JP2021074748A - 絶縁性被膜を有する被溶接物の抵抗溶接方法 - Google Patents

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Hayaji Yamaguchi
隼司 山口
鈴木 雅人
Masato Suzuki
雅人 鈴木
冨村 宏紀
Hiroki Tomimura
宏紀 冨村
朝田 博
Hiroshi Asada
博 朝田
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Abstract

【課題】絶縁性被膜を有する被溶接物の抵抗溶接を簡略に行うことができ、両面に絶縁性被膜を有する被溶接物に適用できる抵抗溶接方法を提供する。【解決手段】本発明は、絶縁性被膜3を有する2個の被溶接物1を重ね合わせた組立体4の抵抗溶接方法であって、前記組立体4の内部に位置する前記絶縁性被膜3において第1損傷部11を形成する前処理工程と、前記第1損傷部11において抵抗溶接により第1溶接部12を形成する第1の溶接工程と、前記第1溶接部12の近傍において抵抗溶接により第2溶接部16を形成する第2の溶接工程と、を含むものである。機械的手段または加熱手段により前記絶縁性被膜3に損傷を与えて前記第1損傷部11を形成することが好ましい。1箇所または2箇所以上の前記第2溶接部16を形成することが好ましい。【選択図】図5

Description

本発明は、母材の表面に絶縁性被膜を有する被溶接物の抵抗溶接方法に関する。
金属部材同士を溶接する方法として様々な加熱手段が用いられる。そのうち、抵抗溶接は、重ね合わせた被溶接物を抵抗溶接電極で挟み、抵抗溶接電極から被溶接物の表面を通して溶接電流を付与し、ジュール熱を発生させることにより、被溶接物の接合面付近を加熱して溶融接着させる方法である。抵抗溶接方法は、短時間で効率的に溶接できるので、多くの分野で使用されている。
被溶接物が表面に電気的に絶縁性の被膜(本明細書では、「絶縁性被膜」と記載する。)を有する場合、それに抵抗溶接方法を適用すると、被溶接物に溶接電流を流すために十分な通電経路を確保できない。そのため、被溶接物の接合面を十分に加熱することできず、抵抗溶接を行うのが困難であった。また、必要な抵抗発熱量を得るために通電量を過度に高くすると、スパッタが発生して、外観不良や作業環境の悪化を招く恐れがあった。
上記の問題を解決するため、被溶接物の表面にある絶縁性被膜をレーザ光によって予め除去する方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1の図5は、片面に陽極酸化被膜を有するアルミニウム合金の被溶接物を例にした実施形態3を記載している。絶縁性の陽極酸化被膜が外側に位置するように2つの被溶接物を重ね合わせた後、被溶接物の表面にレーザ光を照射して陽極酸化被膜が除去された。次いで、陽極酸化被膜が除去された部分に抵抗溶接電極を接触させて被溶接物を挟み、被溶接物の接合面で溶接された。
特許文献1の方法では、絶縁性被膜をレーザ光により除去して母材を露出させた後に、母材に抵抗溶接電極を接触させて溶接箇所へ溶接電流を付与していたので、絶縁性被膜を除去する工程から溶接電流を付与する工程へ移行するのに時間を要し、溶接作業を迅速に行うことができないという問題があった。
そこで、上記の問題を解決するため、特許文献2の方法が提案されている。特許文献2には、母材の表面に絶縁性被膜が形成されている被溶接物に抵抗溶接電極を所定の押圧力で押し当てて接触させ、抵抗溶接電極に溶接電圧を印加しながら、抵抗溶接電極と被溶接物との接触部にレーザ光を照射する抵抗溶接方法が記載されている。
特開平10−225770号公報 特開2004−249308号公報
通常の溶接工程では、被溶接物における多数の箇所で連続的に溶接が施される。特許文献1および特許文献2の方法は、いずれも溶接個所ごとに絶縁性被膜をレーザ光で除去する必要がある。レーザ光照射装置の移動やレーザ光の照射などに時間と手間が掛かる。そのため、連続的な溶接作業において溶接方法を簡略化することが望まれている。
また、特許文献2の方法は、その原理からみて、重ね合わせた被溶接物の接合面には絶縁性被覆が設けられていない。そのため、両面に絶縁性被膜を有する被溶接物に適用することができない。重ね合わせた被溶接物の絶縁性被膜が対向する接合面は、通電抵抗が高いため、抵抗溶接により当該対向する領域に溶接部を形成することが困難であった。
本発明は、絶縁性被膜を有する被溶接物の抵抗溶接において、溶接作業を簡略に行うことができ、さらに、両面に絶縁性被膜を有する被溶接物に適用することができる抵抗溶接方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するために検討した結果、絶縁性被膜を損傷させた箇所で先行溶接部を形成することにより、当該先行溶接部の近傍において抵抗溶接に必要な通電性を確保できることを見出して、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下の抵抗溶接方法を要旨としている。
(1)絶縁性被膜を有する2個の被溶接物を重ね合わせた組立体の抵抗溶接方法であって、前記組立体の内部に位置する前記絶縁性被膜において第1損傷部を形成する前処理工程と、前記第1損傷部において抵抗溶接により第1溶接部を形成する第1の溶接工程と、前記第1溶接部の近傍において抵抗溶接により第2溶接部を形成する第2の溶接工程と、を含む、抵抗溶接方法。
(2)前記前処理工程は、機械的手段または加熱手段により前記絶縁性被膜に損傷を与えて前記第1損傷部を形成する、(1)に記載の抵抗溶接方法。
(3)前記第2溶接部は、1箇所または2箇所以上で形成する、(1)または(2)に記載の抵抗溶接方法。
(4)前記第2の溶接工程は、設定電流値を一定に設定して溶接する、(1)〜(3)のいずれかに記載の抵抗溶接方法。
(5)前記第2の溶接工程は、通電時間を2つの通電区間に分けて、各通電区間で異なる設定電流値を設定して溶接する、(1)〜(3)のいずれかに記載の抵抗溶接方法。
(6)前記絶縁性被膜は、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)の少なくとも1種を含む酸化被膜である、(1)〜(5)のいずれかに記載の抵抗溶接方法。
(7)前記被溶接物は、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnMg相がめっき層中に分布した溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板である、(1)〜(6)のいずれかに記載の抵抗溶接方法。
本発明によれば、絶縁性被膜を有する被溶接物において、先行溶接部以外の領域では、絶縁性被膜を除去する前処理を施さなくても抵抗溶接が行われる。そのため、前処理に要する時間が短縮され、多数の箇所で連続的に溶接をすることができるので、溶接作業全体の効率が向上する。
絶縁性被膜の損傷部を形成する前処理工程を説明するための図である。 第1溶接部を形成する第1の溶接工程を説明するための図である。 第2溶接部を形成する第2の溶接工程の第1段階を説明するための図である。 第2溶接部を形成する第2の溶接工程の第2段階を説明するための図である。 第2溶接部を形成する第2の溶接工程の第3段階を説明するための図である。 バイパス通電と電圧電流変化との関係を示す図である。 第1実施形態における通電時間と電流値との関係を示す図である。 第2実施形態における通電時間と電流値との関係を示す図である。 前処理の一例を示す図である。 前処理の一例を示す図である。 前処理の一例を示す図であり、(a)は、打ち抜くときの形態を示し、(b)は、打ち抜いた後の形態を示す図である。 前処理の一例を示す図である。 前処理の一例を示す図である。 両面めっき鋼板に適用した例を示す図である。 片面めっき鋼板に適用した例を示す図であり、鋼板対向面において絶縁性被膜と母材とが接した例である。 片面めっき鋼板に適用した例を示す図であり、鋼板対向面において両方の絶縁性被膜が対向した例である。
以下、本発明に係る実施形態について説明する。本発明は、以下の説明に限定されるものではない。
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、絶縁性被膜を有する2個の被溶接物を重ね合わせた組立体の抵抗溶接方法である。そして、前記組立体の内部に位置する前記絶縁性被膜において第1損傷部を形成する前処理工程と、前記第1損傷部において抵抗溶接により第1溶接部を形成する第1の溶接工程と、前記第1溶接部の近傍において抵抗溶接により第2溶接部を形成する第2の溶接工程と、を含むものである。
(被溶接物)
被溶接物は、母材の表面に絶縁性被膜を有する。2個の被溶接物を重ね合わせて組立体を形成する。組立体を治具(図示を省略する。)によって固定することが好ましい。被溶接物は、板材、形材、管材など、その表面に電気的な絶縁性の被膜を有する物品であれば、特に限定されない。めっき層を鋼板の表面に有する両面めっき鋼板や片面めっき鋼板の被溶接物が好ましい。板厚が0.4〜2.3mmの鋼板に適用してもよい。
本実施形態に係る絶縁性被膜は、被膜全体が絶縁性を有するものに限られない。表面側部分が絶縁性を有し、内側部分が導電性を有する被膜である場合も含まれる。
母材の両面に絶縁性被膜を有する被溶接物を用いる場合を、被溶接物の断面を示す図14により模式的に例示する。図14の被溶接物は、両面めっき鋼板5である。2個の当該両面めっき鋼板5(被溶接物)を重ね合わせて組立体4が形成されると、当該組立体4の内部では絶縁性被膜3が対向するように接している。当該組立体4の外表面にも絶縁性被膜3を有している。
母材の片面に絶縁性被膜を有する被溶接物を用いる場合を、被溶接物の断面を示す図15と図16により模式的に例示する。図15及び図16の被溶接物は、片面めっき鋼板6である。2個の当該片面めっき鋼板6(被溶接物)を重ね合わせて組立体4が形成されると、当該被溶接物6を重ねる向きによって2通りの形態がある。図15に示すように、当該組立体4の内部では一方の被溶接物の絶縁性被膜3と他方の被溶接物の母材2とが接している。そして、当該組立体4の外表面の一方に絶縁性被膜3が現れている。また、図16に示すように、当該組立体4の内部では絶縁性被膜3が対向するように接しており、当該組立体4の外表面にはいずれも母材2が現れている。
(前処理工程)
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、組立体の内部に位置する絶縁性被膜において第1損傷部を形成する前処理工程を含む。前処理工程においては、組立体の内部に位置する絶縁性被膜を部分的に除去することにより、当該絶縁性被膜に第1損傷部を形成する前処理が行われる。
図1は、本実施形態に係る前処理工程で得られた被溶接物の断面を模式的に示した図である。図1に例示された被溶接物1は、図14に示すような母材2の両面に絶縁性被膜3を有する両面めっき鋼板5である。なお、前処理工程以降の工程についても両面めっき鋼板を例にして説明する。また、後記する図2〜図5は、図1と同様に被溶接物の断面を模式的に示した図である。
2枚の両面めっき鋼板を重ね合わせた組立体4の内部は、各めっき鋼板の絶縁性被膜3が対向し、接合領域で二重の絶縁性被膜が接しているため、通電性が阻害されて抵抗溶接による接合が困難である。そこで、本実施形態に係る前処理を行い、組立体4の内部における絶縁性被膜3の一部を除去して第1損傷部11を形成することにより、当該第1損傷部11を含む接合領域において抵抗溶接に適した通電性が付与される。その結果、第1損傷部を含む組立体4は、次の第1の溶接工程において第1溶接部12を容易に形成することができる。
第1損傷部11の形成箇所としては、1対の溶接電極31で組立体4を挟持して抵抗溶接を行うことから、溶接電極31の挟持位置に近い箇所であることが好ましい。被溶接物がその外表面に絶縁性被膜を有している場合であっても、溶接電極を被溶接物の表面に押圧しながら電圧が印加されるので、当該絶縁性被膜に部分的な絶縁破壊が生じて通電性が得られる。そのため、組立体の内部に第1損傷部を形成すれば、溶接電極と第1損傷部との間で通電経路が形成され、第1の溶接工程で第1溶接部を形成することができる。
また、図15の(a)および(b)に示すような片面めっき鋼板6についても、同様に、組立体4の内部の絶縁性被膜3に第1損傷部11を形成することにより、第1の溶接工程で第1溶接部12を容易に形成することができる。なお、被溶接物1がその外表面に絶縁性被膜3を有する場合は、抵抗溶接の通電性をさらに改善する観点で、溶接電極31と接触する箇所の絶縁性被膜3をあらかじめ除去することが好ましい。
第1損傷部の形成に関して、機械的手段または加熱手段により絶縁性被膜に損傷を与えて第1損傷部を形成することが好ましい。機械的手段としては、研削による形成方法、突起部を用いた形成方法、打ち抜きによる形成方法、板間の摩擦を利用した形成方法などを用いることができる。
図9は、研削による形成方法を示した例である。研磨紙などを用いて絶縁性被膜を研削して除去することができる。図9に示すように、被溶接物1の片面にある絶縁性被膜3の一部を除去して第1損傷部33を形成し、当該第1損傷部33が対向するように2つの被溶接物1を重ねることにより、所定の組立体が得られる。
図10は、突起部を用いた形成方法を示した例である。ポンチなどを用いて一方の被溶接物1にあらかじめ突起部34を付与する。その後、2つの被溶接物1を重ね合わせると、前記突起部34が他方の被溶接物1の絶縁性被膜3に損傷を与えて第1損傷部を形成することができる。
図11の(a)、(b)は、打ち抜きによる形成方法を示した例である。図11(a)に示すように、ネジや釘などの打抜き手段35により組立体4を打ち抜いて小さい穴を開ける。それにより、図11の(b)に示すように、当該穴には絶縁性被膜3が除去されるとともに打ち抜いた端部36が重なって通電経路が形成される。
図12は、板間の摩擦を利用した形成方法を示した例である。2個の被溶接物1をずらして重ねた組立体4を溶接電極31で押圧して固定する。その後、組立体4の横から工具で打撃37を加えることで、2個の被溶接物1が相対移動し、被溶接物1の間に摩擦を生じて絶縁性被膜に損傷を与えることができる。
加熱手段としては、燃焼炎やレーザ光を使用することができる。図13に示すように、バーナー38から燃焼炎39を噴出し、被溶接物1の表面の絶縁性被膜3に損傷を与える。その後、被溶接物1を重ねることで第1損傷部を有する組立体が得られる。レーザ光発生装置からレーザ光を照射し、被溶接物の絶縁性被膜を加熱除去してもよい。レーザ光の焦点位置を調整することにより、組立体の内部の絶縁性被膜を除去することができる。
(第1の溶接工程)
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、上記の前処理工程で形成した第1損傷部において、スポット溶接などの抵抗溶接により第1溶接部を形成する第1の溶接工程を含んでいる。第1の溶接工程を説明するために図2を示す。前処理工程によって組立体内に形成された第1損傷部は、絶縁性被膜が部分的に除去されて母材が露出した状態にあるので、当該第1損傷部を含む接合領域の通電性が向上する。また、溶接電極を被溶接物の表面に押圧しながら電圧を印加することにより、当該表面の絶縁性被膜に部分的な絶縁破壊が生じて通電性が得られる。
そのため、図2に示すように、組立体4の表面を1対の溶接電極31で挟持して通電すると、溶接電極31と第1損傷部11との間に通電経路が形成され、第1損傷部11を含む接合領域において抵抗溶接が可能となり、第1溶接部12を形成することができる。さらに、組立体4において第1溶接部12の直上及び直下に位置する表面では、ナゲットの形成過程で生じる溶接熱の作用によって当該表面の絶縁性被膜が消失し、被膜消失部10が形成される。本明細書では、第1溶接部を形成したときの組立体表面に溶接電極を接触させた箇所を、以下、「第1打点」という。また、第1溶接部を「先行溶接部」ということもある。
(第2の溶接工程)
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、第1溶接部の近傍においてスポット溶接などの抵抗溶接により第2溶接部を形成する第2の溶接工程を含んでいる。背景技術で上述したとおり、組立体内の絶縁性被膜が対向する領域では通電抵抗が高いため、従来の抵抗溶接方法によって当該対向する領域にナゲット(溶接部)を形成することが困難であった。それに対し、本実施形態に係る抵抗溶接方法は、第1溶接部を形成したときの第1打点の近傍に溶接電極を配置して通電することにより、組立体内の絶縁性被膜が対向する領域にナゲットが形成され、第2溶接部を得ることができる。本明細書では、第2溶接部を形成したときの組立体表面に溶接電極を接触させた箇所を、以下、「第2打点」という。
第1打点と第2打点との水平距離を、以下、「打点間距離」という。第1打点の位置に対応して第1溶接部が形成され、第2打点の位置に対応して第2溶接部が形成されることから、打点間距離は、第1溶接部と第2溶接部との間の水平距離とほぼ同じであり、第1溶接部のナゲット中央と第2溶接部のナゲット中央とを結んだ距離に相当すると言える。
第2溶接部を形成するメカニズムについては、十分に解明されていない。本発明者らは、以下のように推測している。図3〜図5を用いて説明する。第2溶接部を形成するまでに3つの段階に区分される。第1段階では、図3に示すように、第1溶接部12の近傍に配された溶接電極32が組立体4の表面を押圧しながら電圧を印加する。溶接電極32と接触するめっき鋼板表面の絶縁性被膜3において局所的な絶縁破壊が生じる。絶縁破壊が生じた部分で通電可能となる。第1の溶接工程で形成された第1溶接部12は、通電性を有している。そのため、溶接電極31と接触する部分と上記の第1溶接部12とを介して、組立体4内には、図3に示すような通電経路14が形成される。本明細書では、以下、当該通電経路を「バイパス通電経路」といい、バイパス通電経路による通電を「バイパス通電」ということもある。
第2段階では、バイパス通電による発熱によって、溶接電極に挟まれた組立体内のめっき鋼板が対向する領域の絶縁性被膜が損傷する。第1段階の絶縁破壊により形成された部分的な導通部(以下、「局所的導通部」ということもある。)は、その通電面積が微小であるから、電気抵抗が増加し、ジュール熱も増大する。その後、図4に示すように、局所的導通部13に隣接した領域へ伝熱し、めっき鋼板1が対向する面(以下、「対向面」ということもある。)の絶縁性被膜3に部分的な損傷を与えて第2の損傷部15(以下、「第2損傷部」という。)を形成したものと推測される。
めっき鋼板1の対向面における上記第2損傷部15は、通電性を有しているので、第3段階では、図5に示すように、溶接電極32と第2損傷部15との間の第2の通電経路17(以下、「第2通電経路」という。)が形成される。それにより、第2損傷部15を含む領域においてナゲットが形成され、第2溶接部16が得られたと推測される。また、組立体4において第2溶接部16の直上及び直下に位置する表面では、ナゲットの形成過程で生じる溶接熱の作用によって局所的導通部13の絶縁性被膜が消失し、被膜消失部18が形成される。
ところで、上記の局所的導通部における通電による発熱量は、以下の式(1)で表わすことができる。
=i ρ ・・・ 式(1)
:局所的導通部の発熱量
:局所的導通部の電流密度
ρ:局所的導通部の電気抵抗率
:局所的導通部の微小体積
:バイパス通電の時間
そして、上記式(1)の電流密度iは、以下の式(2)のように表わすことができる。
=I/a=(E/R)/a ・・・ 式(2)
:局所的導通部の微小面積
:バイパス通電の電流値
:バイパス通電の電気抵抗値
E:負荷電圧
打点間距離を「打点間距離L」と表記する。式(1)のパラメータのうち、電気抵抗率ρ及び微小体積vの各数値は、打点間距離Lによってほぼ変動しないと考えられる。それに対し、電流密度iは、電気抵抗値Rによって変動する。打点間距離Lの増加にともない当該Rが増大するので、式(2)により電流密度iが低下する。そのため、打点間距離Lが大きくなると、電流密度iが小さくなって発熱量が低下し、被膜損傷までに必要な時間tが長くなる。
図3〜図5に示す第2の溶接工程の第1段階〜第3段階における電圧及び電流の変化について、図6を用いて説明する。第2の溶接工程では、溶接装置の設定電流値を設定した後、組立体に溶接電極を押圧して溶接装置を稼働開始する。図6は、設定電流値23を設定して溶接を行った場合の電流24と電圧25の変化を示している。図3に示す第1段階においては、溶接電極31から所定の電圧が組立体4の表面へ印加されて局所的導通部13が形成されることにより、当該局所的導通部13を含むバイパス通電経路14が形成される。当該バイパス通電経路14によってバイパス通電が開始されると、図6の区間26に示すように電流24及び電圧25が上昇する。
図4に示す第2段階において、バイパス通電を開始した直後は、バイパス通電の電気抵抗値Rが大きいので、バイパス通電の電流値Iは、設定電流値23に到達しない低いレベルにある。溶接装置は、電流値Iを設定電流値23に近づけるため、印加電圧25を上昇させるので、それにともない、図6の区間26に示すように電流24の電流値Iが増加する。
上記のように電流値Iが増加する過程で、局所的導通部の発熱量qが増大し、溶接電極間に位置するめっき鋼板の対向面の絶縁性被膜(以下、「対向面被膜」ということもある。)を損傷するに必要な熱量に達した時点で、対向面被膜が損傷されて第2損傷部が形成されると考えられる。その結果、バイパス通電経路とは別に、溶接電極と第2損傷部との間に第2通電経路が形成され、第2溶接部の抵抗溶接が可能となる。
図5に示す第3段階において、第2通電経路17による通電が開始されると、抵抗溶接が開始されてナゲット(第2溶接部16)が形成される。この通電の開始によって電気抵抗が急速に減少し、それにともない、電流が急速に増加し、電圧が急速に減少する。溶接装置は、予め設定された設定電流値となるように通電制御される。しかし、一般に、電流変化が大きいときは、その変化に即時に追従して制御することが困難であるため、電流24は、図6の区間27に示すように設定電流値23を超えるレベルまで増加する。その後、溶接装置の通電制御により、電流24が設定電流値23まで低下して、そのレベルで維持される。その結果、ナゲットが成長して溶接が完了する。
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、第2溶接部を1箇所または2箇所以上で形成することが好ましい。溶接電極を第1溶接部から所定の距離に配置し、第2溶接部を組立体内の1箇所に溶接してもよい。組立体内の2箇所以上で第2溶接部を連続的に溶接してもよい。2箇所以上である場合の第2溶接部における間隔は、任意に選定することができる。
(第1の実施形態)
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、第2の溶接工程における通電条件の設定に関して、2つの実施形態で行うことができる。第1の実施形態は、第2の溶接工程において、設定電流値を一定に設定して溶接するものである。
図7は、第1の実施形態における電流の変化の例として、後記する実施例4の試験結果を用いて示したものである。図7には、第1の溶接工程の第1打点で行われた溶接における電流変化を「1点目」と表示し、第2の溶接工程の第2打点で行われた溶接における電流変化を「2点目」と表記されている。また、2点目の欄に表示された数値は、打点間距離Lを示し、当該打点間距離により行われた2点目の溶接における電流変化を示している。
図7に示すように、第2の溶接工程において、設定電流値23を一定に設定した条件下で、第1溶接部の近傍で抵抗溶接を行う。この場合、第2の溶接工程の第1段階で説明したように、溶接電極との接触部で絶縁破壊が生じた後、バイパス通電が開始される。第2段階では、電流の増加により局所的導通部の局所発熱が得られ、組立体内の対向面被膜に第2損傷部が形成される。第3段階では、溶接電極と第2損傷部との間に形成された第2通電経路により、溶接電極から第2損傷部を含む領域への通電が開始される。電気抵抗の急減によって通電される電流が急増し、設定電流値を超える。その後、通電時間の経過にともない、電流は、設定電流値に収束するように制御される。その結果、第2損傷部を含む領域で抵抗溶接が行われ、第2溶接部が形成される。
図7には、第1の溶接工程における電流変化(1点目)も併せて示されている。この場合、第2の溶接工程のような急速な抵抗変化は起きないので、設定電流値23に近づくように電流制御される。第1の溶接工程と第2の溶接工程における設定電流値の各数値は、同じ数値を設定してもよく、あるいは、異なる数値を設定してもよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第2の溶接工程において、通電時間を2つの通電区間に分けて、それぞれの通電区間で異なる設定電流値を設定して溶接するものである。図6で第2の溶接工程の第3段階について説明したように、抵抗の減少にともない電流が増加する。この電流の増加が過度であって設定電流値を大きく超える過大電流に至ると、溶接部や溶接電極の周囲に爆飛やチリを発生させる場合がある。特に、第1溶接部と第2溶接部との打点間距離Lが大きいほど、第2損傷部を形成する際の負荷電圧Eが増大する傾向にあるため、当該負荷電圧Eに応じた電流も大きくなる。そのため、第3段階の通電過程において過大電流の発生を回避することが望ましい。
そこで、本出願人は、通電時間を2つの通電区間T1、T2に分けて、前半の通電区間T1の設定電流値S1を後半の通電区間T2の設定電流値S2よりも小さく設定する手法を考案した。このような通電条件を設定することにより、第2溶接部形成の第2段階で、第2通電経路が形成された直後の過大電流を防止することができる。そのため、爆飛やチリの発生を抑制して第2溶接部を形成することができる。
前半の通電区間T1は、第2通電経路を形成するのに必要な時間に設定することができる。通電区間T1は、打点間距離や、その他の溶接条件にもよるが、全体の通電時間の10〜70%を選定することが好ましい。10%未満であると、被膜を損傷させ、過大電流を抑制するには十分でない。70%を超えると、第2溶接部を形成するための通電時間が大きくなり作業効率に劣る。
通電区間T1の設定電流値S1は、S2の20〜70%を設定することが好ましい。20%未満であると、第2損傷部において十分な被膜損傷領域が得られないので、第2通電経路の形成や第2溶接部の形成において所定の効果が得られない。70%を超えると、過大電流を十分に抑制することができない。通電区間T2の設定電流値S2は、板厚など被溶接物に応じて適正な溶接電流値を設定することができる。
(絶縁性被膜)
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)の少なくとも1種を含む酸化被膜である絶縁性被膜を有する被溶接物に適用することが好ましい。例えば、この被溶接物として、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnMg相がめっき層中に分布した溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を使用することができる。当該Znめっき鋼板は、黒色溶融めっき鋼板と呼ばれる。原板として、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含む溶融Znめっき層を有するめっき鋼板を用いて、当該めっき鋼板を密封容器中で水蒸気と接触させる処理を施して得られた黒色めっき鋼板である。この水蒸気と接触させる処理により、めっき層の表面からZn、AlやMgの酸化反応が起こり、その結果、めっき層中に黒色酸化物が形成され、黒色溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。黒色酸化物が絶縁性物質であるため、黒色溶融亜鉛めっき層は、その表面側部分が絶縁性を示し、内側部分が導電性を有する。この黒色溶融亜鉛めっき層は、鋼板の両面または片面に形成されており、絶縁性被膜に相当する。
(抵抗溶接)
抵抗溶接は、スポット溶接など公知の溶接手段を使用することができる。組立体を溶接電極で挟み、所定の加圧力を加えて、所定の電流を印加することにより局部的に加熱し、点状の溶接部(ナゲット)を形成する。
接触する被溶接物の界面が通電し、抵抗発熱により被溶接物の界面で溶接が行われる。通電量が過小であると、被溶接物界面の抵抗発熱量が小さくなり、十分な大きさの溶接部を形成することができない。他方、被溶接物界面の通電量が過大であると、被溶接物界面の過熱によって、チリ、スパッタなどと呼ばれる溶損(本明細書では、以下、「チリ」という語句で示す。)が発生し易くなる。
第1の溶接工程における溶接条件は、特に制限されないが、例えば板厚が0.8mm前後である場合は、5.5kA以上であることが好ましい。他方、9.0kA以上であると、チリが発生し易くなるので、9,0kA未満であることが好ましい。
第2の溶接工程における第2溶接部は、第1溶接部から離れるほど界面の通電量が低減するので、第2の溶接工程における好適な溶接条件は、打点間距離の程度によって影響される。例えば板厚が0.8mm前後である場合、打点間距離が0.2m未満である場合は、5.5kA以上であることが好ましい。打点間距離が0.2m以上である場合は、7.0kA以上であることが好ましい。他方、9.0kA以上であると、打点間距離がどの程度であってもチリが発生し易くなるので、9.0kA未満であることが好ましい。
打点間距離Lは、特に制限されないが、第1の実施形態においては、0.4m未満であることが好ましく、0.3m以下がより好ましい。第2の実施形態においては、0.5m未満であることが好ましく、0.4m以下がより好ましい。打点間距離が過大であると、十分な大きさのナゲットを形成することができないので好ましくない。
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
被溶接物として、板厚が0.8mmの黒色溶融亜鉛めっき鋼板を使用した。当該めっき鋼板は、質量%でZn−6%Al−3%Mg組成のめっき層を有する両面めっき鋼板であり、寸法が長さ100mm×幅30mm、めっき付着量が60〜80g/mであった。当該めっき鋼板のめっき層は、その表面側部分が絶縁性を示し、内側部分が導電性を有する。
研磨紙(番手1000)を用いて当該めっき鋼板の片面を研削し、絶縁性被膜の一部が除去された損傷部を形成した。得られた損傷部の大きさは、直径が20mm程度であった。研削された2枚の当該めっき鋼板を、それぞれの損傷部がほぼ対向するように重ね合わせた後、治具で固定して試験用の組立体を作製した。当該組立体を、以下、「試験体」という。また、本明細書では、第1の溶接工程の第1打点で行われた溶接を「1点目」といい、第2の溶接工程の第2打点で行われた溶接を「2点目」という。
図2に示すように試験体を一対の溶接電極31で挟持し、エア加圧式単相交流式スポット溶接機(交流周波数60Hz)を用いて、スポット溶接により1点目の抵抗溶接を行った。溶接電極31は、試験体内部の第1損傷部11にほぼ対向する位置に配した。第1損傷部11の対向箇所では母材2同士が接触しているので、抵抗溶接の通電経路が確保された。1点目のスポット溶接により、第1損傷部11を含む領域を通電加熱し、先行溶接部12が形成された。先行溶接部を、以下、「1点目の溶接部」ということもある。
1点目の溶接部を形成するスポット溶接は、初期加圧時間を30cycle、通電時間を12cycle、保持時間を1cycle、加圧力を1.5kN、冷却水量を3L/minで行った。溶接装置の通電制御は、定電流制御で行い、設定電流値を4.0〜10.0kAの範囲で選定した。溶接電極は、クロム銅製の6DR形(ドームラジアス形 JIS C9304)電極を用いた。なお、初期加圧時間及び通電時間は、そのcycle値を周波数の60Hzで除した時間に相当する。例えば、12cycleは、0.2s(=12/60)に相当する。
1点目のスポット溶接を行った後、溶接電極を移動させ、1点目の近傍において2点目のスポット溶接を行った。2点目の溶接条件は、打点間距離及び設定電流値を変えたことを除いて、1点目のスポット溶接と同じ条件とした。
1点目及び2点目の各溶接部について溶接性を評価した。溶接電極の接した箇所を通るように試験体の幅方向に沿って切断し、溶接部(ナゲット)の断面を得た。当該断面をマイクロスコープで観察した画像を用いて、溶接部の断面観察を行い、ナゲット径を測定した。この測定値に基づいて溶接性を評価した。なお、ナゲット径は、接合界面に沿った最大長さの直径である。
板厚tの鋼板における溶接部の大きさ(ナゲット径)として、4√tを基準とすることが一般的である。本実施例のめっき鋼板は、板厚が0.8mmであるから、4√tが3.58mmに相当する。本実施例では、溶接部の評価基準として、ナゲット径が3.58mmを超えている場合を、溶接性が良好であると判定した。ナゲット径が3.58mm以下である場合や接合されていない場合は、溶接性が不適であると判定した。
さらに、溶接後の溶接電極の周囲におけるチリの発生状況を目視で確認した。チリを目視で確認できた場合は、試験体の外観を損なうことから、溶接後にチリを除去する補修作業が必要となる。そのため、溶接性が不適であると判定した。
溶接性の評価結果を表1に示す。表1における「〇」は、溶接性が良好である場合を示し、「×」は、溶接性が不適である場合を示す。「△」は、溶接時にチリが発生して溶接性が不適である場合を示す。2点目の欄は、1点目からの打点間距離(m)に位置する2点目の溶接性を示す。
Figure 2021074748
表1に示すように、1点目の溶接部は、設定電流値を5.5kA〜8.5kAで溶接した場合、溶接性が良好であった。2点目の溶接部は、1点目の溶接部からの打点間距離が0.2m未満であるときは、設定電流値を5.5kA〜8.5kAで溶接した場合に溶接性が良好であった。打点間距離が0.2mであるときは、設定電流値を6.5kA〜8.5kAで溶接した場合に、打点間距離が0.3mであるときは、設定電流値を7.0kA〜8.0kAで溶接した場合に、また、打点間距離が0.4mであるときは、設定電流値を7.0kA〜7.5kAで溶接した場合に.それぞれ溶接性が良好であった。このように、2点目の溶接部が1点目の溶接部から離れるほど、適正な設定電流値の下限値が上昇し、上限値が下降することを確認できた。
また、設定電流値が9.0kA以上であるときは、打点間距離の大きさによらず、いずれもチリが発生した。
<実施例2>
1点目と2点目とを異なる設定電流値によりスポット溶接を行い、溶接性を評価した。設定電流値を変更した以外は、実施例1と同様の手順で行った。その結果を表2に示す。
Figure 2021074748
表2に示すように、2点目の設定電流値が1点目の設定電流値と異なる場合であっても、実施例1に示された適正な溶接条件と同様の範囲で、2点目の良好な溶接性が得られた。
<実施例3>
2点目のスポット溶接を継続して抵抗溶接が可能であるのかを検討するため、2点目の溶接を2個以上で行い、それらの溶接性を評価した。スポット溶接条件は、設定電流値を8.5kAとした実施例1と同様の条件を用いた。2点目の間隔として、1点目から0.5mまでの水平距離内で0.1mの間隔と0.2mの間隔とを選定した。そのため、測定数は、0.1m間隔の場合、2点目の打点数は、5つであった。0.2m間隔の場合、2点目の打点数は、2つであった。
測定結果によると、2点目は、いずれの打点においても溶接性が良好であった。実施例1の0.1m、0.2mの各距離における結果と同様であった。0.1m間隔及び0.2m間隔により2点目の溶接を連続的に継続しても、適正な溶接部が得られることを確認することができた。
<実施例4>
本実施例は、本発明に係る第1の実施形態による通電条件を用いて実施したものである。溶接条件は、初期加圧時間を35cycleとしたことを除いて、実施例1と同様の条件で行った。なお、設定電流値を8.0kAとした。
打点間距離として、0.1m、0.2m、0.3m、0.4mを選定して2点目を溶接し、溶接性を測定した。その結果は、実施例1と同様に、0.1m〜0.3mでは、溶接性が良好であった。他方、0.4mではチリが発生した。
本実施例は、1点目と2点目の各溶接過程で印加される電流値を測定した。図7に、通電時間(cycle)に対する電流値(kA)の変化を示す。図7に示すように、1点目の電流値は、通電時間の経過とともに上昇し、ほぼ設定電流値をレベルで維持された。
それに対し、2点目の電流値は、第2の溶接工程の第2段階において、通電時間の経過にしたがい、電流が急増して設定電流値を超えた。その後、設定電流値のレベルまで低下して維持された。図7に示すように、打点間距離が長くなるにしたがい、設定電流値を超える電流値の増分が大きくなる傾向にあった。打点間距離が0.4m未満であるときは、電流の増加は、それほど大きくなかったので、チリの発生を招くことはなかった。
打点間距離が0.4mであるときは、図7に示すように、電流増加が過大電流の領域に到達したため、チリが発生したと推測される。そこで、打点間距離Lが0.4mの場合であってもチリの発生しない溶接条件を検討するため、次の実施例5を行った。
<実施例5>
本実施例は、本発明に係る第2の実施形態による通電条件を用いて実施したものである。2点目の溶接における通電時間のうち、前半の設定電流値を後半の設定電流値よりも低くレベルに設定した。具体的には、通電時間15cycleのうち、前半の通電区間T1を3cycle、その設定電流値S1を4.0kAとした。後半の通電区間T2を12cycle、その設定電流値S2を8.0kAとした。それ以外の溶接条件は、実施例4と同じ条件を用いた。2点目の打点間距離は、0.4mとした。
2点目の溶接性を測定した結果は、良好なナゲットが形成され、チリの発生も認められなかった。図8に通電時間(cycle)に対する電流値(kA)の変化を示す。1点目の電流21の変化は、実施例4と同様である。2点目の電流22の変化によると、通電区間T1においては、設定電流値23を超えて電流が増加しても、電流の増分が大きくなかったので、通電区間T2においては、電流の増加が設定電流値を大きく超えずに、設定電流値のレベルに維持された。2点目の打点間距離が0.4mであっても、このように通電区間を2つに分けて、前半の通電区間に低い設定電流値を設定することにより、チリの発生を起こすような過大電流の発生を抑制できることを確認することができた。
1 被溶接物
2 母材
3 絶縁性被膜
4 組立体
5 両面めっき鋼板
6 片面めっき鋼板
10 被膜消失部
11 第1損傷部
12 第1溶接部
13 局所的導通部
14 バイパス通電経路
15 第2損傷部
16 第2溶接部
17 第2通電経路
18 被膜消失部
21 1点目の電流
22 2点目の電流
23 設定電流値
24 電流
25 電圧
26 第1段階及び第2段階の区間
27 第3段階の区間
31 溶接電極(1点目)
32 溶接電極(2点目)
33 研削された第1損傷部
34 突起部
35 打抜き手段
36 打ち抜かれた端部
37 打撃
38 バーナー
39 燃焼炎

Claims (7)

  1. 絶縁性被膜を有する2個の被溶接物を重ね合わせた組立体の抵抗溶接方法であって、
    前記組立体の内部に位置する前記絶縁性被膜において第1損傷部を形成する前処理工程と、
    前記第1損傷部において抵抗溶接により第1溶接部を形成する第1の溶接工程と、
    前記第1溶接部の近傍において抵抗溶接により第2溶接部を形成する第2の溶接工程と、を含む、抵抗溶接方法。
  2. 前記前処理工程は、機械的手段または加熱手段により前記絶縁性被膜に損傷を与えて前記第1損傷部を形成する、請求項1に記載の抵抗溶接方法。
  3. 前記第2溶接部は、1箇所または2箇所以上で形成する、請求項1または2に記載の抵抗溶接方法。
  4. 前記第2の溶接工程は、設定電流値を一定に設定して溶接する、請求項1〜3のいずれかに記載の抵抗溶接方法。
  5. 前記第2の溶接工程は、通電時間を2つの通電区間に分けて、各通電区間で異なる設定電流値を設定して溶接する、請求項1〜3のいずれかに記載の抵抗溶接方法。
  6. 前記絶縁性被膜は、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)の少なくとも1種を含む酸化被膜である、請求項1〜5のいずれかに記載の抵抗溶接方法。
  7. 前記被溶接物は、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnMg相がめっき層中に分布した溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板である、請求項1〜6のいずれかに記載の抵抗溶接方法。
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