JP2021152098A - 導電性ポリエチレン樹脂組成物並びにそれを用いた成形品及び積層体 - Google Patents

導電性ポリエチレン樹脂組成物並びにそれを用いた成形品及び積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有する導電性ポリエチレン樹脂組成物と積層体を提供する。【解決手段】グラフト変性によって、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマーを、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体に導入した極性基含有ポリエチレン樹脂(A)と、ポリエチレン樹脂(B)と、からなる樹脂成分の合計100質量部に対し、BET比表面積が1000〜1600m2/gの範囲であるカーボンブラックを9.5〜12.0質量部含有してなる導電性ポリエチレン樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、高導電接着性ポリエチレン樹脂組成物並びにそれを用いた成形品及び積層体に関する。
ポリエチレン樹脂は機械強度が高く、耐薬品性や耐腐食性などに優れ、安価で、かつ成形性も良好であり、さらに環境問題や資源再利用性にも適合している為、様々な生活資材や産業用資材として広く利用されている。例えば、射出成形、押出成形、吹込成形などによって成形された、レジ袋や食品の包装材、農業用途のフィルム、パイプやホースなどの管状成形品、シャンプーや液体洗剤、食用油の容器等、用途は多岐にわたる。
しかし、ポリエチレン樹脂は分子構造中に極性基を持たないが故に帯電しやすく、ポリエチレン樹脂製の成形品が擦られたり、有機溶剤等の流動にさらされたり、低湿度環境下に置かれたりすることによって表面帯電し、ほこりや煤を寄せ付けて製品表面を汚すことがある。
ポリエチレン樹脂への導電性の付与を目的として、これまでに導電性カーボンフィラー等を添加する方法が提案されているものの、ポリエチレン樹脂に導電性フィラーを添加すると、機械物性や流動性の低下を伴うという問題点がある。
ところで、ポリエチレン樹脂は極性基を持たない為、極性基を有する合成樹脂、金属、木材などの異種材料と積層構造体を作成するに際しては、お互いの接着性が極めて弱いか、接着しない。
ポリエチレン樹脂の欠点である、導電性及び異種材料との接着性を改良させ、かつ、ポリエチレン樹脂が元々有している優れた物性を維持したポリエチレン樹脂材料が望まれている。
導電性と異種材料との接着性を両立し、かつ、ポリエチレン樹脂の有する優れた物性をも兼ね備えたポリオレフィン樹脂として、特許文献1には、特定の物性範囲を持つ極性基含有ポリエチレン樹脂と、極性基を持たないポリエチレン樹脂、特定のBET比表面積を有する導電性フィラーとの樹脂組成物が提案されている。
特開2015−180714号公報
ポリエチレン樹脂材料として、異種材料との接着性を有し、かつ、導電性、燃料油に対する低溶出性(耐燃料油性)、耐久性、及び成形性のバランスに優れる材料が望まれている。
特許文献1に記載の樹脂組成物は、特に接着性に優れ、かつ、導電性、及び、耐久性にも優れるが、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに関しては必ずしも十分ではなく、改良の余地がある。
本発明は、前述した従来の各問題点を鑑み、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有する導電性ポリエチレン樹脂組成物と、それを用いた成形品、及び積層体の提案を目的とするものである。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の物性範囲を持つ極性基含有ポリエチレン樹脂と、極性基を持たないポリエチレン樹脂、特定のBET比表面積を有するカーボンブラックとの樹脂組成物であれば、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有する導電性ポリエチレン樹脂組成物を得られる事を見い出した。
さらには、特定の物性範囲を持つ極性基含有ポリエチレン樹脂と、メタロセン系触媒を用いて重合したポリエチレン樹脂、必要に応じて加えられるその他のポリエチレン樹脂、及び特定のBET比表面積を有するカーボンブラックから成る樹脂組成物であれば、より導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有する導電性ポリエチレン樹脂組成物を得られる事を見い出し、本発明の創作に至った。
即ち、本発明によれば、グラフト変性によって、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマーを、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体に導入した極性基含有ポリエチレン樹脂(A)と、ポリエチレン樹脂(B)と、からなる樹脂成分の合計100質量部に対し、BET比表面積が1000〜1600m/gの範囲であるカーボンブラックを9.5〜12.0質量部含有してなる導電性ポリエチレン樹脂組成物であって、
樹脂成分の極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の組成比率が、それぞれ、
極性基含有ポリエチレン樹脂(A):3質量%〜60質量%
ポリエチレン樹脂(B):97質量%〜40質量%
の範囲であり、
極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が下記(A1)及び(A2)の要件を満足し、
ポリエチレン樹脂(B)が、下記(B1)及び(B2)の要件を満足し、
下記特性(1)〜(4)の要件を満足する導電性ポリエチレン樹脂組成物が提供される。
(A1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
(A2)密度:0.915〜0.955g/cm
(B1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
(B2)密度:0.915〜0.955g/cm
特性(1)温度80℃、軽油168時間浸漬後の抽出量:6.5mg/g以下
特性(2)JIS K6774:1995に準拠して測定される、温度80℃、水中、6MPaにおけるFNCT:100時間以上
特性(3)表面抵抗率:0.1〜500.0Ω/□
特性(4)温度190℃、荷重21.6kgで測定されるハイロードメルトフローレート(HL−MFR):2.0〜30.0g/10min
また、本発明によれば、前記ポリエチレン樹脂(B)がメタロセン系触媒を用いて重合されたポリエチレン樹脂(C)及びその他のポリエチレン樹脂(D)からなり、
極性基含有ポリエチレン樹脂(A)、メタロセン系触媒を用いて重合されたポリエチレン樹脂(C)及びその他のポリエチレン樹脂(D)の組成比率がそれぞれ、
極性基含有ポリエチレン樹脂(A):3質量%〜60質量%
メタロセン系触媒を用いて重合されたポリエチレン樹脂(C):20質量%〜40質量%
その他のポリエチレン樹脂(D):20質量%〜77質量%
の範囲であってもよい。
また、本発明によれば、前記メタロセン系触媒で製造されたポリエチレン樹脂(C)が下記(C1)〜(C4)の要件を満足してもよい。
(C1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
(C2)密度:0.915〜0.955g/cm
(C3)分子量分布パラメーター(Mw/Mn):1.0〜4.0
(C4)昇温溶出分別(TREF)により測定される60℃までの累積溶出量が20.0質量%以下
また、本発明によれば、その他のポリエチレン樹脂(D)が下記(D1)〜(D4)の要件を満足してもよい。
(D1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
(D2)密度:0.915〜0.955g/cm
(D3)分子量分布パラメーター(Mw/Mn):4.0を超え、7.0以下
(D4)昇温溶出分別(TREF)により測定される60℃までの累積溶出量が20.0質量%以下
また、本発明によれば、前記導電性ポリエチレン樹脂組成物を含む成形品が提供される。
また、本発明によれば、前記導電性ポリエチレン樹脂組成物の層と、被着体層とを少なくとも含む積層体が提供される。
また、本発明によれば、前記成形品が導電性である導電性成形品が提供される。
また、本発明によれば、前記積層体が導電性である導電性積層体が提供される。
本発明の導電性ポリエチレン樹脂組成物は、特定の物性範囲を持つ極性基含有ポリエチレン樹脂と、極性基を持たないポリエチレン樹脂、さらに特定のBET比表面積を有するカーボンブラックから成り、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有する。また、当該ポリエチレン樹脂を少なくとも一つの層とする有用な積層体の製造を可能にした。
さらに、本発明の導電性ポリエチレン樹脂組成物は、特定の物性範囲を持つ極性基含有ポリエチレン樹脂と、メタロセン系触媒を用いて重合されたポリエチレン樹脂、特定のBET比表面積を有するカーボンブラック、必要に応じて極性基を持たないその他のポリエチレン樹脂から成り、より導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有する。なお、かかる顕著な効果は、後述する本発明の実施例と比較例との各データの対照により実証されている。
本発明によれば、グラフト変性によって、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマーを、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体に導入した極性基含有ポリエチレン樹脂(A)と、ポリエチレン樹脂(B)と、からなる樹脂成分の合計100質量部に対し、BET比表面積が1000〜1600m/gの範囲であるカーボンブラックを9.5〜12.0質量部含有してなる導電性ポリエチレン樹脂組成物であって、
樹脂成分の極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の組成比率が、それぞれ、
極性基含有ポリエチレン樹脂(A):3質量%〜60質量%
ポリエチレン樹脂(B):97質量%〜40質量%
の範囲であり、
極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が下記(A1)及び(A2)の要件を満足し、
ポリエチレン樹脂(B)が、下記(B1)及び(B2)の要件を満足し、
下記特性(1)〜(4)の要件を満足する導電性ポリエチレン樹脂組成物が提供される。
(A1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
(A2)密度:0.915〜0.955g/cm
(B1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
(B2)密度:0.915〜0.955g/cm
特性(1)温度80℃、軽油168時間浸漬後の抽出量:6.5mg/g以下
特性(2)JIS K6774:1995に準拠して測定される、温度80℃、水中、6MPaにおけるFNCT:100時間以上
特性(3)表面抵抗率:0.1〜500.0Ω/□
特性(4)温度190℃、荷重21.6kgで測定されるハイロードメルトフローレート(HL−MFR):2.0〜30.0g/10min
以下、本発明を、項目毎に、詳細に説明する。
なお、本発明において、ポリエチレン樹脂とは、エチレン単独重合体及びエチレンと後述のオレフィンとの共重合体の総称をいい、エチレン系重合体とも言い換えられる。
また、本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
〔1〕極性基含有ポリエチレン樹脂(A)
(1)極性基含有ポリエチレン樹脂
本発明に係る極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とは、分子鎖中に極性基を含有したポリエチレン樹脂であって、グラフト変性によって、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマーを、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体に導入したものである。
(2)極性基
本発明に係る極性基含有ポリエチレン樹脂(A)に含有される極性基は、公知の極性基を制限無く適応できるが、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基等が好ましい例として挙げられる。
(3)グラフト変性
ポリエチレン樹脂に極性基を導入する方法の一つとして、グラフト変性法が挙げられる。グラフト変性の方法は限定されないが、例えば、押出機等によって溶融状態としたポリエチレン樹脂に、反応開始剤を用いて極性基含有モノマーを反応させる溶融法、ポリエチレン樹脂を溶媒に溶解し、反応開始剤を用いて極性基含有モノマーを反応させる溶液法等が知られており、いずれも好適に用いる事ができるが、生産コストや環境負荷の面から溶融法がより好適に選択される。
なお、グラフト変性によって極性基含有モノマーをポリエチレン分子鎖中に導入させる場合、原料としてポリエチレン樹脂を用いる事となる。原料のポリエチレン樹脂は後述するポリエチレン樹脂(B)と同一のものを使用できるが、MFR及び密度の範囲はポリエチレン樹脂(B)と異なっていても構わない。
(3−1)溶融法
グラフト変性方法のうち、溶融法による極性基含有ポリエチレン樹脂の製造方法の一例を以下に示す。
グラフト変性を実施する溶融混練装置は限定されないが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、往復式混練機(BUSS KNEADER)等が一般的に用いられ、その中でも単軸押出機、二軸押出機が生産性の面からより好適に用いられる。
(3−2)反応開始剤
本発明に係るグラフト変性に用いられる反応開始剤としては、加熱等によって分解しラジカルを発生させるラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤としては、有機過酸化物、ジヒドロ芳香族化合物、ジクミル化合物等が挙げられる。該有機過酸化物としては、例えば、ヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジアルキル(アリル)パーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、ジプロピオニルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パーオキシ琥珀酸、パーオキシケタール、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が好適に用いられる。
ジヒドロ芳香族化合物としては、ジヒドロキノリン又はその誘導体、ジヒドロフラン、1,2−ジヒドロベンゼン、1,2−ジヒドロナフタレン、9,10−ジヒドロフェナントレン等が挙げられる。
ジクミル化合物としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジ(p−メチルフェニル)ブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジ(p−ブロモフェニル)ブタン等が例示され、特に2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタンが好ましく用いられる。
(3−3)極性基含有モノマー
グラフト変性に用いられる極性基含有モノマーとしては、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマー等が例示され、その中でも酸無水物基含有モノマーが好適に用いられる。極性基含有モノマーは1種類でもよく、2種類以上を用いても良い。
カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマーとしては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和ジカルボン酸又はこれらの無水物、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、酢酸ビニル、ペンテン酸などの不飽和モノカルボン酸が挙げられ、無水マレイン酸、2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
(3−4)グラフト変性の処理温度
グラフト変性の処理温度は、ポリエチレン樹脂の劣化、極性基含有モノマーの分解、使用する過酸化物の分解温度などを考慮して適宜選択されるが、前記の溶融混練法を例に挙げると、通常190〜350℃であり、とりわけ200〜300℃が好適である。
上記に例示した溶融混練法によって、ポリエチレン樹脂に極性基含有モノマーをグラフト変性させる場合、溶融混練時の樹脂温度を250℃以上とすることで、モノマーの高付加率を実現する事ができる。また、樹脂温度が310℃を超えるとポリエチレン自体の劣化が加速されるため、ゲルや樹脂焼けなどが激増し、品質を低下させる。
また、このような高温で反応を行なうため、押出機や反応器などの内部への空気の混入はできるだけ抑える必要があり、また溶融混練では、押出機内などでの樹脂の長時間滞留も避けなければならない。このため、原料樹脂投入口付近での窒素フィードを行なうことは、極めて好ましい。
本発明の極性基含有ポリエチレン樹脂(A)をグラフト変性によって製造するにあたり、一般に使用されている酸化防止剤などの添加剤を添加することは好ましくない。例えば、フェノール類などのポリオレフィン用酸化防止剤の添加は、酸化防止剤と反応開始剤が拮抗し、未反応の極性基含有モノマーを増加させる可能性がある。
(4)極性基含有ポリエチレン樹脂(A)のMFR(A1)
本発明に係る極性基含有ポリエチレン樹脂(A)の、測定温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.05〜5.00g/10min、好ましくは0.20〜5.00g/10minの範囲であると、異種材料との接着性、導電性ポリエチレン樹脂組成物の物性バランスの観点から好適である。0.05g/10minを下回ると、流動性が非常に低くなり、押出成形や射出成形といった成形が困難なものとなる。また、5.00g/10minを超えると、耐燃料油性の低下へつながり、特に燃料への溶出等が発生する可能性がある。また、耐衝撃性や耐クリープ性が低下する他、異種材料との接着性に対しても悪影響を及ぼす。
(5)極性基含有ポリエチレン樹脂(A)の密度(A2)
本発明に係る極性基含有ポリエチレン樹脂(A)の密度は、0.915〜0.955g/cm、好ましくは0.915〜0.950g/cmの範囲である。密度が0.915g/cmを下回ると、耐燃料油性の低下へつながり、特に燃料への溶出等が発生する可能性がある。また、剛性及び接着性の低下につながる。0.955g/cmを超えると耐衝撃性や耐クリープ性が低下する。
(6)極性基含有ポリエチレン樹脂(A)の極性基含有量(A3)
極性基含有ポリエチレン樹脂(A)に含まれる極性基の導入量は、一般的には0.001〜10.000質量%の範囲、より好ましくは0.010〜5.000質量%の範囲、0.020〜3.000質量%の範囲であるとさらに好適である。極性基含有ポリエチレン樹脂(A)に含まれる極性基の導入量が0.001質量%より低いと異種材料との接着性が十分ではなく、10.000質量%を超えると、ポリエチレン樹脂との相溶性が低下するばかりか、機械物性も低下する。
〔2〕ポリエチレン樹脂(B)
(1)ポリエチレン樹脂(B)
本発明に係るポリエチレン樹脂(B)は、エチレン単独重合体、又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体である。ポリエチレン樹脂(B)は1種類であってもよいが、2種類以上を使用しても良い。
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体
本発明に係るエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体の重合に供される炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセンなどを挙げることができ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンがより好ましい。エチレンとの共重合に供される炭素数3〜20のα−オレフィンは1種類でもよく、2種類以上を用いても良い。
(3)ポリエチレン樹脂(B)の製造方法
本発明に係るポリエチレン樹脂(B)の製造方法は特に限定されないが、例えば、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用い高中低圧法及びその他の公知の方法を例示する事ができる。ポリエチレン樹脂(B)の製造方法としては、例えば、日本国特公昭55−14084号公報、日本国特公昭58−1708号公報、日本国特開平08−301933号公報、日本国特開平09−286820号公報、日本国特開平11−228635号公報、日本国特開2003−064187号公報、日本国特開2000−109521号公報、日本国特表2003−519496号公報、日本国特表2003−504442号公報、日本国特表2003−531233号、日本国特開平8−325333号公報、日本国特開平9−031263号公報、日本国特開平9−087440号公報、日本国特開2006−265387号公報、日本国特開2006−265388号公報、日本国特開2006−282927号公報、日本国特表2001−525457号公報、日本国特表2004−531629号公報、日本国特開2005−120385号公報、日本国特開昭58−19309号公報、日本国特開昭59−95292号公報、日本国特開昭60−35005号公報、日本国特開昭60−35006号公報、日本国特開昭60−35007号公報、日本国特開昭60−35008号公報、日本国特開昭60−35009号公報、日本国特開昭61−130314号公報、日本国特開平3−163088号公報の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420,436号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、及び国際公開第91/04257号等、に記載された各種の製造方法によって製造する事が可能である。
(4)ポリエチレン樹脂(B)のMFR(B1)
本発明に係るポリエチレン樹脂(B)の、測定温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.05〜5.00g/10min、好ましくは2.00〜5.00g/10minの範囲が適当である。MFRが0.05g/10minを下回る場合、成形時に流動性が不足する可能性があり、成形安定性が損なわれる恐れがある。5.00g/10minを超える場合、耐燃料油性の低下へつながり、特に燃料への溶出等が発生する可能性がある。また、耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となる。
(5)ポリエチレン樹脂(B)の密度(B2)
本発明に係るポリエチレン樹脂(B)の密度は、0.915〜0.955g/cm、好ましくは0.915〜0.950g/cmの範囲である。密度が0.915g/cmを下回ると、耐燃料油性の低下へつながり、特に燃料への溶出等が発生する可能性がある。また、剛性及び接着性の低下につながる。0.955g/cmを超えると耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となる。
〔3〕ポリエチレン樹脂(C)
(1)ポリエチレン樹脂(C)
本発明に係るポリエチレン樹脂(C)は、メタロセン系触媒の存在下、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体である。導電性ポリエチレン樹脂組成物の耐クリープ性を向上させる為にはポリエチレン樹脂(C)の配合量を高める事が有用である。ポリエチレン樹脂(C)は1種類であってもよいが、2種類以上を使用しても良い。
(2)ポリエチレン樹脂(C)の重合に供されるα−オレフィン
本発明に係るポリエチレン樹脂(C)の重合に供されるα−オレフィンは、炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましく、より好ましくはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセンなどを挙げることができ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンがさらに好ましい。エチレンとの共重合に供される炭素数3〜20のα−オレフィンは1種類でもよく、2種類以上を用いても良い。
(3)ポリエチレン樹脂(C)の製造方法
本発明に係るポリエチレン樹脂(C)の製造はメタロセン系触媒を用いた高中低圧法及びその他の公知の方法によって実施することができる。本発明に係るメタロセン系触媒とは、ポリオレフィンの製造が可能なシングルサイト触媒の事を示し、公知のポリオレフィンの製造が可能なシングルサイト触媒であれば限定されず使用する事が出来る。本発明に係るポリエチレン樹脂(C)の製造方法としては、例えば、日本国特開平8−325333号公報、日本国特開平9−031263号公報、日本国特開平9−087440号公報にはシングルサイト系触媒化合物の混合系からなる固体触媒と助触媒を用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体が開示されている。また日本国特開2006−265387号公報、日本国特開2006−265388号公報、日本国特開2006−282927号公報には、単一反応器で、複数種のシングルサイト系触媒を用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体が開示されている。また、別の例示として、日本国特表2001−525457号公報には、ハフニウムメタロセン型触媒を用いて得られた双峰型のエチレン−α−オレフィン共重合体が示され、日本国特表2004−531629号公報、日本国特開2005−120385号公報においてもシングルサイト触媒を用いたエチレン−α−オレフィン共重合体が示されている。別のシングルサイト触媒による共重合体製造例として、日本国特開昭58−19309号公報、日本国特開昭59−95292号公報、日本国特開昭60−35005号公報、日本国特開昭60−35006号公報、日本国特開昭60−35007号公報、日本国特開昭60−35008号公報、日本国特開昭60−35009号公報、日本国特開昭61−130314号公報、日本国特開平3−163088号公報、日本国特開2010−150246号公報、日本国特開2010−202647号公報、日本国特開2009−132898号公報、日本国特開2010−260913号公報、日本国特許第4524335号公報の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420,436号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、及び国際公開第91/04257号等に記載の方法を適宜用いても良い。
(4)ポリエチレン樹脂(C)のMFR(C1)
本発明に係るポリエチレン樹脂(C)の、測定温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.05〜5.00g/10min、好ましくは2.00〜4.00g/10min、より好ましくは2.00〜3.50g/10minの範囲が適当である。MFRが0.05g/10minを下回る場合、成形時に流動性が不足する可能性があり、成形安定性が損なわれる恐れがある。5.00g/10minを超える場合、耐燃料油性の低下へつながり、特に燃料への溶出等が発生する可能性がある。また、耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となる。
(5)ポリエチレン樹脂(C)の密度(C2)
本発明に係るポリエチレン樹脂(C)の密度は、0.915〜0.955g/cm、好ましくは0.915〜0.950g/cm、より好ましくは0.915〜0.935g/cmの範囲である。密度が0.915g/cmを下回ると、耐燃料油性の低下へつながり、特に燃料への溶出等が発生する可能性がある。また、剛性及び接着性の低下につながる。0.955g/cmを超えると耐クリープ性能が不十分となる。
(6)ポリエチレン樹脂(C)の分子量分布パラメーター(Mw/Mn)(C3)
本発明に係るポリエチレン樹脂(C)の分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、1.0〜4.0、好ましくは1.2〜3.8、より好ましくは1.4〜3.6の範囲である。Mw/Mnが1.0未満では各成形方法における加工性が十分でなく、4.0を超えると耐衝撃性や耐クリープ性能が劣るものとなる。
(7)ポリエチレン樹脂(C)の昇温溶出分別(TREF)により測定される60℃までの累積溶出量(C4)
本発明に係るポリエチレン樹脂(C)の昇温溶出分別(TREF)により測定される60℃までの累積溶出量は、好ましくは20.0質量%以下である。累積溶出量が20.0質量%を超えると剛性や耐薬品性、耐燃料油性の低下につながる。
〔4〕その他のポリエチレン樹脂(D)
(1)ポリエチレン樹脂(D)
本発明に係るポリエチレン樹脂(D)は、エチレン単独重合体、又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られるエチレン‐α‐オレフィン共重合体である。ポリエチレン樹脂(D)は1種類であってもよいが、2種類以上を使用しても良い。
前述のシングルサイト触媒の存在下に重合されるポリエチレン樹脂(C)は、その他の重合法、例えば、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系触媒、又はフィリップス型触媒を用いて高中低圧で重合する方法等で重合されるポリエチレン樹脂と比較して、耐衝撃性や耐クリープ性能が優れるものの、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスが悪くなりさらに製造コストが高くなる傾向がある。本発明の導電性ポリエチレン樹脂組成物の趣旨である、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有する範囲であれば、必要に応じて導電性ポリエチレン樹脂組成物にその他のポリエチレン(D)を適当量配合しても良い。
(2)ポリエチレン樹脂(D)の重合に供されるα−オレフィン
本発明に係るポリエチレン樹脂(D)の重合に供される炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセンなどを挙げることができ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンがより好ましい。エチレンとの共重合に供される炭素数3〜20のα−オレフィンは1種類でもよく、2種類以上を用いても良い。
(3)ポリエチレン樹脂(D)の製造方法
本発明に係るポリエチレン樹脂(D)の製造方法は特に限定されないが、例えば、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型等の触媒を用い高中低圧法及びその他の公知の方法を例示する事ができる。ポリエチレン樹脂(D)の製造方法としては、例えば、日本国特公昭55−14084号公報、日本国特公昭58−1708号公報、日本国特開平08−301933号公報、日本国特開平09−286820号公報、日本国特開平11−228635号公報、日本国特開2003−064187号公報、日本国特開2000−109521号公報、日本国特表2003−519496号公報、日本国特表2003−504442号公報、日本国特表2003−531233号、日本国特開平8−325333号公報、日本国特開平9−031263号公報、日本国特開平9−087440号公報、日本国特開2006−265387号公報、日本国特開2006−265388号公報、日本国特開2006−282927号公報、日本国特表2001−525457号公報、日本国特表2004−531629号公報、日本国特開2005−120385号公報、日本国特開昭58−19309号公報、日本国特開昭59−95292号公報、日本国特開昭60−35005号公報、日本国特開昭60−35006号公報、日本国特開昭60−35007号公報、日本国特開昭60−35008号公報、日本国特開昭60−35009号公報、日本国特開昭61−130314号公報、日本国特開平3−163088号公報の各公報等、に記載された各種の製造方法によって製造する事が可能である。
(4)ポリエチレン樹脂(D)のMFR(D1)
本発明に係るポリエチレン樹脂(D)の、測定温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.05〜5.00g/10min、好ましくは1.10〜5.00g/10min、より好ましくは1.10〜1.60g/10minの範囲が適当である。MFRが0.05g/10minを下回る場合、成形時に流動性が不足する可能性があり、成形安定性が損なわれる恐れがある。5.00g/10minを超える場合、耐燃料油性の低下へつながり、特に燃料への溶出等が発生する可能性がある。また、耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となる。
(5)ポリエチレン樹脂(D)の密度(D2)
本発明に係るポリエチレン樹脂(D)の密度は、0.915〜0.955g/cm、好ましくは0.915〜0.950g/cm、より好ましくは0.915〜0.945g/cm、特に好ましくは0.928〜0.935g/cmの範囲である。密度が0.915g/cmを下回ると、耐燃料油性の低下へつながり、特に燃料への溶出等が発生する可能性がある。また、剛性及び接着性の低下につながる。0.955g/cmを超えると耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となる。
(6)ポリエチレン樹脂(D)の分子量分布パラメーター(Mw/Mn)(D3)
本発明に係るポリエチレン樹脂(D)の分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、4.0を超え、7.0以下、好ましくは4.2〜7.0、より好ましくは4.5〜5.1の範囲である。Mw/Mnが4.0以下では各成形方法における加工性が十分でなく、7.0を超えると耐衝撃性や耐クリープ性能が劣るものとなる。
(7)ポリエチレン樹脂(D)の昇温溶出分別(TREF)により測定される60℃までの累積溶出量(D4)
本発明に係るポリエチレン樹脂(D)の昇温溶出分別(TREF)により測定される60℃までの累積溶出量は、好ましくは20.0質量%以下である。累積溶出量が20.0質量%を超えると剛性や耐薬品性、耐燃料油性の低下につながる。
(8)ポリエチレン樹脂(D)の分子量(D5)
本発明に係るポリエチレン樹脂(D)の分子量は、Mnが好ましくは1.5×10以上である。Mnが1.5×10未満であると耐薬品性、耐燃料油性の低下につながる。
〔5〕カーボンブラック(E)
(1)カーボンブラック(E)
本発明に係るカーボンブラック(E)としては、その原料、製造法からアセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラック、等が挙げられ、その中でも導電性を付与する事を目的とした、アセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック、スーパーコンダクティブファーネスブラック、コンダクティブチャンネルブラック、1500℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラック又はチャンネルブラック等が好ましい。これらのカーボンブラックは単独での使用の他、2種以上を併用することもできる。
(2)カーボンブラック(E)の比表面積
本発明に係るカーボンブラック(E)の比表面積は、1000〜1600m/g、好ましくは1100〜1500m/g、より好ましくは1200〜1400m/g、特に好ましくは1250〜1300m/gの範囲である。カーボンブラックは、細孔が多いなどの理由によって比表面積が大きくなり、比表面積が大きいほど導電化効率が良くなる。そして、比表面積が大きいほど少量の添加で導電性を付与する事が可能になる。比表面積が1000m/gより低い場合、十分な導電性を付与するためには多量のカーボンブラックを添加する必要があり、流動性、耐久性、耐衝撃性や引張破壊伸びが低下してしまう。また、比表面積が1600m/gを超えた場合、カーボンブラックのかさ密度が低くなりすぎ、樹脂組成物製造におけるカーボンブラックの取り扱い易さや生産効率を低下させる事につながり、結果として生産コストを増大させるものとなる。本発明における比表面積はBET法によって測定されるBET比表面積であり、液体窒素吸着法(ASTM D3037)に準拠して測定される。
本発明に係るカーボンブラック(E)はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。また、優れた表面平滑性を得る観点から、本発明で用いられるカーボンブラックは、粉状、粒状、板状、鱗片状が好ましい。
〔6〕導電性ポリエチレン樹脂組成物
本発明の導電性ポリエチレン樹脂組成物は、導電性ポリエチレン樹脂組成物自身が帯電し難く、かつ、導電性ポリエチレン樹脂組成物に接触した他の帯電性物質に帯電した電荷を、導電性ポリエチレン樹脂組成物を介して除電する事が出来る。
より具体的には、導電性ポリエチレン樹脂組成物が導電性を有しており、他の帯電した帯電性物質が導電性ポリエチレン樹脂組成物に触れる事によって、帯電していた電荷が導電性ポリエチレン側に移行し、さらに、導電性ポリエチレン樹脂が他の導体に触れたり接地されたりすることによって電荷を導電性ポリエチレン樹脂組成物以外に逃がす事ができる。
導電性ポリエチレン樹脂組成物は表面抵抗率が特定の値である必要があり、その表面抵抗率が0.1〜500.0Ω/□、好ましくは1.0〜100.0Ω/□の範囲であると、燃料等により樹脂が膨潤した時でも帯電した電荷を導電性ポリエチレン樹脂組成物以外に逃がす事ができる。
(1)導電性ポリエチレン樹脂組成物中のカーボンブラック(E)の含有割合
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂は、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)からなる樹脂成分の合計100質量部に対し、カーボンブラック(E)の含有割合が9.5〜12.0質量部、好ましくは10.5〜12.0質量部の範囲で含まれることを特徴とする。カーボンブラック(E)の含有割合が9.5質量部を下回ると導電性が発現せず、12.0質量部を超えると流動性、耐久性、耐衝撃性や引張破壊伸びが低下する他、生産コストの増大にもつながる。
(2)導電性ポリエチレン樹脂組成物中の樹脂成分の組成比率
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物中の樹脂成分中における極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の配合割合は、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が3〜60質量%、ポリエチレン樹脂(B)が97〜40質量%であり、さらに好ましくは、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が10〜20質量%、ポリエチレン樹脂(B)が90〜80質量%であり、より好ましくは極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が10質量%を超え20質量%以下、ポリエチレン樹脂(B)が90質量%未満80質量%以上である。極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が3質量%より少ないと異種材料との接着性が十分ではない。また、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が60質量%を超えると、耐衝撃性や流動性、引張物性といった各物性を制御する事が難しくなり、また、比較的高価な極性基含有ポリエチレン樹脂を多量に添加する事によって生産コストの増大に繋がる。
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物中の樹脂成分中における極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の配合割合は、別の態様としては、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が3〜60質量%、ポリエチレン樹脂(B)が97〜40質量%であり、さらに好ましくは、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が3質量%以上10質量%未満、ポリエチレン樹脂(B)が97質量%以下90質量%超過である。極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が3質量%より少ないと異種材料との接着性が十分ではない。また、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が60質量%を超えると、耐衝撃性や流動性、引張物性といった各物性を制御する事が難しくなり、また、比較的高価な極性基含有ポリエチレン樹脂を多量に添加する事によって生産コストの増大に繋がる。
(3)導電性ポリエチレン樹脂組成物中の樹脂成分の組成比率の別の態様
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物中の樹脂成分中にシングルサイト系触媒で製造されたポリエチレン樹脂を含有させる場合、導電性ポリエチレン樹脂組成物中の樹脂成分中における極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(C)、及びポリエチレン樹脂(D)の配合割合は、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が3〜60質量%、ポリエチレン樹脂(C)が20〜40質量%、ポリエチレン樹脂(D)が20〜77質量%の範囲であり、好ましくは極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が3〜20質量%、ポリエチレン樹脂(C)が20〜35質量%、ポリエチレン樹脂(D)が20〜64質量%の範囲であり、より好ましくは極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が10〜20質量%、ポリエチレン樹脂(C)が20〜26質量%、ポリエチレン樹脂(D)が20〜64質量%の範囲である。極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が3質量%より少ないと異種材料との接着性が十分ではない。また、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が60質量%を超えると、耐衝撃性や流動性、引張物性といった各物性を制御する事が難しくなり、また、比較的高価な極性基含有ポリエチレン樹脂を多量に添加する事によって生産コストの増大に繋がる。また、ポリエチレン樹脂(C)が20質量%より少ないと耐クリープ性能が劣るものとなり、40質量%を超えると降伏強度や剛性が低くなりすぎる。さらに、ポリエチレン樹脂(D)が20質量%より少ないと導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスが悪くなるものとなり、特に耐燃料油性が悪くなるものとなり、77質量%を超えると導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスが悪くなるものとなり、特に耐久性が悪くなるものとなる。
(4)導電性ポリエチレン樹脂組成物の耐燃料油性:特性(1)
本発明に関わる導電性ポリエチレン樹脂組成物の温度80℃、軽油168時間浸漬後の抽出量は、6.5mg/g以下、好ましくは4.7mg/g以下であると、導電性ポリエチレン樹脂組成物の耐燃料油性が十分である。導電性ポリエチレン樹脂組成物の耐燃料油性を向上させるには、導電性ポリエチレン樹脂組成物中の樹脂成分の密度を向上させること、及びMFRを下げること等が有効である。また、ポリエチレン樹脂(D)の配合量を高める事もある程度効果がある。
(5)導電性ポリエチレン樹脂組成物の耐クリープ性:特性(2)
本発明に関わる導電性ポリエチレン樹脂組成物の耐クリープ性は、全周ノッチ式引張クリープ試験(FNCT試験 温度80℃、水中、6MPaで測定)における破断時間で表され、破断時間が100時間以上、好ましくは200時間以上、さらに好ましくは300時間以上であると、導電性ポリエチレン樹脂組成物の成形品の耐クリープ性能が十分である。全周ノッチ式引張クリープ試験(FNCT試験 80℃、水中、6MPaで測定)における破断時間が100時間より短い場合、耐クリープ性能が不足し、成形品がクリープ破壊を起こす可能性が高くなり好ましくない。導電性ポリエチレン樹脂組成物の耐クリープ性を向上させるには、ポリエチレン樹脂(C)の配合量を高める事や、カーボンブラック(E)の添加量を少なくさせる事が有効であり、導電性ポリエチレン樹脂組成物中の樹脂成分の密度を低下させる事もある程度効果がある。
なお、FNCT試験はJIS K6774:1995「ガス用ポリエチレン管」の付属書1を参考に実施する事ができ、試験サンプルの作成方法が異なる点、及び試験荷重と測定時間を任意に変更する点、以外はJIS K6774:1995「ガス用ポリエチレン管」の付属書1の全周ノッチ式引張クリープ試験に準拠し、80℃、6MPaで測定される。
試験片は、JIS K6922−2(1997)「プラスチックポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方」の表2の条件で作成した厚さ6mmで圧縮成形シートから切出し、全周にノッチを入れたもの(試験片厚み6mm、ノッチ深さ1mm、全周)を使用してもよい。
(6)導電性ポリエチレン樹脂組成物の表面抵抗率:特性(3)
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物の表面抵抗率は0.1〜500.0Ω/□、好ましくは1.0〜100.0Ω/□の範囲である。表面抵抗率が500.0Ω/□より大きい場合、導電性が十分ではなく、燃料等により樹脂が膨潤した際に帯電防止性能等が劣るものとなる。表面抵抗率を0.1Ω/□より低くさせる為には過剰なカーボンブラックの添加が必要となり、機械特性等のその他の物性が劣るものとなる。なお、表面抵抗率は、カーボンブラックの添加量によって調整する事が可能で、添加量を増やすほど表面抵抗率は下がり、導電性は高くなる傾向がある。
(7)導電性ポリエチレン樹脂組成物のHL−MFR:特性(4)
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物の測定温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HL−MFR)は、2.0〜30.0g/10min、好ましくは3.0〜30.0g/10min、より好ましくは4.0〜25.0g/10minの範囲が適当である。HL−MFRが2.0g/10minを下回る場合、成形時に流動性が不足する可能性があり、成形安定性が損なわれる恐れがある。30.0g/10minを超える場合、耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となる。
(8)導電性ポリエチレン樹脂組成物の密度:特性(5)
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物の密度は、0.950〜1.150g/cm、好ましくは0.970〜1.125g/cm、より好ましくは0.970〜1.100g/cm、さらに好ましくは0.970〜1.075g/cm、さらに最適には0.970〜1.050g/cmの範囲である。密度が0.950g/cmを下回ると、剛性や耐薬品性、耐燃料油性の低下につながる。1.150g/cmを超えると耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となる。
(9)導電性ポリエチレン樹脂組成物の引張降伏強度:特性(6)
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物の引張降伏強度は10.0〜35.0MPa、好ましくは10.0〜30.0MPa、さらに好ましくは、12.0〜32.0MPa、より好ましくは14.0〜28.0MPaの範囲である。引張降伏強度が10.0MPaより低い場合、導電性ポリエチレン樹脂組成物の剛性が十分ではなく、35.0MPaより大きい場合は耐衝撃性や耐クリープ性といった機械性能が劣るものとなる。
(10)導電性ポリエチレン樹脂組成物の引張破壊伸び:特性(7)
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物の引張破壊伸びは、180%以上、好ましくは200%以上であり、さらに好ましくは300%以上、特に好ましくは400%以上である。180%より小さいと、成形品に外力が加わった際に破損するおそれがあり好ましくない。また、ポリエチレン樹脂組成物である関係上、1100%程度が最大点となる。本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物の引張破壊伸びを大きくするためには、カーボンブラックの添加量を下げる事が効果的ではあるが、カーボンブラックのBET比表面積を下げる事によってもある程度調整可能である。
(11)導電性ポリエチレン樹脂組成物のシャルピー衝撃強度:特性(8)
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物の、−40℃におけるシャルピー衝撃強度は1.9kJ/m以上、好ましくは2.0kJ/m以上、より好ましくは2.5kJ/m以上、特に好ましくは3.0kJ/m以上である。1.9kJ/mより低い場合、成形品の衝撃強度が不足し実用上好ましくない。−40℃におけるシャルピー衝撃強度が高くなると、シャルピー衝撃強度の測定に際し、試験片が完全破壊しない場合がある。−40℃におけるシャルピー衝撃強度は、試験サンプルが未破壊であると最も好ましく、部分破壊やヒンジ破壊でも良く、完全破壊であっても1.9kJ/m以上であれば、例えば、15.0kJ/m以下、さらには10.0kJ/m以下の範囲であっても、十分なシャルピー衝撃強度であると言える。
(12)導電性ポリエチレン樹脂組成物の製造方法
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物は公知の方法を利用して製造することができ、その製造方法は特に限定されない。製造方法として、例えば、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)、カーボンブラック(E)及び、必要に応じて添加される他成分を、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーフローター等のブレンド装置を用いて混合し、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、往復式混練機(BUSS KNEADER)、ロール混練機、などに供する事によって溶融混練する方法で製造することができる。
全ての材料を同時に混練装置に供して溶融混練することで導電性ポリエチレン樹脂組成物を製造しても良いが、複数の工程で実施しても良い。例えば、二軸押出機などの連続式の混練装置を用い、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)を混練設備の前半部分で溶融混練し、押出機の中腹でカーボンブラック(E)を混練装置内部に追加し、さらに溶融混練することで樹脂組成物とする方法、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)のそれぞれ一部又は全部とカーボンブラック(E)を混練設備の前半部分で溶融混練し、押出機の中腹で極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の残りを混練装置内部に追加し、さらに溶融混練することで樹脂組成物とする方法や、予め上記の方法等によって最終的に得られるカーボンブラック(E)含有量よりも多いカーボンブラック(E)を含有する樹脂組成物を製造しておき、別の溶融混練工程において、該樹脂組成物に対してさらに極性基含有ポリエチレン樹脂(A)及び/又はポリエチレン樹脂(B)を追加し、最終的に所望するカーボンブラック(E)含有量の導電性ポリエチレン樹脂組成物を製造する方法等、原料となる各成分を任意の順序で混練設備に投入したり、複数の原料ブレンドもしくは溶融混練工程を経たりする事によって導電性ポリエチレン樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。
上記の製造方法において、別の態様として、ポリエチレン樹脂(B)の代わりに、メタロセン系触媒を用いて重合されたポリエチレン樹脂(C)及び、その他のポリエチレン樹脂(D)を使用することができる。
(13)その他の成分
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物には、本発明の目的から逸脱しない範囲で各種のエラストマーや他の樹脂、粘着材等を配合する事ができ、耐燃料油性を保持する観点からは、他の樹脂、及び、粘着材等を配合してもよい。
例えば、エラストマー成分としては、エチレンプロピレン系ゴム、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴムなどが挙げられ、これらは1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
上記エチレンプロピレン系ゴムとしては、エチレン単位及びプロピレン単位を主骨格に持つランダム共重合体(EPM)、及び第3成分としてジエンモノマー単位(ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等)をさらに主骨格に持つランダム共重合体(EPDM)が挙げられる。上記ブタジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)及びその水添又は部分水添誘導体であるスチレン−ブタジエン−エチレン共重合体(SBES)、1,2−ポリブタジエン(1,2−PB)、無水マレイン酸−ブタジエン−スチレン共重合体、コアシェル構造を有する変性ブタジエンゴム等が例示される。
また粘着材としては、オレフィン系、脂肪族系、芳香族系、脂肪族芳香族系、石油樹脂、及びそれらの水素添加物、天然ロジン、重合ロジン等のロジン系樹脂、及びそれらの水素添加物、ポリテルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系樹脂、及びそれらの水素添加物、並びに、クマロンインデン系樹脂、及びそれらの水素添加物等が挙げられる
他の樹脂としては、後述する被着体に記載の熱可塑性樹脂と同様の物を例示する事が出来る。
(14)添加剤
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物には、本発明の目的から逸脱しない範囲で各種添加剤を配合することができる。
添加剤の種類としては、酸化防止剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、顔料、耐候安定剤、核剤、難燃剤、充填剤等を挙げることができる。ただし、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛などの金属石鹸類は、異種材料との接着強度を低下させる懸念があるため、配合することを避ける事が好ましい。
〔7〕積層体
(1)積層体
本発明に係る積層体は本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物からなる層を少なくとも含み、被着体からなる層を積層させた積層体である。
(2)被着体
本発明の積層体は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂に代表される極性基を持たない樹脂からなる層と本発明に係る導電性樹脂組成物からなる層との積層体であっても構わないが、本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物の有する接着性という特徴を発揮するためには、ポリエチレン樹脂では容易に接着しない被着体からなる層との積層体であると、より有益に利用することができる。
本発明に係る被着体としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂鹸化物(EVOH)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂、アルミニウム、鉄鋼、ステンレスなどの金属材料、紙類、セロファン、織布、不織布などを例示することができる。
(3)ポリオレフィン樹脂
ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(4)ポリアミド
ポリアミドとしては、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン、11−ナイロン、9−ナイロン、7−ナイロン、ポリアミド4,6、ポリアミド6,12、ポリメタキシリレンアジパミド、各種の芳香族ナイロン、例えばポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、等が挙げられる。また、分子鎖末端のカルボキシル基やアミノ基を別の官能基に修飾してあってもかまわない。これらは単独で用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(5)ポリエステル
ポリエステルとしては、芳香環含有ポリエステル及び脂肪族ポリエステルが挙げられる。芳香環含有ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリ−p−フェニレンマロネート、ポリ−p−フェニレンアジペート、ポリ−p−フェニレンテレフタレート等のポリ−p−フェニレンエステル等が挙がられ、脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート、等が挙げられる。これらは単独で用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(6)ポリカーボネート
ポリカーボネートは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法や、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法等によって得られる重合体又は共重合体である。これらの中で、代表的なのもとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)とホスゲンから製造された芳香族ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(7)ポリアセタール
ポリアセタールとしては、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシフェニレン(PPO)及びポリ−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。これらは単独で用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(8)ポリフェニレンエーテル
ポリフェニレンエーテルは、芳香族ポリエーテル構造を持つ合成樹脂であり、ポリフェニレンエーテル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などがあげられ、これらは単独で用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(9)ポリフェニレンサルファイド
ポリフェニレンサルファイドとは、フェニル基(ベンゼン環)とイオウ(S)が交互に繰り返される分子構造を持った高性能エンジニアリング・プラスチックである。これらは単独で用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(10)金属
金属としてはアルミニウム、鉄鋼、ステンレス、銅、スズ、真鍮等、これらの混合物、積層構造体、複合材料等が挙げられる。
アルミニウムとしては、例えばJISH4140−1998に記載の物が使用できる。より具体的には、A1100FD、A1200FD、A2014FD、A2017FD、A2018FD、AD2218FD、A2219FD、A2025FD、A4032FD、A5052FH、A5056FD、A5083FD、A6165FD、A6061FD、A7050FD、A7075FD、A7N01FH等が例示される。
ステンレスとしてはマルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼等が挙げられ、より具体的には、SUS201、SUS202、SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316、SUS317、SUS403、SUS405、SUS420、SUS430、SUS430LX、SUS436、SUS630等が例示される。
鉄鋼としては、例えばJISG0203、JISG0204に記載された、各種の鋼、鋼材、鋳鍛造品等が制限なく使用され、それらは各種表面処理やメッキが施されていても良い。
(11)積層体の製造方法
本発明に係る積層体の製造方法は限定されないが、例えば、通常のプレス成形、インフレーション成形、フラットダイ成形(T−ダイ成形)、管状品の押出成形、コルゲートパイプ成形等の押出成形、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等のラミネート加工法、ブロー成形、圧空成形、真空成形、圧空真空成形、射出成形、回転成形といった各成形方法の他、上記の成形法等によって成形した導電性ポリエチレン樹脂成形品の一部を熱によって再溶融し、別の被着体からなる層に加熱圧着させる事で積層化する熱溶着法、予め別々に作成しておいた導電性ポリエチレン樹脂成形品と被着体の成形品を加熱プレス用モールド中に入れ、熱と圧力を加える事で接着させるプレス熱圧着法等、従来公知の加工方法が挙げられる。
(12)多層共押出成形
本発明に係る多層共押出成形とは、複数の熱可塑性樹脂材料をそれぞれ別の押出機を用いて同時に押出成形し、合流部以降で層状に複合化し、種々の方法によって賦形することにより製造する、多層構造を持った成形品を成形する方法である。
本発明に係る多層共押出成形としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T−ダイ成形)、多層管状品成形、多層コルゲートパイプ成形等、公知の多層共押出成形を挙げる事ができる。本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物を含む層と適当な被着体とを、例示した様な成形方法によって加工することにより、多層フィルム、多層シート、多層パイプ、多層ホース、多層チューブ、多層コルゲートパイプ等の公知の多層共押出成形品として製造する事ができる。これら方法によって製造された積層体を再加熱し、さらに別の形状へ後加工することもできる。
(13)多層ブロー成形
本発明に係る多層ブロー成形方法は限定されないが、例えば、多層ダイレクトブロー成形、多次元多層ブロー成形、多層ロータリーブロー成形等、公知のブロー成形法を挙げる事ができる。
(14)射出成形による積層体の製造方法
本発明に係る射出成形による積層体の製造方法とは、本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物を含有してなる層を含み、射出成形法を用いて複数の層を積層化することで積層体を製造する方法である。積層化される層は少なくとも2種以上である必要があり、そのうち少なくとも1種以上は本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物を含有してなる層でなくてはならない。積層体の製造に用いる射出成形法は公知のものを使用できる。積層化の具体的な方法としては、例えば、あらかじめ射出成形や押出成形、プレス成形、切削加工等公知の方法により本発明の導電性ポリエチレン樹脂組成物を積層体に適した構造に加工し、該加工品を射出金型内部にインサートした状態でさらに被着体材料を射出することで複合化させる方法、あらかじめ被着体を積層体に適した構造に加工し、該加工品を射出金型内にインサートした状態で本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物を射出することで複合化させる方法、複数の射出ユニットを有する多色射出成形機を用い、本発明に係る極性基含有オレフィン共重合体と被着体材料を適当な順序で順次、金型内に射出することによって積層化する方法などを挙げる事ができる。
〔8〕導電性(非帯電性)成形品
本発明の導電性成形品は、本発明の導電性ポリエチレン樹脂組成物が各種成形方法によって賦形された成形品であり、導電性を有するが故に非帯電性能が付与された成形品である。本発明の導電性成形品は、導電性成形品自身が帯電し難く、かつ、他の帯電性物質に帯電した電荷を、導電性成形品を介して除電する事が出来る。
より具体的には、他の帯電した帯電性物質が導電性成形品に触れる事によって、帯電していた電荷が導電性成形品に移行し、さらに、導電性ポリエチレン樹脂が他の導体に触れたり接地されたりすることによって電荷を導電性成形品以外に逃がす事ができる。導電性成形品を構成する導電性ポリエチレン樹脂組成物は表面抵抗率が特定の値である必要があり、その表面抵抗率が0.1〜500.0Ω/□、好ましくは1.0〜100.0Ω/□の範囲であると、導電性成形品が帯電しにくい。
〔9〕導電性(非帯電性)積層体
本発明の導電性積層体は、本発明の導電性ポリエチレン樹脂組成物からなる層を少なくとも含み、被着体からなる層を積層させた積層体であって、本発明の導電性ポリエチレン樹脂組成物からなる層が導電性を有するが故に非帯電性能が付与された積層体である。本発明の導電性積層体は、導電性積層体自身が帯電し難く、かつ、他の部材に帯電した電荷を、導電性積層体の導電性ポリエチレン樹脂組成物層を介して除電する事が出来る。
より具体的には、導電性積層体の導電性ポリエチレン樹脂組成物層が導電性を有しており、他の帯電した部材が導電性積層体の導電性ポリエチレン樹脂組成物層に触れる事によって、帯電していた電荷が導電性ポリエチレン樹脂組成物層に移行し、さらに、導電性ポリエチレン樹脂が他の導体に触れたり接地されたりすることによって電荷を導電性ポリエチレン樹脂組成物層以外に逃がす事ができる。導電性積層体の導電性ポリエチレン樹脂組成物層を構成する導電性ポリエチレン樹脂組成物は表面抵抗率が特定の値である必要があり、その表面抵抗率が0.1〜500.0Ω/□、好ましくは1.0〜100.0Ω/□の範囲であると、導電性積層体が帯電しにくい。
〔10〕導電性ポリエチレン樹脂組成物の用途
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物は、導電性と極性の高い異種材料との接着性を有し、導電性があるが故に非帯電性や他の帯電性物質の除電性能を併せ持つ。さらには、ポリエチレン樹脂の有する優れた性質である、機械的性質、軽量性、耐薬品性、耐燃料油性、生産性、低コスト等をも併せ持っており、特に、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、有用な多層成形体として応用可能である。すなわち、各種の被着体に積層されて、広く包装材、包装容器分野、繊維、パイプ、燃料タンク、中空容器、ドラム缶などの産業資材分野、止水材料などの土木分野、電子・家電部材などの電子分野、電線・ケーブルなどの電線分野などにおいて利用することができる。
本発明に係る導電性ポリエチレン樹脂組成物の用途としては、例えば、電磁波に対するシールド性を必要としたものや、帯電防止性能が求められる用途であると、付与された導電性をより有用に利用する事が可能である。より具体的には、電気・電子機器のハウジング材やケーシング材、電子部品等の耐ほこり付着性が求められる部品用のトレー、キャリアテープやその部材、インシュロック、ガソリン等の可燃性液体の触れる用途、例えば自動車の燃料が接触する周辺部品である燃料供給口、燃料キャップ、ロールオーバーバルブやインレットチェックバルブ、フィルリミットベントバルブ等の燃料タンク本体に溶着するバルブ、燃料ポンプ固定用蓋、フィラーネック、フィラーチューブ、インレットパイプ、ブリーザーチューブ、燃料タンク、ポリエチレン粉体等の帯電性粉体が触れる用途、例えば、粉体搬送用ホース、粉体用サイロの除電部材、粉体輸送用ホッパーや篩などの除電部材、粉体爆発防止用除電部材、工業薬品缶やその蓋、ドラム缶やその蓋等、各種各様な用途へ展開する事が可能であり、特にフィラーネック、フィラーチューブ、インレットパイプ、ブリーザーチューブ等用途への展開が期待できる。
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
I.評価方法
(1)MFR、HL−MFR
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件下に測定した。また、ハイロードメルトフローレート(HL−MFR)は、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、21.6kg荷重の条件下に測定した。
(2)密度
JIS K7112:1999に準拠し、D法で測定した。
(3)−40℃におけるシャルピー衝撃強度
JISK7111−1:2006に準拠し、−40℃環境下におけるノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定し、シャルピー衝撃強度とした。試験片は、JISK7151に準拠し、プレス温度180℃、冷却条件は徐冷(冷却方法D)の条件によって成形した厚さ4mmのプレスシートからJISK7139に記載された短冊形試験片(タイプB3)を打ち抜き、シャルピーエッジワイズ衝撃(e)シングルノッチ試験片を機械加工することで作成した。なお、ノッチ形状はタイプAである。測定装置は、株式会社東洋精機製作所製のデジタル衝撃試験機DG−UB型を用いた。
(4)引張降伏強度
ASTM D638−97に準拠して測定した。試験片形状はType4(厚さ:2.0mm)とし、JISK7151に準拠し、プレス温度180℃、冷却条件は徐冷(冷却方法D)の条件によって成形した厚さ2mmのプレスシートから打抜き加工する事で作成した。引張速度は50mm/minである。測定装置は、株式会社エーアンドディー社製のテンシロン(型式:RTG−1250)を用いた。
(5)引張破壊伸び
ASTM D638−97に準拠して測定した。試験片形状はType4(厚さ:2.0mm)とし、JISK7151に準拠し、プレス温度180℃、冷却条件は徐冷(冷却方法D)の条件によって成形した厚さ2mmのプレスシートから打抜き加工する事で作成した。引張速度は50mm/minである。測定装置は、株式会社エーアンドディー社製のテンシロン(型式:RTG−1250)を用いた。
(6)表面抵抗率
JISK7194:1994に準拠し、4端子4探針法で測定した。JISK7151に準拠し、プレス温度180℃、冷却条件は徐冷(冷却方法D)の条件によって成形した厚さ2mmのプレスシートをサンプルとして用い、測定を実施した。測定装置は、三菱ケミカルアナリテック株式会社製低抵抗率計ロレスタGXを用いた。なお、単位はΩ/□(オームパースクエア)である。
(7)接着強度
接着強度は、多層ブロー成型機で測定する樹脂を含む丸瓶(JPEテスト型)を成形した。成形温度はダイ温度200℃、金型温度15℃であった。層構成は、ノバテックHDPE HB111R/接着性PE/EVOH F101B/接着性PE/ノバテックHDPE HB111R で、層比率は、45.5/3/3/3/45.5である。
厚みは4mmボトルを成形。6mm幅で短冊状に切り出し、T型剥離試験を実施した。
引張試験機を用いて、50mm/minの速さで90°剥離することで接着強度を測定した。接着強度の単位はkgf/6mmで示した。2.0kgf/6mm以上の物を良好と評価して○とした。なお、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)を含むものは接着性を有する。
(8)BET比表面積
BET比表面積は液体窒素吸着法(ASTM D3037)に準拠して測定した。
(9)耐クリープ性
耐クリープ性は全周ノッチ式引張クリープ試験(FNCT試験)によって求められ、FNCT試験はJISK6774(1995)「ガス用ポリエチレン管」の付属書1の全周ノッチ式引張クリープ試験に準拠して実施した。試験サンプルは、JIS K6922−2(1997)「プラスチックポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方」の表2の条件で作成した厚さ6mmで圧縮成形シートから切出し、全周にノッチを入れたもの(試験片厚み6mm、ノッチ深さ1mm、全周)を使用した。次にこの試験片を80℃で1時間状態調節した後、FNCT試験を行い、試験片が完全破断するまでに要した時間を測定した。なお、サンプルに加えられる応力は6MPaである。
(10)軽油溶出量
軽油溶出量は以下の方法により測定した。
樹脂試験片(JISK7113 2号試験片 20本、約75g)をガラス瓶に入れ、軽油1000mLを注ぎ、密栓する。80℃オーブン中で168hrエージングする。
オーブンからガラス瓶を取り出し、常温まで放冷させる。その後、樹脂試験片を取り出し、残った軽油を吸引ろ過する。吸引ろ過後にろ紙を65℃真空乾燥機で十分に乾燥させた後に、重量を測定する。ろ紙は、ADVANTEC社製メンブレンフィルターPTFE−T050A090C(pore size 0.5μm)使用した。乾燥後のろ紙重量−ろ紙初期重量から樹脂溶け出し量を計算する。樹脂溶け出し量を初期の樹脂量で割り、樹脂1g当たりからの溶出量(mg/g)とする。
(11)TREF
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し、溶液とする。これをTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、さらに続いて1℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、20分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。使用装置は、下記のとおりである。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mm§×150mmステンレスカラム
カラム充填剤:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2§×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
測定条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
II.樹脂材料
(1)極性基含有ポリエチレン樹脂(A)
ポリエチレン樹脂(A)として、表1〜2に記載のMFRと密度を有する各ポリエチレン樹脂を使用した。各ポリエチレン樹脂(A)の極性基の導入量は0.600質量%とした。
(2)ポリエチレン樹脂(B)
ポリエチレン樹脂(B)として、表1〜2に記載のMFRと密度を有する各ポリエチレン樹脂を使用した。
(3)ポリエチレン樹脂(C)
メタロセン系触媒を用いて製造したポリエチレン樹脂として、表1〜2に記載のMFRと密度と分子量分布を有し、所定の累積溶出量を示す各ポリエチレン樹脂を使用した。
(4)ポリエチレン樹脂(D)
ポリエチレン樹脂(D)として、表1〜2に記載のMFRと密度と分子量分布を有し、所定の累積溶出量を示す各ポリエチレン樹脂を使用した。
(5)カーボンブラック
カーボンブラックとして、表1〜2に記載のBET比表面積を有する各カーボンブラックを使用した。
III.導電性ポリエチレン樹脂組成物の製造と物性評価結果
〔実施例1〕
表1に記載のMFRと密度を有する極性基含有ポリエチレン樹脂(A)10質量%、表1に記載のMFRと密度を有するポリエチレン樹脂(B)90質量%の比率となるように、ヘンシェルミキサーを用いてブレンドし、混練温度240℃、スクリュー回転数500rmpに設定した、同方向二軸混練機(株式会社日本製鋼所製TEX30α、スクリュー径:φ32、L/D=44)を用いて樹脂成分を溶融混練した。該二軸混練機の混練ゾーンの中腹部付近にはサイドフィーダー(同方向二軸スクリューによってサイドフィードするタイプ)が設置してあり、樹脂成分の合計100質量部に対し、表1に記載のBET比表面積を有するカーボンブラックが10.5質量部となるように投入速度を調節したサイドフィーダーによって混練機内部にカーボンブラックを導入し、さらに溶融混練を継続する事によって樹脂成分とカーボンブラックを混合した。ストランド状に押し出した溶融樹脂を冷却水槽に通して冷却し、ペレタイズする事で導電性ポリエチレン樹脂組成物のペレットを製造した。原料組成及び各物性の評価結果を表1に示す。
〔実施例2〜13、比較例1〜12〕
極性基含有ポリエチレン樹脂(A)、ポリエチレン樹脂(B)、カーボンブラック(E)の種類及び配合比率を表1〜2に記載の内容に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例2〜13、比較例1〜12の樹脂組成物を製造した。各物性の評価結果を表1〜2に示す。
Figure 2021152098
Figure 2021152098
IV.評価結果
実施例1〜実施例13は、本発明に係る構成要件を満たしており、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有する導電性ポリエチレン樹脂組成物である。
比較例1は、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)のみを配合し、カーボンブラック(E)を配合していない樹脂組成物である。表面抵抗率が大きいため、十分な導電性が発現しない。
比較例2は、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の合計100質量部に対し、BET比表面積が1270m/gのカーボンブラック(E)を3質量部添加したものである。カーボンブラック(E)の含有量が少なく、表面抵抗率が大きいため、十分な導電性が発現しない。
比較例3は、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の合計100質量部に対し、BET比表面積が1270m/gのカーボンブラック(E)を15質量部添加したものである。カーボンブラック(E)の含有量が多く、耐クリープ性が十分でない。
比較例4は、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の合計100質量部に対し、BET比表面積が1270m/gのカーボンブラック(E)を30質量部添加したものである。カーボンブラック(E)の含有量が多く、耐クリープ性が十分でない。
比較例5は、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の合計100質量部に対し、BET比表面積が30m/gであり、1000m/g未満のカーボンブラック(E)を10.5質量部配合したものである。BET比表面積が小さく、表面抵抗率が大きいため、十分な導電性が発現しない。
比較例6は、極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の合計100質量部に対し、BET比表面積が800m/gであり、1000m/g未満のカーボンブラック(E)を10.5質量部配合したものである。BET比表面積が小さく、表面抵抗率が大きいため、十分な導電性が発現しない。
比較例7は、MFRが10.00g/10minであり、5.00g/10minを超える極性基含有ポリエチレン樹脂(A)を用いたものである。MFRが大きいため、耐燃料油性、耐久性が十分でない。
比較例8は、密度が0.900g/cmであり、0.915g/cm未満の極性基含有ポリエチレン樹脂(A)を用いたものである。密度が小さいため、耐燃料油性が十分でない。
比較例9は、密度が0.960g/cmであり、0.955g/cmを超える極性基含有ポリエチレン樹脂(A)を用いたものである。密度が大きいため、耐久性が十分でない。
比較例10は、MFRが10.00g/10minであり、5.00g/10minを超えるポリエチレン樹脂(B)を用いたものである。MFRが大きいため、耐燃料油性、耐久性が十分でない。
比較例11は、密度が0.900g/cmであり、0.915g/cm未満のポリエチレン樹脂(B)を用いたものである。密度が小さいため、耐燃料油性が十分でない。
比較例12は、密度が0.960g/cmであり、0.955g/cmを超えるポリエチレン樹脂(B)を用いたものである。密度が大きいため、耐久性が十分でない。
以上の各実施例の良好な結果、及び各比較例との対照により、本発明の構成(発明特定事項)の有意性と合理性及び従来技術に対する卓越性が明確にされている。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本発明によれば、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有する導電性ポリエチレン樹脂の製造が可能となり、工業的に有用な積層体の製造をも可能にした。本発明によって製造することが可能な導電性ポリエチレン樹脂組成物は、導電性、耐燃料油性、耐久性、及び成形性のバランスに優れ、かつ、被着体に対する接着性を有するため、有用な多層成形体として応用可能であり、各種の被着体に積層されて、広く包装材、包装容器分野、パイプ(特にインレットパイプ)、チューブ、フィラーネック、燃料タンク、燃料バルブ、中空容器、射出成形品、ドラム缶などの産業資材分野、止水材料などの土木分野、電子・家電部材などの電子分野、電線・ケーブルなどの電線分野などにおいて活用することができ、工業的に非常に利用価値の高いものである。

Claims (8)

  1. グラフト変性によって、カルボン酸基又は酸無水物基含有モノマーを、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体に導入した極性基含有ポリエチレン樹脂(A)と、ポリエチレン樹脂(B)と、からなる樹脂成分の合計100質量部に対し、BET比表面積が1000〜1600m/gの範囲であるカーボンブラックを9.5〜12.0質量部含有してなる導電性ポリエチレン樹脂組成物であって、
    樹脂成分の極性基含有ポリエチレン樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)の組成比率が、それぞれ、
    極性基含有ポリエチレン樹脂(A):3質量%〜60質量%
    ポリエチレン樹脂(B):97質量%〜40質量%
    の範囲であり、
    極性基含有ポリエチレン樹脂(A)が下記(A1)及び(A2)の要件を満足し、
    ポリエチレン樹脂(B)が、下記(B1)及び(B2)の要件を満足し、
    下記特性(1)〜(4)の要件を満足する導電性ポリエチレン樹脂組成物。
    (A1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
    (A2)密度:0.915〜0.955g/cm
    (B1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
    (B2)密度:0.915〜0.955g/cm
    特性(1)温度80℃、軽油168時間浸漬後の抽出量:6.5mg/g以下
    特性(2)JIS K6774:1995に準拠して測定される、温度80℃、水中、6MPaにおけるFNCT:100時間以上
    特性(3)表面抵抗率:0.1〜500.0Ω/□
    特性(4)温度190℃、荷重21.6kgで測定されるハイロードメルトフローレート(HL−MFR):2.0〜30.0g/10min
  2. 前記ポリエチレン樹脂(B)がメタロセン系触媒を用いて重合されたポリエチレン樹脂(C)及びその他のポリエチレン樹脂(D)からなり、
    極性基含有ポリエチレン樹脂(A)、メタロセン系触媒を用いて重合されたポリエチレン樹脂(C)及びその他のポリエチレン樹脂(D)の組成比率がそれぞれ、
    極性基含有ポリエチレン樹脂(A):3質量%〜60質量%
    メタロセン系触媒を用いて重合されたポリエチレン樹脂(C):20質量%〜40質量%
    その他のポリエチレン樹脂(D):20質量%〜77質量%
    の範囲である請求項1に記載された導電性ポリエチレン樹脂組成物。
  3. 前記メタロセン系触媒で製造されたポリエチレン樹脂(C)が下記(C1)〜(C4)の要件を満足する請求項2に記載された導電性ポリエチレン樹脂組成物。
    (C1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
    (C2)密度:0.915〜0.955g/cm
    (C3)分子量分布パラメーター(Mw/Mn):1.0〜4.0
    (C4)昇温溶出分別(TREF)により測定される60℃までの累積溶出量が20.0質量%以下
  4. その他のポリエチレン樹脂(D)が下記(D1)〜(D4)の要件を満足する請求項2又は3に記載された導電性ポリエチレン樹脂組成物。
    (D1)温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR):0.05〜5.00g/10min
    (D2)密度:0.915〜0.955g/cm
    (D3)分子量分布パラメーター(Mw/Mn):4.0を超え、7.0以下
    (D4)昇温溶出分別(TREF)により測定される60℃までの累積溶出量が20.0質量%以下
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載された導電性ポリエチレン樹脂組成物を含む成形品。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載された導電性ポリエチレン樹脂組成物の層と、被着体層とを少なくとも含む積層体。
  7. 請求項5に記載された成形品が導電性である導電性成形品。
  8. 請求項6に記載された積層体が導電性である導電性積層体。
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