以下、本発明の実施例に係る回転電機100を、図面を参照して説明する。なお、回転電機100の回転子110の径方向をrで表し、回転子110の回転軸101の軸方向(回転軸方向)をzで表し、回転子110の回転方向をθで表す。回転子110の径方向r、回転軸方向z、及び回転方向θを、それぞれ「径方向」、「軸方向」、及び「周方向」と呼ぶ。
図1は、本発明に係る回転電機100の、中心軸線Axに平行で且つ中心軸線Axを含む断面図(r−z断面図)である。図2は、本発明に係る回転子コア111の、回転軸101に垂直な端面又は断面において、周方向θの一部を示す平面図である。中心軸線Axは回転軸101の中心を通る軸線である。
本実施例に係る回転電機100は、回転子コア111の磁石挿入部(磁石挿入穴)の磁気的空隙部に発生する応力を低減し、高回転化を可能にする。本実施例に係る回転電機100は、例えば、回転電機のみの動力によって走行する電気自動車や、エンジン及び回転電機の双方によって駆動されるハイブリッド型の電気自動車の走行用モータとして用いるのに好適である。
回転電機100は、固定子130と回転子110とハウジング140とを備える。固定子130は、ハウジング140の内部に保持され、固定子コア132と固定子巻線134とを備える。固定子コア132の内周側には、回転子110が空隙Gpを介して回転可能に配置されている。回転子110は、回転軸101に固定された回転子コア111と、複数極の永久磁石112と、非磁性体のあて板113−1,113−2とを備え、回転軸101を中心として回転可能である。回転軸101は駆動軸又はシャフトと呼ばれる場合もある。ハウジング140は、軸受151−1,151−2が設けられた一対のエンドブラケット141−1,141−2を有している。回転軸101は、これらの軸受151−1,151−2により回転自在に保持されている。
本発明に係る回転電機100は、固定子コア132を有する固定子130と、固定子コア132の内周側に空隙Gpを介して回転可能に配置された回転子110と、固定子130及び回転子110を内包するハウジング140とを備え、回転子110として後述する本発明に係る回転子を備える。
本実施例では、回転電機100は3相交流電流により駆動されるものとする。このために回転軸101は、回転子110の極の位置や回転速度を検出するレゾルバ153(回転角センサ)を備える。レゾルバ153からの出力に基づいて、図示しない制御回路及び駆動回路において、図示しないパワーモジュールがスイッチング動作を行うための制御信号及び駆動信号が生成される。パワーモジュールは、駆動信号に基づきスイッチング動作を行い、バッテリ510(図18参照)から供給される直流電力を3相交流電力に変換する。この3相交流電力は、固定子巻線(コイル)134に供給され、回転磁界が固定子130に発生する。3相交流電流の周波数は、レゾルバ153の出力値に基づいて制御され、3相交流電流の回転子110に対する位相も、同じくレゾルバ153の出力値に基づいて制御される。なお固定子巻線134は、U相、V相、W相が周方向に所定の順番に配置される。
3相交流電力を生成するための制御回路、駆動回路及びパワーモジュールの構成と固定子巻線(U相、V相、W相)134の構成とは、周知の技術を適用して実施することができる。
回転子コア111の外周近傍には、直方体形状の永久磁石112を固定する複数の穴(磁石挿入穴)114−1,114−2,114−3が、設けられている。以下、永久磁石112は磁石と呼び、磁石挿入穴114−1,114−2,114−3は磁石挿入部と呼んで説明する。磁石挿入部114−1,114−2,114−3は、軸方向zに延伸する貫通穴として設けられており、各磁石挿入部114−1,114−2,114−3に磁石112が埋め込まれる。なお、磁石挿入部114−1,114−2,114−3は回転子コア111を軸方向zに貫通しない穴として設けられてもよい。
本実施例では、図2に示すように、磁石挿入部114−1は回転軸101の中心を通る線分L1に対して線対称な形状を成す一つの孔として形成され、磁石挿入部114−2及び磁石挿入部114−3は線分L1に対して相互に線対称な形状を有する二つの孔として形成されている。
本実施例では、1極を3個の磁石112で構成する場合を例示しており、回転子110を8極で構成する場合、24個(8(極)×3(個))の磁石112が回転子110に設けられる。8極を構成する各極は周方向に沿って等間隔に配設される。1極を構成する磁石112の個数や回転110及び固定子130に構成される極数は、本実施例の個数及び極数に限定される訳ではなく、その他の個数及び極数を採用することができる。
本実施例では、回転子110に設けられる24個の磁石112に対して、磁石挿入部114−1、磁石挿入部114−2及び磁石挿入部114−3がそれぞれ8個ずつ設けられている。各磁石挿入部114−1,114−2,114−3に埋め込まれる磁石112は同じ形状及び大きさであってもよいし、異なる形状及び大きさであってもよい。本実施例では、図2に示すように、磁石挿入部113−1及び113−3が線分L1に対して線対称に形成されているため、磁石挿入部113−1及び113−3に埋め込まれる磁石112は同じ形状及び大きさであることが好ましい。
図2及び図3を用いて、磁石112及び磁石挿入部114−1,114−2,114−3について説明する。図3は、軸方向zに垂直な断面(横断面)において磁石挿入部113−1の形状を示す断面図(横断面図)である。
磁石112は、軸方向zに垂直な断面(横断面)での形状が長方形である。磁石112は磁化方向mに垂直に形成される2つの側面112A及び112Dと、磁化方向mに沿う2つの側面112B及び112Cと、を有する。側面112A及び112Dはそれぞれ磁石112の磁極面となる。
磁石112について、横断面形状(長方形)の長辺の長さを「幅」w112と呼び、短辺の長さを「厚さ」t112と呼ぶ(図3参照)。厚さt112に沿う方向は磁石112の磁化方向mと一致し、幅w112に沿う方向は横断面上において磁化方向mに垂直である。以下、厚さt112に沿う方向及び幅w112に沿う方向をそれぞれ磁石の「厚さ方向」及び「幅方向」と呼び、横断面上において磁化方向mに沿う方向及び磁化方向mに垂直な方向をそれぞれ「磁化方向」及び「磁化方向に垂直な方向」と呼ぶ。なお、磁化方向m及び磁化方向mに垂直な方向をそれぞれ「第1方向」及び「第2方向」と呼ぶ場合もある。この場合、第1方向及び第2方向はそれぞれ磁石の厚さ方向t112及び幅方向w112に一致し、第1方向と第2方向とは相互に垂直である。また、磁石の「厚さ方向」及び「幅方向」は、これらの方向を明瞭にするために、それぞれ「t112」及び「w112」の符号を付して説明する場合がある。
磁石挿入部114−1と磁石挿入部114−2,114−3とは、形状が異なっているものの、磁石112の幅方向w112において磁石112の両側に空間(磁気的空隙部)114−1B,114−1C,114−2B,114−2C,114−3B,114−3Cを有している。
すなわち、磁石挿入部114−1は磁石112が収納される磁石収納部(磁石収納空間)114−1Aを有し、磁石112の幅方向w112において磁石収納部114−1Aの両側に磁気的空隙部114−1B,114−1Cを有する。また、磁石挿入部114−2は磁石112が収納される磁石収納部(磁石収納空間)114−2Aを有し、磁石112の幅方向w112において磁石収納部114−2Aの両側に磁気的空隙部114−2B,114−2Cを有する。また、磁石挿入部114−3は磁石112が収納される磁石収納部(磁石収納空間)114−3Aを有し、磁石112の幅方向w112において磁石収納部114−3Aの両側に磁気的空隙部114−3B,114−3Cを有する。
磁石収納部114−1A,114−2A,114−3Aは磁石112が収納される空間(磁石収納空間)として形成され、この磁石収納空間114−1A,114−2A,114−3Aに磁石112が埋設される。このため、磁石収納空間114−1A,114−2A,114−3Aは磁石埋設空間或いは磁石埋設部と呼ぶこともできる。
磁石挿入部114−1,114−2,114−3においては、磁石112の幅方向w112に沿う方向の長さを「幅」w114と呼び、磁石112の厚さt112の方向に沿う方向の長さを「厚さ」t114と呼ぶ(図3参照)。なお、磁石挿入部114−1,114−2,114−3の厚さt114は、磁石収納部114−1A,114−2A,114−3Aにおける長さを代表値として用いることとする。以下、厚さt114に沿う方向及び幅w114に沿う方向をそれぞれ磁石収納部の「厚さ方向」及び「幅方向」と呼ぶ。この場合、磁石収納部の「厚さ方向」及び「幅方向」は、これらの方向を明瞭にするために、それぞれ「t114」及び「w114」の符号を付して説明する場合がある。
磁石挿入部114−1,114−2,114−3の幅w114及び厚さt114は、磁石112の幅w112及び厚さt112よりも大きい。この場合、磁石挿入部114−1,114−2,114−3の幅w114は、磁気的空隙部114−1B,114−1C,114−2B,114−2C,114−3B,114−3Cが設けられることで、磁石112の幅w112よりもかなり大きな寸法に形成される。すなわち、磁気的空隙部114−1B,114−1C,114−2B,114−2C,114−3B,114−3Cを大きくすることで、コギングトルクや通電時のトルク脈動を低減するほか、隣接する磁石112間の漏れ磁束を低減する。一方、磁石挿入部114−1,114−2,114−3の厚さt114は、磁石112の厚さt112よりもわずかに大きな寸法に形成される。これは、回転子コア111と磁石112の磁極面(磁化方向m)との間に形成される磁気的空隙を小さくし、有効磁束が流れる磁気回路の磁気抵抗の増大を防ぐためである。
図2及び図3に示すように、磁石112は磁石挿入部114−1,114−2,114−3の内側において磁石挿入部の幅方向w114における位置が押圧部材201,202により決められている。押圧部材201,202については後で詳細に説明する。
ここで、図4及び図5を参照して、磁石112を挿入する磁石挿入部114−1,114−2,114−3における課題について説明する。図4は、本発明との比較例に関する図であり、回転子110’が回転する状態において回転子コア111’に発生する応力の解析結果を示す図である。図5は、本発明に関する図であり、回転子110が回転する状態において回転子コア111に発生する応力の解析結果を示す図である。図4では、図5の各構成に対応する構成の符号に「’」を付している。なお、磁石挿入部114−2’及び114−3’は同じ形状であるため図4では磁石挿入部114−2’を図示しており、さらに磁石挿入部114−1’は幅方向w114の両端部が同形状に形成されているため磁気的空隙部114−1C’側を図示している。また図5では、押圧部材202の記載を省略している。
図4に示す比較例の場合、磁石挿入部114−1’の磁気的空隙部114−1C’に磁石押え部114−1D’が形成され、磁石押え部114−1D’から磁石収納部114−1A’に向かって小さい曲率半径を有する曲率部114−1E’が形成されている。図4では図示されていない、磁石収納部114−1A’を挟んで磁気的空隙部114−1C’とは反対側の磁気的空隙部にも、磁石押え部114−1D’と同様な磁石押え部が形成される。
また磁石挿入部114−2’には、磁気的空隙部114−2B’に磁石押え部114−2F’が形成され、磁石押え部114−2F’から磁石収納部114−2A’に向かって小さい曲率半径を有する曲率部114−2G’が形成されている。また磁石挿入部114−2’の磁気的空隙部114−2C’には磁石押え部114−2D’が形成され、磁石押え部114−2D’から磁石収納部114−2A’に向かって小さい曲率半径を有する曲率部114−2E’が形成されている。図4では図示されていない、磁石挿入部114−1’を挟んで磁石挿入部114−2’とは反対側に位置する磁石挿入部(本実施例の磁石挿入部114−3に対応する磁石挿入部)にも、磁石押え部114−2F’,114−2D’及び曲率部114−2G’,114−2E’と同様な磁石押え部及び曲率部が形成されている。
磁石押え部114−1D’,114−2D’,114−2F’は、磁石112’を磁石挿入部に挿入する際のガイドと、磁石挿入部内における幅方向w114の位置決めとを行うために設けられている。
図5に示す本発明の実施例の場合、磁石挿入部114−1では、磁石押え部114−1Dが形成されておらず、小さい曲率半径を有する曲率部114−1Eは形成されない。すなわち本実施例の場合、磁石押え部114−1Dが形成されないことで、磁気的空隙部114−1Cを形成する、回転子コア111の内壁面(内側面)114−1Caを、磁石収納部114−1Aを形成する、回転子コア111の内壁面(内側面)に、大きな曲率半径の接続部114−1Cbで接続することができる。言い換えれば、内壁面(内側面)114−1Caと磁石収納部114−1Aの内壁面とを接続する部位114−1Cbの曲率を小さくすることができる。
また磁石挿入部114−2では、磁石押え部114−2Fが形成されておらず、小さい曲率半径を有する曲率部114−2Gは形成されない。すなわち本実施例の場合、磁石押え部114−2Fが形成されないことで、磁気的空隙部114−2Bを形成する、回転子コア111の内壁面(内側面)114−2Baを、磁石収納部114−2Aを形成する、回転子コア111の内壁面(内側面)に、大きな曲率半径の接続部114−2Bbで接続することができる。言い換えれば、内壁面114−2Baと磁石収納部114−2Aの内壁面とを接続する部位114−2Bbの曲率を小さくすることができる。
なお、曲率部114−1E,114−2Eや部位114−1Cb,114−2Bbの曲率は一定である必要はなく、曲率が変化する曲がり部(湾曲部)で構成されてもよい。
磁石112の磁極面と回転子コア111との間の磁気的空隙は、磁気特性を向上するために小さくする必要があり、図4の比較例における磁石押え部114−1D’,114−2D’,114−2F’の近傍の曲率部114−1E’,114−2E’,114−2G’の曲率は大きくする必要がある。すなわち、曲率部114−1E’,114−2E’,114−2G’の曲率半径は小さくする必要がある。
回転電機100の小型化の手段として高回転速度化があるが、高回転速度化した場合、磁石112’に作用する遠心力が増大する。磁石112’に作用する遠心力は回転速度の2乗で増加し、磁石112’に作用する大きな遠心力が回転子コア111’にかかることになる。この場合、曲率半径を小さくした曲率部114−1E’,114−2E’,114−2G’には応力が集中し、回転子コア111の強度の低下を招く可能性がある。
図4に示すように、回転子コア111’に発生する応力集中は、複数の曲率部114−1E’,114−2E’,114−2G’のうち、磁石挿入部114−1’の曲率部114−1E’及び磁石挿入部114−2’の曲率部114−2G’で大きくなることが判明した。
図5に示す本実施例では、磁石挿入部114−1の場合、磁石押え部114−1Dを形成せず、磁気的空隙部114−1Cを形成する回転子コア111の内壁面114−1Caを、磁石収納部114−1Aを形成する回転子コア111の内壁面(内側面)に、大きな曲率半径で接続した。これにより、曲率部114−1E’に発生していた応力を100%とした場合、接続部位114−1Cbでは約23%の応力を削減して約77%の大きさに低減できることが判明した。また磁石挿入部114−2の場合、磁石押え部114−2Fを形成せず、磁気的空隙部114−2Bを形成する回転子コア111の内壁面114−2Baを、磁石収納部114−2Aを形成する回転子コア111の内壁面に、大きな曲率半径で接続した。これにより、曲率部114−2G’ に発生していた応力を100%とした場合、接続部位114−2Bbでは約31%の応力を削減して約69%の大きさに低減できることが判明した。
しかし、磁気的空隙部114−1B,114−1C,114−2B,114−3Bを有する磁石挿入部114−1,114−2,114−3において磁石押え部114−1D,114−2Fを設けない構造では、磁石挿入部の幅方向w114において磁石112の位置決めを行う必要がある。このために本実施例では、図5では図示していない押圧部材201,202を用いて磁石挿入部の幅方向w114における磁石112の位置決めを行う構造とすると共に、磁石挿入部114−1,114−2,114−3の形状を見直して回転子コア111に発生する応力を低減するようにした。
図3、図6、図7A及び図7Bを参照して、磁石挿入部114−1及び押圧部材201について説明する。図6は、本発明に係る押圧部材201の外観を示す斜視図である。図7Aは、本発明に係る押圧部材201を用いて磁石112を磁石挿入部114−1に挿入して固定した状態を、固定子コア111を透視して示す斜視図である。図7Bは、押圧部材201による抜去力を説明する図である。
図3に示すように、磁石挿入部114−1は回転軸101の中心を通る線分L1に対して線対称な形状を成す一つの孔として形成され、磁石112の幅方向w112において磁石収納部114−1Aの両側に形成される磁気的空隙部114−1Bと114−1Cとは、同様な形状(線分L1に対して線対称な形状)に形成されている。この場合、磁気的空隙部114−1B,114−1Cを形成する回転子コア111の内壁面(内側面)114−1Ba,114−1Caは、図3の横断面上において、湾曲した形状を有する湾曲面として形成される。すなわち回転子コア111は、磁気的空隙部114−1Bを形成する内壁面に湾曲面(湾曲部)114−1Baを有し、磁気的空隙部114−1Cを形成する内壁面に湾曲面(湾曲部)114−1Caを有する。
湾曲面(湾曲部)114−1Ba,114−1Caは回転子コア111の径方向に沿う断面(図3の断面)上において湾曲することから、「径方向の湾曲面」又は「径方向の湾曲部」と呼ぶ。また湾曲面114−1Ba,114−1Caは、後述する押圧部材201,202の湾曲部201Ba,201Ca,202Ba等と区別するため、「内壁湾曲面」又は「内壁湾曲部」と呼ぶ場合がある。
磁気的空隙部114−1Bには押圧部材201の第1押圧部(第1押圧片)201Bが設けられ、磁気的空隙部114−1Cには押圧部材201の第2押圧部(第2押圧片)201Cが設けられる。磁石収納部114−1Aに収納された磁石112は、押圧部201B及び201Cにより、幅方向w114における位置決めが成されると共に、磁石収納部114−1Aの内側に固定される。すなわち磁石112は、押圧部材201の第1押圧部201B及び第2押圧部201Cを介して、磁気的空隙部114−1Bの湾曲面114−1Ba及び磁気的空隙部114−1Cの湾曲面114−1Caに当接することにより、磁石挿入部114−1内における位置決めと固定とが成される。
図6及び図7Aに示すように、押圧部材201は、磁石112の側面112Bと磁気的空隙部114−1Bの湾曲面114−1Baとに接触する第1押圧部201Bと、磁石112の側面112Cと磁気的空隙部114−1Cの湾曲面114−1Caとに接触する第2押圧部201Cと、第1押圧部201Bと第2押圧部201Cと連結する連結部(連結片)201Aと、を一体で有する。第1押圧部201Bは磁石112の幅方向w112における一方の側面112Bに接する押圧部であり、第2押圧部201Cは磁石112の幅方向w112における他方の側面112Bに接する押圧部であり、連結部201Aは磁石112の軸方向zにおける一方の側面112Eに接する部分である。このため、連結部201Aは「軸方向接触部」と呼ぶ場合がある。或いは、連結部201Aは第1押圧部201B及び第2押圧部201Cから折れ曲がるように形成されることから、「屈曲部」又は「屈曲片」と呼ぶ場合がある。すなわち本実施例の押圧部材201は、第1押圧部201Bに対して屈曲するように設けられた屈曲部201Aを有する。
このように本実施例の押圧部材201は、磁石112の幅方向w112の両側の側面112B,112Cと、軸方向zの一方の側面(本実施例では側面112E)と、の3面にそれぞれ接する3片を、一体で有する。すなわち押圧部材201は、第1押圧部201B、第2押圧部201C、及び屈曲部201Aが一体に構成され、第1押圧部201B、第2押圧部201C、及び屈曲部201Aは、それぞれ、磁石112の幅方向w112における一方の側面112B、磁石112の幅方向w112における他方の側面112C、及び磁石112の軸方向zにおける一方の側面112Eに接触して、磁石112に保持されるように磁石112に組み付けられている。
押圧部材201は、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cを有することで、磁石挿入部114−1に図4の比較例における磁石押え部114−1D’のような磁石押え部を形成する必要がなくなり、曲率部114−1E’のように小さな曲率半径の曲率部を形成する必要がなくなる。これにより、磁石挿入部114−1に発生する応力集中を低減することができる。
また押圧部材201は、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cを一体で有し、磁石112の幅方向w112における第1押圧部201Bと第2押圧部201Cとの最短距離(間隔)w201BC(図6参照)が磁石112の幅w112(図3参照)より小さく形成される。なお、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cは、距離(間隔)w201BCが軸方向zにおける全体において磁石112の幅w112より小さく形成される必要はなく、軸方向zにおける少なくとも一部において、距離(間隔)w201BCが磁石112の幅w112より小さく形成されていればよい。これにより、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cで磁石112を挟み込むことで押圧部材201と磁石112とを仮固定することができ、磁石挿入部114−1内への押圧部材201及び磁石112の挿入工程が簡単になる。
押圧部材201の第1押圧部201B及び第2押圧部201Cは、磁石112を磁石挿入部114−1内に挿入する際に、磁石112の幅方向w112の両側で磁石112と湾曲面114−1Ba及び湾曲面114−1Caとの間に介在して、磁石112を磁石挿入部114−1内に挿入する案内部材として機能する。これにより磁石112は、磁石挿入部114−1内に、スムーズに挿入される。
さらに第1押圧部201Bは、径方向の湾曲面が形成された湾曲部(押圧部)201Baと、平板状に形成された平板部201Bbと、を有する。また第2押圧部201Cは、径方向の湾曲面が形成された湾曲部(押圧部)201Caと、平板状に形成された平板部201Cbと、を有する。本実施例では、湾曲部201Ba及び201Caが第1押圧部201B及び第2押圧部201Cにおいて連結部201Aの側に設けられ、平板部201Bb及び201Cbが第1押圧部201B及び第2押圧部201Cにおいて連結部201Aの側とは反対側に設けられる。すなわち押圧部材201は、径方向に曲率を有する湾曲部201Ba及び201Caを有する。
図7Aに示すように、押圧部材201は、第1押圧部201Bの湾曲部201Baが磁石112の側面112Bと磁気的空隙部114−1Bの湾曲面114−1Baとに接触する。磁石112が磁石挿入部114−1に収納された状態では、第1押圧部201Bの平板部201Bbは磁石112の側面112Bに接触し、磁気的空隙部114−1Bの湾曲面114−1Baとの間に隙間ができるように、湾曲面114−1Baから離れた状態を維持する。
また押圧部材201は、第2押圧部201Cの湾曲部201Caが磁石112の側面112Cと磁気的空隙部114−1Cの湾曲面114−1Caとに接触する。磁石112が磁石挿入部114−1に収納された状態では、第2押圧部201Cの平板部201Cbは磁石112の側面112Cに接触し、磁気的空隙部114−1Cの湾曲面114−1Caとの間に隙間ができるように、湾曲面114−1Caから離れた状態を維持する。
押圧部材201は、第1押圧部201Bの湾曲部201Baが磁石112の側面112Bと磁気的空隙部114−1Bの湾曲面114−1Baとに接触し、また押圧部材201は、第2押圧部201Cの湾曲部201Caが磁石112の側面112Cと磁気的空隙部114−1Cの湾曲面114−1Caとに接触することで、各湾曲部201Ba,201Caが撓む。このとき図7Bに示すように、押圧部材201は、磁気的空隙部114−1Bの湾曲面114−1Ba及び磁気的空隙部114−1Cの湾曲面114−1Caに、内側から外方に向かって押す力Fを作用させる。この力Fにより、押圧部材201は抜去力を確保する。すなわち押圧部材201は、回転子コア111内に磁石112を保持する抜去力を有する。押圧部材201は、抜去力を大きくすることにより、磁石112を磁石挿入部114−1内に固定する固定部材としての機能を持たせることができる。
このように本実施例では、押圧部材201により回転子コア111に磁石112を保持することができ、回転子コア111の運搬や製作工程を簡易化できる。また、回転子コア111の不良時に磁石112を取り外すことができ、磁石112を再利用できる。
図3及び図7Aに示すように、本実施例では、回転子コア111は、磁石挿入部114−1における、押圧部材201の径方向の湾曲部201Ba,201Caと接する面(接触面)114−1ba,114−1Caに所定の曲率を有する湾曲部を有する。すなわち磁石挿入部114−1における押圧部材201との接触面114−1Ba,114−1Caは湾曲面で構成される。
この場合、磁石挿入部114−1の磁気的空隙部114−1B,114−1Cには図4の比較例における磁石押え部114−1D’のような磁石押え部は形成されず、このため図4の比較例における曲率部114−1E’のように小さな曲率半径の曲率部も形成されない。これにより、磁石挿入部114−1に発生する応力集中を低減することができる。
押圧部材201は、第1押圧部201Bと連結部201Aとの間、及び第2押圧部201Cと連結部201Aとの間に、くびれ部201Dを有する。或いは、くびれ部201Dは、連結部201Aにおける第1押圧部201B側の端部及び第2押圧部201C側の端部のそれぞれに形成されているように、みなすこともできる。
このようにくびれ部201Dは、押圧部材201の、磁石112の軸方向zにおける一方の面(本実施例では面112E)に接する部分に形成される。すなわち押圧部材201は、磁石112の軸方向zの片側の面に接する部分(本実施例では連結部201A)にくびれ部201Dを有する。くびれ部201Dは、押圧部材201にばね性を付与し、押圧部材201の抜去力を大きくすることができる。なお、くびれ部201Dは必須の構成ではなく、くびれ部201Dを設けない構成であってもよい。
本実施例では、図3に示すように、回転子コア111の湾曲部114−1Baの曲率半径(第2曲率半径)R114−1Baは、押圧部材201の湾曲部201Baの曲率半径(第1曲率半径)R201Baより、大きく形成される。また、回転子コア111の湾曲部114−1Caの曲率半径(第4曲率半径)R114−1Caは、押圧部材201の湾曲部201Caの曲率半径(第3曲率半径)R201Caより、大きく形成される。回転子コア111の湾曲部114−1Ba,114−1Caの曲率半径R114−1Ba,R114−1Caを押圧部材201の湾曲部201Ba,201Caの曲率半径R201Ba,R201Caより大きく形成することで、押圧部材201に構成される角部が磁石挿入部114−1の内壁面に接触することを防ぐことができる。
また、回転子コア111の湾曲部114−1Ba,114−1Caの曲率半径R114−1Ba,R114−1Caの中心O114−1Ba,O114−1Caは、磁石挿入部114−1の中心線L114−1の上に位置する。また、押圧部材201の湾曲部201Ba,201Caの曲率半径R201Ba,R201Caの中心O201Ba,O201Caも、磁石挿入部114−1の中心線L114−1の上に位置する。この場合、中心線L114−1は磁石挿入部114−1の厚さ方向t114の中心を通る直線である。これにより、磁石112を磁石挿入部114−1に挿入する際に、磁石112の傾きを防ぐことができる。
上述した構成により、本実施例の回転子110では、第1押圧部201Bの径方向の湾曲部201Ba及び磁石挿入部114−1の内壁面における径方向の湾曲部114−1Baは、それぞれ第1曲率半径R201Ba及び第2曲率半径R114−1Baを有するように形成され、第2曲率半径R114−1Baは第1曲率半径R201Baよりも大きく、第1押圧部201Bの径方向の湾曲部201Baは、第1曲率半径R201Baの中心O201Baと第2曲率半径R114−1Baの中心O114−1Baとを通る直線L114−1上で、磁石挿入部114−1の内壁面における径方向の湾曲部114−1Baに接触する。また、第2押圧部201Cの径方向の湾曲部201Ca及び磁石挿入部114−1の内壁面における径方向の湾曲部114−1Caは、それぞれ第3曲率半径R201Ca及び第4曲率半径R114−1Caを有するように形成され、第4曲率半径R114−1Caは第3曲率半径R201Caよりも大きく、第2押圧部201Cの径方向の湾曲部201Caは、第3曲率半径R201Caの中心O201Caと第4曲率半径R114−1Caの中心O114−1Caとを通る直線L114−1上で、磁石挿入部114−1の内壁面における径方向の湾曲部114−1Caに接触する。なお本実施例では、第1曲率半径R201Baと第3曲率半径R201Caとが同じ大きさに、また第2曲率半径R114−1Baと第4曲率半径R114−1Caとが等しい大きさに形成されている。
図5、図8及び図9を参照して、磁石挿入部114−2,114−3及び押圧部材202について説明する。図8は、本発明に係る押圧部材202の外観を示す斜視図である。図9は、本発明に係る押圧部材202を用いて磁石112を磁石挿入部114−2に挿入して固定した状態を示す平面図である。なお本実施例では、磁石挿入部114−2及び114−3は回転軸101の中心を通る線分L1(図3参照)に対して線対称な形状を成して同形状に形成されるため、以下、磁石挿入部114−2について説明する。
図5に示すように、磁石挿入部114−2は磁石112の幅方向w112において磁石収納部114−2Aの両側に形成される磁気的空隙部114−2B及び114−2Cを有する。なお磁気的空隙部114−2B及び114−2Cは、異なる形状に形成されている。この場合、磁気的空隙部114−2Bを形成する回転子コア111の内壁面(内側面)114−2Baは、図5の横断面上において、湾曲した形状を有する湾曲面として形成される。すなわち回転子コア111は、磁気的空隙部114−2Bを形成する内壁面に湾曲面(湾曲部)114−2Baを有する。
湾曲面(湾曲部)114−2Baは回転子コア111の径方向に沿う断面(図5の断面)上において湾曲することから、「径方向の湾曲面」又は「径方向の湾曲部」と呼ぶ。また湾曲面114−2Baは、後述する押圧部材201,202の湾曲部201Ba,201Ca,202Ba等と区別するため、「内壁湾曲面」又は「内壁湾曲部」と呼ぶ場合がある。
一方、磁気的空隙部114−2Cには、図4の比較例で説明した磁石押え部114−2D’及び曲率部114−2E’と同様な磁石押え部114−2D及び曲率部114−2Eが形成されている。
図8及び図9に示すように、押圧部材202は、磁石112の側面112Bと磁気的空隙部114−2Bの湾曲面114−2Baとに接触する押圧部(押圧片)202Bと、押圧部202Bから折れ曲がるように形成されて押圧部202Bに連結される連結部(連結片)202Aと、を一体で有する。押圧部202Bは磁石112の幅方向w112における一方の側面112Bに接する押圧部であり、押圧部材201の第1押圧部201Bと同様に構成されることから「第1押圧部」又は「第1押圧片」と呼ぶ場合もある。
連結部202Aは磁石112の軸方向zにおける一方の側面112Eに接する部分である。このため、連結部202Aは「軸方向接触部」と呼ぶ場合がある。或いは、連結部202Aは押圧部202Bから折れ曲がるように形成される「屈曲部」又は「屈曲片」と呼ぶ場合がある。すなわち本実施例の押圧部材202は、第1押圧部202Bに対して屈曲するように設けられた屈曲部202Aを有する。
押圧部材202は、第1押圧部202B及び屈曲部202AによりL字形状を成す部材として一体に構成され、第1押圧部202B及び屈曲部202Aは、それぞれ、磁石112の幅方向w112における一方の側面112B及び磁石112の軸方向zにおける一方の側面112Eに接触する。押圧部材202はL字形状とすることで、押圧部材201の形状に比べ、体積が小さくなり低コスト化できる。
押圧部材202の押圧部202B及び磁気的空隙部114−2Bの内壁面(湾曲部)114−2Baは、押圧部材201の押圧部201B及び磁気的空隙部114−1Bの内壁面(湾曲部)114−1Baと同様な形状に形成され、同様な作用効果を奏する。
押圧部材202では、磁石112の幅方向w112における片側(磁気的空隙部114−2B側)に、押圧部材201の第1押圧部201Bに相当する押圧部202Bが設けられ、反対側(磁気的空隙部114−2C側)には押圧部材201の第2押圧部201Cに相当する押圧部は設けられていない。押圧部が設けられない側では、磁石112は磁石押え部114−2Dにより幅方向w112において支持され、磁石挿入部114−2への挿入を案内される。
さらに押圧部202Bは、径方向の湾曲面が形成された湾曲部(押圧部)202Baと、平板状に形成された平板部202Bbと、を有する。押圧部材202は第2押圧部201Cに相当する押圧部が設けられていない点で押圧部材201と相違し、湾曲部202Ba及び平板部202Bbを含む、その他の構成は押圧部材201と同様であり、押圧部材201と同様な作用効果を奏する。
また磁石挿入部114−2には、押圧部材202の径方向の湾曲部と接する面(接触面)に、所定の曲率を有する湾曲部114−2Baが形成されており、湾曲部114−2Baは磁石挿入部114−1の湾曲部114−1Baと同様に構成され、湾曲部114−1Baと同様の作用効果を奏する。
なお、図8に示す押圧部材202は、図6に示す押圧部材201と同様に、くびれ部202Dを有する形態としている。
上述した様に、磁石挿入部114−2及び114−3は同形状に形成される。磁石挿入部114−3の磁気的空隙部114−3B及び114−3Cは、それぞれ磁石挿入部114−2の磁気的空隙部114−2B及び114−2Cと同様に構成される。このため、磁石挿入部114−2及び114−3に対して、同形状の押圧部材202を用いることができる。
次に、図10を参照して、回転子コア111の磁石挿入部114−1に磁石112を挿入する工程について説明する。図10は、回転子コア111の磁石挿入部114−1に対する磁石112の組み付け工程を示す図である。
(A)はチャックCKで押圧部材201及び磁石112をつかむ前の状態を示している。この状態では、押圧部材201の平板部201Bb,201Cbは、図の上部に向かって、磁石112の側面との間隔dが大きくなるように、開いている。これにより、押圧部材201と磁石112との組み付け作業が容易になる。
(B)はチャックCKで押圧部材201及び磁石112をつかんだ状態を示している。このように、押圧部材201及び磁石112を一体で、磁石挿入部114−1に同時に挿入できるため、組み付け工数を低減することができる。また押圧部材201及び磁石112を別々に磁石挿入部114−1に組み付けを行うための追加の装置が不要となる。
(C)を経て(D)の状態に至る。(D)は押圧部材201及び磁石112が磁石挿入部114−1に挿入され、回転子コア111に組み付けられた状態を示す。この状態では、チャックCKによる押圧部材201及び磁石112の把持が解除されている。この状態では、押圧部材201の湾曲部201Ba,201Caが幅方向w112の外側から内側に向かって押圧されることにより、押圧部材201の平板部201Bb,201Cbが磁石112の側面に接触し、平板部201Bb,201Cbと磁石112の側面との間隔dが0になっている(d=0)。なお上述した図3は、(D)に図示する状態を示している。
次に、図11を参照して、回転子コア111の磁石挿入部114−2,114−3に磁石112を挿入する工程について説明する。図11は、回転子コア111の磁石挿入部114−2,114−3に対する磁石112の組み付け工程を示す図である。
押圧部材202は、押圧部202Bが磁石112の幅方向w112の片側に設けられているため、チャックCKは押圧部202Bの平板部202Bbと磁石112の側面とを把持する。その他は、図10の押圧部材201の場合と同様であり、図11では、図10(A)に相当する状態のみを図示している。
図11においても、押圧部材202及び磁石112を一体で、磁石挿入部114−2,114−3に同時に挿入でき、図10で説明したのと同様な作用効果が得られる。
図10及び図11に示すように、押圧部材201,202の軸方向zの端部(平板部201Bb,201Cb,202Bb)は、少なくとも片側が、対向する磁石112の側面と平行に形成される。押圧部材201,202の端部201Bb,201Cb,202Bbが、対向する磁石112の側面と平行に形成されることで、押圧部材201,202及び磁石112を磁石挿入部114−1,114−2,114−3に挿入する際に、押圧部材201,202及び磁石112を同時につかむことができる。加えて、押圧部材201,202と回転子コア111の磁石挿入部114−1,114−2,114−3の内壁面との間隔d2(図7B参照)を大きくすることができ、接着剤等の樹脂を注入する場合に作業が容易となる。
回転子は主に電磁鋼板と磁石とで構成されており、電磁鋼板にスロット(磁石挿入孔114−1,114−2,114−2)を設けて磁石112を挿入する。その後、スロットに接着剤を流し込んで磁石112を固定する場合があるが、この工程管理が複雑になり、工数が増加する。このため、押圧部材201,202により磁石112の抜去力を大きくすることにより、接着剤の利用を避けることが好ましい。
以下、本発明に係る実施例の変更例について説明する。
[変更例1]
図12を参照して、押圧部材201の第1変更例(変更例1)について説明する。図12は、押圧部材201の第1変更例の外観を示す斜視図である。以下、上述した実施例と異なる構成について説明する。それ以外の構成は上述した実施例の構成と同様に構成することができ、上述した実施例の構成と同様な構成については上述した実施例と同様な作用効果を奏することができる。
図6では、押圧部材201は、第1押圧部201B、第2押圧部201C、及び連結部(連結片)201Aを一体で有する構成であった。この場合、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cは、径方向の湾曲面が形成された湾曲部(押圧部)201Ba,201Caと、平板状に形成された平板部201Bb,201Cbと、を有する構成であった。
本変更例では、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cは、軸方向zの全体が径方向の湾曲部(湾曲面)201Ba,201Caで構成される。すなわち、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cに平板部201Bb,201Cbが形成されていない。
また図12では、本変更例では図6に示すくびれ部201Dを設けない構成としているが、くびれ部201Dを設けた構成としてもよい。
また、本変更例における第1押圧部201B及び第2押圧部201Cの構成(形状)は、押圧部材202の湾曲部(押圧部)202Baに適用することができる。
[変更例2]
図13を参照して、押圧部材201の第2変更例(変更例2)について説明する。図13は、押圧部材201の第2変更例の外観を示す斜視図である。以下、上述した実施例と異なる構成について説明する。それ以外の構成は上述した実施例の構成と同様に構成することができ、上述した実施例の構成と同様な構成については上述した実施例と同様な作用効果を奏することができる。
本変更例では、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cは、図6に示す径方向の湾曲部(湾曲面)201Ba,201Caではなく、軸方向zの湾曲部(湾曲面)201Bc,201Ccで構成される。湾曲部(湾曲面)201Bc,201Ccは、軸方向に沿う断面上において湾曲することから、「軸方向の湾曲面」又は「軸方向の湾曲部」と呼ぶ。なお本変更例では、図6の場合と同様に、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cに平板部201Bb,201Cbを設けている。
第1押圧部201B及び第2押圧部201Cは、湾曲部201Ba,201Caが形成されないため、軸方向zに垂直な横断面が直線形状になる。このため図13では、A,B,C,Dで示す部位に直線状の形状が表れている。
この場合、磁石挿入部114−1に径方向の内壁湾曲部114−1Ba,114−1Caを設けていると、直線形状を成す第1押圧部201B及び第2押圧部201Cの両端部の角部が内壁湾曲部114−1Ba,114−1Caの湾曲面に当接することになり、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cが当接する内壁湾曲部114−1Ba,114−1Caの部位に応力集中が生じることになる。これを避けるためには、内壁湾曲部114−1Ba,114−1Caを湾曲させず、平面、或いは少なくとも軸方向に垂直な断面上において直線を描く面にすることが好ましい。
本変更例では、押圧部材201の形状が単純化され、製造が容易になるというメリットがある。
また図13では、本変更例では図6に示すくびれ部201Dを設けない構成としているが、くびれ部201Dを設けた構成としてもよい。
また、本変更例における第1押圧部201B及び第2押圧部201Cの構成(形状)は、押圧部材202の湾曲部(押圧部)202Baに適用することができる。この場合、内壁湾曲部114−2Baは平面、或いは少なくとも軸方向に垂直な断面上において直線を描く面にすることが好ましい。
[変更例3]
図14及び図15を参照して、押圧部材201の第2変更例(変更例2)について説明する。図14は、押圧部材201の第3変更例の外観を示す斜視図である。図15は、変更例3における押圧部材201について、好ましい形態の一例を示す軸方向zに沿う断面図である。以下、上述した実施例と異なる構成について説明する。それ以外の構成は上述した実施例の構成と同様に構成することができ、上述した実施例の構成と同様な構成については上述した実施例と同様な作用効果を奏することができる。
本変更例では、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cは、図6に示すのと同様な径方向の湾曲部(湾曲面)201Ba,201Caと、平板部201Bb,201Cbと、径方向の湾曲部201Ba,201Caと平板部201Bb,201Cbとの間に形成された径方向及び軸方向の湾曲部201Bd,201Cdと、を有している。すなわち第1押圧部201Bは、軸方向及び径方向の両方に湾曲した湾曲部201Bdを有する。また第1押圧部201Cは、軸方向及び径方向の両方に湾曲した湾曲部201Cdを有する。
湾曲部201Bd,201Cdは径方向に沿う断面上及び軸方向に沿う断面上の両方において湾曲することから、「径方向及び軸方向の湾曲面」又は「径方向及び軸方向の湾曲部」と呼ぶ。
湾曲部201Bd,201Cdは、軸方向zにおいて、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cの軸方向zにおける中央部に設けられている。すなわち湾曲部201Bd,201Cdは、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cの軸方向zにおける中心から図の上側のL201B1の範囲及び図の下側のL201B2の範囲に設けられている。この場合、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cの軸方向zにおける中央部は、軸方向zにおける中心を含む、L201B1及びL201B2の範囲である。これにより、磁石112の軸方向の傾きを防ぐことができる。
図6の第1押圧部201B及び第2押圧部201Cにおける、径方向及び軸方向の湾曲部201Bd,201Cdは、図6に示すような径方向の湾曲部201Ba,201Caで構成してもよく、また図13に示すような軸方向の湾曲部201Bc,201Ccで構成してもよい。
図14では、くびれ部201Dを設けた構成としているが、くびれ部201Dを設けない構成としてもよい。
また、本変更例における第1押圧部201B及び第2押圧部201Cの構成(形状)は、押圧部材202の湾曲部(押圧部)202Baに適用することができる。
本変更例の場合、図15に示すように、押圧部材201の下端(連結部201A側の端部)と径方向及び軸方向の湾曲部201Bd,201Cdとの間に磁石w112の幅方向w112内側に凸となる湾曲部201Be,201Ceを形成し、この湾曲部201Beと201Ceとの距離(間隔)が最短距離(間隔)w201BCとなるように押圧部材201を形成している。すなわち、押圧部材201は、第1押圧部201B及び第2押圧部201Cを一体で有し、磁石112の幅方向w112における第1押圧部201Bと第2押圧部201Cとの最短距離(間隔)w201BCが磁石112の幅w112(図3参照)より小さく形成される。
上述した実施例及びその変更例に係る回転電機の回転子110は、
磁石112と、回転子110の回転軸101の軸方向zに磁石112が挿入される磁石挿入部114−1,114−2,114−3を有する回転子コア111と、磁石112と磁石挿入部114−1,114−2,114−3の内壁面114−1Ba,114−1Ca,114−2Ba(114−3の内壁面は符号指示せず)との間に配置される押圧部材201,202と、を備え、
押圧部材201,202は、軸方向z及び磁石112の磁化方向に垂直な方向において、磁石112に対して一方の側方(側部)に配置される第1押圧部201B,202Bを有し、
前記第1押圧部201Bは、少なくとも軸方向の湾曲部201Bc,201Cc,201Bd,201Cd又は径方向の湾曲部201Ba,201Ca,201201Bd,201Cd,202Baのいずれか一方の湾曲部を有し、
第1押圧部201Bの湾曲部は、磁石挿入部114−1,114−2,114−3の内壁面114−1Ba,114−1Ca,114−2Baに接触している。
この場合、第1押圧部201B,202Bが、軸方向の湾曲部201Bc,201Cc,201Bd,201Cd又は径方向の湾曲部201Ba,201Ca,201201Bd,201Cd,202Baのうち、少なくとも径方向の湾曲部201Ba,201Ca,201201Bd,201Cd,202Baを有する場合に、磁石挿入部114−1,114−2,114−3は、第1押圧部201B,202Bの径方向の湾曲部201Ba,201Ca,201201Bd,201Cd,202Baが接触する内壁面114−1Ba,114−1Ca,114−2Ba(114−3の内壁面は符号指示せず)に、径方向の湾曲部を有するようにするとよい。
また押圧部材201,202の湾曲部201Ba,201Ca,201201Bd,201Cd,202Baは、軸方向及び径方向の双方に形成されるようにするとよい。これにより、磁石112の固定と位置決めの両方の効果を高めることができる。
図16を参照して、本発明に係る回転電機100を搭載した電気自動車について説明する。図16は、本発明の一実施例による回転電機100を搭載したハイブリッド型電気自動車の概略構成を示す図である。
本実施例に係る回転電機100は、回転電機のみの動力によって走行する純粋な電気自動車や、エンジン及び回転電機の双方によって駆動されるハイブリッド型の電気自動車に適用できるが、以下ではハイブリッド型の電気自動車を例に説明する。
車両100には、エンジン520と第1回転電機100−1と第2回転電機100−2とバッテリ580とが搭載されている。バッテリ580は、第1回転電機100−1や第2回転電機100−2による駆動力が車両500に必要な場合には、電力変換装置600を介して第1回転電機100−1や第2回転電機100−2に直流電力を供給する。さらに、バッテリ580は、回生走行時には第1回転電機100−1や第2回転電機100−2から直流電力を受ける。バッテリ580と第1回転電機100−1や第2回転電機100−2との間の直流電力の授受は、電力変換装置600を介して行われる。また、図示していないが、車両100には低電圧電力(例えば、14ボルト系電力)を供給するバッテリが搭載されており、以下に説明する制御回路に直流電力を供給する。
なお、第1回転電機100−1と第2回転電機100−2とはほぼ同じ構造を有しており、上述した回転電機100で構成することができる。但し、上述した押圧部材201,202に係る構造は、第1回転電機100−1と第2回転電機100−2の双方が備えている必要はなく、一方だけが備えていてもよい。
エンジン520及び第1回転電機100−1や第2回転電機100−2による回転トルクは、変速機530とデファレンシャルギア560を介して前輪510に伝達される。変速機530は、変速機制御装置534により制御される。エンジン520は、エンジン制御装置524により制御される。バッテリ580は、バッテリ制御装置584により制御される。変速機制御装置534、エンジン制御装置524、バッテリ制御装置584、電力変換装置600及び統合制御装置570は、通信回線574によって互いに接続されている。
統合制御装置570は、変速機制御装置534、エンジン制御装置524、電力変換装置600及びバッテリ制御装置584よりも上位の制御装置であり、変速機制御装置534、エンジン制御装置524、電力変換装置600及びバッテリ制御装置584の各状態を表す情報を、通信回線574を介してそれらからそれぞれ受け取る。統合制御装置570は、取得したそれらの情報に基づき各装置への制御指令を演算する。演算された制御指令は、通信回線574を介してそれぞれの装置へ送信される。
バッテリ580は、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池などの2次電池で構成され、250ボルトから600ボルト、又はそれ以上の高電圧の直流電力を出力する。バッテリ制御装置584は、バッテリ580の充放電状況やバッテリ580を構成する各単位セル電池の状態を、通信回線574を介して統合制御装置570に出力する。
統合制御装置570は、バッテリ制御装置584からの情報に基づいてバッテリ580の充電が必要と判断すると、電力変換装置600に発電運転の指示を出す。また、統合制御装置570は、主に、エンジン520、第1回転電機100−1及び第2回転電機100−2の出力トルクの管理と、エンジン520の出力トルクと第1回転電機100−1及び第2回転電機100−2の出力トルクとの総合トルクやトルク分配比の演算処理を行い、この演算処理結果に基づく制御指令を、変速機制御装置534、エンジン制御装置524及び電力変換装置600へ送信する。電力変換装置600は、統合制御装置570からのトルク指令に基づき、指令通りのトルク出力又は発電電力が発生するように第1回転電機100−1及び第2回転電機100−2を制御する。
電力変換装置600には、第1回転電機100−1及び第2回転電機100−2を運転するためのインバータ回路を構成するパワー半導体が設けられている。電力変換装置600は、統合制御装置570からの指令に基づきパワー半導体のスイッチング動作を制御する。このパワー半導体のスイッチング動作により、第1回転電機100−1と第2回転電機100−2は、電動機として又は発電機として運転される。
第1回転電機100−1と第2回転電機100−1を電動機として運転する場合は、高電圧のバッテリ580からの直流電力が電力変換装置600のインバータの直流端子に供給される。電力変換装置600は、パワー半導体のスイッチング動作を制御して、供給された直流電力を3相交流電力に変換し、変換した電力を第1回転電機100−1と第2回転電機100−2に供給する。一方、第1回転電機100−1と第2回転電機100−2を発電機として運転する場合には、第1回転電機100−1及び第2回転電機100−1の回転子が外部から加えられる回転トルクで回転駆動され、第1回転電機100−1及び第2回転電機100−2の固定子巻線に3相交流電力が発生する。発生した3相交流電力は、電力変換装置600で直流電力に変換され、この直流電力がバッテリ580に供給されることにより、高電圧のバッテリ180が充電される。
本実施例の回転電機100では、回転子コア111の強度低下を抑制し、高回転速度化を実現できる。その結果、本実施例の回転電機100は、高回転速度化による小型化を実現できる。本実施例の回転電機100は、小型化及び低コスト化が可能であり、自動車主機用モータに適用するのに好適である。本実施例の回転電機100を自動車主機用モータに適用した場合、e-Axle(モータ、インバータ及び減速機を一体化したトラクションユニット)の観点では、モータの小型化により車内の配置自由度が増えるだけでなく、2モータ化などシステムのバリエーションを増やすことができる。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加したりすることが可能である。