JP2021050164A - 癌免疫増強剤、及びそれを含有する増強抗癌剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】免疫修飾抗癌剤と併用して抗癌効果を増強させ、免疫チェックポイント機構を向上させる癌免疫増強剤を提供することを目的とし、また癌免疫増強剤と免疫修飾抗癌剤とを組み合わせて免疫修飾抗癌剤の薬効を増強された増強抗癌剤を提供することを目的とする。【解決手段】癌免疫増強剤は、白血球表面抗原アンタゴニストを、免疫修飾抗癌剤の薬効増強有効成分として、含有している。また増強抗癌剤は、前記の癌免疫増強剤と、免疫修飾抗癌剤とを組み合わせたものであり、それによって、前記免疫修飾抗癌剤の薬効が増強されている。【選択図】なし

Description

本発明は、膵癌・胆道系癌に対する免疫修飾抗癌剤の抗癌作用を増強させる癌免疫増強剤、それを含有する膵癌・胆道系癌に対する増強抗癌剤に関するものである。
膵癌・胆道系癌、例えば膵臓癌は、我が国における主要な癌の一つであり、早期発見が困難で、予後が悪いことが知られている。中でも膵管腺癌(PDAC)は、それ自身の所為で又はそれに続発する肝転移(LM)の所為で、5年生存率が5%未満、生存期間の中央値が4〜6ヶ月であり、最も致命的な悪性腫瘍である。
膵管腺癌に対して、外科的切除手術が唯一の根本的な治療方法ではあるが、手術可能な初期段階でしか施術できず、せいぜい15〜20%の患者に限られてしまう。一方、もはや切除不法な膵管腺癌患者には、ゲムシタビンを基本とした化学療法が、生存期間改善に有効である。例えば標準治療法として知られるゲムシタビン療法やゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法(Gem/nab−PTX療法)が行われている。しかしゲムシタビンによる化学療法によれば、生存期間が改善できるといっても、高々数ヶ月に限られており、根本的に完全な寛容は、期待できない。
近年、免疫チェックポイント阻害薬が開発されている。免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞の活性を抑制するシステムである。癌細胞は、免疫系から逃避しつつ生存するために、免疫チェックポイント分子による免疫抑制機構を回避し、T細胞等から攻撃されないようにしている。免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞にある免疫機能の抑制性レセプターである免疫チェックポイント分子への刺激を阻害することで、T細胞の活性を抑制するシステムである免疫チェックポイントシステムを阻害する。このような免疫反応は、疾患の予後を良好にするという良い影響を及ぼす。
例えば、PD−1/PD−L1免疫チェックポイントをターゲットとして抗PD−1モノクローナル抗体医薬品ニボルマブ(Nivolumab;商品名オプジーボ)が開発されており、根治切除不能な悪性黒色腫および扁平上皮非小細胞肺癌を適応として、有望な結果が得られている。
このPD−1は、活性化T細胞に発現する免疫チェックポイント分子であり、代表的なリガンドはPD−L1、PD−L2である。T細胞上のPD−1がPD−L1やPD−L2と結合すると、T細胞は活性化が抑制され機能不全に陥り、抗腫瘍免疫応答が抑制される。
PD−L1やPD−L2は、癌細胞(例えば、肺癌、大腸癌、悪性黒色腫など)で発現が認められる。癌細胞は、その細胞自身の表面に発現したPD−L1/PD−L2を、癌組織に集まってきたT細胞のPD−1と結合させることで、免疫逃避していると考えられている。
例えば、特許文献1には、SIRPα蛋白質の細胞外IgVドメインを分子標的とする抗SIRPα抗体を有効成分として含む抗腫瘍剤が記載されており、また、抗腫瘍剤としての有効成分が、SIRPα蛋白質の細胞外IgVドメインを分子標的とする抗SIRPα抗体に加えて、さらに免疫チェックポイント阻害剤及び/又は癌抗原に特異的に反応してADCC及びADCP活性を有する抗体医薬を含む抗腫瘍剤も記載されている。
このような免疫チェックポイント機構は、膵癌・胆道系癌とりわけ膵臓癌では機能し難いようである。現に、非免疫修飾型の抗癌剤と抗PD−1抗体とを併用しても、相加効果も相乗効果も認められていない。
本発明者らは、免疫細胞表面抗原に対する抗体との併用試験から、免疫修飾抗癌剤例えばゲムシタビンと白血球表面抗原抗体の一つである抗Ly6c抗体及び/又は抗PD−1抗体との併用で、癌、とりわけ膵臓・胆道系癌、例えば膵臓癌に対して、抗癌効果が増強されることを見出し、本発明を完成させた。
国際公開第2018/008470号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、従来の非免疫修飾型の抗癌剤又はそれと抗PD−1抗体とを併用しても抗癌効果が向上しなかったが、免疫修飾抗癌剤と併用して抗癌効果を増強させ、免疫チェックポイント機構を向上させる癌免疫増強剤を提供することを目的とし、また癌免疫増強剤と免疫修飾抗癌剤とを組み合わせて免疫修飾抗癌剤の薬効を増強された増強抗癌剤を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲に記載の癌免疫増強剤は、白血球表面抗原アンタゴニストを、免疫修飾抗癌剤の薬効増強有効成分として、含有していることを特徴とする。
この癌免疫増強剤は、前記白血球表面抗原アンタゴニストが、抗Ly6c抗体及び/又は抗PD−1抗体であると好ましい。
前記の目的を達成するためになされた増強抗癌剤は、前記の癌免疫増強剤と、免疫修飾抗癌剤とを組み合わせたものであり、それによって、前記免疫修飾抗癌剤の薬効が増強されているというものである。
この増強抗癌剤は、前記免疫修飾抗癌剤が、代謝拮抗薬であることが好ましい。
この増強抗癌剤は、例えば、前記代謝拮抗薬が、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、テガフール、テガフールとギメラシルとオテラシルカリウムとの併合剤、イリノテカン、及びオキサリプラチンから選ばれる少なくとも何れかであるというものである。
この増強抗癌剤は、前記免疫修飾抗癌剤と、前記抗Ly6c抗体及び前記抗PD−1抗体とを含有するものであると、一層好ましい。このような三剤併用療法であると抗癌作用がより一層増強する。
この増強抗癌剤は、例えば膵癌・胆道系癌の治療薬である。
この増強抗癌剤は、より具体的には、前記膵癌・胆道系癌が、膵臓癌であるというものである。
本発明の癌免疫増強剤は、白血球表面抗原アンタゴニスト例えば抗Ly6c抗体及び/又は抗PD−1抗体を、免疫修飾抗癌剤の薬効増強有効成分として含有していることにより、免疫チェックポイント阻害薬として有用である。
中でも、抗Ly6c抗体と抗PD−1抗体とを、免疫修飾抗癌剤例えばゲムシタビンと併用すれば、in vitroのみならずin vivoでも免疫修飾抗癌剤の薬効増強効果が一層向上する。従って、この癌免疫増強剤は、この薬効増強効果によって、癌患者、中でも膵癌・胆道系癌患者とりわけ膵臓癌患者において、免疫修飾抗癌剤による延命率を向上させることができる。
この癌免疫増強剤と免疫修飾抗癌剤とを組み合わせた本発明の増強抗癌剤は、免疫修飾抗癌剤単独投与、又は非免疫修飾抗癌剤と抗Ly6c抗体や抗PD−1抗体との併合投与では、十分に抑制できなかった、癌患者、中でも膵癌・胆道系癌患者とりわけ膵臓癌患者での免疫チェックポイントを阻害して、T細胞などが癌細胞、癌組織、癌病原巣を攻撃できるようにすることにより、癌を治療するというものである。
この増強抗癌剤は、癌疾患発症初期から後期のほぼ全てのステージでの膵癌・胆道系癌とりわけ膵臓癌を標的とし、延命率を画期的に伸ばすことができる有用なものである。この増強抗癌剤は、悪性腫瘍、中でも膵臓・胆道系癌とりわけ膵臓癌に対して、耐性を生じることなく、予防、治療、再発・再燃防止に有効である。
本発明を適用する癌免疫増強剤を含有する増強抗癌剤と、本発明を適用外の抗癌剤とを、癌転移モデルに投与したときの生存率と経過日数との相関関係を示すグラフである。 本発明を適用する癌免疫増強剤を含有する増強抗癌剤と、本発明を適用外の抗癌剤とを癌転移モデルに投与したときのPMBC中のCD4+T細胞及びCD8+T細胞の割合と、それらCD4+T細胞中及びCD8+T細胞中のPD−1陽性細胞の割合とを、示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明の癌免疫増強剤は、白血球表面に発現している抗原に対するアンタゴニスト、例えば抗Ly6c抗体及び/又は抗PD−1抗体、好ましくは抗Ly6c抗体及び抗PD−1抗体を、免疫修飾抗癌剤の薬効増強有効成分として、含有している。
また本発明の増強抗癌剤は、免疫修飾抗癌剤例えば代謝拮抗薬であるゲムシタビン、5−フルオロウラシル、テガフール、テガフールとギメラシルとオテラシルカリウムとの併合剤、イリノテカン、及びオキサリプラチンから選ばれる少なくとも何れかと、前記の癌免疫増強剤とを組み合わせて、含有することにより、抗癌剤単独投与では延命効果を期待できない膵癌・胆道系癌とりわけ膵臓癌の治療薬となるものである。
ゲムシタビン(Gemcitabine: GEM)は、デオキシシチジンの糖鎖の2’位の水素をフッ素に置換したヌクレオシド誘導体であり、DNA合成が主に行われているS期に特異的な作用を示すものであって、細胞内に取り込まれ三リン酸体に代謝され、デオキシシチジン三リン酸と競合してDNA鎖に取り込まれ、DNAの合成を阻害するというものである。ゲムシタビンは、遊離であってもよく塩酸塩のような塩であってもよく、好ましくは(+)−2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン塩酸塩((+)-2’-Deoxy-2’,2’-difluorocytidine monohydrochloride)である。例えばゲムシタビン点滴静注用として遊離ゲムシタビン換算で200mg/1バイアル又は1g/1バイアルのものが市販されている。
5−フルオロウラシル(5-fluorouracil: 5−FU)は、フッ化ピリミジン系の代謝拮抗薬であり、ウラシルの5位の水素原子がフッ素原子で置換された構造を有しており、主としてDNAの合成障害、RNAの機能障害を引き起こすことで、がん細胞をアポトーシス(細胞の死)に誘導するものである。錠剤のものの他、250mg/1バイアルや1000mg/1バイアルの注射液などが市販されている。
テガフール(Tegafur)は、抗癌活性本体である5−FUのプロドラッグであって、5-Fluoro-1-[(2RS)-tetrahydrofuran-2-yl]uracilであり、肝臓の代謝酵素によって徐々にフルオロウラシルへと半減期約7.5時間で変換されるというものである。
テガフールとギメラシルとオテラシルカリウムとの併合剤は、テガフール(Tegafur)と5−FU分解酵素阻害薬であるギメラシル(Gimeracil)と5−FUの消化管毒性軽減薬であるオテラシルカリウム(Oteracil Potassium)との三成分を例えば1:0.4:1の質量比で含有する併合剤(商品名TS−1)であって、5−FUのプロドラッグであるテガフールが20mg含有又は25mg含有錠剤又はカプセルなどが市販されている。
イリノテカン(Irinotecan)は、カンレンボク由来の抗腫瘍性アルカロイドであるカンプトテシンの半合成アナログであり、遊離であってもよく塩酸塩のような塩であってもよく、好ましくはイリノテカン塩酸塩水和物(即ち(+)-(4S)-4,11-diethyl-4-hydroxy-9[-(4-piperidinopiperidino)carbonyloxy]-1H-pyrano[3’,4’:6,7] indolizino[1,2-b]quinoline-3,14(4H,12H)-dione hydrochloride trihydrate)を有効成分としているものである。イリノテカンは、DNAの複製の際DNAの捻じれを解消して一本鎖にまで解く酵素トポイソメラーゼIを阻害することによってDNAの複製を抑制し、細胞増殖をストップさせて、癌細胞を細胞死へ誘導するものである。イリノテカンとして、40mg/1バイアルや100mg/1バイアルのイリノテカン塩酸塩点滴静注液などが市販されている。
オキサリプラチン(Oxaliplatin)は、癌細胞に対しシスプラチンと同じく、2本のDNA鎖の間に入り込んで、DNAの合成を阻害する白金化合物であって(SP-4-2)[(1R,2R)-Cyclohexane-1,2-diamineκN,κN’][ethanedioato(2-)κO1,κO2]platinumである。オキサリプラチンは、50mg/1バイアルや100mg/1バイアルや200mg/1バイアルのオキサリプラチン点滴静注液などが市販されている。
抗Ly6c抗体は、ヒト、ラット等に由来するもので、Ly6cに対する抗体であって、Biolegend社製、BD Bioscience製のものなどが挙げられる。Ly6cは、骨髄細胞分化抗原Gr−1として知られているLy6スーパーファミリーのメンバーで、GIPアンカー型細胞表面抗原である。Ly6Cは主にリンパ球、単球/マクロファージ、顆粒球に発現しており、発現細胞の発生・成熟に関与していると考えられている。
抗PD−1抗体は、ヒト、ラット等に由来するもので、PD−1に対する抗体であって、Biolegend社製、BD Bioscience製のものなどが挙げられる。抗PD−1抗体は、T細胞上のPD−1に結合して、例えば癌細胞表面のPD−1とPD−L1/PD−L2の結合を阻害することにより、抑制シグナルの伝達をブロックしてT細胞の活性化を維持し、抗腫瘍効果を回復させるものである。
抗Ly6c抗体は中和する抗体であり、一方、抗PD−1抗体はPD−L1をブロッキングする抗体である。PD−L1は、癌細胞のみならず骨髄球形細胞でも発現することが知られており、免疫系の中でリンパ球系と相互作用してリンパ球系の作用を抑え込んでいる。
膵癌・胆道系癌例えば膵臓癌は、PD−1/PD−L1のみならず複雑な作用によって、免疫チェックポイントが作用していると考えられている。この増強抗癌剤は、白血球表面抗原アンタゴニスト例えば抗Ly6c抗体及び/又は抗PD−1抗体好ましくは抗Ly6c抗体及び抗PD−1抗体と、免疫修飾抗癌剤とを併用して投与することにより、免疫修飾抗癌剤による抗癌作用と免疫チェックポイントによる抗癌作用とを発現して、膵臓・胆道系癌とりわけ膵臓癌に対して抗癌剤単独又は抗Ly6c抗体単独投与では延命率向上、予防、治療、再発・再燃防止に寄与している。
癌免疫増強剤には、抗Ly6c抗体及び/又は抗PD−1抗体が、200μg/200μlのものが市販されているが、一回の投与で0.001μg〜1g、好ましくは0.1μg〜100mg、より好ましくは1μg〜10mg、より一層好ましくは200μgを体内に好ましくは経口投与又は静脈注射投与できるように、含有されている。
癌免疫増強剤の免疫増強、及び癌免疫増強剤を含む増強抗癌剤の抗癌作用増強の作用メカニズムは、必ずしも明らかでないが、以下のように推察される。PD−L1が癌細胞に発現するが、免疫修飾抗癌剤と抗Ly6c抗体及び/又は抗PD−1抗体好ましくは抗Ly6c抗体及び抗PD−1抗体との併合により、PD−L1を阻害し、Ly6cをブロックして、リンパ球での刺激反応できなくなることを防止しているのであると推察される。また、併せて免疫修飾抗癌剤例えばゲムシタビンが癌細胞に取り込まれDNA合成阻害により癌細胞分裂を止めることにより癌細胞、癌組織、癌病原巣の増殖を抑制しつつ、免疫抑制細胞を減少させる。それによって、低下した免疫力を高めて抗癌作用を増強させ、特に、三剤併用(トリプルセラピー)の効果を生じる。後述の実施例のように、現に、in vivoで、生存率が向上している。
その結果、免疫修飾抗癌剤例えばゲムシタビンが癌細胞の増殖を抑制し、一方、抗PD−1抗体が、T細胞の活性化(プライミング相)において、PD−1の結合を阻害し、それによってT細胞が癌細胞へ遊走し、癌組織へT細胞が細胞障害性T細胞となって浸潤した後、T細胞が癌細胞を認識して、癌細胞を攻撃・排除化(エフェクター相)するので、癌免疫応答のブレーキを解除し、癌細胞の死滅に誘導する。
この増強抗癌剤は、免疫修飾抗癌剤と、白血球表面抗原アンタゴニスト例えば抗Ly6c抗体及び/又は抗PD−1抗体を免疫修飾抗癌剤の薬効増強有効成分として含有し、必要に応じ、非毒性で不活性の薬学的に許容しうる賦形剤、例えば固体状、半固体状もしくは液状の希釈剤、分散剤、充填剤及び担体と混合することにより、製剤化されている。さらに安定剤、保存剤、pH調整剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料防腐剤、媒質、生理食塩水、別な薬効を有する薬剤が添加剤として含まれていてもよい。
この癌免疫増強剤、及びそれを含有する増強抗癌剤の剤形は、例えばエリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、軟膏、懸濁剤、液剤、腸溶剤、乳剤、硬膏剤、坐剤、散剤、錠剤、シロップ剤、注射剤、トローチ剤、軟膏剤、ハップ剤、リニメント剤、リモナーデ剤、ローション剤が挙げられる。液状媒体に溶解させてもよく懸濁させてもよく、固体状媒体に分散させたものであってもよい。
この癌免疫増強剤、及びそれを含有する増強抗癌剤は、経口で投与してもよく、静脈注射・点滴で投与してもよく、皮膚に塗布乃至貼付して経皮吸収させてもよい。特に、増強抗癌剤は、免疫修飾抗癌剤と白血球表面抗原アンタゴニストとを、事前に又は用時に調製して、治療の際に投与するものであることが好ましい。
この増強抗癌剤中、抗癌活性の有効成分とする免疫修飾抗癌剤を、0.001〜99質量%含んでいる。この増強抗癌剤中、免疫修飾抗癌剤を患者の体重に対し、0.001〜100mg/kg含んでいることが好ましい。
この増強抗癌剤の投与量、用量は、抗癌活性の有効成分とする免疫修飾抗癌剤の有効性、投与の形態・経路、前癌の進行ステージ、患者の体型・体重・年齢、併用する他の疾患の治療薬の種類や量に応じ、適宜選択される。その投与は、1日1〜5回毎日投与してもよく、1日〜14日おきに又は2〜6週間おきに間欠的に投与してもよい。一定期間例えば2〜4週間毎日投与した後、数日(例えば1日〜1週間)程度休薬するものであってもよい。
以下、本発明の実施例について、詳細に説明する。
(実施例1〜3、及び比較例1〜2)
以下のようにして、マウスPDAC(膵管腺癌)細胞株を用いた癌転移モデルを作製した後、試験を行った。
先ず、0日目に、マウスPDAC細胞株としてPAN02細胞株の2.5×10個/200μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)液を、C57BL/6L雄マウスに脾臓内注射し、7日間飼育して、肝転移モデルを作製した。
7日目から37日目まで定間隔で計9回、5群のそれぞれに被検液A〜EのPBS液を腹腔内注射処理し、各マウスを死亡するまで又は最大71日目まで飼育した。1〜3回目投与と4回目投与以降との被検液A〜Eの組成を以下に示す。ゲムシタビン(GEM)はBecton Dickinson社製で1mg/100μL、抗PD−1抗体(anti-PD1)はBecton Dickinson社製で200μg/200μL又は150μg/150μLで、抗Ly6c抗体(anti-Ly6c)はBecton Dickinson社製で200μg/200μLを用いた。
・被検液A〜Eについて
被検液A(比較例1):1群中n=7、PBS液のみ(ネガティブコントロール)
被検液B(比較例2):1群中n=7、GEM含有液(ポジティブコントロール)
被検液C(実施例1):1群中n=6、GEM+anti-PD1
被検液D(実施例2):1群中n=7、GEM+anti-Ly6c
被検液E(実施例3):1群中n=6、GEM+anti-Ly6c+anti-PD1
・1〜3回目投与まで
GEM濃度 :1mg/100μL
Anti-Ly6c濃度:200μg/200μL
Anti-PD1濃度 :200μg/200μL
・4回目投与以降
GEM濃度 :1mg/100μL
Anti-Ly6c濃度:200μg/200μL
Anti-PD1濃度 :150μg/150μL
各群の生存のカプランマイヤー法解析(Kaplan-Meier Survival by group)による生存曲線の結果を、縦軸の生存率(Fraction Surviving)と横軸の経過日数(time)との相関関係で表して図1に示す。図1中のログランクテスト(Log rank test)は、カイ二乗検定(Chi square statistic)・自由度(degrees of freedom)・p値(p-value)が夫々、14.300561と4と0.006395とであった。なおログランクテストは、カイ二乗検定・自由度・p値が夫々、被検液A−被検液Eで6.293379と1と0.012119であり、被検液B−被検液Eで4.400720と1と0.035924であり、被検液C−被検液Eで2.174997と1と0.140270であり、被検液D−被検液Eで4.698052と1と0.030197であった。
図1から明らかな通り、被検液Eは、ゲムシタビン(GEM)と抗Ly6c抗体(anti-Ly6c)と抗PD−1抗体(anti−PD1)との3剤併用したものであり、そのトリプルセラピーのおかげで生存率(Fraction Surviving)、生存期間、若しくは50%生存中央値又はエンドポイントが、Pリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のみである被検液Aに比べ大幅に延びて、71日間経過後でも生存率約80%であった。また、被検液Cは、ゲムシタビンと抗PD−1抗体との2剤併用したものであり、60日間を超えても全頭が生存しておりその後生存率が低下したものの、生存率などの各データがPBSのみの被検液Aに比べ大きく延びていた。なお、ゲムシタビンと抗Ly6c抗体との2剤併合した被検液Dは、ゲムシタビンの単剤である被検液Bと同等であり、生存率などの各データが被検液Aよりも延びていた。
(実施例2’及び3’、並びに比較例1’)
前記の実施例2(被検液D使用)及び実施例3(被検液E使用)、並びに比較例1(被検液A使用)と同様なモデルにおけるマウスの38日目に、マウス抹消血液のリンパ中のヘルパー細胞であるCD4+T細胞及びキラー細胞であるCD8+T細胞の割合と、そのCD4+T細胞中及びCD8+T細胞中でのPD−1陽性細胞の割合とについて、検討した。BD AccuriTM C6 Cytometer (BD Biosciences社製の商品名)を用いて、各試料を処理し、FlowJo (登録商標) V10 software (Tree Star社製)によりデータを解析した。
前方散乱光(forward scatter;FSC)と測方散乱光(side scatter;SSC)の組合せから得られるパラメーターとするサイトグラムによるゲーティングにより、求めた。その結果を、図2(a)〜(b)及び(c)〜(d)に示す。
図2から明らかな通り、マウス末消血から単離された単球やリンパ球を含む単核球(単核細胞)であるPBMC(Peripheral Blood Mononuclear Cells)中のCD4+T細胞中のPD−1活性細胞は、ゲムシタビンと抗Ly6c抗体との2剤併用した被検液D(実施例2に対応)、及びゲムシタビンと抗Ly6c抗体と抗PD−1抗体との3剤併用した被検液E(実施例3に対応)とにおいて特に後者において、PD−1陽性細胞が、PBSのみの被検液Aよりも、明らかに増加していた。このことは、3剤併用の被検液Eが、特に免疫チェックポイント機構に基づいて高い抗癌作用を示すという結果を裏付けている。
本発明の増強抗癌剤、及びそれと免疫修飾抗癌剤とを含有する増強抗癌剤は、従来の化学療法で長期の延命が望めなかった悪性腫瘍、特に膵臓・胆道系癌、とりわけ膵臓癌、中でも膵管腺癌の予防、治療、再発・再燃防止に用いることができ、長期間延命させるのに用いることができる。

Claims (8)

  1. 白血球表面抗原アンタゴニストを、免疫修飾抗癌剤の薬効増強有効成分として、含有していることを特徴とする、癌免疫増強剤。
  2. 前記白血球表面抗原アンタゴニストが、抗Ly6c抗体及び/又は抗PD−1抗体であることを特徴とする請求項1に記載の癌免疫増強剤。
  3. 請求項1又は2に記載の癌免疫増強剤と、免疫修飾抗癌剤とを組み合わせたものであり、前記免疫修飾抗癌剤の薬効が増強されていることを特徴とする増強抗癌剤。
  4. 前記免疫修飾抗癌剤が、代謝拮抗薬であることを特徴とする請求項3に記載の増強抗癌剤。
  5. 前記代謝拮抗薬が、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、テガフール、テガフールとギメラシルとオテラシルカリウムとの併合剤、イリノテカン、及びオキサリプラチンから選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする請求項4に記載の増強抗癌剤。
  6. 前記免疫修飾抗癌剤と、抗Ly6c抗体及び抗PD−1抗体とを、含有することを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の増強抗癌剤。
  7. 膵臓・胆道系癌の治療薬であることを特徴とする請求項3〜6の何れかに記載の増強抗癌剤。
  8. 前記膵臓・胆道系癌が、膵臓癌であることを特徴とする請求項7に記載の増強抗癌剤。
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