JP2021073167A - 植物病害防除剤 - Google Patents

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久笑 山口
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宰熏 崔
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Abstract

【課題】植物病害防除剤を提供し、植物病害を防除する。【解決手段】2−アザヒポキサンチン、2−アザ−8−オキソヒポキサンチン及びイミダゾール−4−カルボキシアミドからなる群から選択される少なくとも一の化合物を植物に施用することで、植物病害の防除が可能となる。【選択図】なし

Description

本発明は、植物病害防除剤及び植物病害の防除方法に関する。
公園及びゴルフ場などで、芝生が輪状に周囲より色濃く繁茂し、時には成長が抑制されたり枯れたりし、後にキノコが発生する現象が知られている。この現象は、「フェアリーリング」と呼ばれている。フェアリーリングを形成するコムラサキシメジから、芝の生長を促進する2−アザヒポキサンチン(以下、AHXと略す)が見つかり、また、芝の生長を抑制するイミダゾール−4−カルボキシアミド(以下、ICAと略す)も見つかった。さらに、AHXが植物に取り込まれると、2−アザ−8−オキソヒポキサンチン(以下、AOHと略す)になることも判明した。これらの化合物はフェアリー化合物とも呼ばれている。
Figure 2021073167
特許第4565018号公報 特許第5915982号公報 国際公開第2016/136508号
Jae-Hoon Choi et al., TheSource of "Fairy Rings": 2-Azahypoxanthine and its Metabolite Foundin a Novel Purine Metabolic Pathway in Plants, Angew Chem Int Ed Engl., vol.53,No.6, pp.1552-1555, 2014
上記のとおり、フェアリー化合物は植物の生長調節作用を有することが知られていたが、その他の作用については知られていなかった。
本発明者らが、さらに研究を進めたところ、フェアリー化合物に植物の病害防除作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、AHX、AOH及びICAからなる群から選択される少なくとも一の化合物を含む、植物病害防除剤を提供する。本発明は、さらに、AHX、AOH及びICAからなる群から選択される少なくとも一の化合物を植物に施用する、植物病害の防除方法を提供する。
AHX、AOH及びICAからなる群から選択される少なくとも一の化合物を植物に施用することで、植物病害を防除することが可能となる。
本発明に係る植物病害防除剤は、2−アザヒポキサンチン、2−アザ−8−オキソヒポキサンチン及びイミダゾール−4−カルボキシアミドからなる群から選択される少なくとも一の化合物を含む。
AHX、AOH及びICAは、公知の方法(例えば、特許文献1〜3及び非特許文献1に記載の方法)で製造することが可能である。
対象となる植物は、種子植物、シダ植物又はコケ植物でもよく、種子植物としては裸子植物又は被子植物でもよく、被子植物としては単子葉植物でも双子葉植物でもよい。また、種子植物には種子を形成せず繁殖する植物、例えば、球根や塊茎によって繁殖する栄養繁殖性の植物も含む。商業的観点から、野菜及び花卉を対象とすることが好ましい。
このような植物として、具体的には、アブラナ科、ナス科、キク科、ウリ科、セリ科、イネ科、バラ科、ユリ科、ラン科、ヒガンバナ科、サクラソウ科、マメ科、ネギ科、タデ科、ヒルガオ科、アカザ科、ブドウ科、ミカン科、カキノキ科、ツバキ科、モクセイ科、アオイ科、バショウ科、ショウガ科、アカネ科、パイナップル科等の植物が挙げられる。これらの中でも、AHX、AOH及びICAによる病害防除効果が著しい点から、アブラナ科、ナス科、キク科の植物であることが好ましい。アブラナ科の植物として、コマツナ、チンゲンサイ、カブ、カリフラワー、キャベツ、ダイコン、ハクサイ、ブロッコリー等が挙げられる。ナス科の植物として、トマト、タバコ、シシトウガラシ、ジャガイモ、トウガラシ、ナス、パプリカ、ピーマン等が挙げられる。キク科の植物とし、レタス、アーティチョーク、ゴボウ、シュンギク、キク、ヒマワリ等が挙げられる。ウリ科の植物として、カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン等が挙げられる。セリ科の植物として、セリ、セロリ、ニンジン、パセリ等が挙げられる。イネ科の植物として、イネ、オオムギ、コムギ、サトウキビ、トウモロコシ等が挙げられる。バラ科の植物として、イチゴ、バラ、リンゴ、ナシ、モモ、ビワ、アーモンド等が挙げられる。ユリ科の植物として、アスパラガス、チューリップ、ユリ等が挙げられる。ラン科のラン、シンビジウム等が挙げられる。ヒガンバナ科の植物として、スイセン等が挙げられる。サクラソウ科の植物として、シクラメン等が挙げられる。マメ科の植物として、ダイズ、インゲンマメ、アズキ等が挙げられる。ネギ科の植物として、ネギ、ニラ、ラッキョウ、ニンニク等が挙げられる。タデ科の植物としてソバ等が挙げられる。ヒルガオ科の植物としてサツマイモ等が挙げられる。アカザ科の植物として、ホウレンソウ、テンサイ等が挙げられる。ブドウ科の植物としてブドウ等が挙げられる。ミカン科の植物として、ミカン、レモン、オレンジ等が挙げられる。カキノキ科の植物としてカキ等が挙げられる。ツバキ科の植物として、チャ等が挙げられる。モクセイ科の植物として、オリーブ、ジャスミン等が挙げられる。アオイ科の植物として、ワタ、カカオ、オクラ等が挙げられる。バショウ科の植物として、バナナ等が挙げられる。ショウガ科の植物として、ショウガ等が挙げられる。アカネ科の植物として、コーヒーノキ等が挙げられる。パイナップル科植物として、パイナップル、アナナス等が挙げられる。
対象となる植物器官としては、特に限定されず、根、茎、葉、花、実、生殖器官及び種子のいずれでもよい。
AHX、AOH及びICAが防除し得る病害の病原体としては、植物病原性の細菌、ウイルス、糸状菌のいずれでもよいが、AHX、AOH及びICAは細菌に対する防除効果が著しい。植物病原性細菌としては、Pectobacterium spp.(例えば、Pectobacteriumcarotovorum等)、Dickeya spp.、Ralstoniaspp.(例えば、Ralstonia solanacearum等))、Agrobacterium spp.(例えば、Agrobacteriumtumefaciens等)、Pseudomonas spp.(例えば、Pseudomonas fluorescens、P.syringae pv.maculicola等)、Xanthomonas spp.(例えば、Xanthomonas campestris pv. campestris、X.oryzaepv. oryzae等)、Erwinia spp.(例えば、Erwiniaamylovora、E.carotovora等)、Burkholderiaspp.(例えば、Burkholderia glumae、B.plantarii等)、Clavibacter spp.(例えば、Clavibactermichiganensis subsp. michiganensis等)、Streptomyces spp.等が挙げられる。
植物病害防除剤は、AHX、AOH及びICAのほかに、公知の製剤用添加剤を含有していてもよい。このような製剤用添加剤として、例えば、賦形剤、乳化剤、湿潤剤等が挙げられる。また、植物病害防除剤の剤型は特に限定されず、例えば、乳剤、水和剤、水溶剤、液剤、粒剤、粉剤、マイクロカプセル、燻蒸剤、燻煙剤、エアゾール、フロアブル剤、ペースト剤、錠剤、塗布剤、微量散布用剤、油剤、複合肥料とすることができ、対象となる植物、その器官及び目的等に応じて、使用者が適宜選択することができる。このような剤型の植物病害防除剤は、公知の方法により製造することができる。
AHX、AOH及びICAの植物への施用方法は、公知の植物病害防除剤と同様の方法により行うことができ、例えば、植物器官へ直接、散布、噴霧、塗布してもよく、土壌へ混入、灌注、水耕栽培養液へ混入、灌注してもよい。
AHX、AOH及びICAの施用濃度は、対象となる植物の種類及び器官、植物病害防除剤の剤形、施用方法及び施用量等によって異なるが、茎葉処理の場合、通常0.01ppm〜40,000ppm、好ましくは0.1ppm〜4,000ppm、さらに好ましくは1ppm〜1,000ppmであり、土壌処理の場合、通常1〜4,000kg/ha、好ましくは1〜400kg/haであり、種子処理の場合、種子100kgに対し、通常0.1〜40,000g、好ましくは1〜4,000g、さらに好ましくは10〜1,000gである。
AHX、AOH及びICAが植物病害を防除するメカニズムに関して、特定の理論に拘るものではないが、病原体の生育阻害によるもの及び/又は植物における防御応答遺伝子の発現を誘導するもの、が考えられる。
本発明の望ましい実施形態のいくつかを下記に例示するが、これらは本発明を限定するものではない。
[1]AHX、AOH及びICAからなる群から選択される少なくとも一の化合物を含む、植物病害防除剤。
[2]AHX、AOH及びICAからなる群から選択される少なくとも一の化合物を含む、殺菌剤。
[3]AHXを含む植物病害防除剤。
[4]AOHを含む植物病害防除剤。
[5]ICAを含む植物病害防除剤。
[6]AHXを含む殺菌剤。
[7]AOHを含む殺菌剤。
[8]ICAを含む殺菌剤。
[9]AHX、AOH及びICAからなる群から選択される少なくとも一の化合物を植物に施用する、植物病害の防除方法。
[10]AHXを植物に施用する、植物病害の防除方法。
[11]AOHを植物に施用する、植物病害の防除方法。
[12]ICAを植物に施用する、植物病害の防除方法。
[13]AHX、AOH及びICAからなる群から選択される少なくとも一の化合物を用いて殺菌する方法。
[14]AHXを用いて殺菌する方法。
[15]AOHを用いて殺菌する方法。
[16]ICAを用いて殺菌する方法。
上記実施形態において、「殺菌剤」及び「殺菌する方法」とは、フェアリー化合物を植物に直接施用する形態のみならず、例えば、植物の種子を播種する又は植物の苗を移植する前に、植物を栽培する土壌にフェアリー化合物を施用する形態を含む。
実験例1A:チンゲンサイでの接種実験(前処理効果の検討)
チンゲンサイの葉の軸に蒸留水又はフェアリー化合物(5mM AHX又はAOH若しくは0.5mM ICA)を注入した。3時間後に、軸の同じ部位に軟腐病菌Pectobacterium carotovorum subsp. carotovorum(以下、Pccと略す)の懸濁液を注入接種した。24時間後にチンゲンサイを観察し、病害部位の長さを測定したところ、蒸留水処理したチンゲンサイでは平均9.3cmであったのに対し、AHX処理したチンゲンサイでは平均7.3cm、AOH処理したチンゲンサイでは平均4.6cmに軽減され、病徴の伸展は対照区である蒸留水を注入した場合の50〜70%程度、病変部位の面積計算では30〜60%程度に抑制された。また、ICA処理区でも同様の病害抑制効果が確認された。植物病防除に用いられる既知の抵抗性誘導剤を用いて同様な実験を行った場合、抑制の割合は40〜80%であり、同等の効果があると考えられた。以上の結果から、フェアリー化合物の病害抑制効果が確認された。
実験例1B:チンゲンサイでの接種実験(同時処理効果の検討)
チンゲンサイの葉の軸に蒸留水又はフェアリー化合物(5mM AHX)を注入し、その直後に軸の同じ部位にPccの懸濁液を注入接種した。24時間後にチンゲンサイを観察し、病害部位の長さを測定したところ、蒸留水処理したチンゲンサイでは平均8.9cmであったのに対し、AHX処理したチンゲンサイでは平均3.7cmに軽減され、病徴の伸展は対照区である蒸留水を注入した場合の45%程度、病変部位の面積計算でも同様に44%程度に抑制された。以上の結果から、フェアリー化合物の病害抑制効果が確認された。植物病防除に用いられる既知の抵抗性誘導剤を用いて同様な実験を行った場合、同時処理での効果は確認されず、フェアリー化合物は移行性や浸透性に優れ、迅速に植物病防除の効果を発揮すると考えられた。
実験例2:タバコでの接種実験
タバコ(ブライトイエロー種)の葉に蒸留水又はフェアリー化合物(0.5〜5mM AHX又はAOH)を注入した。3時間後に、葉の同じ部位にPccの懸濁液を注入接種した。5時間後にタバコの葉を観察するとともに、タバコの葉のPccの菌数を測定した。蒸留水処理したタバコでは腐敗が進んでいたのに対し、AHX又はAOH処理したタバコでは腐敗が抑制されていた。また、AHX又はAOH処理したタバコにおけるPccの菌数は、蒸留水処理したタバコにおけるPccの菌数よりも少なかった。以上の結果から、フェアリー化合物による菌の増殖抑制効果が確認され、病害抑制効果が確認された。
実験例3:コマツナでの接種実験
コマツナにフェアリー化合物(AHX又はAOH)を含む又は含まない培養液を与えて水耕栽培した。コマツナの葉にPccの懸濁液を注入接種した。5時間後にコマツナの葉を観察するとともに、コマツナの葉のPccの菌数を測定した。フェアリー化合物を含まない条件で栽培したコマツナでは腐敗が進んでいたのに対し、フェアリー化合物を含む条件で栽培したコマツナでは腐敗が抑制されていた。また、フェアリー化合物を含む条件で栽培したコマツナにおけるPccの菌数は、フェアリー化合物を含まない条件で栽培したコマツナにおけるPccの菌数よりも少なかった。以上の結果から、フェアリー化合物の病害抑制効果が確認された。
実験例4A:サラダ菜での接種実験
コマツナの代わりにレタス(サラダ菜)を用いて、実験例3と同様の実験を行った。AHXを含まない条件で栽培したサラダ菜では腐敗が進んでいたのに対し、AHXを含む条件で栽培したサラダ菜では腐敗が抑制されていた。以上の結果から、フェアリー化合物の病害抑制効果が確認された。
実験例4B:サラダ菜での接種実験
サラダ菜の葉に蒸留水又はフェアリー化合物(AHX)を注入した。3時間後に、同じ部位にPccの懸濁液を注入接種した。24時間後にサラダ菜を観察し、病害部位の大きさを測定したところ、AHX処理したサラダ菜での腐敗症状は対照区である蒸留水を注入した場合より抑制(軽減)された。
実験例5:トマト青枯病菌に対する生育阻害実験
直径9cmのシャーレにフェアリー化合物(AHX又はICA)を含むポテトスクロース寒天培地(PSA培地)を流し固め、トマト青枯病菌(Ralstonia solanacearum)の懸濁液(OD600=0.01)を100μL塗布し、暗所30℃で3日間培養して、細菌の生育程度を評価した。評価は、「薬剤無処理区同等」から「生育なし」までの4段階(+++、++、+及び−)で行った。陽性対象としてカナマイシンを用いた。
表1に示した結果から明らかなように、フェアリー化合物のトマト青枯病菌に対する生育阻害効果が確認された。
Figure 2021073167
実験例6:防御応答遺伝子の発現量測定実験
タバコ(ブライトイエロー種)の葉に蒸留水又はフェアリー化合物(AHX)を注入した。3時間後に、葉の同じ部位にPccの懸濁液を注入接種した。1、3及び5時間後に注入接種した部位を切り取り、常法によりRNAを抽出し、半定量的RT−PCRと電気泳動、及びリアルタイムPCRにて、防御応答遺伝子rbohDの発現量を測定した。なお、コントロール遺伝子として、恒常発現遺伝子EF−1αを用いた。同様に、防御応答遺伝子Accオキシダーゼ及びHSR201の発現量をリアルタイムPCRにて測定した。なお、コントロール遺伝子として、EF−1α又はβ−アクチンを用いた。表2にrbohD、表3にAccオキシダーゼ、表4にHSR201の発現上昇の割合を示した。上昇割合の数値は、AHX処理時の発現量の値を対照区である蒸留水処理による発現量の値で割ることにより算出した。なお、表中の「n.t.」は試験せず(not tested)を意味する。
Figure 2021073167
Figure 2021073167
Figure 2021073167
以上の結果から、フェアリー化合物により防御応答遺伝子の発現量が増加することが確認され、病害に対する抵抗性が誘導されていることが示された。

Claims (2)

  1. 2−アザヒポキサンチン、2−アザ−8−オキソヒポキサンチン及びイミダゾール−4−カルボキシアミドからなる群から選択される少なくとも一の化合物を含む、植物病害防除剤。
  2. 2−アザヒポキサンチン、2−アザ−8−オキソヒポキサンチン及びイミダゾール−4−カルボキシアミドからなる群から選択される少なくとも一の化合物を植物に施用する、植物病害の防除方法。
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