JP2021167068A - 電子機器用部材およびその製造方法 - Google Patents

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Rumiko Kitagawa
正孝 中村
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Abstract

【課題】耐久性に優れた親水性と易滑性が付与された電子機器用部材及びそれを簡便に製造する方法を提供する。【解決手段】基材、及び、水酸基を含む親水性ポリマーからなるポリマー層を含み、前記基材の表面の少なくとも一部に、前記ポリマー層が形成された、電子機器用部材。【選択図】なし

Description

本発明は、電子機器用部材およびその製造方法に関する。
従来、種々の分野においてシリコーンゴム、ヒドロゲル(ハイドロゲル)等の樹脂製軟質材料を用いた基材、金属、ガラス等の硬質材料を用いた基材が多様な用途に用いられている。
軟質材料を用いた基材の用途としては、生体内に導入したり、生体表面を被覆したりする医療用や、細胞培養シート、組織再生用足場材料等のバイオテクノロジー用や、ローラー、衝撃吸収ゴムシート等の工業用が挙げられる。
硬質材料を用いた基材の用途としては、パソコン、携帯電話、ディスプレイ等の電化製品、注射薬に使用されるアンプル、毛細管、バイオセンシングチップなどの診断・分析ツールとしての使用が挙げられる。
種々の基材を、例えば電子機器用部材として他の材料と接触させたり、電子機器表面に設置したりして用いる場合、滑り性を向上させることを目的とした電子機器用部材の基材の表面改質が重要となる。表面改質によって、電子機器用部材に表面改質前よりも良好な特性、例えば親水性、易滑性といった特性を与えることができれば、電子機器の操作性の向上、使用寿命の向上、不具合発生回数の低減などを期待することができる。
電子機器用部材の基材の表面を改質させる方法に関しては、プラズマ処理や酸/過酸化物処理を利用した処理、ポリマーを利用した処理など種々の方法が知られている。
例えば、プラスチック材料の表面に、極性基導入のための酸/過酸化物処理を行った後、アルカリ処理を行いインクジェットヘッド内のインク流路の濡れ性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、反射防止膜上に、アクリル系ポリマー樹脂からなる親水性膜が形成されたガラスレンズ表面が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
特開2000−313116号公報 特開2019−60955号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているような基材の表面改質法においては、基材表面に酸/過酸化物処理を行った後、アルカリ処理を行う必要があることから、製造コストの増大を招くおそれがあった。また、適用される基材はプラスチック材料に限定されていた。
特許文献2に記載されているような、反射防止膜上に、アクリル系ポリマー樹脂からなる親水性膜を形成させる方法においては、基材であるレンズ面上に直接親水膜が形成されるものではなく、基材と親水膜との密着性を高めるためには反射防止膜の形成が必須であり、工程数の多さから製造コストの増大を招くおそれがあった。また、適用される基材はガラスレンズに限定されていた。さらに、親水性は向上するものの易滑性を向上させるものではなく、易滑性が求められる他の材料と接触する電子機器用部材として使用するには好ましくなかった。
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、簡便な方法により表面が親水化され、かつ易滑性を有する電子機器用部材およびその製造方法を提供する。
上記の目的を達成するために、本発明は次の構成を有する。
基材、及び、水酸基を含む親水性ポリマーからなるポリマー層を含み、前記基材の表面の少なくとも一部に、前記ポリマー層が形成された、電子機器用部材。
本発明によれば、水酸基を含む親水性ポリマーのみでポリマー層を形成可能であり、簡便な方法により基材表面が親水化され、かつ易滑性を有することから、親水性及び易滑性が付与された電子機器用部材を簡便なプロセスで安価に得ることができる。また、適用できる基材はプラスチック材料やガラスに限られない。
本発明は、基材、及び、水酸基を含む親水性ポリマーからなるポリマー層を含み、前記基材の表面の少なくとも一部に、前記ポリマー層が形成された、電子機器用部材に関する。
本発明の電子機器用部材に用いられる親水性ポリマーは、通常は基材とは異なる材料である。ただし、基材として所定の効果を維持し得るのであれば、基材と親水性ポリマーを同一の材料としても良いし、基材の一部に親水性ポリマーと同一の材料を用いても良い。
本発明に用いられる親水性ポリマーは、親水性を有するポリマーから構成される。ただし、ポリマー層には、親水性ポリマーの親水性の発現を損ねない限りは、親水性ポリマー以外の添加剤等の他の成分が含まれていてもよい。ここで、親水性を有するポリマーとは、室温(20〜25℃)の水100質量部、リン酸緩衝液100質量部、もしくは水100質量部とtert−ブタノール100質量部の混合液に0.0001質量部以上可溶なポリマーである。親水性を有するポリマーは、室温(20〜25℃)の水100質量部、リン酸緩衝液100質量部、もしくは水100質量部とtert−ブタノール100質量部の混合液に0.01質量部以上可溶であるとより好ましく、0.1質量部以上可溶であればさらに好ましく、1質量部以上可溶なポリマーが特に好ましい。
本発明の電子機器用部材において、親水性ポリマーとしては、水酸基を含む親水性ポリマーを用いる。水酸基を含む親水性ポリマーは、水濡れ性のみならず埃等に対する防汚性に優れた表面を有するポリマー層を形成できるために好ましい。ここでいう水酸基を含む親水性ポリマーとしては、酸性の官能基を含むポリマーが好ましい。水酸基を含む親水性ポリマーとして好適な酸性の官能基を含むポリマーは、具体的には、カルボキシル基およびスルホン酸基からなる群より選ばれたいずれかの基を含むポリマーが好ましく、カルボキシル基を含むポリマーが特に好ましい。なお、ここでいうカルボキシル基またはスルホン酸基は、塩になっていてもかまわない。
上記水酸基を含む親水性ポリマーの例は、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(ビニル安息香酸)、ポリ(チオフェン−3−酢酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびこれらの塩などである。以上はホモポリマーの例であるが、ここで説明した親水性ポリマーを構成する親水性モノマー同士の共重合体、あるいは該親水性モノマーと他のモノマーの共重合体も、水酸基を含む親水性ポリマーとして好適に用いることができる。
水酸基を含む親水性ポリマーが共重合体である場合、該共重合体を構成する親水性モノマーとしては、重合性の高さという点でアリル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基から選ばれた基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが特に好ましい。このようなモノマーとして好適なものを例示すれば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩などが挙げられる。これらの中で、(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩から選ばれたモノマーがより好ましく、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸、およびその塩から選ばれたモノマーである。
上記水酸基を含む親水性ポリマーは、水酸基に加えてアミド基を含むことが、水濡れ性のみならず易滑性のある表面を有するポリマー層を形成できるために好ましい。
親水性ポリマーが水酸基に加えてアミド基も含む場合、親水性ポリマーが水に溶解すると適度な粘性を発現するため、水濡れ性のみならず易滑性のある表面を形成できる。
水酸基およびアミド基を含む親水性ポリマーの例としては、カルボキシル基を含むポリアミド類、水酸基を有するモノマーとアミド基を含むモノマーとの共重合体などを挙げることができる。
カルボキシル基を含むポリアミド類の好適な例としては、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などのポリアミノ酸やポリペプチド類などを挙げることができる。
水酸基を含むモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、ビニル安息香酸、チオフェン−3−酢酸、4−スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびこれらの塩から選ばれたモノマーを好適に使用することができる。
アミド基を含むモノマーとしては、重合の容易さの点で(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーおよびN−ビニルカルボン酸アミド(環状のものを含む)から選ばれたモノマーが好ましい。かかるモノマーの好適な例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、およびアクリルアミドを挙げることができる。これら中でも易滑性の点で好ましいのは、N−ビニルピロリドンおよびN,N−ジメチルアクリルアミドであり、N,N−ジメチルアクリルアミドが特に好ましい。
水酸基およびアミド基を含む親水性ポリマーとして、水酸基を含むモノマーとアミド基を含むモノマーの共重合体を用いる場合、好ましい具体例は、(メタ)アクリル酸/N−ビニルピロリドン共重合体、(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N−ビニルピロリドン共重合体、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。特に好ましくは(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。
水酸基およびアミド基を含む親水性ポリマーとして、水酸基を含むモノマーとアミド基を含むモノマーの共重合体を用いる場合、その共重合比率は、[水酸基を含むモノマーの質量]/[アミド基を含むモノマーの質量]が1/99〜99/1のものが好ましい。水酸基を含むモノマーの共重合比率は、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がさらにより好ましい。また、水酸基を含むモノマーの共重合比率は、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下がさらにより好ましい。アミド基を含むモノマーの共重合比率は、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がさらにより好ましい。また、アミド基を含むモノマーの共重合比率は、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましく、90質量%以下がさらにより好ましい。水酸基を含むモノマーとアミド基を含むモノマーの共重合比率が上記の範囲であれば、易滑性や埃に対する防汚性などの機能を発現しやすくなる。
また、上記水酸基を含むモノマーとアミド基を含むモノマーに、さらに上記水酸基を含むモノマーとは構造の異なる水酸基を含むモノマー、上記アミド基を含むモノマーとは構造の異なるアミド基を含むモノマー、水酸基もアミド基も含まないモノマーを1種類もしくは複数共重合させることも可能である。
上記以外のモノマーの好適な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール(前駆体としてカルボン酸ビニルエステル)を挙げることができる。この内、重合の容易さの点で(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルモノマーがより好ましい。埃に対する防汚性を向上させる観点から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびグリセロール(メタ)アクリレートが好ましく、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。また、抗菌性等といった機能を示すモノマーを使用することも可能である。
抗菌性を有するモノマーの具体例としては、4級アンモニウム塩を有するモノマーなどを挙げることができる。例えば、特表2010−88858号公報記載のイミダゾリウム塩モノマーや(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、トリメチル−2−メタクロリルオキシエチルアンモニウムクロリド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどといった抗菌性を有するモノマーが挙げられる。
水酸基を含むモノマーとアミド基を含むモノマーの共重合体に、上記水酸基を含むモノマーとは構造の異なる水酸基を含むモノマー、上記アミド基を含むモノマーとは構造の異なるアミド基を含むモノマー、水酸基もアミド基も含まないモノマーである第3のモノマー成分を1種類共重合させる場合、水酸基を含むモノマーの共重合比率は、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がさらにより好ましい。また、水酸基を含むモノマーの共重合比率は、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下がさらにより好ましい。アミド基を含むモノマーの共重合比率は、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がさらにより好ましい。また、アミド基を含むモノマーの共重合比率は、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましく、90質量%以下がさらにより好ましい。第3のモノマー成分の共重合比率は、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がさらにより好ましい。また、第3のモノマー成分の共重合比率は、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下がさらにより好ましい。
水酸基を含むモノマーとアミド基を含むモノマーおよび第3のモノマー成分の共重合比率が上記の範囲であれば、易滑性や埃に対する防汚性などの機能を発現しやすくなる。
また、電子機器用部材に求められる特性を損ねない限りは、水酸基を含む親水性ポリマー以外の添加剤等がポリマー層に含まれていてもよい。さらに、ポリマー層には、水酸基を含む親水性ポリマーに加え、他の親水性ポリマーが1種類もしくは複数含まれていてもよい。ただし、製造方法が複雑になる傾向があることから、親水性ポリマー層は、1種類の水酸基を含む親水性ポリマーのみからなることが好ましい。
ここで、1種類のポリマーとは、1の合成反応により製造されたポリマーもしくはポリマー群(異性体、錯体等)を意味する。複数のモノマーを用いて共重合ポリマーとする場合は、構成するモノマー種が同一であっても、配合比を変えて合成したポリマーは同じ1種とは言わない。
また、ポリマー層が1種類の水酸基を含む親水性ポリマーのみからなるとは、ポリマー層が、該水酸基を含む親水性ポリマー以外のポリマーを全く含まないか、もしくは、仮にそれ以外のポリマーを含んだとしても、該水酸基を有する親水性ポリマー100質量部に対し、それ以外のポリマーの含有量が3質量部以下であることを意味する。ポリマー層中の水酸基を含む親水性ポリマー以外のポリマーの含有量は、水酸基を含む親水性ポリマー100質量部に対して0.1質量部以下がより好ましく、0.0001質量部以下がさらに好ましい。
水酸基を含む親水性ポリマー以外のポリマーが塩基性ポリマーの場合であっても、含有量が上記の範囲内であれば、透明性に問題が生じることを抑制できる。従来技術においては、ガラス基材に対して、基材表面に反射防止膜を形成させた後、ディッピングを利用して基材表面に親水性ポリマー層を形成させていたが、本発明によれば、1種類のポリマーのみからなるポリマー層を基材表面上に形成することもできる。
本発明において、親水性ポリマーの塩基性基/水酸基の数比は0.2以下が好ましい。水酸基と塩基性基の反応由来の塩が形成されず、透明性に優れることから、親水性ポリマーの塩基性基/水酸基の数比は0.1以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましい。ここで塩基性基とは、塩基性の官能基を示しアミノ基およびその塩などが挙げられる。
本発明の電子機器用部材の製造方法は、基材を、2.0以上6.0以下の初期pHを有する溶液中に配置して、前記溶液を加熱する工程を含むことが好ましく、前記溶液が、前記親水性ポリマーと、酸を含むものであることが好ましい。
また、本発明に用いられる水酸基を有する親水性ポリマーは、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合、錯形成から選ばれる1種類以上の化学結合を基材の表面と形成することによって、基材の表面の少なくとも一部にポリマー層として存在することが好ましい。ここで、ポリマー層は、基材との間に共有結合により結合されていてもよいが、簡便な工程での製造が可能となることから、むしろ、基材との間に共有結合を有していないことが好ましい。基材の表面とポリマー層の間に共有結合が存在しないことは、ポリマー層が化学反応性基を含まないことで判定する。ここでいう化学反応性基の具体例としては、アゼチジニウム基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジン基、アズラクトン基およびそれらの組合せなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の電子機器用部材は、基材の表面の少なくとも一部にポリマー層を有するものである。そして本発明の電子機器用部材は、基材の表面の少なくとも一部にポリマー層を有しさえすれば、ポリマー層が基材の表面の一部であっても全面であっても特に限定されないものの、その用途にもよるが、基材中の一つの面における表面の全体に、ポリマー層が存在することが好ましい。基材が厚みを有しない、または、厚みがあっても無視できる程度の2次元形状の場合は、基材の表面の片面全面の上にポリマー層が存在することが好ましい。また、基材の全ての表面の上にポリマー層が存在することが特に好ましい。
本発明の製造方法に用いられる酸としては、特に限定されないが、環構造を有さない低分子の酸が好ましい。ここで低分子とは、分子量が500以下であることを意味し、分子量は好ましくは300以下、さらに好ましくは250以下である。環構造を有さない低分子の酸としては、有機酸および無機酸が使用できる。有機酸の好適な具体例としては、酢酸、クエン酸、ギ酸、アスコルビン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸などを挙げることができる。無機酸の好適な具体例としては、硝酸、硫酸、リン酸、塩酸などを挙げることができる。これらの中で、より優れた親水性表面が得られやすいこと、安全性が高いこと、取り扱いが容易であること、などの観点では有機酸が好ましく、炭素数1〜20の有機酸がより好ましく、炭素数2〜10の有機酸がさらに好ましい。有機酸の中では酢酸、クエン酸、ギ酸、アスコルビン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸が好ましく、ギ酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸がより好ましく、クエン酸、アスコルビン酸がさらに好ましい。無機酸の中では、揮発性がなく無臭で取り扱いが容易であることなどの観点では、硫酸が好ましい。
本発明で使用される親水性ポリマーは、2000〜1500000の分子量を有することが好ましい。分子量は、より好ましくは、5000以上であり、さらに好ましくは、10000以上である。また、分子量は、1200000以下がより好ましく、1000000以下がさらに好ましい。ここで、上記分子量としては、ゲル浸透クロマトグラフィー法(水系溶媒)で測定されるポリエチレングリコール換算またはポリエチレンオキシド換算の質量平均分子量を用いる。
また、本発明の電子機器用部材の製造方法において、前述の溶液を加熱する工程で用いられる溶液中の親水性ポリマーの濃度については、これを高くすると、一般に得られる親水性ポリマー層の厚さは増す。しかし、親水性ポリマーの濃度が高すぎる場合、粘度増大により製造時の取り扱い難さが増す可能性があるため、水酸基を含む親水性ポリマーの溶液中の濃度については、0.0001〜30質量%の濃度が好ましい。溶液を加熱する工程で用いられる溶液中の親水性ポリマーの濃度は、より好ましくは、0.001質量%以上であり、さらに好ましくは、0.005質量%以上である。また、親水性ポリマーの濃度は、より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは、15質量%以下である。
本発明の電子機器用部材の製造方法における、溶液を加熱する工程において、親水性ポリマー及び酸を含有する溶液の初期pHの範囲としては、溶液に濁りが生じず、透明性が良好な電子機器用部材が得られることから、2.0以上6.0以下であることが好ましい。初期pHは、2.1以上がより好ましく、2.2以上がさらに好ましく、2.4以上がさらにより好ましく、2.5以上が特に好ましい。また、初期pHは、5.0以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましく、3.5未満がさらにより好ましい。
溶液を加熱する工程における、親水性ポリマー及び酸を含有する溶液の初期pHが2.0以上であると、溶液の濁りが生じる場合がより少なくなる。溶液に濁りが生じないと、電子機器用部材の表面の水濡れ性および易滑性が高い傾向があるため好ましい。初期pHが6.0以下である場合、電子機器用部材の表面の水濡れ性および易滑性が低下することもないため、好ましい。
優れた水濡れ性と易滑性を基材に付与可能であることから、基材がケイ素原子を含む材料である場合、親水性ポリマーを含有する溶液の初期pHの範囲としては、3.4以下が好ましく、3.3以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。基材がケイ素原子を含まない材料である場合、4.0以下が好ましく、
3.5以下がより好ましく、3.3以下がさらに好ましい。
溶液を加熱する工程における、親水性ポリマー及び酸を含有する溶液の初期pHは、pHメーター(例えばpHメーター Eutech pH2700(Eutech Instruments))を用いて測定することができる。ここで、親水性ポリマー及び酸を含有する溶液の初期pHとは、溶液に親水性ポリマー及び酸を全て添加した後、室温(20〜23℃)にて2時間回転子を用い撹拌し、溶液を均一とした後であって、基材を配置して加熱する前に測定したpHの値を指す。なお、本発明において、pHの値の小数点以下第2位は四捨五入する。
なお、溶液のpHは、加熱操作を行った際に変化し得る。加熱操作を行った後の溶液のpHは、2.0〜6.0が好ましい。加熱後のpHは、2.1以上がより好ましく、2.2以上がより好ましく、2.3以上が特に好ましい。また加熱後のpHは、5.9以下がより好ましく、5.5以下がより好ましく、5.0以下がさらに好ましく、4.8以下が特に好ましい。加熱操作を行った後の溶液のpHが、上記範囲であることで、加熱操作を行っている間、適切なpH条件とすることができ、得られる電子機器用部材の物性が好適なものとなる。なお、本発明に係る加熱操作を行って電子機器用部材に用いられる基材の表面を改質した後で、中和処理を行ったり、水を加えたりしてpHを調整することもできるが、ここでいう加熱操作を行った後の溶液のpHとは、かかるpH調整処理を行う前のpHである。
溶液を加熱する工程における、親水性ポリマー及び酸を含有する溶液の溶媒は特に限定されないが、水が好ましく挙げられる。溶液のpHは、酸を親水性ポリマーを含んだ溶液に添加することによって調整することができる。酸の好適な具体例としては、上記の通りである。
また、pHの微調整を容易にすることや基材が疎水性成分を含む材料である場合に基材が白濁化しにくくなることから、溶液に緩衝剤を添加することも好ましい。
緩衝剤としては、任意の生理学的に適合性のある公知の緩衝剤を使用することができる。本発明において適切な緩衝剤は当業者に公知であり、例としては以下のとおりである。例として、ホウ酸、ホウ酸塩類(例:ホウ酸ナトリウム)、クエン酸、クエン酸塩類(例:クエン酸カリウム)、重炭酸塩(例:重炭酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(例:NaHPO、NaHPO、およびKHPO)、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、2−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、およびそれらの塩が挙げられる。各緩衝剤の量としては、所望のpHを達成する上で有効であるために必要な分が用いられ、通常は、上記溶液中において0.001質量%〜2質量%、好ましくは、0.01質量%〜1質量%、より好ましくは、0.05質量%〜0.30質量%存在する。上記上限および下限のいずれを組み合わせた範囲であってもよい。
本発明の電子機器用部材の製造方法における、溶液を加熱する工程で用いられる加熱の方法としては、高圧蒸気滅菌法、電磁波(γ線、マイクロ波など)照射、乾熱法、火炎法などが挙げられる。水濡れ性、易滑性、および製造工程短縮の観点から、高圧蒸気滅菌法が最も好ましい。溶液を加熱する工程で用いられる装置としては、オートクレーブを用いることが好ましい。
溶液を加熱する工程における加熱温度は、良好な水濡れ性および易滑性を示す電子機器用部材表面が得られ、かつ、電子機器用部材自体の強度に影響が少ない観点から、60℃〜200℃が好ましい。加熱温度は、80℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましく、101℃以上がさらに好ましく、110℃以上が特に好ましい。また加熱温度は、180℃以下がより好ましく、170℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましい。
加熱時間は、短過ぎると良好な水濡れ性および易滑性を示す電子機器用部材表面が得られず、長過ぎると電子機器用部材自体の強度に影響を及ぼすことから5分〜600分が好ましい。加熱時間は、10分以上がより好ましく、15分以上がより好ましい。また、加熱時間は、400分以下がより好ましく、300分以下がより好ましい。
上記の加熱処理後、得られた電子機器用部材にさらに他の処理を行ってもよい。他の処理としては、親水性ポリマーを含んだ溶液中において再び同様の加熱処理を行う方法、溶液を親水性ポリマーを含まない溶液に入れ替えて同様の加熱処理を行う方法、放射線照射を行う方法、反対の荷電を有するポリマー材料を1層ずつ交互にコーティングするLbL処理(Layer by Layer処理)を行う方法、金属イオンによる架橋処理を行う方法、化学架橋処理を行う方法など処理が挙げられる。
また、上記の加熱処理前、上記基材に前処理を行ってもよい。前処理としては、酸やアルカリによる加水分解処理、放射線照射を行う処理などが挙げられる。
ただし、簡便な方法により基材表面の親水化が可能とする本発明の思想に照らし、製造工程が複雑になり過ぎることのない範囲での処理の実施が好ましい。
上記の放射線照射に用いる放射線としては、各種のイオン線、電子線、陽電子線、エックス線、γ線、中性子線が好ましく、より好ましくは電子線およびγ線であり、最も好ましくはγ線である。
上記のLbL処理としては、例えば国際公開第2013/024800号公報に記載されているような酸性ポリマーと塩基性ポリマーを使用した処理を用いると良い。
上記の金属イオンによる架橋処理に用いる金属イオンとしては、各種の金属イオンが好ましく、より好ましくは1価および2価の金属イオンであり、最も好ましくは2価の金属イオンである。また、キレート錯体を用いても良い。
上記の化学架橋処理としては、例えば特表2014−533381号公報に記載されているようなエポキシド基とカルボキシル基との間の反応や公知の意の適切な水酸基を有する酸性の親水性ポリマーとの間で形成される架橋処理を用いると良い。
上記の溶液を親水性ポリマーを含まない溶液に入れ替えて、同様の加熱処理を行う方法において、親水性ポリマーを含まない溶液としては、特に限定されないが、緩衝剤溶液が好ましい。緩衝剤としては、前記のものを用いることができる。
緩衝剤溶液のpHは、生理学的に許容できる範囲である6.3〜7.8が好ましい。緩衝剤溶液のpHは、好ましくは6.5以上、さらに好ましくは6.8以上である。また、緩衝剤溶液のpHは、7.6以下が好ましく、さらに好ましくは7.4以下である。
本発明において、乾燥状態において、走査透過型電子顕微鏡観察によって測定された、ポリマー層の厚さは、1nm以上3000nm未満である。厚みがこの範囲にある場合に、水濡れ性や易滑性などの機能を発現しやすくなる。厚みは、5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。また、厚みは、1000nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましく、特に好ましくは、100nm以下である。ポリマー層の厚みが100nm以下であれば、水濡れ性や易滑性に優れ、例えば、カメラレンズといった電子機器用部材に用いる場合、急激な温度変化にともなって発生するレンズ表面の曇りや雨天時に付着した水滴の滞留によって起こる視認性の低下を防止することができる。ポリマー層の厚みは、上記乾燥状態のポリマー層の厚みを3カ所場所を変えて、各視野につき、1カ所膜厚を測定し、計3カ所の膜厚の平均厚さを意味する。
本発明の好ましい態様において、本発明の電子機器用部材を形成する基材としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリアセタール、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ナイロン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、エチレン−プロピレンゴム、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、セラミック材料、アルミ、及びジルコニアからなる群より選択される1種類以上を含むものが挙げられる。中でも、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、シリコーン樹脂、鋼、ステンレス鋼、アルミは、本発明のより好ましい態様である。
また、本発明の別の好ましい態様において、本発明の電子機器用部材を形成する基材としては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、及び高断熱Low−E複層ガラスからなる群より選択される1種類以上を含むものが挙げられる。中でも、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラスは、本発明のより好ましい態様である。
また、本発明の電子機器用部材は、インクジェットプリンター用部材またはカメラレンズに使用されることが好ましい。つまり本発明のインクジェットプリンター用部材は、本発明の電子機器用部材からなり、また本発明のカメラレンズは、本発明の電子機器用部材からなる。
例えば、本発明の電子機器用部材をインクジェットプリンター用部材として、ローラーやインクタンク、インクジェットヘッドに用いた場合、ローラー表面やインクタンクの壁面およびインクジェットヘッドのインク流路の水濡れ性と易滑性を向上させることができ、かつその状態を安定に保持することができる。すなわち、長期にわたってローラーやインクタンク、インクジェットヘッドを使用することができ、部材の濡れ性の悪さから、装置の回転が遅い、インク室内にインクが入らないというようなトラブルが発生せず、またインク流路内に気泡を生じさせにくく、高い印字品質を維持することが可能となる。
また、本発明の電子機器用部材をカメラレンズに用いた場合、急激な温度変化や気象条件によって、レンズ表面に付着する細かい水滴は、レンズ表面の親水性ポリマー層上を拡がって薄い水膜となり、レンズ表面に滞留することがない。すなわち、レンズ表面の曇り防止に寄与することができ、視認性の低下を防止できる。
本発明の電子機器用部材が、例えば他の材料と接触したり、電子機器表面に設置したりして用いられる電子機器用部材である場合、電子機器用部材表面で他の材料(例えば、インク等)が滑らかに広がらないことを防止する観点および電子機器用部材表面への埃付着を防止する観点から、電子機器用部材表面の液膜保持時間が長いことが好ましい。より具体的には、本発明の電子機器用部材は、室温において乾燥状態で2日間保管した後の液膜保持時間が10秒以上であることが好ましい。なお、ここでいう乾燥状態とは、水などの液体に浸漬したり接触させることなく室温で静置することを意味する。また本発明の電子機器用部材は、室温において乾燥状態で2日間保管した後の液膜保持時間が10秒以上であることが好ましいが、これは電子機器用部材の全ての面においてこのようになっている必要はなく、電子機器用部材に形成されたポリマー層において液膜保持時間が10秒以上であることが好ましい。 ここで、本発明における液膜保持時間とは、水に浸漬した電子機器用部材を水から引き上げ、空中に表面が垂直になるように保持した際に、電子機器用部材の表面の液膜が切れずに保持される時間である。なお「液膜が切れる」とは電子機器用部材の表面で水をはじく現象が起きる状態を指す。液膜保持時間は10秒以上が好ましく、15秒以上がより好ましく、20秒以上が特に好ましい。なお、本発明においては、液膜保持時間が10秒以上となる面を有してさえいれば、全ての面においてそのようになっている必要は必ずしもない。そして液膜保持時間を10秒以上とするためには、そのようにしたい面に水酸基を有する親水性ポリマーからなるポリマー層を形成することにより、可能である。
従来技術においては、コロナ放電処理やプラズマ処理等の表面処理直後には水濡れ性のよい電子機器用部材であっても、ある一定時間室温において乾燥状態で、例えば数時間〜数日保管した後では水濡れ性が極端に低下する傾向があり、一度低下した水濡れ性は回復しない傾向がある。
したがって、室温において乾燥状態で保管した後に水濡れ性が低下する電子機器用部材は、室温乾燥によって表面状態が変化して水濡れ性が低下するリスクがあるため好ましくなく、逆に室温において乾燥状態で保管した後においても表面の水濡れ性が低下しないものは、表面状態が変化しにくい優れた電子機器用部材と言える。
本発明の電子機器用部材が、例えばインクジェットヘッドといった電子機器用部材である場合、ノズルやインク流路内でインクがつまることなく、高い印字品質を長時間維持できる観点から、室温において乾燥状態で保管した後の電子機器用部材の表面の液膜保持時間が長いことが好ましい。
本発明においては、電子機器用部材を室温で2日間、乾燥状態で保管した後の電子機器用部材の表面の液膜保持時間を評価した。
室温で2日間保管した後の電子機器用部材の表面の液膜保持時間が10秒以上の場合、電子機器用部材の表面は十分な水濡れ性と耐久性を有することを意味する。液膜保持時間は10秒以上が好ましく、15秒以上がより好ましく、20秒以上が特に好ましい。特に、室温で静置する前と同等の液膜保持時間を示す場合、より優れた耐久性を示すため好ましい。測定方法の詳細は後述する。
本発明の電子機器用部材が、例えばカメラレンズといった電子機器用部材である場合、埃の付着や曇りを防止する観点から、電子機器用部材表面の動的接触角が低いことが好ましい。動的接触角は、55°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、40°以下が特に好ましい。動的接触角(前進時、浸漬速度:0.1mm/sec)の測定方法の詳細は後述する。
また、本発明の電子機器用部材が例えば生体内に挿入して用いられる電子機器用部材やインクジェットプリンター用部材である場合、電子機器用部材の表面が優れた易滑性を有することが好ましい。易滑性を表す指標としては、本明細書の実施例に示した方法で測定される摩擦係数が小さい方が好ましい。摩擦係数は、0.7以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.3以下が特に好ましい。また、摩擦が極端に小さいと取り出し時の取扱が難しくなる傾向があるので、摩擦係数は0.001以上が好ましく、0.002以上がより好ましい。
従来技術においては、コロナ放電処理やプラズマ処理等の表面処理直後には水濡れ性のよい電子機器用部材であっても、室温において乾燥状態で一定期間が経過すると水濡れ性の低下が認められた。さらに、易滑性を向上させるものではなかった。
したがって、表面処理直後及び室温において乾燥状態で静置した後においても表面の易滑性が低下しないものは、表面状態が変化しにくい優れた電子機器用部材と言える。
本発明においては、電子機器用部材を室温で2日間、乾燥状態(水や溶剤に浸漬したり接触させずに静置)で保管した後の電子機器用部材の表面の摩擦係数を評価した。室温で2日間静置した後の電子機器用部材の表面の摩擦係数が0.7以下の場合、電子機器用部材の表面は十分な易滑性と耐久性を有することを意味する。摩擦係数は0.7以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.3以下が特に好ましい。また、摩擦係数が極端に小さいと取り出し時の取扱が難しくなる傾向があるので、摩擦係数は0.001以上が好ましく、0.002以上がより好ましい。
特に、室温で静置する前と後で同等の摩擦係数を示す場合、より優れた耐久性を示すため好ましい。測定方法の詳細は後述する。
本発明の製造方法においては、前記加熱する工程の終了後に得られる電子機器用部材の含水率と、前記加熱する工程の開始前における基材の含水率との変化量が、10パーセンテージポイント以下であることが好ましい。ここで、含水率の変化量(パーセンテージポイント)とは、得られた電子機器用部材の含水率(質量%)と、その原料となる基材の含水率(質量%)との差のことである。
基材の含水率変化量は、例えばカメラレンズといった電子機器用部材に用いる場合、含水率が向上したことによる屈折率の歪みから引き起こされる視界不良や変形を防止する観点から、15パーセンテージポイント以下が好ましく、10パーセンテージポイント以下がより好ましく、8パーセンテージポイント以下が特に好ましい。測定方法の詳細は後述する。
また、本発明の電子機器用部材の親水性ポリマー層形成前後のサイズ変化率は、例えば生体内に挿入して用いられる電子機器用部材である場合、変形に伴う生体内の損傷を防止する観点から、8%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下が特に好ましい。また、長期間安定に室温保管できる観点から、室温において乾燥状態(水や溶剤に浸漬したり接触させずに静置)で保管する前と後で電子機器用部材が同等のサイズを示すことがより好ましい。室温乾燥前後のサイズ変化率は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい。測定方法の詳細は後述する。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。まず、分析方法および評価方法を示す。以下に示す液膜保持時間及び摩擦係数が、電子機器用部材のもつ水濡れ性及び易滑性の耐久性を表す指標である。
<加熱直後の水濡れ性(液膜保持時間)>
実施例及び比較例記載の電子機器用部材を水で軽く洗浄後、新たな水に5秒間浸漬させてから引き上げ、空中に保持した際の表面の液膜が保持される時間を目視観察し、N=3の平均値を下記基準で判定した。なお、観察した面は、ポリマー層が形成された面とした。また表においては、「室温乾燥前の液膜保持時間」と記した。
A:表面の液膜が20秒以上保持される。
B:表面の液膜が15秒以上20秒未満で切れる。
C:表面の液膜が10秒以上15秒未満で切れる。
D:表面の液膜が1秒以上10秒未満で切れる。
E:表面の液膜が瞬時に切れる(1秒未満)。
<室温2日間静置後の水濡れ性(液膜保持時間)>
実施例及び比較例記載の電子機器用部材を水で軽く洗浄後、水から取り出してワイピングクロス(日本製紙クレシア製“キムワイプ(登録商標)”)上に置き、室温(20℃〜23℃)において乾燥状態で2日間静置した。静置後、新たな水に5秒間浸漬させてから引き上げ、空中に保持した際の表面の液膜が保持される時間を目視観察し、N=3の平均値を下記基準で判定した。なお、観察した面は、ポリマー層が形成された面とした。また表においては、「室温乾燥2日後の液膜保持時間」と記した。
A:表面の液膜が20秒以上保持される。
B:表面の液膜が15秒以上20秒未満で切れる。
C:表面の液膜が10秒以上15秒未満で切れる。
D:表面の液膜が1秒以上10秒未満で切れる。
E:表面の液膜が瞬時に切れる(1秒未満)。
<基材および電子機器用部材の含水率>
基材を水に浸漬して室温で15分以上静置した。基材を水から引き上げ、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア製“キムワイプ(登録商標)”)で拭き取った後、基材の質量(Ww)を測定した。その後、真空乾燥器で基材を40℃、2時間乾燥した後、質量(Wd)を測定した。これらの質量から、下式(1)により基材の含水率を算出した。得られた値が1%未満の場合は測定限界以下と判断し、「1%未満」と表記した。N=3の平均値を含水率とした。加熱後の基材、すなわち電子機器用部材についても溶液から引き上げ、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア製“キムワイプ(登録商標)”)で拭き取った後以降は同様に含水率を算出した。
基材の含水率(%)=100×(Ww−Wd)/Ww 式(1)。
<加熱前後の基材の含水率変化量>
上記基材および電子機器用部材の含水率の測定結果から、下式(2)により、含水率の変化量を算出した。加熱前後の基材の含水率変化量(パーセンテージポイント)=電子機器用部材の含水率(質量%)−基材の含水率(質量%) 式(2)。
<サイズ>
板形状(シート形状含む)またはコンタクトレンズ形状の基材(N=3)について、縦、横、厚みを測定し、平均値をサイズとした。熱処理後の基材、すなわち電子機器用部材についても水で軽く洗浄後、同様にサイズを測定した。
<熱処理前後のサイズ変化率>
上記基材および電子機器用部材の縦、横、厚みそれぞれのサイズの測定結果から、下式(4)により算出した。N=3の平均値を加熱前後のサイズ変化率とした。
熱処理前後のサイズ変化率(%)=(熱処理後の電子機器用部材のサイズ−熱処理前の基材のサイズ)/熱処理前の基材のサイズ×100 式(4)。
<室温2日間静置後のサイズ>
実施例及び比較例記載の電子機器用部材を水で軽く洗浄後、水から取り出してワイピングクロス(日本製紙クレシア製“キムワイプ(登録商標)”)上に置き、室温(20℃〜23℃)で2日間静置した。静置後、上記<サイズ>同様にサイズを測定した。
<室温2日乾燥前後のサイズ変化率>
上記電子機器用部材の室温2日間静置前後のサイズの測定結果から、下式(5)により算出した。N=3の平均値を室温乾燥前後のサイズ変化率とした。
室温乾燥前後のサイズ変化率(%)=(2日乾燥後の電子機器用部材のサイズ−乾燥前の電子機器用部材のサイズ)/乾燥前の電子機器用部材のサイズ×100 式(5)。
<加熱直後の摩擦係数>
実施例及び比較例記載の電子機器用部材を水で軽く洗浄後、以下の条件で、水で濡らした状態の電子機器用部材表面の摩擦係数をN=3で測定し、平均値を摩擦係数とした。
装置:摩擦感テスターKES−SE(カトーテック株式会社製)
摩擦SENS:H
測定SPEED:2×1mm/sec
摩擦荷重:44g。
<室温2日間静置後の摩擦係数>
実施例及び比較例記載の電子機器用部材を水で軽く洗浄後、水から取り出してワイピングクロス(日本製紙クレシア製“キムワイプ(登録商標)”)上に置き、室温(20℃〜23℃)で2日間静置した。静置後、以下の条件で、水で濡らした状態の電子機器用部材表面の摩擦係数をN=3で測定し、平均値を摩擦係数とした。
装置:摩擦感テスターKES−SE(カトーテック株式会社製)
摩擦SENS:H
測定SPEED:2×1mm/sec
摩擦荷重:44g。
<動的接触角>
電子機器用部材または基材を水で軽く洗浄後、サンプルとして、5mm×10mm×0.1mm程度のサイズの短冊状試験片を使用し、リン酸緩衝液に対する前進時の動的接触角を濡れ性試験機WET−6200(株式会社レスカ製)によって測定した。浸漬速度は0.1mm/sec、浸漬深さは7mmとした。
<分子量測定>
親水性ポリマーの質量平均分子量は以下に示す条件で測定した。
装置:島津製作所製 Prominence GPCシステム
ポンプ:LC−20AD
オートサンプラ:SIL−20AHT
カラムオーブン:CTO−20A
検出器:RID−10A
カラム:東ソー社製GMPWXL(内径7.8mm×30cm、粒子径13μm)
溶媒:水/メタノール=1/1(0.1N硝酸リチウム添加)
流速:0.5mL/分
測定時間:30分
サンプル濃度:0.1〜0.3質量%
サンプル注入量:100μL
標準サンプル:Agilent社製ポリエチレンオキシド標準サンプル(0.1kD〜1258kD)。
<pH測定法>
pHメーターEutech pH2700(Eutech Instruments社製)を用いて溶液のpHを測定した。表において、親水性ポリマーおよび酸を含有する溶液の熱処理前pHは、各実施例、比較例記載の溶液に親水性ポリマーおよび酸を全て添加した後、室温(20〜23℃)にて30分間回転子を用い撹拌し溶液を均一とした後に測定した。また、表において、「熱処理後pH」は、熱処理を1回行った後、溶液を室温(20〜23℃)まで冷却した直後に測定したpHである。
<ポリマー層の膜厚>
電子機器用部材または基材を水で軽く洗浄後、乾燥状態の電子機器用部材の断面を、透過型電子顕微鏡を用いて観察することで行った。3ヶ所場所を変えて、各視野につき、1ヶ所の膜厚を測定し、計3ヶ所の膜厚の平均値を求めた。
装置: 透過型電子顕微鏡条件: 加速電圧 100kV
試料調製: RuO染色を用いた超薄切片法により試料調製を行った。
基材と親水性ポリマー層の判別が困難な場合、OsO染色を加えても良い。本実施例では、基材がシリコーンヒドロゲル系またはシリコーン系の場合、RuO染色を行った。超薄切片の作製には、ウルトラミクロトームを用いた。
[製造例1]
成分Aとして、式(M1)で表される両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC株式会社、Mw 30,000)(35質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート(登録商標)3F、大阪有機化学工業株式会社)(58質量部)、成分Cとして2−エチルへキシルアクリレート(東京化成工業株式会社)(7質量部)に対し、イルガキュア(登録商標)819(長瀬産業株式会社)(5000ppm)およびtert−アミルアルコール(10質量部)を混合して撹拌し、均一で透明なモノマー混合物を得た。
10cm角、厚さ3mmのガラス板2枚の間に、厚さ100μmのパラフィルムの中央部を2枚スペーサーとして挟み込んだものを準備した。このガラス板とスペーサーで形成された空隙に、前記モノマーの混合物を充填し、光照射(波長405nm(±5nm)、照度:0〜0.7mW/cm、30分間)して硬化させることにより、共重合体からなるシートを得た。得られたシートを、100質量%イソプロパノール(IPA)水溶液に60℃で2時間浸漬して残存モノマーなどの不純物を抽出した。その後、シートを室温(23℃)中で12時間乾燥させた。
Figure 2021167068
<リン酸緩衝液>
下記実施例、比較例のプロセスおよび上記した測定において使用したリン酸緩衝液の組成は、以下の通りである。なお、下の組成中、EDTA2Naは、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウムを表す。
KCl 0.2g/L
KHPO 0.2g/L
NaCl 8.0g/L
NaHPO 1.19g/L
EDTA2Na 0.5g/L。
[実施例1]
基材として、製造例1のシートを使用した。基材をアクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/9、Mw:800,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.2質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH2.6に調整した溶液(コート液)に浸漬させて、115℃30分間オートクレーブにて加熱した。得られた電子機器用部材について上記方法にて評価した結果を表1〜3に示す。
[実施例2]
基材として、製造例1のシートを使用した。基材をアクリル酸/N−ビニルピロリドン/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/1/8、Mw:600,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.19質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH3.2に調整した溶液(コート液)に浸漬させて、121℃30分間オートクレーブにて加熱した。得られた電子機器用部材について上記方法にて評価した結果を表1〜3に示す。
[実施例3]
基材として、マーカープレートSUS304 MMP350−C(パンドウィットコーポレーション社製)を使用した。基材をアクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/9、Mw:800,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.2質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH2.6に調整した溶液(コート液)に浸漬させて、110℃30分間オートクレーブにて加熱した。得られた電子機器用部材について上記方法にて評価した結果を表1〜3に示す。
[実施例4]
基材として、マーカープレートSUS304 MMP350−C(パンドウィットコーポレーション社製)を使用した。基材をアクリル酸/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/1/8、Mw:700,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.18質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH3.4に調整した溶液(コート液)に浸漬させて、121℃30分間オートクレーブにて加熱した。得られた電子機器用部材について上記方法にて評価した結果を表1〜3に示す。
[実施例5]
基材として、スライドガラス型番0303−0005(レオナ社製)を使用した。基材をアクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/9、Mw:800,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.2質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH2.6に調整した溶液(コート液)に浸漬させて、110℃30分間オートクレーブにて加熱した。得られた電子機器用部材について上記方法にて評価した結果を表1〜3に示す。
[実施例6]
基材として、スライドガラス型番0303−0005(レオナ社製)を使用した。アクリル酸/N−ビニルピロリドン/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/1/2、Mw:600,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.19質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH3.2に調整した溶液(コート液)に浸漬させて、121℃30分間オートクレーブにて加熱した。得られた電子機器用部材について上記方法にて評価した結果を表1〜3に示す。
[実施例7]
基材として、製造例1のシートを使用した。基材をアクリル酸/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/1/8、Mw:700,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.18質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH3.4に調整した溶液(コート液)に浸漬させて、121℃30分間オートクレーブにて加熱した。得られた電子機器用部材について上記方法にて評価した結果を表1〜3に示す。
[実施例8]
基材として、マーカープレートSUS304 MMP350−C(パンドウィットコーポレーション社製)を使用した。基材をアクリル酸/N−ビニルピロリドン/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/1/8、Mw:600,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.19質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH3.2に調整した溶液(コート液)に浸漬させて、121℃30分間オートクレーブにて加熱した。得られた電子機器用部材について上記方法にて評価した結果を表1〜3に示す。
[実施例9]
基材として、マーカープレートSUS304 MMP350−C(パンドウィットコーポレーション社製)を使用した。基材をアクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/1/2、Mw:380,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.60質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH3.4に調整した溶液(コート液)に浸漬させて、90℃30分間オートクレーブにて加熱した。得られた電子機器用部材について上記方法にて評価した結果を表1〜3に示す。
Figure 2021167068
Figure 2021167068
Figure 2021167068
[比較例1]
基材として、製造例1のシートを使用した。基材をポリアクリル酸“Sokalan(登録商標) PA110S”(Mw:250,000、BASF社製)をリン酸緩衝液中に0.2質量%含有した水溶液に調整した溶液(コート液、初期pH6.9)に浸漬させて40℃30分間定温乾燥器にて加熱した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
[比較例2]
基材として、製造例1のシートを使用した。基材を0.1mol/LのNaOH水溶液に浸漬させ、室温(20℃〜23℃)で15分間放置した。その後、リン酸緩衝液で軽く洗浄し、アクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/1/2、Mw:430,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.6質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH3.4に調整した溶液(コート液)に浸漬させて30℃30分間定温乾燥器にて加熱した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
[比較例3]
基材として、マーカープレートSUS304 MMP350−C(パンドウィットコーポレーション社製)を使用した。基材を0.1mol/LのNaOH水溶液に浸漬させ、30℃15分間定温乾燥器にて加熱した。加熱後、リン酸緩衝液で軽く洗浄し、アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/9、Mw:800,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.2質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH3.2に調整した溶液(コート液)に浸漬させて30℃30分間定温乾燥器にて加熱した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
[比較例4]
基材として、マーカープレートSUS304 MMP350−C(パンドウィットコーポレーション社製)を使用した。基材を0.1mol/LのNaOH水溶液に浸漬させ、30℃15分間定温乾燥器にて加熱した。得られた成型体をリン酸緩衝液で軽く洗浄した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
[比較例5]
基材として、シリコーンを主成分とする市販シリコーンヒドロゲルレンズ“MyDay(登録商標)”(クーパービジョン社製、stenfilcon A)を使用した。基材を0.1mol/LのNaOH水溶液に浸漬させ、室温(23℃)で15分間放置した。その後、リン酸緩衝液で軽く洗浄し、アクリル酸/N−ビニルピロリドン共重合体(共重合におけるモル比1/9、Mw:500,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.2質量%含有した水溶液をクエン酸によりpH4.0に調整した溶液(コート液)に浸漬させて40℃30分間定温乾燥器にて加熱した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
[比較例6]
基材として、シリコーンを主成分とする市販シリコーンヒドロゲルレンズ“MyDay(登録商標)”(クーパービジョン社製、stenfilcon A)を使用した。基材をポリジメチルアクリルアミド(Mw:360,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.1質量%含有した水溶液(コート液、初期pH7.0)に浸漬させて40℃30分間定温乾燥器にて加熱した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
[比較例7]
基材として、スライドガラス型番0303−0005(レオナ社製)を使用した。基材をアクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体(共重合におけるモル比1/2、Mw:400,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.1質量%含有した水溶液(コート液、初期pH6.8)に浸漬させて30℃30分間定温乾燥器にて加熱した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
[比較例8]
基材として、スライドガラス型番0303−0005(レオナ社製)を使用した。基材をポリアクリル酸“Sokalan(登録商標) PA110S”(Mw:250,000、BASF社製)をリン酸緩衝液中に0.1質量%含有した水溶液(コート液、初期pH6.8)に浸漬させて30℃30分間定温乾燥器にて加熱した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
[比較例9]
基材として、製造例1を使用した。基材を0.4mol/LのNaOH水溶液に浸漬させ、90℃15分間オートクレーブにて加熱した。その後、リン酸緩衝液で軽く洗浄した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
[比較例10]
基材として、製造例1のシートを使用した。基材を0.1mol/LのNaOH水溶液に浸漬させ、室温(20℃〜23℃)で15分間放置した。その後、リン酸緩衝液で軽く洗浄し、アクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体(共重合におけるモル比1/1/2、Mw:430,000、大阪有機化学工業株式会社製)をリン酸緩衝液中に0.6質量%含有した水溶液をクエン酸により初期pH3.4に調整した溶液(コート液)に浸漬させて30℃30分間定温乾燥器にて加熱した。得られた成型体(親水性ポリマー層は確認されず)について上記方法にて評価した結果を表4〜6に示す。
Figure 2021167068
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Claims (11)

  1. 基材、及び、水酸基を含む親水性ポリマーからなるポリマー層を含み、前記基材の表面の少なくとも一部に、前記ポリマー層が形成された、電子機器用部材。
  2. 前記親水性ポリマーがさらにアミド基を含む、請求項1に記載の電子機器用部材。
  3. 室温において乾燥状態で2日間保管した後の液膜保持時間が10秒以上である、請求項1または2に記載の電子機器用部材。
  4. 乾燥状態において、走査透過型電子顕微鏡観察によって測定された、前記ポリマー層の厚さが、1nm以上3000nm未満である、請求項1〜3に記載の電子機器用部材。
  5. 前記基材が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリアセタール、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ナイロン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、エチレン−プロピレンゴム、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、セラミック材料、アルミ、及びジルコニアからなる群より選択される1種類以上を含むものである、請求項1〜4のいずれかに記載の電子機器用部材。
  6. 前記基材が、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、及び高断熱Low−E複層ガラスからなる群より選択される1種類以上を含むものである、請求項1〜4のいずれかに記載の電子機器用部材。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の電子機器用部材からなる、インクジェットプリンター用部材。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の電子機器用部材からなる、カメラレンズ。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の電子機器用部材を製造する方法であって、
    前記基材を、2.0以上6.0以下の初期pHを有する溶液中に配置して、前記溶液を加熱する工程を含み、前記溶液が、前記親水性ポリマー及び酸を含むものである、電子機器用部材の製造方法。
  10. 前記酸が、酢酸、クエン酸、ギ酸、アスコルビン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、及びリンゴ酸からなる群より選ばれる1種類以上を含む有機酸である、請求項9に記載の電子機器用部材の製造方法。
  11. 前記溶液を加熱する工程が、オートクレーブを用いて行われる、請求項9または10に記載の電子機器用部材の製造方法。
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