JP2021065880A - 粒子分離装置及び分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、PFFにおける粒子分離処理用を向上させる粒子分離装置および粒子分離方法を提供することにある。【解決手段】流路の流れ方向(長手方向)をx軸とし、サンプル液とシース液の界面に対して垂直方向をz軸とし、x軸とz軸に直交する方向をy軸とした場合に、狭隘部のy軸方向の流路幅51を長くすることで、粒子分離処理量がy軸方向の流路幅51に略比例して向上することを見出した。また、狭隘部のz軸方向の流路幅50の長さのばらつきを抑制することで、処理量と共に分離能が向上することを見出した。さらに、狭隘部に流入するサンプル液とシース液の流量比が、狭隘部内で一定となるよう流入させることでも、処理量と共に分離能が向上することを見出した。【選択図】図4

Description

本発明は、流体中に含まれる粒子の分離装置及び前記装置を用いた流体中に含まれる粒子を操作する方法に関するものである。
マイクロスケール又はそれ以下の粒子や細胞を大きさごとに分離する技術は、生化学、診断医療や様々な工業分野で用いられる技術である。例えば、他の細胞に分化する造血幹細胞や、ES細胞のような幹細胞は、細胞分化の研究のために多くの細胞群から幹細胞のみを分離する必要がある。また、がんを診断するために、患者の血液中に循環腫瘍癌細胞(CTC)が含まれるかどうかの検査はがん検診の新たな方法で着目されている。一般にこれらの幹細胞やCTCは他の細胞とそのサイズが異なっているため、そのサイズ差を利用して他の細胞群から分離することが期待できるため、マイクロスケールまたはそれ以下のサイズ差で粒子や細胞を分離する技術は極めて重要な技術である。
それらの粒子や細胞を分離する技術として、比較的操作が簡便なものでは遠心分離やフィルトレーションといった手法、外力を利用する電場や磁場を用いた手法などが知られている。しかしながら、遠心分離やフィルトレーションは細胞分離に用いると物理的な刺激を与えてしまうため、生存率の低下につながることに加え、 分離精度が低いといった問題点がある。また、電場や磁場を用いる手法は、サンプルを修飾するといった操作が必要である場合があることに加え、外力を負荷する装置や設備が必要となるため操作が煩雑になるといった問題がある。
一方、近年フォトリソグラフィーや3Dプリンティングといった微細加工技術を利用して、幅が数ミクロン〜数百ミクロンの微小な流路(マイクロ流路)を用いた粒子や細胞の分離技術が広く研究、開発されている(非特許文献1乃至3)。マイクロ流路内では層流が安定的に保たれるため、流路内の流体を精密に制御でき、流体に懸濁した粒子や細胞を高精度に分離することができる。
例えば、特許文献1に、ピンチドフローフラクショネーション(Pinched Flow Fractionation)(以下PFFと記載)という手法が報告されている。この手法は複雑な機器・装置を必要とせず、マイクロチップ中の流路内に流体を導入することで、サイズによって粒子や細胞を連続的に分離でき、複数のフラクションへの分離も可能となる。つまり、例えば大きさで分離する場合、大きいものと小さいものという2段階だけではなく、大きさによる3グループ以上の集団へと分離することができる。
PFFは、流路幅が局所的に細くなっている構造(以下、狭隘部とする)に複数の分岐から流体を導入し、流れに対して垂直な方向における粒子の位置を制御し、その後、狭隘部内における粒子の位置に応じて流れが粒子に与える力の方向が異なることに着目した分離方法であり、連続的にかつ精密に分離が可能な技術である。PFFでは、特許文献1に記載のように、2つのインレットを持つ構造を用いることができ、例えば一方のインレットから目的の粒子を含む液(以下、サンプル液)、他方のインレットから目的の粒子を含まない液(以下、シース液)を流し、粒子をシース液によって狭隘部壁面へ押し付けて整列させることで粒子分離を実施することができる。
ここで、俯瞰図(図1(a))の狭隘部において、流路の流れ方向(長手方向)をx軸とし、サンプル液とシース液の界面に対して垂直方向をz軸とし、x軸とz軸に直交する方向をy軸とした場合に、z軸方向の流路幅50、y軸方向の流路幅51とすると、PFFにおける粒子分離能は一般に、z軸方向の流路幅50やサンプル液とシース液の流量比によって定まり、処理量はサンプル液とシース液の流量、またはマイクロチップを並列化することによって向上する。
特開2005−205387号公報
Analytical Chemistry、76、5465-5471、2004. Lab on a chip、5、1233-1239、2005. Lab on a chip、9、939-948、2009. Lab on a chip、5、778-784、2005.
しかしながら、処理量を向上させるためにサンプル液、シース液の流量を増大させた場合、圧損の上昇による影響で流路の破断や配管接続部からの液漏れが問題となる。また流路の材質が可撓性材料(例えばポリジメチルシロキサン(以下PDMS))の場合は、流量増加に伴うせん断力の上昇により狭隘部のz軸方向の流路幅50が拡幅し、分離能が低下することも懸念されるなど、流量の増大による処理量の増加には限界がある。一方でマイクロチップを並列化した場合、並列数に比例して処理量が増大するものの、マイクロチップの材料、製造コストもこれに比例して増加することになり、産業利用上の障壁となりうる。
本発明は、PFFと同様の分離原理を利用し、より簡便で低コストでありながら、単位時間当たりの粒子分離処理量を向上させるための粒子分離装置及びその方法を提供する。
本発明者らは上記課題を鑑み、狭隘部のy軸方向の流路幅51(すなわち、流路の2組の対向する壁面の内、前記流路内で形成される流体の界面に対して垂直方向に対向する壁面間の距離)を長くすることで、粒子分離処理量がy軸方向の流路幅51の長さに略比例して向上することを見出した。また、狭隘部のz軸方向の流路幅50(すなわち、流路の2組の対向する壁面の内、前記流路内で形成される流体の界面に対して平行方向に対向する壁面間の距離)の長さのばらつきを抑制することで、処理量と共に分離能が向上することを見出した。さらに、狭隘部に流入するサンプル液とシース液の流量比が、狭隘部内で一定となるよう流入させることでも、処理量と共に分離能が向上することを見出した。
従って、前記観点において、本発明は以下のものに関する。
[1]1の末端に流体導入口を備える2以上の分岐流路、及び当該分岐流路が合流して形成される流路を含み、少なくとも1の分岐流路の流体導入口から分離対象の粒子を含有する流体を導入される、粒子分離装置であって、
(1)合流して形成される流路の末端側の拡大開始点より下流側が拡大し、拡大された流路の末端に少なくとも1の回収口が備えられ、
(2)前記合流して形成される流路の2組の対向する壁面の内、前記流路内で形成される少なくとも2以上の流体の界面に対して垂直方向に対向する壁面間の距離が、水平方向に対向する壁面間の距離よりも長いことを特徴とする、前記粒子分離装置。
[2]前記分岐流路の少なくともいずれか一方に枝分かれ構造をもつことを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[3]前記界面に対して垂直方向の対向する壁面間の距離が、水平方向の対向する壁面間の距離よりも3倍以上長いことを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[4]前記合流して形成される流路の2組の対向する壁面の内、前記流路内で形成される少なくとも2以上の流体の界面に対して、平行方向に対向する壁面に接するように載置された1又は複数のピラー構造をもつことを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[5]複数のピラー構造が載置される場合に、前記合流して形成される流路の2組の対向する壁面の内、前記流路内で形成される少なくとも2以上の流体の界面に対して、垂直方向に対向する壁面付近において、前記ピラー構造の間隔が相対的に狭くなっている、および/または1もしくは2のピラー構造が前記壁面からの突出構造であることを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[6]前記合流して形成される流路が2以上の層で形成される多層構造体であって、前記流路内で形成される少なくとも2以上の流体の界面が、前記2以上の層に平行であることを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[7]一方の流体導入口から分離対象の粒子が懸濁した流体を導入し、もう一方の導入口からは粒子を含まない流体を導入し、前記流体が合流した流路内において、前記粒子を前記流路の壁面に滑流させることで行う粒子分離方法であって、
前記流体が合流した流路内において、前記流体が合流して形成される界面方向に対して平行方向の各流体の長さが、前記流体が合流して形成される界面方向に対して垂直方向の各流体の長さに対して長いことを特徴とする、粒子分離方法。
本発明により、PFFと同様の分離原理を利用しながら、より簡便で低コストかつ高い粒子分離処理量を達成した粒子分離装置及びその方法を提供することができる。これにより、従来では困難であった、粒子サイズによる精密な分離と高い粒子分離処理量の両立が可能となる。
PFFにおける粒子分離の原理を示す図であり、図1(a)は流路の俯瞰図、図1(b)は図1(a)のA―A’線における断面から、粒子を観察した図である。 本発明の一実施形態における粒子分離装置及びその方法の実施形態を備えた3つの構造の斜視概要図である。図2(a)は1段目の構造、図2(b)は2段目の構造、図2(c)は3段目の構造をそれぞれ示す。 図3(a)は図2に示した1段目構造に、2段目及び3段目構造をそれぞれ反転して重ねて形成される構造の斜視概要図である。図3(b)は図3(a)のx−z断面図の概略図であり、太線で囲まれた部分が流路構造を表す。図3(c)は図3(b)の点線で囲まれた領域のy−z断面図の概略図である。 図4(a)は図3(b)で示した断面図において、2つの導入口から導入された流体の挙動と粒子の分離の様子を示す説明概略図であり、図4(b)は図4(a)の点線で囲まれた領域を拡大し、分離の様子を詳細に示した概略図である。 作製したマイクロチップでの粒子分離実験で、図5(a)はサンプル液流量が50μL/min、シース液が1000μL/minの条件で送液した時の、各出口からの粒子の回収率(実施例1)、図5(b)はサンプル液流量が150μL/min、シース液が3000μL/minの条件で送液した時の、各出口からの粒子の回収率(実施例2)、図5(c)はサンプル液流量が250μL/min、シース液が5000μL/minの条件で送液した時の、各出口からの粒子の回収率(実施例3)をそれぞれまとめたグラフである。 本発明の別の一実施形態における粒子分離装置及びその方法の実施形態を備えた3つの構造の断面概要図である。粒子を含まない流体100Nと粒子を含む流体100Pを導入するインレット30a/bを入れ替えることでアウトレット32a/bから流出する粒子サイズを調整することができることを示す(図6(a),(b))。 本発明の別の一実施形態における粒子分離装置及びその方法の実施形態を備えた2つの構造の断面概要図である。粒子を含まない流体100Nと粒子を含む流体100Pを導入するインレット30a/bを入れ替えることでアウトレット32a/bから流出する粒子サイズを調整することができることを示す(図7(a),(b))。 図8(a)は本発明の別の一実施形態における粒子分離装置及びその方法の実施形態を備えたピラー突出構造の概要図である。図8(b)は、図8(a)の領域Aを上面から参照した拡大図である。 図8で示したピラー構造を変更した場合の粒子分離実験(実施例4)をまとめたグラフである。 土手構造を変更したマイクロチップでの粒子分離実験で、図10(a)はサンプル液流量が500μL/min、シース液が10000μL/minの条件で送液した時の、各出口からの粒子の回収率(実施例5)、図10(b)はサンプル液流量が800μL/min、シース液が16000μL/minの条件で送液した時の、各出口からの粒子の回収率(実施例6)、図10(c)はサンプル液流量が1000μL/min、シース液が20000μL/minの条件で送液した時の、各出口からの粒子の回収率(実施例7)をそれぞれまとめたグラフである。 より直径の大きい微粒子の連続分離実験で、図11(a)はサンプル液流量が250μL/min、シース液が5000μL/minの条件で送液した時の、各出口からの粒子の回収率(実施例8)、図11(b)はサンプル液流量が400μL/min、シース液が8000μL/minの条件で送液した時の、各出口からの粒子の回収率(実施例9)をそれぞれまとめたグラフである。 アウトレット32a、bの流体流出比を調整するための実験系を示した模式図である(実施例10)。 アウトレット32a、bの流体流出比を調整した場合の粒子分離実験で、各流出率における各粒子の回収率を示したグラフである(実施例10)。 本発明の一実施形態(図6)における粒子分離装置及びその方法の実施形態を備えた3つの構造の斜視概要図である。図14(a)は1段目の構造、図14(b)は2段目の構造、図14(c)は3段目の構造をそれぞれ示す。1段目の構造に、2段目及び3段目の構造をそれぞれ反転して重ねることで、図6の粒子分離装置を構成する。 図6、14に示す粒子分離装置による実施例11記載の粒子分離実験での各粒子の回収率を示したグラフである。 図6、14に示す粒子分離装置による実施例12記載の粒子分離実験での各粒子の回収率を示したグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示にのみ限定されるものでは無い。
図2に、本発明における粒子分離装置及び方法の実施形態を備えた、3段構造からなるマイクロチップの各段の流路構造の概略図をそれぞれ示している。図2に示すx軸方向は流れ(長手)方向を示し、z軸方向はサンプル液とシース液の界面に対して垂直方向とし、x軸とz軸に直交する方向をy軸として示す。これにより、y軸方向の流路幅は、壁35a、35bにより規定され、z軸方向の流路幅(深さ)は、図2(b)のピラー19の高さと一致する。
図2における流路基板10、16、22に形成された構造は、どの地点においても断面形状が矩形であり、流路深さは均一である。このように断面形状は、流路構造の作製上の容易さから、矩形であることが望ましいが、円形や楕円形、多角形などの断面であってもよく、また部分的に矩形以外の形状であってもよい。同様に流路構造の深さはその作製上の容易さから一定であることが好ましいが、部分的に深さが異なっていてもよい。一方で、より正確に流体を下流へ送りたい場合は、部分的に深さが異なる構造を設けて圧損を調整することで、サンプル液が導入される流路への逆流を抑制する、またはヘッド圧等の外的要因により引き起こされる流量変動を抑制することが可能となるため、部分的に深さが異なる構造を設けた方が好ましい場合もある。
図2に示した3段積層マイクロチップ29を構成するための1、2、3段目流路基板は、流路基板10に流路基板16を反転して重ね、さらに流路基板22を反転して重ねることで形成される。流路基板10の土手構造13部分に2段目のピラー部分19が重なることで、ピラー間の隙間を局所的に流路幅が小さくなった狭隘構造として利用する。狭隘構造のz軸方向の幅(深さ)は、流路基板10の土手構造13の壁34aと、流路基板16の狭隘部の壁34bとの距離に依存し、2段目流路基板のピラー構造の高さに対応する。すなわち、本装置及び手法の分離能は2段目のピラーの高さで調節することが可能である。
従って、前述の3段積層マイクロチップにおいて形成される狭隘構造(狭隘部31)内における、各インレットから導入された流体で形成される界面は、各層の面に平行に形成されることになる。
図2(a)に、本発明における3段積層流路の1段目の流路構造の概略図を示す。12と14に示す枝分かれの構造は、マイクロチップ内の流路に(特に狭隘部31へ)流体を均一に導入するための1以上の分岐部からなる構造であり、分岐部が多い方が流路に均一に流体を導入することができるため、流路幅に合わせて分岐の数を調整することが好ましい。これは、一般に、図2のx、y、z軸方向の少なくとも1つ以上の長さがマイクロ〜ミリレベルの構造をもつ流路において、流速分布が壁面近傍と流路中央で異なる現象に基づく施策であり、流体を均一に導入するという目的を達成するものであれば必ずしも前記枝分かれ構造を用いる必要はなく、他の構造を用いても良く、例えば1以上のピラー構造を設ける態様としてもよい。
ここで、土手構造13は、狭隘部を構成する構造の一つであるため、土手構造13のxy平面は平坦であることが好ましく、このxy平面が狭隘部の流路のz軸方向の壁34aとなる。
図2(b)に、3段積層流路の2段目の流路構造の概略図を示す。18及び20に示す貫通部のz軸方向の幅(深さ)は、積層流路内の層流を安定的に保つために数百マイクロメートル以下であることが好ましい。また、同貫通孔部のx軸方向の長さも、同様の理由で数百マイクロメートル以下であることが好ましい。ピラー構造19のx軸方向の長さは、貼り合わせや接着力といった作製の都合上、13の土手構造のx軸方向の長さと同程度が望ましい。図2(b)のxz面の壁35a及び35bが狭隘部のy軸の流路幅を規定する。
図2(c)に、本発明における微粒子分離で用いる3段積層マイクロチップの3段目の流路構造の概略図を示す。25と26に示す枝分かれの構造は、マイクロチップ内の流路に流体を均一に導入するための構造であり、分岐部が多い方が流路に均一に流体を導入することができるため、流路幅に合わせて分岐の数を調整するとよい。また、12と14に示す枝分かれの構造と同様に、流体を均一に導入するという目的を達成するものであれば必ずしも前記枝分かれ構造を用いる必要はなく、他の構造を用いても良い。
図3(a)に、図2に示す3段構造を統合した、本発明で用いるマイクロチップ29を示す。マイクロチップ29は、粒子をその大きさにより分離し、適当な回収系を用いることにより、サンプル液中の粒子を粒径ごとに分取するためのマイクロチップであり、例えば、PDMSなどの高分子(ポリマー)材料やガラスや金属等の硬く撓みが少ない材料により形成された3つの微細構造10、16及び22によって形成される平板上の構造を有していてよい。
ここで回収系とは、分離した粒子を回収するために用いられる構造ないし機構であり、例えば図3(b)のアウトレット32a、32bが該当し、前記アウトレットへ接続する樹脂製または金属製等の配管や、分離した粒子を回収する容器も含まれる。さらに前記配管の下流側の出口へ、分離した粒子を回収する容器を準備してもよい。この時、前記アウトレットや配管内を通過する流体の抵抗により、前記2つのアウトレットへ流入してくる流体の分配比が変化する可能性があるため、前記アウトレットや配管の内径、長さを適宜調整することが好ましい。
マイクロチップ29を作製する場合に用いる技術としては、例えば、モールディングやエンボッシングといった鋳型を用いる作製技術は、流路構造を正確かつ容易に作製可能であるという点において好ましいが、その他にも、フォトリソグラフィー、ソフトリソグラフィー、ウェットエッチング、ドライエッチング、ナノインプリンティング、レーザー加工、電子線直接描画、機械加工等、3Dプリンターの作製技術を用いることも可能である。但し、一般的なフォトリソグラフィーにより鋳型、流路を作製する場合、作製可能なアスペクト比(構造深さ/構造幅;但しここでの構造深さとは、フォトリソグラフィーにおいてレジストを感光させる紫外光の進行方向の構造長さを構造深さ、前記進行方向に対して垂直方向の構造長さを構造幅とする)3以上の構造の作製には、高精度な微細加工技術が必要であり、流路作製の操作が煩雑化し、コストの増加にもつながってしまうため、低アスペクト比の構造でも狭隘部31を構成できるよう、前述の積層構造を用いる方が好ましい。
また、マイクロチップ29を作製する場合の材質としては、PDMS、アクリル等の各種ポリマー材料を用いることができ、また、これらの材料のうち、任意の2種類の基板を組み合わせて用いることも可能である。ただし、流路自体を安価に作製し、ディスポーザブルな装置を提供するためには、ポリマー材料を用いることが好ましい。
図3(b)にマイクロチップ29のx−z断面図の概略図を示す。30aは図2の11、17及び23から、30bは図2の24からなるそれぞれインレットである。31は図2の13の土手構造により局所的にz軸方向の流路幅(深さ)が小さくされた狭隘部、32aは図2の15、21及び28から、32bは図2の27からなるそれぞれアウトレットである。インレット30a、30bは、それぞれ測定対象の粒子を含む流体と測定対象の粒子を含まない流体の流体導入口であり、アウトレット32a、32bは流体の出口である。なお、測定対象の粒子を含む流体(またはサンプル液)は、インレット30a、30b何れかから導入されることが好ましいが、図3に示す態様ではインレット30bから導入されることが好ましい。また、測定対象の粒子を含まない流体(またはシース液)は、インレット30a、30b何れかから導入されることが好ましいが、図3に示す態様ではインレット30aから導入されることが好ましい。狭隘部31において、導入されたサンプル液とシース液との間に界面が形成される。界面に対して平行方向(y軸方向)に対向する壁34a、34bの距離は、狭隘部31のz軸方向の流路幅(深さ)に該当する。さらに、インレット30a、30bは、図2、3では同じ高さに設けられているが、異なる高さに各々設けても良い。
図3(c)に、狭隘部31のy−z断面図を示す。図2の土手構造13及び、ピラー構造19が重なり、その隙間を狭隘部の流路として利用する。この狭隘部31のz軸方向の流路幅(深さ)は、ピラー構造19の高さに依存するため、任意の値に設定することが出来るが、マイクロスケールの粒子を分離する際は数十ミクロン以下の高さである方が好ましい。土手構造13と重なった際に接着の強度を保つために、ピラー構造19のy軸方向の幅は数マイクロメートル以上であるとよく、各ピラー間の距離はピラー幅の数倍程度であるとよい。なお、ピラー構造19は、図3のz軸方向の狭隘部の幅を一定とすることで粒子分離能が狭隘部31において均一となることを目的として設けられているものであり、例えばマイクロチップ29を構成する材質がガラスや可撓性の少ない高分子材料の場合、ピラー構造19は必ずしも必要ではない。しかしながら、PDMS等の可撓性の材質の場合は、前記ピラー構造19により、狭隘部を形成する構造の撓みを抑制することが可能となるため、好ましい。また、一般にマイクロ〜ミリレベルの長さや幅、高さをもつ流路での壁面近傍では流速が少なくなる傾向にあるため、ピラー構造19のうち、壁面近傍における各ピラー間の間隔を相対的に短くすることで、狭隘部31内でのサンプル液とシース液の流量比が、図3のy軸方向において均一となるよう調整してもよい。また、前述のサンプル液とシース液の流量比を図3のy軸方向において均一となるよう調整するという思想のもと、前記ピラー構造19中の各ピラーの間隔を、局所的に狭める、または拡げる、もしくは壁35a、b付近のピラー構造を連結する、または壁面へと接続することで部分的な突出構造を形成することがより好ましい。狭窄部31において、導入されたサンプル液とシース液との間に界面が形成される。界面は、土手構造13と平行方向に形成される。界面に対して垂直方向(z軸方向)に対向する壁35a、35bの距離は、狭隘部31のy軸方向の流路幅に該当する。狭隘部31のz軸方向の流路幅(深さ)に対して、狭隘部31のy軸方向の流路幅は、より長いことが好ましく、一例として3倍以上、5倍以上、10倍以上、50倍以上、100倍以上または500倍以上、1000倍以上、1500倍以上、5000倍以上長く設定することができる。
流路の全体の長さ、つまり、インレット30aのある一方の端から、アウトレット32aのあるもう一方の端までの長さは1μm以上の任意の値に設定することが可能であるが、流路作製の容易さと圧力損失の観点から数μm〜数百mm程度に設定することが好ましい。
また狭隘部31は、粒子の整列を達成する観点から、長さの下限が100nm以上であることが好ましく、1μm以上がさらに好ましく、長さの上限が10mm以下であることが好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
続いて、本発明の分離原理について図4を用いて詳しく説明する。図4(a)は、マイクロチップ29のインレット30aから分離対象の粒子を含まない流体である斜線で示した流体100Nを、インレット30bから分離対象の粒子を含む流体である流体100Pを導入した際の、粒子分離の概略図を示す。図4(b)は領域33の拡大図である。粒子300a、300bは、それぞれ相対的に大きな粒子と相対的に小さな粒子を示している。図4(b)において、矢印400a、400bは、それぞれ大きな粒子300aと小さな粒子300bの運動ベクトルを示している。
粒子を含む流体100Pおよび粒子を含まない流体100Nを、シリンジポンプなどの送液機構を用いて2つのインレット(流体導入口)30b、30aからそれぞれ連続的に供給する。この時、狭隘部33内では、それぞれの流体が安定な層流を保ちながら流れ、界面を形成する。そして、粒子を含む流体100Pおよび粒子を含まない流体100Nの流量を調節することで、狭隘部33における流体100Pのz軸方向の深さが、分離対象とする最小の粒子の粒径よりも小さくなるようにする。この操作により、分離対象とする全ての粒子は、狭隘部33上面に沿って滑流するようになり、粒子が滑流する狭隘部33上面に対して垂直方向における粒子の位置を、粒子の大きさによって一定にすることができる。
そして狭隘部33を通過した粒子は、粒子の中心位置と狭隘部33上面からの距離は粒径によって異なるため、中心位置が狭隘部上面に近いものほど狭隘部33下流の流路深さが拡大した領域において流路の浅い位置(図4上側)に、中心位置が狭隘部底面に近いものほど流路の深い位置(図4下側)に流出する。したがってその粒子の粒径によって流出する深さが決定する。浅い位置に流出した粒子と、深い位置に流出した粒子を各アウトレットの流出比を調整することで、分級が可能となる。
また、前記流路深さが拡大した領域は、狭隘部33よりも深さが大きくなっている領域を指す。より一般的には、図1に示すように、狭隘部下流の流路との拡大角度200a、200bの少なくともいずれか一方が180°未満である領域を指す。
ここで粒子が壁面に沿って滑流するとは、粒子が壁面付近を流れることをいい、必ずしも壁面に接触していることを意図するものではない。また、粒子は壁面付近で回転や跳躍する場合も含まれるものとする。サンプル液とシース液の流量は、シース液流量の方が大きい方が好ましく、2倍以上大きい方がさらに好ましく、10倍以上大きい場合が最も好ましい。
なお、分離した粒子を「非対称ピンチドフローフラクショネーション(Asymmetric Pinched Flow Fractionation(AsPFF)(非特許文献4)の原理に基づいて、一方のアウトレットに多量の流体を流すことで分離能を調整させることもできる。より具体的には、流路の抵抗値を適切に設計し、また、狭隘部33の流路幅および粒子径の関係から、ある特定のサイズの粒子を、特定のアウトレットにのみ導入できる、という原理である。本発明にAsPFFの概念を適用する場合、例えば、32bのアウトレットへ多量の流体が流れるよう各流路の抵抗値を適切に設計してもよく、適宜アウトレットの数を増やしてもよい。
なお、分離対象の粒子を含まない流体100Nが流れる空間が1の分岐流路、分離対象の粒子を含む流体100Pが流れる空間が別の1の分岐流路であり、前述の2つの分岐流路が合流することで形成された流体100N、流体100Pとの界面が存在する空間で、前述の界面が存在する空間の何れかの面または辺で分離対象とする粒子が滑流する流路が狭隘部33となる。但し、前述の各分岐流路は、狭隘部よりも上流に存在する空間のことを指す。
流路内部における流量条件を達成するための導入量の調節方法として、導入口からシリンジポンプ等を用いて溶液を導入することが操作上簡便であり好ましいが、ペリスタポンプ等の他のポンプを用いる手法、ボンベ、圧力装置等を用いた定圧送液方法、液面差を用いる方法、電気浸透流や遠心力等を用いた送液方法などを用いることも可能である。また、アウトレットから陰圧を付す圧力装置を用いることもできる。
なお、粒子の安定的かつ効率的な分離を達成するためには、流路内で安定な層流が保たれることが望ましく、具体的には、レイノルズ数が2300以下になる条件下で送液操作を行うことが好ましく、1000以下になる条件がさらに好ましい。
分離を行う粒子としては、直径3.2μm及び15μmの蛍光ポリスチレンビーズを用いたが、目的に応じて、ポリスチレン等のポリマー粒子、金属微粒子、セラミックス粒子、またはそれらの表面に物理的あるいは化学的な処理を施した粒子を用いることができる。また、本発明では、粒子にかかる外圧や変形を及ぼす力が少ないため、従来の分離方法であるフィルターなどでは、破裂や破壊が生じてしまう微粒子や細胞、その構成要素であるオルガネラなどの生物粒子、ウイルス、細菌、エクソソーム等の細胞外小胞、タンパク質、タンパク質凝集体を処理できる、という優れた効果を発揮する。分級対象とする粒子の最大直径はマイクロチップ29における狭隘部31の深さ未満であれば、任意の大きさの粒子を分離することができる。例えば、狭隘部31の深さが100μmである流路を用いる場合、分離される粒子の直径は、100μm未満である。
粒子を懸濁させた流体としては、0.5%(v/v)ツイーン80水溶液を用いたが、任意の液体または気体を用いることができ、目的に応じて様々な溶液を用いることができる。例えば、粒子としてポリマー粒子や金属粒子を用いる場合には、各種化学物質を含む水溶液の他、有機溶液、イオン性流体等を用いることができる。さらに、粒子として細胞等の生物粒子を用いる場合には、細胞培養液や生理緩衝液などの細胞と等張の水溶液を用いるのが好ましい。ただし、例えばバクテリアや植物細胞のような比較的低張あるいは高張溶液に対し耐性をもつ細胞の場合には、必ずしも等張である必要はない。また、操作の都合上、溶液の密度と粒子の密度の差が大きくない系がより好ましい。サンプル液、シース液の粘度に関しては、これらの粘度における差が小さい系がより好ましいが、粒子の処理を可能とするシステムであれば、粘度に差があってもよい。なお、粒子を含む流体と粒子を含まない流体は、どちらも同じ流体から構成されていてもよく、また、それぞれ2種類以上の異なる流体から構成されていてもよい。サンプル液とシース液の密度は、同等であってもよいし、異なってもよい。サンプル液とシース液とが上下に積層した層流を形成する観点から、下側の層流を形成する液体の密度を重くすることができる。
また、本発明は図6及び図14に示すように、土手構造13を用いずに狭隘部31を形成する構造を用いてもよい。1段目流路基板10は、流路構造を伴わない平坦な基板とする。2段目流路基板16は狭隘部を構成する壁34bを備え、1段目流路基板10の表面(壁34a)とともに狭隘部31の流路を構成し、ピラー構造19の厚みに対応するz軸方向の流路幅(深さ)を狭隘部31に与える。この場合、PFFの原理に基づいて粒子が押しつけられる壁面を、より平坦な面を持つガラス等の材料を用いることが出来る。2段目流路基板16は、貫通構造18及び20を備えており、貫通構造18及び20を介して、3段目流路基板22に形成された流路と連通する。2段目流路基板は枝分かれ構造12及び14を備え、2段目流路基板16と1段目流路基板10により形成される流路に流体を均一に導入する。2段目流路基板16は、枝分かれ構造12及び14に連通するインレット30aの一部17及びアウトレット30aの一部21を備え、これらは2段目流路基板16を貫通しており、3段目流路基板22のインレット30aの一部23及びアウトレット32aの一部28とともに、それぞれインレット30a及びアウトレット32aを形成する。3段目流路基板22は、枝分かれ構造25及び26を備え、3段目流路基板22と2段目流路基板16により形成される流路に流体を均一に導入する。3段目流路基板22は、枝分かれ構造25及び26に連通するインレット30bの一部24及びアウトレット32bの一部27を備える。なお、粒子を含まない流体100Nと粒子を含む流体100Pを導入するインレット30a/bを選択することで、狭隘部の流路のz軸方向の壁34a/bのどちらに粒子を滑流させるかを選択することができ、それによりアウトレット32a/bから流出する粒子サイズを調整することができる。
ここで、測定対象の粒子を含む流体(またはサンプル液)は、インレット30a、30b何れかから導入されることが好ましいが、図6及び図14に示す態様において、壁面34a/bのうち、壁面34aの方が平坦な面を持つ材料で形成される場合はインレット30aから、壁面34bの方が平坦な面を持つ材料で形成される場合はインレット30bから導入されることが好ましい。
さらに、本発明は図7に示すように、枝分かれ構造12、14、25、26、貫通構造18、20を用いずに2段積層マイクロチップとなる態様を用いてもよい。なお、粒子を含まない流体100Nと粒子を含む流体100Pを導入するインレット30a/bを選択することで、狭隘部の流路のz軸方向の壁34a/bのどちらに粒子を滑流させるかを選択することができ、それによりアウトレット32a/bから流出する粒子サイズを調整することができる。 ここで、測定対象の粒子を含む流体(またはサンプル液)は、インレット30a、30何れかから導入されることが好ましいが、図7に示す態様において、壁面34a/bのうち、壁面34aの方が平坦な面を持つ材料で形成される場合はインレット30aから、壁面34bの方が平坦な面を持つ材料で形成される場合はインレット30bから導入されることが好ましい。
なお、これまでに記載した3段積層マイクロチップは、一般的なフォトリソグラフィーの技術に基づいて3つの層状の流路基板(10、16、22)を作製し、前記各層の面同士を貼り合せることで作製したが、3Dプリンティングの技術で図3(a)や図6に示す構造を一括で作製してもよい。従って、本発明は複数の層を積層させることで作製しなくてもよく、流路製造プロセスにかかる人件費等のコストを低減できる点では、こちらの方が好ましい。一方、大量生産により部材のコストを低減する点では、前述のフォトリソグラフィーや金属加工、微細加工技術により作製した金属金型を用いたソフトリソグラフィー、射出成形を用いて、2層以上の多層構造とすることが好ましい。
製造実施例:積層流路の作製
本発明による連続分級方法の実施形態を備えた3段構造のマイクロチップ25の各段の微細構造は、一般的なフォトリソグラフィーとソフトリソグラフィー技術を用いて作製した。具体的な手順を以下の通り示す。
4インチベアシリコンウェハ(株式会社フィルテック)上へ、フォトレジストSU−8 3000シリーズ(Microchem社)を滴下後、スピンコーター(MIKASA社)を用いてフォトレジスト薄膜を形成した。マスクアライナー(ウシオ電機社)と、任意のパターンを形成したフィルムマスクを用いて流路パターンをフォトレジスト膜へ形成し、SU−8Developer(Microchem社)を用いて流路パターンを現像することで、用いたい流路の鋳型を作製した。
続いて、作製した鋳型へ、SILPOT184(東レ・ダウコーニング社)を用いて調製した未硬化のシロキサンモノマーと重合開始剤の混合物(重量比10:1)を流し込み、85℃で30分間加熱することで、流路の形状を転写されたポリジメチルシロキサン(PDMS)を作製した。硬化したPDMSを鋳型から慎重に剥がし、カッターで任意の大きさに成形後、パンチャーを用いて流路の入り口側ポート、アウトレットを形成した。剥離したそれぞれのPDMS同士を酸素プラズマ発生装置(メイワフォーシス社)で表面処理後、アライメント調整して各段のPDMS同士を貼り合わせることでマイクロチップ29を作製した。作製したマイクロチップの構造は図2、3に示した通りである。
また、用いたマイクロチップ29の各構造の大きさを、図2に示すx軸方向を長さ、y軸方向を幅、z軸方向を深さとして表す。土手構造13は、長さ300μm、幅1cm、深さ300μmとし、貫通構造18、20はともに長さ300μm、幅1cm、深さ300μmとし、枝分かれ構造12、14は幅500μm、深さ320μmの流路が、25、26は幅500μm、深さ80μmの流路が2つに枝分かれする構造をそれぞれ4回繰り返し、最終的に16本の流路に分岐する構造とした。さらに、ピラー構造19は長さ50μm、幅50μm、深さ20μm、ピラー間の壁面の距離75μmとした。
連続微粒子分離実験
実施例1
粒子の入っている流体100Pは18wt%スクロース、0.5wt%ツイーン80水溶液を用いて、直径3.2μmの蛍光ポリスチレン(Fluoro−Max;Thermo Scientific社製)を5μg/mLに、直径15μmの蛍光ポリスチレン−ジビニルベンゼン粒子(Fluoro−Max;Thermo Scientific社製)を200μg/mLにそれぞれ希釈し用いた。粒子の入っていない流体100Nは18wt%スクロース、0.5wt%ツイーン80水溶液を用いた。
製造実施例で作製したマイクロチップ29(図2、3)を用い、流体100Nをインレット30aから、流体100Pをインレット30bからシリンジポンプにより流量を調節してそれぞれ1000、50μL/minの流量で送液した。アウトレット32a、32bに回収用のチューブをセットし、流出した液体をマイクロチューブに回収し、風袋と回収後の質量の差から流出した液量の測定をそれぞれ行った。その後、血球計算版を用いて2つの回収液中の蛍光粒子濃度の測定を行った。流出した液量と濃度から、各出口から流出した各サイズの粒子の回収率を算出した。分離実験は3回行い、グラフの数字はその平均のデータを表している。
図5(a)は各出口からの粒子の回収率を示すグラフである。横軸は、アウトレット32a、32bを表し、縦軸は各粒子の回収率を表す。15μm粒子の95%以上はアウトレット32aから、3.2μm粒子の95%以上はアウトレット32bからそれぞれ流出し、高精度な分離を達成した。
ここで、非特許文献4記載の粒子分離実験において、サンプル液とシース液の界面に対して垂直方向の長さが20μmで、本実施例と凡そ同条件におけるサンプル液の処理量は20μL/hourであり、従来のPFFに比べて、本発明のサンプル処理量は150倍向上していることがわかる。
実施例2
流体100Nと流体100Pの流量をそれぞれ3000、150μL/minへ変更した点以外は実施例1と同様にして粒子の分離実験を行った。図5(b)に回収率を示したグラフを示す。15μm粒子の90%以上はアウトレット32aから、3.2μm粒子の90%以上はアウトレット32bからそれぞれ流出し、実施例1と比較して、総流量が3倍の条件でも高精度な分離を達成した。
実施例3
流体100Nと流体100Pの流量をそれぞれ5000、250μL/minへ変更した点以外は実施例1と同様にして粒子の分離実験を行った。図5(c)に回収率を示したグラフを示す。15μm粒子の95%以上はアウトレット32aから、3.2μm粒子の90%以上はアウトレット32bからそれぞれ流出し、実施例1と比較して、総流量が5倍の条件でも高精度な分離を達成した。
ピラー構造変更
実施例4
土手構造13の壁35a、bからの突出長が200μmのピラー突出構造61を壁面へ接続した点(図8参照)以外は実施例3と同様にして粒子の分離実験を行った。図9に回収率を示したグラフを示す。15μm粒子の97%以上はアウトレット32aから、3.2μm粒子の98%以上はアウトレット32bからそれぞれ流出し、実施例3と比較して、より高精度な分離を達成した。
土手構造幅変更
実施例5
土手構造13の幅を1cmから3cmへ変更し、流体100Nと流体100Pの流量をそれぞれ10000、500μL/minへ変更した点以外は実施例1と同様にして粒子の分離実験を行った。図10(a)に回収率を示したグラフを示す。15μm粒子の88%以上はアウトレット32aから、3.2μm粒子の90%以上はアウトレット32bからそれぞれ流出し、実施例1と比較して、総流量が10倍の条件でも高精度な分離を達成した。
実施例6
流体100Nと流体100Pの流量をそれぞれ16000、800μL/minへ変更した点以外は実施例5と同様にして粒子の分離実験を行った。図10(b)に回収率を示したグラフを示す。15μm粒子の90%以上はアウトレット32aから、3.2μm粒子の92%以上はアウトレット32bからそれぞれ流出し、実施例1と比較して、総流量が16倍の条件でも高精度な分離を達成した。
実施例7
流体100Nと流体100Pの流量をそれぞれ20000、1000μL/minへ変更した点以外は実施例5と同様にして粒子の分離実験を行った。図10(c)に回収率を示したグラフを示す。15μm粒子の84%以上はアウトレット32aから、3.2μm粒子の90%以上はアウトレット32bからそれぞれ流出し、実施例1と比較して、総流量が20倍の条件でも高精度な分離を達成した。
より直径の大きい微粒子の連続分離実験
実施例8
ピラー構造19の長さを150μm、幅75μm、深さ70μm、ピラー突出構造の壁面からの突出長を555μmへ変更し、粒子の入っている流体100Pは18wt%スクロース、0.5wt%ツイーン80水溶液を用いて、直径15μmの蛍光ポリスチレン(Fluoro−Max;Thermo Scientific社製)を5μg/mLに、直径50μmの蛍光ポリスチレン−ジビニルベンゼン粒子(Fluoro−Max;Thermo Scientific社製)を200μg/mLにそれぞれ希釈し、流体100Nと流体100Pの流量をそれぞれ5000、250μL/minへ変更した点以外は実施例1と同様にして粒子の分離実験を行った。図11(a)に回収率を示したグラフを示す。50μm粒子の96%以上はアウトレット32aから、15μm粒子の94%以上はアウトレット32bからそれぞれ流出し、実施例1と比較して、3倍程度直径が大きい粒子においても高精度な分離を達成した。
実施例9
流体100Nと流体100Pの流量をそれぞれ8000、400μL/minへ変更した点以外は実施例1と同様にして粒子の分離実験を行った。図11(b)に回収率を示したグラフを示す。50μm粒子の97%以上はアウトレット32aから、15μm粒子の92%以上はアウトレット32bからそれぞれ流出し、実施例8と比較して、総流量が1.6倍の条件でも高精度な分離を達成した。
アウトレット32a、bの流体流出比の調整
実施例10
アウトレット32aへL字型の金属パイプを介して外径3mm、内径2mmのシリコンチューブ200mmを接続し、シリコンチューブ末端から10mmをジャッキへテープで固定し、前記ジャッキの高さを調節することでシリコンチューブの位置エネルギーを利用したアウトレット32a、bの流体流出比の調整を行い(図12)、粒子の入っている流体100Pは18wt%スクロース、0.5wt%ツイーン80水溶液を用いて、直径3.2μmの蛍光ポリスチレン(Fluoro−Max;Thermo Scientific社製)を20μg/mLに、直径9.9μmの蛍光ポリスチレン−ジビニルベンゼン粒子(Fluoro−Max;Thermo Scientific社製)を300μg/mLにそれぞれ希釈し、流体100Nと流体100Pの流量をそれぞれ2000、100μL/minへ変更した点以外は実施例1と同様にして粒子の分離実験を行った(図13、表1)。なお、ジャッキ高さは、デバイスの底面が実験台に接している面(図2(a)のz軸原点側)を基準(0cm)とし、調整した。
検証の結果、回収口1への流体が流れる割合(回収口1流出率)が8.4%の時に、粒子の分離性能が最も良く(ジャッキ高さ2cm)、以上から流出率を調整することによって高精度な分離が可能になることを見出した。
Figure 2021065880
土手構造を用いない構造による粒子分離
実施例11
製造実施例に記載の方法で図6に示したマイクロチップを作製した。より詳細な構造を図14に記載する。各構造は、貫通構造18、20はともに長さ300μm、幅1cm、深さ360μmとし、枝分かれ構造12、14は幅100μm、深さ40μmの流路が2つに枝分かれする構造をそれぞれ5回繰り返し、最終的に32本の流路に分岐する構造とし、枝分かれ構造25、26は幅100μm、深さ160μmの流路が2つに枝分かれする構造をそれぞれ4回繰り返し、最終的に16本の流路に分岐する構造とした。さらに、ピラー構造19は長さ100μm、幅50μm、深さ20μm、ピラー間の壁面の距離75μm、ピラー突出構造は50μmとした。
粒子の入っていない流体100Nは糖溶液OptiPrep(コスモバイオ社製)で比重が1.05g/mLとなるよう純水で希釈し、0.05v/v%の濃度のツイーン20を含有する水溶液とした。粒子の入っている流体100Pは、直径2.2μmの蛍光ポリスチレン粒子(Polyscience社製)を1×10^7個/mLに、直径10.2μmの蛍光ポリスチレン粒子(Polyscience社製)を1×10^6個/mLになるよう、それぞれ粒子の入っていない流体100Nで希釈することで調製した。
上述の方法で作製したマイクロチップ(図6)を用い、流体100Nをインレット30bからプレッシャーポンプ(Dolomite社製)により流量を調節して送液し、流体100Pをインレット30aからシリンジポンプにより流量を調節してそれぞれ2000、100μL/minの流量で送液した。アウトレット32a、32bに回収用のチューブをセットし、流出した液体をマイクロチューブに回収し、風袋と回収後の質量の差から流出した液量の測定をそれぞれ行った。その後、血球計算版を用いて2つの回収液中の蛍光粒子濃度の測定を行った。流出した液量と濃度から、各出口から流出した各サイズの粒子の回収率を算出した。
図15に回収率を示したグラフを示す。10.2μm粒子の99%以上はアウトレット32bから、2.2μm粒子の88%以上はアウトレット32aからそれぞれ流出し、粒子分離が可能であることを確認した。
実施例12
枝分かれ構造12、14の深さを20μm、枝分かれ構造25、26の深さを80μm、貫通構造18、20はともに長さ530μm、幅1cm、深さ360μmとし、ピラー構造19の長さを700μm、幅20μm、深さ5μm、ピラー間の壁面の距離40μm、ピラー突出構造は175μmとした点以外は実施例11と同様のマイクロチップを用い、粒子の入っている流体100Pは、直径0.5μmの蛍光ポリスチレン粒子(Polyscience社製)を2×10^9個/mLに、直径2μmの蛍光ポリスチレン粒子(Polyscience社製)を1×10^8個/mLになるよう、それぞれ粒子の入っていない流体100Nで希釈することで調製し、流体100N、100Pをそれぞれ1500、50μL/minの流量で送液し、回収した粒子濃度の算出は国際出願番号PCT/JP2018/004900記載の方法で行った点以外は実施例11と同様にして粒子の分離実験を行った。図16に回収率を示したグラフを示す。2μm粒子の97%以上はアウトレット32bから、0.5μm粒子の91%以上はアウトレット32aからそれぞれ流出し、実施例11と比較して、より小粒径の粒子においても、高精度な分離を達成した。
10 1段目流路基板
11 インレット30aの一部
12 枝分かれ構造
13 土手構造
14 枝分かれ構造
15 アウトレット32aの一部
16 2段目流路基板
17 インレット30aの一部
18 貫通構造
19 ピラー構造
20 貫通構造
21 アウトレット32aの一部
22 3段目流路基板
23 インレット30aの一部
24 インレット30bの一部
25 枝分かれ構造
26 枝分かれ構造
27 アウトレット32bの一部
28 アウトレット32aの一部
29 3段積層マイクロチップ
30a、30b インレット
31 狭隘部
32a アウトレット(回収口2)
32b アウトレット(回収口1)
33 図4(b)の部分
34a、b 界面に対して平行方向に対向する壁
35a、b 界面に対して垂直方向に対向する壁
50 狭隘部のz軸方向の流路幅
51 狭隘部のy軸方向の流路幅
60 領域A
61 ピラー突出構造
62 突出長
100N 粒子を含まない流体
100P 粒子を含む流体
200a、200b 拡大角度
300a、300b 粒子
400a、400b 粒子300aと粒子300bの運動ベクトル

Claims (7)

  1. 1の末端に流体導入口を備える2以上の分岐流路、及び当該分岐流路が合流して形成される流路を含み、少なくとも1の分岐流路の流体導入口から分離対象の粒子を含有する流体を導入される、粒子分離装置であって、
    (1)合流して形成される流路の末端側の拡大開始点より下流側が拡大し、拡大された流路の末端に少なくとも1の回収口が備えられ、
    (2)前記合流して形成される流路の2組の対向する壁面の内、前記流路内で形成される少なくとも2以上の流体の界面に対して垂直方向に対向する壁面間の距離が、平行方向に対向する壁面間の距離よりも長いことを特徴とする、前記粒子分離装置。
  2. 前記分岐流路の少なくともいずれか一方に枝分かれ構造をもつことを特徴とする、請求項1記載の粒子分離装置。
  3. 前記界面に対して垂直方向の対向する壁面間の距離が、水平方向の対向する壁面間の距離よりも3倍以上長いことを特徴とする、請求項1又は2記載の粒子分離装置。
  4. 前記合流して形成される流路の2組の対向する壁面の内、前記流路内で形成される少なくとも2以上の流体の界面に対して、平行方向に対向する壁面に接するように載置された1又は複数のピラー構造をもつことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の粒子分離装置。
  5. 複数のピラー構造が載置される場合に、前記合流して形成される流路の2組の対向する壁面の内、前記流路内で形成される少なくとも2以上の流体の界面に対して、垂直方向に対向する壁面付近において、前記ピラー構造の間隔が相対的に狭くなっている、および/または1もしくは2のピラー構造が前記壁面からの突出構造であることを特徴とする、請求項4記載の粒子分離装置。
  6. 前記合流して形成される流路が2以上の層で形成される多層構造体であって、前記流路内で形成される少なくとも2以上の流体の界面が、前記2以上の層に平行であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の粒子分離装置。
  7. 一方の流体導入口から分離対象の粒子が懸濁した流体を導入し、もう一方の導入口からは粒子を含まない流体を導入し、前記流体が合流した流路内において、前記粒子を前記流路の壁面に滑流させることで行う粒子分離方法であって、
    前記流体が合流した流路内において、前記流体が合流して形成される界面方向に対して平行方向の各流体の長さが、前記流体が合流して形成される界面方向に対して垂直方向の各流体の長さに対して長いことを特徴とする、粒子分離方法。
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