JP2021134116A - ダイヤモンド、センサ素子、およびダイヤモンドの製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド、センサ素子、およびダイヤモンドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】窒素−空孔中心を含むダイヤモンドにおいて、コヒーレンスT2の向上したダイヤモンドとそれを有するセンサ素子を提供する。また、T2を向上するダイヤモンドの製造方法を提供する。【解決手段】リンドープCVD工程S1において、化学気相成長法によってダイヤモンドを製造する際に、リンをドープしてリンドープn型ダイヤモンドを製造する。そしてイオン注入工程S2において、リンドープn型ダイヤモンドに対して窒素イオンのイオン注入を行って、リンドープn型ダイヤモンドの結晶構造中に窒素−空孔中心を含ませることによって、窒素−空孔中心を含むダイヤモンドを製造する。【選択図】図1

Description

本発明は、ダイヤモンドに関するものであり、特に、結晶構造中に窒素−空孔中心を含んだダイヤモンドに関する。また本発明は、ダイヤモンドを有するセンサ素子にも関する。また本発明は、結晶構造中に窒素−空孔中心を含んだダイヤモンドの製造方法にも関するものである。
特許文献1には、窒素空格子点欠陥(窒素−空孔中心、以下NV中心とも称する)を有する単結晶CVDダイヤモンド構成要素が記載されている。このNV中心(Nitrogen Vacancy center)は、ダイヤモンドの結晶格子において、炭素空格子点(炭素原子が抜けた位置)と、それに隣接する置換窒素原子(炭素原子の位置に置き換わって存在する窒素原子)との対からなるものである。
特許文献1に記載されている通り、負に帯電したNV中心(NV)は、様々な望ましい特徴を有する。例えば、NVの電子スピン状態は非極低温(例えば約300Kの室温)であっても特定の電子スピン状態に配置することができる。つまり、NV中心の量子状態は外部から人為的に変更が可能である。
また、NVの電子構造は放出性および非放出性電子スピン状態を含んでおり、光子を通して欠陥の電子スピン状態を読み取ることが可能になっている。つまり、NV中心の量子状態は外部から読み取ることも可能である。量子状態の人為的な変更および読み取りが可能であることから、NV中心は量子状態の書き込み/読み出しが可能な量子ビットとして使用することができる。
さらにNVの電子スピン状態は極めて長いコヒーレンス時間T(横緩和時間、スピンコヒーレンス時間、デコヒーレンス時間とも呼ばれる)を示すため、上述の量子状態の書き込み/読み出しが安定して行える。そのため、NV中心は様々な用途に適用できることが提唱されている。
例えばNV中心を含んだダイヤモンドは、上述の量子ビットとしての用途を応用して、固体量子情報処理における量子情報素子として利用できる。そのほか、磁力計や核磁気共鳴デバイス、磁気共鳴撮像デバイスなどの、測定装置やセンサ素子にも利用可能である。
特許文献1には、こうしたNV中心を形成する方法の例として、ダイヤモンド材料合成後に、窒素イオンを注入するという方法が挙げられている。これにより、ダイヤモンドの表面近傍にNV中心が提供される。
特開2016−539900号公報
特許文献1には、NV中心を、低表面粗さを有し低表面損傷の成長状態の表面近くに位置付けることで、長いコヒーレンス時間を持つNV中心が提供されることが開示されている。しかし具体例としては、低い粗さの低損傷成長状態の表面への注入により形成されたNV中心に関するTは65.1μs程度であることが特許文献1に記載されている。これは研磨表面への注入により形成されたNV中心の、僅か16.6μs程度のTよりは長いものの、量子情報素子などに使用するのに好適とまでは言えない。このように、実際には長いTを得ることは困難であった。
本発明はこうした問題点に鑑み、Tが向上したダイヤモンド、およびそれを有するセンサ素子を提供することを課題とする。また本発明は、イオン注入によってダイヤモンドの結晶構造中に含ませられるNV中心(窒素−空孔中心)のTが向上するダイヤモンドの製造方法を提供することも課題とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る実施形態の一例としてのダイヤモンドは、n型にリンドープされており、かつ結晶構造中に窒素−空孔中心が含まれるダイヤモンドであって、リン原子が窒素原子よりも広い範囲に分布しているものである。
またこのダイヤモンドにおいて、リン原子はダイヤモンドの全体にわたって均等に分布しており、窒素原子はリン原子と比較して局所的に分布していることが好ましい。
またこのダイヤモンドにおいて、窒素原子の濃度に対し窒素−空孔中心の濃度が5%以上であることが好ましい。
またこのダイヤモンドにおいて、結晶構造中に含まれる窒素−空孔中心の窒素−空孔軸が、ダイヤモンドの特定の方位面の垂直方向に配向していないことが好ましい。
またこのダイヤモンドにおいて、結晶構造中に含まれる残存水素の量が、二次イオン質量分析におけるバックグラウンドレベル以下であることが好ましい。
またこのダイヤモンドにおいて、窒素原子が結晶表面から1μm以下の深さに分布していることが好ましい。
またこのダイヤモンドにおいて、窒素原子が結晶表面から30nm以下の深さに1.0×1011個/cm以上かつ1.0×1018個/cm以下の濃度で分布していることが好ましい。
また本発明に係る実施形態の一例としてのセンサ素子は、上述のダイヤモンドを有するセンサ素子である。
また本発明に係る実施形態の一例としてのダイヤモンドの製造方法は、化学気相成長法によってダイヤモンドを製造する際にn型にリンドープしてリンドープn型ダイヤモンドを製造した後、前記リンドープn型ダイヤモンドに対して窒素イオンのイオン注入を行って、前記リンドープn型ダイヤモンドの結晶構造中に窒素−空孔中心を含ませるものである。
またこのダイヤモンドの製造方法において、化学気相成長法により前記リンドープn型ダイヤモンドを製造する際のリンのドープを、前記リンドープn型ダイヤモンドに含まれるリン濃度が1×1015cm−3以上かつ1×1018cm−3以下となるように行うことが好ましい。
またこのダイヤモンドの製造方法において、前記リンドープn型ダイヤモンドに対して窒素イオンのイオン注入を行う際に、窒素イオンとして15Nのイオンを使用することが好ましい。
またこのダイヤモンドの製造方法において、前記リンドープn型ダイヤモンドに対して窒素イオンのイオン注入を行う際に、前記リンドープn型ダイヤモンドの結晶表面から1μm以下の深さに窒素イオンが注入されるように、窒素イオンの加速エネルギーを調節することが好ましい。
本発明のダイヤモンド、および本発明のダイヤモンドの製造方法によって製造されるダイヤモンドは、室温下であっても従来よりも長いコヒーレンス時間Tを示す。こうしたダイヤモンドは、動作適正温度範囲や感度などの面でセンサ素子として優れた特性を示し、また、量子情報素子、測定装置などに使用するのにも好適である。
本発明の実施形態の一例としてのダイヤモンドの製造方法をなす各工程の流れを示す図である。 図1に示すダイヤモンドの製造方法によって製造されたリンドープn型ダイヤモンドにおける窒素原子の濃度分布を示す図。 図1に示すダイヤモンドの製造方法によって製造されたリンドープn型ダイヤモンドのT値測定結果を示すグラフ。 図1に示すダイヤモンドの製造方法によって製造されたリンドープn型ダイヤモンドのT値と、従来のノンドープダイヤモンドのT値とを複数例比較して示す表。
本発明の実施形態の一例としてのダイヤモンドの製造方法をなす各工程の流れを図1に示す。図1に示す通り、本実施形態の製造方法はリンドープCVD工程S1、イオン注入工程S2、熱処理工程S3を含む。
リンドープCVD工程S1においては、n型にリンドープされたダイヤモンド、すなわちリンドープn型ダイヤモンドが製造される。本実施形態のリンドープCVD工程S1においては、炭素化合物(例えばメタン)およびリン化合物(例えばホスフィン)を含む雰囲気下で、基板となるダイヤモンド結晶基板の表面上へダイヤモンド膜を堆積させる化学気相成長(CVD)法が行われる。ここで、n型にリンドープされるというのは、ダイヤモンドがn型半導体として機能するのに十分な程度に、結晶構造中にリン原子が分布した状態(キャリアとしての電子の移動度が十分な状態)とされるということである。
上述のリンドープCVD工程S1によって製造されたリンドープn型ダイヤモンドには、CVD法の条件(リン化合物の濃度など)に応じて、所定濃度のリンが含まれることとなる。本実施形態においては、リンドープn型ダイヤモンドに含まれるリン濃度が1×1015cm−3以上かつ1×1018cm−3以下となるようにリンドープCVD工程S1が行われるものとする。
そして、リンドープCVD工程S1によって製造されたリンドープn型ダイヤモンドに対して、イオン注入工程S2が行われる。本実施形態のイオン注入工程S2においては、15Nのイオンに加速エネルギーを与えてリンドープn型ダイヤモンドに打ち込むことにより、リンドープn型ダイヤモンドに窒素原子を取り込ませる。ここで、加速エネルギーを調節して、リンドープn型ダイヤモンドの結晶表面から1μm以下の深さに窒素イオンが注入されるようにすることが好ましい。より好ましくは、窒素原子が結晶表面から30nm以下の深さに1.0×1011個/cm以上かつ1.0×1018個/cm以下の濃度で分布することになるよう、窒素イオンの加速エネルギーが調節されるとよい。
続いて、イオン注入工程S2によって窒素原子が取り込まれたリンドープn型ダイヤモンドに対して、取り込まれた窒素原子がダイヤモンドの結晶格子の格子点に収まるように、熱処理工程S3が行われる。本実施形態の熱処理工程S3においては、アニール処理が行われる。これにより、リンドープn型ダイヤモンドの結晶構造中に窒素−空孔中心(NV中心)が含まれることとなる。
以上のようにして製造されたダイヤモンドは、n型にリンドープされており、かつ結晶構造中に窒素−空孔中心(NV中心)が含まれるダイヤモンドであって、リン原子が窒素原子よりも広い範囲に分布していることになる。具体的には、リン原子はダイヤモンドの全体にわたって均等に分布しており、窒素原子はリン原子と比較して局所的に分布している。本実施形態においては、窒素原子は結晶表面から1μm以下の深さに分布することになる。ここで、イオン注入であれば、窒素原子の濃度に対するNV中心の濃度が5%以上となるように、ダイヤモンド結晶構造中にNV中心を含ませることが可能である。
このようにして製造されたダイヤモンドに含まれるNV中心は、リンドープされていない(ノンドープの)ダイヤモンドへ窒素イオンが注入されて形成されるNV中心と比べて、室温下であってもより長いTを示す。また、イオン注入によって取り込まれた窒素原子によるNV中心は、ダイヤモンドの表面近く(nmオーダーの範囲)に位置することとなるので、外部環境(例えば磁場)の変化に対して高感度で反応する。こうした表面付近のNV中心のTが長いことにより、本実施形態によって製造されるダイヤモンドは、従来よりも測定装置やセンサ素子に用いるのに好適である。さらに、結晶表面近くにおいて窒素原子の濃度に対するNV中心の濃度が5%以上となっていれば、一度の検出において多くのNV中心が反応することとなり、センサ素子や測定装置としての感度がより高いものとなる。これに対し、CVD法のみによってダイヤモンド結晶構造中にNV中心を含ませる場合には、窒素原子の濃度に対するNV中心の濃度は3%程度にしかならない。したがって、リンドープn型ダイヤモンドに対してイオン注入によりNV中心を結晶構造中に含ませることで、CVD法のみを行う場合よりも、センサ素子や測定装置に使用するのに好適なダイヤモンドを得ることができる。
以下、本発明に係るダイヤモンドの製造方法の一例についてより具体的に説明する。まず、IIa型で密度3.513g/cmのダイヤモンド基板の(111)面上に、化学気相成長法(CVD法)によってリンドープしつつダイヤモンド膜をホモエピタキシャル成長させる(リンドープCVD工程S1)。
リンドープCVD工程S1においては、炭素化合物(ここではメタンCH)およびリン化合物(ここではホスフィンPH)を含む雰囲気下でダイヤモンド膜の成長が行われることで、リンドープn型ダイヤモンドが製造される。なお、製造されるリンドープn型ダイヤモンドがn型半導体として機能する程度にリン原子が分布するように、リン化合物は炭素化合物に対して少量とされる。ここでは、リンドープn型ダイヤモンドに含まれるリン濃度が5×1016cm−3の濃度(1×1015cm−3以上かつ1×1018cm−3以下の一例)となるようにリンドープCVD工程S1が行われる。
ダイヤモンド基板上のリンドープn型ダイヤモンドの膜が、十分な厚み(ここでは700nmとする)まで成長したら、リンドープCVD工程S1を終了し、イオン注入工程S2を開始する。イオン注入工程S2においては、リンドープn型ダイヤモンドにおける窒素原子が図2(縦軸は対数スケール)に示すような濃度分布となるように、窒素イオンの注入エネルギーが調節される。このときの注入エネルギーの調節により、最終的に得られるダイヤモンド結晶構造中において、窒素原子の濃度に対するNV中心の濃度が5%以上となるようにされる。
具体的には15Nイオンを使用し、これを注入エネルギー10keV、注入量1.0×10個/cmで注入する。その結果、図2に示すように、結晶表面から1nm以上かつ30nm以下の深さに1.0×1011個/cm(1E+11atoms/cm)以上かつ1.0×1015個/cm以下の濃度(1.0×1011個/cm以上かつ1.0×1018個/cm以下の範囲内)で15N原子が分布するようになる。なお、1nm以上かつ20nm以下の深さに限定すると、15N原子の濃度は1.0×1013個/cm以上かつ1.0×1015個/cm以下である。
15Nイオンを使用する理由は、天然存在比の小さい15N原子を人為的にダイヤモンドに取り込ませることで、最終的に結晶構造中に含まれることとなる窒素−空孔中心(NV中心)が自然発生したものか、イオン注入により人為的に作られたものかが区別できるようにするためである。NV中心が天然存在比の大きい14N原子によるものか、人為的に注入される15N原子によるものかは、NV中心の光学的/電磁気学的性質の違いにより判別可能である。またNV中心は1つ1つを区別して測定することが可能であるため、人為的に作られたNV中心と自然発生的に生じたNV中心とを比較して測定することも可能となる。
15Nイオンが十分に注入されたらイオン注入工程S2を終了し、熱処理工程S3を開始する。典型的には600℃以上でのアニールを行う。
以上のリンドープCVD工程S1、イオン注入工程S2、熱処理工程S3により、NV中心が結晶構造中に含まれたリンドープn型ダイヤモンドが製造される。このダイヤモンド(に含まれるNV中心の1つ)について、T値を調べるためにハーンエコー(Hahn Echo)法によりエコー強度の測定を行ったところ、図3に示す結果が得られた。なお図示の簡略化のため、実測定値のプロットは省略し、実測定値に基づいて求められたフィッテング曲線のみを示す。
本実施例で製造されるダイヤモンドには13C原子が含まれるため、図3に示されるエコー強度には、13C核スピンのラビ振動による影響が表れている。具体的にはエコー強度が減衰振動するものとして測定されているが、実質的なエコー強度の減衰は振動のピーク値を通る曲線(図3中の二点鎖線によって示される指数関数)として表せる。この曲線から求められるTの値は、図3に示す通り約476.74μsである。
リンドープを行ったn型ダイヤモンドに窒素イオンを注入した場合のT値と、リンドープを行わない(ノンドープの)ダイヤモンドに窒素イオンを注入した場合のT値とを比較した表を図4に示す。これはリンドープn型ダイヤモンド試料とノンドープダイヤモンド試料とに対して、それぞれの試料中のNV中心のうち5つについてTを調べた結果である。ここで、説明の簡略化のため、表中には測定結果に基づく推定量のみを示し、推定量の標準偏差(推定誤差)の図示は省略する。なお、図3は図4の測定対象「3」に対する測定結果である。
図4に示す通り、ノンドープダイヤモンドではいずれの測定対象(NV中心)についてもT値が200μs未満である。一方、リンドープn型ダイヤモンドではいずれの測定対象(NV中心)についてもT値が400μs以上であった。このように、本実施例の製造方法によって製造されたダイヤモンドは、ノンドープダイヤモンドに比べて飛躍的に向上したT値を示す。なおこれらの測定はいずれも室温(約300K)で行われた。
このように長いTを示すダイヤモンドは量子状態が安定していると言え、室温下で用いる量子情報素子として好適である。また、NV中心の磁場感度(検出下限や分解能)はTの二乗根に反比例(T −1/2に比例)するため、Tの長いダイヤモンドほど磁場センサ素子として用いるのに好適である。
また本実施例の製造方法によって製造されたダイヤモンドはイオン注入によって窒素イオンが結晶表面近くに注入されたため、NV中心が結晶表面近くに存在している。そのため、これらのNV中心は結晶外部での環境変化(例えば磁場変化)に対する感度が高くなっており、センサ素子や測定装置に用いるのに好適である。またセンサ素子全体としての磁場感度は、一度の検出において反応するNV中心の個数の二乗根に反比例する。そのため、窒素原子の濃度に対しNV中心の濃度が5%以上の高濃度となっているダイヤモンドは、一度の検出において反応するNV中心の個数が多くなるので、センサ素子や測定装置に用いるのにより好適である。
なお、本実施例においては天然比の低い15N原子をイオン注入によりダイヤモンドの結晶表面近くに取り込ませたため、結晶表面近くで15N原子が局所的に分布している。このような分布を持つダイヤモンドは人為的に製造しないと発生しないため、結晶表面近くでの15N原子の分布を調べることで、本実施例の製造方法によって製造されたダイヤモンドであるかどうかを確かめることができる。具体的には、15N原子が結晶表面から1nm以上かつ30nm以下の深さに1.0×1011個/cm以上かつ1.0×1015個/cm以下の濃度で分布しており、しかもn型にリンドープされているダイヤモンドは、本実施例の製造方法によって製造されたダイヤモンドであると考えられる。また、15N原子に限らず14N原子であっても、窒素原子の濃度に対しNV中心の濃度が5%以上となっているリンドープn型ダイヤモンドは、CVD法によるリンドープの後にイオン注入が行われたものと考えられる。
また、イオン注入によってダイヤモンド結晶構造中に組み込まれるNV中心は、その窒素原子と空孔とを結ぶ軸(窒素−空孔軸、NV軸)が特定の方位面の垂直方向に配向しない(向きが特定の方向に揃わない)。詳しくは、NV中心の一つ一つが、NV軸がとり得る4つの方向のうち、ランダムにいずれかの方向を取る。つまりNV軸がおよそ25%ずつの確率で4つの方向に向く。これに対し、CVD法によって結晶構造中に組み込まれるNV中心のNV軸は、特定の方向に配向する傾向がある。具体的には、ダイヤモンドの(111)面上へのホモエピタキシャル成長において結晶構造中に含まれたNV中心のNV軸は100%近くの確率で(111)方向に向くことや、(110)面上へのホモエピタキシャル成長ではNV軸がおよそ50%ずつの確率で4方向中の2方向にのみ向くことが知られている。したがって、NV軸が特定の方向に配向していない(およそ25%ずつの確率で4つの方向に向いている)NV中心を有するダイヤモンドは、Nイオン注入が行われたダイヤモンドであると考えられる。
また、イオン注入によってNV中心をダイヤモンド結晶構造中に組み込む場合、ダイヤモンドの結晶構造中に水素をほとんど取り込ませないようにすることができる。具体的には、二次イオン質量分析(SIMS)でそのダイヤモンドを分析した場合に、バックグラウンドレベル以下(例えば2×1017cm−3以下)しか水素が確認されない程度にまで残存水素の量を抑えることができる。これに対し、CVD法でNV中心をダイヤモンド結晶構造中に組み込む場合には、結晶構造中に水素が入り込んでしまうため、SIMSにおけるバックグラウンドレベルよりも多くの残存水素がダイヤモンド内に含まれることとなる。そのため、NV中心を有しており、かつ結晶構造中に含まれる残存水素の量が、二次イオン質量分析におけるバックグラウンドレベル以下となっているダイヤモンドは、Nイオン注入が行われたダイヤモンドであると考えられる。
ところで、リンは電子スピンを有するため、従来はリンドープを行うことでダイヤモンド結晶内のリン原子がNV中心に対する磁気ノイズとなり、Tを短縮してしまうと考えられていた。しかし、上述の通り本発明により製造されるリンドープn型ダイヤモンドのTは従来よりも向上する。これはリン原子がむしろ磁気ノイズを低減する役割を果たしているものと考えられる。
磁気ノイズ源となるものの一つに、複数の空孔からなる「複空孔欠陥」がある。この複空孔欠陥が多数存在してしまうと、磁気ノイズ源が多くなり、ひいてはTを短縮してしまう。ここで、リンドープされたn型ダイヤモンドにおいては、単独の空孔、すなわち単空孔が(負の)電荷を帯びることになる。単空孔が電荷を帯びていることにより、単空孔同士はクーロン力により反発しあうことになって、複数の空孔が寄り集まることが起きにくくなる。そのため、「複空孔欠陥」の生成が抑制され、結果的に磁気ノイズ源が低減されるものと考えられる。
イオン注入工程S2の終了時点では、リンドープn型ダイヤモンドの中には炭素原子のほかに、リン原子、窒素原子、そして空孔が含まれる。しかし、単空孔は600℃でアニールアウトするため、熱処理工程S3として例えば900℃のアニールを行うと、最終的に単空孔はリンドープn型ダイヤモンドの中には残らなくなる。その一方で窒素−空孔中心(NV中心)による複合欠陥は1500℃でも安定のため、リンドープn型ダイヤモンドの結晶構造中では最終的に磁気ノイズ源が低減され、NV中心が残ることとなる。
なお、上述の実施例においてはダイヤモンドの製造方法をリンドープCVD工程S1、イオン注入工程S2、熱処理工程S3からなるものとしたが、これ以外の工程が含まれてもよい。例えば熱処理工程S3においてダイヤモンドの一部が黒鉛化してしまうことがあるので、酸による清浄化および酸素中でのアニールによる黒鉛除去の工程が行われてもよい。
また上述の実施例においてはダイヤモンド基板をIIb型としたが、Ia型、Ib型、IIb型であってもよい。またダイヤモンド膜を成長させる面も、(111)面上に限られるものではなく、例えば(001)面であってもよい。
また上述の実施例においてはイオン注入工程S2において注入される窒素イオンを15Nイオンとしたが、これに限るものではなく、人為的に注入した窒素原子を他と区別する必要がないならば、14Nイオンが注入されてもよい。
S1 リンドープCVD工程
S2 イオン注入工程
S3 熱処理工程

Claims (12)

  1. n型にリンドープされており、かつ結晶構造中に窒素−空孔中心が含まれるダイヤモンドであって、リン原子が窒素原子よりも広い範囲に分布している、ダイヤモンド。
  2. リン原子はダイヤモンドの全体にわたって均等に分布しており、窒素原子はリン原子と比較して局所的に分布している、請求項1に記載のダイヤモンド。
  3. 窒素原子の濃度に対し窒素−空孔中心の濃度が5%以上である、請求項1または請求項2に記載のダイヤモンド。
  4. 結晶構造中に含まれる窒素−空孔中心の窒素−空孔軸が、ダイヤモンドの特定の方位面の垂直方向に配向していない、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のダイヤモンド。
  5. 結晶構造中に含まれる残存水素の量が、二次イオン質量分析におけるバックグラウンドレベル以下である、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のダイヤモンド。
  6. 窒素原子が結晶表面から1μm以下の深さに分布している、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のダイヤモンド。
  7. 窒素原子が結晶表面から30nm以下の深さに1.0×1011個/cm以上かつ1.0×1018個/cm以下の濃度で分布している、請求項6に記載のダイヤモンド。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のダイヤモンドを有するセンサ素子。
  9. 化学気相成長法によってダイヤモンドを製造する際にn型にリンドープしてリンドープn型ダイヤモンドを製造した後、
    前記リンドープn型ダイヤモンドに対して窒素イオンのイオン注入を行って、前記リンドープn型ダイヤモンドの結晶構造中に窒素−空孔中心を含ませる、ダイヤモンドの製造方法。
  10. 化学気相成長法により前記リンドープn型ダイヤモンドを製造する際のリンのドープを、前記リンドープn型ダイヤモンドに含まれるリン濃度が1×1015cm−3以上かつ1×1018cm−3以下となるように行う、請求項9に記載のダイヤモンドの製造方法。
  11. 前記リンドープn型ダイヤモンドに対して窒素イオンのイオン注入を行う際に、窒素イオンとして15Nのイオンを使用する、請求項9または請求項10に記載のダイヤモンドの製造方法。
  12. 前記リンドープn型ダイヤモンドに対して窒素イオンのイオン注入を行う際に、前記リンドープn型ダイヤモンドの結晶表面から1μm以下の深さに窒素イオンが注入されるように、窒素イオンの加速エネルギーを調節する、請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載のダイヤモンドの製造方法。
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