JP2021138807A - 木炭の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 木炭の強度を向上させることができる木炭の製造方法を提供する。【解決手段】 木材にタール蒸気を供給しながら、木材を700℃以上1200℃以下の温度まで昇温して炭化させる。ここで、木材を800℃まで昇温し、見かけ比重が0.55g/cm3以上の木炭を製造することができる。また、木材を1000℃まで昇温し、見かけ比重が0.48g/cm3以上の木炭を製造することができる。さらに、木材を1100℃まで昇温し、見かけ比重が0.45g/cm3以上の木炭を製造することができる。【選択図】 図6

Description

本発明は、木炭の強度を向上させることができる木炭の製造方法に関するものである。
二酸化炭素は代表的な温室効果ガスとして知られている。製鉄業は二酸化炭素排出量が多い産業として知られており、世界中の二酸化炭素排出量の約5%は製鉄業に由来すると試算されている。製鉄プロセスの中でも、高炉で発生する二酸化炭素の量は多く、高炉法を主体とする製鉄プロセスでは、8割から9割程度の二酸化炭素が高炉での還元反応に伴って発生することが知られている。高炉内での鉄鉱石の還元反応は、主として、石炭やコークスを還元剤として利用しており、不可避的に化石燃料由来の二酸化炭素が大量に発生してしまう。そこで、非化石燃料を還元剤として利用することで、高炉内での反応に伴う二酸化炭素の発生量を低減する試みが多数進められている。
高炉での化石燃料使用量を削減することを目的に、木材などのバイオマスを炭化し、還元剤として高炉内に装入する試みが古くより行われている。高炉の羽口から吹き込まれる微粉炭は、全量を木炭で置き換えることができることがいくつかの研究で報告されており(非特許文献1、2)、また、微粉鉄鉱石と木炭粉とを混合してペレット化し、原料として利用する手法も報告されており、実機の高炉での試験も達成されている(非特許文献3)。またブラジルでは、小型の高炉については、すべての還元剤を木炭とした操業も達成されている。
近代の大型高炉の炉頂から装入されるコークスについても、この製造に際して木炭の利用を試みた例が報告されている。例えば、コークス製造時に、粘結炭の一部を木炭に置き換える検討は多数なされているが、質量比で5%以下程度を木炭に置き換えた場合においては、通常のコークスに近い強度が得られることが報告されている(特許文献1)。その他、バイオマス粉とバインダーを混合したうえで、加圧条件下で炭化する手法が多数開示されており(特許文献2〜4)、適切な処理を施すことで製鉄用のコークスと同程度の高い強度が得られている。また、特別な処理を施さずに、木材を炭化して木炭を製造した場合にも、一部の報告においては製鉄用コークスに近い強度が得られたとの報告がある(非特許文献4、5)。
Wang, Chuan, et al. "Injection of solid biomass products into the blast furnace and its potential effects on an integrated steel plant." Energy Procedia 61 (2014): 2184-2187. Ja de Castro, Jose Adilson, et al. "Analysis of the combined injection of pulverized coal and charcoal into large blast furnaces." Journal of Materials Research and Technology 2.4 (2013): 308-314. Mousa, Elsayed, et al. "Reduced Carbon Consumption and CO 2 Emission at the Blast Furnace by Use of Briquettes Containing Torrefied Sawdust." Journal of Sustainable Metallurgy (2019): 1-11. Kumar, M., B. B. Verma, and R. C. Gupta. "Mechanical properties of acacia and eucalyptus wood chars." Energy sources 21.8 (1999): 675-685. Emmerich, F. G., and C. A. Luengo. "Babassu charcoal: a sulfurless renewable thermo-reducing feedstock for steelmaking." Biomass and Bioenergy 10.1 (1996): 41-44. Characteristics of coal and pine sawdust Co-carbonization Weber, Kathrin, and Peter Quicker. "Properties of biochar." Fuel 217 (2018): 240-261.
特開2004−277452号公報 特開2014−231037号公報 特開2012−46729号公報 特開2009−51985号公報
しかしながら、木炭から大型高炉向けの製鉄用コークスを製造する手法として、従来報告されているものはいずれも課題がある。例えば、コークス製造時に、粘結炭の一部を木炭に置き換える検討は多数なされているが、いずれも質量比で5%程度を木炭に置き換えただけで製品コークスの強度が著しく低下することが報告されている(非特許文献6)。しかもその強度低下の度合は、コークスと木炭の加重平均値よりも低く、木炭が含む含酸素官能基がコークス品質を著しく低下させるとされている。既述の通り、バイオマス添加量が質量比3%未満であれば強度を保持した報告もあるが(特許文献1)、そうした少量の利用では二酸化炭素排出量の削減に対する効果は小さい。その他、バイオマス粉とバインダーを混合したうえで、加圧条件下で炭化する手法については(特許文献2〜4)、非常に高コストであり、製鉄プロセスで利用するような膨大な量の木炭を製造するのに適した手法ではない。また、もとより高い強度を有する実などを用いた報告が多く、大量に入手可能な木材で高強度木炭を得たという報告もない。さらには、試料間でのばらつきが非常に大きいことも指摘されている(非特許文献7)。
上述した従来の手法を踏まえ、本発明の目的は、大量に入手可能な木材を用いて、木炭の強度を向上させることができる木炭の製造方法を提供するものである。
本発明は、次の態様を含む。
[1]
木材にタール蒸気を供給しながら、前記木材を700℃以上1200℃以下の温度まで昇温して炭化させることを特徴とする木炭の製造方法。
[2]
前記木材を800℃まで昇温し、見かけ比重が0.55g/cm以上の木炭を製造することを特徴とする[1]に記載の木炭の製造方法。
[3]
前記木材の気乾比重が0.68g/cm以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の木炭の製造方法。
[4]
前記木材を1000℃まで昇温し、見かけ比重が0.48g/cm以上の木炭を製造することを特徴とする[1]に記載の木炭の製造方法。
[5]
前記木材の気乾比重が0.55g/cm以上であることを特徴とする[1]または[4]に記載の木炭の製造方法。
[6]
前記木材を1100℃まで昇温し、見かけ比重が0.45g/cm以上の木炭を製造することを特徴とする[1]に記載の木炭の製造方法。
[7]
前記木材の気乾比重が0.55g/cm以上であることを特徴とする[1]または[6]に記載の木炭の製造方法。
[8]
コークス炉炭化室に充填された石炭の充填層の上面に前記木材を充填し、前記タール蒸気として、前記石炭の乾留によって発生するガスに含まれるタール成分を用いることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の木炭の製造方法。
[9]
10℃/分以下の昇温速度で前記木材を昇温することを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載の木炭の製造方法。
[10]
前記木炭は、高炉用コークスの代替物として用いられることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載の木炭の製造方法。
本発明によれば、木炭の強度を向上させることができる。
試験結果1について、炭化温度800℃及びガス条件1(タール無)における見かけ比重と圧壊強度との関係を示すグラフである。 試験結果1について、炭化温度800℃及びガス条件2(タール1倍)における見かけ比重と圧壊強度との関係を示すグラフである。 試験結果1について、炭化温度800℃及びガス条件3(タール2倍)における見かけ比重と圧壊強度との関係を示すグラフである。 試験結果2について、炭化温度1000℃及びガス条件1(タール無)における見かけ比重と圧壊強度との関係を示すグラフである。 試験結果2について、炭化温度1000℃及びガス条件2(タール1倍)における見かけ比重と圧壊強度との関係を示すグラフである。 試験結果2について、炭化温度1000℃及びガス条件3(タール2倍)における見かけ比重と圧壊強度との関係を示すグラフである。 試験結果3について、炭化温度1100℃及びガス条件1(タール無)における見かけ比重と圧壊強度との関係を示すグラフである。 試験結果3について、炭化温度1100℃及びガス条件2(タール1倍)における見かけ比重と圧壊強度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態である木炭の製造方法について説明する。木炭とは、酸素を供給しない条件で木材を加熱昇温することで、炭素の比率を高めたものである。最高到達温度が200〜300℃となる条件で加熱昇温処理することをトレファクション(半炭化)と呼び、300℃を超える最高到達温度で加熱昇温処理することを炭化と呼ぶ。木材にいずれの処理(半炭化又は炭化)を施した場合でも、得られるものは木炭である。まず、製鉄プロセスのうち特に高炉用途で木炭を用いる場合に、木炭に要求される性能を示したうえで、その性能を備えた木炭を製造するために着目したパラメーターの詳細を以下に説明する。また、それを踏まえて、実際に木炭を製造するプロセスの概略についても以下に説明する。
(高炉装入炭用途の木炭に求められる性能)
高炉の炉頂から装入する装入炭として利用される炭材には、高い強度と二酸化炭素に対する低い反応性、そして価格が安いことが求められる。以下でこれら各要素について説明を行う。
まず、高炉の装入炭には、高い強度が求められる。高炉内の還元反応は、主として還元性ガスと酸化鉄(鉱石)との間の反応として進行する。従って、高炉内の通気抵抗を下げ、還元性ガスが効率よく流れることが、高炉の生産性を高めることにつながる。高炉に装入する炭材の強度が低く、すぐに粉化してしまうと、高炉内の通気抵抗を高めて、高炉の生産性を低下させる原因となる。したがって、木炭を高炉の装入炭用途に用いる場合においても、木炭には高い強度が必要となる。
高炉に装入される木炭は、炉頂までの搬送中の衝撃や、高炉内部における荷重(上方に積載された装入物からの荷重)にさらされることになるが、それらに十分に耐えられる強度を持つ必要がある。具体的には、木炭をコークス代替として利用する場合には、圧壊強度で8MPa以上が必要であり、木炭をナットコークス代替として利用する場合でも、圧壊強度で3MPa以上が必要である。また、高炉内に装入されてからもしばらくは粉化せずに元の形状を保つ必要がある。したがって、高炉内の雰囲気に含まれる二酸化炭素との反応性を低下させる必要もある。しかしながら、無機化合物の影響を無視すれば、一般的に高強度の炭材ほど、二酸化炭素との反応性も低くなる傾向にあるため、本実施形態においても製品としての木炭の強度に特に着目して評価を行う。
続いて、高炉に用いる炭材は、価格が安く、また大量に入手可能である必要がある。高炉用コークスの製造に利用される石炭の価格は、およそ1万5千円/トン〜2万円/トンであり、日本国内で利用される高炉用コークスの量は、およそ4000万トン/年である。したがって、高炉用コークスの一部を木炭に代替する場合にも、木炭の価格は高炉用コークスの価格と同程度以下であり、そして少なくとも100万トン/年程度の生産量が可能となりうる木材を用意する必要がある。
(高強度木炭の製造に際して留意すること)
高炉用コークスを代替することを目的に木炭を利用するためには、木炭の強度が高く、比較的安価で、大量に入手可能であることが必要である。こうした性能を持つ木炭を製造するために、原料である木材の樹種と、炭化温度、炭化雰囲気に着目した。以下で各項目について述べる。
(樹種の気乾比重)
木炭の原料である木材は、その樹種によって大きく性質が異なる。まず、比重に大きな違いがある。木材は、その樹種によらず、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを主成分としているが、それらの構成比率が樹種によって大きく異なっており、その結果として炭化処理の前後において密度や強度が大きく変化する。
空気中で風乾された後の比重である気乾比重(気乾密度ともいう)で比較すると、生育環境や部位によってばらつきがあるものの、最も気乾比重の小さい木材であるバルサは0.15g/cm程度、一方で最も気乾比重が大きい木材であるリグナムバイタは1.4g/cm程度であり、樹種によって10倍程度の違いがある。気乾比重と炭化処理後の比重との間には、ほぼ比例関係が成立することが報告されており、密度の高い木が、比重の大きい木炭になりやすい(Byrne, Christopher E., and Dennis C. Nagle. "Carbonization of wood for advanced materials applications." Carbon 35.2 (1997): 259-266.)。また、定量的に調べた報告は見当たらないが、比重の大きい木炭が高い強度を持つ傾向があることが知られている。したがって、炭化処理によって得られた木炭の見かけ比重が期待する値よりも小さい場合には、原料として用いる木材を選定しなおし、気乾比重がより大きい木材を選択することで、木炭の見かけ比重を高めることができる。同じ樹種であっても、生育環境や樹齢などによって木材の気乾比重は変化するため、トレーサビリティーが確保された木材を入手することで、目標とする見かけ比重を持つ木炭を製造可能である。
したがって、高い強度の木炭を製造するには、比重が大きい樹種を選択することが好ましいと言えるが、そうした木材は価格が高く、入手も難しい傾向がある。例えば、バルサ(気乾比重0.15g/cm程度)やスギ(気乾比重0.3g/cm程度)、ヒノキ(気乾比重0.4g/cm程度)、バーチ(気乾比重0.7g/cm程度)などは流通量が多く、ホームセンターなどでも入手可能である。一方で、イチイカシ(0.8g/cm程度)、シラカシ(0.9g/cm程度)、シマコクタン(1.1g/cm程度)、リグナムバイタ(1.4g/cm程度)は流通量が少なく、一部の高級家具等に利用されるのみである。リグナムバイタについては、絶滅危惧種(ワシントン条約の附属書II)に指定されており、輸出入に際して特別な許可も必要とされている。したがって、気乾比重が相対的に小さい樹種を用いた場合でも十分な強度を持つ木炭を製造可能とする必要がある。
(樹種の無機成分)
樹種の選定に際しては、気乾比重に加え、その組成にも注意が必要である。特に、樹木に含まれる無機成分は、炭化処理によって得られる木炭にも残留するために注意が必要である。高炉の内壁はカーボンレンガで覆われており、カーボンレンガの寿命によって高炉改修までの期間が変化する。したがって、カーボンレンガにダメージを与える成分は、高炉用コークスの代替となる木炭に含まれることは好ましくない。
具体的には、第1族元素のアルカリ元素、第17族元素のハロゲン元素は、カーボンレンガの損耗を促進するため、木炭への含有を避けるべきである。パームヤシの幹(トランク)は、ドライベースの質量比で2.5質量%程度のカリウムと、2質量%程度の塩素を含むため、高炉用コークスの用途の木炭としては利用できない(S.K. Loh, The potential of the Malaysian oil palm biomass as a renewable energy source, Energy Convers. Manag. 141 (2017) 285-298、K.T. Lee, C. Ofori-Boateng, Sustainability of Biofuel Production from Oil Palm Biomass, 1st ed., Springer Singapore, Singapore, 2013、R. Hashim, N. Saari, O. Sulaiman, T. Sugimoto, S. Hiziroglu, M. Sato, R. Tanaka, Effect of particle geometry on the properties of binderless particleboard manufactured from oil palm trunk, Mater. Des. 31 (2010) 4251-4257)。
また、竹についてもパームヤシと同様にカリウム含有量が非常に高いことが知られているため、高炉用コークスの代替となる木炭には適さない。さらに、竹は茎が空洞になっており、単位体積あたりの重量が小さくなるために運搬効率(1回の運搬における運搬量)が悪いという課題もある。一般的には、ヤシや竹は「木」として扱われるが、これらは形成層を持たないために厳密には草本であり、針葉樹や広葉樹に代表される木本とは別のものである。草本に分類される植物は、カリウムや塩素の含有量が多いことや、灰分の含有比率が木本に比べて高いことが多いため、高炉用コークスの代替となる木炭には適していない。湿式処理などでそうした元素の含有量を低減せしめた報告もあるものの、非常に手間がかかるため、大量の原料(草本)に同様の処理を施すことは現実的ではない。木本に限定すれば、樹種や部位によって違いはあるものの、アルカリ元素やハロゲン元素の含有比率は一般に低く、炭化処理によって得られる木炭に含まれる灰分の割合も質量比で1〜2質量%程度と少なくなる。したがって、木炭の原料として木本を選択するとよい。
(木本の年輪方向)
大量に入手可能な木本は殆どの場合に明瞭な年輪を持ち、冬目の部分の強度が高く、春目の部分の強度は弱くなっている。したがって、年輪に対する相対的な方向(以下に説明する3つの方向)によって大きく強度が異なる。円柱状の幹の長手方向における圧壊強度が最も高い。一方で、円柱状の幹の周方向における圧壊強度が最も低くなる。円柱状の幹の径方向における圧壊強度は、長手方向における圧壊強度よりも低く、周方向における圧壊強度よりも高くなる。炭化処理後の木炭においても同様であり、年輪に対する相対的な方向によって大きく強度が異なっている。したがって、木炭の強度評価を行う際には、年輪に対する相対的な方向を考慮して試験を実施するべきである。また、炭化処理に伴う木本の収縮率も年輪に対する相対的な方向で異なっており、長手方向、径方向、周方向の順で収縮率が大きくなる。したがって、最終製品の木炭に特に求める寸法がある場合には、選択した樹種の収縮率を考慮した寸法に予め切断しておいてもよい。また、特段に求める寸法が無い場合には、任意の形状の木本に対して炭化処理を行ってもよく、木本をペレット状に破砕したうえで炭化処理を行ってもよい。
(炭化条件:温度)
いずれの樹種を用いた場合においても、炭化処理によって得られる木炭の性状は炭化処理時の温度に強く依存する。木炭の炭化処理を行う際には、昇温速度と最高到達温度の双方が重要である。木材を昇温し、熱分解する際には、300℃以下の温度で水分と水酸基が脱離する。300〜600℃の範囲でカルボキシル基やメチル基の脱離が進行し、炭化が進んで大きく重量が減少する。その後、昇温するに従って、水素の脱離が進行し、グラファイト化が進行する。この過程でのガス発生量が多く、体積収縮も大きいため、昇温速度が速すぎると、木材中の温度が不均一となることで木材中の箇所に応じて収縮率にムラが生じ、亀裂が生成する原因となる。したがって、昇温速度は遅い方が好ましい。
具体的には、昇温速度が10℃/分以下であることが好ましく、5℃/分以下であることがさらに好ましく、3℃/分以下であることがより一層好ましい。特に、炭化反応が主に進行する300〜600℃の範囲で昇温するときに、上述した昇温速度とすることが好ましい。また、炭化処理中の最高到達温度が高いほどグラファイト化が進行し、一般的には好ましいが、最高到達温度が高すぎると、最高到達温度に到達させるまでの熱量が必要になってコストが高くなるほか、木炭にマイクロクラックが入り、強度が低下することが知られている。したがって、最高到達温度は700℃以上でかつ1200℃以下であることが好ましく、800℃以上でかつ1200℃以下であることがより好ましい。また、炭化処理中の温度を最高到達温度付近で一定時間保持することで、木炭の粒子内部の温度が均一となり、粒子全体を均一な炭化状態とすることができる。具体的には、最高到達温度に達して±50℃以内の温度範囲にて10分以上保持することが好ましく、30分以上保持することがより好ましく、60分以上保持することがさらに好ましい。
後述する実施例で示す通り、木材を800℃(最高到達温度)まで昇温することにより、見かけ比重が0.55g/cm以上の木炭を製造することができ、この木炭の原料となる木材としては、気乾比重が0.68g/cm以上である木材を用いることができる。また、木材を1000℃(最高到達温度)まで昇温することにより、見かけ比重が0.48g/cm以上の木炭を製造することができ、この木炭の原料となる木材としては、気乾比重が0.55g/cm以上である木材を用いることができる。さらに、木材を1100℃(最高到達温度)まで昇温することにより、見かけ比重が0.45g/cm以上の木炭を製造することができ、この木炭の原料となる木材としては、気乾比重が0.55g/cm以上である木材を用いることができる。
(炭化条件:雰囲気)
炭化処理中の雰囲気もまた、木炭の品質に大きな影響を与えることが知られている。本実施形態においては、木炭の強度向上を図るために、タール蒸気フロー条件での炭化試験を行っている。以下で、本手法の技術思想を示し、それを踏まえてタール蒸気の導入条件について説明を行う。
木材を炭化処理することで製造した木炭の強度が、高炉用コークスの強度よりも低い理由は主に二つである。一つ目の理由は、グラファイト化が進行し難いことである。木材は、低温で溶融せず、また木材を構成する分子は、直鎖やエーテル結合などを多量に含む巨大分子である。従って、溶融に伴う分子の並び代わりが進行する前に、三次元的に炭素の結合が進行してしまい、グラファイト化が進行しない。二つ目の理由は、木炭が細孔を大量に含む構造を有することである。木炭には、原料の木材の持つ細胞や維管束の構造が残っており、多孔質な構造を有している。したがって、高炉用コークスと比較して肉薄であり、比重が小さく、低強度となる。以上より、木炭の強度を高めるためには、炭化処理中のグラファイト化を促進するとともに、細孔を埋めて比重を高めることが必要である。
タール蒸気を炭化処理中の木材に供給することによって、炭化処理中の木炭のグラファイト化を促進するとともに、細孔を埋めて比重を高めることができる。以下で、そのメカニズムの概略を示す。タールは芳香族化合物が多く含まれる液体である。芳香環を多数含む分子は、グラファイトの前駆体を多数含み、グラファイト化を促進する効果を持つ。したがって、グラファイト化を促進するために、タールを他の物質に混合する手法は古くより利用されている。しかしながら、木材に多量に含まれる酸素が、木材に供給したタールの三次元的な反応を促進してしまうために、木炭の強度が期待通りに向上しないことが知られている。また、木材に供給したタールの多くの部分が昇温過程で揮散し散逸してしまう。
そこで、本実施形態では、木材の炭化が進んだ700℃以上の温度においても継続してタールを供給することで、木材に含まれる酸素の影響を受けずに効果的にグラファイト化を促進することとした。これにより、炭化処理によって得られる木炭の強度が向上される。また、タール自身が木炭の細孔内で炭化することによって、木炭のクラックや細孔が埋められ、比重が増大する効果も得られた。これにより、大幅な強度低下の原因となるクラックが無くなり、木炭の強度が向上し、強度のばらつきが抑制される。特にタール蒸気の濃度が高い条件での実施例においては、木炭のグラファイト化が効率的に進行し、大幅な形状変化を伴う緻密化が確認された。本実施形態においては、所定の見かけ比重以上の木炭を製造することで、強度の高い木炭を得る。仮に、炭化処理によって得られた木炭の見かけ比重が、目標となる見かけ比重を下回っていた場合には、同一の木材を用いて炭化処理を再度行うときに、導入するタールの量を増大させることが効果的である。木炭を製造する装置(例えば、後述するコークス炉の炭化室)内における原料(木材)の設置場所を変更することで、木材と反応するタール分圧を上昇させることも効果的である。これら施策により、木炭の見かけ比重が増大し、木炭の強度も高まる。
炭化処理中に木炭に供給されるタールとして、さまざまなものが利用可能である。様々なランクの石炭の熱分解時に発生するコールタールや、石油の高沸点留分であるアスファルテン、木材の熱分解時に得られる木酢液なども利用可能である。ただし、一般的な木酢液は、大量の水分が含まれており、本実施形態のように、木炭を高炉用コークスの代替として用いる場合には、水蒸気による木炭のガス化と強度低下を引き起こすため好ましくない。さらに、木酢液に含まれる有機物の大部分は、カルボン酸やアルデヒド(酸素原子を含む)などであり、グラファイト化の促進効果は発現されない。したがって、木酢液を利用する場合には、回収方法の工夫により水分や含酸素成分の量を減らしておくことが好ましい。また、タール中の高沸点の成分が多いほど、炭化反応中の木炭への付着量が増大し、木炭の強度向上の効果が大きくなる。したがって、高沸点成分が多いほど好ましい。
なお、木炭の強度を高めるためには、当然のことながら、炭化処理の雰囲気中に、木炭の強度低下を引き起こすガス種を極力含めないことが重要である。特に800℃以上の高温に達している状態で、水蒸気や二酸化炭素などの酸素を含むガスに曝してしまうと、木炭の一部のガス化が進行し、強度が著しく低下する原因となる。したがって、800℃以上の温度範囲においては、水蒸気や二酸化炭素の濃度を可能な範囲で低減することが好ましい。
(炭化処理の概略)
以下で、炭化処理の操業条件の概略を説明する。まず、炭化処理を行う設備は、大気の漏れ込みを十分に抑制でき、10℃/分以下の昇温速度で木材を昇温可能なものが好ましい。また、炭化処理を行う設備は、炭化反応中に木材の充填層全体にタール蒸気を導入可能な吹込み口といった、タール蒸気を供給する部位を備えている。タール蒸気の導入を開始する前に、木材は予め乾燥されていることが好ましく、より好ましくはトレファクション処理により、炭素含有率を高めておくことが好ましい。これらの前処理により、水分の気化に伴う吸熱反応が減少し、炭化処理中の雰囲気の温度制御が容易となり、木炭の生産性が向上する。
また、上述したように、導入するタール蒸気は、高沸点の成分比率が高いことが好ましいが、この場合には、木材の充填層内の温度が低い状態でタール蒸気の導入を開始したときに、タール蒸気が充填層内で多量に凝結し、閉塞を生じる可能性がある。そこで、充填層内の温度が所定温度以上になってからタール蒸気の導入を開始することが好ましい。具体的には、充填層内の温度が200℃以上になってからタール蒸気の導入を開始することが好ましく、300℃以上となってからタール蒸気の導入を開始することがより好ましい。ここで、木材の充填層内の温度は、炭化処理の雰囲気の温度から把握することができる。
上記の条件を満たす具体的な炭化処理としては、コークス炉(炭化室)の上部空間を利用した木炭の製造が挙げられる。まず、予め乾燥、またはトレファクション処理を施した木材を、炭化室の上部空間に装入可能なサイズに切断・破砕したうえで、炭化室に事前に装入された石炭の充填層の上面に装入する。それ以降は、通常通りにコークス炉を操業して石炭の乾留反応を進めることによって、タール成分を含むガスが発生し、木材が装入された上部空間がタール蒸気の雰囲気になり、タール蒸気を供給した木炭の製造が可能となる。ここで、石炭の乾留反応によって発生したガスに含まれるタール成分が、木材に導入されるタール蒸気として用いられる。
コークス炉内の昇温速度は遅く、また、石炭の熱分解に伴ってタールが発生して炭化室の上部空間に移動するために、炭化室内の温度が300℃以上となってからタール蒸気が木材の充填層に到達することとなる。このとき、木炭はコークス炉(炭化室)の上部空間に集中的に充填されているため、石炭から発生するタール蒸気とは別に、上部空間へタール蒸気を追加しても構わない。また、炭化室から排出されるガスに木材由来の含酸素成分が含まれるので、木材を装入しなかった場合に比べて、炭化室から排出されるガスの改質反応が容易となる。なお、コークス炉に木材を装入する際には、コークス炉(炭化室)の底部付近に木材を装入することや、木材を石炭と混合して装入することは避けるべきである。既往の研究で示される通り、木材の熱分解時に発生するガス成分が石炭に接触すると、製品コークスの品質を低下させるためである。
(製品木炭の評価方法)
炭化処理によって得られた木炭の品質評価方法について、以下に説明する。まず、木炭の組成については、石炭やコークスに対して通常実施される手法をそのまま適用可能である。JIS規格に従い、標準の分析方法によって分析すればよい。工業分析によって、水分、灰分、揮発分の定量を行う場合は、JIS M8812に記載の方法を用いればよい。元素分析によって、炭素、水素、硫黄、窒素、リン、酸素の定量を行う場合には、JIS M8813に記載の方法を用いればよい。具体的な測定手順の一例について以下に説明する。
水分の分析には、大気中ないしは調湿された空間で十分に乾燥された気乾試料を用いる。気乾試料1g程度を量り取り、107℃程度で一時間程度乾燥し、デシケーター内部で冷却したうえで重量測定を行う。このとき、乾燥室内の雰囲気は、大気の他、窒素やヘリウムなどが選択可能である。灰分の分析には、気乾試料1gを量り取り、815℃程度にて大気中で灰化させ、得られた灰の重量を測定する。揮発分の分析には、量り取った気乾試料1gを、900℃程度で乾留させ、乾留前後の重量変化分を揮発分とする。
元素分析については、気乾試料0.06gを量り取り、950℃にて分析計(例えば、有機元素分析装置CHN628、LECOジャパン合同会社製)で燃焼させ、排ガスの分析を行い、炭素、水素、窒素の定量を行う。硫黄の定量は、気乾試料0.6gを約1350℃にて酸素気流下で燃焼させ、排ガス中の酸化硫黄を過酸化水素水に吸収させ、NaOHで滴定分析する。リンの定量が必要な場合には、JIS M8813の附属書6に従い、モリブデン青吸光光度法、又はりんバナドモリブデン黄吸光光度法を用いて定量を行う。酸素の量は、全体の質量から、炭素と水素と窒素と硫黄の質量を差し引くことでおおよそ推定可能である。ここで、JIS M8813によれば、酸素の量を算出する上で、灰分や灰中の硫黄成分を考慮することもできる。
強度の測定について、石炭やコークスを対象としたJIS規格の分析法(例えば、JIS K2151に規定された落下強度試験や回転強度試験)では、数十キログラムの試験片が必要となってしまい、様々な炭化条件での比較が困難である。したがって、本実施例では、圧壊強度を指標として評価を行った。試験片に上部より荷重をかけ、破壊された時点での荷重を記録し、その荷重値をもとに試験片の寸法を用いて圧壊強度を破壊時の圧力値として計算した。このとき、試験片が直方体ないしはそれに近い形状をしている場合には、破壊時の荷重を底面積で除すことで圧壊強度を計算した。試験片が直方体以外の形状をしている場合には、既往の報告に基づき、圧壊強度から以下の式(1)に従い、間接引張強度として圧壊強度を算出した(Y. Hiramatsu, Y. Oka, H. Kiyama, Rapid Determination of the Tensile Strength of Rocks with Irregular Test Pieces, J. Min. Metall. Inst. Jpn., 932, 1965, 1024-1030.)。
σt=0.9P/d ・・・(1)
ここで、σtは間接引張強度[MPa]、Pは圧壊強度[N]、dは試験片の直径[mm]である。木炭は、上述したように、その年輪に対する相対的な方向によって強度が大きく異なることが知られているため、複数の試験片を用いて、複数の荷重方向に対する強度を調べるべきである。なお、試験片の形状が非常に歪であり、圧壊強度試験を行うことが困難と判断された場合には、その試験片については圧壊試験を実施しなかった。
木炭の見かけ比重は、0.55g/cm以上であることが好ましい。木炭の見かけ比重は、試験片の質量と寸法を用いて計算することができる。試験片が直方体ないしはそれに近い形状をしている場合には、試験片の質量[g]を測定し、試験片(直方体)を構成する三辺の長さをもとに体積[cm]を計算して、質量(測定値)を体積(計算値)で除すことにより見かけ比重[g/cm]を計算することができる。試験片が直方体以外の他の形状である場合には、画像解析により体積を見積ることができる。このとき、体積評価の際にアルキメデス法などを用いることは好ましくない。試験片の表面に存在する細孔が試験片の体積に含まれなくなるため、木炭表面の細孔の有無にかかわらず同程度の密度となってしまうためである。この状態では、木炭の細孔がタール蒸気によって閉塞され、閉気孔が増えた場合には、試験片の体積に含まれる空隙体積が増大し、試験片の密度が低下してしまう。仮に浸漬法(水中浸漬法など)による体積評価を行うのであれば、薄いビニルで試験片を真空パックし、測定を行うことが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(試験1:試験片切断)
下記表1に示す樹種の木材を入手し、それらを電動ノコギリで8mm四方のブロックに切断して後述する圧壊強度試験を実施した。各樹種について、試験片を150個以上作成し、十分な量の試験を実施可能とした。なお、いずれの試験片も長手方向、径方向、周方向の3方向に辺を持つ立方体とした。リグナムバイタについては、入手した板の内部で年輪が湾曲していたため、一部の試験片については上記方向とは異なる方向に切断した。なお、下記表1に示す気乾比重の値は、本発明者が入手した木材での実測値であり、同一樹種のすべての木材で同様の値を取るわけではないことは留意すべきである。同じ樹種であっても、生育条件や部位によって気乾比重が大きく変化することが知られている。したがって、入手した木材の物性値を予め調べておくことが大事である。
Figure 2021138807
(試験2:炭化試験)
上記試験1にて作成した試験片を用いて、炭化試験を実施した。作成した試験片10個程度を、内径約20mm、外径25.4mmのアルミナ管に入れ、シリカウールで試験片を固定した。アルミナ管を環状炉に設置し、下記表2に示すガス条件1〜4でガスを流通させながら、3℃/分の昇温速度で800℃、1000℃、1100℃のいずれかまで昇温し、最高到達温度(800℃、1000℃又は1100℃)で1時間保持した。
Figure 2021138807
上記表2に示す通り、ガス条件1では、タール蒸気を導入せずに、100Ncm/分の流量で窒素ガスを流通させた。ガス条件2では、1.7Ncm/分(ガス条件3,4の基準値)の流量で1−メチルナフタレン(タール蒸気)を流通させるとともに、98.3Ncm/分の流量で窒素ガスを流通させた。ガス条件3では、3.4Ncm/分(上記基準値の2倍)の流量で1−メチルナフタレン(タール蒸気)を流通させるとともに、96.6Ncm/分の流量で窒素ガスを流通させた。ガス条件4では、6.8Ncm/分(上記基準値の4倍)の流量で1−メチルナフタレン(タール蒸気)を流通させるとともに、93.2Ncm/分の流量で窒素ガスを流通させた。
タール蒸気を導入するガス条件2〜4では、配管内でのタール蒸気の凝縮を防止するために、タール成分として添加した1−メチルナフタレンの沸点(約240℃)以上の温度である300℃を超えた時点でタール蒸気の導入を開始した。ガス条件1〜4のいずれでも、アルミナ管内部に保持した熱電対で試験片付近の温度を測定し、その温度を基準に環状炉の温度を調節した。炭化試験後、10℃/分以下の冷却速度で徐冷し、400℃以下の温度からは放冷した。室温付近まで温度が下がったことを確認し、木炭試験片を回収した。なお、本試験においてタール成分として添加した1−メチルナフタレンは、実際のコークス炉ガス中にもタール成分として含まれていることが確認されている。実際のタールには、1−メチルナフタレンのような二員環化合物以外に、三員環化合物も大量に含まれているが、それらは常温で固体であり取り扱いが難しいため、1−メチルナフタレンを利用した。
(試験3:圧壊強度試験)
上記試験2で得られた木炭試験片の圧壊強度試験を実施した。いずれの木炭試験片も、測定の前に写真撮影を行い、長手方向、径方向、周方向の三方向の長さを計測し、体積の計算を行った。続いて、各木炭試験片の重量を測定し、計算した体積で除すことで見かけ比重[g/cm]を計算した。その後、木炭試験片を二グループに分け、一方のグループを長手方向の圧壊強度の測定に利用し、もう一方のグループを周方向の圧壊強度の測定に利用した。圧壊試験装置として、一軸圧縮試験機(KS−205B(電動式)、関西機器製作所製)を利用した。圧壊強度の測定に用いた木炭試験片は、いずれも直方体に近い形状をしていたので、いずれかの面を下にして圧壊試験装置の試験台に載せた。この時、測定したい方向に荷重がかかる面を選択し、その面が下になるようにした。木炭試験片の上方に設置された圧縮板の下方への動作を開始し、木炭試験片を上から圧縮することによって木炭試験片に対して荷重をかけた。圧縮速度は、1000μm/分以下とし、木炭試験片が破損した時点での荷重を圧壊強度の計算に用いた。
いずれの樹種においても長手方向の圧壊強度が、周方向の圧壊強度よりも高くなった。木炭の強度が最も低かったバルサにおいても、800℃以上での炭化試験においてすべてのガス条件1〜4で、長手方向の圧壊強度が8MPaを超えており、十分な強度が確認された。したがって、以降の説明(試験結果1〜3)では、圧壊強度が相対的に弱い周方向の圧壊強度のみに着目する。なお、上記表2の「ガス条件4:タール4倍」で試験を実施した際には、多くの木炭試験片が大きく変形し、圧壊強度の測定も体積の計算も困難であった。この理由は、木炭試験片が大量のタール蒸気に暴露されたことで、グラファイト化が過度に進行したためと考えられる。変形が進んだ木炭試験片は、いずれも「ガス条件1:タール無」の場合よりも高い荷重に耐えたが、上述の都合により圧壊強度の計算ができなかった。
(試験4:Weibull分布を用いた統計処理)
上記試験3において、さまざまな樹種、炭化温度、炭化雰囲気における試験結果が得られたが、木材は不均一な材料であり、不可避的にばらつきが生じる。そこで、統計処理を施して試験結果を解析し、後述する各パラメーターが木炭の圧壊強度に与える影響を評価した。先行研究を踏まえ、木炭の圧壊強度が見かけ比重に強く依存すると仮定し、見かけ比重と圧壊強度との関係を評価した。統計モデルには物質の強度をよく説明するWeibull分布を用い、最尤推定を用いてパラメーターの決定を行った。Weibullの式を以下の式(2)に示す。
f(y;λ,k)=k/λ×(x/λ)k−1×exp(−(x/λ)k)
・・・(2)
ここで、yは圧壊強度[MPa]であり0以上の値、λとkはいずれも見かけ比重xに依存する関数であり、それぞれ以下の式(3),(4)に示される。
λ=a×x+a×x ・・・(3)
k=b+b×x ・・・(4)
ここで、a、a、b、bは、炭化温度、炭化雰囲気ごとに決定されるパラメーターである。なお、合計四つのパラメーターa、a、b、bを選択した理由は、Akaike Information Criterion(AIC)でパラメーターの組み合わせを複数比較したところ、上記の組み合わせが最適と結論されたことによる。上記表2に示す各ガス条件1〜3にて得られた木炭試験片の強度について解析を行い、得られたパラメーターa、a、b、bを下記表3に示す。
Figure 2021138807
(試験結果1:炭化温度800℃)
図1〜図3には、炭化試験の最高到達温度が800℃である場合における、見かけ比重[g/cm]と圧壊強度(周方向)[MPa]との関係(上記試験4の統計処理の結果)を示す。ここで、図1は上記表2のガス条件1での試験結果であり、図2は上記表2のガス条件2での試験結果であり、図3は上記表2のガス条件3での試験結果である。炭化試験時にタール蒸気を導入しなかった場合に比べ(図1)、炭化試験時にタール蒸気を導入した場合(図2、3)には、同一の見かけ比重における圧壊強度のばらつきが小さく抑えられ、特に低圧壊強度でのばらつきが小さく抑えられていることが分かる。また、タール蒸気の流量が多いガス条件3(図3)では、タール蒸気の流量が少ないガス条件2(図2)に比べて、各見かけ比重でピークを示す圧壊強度が高くなっている。図1〜図3に示す試験結果に基づいて、ガス条件1〜3のそれぞれにおいて、圧壊強度8MPa以上の木炭が得られる確率が、各見かけ比重でどのように変化するかを評価した結果を下記表4に示す。
Figure 2021138807
上記表4の結果から明らかなように、タール蒸気を炭化雰囲気に導入することによって、タール蒸気を炭化雰囲気に導入しない場合と比べて、圧壊強度8MPa以上の木炭の発生確率が向上することになり、800℃で炭化試験した際の木炭強度のばらつきが抑制される。また、見かけ比重0.7g/cm以下の低密度の木炭においても8MPa以上の圧壊強度を持つ木炭が得られる確率が飛躍的に増大する。具体的には、見かけ比重0.55g/cmの木炭においても、過半数が8MPa以上の圧壊強度を持つ木炭となる。なお、気乾比重0.68g/cmの木材であるウォールナット(上記表1参照)を原料とした木炭については、過半数が8MPa以上の圧壊強度を持つことを確認した。これは、この木炭が、高炉での利用も可能な水準の強度を持っていることを意味している。
(試験結果2:炭化温度1000℃)
図4〜図6には、炭化試験の最高到達温度が1000℃である場合における、見かけ比重[g/cm]と圧壊強度(周方向)[MPa]との関係(上記試験4の統計処理の結果)を示す。ここで、図4は上記表2のガス条件1での試験結果であり、図5は上記表2のガス条件2での試験結果であり、図6は上記表2のガス条件3での試験結果である。
炭化試験時にタール蒸気を導入しなかった場合(図4)と、炭化試験時にタール蒸気を導入した場合(図5、図6)とを比較すると、タール蒸気の導入によって同一の見かけ比重における圧壊強度のばらつきが若干抑制されていることが分かるが、上記試験結果1(800℃)のときほどの顕著なばらつきの抑制は見られなかった。この理由は、炭化試験の最高到達温度が1000℃であるときにおいては、タール蒸気が無い場合においても、炭化反応が十分に進行したためと考えられる。したがって、炭化試験の最高到達温度が1000℃であるときにおいては、タール蒸気の導入の有無によらず、同一の見かけ比重の木炭であれば、同程度の圧壊強度が得られると考えられる。一方で、同一の樹種の木炭試験片について、タール蒸気の複数の濃度で比較すると、タール蒸気の濃度が上昇するに従って、見かけ比重と圧壊強度が上昇する傾向が見られた。この結果を下記表5に示す。下記表5は、各樹種について、各ガス条件1〜3で作成した10個程度の木炭試験片の平均の見かけ比重と、周方向の圧壊強度の平均値とを比較したものである。
Figure 2021138807
上記表5の結果によれば、ヒノキ、アメリカンチェリー、ウォールナットのいずれの結果も、ガス条件1で得られた木炭の見かけ比重に比べて、ガス条件2やガス条件3で得られた木炭の見かけ比重が増大していることが分かり、それに伴って、圧壊強度も増大している。白樫については、他の三つの樹種(ヒノキ、アメリカンチェリー、ウォールナット)に比べて、見かけ比重や圧壊強度の増大幅が小さくなっているが、これは、もともと見かけ比重が大きい木炭であるため、タール蒸気の導入によって木炭の一部の細孔が埋まったことによる効果があまり顕著に見えなかったためと考えられる。
タール蒸気の導入によって、アメリカンチェリーのように炭化試験前の気乾比重が0.55g/cmとあまり大きくない木材でも、炭化試験後の見かけ比重(ガス条件3)が0.50g/cmを超え、圧壊強度も8MPaを上回ることが確認された。また、上記表5の結果によれば、炭化試験後の見かけ比重が0.48g/cmを超えると、圧壊強度の平均値が8MPaを超えることが確認された。また、炭化試験前の気乾比重が0.55g/cmを超える木材を原料とすることで、タール蒸気を導入したガス条件2,3では、圧壊強度の平均値が8MPaを超える木炭が得られていることも分かる。これは、この木炭が、高炉での利用も可能な水準の強度を持っていることを意味している。
(試験結果3:炭化温度1100℃)
図7及び図8には、炭化試験の最高到達温度が1100℃である場合における、見かけ比重[g/cm]と圧壊強度(周方向)[MPa]との関係(上記試験4の統計処理の結果)を示す。ここで、図7は上記表2のガス条件1での試験結果であり、図8は上記表2のガス条件2での試験結果である。炭化試験時にタール蒸気を導入しなかった場合に比べ(図7)、炭化試験時にタール蒸気を導入した場合(図8)には、同一の見かけ比重でピークを示す圧壊強度が高くなっていることが分かる。図7及び図8に示す試験結果に基づいて、ガス条件1,2のそれぞれにおいて、圧壊強度8MPa以上の木炭が得られる確率が、各見かけ比重でどのように変化するかを評価した結果を下記表6に示す。
Figure 2021138807
上記表6の結果から明らかなように、タール蒸気を炭化雰囲気に導入することによって、最高到達温度1100℃で炭化試験した際の木炭の圧壊強度が向上し、見かけ比重0.45g/cmの低密度の木炭においても過半数の木炭(ガス条件2)が8MPa以上の圧壊強度となる。なお、炭化試験前の気乾比重が0.55g/cmの木材であるアメリカンチェリーを原料とした木炭については、過半数が8MPa以上の圧壊強度を持つことを確認した。

Claims (10)

  1. 木材にタール蒸気を供給しながら、前記木材を700℃以上1200℃以下の温度まで昇温して炭化させることを特徴とする木炭の製造方法。
  2. 前記木材を800℃まで昇温し、見かけ比重が0.55g/cm以上の木炭を製造することを特徴とする請求項1に記載の木炭の製造方法。
  3. 前記木材の気乾比重が0.68g/cm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の木炭の製造方法。
  4. 前記木材を1000℃まで昇温し、見かけ比重が0.48g/cm以上の木炭を製造することを特徴とする請求項1に記載の木炭の製造方法。
  5. 前記木材の気乾比重が0.55g/cm以上であることを特徴とする請求項1または4に記載の木炭の製造方法。
  6. 前記木材を1100℃まで昇温し、見かけ比重が0.45g/cm以上の木炭を製造することを特徴とする請求項1に記載の木炭の製造方法。
  7. 前記木材の気乾比重が0.55g/cm以上であることを特徴とする請求項1または6に記載の木炭の製造方法。
  8. コークス炉炭化室に充填された石炭の充填層の上面に前記木材を充填し、前記タール蒸気として、前記石炭の乾留によって発生するガスに含まれるタール成分を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の木炭の製造方法。
  9. 10℃/分以下の昇温速度で前記木材を昇温することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の木炭の製造方法。
  10. 前記木炭は、高炉用コークスの代替物として用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の木炭の製造方法。
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