JP2021099338A - 超高速電子回折裝置{ultrafast electron diffraction apparatus} - Google Patents

超高速電子回折裝置{ultrafast electron diffraction apparatus} Download PDF

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Abstract

【課題】超高速電子回折装置を提供する。【解決手段】超高速電子回折装置は、所定の電子ビームパルスを放出する光電子銃110と、前記光電子銃から放出された電子ビームの進行方向を所定角度に変更して前記電子ビームを撓ませる撓み部120と、前記撓み部から放出された電子ビームによって分析されるための試料が含まれる試料部と、を含む、超高速電子回折装置。【選択図】図8

Description

本発明は、超高速電子回折裝置に関するものであって、さらに詳しくは高周波光電子銃から発生する電子ビームの状態を調節する超高速電子回折装置に関するものである。
発明の背景となる技術
X線や電子ビームのように波長の短い電磁波または物質波を用いると、使用者は原子や分子の構造を直接観察することができる。これに関する代表的な技術が電子顕微鏡である。
かかる技術に加え、試料を刺激するポンプ光と変化された試料の原子や分子の構造を観測するプローブビームである電子ビームやX線を極めて短い時間の間発生させて活用すると試料の構造変化も測定することができる。試料の構造変化を測定する際に時間分解回折技術を使用するが、一般的にポンプ光は極超短レーザ光源を用い、プローブビームとしてはX線や電子ビームのような高エネルギーの電磁波または物質波を使用する。
最近、4世代放射光であるX線自由電子レーザ(X−ray free−electron laser,X−FEL)と相対論的電子を使用する超高速電子回折(ultrafast electron diffraction,UED)技術を活用する場合、試料の構造変化を原子や分子の単位で約100フェムト秒(fs)の時間精度で観測することができる。
前記のようなX線自由電子レーザ及び超高速電子回折技術は、原子と分子の構造変化を読む道具として、それぞれ極超短X線または極超短電子ビームを使用する。X線自由電子レーザ技術は生体物質や複合体のように巨大分子や厚い試料の研究に適し、超高速電子回折技術は小さい分子や薄膜、気体状態等のような研究に適する。すなわち、X線自由電子レーザ及び超高速電子回折技術は、相互補完的な役割で用いることができる。
前記技術のいずれも時間精度とビームの明るさの向上が主要な技術的課題である。時間精度を向上させるためには、使用する電子ビームのパルス幅を更に短くし、パルス相互間の時間の揺れを小さくしなければならない。また、電子ビームの明るさを向上させるためには、単一パルスX線の出力と電子ビームの電荷量を増加しなければならない。
超高速電子回折においてプローブを使用する電子ビームパルスを極めて短くすることは、パルス内に集まっている負の電荷を有する電子が互いに押し合う力である空間電荷力(space charge force)によって制限される。電子ビームの明るさを向上させるために更に多くの電子を使用すると、電子の空間電荷力の効果が更に大きくなることで、小さい距離を進行しても電子ビームのパルス長が急激に増加する問題が発生する。
電子ビームの運動エネルギーを増加させて電子の速度が光の速度に近いほど、空間電荷力は小さくなる。加速エネルギーが過度に高くなると装置のサイズが急激に大きくなるため、概ね高周波光電子銃から発生させる電子ビームのエネルギー(例えば、数百万電子ボルト(MeV))が適切であると知られている。そして従来の技術は電子ビームパルスが空間電荷力によって増加することを最小化するために、超高速電子回折装置は短い直線状の構造を使用している。また、一部の超高速電子回折装置は、電子ビームを圧縮するために高周波空洞をさらに使用する場合もある。このように高周波空洞を使用して電子ビームを圧縮する場合、高周波空洞の温度変化と高周波電場の不安定性とにより電子ビームに加えられる高周波の位相が変わる問題がある。この場合、電子ビームが試料に到達する時間の揺れが大きくなるので全体的に時間精度が悪くなる問題がある。
そして、高周波光電子銃と直線状の構造を使用する超高速電子回折装置は、約100フェムト秒の電子ビームパルスを得るために、10フェムトクーロン(fC)以下の低い電子ビーム明るさを使用しなければならない問題がある。また、このように直線状の構造を使用する場合、1本のビームラインで構成されることにより、多数の使用者が使用する際に毎回実験装置を新たに設置して使用しなければならない問題がある。
(特許文献1)日本国公開特許 第2018−146265号(2018.09.20.)
解決しようとする課題
本発明が解決しようとする課題は、時間精度、ビーム明るさ、ビームライン数等の制限を解決することができ、高周波光電子銃から発生する電子ビームの状態を調節することができる超高速電子回折装置を提供することである。
課題の解決手段
本発明の一実施例による超高速電子回折装置は、所定の電子ビームを放出する光電子銃と、前記光電子銃から放出された前記電子ビームの進行方向を所定角度に変更して前記電子ビームを撓ませる撓み部と、前記撓み部から放出された電子ビームによって分析されるための試料が含まれる試料部と、を含み、前記撓み部によって電子ビームの進行方向が所定角度変更されることにより、前記試料部に前記電子ビームの有する前記所定のパルスが圧縮された状態で到達することができる。
一方、本発明の他の実施例による超高速電子回折装置は、時間間隔を置いて電子ビームを独立的に複数回放出する光電子銃と、前記光電子銃から放出された電子ビームの進行方向を所定角度に変更して前記電子ビームを撓ませる撓み部と、前記撓み部から放出された電子ビームによって分析されるための試料が含まれる試料部と、を含み、前記光電子銃の高周波数位相の傾斜やエネルギー傾斜の選択と前記撓み部による電子ビームの角度変更とによって、前記試料部に独立的に放出され、互いに異なる平均エネルギーを有する複数個の電子ビームの時間の揺れが相殺された状態で到達することができる。
本発明によると、物質の原子や分子の構造と運動を同時に測定することができ、時間精度を従来に比して改善しながら、電子ビームの明るさを従来に比して約100倍程度まで向上させることができる。
特に、高周波光電子銃を使用する際に、電子ビームとレーザビームとが試料に到達する時間の相対的な差が揺れることを源泉的に相殺することができる効果がある。
図1は、高周波光電子銃を使用する超高速電子回折技術の原理を説明するための図である。 図2は、従来の超高速電子回折技術において、高周波空洞を使用して電子ビームを圧縮する技術を説明するための図である。 図3は、本発明の一実施例による超高速電子回折装置を同一の平面上に構成したことを説明するための図である。 図4は、本発明の一実施例による超高速電子回折装置において、ビームラインが90度に撓まれた状態を示した図である。 図5Aは、本発明の一実施例による超高速電子回折装置において、電子ビームを圧縮するときの状態を示した図である。 図5Bは、本発明の一実施例による超高速電子回折装置において、電子ビームを圧縮するときの状態を示した図である。 図5Cは、本発明の一実施例による超高速電子回折装置において、電子ビームを圧縮するときの状態を示した図である。 図6Aは、本発明の一実施例による超高速電子回折装置において、光電子銃から発生した電子ビームが試料に到達する相対的な時間を相殺する状態を示したグラフである。 図6Bは、本発明の一実施例による超高速電子回折装置において、光電子銃から発生した電子ビームが試料に到達する相対的な時間を相殺する状態を示したグラフである。 図6Cは、本発明の一実施例による超高速電子回折装置において、光電子銃から発生した電子ビームが試料に到達する相対的な時間を相殺する状態を示したグラフである。 図7は、本発明の一実施例による超高速電子回折装置において、暗電流の除去及びポンプ光の入射軌跡を一致させることを説明するための図である。 図8は、本発明の他の実施例による超高速電子回折装置を空間上に構成したことを説明するための図である。
発明の実施のための具体的な内容
以下、添付された図面を参照して本発明の実施例による構成及び作用について詳細に説明する。以下の説明は、特許請求可能な本発明の多様な側面(aspects)のうちの一つであり、下記の説明は本発明に対する詳細な技術の一部を成すことができる。
ただし、本発明の説明にあたり、公知の構成または機能に関する具体的な説明は、本発明を明瞭にするために省略することがある。
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を含むことができるところ、特定の実施例を図面に例示して詳細な説明に説明する。しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
そして、第1、第2等のように序数を含む用語は、多様な構成要素の説明に使用されることができるが、当該構成要素はこれらの用語によって限定されるものではない。これらの用語は1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的でのみ使用される。
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」または「接続されて」いると言及された場合、その他の構成要素に直接的に連結または接続されていることもあるが、その間に他の構成要素が存在することもあると理解されるべきである。
本願で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味を有さない限り、複数の表現を含む。
本発明の好ましい実施例について添付の図面を参照して更に具体的に説明する。
図1を参照して、超高速電子回折技術について更に詳細に説明する。先ず、X線自由電子レーザ技術は、長さが約1km以上であり、建設費用だけで数千億ウォンから1兆ウォン以上所要される超大型科学施設を用いる。これに反し、超高速電子回折技術は、数十メートルの大きさで実験室に設置することができる。超高速電子回折技術は、具現するための装備も数十億ウォンを超えないところ、X線自由電子レーザ技術に比して相対的に非常に経済的な技術である。超高速電子回折技術の開発の核心は、X線自由電子レーザ技術に比べて等しい時間及び明るさ性能を得ることである。
図1に示されたように、超高速電子回折装置1は、試料に向けて電子ビーム12を放出する光電子銃110を含み、光を放出する光源部170を含む。このとき、光源部170に放出された光は、2つのフェムト秒レーザパルスに分岐され、1つのフェムト秒レーザパルスは、紫外線21に波長変換されて光電子銃110に入射される。光電子銃110は、入射された紫外線21を用いてプローブとして使用される電子ビームパルスを生成して、電子ビーム12を放出する。そして、他の1つのフェムト秒レーザパルスは、試料に照射されて試料をポンプ(励起または刺激)することに使用される。このように試料に照射されるポンプ光23の経路を調節すると、ポンプ後に試料内の原子と分子の時間的な構造変化を観測することができる。
X線自由電子レーザ技術及び超高速電子回折技術では、いずれも時間精度及び電子ビーム12の明るさを向上させることが重要であるが、時間精度または時間分解能τは数学式1のように表される。
Figure 2021099338
ここで、τpumpはポンプ光23のパルス幅(パルスの時間単位長さ)であり、τprobeはプローブである電子ビーム(またはX線)のパルス幅であり、τjitterはポンプ光23とプローブである電子ビームが試料に到達する時間の揺れ(timing jitter)であり、τVMは試料における電子ビームと紫外線21の間の速度差による有効パルス幅の増加を示す。
高周波加速器を使用するX線自由電子レーザ技術と相対論的な超高速電子回折技術において、τjitterを小さくすることは難しいと知られている。
そして、電子ビーム12の明るさは、パルス中に含まれた光子や電子の数によって決まるが、一般にX線自由電子レーザ技術は単一パルスに約1012個の光子を含むので、単一パルスで物質の構造変化を観測することができる。
一方、荷電粒子である電子は、X線に比して散乱能が約十万倍から百万倍程度強いため、パルス当たり約10個の電子が含まれると、X線自由電子レーザ技術と同じ性能を発揮することができる。しかし、荷電粒子である電子が非常に小さい時空間に一定以上集まると、互いに押し合う空間電荷力が強力に発生し、このため、電子ビーム12の特性が悪くなり、急激にパルス幅が大きくなる問題が発生し得る。
これにより、現在まで開発された相対論的な超高速電子回折技術は、高周波光電子銃110から約100フェムト秒のパルス幅を有する電子ビーム12を発生させ、電子ビーム12の直線経路で、可能であれば近い位置に試料を配置して電子ビーム12の広がり現象を最小化するように開発された装置を用いる。それにも関わらず、このような超高速電子回折技術による装置は、電子ビーム12のパルス幅が大きくなる程度と単一パルスにどれだけ多くの電子が含まれているかが重要な要素で作用する。
電子ビーム12に電子がパルス当たり約10個以上含まれるか、電子ビーム12が数十フェムトクーロン(fC)以上になると、電子ビーム12は、約1mを進行しても急激にパルス幅が大きくなる。これにより、図2に示されたように、高周波空洞を用いて電子ビーム12を圧縮する技術が用いられる。図2には第1の高周波空洞1100及び第2の高周波空洞30が示されている。ここで、第2の高周波空洞30に形成された電場Eを用いて、第1の高周波空洞(光電子銃)1100から放出された電子ビーム12の進行方向において前側で移動する電子は相対的に低いエネルギーLを有するようにして減速させ、電子ビーム12の進行方向において後側で移動する電子は相対的に高いエネルギーHを有するようにして加速させる。このように電子ビーム12の電子に対する加速及び減速の程度を電子のパルス内の縦軸位置に沿って線形的に形成させる。このような電子ビーム12の速度分布を正のチャープ(positive chirp)という。
従って、電子ビーム12は一定距離の間進行しながら、前側で進行する電子が相対的にゆっくり動き、後側で進行する電子が相対的に速く動いて電子パルスの中央地点に電子が集まることができる。このように電子が集まることを速度圧縮(velocity compression)または弾道圧縮(ballistic compression)という。
前記のように、速度圧縮や弾道圧縮に用いられる第2の高周波空洞30は、温度や環境に応じて高周波位相が変わることができ、これによって電子ビーム12が試料に到達する時間の揺れを増加させることができる。
これにより、図3に示されたように、本発明の一実施例による超高速電子回折装置1を用いる。図3を参照すると、本発明の一実施例による超高速電子回折装置1は、光電子銃110、撓み部120、140、第1の四重極磁石モジュール130、第2の四重極磁石モジュール132、試料部150、検出部160、及び光源部170を含む。このとき、撓み部120、140は主撓み部120及び補助撓み部140を含む。このような補助撓み部140は多数個提供されることができ、1つの主撓み部120と連動することができる。また、超高速電子回折装置1は、多数のビームラインを含む。
光電子銃110は、パルスRF信号を使用して所定のエネルギーを有する電子ビームを放出する。本実施例において、光電子銃110から放出される電子ビームは、約2MeV乃至4MeVのエネルギーを有し、電子ビーム電荷量(bunch charge)は約1pCであり、電子ビームの長さ(bunch duration)は約100fsである。本実施例において、光電子銃110から放出された電子ビームの直径が約150μm乃至500μmであり、電子ビームの長さが約50fs乃至300fsであるとき、電荷量は約0.1pC乃至5pCであることができる。
光源部170は、光電子銃110からプローブを使用する電子ビームパルスを生成するための紫外線21を放出し、また、試料をポンプ(励起、刺激)するためのポンプ光23を試料部150側に放出する。このとき、光源部170は、1つの光を分岐し、分岐された光のうちのある一部を紫外線21に波長変換して光電子銃110側に放出し、分岐された光のうちの他の一部をポンプ光として補助撓み部140に入射させて試料部150側に進行させる。
本実施例において、光源部170で分岐されて紫外線21として放出される光は、光電子銃110に直接照射されることができる。そして分岐された他の光は、ポンプ光23として試料部150側に放出されるが、ポンプ光23は補助撓み部140を通じて試料部150側に放出されることができる。これについての詳しい内容は後述する。
主撓み部120は、光電子銃110の後段に配置され、光電子銃110から放出された電子ビームが移動される。主撓み部120は二極磁石で構成され、二極磁石の磁場の強さの調節が可能である。従って、主撓み部120に含まれた二極磁石は、永久磁石または電磁石で構成されることができる。また、主撓み部120の形状は、円形、四角形の形状またはその他の形状で形成されることができる。
主撓み部120は、光電子銃110から来た電子ビームの角度を印加された磁場の強さに応じて変更する。本実施例において、主撓み部120は、所定の平面上で、例えば、電子の軌道を約0度、22.5度、45度、及び67.5度等の角度で変更することができる。ここで、平面上で変更された角度θは、図3に示されたように、電子ビームが入射される方向(例えば、第4のビームラインBL4)を基準に角度が変更された電子ビームが放出される方向の間の角度である。
第1の四重極磁石モジュール130は、一側が主撓み部120に向かい、他側が補助撓み部140に向かうように配置される。第1の四重極磁石モジュール130は、図3及び図4に示されたように、主撓み部120と補助撓み部140との間に配置される3つの四重極磁石を含むことができ、主撓み部120から放出された電子ビームを集束する役割をする。すなわち、第1の四重極磁石モジュール130は、集光レンズ(focusing lens)または発散レンズ(defocusing lens)の役割をする。
補助撓み部140は、第1の四重極磁石モジュール130と連結され、第1の四重極磁石モジュール130から放出された電子ビームを受けて角度を撓ませた後に放出する。このとき、補助撓み部140は主撓み部120と同様に二極磁石で構成され、二極磁石の磁場の強さの調節が可能である。このために、補助撓み部140に含まれた二極磁石は、永久磁石または電磁石で構成されることができる。そして補助撓み部140の形状は、円形、四角形の形状またはその他の形状で形成されることができる。また、補助撓み部140は、多数個提供されることができ、多数個の補助撓み部140のうち少なくとも一部の補助撓み部140は、互いに異なる仮想の平面上に置かれるように構成されることができる。
補助撓み部140は、第1の四重極磁石モジュール130から放出された電子ビームの角度を印加された磁場の強さに応じて変更する。本実施例において、所定の平面上で、例えば、電子ビームを約0度、22.5度、45度、及び67.5度等の角度で変更することができる。本実施例において、補助撓み部140で変更する電子ビームの角度は、主撓み部120で変更する電子ビームの角度と同一であることができる。
例えば、主撓み部120で22.5度の角度で電子ビームの撓み角度を変換すると、補助撓み部140も同一に22.5度の角度で電子ビームの撓み角度を変換することができる。これにより、試料部150が配置されるビームラインは光電子銃110から放出された電子ビームの方向と45度の撓み角度を有することができる。
本実施例において、補助撓み部130は必要に応じて省略することができる。この場合には、主撓み部120から放出された電子ビームの進行方向が電子ビームの最終的な進行方向となる。
第2の四重極磁石モジュール132は、一側が補助撓み部140に連結され、他側が試料部150に連結される。本実施例において、第2の四重極磁石モジュール132は3つが備えられ、補助撓み部140から放出された電子ビームを集束する役割をする。
試料部150は、内部に試料が配置され、第2の四重極磁石モジュール132によって放出される電子ビームが入射される。本実施例において、試料部150には電子ビームと共に前述したポンプ光23が共に入射されることができる。
検出部160は、試料部150を通過した電子ビームが検出される。そのために検出部160は、散乱された電子ビーム12に対するスクリーンを用いて試料部150に含まれた試料を分析することができる。
ビームラインBL1乃至BL7は、本実施例において、補助撓み部140、第2の四重極磁石モジュール132、試料部150、及び検出部160が配置されたラインと定義し、ビームラインBL1乃至BL7は直線形状を有することができる。換言すると、ビームラインBL1乃至BL7は、補助撓み部140から放出された電子ビームは、試料部150に向かって直線で進行するように構成されることができる。従って、光電子銃110から放出された電子ビームは、主撓み部120及び補助撓み部140でそれぞれ角度が変更された後、ビームラインBL1乃至BL7を通じて直線形状で試料部150を介して検出部160まで進行することができる。
本実施例において、たとえば、ビームラインBL6が90度に折り曲げられた状態であるとき、光電子銃100から発生された電子ビームが約3.1MeVであり、ビームラインBL6の長さが3.2mである場合、電子ビームのエネルギー分布が−61eV/fsを満たさなければならない。この場合、ビームラインBL6の長さは2m乃至5mであることができ、このとき、電子ビームが有する所定のパルスが圧縮されるために電子ビームが有するエネルギー分布範囲は−60eV/fs±15%であることができる。
これは、光電子銃110から放出された電子ビームが主撓み部120及び補助撓み部140を介して進行方向が回転されることにより、電子ビームが圧縮されると共に時間の揺れが補償されるか相当に減少するが、電子ビームが最大に圧縮されることで時間の揺れが補償されるか相当に減少する位置に試料部が配置されなければならないためである。従って、電子ビームのエネルギー分布範囲及び撓み部120、140の撓み具合に応じてビームラインの長さが設定されることができる。
前記のような構成を有する超高速電子回折装置1は、図3に示されたように、多数のビームラインを有するように構成されるが、このとき、図4及び図5を参照して、光電子銃110から放出された電子ビームを圧縮(compression)することについて説明する。
光源部170から放出された光を分岐して波長変換された紫外線21が光電子銃110に入射されると電子ビームが発生し、電子ビームの間には電荷密度により互いに押し合う空間電荷力が作用して、電子ビームがパルスエネルギー分布で負のチャープとなることができる。例えば、100fsのパルス幅と0.5mmの径を有する電子ビーム空間に約1pCの電荷を発生させると、電子ビームの前側に位置した電子は互いの反発力によってさらに速く(エネルギーが大きくなり)動き、後側に位置した電子は更に遅く(エネルギーが小さくなるように)動く。このような速度分布を負のチャープ(negative chirp)状態という。
このとき、電子ビームが図4に示されたように、電子ビームが所定の角度(例えば、90度)を有する撓み部120、140を通過すると、前側に配置された速度の速い電子は撓み部120、140の外側の相対的に長い経路(曲率半径が大きい経路)に動き、後側に配置された速度の遅い電子は撓み部120、140の内側の相対的に短い経路(曲率半径が小さい経路)に動く。これにより、電子ビームの相対的な位置分布が変わるが、速度の遅い電子が相対的に短い経路に移動して速度の速い電子より前に位置し、速度の速い電子が長い経路に移動して速度の遅い電子より後ろに位置する。このような状態を正のチャープ(positive chirp)状態という。換言すると、本発明の一実施例によると、高周波空洞のように高周波電場を加えることなく、電子ビームが撓み部120、140を通過することで正のチャープ状態になることができる。
従って、電子ビームは、主撓み部120及び補助撓み部140を介して直線形状のビームラインに沿って移動しながら、電子の速度差によって自然に全ての電子が進行するほど同じ位置になるように移動する。換言すると、撓み部120、140から放出された直後には遅い速度の電子が速い速度の電子より前側で進行するが、直線形状のビームラインによって進行することにより、早い速度の電子が遅い速度の電子を追いついて相互間に位置の差がほぼないように進行される。このように電子の相互間の位置の差がないように移動することを速度圧縮(velocity compression)または弾道圧縮(ballistic compression)という。換言すると、電子は撓み部120、140を経た後に直線形状のビームラインを通じて進行することで互いに同一であるか、所定範囲の誤差内の相対的な位置を有しながら移動することになる。そして、電子ビームの電子(電子ビームのパルス)が最も圧縮された地点に試料を含む試料部150が配置される。
このとき、図5Aに示されたグラフは、光電子銃110から電子ビームが放出された位置Aで電子ビームが負のチャープの状態を示したものであり、図5Bに示されたグラフは、主撓み部120及び補助撓み部140を介して電子ビームの撓み角度が変更された位置Bで電子ビームが正のチャープの状態を示したものである。そして、図5Cに示されたグラフは、試料部150の位置Cで電子ビームのパルスが最も圧縮された状態を示したものである。
そして、試料部150を通過した電子ビームは、その後にパルス幅が増加する。しかし、パルス幅の最も圧縮された(最も小さくなった)地点で試料の構造情報に応じて電子の回折が行われ、その状態で検出部160に検出される。
また、本実施例において、図4及び図6A乃至6Cを参照して、超高速電子回折装置1が光電子銃110から発生した時間の揺れを補償または想到に減少する機能について説明する。
光電子銃110は、時間間隔を置いて電子ビームを独立的に複数回放出するように構成される。このような独立的な電子ビームは、理論的には一定の平均運動エネルギーを有するべきであるが、実際には互いに異なる平均エネルギーを有する。このように、電子ビームが互いに異なる平均エネルギーを有すると、光電子銃110から発生した電子ビームが試料に到達する時間も変わることができる。光電子銃110が電子ビームを発生させることにあたり、種々の要因によって高周波の位相と紫外線21が入射する時間が揺れることができる。特に、光電子銃110の温度の変化、入力高周波パルスの位相と出力の揺れ等が、このような電子ビームパルスの平均運動エネルギーが変わる主な原因になることができる。超高速電子回折装置1が直線状の構造である場合、このような平均エネルギーの変化は電子ビームパルスが試料に到達する時間の揺れとなり、直線区間の長さが長いほど、時間の揺れは大きくなる。電子ビームの平均運動エネルギーの変化によって電子ビームパルスが光電子銃110から抜け出る時間が変わる。しかし、本実施例でのように、撓み構造を有する超高速電子回折装置は、このような電子ビームパルスの平均運動エネルギーに変化があっても電子ビームが試料に到達する時間の揺れを完全に補償することができる。光電子銃110から発生された平均エネルギーが高い電子ビームは光電子銃を速く抜け出るが、逆に、撓み構造で長い経路を通るので相対的に更に長い時間が所要される。従って、この両時間が互いに相殺されることにより、光電子銃110の位相傾斜を調節すると、光電子銃110から発生した平均運動エネルギーの変化があっても、電子ビームが試料に到達する時間の揺れのない条件を実現することができる。
図6Aに示されたように、光電子銃110から電子ビームが放出された位置Aで電子ビームの平均的なエネルギー分布が相対的に中間状態である#1、平均的なエネルギー分布が相対的に高い#2、平均的なエネルギー分布が相対的に低い#3の基準時点に対する放出時点を比較すると、#2の電子ビームが相対的に早い時点に放出されており、#3の電子ビームが相対的に遅い時点に放出されており、#1が基準時点に放出されたことが確認できる。
そして、図6Bに示されたグラフは、図6Aに示された同一の電子ビームが主撓み部120及び補助撓み部140を介して電子ビームの角度が変更された位置Bで電子ビームのエネルギー分布を示す。従って、電子ビームの平均的なエネルギー分布が相対的に中間状態である#1、平均的なエネルギー分布が相対的に高い#2、平均的なエネルギー分布が相対的に低い#3の基準時点に対する放出時点を比較すると、#2の電子ビームが相対的に遅い時点に到着し、#3の電子ビームが相対的に早い時点に到着し、#1が基準時点に到着したことが確認できる。
本発明の一実施例によると、光電子銃110から電子ビームが独立的に複数回放出される当時には、図6A及び図6Bのようにそれぞれの電子ビームの間に高周波位相の変化等によって平均運動エネルギーの変化が存在しても、かかる電子ビームが光電子銃110を抜け出る時間差と、撓み部120、140を通り直線形状を有するビームラインを通る時間差とを互いに補償してそれぞれの電子ビームが試料に到達する時間の揺れを源泉的になくすことができる。換言すると、基準時点よりも早い時点に放出された電子ビームは平均的に高いエネルギー分布を有するので、撓み部120、140を通りながら長い経路(曲率半径が大きい経路)に沿って移動して撓み部120、140で相対的に遅く放出される。従って、基準時点よりも早い時点に放出された電子ビームは基準時点に放出された電子ビームが光電子銃110から放出されて試料部150に到達するまで所要された時間と同一の時間が所要されることができる。また、基準時点よりも遅い時点に放出された電子ビームは、平均的に低いエネルギー分布を有するので、撓み部120、140を通りながら短い経路(曲率半径が小さい経路)に沿って移動して撓み部120、140から相対的に早く放出される。従って、基準時点よりも遅い時点に放出された電子ビームも基準時点に放出された電子ビームが光電子銃110から放出されて試料部150に到達するまで所要された時間と同じ時間が所要されることができる。
前記のように、光電子銃110から放出された電子ビームの平均運動エネルギーが変わると、光電子銃110を抜け出る時間が変わるが、主撓み部120及び補助撓み部140で電子ビームをそれぞれ回転させることによって、試料部150まで電子ビームが到達する時間の差を相殺することができる。
一方、本実施例において、図7を参照して、光電子銃110から発生する暗電流33を除去する機能について説明する。
光電子銃110は、紫外線パルス21が入射される瞬間のみに電子ビームが発生する。しかし、紫外線パルス21が入射されなくても加速電場がある場合、光負極の微細なナノ屈曲や異物等によって低い電流の電子ビームが発生することができる。このように、光電子銃110から発生された低い電流の電子が暗電流33である。暗電流33は光電子ビームに比して電流値が低いものの、長時間放出されるので、無視できないほどのノイズになることができる。
電子回折模様を撮影する検出部160の一部であるICCDまたはEMCCDの撮影時間が数ナノ秒から数マイクロ秒であり、光電子ビームが発生する時間は1ピコ秒よりも短い時間に発生するが、暗電流33は持続的に放出されることができる。従って、暗電流33を除去するために、図7に示されたように、電子ビームだけが通過できるフィルタ部122を配置することができる。本実施例において、主撓み部120及び補助撓み部140によって電子ビームが回転されることにより、エネルギーと空間フィルタ機能が含まれることができる。従って、フィルタ部122が適切な位置に配置される場合、暗電流33の大部分が除去されることができる。本実施例において、フィルタ部122は、主撓み部120の後段に配置されたものとして説明するが、必要に応じて試料部150の前段に更に設置されることができる。また、フィルタ部122は光電子銃110と撓み部120、140との間に配置されることができ、また、必要に応じて主撓み部120と補助撓み部140との間に配置されることができる。
また、図7を参照して、ポンプ光23と電子ビーム12の入射軌跡を一致させて時間性能を向上させることについて説明する。
図7に示されたように、電子ビーム12を回転させるとき、電子ビーム12の進行方向とポンプ光23の進行方向とを一致させる必要がある。そのために、電子ビーム12の進行方向に一致するように、ポンプ光23の入射角度を一致させると、電子ビーム12とポンプ光23との進行方向が一致して試料を通過するとき、時間精度が悪くなる要素を除去することができる。
特に、相対論的なエネルギーの電子ビームを使用する場合、電子ビームの速度は光の速度にほぼ到達するので、速度差により発生する電子ビームパルス幅の拡大効果を最小化することができる。
本発明の他の実施例による超高速電子回折装置1を空間上に構成したことについて説明する。
図8に示されたように、1つの光電子銃110の下部に1つの主撓み部120が配置される。そして、主撓み部120の下部一側に多数個の補助撓み部140が配置されることができ、多数の補助撓み部140の外側方向にそれぞれ多数個の試料部150が配置されて多数個のビームラインが配置されることができる。従って、図示されたように、立体空間で多数個のビームラインが延在する仮想の線と、光電子銃110と主撓み部120を延在した仮想の線とは互いに平行せず、約90度の角度や他の角度を有することができる。
このとき、光電子銃110、主撓み部120、1つの補助撓み部140及び1つの試料部150の配置を見ると、図4に示された平面上における配置と同一であることができる。本実施例において、多数のビームラインが90度の角度を有すると説明するが、各ビームラインは必要に応じて他の角度を有するように変更されることができ、空間上にビームラインが配置されることによって各ビームラインは独立的に角度が設定されることができる。
また、多数のビームラインが全て90度の角度を有することによって、各ビームラインにおいて電子ビームの分散を完璧に相殺することができる。
前記で説明したように、本発明に対する具体的な説明は添付された図を参照した実施例によって行われたものの、上述した実施例は本発明の好ましい例を挙げて説明しただけであるので、本発明が前記実施例のみに限られると解されてはならず、本発明の権利範囲は後述する請求の範囲及びその等価概念で解されるべきである。

Claims (18)

  1. 所定の電子ビームを放出する光電子銃と、
    前記光電子銃から放出された前記電子ビームの進行方向を所定角度に変更して前記電子ビームを撓ませる撓み部と、
    前記撓み部から放出された電子ビームによって分析されるための試料が含まれる試料部と、を含み、
    前記撓み部によって電子ビームの進行方向が所定角度変更されることにより、前記試料部に前記電子ビームの有する前記所定のパルスが圧縮された状態で到達する
    超高速電子回折装置。
  2. 前記撓み部は、主撓み部及び多数個の補助撓み部を含み、
    前記主撓み部を通過して多数個の前記補助撓み部のそれぞれを通じて放出される前記電子ビームは、互いに異なる角度の進行方向を有する、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  3. 前記撓み部は、主撓み部及び多数個の補助撓み部を含み、
    多数個の前記補助撓み部は、電子ビームが互いに異なる経路に沿って移動するように配置された、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  4. 前記撓み部は、主撓み部及び多数個の補助撓み部を含み、
    多数個の前記補助撓み部のうち少なくとも一部は、前記主撓み部から所定距離離隔された仮想の平面上に配置された、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  5. 前記撓み部は、前記光電子銃の下部に配置される主撓み部及び多数個の補助撓み部を含み、
    多数個の前記補助撓み部が延在する方向に多数本のビームラインが形成され、
    多数本の前記ビームラインは、前記光電子銃と前記主撓み部を延在した仮想の線と異なる角度を形成する、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  6. 前記撓み部から放出された電子ビームは、前記試料部に向かって直線で進行するように構成される、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  7. 前記試料部は、前記撓み部から放出された電子ビームが最大に圧縮される範囲の位置に配置された、
    請求項6に記載の超高速電子回折装置。
  8. 前記光電子銃は、時間間隔を置いて電子ビームを独立的に複数回放出するように構成され、
    前記試料部は、独立的に放出された複数個の電子ビームが、前記撓み部から放出された電子ビームの平均エネルギー変化に対する時間の揺れが相殺される範囲の位置に配置された、
    請求項6に記載の超高速電子回折装置。
  9. レーザを放出する光源部を更に含み、
    前記光源部から放出された前記レーザから分岐された一部は前記光電子銃に入射し、
    前記光源部から放出されたレーザから分岐された他の一部はポンプ光として前記撓み部に入射する、
    請求項6に記載の超高速電子回折装置。
  10. 前記撓み部は、主撓み部及び補助撓み部を含み、
    前記ポンプ光は、前記補助撓み部に入射して、前記補助撓み部から放出された電子ビームに沿って前記試料部に進行する、
    請求項9に記載の超高速電子回折装置。
  11. 前記光源部は、前記光電子銃に入射させるために、前記レーザから分岐された一部を紫外線パルスに波長変換して放出する、
    請求項9に記載の超高速電子回折装置。
  12. 前記撓み部は、主撓み部及び補助撓み部を含み、
    前記主撓み部と前記補助撓み部との間に配置され、前記主撓み部から放出された電子ビームを集束する第1の四重極磁石モジュールを更に含む、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  13. 前記撓み部は、主撓み部及び補助撓み部を含み、
    前記補助撓み部及び試料部の間に配置され、前記補助撓み部から放出された電子ビームを集束する第2の四重極磁石モジュールを更に含む、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  14. 前記光電子銃と撓み部との間に配置され、前記光電子銃から電子ビームと共に放出される暗電流をフィルタリングするフィルタ部を更に含む、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  15. 前記光電子銃から放出された電子ビームのエネルギーは、2MeV乃至4MeVである、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  16. 前記光電子銃から放出された電子ビームの大きさは150μm乃至500μmであり、電子ビームの長さは50fs乃至300fsであり、電子ビームの電荷量は0.1pC乃至5pCである、
    請求項1に記載の超高速電子回折装置。
  17. 時間間隔を置いて電子ビームを独立的に複数回放出する光電子銃と、
    前記光電子銃から放出された電子ビームの進行方向を所定角度に変更して前記電子ビームを撓ませる撓み部と、
    前記撓み部から放出された電子ビームによって分析されるための試料が含まれる試料部と、を含み、
    前記光電子銃の高周波数位相の傾斜やエネルギー傾斜の選択と前記撓み部による電子ビームの角度変更とによって、前記試料部に独立的に放出され、互いに異なる平均エネルギーを有する複数個の電子ビームの時間の揺れが相殺された状態で到達する、
    超高速電子回折装置。
  18. 前記撓み部は、前記光電子銃の下部に配置される主撓み部及び多数個の補助撓み部を含み、
    多数個の前記補助撓み部が延在する方向に多数本のビームラインが形成され、
    多数本の前記ビームラインは、前記光電子銃と前記主撓み部を延在した仮想の線と異なる角度を形成する、
    請求項17に記載の超高速電子回折装置。
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