JP2021107767A - 乳腺腫瘍の予後予測マーカー - Google Patents

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Abstract

【課題】腫瘍細胞自体の性質に基づいて、その腫瘍を有する患者の予後を予測できるバイオマーカーを提供する。【解決手段】被検者から採取された乳腺腫瘍細胞内のアディポフィリンを検出する工程を含む、乳腺腫瘍の予後予測マーカーの検出方法。腫瘍細胞の個数を100%とした時に、細胞内にアディポフィリンを有する腫瘍細胞が30%を超えて検出された場合に、被検者の予後が不良であると決定する工程をさらに含む、検出方法。予後が無再発生存率である、検出方法。アディポフィリンの検出が、腫瘍組織の免疫染色によって行われる、検出方法。【選択図】なし

Description

本明細書には、乳腺腫瘍の予後予測マーカーの検出方法、及び乳腺腫瘍の予後予測マーカーを検出するための検査試薬が開示される。
乳癌の予後マーカーとして、これまでNottingham予後指数、リンパ節状態、腫瘍サイズ、Ki−67標識指数(LI)等が使用されている(非特許文献1及び2)。また、ホルモン受容体陽性の乳癌患者の再発リスクは、Oncotype DX(商標)などの多重遺伝子アッセイによる予測が試みられている(非特許文献3から5)。
Rakha EA, et. Al. (2007) Prognostic markers in triple-negative breast cancer. Cancer. 1;109(1):25-32. Keam B, et al. (2011) Ki-67 can be used for further classification of triple negative breast cancer into two subtypes with different response and prognosis. Breast Cancer Res. 2;13(2):R22. doi: 10.1186/bcr2834. Dowsett M, et al. (2010) Prediction of risk of distant recurrence using the 21-gene recurrence score in node-negative and node-positive postmenopausal patients with breast cancer treated with anastrozole or tamoxifen:a TransATAC study. J Clin Oncol 10;28(11):1829-34. doi: 10.1200/JCO.2009.24.4798. Albain KS, et al. (2010) Breast Cancer Intergroup of North America. Prognostic and predictive value of the 21-gene recurrence score assay in postmenopausal women with node-positive, oestrogen-receptor-positive breast cancer on chemotherapy:a retrospective analysis of a randomised trial. Lancet Oncol 11(1):55-65. doi: 10.1016/S1470-2045(09)70314-6. Toi M, et al. (2010) Japan Breast Cancer Research Group-Translational Research Group. Clinical significance of the 21-gene signature(Oncotype DX)in hormone receptor-positive early stage primary breast cancer in the Japanese population. Cancer 1;116(13):3112-8. doi: 10.1002/cncr.25206. Cleator S, Heller W, Coombes RC (2007) Triple-negative breast cancer: therapeutic options. Lancet Oncol. 8:235-44. Dent R, et al. (2007) Triple-negative breast cancer: clinical features and patterns of recurrence. Clin Cancer Res. 1;13(15 Pt 1):4429-34.
乳腺腫瘍は、サブタイプにより予後が異なるため、乳腺腫瘍の初期治療では、患者が有するサブタイプに応じて国際的なコンセンサス(St.Gallenコンセンサス)にしたがって治療方法が選択されている。
エストロゲン及びプロゲステロン受容体を欠失し、かつヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の発現が欠失している腫瘍として定義付けられているトリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、乳癌中でも高悪性度の性質を有する腫瘍であり、予後が不良である(非特許文献6及び7)。このような腫瘍の予後予測には、現在上述の予後予測マーカーが用いられているが、上記予後予測マーカーは、腫瘍細胞自体の性質を反映するものではない。腫瘍細胞自体の悪性度は、腫瘍の大きさ等に関係なく、患者の予後を左右するが、現時点では、腫瘍細胞自体の悪性度に基づいて、予後を予測することはできない。本発明は、腫瘍細胞自体の性質に基づいて、その腫瘍を有する患者の予後を予測できる新たなバイオマーカーを提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、患者の乳腺腫瘍細胞内にアディポフィリンが検出された場合、患者の予後が不良となることを見出した。
本開示は、以下の態様を含む。
項1.被検者から採取された乳腺腫瘍細胞内のアディポフィリンを検出する工程を含む、乳腺腫瘍の予後予測マーカーの検出方法。
項2.腫瘍細胞の個数を100%とした時に、細胞内にアディポフィリンを有する腫瘍細胞が30%を超えて検出された場合に、前記被検者の予後が不良であると決定する工程をさらに含む、項1に記載の検出方法。
項3.予後が生存率である、項1又は2に記載の検出方法。
項4.アディポフィリンの検出が、腫瘍組織の免疫染色によって行われる、項1から3のいずれか一項に記載の検出方法。
項5.乳腺腫瘍が、トリプルネガティブ乳癌である、項1から4のいずれか一項に記載の検出方法。
項6.乳腺腫瘍の細胞内に存在するアディポフィリンを、前記乳腺腫瘍を有する被検者の予後を予測するためのバイオマーカーとして使用する方法。
項7.被検者から採取された乳腺腫瘍細胞内に存在するアディポフィリンを、前記被検者の予後を予測するバイオマーカーとして検出するための検査試薬であって、前記検査試薬は、アディポフィリンを検出するための抗体、又は核酸を含む、検査試薬。
項8.アディポフィリンからなる、乳腺腫瘍の予後予測マーカー。
項9.処理部を備える、乳腺腫瘍の予後予測装置であって、前記処理部は、被検者から採取された乳腺腫瘍細胞内のアディポフィリンの測定値を取得し、取得した測定値を、基準値と比較し、取得した測定値が、前記基準値よりも高い場合に、前記被検者の予後が不良であることを示すラベルを出力する、及び/又は取得した測定値が、前記基準値よりも低い場合に、前記被検者の予後が良好であることを示すラベルを出力する、予後予測装置。
乳腺腫瘍内のアディポフィリンを検出することにより、乳腺腫瘍を有する患者の予後を予測することができる。
乳腺腫瘍の予後予測システム1000の概観図の一例を示す。 乳腺腫瘍の予後予測装置10のブロック図の一例を示す。 乳腺腫瘍の予後予測装置10の動作の一例を示す。 乳腺癌組織のアディポフィリンの免疫染色陽性例の染色像を示す。 アディポフィリンの発現が陽性の患者群とアディポフィリンの発現が陰性の患者群のKaplan-Meierプロットを示す。 アディポフィリン陽性−高Ki-67 LI患者群、アディポフィリン陰性−高Ki-67 LI患者群、アディポフィリン陰性−低Ki-67 LI患者群のKaplan-Meierプロットを示す。 アジュバント化学療法を行っていない患者群内でのアディポフィリンの発現が陽性の患者群とアディポフィリンの発現が陰性の患者群のKaplan-Meierプロットを示す。 図8Aはカットオフが5%の例であり、図8Bはカットオフが10%の例ある。 図9Aはカットオフが30%の例であり、図9Bはカットオフが50%の例である。 大腸癌患者のKaplan-Meierプロットを示す。
1.用語の説明
アディポフィリンは、細胞質内の脂肪滴表面に存在する脂肪滴関連タンパク質である。アディポフィリンは、ペリリピン2とも呼ばれ、National Center for Biotechnology InformationにGene ID:123で登録されている遺伝子から発現されるものが代表的である。アディポフィリンからなるバイオマーカーには、前記遺伝子から発現されるタンパク質、又はmRNAが含まれる。また、バイオマーカーには、前記遺伝子から発現されるタンパク質、又はmRNAの他、そのバリアントも含む。
乳腺腫瘍は、乳腺に存在する細胞に由来する腫瘍である限り制限されない。乳腺腫瘍には悪性腫瘍及び良性腫瘍が含まれ得るが、組織診断等により悪性であるか良性であるか決定されていない腫瘍であってもよい。乳腺腫瘍は、好ましくは悪性腫瘍である。悪性に分類される乳腺腫瘍には、HER2陽性腫瘍とHER2陰性腫瘍が存在しうる。また、悪性に分類される乳腺腫瘍には、エストロゲン又はプロゲステロン等の女性ホルモンの受容体(以下、単に「ホルモン受容体」という)が溶性である腫瘍と陰性である腫瘍が存在しうる。すなわち、ホルモン受容体陽性/HER2陽性腫瘍、ホルモン受容体陽性/HER2陰性腫瘍、ホルモン受容体陰性/HER2陽性腫瘍、及びホルモン受容体陰性/HER2陰性腫瘍が存在しうる。ホルモン受容体陽性/HER2陽性腫瘍には、ルミナルA様、ルミナルB様の2つのタイプの腫瘍が含まれる。ホルモン受容体陰性/HER2陰性腫瘍は、いわゆるトリプルネガティブ乳癌と呼ばれる。また、乳腺腫瘍は、乳腺に存在していてもよいが、リンパ節、門脈、動脈、骨、十二指腸、胆管、肝臓、腹膜、肺等に存在していてもよい。また、乳腺腫瘍は、初発であっても再発であってもよい。好ましくは、乳腺腫瘍は初発である。
被検者は、乳腺腫瘍を有する者である限り制限されない。
本開示において、「予後」は、被検者の帰趨を意図する。被検者の帰趨は、その被検者が有する乳腺腫瘍の影響による帰趨である。予後は、好ましくは無再発生存率である。予後が良好であるとは、例えば、手術から12ヶ月後の無再発生存率が90%以上、好ましくは手術から30ヶ月後の無再発生存率が90%以上、より好ましくは手術から36ヶ月後の無再発生存率が90%以上を意図する。予後が不良であるとは、例えば、手術から36ヶ月後の無再発生存率が80%未満、好ましくは手術から30ヶ月後の無再発生存率が80%未満、より好ましくは手術から12ヶ月後の無再発生存率が80%未満を意図する。
2.乳腺腫瘍の予後予測マーカー及びその検出方法
本開示のある態様は、乳腺腫瘍の予後予測マーカー及びその検出方法に関する。前記検出方法は、乳腺腫瘍細胞内のアディポフィリンを検出することを含む。すなわち、乳腺腫瘍の腫瘍細胞内のアディポフィリンは、前記乳腺腫瘍を有する被検者の予後を予測するためのバイオマーカーとして使用することができる。
乳腺腫瘍内のアディポフィリンの検出は、被検者から採取された乳腺腫瘍細胞又は乳腺腫瘍組織を用いて行う限り制限されない。乳腺腫瘍細胞又は乳腺腫瘍組織は、例えば、原発巣又は転移巣からの手術による切除又は生検、超音波検査下における切除又は生検、胸水又は腹水からの分離等により採取することができる。腫瘍組織であるか、正常組織であるかの判定は、肉眼的所見、顕微鏡観察等で行うことができる。細胞増殖能を指標として腫瘍組織であるか否かを判定する場合には、例えば検査対象組織のBrdUやKi−67タンパク質のラベリングインデックス(「Ki−67LI」ともいう)が正常組織と比較して高い場合に、前記検査対象組織が腫瘍組織である可能性が高いと判定することができる。腫瘍マーカーを指標とする場合には、腫瘍マーカーの発現が陽性である組織を腫瘍組織である可能性が高いと判定することができる。
被検者から採取された乳腺腫瘍細胞又は乳腺腫瘍組織は、アディポフィリンの検出方法に応じて前処理される。
乳腺腫瘍内のアディポフィリンは、タンパク質として、又はmRNAとして検出することができる。
アディポフィリンをタンパク質として検出する方法は、免疫染色、ウエスタンブロッティング等の公知の方法を挙げることができる。また、アディポフィリンをmRNAとして検出する方法は、in situ ハイブリダイゼーション、RT−PCR(定量的RT−PCRを含む)、マイクロアレイ、RNA−Seq等の公知の方法を挙げることができる。
乳腺腫瘍組織を使って、免疫染色又はin situ ハイブリダイゼーションを行う場合には、前処理として、乳腺腫瘍組織をホルマリン、及びパラホルムアルデヒド等の公知の固定液で固定してから、パラフィン包埋ブロックを作製する。あるいは、乳腺腫瘍組織を固定してから、若しくは固定せずに、OCTコンパウンド(登録商標)等の凍結ブロック作製用の樹脂に包埋し、凍結ブロックを作製する。次に、作製したパラフィン包埋ブロック、又は凍結ブロックを薄切して組織切片を作製し、免疫染色又はin situ ハイブリダイゼーションに供する。ここで、ブロックに包埋されている乳腺腫瘍組織は、腫瘍部のみであってもよいが例えば正常部位等を含んでいてもよい。
乳腺腫瘍細胞を使って、免疫染色又はin situ ハイブリダイゼーションを行う場合には、前処理として、細胞をスライドグラスに塗抹又は収集し、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、及びエタノール等で固定する。
アディポフィリンをタンパク質としてウエスタンブロッティング等で検出する場合には、前処理として、乳腺腫瘍細胞又は乳腺腫瘍組織を所定の溶解バッファーで溶解する。溶解バッファーで溶解されたサンプルを検査サンプルとする。
アディポフィリンをmRNAとしてRT−PCR、マイクロアレイ、RNA−Seq等で検出する場合には、前処理として、乳腺腫瘍細胞又は乳腺腫瘍組織からtotal RNA又はmRNAを抽出する。また、必要に応じて、抽出したtotal RNA又はmRNAを鋳型として逆転写を行い、相補的DNA(cDNA)を合成してもよい。total RNA若しくはmRNA、又はcDNAを検査サンプルとする。
免疫染色又はウエスタンブロッティングによってアディポフィリンを検出するための一次抗体は、アディポフィリンを検出できる限り制限されない。例えば、ヒトアディポフィリンのN末端側のペプチドを抗原として調製した抗体、特にヒトアディポフィリンの5番目から27番目のペプチドを抗原として調製した抗体を一次抗体として使用することが好ましい。一次抗体としてより具体的には、anti−adipophilin mouse monoclonal primary antibody(AP125,Progen Biotechnik)等を挙げることができる。アディポフィリンと結合した一次抗体は、一次抗体と結合する酵素標識二次抗体と、前記酵素と基質の反応により検出することができる。免疫染色を行う場合には、脱パラフィン及び浸水処理を行った後に、組織切片をトリプシン等のタンパク分解酵素で処理してから、免疫染色を行ってもよい。
in situ ハイブリダイゼーションに使用するプローブの作製方法は公知である。また、市販のプローブを使用してもよい。
RT−PCRに使用するプライマー(定量的RT−PCRの場合にはプローブを含んでいても良い)は市販されているものを使用することができる。また、マイクロアレイも市販されているものを使用することができる。
RNA−Seqは、次世代シーケンサー(例えば、イルミナ社製)等を使用して、アディポフィリンmRNAのリード数を得ることができる。
免疫染色又はin situ ハイブリダイゼーションによってアディポフィリンを検出する場合、免疫染色又はin situ ハイブリダイゼーションが施された組織標本を顕微鏡、又はスライドスキャナ等を使ってヒトが観察することにより、アディポフィリンの有無を検出することができる。組織標本内の腫瘍細胞内に免疫染色又はin situ ハイブリダイゼーションのシグナルが確認された場合に、アディポフィリンが検出されたと判定(決定)することができる。例えば、顕微鏡、又はスライドスキャナの所定の区画に存在している腫瘍細胞の個数を100%とした時に、細胞内にアディポフィリンを有する腫瘍細胞が30%を超える、好ましくは50%以上存在している場合に「アディポフィリンが検出された」又は、「アディポフィリンの発現が陽性である」と決定してもよい。
ウエスタンブロッティング、RT−PCR、RNA−Seqによって、アディポフィリンを検出する場合、腫瘍細胞又は腫瘍組織から抽出されたサンプルにおいてアディポフィリンが検出された場合に、「アディポフィリンが検出された」又は、「アディポフィリンの発現が陽性である」と決定してもよい。あるいは、腫瘍細胞又は腫瘍組織に由来する検査サンプルと正常細胞又は正常組織に由来するアディポフィリンのタンパク質量、又はアディポフィリンのmRNA量を比較して、腫瘍細胞又は腫瘍組織に由来する検査サンプルにおけるアディポフィリンのタンパク質量、又はアディポフィリンのmRNA量が正常細胞又は正常組織由来するアディポフィリンのタンパク質量、又はアディポフィリンのmRNA量よりも高値を示す場合に、「アディポフィリンが検出された」、又は「アディポフィリンの発現が陽性である」と決定してもよい。また、腫瘍細胞又は腫瘍組織に由来する検査サンプルにおけるアディポフィリンのタンパク質量、又はアディポフィリンのmRNA量が正常細胞又は正常組織由来するアディポフィリンのタンパク質量、又はアディポフィリンのmRNA量と同程度である場合に、「アディポフィリンが検出されていない」、又は「アディポフィリンの発現が陰性である」と決定してもよい。ここで、「高値を示す」とは、1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは5倍以上高い値を示す場合を例示できる。「同程度」とは、0.8倍から1.1倍程度を例示できる。また、アディポフィリンのタンパク質量、又はアディポフィリンのmRNA量を比較する前に、各検査サンプル中のタンパク質量、又はRNA量を、GAPDH、β−ミクログロブリン、β−アクチン等のハウスキーピング遺伝子由来のタンパク質量又はmRNA量で正規化してもよい。タンパク質量は質量、又は濃度で表されても良いが、基質の発光強度等で表されてもよい。mRNA量は、mRNAのコピー数又はリード数であってもよいが、蛍光強度等で表されてもよい。
別の態様として、アディポフィリンタンパク質量又はRNA量の基準値をあらかじめ決定しておき、腫瘍細胞又は腫瘍組織に由来する検査サンプル中のアディポフィリンタンパク質量又はRNA量が基準値よりも高い場合に、「アディポフィリンが検出された」、又は「アディポフィリンの発現が陽性である」と決定してもよい。また、腫瘍細胞又は腫瘍組織に由来する検査サンプル中のアディポフィリンタンパク質量又はRNA量が基準値よりも低い場合に、「アディポフィリンが検出されない」又は、「アディポフィリンの発現が陰性である」と決定してもよい。基準値は、アディポフィリンのタンパク質量、又はアディポフィリンのmRNA量が検出されているか、又は発現が陽性であるかを判別できる値である限り制限されず、公知の方法により決定することができる。アディポフィリンのタンパク質量、又はアディポフィリンのmRNA量が検出されているか、又は発現が陽性であるかを判別できる値は、ROC(receiver operating characteristic curve)曲線、判別分析法、モード法、Kittler法、3σ法、p‐tile法等により決定することもできる。また、基準値として、感度、特異度、陰性的中率、陽性的中率、第一四分位数等を例示できる。
予後予測マーカーの検出方法は、さらにアディポフィリンが検出された場合に、前記被検者の予後が不良であると決定する工程を含んでいてもよい。あるいは、アディポフィリンが検出されなかった場合に、前記被検者の予後が良好であると決定する工程を含んでいてもよい。また、予後予測マーカーの検出方法は、乳腺腫瘍細胞内にアディポフィリンが検出されたか否かに応じて、必要な治療方法を決定する工程を含んでいてもよい。例えば、アディポフィリンが検出された場合には、アジュバント化学療法の適用を行うことを決定してもよい。
3.検査試薬
本開示の別の態様は、被検者から採取された乳腺腫瘍細胞内に存在するアディポフィリンを、前記被検者の予後を予測するためのバイオマーカーとして検出するため検査試薬に関する。
検査試薬は、アディポフィリンタンパク質検出用試薬及び/又はアディポフィリンmRNA検出用試薬を含み得る。
アディポフィリンタンパク質検出用試薬は、少なくともアディポフィリンタンパク質の一部に結合可能な一種又は複数の抗体(例えば、一次抗体)を含む。「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、及びそれらの断片(例えば、Fab、F(ab’)、F(ab)等)のいずれも用いることができる。免疫グロブリンのクラス及びサブクラスは特に制限されない。また、前記抗体は、抗体ライブラリからスクリーニングされたものであってもよく、キメラ抗体、scFv等であってもよい。
また、抗体は必ずしも精製されている必要はなく、抗体を含む抗血清、腹水、これらから画分された免疫グロブリン画分等であってもよい。
検査試薬に含まれる抗体は、乾燥状態であってもよく、リン酸緩衝生理食塩水等のバッファーに溶解されていてもよい。さらに、検査試薬は、β−メルカプトエタノール、DTT等の安定化剤;アルブミン等の保護剤;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等の界面活性剤、アジ化ナトリウム等の防腐剤等の少なくとも一つを含んでいてもよい。
アディポフィリンと結合する抗体は、酵素や蛍光色素で標識されていてもよい。アディポフィリンと結合する抗体はマイクロプレート、磁性ビーズ等に固定されていてもよい。
アディポフィリンタンパク質検出用試薬は、検査試薬と試薬の使用方法を記載した又は試薬の使用方法を記載するウェブページのURLが記載された添付文書を含む検査キットとして提供されてもよい。また、アディポフィリンと結合する抗体が未標識の一次抗体である場合には、検査キットに酵素又は蛍光色素で標識された二次抗体が含まれていてもよい。さらに、検査キットには前記酵素と反応する基質が含まれていてもよい。
アディポフィリンmRNA検出用試薬は、アディポフィリンmRNA又はアディポフィリンcDNAの全体又は一部とハイブリダイズする核酸を含む。核酸は、プライマー、及び/又はプローブとしての機能を有する検出用の核酸(DNA又はRNA)であることが好ましい。検出用核酸の長さは、特に制限されない。
検出用核酸が、PCR反応に使用されるプライマーであれば、アディポフィリンmRNA又はアディポフィリンcDNAとハイブリダイズする配列が、好ましくは50 mer以下であり、より好ましくは30 mer以下であり、さらに好ましくは、15〜25 mer程度である。プライマーには、アディポフィリンmRNA又はアディポフィリンcDNAとハイブリダイズしない配列が含まれていてもよい。また、プライマーは、蛍光色素等で標識されていてもよい。
また、RT−PCRには、プライマーの他にPCR産物のリアルタイムの定量のために使用される、PCR反応中に分解される定量用プローブを使用することもできる。定量用プローブもアディポフィリンmRNA又はアディポフィリンcDNAとハイブリダイズする限り、制限されない。定量用プローブは、アディポフィリンmRNA又はアディポフィリンcDNAとハイブリダイズする配列を含む、5〜20 mer程度の核酸であることが好ましい。さらに定量用プローブの一端には、蛍光色素が標識され、定量用プローブのもう一端には、当該蛍光色素のクエンチャーが標識されていることが好ましい。
検出用核酸が、マイクロアレイ等においてキャプチャープローブとして使用されるものであれば、アディポフィリンmRNA又はアディポフィリンcDNAとハイブリダイズする配列が、好ましくは100 mer程度であり、より好ましくは60 mer程度であり、さらに好ましくは、20〜30 mer程度である。キャプチャープローブには、アディポフィリンmRNA又はアディポフィリンcDNAとハイブリダイズしない配列が含まれていてもよい。さらにキャプチャープローブは、チップに固定化されていることが好ましい。
検出用核酸が、in situハイブリダイゼーション用のプローブである場合、検出用核酸は、アディポフィリンmRNAとハイブリダイズする配列が、15〜100 mer程度のオリゴヌクレオチドであってもよく、100 merを超えるポリヌクレオチドであってもよい。ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよい。in situハイブリダイゼーション用のプローブには、ジゴキシゲニン、蛍光色素等の標識物質が結合されうる。プローブには、アディポフィリンmRNAとハイブリダイズしない配列が含まれていてもよい。
アディポフィリンmRNA検出用試薬は、検査試薬と試薬の使用方法を記載した又は試薬の使用方法を記載するウェブページのURLが記載された添付文書を含む検査キットとして提供されてもよい。また、RT−PCRによりアディポフィリンmRNA又はアディポフィリンcDNAを検出する場合には、検査キットに核酸増幅試薬(耐熱性DNAポリメラーゼ、バッファー、dNTP等を含む)、逆転写酵素等を含んでいてもよい。核酸増幅試薬には、必要に応じてSYBER GREEN(登録商標)等の色素が含まれていてもよい。マイクロアレイによりアディポフィリンmRNA又はアディポフィリンcDNAを検出する場合には、検査キットにハイブリダイゼーション用バッファー、洗浄用バッファー等が含まれていてもよい。in situハイブリダイゼーションによりアディポフィリンmRNAを検出する場合には、検査キットに、プロティナーゼK等のタンパク質分解酵素、ハイブリダイゼーション用バッファー、洗浄用バッファー等が含まれていてもよい。
4.乳腺腫瘍の予後予測装置
4−1.乳腺腫瘍の予後予測装置の構成
本開示の一実施形態は乳腺腫瘍の予後予測システム1000及び乳腺腫瘍の予後予測装置10に関する。
図1は、乳腺腫瘍の予後予測システム1000の概観図であり、乳腺腫瘍の予後予測システム1000は一態様として、乳腺腫瘍の予後予測装置10の他、分析装置5a又は分析装置5bとを備えていてもよい。
図2に、乳腺腫瘍の予後予測装置10のハードウェアを示す。乳腺腫瘍の予後予測装置10は、入力部111と、出力部112と、記憶媒体113とに接続されていてもよい。
乳腺腫瘍の予後予測装置10において、処理部101と、主記憶部102と、ROM(read only memory)103と、補助記憶部104と、通信インタフェース(I/F)105と、入力インタフェース(I/F)106と、出力インタフェース(I/F)107と、メディアインターフェース(I/F)108は、バス109によって互いにデータ通信可能に接続されている。主記憶部102と補助記憶部104とを合わせて、単に記憶部と呼ぶこともある。記憶部は、前記測定値や基準値を揮発性に、又は不揮発性に記憶する。
処理部101は、乳腺腫瘍の予後予測装置10のCPUである。処理部101は、GPUであってもよい。処理部101が、補助記憶部104又はROM103に記憶されているコンピュータプログラムを実行し、取得されるデータの処理を行うことにより、乳腺腫瘍の予後予測装置10が機能する。
ROM103は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成され、処理部101により実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータが記録されている。処理部101はMPU101としてもよい。ROM103は、乳腺腫瘍の予後予測装置10の起動時に、処理部101によって実行されるブートプログラムや乳腺腫瘍の予後予測装置10のハードウェアの動作に関連するプログラムや設定を記憶する。
主記憶部102は、SRAM又はDRAMなどのRAM(Random access memory)によって構成される。主記憶部102は、ROM103及び補助記憶部104に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、主記憶部102は、処理部101がこれらのコンピュータプログラムを実行するときの作業領域として利用される。
補助記憶部104は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等によって構成される。補助記憶部104には、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムなどの、処理部101に実行させるための種々のコンピュータプログラム及びコンピュータプログラムの実行に用いる各種設定データが記憶されている。具体的には、基準値等を不揮発性に記憶する。
通信I/F105は、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェース、ネットワークインタフェースコントローラ(Network interface controller:NIC)等から構成される。通信I/F105は、処理部101の制御下で、分析装置5a,5b又は他の外部機器からのデータを受信し、必要に応じて乳腺腫瘍の予後予測装置10が保存又は生成する情報を、分析装置5a,5b又は外部に送信又は表示する。通信I/F105は、ネットワークを介して分析装置5a,5b又は他の外部機器と通信を行ってもよい。
入力I/F106は、例えばUSB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成される。入力I/F106は、入力部111から文字入力、クリック、音声入力等を受け付ける。受け付けた入力内容は、主記憶部102又は補助記憶部104に記憶される。
入力部111は、タッチパネル、キーボード、マウス、ペンタブレット、マイク等から構成され、乳腺腫瘍の予後予測装置10に文字入力又は音声入力を行う。入力部111は、乳腺腫瘍の予後予測装置10の外部から接続されても、乳腺腫瘍の予後予測装置10と一体となっていてもよい。
出力I/F107は、例えば入力I/F106と同様のインタフェースから構成される。出力I/F107は、処理部101が生成した情報を出力部112に出力する。出力I/F107は、処理部101が生成し、補助記憶部104に記憶した情報を、出力部112に出力する。
出力部112は、例えばディスプレイ、プリンター等で構成され、分析装置5a,5bから送信される測定結果及び乳腺腫瘍の予後予測装置10における各種操作ウインドウ、分析結果等を表示する。
メディアI/F108は、記憶媒体113に記憶された例えばアプリケーションソフト等を読み出す。読み出されたアプリケーションソフト等は、主記憶部102又は補助記憶部104に記憶される。また、メディアI/F108は、処理部101が生成した情報を記憶媒体113に書き込む。メディアI/F108は、処理部101が生成し、補助記憶部104に記憶した情報を、記憶媒体113に書き込む。
記憶媒体113は、フレキシブルディスク、CD−ROM、又はDVD−ROM等で構成される。記憶媒体113は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によってメディアI/F108と接続される。記憶媒体113には、コンピュータがオペレーションを実行するためのアプリケーションプログラム等が格納されていてもよい。
処理部101は、乳腺腫瘍の予後予測装置10の制御に必要なアプリケーションソフトや各種設定をROM103又は補助記憶部104からの読み出しに代えて、ネットワークを介して取得してもよい。前記アプリケーションプログラムがネットワーク上のサーバコンピュータの補助記憶部内に格納されており、このサーバコンピュータに乳腺腫瘍の予後予測装置10がアクセスして、コンピュータプログラムをダウンロードし、これをROM103又は補助記憶部104に記憶することも可能である。
また、ROM103又は補助記憶部104には、例えば米国マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーションシステムがインストールされている。第2の実施形態に係るアプリケーションプログラムは、前記オペレーティングシステム上で動作するものとする。すなわち、乳腺腫瘍の予後予測装置10は、パーソナルコンピュータ等であり得る。
乳腺腫瘍の予後予測システム1000は一カ所に設置されている必要はなく、乳腺腫瘍の予後予測装置10と分析装置5a,5bが別所に配置され、これらがネットワークで接続されていてもよい。また、乳腺腫瘍の予後予測装置10は、入力部111や出力部112を省略した操作者を必要としない装置であってもよい。
分析装置5aは、タンパク質の量又は濃度を測定するための装置であり、試料置き場51と、反応部52と、検出部53とを備える。試料置き場51にセットされた細胞溶解液は、反応部52に設置された抗原捕捉用抗体が固相されたマイクロプレートに分注されインキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出抗体がマイクロプレートに分注され、インキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出用抗体を検出するための基質がマイクロプレートに分注され、マイクロプレートが検出部53に移動され、基質が反応して発生したシグナルが測定される。
また、分析装置5aの別態様は、マイクロアレイ解析によるmRNAの発現量を測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロアレイチップ上に分注し、ハイブリダイゼーションを行い、洗浄した後、検出部53に移動させシグナルを検出する。
さらに、分析装置5aの別態様は、RT−PCRによるmRNAの発現量を測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロチューブ内に分注し、続いて定量的PCR用試薬をマイクロチューブ内に分注する。反応部52でPCR反応を行いながら、検出部53でチューブ内のシグナルを検出する。
分析装置5bは、RNA−Seq法によってmRNAの発現量を測定するための装置であり、配列解析部54を備える。RNA−Seq用の反応を行ったサンプルを配列解析部54にセットし、配列解析部54内で、塩基配列の解析をおこなう。
分析装置5bは、ウエスタンブロッティングによりタンパク質量を測定するための全自動ウエスタンブロッティング装置であり、化学発光シグナル検出部54を備える。溶解バッファーで溶解された乳腺腫瘍細胞又は乳腺腫瘍組織のサンプルを自動ウエスタンブロッティング装置の所定の位置にセットし、SDS−PAGE、メンブレンへのブロッティング、抗体反応、化学発光を行い、化学発光シグナル検出部54にて解析をおこないシグナル強度を定量化する。
分析装置5a、及び5bは、有線又は無線によって乳腺腫瘍の予後予測装置10に接続されている。分析装置5aは、タンパク質の測定値、又はmRNAの測定値をA/D変換して、デジタルデータとして乳腺腫瘍の予後予測装置10に送信する。同様に、分析装置5bは、mRNAの測定値をA/D変換して、デジタルデータとして乳腺腫瘍の予後予測装置10に送信する。これにより、乳腺腫瘍の予後予測装置10は、タンパク質の測定値、又はmRNAの測定値を、演算処理可能なデジタルデータとして取得することができる。
4−2.乳腺腫瘍の予後予測装置の動作
図3に乳腺腫瘍の予後予測装置10の動作のフローチャートの一例を示す。
乳腺腫瘍の予後予測装置10の処理部101は、オペレータが入力部111から処理開始の入力を行うことにより、被検者の乳腺腫瘍の予後を予測するための処理を開始する。ステップS11において、処理部101は、分析装置5a又は分析装置5bから被検者から採取された乳腺腫瘍細胞内のアディポフィリンのタンパク質量、又はアディポフィリンのmRNA量若しくはこれらを反映する値をアディポフィリンの測定値として取得する。あるいは、オペレータが免疫染色又はin situハイブリダイゼーションによるアディポフィリンの発現が陽性であるか陰性であるか(あるいは、アディポフィリンが検出されたか否か)を入力部111から入力し、処理部101がこの入力をアディポフィリンの測定値として取得してもよい。
次に処理部101は、ステップS12において、記憶部に記憶されているアディポフィリンの基準値と、ステップS11で取得した測定値とを比較する。
処理部101は、ステップS13において、取得した測定値が、前記基準値よりも高い場合には、ステップS14(YES)に進み、前記被検者の予後が不良であると決定し、決定結果を示すラベルを出力部112に出力する(ステップS16)。また、ステップS13において、取得した測定値が基準値よりも低い場合に、ステップS15(NO)に進み、前記被検者の予後が良好であると決定し、決定結果を示すラベルを出力部112に出力する(ステップS16)。予後が不良であると決定した場合には、ラベルには、「予後不良」、又は「予後不良を示唆する」ことを示す情報が含まれる。予後が良好であると決定した場合には、ラベルには、「予後良好」、又は「予後良好を示唆する」ことを示す情報が含まれる。前記情報は、×、〇、感嘆符等のマークであってもよい。
基準値、比較方法、測定値が基準値よりも高いか低いかの判定方法等の詳細は、上記2.の説明をここに援用する。
4−3.予後予測プログラム
本実施形態は、ステップS11〜S16の処理をコンピュータに実行させる、乳腺腫瘍の予後を予測するためのコンピュータプログラムを含む。
さらに、本実施形態のある実施形態は、前記コンピュータプログラムを記憶した、記憶媒体等のプログラム製品に関する。すなわち、前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記憶媒体に格納され得る。記憶媒体へのプログラムの記録形式は、訓練装置200Aがプログラムを読み取り可能である限り制限されない。前記記憶媒体への記録は、不揮発性であることが好ましい。
5.乳癌の治療方法
本開示において、腫瘍組織におけるアディポフィリンの発現が陽性であるか陰性であるかに応じて治療方法を決定することができる。例えば、術前の生検検査等において、アディポフィリンの発現が陽性である場合には、化学療法及び/又は放射線療法を行うか、腫瘍摘出手術を行う前に化学療法及び/又は放射線療法を行うことが好ましい。前記化学療法及び/又は放射線療法は、腫瘍が手術により切除可能であると判断された場合であっても行うことが好ましい。化学療法において、抗がん剤は、シクロホスファミド、メトトレキサート及びフルオロウラシルの併用;アンスラサイクリン系抗がん剤(例えば、エピルビシン)、シクロホスファミド及びフルオロウラシルの併用;アンスラサイクリン系薬抗がん剤アンスラサイクリン系抗がん剤(例えば、エピルビシン)とタキサン系薬剤(例えば、パクリタキセル、又はドセタキセル)の併用による化学療法等を行ってもよい。
また、術前の生検検査等において、アディポフィリンの発現が陰性である場合には、ホルモン療法及び/又は抗HER2抗体(例えばトラスツズマブ)療法を行ってもよい。
以下に実施例を示して本開示についてより詳細に説明するが、本開示は実施例に限定して解釈されるものではない。
今回の検討は、ヘルシンキ宣言に基づいて学校法人関西医科大学の倫理委員会の承認を得て行った。
I.実施例1
1.患者の選択
2006年1月から2018年12月までに関西医科大学附属病院においてトリプルネガティブ乳癌(TNBC)の切除手術を受け、継続して受診している165名をピックアップした。ピックアップした患者の中からネオアジュバント化学療法を受けた患者、又は特殊なタイプの浸潤癌を患った患者は検討対象から除外した。
最終的に、61名の患者について検討を行った。
2.組織学的検討
外科的に切除された組織サンプルをホルマリン固定し、組織標本を作製した。組織標本は、固定した組織サンプルをすべてパラフィン包埋し、薄切切片を作製し、ヘマトキシリン−エオジン染色を施し作製した。TNBCのすべての病理組織学的診断は、2人以上の経験豊富な病理診断医によって独立して行った。病理組織学的診断は、AJCC/UICC TNM分類およびステージグルーピングを使用した。病理組織学的グレーディングは、Nottinghamの組織学的グレーディングにより行った。Ki-67 LIは、TNBC患者のメタ解析の結果にしたがいLI 40%以上を高値と判定した。
3.組織マイクロアレイ
それぞれの患者の組織について、ヘマトキシリン−エオジン染色を施した組織標本内で最も形態学的に癌の特徴を呈している部分を選び、パラフィン包埋ブロックから2つの組織塊(直径2 mm)をパンチで採取した。パンチした組織塊をさらにパラフィンブロック内に並べて包埋し、薄切して組織切片を作製した。
4.免疫染色
免疫染色は、自動染色装置(Discovery, Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)を使用し、装置添付のプロトコールにしたがって行った。アディポフィリンを染色するための一次抗体として、anti-adipophilin mouse monoclonal primary antibody (AP125, Progen Biotechnik, Heidelberg, Germany)を使用した。二次抗体は、ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体を使用し、発色にはジアミノベンチジン(DAB)を使用した。免疫染色の結果は少なくとも2人の判定者によって独立して評価した。アディポフィリンの発現は、細胞内に顆粒状及び/又は球状の発現が認められる腫瘍細胞が、腫瘍組織全体の30%を超える場合に「陽性」と判定した。また、同一患者において2つ採取した細胞塊の1つ以上が陽性となった場合に、その患者の腫瘍がアディポフィリン発現陽性であると判定した。
5.統計解析
全ての統計解析に、SPSS Statistics 25.0 software (IBM, Armonk, NY, USA)を使用した。2群間の相関は、カテゴリー変数についてはフィッシャーの正確確率検定を使用し、連続変数についてはMann-Whitney U検定を使用して解析した。無再発生存率 (RFS)は、Kaplan-Meier解析により評価した。生存曲線の2群間の比較は、ログランク検定により比較した。臨床病理学的因子と生存率との関係は、コックス比例ハザードモデルを使用し評価した。解析においてp値<0.05に場合に有意差有りと判定した。
6.結果
6−1.臨床病理学的因子
表1に、検討対象患者61名の臨床病理学的因子を示す。患者は全て女性である。最初にTNBCと診断された時の患者の年齢は、31歳から91歳であり、中央値は58歳であった。全ての患者は、生検でTNBCと診断された。全ては浸潤癌であり、特有のタイプはなかった。腫瘍径の中央値は20 mmで範囲は2 mm から55 mmであった。病理学的ステージは、I:25 名、IIA:23名: IIB:5 名、IIIA:4 名、 IIIB:3名、 IIIC:1 名であった。Nottinghamの病理組織学的グレードは、グレードIが2名、グレードIIが27名、グレードIIIが32名であった。Ki-67 LIは37名が「高」であり、21名が「低」に分類された。残る3名については、Ki-67 LIは不明である。アジュバント化学療法を適用されたのは、38名であった。フォローアップ期間は、9ヶ月から36ヶ月であった。61名のうち8名(14.8%)は、再発を経験し、5名(8.2%)は、TNBCが原因で死亡した。
Figure 2021107767
6−2.アディポフィリンの発現と臨床病理学的因子の相関
アディポフィリンの発現と臨床病理学的因子の関係を表2に示す。
アディポフィリンの発現が「陽性」に分類されたのは、14名(23.0%)であった。免疫染色でアディポフィリンが陽性となった例を図4に示す。アディポフィリンの発現が「陰性」に分類されたのは、残る47名(77%)であった。アディポフィリンの発現は、年齢 (p=0.850)、閉経状態 (p=1.000)、body mass index (p=0.674)、アジュバント化学療法の有無 (p=0.749)とは無関係であった。Ki-67 LIは、アディポフィリンの発現と良く相関していた (p=0.011)。一方、アディポフィリンの発現は、腫瘍径(p=1.000)、病理学的ステージ (I+II vs III: p=1.000)、組織学的グレード (1+2 vs 3: p=0.372)、リンパ浸潤 (p=0.668)、 静脈浸潤 (p=0.534)及びリンパ節の状態 (p=0.262)とは、相関しなかった。このことから、アディポフィリンの発現と無再発生存率との関係は、腫瘍細胞そのものの性質に依存するものと考えられた。
Figure 2021107767
6−3.アディポフィリン発現と術後無再発生存率との相関
アディポフィリン発現の有無と、患者の生存率との関連性を検討した。
アディポフィリン陽性患者群及びアディポフィリン陰性患者群の無再発生存曲線を図5に示す。腫瘍の発見から36ヶ月後の無再発生存率は、アディポフィリン陽性患者群で71.4%、アディポフィリンの陰性患者群で91.5%であった。アディポフィリン発現は、トリプルネガティブ乳癌におけるRFS不良と良く相関していた (p=0.032)。アディポフィリンの発現とKi-67 LIの関係を検証すると、図6に示すように、アディポフィリン陽性−高Ki-67 LI患者群では、アディポフィリン陰性−高Ki-67 LI患者群と比較すると、前者でよりRFSが不良であった(p=0.049)。一方、アディポフィリン陰性−高Ki-67 LI患者群とアディポフィリン陰性−低Ki-67 LI患者群の間に、RFSの差は認められなかった(p=0.495)。アディポフィリン陽性−高Ki-67 LI患者群とアディポフィリン陰性−低Ki-67 LI患者群とのRFSの差は歴然としていた(p=0.023)。図7に示すように、アジュバント化学療法を行っていないTNBC 患者群においては、アディポフィリン陰性患者群の方が、アディポフィリン陽性患者群よりも、無再発生存率が良好な結果を示した (p=0.080)。
無再発生存率に与える臨床病理学的因子の影響について単変量解析、及び多変量解析を行い検証した。その結果を表3に示す。
単変量解析によると、進行病理ステージ(stage III)、リンパ節転移、アディポフィリン発現は、顕著に低無再発生存率と相関していた(それぞれ、p=0.036、0.025、及び 0.048)。しかし、コックス比例ハザードモデルを用いた多変量解析では、トリプルネガティブ乳癌患者の予後因子と言われる進行病理ステージ又はリンパ節転移と、アディポフィリンの発現との間に相関は認められなかった(ハザード比:4.89;95%信頼区間:1.04-23.0;p=0.044)。
Figure 2021107767
6−4.アディポフィリンの発現のカットオフ値の検討
次に、腫瘍組織におけるアディポフィリンの陽性率のカットオフ値が無再発生存率に与える影響を評価した。
陽性率のカットオフ値を5、10、30、50%と変えた点を除き、上記6−3.の無再発生存率と同様に無再発生存曲線を作成した。患者はトリプルネガティブ乳癌の全患者を使用した。図8Aはカットオフが5%の例であり、図8Bはカットオフが10%の例であり、図9Aはカットオフが30%の例であり、図9Bはカットオフが50%の例である。アディポフィリン陽性群と陰性群の有意差は、陽性率のカットオフ値が5%の時はp=0.078であり、陽性率のカットオフ値が10%の時はp=0.082であり、陽性率のカットオフ値が30%の時はp=0.046であり、陽性率のカットオフ値が50%の時はp=0.039であった。カットオフ値が30%以上で有意差が認められたため、この値がカットオフ値として妥当であると考えられた。
III.比較例
アディポフィリンが大腸癌の予後と相関するか否かを検討した。2014年1月から2014年12月の間に関西医科大学病院において手術を受けた大腸癌患者165名(男性95名、女性70名)の腫瘍組織のパラフィン包埋組織について検討を行った。患者の年齢は33〜99歳であり、中央値は78歳であった。
実施例1と同様の方法によりアディポフィリンの染色を行い、細胞内に顆粒状及び/又は球状の発現が認められる腫瘍細胞が、腫瘍組織全体の50%以上である場合にアディポフィリンの発現が「陽性」と判定した。しかし、図10に示すように、アディポフィリンの発現と生存率の間に相関は認められなかった(p=0.21)。
101 処理部
10 予後予測装置

Claims (9)

  1. 被検者から採取された乳腺腫瘍細胞内のアディポフィリンを検出する工程を含む、乳腺腫瘍の予後予測マーカーの検出方法。
  2. 腫瘍細胞の個数を100%とした時に、細胞内にアディポフィリンを有する腫瘍細胞が30%を超えて検出された場合に、前記被検者の予後が不良であると決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の検出方法。
  3. 予後が無再発生存率である、請求項1又は2に記載の検出方法。
  4. アディポフィリンの検出が、腫瘍組織の免疫染色によって行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の検出方法。
  5. 乳腺腫瘍が、トリプルネガティブ乳癌である、請求項1から4のいずれか一項に記載の検出方法。
  6. 乳腺腫瘍の細胞内に存在するアディポフィリンを、前記乳腺腫瘍を有する被検者の予後を予測するためのバイオマーカーとして使用する方法。
  7. 被検者から採取された乳腺腫瘍細胞内に存在するアディポフィリンを、前記被検者の予後を予測するバイオマーカーとして検出するための検査試薬であって、前記検査試薬は、アディポフィリンを検出するための抗体、又は核酸を含む、前記検査試薬。
  8. アディポフィリンからなる、乳腺腫瘍の予後予測マーカー。
  9. 処理部を備える、乳腺腫瘍の予後予測装置であって、
    前記処理部は、
    被検者から採取された乳腺腫瘍細胞内のアディポフィリンの測定値を取得し、
    取得した測定値を、基準値と比較し、
    取得した測定値が、前記基準値よりも高い場合に、前記被検者の予後が不良であることを示すラベルを出力する、及び/又は取得した測定値が、前記基準値よりも低い場合に、前記被検者の予後が良好であることを示すラベルを出力する、
    予後予測装置。
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