JP2021120136A - 含硫黄化合物除去用の組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物の除去効率に優れ、さらに炭酸カルシウムの析出を抑制し得る組成物を提供することを目的とする。【解決手段】液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物であって、前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記組成物が、飽和アルデヒドと、特定の酸の少なくとも1つと、を含有する、組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物に関する。
天然ガス、液化天然ガス、サワーガス、原油、ナフサ、重質芳香族ナフサ、ガソリン、ケロシン、ディーゼル油、軽油、重油、FCCスラリー、アスファルト、油田濃縮物等の化石燃料や精製石油製品等の炭化水素は、しばしば硫化水素や−SH基を含有するさまざまな化合物(典型的には各種メルカプタン類)等の含硫黄化合物を含む。
中でも、硫化水素の毒性はよく知られており、化石燃料や精製石油製品を扱う産業では、硫化水素の含有量を安全なレベルまで低減させるために、相当の費用と努力が払われている。例えば、パイプラインガスに対しては、硫化水素の含有量が4質量ppmを超えないことが一般的な規制値として要求されている。
また、硫化水素や−SH基を含有するさまざまな化合物は、その揮発性のために、大気中に漏出する傾向にある。そのため、炭化水素の貯蔵場所や、その周辺、パイプライン、及び出荷システムにおいては、該化合物の悪臭が問題となっている。また、硫化水素や−SH基を含有するさまざまな化合物は、下水等の水中にも存在し、それらに由来する悪臭がしばしば問題となっている。
このような含硫黄化合物に由来する問題に対しては、例えばトリアジンを用いて炭化水素中の硫化水素を除去する方法等が古くから提案されている。しかし、トリアジンのような塩基性の含硫黄化合物除去剤は、良好な除去効率を示すものの、二酸化炭素が存在する環境下では、不溶解性の炭酸カルシウムの析出を助長する問題がある。
炭酸カルシウムの析出は、特に原油掘削等の分野において、配管のつまりや、生産性の低下の原因として問題となるため、その発生の抑制が望まれる。
しかしながら、炭酸カルシウムは、溶解度積が3.6×10−9moldm−6と非常に小さく、カルシウムイオンと炭酸イオン(CO 2−)とが存在する環境下であれば、容易に析出が起こる。特に、カルシウムイオンは、地下水や海水中に一般的に含まれ、炭酸イオンも、二酸化炭素が水に溶解する環境下であれば容易に発生するため、炭酸カルシウムの析出抑制は決して容易ではない。
特に、水溶液が塩基性になる場合、炭酸イオンが生成し易く、炭酸カルシウムの析出が起こり易い。通常、水溶液中における二酸化炭素は、炭酸(HCO)、炭酸水素イオン(HCO )、炭酸イオン(CO 2−)の形で存在し、その分配比は水溶液のpHに依存する。すなわち、炭酸イオンは、pH<7の酸性領域では水溶液中にほとんど存在しないが、pH>7の塩基性領域ではpHの増大に伴って、分配比が大きくなる。
そのため、上述のような塩基性の含硫黄化合物除去剤であるトリアジンを用いた場合には、系内が塩基性となり、炭酸カルシウムの析出が起こり易い環境となる。そのため、配管のつまりや、生産性の低下の問題が顕著となる(非特許文献1)。
一方、炭化水素中の硫化水素を除去する別の手法としては、アルデヒド化合物を用いる方法も古くから提案されている。具体的には特許文献1に、pHが2〜12の範囲である水溶液中での、アルデヒド化合物と硫化水素との反応、特にホルムアルデヒド水溶液と硫化水素との反応が開示されている。
このような方法の場合、上述のような炭酸カルシウムの析出の問題は比較的起こり難くなるが、硫化水素等の含硫黄化合物の除去効率は十分ではなく、炭酸カルシウムの析出を抑制しつつ、含硫黄化合物の除去効率を向上し得る手法が望まれている。
米国特許第1991765号明細書
PRODUCTION CHEMICALS FOR THE OIL AND GAS INDUSTRY 2nd ed., pp.52−53
そこで本発明は、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物の除去効率に優れ、さらに炭酸カルシウムの析出を抑制し得る組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、飽和アルデヒドと特定の酸とを併用することにより、飽和アルデヒドを単独で用いる場合に比べて、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物の除去効率を向上でき、さらに炭酸カルシウムの析出を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物であって、
前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記組成物が、飽和アルデヒドと、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される酸の少なくとも1つと、を含有する、組成物。
Figure 2021120136

(上記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。上記式(2)中、Rは水素原子又はリン酸基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。上記式(3)中、Rは水酸基又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。)
[2] 前記炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基又はアリール基である、上記[1]に記載の組成物。
[3] 前記飽和アルデヒドと前記酸との含有量の比は、前記飽和アルデヒドをA(質量部)、前記酸をB(質量部)とした場合、A:B=0.1:99.9〜99.9:0.1である、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 前記飽和アルデヒドが、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、2−メチルブタナール、3−メチルブタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、1,6−ヘキサンジアール、1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアールからなる群から選択される少なくとも1つである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5] 前記飽和アルデヒドが、炭素数6以上の飽和アルデヒドである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6] 前記液体及び気体のそれぞれが、炭化水素である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7] 前記液体及び気体のそれぞれが、天然ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、サワーガス、乾性ガス、湿性ガス、油田ガス、随伴ガス、テールガス、ジメチルエーテル、原油、ナフサ、重質芳香族ナフサ、ガソリン、ケロシン、ディーゼル油、軽油、潤滑油、重油、A重油、B重油、C重油、ジェット燃料油、FCCスラリー、アスファルト、コンデンセート、ビチューメン、超重質油、タール、ガス液化油(GTL)、石炭液化油(CTL)、アスファルテン、芳香族炭化水素、アルキレート、基油、ケロジェン、コークス、黒油、合成原油、改質ガソリン、異性化ガソリン、再生重油、残油、白油、ラフィネート、ワックス、バイオマス燃料、バイオマス液化油(BTL)、バイオガソリン、バイオエタノール、バイオETBE及びバイオディーゼルからなる群から選択される少なくとも1つである、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[8] 液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去する方法であって、
前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の組成物と、前記液体及び気体の少なくとも一方と、を接触させる、方法。
[9] 前記組成物と、前記含硫黄化合物とを、−30℃〜150℃の範囲で接触させる、上記[8]に記載の方法。
[10] 液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、
前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、使用。
本発明によれば、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物の除去効率に優れ、さらに炭酸カルシウムの析出を抑制し得る組成物を提供することができる。
本発明の組成物は、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物であって、飽和アルデヒドと、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される酸の少なくとも1つ(以下、省略して「特定の酸」ということがある。)と、を含有することを特徴とする。
Figure 2021120136

(上記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。上記式(2)中、Rは水素原子又はリン酸基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。上記式(3)中、Rは水酸基又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。)
ここで、「含硫黄化合物」は、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。なお、特に断らない限り、以下において同じである。
本発明の組成物は、飽和アルデヒド及び特定の酸を有効成分として含有することに起因して、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物の除去効率(以下、単に「除去率」ということがある。)に優れ、さらに炭酸イオン(CO 2−)が存在する環境で使用されても炭酸カルシウムの析出が抑制される。
なお、本発明において「組成物」とは、飽和アルデヒドと、特定の酸とが、同じ系内で共存している状態を指す。ここで、「同じ系内で共存している状態」とは、飽和アルデヒドと、特定の酸とが、同じ系内で混合されている状態を指し、少なくとも本発明の組成物を用いる対象となる含硫黄化合物を含む液体及び気体の少なくとも一方に接触する時点において、飽和アルデヒドと、特定の酸とが混合されていればよい。すなわち、該液体等に接触させる前の時点では、飽和アルデヒドと、特定の酸とは、それぞれ個別の成分として存在していてもよく、例えば該液体に対して、飽和アルデヒドと、特定の酸とを、それぞれ個別に添加し、該液体中でこれらが混合されることで、組成物を構成してもよい。また、該液体等に接触させる前に予め、飽和アルデヒドと、特定の酸とを混合しておくことで、組成物を構成してもよい。
アルデヒドを含有する従来の含硫黄化合物除去剤に比べ、本発明の組成物が含硫黄化合物の除去効率に優れる理由は必ずしも明らかではないが、含硫黄化合物のホルミル基への付加反応を、本発明の特定の酸が触媒的に促進することが要因の1つと考えられる。また、本発明の組成物によれば、系内を酸性に保つことができるため、炭酸カルシウムの発生も抑制される。
本発明の組成物は、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するためのものである。
本発明においては、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を、別の化合物に変換する等して、液体又は気体中の含硫黄化合物の含有量を当初の量から低減させることも「除去する」ことに含めるものとする。別の化合物に変換された後の変換物は、系中に存在したままにしてもよいし、系外に分離してもよい。
なお、典型的な除去方法としては、例えば後述するように、本発明の組成物と、含硫黄化合物を含む液体及び気体の少なくとも一方とを接触させ、その後、接触後の組成物と、接触後の液体及び気体とを分離することで、結果として、液体又は気体中の含硫黄化合物の含有量を、当初の量から低減させる方法等が挙げられる。
本発明の組成物を用いる対象となる液体及び気体のそれぞれは、特に制限はないが、例えば水や炭化水素等が挙げられ、炭化水素が好ましい。また、液体及び気体のそれぞれの具体例としては、例えば天然ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、サワーガス、乾性ガス、湿性ガス、油田ガス、随伴ガス、テールガス、ジメチルエーテル、原油、ナフサ、重質芳香族ナフサ、ガソリン、ケロシン、ディーゼル油、軽油、潤滑油、重油、A重油、B重油、C重油、ジェット燃料油、FCCスラリー、アスファルト、コンデンセート、ビチューメン、超重質油、タール、ガス液化油(GTL)、石炭液化油(CTL)、アスファルテン、芳香族炭化水素、アルキレート、基油、ケロジェン、コークス、黒油、合成原油、改質ガソリン、異性化ガソリン、再生重油、残油、白油、ラフィネート、ワックス、バイオマス燃料、バイオマス液化油(BTL)、バイオガソリン、バイオエタノール、バイオETBE、バイオディーゼル等が挙げられる。液体及び気体のそれぞれは、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
本発明において除去する対象となる含硫黄化合物は、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。すなわち、除去する対象は、硫化水素だけであってもよいし、−SH基を含有する化合物だけであってもよいし、これらの混合物であってもよい。ここで、−SH基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、化学式「R−SH」(ここで、Rは有機基を表す。)で示されメルカプタン類として分類される含硫黄化合物が挙げられる。当該化学式「R−SH」で示されるメルカプタン類としては、例えばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、sec−ブチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−アミルメルカプタン等のRがアルキル基であるもの;フェニルメルカプタン等のRがアリール基であるもの;ベンジルメルカプタン等のRがアラルキル基であるもの等が挙げられる。除去する対象となる−SH基を含有する化合物は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
本発明において用いられる飽和アルデヒドは特に制限されず、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、2−メチルブタナール、3−メチルブタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ベンズアルデヒド等のモノアルデヒド;グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、1,6−ヘキサンジアール、エチルペンタンジアール、1,7−ヘプタンジアール、メチルヘキサンジアール、1,8−オクタンジアール、メチルヘプタンジアール、ジメチルヘキサンジアール、エチルヘキサンジアール、1,9−ノナンジアール、2−メチル−1,8−オクタンジアール、エチルヘプタンジアール、1,10−デカンジアール、ジメチルオクタンジアール、エチルオクタンジアール、ドデカンジアール、ヘキサデカンジアール、1,2−シクロヘキサンジカルボアルデヒド、1,3−シクロヘキサンジカルボアルデヒド、1,4−シクロヘキサンジカルボアルデヒド、1,2−シクロオクタンジカルボアルデヒド、1,3−シクロオクタンジカルボアルデヒド、1,4−シクロオクタンジカルボアルデヒド、1,5−シクロオクタンジカルボアルデヒド等のジアルデヒド等が挙げられる。前記飽和アルデヒドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特に含硫黄化合物の除去効率を高める観点では、本発明において用いられる飽和アルデヒドは、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、2−メチルブタナール、3−メチルブタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ベンズアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、1,6−ヘキサンジアール、エチルペンタンジアール、1,7−ヘプタンジアール、メチルヘキサンジアール、1,8−オクタンジアール、メチルヘプタンジアール、ジメチルヘキサンジアール、エチルヘキサンジアール、1,9−ノナンジアール、2−メチル−1,8−オクタンジアール、エチルヘプタンジアール、1,10−デカンジアール、ジメチルオクタンジアール、エチルオクタンジアール、ドデカンジアール、1,2−シクロヘキサンジカルボアルデヒド及び1,4−シクロヘキサンジカルボアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましく、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、2−メチルブタナール、3−メチルブタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、1,6−ヘキサンジアール、1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることがより好ましい。より具体的には、ブタナール、1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物が挙げられる。
また、疎水性が高く炭化水素への適用が容易である観点では、本発明において用いられる飽和アルデヒドは、炭素数6以上の飽和アルデヒドであることが好ましい。
更に、上記二つの観点からは、本発明において用いられる飽和アルデヒドは、炭素数6〜12の飽和アルデヒドがより好ましく、炭素数6〜10の飽和アルデヒドが更に好ましく、具体的には、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、3−メチルグルタルアルデヒド、1,6−ヘキサンジアール、1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
また、上記の中でも、低毒性、生分解性、取扱いの安全性、耐熱性、低金属腐食性等の観点から、前記飽和アルデヒドとしては、1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが特に好ましい。
前記飽和アルデヒドとして1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアールのうちの少なくとも一方を用いる場合、1,9−ノナンジアール又は2−メチル−1,8−オクタンジアールを単独で用いてもよいが、工業的な入手容易性の観点からは1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアールを混合物として用いることが好ましい。かかる1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアールの混合物の混合比に特に制限はないが、通常、1,9−ノナンジアール/2−メチル−1,8−オクタンジアールの質量比として99/1〜1/99であるのが好ましく、95/5〜5/95であるのがより好ましく、93/10〜45/55であるのがさらに好ましく、90/10〜55/45であるのが特に好ましい。
前記飽和アルデヒドが含硫黄化合物と反応することで、液体又は気体中から含硫黄化合物が除去される。当該反応の形態に特に制限はないが、例えば含硫黄化合物がホルミル基に対し付加反応し得る。
本発明において用いられる酸は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される。
Figure 2021120136

上記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。上記式(2)中、Rは水素原子又はリン酸基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。上記式(3)中、Rは水酸基又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。ここで、炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であることが好ましい。なお、炭化水素基は、無置換のものに限られず、置換基を有するものであってもよい。
本発明の組成物は、上記のような特定の酸を含むことで、含硫黄化合物と反応する際の系内を、酸性に保つことができ、炭酸カルシウムの析出を効果的に抑制することができる。また、上記のような特定の酸は、例えば酢酸のような有機酸に比べて、沸点が高いため、石油精製過程において釜に蓄積される傾向にあり、精製された石油製品に酸が混入するおそれが少ない。
上記一般式(1)で表される化合物において、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基がより好ましい。また、R及びRの少なくとも一方は水素原子であることが好ましく、その両方が水素原子であることがより好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えばリン酸、リン酸(2−エチルヘキシル)、リン酸ドデシル、リン酸オレイル、リン酸エチル、リン酸ジフェニル等が挙げられ、中でもリン酸が特に好ましい。
なお、上記一般式(1)で表される化合物がエステル化合物である場合、少なくともモノエステルを含むことが好ましく、モノエステルのみからなることがより好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物において、Rは水素原子又はリン酸基(−OPO等)を表し、リン酸基が好ましい。また、Rは水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基がより好ましい。また、R及びRの少なくとも一方は水素原子であることが好ましく、その両方が水素原子であるか、又は、Rがリン酸基でありRが水素原子であることがより好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えばホスホン酸、二リン酸等が挙げられ、中でも二リン酸が特に好ましい。
上記一般式(3)で表される化合物において、Rは水酸基又は炭素数1〜18の炭化水素基が好ましく、水酸基又は炭素数1〜12の炭化水素基がより好ましい。
上記一般式(3)で表される化合物としては、例えばp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等が挙げられ、中でもp−トルエンスルホン酸が特に好ましい。
上記特定の酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記特定の酸は市販品を用いてもよいし、公知の方法で製造してもよい。
本発明の組成物における飽和アルデヒドと特定の酸との含有量の合計は使用態様に応じて適宜設定することができる。含有量の合計は0.1質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。また、含有量の合計は90質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
本発明の組成物における飽和アルデヒドと特定の酸との含有量の比は、飽和アルデヒドをA(質量部)、特定の酸をB(質量部)とした場合に、通常A:B=0.1:99.9〜99.9:0.1であり、好ましくはA:B=5:95〜99.9:0.1であり、より好ましくはA:B=10:90〜99.9:0.1であり、費用対効果の観点から好ましくはA:B=20:80〜99.5:0.5であり、より好ましくはA:B=40:60〜99:1であり、更に好ましくはA:B=55:45〜99:1である。
本発明の組成物は、飽和アルデヒドと特定の酸以外に、本発明の効果を損なわない限り、界面活性剤、腐食防止剤、脱酸素剤、鉄分制御剤、架橋剤、ブレーカー、凝集剤、温度安定剤、pH調整剤、脱水調整剤、膨潤防止剤、スケール防止剤、殺生物剤、摩擦低減剤、消泡剤、逸泥防止剤、潤滑剤、粘土分散剤、加重剤、ゲル化剤、含窒素化合物等の任意成分を更に含んでもよい。
また本発明の組成物は、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール等の炭素数1〜10のモノアルコール又はジオール、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、重質芳香族ナフサ、石油蒸留物、水等の適当な溶媒を任意成分として含んでいてもよい。
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば(I)本発明の組成物を用いる対象となる液体に対し、飽和アルデヒドと、特定の酸と、さらに必要に応じて前記任意成分と、をそれぞれ個別に添加して、該液体中でこれらを混合する方法、(II)上記液体等に接触させる前に予め、飽和アルデヒドに対し、特定の酸を添加して、さらに必要に応じて前記溶媒等の任意成分を添加して、混合する方法、(III)上記液体等に接触させる前に予め、飽和アルデヒドと、特定の酸と、さらに必要に応じて前記任意成分と、を混合する方法等によって製造できる。
本発明の組成物は、本発明の組成物を用いる対象となる含硫黄化合物を含む液体及び気体の少なくとも一方に接触する時点において、飽和アルデヒドと、特定の酸とが混合されていればよいが、取り扱いのし易さ等の観点から、上記方法(II)及び(III)のように、本発明の組成物を用いる対象となる液体等に添加する前に、予め組成物を形成しておくことが好ましい。
本発明の組成物は好適には液状であるが、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するために使用する形態に応じて、適宜担体等に担持させ、粉体、流体等の固体状としてもよい。
本発明の組成物を用いて液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するにあたっては、本発明の組成物と、液体及び気体の少なくとも一方とを接触させればよい。含硫黄化合物の除去方法に係る好ましい具体的な実施態様の例としては、(i)含硫黄化合物の除去に十分な量の本発明の組成物を、含硫黄化合物を含む液体及び気体の少なくとも一方へ添加する方法、(ii)本発明の組成物が充填された容器に対して含硫黄化合物を含む気体(例えば炭化水素)を流通させる方法、(iii)含硫黄化合物を含む気体へ本発明の組成物をミスト状にして噴射する方法等が挙げられる。
本発明の組成物を用いて液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するにあたっては、本発明の組成物中に含まれる飽和アルデヒドの量が、液体又は気体中に含まれる含硫黄化合物1質量部に対し、好ましくは0.1〜5000質量部、より好ましくは2〜1000質量部となるように、本発明の組成物と、液体及び気体の少なくとも一方とを接触させればよい。例えば、前述したような、本発明の組成物が充填された容器に対して含硫黄化合物を含む気体を流通させる方法(ii)では、流通させる気体全量中の含硫黄化合物1質量部に対し、使用される飽和アルデヒドの量が前記範囲内となるよう、本発明の組成物の使用量を調整すればよい。また、気体及び液体の両方に含まれる含硫黄化合物を除去する際には、気体及び液体の両方に含まれる含硫黄化合物の全量を1質量部として、これに対し、使用される飽和アルデヒドの量が前記範囲内となるよう、本発明の組成物の使用量を調整すればよい。
また、本発明の組成物と、液体及び気体の少なくとも一方とを接触させる際の温度は、特に制限はないが、好ましくは−30℃〜150℃の範囲内、より好ましくは0℃〜130℃の範囲内である。
本発明の組成物と液体及び気体の少なくとも一方とを接触させた後、必要に応じて接触後の組成物と接触後の液体及び気体とを分離してもよい。特に上記したような本発明の組成物が充填された容器に対して含硫黄化合物を含む気体(例えば炭化水素)を流通させる方法(ii)等のように、接触後の組成物と接触後の気体とを容易に分離できる場合や、あるいは、液体中の含硫黄化合物を除去する場合であっても、接触後の組成物と接触後の液体とで相分離できるような場合等に、このような方法を採用することもできる。このようにすることで、液体又は気体中の含硫黄化合物の含有量を当初の量から低減させることができ、液体又は気体の品質を向上できる。
本発明の組成物を用いて液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去する際のさらに具体的な態様としては、以下のようなものを例示できる。すなわち、本発明の組成物を用いて水中の含硫黄化合物を除去する際においては、例えば下水処理場等で本発明の組成物を貯水槽に注入する等の手段を採用できる。
また、本発明の組成物を用いて炭化水素中の含硫黄化合物を除去する際においては、炭化水素が液体である場合には、その貯留タンク、輸送のためのパイプライン、精製のための蒸留塔等に注入する等の公知の手段で添加することができる。炭化水素が気体である場合には、上述の如く気体と接触させるように本発明の組成物を設置するか、又は本発明の組成物を充填した吸収塔に気体を通過させる等の手段を採ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例で用いた各種材料を以下に示す。
<アルデヒド>
・1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアール混合物(NL):特許第2857055号公報に記載の方法に準じ合成したもの(含有率:1,9−ノナンジアールが76.5質量%、2−メチル−1,8−オクタンジアールが13.5質量%、その他アルデヒドが10質量%)
・1−ブタナール(ブタナール):和光純薬工業株式会社製
<トリアジン>
・1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−2,2,4,4,6,6−ヘキサヒドロ−s−トリアジン(MEAトリアジン):国際公開第92/01481号に記載の方法に準じ合成したもの(純度:85質量%)
<酸>
・リン酸:和光純薬工業株式会社製
・リン酸(2−エチルヘキシル):東京化成工業株式会社製、モノエステル(30〜50質量%)及びジエステル(50〜70質量%)の混合物
・リン酸ドデシル:和光純薬工業株式会社製、モノエステルのみ
・リン酸オレイル:東京化成工業株式会社製、モノエステル(37〜50質量%)及びジエステル(50〜63質量%)の混合物
・リン酸エチル:東京化成工業株式会社製、モノエステル(35〜47質量%)及びジエステル(53〜65質量%)の混合物
・リン酸ジフェニル:東京化成工業株式会社製
・ホスホン酸:和光純薬工業株式会社製
・二リン酸:和光純薬工業株式会社製
・p−トルエンスルホン酸一水和物(トルエンスルホン酸):和光純薬工業株式会社製
・メタンスルホン酸:和光純薬工業株式会社製
・硫酸:和光純薬工業株式会社製
・シュウ酸ジエチル:東京化成工業株式会社製
・マレイン酸ジエチル:和光純薬工業株式会社製
・酢酸:和光純薬工業株式会社製
・サリチル酸メチル:和光純薬工業株式会社製
・サリチル酸:和光純薬工業株式会社製
・クエン酸一水和物(クエン酸):和光純薬工業株式会社製
・2−エチルヘキサン酸:和光純薬工業株式会社製
・オクタン酸:和光純薬工業株式会社製
・乳酸:和光純薬工業株式会社製
<炭化水素>
・ケロシン:和光純薬工業株式会社製
<含硫黄化合物>
・硫化水素含有窒素ガス:大陽日酸株式会社製、硫化水素1体積%と窒素99体積%の混合ガス
<その他>
・二酸化炭素ガス:大陽日酸株式会社製、純度>99.995体積%
・合成擬似海水:塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を10質量%、塩化カルシウム(和光純薬工業株式会社製)を10質量%含有する水溶液
(実施例1)
表1に示す含有比率となるようにNLとリン酸とを混合した組成物を作製し、該組成物を用いて、以下の方法により、含硫黄化合物の除去試験を行った。
<含硫黄化合物の除去試験>
磁気撹拌子、ガス吹込み管、ガス排出用コックを備えた100mLのガラス製三口フラスコにケロシンを30mL加え、ガス吹込み管から硫化水素含有窒素ガスを50mL/minの流量で流通させ、800rpmで磁気撹拌しながら三口フラスコ内の気体を置換した。1時間後に硫化水素含有窒素ガスの流通を止め、三口フラスコを密閉した後、三口フラスコ内の気相部の初期硫化水素濃度を測定した。
次に、含硫黄化合物除去剤として上記組成物1gを、上記ケロシン溶液に添加した後、該溶液を、室温で、800rpmにて磁気攪拌して、硫化水素の除去反応を行った。
反応2時間後の三口フラスコ内の気相部の硫化水素濃度を測定し、硫化水素除去率[(除去反応後の気相部の硫化水素濃度÷気相部の初期硫化水素濃度)]×100(%)]を算出した。結果を表1に示す。
なお、気相部の硫化水素濃度は、硫化水素用北川式ガス検知管(光明理化学工業株式会社製)とガス採取器AP−20(光明理化学工業株式会社製)、アナリティックバリアバッグ(近江オドエア−サービス株式会社製)を用いて以下の方法で測定した。
まず、上記三口フラスコ内の気相部からガス試料を4mL採取し、アナリティックバリアバッグ内で空気156mLと混合し、40倍に希釈した。このアナリティックバリアバッグと、硫化水素用北川式ガス検知管を備えたガス採取器AP−20とを接続し、AP−20により100mLの希釈試料を1分間で吸引し、ガス検知管に希釈試料を通じた。ガス検知管の変色から希釈試料の硫化水素濃度を読み取ったのち、その濃度を40倍することで三口フラスコ内気相部の硫化水素濃度を求めた。
(実施例2)
表1に示す含有比率となるようにNLとリン酸とを混合した組成物を作製し、該組成物を含硫黄化合物除去剤として用いると共に、含硫黄化合物の除去試験の反応時間を2時間から3時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、含硫黄化合物の除去試験を行った。結果を表1に示す。
(実施例3及び4)
表1に示す含有比率となるようにNLとリン酸とを混合した組成物を作製し、該組成物を含硫黄化合物除去剤として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、含硫黄化合物の除去試験を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
表1に示す含有比率となるようにブタナールとリン酸とを混合した組成物を作製し、該組成物を含硫黄化合物除去剤として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、含硫黄化合物の除去試験を行った。結果を表1に示す。
(実施例6〜16)
表1に示す含有比率となるようにNLと表1に示す酸とを混合した組成物を作製し、該組成物を含硫黄化合物除去剤として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、含硫黄化合物の除去試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
NLを単独で、含硫黄化合物除去剤として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、含硫黄化合物の除去試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
MEAトリアジンを単独で、含硫黄化合物除去剤として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、含硫黄化合物の除去試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
リン酸を単独で、含硫黄化合物除去剤として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、含硫黄化合物の除去試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例4〜10及び12)
表1に示す含有比率となるようにNLと表1に示す酸とを混合した組成物を作製し、該組成物を含硫黄化合物除去剤として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、含硫黄化合物の除去試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例11)
表1に示す含有比率となるようにNLとオクタン酸とを混合した組成物を作製し、該組成物を含硫黄化合物除去剤として用いると共に、含硫黄化合物の除去試験の反応時間を2時間から1時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、含硫黄化合物の除去試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 2021120136
表1に示されるように、含硫黄化合物除去剤として、飽和アルデヒドと、特定の酸を併用した組成物を用いた場合(実施例1〜16)には、飽和アルデヒド又は特定の酸をそれぞれ単独で用いる場合(比較例1及び3)、及び本発明で特定する特定の酸以外の酸を飽和アルデヒドと併用した場合(比較例4〜12)に比べて、液体及び気体中の硫化水素(含硫黄化合物)をより効率よく除去できることが確認された。
なお、含硫黄化合物除去剤として、比較例2のMEAトリアジンを単独で用いる場合は、液体及び気体中の硫化水素(含硫黄化合物)を効率よく除去できる。
しかし、以下の方法で行った炭酸カルシウム析出発生試験の結果、比較例2のMEAトリアジンを単独で、含硫黄化合物除去剤として用いた場合には、炭酸カルシウムの析出発生が起こり易いことが確認された。
以下、実施例1で作製した組成物及び比較例2のMEAトリアジンのそれぞれを、含硫黄化合物除去剤として用いた場合の炭酸カルシウム析出発生試験について説明する。
<炭酸カルシウム析出発生試験>
まず、合成擬似海水に対し、室温(20℃±5℃)下で二酸化炭素ガスを流通させ、二酸化炭素が飽和になるまで溶解させた。この二酸化炭素飽和合成擬似海水を、磁気撹拌子を備えたガラス製サンプル瓶に20g秤量した。
次に、サンプル瓶の二酸化炭素飽和合成擬似海水に、含硫黄化合物除去剤の1質量%水溶液を、炭酸カルシウムが析出するまで添加し、析出発生時点での滴下量を記録した。結果を表1に示す。炭酸カルシウムが析出するまでの滴下量が少ないほど、析出を発生させ易いことを示す。
上記試験の結果、含硫黄化合物除去剤が実施例1の組成物である場合は、二酸化炭素飽和合成擬似海水に対して、50g滴下しても炭酸カルシウムの析出は発生せず、無色透明溶液状態が保たれていた。このことから、本発明の組成物によれば、炭酸カルシウムの析出を抑制できることが確認された。
含硫黄化合物除去剤が比較例2のMEAトリアジンである場合は、二酸化炭素飽和合成擬似海水に対して、2.9g滴下時点で、二酸化炭素飽和合成擬似海水の溶液が白濁し、炭酸カルシウムの析出発生が起こり易いことが確認された。

Claims (10)

  1. 液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物であって、
    前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
    前記組成物が、飽和アルデヒドと、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される酸の少なくとも1つと、を含有する、組成物。
    Figure 2021120136

    (上記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。上記式(2)中、Rは水素原子又はリン酸基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。上記式(3)中、Rは水酸基又は炭素数1〜24の炭化水素基を表す。)
  2. 前記炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基又はアリール基である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記飽和アルデヒドと前記酸との含有量の比は、前記飽和アルデヒドをA(質量部)、前記酸をB(質量部)とした場合、A:B=0.1:99.9〜99.9:0.1である、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記飽和アルデヒドが、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、2−メチルブタナール、3−メチルブタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、1,6−ヘキサンジアール、1,9−ノナンジアール及び2−メチル−1,8−オクタンジアールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記飽和アルデヒドが、炭素数6以上の飽和アルデヒドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 前記液体及び気体のそれぞれが、炭化水素である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 前記液体及び気体のそれぞれが、天然ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、サワーガス、乾性ガス、湿性ガス、油田ガス、随伴ガス、テールガス、ジメチルエーテル、原油、ナフサ、重質芳香族ナフサ、ガソリン、ケロシン、ディーゼル油、軽油、潤滑油、重油、A重油、B重油、C重油、ジェット燃料油、FCCスラリー、アスファルト、コンデンセート、ビチューメン、超重質油、タール、ガス液化油(GTL)、石炭液化油(CTL)、アスファルテン、芳香族炭化水素、アルキレート、基油、ケロジェン、コークス、黒油、合成原油、改質ガソリン、異性化ガソリン、再生重油、残油、白油、ラフィネート、ワックス、バイオマス燃料、バイオマス液化油(BTL)、バイオガソリン、バイオエタノール、バイオETBE及びバイオディーゼルからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去する方法であって、
    前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物と、前記液体及び気体の少なくとも一方と、を接触させる、方法。
  9. 前記組成物と、前記含硫黄化合物とを、−30℃〜150℃の範囲で接触させる、請求項8に記載の方法。
  10. 液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、
    前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、使用。
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