JP2021136928A - モーアデッキ - Google Patents

Abstract

【課題】モーアデッキ内に多量の刈草が滞留することを回避するとともに、刈り跡面に濃い筋跡を作り出すことも抑制されるマルチングタイプのモーアデッキを提供する。【解決手段】モーアデッキは、ハウジングの天井壁３１の下方で回転するブレード５の回転軌跡の外周領域を包囲するように天井壁３１から下方に延びて内部にマルチング用ブレード回転空間を作り出すブレードバッフルユニット４を備える。ブレードバッフルユニット４は、前バッフル４１と、後バッフル４２とからなり、前バッフル４１は、前バッフル４１の下端からの刈草の排出が阻止されるように、天井壁３１から下方に回転軌跡を超えて延設されており、後バッフル４２は、天井壁３１から、刈草の放出が可能となるところまで下方に延設されている。【選択図】図３

Description

本発明は、走行車両に装備されるモーアデッキに関する。

モーアデッキは走行車両に装備され、回転するブレードにより、草刈りを行う装置である。モーアデッキの作業タイプとして、ブレードによって刈り取られた刈草をハウジングの側部から放出するサイドディスチャージタイプ、ブレードによって刈り取られた刈草をハウジングの後部から放出するリアディスチャージタイプ、ブレードによって刈り取られた刈草をさらにブレードによって複数回切断してから落下させるマルチングタイプがある。この３つのタイプごとに専用装置として製作されたモーアデッキが提供されている。さらには、基本となるモーアデッキに、専用部材を取り付けたり、あるいは専用部材を取り付けたりして、各種タイプのモーアデッキに変更可能なモーアデッキも提供されている。

特許文献１は、マルチングタイプのモーアデッキを開示しており、ブレード回転軌跡を包囲する円筒状のスカート部材（バッフル）は、天井板からの長さが異なる前スカート部分と後スカート部分とからなる。前スカート部分は、ブレード回転軌跡を完全に包囲するようにブレード回転軌跡を十分に超える位置まで下方に延びている。後スカート部分は、ブレードによって刈り取られた刈草を後方に放出するために、天井板からの長さが短くなっており、これにより、後スカート部の下端と地面との間に大きな流通口となるスペースが作り出される。つまり、このモーアデッキは、マルチングタイプとリアディスチャージタイプとが組み合わされたタイプであり、刈草は、モーアデッキの後部からも放出される。

特許文献２も、特許文献１によるモーアデッキに類似したマルチングタイプのモーアデッキを開示しており、このモーアデッキも、マルチングバッフルプレートのうちの後プレート部分の地上高さがブレードの地上高さより高くなっており、その下端に流通口が作り出される。このため、ブレードによって刈り取られた刈草は後方に放出される。

米国特許第６６８１５５３号明細書 欧州特許出願公開第３３２９７５９号明細書

特許文献１や特許文献２によるモーアデッキでは、刈草の全てあるいは大部分がモーアデッキの後方から放出されるので、モーアデッキ内に多量の刈草が滞留することが防止される。しかしながら、刈草がモーアデッキの後方に向かう流れが各ブレード毎に生じることから、この流れに乗って放出された刈草が刈り跡面に濃い筋跡を作り出すという問題点がある。
本発明は、モーアデッキ内に多量の刈草が滞留することを回避するとともに、刈り跡面に濃い筋跡を作り出すことも抑制されるマルチングタイプのモーアデッキを提供することである。

本発明による、走行車両に装備されるモーアデッキは、天井壁を有するハウジングと、前記天井壁の下方で、縦軸周りで回転する少なくとも１つのブレードと、前記ブレードの回転軌跡の外周領域を包囲するように前記天井壁から下方に延びて内部にマルチング用ブレード回転空間を作り出すブレードバッフルユニットとを備え、さらに、前記ブレードバッフルユニットは、前記走行車両の前進側に位置する前バッフルと、前記走行車両の後進側に位置する後バッフルとからなり、前記前バッフルは、前記前バッフルの下端からの刈草の排出が阻止されるように、前記天井壁から下方に前記回転軌跡を超えて延設されており、前記後バッフルは、前記天井壁から、前記刈草の放出が可能となるところまで下方に延設されている。

この構成によれば、ブレードの回転軌跡の外周領域を包囲するブレードバッフルユニットの前バッフルの下端は、刈草の排出が阻止されるように下方に十分に延びているので、刈り取られた刈草はハウジングの前方から放出されることなしに、ブレードによって複数回切断される。これに対して、ブレードバッフルユニットの後バッフルは、刈草の排出がわずかながらも可能な程度に下方に延びており、後バッフルの垂直長さは前バッフルより短くなっている。これにより、刈草の一部は、ハウジングの後方から放出されるので、ハウジング内部（マルチング用ブレード回転空間）に多量の刈草が滞留することは回避される。さらに、刈草の一部が、ハウジングの後方から放出されるだけなので、ハウジング内で刈草がハウジング後方に向かっていく流れは弱く、放出された刈草が刈り跡面に濃い筋跡を作り出すことも回避される。

後バッフルの垂直長さ、つまり後バッフルの天井壁から下端までの長さが長すぎると、ハウジング内に多量の刈草を滞留させて、草刈り性能を低下させる。逆に、後バッフルの天井壁から下端までの長さが短すぎると、ハウジングの後方から放出される刈草の量が大きくなり、ハウジング内での刈草のハウジング後方に向かう流れが強くなり、放出された刈草が刈り跡面に濃い筋跡を作り出す。このため、後バッフルの下端から天井壁までの長さは、実験的かつ経験的な知見に基づいて決定しなければならない。本願発明者の知見によれば、前記後バッフルの下端から前記天井壁までの長さが、前記前バッフルの下端から前記天井壁までの長さより１０ｍｍ〜３０ｍｍ程度短くなると、好ましい草刈り結果が得られる。さらに、最適な草刈り結果を得るために、本発明の好適な実施形態の１つでは、前記後バッフルの下端から前記天井壁までの長さは、前記前バッフルの下端から前記天井壁までの長さより、２０ｍｍプラスマイナス５ｍｍ短くなっている。

最適な草刈り結果を得るためには、後バッフルの長さだけでは難しい場合がある。このため、本発明の好適な実施形態の１つでは、前記ハウジングの前縁に設けられた左右一対の接地輪が接地した状態で、昇降リンク機構を介して前記走行車両に吊り下げ支持された草刈姿勢において、前記ブレードの回転軌跡の後端が先端より数ｍｍから十数ｍｍ、好ましくは、２ｍｍ〜１２ｍｍ高くなるように持ち上げられるように、設定可能である。この場合、ハウジングの全幅で後方に刈草を放出することができ、放出された刈草が刈り跡面に一様に分布し、美観に優れた刈り跡面が得られる。

ハウジングの前縁に左右一対の接地輪が設けられ、ハウジングの後縁に少なくとも左右一対のスキッドが備えられているモーアデッキがある。このようなモーアデッキでは、刈草はスキッドに衝突して、その衝突箇所に落下する。このような落下箇所を低減するためには、スキッドの数を最小限にするとよい。このため、本発明の好適な実施形態の１つでは、前記ハウジングの前縁には所定間隔をあけて左右一対の接地輪が設けられており、前記ハウジングの後縁の左右中央位置には単一のスキッドが設けられている。

マルチングタイプのモーアデッキでは、複数回切断された刈草は、ブレードの下方に落とす必要がある。このために、ブレードの回転に伴なって、強い上下対流が発生するように、複雑な三次元形状に屈曲されたブレードが用いられている。しかしながら、このようなブレードは、植立している芝草を抑え込む作用もあるので、刈り残しの原因となりやすい。逆に、刈り跡の平面度が要求されるような芝生地では、刈り跡の平面度が高くなるように、長い直線的なカッティングエッジを有するブレードが好都合であるが、マルチングのためには上昇風を発生させる起風部の形成も必要である。このことから、本発明の好適な実施形態の１つでは、前記ブレードは平板からなり、前記ブレードの両側の先端から前記縦軸に向かって、ブレード長さの五分の１以上の長さを有するカッティングエッジが形成され、前記カッティングエッジの対向側に三角形状の起風部が立ち上がり折り曲げにより形成されている。

モーアデッキを装備した草刈機の全体を示す側面図である。 モーアデッキの平面図である。 モーアデッキの底面からみた斜視図である。 前バッフルと後バッフルとの垂直長さの違いを示す拡大図である。 ブレードの斜視図である。 モーアデッキの部分断面側面図である。

なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」は機体前後方向に関して前方を意味し（図１及び図２における矢印Ｆ）、「後」は機体前後方向に関して後方を意味する（図１及び図２における矢印Ｂ）。また、「左」は平面視における機体横断方向での左側を意味し（図２における矢印Ｌ）、「右」は平面視における機体横断方向での右側を意味する（図２における矢印Ｒ）。「上」は、機体の鉛直方向での上側を意味し（図２における矢印Ｕ）、「下」は、機体の鉛直方向での下側を意味し（図２における矢印Ｄ）、それぞれ、地上高さにおける関係を示す。

次に、図面を用いて、本発明によるモーアデッキを装備した草刈機の具体的な実施形態の１つを説明する。図１は、草刈機の側面図であり、図２はモーアデッキの平面図あり、図３はモーアデッキの底面からみた斜視図である。

この草刈機は、左右一対の前車輪１が駆動可能に装備され、左右一対の後車輪２が操向可能に装備された車体、車体の前方に位置するモーア装置３を備えている。車体の前部には、運転座席１１、後車輪２を操向操作するステアリングホィール１２を有する乗用型の運転部１０が形成されている。車体の後部には、エンジン６が搭載されている。運転部１０の下方に、エンジン６からの動力を変速する変速装置６０が設けられている。変速装置６０は、前車輪１及びモーア装置３に動力を伝達する。モーア装置３は、油圧シリンダで上下揺動する昇降リンク機構１３によって、昇降可能に、車体に支持されている。

モーア装置３は、図１と図２と図３とに示されるように、モーアデッキ３Ａと支持フレーム３Ｂとを備えている。モーアデッキ３Ａは、３つの横並びのブレード５と、このブレード５を上方から覆うハウジング３０とを有する。ハウジング３０は、ブレード５を上方から覆う形状を有し、その天井となる天井壁３１と、天井壁３１の前縁部から下方に延びる前壁３２と、天井壁３１の左側縁部から下方に延びる左壁３３と、天井壁３１の右側縁部から下方に延びる右壁３４とからなる。ハウジング３０の後部中央付近には、スキッド３５が天井壁３１に固定されている。

支持フレーム３Ｂは、天井壁３１の上方に配置されており、一方では天井壁３１に連結され、他方では、昇降リンク機構１３と連結されている。支持フレーム３Ｂを構成する左右一対の前後フレームの前端部には、所定間隔をあけて左右一対の接地輪３８が支持されている。さらに、補助輪３９がモーアデッキ３Ａの前中央と後左右とに配置されている。３つの補助輪３９は、それぞれブラケットを介して天井壁３１に支持されている。

３つのブレード５は、それぞれ車体上下方向に沿う方向に延びる縦軸である回転軸５０の下端部に固定されている。回転軸５０は、天井壁３１を貫通して、天井壁３１に取り付けられている軸受け５１に回転可能に支持されている。各回転軸５０は、変速装置６０からの動力を受けるベルト伝動機構５２によって回転駆動する。

図３に示すように、３つのブレード５の回転軌跡の外周領域によって規定されるマルチング用ブレード回転空間は、その側方がブレードバッフルユニット４によって包囲され、その上方が天井壁３１によって包囲されている。つまり、ブレードバッフルユニット４と天井壁３１とによってマルチング用ブレード回転空間が作り出される。ブレードバッフルユニット４は天井壁３１に突き合わせ接合され、天井壁３１から下方に延びているブレードバッフルユニット４によって包囲されている。ブレードバッフルユニット４は、左側のブレード５の回転軌跡を包囲する左ユニット部分４ａと、中央のブレード５の回転軌跡を包囲する中央ユニット部分４ｂと、右側のブレード５の回転軌跡を包囲する右ユニット部分４ｃとからなる。各ユニット部分４ａ、４ｂ、４ｃは、前バッフル４１と後バッフル４２とに区分けすることができる。前バッフル４１は、ブレード５の回転軌跡の前半分の軌跡に沿うような半円弧断面を有し、後バッフル４２は、ブレード５の回転軌跡の後半分の軌跡に沿うような半円弧断面を有する。

各ブレード５の回転軌跡が天井壁３１と各ユニット部分４ａ、４ｂ、４ｃによって包囲されていることにより、このモーアデッキ３Ａは、刈り取った刈草をブレード５によって複数回切断するマルチングタイプとして機能する。

図４の拡大図に示されているように、前バッフル４１の、天井壁３１と接合している上端から下端４１ａまでの長さ：Ｌ１は、後バッフル４２の、天井壁３１と接合している上端から下端４２ａまでの長さ：Ｌ２より長い。つまり、前バッフル４１は、その下端４１ａからの刈草の排出が阻止されるように、その下端４１ａが地表近くに達する長さ（幅）を有する。これに対して、後バッフル４２は、その下端４２ａから刈草が放出されだす程度の長さにしておく。但し、下端４２ａと地表までの間隔が大き過ぎないことが重要である。下端４２ａと地表までの間隔が大き過ぎると、刈り取られた刈草が強い流れで後方に放出され、刈り跡面に濃い筋跡が生じるからである。

このことから、この実施形態では、後バッフル４２の長さ：Ｌ２は、前バッフル４１の長さ：Ｌ１に比べて、ΔＬ＝１０ｍｍ〜３０ｍｍ、好ましくは、ΔＬ＝１５ｍｍ〜２５ｍｍだけ短くなっている。これにより、前バッフル４１と後バッフル４２とによって良好なマルチング性能が得られるとともに、マルチングされた刈草の一部が後バッフル４２の下端４２ａから、刈り跡面に濃い筋跡を残さない程度に放出される。

ブレード５は、図５に示されているように平板からなり、その中央領域に、縦軸である回転軸５０の下端を挿入するための中央孔５ａが設けられている。ブレード５は回転軸５０にボルト連結される。ブレード５は小さな屈曲角で２段に折り曲げられ段差部５ｚを形成しており、回転軸５０に取り付けられた姿勢において、その先端領域は、中央領域より低い位置となる。

カッティングエッジ５ｂは、ブレード５の両側の先端領域から段差部５ｚの手前まで、つまり、ブレード５の先端から、ブレード５の長さの五分の１以上、好ましくは、ほぼ四分の１程度の長さで形成されている。先端領域におけるカッティングエッジ５ｂの反対側のコーナ部には、起風部５ｃが形成されている。起風部５ｃは、先端コーナを頂点とする三角形状となるように上方に向けて折り曲げられている。

この実施形態でのモーアデッキ３Ａでは、特許文献１や特許文献２によるモーアデッキに比べて、モーアデッキ３Ａの後方から放出される刈草量が少ない。しかしながら、刈り取るべき芝草の状態や、刈取仕様によっては、刈草の後方放出を増加させた方が、刈り跡が均一化される。このため、この実施形態では、図６で示されているように、昇降リンク機構１３による昇降量が、接地輪３８が接地した状態となる草刈姿勢において、ブレード５の回転軌跡の後端が先端より数ｍｍから十数ｍｍ、例えば、２ｍｍ〜１２ｍｍ、好ましくは４ｍｍ〜８ｍｍ程度高くなるように持ち上げられるように、設定可能である。

上述した実施形態では、モーアデッキ３Ａは、３つのブレード５を備えていたが、ブレード５の数は、２以下でも４以上でもよい。モーアデッキ３Ａは、走行車両の前部ではなく、中央部、つまり前車輪１と後車輪２との間に装備することも可能である。

なお、上述した実施形態（別実施形態を含む、以下同じ）で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。

本発明は、回転式のブレードを上方から覆うモーアデッキ、及びそのようなモーアデッキを装備した草刈機に適用可能である。

３ ：モーア装置
３Ａ ：モーアデッキ
３Ｂ ：支持フレーム
３０ ：ハウジング
３１ ：天井壁
３２ ：前壁
３３ ：左壁
３４ ：右壁
３５ ：スキッド
４ ：ブレードバッフルユニット
４ａ ：左ユニット部分
４ｂ ：中央ユニット部分
４ｃ ：右ユニット部分
４１ ：前バッフル
４１ａ ：下端
４２ ：後バッフル
４２ａ ：下端
５ ：ブレード
５ａ ：中央孔
５ｂ ：カッティングエッジ
５ｃ ：起風部
５ｚ ：段差部
５０ ：回転軸（縦軸）
５１ ：軸受け

Claims (6)

1. 走行車両に装備されるモーアデッキであって、
   天井壁を有するハウジングと、
   前記天井壁の下方で、縦軸周りで回転する少なくとも１つのブレードと、
   前記ブレードの回転軌跡の外周領域を包囲するように前記天井壁から下方に延びて内部にマルチング用ブレード回転空間を作り出すブレードバッフルユニットと、
   を備え、
   前記ブレードバッフルユニットは、前記走行車両の前進側に位置する前バッフルと、前記走行車両の後進側に位置する後バッフルとからなり、前記前バッフルは、前記前バッフルの下端からの刈草の排出が阻止されるように、前記天井壁から下方に前記回転軌跡を超えて延設されており、前記後バッフルは、前記天井壁から、前記刈草の放出が可能となるところまで下方に延設されているモーアデッキ。
2. 前記後バッフルの下端から前記天井壁までの長さは、前記前バッフルの下端から前記天井壁までの長さより１０ｍｍ〜３０ｍｍ短くなっている請求項１に記載のモーアデッキ。
3. 前記後バッフルの下端から前記天井壁までの長さは、前記前バッフルの下端から前記天井壁までの長さより、１５ｍｍ〜２５ｍｍ短くなっている請求項２に記載のモーアデッキ。
4. 前記ハウジングの前縁に設けられた左右一対の接地輪が接地した状態で、昇降リンク機構を介して前記走行車両に吊り下げ支持された草刈姿勢において、前記ブレードの回転軌跡の後端が先端より２ｍｍから１２ｍｍ高くなるように持ち上げられるように設定可能である請求項１〜３のいずれか一項に記載のモーアデッキ。
5. 前記ハウジングの前縁には所定間隔をあけて左右一対の接地輪が設けられており、前記ハウジングの後縁の左右中央位置には単一のスキッドが設けられている請求項１〜３のいずれか一項に記載のモーアデッキ。
6. 前記ブレードは平板からなり、前記ブレードの両側の先端から前記縦軸に向かって、ブレード長さの五分の１以上の長さを有するカッティングエッジが形成され、前記カッティングエッジの対向側に三角形状の起風部が立ち上がり折り曲げにより形成されている請求項１〜５のいずれか一項に記載のモーアデッキ。

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