JP2021123242A - 宇宙機の磁場計測システム、磁場計測方法、及び磁場計測装置 - Google Patents

宇宙機の磁場計測システム、磁場計測方法、及び磁場計測装置 Download PDF

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Abstract

【課題】宇宙機からの磁場の影響を除外して、宇宙機の周囲の磁場を正確に測定する。【解決手段】この宇宙機の磁場計測システムは、宇宙機の異なる位置に設置され3軸方向の測定信号を出力する複数の磁気センサと、磁気センサが出力する3軸方向の観測データから、宇宙機が発するノイズを除去して宇宙機の周辺の磁場の大きさを演算する演算部とを備える。演算部は、観測データに対し、移動平均を実行してトレンドデータを生成し、観測データから、トレンドデータを除去してトレンド除去データを生成する。更にトレンド除去データに対し独立成分分析を実行して、トレンド除去データを、自然界の信号に由来する自然信号と、宇宙機の構成要素に由来するノイズ信号とに分離する。トレンド除去データからノイズ信号を減算してノイズ除去済みトレンド除去データを生成し、その後ノイズ除去済みトレンド除去データにトレンドデータを加算して、ノイズ除去済みデータを生成する。【選択図】図3

Description

本発明は宇宙機の磁場計測システム、磁場計測方法、及び磁場計測装置に関する。
準天頂軌道衛星として、日本では、みちびき衛星1号機(QZS−1)が運用されている。QZS−1衛星は、遠地点39000km、近地点32000km、軌道傾斜角41°の準天頂軌道を飛翔する、日本周辺域で位置情報システムを提供することを主目的とした人工衛星である。この人工衛星は、宇宙環境モニタリング用に2つの3軸フラックスゲート磁気センサを搭載しており(例えば、非特許文献1参照)、1つはアンテナタワーの先端に、もう1つは根元に設置されている。この磁気センサが、宇宙環境の測定の1つとして、衛星の周囲の磁場を計測する。
アンテナタワーの高さは、衛星の本体の1/4程度であるため、人工衛星からの磁場の影響を受けることが避けられない。人工衛星には、太陽電池パネル、ヒータ、各種電気回路など、磁場を発生する構成要素が含まれており、これらの動作に伴う磁場変動が磁気センサにおいて検出される。アンテナタワーの高さを大きくするか、又は伸展マストを設置することで、人工衛星からのノイズの影響は低減することができるが、人工衛星のコストが増加してしまう。このため、伸展マストを設けたり、アンテナタワーの高さを大きくしたりすることなく、衛星からのノイズの影響を除外して、衛星(宇宙機)の周囲の磁場を正確に測定可能な磁場計測システム及び磁場計測方法が求められている。
第15回「宇宙環境シンポジウム」講演論文集 81〜85頁
本発明は、宇宙機からの磁場の影響を除外して、宇宙機の周囲の磁場を正確に測定可能な磁場計測システム、磁場計測方法、及び磁場計測装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明に係る宇宙機の磁場計測システムは、宇宙機の異なる位置に設置され3軸方向の測定信号を出力する複数の磁気センサと、前記磁気センサが出力する3軸方向の観測データから、前記宇宙機が発するノイズを除去して前記宇宙機の周辺の磁場の大きさを演算する演算部とを備える。前記演算部は、前記観測データに対し、移動平均を実行してトレンドデータを生成し、前記観測データから、前記トレンドデータを除去してトレンド除去データを生成し、前記トレンド除去データに対し独立成分分析を実行して、前記トレンド除去データを、自然界の信号に由来する自然信号と、前記宇宙機の構成要素に由来するノイズ信号とに分離し、前記トレンド除去データから前記ノイズ信号を減算してノイズ除去済みトレンド除去データを生成し、その後前記ノイズ除去済みトレンド除去データに前記トレンドデータを加算して、ノイズ除去済みデータを生成するよう構成されている。
また、本発明に係る磁場計測方法は、宇宙機の異なる位置に設置された複数の磁気センサにおいて、3軸方向の観測データを取得し、前記観測データに対し、移動平均を実行してトレンドデータを生成し、前記観測データから、前記トレンドデータを除去してトレンド除去データを生成し、前記トレンド除去データに対し独立成分分析を実行して、前記トレンド除去データを、自然界の信号に由来する自然信号と、前記宇宙機の構成要素に由来するノイズ信号とに分離し、前記トレンド除去データから前記ノイズ信号を減算してノイズ除去済みトレンド除去データを生成し、その後前記ノイズ除去済みトレンド除去データに前記トレンドデータを加算して、ノイズ除去済みデータを生成することを含む。
また、本発明に係る磁場計測装置は、宇宙機の異なる位置に設置される複数の磁気センサが出力する3軸方向の観測データから、前記宇宙機が発するノイズを除去して前記宇宙機の周辺の磁場の大きさを演算する演算部を備える。この演算部は、前記観測データに対し、移動平均を実行してトレンドデータを生成し、前記観測データから、前記トレンドデータを除去してトレンド除去データを生成し、前記トレンド除去データに対し独立成分分析を実行して、前記トレンド除去データを、自然界の信号に由来する自然信号と、前記宇宙機の構成要素に由来するノイズ信号とに分離し、前記トレンド除去データから前記ノイズ信号を減算してノイズ除去済みトレンド除去データを生成し、その後前記ノイズ除去済みトレンド除去データに前記トレンドデータを加算して、ノイズ除去済みデータを生成するよう構成されている。
本発明によれば、宇宙機からの磁場の影響を除外して、宇宙機の周囲の磁場を正確に測定可能な磁場計測システム、磁場計測方法、及び磁場計測装置を提供することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る宇宙機1の構成を説明する。 宇宙機本体11に搭載されている演算回路及び中央制御回路の構成の一例を示すブロック図である。 第1の実施の形態の宇宙機の演算プログラムの動作を説明するフローチャートである。 第1の実施の形態の第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15において得られる測定信号、及び磁気嵐の一例を示すグラフである。 移動平均フィルタ31により測定信号から分離されたトレンドデータ、及びトレンド除去データの一例を示すグラフである。 分離された6つの独立成分IC1〜6の一例を示すグラフである。 ノイズ除去済みデータ、ノイズ除去済みトレンド除去データの一例を示すグラフである。 本発明の第2の実施の形態を説明するブロック図である。
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
[第1の実施の形態]
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る宇宙機1の構成を説明する。図1の宇宙機1は、例えば準天頂軌道衛星であって、宇宙機本体11と、太陽電池パネル12と、アンテナタワー13と、第1磁気センサ14と、第2磁気センサ15とを備える。宇宙機1は、これらに加え、ヒータ、軽粒子観測装置、帯電電位センサなどの各種センサ等を構成要素として備えることができる。
宇宙機本体11は、図示は省略するが、推進装置、燃料タンク、姿勢制御装置、演算回路、中央制御回路、通信装置、電源装置等を内部に備えて構成される。太陽電池パネル12は、宇宙機本体11から延びて、宇宙空間の光の光エネルギーを電気エネルギーに変換して宇宙機本体11の電源装置に供給する役割を有する。
アンテナタワー13は、一例としてその先端に第1磁気センサ14を搭載し、先端とは離れた位置、例えば根元に、第1磁気センサ14とは別の第2磁気センサ15を備えている。アンテナタワー13の長さは、構造上及びコスト上の制約から、一例として、宇宙機本体11の大きさの1/4程度に設定されている。
第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15は、いずれも交差する3軸方向の磁気(磁場)を測定可能なセンサであり、例えばフラックスゲート磁気センサである。フラックスゲート磁気センサは、図示は省略するが、3軸方向(X方向、Y方向、Z方向)のそれぞれに、高透磁性材料からなるコアと、一次コイル、二次コイルを備え、外部磁界の変化を3軸方向のそれぞれに関して観測データを個別に検出することができるように構成されている。従って、第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15を3軸フラックスゲート磁気センサで構成する場合、2×3=6次元の観測データを取得することができる。なお、以下の説明では、磁気センサは、第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15の2個を設ける場合を例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。3個以上の磁気センサを用いることでより多種類のノイズのデータが得られることにより、よりノイズを正確に除去することも可能である。
第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15は、宇宙空間における自然現象(磁力線共鳴など)に基づく磁場の大きさを検出するためのセンサである。しかし、第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15は、宇宙空間の磁場だけでなく、宇宙機1の構成要素に由来するノイズの影響も受ける。一例として、宇宙機1からのノイズは、宇宙機1太陽電池パネル12からのノイズ、ヒータ(図示せず)からのノイズ、各種センサからのノイズ等を含み得る。これらのノイズの影響を除外して宇宙空間の磁場の計測を正確に行うことが求められる。
第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15は、同一の構造及び性能を有するものであってよいが、前述の通り、アンテナタワー13中の異なる位置に配置されている。第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15との間の距離は、特定の距離には限定されないが、宇宙機1が発するノイズの影響が互いに異なり、その相違が検知可能な程度の距離に設定される。2つ以上の磁気センサ(14、15)の測定信号に対し、後述するように独立成分分析(Independent Component Analysis)を適用することにより、宇宙機1が発するノイズの影響を除去して、宇宙機1の周囲の磁場をより正確に計測することが可能になる。
図2のブロック図は、宇宙機本体11に搭載されている演算回路及び中央制御回路の構成の一例を示している。前述の第1磁気センサ14及び第2磁気センサ15から出力されるアナログ検出信号は、A/D変換器21及び22においてデジタル信号に変換された後、サンプルホールド回路23及び24に一時的に格納される。演算回路25は、サンプルホールド回路23及び24に保持されたデータに従い、宇宙機1の周辺の磁場を、3軸方向(X、Y、Z)のそれぞれについて計測する。
中央制御回路26は、宇宙機本体1内の各部の全体的な制御を司る。一例として、中央制御回路26は、演算回路25からの演算結果を受領してメモリ27に記憶させると共に、その演算結果を通信制御部28を介して外部に送信可能に構成されている。メモリ27は、生成されたデータを一時的に記憶するための揮発性メモリ(例えばDRAM)と、長期間に亘り保存するための不揮発性メモリ(例えば磁気抵抗メモリ)とを含むことができるが、特定のものには限定されない。演算回路25は、宇宙機本体11に搭載されていてもよいが、宇宙機1と通信制御部28を介して接続される地上のコンピュータに搭載されてもよい。具体的には、第1磁気センサ14及び第2磁気センサ15で得られデジタル値に変換された測定データは、中央制御回路26により、通信制御部28を介して地上のコンピュータに送信されてもよい。その場合に、地上のコンピュータの演算回路25において、受信した測定データに対して同様の演算をすることが可能である。
演算回路25は、第1磁気センサ14及び第2磁気センサ15の測定信号に従って宇宙機1の周辺の磁場を計測するための演算プログラムを実行可能に構成されている。具体的にこの演算プログラムは、移動平均フィルタ31、トレンド除去データ生成部32、独立成分分析部33、及びノイズ除去部34をコンピュータにおいて実行可能に構成されている。
演算プログラムの各部31〜34の動作を、図3のフローチャートとともに説明する。移動平均フィルタ31は、第1磁気センサ14及び第2磁気センサ15の測定信号の時系列データ(元データ)に対し移動平均を適用し、トレンドデータを生成する(S11)。生成されたトレンドデータは、一時的にメモリ27に記憶される。トレンド除去データ生成部32は、元データから当該トレンドデータを除去したトレンド除去データを生成する(S12)。トレンドデータは、本実施の形態において独立成分分析を用いて除去されるノイズに比べ、その周期が非常に大きい。元データからこのようなトレンドデータを除去することは、次に行われる独立成分分析においてノイズを分離するために有効である。移動平均は、一例として、1時間(3600s)程度の時間幅で3回実行され得る。移動平均の時間幅や実行回数は、トレンドデータの周期や大きさ、ノイズの周期の長さに従って決定することができ、特定の数字には限定されるものではない。
また、独立成分分析部33は、トレンド除去データに対し独立成分分析を実行し、トレンド除去データを、自然界の信号に由来する自然信号とノイズ信号とに分離する(S13〜S15)。独立成分分析は、測定信号に含まれる各信号成分が統計的に独立であるという仮定の下、個々の独立成分を分離することができる分離行列W、混成行列A=W−1を求めるものである。2つのセンサで観測される信号は、中心極限定理によりその統計的性質がガウス分布に近付く。独立成分分析により求める分離行列Wは、分離信号の非ガウス性を最大化する行列として求めることができる。図1の例のように、2つのセンサ(14、15)から3軸方向の磁気データが得られる場合、合計で6個の変数が得られていることから、分離行列W及び混成行列Aは、6×6の行列となり、6個の独立成分が得られる。なお、トレンド除去データから独立成分分析により分離された各独立成分のうち、いずれが自然信号であり、いずれがノイズであるのかの判定が行われる。判定動作の詳細については後述する。
ノイズ除去部34は、分離されたノイズを、トレンド除去データから減算して、「ノイズ除去済みトレンド除去データ」を生成した後(S16)、トレンドデータを加算(復元)させて、元データからノイズのみを除去したノイズ除去済みデータを演算する(S17)。
図4(a)は、第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15において得られる測定信号の一例である。第1磁気センサ14からは、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に関し、それぞれ測定信号Xs1、Ys1、Zs1が得られる。また、第2磁気センサ15からは、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に関し、それぞれ測定信号Xs2、Ys2、Zs2が得られる。この図4(a)の測定信号は、例えば2日間程度の間における磁場の変動を示している。磁気嵐急始磁気パルス(SYM−H指数の急上昇)を伴った磁気嵐(SYM−H指数の減少)が発生しており(図4(b))、宇宙機1の周辺で激しい磁場変動現象が発生していることが示されている。なお、図4(a)(b)ともに横軸は時間であり、hhmmは世界時を示している。また図4(a)(b)に記載した測定信号は、互いに時間的に同期している。
この測定信号Xs1、Ys1、Zs1、Xs2、Ys2、Zs2において、こうした宇宙空間での自然現象に基づく磁場変動ではなく、人工的な変動が含まれることも見て取れる。一例として、30nT以下程度の1時間間隔のステップ状ノイズ、30nT以下程度の30分間隔のノコギリ状ノイズ、0.5〜5nT程度の高周波のノイズの三種類のノイズが、図4の測定信号中に含まれていること分かる。これらのノイズは、変動に世界時依存性があること、極めて規則的に発生していること、第1磁気センサ14及び第2磁気センサ15の間で異なる偏波及び振幅を有することから、ノイズと判断され得る。
これらのノイズは、宇宙機1の周囲の自然現象に基づく磁場とは無関係であり、統計的に独立である。一般に矩形波やノコギリ波状の大振幅ノイズは、帯域阻止フィルタなどの周波数に基づくフィルタでは除去が困難である。しかし、本実施の形態では、図3で説明した独立成分分析を含む手順により、このようなノイズを元の信号から除去することができる。ノイズの世界時依存性、規則性、及び複数センサ(14、15)の間の偏波及び振幅の相違などに基づいて、これらのノイズを独立成分分析により除去することができる。
一般的に、自然現象の磁場変動はkmスケールであるのに対し、宇宙機1からのノイズは、宇宙機1の周辺でのみ観察される。従って、宇宙機1からのノイズは、宇宙機1の周囲の場所によって異なり、アンテナ長の長さ程度離れているだけの第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15においても、同じノイズが異なる信号として検出される。一方で、自然現象の磁場変動は、第1磁気センサ14、及び第2磁気センサ15において略同一の信号として受信される。本実施の形態では、このような信号の特性に着目し、独立成分分析を用いてノイズ成分を分離し、ノイズ以外の独立成分からデータを復元することで、ノイズが除去された状態の信号から、自然現象の磁場変動を正確に検出することを可能にしている。
図5(a)〜(c)は、移動平均フィルタ31により測定信号Xs1、Ys1、Zs1、Xs2、Ys2、Zs2から分離されたトレンドデータXTs1、YTs1、ZTs1、XTs2、YTs2、ZTs2の一例である。図5(d)〜(f)は、トレンドデータXTs1、YTs1、ZTs1、XTs2、YTs2、ZTs2を、測定信号Xs1、Ys1、Zs1、Xs2、Ys2、Zs2から分離(減算)して生成されたトレンド除去データXTDs1、YTDs1、ZTDs1、XTDs2、YTDs2、ZTDs2の一例である。上述の3種類の大振幅ノイズは、このトレンド除去データに含まれている。
このようなトレンド除去データに対し、独立成分分析部33が独立成分分析を実行し、分離行列W、混成行列A=W−1、及び独立成分の時系列データを取得する。図6(a)〜(f)は、分離された6つの独立成分IC1〜6の時系列データの一例である。独立成分IC1(図6(a))として、ステップ状のノイズが分離されている。また、独立成分IC5(図6(e))として、ノコギリ波状のノイズが分離されている。更に、独立成分IC6(図6(f))として、高周波ノイズが分離されている。残りの独立成分IC2〜4(図6(b)〜(d))は、自然現象に伴う磁場の変動と考えられる。
得られた6つの独立成分IC1〜6のうち、いずれがノイズであり、いずれが自然現象に伴う磁場の信号であるかは、目視により判別することも可能である。これに代えて、ノイズと自然現象とを自動的に判別するため、以下に説明する判別指標Dを演算し、この判別指標Dの大小に基づいて判定を行うことも可能である。
判別指標Dは、独立成分分析により得られた混成行列に基づいて演算される。具体的には、混成行列A=W−1を構成する行ベクトルは、ある独立成分のそれぞれの観測点(次元)における振幅を意味する。この行ベクトルを、ここでは復元係数ベクトルと称する。従って、この混成行列A=W−1の列ベクトルの値を第1磁気センサ14及び第2磁気センサ15の各々の3軸成分(X、Y、Z)に展開したとき、そのベクトルの相対的な差は独立成分の変動の2つの磁気センサ(14、15)の間の差を意味する。従って、第1磁気センサ14に対応する復元係数ベクトルをa1、第2磁気センサ15に対応する復元係数ベクトルをa2とした場合、2つのセンサ間での復元係数ベクトルの相違を示す判別指標Dを、例えば次の式[数1]で表すことができる。判別指標Dの値が小さい独立成分は、自然現象に伴う磁場の変動と判定することができる。なお、以下の式は一例であり、ノイズと自然現象の判別に、これ以外の式を用いることができることは言うまでもない。
Figure 2021123242
図6の例では、独立成分IC2〜4は、判別指標Dの値が0.01〜0.07と小さく、逆に独立成分IC1、5、6については、判別指標Dは0.77〜0.97と、独立成分IC2〜4に比べ10倍以上大きい値が得られた。各独立成分ICについて、この判別指標Dを比較することで、上記判別を自動的に実行することができる。
図7(d)〜(f)は、自然現象に伴う磁場の信号であると判定された独立成分IC2〜4を加算して得られた、ノイズ除去済みトレンド除去データの一例である。図7(a)〜(c)は、図7(d)〜(f)のデータに、更に移動平均フィルタ31で得られメモリ27に格納されているトレンドデータを加算したデータ(ノイズ除去済みデータ)の一例である。この図7(a)〜(c)のデータにより、ノイズの影響を除去した宇宙環境の磁場のデータを測定することが可能になる。
なお、除去可能なノイズの種類は、磁気センサの数に伴って増加する。理論上は、磁気センサの数をnとすると、3(n−1)種類のノイズを除去することができる。これまで磁気センサは、伸展物の工学的配置やコストの問題から、搭載することが困難であった。本実施の形態によれば、様々な宇宙機に磁気センサを搭載する機会が拡大し、電磁環境モニタリング及び科学データの取得の推進を図ることができる。
以上説明したように、この第1の実施の形態によれば、宇宙機1からのノイズを独立成分分析により除去して、自然現象に伴う磁場の変動を正確に検出することが可能になる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る宇宙機1を、図8を参照して説明する。第2の実施の形態の宇宙機1の外観構成は、第1の実施の形態(図1)と同様でよい。図8は、第2の実施の形態の宇宙機本体11に搭載されている演算回路及び中央制御回路の構成の一例を示している。図2と同一の構成要素に関しては、図8において同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。この第2の実施の形態の宇宙機1は、演算回路25が、トレンドデータ出力部35、及びノイズ出力部36を備えている点で、第1の実施の形態と異なっている。
トレンドデータ出力部35は、移動平均フィルタ31から出力されたトレンドデータを、外部に出力可能なデータ形式に変換して出力する機能を有する。また、ノイズ出力部36は、独立成分分析部33で分離されたノイズのデータを、外部に出力可能なデータ形式に変換して出力する機能を有する。複数の磁気センサ(14、15)により検出される信号のトレンドデータは、宇宙環境における環境測定において有効なデータとなり得る。また、ノイズのデータも、将来の宇宙機の設計において有効なデータとなり得る。このようなデータを別途出力することで、より宇宙環境測定を適切に実行することが可能になる。なお、上記の例では、トレンドデータとノイズのデータとの両方を出力する例を説明したが、トレンドデータ又はノイズのいずれか一方を出力するような構成を採用することも可能である。
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…宇宙機、11…宇宙機本体、12…太陽電池パネル、13…アンテナタワー、14…第1磁気センサ、15…第2磁気センサ、21、22…A/D変換器、23、24…サンプルホールド回路、25…演算回路、26…中央制御回路、27…メモリ、28…通信制御部、31…移動平均フィルタ、32…トレンド除去データ生成部、33…独立成分分析部、34…ノイズ除去部、35…トレンドデータ出力部、36…ノイズ出力部。

Claims (11)

  1. 宇宙機の異なる位置に設置され3軸方向の測定信号を出力する複数の磁気センサと、
    前記磁気センサが出力する3軸方向の観測データから、前記宇宙機が発するノイズを除去して前記宇宙機の周辺の磁場の大きさを演算する演算部と、
    を備え、
    前記演算部は、
    前記観測データに対し、移動平均を実行してトレンドデータを生成し、
    前記観測データから、前記トレンドデータを除去してトレンド除去データを生成し、
    前記トレンド除去データに対し独立成分分析を実行して、前記トレンド除去データを、自然界の信号に由来する自然信号と、前記宇宙機の構成要素に由来するノイズ信号とに分離し、
    前記トレンド除去データから前記ノイズ信号を減算してノイズ除去済みトレンド除去データを生成し、その後前記ノイズ除去済みトレンド除去データに前記トレンドデータを加算して、ノイズ除去済みデータを生成する
    よう構成されていることを特徴とする、宇宙機の磁場計測システム。
  2. 前記演算部は、前記自然信号と、前記ノイズ信号とに分離する場合において、前記自然信号と前記ノイズ信号とを判別するのに用いられる判別指標を演算するよう構成された、請求項1に記載の宇宙機の磁場計測システム。
  3. 前記演算部は、前記独立成分分析により得られた混成行列の行ベクトルの差に基づき、前記判別指標を演算する、請求項2に記載の宇宙機の磁場計測システム。
  4. 前記トレンドデータを出力するトレンドデータ出力部を更に備えた、請求項1に記載の宇宙機の磁場計測システム。
  5. 前記ノイズ信号を出力するノイズ出力部を更に備えた、請求項1に記載の宇宙機の磁場計測システム。
  6. 前記複数の磁気センサは、前記宇宙機の本体から延びるアンテナタワーの異なる位置に配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の宇宙機の磁場計測システム。
  7. 宇宙機の異なる位置に設置された複数の磁気センサにおいて、3軸方向の観測データを取得し、
    前記観測データに対し、移動平均を実行してトレンドデータを生成し、
    前記観測データから、前記トレンドデータを除去してトレンド除去データを生成し、
    前記トレンド除去データに対し独立成分分析を実行して、前記トレンド除去データを、自然界の信号に由来する自然信号と、前記宇宙機の構成要素に由来するノイズ信号とに分離し、
    前記トレンド除去データから前記ノイズ信号を減算してノイズ除去済みトレンド除去データを生成し、その後前記ノイズ除去済みトレンド除去データに前記トレンドデータを加算して、ノイズ除去済みデータを生成する
    ことを含む、磁場計測方法。
  8. 前記自然信号と前記ノイズ信号とに分離するステップは、前記自然信号と前記ノイズ信号とを判別するのに用いられる判別指標を演算し、前記判別指標の大小に基づいて実行される、請求項7に記載の磁場計測方法。
  9. 前記独立成分分析により得られた混成行列の行ベクトルの差に基づき、前記判別指標を演算する、請求項8に記載の磁場計測方法。
  10. 前記複数の磁気センサは、前記宇宙機の本体から延びるアンテナタワーの異なる位置に配置される、請求項7〜9のいずれか1項に記載の磁場計測方法。
  11. 宇宙機の異なる位置に設置される複数の磁気センサが出力する3軸方向の観測データから、前記宇宙機が発するノイズを除去して前記宇宙機の周辺の磁場の大きさを演算する演算部を備え、
    前記演算部は、
    前記観測データに対し、移動平均を実行してトレンドデータを生成し、
    前記観測データから、前記トレンドデータを除去してトレンド除去データを生成し、
    前記トレンド除去データに対し独立成分分析を実行して、前記トレンド除去データを、自然界の信号に由来する自然信号と、前記宇宙機の構成要素に由来するノイズ信号とに分離し、
    前記トレンド除去データから前記ノイズ信号を減算してノイズ除去済みトレンド除去データを生成し、その後前記ノイズ除去済みトレンド除去データに前記トレンドデータを加算して、ノイズ除去済みデータを生成する
    よう構成されていることを特徴とする、磁場計測装置。
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