発明の詳細な説明
本出願は、チオリン酸化合物(すなわち、アミノチオール)の活性部分(複数可)の保護、保護化合物の送達、ならびにヒト及び動物の所望部位でのインビボ活性化を達成するための改善された方法に関する。
本出願は、増大した薬物効果及び毒性の減少を達成するための方法にも関する。本出願は、本明細書に記載のアミノチオール複合体を用いることにより、前述のアミノチオール、その代謝物、その類似体、二量体及びヘテロ二量体の改善された治療有効性ならびに低い毒性を達成する方法に関する。このような保護された薬物は、追加の送達方法またはモジュールを使用することなく送達されることができる、または細胞内、細胞質内の、能動もしくは受動的なターゲティングされた細胞送達もしくは除外、及び/または細胞内小器官内送達を達成する薬物送達システムと組み合わせることができる。
本明細書で使用する場合「活性成分」とは、アミホスチン、ホスホエノールならびに構造上関連する化合物及び類似体の活性代謝産物の構造の一部を構成する反応性基(例えば−SH及び/または−NH)ならびにこれらの基を含有する化合物を意味する。
本明細書で使用する場合「アミホスチン」は、アミホスチンの生物学的活性部分及び生理学的代謝物であるWR−1065、WR−1065のホスホロチオエートの形態に付された名称を意味する。
本明細書で使用する場合「アミノチオール」とは、図3に示される構造を有する任意の分子を意味する。
本明細書中で使用する場合「アミノチオールプロドラッグ」とは、生物的に還元されるジスルフィド結合を介して複合体分子に結合されるアミノチオールまたはアミノチオール類似体から部分的に構成された、治療的に不活性なプロドラッグを意味する。好適な条件下で、ジスルフィド結合が還元されてアミノチオールの放出をもたらし、それにより、その治療効果が達成され得る。
本明細書で使用する場合「生物的に還元される」または「生物的に還元されるジスルフィド結合」とは、処理、酵素、反応、もしくはインビボに、器官系に、及び/または細胞内部に存在する他の機序によって還元され得る結合またはジスルフィド結合を意味する。
本明細書で使用する場合「複合体」とは、治療効果のあるアミノチオールまたはアミノチオール類似体に結合(bind)もしくは結合(conjugate)する任意の合成もしくは天然起源のポリマー、コポリマー、デンドリマー、他の複合体、分子、化学物質または上述の組み合わせを意味する。
本明細書で使用する場合「デンドリマー」とは、分岐、樹木様の構造を有する任意の合成ポリマーを意味する。
本明細書で使用する場合「PEG」とは、「ポリエチレングリコール」の省略形である。
本明細書で使用する場合「ホスホエノール」とは、ホスホエノールの生物学的活性部分または代謝物であるWR−255591を有する、ホスホロチオエートWR−3789に付された名称を意味する。
本明細書で使用する場合「ホスホロチオエート」とは、スルフヒドリル部分に結合するリン酸基を有するアミノチオールに付された一般名を指す。
本明細書で使用する場合「ポリエチレングリコール」(同様に、ポリ(エチレングリコール)、酸化ポリエチレンも)とは、H−(O−CH2−CH2)n−OHの一般的な構造を有する分子に付された名称である。PEG(下を参照)が代替の基(例えばスルフヒドリル部分)を有することができることに留意されたい。それはこの一般式で示されない(en.wikipedia.org/wiki/Polyethylene_glycolも参照)。このような他の代替の基の例は、−COOH、−OH及びNH2を含む。
本明細書で使用する場合「プロドラッグ」とは、細胞及び/または身体内部で及び好ましくは作用部位で活性型に転換される不活性薬物誘導体を意味する。一例は、式(I)のアミノチオール複合体である(図11Aを参照)。別の例を図11Bに示す。
本明細書で使用する場合「4SP65」とは、4アーム星型PEG(分子量10,000ダルトン)にジスルフィド結合によって結合したWR−1065からなるプロドラッグのトリフルオロ酢酸塩を指すために使用する省略形である(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、SigmaAldrich.comのPEGデンドリマー及びマルチアーム型PEGを参照されたい)。
本明細書で使用する場合「WR−1065」とは、アミホスチンの活性部分に付された名称である。それは、ホスホロチオエート薬物の活性部分の代表として本明細書において使用される。
本明細書で使用する場合「WR−2721」とは、アミホスチンの同義語である。
本明細書に記載されるように、ホスホロチオエートの代謝物質は、アミノチオール、アミノチオール、システアミン及びシスタミンの繋ぎ止められた形状として記述される化合物を含む。アミノチオールは、アミホスチン(WR−2721)、ホスホエノール(WR−3689)、WR−131527、構造上関連するホスホロチオエート、アミノチオールまたはホスホロチオエートの類似体、その脱リン酸化活性代謝物、及びStogniewに対する米国特許第6,489,312号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の薬剤と称されるホスホロチオエートの活性代謝物を含むが、これらに限定されない。
本出願は、送達工程中の、これらの薬物のスルフヒドリル部分を保護する方法にも関する。例えば本出願は、ポリエチレングリコール(PEG)、他の複合体またはそれらの組み合わせ(したがって「複合体」と称される)を完全または部分的に構成するポリマーまたはコポリマーの使用に関する。これらの複合体の分子量は、特定の目的用に製剤を最適化するために希望に応じて変化でき、ポリマーは、直鎖、マルチアーム型(星型)もしくは分枝状、樹木様(デンドリマーの場合)を含む、任意の形状を有することができる(Balogh,“Dendrimer 101”Adv.Exp.Med.Biol.620:136−155(2007)、Mintzer et al.,“Exploiting Dendrimer Multivalency to Combat Emerging and Re−Emerging Infectious Diseases,”Molecular Pharmaceutics 9:342−354(2012)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、または不規則形状であり得る。複合体は、細胞表面受容体と相互作用する、及び/または細胞媒介性能動輸送系による化合物の取り込みを強化するその能力のために選択されることもできる。複合体は、アミノチオールのスルフヒドリル部分に結合するジスルフィドの形成により、アミノチオールに結合する。ジスルフィド結合は、好適な細胞内条件、酵素、反応経路またはそれらの組み合わせの存在下で、生物的に還元される。
本発明の一態様は、式(I)のアミノチオール複合体に関し、
式中、
は、原子、分子または高分子であり、
はリンカー基であり、リンカー基は、ポリマー、ポリマーの一部、ポリマーのアーム、コポリマーのアーム、デンドリマーの分枝、原子または分子であり、
R
1、R
2及びR
3は、水素及びC
1−6アルキルから独立して選択され、
mは1〜100,000であり、
nは1〜10であり、かつ
pは0〜2500である。
本発明の別の態様は、図11Bに示す式(式IV)のアミノチオール複合体に関し、
式中、
は、原子、分子または高分子であり、
はリンカー基であり、リンカー基は、ポリマー、ポリマーの一部、ポリマーのアーム、コポリマーのアーム、デンドリマーの分枝、原子または分子であり、
R
1、R
2及びR
3は、水素及びC
1−6アルキルから独立して選択され、
mは1〜100,000であり、
nは1〜10であり、
n’は1〜10であり、かつ
pは0〜2500である。
「アルキル」という用語は、約1〜約6つの炭素原子を鎖中に有する直鎖または分枝状であり得る、脂肪族炭化水素基を意味する。「分枝状」とは、1つ以上の低級アルキル基(例えばメチル、エチルまたはプロピル)が直鎖アルキル鎖に結合していることを意味する。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル及び3−ペンチルが挙げられる。
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
代表的なアミノチオール複合体は、以下を含む。
等、及び最大
一実施形態において、アミノチオール複合体の分子量は、100,000ダルトン以下である。アミノチオール複合体の分子量は、約100,000ダルトン、20,000ダルトン、10,000ダルトン、5,000ダルトン、3,000ダルトン、2,000ダルトン、または1,000ダルトンでもよい。一実施形態において、アミノチオール複合体の分子量は、約10,000ダルトンである。特定の実施形態において、アミノチオール複合体の分子量は、約9,000〜約11,000ダルトンである。特定の実施形態において、アミノチオール複合体の分子量は、約9,000〜約11,000ダルトンである。
本発明によれば
はリンカー基であり、リンカー基は、ポリマー、ポリマーの一部、ポリマーのアーム、コポリマーのアーム、またはデンドリマーの分枝、原子または分子である。特定の実施形態において、ポリマーの一部とはポリマーの繰り返し単位を指す。
リンカーは、100,000ダルトン以下、20,000ダルトン以下、10,000ダルトン以下、5,000ダルトン以下、3,000ダルトン以下、2,000ダルトン以下、1,000ダルトン以下、500ダルトン以下、400ダルトン以下、または200ダルトン以下の分子量を有する部分でもよい。リンカーは、200ダルトン〜100,000ダルトン、200ダルトン〜20,000ダルトン、200ダルトン〜10,000ダルトン、200ダルトン〜5,000ダルトン、200ダルトン〜3,000ダルトン、200ダルトン〜2,000ダルトン、200ダルトン〜1,000ダルトン、200ダルトン〜500ダルトン、または200ダルトン〜400ダルトンの分子量を有する部分でもよい。リンカーは、400ダルトン〜100,000ダルトン、400ダルトン〜20,000ダルトン、400ダルトン〜10,000ダルトン、400ダルトン〜5,000ダルトン、400ダルトン〜3,000ダルトン、400ダルトン〜2,000ダルトン、400ダルトン〜1,000ダルトン、または400ダルトン〜500ダルトンの分子量を有する部分でもよい。リンカーは、500ダルトン〜100,000ダルトン、500ダルトン〜20,000ダルトン、500ダルトン〜10,000ダルトン、500ダルトン〜5,000ダルトン、500ダルトン〜3,000ダルトン、500ダルトン〜2,000ダルトン、または500ダルトン〜1,000ダルトンの分子量を有する部分でもよい。リンカーは、1,000ダルトン〜100,000ダルトン、1,000ダルトン〜20,000ダルトン、1,000ダルトン〜10,000ダルトン、1,000ダルトン〜5,000ダルトン、1,000ダルトン〜3,000ダルトン、または1,000ダルトン〜2,000ダルトンの分子量を有する部分でもよい。リンカーは、2,000ダルトン〜100,000ダルトン、2,000ダルトン〜20,000ダルトン、2,000ダルトン〜10,000ダルトン、2,000ダルトン〜5,000ダルトン、または2,000ダルトン〜3,000ダルトンの分子量を有する部分でもよい。リンカーは、3,000ダルトン〜100,000ダルトン、3,000ダルトン〜20,000ダルトン、3,000ダルトン〜10,000ダルトン、または3,000ダルトン〜5,000ダルトンの分子量を有する部分でもよい。リンカーは、5,000ダルトン〜100,000ダルトン、5,000ダルトン〜20,000ダルトン、または5,000ダルトン〜10,000ダルトンの分子量を有する部分でもよい。リンカーは、10,000ダルトン〜100,000ダルトン、10,000ダルトン〜20,000ダルトンの分子量を有する部分でもよい。リンカーは、20,000ダルトン〜100,000ダルトンの分子量を有する部分でもよい。リンカーは、約100,000ダルトン、20,000ダルトン、10,000ダルトン、5,000ダルトン、3,000ダルトン、2,000ダルトン、1,000ダルトン、500ダルトン、400ダルトンまたは200ダルトンの分子量を有する部分でもよい。
本明細書に記載されるようにポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、分枝状PEG、ポリシアル酸(PSA)、多糖類、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレンオキシドのコポリマー、ポリオキサマー(例えば、PLURONIC)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボン酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルム)(PHF)、及び2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムリン酸塩(MPC)、スペルミンポリマー(Zhang and Vinogradov,“Short biodegradable polyamine for gene delivery and transfection of brain capillary endothelial cells”,J Control Release 143:359−366(2010)。それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)ならびに他のポリマーを含む。
いくつかの実施形態で、リンカーは、ポリエチレングリコール(酸化ポリエチレン)、チオール末端ポリエチレングリコール(酸化ポリエチレン)、葉酸誘導体、葉酸誘導体とPEGの複合体、スペルミン、及びスペルミンポリマーからなる群から選択される。
いくつかの実施形態で、リンカーは、ポリエチレングリコール(酸化ポリエチレン)またはポリエチレングリコール(酸化ポリエチレン)誘導体である(例えば、図4を参照)。一実施形態において、リンカーは、ポリエチレングリコール(酸化ポリエチレン)であり、「n」は1以上の任意の整数であり得る。化学式は、H−(O−CH2−CH2)n−OHであり、「n」は、ここで提示した適用にとって最も望ましい1〜2500の範囲の任意の整数であり得る。PEGは、末端基を含んでもよく、例えばPEGは、水酸基、チオール基、メトキシ基もしくは他のアルコキシル基、メチル基もしくは他のアルキル基、アリール基、カルボン酸、アミン、アミド、アセチル基、グアニジノ基またはイミダゾールで末端処理されてもよい。他の意図される末端基は、アジド、アルキン、マレイミド、アルデヒド、ヒドラジド、ヒドロキシルアミンまたはアルコキシアミン部分を含む。
好適なリンカーは、チオール末端ポリエチレングリコール(酸化ポリエチレン)でもよく、「n」は1〜2500の任意の整数であり得る(図5A〜図5Bに示す代表的な構造を参照)。代表的な好適なポリ(エチレングリコール)ジチオールは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sigmaaldrich.comでホモ二官能性PEGが記載されている。図4は、ポリエチレングリコール(酸化ポリエチレン)の一般的な構造を示し、図5A〜図5Bは、チオール末端ポリエチレングリコール(酸化ポリエチレン)の一般的な構造を示し、「n」は1〜2500の任意の整数であり得る。
上述したとおり、リンカー及び/またはコアは、PEGの有無に関わらず、葉酸酸誘導体の複合体でもよい。葉酸塩(葉酸)の一般的な構造を図9に示す。末端カルボキシル基を適切な部分(例えば、SH)に変えて、それからアミノチオールまたはPEGの追加をそれぞれ実施することによって、葉酸とアミノチオールまたはPEGの複合体を合成できる(Chen et al.,“Folate−mediated intracellular drug delivery increases the anticancer efficacy of nanoparticulate formulation of arsenic trioxide,”Mol Cancer Ther 8(7):1955−63(2009)、Kang et al.,“Folic acid−tethered Pep−1 peptide−conjugated liposomal nanocarrier for enhanced intracellular drug delivery to cancer cells:conformational characterization and in vitro cellular uptake evaluation,”Int J Nanomed 8:1155−65(2013)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。葉酸複合体は、それが細胞の表面上の葉酸受容体と相互作用して、細胞サイトゾル内へのプロドラッグの能動輸送を惹起させることができるという利点を提供する。
上述したとおり、リンカー及び/またはコアは、スペルミンまたはスペルミンのポリマーでもよい。末端NH(2)基を適切な部分(例えば、SH)に変えて、それからアミノチオールまたはPEGの添加をそれぞれ実施することによって、スペルミンポリマーとアミノチオールまたはPEGの複合体を合成できる。スペルミンポリマーの一般的な構造を図10に示す。化学式はNH2C2H4(NC3H6NHC4H8)n−NHC3H6NH2であり、「n」は1以上の任意の整数であり得る。スペルミンポリマー複合体は、それが細胞の表面上のポリアミン受容体と相互作用して、細胞サイトゾル内へのプロドラッグの能動輸送を惹起させることができるという利点を提供する。
特定の実施形態において、リンカーは、チオール末端ポリエチレングリコールを形成するためにコアに結合することができる(図6及び図8を参照)。特定の実施形態において、リンカーは、マルチアーム型チオール末端ポリエチレングリコールの1つのアームを形成するためにコアに結合することができる(図6及び図8を参照)。特定の実施形態において、アミノチオール複合体は、1〜8つのアームを有するチオール末端星型ポリエチレングリコールである。例えばリンカーは、チオール末端2アームPEG、3アームPEG、4アームPEG、6アームPEG及び8アームPEGを形成するためにコアに結合することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sigmaaldrich.comで好適なPEGポリマー及びデンドリマー、PEGデンドリマー及びマルチアーム型PEGを参照されたい。
アミノチオールへのジスルフィド結合を介して結合したチオール末端ポリエチレングリコールの代表的な構造を図7に示す。図中、「n1」は1〜2500の任意の整数であり得、「n2」は、望ましくない立体障害または干渉を誘発することのなく、コア周辺に収容されることができる、任意の数のアームであり得る。一実施形態において、「n1」は1〜2500の任意の整数であり得、「n2」は1〜8の任意の整数であり得る。特定の実施形態において、アミノチオールへのジスルフィド結合を介して結合したチオール末端ポリエチレングリコールの代表的な構造を図7に示す。図中、「n1」は1〜4の任意の整数であり得、「n2」は1〜4の任意の整数であり得る。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sigmaaldrich.comの好適なPEGポリマー及びデンドリマー、PEGデンドリマー及びマルチアーム型PEGを参照されたい。一実施形態において、アミノチオール複合体は、アミノチオールへのジスルフィド結合を介した4アーム型チオール末端星型ポリエチレングリコールである。この実施形態では、アミノチオールへのジスルフィド結合を介した4アーム型チオール末端星型ポリエチレングリコールは、図7に示した構造を有しており、「n2」は4である。
本明細書に記載されるように、本明細書に記載のプロドラッグは、アミノチオール複合体である。式Iのアミノチオール複合体のアミノチオール部分は、以下の式を有し、
式中、各R
1、R
2及びR
3は、水素及びC
1−6アルキルから独立して選択され、nは1〜10の整数である。本明細書に記載のアミノチオール複合体を合成するために使用され得るアミノチオール(及びその類似体)は、図3A及び図3Bに示す代表的な一般構造のものを含む。例えばアミノチオールの一般構造は、
であり、
式中、Xは、−PO
3H
2、水素、スルフヒドリル、硫黄、アセチル、イソブチリル、ピバロイル及びベンゾイルからなる群から選択され、R
1、R
2及びR
3のそれぞれは、水素及びC
1−6アルキルから独立して選択され、nは1〜10の整数である。更に、本明細書に記載のアミノチオール複合体を合成するために使用され得る図3A〜図3Bに示す一般的なアミノチオールの活性部分の2つの代表的な構造は、Xが水素である。特定の実施形態において、アミノチオールは、アミホスチン(NH
2(CH
2)
3NH(CH
2)
2SH)またはホスホエノール(CH
3NH(CH
2)
3NH(CH
2)
2SH)の活性部分である。
本発明の別の態様はアミノチオール複合体に関し、
は、ポリマーコア、デンドリマーコア、内部樹枝状構造(すなわち、分枝)を有するデンドリマーコア、治療物質または治療物質の誘導体である。
一実施形態において、コアの分子量は100,000ダルトン以下である。
デンドリマーは、治療用物質送達用のビヒクルとして、またはインビボ撮像の担体として広範囲に調査された(Lee et al.,“Designing Dendrimers for Biological Applications,”Nat.Biotech.23(12):1517−26(2005)、Esfand & Tomalia,“Poly(amidoamine)(PAMAM)Dendrimers:From Biomimicry to Drug Delivery and Biomedical Applications,”Drug Discov.Today 6(8):427−36(2001)、Sadler & Tam,“Peptide Dendrimers:Applications and Synthesis,”Rev.Mol.Biotechnol.90:195−229(2002)、Cloninger,“Biological Applications of Dendrimers,”Curr.Opin.Chem.Biol.6:742−48(2002)、Niederhafner et al.,“Peptide Dendrimers,”J.Peptide Sci.11:757−88(2005)、Tekade et al.,“Dendrimers in Oncology:An Expanding Horizon,”Chem.Rev.109(1):49−87(2009)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。デンドリマーは、明確な3次元構造を有する高度に分枝した高分子である(George R.Newkome et al.,Dendrimers and Dendrons:Concepts,Synthesis,Applications(2001)。それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。デンドリマーの魅力は、その固有の完全に分枝した構造にあり、それは同じ組成物及び分子量の対応する直鎖ポリマーとは異なる特性を付与する(Lee et al.,“Designing Dendrimers for Biological Applications,”Nat.Biotech.23(12):1517−26(2005)。それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。デンドリマーの生成が増加するにつれて、それらは終端の数を指数関数的に増加させ、一方で半径は線形にのみ増加し、したがって終端は、構造全体に球状の形状を付与する、より高密度に密集するようになり、終端は中核から外側へ放射状に広がる。様々な種類のアミドデンドリマーコアは、当該技術分野において説明されてきた。好適なコアとしては、Tarallo et al.,Int’l J.Nanomed.8:521−34(2013)、Carberry et al.,Chem.Eur.J.1813678−85(2012)、Jung et al.,Macromolecules 44:9075−83(2011)、Ornelas et al.,J.Am.Chem.Soc.132:3923−31(2010)、Ornelas et al.,Chem.Commun.5710−12(2009)、Goyal et al.,Adv.Synth.Catal.350:1816−22(2008)、及びYoon et al.,Org.Lett.9:2051−54(2007)に記載されるものが挙げられ、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
任意の種類のデンドリマーの使用が意図されており、それは、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマー(例えば、高密度星型ポリマー及びスターバーストポリマー)、ポリ(アミドアミン−有機ケイ素)(PAMAMOS)デンドリマー、(ポリ(プロピレンイミン))(PPI)デンドリマー、テクトデンドリマー、マルチリンガルデンドリマー、キラルデンドリマー、ハイブリッドデンドリマー/直鎖ポリマー、両親媒性デンドリマー、ミセルデンドリマー及びフレシェット型デンドリマーを含むが、これらに限定されない。
本発明の別の態様は、請求項1に記載のアミノチオール複合体に関し、
式中、
は、
、葉酸、葉酸誘導体、スペルミンポリマー、及びスペルミンポリマー誘導体からなる群から選択され、aは0〜2500であり、bは0〜2500であり、cは0〜2500であり、dは0〜2500であり、Rは、水素、C
1−6アルキル及びハロゲンから独立して選択され、Xは、原子、分子または高分子であり、Yは、多価基、分子または原子である。
本発明の更に別の態様はアミノチオール複合体に関し、ここで、Xは、O、S、C(R4)2、またはNR4であり、R4は、水素またはC1−6アルキルである。
本発明の更なる態様は、以下
の構造を有するアミノチオール複合体に関し、
式中、kは1〜2500である。
本発明の別の態様は、式Iに従ったアミノチオール複合体に関し、mは2〜100,000である。
一実施形態において、アミノチオール複合体は、以下
の構造を有する。
特定の実施形態において、本発明によるアミノチオール複合体は、以下の式(V)の化合物でも、式(VI)の化合物でもない:
式中、Xは、−PO
3H
2、水素、アセチル、イソブチリル、ピバロイル及びベンゾイルからなる群から選択され、R
1、R
2及びR
3のそれぞれは、独立して水素及びC
1−6アルキルからなる群から選択され、nは1〜10の値を有する整数である。一実施形態において、本発明によるアミノチオール複合体はアミホスチンではない。
特定の実施形態において、本発明によるアミノチオール複合体は、式中、Xが、ペプチド、硫黄含有アミノ酸、グルタチオン、硫黄含有酸化防止剤、酸素含有酸化防止剤、光可逆的チオールタグ、及び(R)−tert−ブチル−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−(トリチルスルファニル)プロパノエイトからなる群から選択される細胞内で切断可能な保護基である、式(V)の化合物でも式(VI)の化合物でもない。
特定の実施形態において、本発明によるアミノチオール複合体は、式中、Xが、アミノチオールのホモ二量体、アミノチオール及び異なるアミノチオールのヘテロ二量体ならびにシステアミンからなる群から選択されるアミノチオールのチオール保護型である、式(V)の化合物でも式(VI)の化合物でもない。
治療効果が所望される、アミノチオール、その代謝物及び/またはその類似体の細胞への細胞内薬物送達システム(複数可)と組み合わせた改良されたスルフヒドリル保護基は、3つの条件を満たさなければならない。第1に、保護基は、薬物送達の間、アミノチオールの偶然的反応を防ぐ能力を有しなければならない。第2は、保護基は、標的細胞で、特に細胞内環境の範囲内で及び/またはリソソーム内で利用可能なシステムまたは方法によって除去可能でなければならない。第3に、保護基は、動物及びヒト細胞に非毒性でなければならない。満たされ得る他の望ましい条件は、(i)薬物循環時間を増加させること、(ii)アミノチオール単独には適用できない機序を介して、薬を細胞吸収させやすくすること、(iii)細胞受容体輸送系(葉酸及びポリアミン輸送系は2つの例である)によって、薬物を細胞内取り込みさせやすくすること、ならびに(iii)薬が循環及び/またはヒトもしくは動物の身体から除去される機序を変えること、を含む。
アミノチオール及びその類似体は、速やかにタンパク質及び核酸と反応し、したがって、活性部分は、反応度が薬物の治療有効性を得ることが望ましい部位で、またはその近くで放出されることを必要とする。これらの薬物の治療有効性は、細胞外とは対照的に細胞内で発生することが示されたので、細胞内送達は最適な送達部位を表す。細胞内送達は、非限定的に細胞外標的を含む治療的有効性と関連しない標的との反応とは対照的に、標的細胞要素との活性剤代謝物の反応性の機会を最適化する。
薬物動態及び薬力学を対応するホスホロチオエートのものから変えることを目的とした、別の分子に対する治療的アミノチオールの結合は、ストレスを受けたもしくは罹患した細胞へのアミノチオールの送達及びそこでの活性化を変える、または強化するために使用することができる方法である。薬物の薬物動態及び薬力学を変更かつ改善するように設計されたPEGまたは同等の生体適合材料を完全にまたは部分的に構成し、かつアミノチオールの細胞の取り込み及び細胞内送達もしやすいデンドリマーを含むポリマーまたはコポリマーは、これらの目的を達成するために使用することができる。本細書に記載の複合体に結合するアミノチオール部分からなる製剤を使用して、これらの課題を解決するための方法を以下に示す。このような製剤は、最適な細胞質内薬物送達及び薬物効果を得るために、単独で使用することができる、または追加の方法と組み合わせることができる。
細胞内送達方法及び組成物は、他の薬物分子の細胞内送達を達成するために他で開発されてきた。それらの方法及び組成物のいくつか(例えば、本明細書で明確に記載されているまたは参照されるもの)は、アミノチオールの細胞内配送を達成するために使用することができる。しかし、以前は、アミノチオールに関連してこのような組成物及び方法を使用するつもりでなかったと考えられている。したがって、有効医薬成分のスルフヒドリル基を保護するための他で記載されている組成物及び方法は、それらの組成物及び方法が本開示に明確に記載されているものに含まれるものでない場合でも、アミノチオール化合物の細胞内送達を促進にするために使用することができる。
ホスホロチオエートとして知られている薬物の種類を代表するアミホスチンは、治療上有効なアミノチオールWR1065、及びアミノチオールのスルフヒドリル基への結合を介してアミノチオールに結合したリン酸基からなる不活性プロドラッグである。このプロドラッグは、すべてのヒト及び他の動物の正常な細胞(すなわちストレスを受けていない、または疾患のない細胞)とは限らないが多くの細胞への送達に好適な、またはそれによって活性化される特定の薬物動態及び薬力学特徴を有する。しかし、これらの特徴は、ほとんどのストレスを受けたまたは疾患の細胞へのプロドラッグの送達、及びそれによる活性化に適していない。したがって、アミノチオールの治療効果を実現するために、ストレス及び/または疾患の生理適条件下でならびにストレスを受けているまたは疾患の細胞に、アミノチオールを含有してならびにそれを放出できる新規なプロドラッグが必要である。
以下の説明で、「アミホスチン」及び「WR−1065」(アミホスチンの活性部分)という用語は、すべてのホスホロチオエート、アミノチオール、その類似体及び親薬物(プロドラッグ)の活性代謝物の代表例として使用される。
アミホスチンは、その活性部分WR−1065にインビボ代謝されるホスホロチオエートである(Grdina et al.,“Thiol and Disulfide Metabolites of the Radiation Protector and Potential Chemopreventive Agent WR−2721 are Linked to Both its Anti−Cytotoxic and Anti−Mutagenic Mechanisms of Action,”Carcinogenesis 16:767−774(1995)、Purdie et al.,“Interaction of Cultured Mammalian Cells with WR−2721 and its Thiol,WR−1065:Implications for Mechanisms of Radioprotection,”Int.J.Radiat.Biol.Relat.Stud.Phys.Chem.Med.43:517−527(1983)、Shaw et al.,“Pharmacokinetic Profile of Amifostine,”Semin.Oncol.23:18−22(1996)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。WR1065のスルフヒドリル部分は、その治療効果に関与しており(Grdina et al.,“Amifostine:Mechanisms of Action Underlying Cytoprotection and Chemoprevention,”Drug Metabol.Drug Interact.16:237−279(2000)、Grdina et al.,“Differential Activation of Nuclear Transcription Factor Kappab,Gene Expression,and Proteins by Amifostine’s Free Thiol in Human Microvascular Endothelial and Glioma Cells,”Semin.Radiat.Oncol.12:103−111(2002)、Grdina et al.,“Relationships between Cytoprotection and Mutation Prevention by WR−1065,”Mil Med 167:51−53(2002)、Grdina et al.“Radioprotectors:Current Status and New Directions,”Radiat.Res.163:704−705(2002)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、したがって、この部分は、薬物送達の間及び薬物が細胞内環境へ取り込まれるまで、それぞれ偶発的なものからの保護を必要としており、アミホスチンの場合のこの保護はリン酸基によって提供される。薬物が細胞形質膜に近接してもたらされる及び/または薬物が原形質膜に取り込まれるとき、リン酸基は除去される。脱リン酸化工程は、ヒト及び動物のすべてとは限らないが多くの細胞により産生される酵素、膜結合型アルカリホスファターゼによって実行される。リン酸基の除去後、活性部分は細胞内環境に組み込まれ、そこから、更に細胞内小器官にまたは他の細胞に分布されることができ、そこで治療有効性は誘発される。アミノチオールのすべてではないが多くの形態の細胞取り込みは、受動拡散によって生じるが、いくつかの薬物形態は、ポリアミン輸送系による能動輸送によって取り込まれ、他の薬物形態の能動輸送は一部の薬剤濃度だけで生じる場合がある(Grdina et al.,“Differential Activation of Nuclear Transcription Factor Kappab,Gene Expression,and Proteins By Amifostine’s Free Thiol in Human Microvascular Endothelial and Glioma Cells,”Semin.Radiat.Oncol.12:103−111(2002)、Grdina et al.,“Relationships between Cytoprotection and Mutation Prevention by WR−1065,”Mil Med 167:51−53(2002)、Grdina et al.“Radioprotectors:Current Status and New Directions,”Radiat.Res.163:704−705(2002)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。薬物を取り込むことができない及び/または薬物を代謝できない細胞において、活性型は、細胞及び組織分布工程を介して、これらの細胞に送達されることができる。ヒトまたは動物にホスホロチオエートを投与するための既知の方法は、経口送達、腹腔内注射、皮下注射、静脈注射、吸入、ナノ粒子への取り込み(Pamujula et al.,“Oral Delivery of Spray Dried PLGA/Amifostine Nanoparticles,”J.Pharm.Pharmacol.56:1119−1125(2004)、Pamujula et al.,“Preparation and In Vitro Characterization of Amifostine Biodegradable Microcapsules,”Eur.J.Pharm.Biopharm.57:213−218(2004)、Pamujula et al.,“Radioprotection in Mice Following Oral Delivery of Amifostine Nanoparticles,”Int.J.Radiat.Biol.81:251−257(2005)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、または他の薬物送達システムを使用すること(Gu et al.,“Tailoring Nanocarriers for Intracellular Protein Delivery,”Chem.Soc.Rev.40:3638−3655(2011)、Hoffman et al.,“The Origins and Evolution of“Controlled”Drug Delivery Systems,”J.of Controlled Release 132:153−163(2008)、Imbuluzqueta et al.,“Novel Bioactive Hydrophobic Gentamicin Carriers for the Treatment of Intracellular Bacterial Infections,”Acta.Biomater.7:1599−1608(2011)、Leucuta et al.,“Systemic and Biophase Bioavailability and Pharmacokinetics of Nanoparticulate Drug Delivery Systems,”Curr.Drug Del.10:208−240(2013)、Patel et al.,“Recent Developments in Protein and Peptide Parenteral Delivery Approaches,”Ther.Delivery 5:337−365(2014)、Patel et al.,“Particle Engineering to Enhance or Lessen Particle Uptake by Alveolar Macrophages and to Influence the Therapeutic Outcome,”Eur.J.Pharm.Biopharm.89:163−174(2015)、Sakagami,“Systemic Delivery of Biotherapeutics through the Lung:Opportunities and Challenges for Improved Lung Absorption,”Ther.Del.4:1511−1525(2013)、Torchilin,“Recent Approaches to Intracellular Delivery of Drugs and DNA and Organelle Targeting,”Ann.Rev.Biomed.Eng.8:343−375(2006)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を含むが、これらに限定されない。
アミホスチンは、細胞膜結合型アルカリホスファターゼ(リン酸基を除去することによって、細胞内取り込みのためにWR1065にその遊離チオールを放出させる)によって代謝されるまで不活性である(Capizzi,“The Preclinical Basis for Broad−Spectrum Selective Cytoprotection of Normal Tissues from Cytotoxic Therapies by Amifostine(Ethyol),”Eur.J.Cancer 32A:Suppl 4:S5−16(1996)、Shaw et al.,“Pharmacokinetic Profile of Amifostine,”Semin.Oncol.23:18−22(1996)、Yu et al.,“The Radioprotective Agent,Amifostine,Suppresses the Reactivity of Intralysosomal Iron,”Redox Report:Communications in Free Radical Research 8:347−355(2003)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。病原体感染細胞、腫瘍細胞及び転移細胞の微小環境の細胞を含む多くの罹患細胞が、膜結合型酵素をほとんど〜全く生成しないが、細胞外環境または血液循環内に放出される、大量の種々のアルカリホスファターゼ同位酵素を生成できる、及び多くの場合それを生成するので、アミホスチンは、罹患したまたはストレスを受けた細胞でほとんど〜全く活性を有さず(Guerreiro et al.,“Distinct Modulation of Alkaline Phosphatase Isoenzymes by 17beta−Estradiol and Xanthohumol in Breast Cancer MCF−7 Cells”,Clin.Biochem.40:268−273(2007)、Kato et al.,“Effect of Hyperosmolality on Alkaline Phosphatase and Stress−Response Protein 27 of MCF−7 Breast Cancer Cells,”Breast Cancer Res Treat.23:241−249(1992)、Van Hoof et al.,“Interpretation and Clinical Significance of Alkaline Phosphatase Isoenzyme Patterns,”Crit.Rev.in Clin.Lab.Sci.31:197−293(1994)、Walach et al.,“Leukocyte Alkaline Phosphatase,CA15−3,CA125,and CEA in Cancer Patients,”Tumori 84:360−363。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、その結果、アミホスチンの生体内活性化は標的細胞から離れている。細胞膜結合アルカリホスファターゼは、すべてではないがいくつかの細胞型を発現する、GPIアンカータンパク質である(Marty et al.,“Effect of Anti−Alkaline Phosphatase Monoclonal Antibody on B Lymphocyte Function,”Immunol.Lett.38:87−95(1993)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。GPIアンカー合成の欠陥は、GPIアンカー合成に必須の鍵遺伝子の突然変異またはエピジェネティックな変化から生じることがあり得、高い頻度の突然変異及びエピジェネティックな変化は癌で一般的であり、重要なGPIアンカー合成遺伝子で生じることが報告されている(Dobo et al.,“Defining EMS and ENU Dose−Response Relationships using the Pig−a Mutation Assay in Rats,”Mutat.Res.725:13−21(2011)、Dobrovolsky et al.,“Detection of In Vivo Mutation in the Hprt and Pig−a Genes of Rat Lymphocytes,”Methods Mol.Biol.1044:79−95(2013)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。アルカリホスファターゼは、それが合成される粗面小胞体で、追加処理が生じ得るゴルジ体で、ゴルジ体由来小胞で、いくつかのリソソームで及び核膜周辺で、細胞内にも存在する(Tokumitsu et al.,“Alkaline Phosphatase Biosynthesis in the Endoplasmic Reticulum and its Transport Through the Golgi Apparatus to the Plasma Membrane:Cytochemical Evidence,”J.Histochem.Cytochem.31:647−655(1983)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。その局在は、細胞周期の分裂期付近で生じる合成により(Tokumitsu et al.,“Immunocytochemical Demonstration of Intracytoplasmic Alkaline Phosphatase in HeLa TCRC−1 Cells,”J.Histochem.Cytochem.29:1080−1087(1981)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、活性化されたBリンパ球の細胞周期によって変化する(Souvannavong et al.,“Expression and Visualization During Cell Cycle Progression of Alkaline Phosphatase in B Lymphocytes from C3H/HeJ Mice,”J.Leukocyte Biol.55:626−632(1994)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。細胞形質膜結合型アルカリホスファターゼは、正常な微小管構成に依存して、細胞膜でのその正常な配向を達成し(Gilbert et al.,“Microtubular Organization and its Involvement in the Biogenetic Pathways of Plasma Membrane Proteins in Caco−2 Intestinal Epithelial Cells,”J.Cell.Biol.113:275−288(1991)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、微小管構成は、癌細胞及びウイルスに感染した細胞で変化する可能性がある(Nyce,“Drug−Induced DNA Hypermethylation and Drug Resistance in Human Tumors,”Cancer Res.49:5829−5836(1989)、Oshimura et al.,“Chemically Induced Aneuploidy in Mammalian Cells:Mechanisms and Biological Significance in Cancer,”Environ.Mutagen.8:129−159(1986)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
アルカリホスファターゼの局在化及び発現は、すべての細胞型にわたって、またはすべての細胞状態もしくは条件にわたって均一ではないが、その代わりに非常に可変的である。薬物の所望の送達先であるいくつかの細胞は、膜結合型アルカリホスファターゼを生成しないか、または限定された条件下でのみそれを生成するか、または期間が限定されている発生段階中にのみそれを生成する。炎症、感染または腫瘍性形質転換中などのいくつかの疾患状態で、膜結合型アルカリホスファターゼ発現及び局在化は変化する。アルカリホスファターゼは、病原体への一般的な反応として、いくつかの感染状態中、細胞外環境へ放出される。(Murthy et al.,“Alkaline Phosphatase Band−10 Fraction as a Possible Surrogate Marker for Human Immunodeficiency Virus Type 1 Infection in Children,”Arch.Path.& Lab.Med.118:873−877(1994)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。活性化Bリンパ球は、アルカリホスファターゼを周囲の細胞環境内に流すことができ(Burg et al.,“Late Events in B Cell Activation.Expression Of Membrane Alkaline Phosphatase Activity,”J.Immunol.142:381−387(1989)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、アルカリホスファターゼはまた、血清にも存在する。アルカリホスファターゼは、静止期のBリンパ球で発現せず、活性及び不活性Tリンパ球でも発現しない。細胞外環境へのアルカリホスファターゼの放出は、細胞膜から少し離れた所で、ホスホロチオエートのその活性代謝物への代謝をもたらすことができる。この現象は、細胞による取り込みを低減し、非治療的反応へ関与する代謝物の利用可能性を増加させ、活性部分を、細胞傷害性効果を有するアルデヒド及び他の化合物への更なる代謝に利用可能にする。
アミホスチン(WR−1065)の活性型は、観察される有益な効果のために細胞内部に存在しなければならない。WR−2721(アミホスチン)、WR−1065、WR−33278、WR−1065−システイン及び親化合物WR−2721の他のジスルフィド型は、V79細胞の外側に存在する場合、活性が認められなかった(Smoluk et al.,“Radioprotection of Cells in Culture by WR−2721 and Derivatives:Form of the Drug Responsible for Protection,”Cancer Res.48:3641−3647(1988)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。対照的に、WR−1065の細胞内濃度は、ガンマ放射線に対する著しい防護と相関した。ヒーラー細胞、me−180細胞、卵巣2008細胞、HT−29/SP−1d細胞及びColo395腫瘍細胞株についても、結果は類似していた(Smoluk et al.,“Radioprotection of Cells in Culture by WR−2721 and Derivatives:Form of the Drug Responsible for Protection,”Cancer Res.48:3641−3647(1988)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。最適な細胞保護のために、WR−1065(アミホスチンの活性型)の十分かつ持続した細胞内濃度が必要だった(Souid et al.,“Determination of the Cytoprotective Agent WR−2721(Amifostine, Ethyol) and its Metabolites in Human Blood using Monobromobimane Fluorescent Labeling and High−Performance Liquid Chromatography,”Cancer Chemother.Pharmacol.42:400−406(1998)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。細胞が、放射線への曝露前に4時間、薬物のない媒体へ移される場合、WR−1065及びWR−33278の細胞内濃度は、放射線障害からの細胞保護と共に、著しく減少した(Grdina et al.,“Thiol and Disulfide Metabolites of the Radiation Protector and Potential Chemopreventive Agent WR−2721 are Linked to Both its Anti−Cytotoxic and Anti−Mutagenic Mechanisms of Action,”Carcinogenesis 16:767−774(1995)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。WR−1065のインビボ組織レベルはサル及びヒトで同様であり、薬物の組織レベルは細胞保護作用に関して参考になった(Cassatt et al.,“Preclinical Modeling of Improved Amifostine(Ethyol)use in Radiation Therapy,”Semin.Radiat.Oncol.12:97−102(2002)、Shaw et al.,“Metabolic pathways of WR−2721(ethyol,amifostine)in the BALB/c mouse,”Drug Metab Dispos.22:895−902(1994)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
要約すると、その治療上有効な活性代謝物(アミノチオール)の送達におけるホスホロチオエートとして周知の製剤への信頼性は、以下を含む、いくつかの重大な問題を伴う:(1)非限定的にストレスを受けたまたは罹患した細胞を含む一部の細胞型は、この薬物をその活性型に代謝させることができないこと、(2)一部の生理学的または疾患条件下では、この薬物を活性化/代謝させることができないこと、(3)その活性が求められていない環境でのこの薬物の活性化、(4)最適な細胞または細胞内環境から少し離れた所でのこの薬物の活性化、(5)生成物が毒素に代謝されやすい環境での活性化、ならびに(6)ターゲティングされた細胞送達またはターゲティングされた細胞除外を達成する能力の欠如。これらの課題は、ストレスを受けたまたは罹患した細胞の治療効果を得る能力に悪影響を与える。
総合すれば、送達中のアミノチオールのスルフヒドリル部分の保護のためのリン酸基への依存、及び親薬物のその活性部分への代謝のためのアルカリホスファターゼへの依存は、薬物効果に不利な影響を及ぼす可能性のある著しい不都合があるという結論を、これらの知見は支持する。上述の考慮は、新規な製剤の必要性を示す。これらの結果を達成する方法を、本明細書に記載する。
3つの評価基準は、上述の課題に対処するために適合しなければならない。スルフヒドリル基は、生体の身体及び細胞中に存在する様々な部分と共有結合を形成する高反応部分である。したがって、その薬物の薬理効果で役割を果たす1つ以上のスルフヒドリル基を含有する治療薬物は、薬物の所望の治療効果に関連していない隣接分子との反応性を防ぐために、送達中、スルフヒドリル部分の保護を必要とする。この保護を得るために、(i)送達中、所望の保護効果を得る、(ii)サイトゾル内への細胞取り込みをしやすい、(iii)細胞内で除去することができる、(iv)(活性アミノチオール部分からの除去前またその後)細胞に有毒ではない、(v)循環血中のプロドラッグの半減期を前提として、達成することができる時間枠に(すなわち許容可能な時間枠内に)、細胞内の治療的アミノチオールレベルを達成する、という必要条件を満たすならば、任意の分子群を使用することができる。
非限定的に細胞内小器官への送達を含む、許容可能な時間枠内に治療的な細胞内濃度で細胞内薬物送達を達成する、任意の方法は、その活性が求められ及びそれが有益な効果を有する環境に、アミノチオール剤を送達する目的に適している。すなわち本開示でなされる観察は重要なことに、細胞内で切断可能アミノチオール保護部分複合体の細胞内送達が、アミノチオールの投与に有益な影響を及ぼすということの実現に関する。本開示でなされる観察は、反応活性部分を有するアミノチオール化合物の細胞内送達は、どのように達成されたとしても、アミノチオール化合物の対応するホスホロチオエートの細胞外送達と有利に関連するということの実現にも関する。
ターゲティングされた細胞送達及び/またはターゲティングされた細胞除外は、アミノチオールの周知の毒性故に望ましい。特定の方法(例えば経口送達または吸入送達)による送達において、送達方法またはシステムは、それを通って薬物が通過する器官の管腔で見いだせる酵素による分解及び/または反応から薬物を保護する能力を有するものでなければならない。したがって、経口送達において、前記方法は、胃腸管の管腔酵素及び因子からの保護を達成しなければならず、吸入送達において、前記方法は、気道の滲出液/分泌物による分解から保護しなければならない。
ターゲティングされた薬物送達は、受動または能動であり得る(Banerjee et al.,“Poly(ethylene glycol)−prodrug conjugates:concept, design,and applications,”J Drug Deliv 2012:1−17(2012)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。透過性増加及び貯留(EPR)効果は、標的部位の外側に薬物を放出する、またはその蓄積を引き起こすことによって受動的薬物ターゲティングを達成し、それは変化した環境条件に依存する。EPR効果は、腫瘍及び炎症領域の高透過性脈管構造ならびに減少したリンパ排出を利用して、これらの領域の薬物の蓄積を増加させ、それによって受動的なターゲティングを提供する。能動的なターゲティングは、リガンド−受容体、抗原−抗体、酵素基質(生物学的対)の間の潜在的相互作用を利用することに基づく。ターゲティング物質は、結合の化学的作用によってプロドラッグの表面に結合する。一般的なターゲティング部分の例は、その生物学的対として、細胞または器官によって発現される受容体、セレクチン、抗原もしくはmRNAを有するペプチドリガンド、糖残基、抗体またはアプタマーを含む。例えば黄体形成ホルモン放出ホルモンペプチドは、いくつかの癌細胞によって過剰発現する受容体を標的とするために使用する。追加の基は、受容体のためのリガンドとして機能する、及び/または受容体媒介性エンドサイトーシスを惹起させるものであり得る。
最後に、薬物の活性化を達成するために、アミノチオールのスルフヒドリル基を保護するために使用する任意の基は、薬物が標的及び/または非標的の細胞の細胞質内に正常に送達されれば、放出されるまたは除去されることができるものでなければならない。
本明細書に記載されるように、薬物の活性型は、送達中、保護されており、送達が完了すれば、アミノチオールの放出を得ることが望ましい。概して、送達中アミノチオールのスルフヒドリル基の保護を提供する、所望の部位(複数可)への送達後に活性型薬物の細胞内放出をもたらす、及び治療的な細胞内薬物レベルをもたらす、任意の組成物または方法(複数可)を使用することができる。細胞内送達前のアミノチオールのスルフヒドリル部分の保護は、これらの薬物の治療効果を得るために必須である。細胞質内送達が達成されると、保護システムが薬物の活性部分を放出することが可能である特徴を有しなければならないので、送達中の保護及び送達後の放出の両方を検討するシステムが一括して考察される。
本明細書に記載の複合体について、共通の特徴は以下のものを含む。アミノチオールは、アミノチオールのスルフヒドリル基と、複合体の、またはマルチアームポリマー/コポリマーの1つ以上のアームの末端の、または分枝デンドリマーの1つ以上の分枝の末端のスルフヒドリル基の間の生物的に還元されるジスルフィド結合を介して複合体に結合する。ジスルフィド結合は、サイトゾル及び細胞外ではなく標的細胞のサイトゾル条件で、または循環条件で主として機能する、チオール−ジスルフィド交換反応によって還元される。(Navath et al.,“Stimuli−Responsive Star Poly(Ethylene Glycol)Drug Conjugates for Improved Intracellular Delivery of the Drug in Neuroinflammation,”J.Controlled Release 142:447−456(2010)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。アミノチオールを複合体に結合し、かつ細胞プロセス、反応、酵素または他の要素によって還元可能である、スルフヒドリル基への結合を使用することができる。ジスルフィド結合または他の連結結合の還元は、その治療有効性が実現できるように、アミノチオールの放出をもたらす。複合体は直鎖、分枝またはデンドリマー構造を有することができ、複合体の分子量は、ポリマー/コポリマーの繰り返し単位の数及び/またはデンドリマーの分枝及び繰り返し単位の数に基づき、低から高まで変化できる。複合体は、生物活性を有しても、有さなくてもよい。
これらの条件を満たす複合体は、以下を含む。
(i)全体的にまたは部分的に酸化ポリエチレン(PEG)から構成される複合体(Bondar et al.,“Lipid−Like Trifunctional Block Copolymers of Ethylene Oxide and Propylene Oxide:Effective and Cytocompatible Modulators of Intracellular Drug Delivery,”Int.J.Pharm.461:97−104.(2014)、Khorsand et al.,“Intracellular Drug Delivery Nanocarriers of Glutathione−Responsive Degradable Block Copolymers Having Pendant Disulfide Linkages,”Biomacromolecules 14:2103−2111(2013)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。上記の他の特徴が適用される。
(ii)全体的にまたは部分的に葉酸から構成される複合体。
(iii)全体的にもしくは部分的にスペルミンまたはスペルミンポリマーから構成される複合体。
(iv)還元できるジスルフィド結合を介してアミノチオールのスルフヒドリル基に結合できるスルフヒドリル部分を含む、生体適合部分。アミノチオールのスルフヒドリル部分に結合でき、ならびに上述の状態及び必要条件を場合により満たすことができる異なる部分の数が非常に大きく、新しい研究の結果として将来拡大し続け得るという点に留意すべきである。この多数の基から、以下の特徴を有する部分は、治療的アミノチオールへの結合で保護基として機能することができる:(a)100,000ダルトン以下の分子量を有する部分、(b)生体適合性で、非毒性の材料から構成される部分、(c)プロドラッグの循環半減期内で106細胞当たりの1マイクロモル以下の範囲でアミノチオールの細胞内濃度を達成する割合で、細胞取り込みされやすい部分、及び(d)毒素へ転換されにくい、またはアミノチオールの治療有効性もたらす用量レベルで低毒性を有する部分。
(v)上に列挙した薬物送達システムが、互いに組み合わせて使用可能である点に留意する必要がある。それらは、ターゲティングされた細胞もしくは組織型送達、または標的とされる細胞/組織型の除外を提供するために更に操作されることもできる。更に、新しいナノスケール送達システムが頻繁に開発されており、ナノスケールの薬物送達ビヒクルの形成で使用するための様々な材料は、急速に広がっている。
アミノチオールまたはアミノチオール類似体、及びPEGポリマー、PEG含有コポリマーまたはデンドリマーからなるプロドラッグの合成方法を以下に述べる。
概して、次の工程は、アミノチオールまたはアミノチオール類似体のスルフヒドリル基に複合体を結合するために完了しなければならない。最初に、アミノチオールのアミン基を反応性から保護することが必要である。この工程は「ボーシング(bocing)」と称され、様々な異なる保護基を使用して実施されることができる。満たされなければならない1つの条件は、プロドラッグのポリマー、コポリマーもしくはデンドリマー、またはアミノチオール成分に損害を与えない機序による合成の最終工程として、保護基は除去可能でなければならないということである。第2段階で、アミノチオールのスルフヒドリル基は、複合体のスルフヒドリル基とアミノチオールのスルフヒドリル基の間のジスルフィド結合を介して中間体に結合する。第3段階で、このジスルフィドは、ポリマー、コポリマーまたはデンドリマーと反応する。これらの複合体は、分子(直鎖ポリマーまたはコポリマー)の一端で、または1つ以上のアーム(マルチアーム型ポリマーまたはコポリマー)の端で、またはデンドリマーの分枝の端で少なくとも1つのスルフヒドリル基を有しなければならない。最終段階で、アミン保護基は、新しく合成されたプロドラッグの構造に損害を与えない方法を使用して、除去されなければならない。
本発明のアミノチオール複合体は、下で概説するスキームによって調製されることができる。
(i)ジチオジピリジン(TP−TP)(2)、(ii)4アームPEG−チオール(MW10kDal)(4)。
4星型PEG−S−S−WR1065複合体(5)の合成をスキーム1に示す。WR1065ジヒドロクロリド(1)をジチオジピリジン(TP−TP)(2)と室温で反応させて、WR1065−S−TPを形成した。中間体(3)を4アームPEG−チオール(MW10kDal)(4)と反応させ、Mw10.536kDalの4星型PEG−S−S−WR1065複合体(5)を形成した。上述のスキームは、が4星型PEG−S−S−WR1065複合体(5)の合成の間、WR1065中の窒素を保護して、それから脱保護するための工程を示さない。WR1065(1)上のニトロゲンは保護されていなければならず、最終工程で、保護基は除去されなければならなかった(スキーム2〜5)。
(i)保護基(PG)の導入、(ii)ジチオピルイジン(TP−TP)(2)との反応、(iii)4アームPEG−チオール(MW10kDal)(4)との反応、(iv)脱保護。
PGは、任意の好適な保護基である。
(i)保護基(PG)の導入、(ii)ジチオピルイジン(TP−TP)(2)との反応、(iii)4アームPEG−チオール(MW10kDal)(4)との反応、(iv)脱保護。
PG及びPG
1は、それぞれ好適な保護基である。PG及びPG
1は、同一であるまたは異なっていることができる。
(i)保護基(PG)(2)の導入、(ii)ジチオピルイジン(TP−TP)との反応、(iii)4アームPEG−チオール(MW10kDal)(4)との反応、(iv)脱保護。
PGは、任意の好適な保護基である。
(i)保護基(PG)(2)の導入、(ii)ジチオピルイジン(TP−TP)との反応、(iii)4アームPEG−チオール(MW10kDal)(4)との反応、(iv)脱保護。
PG及びPG
1は、それぞれ好適な保護基である。PG及びPG
1は、同一であるまたは異なっていることができる。
スキーム1〜5は、式(I)の代表的なアミノチオール複合体の合成について記載する。スキーム1〜5に記載されている合成は、式(I)のアミノチオール複合体を調製するために変更されることができ、
式中、
、R
1、R
2、R
3、m、n及びpは、上述のスキームで例示されたものとは異なる。したがって式(I)のアミノチオール複合体は、スキーム6に記載されているものから変更されたプロトコルを使用して調製されることもできる。
本発明のアミノチオール複合体は、周知の方法に従って作製することができる。例えば式(I)のアミノチオール複合体は、下で概説するスキーム6に従って調製されることができる。
X及びYは、それぞれH、好適な脱離基または好適な活性化基である。X及びYは、同一であるまたは異なることができる。
ジスルフィド(II)とアミン化合物(III)の反応は、アミノチオール複合体(I)の形成を引き起こす。前記反応は、様々な溶媒(例えば水、緩衝液、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、ジメチルホルムアミド(DMF)もしくは他のこのような溶媒)またはこのような溶媒の混合物で実施されることができる。反応は、0℃〜100℃の温度で、0℃〜40℃の温度で、または0℃〜25℃の温度で実施されることができる。反応プロセス中、式IIIの化合物のアミノ基は、所望する場合、その後選択的に除去されることができる好適な保護基によって保護されることができる。これらの基及びその選択及び成分の詳細な説明は、“The Peptides,Vol.3”,Gross and Meinenhofer,Eds.,Academic Press,New York,1981に含まれ、それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがってアミノ基に有用な保護基は、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)、t−アミルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、2−(トリクロロシリル)エトキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、フタロイル、アセチル(Ac)、ホルミル、トリフルオロアセチルなどである。任意の好適な市販のジスルフィド(II)を本発明に従って使用することができる。あるいはジスルフィド(II)は周知の方法に従って調製されることができる。
WR1065複合体のためのスキャフォールドとして使用するPEG−SH分子は、異なる長さ及び分子量の直鎖PEGポリマー、または異なる数のアーム(例えば上述の(4)に示すように4アームもしくは6、8などのアーム)及び分子量を有するマルチアーム型ポリマーであり得る。
代表的なアミノチオール複合体は、以下
及び最大
を含む。
本発明によれば
はリンカー基であり、リンカー基は、ポリマー、ポリマーの一部、ポリマーのアーム、コポリマーのアーム、デンドリマーの分枝、原子または分子である。特定の実施形態において、ポリマーの一部とはポリマーの繰り返し単位を指す。
複合体化プロドラッグ(またはその活性部分)は、細胞(例えば標的細胞)へ細胞内でまたは細胞質内で送達されてよい。概して、文献に記載された、または任意の生物学的もしくは細胞機序によってもアミノチオールの放出を許容する特徴を有する将来に開発される任意の方法を使用することができる。したがって増大した薬物送達を得るために、下で示される他の薬物送達モジュールと組み合わせて、複合体化プロドラッグを送達することができる。ターゲティングされた薬物送達及びターゲティングされた薬物除外は、望ましいが必要でない。
細胞内薬物送達のための様々な粒子状担体が開発されてきた及び/または記載されてきた。ナノ粒子は、ナノ小胞体、ナノ担体またはナノカプセルとも称され、リソソーム、ミセル、カプセル、ポリマーソーム、ナノゲル、樹枝状及び高分子薬物複合体、ならびにナノサイズの核酸複合体を含む。ナノ粒子が分類されることがあるカテゴリの概要は、以下の品目(1)〜(18)を含む。
(1)両親媒性ポリプロリンヘリックスP11LRRなどの細胞透過性物質(例えば、Li et al.,“Cationic Amphiphilic Polyproline Helix P11LRR Targets Intracellular Mitochondria,”J.Controlled Release 142:259−266(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、またはペプチド機能性量子ドット(例えば、Liu et al.,“Cell−Penetrating Peptide−Functionalized Quantum Dots for Intracellular Delivery,”J.Nanosci.Nanotechnol.10:7897−7905(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(2)炭酸アパタイトなどのpHに反応する担体(Hossain et al.,“Carbonate Apatite−Facilitated Intracellularly Delivered siRNA for Efficient Knockdown of Functional Genes,”J.Controlled Release 147:101−108(2010)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(3)C2−ストレプトアビジン送達システム(マクロファージ及びT白血病細胞への薬物送達を促進するために使用されてきた)(例えば、Fahrer et al.,“The C2−Streptavidin Delivery System Promotes the Uptake of Biotinylated Molecules in Macrophages and T−leukemia cells,”Biol.Chem.391,1315−1325(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(4)CH(3)−TDDS薬物送達システム。
(5)疎水性生物活性担体(例えば、Imbuluzqueta et al.,“Novel Bioactive Hydrophobic Gentamicin Carriers for the Treatment of Intracellular Bacterial Infections,”Acta.Biomater.7:1599−1608(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(6)エキソソーム(例えば、Lakhal et al.,“Intranasal Exosomes for Treatment of Neuroinflammation? Prospects and Limitations,”Mol.Ther.19:1754−1756(2011)、Zhang et al.,“Newly Developed Strategies for Multifunctional Mitochondria−Targeted Agents In Cancer Therapy,”Drug Discovery Today 16:140−146(2011)に記載のものなど。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(7)微小管(例えば、Kolachala et al.,“The Use of Lipid Microtubes as a Novel Slow−Release Delivery System for Laryngeal Injection,”The Laryngoscope 121:1237−1243(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を含む、脂質ベースの送達システム(例えば、Bildstein et al.,“Transmembrane Diffusion of Gemcitabine by a Nanoparticulate Squalenoyl Prodrug: An Original Drug Delivery Pathway,”J.Controlled Release 147:163−170(2010)、Foged,“siRNA Delivery with Lipid−Based Systems:Promises and Pitfalls,”Curr.Top.Med.Chem.12:97−107(2012)、Holpuch et al.,“Nanoparticles for Local Drug Delivery to the Oral Mucosa:Proof of Principle Studies,”Pharm.Res.27:1224−1236(2010)、Kapoor et al.,“Physicochemical Characterization Techniques for Lipid Based Delivery Systems for siRNA,”Int.J.of Pharm.427,35−57(2012)に記載のものなど。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(8)リポソームまたはリポソームベースの送達システム。
(9)ジスルフィド架橋型ミセルを含むミセル(例えば、Li et al.,“Delivery of Intracellular−Acting Biologics in Pro−Apoptotic Therapies,”Curr.Pharm.Des.17:293−319(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。ジスルフィド結合を有する担体を、1つ以上のジスルフィド結合がアミノチオールへ連結するように調製できる。様々なミセルが記載されてきた(例えば肺送達でのリン脂質−ポリアスパルトアミドミセル)。
(10)微小粒子(例えば、Ateh et al.,“The Intracellular Uptake of CD95 Modified Paclitaxel−Loaded Poly(Lactic−Co−Glycolic Acid)Microparticles,”Biomater.32:8538−8547(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(11)分子担体(例えば、Hettiarachchi et al.,“Toxicology and Drug Delivery by Cucurbit[n]uril Type Molecular Containers,”PloS One5:e10514(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(12)「ナノ担体」と称されるナノ粒子(例えば、Gu et al.,“Tailoring Nanocarriers for Intracellular Protein Delivery,”Chem.Soc.Rev.40:3638−3655(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。そのいくつかは、HIV感染細胞への薬剤の送達のために調製されてきた(例えば、Gunaseelan et al.,“Surface Modifications of Nanocarriers for Effective Intracellular Delivery of Anti−HIV Drugs,”Adv.Drug Delivery Rev.62:518−531(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(13)ナノスケールのマルチバリアント担体。
(14)ナノゲル(例えば、Zhan et al.,“Acid−Activatable Prodrug Nanogels for Efficient Intracellular Doxorubicin Release,”Biomacromolecules 12:3612−3620(2011)及びZhang et al.,“Folate−Mediated poly(3−hydroxybutyrate−co−3−hydroxyoctanoate)Nanoparticles for Targeting Drug Delivery,”Eur.J.Pharm.Biopharm.76:10−16(2010)に記載のものなど。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(15)ハイブリッドナノ担体システム(2つ以上の微粒子送達システムの構成要素からなる)(例えば、Pittella et al.,“Enhanced Endosomal Escape of siRNA−Incorporating Hybrid Nanoparticles from Calcium Phosphate and PEG−Block Charge−Conversional Polymer for Efficient Gene Knockdown With Negligible Cytotoxicity,”Biomater.32:3106−3114(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。コポリマーミセル型ナノ担体(例えば、Chen et al.,“pH and Reduction Dual−Sensitive Copolymeric Micelles for Intracellular Doxorubicin Delivery,”Biomacromolecules 12:3601−3611(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。リポソーム型ナノ担体(例えば、Kang et al.,“Design of a Pep−1 Peptide−Modified Liposomal Nanocarrier System for Intracellular Drug Delivery:Conformational Characterization and Cellular Uptake Evaluation,”J.of Drug Targeting 19:497−505(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(16)ナノ粒子は、様々なナノ材料によって作製することができる(例えば、Adeli et al.,“Synthesis of New Hybrid Nanomaterials:Promising Systems for Cancer Therapy,”Nanomed. Nanotechnol.Biol.Med.7:806−817(2011)、Al−Jamal et al.,“Enhanced Cellular Internalization and Gene Silencing with a Series of Cationic Dendron−Multiwalled Carbon Nanotube:siRNA Complexes,”FASEB J24:4354−4365(2010)、Bulut et al.,“Slow Release and Delivery of Antisense Oligonucleotide Drug by Self−Assembled Peptide Amphiphile Nanofibers,”Biomacromolecules 12:3007−3014(2011)に記載のものなど。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(17)ペプチドベースの薬物送達システム(様々な細胞膜透過ペプチドを含み、TATベースの送達システムを含むがこれに限定されない)(例えば、Johnson et al.,“Therapeutic Applications of Cell−Penetrating Peptides,”Methods Mol.Biol.683:535−551(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(18)ポリマーまたはコポリマーベースの送達システム(例えば、Edinger et al.,“Bioresponsive Polymers for the Delivery of Therapeutic Nucleic Acids,”Wiley Interdiscip.Rev.Nanomed.and Nanobiotechnol.3:33−46(2011),に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
ナノ粒子のカテゴリに分類されると判定されてもよい追加の細胞内薬物送達システムは、以下の品目(a)〜(u)を含む。
(a)アプタマー(例えば、Orava et al.,“Delivering Cargoes into Cancer Cells Using DNA Aptamers Targeting Internalized Surface Portals,”Biochim.Biophys.Acta.1798:2190−2200(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(b)細菌性薬物送達システム(例えば、Pontes et al.,“Lactococcus Lactis as a Live Vector:Heterologous Protein Production and DNA Delivery Systems,”Protein Expression Purif.79:165−175(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(c)タンパク質ベースの自己組織化細胞内細菌小器官(細菌外殻)(例えば、Corchero et al.,“Self−Assembling,Protein−Based Intracellular Bacterial Organelles:Emerging Vehicles for Encapsulating,Targeting And Delivering Therapeutical Cargoes,”Microb.Cell Factories 10:92(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(d)混合されたシステム(例えば、Lee et al.,“Lipo−Oligoarginines as Effective Delivery Vectors to Promote Cellular Uptake,”Mol.Biosyst.6:2049−2055(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(e)共有結合的に変性されたタンパク質(例えば、Muller,“Oral Delivery of Protein Drugs:Driver for Personalized Medicine,”Curr.Molec.Bio.13:13−24(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(f)薬物負荷した照射済み腫瘍細胞(例えば、Kim, et al.,“Delivery of Chemotherapeutic Agents Using Drug−Loaded Irradiated Tumor Cells to Treat Murine Ovarian Tumors,”J.Biomed.Sci.17:61(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(g)ミセル体を用いた二重負荷(例えば、Yu et al.,“Overcoming Endosomal Barrier by Amphotericin B−Loaded Dual pH−Responsive PDMA−b−PDPA Micelleplexes for siRNA Delivery,”ACS Nano 5:9246−9255(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(h)エソソーム(例えば、Godin et al.,“Ethosomes:New Prospects in Transdermal Delivery,”Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.20:63−102(2003)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(i)吸入ベースの送達システム(例えば、Patton et al.,“The Particle Has Landed−−Characterizing the Fate of Inhaled Pharmaceuticals,”J.of Aerosol Medicine and Pul.Drug Del.23:Suppl 2:S71−87(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(j)照射済み腫瘍細胞ベースの送達システム(例えば、Kim, et al.,“Delivery of Chemotherapeutic Agents Using Drug−Loaded Irradiated Tumor Cells to Treat Murine Ovarian Tumors,”J.Biomed.Sci.17:61(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(k)脂質ベースの担体。
(l)リポスフィア(例えば、聴覚上活性なリポスフィア)。
(m)マイクロカプセル化した薬物送達(例えば、Oettinger et al.,“Microencapsulated Drug Delivery:A New Approach to Pro−Inflammatory Cytokine Inhibition,”J.Microencapsulation(2012)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(n)分子アンブレラと称される送達システム。(例えば、Cline et al.,“A Molecular Umbrella Approach to the Intracellular Delivery of Small Interfering RNA,”Bioconjugate Chem.22:2210−2216(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(o)ニオソーム(ノニオン性界面活性剤系リポソーム)。
(p)光活性化薬物送達システム。
(q)高分子マイクロカプセル(例えば、Pavlov et al.,“Neuron Cells Uptake of Polymeric Microcapsules and Subsequent Intracellular Release,”Mac.Bio.11:848−854(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(r)自己乳化薬物送達システム(例えば、Lei et al.,“Development of a Novel Self−Microemulsifying Drug Delivery System for Reducing HIV Protease Inhibitor−Induced Intestinal Epithelial Barrier Dysfunction,”Mol.Pharmaceutics 7:844−853(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(s)トロイの木馬送達システム。
(t)非限定的に還元感受性小胞体を含む小胞体。(例えば、Park et al.,“Reduction−Sensitive,Robust Vesicles with a Non−Covalently Modifiable Surface as a Multifunctional Drug−Delivery Platform,”Small 6:1430−1441(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(u)ウイルスベクター及びウイルス様システム(例えば、Bacman et al.,“Organ−Specific Shifts in mtDNA Heteroplasmy Following Systemic Delivery of a Mitochondria−Targeted Restriction Endonuclease,”Gene Ther.17:713−720(2010)、Chailertvanitkul et al.,“Adenovirus:a Blueprint for Non−Viral Gene Delivery,”Curr.Opin.Biotech.21:627−632(2010)に記載のものなど。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
上に列挙した薬物送達システムが、互いに組み合わせて使用可能である点に留意する必要がある。それらは、標的の細胞もしくは組織型への送達、またはターゲティングされた細胞/組織型除外を提供するために更に操作することもできる。更に、新しいナノスケールの送達システムが頻繁に開発されており、ナノスケールの薬物送達ビヒクルの形成で使用するための様々な材料は、急速に広がっている。
上述の送達システムは、改良された送達技術と組み合わせて使用することができる。このような技術の例には以下の項目(I)〜(XV)が含まれる。
(I)アムホテリシンB媒介性薬物送達強化。
(II)超音波媒介性技術(例えば、Grimaldi et al.,“Ultrasound−Mediated Structural Changes in Cells Revealed by FTIR Spectroscopy:a Contribution to the Optimization of Gene and Drug Delivery,”Spectrochim.Acta Part A84:74−85(2011)、Yudina et al.,“Ultrasound−Mediated Intracellular Drug Delivery Using Microbubbles and Temperature−Sensitive Liposomes,”J.Controlled Release 155:442−448(2011)に記載のものなど。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(III)温度感受性送達及び/または放出システム。
(IV)pH感受性送達及び/または放出システム。
(V)レドックス反応性送達システム(例えば、Zhao et al.,“A Novel Human Derived Cell−Penetrating Peptide in Drug Delivery,”Mol.Biol.Rep.38:2649−2656(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(VI)生物的に還元される送達システム(例えば、Liu et al.,“Bioreducible Micelles Self−Assembled from Amphiphilic Hyperbranched Multiarm Copolymer for Glutathione−Mediated Intracellular Drug Delivery,”Biomacromolecules 12:1567−1577(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(VII)リソソーム内逃避を増大させる方法(例えば、Paillard et al.,“The Importance of Endo−Lysosomal Escape with Lipid Nanocapsules for Drug Subcellular Bioavailability,”Biomaterials 31:7542−7554(2010)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(VIII)吸入方法(例えば、Zhuang et al.,“Treatment of Brain Inflammatory Diseases by Delivering Exosome Encapsulated Anti−Inflammatory Drugs from the Nasal Region to the Brain,”Mol.Ther.19:1769−1779(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(IX)経口送達を強化するための方法(例えば、Muller,“Oral Delivery of Protein Drugs:Driver for Personalized Medicine,”Curr.Molec.Bio.13:13−24(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(X)ターゲティングされた細胞送達システム(これらのいくつかは抗HIV薬の送達で使用するために開発されてきた)(例えば、Bronshtein et al.,“Cell Derived Liposomes Expressing CCR5 as a New Targeted Drug−Delivery System for HIV Infected Cells,”J.Controlled Release 151:139−148(2011)、Gunaseelan et al.,“Surface Modifications of Nanocarriers for Effective Intracellular Delivery of Anti−HIV Drugs,”Adv.Drug Delivery Rev.62:518−531(2010)、Kelly et al.,“Targeted Liposomal Drug Delivery to Monocytes and Macrophages.,”J.Drug Delivery 727241(2011)に記載のものなど。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(XI)緩徐またはオンデマンド型放出システム(例えば、Hu et al.,“Multifunctional Nanocapsules for Simultaneous Encapsulation of Hydrophilic and Hydrophobic Compounds and On−Demand Release,”ACS Nano 6:2558−2565(2012)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(XII)1つ以上の受容体へのターゲティングされた送達(例えば、Ming,“Cellular Delivery of siRNA and Antisense Oligonucleotides via Receptor−Mediated Endocytosis,”Expert Opin.on Drug Delivery 8:435−449(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(XIII)1つ以上の異なる細胞内小器官へのターゲティングされた送達(例えば、Paulo et al.,“Nanoparticles for Intracellular−Targeted Drug Delivery,”Nanotechnol.22:494002(2011)、Zhang et al.,“Newly Developed Strategies for Multifunctional Mitochondria−Targeted Agents In Cancer Therapy,”Drug Discovery Today 16:140−146(2011)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(XIV)薬物の取り込みを改善するまたは調節するための方法(例えば、Lorenz,S et al.,“The Softer and More Hydrophobic the Better: Influence of the Side Chain Of Polymethacrylate Nanoparticles for Cellular Uptake,”Macromol.Bioscience 10:1034−1042(2010)、Ma et al.,“Distinct Transduction Modes of Arginine−Rich Cell−Penetrating Peptides for Cargo Delivery into Tumor Cells,”Int.J.Pharm.419:200−208(2011)に記載のものなど。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
(XV)薬物担体として赤血球を使用する方法(例えば、Millan et al.,“Drug, Enzyme and Peptide Delivery using Erythrocytes As Carriers,”J.Control Release 95:27−49(2004)に記載のものなど。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
ナノ粒子を使用したアミホスチン(ホスホロチオエート)の送達が以前報告されていたが(Pamujula et al.,“Oral Delivery of Spray Dried PLGA/Amifostine Nanoparticles,”J.Pharm.Pharmacol.56:1119−1125(2004)、Pamujula et al.,“Preparation and In Vitro Characterization of Amifostine Biodegradable Microcapsules,”Eur.J.Pharm.Biopharm.57:213−218(2004)、Pamujula et al.,“Radioprotection in Mice Following Oral Delivery of Amifostine Nanoparticles,”Int.J.Radiat.Biol.81:251−257(2005)、(Pamujula et al.,“Radioprotection of mice following oral administration of WR−1065.PLGA nanoparticles,”Int.J.Radiat.Biol.84:900−908(2008)、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、この送達システムは、本明細書に記載のアミノチオール複合体及び組成物とは異なるものであり、薬物活性化におけるアルカリホスファターゼへの依存と関連する課題を解決しない。本明細書に記載のアミノチオール複合体とは異なり、このような送達システムは、循環血中の偶発的薬物反応性の問題も、末梢部の標的細胞に対して遠位での薬物放出の問題も解決しない。この以前の試みも、細胞外部での薬物の活性化と関連した潜在的な毒性問題に対処できない。
薬物送達及び/または取り込みを変えるまたは改善するために使用可能な他の方法は、Stogniewへの米国特許第6,489,312号に記載のとおり、界面活性剤の使用を含み、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態では、アミノチオール(またはその類似体)の活性型は、治療有効性を得るために細胞質内に放出される。概して、細胞質内送達の後に薬物の活性型を放出する能力を含む任意の薬物送達システム及び/または薬物保護方法を使用することができる。上述の保護及び送達システムの1つ以上の選択の鍵は、薬物が標的細胞の細胞質内に送達されたら、送達/保護方法がアミノチオールの放出を可能にさせなければならないことを認識することである。したがって複合体をアミノチオールに結合することは、還元される(生物的に還元される)ジスルフィド結合をもたらすために、実施されなければならない(Benham et al.,“Disulfide Bonding Patterns and Protein Topologies,”Protein Sci.2:41−54(1993)、Liu et al.,“Disulfide Bond Structures of IgG Molecules:Structural Variations, Chemical Modifications and Possible Impacts to Stability and Biological Function,”mAbs4:17−23(2012)、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
本発明の別の態様は、アミノチオール治療を必要とする対象を治療する方法に関する。前記方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のアミノチオール複合体のうちの1つ以上を投与することを含む。前記方法は、上述のように対象に(i)式(IV)のアミノチオール複合体を投与することを含んでもよい。前記方法は、上述のように対象に(i)式(I)のアミノチオール複合体を投与することを含んでもよい。
本明細書で使用する場合、「治療」とは、疾患もしくは障害の症状のうちの1つ以上が改善されるまたは有利に変化される任意の方法を意味する。本明細書に記載のアミノチオール複合体の治療上有効な量は、例えば、疾患状態の開始を防ぐ、または疾患状態の期間を短縮させる、または1つ以上の症状の重篤度を低減させるのに十分な量であり得る。治療は、例えば対象のウイルスまたは病原微生物の抑制及び減弱を含む。
アミホスチン、ホスホエノール、ならびに構造上関連するホスホロチオエート及び類似体は、化学保護剤、細胞保護剤、放射線防護剤、抗線維化剤、抗転移性、抗浸潤性及び抗突然変異性効果を有する抗腫瘍剤、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、抗ウイルス剤として、ならびに腫瘍の誘発を防ぎ、腫瘍細胞の増殖を遅延させ、抗腫瘍/抗癌作用を有して及び/または抗癌剤の効能を強化する薬剤として使用するとき、治療有効性を有すると示されてきた(Grdina et al.,“Differential Activation of Nuclear Transcription Factor Kappab,Gene Expression,and Proteins By Amifostine’s Free Thiol in Human Microvascular Endothelial and Glioma Cells,”Semin.Radiat.Oncol.12:103−111(2002)、Grdina et al.,“Relationships between Cytoprotection and Mutation Prevention by WR−1065,”Mil Med 167:51−53(2002)、Grdina et al.“Radioprotectors:Current Status and New Directions,”Radiat.Res.163:704−705(2002)、Poirier et al.,“Antiretroviral Activity of the Aminothiol WR1065 Against Human Immunodeficiency Virus (HIV−1)in Vitro and Simian Immunodeficiency Virus(SIV)Ex Vivo,”AIDS Res.Ther.6:24(2009)、Walker et al.,“WR1065 Mitigates AZT−ddI−Induced Mutagenesis and Inhibits Viral Replication,”Environ.Mol.Mutagen.50:460−472(2009)、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。実験の結果は、WR−1065(アミホスチンの活性代謝物)がHIV、インフルエンザウイルスA及びB、ならびにアデノウイルスの3つの種に対して抗ウイルス効果を提示したことを示した。その後の研究はSIVに対する有効性も示し(Poirier et al.,“Antiretroviral Activity of the Aminothiol WR1065 Against Human Immunodeficiency Virus(HIV−1)in Vitro and Simian Immunodeficiency Virus(SIV)Ex Vivo,”AIDS Res.Ther.6:24(2009)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、及びNIAID/DMID契約研究所は、エボラウイルスに対する効果を示した。
特定の実施形態において、対象は、抗ウイルス剤、化学保護剤、細胞保護剤、放射線防護剤、抗線維化剤、抗腫瘍剤、酸化防止剤、またはこれらの組み合わせを用いた治療を必要とするものである。
特定の実施形態において、対象はHIVに感染していない。
特定の実施形態において、対象は抗菌療法を必要とし、かつアミノチオール複合体またはアミノチオール複合体を含む医薬組成物は、対象において1種類以上の病原微生物を殺すのに効果的な条件下で投与される。微生物は、例えばバクテリア、酵母、真菌または寄生虫でもよい。寄生虫は、細胞内寄生虫または細胞外寄生虫でもよい。
一実施形態において、対象はウイルスに感染しており、アミノチオール複合体(またはアミノチオール複合体を含む医薬組成物)はウイルスを治療するのに効果的な条件下で投与される。特定の実施形態において、本明細書に記載のアミノチオール複合体の治療上有効な量は、対象の標的ウイルスのウイルス量を減らすのに十分な量である。
対象は、HIV、オルソミクソウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルスまたはこれらの組み合わせに感染したものでもよい。一実施形態において、対象はHIVに感染していない。
一実施形態において、対象はインフルエンザに感染しているものである。インフルエンザウイルスは、例えばH1N1またはH3N2でもよい。
一実施形態において、対象はアデノウイルスに感染しているものである。アデノウイルスは、B、CまたはE種でもよい。
一実施形態において、対象はエボラウイルスに感染しているものである。
上述したとおり、本発明の一態様は、新生物状態を治療するのに効果的な条件下で、アミノチオール複合体、または本明細書に記載のアミノチオール複合体を含む医薬組成物を投与することによって、対象の新生物状態を治療する方法に関する。本発明の別の態様は、アミノチオール複合体、または新生物状態を発症する危険性を低減するのに効果的な条件下で本明細書に記載のアミノチオール複合体を含む医薬組成物を投与することによって、新生物状態を発症する危険性がある対象を治療する方法に関する。新生物状態を発症する危険性があるこのような対象は、例えば診断のための繰り返し放射線被曝を受ける対象を含む。
例えばインビトロ試験により特定される感受性腫瘍型は、乳癌、卵巣癌、悪性黒色腫(Brenner et al.,“Variable Cytotoxicity of Amifostine in Malignant and Non−Malignant Cell Lines,”Oncol.Rep.10(5):1609−13(2003)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、卵巣癌(Calabro−Jones et al.,“The Limits to Radioprotection of Chinese Hamster V79 Cells by WR−1065 Under Aerobic Conditions,”Radiat.Res.149:550−559(1998)(“Calabro−Jones”)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、子宮頸癌細胞(HeLa細胞及びMe−180−VCII)(Calabro−Jonesを参照)、結腸癌(Calabro−Jonesを参照)、肺癌(A549細胞及びH1299)(Dr.A.Kajonからの口頭でのやりとり、Pataer et al.,“Induction of Apoptosis in Human Lung Cancer Cells Following Treatment With Amifostine and an Adenoviral Vector Containing Wild−Type p53,”Cancer Gene Ther.13(8):806−14(2006)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ならびに骨髄異形成症候群(Ribizzi et al.,“Amifostine Cytotoxicity and Induction of Apoptosis in a Human Myelodysplastic Cell Line,”Leuk.Res.24(6):519−25(2000)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を含む。インビボ試験により特定した感受性腫瘍型は、例えば転移性黒色腫(Glover et al.,“WR−2721 and High−Dose Cisplatin:An Active Combination in the Treatment of Metastatic Melanoma,”J.Clin.Oncol.5(4):574−8(1987)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、放射線誘発性腫瘍型(Grdina et al.,“Protection Against Late Effects of Radiation by S−2−(3−aminopropylamino)−ethylphosphorothioic Acid,”Cancer Res.51(16):4125−30(1991)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)(マウスの広範囲にわたる放射線誘発腫瘍型の160の腫瘍分類コードを表すすべての腫瘍の発生を、アミホスチンが減らしたと報告する)、リンパ網内系腫瘍(例えば、線維肉腫−リンパ節、組織球白血病、組織球リンパ腫、リンパ球性リンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、形質細胞腫瘍、未分化白血病、未分化リンパ腫、未分類リンパ腫、混合組織球リンパ球性白血病及び混合組織球リンパ球性リンパ腫)(Grdina et al.,“Protection Against Late Effects of Radiation by S−2−(3−aminopropylamino)−ethylphosphorothioic Acid,”Cancer Res.51(16):4125−30(1991)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、放射線誘発乳房腫瘍(Inano et al.,“Inhibitory Effects of WR−2721 and Cysteamine on Tumor Initiation in Mammary Glands of Pregnant Rats by Radiation,”Radiat Res.153(1):68−74(2000)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、放射線誘発肉腫(Milas et al.“Inhibition of Radiation Carcinogenesis in Mice by S−2−(3−aminopropylamino)−ethylphosphorothioic Acid,”Cancer Res.44(12Pt 1):5567−9(1984)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、中性子誘発腫瘍形成能(Grdina et al.,“Protection by WR−151327 Against Late−Effect Damage From Fission−Spectrum Neutrons,”Radiat.Res.128(1 Suppl):S124−7(1991)(照射の30分前に投与されるとき、WR1065類似体WR151327が、雄及び雌マウスの核分裂スペクトル中性子誘発型腫瘍誘発を低減したと報告する)及びCarnes et al.,“In Vivo Protection by the Aminothiol WR−2721 Against Neutron−Induced Carcinogenesis,”Int.J.Radiat.Biol.61(5):567−76(1992)(WR2721が、雄及び雌B6C3F1マウスの中性子誘発型腫瘍誘導を防いだと報告する)、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、骨髄異形成症候群(Mathew et al.,“A Phase II Study of Amifostine in Children With Myelodysplastic Syndrome:A Report From the Children’s Oncology Group Study(AAML0121),”Pediatr.Blood Cancer57(7):1230−2(2011)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)ならびに動物モデルの放射線または化学療法により誘発される二次性腫瘍(Grdina et al.,“Protection Against Late Effects of Radiation by S−2−(3−aminopropylamino)−ethylphosphorothioic Acid,”Cancer Res.51(16):4125−30(1991)、Grdina et al.,“Radioprotectants:Current Status and new Directions,”Oncology63(Suppl.2):2−10(2002)、Grdina et al.,“Radioprotectors in Treatment Therapy to Reduce Risk in Secondary Tumor Induction,”Pharmacol.Ther.39(1−3):21−5(1988)、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を含む。
更にアミノチオール(例えば、アミホスチン(WR2721)及びWR1065)の抗癌作用は、十分に確立している。代表的な抗癌作用は、抗腫瘍性形質転換、正常細胞の抗突然変異誘発、抗脈管形成、腫瘍細胞増殖の抑制または低減、腫瘍細胞浸潤の抑制または低減、及び腫瘍細胞転移の抑制または低減を含む。インビトロまたはインビボ実験により特定した代表的な抗癌作用を以下にまとめた。
抗腫瘍性形質転換:インビトロ実験で、V79細胞はガンマ線で照射され、同時に1ミリMのWR1065に曝露され、腫瘍性形質転換の発現率を評価した(Hill et al.,“2−[(Aminopropyl)amino]ethanethiol(WR1065)is Anti−Neoplastic and Anti−Mutagenic When Given During 60Co Gamma−Ray Irradiation,”Carcinogenesis 7(4):665−8(1986)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。細胞生存度が変わらなかった場合でも、腫瘍性形質転換は著しく減少した。インビトロ実験で、WR1065及びWR151326はそれぞれ1ミリMで、核分裂中性子への曝露によって誘発される新生物変換からC3H/10T1/2細胞を保護することを示し、この効果は2つの異なる放射線被曝プロトコルにおいて観察された(Balcer−Kubiczek et al,“Effects of WR−1065 and WR−151326 on Survival and Neoplastic Transformation in C3H/10T1/2 Cells Exposed to TRIGA or JANUS Fission Neutrons,”Int.J.Radiat.Biol.63(1):37−46(1993)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。細胞は、放射線曝露の前、その間及びその後にWR1065またはWR151326に曝露された。WR1065の保護係数は3.23であり、一方でWR151326では1.8だった。インビボ実験で、体重1g当たり100マイクログラムで投与されるWR2721は、若年ラットを放射線誘発性肝増殖巣の形成から保護した。この効果は、肝細胞の病巣形成に最も影響されやすい性別、雌ラットでより顕著だった(Grdina et al,“Protective Effect of S−2−(3−aminopropylamino)ethylphosphorothioic Acid Against Induction of Altered Hepatocyte Foci in Rats Treated Once With Gamma−Radiation Within one day After Birth,”Cancer Res.45(11 Pt 1):5379−81(1985)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビボ実験において、WR2721曝露は、放射線だけを受けたマウスの87%と比較して、WR2721プラス放射線を受けたマウスの26%が腫瘍を発症し、マウスモデルの放射線誘発性細胞形質転換を抑制した(Milas et al.“Inhibition of Radiation Carcinogenesis in Mice by S−2−(3−aminopropylamino)−ethylphosphorothioic Acid,”Cancer Res.44(12 Pt 1):5567−9(1984)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。WR2721が、マウスモデルの全身照射プラスシクロホスファミドによる化学療法の損傷効果から免疫系細胞を保護できるか判定する(線維肉腫を使用した肺コロニー形成及び増加した腫瘍生着/播種量)ために、インビボ実験を実施した(Milas et al.,“Protection by S−2−(3−aminopropylamino)ethylphosphorothioic Acid Against Radiation− and Cyclophosphamide−Induced Attenuation in Antitumor Resistance,”Cancer Res.44(6):2382−6(1984)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。WR2721がC3Hf/Kamマウスの全身照射の効果を強化する、腫瘍生着をほぼ完全に除去することを、著者は見いだした。インビボ実験で、雌C57/BL/6JANL×BALB/cJANLFlマウスを、0、206cGyのガンマ線、417cGyのガンマ線または400mg/kgのWR2721を伴う同じ照射量の放射線に曝露した。動物は死亡するまでその状態を続けた(Grdina et al.,“Protection Against Late Effects of Radiation by S−2−(3−aminopropylamino)−ethylphosphorothioic Acid,”Cancer Res.51(16):4125−30(1991)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。照射した動物の90%は腫瘍で死亡した。有意な保護は、206cGyによる照射を受けたWR2721処置マウスで観察された。リンパ網内系腫瘍は、保護効果に特に影響を受けた。全体の期待寿命は65日間を延びた。インビボ実験において、アミホスチンは、妊娠ラットの放射線誘発性乳房腫瘍を減らすことを示した(Grdina et al.,“Amifostine:Mechanisms of Action Underlying Cytoprotection and Chemoprevention,”Drug Metabol.Drug Interact.16(4):237−79(2000)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
正常な細胞の抗突然変異誘発:V79細胞にWR1065を4ミリM及び同時にガンマ線照射を使用するインビトロ実験で、HPRT突然変異が著しく低減し、細胞生存度が増加した(Hill et al.,“2−[(Aminopropyl)amino]ethanethiol(WR1065)is Anti−Neoplastic and Anti−Mutagenic When Given During 60Co Gamma−Ray Irradiation,”Carcinogenesis 7(4):665−8(1986)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビトロ実験で、4ミリMの投与量は細胞内のグルタチオン濃度及びシステイン濃度の有意な増加をもたらし、これらは、60Coガンマ光子及び中性子放射線に対する有意な細胞保護及び抗突然変異誘発と関係していた(Grdina et al.,“Thiol and Disulfide Metabolites of the Radiation Protector and Potential Chemopreventive Agent WR−2721 are Linked to Both its Anti−Cytotoxic and Anti−Mutagenic Mechanisms of Action,”Carcinogenesis 16:767−74(1995)、それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビトロ実験で、WR1065は、非周期細胞の保護を示して、電離放射線が原因のG0期Tリンパ球を突然変異誘発から保護した(Clark et al.,“Hprt Mutations in Human T−Lymphocytes Reflect Radioprotective Effects of the Aminothiol,WR−1065,”Carcinogenesis 17(12),2647−2653(1996)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。G0期Tリンパ球のインビトロ実験で、WR1065は、肉眼的構造変化を示す突然変異の誘発を低減した(Clark et al.,“The Aminothiol WR−1065 Protects T Lymphocytes From Ionizing Radiation−Induced Deletions of the HPRT Gene,”Cancer Epidemiol.Biomarkers.Prev.6(12):1033−7(1997)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビトロ実験で、アミホスチンは、マウス脾細胞でHPRT遺伝子のシクロホスファミド誘発突然変異を1/8まで減らした(Grdina et al.,“Chemopreventive Doses of Amifostine Confer no Cytoprotection to Tumor Nodules Growing in the Lungs of Mice Treated With Cyclophosphamide,”Semin.Oncol.26(2 Suppl 7):22−7(1999)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。肺にコロニーを形成することを意図する線維肉腫細胞を静脈内注入されたマウスモデルを使用するインビトロ実験で、シクロホスファミド曝露が原因のHPRT突然変異を防ぐWR1065の能力を評価した(Kataoka et al.,“Antimutagenic Effects of Amifostine:Clinical Implications,”Semin.Oncol.23(4 Suppl 8):53−7(1996)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。100mg/kgで、WR1065は、シクロホスファミドの抗癌作用を低減しなかったが、この化学療法薬により誘発されるHPRT突然変異頻度を著しく減らした。インビトロ実験で、WR1065が、4ミリMの濃度で、化学療法薬シスDDPへの曝露が原因のHPRT遺伝子の突然変異の誘発からの有意な保護を提供することが判明した(Nagy et al.,“Protection Against cis−diamminedichloroplatinum Cytotoxicity and Mutagenicity in V79 Cells by 2−[(aminopropyl)amino]ethanethiol,”Cancer Res.46(3):1132−5(1986)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビトロ実験で、4ミリMのWR1065の能力は、HPRT遺伝子の突然変異誘発を防ぐために、1本鎖切断の誘発、及びブレオマイシン、窒素マスタード、シスDDPまたはX線放射による細胞殺傷を評価した(Nagy et al.,“Protective Effects of 2−[(aminopropyl)amino]Ethanethiol Against Bleomycin and Nitrogen Mustard−Induced Mutagenicity in V79 Cells,”Int.J.Radiat.Oncol.12(8):1475−8,(1986.)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。WR1065は、各薬剤のこれらの効果のすべてから保護したが、保護の程度は薬剤によって変化した。インビトロ実験で、WR1065及びWR151326は、核分裂スペクトル中性子への曝露が原因のHPRT遺伝子での突然変異誘発を防ぐ能力を試験した(Grdina et al.,“Protection by WR1065 and WR151326 Against Fission−Neutron−Induced Mutations at the HGPRT Locus in V79 Cells,”Radiat.Res.117(3):500−10(1989)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。両方の薬剤が突然変異誘発を防ぎ、突然変異を防ぐ点で、WR1065はWR151326より効果的であった。B6C3F1雄マウスを使用したインビボ実験で、JANUS核分裂スペクトル中性子による突然変異誘発を防ぐWR2721の能力は、400mg/kgの用量で評価した(Grdina et al.,“The Radioprotector WR−2721 Reduces Neutron−Induced Mutations at the hypoxanthine−guanine Phosphoribosyl Transferase Locus in Mouse Splenocytes When Administered Prior to or Following Irradiation,”Carcinogenesis 13(5):811−4(1992)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。WR1065は、照射前に、照射中に、または照射後に投与されるとき、突然変異頻度を減らした。しかし、投与される用量が400mg/kgの代わりに50mg/kgのとき、最も高い低減因子を得た。
抗脈管形成:アミホスチンは、毒性の徴候と関連していない用量で、ニワトリ胚漿尿膜のVEGFアイソフォームVEGF(165)及びVEGF(190)のmRNA濃度、ならびに脈管形成を減らした(Giannopoulou et al.,“Amifostine has Antiangiogenic Properties in Vitro by Changing the Redox Status of Human Endothelial Cells,”Free Radic.Res.37(11):1191−9(2003)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。WR2721は、誘発性一酸化窒素シンターゼのmRNA濃度も低下させて、更に「対応する遺伝子の発現に影響を及ぼさずに」同じモデルのラミニン及びコラーゲン沈着量を減らした。同上を参照のこと。MMP−2タンパク質レベルは影響を受けなかったが、遺伝子発現は低減した。最後にプラスミン活性は、アミホスチンによって増加した。これらの効果はWR1065が脈管形成を阻害するという証拠を示すと、著者は結論づけた。別の試験で、アミホスチンは、血清アンジオスタチン濃度を4倍上昇させることを示した(Grdina et al.,“Inhibition of Spontaneous Metastases Formation by Amifostine,”Int.J.Cancer 97(2):135−41(2002)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。Grdinaらで使用した、同じインビボマウスモデルシステムを使用して(Grdina et al.,“Inhibition of Spontaneous Metastases Formation by Amifostine,”Int.J.Cancer 97(2):135−41(2002)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、200mg/ml(50mg/mlの代わりに)のWR2721の用量がアンジオスタチン濃度を変えないことを、著者は見いだした(Grdina et al.,“Antimetastatic Effectiveness of Amifostine Therapy Following Surgical Removal of Sa−NH Tumors in Mice,”Semin.Oncol.29(6 Suppl 19):22−8(2002)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これらの効果の機序がレドックスによって駆動されるプロセスであると、著者は結論づけた。
腫瘍細胞増殖の抑制または低減:放射線誘発性肉腫に関する試験で、マウスの1/2を、アミホスチンに曝露して、30分後、すべてのマウス(対照及びアミホスチン処置)の右後肢を3400〜5700ラドに曝露した(Milas et al.“Inhibition of Radiation Carcinogenesis in Mice by S−2−(3−aminopropylamino)−ethylphosphorothioic Acid,”Cancer Res.44(12 Pt 1):5567−9(1984)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。腫瘍細胞の成長速度は、放射線だけに曝露したマウスと比較して、WR−2721プラス放射線に曝露したマウスで低下した。Sa−NH肉腫細胞に関する試験で、C3Hf/KamマウスはSa−NH肉腫細胞を注入し、腫瘍が成長すると6日間1日おきに50mg/kgのWR2721で処置した。それから腫瘍を肢切断によって除去して、WR2721を手術後すぐ及び2日後に再度投与した(Grdina et al.,“Inhibition of Spontaneous Metastases Formation by Amifostine,”Int.J.Cancer 97(2):135−41(2002)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この点に対して結果は、腫瘍が切断に理想的なサイズに達するため12〜13日間、アミホスチンが腫瘍増殖のわずかな遅延を誘発することが可能であることを示した。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)を使用している研究で、WR1065mは、チャイニーズハムスター卵巣細胞に4ミリMで投与するとき、G2/M期で細胞周期の遅延をもたらした(Grdina et al.,“Inhibition of Topoisomerase II Alpha Activity in CHO K1 Cells by 2−[(aminopropyl)amino]ethanethiol(WR−1065),”Radiat.Res.138(1):44−52(1994)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。CHO細胞に関する更なる試験で、30分間の4マイクロM〜4ミリモルの範囲のWR1065曝露は、G2期で細胞の蓄積をもたらした(Murley et al.,“WR−1065, An Active Metabolite of the Cytoprotector Amifostine, Affects Phosphorylation of Topoisomerase II Alpha Leading to Changes in Enzyme Activity and Cell Cycle Progression in CHO AA8 Cells,”Cell Prolif.30(6−7):283−94(1997)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。更に、トポイソメラーゼIl−αのWR1065誘発性抑制が、細胞周期の全体にわたって細胞集団分布の変質をもたらし得ることが示された(Kataoka et al.,“Activation of the Nuclear Transcription Factor kappaB(NFkappaB)and Differential Gene Expression in U87 Glioma Cells After Exposure to the Cytoprotector Amifostine,”Int.J.Radiat.53(1):180−9(2002)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
腫瘍細胞浸潤の抑制または低減:ニワトリ胚漿尿膜を使用するモデルのインビトロ実験で、WR1065は、毒性の徴候と関連しない用量で、MMP−2(腫瘍細胞浸潤と関連した酵素)の遺伝子発現を低減したが、タンパク質レベルは影響を受けなかった(Giannopoulou et al.,“Amifostine has Antiangiogenic Properties in Vitro by Changing the Redox Status of Human Endothelial Cells,”Free Radic.Res.37(11):1191−9(2003)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビトロ実験で、WR2721は、30〜40%だけマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)−2及び−9の活性を減少させた。WR2721は、用量依存的方法のマトリゲルによるSa−NH細胞の移動も阻害した(Grdina et al.,“Inhibition of Spontaneous Metastases Formation by Amifostine,”Int.J.Cancer 97(2):135−41(2002)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビボ実験で、C3Hf/KamマウスにSa−NH肉腫細胞を注入し、腫瘍が成長すると6日間1日おきに50mg/kgのWR2721で処置した。それから腫瘍を肢切断によって除去して、WR2721を手術後すぐ及び2日後に再度投与した(Grdina et al.,“Inhibition of Spontaneous Metastases Formation by Amifostine,”Int.J.Cancer 97(2):135−41(2002)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
腫瘍細胞転移の抑制または低減:WR1065の抗転移効果を調べるために、C3Hf/KamマウスにSa−NH肉腫細胞を注入し、腫瘍が成長すると6日間1日おきに50mg/kgのWR2721で処置した。それから腫瘍を肢切断によって除去して、WR2721を手術後すぐ及び2日後に再度投与した(Grdina et al.,“Inhibition of Spontaneous Metastases Formation by Amifostine,”Int.J.Cancer 97(2):135−41(2002)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。アミホスチンは、転移した動物数及び動物当たりの転移数を低減した。別の試験で、アミホスチンは奇異反応を有することが示された。肺の腫瘍転移は、50mg/kgを投与した動物で著しく減退した。100mg/kgの投与量は効果が弱く、200mg/kgは本試験の転移に影響を及ぼさなかった(Grdina et al.,“Antimetastatic Effectiveness of Amifostine Therapy Following Surgical Removal of Sa−NH Tumors in Mice,”Semin.Oncol.29(6 Suppl 19):22−8(2002)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。更なる試験で、WR2721が、C3Hf/Kamマウスの全身照射の腫瘍生着増大作用をほぼ完全に除去すること、及び5日早いシクロホスファミドの有無に関係なく、WBIを受けたマウスの肺結節形成を著しく低下させることを、著者は見いだした(Milas et al.,“Protection by S−2−(3−aminopropylamino)ethylphosphorothioic Acid Against Radiation− and Cyclophosphamide−Induced Attenuation in Antitumor Resistance,”Cancer Res.44(6):2382−6(1984)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。更に、転移性黒色腫の患者で観察される部分奏功のうち、53%は以前の化学療法を受けた患者で生じ、反応した転移部位は、皮下部位、リンパ節、肺及び肝臓を含んだ(Glover et al.,“WR−2721 and High−Dose Cisplatin:An Active Combination in the Treatment of Metastatic Melanoma,”J.Clin.Oncol.5(4):574−8(1987)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。平均応答時間は4.5か月だった。
上述の抗癌作用に加えて、アミノチオール(例えば、アミホスチン(WR2721)及びWR1065)は、他の抗癌療法に影響を及ぼすことが示されてきた。他の抗癌療法に対する代表的な作用は、他の抗癌療法の強化を含む(例えば、化学療法剤の増強された細胞毒性、放射線療法の増強された細胞傷害性作用、化学療法への向上した反応、非癌細胞に対する選択的な放射線防護作用)。インビトロまたはインビボ試験により特定した他の抗癌療法の代表的な効果を以下にまとめた。
抗癌療法の増強:インビトロ実験で、WR1065は、細胞周期のG0期で、ヒトリンパ球の化学療法剤ブレオマイシンの細胞毒性を増強した(Hoffmann et al.,“Structure−Activity Analysis of the Potentiation by Aminothiols of the Chromosome−Damaging Effect of Bleomycin in G0 Human Lymphocytes,”Environ.Mol.Mutagen.37(2):117−27(2001)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビトロ実験で、マホスファミドと組み合わせたWR2721は、白血病細胞の細胞死の程度を増加させると共に、正常な脊髄及び赤血球前駆細胞を生存させた(List,“Use of Amifostine in Hematologic Malignancies, Myelodysplastic Syndrome,and Acute Leukemia,”Semin.Oncol.26(2 Suppl 7):61−5(1999)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビボ実験で、WR2721及びシスプラチンの組み合わせは、進行悪性黒色腫を有する患者のシスプラチン単独と比較して、向上した部分奏功が得られた(それぞれ10%対53%の部分奏功)(Glover et al.,“WR−2721 and High−Dose Cisplatin:An Active Combination in the Treatment of Metastatic Melanoma,”J.Clin.Oncol.5(4):574−8(1987)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。軽微な反応は、患者36人中更に3人(8%)観察された。Canine Sarcoma Studyのインビボ実験で、WR2721が、腫瘍のサブセットの放射線療法の細胞傷害性効果を増強し、残存する腫瘍の放射線の細胞傷害性に影響を及ぼさなかったという証拠が見いだされた(Koukourakis,“Amifostine:Is There Evidence of Tumor Protection?”Semin.Oncol.30(6 Suppl.18):18−30(2003)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビボ実験で、WR2721は、酸素ラジカル産生化学療法剤と組み合わせてマウスに投与されるとき、相乗的細胞毒性を有した。WR2721で処置したマウスにおいて、グルタチオン合成経路は、不活性のように見えた。更に、WR33278がγ‐グルタミルシステインシンテターゼに対する強力な抑制作用を有することがわかり、それはグルタチオン合成の酵素を制限する比率である。類似の結果は、システアミン及び酸素ラジカルについて得られた。酸素ラジカルは、WR1065がWR33278に酸化した比率を増加させた(Schor,“Mechanisms of Synergistic Toxicity of the Radioprotective Agent,WR2721,and 6−hydroxydopamine,”Biochem.Pharmacol.37(9):1751−62(1988)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。インビボ実験で、全身照射の30分前に投与したWR2721は、直径8mmの線維肉腫腫瘍の局所放射線治癒率を著しく増加させた(Milas et al.,“Protection by S−2−(3−aminopropylamino)ethylphosphorothioic Acid Against Radiation− and Cyclophosphamide−Induced Attenuation in Antitumor Resistance,”Cancer Res.44(6):2382−6(1984)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。皮下ヒト卵巣癌異種移植片OVCAR−3を含有するマウスのインビボ実験で、WR2721は、カルボプラチンの抗腫瘍効果を増強した(Treskes et al.,“Effects of the Modulating Agent WR2721 on Myelotoxicity and Antitumour Activity in Carboplatin−Treated Mice,”Eur.J.Cancer.30A(2):183−7(1994)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。2つの異なる腫瘍型のマウスモデルのインビボ実験で、アミホスチンがMISOと組み合わされるとき、相加的な毒性効果が観察された(Rojas et al.,“Interaction of Misonidazole and WR−2721−−II.Modification of Tumour Radiosensitization,”Br.J.Cancer 47(1):65−72(1983)、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。薬物の作用は腫瘍の酸素動態に関連があるように見え、MISOは、WR2721の放射線防護を減らすために酸素模倣型として機能することができる。インビボ実験で、アミホスチンは、いくつかの化学療法剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン及びパクリタキセル)の細胞傷害性効果を増強することを示した(Kurbacher et al.,“Chemoprotection in Anticancer Therapy:The Emerging Role of Amifostine(WR−2721),”Anticancer Res.18(3C):2203−10(1998)。それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
更に、抗癌作用が、ウシ動脈の内皮細胞(Brenner et al.,“Variable Cytotoxicity of Amifostine in Malignant and Non−Malignant Cell Lines,”Oncol.Rep.10(5):1609−13(2003)を参照。それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、肝臓(インビボ)(Shaw et al.,“Metabolic Pathways of WR−2721(ethyol,amifostine)in the BALB/c Mouse,”Drug Metab.Dispos.22(6):895−902(1994))(観察可能な細胞毒性なし>7400ピコモル/10(6)細胞)、腎臓(インビボ)(Shaw et al.,“Metabolic Pathways of WR−2721(ethyol,amifostine)in the BALB/c Mouse,”Drug Metab.Dispos.22(6):895−902(1994))(観察可能な細胞毒性なし>17,000ピコモル/10(6)細胞)、小腸(インビボ)(Shaw et al.,“Metabolic Pathways of WR−2721(ethyol,amifostine)in the BALB/c Mouse,”Drug Metab.Dispos.22(6):895−902(1994))(観察可能な細胞毒性なし>3000ピコモル/10(6)細胞)、を含む正常な細胞では細胞傷害性作用を欠いているかまたは細胞傷害性作用が最小限である薬物投与量で生じることが示された。上で引用した文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
したがって、本発明による対象は新生物状態を患っており、アミノチオール複合体またはアミノチオール複合体を含む医薬組成物は、新生物状態を治療するのに効果的な条件下で投与される。治療は、本明細書に記載されているように対象の任意の抗癌作用を含んでよい(例えば、抗腫瘍性形質転換、正常細胞の抗突然変異誘発、抗脈管形成、腫瘍細胞増殖の抑制または低減、腫瘍細胞浸潤の抑制または低減、及び腫瘍細胞転移の抑制または低減)。
一実施形態において、新生物状態は、乳房、卵巣、子宮頚部、結腸、肺、皮膚(悪性黒色腫)、リンパ網内系腫瘍及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態において、新生物状態は骨髄異形成状態である。
一実施形態において、対象は放射線療法、化学療法またはこれらの組み合わせを受ける対象であり、アミノチオール複合体またはアミノチオール複合体を含む医薬組成物は、放射線療法、化学療法またはこれらの組み合わせの有害なまたは望ましくない副作用を低減させるまたは減少させるために効果的な条件下で、投与される。
一実施形態において、対象は癌治療(例えば放射線療法、化学療法またはこれらの組み合わせ)を受ける対象であり、アミノチオール複合体またはアミノチオール複合体を含む医薬組成物は、癌治療の効果を増強させるために効果的な条件下で投与される。
一実施形態において、対象は哺乳動物である。
一実施形態において、哺乳動物はヒトである。一実施形態において、哺乳動物は非ヒトの動物である。
上述の改良された薬物送達システムは、非限定的に、静脈内に、皮下に、経口で、腹腔内に、鼻孔内に、直腸内で、局所的に、吸入及び/または経皮パッチによって、周知のまたは将来記載される任意の好適な薬剤投与方法(複数可)を使用して投与できる。所望の標的細胞に薬物送達を達成する任意の送達モジュールに薬物を封入することができ、これはナノ粒子、ミセル、リポソーム、ナノゲルもしくはその他内へのカプセル化または取り込みによるものを含む(上述を参照)。
薬物投与濃度は、送達されるアミノチオール(またはその類似体)の濃度に基づかなければならない。したがって以下の説明は、投与されているプロドラッグの総量と比較して、投与されているアミノチオールの投与量を考える。プロドラッグの総量は、投与されているプロドラッグの性質に応じて変化する。活性部分(アミノチオール)を、60kgBWのヒト成人に対して910mg/m2以下の等量を提供するために選択される投与量で投与できる。この投与量は、60kgBWのヒト成人に対する24.3mg/kgBW(または60kgBWの成人に対する総用量1456mg)に等しい。小児は、アミホスチンの形態でアミノチオール総用量2700mg/m2まで投与された。
繰り返し投与が必要であるまたは求められているとき、この濃度より低い投与量でアミノチオールを投与することが望ましい場合がある。更に、化合物を最初の高用量(ボーラス投与)を使用して投与し、次いでより低い用量に漸減させて、1週間に複数回繰り返したまたは1日1回の頻度で投与することが望ましい場合がある。アミノチオールまたはアミノチオール等価物の740mg/m2の用量は、より少ない副作用と関連し(List et al.,“Stimulation of Hematopoiesis by Amifostine in Patients with Myelodysplastic Syndrome,”Blood 90:3364−3369(1997)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、したがって一般的に望ましい。毎日の投与で、アミホスチン200〜340mg/m2(60kgBWの成人の総用量544mg)は一般的には望ましい(Santini et al.,“The Potential of Amifostine:from Cytoprotectant to Therapeutic Agent,”Haematologica 84:1035−1042(1999)、Schuchter,“Guidelines for the Administration of Amifostine,”Semin Oncol 23:40−43(1996)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。500〜910mg/m2で注射によって投与されるWR2065は、約10分間の血漿T1/2を有し、約100μMのピーク血漿濃度を有する。
齧歯動物の実験は、高用量の使用を示唆する。例えばマウスのWR−1065(アミホスチン形態)の最大耐量(MTD)は腹腔内投与432mg/kgBW及び、経口投与720mg/kgBWであり、100%の有効な放射線防護用量はMTDの約1/2であった。ホスホエノールの形態で送達されるアミノチオールで、MTDは、腹腔内投与893mg/kgBW、経口投与1488mg/kgBWであり、100%の有効な放射線防護用量はMTDの約1/2であった。すべてのアミノチオールは、400mg/kgBW超の齧歯動物のMTDを有する。
WR−1065を含むアミノチオールは、超低濃度で有効であり得る(例えば、いくつかのインビトロ試験で0.4マイクロモル濃度まで低減)。
経口投与用にアミノチオール複合体薬物を調製するのが一般的には望ましい一方で、薬物は他の経路で投与され得るように調製されることができる。有効性を最大化させるために静脈内投与用の薬物を調製することは、特定の実施形態において望ましいことがあり得る。WR−1065とWR−255591の間の構造類似点、特に分子のスルフヒドリル端部の類似点が理由で、WR−255591はWR−1065と類似のやり方で挙動することが見込まれる。
アミノチオール、及び特にWR1065の独特の特徴は、アミノチオールの細胞内濃度を測定することができることである(Bai et al.,“New Liquid Chromatographic Assay with Electrochemical Detection for the Measurement of Amifostine and WR1065,”J.Chromatogr.B.Analyt.Technol.Biomed.Life.Sci.772:257−265(2002)、Elas et al.,“Oral Administration is as Effective as Intraperitoneal Administration of Amifostine in Decreasing Nitroxide EPR Signal Decay In Vivo.Biochim.Biophys.Acta.1637:151−155(2003)、Shaw et al.,“Pharmacokinetic Profile of Amifostine,”Semin.Oncol.23:18−22(1996)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これは、薬物投与のガイドとして細胞内アミノチオール濃度を使用することを可能にする。抗癌作用のために、106細胞当たりアミノチオール30〜100ナノモルになる濃度のプロドラッグ投与が推奨される。いくつかの腫瘍型に対して、より低い細胞内濃度が同様に効果的であり、使用することができる。MDA−MB−468細胞と同じ分類に入る、及び/または同じもしくは類似の遺伝的な、エピジェネティックな及び遺伝子の発現変化を有する乳癌において、106細胞当たりアミノチオール0.001〜30ナノモルの範囲の細胞内濃度が効果的である。抗ウイルス効果について、106細胞当たりアミノチオール0.001〜30ナノモルの範囲の細胞内濃度になる用量レベルで、プロドラッグを投与することが推奨される。
アミノチオールの最適な治療効果を得るために、2回以上プロドラッグを投与することが望ましい場合がある。複数日または複数週の投与で、106細胞当たりアミノチオール0.000001〜30ナノモルになる用量レベルのプロドラッグの投与が推奨される。放射線防護及び細胞保護作用を含むすべての他の治療効果において、106細胞当たりアミノチオール1〜100ナノモルの範囲の細胞内濃度になる用量レベルで、プロドラッグを投与できる。
治療効果を調べられるプロドラッグの構造及び標的細胞の性質に基づいて、投与されるプロドラッグ濃度が著しく変化する点に留意する必要がある。ポリアミンまたは葉酸輸送システムを発現する標的細胞に対して、細胞内に能動的に輸送されないプロドラッグを使用する同等の細胞内濃度を得るために必要とされた、より低い量で、これらの能動輸送系を利用するように設計されたプロドラッグを通常投与することができる。更に、能動輸送系の発現レベルは、疾患またはストレスのある細胞の間で変化する可能性があり、かつ、複数回投与がある期間にわたって投与されるとき、より低いプロドラッグ用量が治療効果を得るのに十分であり得るという結果を伴って、プロドラッグ処置により影響を受ける可能性がある。
本明細書に記載のアミノチオール複合体プロドラッグ及び1つ以上の他の薬剤を含む併用療法も意図される。本明細書に記載のプロドラッグを、アミノチオールの治療効果を得るために使用される他の薬剤と組み合わせて投与できる。このような併用療法の利点の1つは、より低い用量の治療物質が投与できる及び/またはより高い治療効果を得ることができるということである。このようなより低い用量は、遺伝子毒性及びミトコンドリア毒性を有することが周知の抗レトロウイルス薬で特に有利であり得る。
本明細書に記載のアミノチオール複合体(誘導体、異性体、代謝物または薬学的に許容されるそのエステル、塩及び溶媒和物を含む)は、アミノチオールの治療効果を必要とする個人へ投与するために、ナノ粒子内への取り込みを含む薬学的に許容される担体内へ組み込むことができる。
本発明の一態様は、本明細書に記載されるようにアミノチオール複合体を含む医薬組成物に関する。一実施形態において、アミノチオール複合体は上記のように式(IV)を有する。一実施形態において、アミノチオール複合体は上記のように式(I)を有する。
医薬組成物は、更に細胞内送達システムを含んでもよい。細胞内送達システムは、(a)細胞透過性物質を含むシステム、(b)pH応答性担体、(c)C2ストレプトアビジン送達システム、(d)CH(3)−TDDS薬物送達システム、(e)疎水性生物活性担体、(f)エキソソーム、(g)脂質ベースの送達システム、(h)リポソームベースの送達システム、(i)ミセル送達システム、(j)微小粒子、(k)分子担体、(l)ナノ担体、(m)ナノスケールのマルチバリアント担体、(n)ナノゲル、(o)2つ以上の微粒子送達システムの構成要素からなるハイブリッドナノ担体システム、(p)ナノ粒子、(q)ペプチドベースの薬物送達システム、及び(r)ポリマーまたはコポリマーベースの送達システムからなる群より選択されてもよい。特定の実施形態において、細胞内送達システムはナノ粒子である。
特定の実施形態において、医薬組成物はナノ粒子送達システムを含まない。
医薬組成物は界面活性剤も含み得る。
医薬組成物は還元剤も含み得る。
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるように1つ以上の異なるアミノチオール複合体を含む組成物に関する。特定の実施形態において、1つ以上の異なるアミノチオール複合体は、100,000ダルトン以下の平均分子量を有する。特定の実施形態において、1つ以上の異なるアミノチオール複合体は、約100,000ダルトン、20,000ダルトン、10,000ダルトン、5,000ダルトン、3,000ダルトン、2,000ダルトンまたは1,000ダルトンの平均分子量を有する。特定の実施形態において、平均分子量は、約9,000〜約11,000ダルトンである。特定の実施形態において、平均分子量は、約9,000〜約11,000ダルトンである。一実施形態において、平均分子量は約10,000ダルトンである。一実施形態において、平均分子量は約10,500ダルトンである。
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるように1つ以上の異なるアミノチオール複合体を含むキットに関する。
本発明の更に別の態様は、1つ以上の追加の治療物質を更に含むキットに関する。
アミノチオール複合体プロドラッグのいくつかは酸化に感応性があってもよいので、これらに限定されないがビタミンC及びビタミンEを含む還元剤と組み合わせてプロドラッグを投与することが望ましい場合がある。他の還元剤は、有機アルデヒド、水酸基含有アルデヒド、ならびに還元糖(例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、キシロース、リボース及びアラビノース)を含む。ヘミアセタールまたはケト型を含む他の還元糖(例えばマルトース、ショ糖、ラクトース、フルクトース及びソルボース)を用いることができる。他の還元剤は、アルコール、好ましくは多価アルコール(例えばグリセロール、ソルビトール、グリコール、特にエチレングリコール及びプロピレングリコール、ならびにポリエチレン及びポリプロピレングリコールなどのポリグリコール)を含む。
本明細書に記載のアミノチオール複合体及びその複数の部分は、その薬理学的に許容される塩を含む。本明細書で使用する場合「薬学的に許容される塩」及び「その薬理学的に許容される塩」という用語は広義語あり、当業者にはその通常の及び慣習的な意味が付与されるものであり(ならびに特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されていない)、これらに限定されないが、薬学的に許容される非毒性の酸または塩基を指す。好適な薬学的に許容される塩は、金属塩(例えば、アルミニウム、亜鉛の塩、リチウム、ナトリウム及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩);有機塩(例えば、リシン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)、プロカイン及びトリスの塩);遊離酸及び塩基の塩;トリフルオロ酢酸の塩;無機塩(例えば、硫酸塩、塩酸塩及び臭化水素酸塩);ならびに現在広く製薬学的に使用されており、当業者に周知の出典(例えばMerck Index)で示されている他の塩を含む。本明細書で説明する治療物質の塩を作製するために、任意の好適な成分を選択することができ、これは、それが無毒性であり、所望の活性を実質的に妨げないことを条件とする。塩に加えて、化合物の薬学的に許容される前駆体及び誘導体を用いることができる。薬学的に許容されるアミド、低級アルキルエステル及び保護誘導体も、組成物で使用するために好適であり得る。薬学的に許容される塩の形態で好ましい実施形態の化合物を投与することが可能であるが、中性型の化合物を投与するのが一般的には望ましい。
好ましい実施形態の化合物を経口で投与するのが一般的には望ましいが、他の投与経路が意図される。投与の意図される経路は、経口、非経口、静脈内、皮下、直腸内、鼻孔内、経皮的、及び吸入によるものを含むが、これらに限定されない。プロドラッグは、例えば経口投与用に液状製剤に配合することができる。好適な形態は、懸濁液、シロップ剤、エリキシル剤などを含む。経口投与用に特に好ましい単位投与形態は、錠剤及びカプセルを含む。
プロドラッグの医薬組成物は、レシピエントの血液または他の体液と好ましくは等張性である。組成物の等張性は、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールまたは他の無機もしくは有機溶質を使用して達成されることができる。塩化ナトリウムは、特に好ましい。緩衝剤(例えば、酢酸及び塩、クエン酸及び塩、ホウ酸及び塩、ならびにリン酸及び塩)を用いることができる。非経口溶媒は、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲルまたは不揮発油を含む。静脈内溶媒は、流体及び栄養素補充剤、電解質補充剤(例えばリンゲルデキストロースに基づくもの)などを含む。特定の実施形態において、還元状態の活性化合物を維持することが望ましい場合がある。したがって、製剤の還元剤(例えばビタミンC、ビタミンEまたは医薬分野で既知の他の還元剤)を含むことが望ましい場合がある。
医薬組成物の粘性を、薬学的に許容される増粘剤を使用して選択したレベルに維持できる。メチルセルロースは、それが手軽にかつ経済的に利用可能であり、かつ扱いが容易であるため、好ましい。他の好適な増粘剤は、例えばキサンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどを含む。増粘剤の好適な濃度は、選択された増粘剤に依存する。選択された粘性を達成する量が、好ましくは使われる。粘稠組成物は通常、このような増粘剤を加えることによって溶液から調製される。
薬学的に許容される防腐剤は、医薬組成物の貯蔵寿命を増加するために用いることができる。ベンジルアルコールは好適であり得るが、例えばパラベン、チメロサール、クロロブタノールまたは塩化ベンザルコニウムを含む様々な防腐剤も使用することができる。防腐剤の適切な濃度は、通常、組成物の総重量に基づいて約0.02%〜約2%であるが、それより大きいまたは少ない量が選択した薬剤に応じて望ましくなる場合がある。上述のように還元剤は、製剤の良好な貯蔵寿命を維持するために有利には使用することができる。
プロドラッグは、好適な担体、希釈剤または賦形剤(例えば滅菌水、生理食塩水、グルコースなど)との混合物であることができ、投与経路及び所望の製剤に応じて、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化または粘性促進添加剤、防腐剤、香味料、色素などの補助物質を含有できる。例えば、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,Lippincott Williams & Wilkins、20th edition(2003年6月1日)ならびに“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Pub.Co.、18th and 19th editions(それぞれ1985年12月及び1990年6月)を参照。このような製剤は、錯化剤、金属イオン、ポリマー化合物(例えばポリ酢酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、デキストランなど)、リポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単層もしくは多層小胞、赤血球ゴーストまたはスフェロプラストを含むことができる。リポソーム製剤に適切な脂質は、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸などを含むが、これらに限定されない。このような追加の成分の存在は、物理的状態、可溶性、安定性、インビボ放出速度及びインビボ消失速度に影響を与えることができ、したがって目的の用途によって選択され、その結果、担体の特性は選択された投与経路に合わせて調整される。
経口投与のために、医薬組成物は、錠剤、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルション、ハードまたはソフトカプセル、シロップまたはエリキシルとして提供されることができる。経口使用を目的とする医薬組成物は、医薬組成物の製造分野で周知の任意の方法に従って調製されることができ、以下の薬剤、甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤などのうちの1つ以上を含有することができる。水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に活性成分を含有する。
経口使用のための製剤は、硬質ゼラチンカプセル剤として提供されることもでき、活性成分(複数可)は、不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンまたはソフトゼラチンカプセル)と混合される。ソフトカプセルにおいて活性成分(複数可)は、水または油性媒質(例えば落花生油、オリーブ油、脂肪油、流動パラフィンもしくは液体ポリエチレングリコール)などの液体など好適な液体中に溶解または懸濁し得る。経口投与用に調製した安定剤及びマイクロスフィアも使用することができる。カプセルは、ゼラチン製の押し込み式カプセル、ならびにゼラチン及び可塑剤(例えばグリセロールまたはソルビトール)製のソフト封入カプセルが含まれる。押し込み式カプセルには、ラクトースなどの賦形剤、デンプンなどの結合剤、及び/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに所望により安定剤の混合物中に活性成分を含有することができる。好ましい実施形態の化合物を還元体で維持することが望ましい場合(特定の活性代謝物の場合)、カプセルまたは他の投与剤形の還元剤を含むことが望ましい場合がある。
錠剤はコーティングされていない、または胃腸管内での分解及び吸収を遅らせるために周知の方法でコーティングされることができ、それにより長期間持続的な効果を提供することができる。例えば、モノステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を使用することができる。錠剤形態などの固体形態で投与する場合、固体形態は通常、約0.001重量%以下〜約50重量%以上、好ましくは約0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1重量%〜約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40または45重量%の活性成分(複数可)を含む。
錠剤は、不活性材料を含む非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含有する。例えば錠剤は、所望により1つ以上の追加成分と共に、圧縮または成形することにより調製され得る。圧縮錠剤は、所望により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、表面活性または分散剤と混合された粉末または顆粒などの自由流動形態の有効成分を、好適な機械中で圧縮して調製される。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することにより作製することができる。
好ましくは各錠剤またはカプセル剤は、約10mg以下〜約1,000mg以上、より好ましくは約20、30、40、50、60、70、80、90または100mg〜約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800または900mgの最適なプロドラッグを含む。最も好ましくは錠剤またはカプセル剤は、投与される分割した投与量を可能にするために投与量の範囲で提供される。患者に適した投与量及び毎日投与される用量数は、したがって好都合に選択されることができる。特定の用途のために、投与されるプロドラッグの2つ以上を単一の錠剤または他の剤形(例えば、併用療法で)内に包含することが好ましい。しかし他の用途では、治療物質を別個の剤形で提供することが好ましい可能性がある。
好適な不活性材料は、希釈剤(例えば炭水化物、マンニトール、ラクトース、無水ラクトース、セルロース、ショ糖、改質デキストラン、デンプンなど)、または無機塩(例えば三リン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウム)を含む。崩壊剤または造粒剤(例えば、コーンスターチなどのデンプン、アルギン酸、デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、海綿及びベントナイト、不溶性カチオン性交換樹脂、粉末ガム(例えばアガー、カラヤもしくはトラガカント)、またはアルギン酸またはその塩)を、製剤に含めることができる。
結合剤は、硬質錠剤を形成するために使用できる。結合剤は、天然物(例えばアカシア、トラガカント、デンプン及びゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)由来の材料を含む。
滑沢剤(例えばステアリン酸またはそのマグネシウムもしくはカルシウム塩、ポリテトラフルオロエチレン、流動パラフィン、植物油及びワックス、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、デンプン、タルク、焼成シリカ、ケイ酸アルミニウム水和物など)を、錠剤形に含めることができる。
界面活性剤、例えばアニオン性界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及びジオクチルスルホン酸ナトリウム)、カチオン性(例えば、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム)、または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース)も用いることができる。Stogniewへの米国特許第6,489,312号に記載されているような界面活性剤(それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)も使用してよい。
アミホスチンまたはその類似体(複数可)が、拡散または浸出機序による放出を可能にする不活性基質内に組み込まれている制御放出製剤も用いることができる。緩徐変性マトリックスも、製剤中に組み込むことができる。他の送達システムは、持続放出、遅延解放または徐放性送達システムを含むことができる。
コーティング(例えば、非腸溶性材料(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシ−エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、ナトリウムカルボキシ−メチルセルロース、プロビドン及びポリエチレングリコール)または腸溶性材料(例えばフタル酸エステル))を使用することができる。染料または顔料は、活性化合物投与量の異なる組み合わせを識別または特徴づけるために加えることができる。
液体で経口投与されるとき、液体担体(例えば水、石油、動物もしくは植物起源の油(例えば落花生油、鉱油、ダイズ油もしくは胡麻油)または合成油)を、活性成分(複数可)に加えることができる。生理食塩水液、デキストロースもしくは他の糖溶液、またはグリコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール)も適切な液体担体である。医薬組成物は水中油型エマルションの形態でもあり得る。油相は、植物油(例えばオリーブ油もしくは落花生油)、鉱油(例えば流動パラフィン)、またはこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤は、天然起源のガム(例えばアカシアガム及びトラガカントガム)、ダイズレシチンなどの天然起源のリン脂質、脂肪酸と無水ヘキシトールから誘導されたエステルまたは部分エステル(例えばモノオレイン酸ソルビタン)、及びこれら部分エステルと酸化エチレンとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレート)を含む。乳濁液は、甘味剤及び香味剤も含むことができる。
選択したプロドラッグが静脈内、非経口または他の注入により投与されるとき、それは、好ましくは発熱物質のない、非経口的に受け入れられる水溶液または油性懸濁液の形態である。懸濁液は、適切な分散または湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、当該技術分野において周知の方法に従って調製することができる。適切なpH、等張性、安定性などを有する許容可能な水溶液の調製は、当該技術分野の技術範囲内である。注入のための好適な医薬組成物は、好ましくは等張溶媒(例えば1,3−ブタンジオール、水、等張食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、デキストロース及び塩化ナトリウム溶液、乳酸リンゲル液または当該技術分野において周知の他の溶媒)を含む。更に滅菌された固定油を、溶媒または懸濁媒質として通常使用することができる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を用いることができる。更にオレイン酸などの脂肪酸も同様に注射用製剤の調製に使用することができる。医薬組成物は、安定剤、防腐剤、緩衝剤、酸化防止剤または当業者に周知の他の添加物も含むことができる。
注入の持続期間は様々な要因に応じて調整することができ、持続静脈内投与の数秒以下〜0.5、0.1、0.25、0.5、0.75、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間以上にわたって投与される単回注入を含むことができる。
1つ以上の選択したプロドラッグからなる医薬組成物は、従来から医薬組成物中に見いだされる補助成分を、それらの当該技術分野にて確立された様式で、当該技術分野にて確立された濃度で追加的に用いることができる。すなわち例えば、組成物は、併用療法のための追加の適合性のある薬学的活性材料(例えば補助抗菌剤、鎮痒薬、収斂剤、局所麻酔薬、抗炎症剤、還元剤など)を含むことができる、または好ましい実施形態の種々の投与剤形を物理的に製剤化するのに有用な材料(例えば賦形剤、染料、増粘剤、安定剤、防腐剤または酸化防止剤)を含むことができる。
プロドラッグは、キットの形態で投与する医師または他の健康管理の専門家に提供されることができる。キットは、適切な医薬組成物中の化合物(複数可)を含む容器を収容するパッケージ、及び対象に医薬組成物を投与するための使用説明書である。キットは所望により、1つ以上の追加の治療物質も含むことができる。例えば、1つ以上の追加の治療物質(抗菌剤、鎮痒薬、収斂剤、局所麻酔薬、抗炎症剤、還元剤など)と組み合わせた1つ以上のプロドラッグを含む1つ以上の組成物を含有するキットを提供することができる、または1つ以上の選択したプロドラッグ及び追加の治療物質を含有する別個の医薬組成物を提供することができる。キットは、連続的または経時的投与のためのプロドラッグの別個の投与量も含むことができる。キットは所望により、1つ以上の診断ツール及び使用説明書を含むことができる。キットは、化合物(複数可)及び他の任意の治療物質を投与するための指示書とともに、適切な送達装置(例えば、注射器など)を含むことができる。キットは所望により、貯蔵、再構成(適用される場合)及び含まれる一部または全部の治療物質の投与のための指示書を含むことができる。キットは、対象に行われる投与数を反映する複数の容器を含むことができる。
プロドラッグは、このような治療を必要とする個人の細胞のストレス状態または疾患状態の誘導防止のために、予防的に投与されることができる。あるいは治療は好ましくは、ストレス状態または疾患状態の徴候及び症状の開始の後、できるだけ早く開始される。投与経路、投与される量及び投与頻度は、患者の年齢、感染の重篤度及び任意の関連症状に応じて変化する。疾患状態(例えば癌または病原性微生物への感染)の治療のためのプロドラッグ投与の意図される量、投与量及び経路は、従来の抗癌及び抗ウイルス薬について確立されたものと類似している。従来の抗レトロウイルス剤の投与及び投与量に関する詳細な情報は、Physician’s Desk Reference(第47版)に見いだすことができ、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。この情報は、プロドラッグを利用した治療レジメンを設計する際に適合されることができる。
癌、病原体/微生物感染症を治療する経口投与のためのまたは細胞保護のためのプロドラッグの意図される量は、約24時間ごとまたはそれ以下〜約6時間ごとまたはそれ以上(または毎日約1回〜毎日約6回)、約5日間以下〜約10日間以上投与される、(40mg/日以下〜約15,000mg/日以上)、または状態が著しく改善するまでの、約10mg以下〜約2000mg以上の範囲である。感染しやすい個人の癌または感染症の発症を阻害するための抑制療法において、約10mg以下〜約1000mg以上の投与量が、1日1回、2回または複数回、通常は最高約12か月までまたは特定の状況では無期限に(約10mg/日〜約1,000mg/日)経口投与される。治療が長期間の場合、治療初期により高い用量及び治療後期により低い用量を使用して、投与量を変化させることが望ましい場合がある。
文献中に実証された成人ヒトに投与されるアミホスチンの単回最高投与量は、1330mg/m2であった。小児は、不適当な作用がない場合、最高2700mg/m2のアミホスチン単回投与量が投与された。複数回投与(推奨された740〜910mg/m2の単回投与を3回まで)が24時間以内に安全に投与されたことを、文献は示す。初回投薬の2時間後及び4時間後のアミホスチンの反復投与は、副作用、特に悪心、嘔吐または低血圧の増加をもたらさないようである。アミホスチン投与に由来する最も重要な有害な副作用は、低血圧であるように思われる。
AIDSを患う個人のための好ましい実施形態の化合物の意図される量、投与方法及び治療スケジュールは概ね、HIV治療のための上述のものと類似している。
アミホスチンの周知の副作用は、最大血圧の低下、悪心及び嘔吐を含む。このような副作用が、投与される特定のチオホスファートで観測される場合、それは一般的に、チオホスファートの前にまたはそれと共に制吐薬を投与するのが望ましい。適切な制吐薬は、抗ヒスタミン剤(例えば、ブクリジン、シクリジン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、メクリジン)、抗コリン剤(例えば、スコポラミン)、ドーパミン拮抗剤(例えば、クロルプロマジン、ドロペリドール、メトクロプラミド、プロクロルペラジン、プロメタジン)、セロトニン拮抗剤(例えば、ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン)または他の薬剤(例えば、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリメトベンズアミド)を含む。
実施例1 6つの腫瘍細胞株の4アーム星型PEG−WR1065(WR1065に結合した4アームPEG)の細胞傷害性効果
WR−1065に結合した4アーム星型ポリエチレングリコール(4SP65)の抗癌活性を評価するために、4SP65の抗癌有効性を、NIH/NCIによって使用した同じ細胞株のいくつかにおいて判定し、使用した方法論は、現在使用されている化学療法剤を評価するためにNCIで用いるものと同じだった(O’Connor et al.,“Characterization of the p53 Tumor Suppressor Pathway in Cell Lines of the National Cancer Institute Anticancer Drug Screen and Correlations With the Growth−Inhibitory Potency of 123 Anticancer Agents,”Cancer Res.57(19):4285−300(1997)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。以下の6つの癌型の試験を完了した。(i)乳癌(MDA−MB−231細胞)、(ii)肺癌(A549)、(iii)悪性黒色腫(SK−MEL−28)、(iv)骨髄性白血病(HL60細胞)、(v)卵巣癌(SK−OV−3)、及び(vi)前立腺癌(DU−145)。各細胞株の50%増殖抑制用量を、表1に示す。
比較目的のために、正常なヒト乳腺上皮細胞の増殖を50%減らすのに必要な4SP65の増殖抑制用量は、300マイクロモル超だった。4SP65が、300マイクロモル超の濃度で存在するとき、媒質中にヒドロゲルを形成するという事実が原因で、現在までのところ、正確な値は測定されていない。
(表1)4SP65への48時間の曝露後、インビトロ細胞増殖を50%低減するのに必要な平均増殖抑制用量
表1に示されるEC(50)値を得るために使用する方法は、以下のとおりだった。各細胞株を、ATCCにより推奨される、またはその細胞株について文献で示される媒質で成長させた。すべての細胞を、36〜37℃で及び5%のCO2の存在下で、ウォータージャケットインキュベーターで培養した。最適な増殖及び生存度を確実にするために、すべての細胞を、FNC(InVitrogen)でコーティングしたプレート上で増殖させた。細胞に、それらが60〜70%のコンフルエンスに到達するまで、週2回増殖培地を再供給した。この時点で、培地を、0〜300ミクロモルの範囲の投与量で4SP65を補充した増殖培地と交換した。細胞を、48時間、この補充した培地の存在下で増殖させて、次いでそれらをトリプシン処理によって剥離させ、トリパンブルーで染色し、血球計数器で計数した。1実験当たり、各投与量群について、3〜4つの反復実験を実施した。細胞死パーセントは、4SP65に曝露させた生存細胞の平均数対シャムに曝露させた生存細胞の平均数を比較することによって決定した。マイクロモルで、試験した各細胞株の50%平均増殖抑制用量(EC(50))を、表1に示す。使用する方法論は、細胞殺傷対細胞増殖停止を十分に区別しない点に留意する必要があり、したがってEC(50)は、一方または両方の効果を誘導するのに必要な薬物の投与量を表す。
実施例2 薬物の抗癌作用の予想外の変化
4SP65の抗癌活性に関するこれらの実験で、予想外の薬物効果が明らかになった。手短に述べると、これらの効果は、以下であった:(i)薬物1モル当たりの利用可能なWR1065分子の数に基づいて予測され得たより大きな4SP65対アミホスチンまたはWR1065単独の抗癌活性、(ii)アミホスチンが不活性であるかまたはアミホスチンが腫瘍保護作用を有する細胞型における細胞障害活性、及び(iii)周知の抗癌剤についてNIH−NCI60スクリーニングにおいて示されるよりも狭い範囲の、腫瘍型に対する活性。図12は、試験したすべての腫瘍(表1を参照)の、及び1つの腫瘍型(HL60細胞)でのアミホスチン及びWR1065の効果の平均結果を示す。他の腫瘍型のアミホスチン及びWR1065の結果は、図12に示したものと類似していた。
アミホスチン(WR−2721)と同様に送達した場合、前立腺癌を除いて、WR−1065が表1に列挙される腫瘍のすべてに対してインビトロ及び/またはインビボ抗癌活性を有することを、報告した実験は見いだした。文献が示していないのは、モル対モルベースで活性成分WR−1065またはWR−2721と比較した場合、アミホスチンの−PO3部分をチオール化4アーム星型PEG分子と置換することが薬物有効性を増加させたということである。特定の腫瘍型の間で認められる差異について、4SP65の活性は、WR−1065より8〜12倍、アミホスチンより100倍〜数千倍の範囲で大きかった。モル対モルベースで、4アーム星型PEG−WR1065(4SP65)の各モルは、WR−1065またはWR−2721の各1分子に対して4分子のWR1065を有し、その結果、WR−1065またはアミホスチンと比較して、活性に最大で4倍の増大が期待される。
この増大した活性が予想されなかった他の理由は、以下を含む。WR1065及びアミホスチンは、それぞれ134.25及び214.2ダルトンの低分子量を有する。したがってそれらは、アミホスチンより大きな受動拡散の能力を有するWR−1065によって、主に細胞膜を通過して受動拡散により細胞に入る(Lipinski et al.,“Experimental and Computational Approaches to Estimate Solubility and Permeability in Drug Discovery and Development Settings,”Adv.Drug Deliv.Rev.46(1−3):3−26(2001)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。低細胞濃度で存在する場合、WR−1065がポリアミン輸送系を介して細胞に能動的に輸送されるという証拠を、何人かの研究者が見いだしたが(Mitchell et al.,“Involvement of the Polyamine Transport System in Cellular Uptake of the Radioprotectants WR−1065 and WR−33278,”Carcinogenesis.16(12):3063−8(1995)、Mitchell et al.,“Mammalian Cell Polyamine Homeostasis is Altered by the Radioprotector WR1065,”Biochem.J.335(Pt2):329−34(1998)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、すべての研究者がこれらのデータに同意するというわけではなかった(Newton et al.,“Transport of Aminothiol Radioprotectors Into Mammalian Cells:Passive Diffusion Versus Mediated Uptake,”Radiat.Res.146(2):206−15(1996)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。薬物4SP65は、約10,584ダルトンの分子量(細胞膜を通過する受動拡散を防ぐサイズ)を有し、したがって細胞内取り込みは、他の機序(例えばエンドサイトーシス/ピノサイトーシス)によって行われなければならない(Lipinski et al.,“Experimental and Computational Approaches to Estimate Solubility and Permeability in Drug Discovery and Development Settings,”Adv.Drug Deliv.Rev.46(1−3):3−26(2001)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。後者は受動拡散または能動輸送と比べて遅いプロセスであるので、4SP65の取り込みは、WR−1065またはアミホスチンより著しく低いと予想された。より低い取り込みは、増大した薬物活性ではなく、低下した薬物有効性をもたらす。
4SP65が、アミホスチンが不活性であるかまたはアミホスチンが細胞傷害性効果の代わりに細胞保護作用を有する細胞において活性を有することも、報告した文献は示していない。アミホスチンの活性は、少なくとも一部、細胞膜結合型アルカリホスファターゼの発現レベルに依存することは公知であるが、この情報だけでは、薬物活性を予測可能にするのに十分ではない(Shen et al.,“Binding of the Aminothiol WR−1065 to Transcription Factors Influences Cellular Response to Anticancer Drugs,”J.Pharmacol.Exp.Ther.297(3):1067−73(2001)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。例えばアミホスチンは、薬物が内皮細胞(豊富な量の膜結合型アルカリホスファターゼを産生し、薬物をWR−1065に代謝してそれを隣接する腫瘍細胞に渡すことができる)によって血液循環から最初に取り込まれる場合でも、多くの腫瘍型において活性がない。文献報告は、アミホスチンが前立腺癌細胞に対する放射線防護作用を有するが(Quinones et al.,“Selective Exclusion by the Polyamine Transporter as a Mechanism for Differential Radioprotection of Amifostine Derivatives,”Clin.Cancer Res.8(5):1295−300(2002),それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、4SP65は、DU−145細胞に対してインビトロで細胞傷害性作用を有すると記載している。このような逆の作用の理由は利用できる文献から判定することができず、したがって、原型の前立腺癌細胞株の細胞に対する4SP65の抗癌有効性は、事前に予測することができない。
薬物有効性を増加させる予測可能な方法として、タンパク質、薬物または薬物の活性部分へのPEGの添加を使用することができない点にも留意しなければならない。このような添加または置換は、増大した活性、低下した活性をもたらすか、または活性に影響を及ぼさない可能性がある(Mehvar,“Modulation of the Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Proteins by Polyethylene Glycol Conjugation,”J.Pharm.Pharm.Sci.3(1):25−36(2000)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
O’Connorに基づき(O’Connor et al.,“Characterization of the p53 Tumor Suppressor Pathway in Cell Lines of the National Cancer Institute Anticancer Drug Screen and Correlations With the Growth−Inhibitory Potency of 123 Anticancer Agents,”Cancer Res.57(19):4285−300(1997)。それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、最も感受性が高い〜最も感受性が低い腫瘍細胞型までの、4つの一般的に使用されている化学療法剤についてのEC(50)測定値の範囲は、約100倍である。4SP65において、この範囲はわずか約5倍である。この差異の理由は不明であり、利用できる文献から予測することができない。
実施例3 マウスコクサッキーBウイルスに感染した細胞における4アームPEG−WR1065の抗ウイルス作用(予想(prophetic))
マウス心筋細胞を、増殖培地に70〜80%コンフルエンスで蒔き、被膜形成させて、24時間の成長周期に入れる。それから増殖培地が除去され、細胞は30分間、マウスコクサッキーBウイルスマウスの希釈液を含有する培地に曝露される。この期間の終わりに、ウイルス含有培地が除去され、細胞に、4アームPEG−WR1065補充培地を供給し、この培地において、4アームPEG−WR1065の投与量は0.5〜20のマイクロMの範囲である。対照細胞のプレートを、コクサッキーBウイルスの希釈液を含有する培地に曝露し、それから非補充増殖培地を6時間の時点で再供給する。すべてのプレートは、3日毎にそれぞれの培地を再供給する。72時間の時点で、及びその後3日間毎に、培地を除去して、ウイルス複製についてRT−PCRで解析する。対照(ウイルス感染細胞)と比較して、ウイルス複製は、曝露の6日間後までに90%〜99%減少すると予測される。ウイルス複製の程度は、曝露の最高10日後まで低下し続けると思われる。
実施例4 細菌、酵母及び真菌に対する4アームPEG−WR1065(4SP65)の細胞傷害性作用(予想)
4SP65の抗菌活性を、その全体が参照により本明細書に組み込まれるStogniew及びBourthis(「Stogniew及びBourthis」)への米国特許出願公開第2008/0027030号、標題「Pharmaceutical Compositions Comprising Amifostine and Related Compounds」に記載の細菌、酵母及び菌類に対して試験する。試験した抗菌剤がアミホスチンの代わりに4SP65である、本明細書に記載の実験を、実施する。4SP65の増殖阻害活性を、単独で,及び更に他の薬物と組み合わせて試験する。4SP65の抗菌作用は、Stogniew及びBourthisでアミホスチンについて記載されているものより少なくとも8倍〜12倍大きいと予測される。
実施例5 シクロホスファミドに曝露した細胞における4アームPEG−WR1065の細胞保護作用
対数増殖期にあるTK6ヒトリンパ芽球様細胞を、50〜60%コンフルエンスで増殖培地に蒔き、24時間増殖させた。それから増殖培地を除去して、3種類の培地(i)1ミリMのシクロホスファミドを補充した増殖培地、(ii)1ミリMのシクロホスファミドプラス100〜400マイクロMの4アームPEG−WR1065を補充した増殖培地、(iii)非補充増殖培地(対照)の1つを補充した培地と置き換えた。プレートは、細胞死の証拠について48時間及び72時間後に評価した。参照としての対照プレートを使用して、1ミリMのシクロホスファミドに曝露した細胞に関する72時間の時点での細胞死は、トリパンブルー色素排除に基づいて70%であったが、一方で、1ミリMのシクロホスファミドプラス100〜400マイクロMの4アームPEG−WR1065に曝露した細胞で、細胞死はほぼ19%だった。
実施例6 正常なヒト乳腺上皮細胞(M99005)に対する4アームPEG−WR1065の細胞傷害性作用
正常なヒト乳腺上皮細胞を、増殖培地がMEBM(American Type Tissue Culture Collectionから購入)などであったという点を除いて、実施例1に記載のとおり増殖させた。細胞が50〜60%に達したとき、増殖培地を除去し、0〜300マイクロMの4SP65を補充した培地を、細胞を含有する各ウェルに加えた。48時間の時点で、細胞をトリプシン処理によって剥離させ、トリパンブルーで染色し、血球計数器を使用して計数した。細胞増殖の抑制は、100マイクロMの曝露レベル以外では、いかなる薬物濃度でも観察されなかった。細胞増殖は、約22%〜40%阻害された。100マイクロM超及び最高300マイクロMでは、細胞増殖抑制の証拠は、観察されなかった。したがって前記の結果は、50%成長阻害に達しなかった二相曲線を示した。WR−1065についての二相増殖抑制曲線の所見は、以前に報告されている(Calabro−Jones et al.“The limits to radioprotection of Chinese hamster V79 cells by WR−1065 under aerobic conditions.”Radiat Res.149:550−559(1998)。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
実施例7 Zikaウイルス及び/または他のプラス鎖RNAウイルスに対する4アームPEG−WR−1065の抗ウイルス作用(予想)
Zikaウイルスによる感染に許容状態のベロ細胞または他の細胞を、50〜70%コンフルエントまで、上述のように(実施例1を参照)増殖させる。それから細胞を、0〜100マイクロMの範囲の薬物濃度で、最高48時間4SP65で処理する。この曝露期間の終わりに、4SP65を補充した増殖培地を除去し、Zikaウイルスの異なる感染単位を含む増殖培地と交換する。ウイルス誘発細胞傷害性作用の証拠を、ウイルス感染を低減するまたはそれを防ぐ4SP65の能力を判定するために、ウイルス曝露後の複数の時点で評価する。類似の実験において、細胞を30分間、ウイルスに感染させ、それから0〜100マイクロMの範囲の用量で、0〜48時間の範囲の期間4SP65に曝露させる。4SP65の抗ウイルス治療有効性を判定し、これは0.1〜13マイクロMの範囲に入ると予想される。同じ実験計画が、ヒトまたは動物に懸念される他のウイルス病原体に対する4SP65の抗ウイルス作用を試験するために使用される。0.1〜13マイクロMの範囲の抗ウイルス作用は、全実験で観察されることが見込まれる。
実施例8 化合物7の調製
工程1.Boc保護
基質1(ジヒドロクロリド塩1.21mmolなど)を、無水ジクロロメタン(5ml)中に溶解させた。トリエチルアミン(6当量)及びboc無水物(2.1当量)を加えて、反応物を陽性窒素雰囲気下で周囲温度にて一晩撹拌した。翌日、反応物をジクロロメタンで希釈し、塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥して、減圧下で濃縮し、化合物2を収率85%で透明な油として得た。化合物は、精製せずに次工程にて使用した。
工程2.ジスルフィドとのカップリング
基質2(1.03mmol)を1/1の水/メタノール(10ml)に溶解させて、ジスルフィド3(2当量)を加えた。反応物を、一晩、窒素雰囲気下で周囲温度にて撹拌した。翌日、反応物を減圧下で濃縮し、ジクロロメタンで希釈した。それを塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。生成物4を、シリカゲル及びヘキサン/酢酸エチル勾配によるカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を収率46%で単離した。
工程3.星型ポリマーとのカップリング
星型ポリマー5(0.75g、平均分子量10,000)をPBS(8ml、pH7.4)に溶かした溶液に、ジスルフィド5(0.45mmol)をエタノール(2ml)に溶かした溶液を加えた。反応物を周囲温度にて4時間撹拌し、それから一晩凍結乾燥した。粗生成物を、水(4ml)及びDMSO(2ml)に溶解させて、4回水を交換して48時間、水で透析処理した。その後、溶液を凍結乾燥して、814mgの複合体6を単離した。
工程4.複合体7を得るための脱保護
複合体6(814mg)を、30分間1/1のTFA/ジクロロメタン(5ml)で処理した。溶媒を真空中で除去し、残留物を真空ポンプで一晩乾燥した。翌日、残留物をエチルエーテルで洗浄し(2回)、一晩真空ポンプで更に乾燥した。750mgの複合体7を得た。MALDI解析は10,531.95の平均量を示し、平均で4つのWR1065単位の取り込みを示唆した。
特定の実施形態が本明細書で示されかつ詳述されてきたが、関連技術分野の当業者には、様々な変更、追加、代用などが、本発明の趣旨から逸脱することなくなされ得ることは明白であり、したがってこれらは、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内に含まれるとみなされる。