを測定するタイヤトレッド深さ測定装置が知られている(特許文献1)。
このタイヤトレッド深さ測定装置は、車両のタイヤハウス近傍に設けられる2つのカメラ(撮像部)を有し、ステレオビジョンの原理を用いて、タイヤのトレッドの溝深さを測定する。
米国特許出願公開第2017/0349007号明細書
上述したタイヤトレッド深さ測定装置によれば、車両に装着されているトレッドの摩耗状態をリアルタイムで監視することができる。
ところで、トレッドの摩耗など、タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化は、制駆動性能及び操縦安定性などの性能(以下、タイヤ性能という)に影響を与える。
しかしながら、上述したタイヤトレッド深さ測定装置では、トレッドの摩耗に伴うタイヤ性能の変化を推定することは難しい。このようなタイヤ状態の変化に伴うタイヤ性能の変化を推定できれば、当該推定結果を、自動車保険の料率算定、或いは車両制御(自動運転を含む)などに反映し得る。
そこで、以下の開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、車両に装着されているタイヤのタイヤ性能の変化を正確かつリアルタイムに推定できるタイヤ性能推定システム、タイヤ性能推定方法及びタイヤ性能推定プログラムの提供を目的とする。
本開示の一態様は、車両(車両V)に装着されているタイヤの属性を認識する装着タイヤ属性認識部(装着タイヤ属性認識部121)と、前記タイヤの属性に基づいて、前記タイヤの新品時点における新品タイヤ性能のデータを取得するタイヤ性能データ取得部(タイヤ性能データ取得部123)と、前記タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を判定するタイヤ状態判定部(タイヤ状態判定部127)と、前記新品タイヤ性能と、前記タイヤ状態の変化量とに基づいて、前記タイヤの現時点における現タイヤ性能を推定するタイヤ性能推定部(タイヤ性能推定部129)とを備えるタイヤ性能推定システム(タイヤ性能推定システム100)である。
本開示の一態様は、車両に装着されているタイヤの属性を認識するステップと、前記タイヤの属性に基づいて、前記タイヤの新品時点における新品タイヤ性能のデータを取得するステップと、前記タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を判定するステップと、前記新品タイヤ性能と、前記タイヤ状態の変化量とに基づいて、前記タイヤの現時点における現タイヤ性能を推定するステップとを含むタイヤ性能推定方法である。
本開示の一態様は、車両に装着されているタイヤの属性を認識する装着タイヤ属性認識処理と、前記タイヤの属性に基づいて、前記タイヤの新品時点における新品タイヤ性能のデータを取得するタイヤ性能データ取得処理と、前記タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を判定するタイヤ状態判定処理と、前記新品タイヤ性能と、前記タイヤ状態の変化量とに基づいて、前記タイヤの現時点における現タイヤ性能を推定するタイヤ性能推定処理とをコンピュータに実行させるタイヤ性能推定プログラムである。
上述したタイヤ性能推定システム、タイヤ性能推定方法及びタイヤ性能推定プログラムによれば、車両に装着されているタイヤのタイヤ性能の変化を正確かつリアルタイムに推定できる。
図1は、空気入りタイヤ10が装着された車両Vの概略側面図である。 図2は、タイヤ性能推定システム100の全体概略構成図である。 図3は、処理装置120の機能ブロック構成図である。 図4は、動作例1に係るタイヤ性能の推定動作フローを示す図である。 図5は、動作例2に係るタイヤ性能の推定動作フローを示す図である。 図6は、動作例3に係るタイヤ性能の推定動作フローを示す図である。 図7は、トレッド20の溝残量(RTD)とウェットグリップ性能(WGI)との関係の一例を示すグラフである。 図8は、装着タイヤの製造時点からの経過期間と、貯蔵弾性率(E')(インデックス)との関係の一例を示すグラフである。 図9は、貯蔵弾性率(E')と、トレッドゴム(コンパウンド)の摩擦係数(μ)との関係の一例を示すグラフである。
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
(1)車両の概略構成
図1は、空気入りタイヤ10が装着された車両Vの概略側面図である。図1に示すように、車両Vには、空気入りタイヤ10が装着される。具体的には、車両Vには、リムホイール(不図示)に組み付けられた空気入りタイヤ10が装着される。
車両Vは、典型的には乗用自動車であるが、特に、乗用自動車に限定されない。車両Vに装着された空気入りタイヤ10は、路面Rを転動する。
また、車両Vは、車両制御装置40を備える。車両制御装置40は、車両Vのアクセル、ステアリング及びブレーキの少なくとも何れかを制御できるものであればよい。車両制御装置40は、例えば、車両VのECU(Electronic Control Unit)などによって実現されてもよいし、自動運転用のプラットフォームによって実現されてもよい。
但し、車両制御装置40が車両Vの状態を示すデータを提供することによって、当該車両制御の一部または全部が、ネットワーククラウド400(図1において不図示、図2参照)によって実行されてもよい。
空気入りタイヤ10には、RFIDタグ50が取り付けられる。また、空気入りタイヤ10には、センサーユニット110が取り付けられる。
RFIDタグ50は、空気入りタイヤ10に関する情報(例えば、製造者、タイヤ種類、銘柄、タイヤサイズ、製造時期、生産ロットなど)を保持できる。
センサーユニット110は、複数種類のセンサに構成されてよい。例えば、センサーユニット110は、加速度センサ、内圧センサ及び温度センサなどを含んでよい。また、センサーユニット110は、無線信号を送信する送信機を含んでよい。なお、通信方式としては、TPMSなどに用いられているLF波(低周波)を利用する方式、または近距離無線通信の規格に沿った方式が挙げられる。
(2)タイヤ性能推定システムの全体概略構成
図2は、本実施形態に係るタイヤ性能推定システム100の全体概略構成図である。図2に示すように、本実施形態では、タイヤ性能推定システム100は、RFIDリーダー111、カメラ112及び処理装置120を含む。但し、RFIDリーダー111及びカメラ112の少なくとも何れかは、タイヤ性能推定システム100の構成要素として必ずしも必須ではない。
センサーユニット110は、空気入りタイヤ10のトレッド20内側に設けられる。具体的には、センサーユニット110は、トレッド20の内側面に取り付けられる。なお、図2では、リムホイールに組み付けられた空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向に沿った断面形状が示されている。
処理装置120は、センサーユニット110との無線による通信を実現し、センサーユニット110が検出したデータを取得する。処理装置120は、プロセッサ、メモリ、及び通信IFなどのハードウェアによって実現される。処理装置120も車両VのECUなどによって実現されてもよい。
処理装置120には、RFIDリーダー111及びカメラ112が接続される。RFIDリーダー111、カメラ112及び処理装置120は、車両Vに搭載される。RFIDリーダー111及びカメラ112は、車両Vに装着される4輪の空気入りタイヤ10の近傍(例えば、車両Vのタイヤハウス)に設けられることが好ましい。
また、RFIDリーダー111及びカメラ112は、4輪それぞれの空気入りタイヤ10に対して設けられることが好ましいが、4輪のうち、一部の空気入りタイヤ10に対して設けられても構わない。なお、カメラ112は、米国特許出願公開第2017/0349007号明細書に記載されているように、空気入りタイヤ10のトレッド20の溝深さを測定するため、2つの撮像部を備えてもよい。
外部システム300は、処理装置120と通信を実行できる。具体的には、外部システム300は、ネットワーククラウド400と接続された無線基地局200を経由して、処理装置120と各種データを送受信する。
外部システム300によって提供されるアプリケーション及びサービスは、特に限定されないが、当該アプリケーションまたはサービスには、車両制御装置40と連携して車両Vの自動運転をサポートするアプリケーション、及び車両Vを対象とした自動車保険に関するアプリケーションまたはサービスが含まれてよい。また、外部システム300には、空気入りタイヤ10のタイヤ性能を示すデータによって構成されるデータベースが含まれてよい。
(3)タイヤ性能推定システムの機能ブロック構成
次に、タイヤ性能推定システム100の機能ブロック構成について説明する。具体的には、タイヤ性能推定システム100に含まれる処理装置120の機能ブロック構成について説明する。
図3は、処理装置120の機能ブロック構成図である。図3には、処理装置120と無線通信を実行するセンサーユニット110、及び処理装置120と接続されるRFIDリーダー111及びカメラ112も図示されている。
図3に示すように、処理装置120は、装着タイヤ属性認識部121、タイヤ性能データ取得部123、路面状態取得部125、タイヤ状態判定部127及びタイヤ性能推定部129を備える。
これらの機能ブロックは、コンピュータなどのハードウェア上においてコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。具体的には、処理装置120は、ハードウェア要素として、プロセッサ、メモリ、入力デバイス、ディスプレイ及び外部インターフェースを備えてよい。また、当該コンピュータプログラム(ソフトウェア)は、通信ネットワークを介して提供されてもよいし、光ディスク、ハードディスクドライブまたはフラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。
装着タイヤ属性認識部121は、車両Vに装着されている空気入りタイヤ10の属性を認識する。具体的には、装着タイヤ属性認識部121は、空気入りタイヤ10の属性として、空気入りタイヤ10の製造者(メーカー)、種類(サマータイヤ、ウインタータイヤ、オールシーズンなど)、銘柄(ブランドなど)、タイヤサイズ(タイヤ幅、インチ及び偏平率など)、トレッドパターン、製造時期及び生産ロットなどを取得できる。
なお、当該属性には、空気入りタイヤ10のトレッド20を形成するトレッドゴムの新品時点における貯蔵弾性率(E')が含まれてもよい。
より具体的には、装着タイヤ属性認識部121は、RFIDリーダー111を介してRFIDタグ50に保持されている情報を読み取ることによって、上述した属性を認識できる。
なお、装着タイヤ属性認識部121は、カメラ112用いて、或いはRFIDリーダー111と併用することによって、上述した属性を認識してもよい。例えば、装着タイヤ属性認識部121は、RFIDタグ50に保持することが適当でない容量の大きなデータ、例えば、トレッドパターンは、カメラ112が撮像した空気入りタイヤ10のトレッド20の画像データを用いることによって認識してもよい。或いは、装着タイヤ属性認識部121は、外部システム300(データベース)にアクセスし、認識した種類(銘柄、タイヤサイズ)に対応するトレッドパターンを認識(取得)してもよい。
また、装着タイヤ属性認識部121は、カメラ112を用いて空気入りタイヤ10のサイドウォールに表示された情報を認識できる場合、上述した属性の少なくとも一部は、カメラ112が撮像した画像データを用いることによって認識してもよい。
このように、装着タイヤ属性認識部121は、空気入りタイヤ10の種類を認識したり、空気入りタイヤ10の製造時期を認識したりすることができる。なお、製造時期については、厳密な月日までは必要なく、製造年と製造週とを示すものでもよいし、製造年月を示すものでもよい。
また、装着タイヤ属性認識部121は、RFIDリーダー111及びカメラ112の少なくとも何れかを用いることによって、空気入りタイヤ10が実際に車両Vに装着されていることを認識することもできる。つまり、装着タイヤ属性認識部121は、属性が認識された空気入りタイヤ10が車両Vに装着されていることを保証(装着保証と呼ぶ)することもできる。
タイヤ性能データ取得部123は、空気入りタイヤ10の属性に基づいて、空気入りタイヤ10の性能(タイヤ性能という)を取得する。具体的には、装着タイヤ属性認識部121によって認識された空気入りタイヤ10の属性に基づいて、空気入りタイヤ10の新品時点におけるタイヤ性能である新品タイヤ性能のデータを取得できる。
タイヤ性能には、空気入りタイヤ10の運動性能が含まれてよい。運動性能には、制駆動性能及び操縦安定性が含まれてよい。
制駆動性能は、制動性能と駆動性能とが統合されたものであり、車両Vの制動力及び駆動力を示すものと解釈されてよい。制駆動性能は、乾燥(ドライ)路面での性能でもよいし、湿潤(ウェット)路面での性能でもよい。
また、操縦安定性は、車両Vの操縦性と安定性とを横方向の運動として統合したものであり、運転者の意思や期待どおりに車両Vが動くかの性能と示すものと解釈されてよい。
さらに、タイヤ性能には、ウェット路面での全般的な性能を意味するウェット性能が含まれてもよい。例えば、ウェット性能には、ウェット路面での制駆動性能または操縦安定性が含まれてもよいし、ウェット路面でのトレッドゴムの摩擦係数(μ)が含まれてもよい。
本実施形態では、タイヤ性能データ取得部123は、空気入りタイヤ10の新品時点における制動性能のデータを取得できる。空気入りタイヤ10の新品時点とは、空気入りタイヤ10が製造され、まだ車両に装着されて使用に供されていない(走行していない)状態と解釈されてよい。但し、空気入りタイヤ10が車両に装着されて一定距離(または時間)を走行するまで(例えば、数十km程度)は、新品時点と見なしてもよい。
制動性能のデータは、特に限定されないが、簡易には、日本自動車タイヤ協会(JATMA)によって規定されているタイヤラベリング制度におけるウェットグリップ性能のラベリング(WGIと呼ばれてもよい)情報を用いてもよい。表1は、当該ラベリング情報の例を示す。
Figure 2021167128
なお、表1に示すウェットグリップ性能の測定方法は、JATMAによって示されている。
タイヤ性能データ取得部123は、処理装置120内部に保持しているタイヤ性能データにアクセスすることによって、空気入りタイヤ10の新品タイヤ性能を取得してもよいし、外部システム300から当該新品タイヤ性能を取得してもよい。
また、タイヤ性能データ取得部123は、空気入りタイヤ10の新品時点におけるトレッド20のブロック剛性のデータを取得できる。ここでいうブロック剛性とは、トレッド20を形成するトレッドゴムの剛性と解釈されてよい。ブロック剛性の測定方法は様々だが、ゴムブロックの剛性を測定できる方法であれば、特に限定されない。
さらに、タイヤ性能データ取得部123は、空気入りタイヤ10の新品時点におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率(E')のデータを取得できる。
路面状態取得部125は、路面Rの状態を取得する。具体的には、路面状態取得部125は、センサーユニット110によって検出されたデータに基づいて路面Rの状態を取得する。例えば、特開2016-75575号公報に記載されているように、加速度センサによって取得された加速度データに基づいて、路面Rの状態、例えば、乾燥、湿潤(ウェット)、積雪(スノー)など)を判定できる。
路面状態取得部125は、このような方法によって、路面Rの状態を取得する。なお、路面状態取得部125は、センサーユニット110に含まれる温度センサ及び内圧センサのデータを補足的に用いて、路面Rの状態の判定精度を向上させるようにしてもよい。
タイヤ状態判定部127は、空気入りタイヤ10の状態を判定する。具体的には、タイヤ状態判定部127は、車両Vに装着されている空気入りタイヤ10の現在の状態を判定する。
より具体的には、タイヤ状態判定部127は、タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を判定する。タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量とは、例えば、空気入りタイヤ10のトレッド20に形成された溝の残量が挙げられる。つまり、タイヤ状態判定部127は、車両Vに装着されている空気入りタイヤ10のトレッド20に形成された溝の状態を判定できる。
具体的には、タイヤ状態判定部127は、米国特許出願公開第2017/0349007号明細書に記載されているようなステレオビジョンの原理を用いてトレッド20の溝深さを判定できる。なお、溝深さの判定は、必ずしもこのようなステレオビジョンの原理を用いていなくてもよく、画像解析などの処理によって判定されてもよい。
なお、タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量は、トレッド20に形成された溝の残量に限らず、例えば、トレッド20表面のクラックの有無、サイプなどの細溝のエッジ部分の形状などでもよい。
また、タイヤ状態判定部127は、空気入りタイヤ10の製造時点からの経過期間を判定することもできる。具体的には、タイヤ状態判定部127は、装着タイヤ属性認識部121によって認識された空気入りタイヤ10の製造時期に基づいて、空気入りタイヤ10の製造時期からの経過期間を判定できる。
例えば、装着タイヤ属性認識部121によって認識された空気入りタイヤ10の製造時期が2018年第10週(1810)であった場合、現時点(例えば、2020年第8週(2008)までの経過期間を判定する。
タイヤ性能推定部129は、タイヤ性能データ取得部123によって取得された空気入りタイヤ10の新品タイヤ性能と、タイヤ状態判定部127によって判定された空気入りタイヤ10のタイヤ状態の変化量とに基づいて、空気入りタイヤ10の現時点における現タイヤ性能を推定する。
具体的には、タイヤ性能推定部129は、空気入りタイヤ10の現時点における制動性能を推定する。タイヤ性能推定部129は、溝の残量とウェットグリップ性能の一般的な性能低下依存性の式(式1参照)に、タイヤ状態判定部127によって判定されたトレッド20の溝の残量(溝深さ)の値を適用し、空気入りタイヤ10の新品時点のウェットグリップ性能(新品タイヤ性能)に対する相対的な現時点のウェットグリップ性能(現タイヤ性能)を算出できる。
制動性能(ウェットグリップ性能)=装着タイヤの新品時点の制動性能×残溝深さの減少に伴う制動性能の減少率 …(式1)
また、タイヤ性能推定部129は、空気入りタイヤ10の現時点における操縦安定性を推定することもできる。具体的には、タイヤ性能推定部129は、タイヤ状態判定部127によって判定されたトレッド20の溝の残量(溝深さ)に基づいて、空気入りタイヤ10の現時点における操縦安定性を推定する。
操縦安定性は、上述した制動性能(ウェットグリップ性能)と同様な式(式2参照)を用いて推定できる。具体的には、装着タイヤの新品時点の操縦安定性に対して、残溝深さの減少に伴う操縦安定性の向上率を乗算する。
操縦安定性=装着タイヤの新品時点の操縦安定性×残溝深さの減少に伴う操縦安定性の向上率 …(式2)
一般的に、トレッド20の溝の残量が低下すると、トレッド20を形成するトレッドゴムの剛性が高くなるため、横方向(Fy)の剛性も高くなり、操縦安定性が向上する。
タイヤ性能推定部129は、操縦安定性を推定する場合、路面状態取得部125による路面Rの状態の取得結果を加味して、操縦安定性を推定してもよい。
さらに、タイヤ性能推定部129は、空気入りタイヤ10の現時点におけるウェット性能を推定することもできる。具体的には、タイヤ性能推定部129は、タイヤ状態判定部127によって判定された空気入りタイヤ10の製造時期からの経過期間に基づいて、空気入りタイヤ10の現時点におけるウェット性能を推定する。
タイヤ性能推定部129は、当該経過期間と、貯蔵弾性率(E')との関係を示す式(またはグラフ)を用いて現時点における空気入りタイヤ10のトレッド20を形成するトレッドゴムの貯蔵弾性率(E')を算出する。さらに、タイヤ性能推定部129は、算出した貯蔵弾性率(E')と、ウェット路面での摩擦係数(μ)との関係を示す式(またはグラフ)を用いて、現時点における空気入りタイヤ10のトレッド20を形成するトレッドゴムのμを算出する。
また、タイヤ性能推定部129は、現タイヤ性能の推定結果を外部に出力することができる。具体的には、タイヤ性能推定部129は、車両制御装置40及び外部システム300に当該推定結果を出力することができる。或いは、タイヤ性能推定部129は、当該推定結果を車両V内の表示装置に表示したり、ネットワーククラウド400を介して、予め指定されているスマートフォンなどの通信端末に送信したりしてもよい。
(4)タイヤ性能推定システムの動作
次に、タイヤ性能推定システム100の動作について説明する。具体的には、処理装置120によるタイヤ性能の推定動作について説明する。
(4.1)動作例1
本動作例では、空気入りタイヤ10の制動性能(ウェットグリップ性能)が推定される。図4は、動作例1に係るタイヤ性能の推定動作フローを示す。
図4に示すように、処理装置120は、車両Vに装着されている空気入りタイヤ10(装着タイヤ)の種類などを認識する(S10)。
具体的には、処理装置120は、RFIDリーダー111またはカメラ112を用いて、車両Vに装着されている空気入りタイヤ10の種類、銘柄及びタイヤサイズなど認識する。また、処理装置120は、空気入りタイヤ10のトレッドパターンを認識する。トレッドパターンは、上述したように、カメラ112を用いた認識されてもよいし、処理装置120が外部システム300にアクセスし、認識した種類(銘柄、タイヤサイズ)に対応するトレッドパターンを取得することによって認識されてもよい。
処理装置120は、装着タイヤの新品時点における制動性能(新品タイヤ性能)のデータを取得する(S20)。具体的には、処理装置120は、装着タイヤの新品時点における制動性能(ウェットグリップ性能)を取得する。表1に示したように、ウェットグリップ性能は、WGIに基づいてよい。
処理装置120は、装着タイヤのトレッド20に形成された溝の状態を判定する(S30)。具体的には、処理装置120は、装着タイヤの溝深さをトレッド20の溝深さを判定する。上述したように、処理装置120は、米国特許出願公開第2017/0349007号明細書に記載されているようなステレオビジョンの原理を用いてトレッド20の溝深さを判定できる。
処理装置120は、装着タイヤの現時点における制動性能(現タイヤ性能)を推定する(S40)。具体的には、処理装置120は、上述した(式1)を用いて現時点の制動性能(ウェットグリップ性能)を推定する。
図7は、トレッド20の溝残量(RTD:インデックス)とウェットグリップ性能(WGI)との関係の一例を示すグラフである。上述した(式1)は、このようなRTDとWGIとの関係に基づいて規定されてよい。図7に示すように、溝残量が新品時(インデックス:100)の概ね60%になると、WGIが低下し始める。
処理装置120は、制動性能(ウェットグリップ性能)の推定結果を出力する(S50)。具体的には、処理装置120は、当該推定結果を車両制御装置40に出力することができる。
車両制御装置40は、当該推定結果に基づいて、ブレーキ開始タイミング、強度などを調整できる。例えば、ウェットグリップ性能(WGI)が100%を下回った場合、必要な制動距離を長くするなどの補正が適用されてもよい。
また、処理装置120は、当該推定結果を外部システム300に出力することができる。上述したように、外部システム300によって提供されるアプリケーションまたはサービスには、車両Vを対象とした自動車保険に関するアプリケーションまたはサービスが含まれてよい。
外部システム300は、制動性能(ウェットグリップ性能)の推定結果に基づいて、車両Vの事故リスクを評価し、車両Vの自動車保険の料率算定などに利用してもよい。例えば、制動性能(ウェットグリップ性能)が低下した空気入りタイヤ10を装着し続ける場合、車両Vの保険料を改定するなどの対応が採られてもよい。
(4.2)動作例2
本動作例では、空気入りタイヤ10の操縦安定性が推定される。図5は、動作例2に係るタイヤ性能の推定動作フローを示す。以下、動作例1と異なる部分について主に説明し、同様の部分については、適宜説明を省略する。
図5に示すように、処理装置120は、動作例1と同様に、装着タイヤの種類などを認識する(S110)。
処理装置120は、装着タイヤの新品時点におけるトレッド20のブロック剛性(新品タイヤ性能)のデータを取得する(S120)。
処理装置120は、動作例1と同様に、装着タイヤのトレッド20に形成された溝の状態を判定する(S130)。
処理装置120は、装着タイヤの現時点における操縦安定性を推定する(S140)。具体的には、処理装置120は、装着タイヤの新品時点の操縦安定性に対して、残溝深さの減少に伴う操縦安定性の向上率を乗算する(式2参照)ことによって、現時点における空気入りタイヤ10の操縦安定性を推定できる。
なお、処理装置120は、路面状態取得部125(図3参照)を用いて路面Rの状態を取得できる場合、路面Rの状態を加味して、操縦安定性を推定してもよい。例えば、路面Rの状態がウェットである場合、上述した操縦安定性の向上率を低くしてもよい。
処理装置120は、操縦安定性の推定結果を出力する(S150)。
(4.3)動作例3
本動作例では、空気入りタイヤ10のウェット性能が推定される。図6は、動作例3に係るタイヤ性能の推定動作フローを示す。以下、動作例1及び動作例2と異なる部分について主に説明し、同様の部分については、適宜説明を省略する。
図6に示すように、処理装置120は、装着タイヤの製造時期を認識する(S210)。 具体的には、処理装置120は、RFIDリーダー111またはカメラ112を用いて、車両Vに装着されている空気入りタイヤ10の製造時期を認識する。
処理装置120は、装着タイヤの新品時点におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率(E')(新品タイヤ性能)のデータを取得する(S220)。
処理装置120は、装着タイヤの製造時点からの経過期間を判定する(S230)。具体的には、処理装置120は、装着タイヤの製造時期の情報と、現在の日付とに基づいて、当該経過期間を判定する。なお、上述したように、製造時期などは、製造年と製造週によって示されてもよい。
処理装置120は、装着タイヤの現時点におけるウェット性能を推定する(S240)。具体的には、処理装置120は、当該経過期間と、貯蔵弾性率(E')との関係を示す式(またはグラフ)を用いて現時点における空気入りタイヤ10のトレッド20を形成するトレッドゴムの貯蔵弾性率(E')を算出する。なお、上述したように、新品時点のトレッドゴムの貯蔵弾性率(E')は、空気入りタイヤ10の属性として、処理装置120が認識(取得)することができる。
図8は、装着タイヤの製造時点からの経過期間(インデックス)と、貯蔵弾性率(E')(インデックス)との関係の一例を示すグラフである。処理装置120は、このようなグラフ、または当該近似直線を表す数式を用いて、現時点におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率(E')を算出する。
さらに、処理装置120は、算出した貯蔵弾性率(E')と、ウェット路面での摩擦係数(μ)との関係を示す式(またはグラフ)を用いて、現時点における空気入りタイヤ10のトレッド20を形成するトレッドゴムのμを算出する。
図9は、貯蔵弾性率(E')(インデックス)と、トレッドゴム(コンパウンド)の摩擦係数(μ)との関係の一例を示すグラフである。処理装置120は、このようなグラフ、または当該近似直線を表す数式を用いて、現時点におけるトレッドゴムのμを算出する。なお、トレッドゴム(コンパウンド)の摩擦係数(μ)は、トレッドゴム(コンパウンド)を対象としているが、WGIと同様の数値(表1参照)と解釈されてよい。
トレッドゴムは、製造から時間が経過するに連れて、含有するオイル量が減少し、再架橋に伴う網目量の増加、ならびに軟化剤成分の減少といった現象が生じる(経年劣化)。これにより、トレッドゴムの貯蔵弾性率(E')が高くなり、μが低下する。
処理装置120は、ウェット性能の推定結果を出力する(S250)。
(5)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、タイヤ性能推定システム100は、認識した装着タイヤの属性に基づいて、装着タイヤの新品タイヤ性能のデータを取得するとともに、装着タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を判定する。また、タイヤ性能推定システム100は、新品タイヤ性能と、タイヤ状態の変化量とに基づいて、装着タイヤの現タイヤ性能を推定できる。
このため、車両Vに現在装着されている空気入りタイヤ10の属性をより正確に認識できる。これにより、車両Vに特定銘柄の空気入りタイヤ10が装着されていることなど、どのようなタイヤが装着されているかを、外部システム300によって提供されるアプリケーションまたはサービスに対して保証(装着保証)することができる。
特に、タイヤは換装が容易であり、車両Vと空気入りタイヤ10との紐付け(装着保証)が容易でないが、タイヤ性能推定システム100によれば、車両Vに設けられたRFIDリーダー111またはカメラ112を用いることによって、このような装着保証を実現し得る。
また、装着タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を随時判定できるため、タイヤ性能の変化をリアルタイムに推定することができる。
本実施形態では、タイヤ性能推定システム100は、装着タイヤのトレッド20に形成された溝の状態(溝深さ)を判定し、装着タイヤの現時点における制動性能(ウェットグリップ性能)及び操縦安定性(現タイヤ性能)を推定できる。このため、車両Vに装着されている空気入りタイヤ10の現時点の制動性能及び操縦安定性を正確かつリアルタイムに推定できる。
本実施形態では、タイヤ性能推定システム100は、装着タイヤの製造時期からの経過期間を判定し、装着タイヤの現時点におけるウェット性能(現タイヤ性能)を推定できる。このため、車両Vに装着されている空気入りタイヤ10の現時点のウェット性能を正確かつリアルタイムに推定できる。
本実施形態では、タイヤ性能推定システム100は、推定した現タイヤ性能を車両制御装置40に向けて出力したり、車両Vを対象とした自動車保険に関連する外部システム300に送信したりすることができる。このため、現タイヤ性能が反映された緻密な車両制御を実現できる。また、車両Vの自動車保険の料率算定、或いは保険料の改定などに資することができる。
(6)その他の実施形態
以上、実施形態について説明したが、当該実施形態の記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
例えば、上述した実施形態では、主に処理装置120内において、タイヤ状態の変化量を判定及び現タイヤ性能の推定に関する処理が実行されていたが、これらの処理の一部は、ネットワーククラウド400のシステムまたはサービスを用いて実現されてもよい。
上述した実施形態では、タイヤ性能として、運動性能を例として説明したが、運動性能に限られず、居住性能(例えば、乗り心地、騒音)を対象としてもよい。
上述した実施形態では、制動性能としてウェットグリップ性能が推定されていたが、ドライ路面における制動性能、寒冷地または期間など、一定の条件を満たす場合には、氷上路面における制動性能が推定されてもよい。
上述した実施形態では、摩擦係数(μ)に基づいてウェット性能が推定(動作例3)されていたが、摩擦係数(μ)に基づいて、他のタイヤ性能、例えば、制駆動性能が推定されてもよい。
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
10 空気入りタイヤ
20 トレッド
40 車両制御装置
50 RFIDタグ
100 タイヤ性能推定システム
110 センサーユニット
111 RFIDリーダー
112 カメラ
120 処理装置
121 装着タイヤ属性認識部
123 タイヤ性能データ取得部
125 路面状態取得部
127 タイヤ状態判定部
129 タイヤ性能推定部
200 無線基地局
300 外部システム
400 ネットワーククラウド
R 路面
V 車両

Claims (8)

  1. 車両に装着されているタイヤの属性を認識する装着タイヤ属性認識部と、
    前記タイヤの属性に基づいて、前記タイヤの新品時点における新品タイヤ性能のデータを取得するタイヤ性能データ取得部と、
    前記タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を判定するタイヤ状態判定部と、
    前記新品タイヤ性能と、前記タイヤ状態の変化量とに基づいて、前記タイヤの現時点における現タイヤ性能を推定するタイヤ性能推定部と
    を備えるタイヤ性能推定システム。
  2. 前記装着タイヤ属性認識部は、前記タイヤの種類を認識し、
    前記タイヤ性能データ取得部は、前記タイヤの新品時点における制動性能のデータを取得し、
    前記タイヤ状態判定部は、前記タイヤのトレッドに形成された溝の状態を判定し、
    前記タイヤ性能推定部は、前記タイヤの現時点における制動性能を推定する請求項1に記載のタイヤ性能推定システム。
  3. 前記装着タイヤ属性認識部は、前記タイヤの種類を認識し、
    前記タイヤ性能データ取得部は、前記タイヤの新品時点におけるトレッドのブロック剛性のデータを取得し、
    前記タイヤ状態判定部は、前記タイヤのトレッドに形成された溝の状態を判定し、
    前記タイヤ性能推定部は、前記タイヤの現時点における操縦安定性を推定する請求項1に記載のタイヤ性能推定システム。
  4. 前記装着タイヤ属性認識部は、前記タイヤの製造時期を認識し、
    前記タイヤ性能データ取得部は、前記タイヤの新品時点におけるトレッドゴムの貯蔵弾性率のデータを取得し、
    前記タイヤ状態判定部は、前記タイヤの製造時期からの経過期間を判定し、
    前記タイヤ性能推定部は、前記タイヤの現時点におけるウェット性能を推定する請求項1に記載のタイヤ性能推定システム。
  5. 前記タイヤ性能推定部は、前記現タイヤ性能を前記車両の制御装置に向けて出力する請求項1に記載のタイヤ性能推定システム。
  6. 前記タイヤ性能推定部は、前記現タイヤ性能を、前記車両を対象とした自動車保険に関連する外部システムに送信する請求項1に記載のタイヤ性能推定システム。
  7. 車両に装着されているタイヤの属性を認識するステップと、
    前記タイヤの属性に基づいて、前記タイヤの新品時点における新品タイヤ性能のデータを取得するステップと、
    前記タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を判定するステップと、
    前記新品タイヤ性能と、前記タイヤ状態の変化量とに基づいて、前記タイヤの現時点における現タイヤ性能を推定するステップと
    を含むタイヤ性能推定方法。
  8. 車両に装着されているタイヤの属性を認識する装着タイヤ属性認識処理と、
    前記タイヤの属性に基づいて、前記タイヤの新品時点における新品タイヤ性能のデータを取得するタイヤ性能データ取得処理と、
    前記タイヤの使用に伴うタイヤ状態の変化量を判定するタイヤ状態判定処理と、
    前記新品タイヤ性能と、前記タイヤ状態の変化量とに基づいて、前記タイヤの現時点における現タイヤ性能を推定するタイヤ性能推定処理と
    をコンピュータに実行させるタイヤ性能推定プログラム。
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