JP2021058591A - 心臓の総負荷を軽減するためのカテーテルバルーン - Google Patents

Abstract

【課題】心臓静脈還流量を正常化するための方法を提供する。【解決手段】較正バルーンカテーテルを、大腿静脈から経皮的に挿入するステップ１０１と、較正バルーンカテーテルを、下大静脈まで前進させるステップ１０２と、較正バルーンカテーテルのバルーン部分を、肝静脈のドレナージポイントよりも前の位置に配置するステップ１０３とを含み、バルーン部分が適切な位置にあるか否かを確認するステップ１０４、バルーン部分の位置が適切でなければ位置を調整するステップ１０５、バルーン部分の位置が適切であればバルーン部分を適切な大きさに膨張させるステップ１０６、を実行することにより、静脈還流量を正常化することができ、心臓の総負荷などを軽減することができる。【選択図】図１

Description

本発明は、一般に、心臓カテーテルに関し、より詳細には、静脈還流量を減少させるためのバルーンカテーテルに関する。

急性心不全（AHF）は、急性非代償性心不全又は心不全としても知られている。AHFは、心臓が身体の必要とする速度で血液を正常な充満圧で送り出すことができないが故に、時間の経過とともに症状や兆候が悪化して発現する場合がある。AHFは、数日間から数週間をかけて発症する可能性がある。AHFは、心臓の収縮機能或いは拡張機能の障害、又は静脈或いは動脈の異常な血管収縮に起因する可能性がある。多くの場合、心臓系は、過剰な体液量に晒される。一般的な症状としては、呼吸困難、倦怠感、腹部不快感、下肢痛、睡眠障害、下肢浮腫などが含まれる。患者は、これら症状の全てを呈する場合もあれば、一部の症状だけを呈する場合もある。米国においては、65歳以上の患者が入院する原因の第１位は心不全によるものである。患者には、薬を処方することにより、例えば、体液量を減少させる、血流を増加させる、心拍出量を増加させることができる。しかしながら、費用、副作用、並びに患者のコンプライアンスなどの問題が効果的な治療を施すための障壁となっている。

要約すれば、本発明の一実施形態においては、心臓静脈還流量を正常化するための方法が提供され、その方法は、較正バルーンカテーテルを、大腿静脈から経皮的に挿入するステップと、較正バルーンカテーテルを、下大静脈まで前進させるステップと、較正バルーンカテーテルのバルーン部分を、肝静脈のドレナージポイントよりも前の位置に配置するステップとを含む。

本発明の他の実施形態においては、心臓静脈還流量を正常化するための装置が提供され、その装置は、バルーン部分及びシャフト部分を有する較正バルーンカテーテルを備え、較正バルーンカテーテルは、大腿静脈から経皮的に挿入されるよう、下大静脈まで前進されるよう、更にはバルーン部分を肝静脈のドレナージポイントよりも前の位置に配置するよう構成されている。

本発明の更なる実施形態においては、心臓静脈還流量を正常化するための方法が提供され、その方法は、較正バルーンカテーテルを、大腿静脈から経皮的に挿入し、較正バルーンカテーテルを、吸気中の患者における下大静脈の虚脱度まで較正するステップと、較正バルーンカテーテルを、下大静脈まで前進させ、較正バルーンカテーテルで、患者の吸気中に下大静脈を断続的に閉塞するステップと、較正バルーンカテーテルのバルーン部分を、肝静脈のドレナージポイントよりも前の位置に配置し、較正バルーンカテーテルを、そのバルーンカテーテルと下大静脈の内腔との間に能動的な固定点を有することなく自由に浮遊させるステップとを含む。

上記は要約であるため、簡略化、一般化、並びに省略を含み得る。即ち、当業者であれば、発明の概要は単なる例示に過ぎず、限定的ではないことを理解するであろう。

本明細書に記載の各実施形態を、それら実施形態における他の特徴及び利点と共により明瞭に理解するために、添付図面と併せて以下の説明を参照されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載されている。

バルーンカテーテルの一実施形態を示すブロック図である。 バルーンカテーテルの例示的な実施形態を示す説明図である。 患者にバルーンカテーテルを留置した状態の例示的な実施形態を示す説明図である。 心不全患者における心機能の一例を示す説明図である。 バルーンカテーテル留置後に、呼吸の呼気中における心機能の例示的な実施形態を示す説明図である。 バルーンカテーテル留置後に、呼吸の吸気中における心機能の例示的な実施形態を示す説明図である。 バルーンカテーテルを留置して心臓における総負荷の軽減後の例示的な実施形態を示す説明図である。 静脈内におけるバルーンカテーテルの例示的な実施形態を示す説明図である。

本明細書に一般的に記載かつ図示された実施形態の構成要素は、記載された例示的な実施形態に加えて、様々な異なる構成で配置及び設計できることは容易に理解されるであろう。従って、以下における図示の例示的な実施形態に関するより詳細な記載は、特許請求の範囲における実施形態を限定するものではなく、例示的な実施形態を表すに過ぎない。

本明細書全体を通して「一実施形態において」又は「ある実施形態において」などに関する言及は、その実施形態に関連して記載された特定の特性、構造、又は特徴が少なくとも１つの実施形態に含まれていることを意味する。従って、本明細書全体の様々な箇所における「一実施形態において」又は「ある実施形態において」などという表現は、必ずしも全て同じ実施形態を指しているわけではない。

更に、記載された特性、構造、又は特徴は、１つ以上の実施形態において、任意かつ適切に組み合わせることができる。以下の記載においては、実施形態を完全に理解するために、多数かつ特定の詳細が提供される。ただし関連技術の当業者であれば、様々な実施形態を、１つ以上の特定の詳細なしに実現できるか、又は他の方法、構成要素、材料などで実現できることを認識するであろう。他の例において、周知の構造、材料、又は操作は、図示されていないか又は記載されていない。以下の記載は、特定の例示的な実施形態の単なる例示である。

急性心不全は、過剰な体液量及び重度の肺鬱血を引き起こす静脈還流量の増加に起因し得る。静脈還流量の減少（正常化）は、肺鬱血及び心不全の改善にとって重要な場合がある。この問題を解決するための初期の試みにおいては、静脈還流量を正常化する手段として下肢への瀉血や止血帯が適用され、これにより肺鬱血の改善が行われた。その後、水銀利尿薬、より強力なASA利尿薬、フロセミド、ブメタニドの使用が、静脈還流量を急速に減少させて心不全症状を改善するのに役立った。しかしながら、この場合、水・電解質異常や腎障害など、腎機能への悪影響が生じる可能性がある。静脈還流量の増加という問題の存続は、静脈拡張を生じさせて静脈還流量を減少させる窒化物及び硝酸塩の使用につながり、症状が短期的に改善された。しかしながら、この種の薬物に固有の不耐性により、関連する副作用として頭痛が付加的に伴いつつ、数カ月で効果が失われる可能性がある。アルドステロン（スピロノラクトン）の受容体遮断薬の導入により、生理食塩水の貯留、並びに静脈還流量が最小限に抑えられた。しかしながら、受容体遮断薬によって重篤な副作用が生じた。

その後、アンジオテンシンの形成を遮断する薬剤などの新たな薬理学的代替薬が導入され、静脈還流量の減少をもたらし、心不全患者のクォリティ・オブ・ライフが向上した。更に、その後、心不全患者に対して効果的なβ遮断薬の使用が多数の心不全患者にとって治療の選択肢となっている。神経ホルモンであるアルギニン・バソプレッシンの受容体遮断薬（V1-V2）、即ち体水分減少剤の登場により、静脈還流量の減少及び肺鬱血の改善を、極めて短期的で非常に高価格で達成することができる。心不全を治療するための幹細胞の使用は、2007年のアメリカ心臓協会の年次総会で評価された。この技術では、左心室の駆出率は殆ど改善されず、利尿薬の投与によって静脈還流量が減少した場合にのみより良好な結果が得られる。

必要とされているのは、急性心不全（AHC）を治療するための方法及び装置である。患者が救急診療部にいる場合、循環血液量の増加を減少させる比較的迅速で信頼性の高い方法によって患者の転帰を改善できる可能性がある。本発明の方法及び装置は、正常なレベルの心機能が得られるまで、一時的な期間にわたって静脈還流量を減少させることができる。

従って、一実施形態においては、循環血液量の増加を調整するための方法及び装置が提供される。本発明の方法及び装置は、特に、静脈還流量を減少させることができる。本発明の方法及び装置においては、膨張可能なバルーンカテーテルを使用することができる。バルーンカテーテルは、較正され得る。この較正は、患者の呼吸の吸気中に下大静脈（IVC）が閉塞するようであってもよい。血流は、患者の呼吸の呼気時に元に戻すことができる。バルーンカテーテルは、左又は右の大腿静脈から挿入することができる。バルーンカテーテルは、肝ドレーンよりも前の位置まで下大静脈内に前進させることができる。バルーンカテーテルは、自由に浮遊していてもよい。一実施形態において、バルーンカテーテルは、挿入点からバルーンカテーテルまで延在するシャフトを有することができる。バルーンカテーテルは、静脈系内で自由に浮遊していてもよい。バルーンカテーテルは、その遠位端に能動的な固定点を有していなくてもよい。一実施形態において、近位端又は挿入端に固定点があってもよい。

図示の例示的な実施形態は、図を参照することによって最適に理解されるであろう。以下の記載は、特定の例示的な実施形態の単なる例示である。

図１には、較正されたバルーンカテーテルの一実施形態が記載されている。較正バルーンカテーテルは、AHFの治療に使用することができる。較正バルーンカテーテルは、静脈還流量を減少させるか又は正常化させるために使用することができる。較正バルーンカテーテルは、近位端及び遠位端を有することができる。遠位端は、バルーン部分を有することができる。バルーン部分は、自由に浮遊していてもよい。換言すれば、較正バルーンカテーテルの遠位端には、固定手段を設ける必要はない。近位端は、固定機構を有することができる。近位端及び遠位端は、シャフトによって接続することができる。較正バルーンカテーテルの配置に関する例示的な実施形態は、図２に示すと共に、本明細書に記載されている。較正バルーンカテーテルの例示的な実施形態は、図３〜図８に示すと共に、本明細書に記載されている。

一実施形態において、ステップ101では、較正されたバルーンカテーテルは、左又は右の大腿静脈の何れかを通して挿入することができる。一実施形態において、バルーン部分を有する較正バルーンカテーテルの遠位端は、最初に挿入することができ、次いで、シャフトを挿入することができる。この場合、較正バルーンカテーテルの近位端は、挿入箇所近傍に位置している。一実施形態において、シャフトは、較正バルーンカテーテルを挿入及び配置するための剛性構造を実現することができる。シャフトに関する更なる実施形態は、本明細書の他の箇所に記載されている。

一実施形態において、ステップ102では、較正されたバルーンカテーテルは、患者の下大静脈（IVC）内に前進させることができる。較正バルーンカテーテルの前進は、リアルタイム画像化技術、例えば２Ｄ心エコー検査を利用して行うことができる。IVCは、肋骨位置で、長手軸線ビューで、及び／又は、患者の吸気（息を吸う）中に測定された直径で画像化することができる。画像及び測定は、バルーン部分を配置したりバルーンを膨張させるための適切なサイジングをしたりするのに利用することができる。

一実施形態において、ステップ103では、較正されたバルーンカテーテルは、そのバルーン部分が肝静脈のドレナージポートよりも前の箇所に位置するよう配置することができる。バルーン部分の配置に関する一実施形態は、図３に示すと共に、本明細書に記載されている。ステップ104においては、本発明の方法及び装置に関して、バルーン部分が適切な位置にあるか否かを確認することができる。一実施形態において、較正バルーンカテーテルのバルーン部分がIVC内における肝ドレナージよりも前の位置にあれば適切である。ステップ105において、バルーン部分の位置が適切でなければ、バルーン部分の位置を調整してもよい。この調整は、リアルタイム画像化技術を利用して行うことができる。

一実施形態において、ステップ106では、本発明の方法及び装置に関して、バルーン部分を適切な大きさに膨張させることができる。一実施形態において、バルーン部分は、生理食塩水を使用して膨張させることができる。生理食塩水は、近位端のポートから注入することができる。バルーン部分は、吸気（息を吸う）中に静脈閉塞が生じ、呼気（息を吐く）中に部分閉塞が生じる大きさに膨張させることができる。一実施形態において、較正バルーンカテーテルにより、静脈還流量を減少（正常化）することができ、心臓の総負荷などを軽減することができる。

図２に示す実施形態において、装置はバルーンカテーテルとして構成することができる。バルーンカテーテルは、左又は右の大腿静脈を通して挿入することができる。バルーンカテーテルは、患者のIVCまで前進させることができる。バルーンカテーテルは、遠位端のバルーンが肝ドレナージよりも前に位置するようIVC内の箇所まで前進させることができる。バルーンカテーテルに関する実施形態及び患者の静脈系における例示的な配置に関する更なる詳細は、図８に示す。

バルーンカテーテルは、遠位端及び近位端を備えることができる。近位端は、挿入点に位置していてもよい。近位端は、固定点を有することができる。この固定点により、近位端又は近位端近傍を皮下細胞組織などに固定可能である。近位端は、分岐していてもよい。近位端は、少なくとも１つのポートを有することができる。ポートは、シリコーン製の膨張ポートとして構成することができる。ポートにより、バルーンカテーテルを膨張又は収縮させるための材料を付加又は除去することが可能である。バルーンを充填するための材料には、生理食塩水などを使用することができる。近位端及び遠位端は、シャフトによって接続することができる。シャフトは、双方向カテーテル、７フレンチカテーテルなどとすることができる。一実施形態において、カテーテルの内腔は、一方向バルブを有することができる。一実施形態において、ガイドワイヤは、カテーテルの長さに沿って近位端を通過することができる。

バルーンカテーテルは、較正され得る。換言すれば、バルーンの大きさは、呼吸の吸気中に静脈血流を閉塞し、呼気中に静脈血流を通過可能とするよう選択することができる。バルーンは、遠位端に配置することができる。較正は、バルーンカテーテルのサイジングを含むことができる。バルーンは、患者の吸気中のIVC直径の解剖学的測定に応じて、挿入前に大きさを決定することもできるし、選択することもできる。解剖学的測定には、IVC内腔径が含まれ得る。バルーンカテーテルがIVC内に配置された後、バルーンの膨張、大きさ決め、較正などを行うことができる。例えば、処置前又はリアルタイムで行われる画像化により、医療専門家は、IVC内のバルーンを適切に膨張させて、呼吸の吸気中における静脈血流を遮断し、呼吸の呼気中における静脈血流を通過させることができる。

一実施形態において、バルーンカテーテルは、バルーンを膨張させるための一方向カテーテルを含むことができる。バルーンは、ポリウレタン製であってもよい。バルーンは、外面上に複数のスロット又は溝を有することができる。バルーンは、外面上に８つのスロット又は溝を有することができる。１つ以上のスロット又は溝は、幅２ミリメートル（mm）×深さ１ミリメートルとすることができる。溝の数及び寸法は例示的であり、IVC内にバルーンを適切に取り付けるために変更してもよい。一実施形態において、バルーンは、より小さな前後径を有することができる。換言すれば、血流に面するバルーン端部は、下流の血流に面するバルーン後縁端部の直径に比べて、より小さな直径を有することができる。バルーンの形状は、血流に対してより小さな抵抗をもたらし得る。バルーンの形状により、カテーテルのシャフトに取り付けられたバルーンが自由に浮遊可能である。一実施形態において、バルーンは、IVCの壁又は内腔に能動的に固定されていない。

図３に示す実施形態において、装置は、患者に埋め込むことができる。バルーンカテーテルは、例えば、左又は右の大腿静脈から挿入することができる。バルーンカテーテルは、例えば、左又は右の大腿静脈を通して挿入することができる。バルーンカテーテルは、バルーンが肝ドレーン又は肝静脈よりも前の位置までIVCを通るよう前進させることができる。バルーンカテーテルのバルーンは、IVC内に固定点を有することなく自由に浮遊させることができる。固定点は、挿入点近傍の近位端に設けることができる。図３は、呼吸の呼気中（上側挿入図参照）、並びに呼吸の吸気中（下側挿入図参照）におけるバルーンカテーテルを示す。

図４は、急性心不全を呈する患者の心血管系を示す。この場合、患者は、静脈還流量が増加しているか又は循環血液量が増加している可能性がある。静脈還流量の増加は、心臓における総負荷の増加をもたらす可能性がある。心臓に関して増加した総負荷は、前負荷及び後負荷として見なすことができる。例えば、右心室、左心室、又は両方の心室が拡張される可能性がある。拡張期及び／又は収縮期中に、少なくとも１つの心室における容積の増加が生じ得る。大きさが拡張することにより、左心室、右心室、又は両方の心室における直径の増加が生じ、後負荷及び心臓における総負荷の増加が生じる可能性がある。

図５は、急性心不全を呈する患者の心血管系の一例を、バルーンカテーテルを挿入した状態で示す。この場合、例えば、横臥位にある患者の心不全状態の心臓が表されている。この場合、左心室及び右心室が拡張し得る。この拡張は、心臓静脈還流量の増加又は循環血液量の増加による心臓血流に起因する可能性がある。このような拡張は、心臓の総負荷を増加させ得る。一実施形態において、バルーンカテーテルは、右大腿静脈を通して挿入することができる。バルーンカテーテルは、そのバルーンが肝静脈ドレナージよりも前に配置されるようIVCまで前進させることができる。バルーンは、例えば、患者の呼気中にIVCの内腔断面の70％が閉塞するよう膨張させることができる。例えば、患者の吸気に伴って内腔径断面の30％が虚脱した場合、バルーンは、吸気中にIVCを閉塞させ得る。このように、患者の呼気（息を吐く）に伴い、IVCを通過する流れが部分的に元に戻る。

図６は、急性心不全を呈する患者の心血管系の一例を、バルーンカテーテルを挿入した状態で示す。この場合、例えば、心不全を呈している患者の心臓は、吸気（息を吸う）中の状態で表されている。例えば、拡張した左右の空洞、並びに心臓静脈還流量の増加又は循環血液量の増加によって増えた心臓血流は、心臓の総負荷を高める可能性がある。一実施形態において、バルーンカテーテルは、右大腿静脈を通して挿入され、肝静脈ドレナージよりも前のIVCまで前進させ、呼気に伴い30％の虚脱を示す患者において、IVCの前後径の70％まで膨張させることができる。一実施形態において、IVCが吸気に伴い虚脱すると、IVCの前後径が30％減少し、吸気の間は、血流調整が生じる。一実施形態において、吸気中に、IVCから右心房への血流が瞬間的かつ断続的に減少する。吸気が止むと、IVCにおいて前後径の70％の部分閉塞が生じ、従ってIVCから右心房への血流が可能になる。これは、前負荷の大幅な低減及び／又は心臓の総負荷の軽減が得られるまで繰り返すことができる。

図７は、（心臓の総負荷が減少した）正常な大きさ及び正常な容積流量の心室を有する患者の心血管系の一例を、バルーンカテーテルが挿入された状態で示す。この場合、例えば、静脈還流量又は前負荷の大幅な減少が例示されている。一実施形態において、バルーンカテーテルは、その日の数分間或いは数時間、又は後続する日々にわたって適用することができる。バルーンカテーテルの使用期間は、急性心不全を管理するのに選択することができる。カテーテルの使用期間は、患者に固有であると共に、医療専門家が決定することができる。本発明の方法及び装置は、利尿薬の投与量を最小限に減少させることが可能である。本発明のシステム及び方法は、利尿薬が適応されない場合、例えば妊娠中、又は利尿薬に対する過敏性又は耐性を有する患者において使用することができる。

このように、本明細書に記載された様々な実施形態は、急性心不全における治療技術の改善を意図している。本明細書に記載された技術により、一実施形態において、静脈還流量を制御するための方法及び装置を使用することができる。本発明の方法及び装置により、静脈還流量を減少させると共に、心臓の総負荷を軽減するためのより迅速で信頼性の高い手法が提供される。本発明の方法及びシステムは、特定の患者のニーズに固有の期間にわたって使用することができる。これは、上述した制限を有する従来の方法とは対照的である。本発明の技術により、静脈還流量を正常化すると共に、急性心不全を呈する患者の転帰を改善するためのより良好な方法が提供される。本発明の方法は、各呼吸段階と同期したときに、IVC流の断続的な閉塞を生じさせることによって静脈還流量の正常化をもたらし、従って大静脈流の調整が経皮経管的に実現される。

本明細書で記載された値は、用語「約」の使用によって示されるように、同等の値を含むものと解釈されることに留意されたい。同等の値とは、当業者にとっては明らかであるが、少なくとも最後の有効桁の丸めによって得られた値を含む。

本開示は、図示及び説明を目的としているが、網羅的又は限定的であることを意図していない。多くの修正及び変形は、当業者にとって自明のことであろう。本明細書の例示的な実施形態は、原理や実際の適用例を説明すると共に、様々な修正を加えた様々な実施形態に関して、本開示が想定する特定の用途を当業者が理解できるよう選択及び記載されたものである。

即ち、本明細書には添付図面を参照しつつ例示的な実施形態が記載されているが、本明細書は限定的なものではなく、当業者であれば、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を適用することができるものと理解されたい。

Claims (20)

1. 心臓静脈還流量を正常化するための方法であって、
   較正バルーンカテーテルを、大腿静脈から経皮的に挿入するステップと、
   前記較正バルーンカテーテルを、下大静脈まで前進させるステップと、
   前記較正バルーンカテーテルのバルーン部分を、肝静脈のドレナージポイントよりも前の位置に配置するステップと、
   を含む方法。
2. 請求項１に記載の方法であって、前記較正バルーンカテーテルが、その較正バルーンカテーテルと挿入点との間に配置された双方向カテーテルを更に備える方法。
3. 請求項１に記載の方法であって、前記較正バルーンカテーテルを、吸気中の患者における下大静脈の虚脱度まで較正する方法。
4. 請求項１に記載の方法であって、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分で、患者の呼吸における吸気中に下大静脈を断続的に閉塞する方法。
5. 請求項１に記載の方法であって、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分が、患者の呼吸における呼気中に下大静脈を通過する血流を可能にする方法。
6. 請求項１に記載の方法であって、前記較正バルーンカテーテルを、生理食塩水で満たす方法。
7. 請求項１に記載の方法であって、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分が、外面上に長手方向に配向された複数の溝を有する方法。
8. 請求項１に記載の方法であって、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分を、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分と下大静脈の内腔との間に能動的な固定点を有することなく自由に浮遊させる方法。
9. 請求項１に記載の方法であって、前記較正バルーンカテーテルを、心臓の総負荷が正常レベルに戻るのに必要な期間にわたって所定の位置に留める方法。
10. 請求項１に記載の方法であって、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分が、遠位端に比べて近位端においてより小さな直径を有する方法。
11. 心臓静脈還流量を正常化するための装置であって、バルーン部分及びシャフト部分を有する較正バルーンカテーテルを備え、該較正バルーンカテーテルが、大腿静脈から経皮的に挿入されるよう、下大静脈まで前進されるよう、更には前記バルーン部分を肝静脈のドレナージポイントよりも前の位置に配置するよう構成されている装置。
12. 請求項１１に記載の装置であって、前記較正バルーンカテーテルが、その較正バルーンカテーテルと挿入点との間に配置された双方向カテーテルを更に備える装置。
13. 請求項１１に記載の装置であって、前記較正バルーンカテーテルが、吸気中の患者における下大静脈の虚脱度まで較正される装置。
14. 請求項１１に記載の装置であって、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分が、患者の呼吸における吸気中に下大静脈を断続的に閉塞する装置。
15. 請求項１１に記載の装置であって、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分が、患者の呼吸における呼気中に下大静脈を通過する血流を可能にする装置。
16. 請求項１１に記載の装置であって、前記較正バルーンカテーテルが、生理食塩水で満たされている装置。
17. 請求項１１に記載の装置であって、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分が、外面上に長手方向に配向された複数の溝を有する装置。
18. 請求項１１に記載の装置であって、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分が、前記較正バルーンカテーテルの前記バルーン部分と下大静脈の内腔との間に能動的な固定点を有することなく自由に浮遊している装置。
19. 請求項１１に記載の装置であって、前記較正バルーンカテーテルが、心臓の総負荷が正常レベルに戻るのに必要な期間にわたって所定の位置に留められている装置。
20. 心臓静脈還流量を正常化するための方法であって、
    較正バルーンカテーテルを、大腿静脈から経皮的に挿入し、前記較正バルーンカテーテルを、吸気中の患者における下大静脈の虚脱度まで較正するステップと、
    前記較正バルーンカテーテルを、下大静脈まで前進させ、前記較正バルーンカテーテルで、患者の吸気中に下大静脈を断続的に閉塞するステップと、
    前記較正バルーンカテーテルのバルーン部分を、肝静脈のドレナージポイントよりも前の位置に配置し、前記較正バルーンカテーテルを、そのバルーンカテーテルと下大静脈の内腔との間に能動的な固定点を有することなく自由に浮遊させるステップと、
    を含む方法。

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