JP2021092226A - 内燃機関の点火制御装置 - Google Patents

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和明 上田
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Abstract

【課題】点火プラグに供給される放電エネルギを、筒内環境変化に応じて、放電期間の全域に亘って適正に制御すること。【解決手段】1次コイル21及び2次コイル22を有する点火コイル2と、火花ギャップGに火花放電を発生する点火プラグPと、火花放電中の通電動作を制御する点火制御部3とを備える内燃機関Eの点火制御装置1であって、燃焼室内に、火花ギャップGの長さが異なる複数の点火プラグPを併設すると共に、クランク角度検出部S1を備えており、点火制御部3は、内燃機関Eの運転状態に応じて放電開始時期及び放電期間を設定する放電時期設定部31と、1燃焼サイクル中に火花放電を形成させる点火プラグPを順次切り換えるプラグ切換部35を有し、プラグ切換部35は、検出されるクランク角度が上死点TDCに近いほど、火花ギャップGの長さが短い点火プラグPに火花放電を形成させる。【選択図】図1

Description

本発明は、火花点火式の内燃機関に用いられて点火を制御する点火制御装置に関する。
火花点火式の内燃機関は、気筒ごとに設けられる点火プラグに、点火コイルに蓄えられた点火エネルギを投入して火花放電させ、燃焼室内の混合気に点火する。点火制御装置は、一般に、運転状態に応じて点火コイルの1次コイルへの通電をオンオフ制御することで、電磁誘導により2次コイルに高電圧を発生させて、点火プラグの火花ギャップにおける放電を制御している。
近年、内燃機関の燃費改善のために、空燃比を理論空燃比よりもリーン側とする希薄燃焼(すなわち、リーンバーン)制御や、排ガスの一部を吸気側に還流させる排ガス再循環(すなわち、EGR)制御が実施されている。これら制御時には、混合気中の燃料濃度が希薄となって着火性が低下することから、火花放電による着火を安定して実現する技術が要求される。
これに対し、着火性を向上させるために、点火プラグを多重放電させる点火方式が知られている。例えば、特許文献1に開示される点火制御装置は、内燃機関の1燃焼サイクル中に、1次コイルへの通電のオンオフを、一定の放電間隔で複数回繰り返して、着火機会を増加させている。また、各放電の時間を、燃焼室内の圧力(すなわち、筒内圧)の推移に追従させて、着火に必要なエネルギが投入されるようにしている。
また、複数の電源からエネルギを投入して、点火プラグを連続放電させる点火方式が提案されている。例えば、主電源による放電開始後に、昇圧回路を備える補助電源からエネルギを投入することにより、主電源によって開始した放電が維持されるように、1次コイルへのエネルギ供給を行うことができる。
特開2001−153016号公報
特許文献1の点火方式は、具体的には、筒内圧が高いほど、各放電の時間が短くなるように設定している。例えば、圧縮上死点後の点火では、放電回数が増えるにつれて、各放電の時間を徐々に長くし、無駄なエネルギが消費されるのを抑制している。ところが、この点火方式では、エネルギ消費は抑制されるものの、放電回数が多くなるほど、点火コイルに蓄えられるエネルギが減少するので、ある放電回数又は放電期間を超えると、必要な放電エネルギが得られなくなる。
また、連続放電による点火方式は、放電形成後のエネルギ投入により、着火に必要な放電エネルギを維持できるが、放電期間中の環境変化に対応して、必要な放電エネルギを、過不足なく投入することは難しい。そのため、点火プラグへ投入されるエネルギが過剰となりやすく、エネルギ効率が低下するだけでなく、電極消耗により点火プラグの耐久性が低下するおそれがある。
特に、リーン空燃比又はEGR増量時のような希薄環境下では、着火性を向上させるために、放電期間が拡大される傾向にあるので、例えば、放電初期と後期とで筒内環境が異なると、着火に必要な放電エネルギ密度も変化する。このような場合にも、放電期間の全域で放電エネルギ密度を適正に制御することが望まれている。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、点火プラグに供給される放電エネルギを、内燃機関の筒内環境変化に応じて、放電期間の全域に亘って適正に制御し、着火性を高めると共に過剰なエネルギ供給を抑制して、エネルギ効率及び耐久性を向上させた点火制御装置を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、
1次コイル(21)及び2次コイル(22)を有する点火コイル(2)と、
上記2次コイルに接続され、上記1次コイルへの通電のオンオフに伴う電磁誘導により、火花ギャップ(G)に火花放電を発生する点火プラグ(P)と、
上記1次コイルへの通電をオンオフすることにより、燃焼室内に火花放電を開始させると共に、火花放電中の通電動作を制御する点火制御部(3)と、を備える内燃機関(E)の点火制御装置(1)であって、
上記燃焼室内に、上記火花ギャップの長さ(GAPa、GAPb)が異なる複数の上記点火プラグ(PA、PB)を併設すると共に、上記内燃機関のクランク角度を検出するクランク角度検出部(S1)を備えており、
上記点火制御部は、上記内燃機関の運転状態に応じて放電開始時期及び放電期間を設定する放電時期設定部(31)と、1燃焼サイクル中に火花放電を形成させる上記点火プラグを順次切り換えるプラグ切換部(35)を有し、上記プラグ切換部は、検出されるクランク角度が上死点(TDC)に近いほど、上記火花ギャップの長さが短い上記点火プラグに火花放電を形成させる、内燃機関の点火制御装置にある。
点火プラグの火花ギャップに発生する火花放電のエネルギは、内燃機関の燃焼室内の状態によって変化し、例えば、放電期間中の燃焼室内の圧力が異なると、着火に必要な放電エネルギ密度も変化する。そのため、上記一態様における点火制御部は、火花放電中に点火プラグの通電動作を行うと共に、プラグ切換部が、火花ギャップの長さが異なる複数の点火プラグを順次切り換える。さらに、燃焼室内の圧力に対応するクランク角度を用いて、上死点に近いほど、火花ギャップの長さが短い点火プラグを選択することで、1燃焼サイクルにおける圧力変化に応じて、着火に必要な放電エネルギ密度を適時変化させて最適に制御することができる。
したがって、例えば、希薄環境下でのエネルギ増加要求に応じて放電期間が長期化する場合でも、適正な放電エネルギ密度を維持することができる。その結果、火花ギャップに必要な放電エネルギを効果的に投入して、着火性を向上させると共に、点火プラグの電極消耗を抑制することができる。
以上のごとく、上記態様によれば、点火プラグに供給される放電エネルギを、内燃機関の筒内環境変化に応じて、放電期間の全域に亘って適正に制御し、着火性を高めると共に過剰なエネルギ供給を抑制して、エネルギ効率及び耐久性を向上させることができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
参考形態1における、内燃機関の点火制御装置の回路構成図。 参考形態1における、点火制御装置を含む点火システムの全体構成図。 参考形態1における、エンジンのクランク角度と燃焼室内圧力及び空燃比ごとの必要放電エネルギ密度の関係を示す図。 参考形態1における、エンジンのクランク角度と放電エネルギ密度及び放電2次電流の関係を示す図。 参考形態1における、点火プラグに投入される放電エネルギと着火限界空燃比の関係を示す図。 参考形態1における、エンジンのクランク角度と放電エネルギ密度及び放電2次電流の関係の他の例を示す図。 参考形態1における、エンジンのクランク角度と放電エネルギ密度及び放電2次電流の関係の他の例を示す図。 参考形態1における、点火制御装置の点火制御部において実施される点火制御処理のタイムチャート図。 参考形態1における、点火制御装置の点火制御部において実施される放電2次電流の目標値と上限閾値及び下限閾値の算出処理のフローチャート図。 参考形態1における、エンジンの燃焼室内の気流速度と吹消電流との関係を示す図。 参考形態1における、エンジンのクランク角度と空燃比ごとの放電2次電流の目標値との関係を示す図。 参考形態1における、点火制御装置の点火制御部において実施される放電2次電流のフィードバック制御処理のフローチャート図。 参考形態2における、点火制御装置の点火制御部において実施される点火制御処理のタイムチャート図。 参考形態3における、エンジンの点火制御装置の回路構成図。 参考形態3における、点火制御装置の点火制御部において実施される点火制御処理のタイムチャート図。 参考形態3における、点火制御装置の点火制御部において実施される点火制御処理のフローチャート図。 実施形態1における、エンジンの点火制御装置の概略構成図。 実施形態1における、点火制御装置の点火プラグの電極間距離と放電経路長さの関係、放電経路長さと平均2次電圧及び平均エネルギ密度の関係を示す図。 実施形態1における、点火制御装置の点火制御部において実施される点火制御処理のタイムチャート図。 実施形態1における、点火制御装置の点火制御部において実施される点火制御処理のフローチャート図。
(参考形態1)
内燃機関の点火制御装置の基本構成を示す参考形態1について、図1〜図9を参照して説明する。
図1において、点火制御装置1は、車両用内燃機関に設けられる点火プラグPの点火を制御する装置であり、1次コイル21及び2次コイル22を有する点火コイル2と、点火コイル2の2次コイル22に接続される点火プラグPと、点火プラグPの点火動作を制御する点火制御部3とを備える。点火コイル2の1次コイル21には、電源回路部10が接続されており、点火プラグPは、1次コイル21への通電のオンオフに伴う電磁誘導により、火花ギャップGに火花放電を発生する。点火制御部3は、1次コイル21への通電をオンオフすることにより、火花放電を開始させると共に、火花放電開始後の通電動作を制御する。
電源回路部10は、バッテリBと点火用スイッチTr1を有する主電源回路11と、昇圧回路4と、補助電源回路5とから構成され、点火プラグPの連続放電を可能とする。点火コイル2の1次コイル21は、一端側がバッテリBに接続され、他端側が点火用スイッチTr1に接続されている。昇圧回路4は、昇圧用スイッチTr2と、昇圧用ドライバ40と、チョークコイル41と、第1整流素子42と、コンデンサ43とを備える。補助電源回路5は、放電用スイッチTr3と、第2整流素子51と、補助用ドライバ50とを備える。放電用スイッチTr3は、1次コイル21の他端側と点火用スイッチTr1との間に接続される。
主電源回路11は、点火用スイッチTr1が、バッテリBから1次コイル21への通電経路を開閉する。昇圧回路4は、昇圧用スイッチTr2のスイッチング動作により、チョークコイル41に発生させたエネルギを、補助電源回路5のコンデンサ43へ蓄積させる。補助電源回路5は、放電用スイッチTr3のスイッチング動作により、コンデンサ43から1次コイル21への通電経路を開閉し、コンデンサ43に蓄積されたエネルギを1次コイル21へ供給する。
点火制御部3には、クランク角度検出部であるクランク角度センサS1、空燃比検出部である空燃比センサS2を含む各種センサからの検出信号が入力されている。点火制御部3は、これら検出信号から知られる内燃機関Eの運転状態に応じて、放電開始時期及び放電期間を設定する放電時期設定部31と、クランク角度センサS1の検出信号に基づいて、放電期間における点火プラグPへの通電電流である放電2次電流I2の目標値I2tgtを設定する目標電流設定部32を有している。
目標電流設定部32は、クランク角度センサS1により検出されるクランク角度が、上死点TDCに近いほど、放電2次電流I2の目標値I2tgtの絶対値が小さくなるように、目標値I2tgtを設定する。クランク角度が上死点TDCに近く、混合気が圧縮されるほど、混合気の持つエネルギが高い状態となるので、投入するエネルギをその分少なくすることができる。また、希薄燃焼時には、着火に必要な放電エネルギ密度が高くなるので、好適には、空燃比センサS2により検出される混合気中の燃料濃度が希薄であるほど、放電2次電流I2の目標値I2tgtの絶対値を大きくするのがよい。
また、点火制御部3は、放電2次電流I2をフィードバック制御するための上限閾値I2THHと下限閾値I2THLを設定するフィードバック制御部33を有している。フィードバック制御部33は、放電2次電流I2を上限閾値I2THH及び下限閾値I2THLを用いてフィードバック制御し、目標値I2tgtの近傍に維持する。このとき、火花放電の吹き消えを防止するために、放電2次電流I2が、放電の吹き消えが発生しない電流値(以下、吹消電流I2boと称する)を下回らないように、下限閾値I2THLを設定することが望ましい。
点火制御部3は、1燃焼サイクルにおける火花放電を制御するため、放電の開始に先立ち、放電時期設定部31から点火用スイッチTr1と昇圧用ドライバ40に、点火信号IGtを出力する。また、火花放電の開始後に火花放電を所定期間維持するため、補助用ドライバ50に、放電維持信号IGwを出力する。補助用ドライバ50には、目標電流設定部32から、放電2次電流I2の目標値I2tgtに対応する目標2次電流信号IGaが出力され、さらに、フィードバック制御部33から、上限閾値I2THH、下限閾値I2THLに対応するフィードバック閾値信号が出力される。
点火制御部3の各部による制御の詳細については、後述する。
図2に点火システムの全体構成を示すように、内燃機関は、例えば、EGR装置を備えるポート噴射式のガソリンエンジン(以下、エンジンと略称する)Eであり、点火プラグPは、エンジンEの気筒E1内に設けられる燃焼室101に臨んでいる。気筒E1の内側を往復動するピストン102に連結されるクランク軸103の近傍には、クランク角度に対応するクランクパルス信号を出力するクランク角度センサS1が設けられ、その検出結果は、エンジンEの各部を制御するエンジン用電子制御装置(以下、ECUと称する)100に入力される。点火制御部3は、ECU100の一部を構成している。
エンジンEの燃焼室101には、スロットルバルブTHを介して吸気通路104に導入される空気と、燃料噴射弁INJから噴射される燃料との混合気が導入される。燃焼室101と吸気通路104及び排気通路105の間には、それぞれ吸気バルブVin及び排気バルブVexが設けられ、吸気通路104と排気通路105とは、EGRバルブVegrを備えるEGR通路106にて連結される。EGR通路106の途中には、冷媒調量弁108を備えるEGRクーラ107が設けられる。
吸気通路104には、吸入空気量センサS4、吸気圧・吸気温センサS5が、排気通路105には、空燃比センサS2が設けられる。燃焼室101の点火プラグPの近傍には、気流速度検出部としての気流速度センサS3が、気筒E1壁には、エンジン水温センサS7が設けられる。また、EGR通路106には、EGRガス圧力センサS7が、アクセルペダル109の近傍には、アクセル開度センサS8が設けられる。これらセンサS2〜S8の検出結果は、ECU100に入力される。
ECU100は、クランク角度センサS1を含む各種センサからの検出信号に基づいて、エンジンEの運転状態を知り、最適なエンジン燃焼状態となるように、点火制御装置1を含むエンジン各部を制御する。具体的には、点火制御部3から指令信号を出力して点火コイル2を駆動すると共に、運転状態に応じた燃料噴射量及び燃料噴射時期で、燃料噴射弁INJを駆動し、燃料噴射を制御する。また、スロットルバルブTHに連結されるTHアクチュエータや、EGRバルブVegrのEGRアクチュエータ、冷媒調量弁108を駆動し、目標空燃比等に応じて、吸入空気量、EGR量を制御すると共に、EGRガスを冷却する冷媒量を制御する。
点火プラグPは、中心電極と接地電極を備える公知の構成で、例えば、針状の電極チップを有する中心電極が平面状の接地電極と対向する構成とすることができる。燃焼室101内において、点火プラグPは、軸方向(すなわち、図2の上下方向)における両電極の先端間の空間を、火花ギャップG(例えば、図1参照)としている。点火コイル2から供給されるエネルギにより、火花ギャップGに絶縁破壊が生じると火花放電が生起し、周囲の混合気流によって側方へ伸びて、混合気への着火が促される。この放電伸び量は気流速度と相関するので、後述するように、気流速度の推定に利用してもよい。
以下に、点火制御装置1の構成について詳述する。図1において、点火コイル2は、1次コイル21と2次コイル22とを備えている。1次コイル21と2次コイル22はコアを介して磁気結合されており、1次コイル21への通電後、1次電流I1が遮断されるときに、2次コイル22に高い2次電圧V2が発生する。1次コイル21は、両端のうちの一端が、バッテリBの正極側に接続され、両端のうちの他端は、点火用スイッチTr1を介して接地される。バッテリBは、例えば、車載バッテリ等の直流電源であり、バッテリBの負極側は接地されている。
2次コイル22は、両端のうちの一端が、点火プラグPに接続され、両端のうちの他端は、整流素子61及び電流検出用のシャント抵抗62を介して接地されている。整流素子61はダイオードで構成され、アノード側が2次コイル22に接続し、カソード側が接地されるように設けられて、2次コイル22に流れる放電2次電流I2を整流している。整流素子61及びシャント抵抗62は、放電2次電流I2を検出するためのフィードバック回路6を構成している。シャント抵抗62で検出される放電2次電流I2は電圧変換されて、点火制御部3へ入力されると共に、補助用ドライバ50に入力されて、フィードバック制御部33から出力される上限閾値I2THH、下限閾値I2THLを基に、フィードバック制御される。
主電源回路11を構成する点火用スイッチTr1には、公知のスイッチング素子、例えばIGBT(すなわち、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等のパワートランジスタが用いられる。点火用スイッチTr1は、コレクタが1次コイル21に接続され、エミッタが接地されており、ゲートへ入力される信号に基づきスイッチング動作する。コレクタ−エミッタ間には、整流素子12が並列接続される。点火用スイッチTr1がオン状態となったときは、1次コイル21から接地側への電流の流れが許容され、オフ状態となったときは、1次コイル21から接地側への電流の流れが遮断される。
昇圧回路4は、DC−DCコンバータであり、バッテリ電圧を昇圧してコンデンサ43を充電する。チョークコイル41は、バッテリBに対して1次コイル21と並列に接続されており、コンデンサ43は、昇圧用スイッチTr2と第1整流素子42を介して並列に接続されている。昇圧用スイッチTr2には、公知のスイッチング素子、例えばMOSFET(すなわち、電界効果型トランジスタ)等のパワートランジスタが用いられる。昇圧用スイッチTr2は、ドレインがチョークコイル41に接続され、ソースが接地されており、ゲートへ入力される信号に基づきスイッチング動作する。
昇圧用スイッチTr2は、昇圧用ドライバ40からの入力信号により駆動されて、チョークコイル41への電流の供給と遮断を所定の周期で切り換える。第1整流素子42はダイオードで構成され、アノード側がチョークコイル41と昇圧用スイッチTr2の間に接続し、カソード側がコンデンサ43に接続されて、チョークコイル41からの電流を整流している。
補助電源回路5を構成する放電用スイッチTr3は、公知のスイッチング素子、例えばMOSFET等のパワートランジスタであり、ドレインがチョークコイル41と昇圧用スイッチTr2の間に接続され、ソースが1次コイル21と点火用スイッチTr3との間に接続されている。放電用スイッチTr3は、ゲートへ入力される信号に基づきスイッチング動作し、オン状態のとき、補助電源回路5から1次コイル21側への電流の流れを許容し、オフ状態のとき、補助電源回路5から1次コイル21側への電流の流れを遮断する。第2整流素子51はダイオードで構成され、アノード側が放電用スイッチTr3のソースに接続し、カソード側が1次コイル21と点火用スイッチTr1との間に接続されて、補助電源回路5から投入される電流を整流している。
放電用スイッチTr3は、補助用ドライバ50からの入力信号により駆動されて、コンデンサ43から点火コイル2の1次コイル21と点火用スイッチTr1との接続点へのエネルギの投入と停止とを切り換える。これにより、補助電源回路5は、昇圧回路4によって昇圧されコンデンサ43に蓄積されたエネルギを、1次コイル21の接地側へ重畳的に投入することができる。すなわち、2次コイル22に発生した2次電圧V2を点火プラグPに印加して火花放電させ、その放電期間中に、さらに補助電源回路5からエネルギを投入して、必要に応じて、2次コイル22から点火プラグPに流れる放電2次電流I2を増加することができる。
点火制御部3において、放電時期設定部31は、各種センサの検出結果から知られるエンジンEの要求トルクやその他の運転状態に基づいて、基準となる放電エネルギを算出し、点火プラグPに火花放電を開始させるために最適な放電開始時期及び放電期間を設定する。目標電流設定部32は、放電期間中、点火プラグPに過不足なく放電2次電流I2が流れるように、その目標値I2tgtを、燃焼室101内の状態に応じて設定し、随時更新する。フィードバック制御部33は、放電2次電流I2が目標値I2tgtに維持されるように、目標値I2tgtに基づいて、フィードバック制御の閾値となる上限閾値I2THH及び下限閾値I2THLを設定し、随時更新する。
ここで、図3に示すように、エンジンEの燃焼室101内の圧力は、クランク角度により変化する。すなわち、気筒H1内のピストン102(例えば、図2参照)の往復位置に応じて筒内圧が増減し、上死点TDCにて最大となる。また、着火に必要な放電エネルギ量は、概ね燃焼室101内の圧力によって決まり、単位時間あたりの放電エネルギ(以下、放電エネルギ密度と称する)は、上死点TDCにて最小となる。これは、クランク角度が上死点TDCに近く、混合気が圧縮されるほど、燃焼室101内の圧力が高く、混合気の持つエネルギが高い状態となるからであり、必要な放電エネルギ量は低下する。
一方、燃焼室101内の混合気の空燃比(例えば、図3中にA/F20、23、28の場合を示す)によっても、必要な放電エネルギ密度は変動する。燃焼室101内の圧力が同じ場合には、混合気の燃料濃度が希薄であるほど、すなわち、空燃比が大きいほど、必要な放電エネルギ密度は高くなり、空燃比が小さいほど、必要な放電エネルギ密度は低下する。また、燃焼室101内の圧力が高いほど、空燃比の違いによる放電エネルギ密度の差が小さくなり、燃焼室101内の圧力が低下すると、放電エネルギ密度の差が大きくなる。これは、空燃比が小さくなり、混合気中の燃料濃度が増加することで、混合気への着火性が向上するからである。
したがって、燃焼室101内の圧力が高いほど、放電形成中の放電電圧が高くなり、また、空燃比が小さく混合気の密度が高くなることで,放電火花によって混合気に伝達されるエネルギ効率が大きくなるために、火炎形成しやすくなる。そこで、クランク角度によって変化する筒内圧に応じて、さらに、空燃比を考慮して、放電2次電流I2の目標値I2tgtを変化させることで、必要な放電エネルギ密度に制御することができる。
ここで、燃料濃度が希薄とは、燃焼室101内に形成する混合気において、燃料の占める割合が低いということであり、言い換えれば、燃料以外の作動ガスである新気、EGRガスの占める割合が高いということである。リーンバーン制御やEGR制御の際には、その制御量に応じて、放電2次電流I2の目標値I2tgtを設定することで、必要な放電エネルギ密度を過不足なく供給可能となる。
図4に示すように、放電期間中の放電エネルギ密度は、放電2次電流I2によって制御することができ、放電2次電流I2は、主電源回路11による放電開始後の補助電源回路5からのエネルギ投入によって制御可能である。図示するように、点火時期が上死点TDCに対し進角側である場合には(すなわち、圧縮行程点火)、放電開始クランク角度CAstから放電終了クランク角度CAendまでの放電期間の後期ほど、必要な放電エネルギ密度(すなわち、図4中に点線で示す)が低下する。
したがって、放電2次電流I2が略一定の場合(すなわち、図4中に示す基準値)に対して、放電2次電流I2の目標値I2tgtを変化させることで、時々刻々と変化する、必要な放電エネルギ密度に近づけるように制御できる。ここで、放電2次電流I2は、負の電流であるので、以下、放電2次電流I2の大小は、絶対値を基準として表すものとする。例えば、図4の場合は、放電初期から徐々に、放電2次電流I2の目標値I2tgtを低下させることで、つまり、絶対値を小さくすることで、必要な放電エネルギ密度に追従させる。その結果、基準値による制御時に比べて、放電エネルギ量が大幅に低減し(すなわち、図4中に斜線で示す)、着火性を確保しつつ、無駄な放電エネルギの消費を抑制することができる。
なお、クランク角度検出部としてクランク角度センサS1の検出値を用いる代わりに、クランク角度と相関がある燃焼室101内の圧力を用いることもできる。その場合、放電2次電流I2は、1燃料サイクル中の燃焼室101内の圧力推移に応じて変化させることができる。燃焼室101内の圧力は、予め実験的に求めたエンジン回転数、吸気圧、吸気温、吸入空気量、吸排気バルブタイミング等と筒内圧推移との関係を用い、各種センサの検出結果から予測してもよく、あるいは、エンジンEの気筒E1に圧力センサを設けて検出してもよい。また、空燃比検出部についても、空燃比センサS2の検出値を用いる代わりに、各種センサの検出結果からの予測値を用いることができる。図2に示したその他の各種センサについても、同様である。
ところで、希薄燃焼時には、燃焼室101内に生じる気流が高流速となり、火花放電の形成に大きく影響する。前述した放電の吹き消えは、放電2次電流I2と相関があり、放電2次電流I2が低下すると、放電の吹き消えが生じやすくなる。また、気流速度が速いほど、吹消電流I2boは高くなる。
したがって、フィードバック制御部33にて、放電2次電流I2の上限閾値I2THH及び下限閾値I2THLを設定する際には、放電2次電流I2の低下による吹き消えが生じないように、下限閾値I2THLを、気流速度に応じた吹消電流I2bo以上とするのがよい。例えば、図4に示すように、放電2次電流I2の目標値I2tgtが徐々に低下する場合には、放電初期には、目標値I2tgtに基づいて下限閾値I2THLが徐々に更新されるが、吹消電流I2boに達したら、それ以降は吹消電流I2boを維持するように、フィードバック制御されることになる。また、気流速度が速いほど、吹消電流I2boの絶対値が大きくなるように設定するとよい。
このように、1燃焼サイクル中において、放電2次電流I2が、気流速度に応じて設定された吹消電流I2boを下回らないように制御されるので、吹き消えの発生を抑制できる。また、クランク角度や空燃比の変化に応じて、放電2次電流I2の目標値I2tgtが随時更新されるので、過剰な放電エネルギが投入されるのを抑制できる。これにより、良好な着火性を維持しつつ、必要な放電エネルギを効率よく供給できる。
図5に示すように、一般に、放電エネルギが大きくなるほど、着火可能な空燃比の限界値(すなわち、着火限界A/F)は大きくなる。言い換えれば、放電エネルギが一定であるとき、着火限界A/Fの値が大きいほど、着火性が良好でありエネルギ効率が高い。図示するように、基準値による制御時(図5中の基準値制御)に比べて、放電2次電流I2を目標値I2tgtに応じた制御(図5中のI2tgt制御)とすることで、全体に着火限界A/Fが大きくなる方向へシフトしており、着火性が向上することがわかる。
ここで、燃焼室101内の気流速度は、気流速度センサS3を用いて検出してもよく、あるいは、放電伸びと放電2次電圧V2とが相関があることを利用して推定してもよい。気流によって火花ギャップGに生じた放電が伸びると、火花ギャップGの2次電圧V2が大きくなり、気流が速いほど放電伸びが大きくなるので、例えば、放電2次電圧V2の単位時間あたりの変化量から、気流速度を推定することができる。このように、気流速度センサS3による検出値や放電2次電圧V2を利用した推定値を用いると、サイクル毎、気筒毎の気流速度を速やかに算出して、フィードバック制御に反映させることができ、より望ましい。その他、エンジン回転数、吸気圧、吸気温、吸入空気量、吸排気バルブタイミング等をパラメータとし、予め実験的に求めたこれらパラメータと気流速度との関係式、あるいはマップを用いて、気流速度を予測してもよい。
なお、図4では、全放電期間において必要な放電エネルギ密度となるように、放電2次電流I2の目標値I2tgtを設定した場合を示しているが、図6、図7に示すように、放電期間の少なくとも一部について、放電エネルギ密度が低減されるように制御してもよい。図6に示す例では、必要な放電エネルギ密度との差が小さい放電期間の前半については、放電2次電流I2の目標値I2tgtを、基準値に設定し、放電期間の中期において徐々に目標値I2tgtを低減させて、必要な放電エネルギ密度に近づける。放電期間の後半には、必要な放電エネルギ密度との差がごく小さくなるので、放電2次電流I2の目標値I2tgtを所定の一定値に設定する。これにより、図5中に斜線で示すように、放電期間の中期から後半に向けて、供給される放電エネルギ量を低減することができる。
あるいは、図7に示すように、放電期間のうちの複数の期間、例えば、初期、中期、後期の一部について、必要な放電エネルギ密度となるように、放電2次電流I2の目標値I2tgtを、基準値よりも低減する。それ以外の期間は、基準値に設定される。この場合にも、上死点TDCに近いほど、すなわち初期から後期へ向けて、目標値I2tgtの絶対値が小さくなる。このようにしても、図6中に斜線で示すように、目標値I2tgtを基準値よりも低減させた期間に応じて、相当する放電エネルギ量を低減することができる。
次に、点火制御部3で実行される点火制御の基本動作を、図8のタイムチャートを参照しながら説明する。タイムチャートは、クランク角度を共通の横軸として、燃焼室101の圧力Pc、点火信号IGt、放電維持信号IGw、フィードバック信号(すなわち、図7中のF/B信号)SFB、放電スイッチ信号Sd、昇圧信号Sc、コンデンサ43に蓄積される供給電圧Vc、1次電流I1、放電2次電流I2について、それぞれの時間変化を示している。ここでは、図4と同様に、圧縮行程点火の全放電期間において、必要な放電エネルギ密度となるように制御した場合を例示し、燃焼室101内の圧力Pcは、上死点TDCへ向けて徐々に上昇している。
点火制御部3は、上記した各種センサの検出値から知られるエンジンEの運転状態に応じて、点火信号IGtを生成し、所定のタイミングで、昇圧回路4の昇圧用ドライバ40及び点火用スイッチTr1に出力する。また、放電維持信号IGwを生成し、所定のタイミングで、補助電源回路5の補助用ドライバ50に出力する。補助用ドライバ50には、放電維持信号IGwに先立つタイミングで、目標2次電流信号IGaに基づくフィードバック閾値信号が出力され、これら信号に基づいて、フィードバック信号SFB及び放電スイッチ信号Sdが出力される。
まず、放電期間に先立つクランク角度CA1にて、点火信号IGtがハイレベル(すなわち、図中のHi)に立ち上がると、点火信号IGtがローレベル(すなわち、図中の0)に立ち下がる放電開始クランク角度CAstまでの間、点火用スイッチTr1がオンとなる。これにより、1次コイル21に1次電流I1が通電される。
また、点火信号IGtがハイレベルとなっている間に、昇圧用ドライバ40から昇圧用スイッチTr2に、パルス状の昇圧信号Scが印加される。これにより、所定の期間、所定の周期で昇圧用スイッチTr2のオンオフが切り換えられる。この所定の期間中、放電維持信号IGwはローレベルであり、補助電源回路5は駆動されないので、コンデンサ43に昇圧用スイッチTr2のオンオフ回数に応じたエネルギが蓄積され、供給電圧Vcはステップ状に上昇する。
放電開始クランク角度CAstにて点火信号IGtがローレベルになると、点火用スイッチTr1がオフとなり、1次コイル21の1次電流I1が遮断される。このとき、1次コイル21に自己誘電作用による1次電圧V1が発生し、2次コイル22の2次電圧V2が上昇する。この2次電圧V2が、点火プラグPの火花ギャップGに印加されて、火花放電が発生すると、放電2次電流I2が流れる。
放電開始クランク角度CAstにて点火信号IGtがローレベルになると、放電維持信号IGwがハイレベルに立ち上がる。補助用ドライバ50は、放電維持信号IGwがハイレベルとなっている間、放電2次電流I2の検出値に基づくフィードバック信号SFBと同期して、放電スイッチ信号Sdを出力し、放電用スイッチTr3をオンオフ駆動する。フィードバック信号SFBは、放電開始クランク角度CAst以降の放電2次電流I2が0の間、及び、放電2次電流I2の絶対値が0から急増して上限閾値I2THHに達するまでの間、ハイレベルとなっている。
放電スイッチ信号Sdは、放電維持信号IGwとフィードバック信号SFBの両方がハイレベルになると、ハイレベルに立ち上がり、放電用スイッチTr3をオンする。これにより、放電用スイッチTr3を介して、1次コイル21の接地側とコンデンサ43の間の通電経路が開放され、1次コイル21の1次電流I1が低下すると、補助電源回路5からのエネルギ供給が可能になる。これにより、1次コイル21の接地側に、コンデンサ43に蓄積されたエネルギが投入されて、1次コイル21に1次電流I1が流れ、2次コイル22の放電2次電流I2が重畳される。コンデンサ43の供給電圧Vdcは、徐々に減少する。
フィードバック信号SFBは、放電2次電流I2が上限閾値I2THHに達すると、ローレベルに切り換わる。すると、放電スイッチ信号Sdがローレベルになり、放電用スイッチTr3をオフする。これにより、放電2次電流I2の絶対値が低下して、下限閾値I2THLに達すると、フィードバック信号SFBは、再びハイレベルに切り換わる。これを繰り返すことで、放電2次電流I2を、上限閾値I2THHと下限閾値I2THLの間に制御することができる。
上限閾値I2THHと下限閾値I2THLは、放電2次電流I2の目標値I2tgtと共に周期的に更新される。クランク角度CAが上死点TDCに近づき、燃焼室101内の圧力が上昇するにつれて、上限閾値I2THHと下限閾値I2THLの絶対値は小さくなる。下限閾値I2THLが、所定の吹消電流I2boまで低下すると、それ以降は、吹消電流I2boが下限閾値I2THLとなるように、制御される。
その後、放電終了クランク角度CAendにて、放電維持信号IGwがローレベルになるまでの間、フィードバック信号SFBに基づいて、放電用スイッチTr3のオンオフが切り換えられる。このようにして、所定の放電期間、過不足なくエネルギ供給がなされ、放電が維持される。
ここで、図9のフローチャートを用いて、放電2次電流I2の目標値I2tgtとその上限閾値I2THH及び下限閾値I2THLの算出ルーチンの一例を説明する。図8において、放電2次電流算出ルーチンを開始すると、まず、ステップS1において、エンジンEの運転状態を検出する。具体的には、上記図2に示した各種センサ、例えば、クランク角度センサS1の検出信号を基にエンジン回転数を算出し、吸入空気量センサS4、吸気圧・吸気温センサS5、エンジン水温センサS7の検出信号から、エンジンEへの吸入空気量、吸気圧・吸気温、エンジン水温を読み込む。
ステップS2では、空燃比センサS2の検出信号から空燃比A/Fを検出する。また、エンジンEの運転状態から、点火プラグPの放電開始時期と放電期間を決定し、対応する放電開始クランク角度CAst、放電終了クランク角度CAendを読み込む。例えば、エンジン回転数と、アクセル開度センサS9にて検出されるアクセル開度を用いて要求トルクを算出し、要求トルクに基づくエンジン負荷に対応するように、エンジン運転状態ごとに用意されたマップ等を参照して、最適な放電開始時期と放電期間を算出することができる。また、目標点火エネルギを算出し、基準となる放電エネルギ密度を算出することができる。空燃比A/Fを、エンジンEの運転状態に基づくマップ等を参照して、推定することもできる。放電開始クランク角度CAst、放電終了クランク角度CAendは、例えば、圧縮TDC後クランク角度とする。
ステップS3では、気流速度センサS3の検出信号から気流速度を検出する。続くステップS4では、気流速度をパラメータとする吹消電流マップを読み込み、電流下限値I2minを、検出された気流速度に対応する吹消電流I2boに書き換える(すなわち、I2min=I2bo)。図10は、気流速度をパラメータとする吹消電流マップの一例で、両者はほぼ比例の関係にあり、気流速度が速くなるほど、吹消電流I2boの値を高くする。
次いで、ステップS5において、クランク角度センサS1の検出信号からクランク角度CAを検出し、ステップS6において、クランク角度CAが放電開始クランク角度CAst以上か否かを判定する(すなわち、CA≧CAst?)。ステップS6が肯定判定された場合は、ステップS7へ進み、否定判定された場合は、ステップS5へ戻る。
ステップS7では、検出された空燃比A/F、クランク角度CAに対応する目標値I2tgt(CA)マップを読み込む。図11は、空燃比A/F、クランク角度CAに対する目標値I2tgt(CA)マップの一例であり、上死点TDCを挟んで遅角側又は進角側となるほど、また、空燃比A/Fが大きくなるほど、目標値I2tgtを高くする。圧縮行程点火では、上死点TDCに対し進角側であるので、より進角側において目標値I2tgtが高くなる。
次いで、ステップS8において、目標値I2tgt(CA)が電流下限値I2min以上か否かを判定する(すなわち、I2tgt≧I2min?)。ステップS8が肯定判定された場合は、ステップS9へ進み、否定判定された場合は、ステップS10へ進む。
ステップS9では、下限閾値I2THLを目標値I2tgt(CA)に書き換える(すなわち、I2THL=I2tgt)。次いで、ステップS11に進んで、上限閾値I2THHを下限閾値I2THL+aに書き換える(すなわち、I2THH=I2THL+a)。ここで、aの値は、チャタリング等でスイッチ動作上、不具合が発生しない範囲で任意に設定することができる。ステップS10では、下限閾値I2THLを電流下限値I2minに書き換えて(すなわち、I2THL=I2min)、ステップS11に進む。
その後、ステップS12において、検出されたクランク角度CAが放電終了クランク角度CAend以上か否かを判定する(すなわち、CA≧CAend?)。ステップS12が肯定判定された場合は、本ルーチンを一旦終了し、否定判定された場合は、ステップS5へ戻る。
本ルーチンでは、下限閾値I2THLを、放電2次電流I2の目標値I2tgt(CA)に設定し、所定の値aを加算した上限閾値I2THHにするので、必要な放電エネルギ密度が確実に得られ、着火性を向上させる。下限閾値I2THLと上限閾値I2THHを、目標値I2tgt(CA)の中央値となるように、設定することもできる。
このようにして設定された上限閾値I2THHと下限閾値I2THLを用いて、図12のフローチャートにより、点火プラグPの放電2次電流I2を目標値I2tgtをフィードバック制御することができる。図12において、放電制御ルーチンを開始すると、まず、ステップS21において、クランク角度CAが放電開始クランク角度CAstとなったタイミングで、点火信号IGtがローレベルとなり、放電が開始される(すなわち、CA=CAst、IGt=0)。
ステップS22では、放電維持信号IGwがハイレベルか否かを判定する(すなわち、IGw=Hi?)。ステップS22が肯定判定された場合は、ステップS23へ進み、放電2次電流I2を検出すると共に、下限閾値I2THLと上限閾値I2THHとを読み込む。次いで、ステップS24へ進んで、検出された放電2次電流I2が下限閾値I2THL以上か否かを判定する(すなわち、I2≧I2THL?)。ステップS24が肯定判定された場合は、ステップS25へ進み、否定判定された場合は、ステップS26へ進んで、放電用スイッチTr3をオンした後(すなわち、放電用スイッチ信号Sd=Hi)、ステップS22へ戻る。
ステップS25では、検出された放電2次電流I2が上限閾値I2THH以下か否かを判定する(すなわち、I2≦I2THH?)。ステップS25が肯定判定された場合は、ステップS22へ戻り、否定判定された場合は、ステップS27へ進んで、放電用スイッチTr3をオフした後(すなわち、放電用スイッチ信号Sd=0)、ステップS22へ戻る。
ステップS22が否定判定された場合は、ステップS28へ進んで、放電用スイッチTr3をオフした後(すなわち、放電用スイッチ信号Sd=0)、ステップS29へ進んで、放電を終了し(すなわち、CA=CAend)、本ルーチンを終了する。
本ルーチンにより、放電維持信号IGtが出力されている間、下限閾値I2THLと上限閾値I2THHを随時更新しながら、検出された放電2次電流I2をフィードバック制御し、目標値I2tgt(CA)の近傍に維持することができる。
(参考形態2)
参考形態2として図13に示すタイムチャートについて、次に説明する。膨張行程点火の場合においても、同様にして、図9、図12に示したフローチャートにより、放電2次電流I2の目標値I2tgtを算出し、上限閾値I2THH及び下限閾値I2THLに基づく放電制御を実行することができる。点火制御装置1の構成は、参考形態1と同様であり、説明を省略する。
なお、参考形態2以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
点火時期が上死点TDCに対し遅角側である膨張行程点火では、図9のステップS7で用いる目標値I2tgt(CA)マップにおいて、遅角側ほど目標値I2tgtが高くなる。言い換えれば、放電開始クランク角度CAstから放電終了クランク角度CAendまでの放電期間において、上死点TDCに近い放電初期ほど、目標値I2tgtが低くなり、必要な放電エネルギ密度が低下する。そのため、図9のステップS8において、クランク角度CAに対応する目標値I2tgt(CA)が電流下限値I2min未満となると、ステップS10において、下限閾値I2THLが電流下限値I2min、すなわち吹消電流I2boとなる。
したがって、図13に示すように、放電開始クランク角度CAstにおいて、1次電流I1が遮断されるのと同時に放電2次電流I2が急増する。その場合は、図9のステップS9において、下限閾値I2THLが目標値I2tgtとなる。そして、図12のステップS24、S25において、検出される放電2次電流I2が下限閾値I2THL以上、上限閾値I2THH以上となるので、フィードバック信号SFBはローレベルに切り換わって、放電用スイッチTr3はオンとならない。その後、放電2次電流I2が下限閾値I2THLを下回ると、放電用スイッチTr3がオンとなり、以降、上限閾値I2THHとの間となるようにフィードバック制御される。
この場合も、放電2次電流I2が略一定の場合に対して、放電初期側の放電2次電流I2の目標値I2tgtが低くなることで、必要な放電エネルギ密度に近づけるように制御できる。その結果、基準値による制御時に比べて、放電エネルギ量が大幅に低減し着火性を確保しつつ、無駄な放電エネルギの消費を抑制して、電極消耗を抑制することができる。
(参考形態3)
参考形態3の点火制御装置1について、図14〜図16を参照しながら説明する。上記各参考形態では、点火コイル2へ電源回路部10の主電源回路11と補助電源回路5とから電源を供給する構成としたが、点火プラグPへの連続放電が可能な点火方式であれば、どのように構成されていてもよい。例えば、点火プラグPへの通電を、複数の並列配置された電源回路から行うようにしてもよい。
本形態では、電源回路部10に複数の電源回路13、14を設けると共に、点火プラグPに接続される複数の点火コイル2A、2Bを設けて、点火プラグPへの放電エネルギの供給を交互に行うようにする。電源回路部10には電圧レギュレータ7が設けられ、第1点火コイル2Aに接続される第1電源回路13と第2点火コイル2Bに接続される第2電源回路14に、それぞれ電圧レギュレータ7から電圧供給可能としている。
第1、第2点火コイル2A、2Bは、それぞれ1次コイル21a、21b、2次コイル22a、22bを備え、1次コイル21a、21bの一端側が電圧レギュレータ7のプラス端子に接続されている。1次コイル21a、21bの他端側は、それぞれ通電用スイッチTr4、Tr5を介して接地されている。第1電源回路13は、通電用スイッチTr4が、電圧レギュレータ7から第1点火コイル2Aの1次コイル21aへの通電経路を開閉し、第2電源回路14は、通電用スイッチTr5が、電圧レギュレータ7から第2点火コイル2Bの1次コイル21bへの通電経路を開閉する。
電圧レギュレータ7は、例えば、公知のDC−DCコンバータであり、リレー71を介してバッテリBに接続されている。電圧レギュレータ7は、バッテリBの直流電圧を、所望の供給電圧V1に昇圧し、第1、第2点火コイル2A、2Bに供給する。電圧レギュレータ7のマイナス端子は接地されている。第1、第2点火コイル2A、2Bの2次コイル22a、22bは、整流素子61a、61bを介して、点火プラグPに接続されている。
点火制御部3は、上記各参考形態と同様に、放電開始時期及び放電期間を設定する放電時期設定部31と、放電2次電流I2の目標値I2tgtを設定する目標電流設定部32と、上限閾値I2THH及び下限閾値I2THLを設定するフィードバック制御部33を有している。また、上記した各種センサS1〜S8の検出信号が入力されており、上記各参考形態と同様に、これら検出値に基づく各種信号を生成して、点火プラグPの点火動作を制御する。以下、相違点を中心に説明する。
放電時期設定部31は、各種センサS1〜S8の検出値から知られるエンジンEの運転状態に応じて、点火を開始するための点火信号IGTa、IGTbを生成し、点火制御部3の一部を構成する通電用ドライバ30に出力する。また、放電を維持するための放電維持信号IGwが生成される。通電用ドライバ30は、これら信号に基づく所定のタイミングで、通電信号SWa、SWbを交互に出力する。これにより、通電用スイッチTr4、Tr5がオンオフ駆動されて、第1、第2点火コイル2A、2Bが交互に通電される。電圧レギュレータ7の供給電圧V1は、内蔵される供給電圧検出部にて検出され、通電用ドライバ30に出力される。
また、放電時期設定部31により放電維持信号IGwが生成され、目標電流設定部32により、目標2次電流信号IGaが、フィードバック制御部33によりフィードバック閾値信号が、それぞれ生成される。これら各部の基本動作は、上記各参考形態と同様であり、説明を省略する。
通電用ドライバ30には、供給電圧制御部34が設けられる。本形態では、放電2次電流I2を、目標値I2tgtに基づく上限閾値I2THHと下限閾値I2THLの間に制御するために、供給電圧V1を変化させる。供給電圧制御部34は、フィードバック回路6から入力される放電2次電流I2と、電圧レギュレータ7から入力される供給電圧V1に基づいて、目標電圧Vreqを算出し、電圧レギュレータ7へ出力する。これにより、電圧レギュレータ7の供給電圧V1が、目標電圧Vreqとなるように制御される。
図15のタイムチャートにより、供給電圧制御部34を用いた放電2次電流I2制御の一例を示すように、まず、放電期間に先立つクランク角度CA1にて、点火信号IGTaがハイレベルに立ち上がると、ローレベルに立ち下がる放電開始クランク角度CAstまでの間、通電信号SWaが出力される。これにより、通電用スイッチTr4がオンとなり、第1点火コイル2Aの1次コイル21aに1次電流I1aが通電される。次いで、所定の期間τ/2後のクランク角度CA2にて、点火信号IGTbがハイレベルに立ち上がると、通電信号SWbが出力される。これにより、通電用スイッチTr5がオンとなり、第2点火コイル2Bの1次コイル21bに1次電流I1aが通電される。
これに先立ち、電圧レギュレータ7の供給電圧V1は、バッテリBより十分高い電圧に昇圧されている。放電開始クランク角度CAstにて点火信号IGTaがローレベルになると、通電信号SWaがローレベルとなり、通電用スイッチTr4がオフとなって、1次コイル21aの1次電流I1aが遮断される。これに伴い2次コイル22aの2次電圧V2aが上昇し、点火プラグPの火花ギャップGに印加されて、放電2次電流I2が流れる。放電2次電流I2は、三角波状に流れて上限閾値I2THHの近傍に達した後、減衰する。
続いて、放電開始クランク角度CAstから期間τ/2後に、点火信号IGTbがローレベルになると、通電信号SWbがローレベルとなり、通電用スイッチTr4がオフとなって、1次コイル21bの1次電流I1bが遮断される。これに伴い2次コイル22bの2次電圧V2bが上昇し、点火プラグPの火花ギャップGに印加される。すると、下限閾値I2THLの近傍まで低下していた放電2次電流I2が、再び上昇する。
放電維持信号IGwが出力されている間は、周期τ、デューティ比τ/2にて、通電信号SWaと通電信号SWbが交互にオンオフされる。すなわち、通電信号SWbがローレベルとなると、通電信号SWaが再びハイレベルとなり、期間τ/2後に再びローレベルとなると、通電信号SWbが再びハイレベルとなる。これを繰り返すことで、第1点火コイル2Aと第2点火コイル2Bに交互に蓄えられたエネルギを、点火プラグPに連続的に投入することができる。
この場合も、クランク角度センサS1で検出されるクランク角度CAに応じて、目標値I2tgtに基づく上限閾値I2THHと下限閾値I2THL目標値I2tgtが、随時更新される。また、フィードバック回路6から入力される放電2次電流I2の検出信号が、上限閾値I2THHと下限閾値I2THL目標値I2tgtの間に維持されるように、供給電圧V1の目標電圧Vreqが設定される。このとき、放電2次電流I2を検出するために、通電信号SWaと通電信号SWbのオンオフが切り換わり、放電2次電流I2が最小又は最大となるタイミングで、電流検出トリガ信号SWL又は電流検出トリガ信号SWHが出力される。
図16のフローチャートに示すように、本形態における放電制御ルーチンを開始すると、まず、ステップS101において、点火信号IGTaがローレベルとなり、クランク角度CAが放電開始クランク角度CAstとなったタイミングで、放電が開始される(すなわち、CA=CAst)。
ステップS102では、放電維持信号IGwがハイレベルか否かを判定する(すなわち、IGw=Hi?)。ステップS102が肯定判定された場合は、ステップS103へ進み、電流検出トリガ信号SWLがハイレベルか否かを判定する(すなわち、SWL=Hi?)。ステップS103が肯定判定された場合は、ステップS104へ進み、放電2次電流I2を検出する。次いで、ステップS104へ進み、検出した放電2次電流I2を最小電流I2Lとした後(すなわち、I2L=I2)、ステップS102へ戻る。
ステップS103が否定判定された場合は、ステップS106へ進み、電流検出トリガ信号SWHがハイレベルか否かを判定する(すなわち、SWH=Hi?)。ステップS106が肯定判定された場合は、ステップS107へ進み、放電2次電流I2を検出する。次いで、ステップS108へ進み、検出した放電2次電流I2を最大電流I2Hとした後(すなわち、I2H=I2)、ステップS108へ進む。ステップS106が否定判定された場合は、ステップS102へ戻る。
ステップS109では、最小電流I2Lが下限閾値I2THL以上か否かを判定する(すなわち、I2L≧I2THL?)。ステップS109が肯定判定された場合は、ステップS110へ進み、最大電流I2Hが上限閾値I2THH以上か否かを判定する(すなわち、I2H≧I2THH?)。ステップS110が肯定判定された場合は、ステップS111へ進み、ステップS110が否定判定された場合は、ステップS102へ戻る。
ステップS111では、上限閾値I2THHと最大電流I2Hの差I2def(すなわち、I2def=I2THH−I2H;I2def≦0)を算出し、ステップS113へ進む。また、ステップS109が否定判定された場合は、ステップS112へ進んで、下限閾値I2THLと最小電流I2Lの差I2def(すなわち、I2def=I2THH−I2L;I2def≧0)を算出し、ステップS113へ進む。
ステップS113では、算出した最小電流I2L又は最大電流I2Hとの差I2defが供給電圧V1の変化と相関があることを利用し、定数Cを用いて電圧変化幅V2defを算出する(すなわち、V2def=C×I2def)。ステップS114では、電圧レギュレータ7に内蔵する供給電圧検出部の検出信号から、供給電圧V1を検出し、これらを基に、ステップS115にて、目標電圧Vreqを算出する(すなわち、Vreq=V1+Vdef)。ステップS116にて、目標電圧Vreqを電圧レギュレータ7に出力し、供給電圧V1を変更した後、ステップS102へ戻る。ステップS102が否定判定された場合は、ステップS117へ進んで、放電を終了し、本ルーチンを終了する。
本ルーチンにより、図15のタイムチャートに示す最大電流I2Hが上限閾値I2THH以上となったとき、又は、最小電流I2Lが下限閾値I2THL以下となったときに、その差I2defに応じた目標電圧Vreqに供給電圧V1が変更される。これにより、放電2次電流I2を目標値I2tgt(CA)の近傍に維持することができる。
(実施形態1)
実施形態1の点火制御装置1について、図17〜図20を参照しながら説明する。上記各参考形態では、単一の点火プラグPへ、電源回路部10の複数の電源回路又は複数の点火コイル2から通電する構成としたが、本形態では、複数の点火プラグPA、PBを用い、それぞれに接続された複数の点火コイル2A、2Bへ、順次、電源回路部10から電源を供給する。この場合も、点火プラグPA、PBへの通電を、点火制御部3にて制御して、点火プラグPA、PBを連続的に放電することが可能になる。
本形態において、電源回路部10の基本構成は、上記参考形態3と同様とすることができる。例えば、第1点火プラグPAに第1点火コイル2Aを接続して、第1電源回路13から通電し、第2点火プラグPBに第2点火コイル2Bを接続して、第2電源回路14から通電する。この場合は、必ずしも電源回路部10に電圧レギュレータ7に設ける必要はなく、例えば、バッテリBと第1、第2点火コイル2A、2Bとの間を、通電用スイッチTr4、Tr5で開閉する構成とすることができる。
第1点火プラグPAと第2点火プラグPBは、先端電極部が燃焼室101内に位置するように、エンジンEの吸気バルブVinと排気バルブVexの間に並設される。第1、第2点火プラグPA、PBは、先端電極部に形成される火花ギャップGの長さが異なる以外は、同等の構造を有する。第1、第2点火プラグPA、PBは、それぞれ、先端に電極チップを有する中心電極P1と、平板状の接地電極P2とを有し、軸方向に対向する両電極の距離を、電極間距離GAPa、GAPbとしている。ここでは、第1点火プラグPAの電極間距離GAPaが、第2点火プラグPBの電極間距離GAPbより長くなるように形成される(すなわち、GAPa>GAPb)。
点火制御部3は、上記参考形態3と同様に、放電時期設定部31にて放電開始時期と放電期間を設定して、第1点火プラグPAと第2点火プラグPBの点火を開始するための点火信号IGTa、IGTbを生成し、第1点火コイル2A、第2点火コイル2Bへの通電を制御する。また、1燃焼サイクル中に火花放電を形成させる点火プラグPを順次切り換えるプラグ切換部35を有する。プラグ切換部35は、このとき、放電期間の前半に第1点火プラグPAによる点火を行い、後半に第2点火プラグPBによる点火を行って、放電エネルギの投入先を切り換えることで、放電エネルギ密度を制御する。
図18の上段に示すように、第1、第2点火プラグPA、PBの電極P1、P2間に形成される火花ギャップGに形成される放電は、燃焼室101内の気流(図中に矢印で示す)によって側方に流され、放電経路が引き伸ばされる。このとき、電極間距離GAPa、GAPbが長いと、放電の起点が広がるため放電経路が長くなる。図18の下段に示すように、放電経路が長いほど、放電時の平均2次電圧は高くなるため、平均エネルギ密度が高くなる。
放電エネルギ密度は、第1、第2点火プラグPA、PBの放電時に流れる放電2次電流IV2と電極間に印加される2次電圧(以下、電極間電圧と称する)V2の積であり、上述したように、電極間距離GAPa、GAPbを変化させて、電極間電圧V2を変化させることができる。すなわち、電極間距離GAPaがより長い第1点火プラグPAは、放電エネルギ密度がより大きくなり、電極間距離GAPbがより短い第2点火プラグPBは、放電エネルギ密度がより小さくなる。このとき、上記各参考形態と同様に、クランク角度CAが上死点TDCに近いほど、火花ギャップGの長さが短くなるように、第1、第2点火プラグPA、PBを選択することで、放電エネルギ密度を制御することができる。
例えば、圧縮行程点火の場合には、図19のタイムチャートに示すように、まず、点火信号IGTaを出力して、第1点火プラグPAに点火し、次いで、点火信号IGTbを出力して、第2点火プラグPBに点火することで、段階的に放電エネルギ密度を変化させることができる。すなわち、放電初期には、第1点火プラグPAを放電させることにより、電極間電圧V2を高くして、放電エネルギ密度を高くする。その後、第2点火プラグPAに切り換えると、電極間電圧V2が低くなるので、上死点TDCにより近くなる放電後期に、放電エネルギ密度が低くなる。これにより、必要な放電エネルギ密度の変化に対応させて、効果的に放電制御することができる。
具体的には、エンジンEの運転条件に応じて、最適となる点火時期SA(すなわち、第1点火プラグPAの放電開始時期)を決定し、必要なコイル充電時間Tonに応じて、点火信号IGTaがハイレベルとなるクランク角度(例えば、図19のCAaon〜CAaend)を決定する。また、第1点火プラグPAの放電期間Taspkに応じて、点火信号IGTbがハイレベルとなるクランク角度(例えば、図19のCAbon〜CAbend)を決定し、第1点火プラグPAから第2点火プラグPBへの切り換わりを制御する。
図20にフローチャートに示すように、点火制御ルーチンを開始すると、ステップS201において、上記各参考形態と同様に、各種センサの検出信号からエンジンEの運転状態、例えば、エンジン回転数Ne、吸気圧Pim、空燃比A/Fを読み込む。次いで、ステップS202において、検出したエンジンEの運転状態に基づくマップ値として、点火時期SA(CA)、コイル充電時間Ton(ms)を読み込む。点火時期SAは、例えば、圧縮TDCクランク角度とする。
ステップS203では、点火信号IGTaの立ち下がり時期IGTaendを算出する。ここでは、立ち下がり時期IGTaend=点火時期SAとする。
また、ステップS204において、点火信号IGTaの立ち上がり時期IGTaonを、下記式1により算出する。
式1:IGTaon=点火時期SA−Ton×Ne×360×S
式1中、Sは、時間−クランク角度のスケール変換係数である。
続いて、ステップS205において、点火信号IGTaの充電期間と放電期間Taspk(ms)との関係を示すマップより、第1点火プラグPAの放電期間Taspkを読み込む。ステップS206では、第1点火プラグPAの放電終了時期Taend(CA)を、下記式2により算出する。
式2:Taend=点火時期SA+Taspk×Ne×360×S
その後、ステップS207において、点火信号IGTbの立ち下がり時期IGTbendを算出する。ここでは、立ち下がり時期IGTbend=Taendとする。ステップS208では、点火信号IGTbの立ち上がり時期IGTbonを、下記式3により算出する。
式3:IGTbon=IGTbend−Ton×Ne×360×S
ステップS209では、クランク角度CAmを検出し、次いで、ステップS210にて、検出されたクランク角度CAmが、第1点火プラグPAの立ち上がり時期IGTaonと立ち下がり時期IGTaendの間にあるかを判定する(すなわち、IGTaon≦CAm≦IGTaend?)。ステップS210が肯定判定された場合は、ステップS211へ進み、点火信号IGTaをハイレベルとして(すなわち、IGTa=Hi)、ステップS212へ進む。
ステップS210が否定判定された場合も、ステップS212へ進む。これにより、立ち上がり時期IGTaonから立ち下がり時期IGTaendまでのコイル充電時間Tonの間、通電用スイッチTr4がオンとなって、第1点火コイル2Aの1次コイル21aに充電される。コイル充電時間Ton後に、通電用スイッチTr4がオフとなると、図19に示す点火時期SAにおいて、第1点火プラグPAの電極間電圧V2が急増し、放電が開始される。
ステップS212では、検出されたクランク角度CAmが、第2点火プラグPBの立ち上がり時期IGTbonと立ち下がり時期IGTbendの間にあるかを判定する(すなわち、IGTbon≦CAm≦IGTbend?)。ステップS212が肯定判定された場合は、ステップS213へ進み、点火信号IGTbをハイレベルとして、ステップS209へ戻る。
ステップS212が否定判定されたら、本ルーチンを終了する。これにより、点火時期SA後の所定の立ち上がり時期IGTbonから立ち下がり時期IGTbendまでのコイル充電時間Tonの間、通電用スイッチTr5がオンとなって、第2点火コイル2Bの1次コイル21bに充電される。その後、図19に示すクランク角度CAbendにて、通電用スイッチTr5がオフとなると、第2点火プラグPBの電極間電圧V2が急増する。
これにより、第1点火プラグPAの放電期間Taspk後、速やかに第2点火プラグPBの放電が開始され、クランク角度CAmに応じて、効率よく放電エネルギを投入できる。したがって、第1点火プラグPAと第2点火プラグPBを連続的に点火動作させて、火花放電を維持することができる。また、複数の点火プラグPA、PBを用いることで、プラグ1つあたりに投入するエネルギは分散されるため、各点火プラグPA、PBの電極消耗が低減でき、プラグ寿命を長期化できる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。上記実施形態では、内燃機関として、ポート噴射式のガソリンエンジンを例示したが、例えば、筒内直接噴射式のガソリンエンジンであってもよい。また、車両用ガソリンエンジンに限らず、ディーゼルエンジンや車両用以外の各種内燃機関に適用することもできる。点火プラグは、上記実施形態で例示した構成に限るものではなく、取り付けられる内燃機関に応じた任意の構成とすることができる。
E ガソリンエンジン(内燃機関)
P 点火プラグ
G 火花ギャップ
1 点火制御装置
2 点火コイル
3 点火制御部
31 放電時期設定部
35 プラグ切換部
S1 クランク角度センサ(クランク角度検出部)

Claims (1)

  1. 1次コイル(21)及び2次コイル(22)を有する点火コイル(2)と、
    上記2次コイルに接続され、上記1次コイルへの通電のオンオフに伴う電磁誘導により、火花ギャップ(G)に火花放電を発生する点火プラグ(P)と、
    上記1次コイルへの通電をオンオフすることにより、燃焼室内に火花放電を開始させると共に、火花放電中の通電動作を制御する点火制御部(3)と、を備える内燃機関(E)の点火制御装置(1)であって、
    上記燃焼室内に、上記火花ギャップの長さ(GAPa、GAPb)が異なる複数の上記点火プラグ(PA、PB)を併設すると共に、上記内燃機関のクランク角度を検出するクランク角度検出部(S1)を備えており、
    上記点火制御部は、上記内燃機関の運転状態に応じて放電開始時期及び放電期間を設定する放電時期設定部(31)と、1燃焼サイクル中に火花放電を形成させる上記点火プラグを順次切り換えるプラグ切換部(35)を有し、上記プラグ切換部は、検出されるクランク角度が上死点(TDC)に近いほど、上記火花ギャップの長さが短い上記点火プラグに火花放電を形成させる、内燃機関の点火制御装置。
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