JP2021049795A - ローバー - Google Patents

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Abstract

【課題】レゴリス堆積斜面における登坂走行においても十分な走行性能を発揮することが可能なローバーを提供すること。【解決手段】車体(10)と、左右の車輪(20,30)と、前記車体に支持され、前記左右の車輪のそれぞれと結合される左右の車軸(114,124)と、前記左右の車軸のそれぞれを回転させるための回転駆動部(10B)と、前記車輪の回転に伴う前記車体の連れ回りを防止するためのスタビライザ(40)とを有し、前記左右の車輪のそれぞれと前記左右の車軸のそれぞれとは、互いに偏心(306)させて結合されている、ローバー。【選択図】図6

Description

この発明は、月や火星の表面探査の様な砂地走行に好適な車両(以下、「ローバー」と称する)に関する。
既に、多くのローバーによって、月・惑星の表面探査が行われている。岩や緩い砂に覆われ、クレータ付近では傾斜面が存在する、月・惑星表面を走行するための移動機構としては、車輪機構、クローラ機構、脚機構、脚車輪機構などが検討されている。これまでのローバーミッションでは主として車輪機構が採用されている。しかし、軟弱地盤において車輪はスリップし易いという問題がある。スリップの増大により車輪沈下量が増加すると、牽引力は減少する。その結果、ローバーは前進できなくなり車輪スタック(車輪の空転)してしまうことになる。実際に、オポチュニティ(Opportunity)とスピリッツ(spirit)の車輪は、ミッション中にスタック状態に陥った。2006年6月、オポチュニティ(Opportunity)は車輪を回転加速させてスタックから脱出したが、2010年1月、スピリット(spirit)は移動探査を断念して、ローバー周辺の観測を行うことになった(非特許文献1参照)。
月面において、クレータや崖などは地殻が露出しているため科学的感心が高く、将来のローバーミッションではこのような険しい地形の移動探査が望まれる。また、月表面にはレゴリスと呼ばれる砂が表面に厚く堆積し、車輪型ロボットの走行に影響を与える可能性がある。したがって、次世代車輪型ロボットには、月面上を走行する上で、高い走行性能が求められている。そこで、走行面に対して、平行な接地面積を持つ車輪を実現するため、金属材料の弾性特性を利用することが提案されている。この弾性特性を利用した車輪は、表面材料が弾性変形することにより、連続的に走行表面と平行状態に接地し、結果として、低い法線応力を維持させることができる(非特許文献2参照)。
接地面に多数のラグを突出させてなる円形車輪、五つの接地面を湾曲凹面とした略五角形の車輪、それら2つの特徴を組み合わせてなる車輪のそれぞれについて、斜面走行時における車輪と砂の相互作用モデルに関する検討も知られている(非特許文献3、4参照)。
なお、警備用や軍事用の手投げ式ロボットの分野において、車両本体から突出する左右の車軸に車輪を兼ねる左右の半球状殻体を取り付け、手投げ時にあっては、それら左右の半球状殻体を閉じて、全体を球状とする一方、地上又は床面走行時にあっては、それら半球状殻体を離間させて、車両本体のカメラで撮影するようにし、さらに、車両本体から後方へと延びる棒状スタビライザにより、車両本体の連れ回りを防止するようにした技術は、従来より知られている(特許文献1参照)。
また、同様な警備用や軍事用の手投げ型ロボットの分野において、左右の半球状駆動輪のそれぞれをさらに2分割して左右一対の副駆動輪を設けると共に、主駆動輪の回転軸と副駆動輪の回転軸とを偏心させることで、走行時の安定性を向上させる技術は、従来より知られている(特許文献2参照)。
さらに、玩具の分野において、一対の半球状殻体からなる車輪の中心と、その回転軸の中心とを偏心させることにより、平坦面走行時にあっては、コミカルな上下揺動を実現する技術は、従来より知られている(特許文献3参照)。
特開2008−229813号公報 特開2010−264555号公報 特開昭62−079078号公報
水上憲明、外2名、"動的沈下を考慮に入れたテラメカニクスに基づく車輪モデルの提案"、[online]、平成24年4月、日本機械学会、[令和元年7月22日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic/78/788/78_788_1109/_pdf/-char/ja> 飯塚浩二郎、外2名、"弾性特性を考慮した軟弱砂地地盤走行のための月面探査車輪型ロボットの車輪形状検討"、[online]、平成20年12月、日本機械学会、[令和元年7月22日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/74/748/74_748_2962/_pdf/-char/ja> 飯塚浩二郎、外3名、"月惑星探査ローバーの車輪形状を考慮した走行性能検討"、[online]、平成20年12月、日本機械学会、[令和元年7月22日検索]、インターネット<URL:https://ci.nii.ac.jp/naid/110006153475> 飯塚浩二郎、外1名、"軟弱砂地地盤走行のための月面探査ローバー用走行系検証"、科学・技術研究、第1巻1号、平成24年
上述の非特許文献1〜4に記載のローバーにあっては、車輪の形状や材質に着目して走行性能を改善してはいるものの、その推進力には限界があり、特に、レゴリス堆積斜面における登坂走行においては十分な走行性能を発揮するものではない。
この発明は、上述の技術的背景下になされてたものであり、その目的とするところは、レゴリス堆積斜面における登坂走行においても十分な走行性能を発揮することが可能なローバーを提供することにある。
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
上述の技術的課題は、以下の開示内容を有するローバーにより解決することができるものと考えられる。
すなわち、本開示に係るローバーは、
車体と、
左右の車輪と、
前記車体に支持され、前記左右の車輪のそれぞれと結合される左右の車軸と、
前記左右の車軸のそれぞれを回転させるための回転駆動部と、
前記車輪の回転に伴う前記車体の連れ回りを防止するためのスタビライザとを有し、
前記左右の車輪のそれぞれと前記左右の車軸のそれぞれとは、前記車輪の接地面と前記車軸との距離が車輪の回転角度に応じて大きく変動するように仕組まれている。
このような仕組みを実現する方法としては、例えば、図31(a)に示されけるように、楕円や長円を含む扁平多角形の車輪の中心に車軸Pを配置するもの、図31(b)に示されるように、円を含む多角形の車輪の中心をずらして(偏心して)車軸Pを配置するものを挙げることができる。
図31(a)に示されるように、扁平多角形(図示例では楕円)の中心に車軸Pを配置した状態において、矢印に示されるように、例えば車輪を時計回りに回転させると、対角線上に位置する2つの角度領域A1,A2においては、進行方向前方のレゴリスに対しては、大なる圧接圧力かつ大なる掻き寄せ力が作用するのに対して、それ以外の角度領域においては、進行方向前方のレゴリスに対しては、小なる圧接圧力かつ小なる掻き寄せ力が作用するから、車輪1回転当たり2回の強力な圧接かつ掻き寄せ力を周期的に付与することで、ローバーはレゴリスの堆積した月面上であっても、スタックを起こすことなく、周期的に強力な推力を得て歩進することができる。なお、上述の角度領域A1,A2は、それぞれ、車軸Pと車輪外周との距離が長い状態から短い状態へと移行する間の角度範囲と定義することもできる。
図31(b)に示されるように、多角形(図示例では円)の中心に車軸Pを配置した状態において、矢印に示されるように、例えば車輪を時計回りに回転させると、1つの角度領域A3においては、進行方向前方のレゴリスに対しては、大なる圧接圧力かつ大なる掻き寄せ力が作用するのに対して、それ以外の角度領域においては、進行方向前方のレゴリスに対しては、小なる圧接圧力かつ小なる掻き寄せ力が作用するから、車輪1回転当たり1回の強力な圧接かつ掻き寄せ力を周期的に付与することで、ローバーはロゴリスの堆積した月面上であっても、スタックを起こすことなく、周期的に強力な推力を得て歩進することができる。なお、上述の角度領域A3は、車軸Pと車輪外周との距離が長い状態から短い状態へと移行する間の角度範囲と定義することもできる。
このような構成のローバーによれば、車体に対して、左右2個の車輪とスタビライザを取り付けただけの単純な構成でありながら、回転駆動部の操作のみにより、走行動作並びに操舵動作を実現することができる。加えて、左右の車輪のそれぞれと前記左右の車軸のそれぞれとは、上述した所定の相対関係にあるため、レゴリスの深く堆積する月面のような軟弱地面上の登坂走行であったとしても、左右の車輪は上方へ伸び上がっては、前方のレゴリスを押し付けながら掻き寄せることにより車輪が浮いて沈下しないため、車体は車輪の一回転毎に間欠的に大きな推力を得て歩進する。すなわち、単に、車輪と地面との摩擦にのみ頼って推力を得ようとする車軸同心結合の車輪のように、車輪の回転と共に深くレゴリスに沈降してスタック状態に陥ることがない。
なお、ここで車輪の側面輪郭形状は特に限定されるものではなく、円形のみならず、多角形のものであってもよい。また、その立体形状についても、半球状のみならず、通常の自動車の車輪のように、円筒ないし円盤状のものであってもよい。また、左右の車軸については、好ましくは、一直線上に整列されてものであるが、互いに平行かつ偏心したものであってもよい。また、スタビライザについては、先端が接地する尾状のものに限らず、ジャイロを用いて地面との非接触で安定化機能を達成するものであってもよい。
好ましい実施の態様にあっては、
前記回転駆動部が、前記の車軸の一方を回転させるための第1のモータを含む第1の回転駆動部と、前記の車軸の他方を回転させるための第2のモータを含む第2の回転駆動部とを有する、ものであってもよい。
このような構成によれば、左右の車輪のそれぞれ毎に専用のモータを有することで、多様な走行態様及び操舵態様を実現することができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転を連動して制御するための回転制御部を有する、ものであってもよい。
このような構成によれば、回転制御部の制御仕様如何により、左右のモータを適宜に連動して制御することにより、様々な走行態様や操舵態様を実現することができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記回転制御部は、前記左右の車輪のそれぞれがバタフライ泳法における両腕の回転を模して回転するように、前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転を連動して制御する、ものであってもよい。
このような構成によれば、バタフライ泳法類似の車輪回転態様を実現することで、周期的に強力な推進力を獲得することができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記回転制御部は、前記左右の車輪のそれぞれがクロール泳法における両腕の回転を模して回転するように、前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転を連動して制御する、ものであってもよい。
このような構成によれば、クロール泳法類似の車輪回転態様を実現することで、高頻度に地面を掻き取りつつ、直進走行させることができる。
このとき、バタフライ泳法類似の車輪回転態様やクロール泳法類似の車輪回転態様を実現は、前記左右の車輪の回転数又は位相を連動して制御することにより実現することができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記スタビライザが、剛性素材にて形成され、前記車体後部から後方へと所定長さ延出されて、その先端が走行面と接する尾部であってもよい。
このような構成によれば、左右2個の車輪と1本の剛性尾部の接地点による三点支持の状態にて、車体の後退に抗しつつ、安定な歩進走行を可能ならしめることができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記尾部の先端部から斜め後方へと左右に分岐して延出された左右のヒレ部をさらに有する、ものであってもよい。
このような構成によれば、横転時にあっても、それら左右のヒレ部により、起き上がり動作の支援を容易ならしめることができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記車体の上部には、カメラを備えた展望台部を有する、ものであってもよい。
このような構成によれば、周期的に上方へと伸び上がる歩進動作と相まって、比較的に高い位置から所定視野の映像を取得することができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記カメラは、進行方向前方に視野を有する第1のカメラと進行方向後方に視野を有する第2のカメラとを含む、ものであってもよい。
このような構成によれば、進行方向後方の視野の映像に含まれる車輪の轍から過去の走行軌跡を確認しつつ、進行方向前方の視野の映像に含まれる目標物への接近を容易に行うことができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記車体は、
前記回転駆動部を収容し、かつその左右側面には、左右の車軸挿通孔を有するする車体ハウジングを有し、
前記左右の車輪は、
前記車体ハウジング全周を包囲する外殻体を左右2分割してなる左右の外殻半体からなり、さらに
前記車体ハウジング内には、
所定の起動条件が成立したとき、前記左右の車軸のそれぞれを前記左右の車軸挿通孔のそれぞれを通して前記車体ハウジングから所定量だけ突出させることにより、前記左右の外殻半体を、左右結合状態から左右離隔状態へと移行させる車軸突出機構を有する、ものであってもよい。
このような構成によれば、所定の起動条件の成立前は、前記左右の車軸は前記車体ハウジング内へと没入して前記左右の外殻半体は左右結合状態となり、前記車体ハウジングの全周を包囲する外殻体となって、前記車体を保護するのに対して、所定の起動条件が成立したのちにあっては、前記車軸突出機構の作用により、前記左右の車軸は前記車体ハウジング外へと突出して前記左右の外殻半体は左右離隔状態となり、それらの隙間から前記車体ハウジングを臨ませると共に、前記左右の外殻半体は前記左右の車輪として機能して走行可能状態が出現する。
好ましい実施の態様にあっては、
前記車軸突出機構が、
前記左右の車軸のそれぞれを、前記車体ハウジングの左右の車軸挿通孔のそれぞれを通して摺動可能に案内する左右の摺動案内部材と、
前記左右の車軸のそれぞれに軸止された左右の従動ギアと、
前記左右の車軸のそれぞれと平行に延在する左右の駆動軸のそれぞれに軸止され、前記左右の車軸のそれぞれが初期位置から突出位置に至る間、前記従動ギアと噛合し続ける左右の駆動ギアと、
前記左右の車軸のそれぞれを、前記車体ハウジングの左右挿通孔から突出する方向へと付勢する左右のスプリングと、
前記車軸挿通孔のなす非円形孔を鍵穴とし、前記の車軸のそれぞれの先端部のなす非円形径大部を鍵として、鍵と鍵穴との相対回転により、両者非整合の施錠状態と両者整合の解錠状態とを作り出す左右の錠機構とを含む、ものであってもよい。
このような構成によれば、所定の起動条件が成立する以前にあっては、前記左右の車軸のそれぞれは、前記左右の車軸挿通孔から突出する方向へと左右のスプリングにより付勢されつつ、前記左右の錠機構の作用により、突出を阻止された状態にあるから、所定の起動条件が成立したときには、前記左右の駆動軸の回転により、前記鍵と鍵穴との相対回転により前記錠機構を施錠状態から解錠状態へと変更するだけで、前記左右の車軸挿通孔から前記左右の車軸をスプリングの作用で突出させて、前記左右の外殻半体を前記左右結合状態から前記左右離隔状態へと転ずることができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記左右の駆動ギアが、前記突出位置において前記従動ギアと噛合する断面円形ギア部と前記初期位置から前記突出位置に至る途中に前記従動ギアと噛合する幅広の断面扇形ギア部とを有する異形断面駆動ギアであってもよい。
このような構成によれば、前記錠機構が施錠状態から解錠状態に至る僅かな回転角度の範囲内のみ噛合し、解錠直後は車軸の突出動作と連繋しつつ噛合したままスライドする幅広の断面扇形ギア部と車軸突出完了後に噛合する断面円形ギア部とから異形断面駆動ギアを構成したため、体積減少により駆動ギアの軽量化を実現することができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記車体ハウジングの左右中立線に沿う位置には、前記スタビライザに相当する棒状尾部とカメラ付き展望台部とが、それぞれ展開方向への付勢力に抗して折り畳み可能に取り付けられていてもよい。
このような構成によれば、左右の外殻半体の左右結合状態にあっては、前記棒状尾部と前記カメラ付き展望台部とを折り畳んで前記車体と共に前記外殻体に収容させた収容状態とすることができる一方、左右の外殻半体の左右離隔状態にあっては、前記棒状尾部及び前記カメラ付き展望台部を展開して、左右の外殻半体間の隙間から突出させた展開状態とすることができる。
このとき、前記棒状尾部の先端部から斜め後方へと左右に分岐して延出され、かつ折り畳み可能である、左右のヒレ部をさらに有する、ものであってもよい。
このような構成によれば、折り畳まれた前記左右のヒレ部も含めて前記収容状態とすることができると共に、展開された前記ヒレ部も含めて前記展開状態とすることができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記左右の外殻半体のそれぞれは、プラスチックや軽金属(例えば、アルミニウム等)からなる略半球状外殻半体として形成されており、前記左右結合状態にあっては、前記車体ハウジングを包囲する略球状の外殻体を形成する、ものであってもよい。
このような構成によれば、月面に放出された際にクッション性を確保することができると共に、転がり性が良好であることから、左右結合状態のままで、月面の斜面を転動することで、エネルギーを無駄に消費することなく、月面上の移動距離を確保することができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記左右の外殻半体のそれぞれには、その全周にわたり、多数の開口が分散配置されていてもよい。このとき、前記多数の開口のうちで、外殻半体の開口縁部に位置する左右一対の開口は、外殻半体が前記結合状態にあるとき、両者が隣接することで1つの撮影用窓を形成して、展望台部が折り畳まれた状態におけるカメラによる周囲映像の撮影を許容する、ものであってもよい。
このような構成によれば、球状外殻体の重心を赤道上に配置して転動の際の指向性を確保すること、それら開口の内周縁部は滑り止め乃至スクレーパとして機能して推進力獲得に貢献すること、走行中に外殻体の内部に入り込むレゴリスを自然に排出させること、収納状態の球状外殻体のままでも、カメラを作動することにより、それらの開口(撮影用窓)を通して周辺映像を得ることができること、等々の効果を有する。
好ましい実施の態様にあっては、
前記左右の外殻半体の最外周帯部には、適当な距離を隔てて窪み部又はリブが配置されていてもよい。
このような構成によれば、それら窪み又はリブは、レゴリスの堆積する月面をしっかりとグリップして滑り止め効果を発揮することができる。
好ましい実施の態様にあっては、
前記左右の外殻半体の両極部には、極突部が形成されていてもよい。
このような構成によれば、球状外殻体の重心を赤道上に配置して転動の際の指向性を確保すると共に、赤道上を中心として転動するように、転動方向を規制する効果もある。
好ましい実施の態様にあっては、
前記左右の外殻体の左右結合状態において現出する略球体の直径は、50mm〜200mmの範囲であってもよい。
このようなサイズの球体であれば、月着陸船の限られた内部スペースに複数搭載することもでき、また着陸直前又は直陸後の月着陸船から月面上に放出されても衝撃に耐えて有効に作動することが期待される。
本発明によれば、車体に対して、左右2個の車輪とスタビライザを取り付けただけの単純な構成でありながら、回転駆動部の操作のみにより、走行動作並びに操舵動作を実現することができる。加えて、左右の車輪のそれぞれと前記左右の車軸のそれぞれとは、車輪の接地面と車軸との距離が車輪の回転角度に応じて大きく変動するように仕組まれている。そのため、レゴリスの深く堆積する月面のような軟弱地面上の登坂走行であったとしても、左右の車輪は上方へ伸び上がっては、前方のレゴリスを強力に押し付けながら掻き寄せるようにして回転する(大なる圧接圧力かつ大なる掻き寄せ力が作用する)ため、その掻き寄せ動作の反作用として、車体は車輪の一回転毎に間欠的に大きな推力を得て歩進する。すなわち、単に、車輪と地面との摩擦にのみ頼って推力を得ようとする車軸同心結合の車輪のように、車輪の回転と共に深くレゴリスに沈降してスタック状態に陥ることがない。
図1は、ローバー(収納状態)の斜視図である。 図2は、ローバー(展開状態)の斜め前方から見た斜視図である。 図3は、ローバー(展開状態)の斜め後方から見た斜視図である。 図4は、ローバー(主要部品)の分解斜視図である。 図5は、車体(車軸突出状態)の外観斜視図である。 図6は、車軸の車輪への取付位置を示す斜視図である。 図7は、機構保持プレートの形状を示す拡大斜視図である。 図8は、車体(片側ハウジング除去)の斜視図である。 図9は、車体(両側ハウジング除去)の斜視図である。 図10は、モータから車軸に至る動力伝達系を示す斜視図である。 図11は、異形駆動ギアの形状を示す拡大斜視図である。 図12は、車軸挿通孔の形状を示す説明図である。 図13は、車軸挿通孔と非円形断面軸部との関係を示す説明図である。 図14は、ハウジング内収容物全体の斜視図である。 図15は、撮影部集成体の説明図である。 図16は、ローバー(展開状態)の側面図である。 図17は、尾部及びヒレ部(展開状態)の側面図である。 図18は、ローバー(展開状態)の背面図である。 図19は、尾部付け根の支持構造の説明図である。 図20は、ヒレ部の展開状態と折り畳み状態の説明図である。 図21は、レゴリス上り坂における車輪同心回転による走行状態の説明図である。 図22は、レゴリス上り坂における車輪偏心回転によるバタフライ走行状態の説明図である。 図23は、ローバーのクロール走行状態(位相差180度)の斜視図である。 図24は、ローバーのクロール走行状態の側面図である。 図25は、ローバーの電気的ハードウェア構成を示すブロック図である。 図26は、制御部の動作を示すフローチャートである。 図27は、スタビライザ(変形例)の斜視図である。 図28は、スタビライザ(変形例)の分解斜視図である。 図29は、スタビライザ(変形例)の投影図である。 図30は、スタビライザ(変形例)の取付状態を示す説明図である。 図31は、車軸の接地面と車軸との距離が車軸の回転角度に応じて大きく変動することの説明図である。
以下に、本発明に係るローバーの好適な実施の一形態を添付図面(図1〜図30)を参照しながら詳細に説明する。因みに、以下に説明する実施形態は、JAXAの宇宙探査イノベーションハブでの共同研究の成果の1つである。
<<全体構成の概略説明>>
この実施形態に係るローバー1は、図4に示されるように、車体10と、左右の車輪20,30と、左右の尾部401,403及び左右のヒレ部402,404を含むスタビライザ40と、カメラを含む展望台部50とから概略構成されており、左右の車軸突出機構(詳細は後述)の作動により、所定の収納状態(図1参照)から所定の展開状態(図2、図3参照)へと移行可能とされている。
ここで「収納状態」とは、左右の半球状外殻半体201,301を向かい合わせに結合させることで球状外殻体を形成し、その中に、車体10とスタビライザ40と展望台部50とを収納した状態である。このとき、左右の尾部401,403及び左右のヒレ部402,404、並びに、展望台部50は、復元方向へと付勢された所定の折り畳み状態(詳細は後述)にて、球状外殻体に収容される。
また「展開状態」とは、左右の半球状外殻半体201,301を所定距離だけ互いに離隔させることで、それらの間に間隙Sを形成し、この間隙Sから左右の尾部401,403及び左右のヒレ部402,404、並びに、展望台部50を展開して突出させた状態である。この展開状態において、左右の半球状外殻半体201,301は、左右の車輪20,30としても機能する。
車体ハウジング10Aの左右側面に設けられた左右の車軸挿通孔11b,12bからは左右の車軸114,214が突出可能とされている(図5、図9参照)。それらの車軸114,214の先端部には、左右の車輪20,30が取り付けられる。ここで重要な点は、左右の車軸114,214と左右の車輪20,30とは、同心ではなくて、互いに偏心させて取付けられている点である(図6参照)。
このような偏心取付構造によれば、レゴリス(微細な砂)の深く堆積する月面のような軟弱地面上の登坂走行であったとしても、左右の車輪20,30は上方へ伸び上がっては、前方のレゴリスを強く押し付けながら掻き寄せるようにして回転する(大なる圧接圧力かつ大なる掻き寄せ力が作用する)ため、その掻き寄せ動作の反作用として、車体10は車輪20,0の一回転毎に間欠的に大きな推力を得て歩進する(図22参照)。すなわち、単に、車輪10,20と地面との摩擦にのみ頼って推力を得ようとする車軸同心結合の車輪のように、車輪20,30の回転と共に深くレゴリスに沈降してスタック状態に陥ることがない(図21、図22、図23参照)。
<<車体の詳細説明>>
車体10は、左右のハウジング半体11,12及び底板13を結合してなる車体ハウジング10A(図5、図7参照)内に、車軸突出機構を含む駆動部集成体10B(図10参照)を収容して構成される。車体ハウジング10Aの左右側面には、左右の車軸挿通孔11b,12bが設けられている。それら車軸挿通孔11b,12bの内周縁形状は、図12に示されるように、例えば右側面の車軸挿通孔12bにあっては、相対向する一対の矩形状凹部12d,12dと相対向する円弧状凹部12c,12cとで囲まれた非円形孔とされている。この非円形孔が、後述する錠機構における鍵孔として機能する。左側面の車軸挿通孔についても同様である。
駆動部集成体10Bは、図10に示されるように、駆動部集成体の様々な構成部品を支持プレート14を介して一体的に結合して構成される。この支持プレート14は、図7に示されるように、左右の車体ハウジング半体11,12に挟持さることで、車体ハウジング10Aに固定される。
支持プレート14は、図7に示されるように、3個の透孔14a,14b,14cを有する。透孔14aは、左車輪駆動用の棒状モータ111(図10参照)を挿通保持するためのもので、孔の出口には、モータ111の前端部を保持するためのボス部14a'が延出される。透孔14bは、図8に示されるように、右車輪駆動用の棒状モータ121を挿通保持するためのもので、孔の出口にはモータ121の前端部を保持するためのボス部14b'(図9参照)が延出される。透孔14cは、左右の車軸114,124の同心直線運動を案内するための案内ロッド101(図8参照)が挿通保持される。この案内ロッド101は、左右の車軸114,124の中心孔に挿通されるので、左右の車軸114,124は案内ロッド101の作用により、左右の車軸挿通孔11b(図5参照),12b(図14参照)を通して直線摺動可能となる。
図示のモータ111,121としては、正逆回転の可能な直流モータが採用され、モータの回転子から得られる回転力はモータに組み込まれた遊星ギアを介して減速されたのち、モータ軸111a,121aから出力される。なお、図10において、符号111b,121bは、モータ111,121に組み込まれて、それらモータ111,121の回転を検出するためのエンコーダである。なお、これらのエンコーダ111,121は、モータから独立した別部品であってもよい。
左右の棒状モータ111,121のモータ軸(駆動軸)111a,121a(図11参照)には、図10に示されるように、左右の異形駆動ギア112,122が取付られる。それら異形駆動ギアのそれぞれは、例えば右側異形駆動ギア122については、図11に示されるように、先端部に位置する断面円形ギア部122aと、この断面円形ギア部122aから軸方向へと連続する断面扇形幅広ギア部122bとを有する。左側異形駆動ギアについても同様である。一方、左右の車軸114,124のそれぞれの後端部には、図10に示されるように、断面円形の従動ギア113,123が取り付けられる。
左右の車軸114,124が車軸挿通孔11b,12bから突出していない初期位置にあるとき、左右の円形従動ギア113,123のそれぞれは、左右の異形駆動ギア112,122の断面扇形幅広ギア部112b,122bと噛合して、鍵と鍵孔との相対角度を不整合角度から整合角度へと移行させるための略半回転動作に寄与する。これに対して、左右の車軸114,124が車軸挿通孔11b,12bから限界まで突出している突出位置にあるとき、左右の断面円形従動ギア113,123のそれぞれは、左右の異形駆動ギア112,122の断面円形ギア部112a,122aと噛合して、走行のための回転動作に寄与する。さらに、初期位置から突出限界位置寸前に至るまで、異形駆動ギア112,122と左右の円形状従動ギア113,123とは互いに摺動しつつも、噛合状態に維持される。
このような異形駆動ギア112,122によれば、モータの駆動軸114,124の回転をスライド可能な車軸114,124の従動歯車113,123に伝達するに必要な駆動ギアの形状として、円筒状の幅広ギアとするのではなく、錠機構の解錠に必要な略半回転部分のみギア歯を残し、それ以外の部分を削除した、断面扇形幅広ギア部112b,122bを設けたことで、金属製の重量部品である駆動ギアの大幅な軽量化を達成することができる。なお、駆動ギアの重量が問題とならない推力を有する着陸船に搭載するのであれば、異形駆動ギア112,122に代えて、通常の幅広円筒状ギアを採用できることは勿論である。
従動ギア113,123と支持プレート14との間には、左右のコイルスプリング116,126が縮装される。これらのコイルスプリング116,126は、左右の車軸114,124を左右の車軸挿通孔11b,12bから突出させるための付勢力を付与するものである。
次に、錠機構について説明する。錠機構は、左右の車軸挿通孔11b,12bのなす非円形孔を鍵穴とし、左右の車軸114,124のそれぞれの先端部のなす非円形断面軸部を鍵として、鍵と鍵穴との相対回転により、両者非整合の挿通不能な施錠状態と両者整合の挿通可能な解錠状態とを実現するものである。
この例にあっては、上述の非円形断面軸部については、図9に示されるように、左右の車軸114,124のそれぞれの先端部近傍の外周面から一対の突部114a,114b,124a,124bを互いに180度の間隔で突出することにより実現される。一方、非円形孔については、先に説明したように、図12に示されるように、左右の車軸挿通孔11b,12bの内周縁形状を、一対の弧状凹部11c,11c,12c,12cと一対の矩形状凹部11d,11d,12d,12dとで囲まれるように形成することで実現される。
このような錠機構によれば、図13に示されるように、左右の車軸114,124の非円形断面軸部を構成する一対の突部114a,114b,124a,124bと左右の車軸挿通孔11b,12bの一対の矩形状凹部11d,11d,12d,12dとが整合しない状態とすることで、左右の車軸114,124のそれぞれが車軸挿通孔11b,12bのそれぞれを挿通不能な施錠状態を実現することができる。これに対して、左右の車軸114,124の非円形断面軸部を構成する一対の突部114a,114b,124a,124bと左右の車軸挿通孔11b,12bの一対の矩形状凹部11d,11d,12d,12dとが整合する状態とすることで、左右の車軸114,124のそれぞれが車軸挿通孔11b,12bのそれぞれを挿通可能な解錠状態を実現することができる。
したがって、左右のコイルスプリング116,126の反発力に抗して、左右の車軸114,124を車軸挿通孔11b,12b内へと押し込んだ状態にて上述の錠機構を施錠状態とすれば、左右のモータ111,121の起動直後の車軸半回転以内に、錠機構は施錠状態から解錠状態へと切り替わり、左右の車軸114,124のそれぞれは、左右のスプリング116,126の反発力により左右の車軸挿通孔11b,12,から車体ハウジング10A外へと突出し、同時に、車軸に取り付けられた断面円形の従動ギア113,123の噛合相手が、異形駆動ギア112,122の断面扇形ギア部112b,122bから断面円形ギア部112a,122aへと切り替わることにより、以後、左右のモータ111,121によって左右の車輪20,30を回転駆動することが可能となる。
車体ハウジング10A内には、以上説明した様々な機構部品のほかに、図14に示されるように、各種の電子部品を含む電子回路を搭載した回路基板15、及びモータ111,121並びに上記の電子回路のための電源となる例えば2〜3本の1.5V電池16,16,16が収容される。なお、回路基板15に搭載された各種の電子部品により構成される電気的なハードウェアの詳細については、後に、図25のブロック図、並びに、図26のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
<<車輪の詳細説明>>
左右の車輪20,30は、図4に示されるように、車体10のハウジング10Aを包囲する略球状外殻体(例えば、樹脂の場合は肉厚1.0mm〜2.0mm、アルミの場合は肉厚0.7mm〜1.0mm,直径50mm〜200mm)を均等2分割してなる如き左右の半球状外殻半体201,301により構成される。それら半球状外殻半体201,301の材質としては、軽量かつ着地時の衝撃の緩和を意図して、ある程度の弾性に富んだ素材(例えば、アルミ等の軽金属又はポリイミド等の樹脂、等々)が採用される。
本発明に関連して重要な点であるが、それらの半球状外殻半体201,301と左右の車軸114,124とは、図6に示されるように、互いに偏心させて取り付けられる。換言すれば、左右の車軸114,124は、左右の半球状外殻半体201,301の中心を所定量ずらして、それらの半体201,301の裏面に取り付けられる。
より具体的に説明すれば、左右の車軸114,124の先端部には、図10に示されるように、左右のブラケット115,125が取り付けられる。それらのブラケット115,125のそれぞれには、一対のネジ孔115a,115b,125a,125bが設けられている。一方、左右の半球状外殻半体201,301の裏面には、図6に示されるように、それらの半体201,301の中心を取り巻くようにして、やや肉厚な環状リブ206,306が設けられる。そして、左右の車軸114,124は左右のブラケット115,125を介して、左右の半球状外殻半体201,301の裏面にある環状リブ206,306の一部へとネジ止めされる。その結果、左右の車輪20,30は、左右の車軸114,124に対して偏心して強固に取り付けられる。このとき、車軸中心と車輪中心との偏心量は、想定されるレゴリスの状態において、登坂走行に必要とされる車輪の最大旋回半径などを考慮して決定すればよい。
半球状外殻半体201,301には、図1に示されるように、多数の開口が左右対称的に分散配置される。すなわち、図示例にあっては、左側の半球状の外殻半体201には極突部202が設けられると共に、極突部202に近い順に、第1周回帯203、第2周回帯204、第3周回帯205が定義される。それら3本の周回帯203,204,205のそれぞれには、隣接する周回帯間における連続を回避するようにして、多数の開口(窓)203a,204a,205aが周方向へ適当な距離を隔てて配置されている。加えて、第3の周回帯205には、隣接する開口205aの隙間を埋めるようにして、窪み205b及びリブ205b'が配置されている。同様にして、右側の半球状外殻半体301にも、第1乃至第3の周回帯303,304,305が定義され、それらの周回帯のそれぞれにも、複数の開口(窓)303a,304a,305aが配置されると共に、その第3周回帯には、開口に加えて、窪み305b及びリブ305b'が配置されている(図18参照)。
それらの開口203a〜205a,303a〜305aは、球状外殻体の赤道部を中心として左右対称的に配置されていることに加え、両局部には左右の極突部202,302が配置されていることから(図18参照)、収納状態(図1参照)にある球体の重心はほぼ赤道上に分布することに加えて、左右の極突部202,302は左右方向のバランサとしても機能する。そのため、収納状態(図1参照)にて傾斜面に着地した球状ローバー1は、当初は着地時の姿勢に依存するものの、最終的には、両突部202,302を結ぶ直線を水平回転軸とし、主としてその球体赤道部を着地面とする姿勢を維持しつつ、転がりながら比較的長距離を移動することが可能となる。なお、左右の極突部202,302は、左右のバランサとしての機能のみならず、例えば、球状ローバー1が月着陸船から放出される際には、図示しない放出機の把持部としても機能する。
第3周回帯205(305)に配置された左右の開口205a,305aは、それらが相俟って横中の大きめの撮影用窓を形成する。この撮影用窓は、収納状態(図1参照)にある球状ローバー1から周囲をカメラにて撮影するために供される。すなわち、この比較的に大きな横長の撮影用窓を設けたことにより、左右の半球状外殻半体201,301を閉じた状態においても、カメラ(例えば、広角カメラや360度カメラ)による周囲映像の取得が可能とされる。
一方、左右の半球状外殻半体201,301を開いた展開状態(図2、図3参照)にあっては、主として、第3周回帯205に存在する窪み部205b又はリブ205b'はレゴリスをグリップする滑り止めとして機能する。加えて、第2周回帯204及び第3周回帯205に存在する開口204a,205aはその内周縁部がレゴリスを掻き寄せるスクレーパとしても機能する。加えて、第1周回帯203及び第2周回帯204に存在する開口203a,204aは、走行中に内部に侵入したレゴリスを、左右の半球状外殻半体201,301外へと自然排出させるための排出口としても機能する。
<<スタビライザの詳細説明>>
スタビライザ40は、図4に示されるように、左右の尾部401,403と左右のヒレ部402,404を含んで構成される。左右の尾部401,403は比較的に硬質のプラスチック(例えば、ポリアミド樹脂など)又は軽金属(例えば、アルミニウムなど)を用いて下に凸となる弓なりに形成してなり、その基部は、図17及び図19に示されるように、水平なヒンジ軸11e,12eを介して回動自在に、車体ハウジング10Aの後部に取り付けられる。そして、走行中にあっては、図22に示されるように、主として、下に凸の腹部乃至後部を砂に接しながら進行するように構成される。
なお、これら左右の尾部401,403は、図示しないスプリング等の付勢具により、展開方向へと付勢されている。そのため、2つの半球状外殻体201,301が結合された収容状態(図1参照)にあっては、球状外殻体の内部に折り畳み込まれ、2つの半球状外殻体201,301が離隔された展開状態(図2、図3参照)にあっては、付勢力により独りでに展開されて、両半体201,301の間隙Sから突出した状態となる。
左右のヒレ部402,404は、左右の弓なり尾部401,403の後端部から斜め後方へと左右に分岐して延出され、例えば、アルミニウム等の軽金属やポリアミド等の樹脂にて形成され、かつ折り畳み可能とされている。より具体的には、それらのヒレ部402,404は、図18に仮想線にて示されるように、左右の尾部の後端部のそれぞれにヒンジ結合され、図示しないスプリングの弾性反発力により、図中実線に示す折り畳み状態から図中仮想線に示す展開状態へと独りでに姿勢を変化するように仕組まれている。そして、その展開状態にあっては、図3及び図8に示されるように、展開状態にある半球状外殻半体201,301の左右幅とほぼ同幅まで左右に延出することで、ローバー1が横転した状態にあっては、屈曲されてその反発力により、ローバー1の左右の車輪20,30の回転による起き上がり動作を支援する。実際、本出願人がJAXAと共同して行った実験では、左右のヒレ部402,404が横転状態からの復元に有効であることが確認された。
なお、これら左右のヒレ部402,404についても、2つの半球状外殻体201,301が結合された収容状態(図1参照)にあっては、球状外殻体の内部に折り畳み込まれ、2つの半球状外殻体201,301が離隔された展開状態(図2、図3参照)にあっては、2つの尾部401,403と共に、付勢力により独りでに展開されて、両半体201,301の間隙Sから突出した状態となる。
ところで、上述のスタビライザ40において、左右の尾部401,403は、それらが一体となった1本の尾部にて実現してもよい。このような1本の尾部を用いたスタビライザの一例(変形例)が図27〜図30に示されている。
図27に示されるように、このスタビライザ40Aは、上述した左右の尾部401,403を一体的に形成してなる1本の尾部411と、この尾部411の後部に取り付けられる左右のヒレ部412,413とを備えている。
図28及び図29に示されるように、尾部411は、下に凸の弓なり状板片である本体部411aと、本体部411aの基端にあって、本体ハウジング10Aの後部ブラケットに対応する基端側取付部と、本体部411aの先端にあって、左右のヒレ部に対応する先端側取付部とを有する。図示例にあっては、基端側取付部は、それぞれヒンジ軸が挿通されるべき横方向軸孔を有する左右一対のボス部411b,411bにより構成される。
スタビライザ40Aは、それらのボス部411b,411bにナット422,422を介してヒンジ軸となるべき長めのビス421を挿入することで、図30に示されるように、本体ハウジング10A後部のブラケットに回動自在に固定される。
先端側取付部は、それぞれ左右のヒンジ軸が挿通されるべき斜方向軸孔を有する左右一対のボス部411c,411cと、左右方向の中心にあって、それぞれ左右のヒンジ軸が挿通されるべき斜方向軸孔を有する中心ボス部411dにより構成される。
このスタビライザ40Aにあっては、旋回時(横方向移動時)の砂抵抗を低減する意図で、図29(c)に示されるように、尾部411の横断面輪郭形状は、垂直な左右の平坦側面と、中心に位置する比較的幅狭かつ水平な平坦底面、それらを繋ぐ左右の傾斜した平坦底面との3つの平坦面で囲まれた輪郭形状となっている。もっとも、砂への埋まり難さを優先するのであれば、比較的幅狭な平坦底面の代わりに、底面のほぼ全幅に及ぶ幅広かつ水平な平坦底面を採用し、さらに、左右の側面については、外側へ膨出する湾曲状側面としてもよいであろう。
左右のヒレ部412,413は、やや捻れた弓なり状板片である本体部412a,413aと、本体部412a,413aの基端にあって、尾部411の後部に対応する基端側取付部とを有する。図示例にあっては、基端側取付部は、それぞれ横方向軸孔を有する左右一対のボス部412b,412b,413b,413bにより構成される。
左右のヒレ部412,413は、その基端側取付部(412b,413b)のヒンジ軸孔を尾部411の先端側取付部(411c,411d)のヒンジ軸孔に整合させたのち、ヒンジ軸となるべき長めのビス431,441を挿入することで、尾部411の後端部に、それぞれ斜め方向に旋回しつつ回動自在に固定される。
なお、尾部411の後段部に左右のヒレ部412,413の先端部を組み付けるに際しては、左右のヒレ部の展開方向へと付勢するためのスプリング432,442が組み込まれる。そのため、前述の通り、収納状態(図1参照)から展開状態(図2、図3参照)へと移行するに際しては、左右の半球状外殻半体201,301間の隙間Sから、尾部411及び左右のヒレ部412,413が独りでに展開突出することなる。
<<展望台部の詳細説明>>
展望台部50は、図4に示されるように、左右のハウジング半体51,52を結合してなるハウジング内に図示しないカメラ集成体を収容して構成され、左右のヒンジ孔51a,52aに車体ハウジング側のヒンジ軸11a,12a(図5参照)を挿通嵌合することにより、車体ハウジング10Aに対して回動可能に取り付けられる。なお、図示しない付勢機構により、展望台部50のハウジングは、展開方向へと付勢された状態で、折り畳み可能とされている。
展望台部50のハウジングには、図15(a),(b)に示されるように、受光窓左半体51bと受光窓右半体52bとで構成される前面側受光窓と、図15(a),(c)に示されるように、受光窓左半体51cと受光窓右半体52cとで構成される背面側受光窓とが設けられ、前面側受光窓からは前面側基板53cに搭載され前面側受光部53aが、背面側受光窓からは背面側基板53dに搭載された背面側受光部53bが臨むように構成されている(図15(b),(c)参照)。なお、前面側受光部53a及び背面側受光部53bは、当業者にはよく知られているように、レンズとイメージセンサとを一体的に結合して構成されている。前面側基板53cと背面側基板53dとは、支持基板53dを挟んで一体的に結合され、これによりカメラ集成体が構成される。ここで、カメラ集成体としては、通常の広角カメラは勿論のこと、360度カメラとして構成してもよい。
以上の構成によれば、ローバー1の収納状態(図1参照)にあっては、展望台部50は、球状外殻体の内部に折り畳まれて収納されているものの、その背面側受光部53bの前面には、左右の開口205a,305aを結合してなる横長の撮影用窓が位置することから、この撮影用窓を通して、例えば広角カメラ又は360度カメラで撮影することにより、ローバー周辺の映像を取得することができる。これにより、後述するように、ローバーから放出されたのち、月面に着地するまでの周囲映像(例えば、着陸途中又は着陸後の月着陸船の姿を含む映像)を取得することもできる。
一方、ローバー1の展開状態(図2、図3参照)にあっては、展望台部50は、独りでに折り畳み状態から展開状態へと復元して、左右の半球状外殻半体201,301の間に形成される間隙Sを通して車体ハウジング10Aから上方へと突出する。そのため、この展開状態にあっては、前面側受光部53a及び背面側受光部53bを介して、ローバー1の進行方向前方及び後方の所定視野内の映像を同時に取得することができるから、例えば、後方の映像に含まれる轍像に基づいて、過去の走行軌跡を確認しながら、走行方向を適宜に修正しつつ、前方の映像に含まれる目標物へと効率良く辿りつくことが可能となる。
<<電気的ハードウエア構成並びにソフトウェア構成の詳細説明>>
回路基板15に搭載された電気的ハードウェア構成について、図25を参照しながら、詳細に説明する。ローバー1の電気的ハードウェア構成は、図25に示されるように、駆動部601と、通信部602と、入出力部603と、制御部604と、記憶部605と、撮影部606とをシステムバスを介して結ぶことで構成される。それらの制御要素は、バッテリ16を電源として作動する。
駆動部601は、左右のモータ111,121及びそれらの駆動回路等を含むものであって、この駆動部601を介して左右のモータ111,121を個別に駆動することにより、偏心して車軸に取り付けられた車輪は、バタフライ泳法類似の回転軌跡やクロール泳法類似の回転軌跡を描いて回転することとなる。
通信部602は、無線送受信機を含んで構成され、例えば月着陸船(図示せず)に搭載された通信部との間で送受信を行う。このとき、受信データとしては、月着陸船から送られてくる各種の制御コマンドが含まれており、送信データとしては、前後のカメラ(前面側受光部53、背面側受光部53b)から得られる映像データが含まれる。
入出力部603は、各種の設定操作のための入出力データのやり取りを司るためのものであって、備え付けの入出力部あるいはリモート接続される入出力でとの間にて各種データのやり取りを行うためのものである。
制御部604は、ローバー全体を統括制御するためのマイクロプロセッサ(MPU)やカメラの映像を処理するための画像プロセッサ(GPU)を主体として構成され、月着陸船から送られてくる制御コマンドに対応する処理を実行したり、カメラから得られる映像を送信用に加工したりする処理を実行する。
記憶部605は、制御部604のMPUやGPUにて実行されるべき各種のシステムプログラムを格納するROMやシステムプロクラムの実行に際してワークエリアとして使用されるRAMやカメラの映像を一時記憶するための画像メモリなどを含んで構成される。
撮像部606は、前後のカメラ(前面側受光部53、背面側受光部53b)に含まれるイメージセンサやその駆動回路などを含んで構成される。
次に、制御部604に含まれるマイクロプロセッサ(MPU)にて実行されるシステムプログラムの構成を、図26のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。同図において、処理が開始されると、先ず、イニシャライズ処理(ステップ101)においては、演算に必要な各種のフラグやカウンタやレジスタの初期化が行われる。このイニシャライズ処理には、左右のエンコーダ111b,121bの回転位置検出用カウンタ等の初期化も含まれる。
続くステップ102では、前後のカメラ(前面側受光部53a、背面側受光部53b)による連続撮影が起動される。これにより、ローバー1は、収納状態(図1参照)のままで、カメラ撮影を開始する。そのため、後面側のカメラ(後面側受光部53b)は、球状外殻体の横長撮影用窓(開口205a,305a)を介してローバー周辺の所定視野の映像を取得することができる。
続くステップ103では、月着陸船との通信を介して各種データの送受信を行う。ここで、送信データとしては、前後のカメラ(前面側受光部53a,背面側受光部53b)にて撮影された映像データや左右のモータのエンコーダ(エンコーダ111b,121b)
の検出データ等が含まれる。また、受信データとしては、月着陸船からの各種の制御コマンド(例えば、起動コマンドや各種走行態様指定コマンド等々)が含まれる。
続くステップ104では、月着陸船から受信したコマンドの内容を解読する。なお、図示では解読結果のうちの代表的な2通り(「クロール走行」と「バタフライ走行」)のみを描いているが、その他様々な解読結果が存在することは言うまでもない。すなわち、受信コマンドを解読した結果、それが左右のモータ111,121の起動を意味しないときには、以後なにもせずに、ステップ103と104とを繰り返しつつ、ローバー1は収納状態(図1参照)のままで待機状態となる。
その後、起動コマンドが解読されかつ走行態様としてバタフライ泳法類似の走行態様が指定されると(ステップ105「バタフライ走行」)、続いてステップ106ヘ進んで、左右のモータ111,121が起動される。すると、先に説明したように、左右の車軸114,124が半回転する間に、錠機構が施錠状態から解錠状態へと切り替わることで、左右のスプリング116,126の反発力により、左右の車軸114,124は車体ハウジング10Aの左右車軸挿通孔11b,12bから突出し、これに連動して、ローバー1は収納状態(図1参照)から展開状態(図2、図3参照)へと状態遷移する。
続いて、ステップ107では、所定のバタフライ走行用のサーボ制御が実行される。このバタフライ走行用のサーボ制御では、左右のエンコーダ111b,121bからの検出信号に基づいて、左右の車輪20,30を同一速度かつ同一位相で回転させることで、人のバタフライ泳法類似の車輪走行(図22参照)を実現する。以後、予め決められた停止条件が成立するまでの間、バタフライ走行が指定される限り、以上の動作(ステップ103,104,105(「バタフライ走行」),106,107,110NO)が繰り返される。
これに対して、受信コマンドを解読した結果(ステップ104)、それが起動コマンドであってかつ走行態様指定がクロール走行であると(ステップ105「クロール走行」)、続いてステップ108へ進んで、左右のモータ111,121が起動される。すると、先に説明したように、左右の車軸114,124が半回転する間に、錠機構が施錠状態から解錠状態へと切り替わることで、左右のスプリング116,126の付勢力により、左右の車軸114,124は車体ハウジング10Aの左右車軸挿通孔11b,12bから突出し、これに連動して、ローバー1は収納状態(図1参照)から展開状態(図2、図3参照)へと状態遷移する。
続いて、ステップ109では、所定のクロール走行用のサーボ制御が実行される。このクロール走行用のサーボ制御では、左右のエンコーダ111b,121bからの検出信号に基づいて、左右の車輪20,30を同一速度かつ180度異なる位相で回転させることで、人のクロール泳法類似の車輪走行(図23,図24参照)を実現する。以後、予め決められた停止条件が成立するまでの間、クロール走行が指定される限り、以上の動作(ステップ103,104,105(「クロール走行」),108,109,110NO)が繰り返される。
そして、以上の動作を繰り返す間に、所定の停止条件の成立が判定されると(ステップ110YES)、ステップ111へ進んで、左右のモータ111,121はその回転を停止することで、ローバー1の走行は停止する。なお、停止条件としては、受信コマンドとして所定の停止コマンドを受信したこと、電源となる電池16の残量が所定値に低下したこと、予め設定したタイマが規定時間に達したこと、等々様々な条件が存在する。
<<ローバーの運用例乃至動作の詳細説明>>
ローバー1の運用の一例及び動作について、詳細に説明する。ローバー1の運用の一例としては、月の周回軌道を飛行する母船から切り離されて月面に向かう月着陸船(有人又は無人)に搭載することが考えられる。その場合、実施形態のローバー1であれば、軽量かつ小型に構成することができるため、好ましくは複数個搭載することも考えられる。こうして月着陸船に搭載されたローバー1は、月面に着陸したのち、または月面に着陸する直前(例えば、高度1m〜2m)に、月着陸船から例えば水平方向へと所定の姿勢及び所定の初速で放出される。こうして月着陸船から放出されるローバー1は、放出直後から例えば360度カメラ(背面側受光部53b)による連続撮影及び月着陸船との無線通信を行うため、放出姿勢及び放出速度を適当に設定することで、月着陸船それ自体の言わば自撮り映像を取得して、月着陸船に送信することもできる。こうして、送信された月着陸船の映像は、周回軌道上の母船を介して、地球上の管制センタへと送出され、例えば月着陸船の着陸が正常に行われた否かの確認等に利用することができる。
一方、月着陸船から放出される複数のローバー1のそれぞれは、地球の1/6の重力下にあって、所定の放物線を描いて、レゴリスの深く堆積する月面上に緩やかに着地したのち、略球状の外観を有する収容状態(図1参照)のままで、その着地面の斜度に応じた速度で自然に転がり、その後、某かの障害物に当たって又は斜度の緩い場所に到達することで、転がりを停止する。なお、先に説明したように、ローバー1の重心は赤道上に分布させていることと、左右の極突部202,302がバランサとして作用することもあり、理想的には、ある一定の姿勢にてローバー1は停止することが期待される。
その後、予め決められた起動条件(例えば、月着陸船から起動コマンドを受信したこと、予め設定したタイマの設定時間が経過したこと、ローバー自体に別途組み込まれたセンサにより得られる環境条件が規定値に達したこと、等々)が成立すると、左右のモータ111,121が起動されて、左右の車軸114,124が半回転する間に、錠機構は施錠状態から解錠状態へと切り替わり、これにより、ローバーは収納状態(図1参照)から展開状態(図2、図3参照)へと状態遷移して、走行可能な状態となる。
ここで、ローバーの左右の車軸114,124は左右の車輪20,30に対して偏心して取り付けられているため(図6参照)、車輪外周上の最遠点までの半径をR1、最近点までの半径をR2とする回転軌跡を描いて回転する(図16参照)。すると、先に説明したように、レゴリスの深く堆積する月面のような軟弱地面上の登坂走行であったとしても、左右の車輪20,30は上方へ伸び上がっては、前方のレゴリスを強力に押し付けながら掻き寄せるようにして回転する(大なる圧接圧力かつ大なる掻き寄せ力が作用する)ため、その掻き寄せ動作の反作用として、車体10は車輪20ね30の一回転毎に間欠的に大きな推力を得て歩進する。すなわち、単に、車輪と地面との摩擦にのみ頼って推力を得ようとする車軸同心結合の車輪のように、車輪の回転と共に深くレゴリスに沈降してスタック状態に陥ることがない(例えば、図23参照)。
月面上の重力及びレゴリスの物理的性質を考慮して、地球上にレゴリス類似の砂が堆積した傾斜面を作りだし、その状態にて、従来の同心結合車輪による走行と本発明の偏心結合車輪による走行とを比較した結果が、図21と図22に示されている。
同心結合車輪を使用した同一構造のローバー1によれば、図21(a),(b),(c)に示されるように、車輪と地面との摩擦に頼って推力を得るものであるため、車輪は回転するもののスリップしてしまうため、十分な推力を得ることができず、ローバー1は定位置に留まり、殆ど前進することはできなかった。
これに対して、本発明の偏心結合車輪を使用したローバー1によれば、図22(a),(b),(c)に示されるように、左右の車輪20,30は上方へ伸び上がっては、前方のレゴリスを強力に押し付けながら掻き寄せるようにして回転する(大なる圧接圧力かつ大なる掻き寄せ力が作用する)ため、バタフライ走行又はクロール走行の如何に拘わらず、その掻き寄せ動作の反作用として、車体10は車輪20,30の一回転毎に間欠的に大きな推力を得て歩進することが確認された。
特に、バタフライ走行の場合には、図22に示されるように、左右の車輪20,30により同時に前方のレゴリスを掻き寄せることにより、強力な推進力を得ることができる一方、クロール走行の場合には、図23に示されるように、左右交互であるとはいえ、前方のレゴリスをより高い頻度で掻き寄せることができるため、レゴリスの粘度や堆積量によっては、効率よく推進力を得ることができるものと考えられる。
なお、実施形態に係るローバー1によれば、比較的硬質素材からなる左右の尾部401,403は両者一体となって、登坂走行時の伸び上がり動作の際に、後退へのスリップを阻止することで、伸び上がり動作を有効に支援する。
また、左右の尾部401,403の後端部から左右斜め後方へと延出される左右のヒレ部402,404は、ローバー1の横転時にあっては適宜に撓んで屈曲する一方、車輪20,30の前転動作と相俟って、その反発力にて起き上がり動作を有効に支援する。
さらに、実施例に係るローバー1によれば、大きく伸び上がる際に、カメラにより高い位置から撮影が可能であることから、月面走行においても遠方に至る広範囲な映像を取得できることが期待される。
<<その他>>
本発明の要旨とするところは、左右の車輪のそれぞれと前記左右の車軸のそれぞれとが、車輪の接地面と前記車軸との距離が車輪の回転角度に応じて大きく変動するように仕組まれている点にあり、その他の構成については、従前の月面走行車輪の特徴を任意に組み合わせることができるでろう。
したがって、車輪の立体形状は半球状に限るものではなく、通常の乗用車両に採用される円筒上車輪であってもよい。また、車輪の接地面には、適宜に滑り止めのためのラグを突出させてもよい。また、車輪の側面形状についても、円形に限るものではなく、任意の角数を有する多角形状でもよい。
さらに、以上説明した実施形態に係るローバー1は、収納状態(図1参照)→展開状態(図2、図3参照)→収納状態(図1参照)と言ったように、2つの状態を交互に自動で切替可能に構成することもできる。その場合、左右の車軸114,124を自動で出没させるための機構としては、左右のスプリング116,126の代わりに、所謂ボールネジ機構を採用することができる。
すなわち、このボールネジ機構は、全長の約半分ずつに逆ネジの切られた1本のボールネジと、このボールネジと螺合しつつ互いに反対方向へと移動し、かつ車軸114,124と遊合しつつこれを保持する車軸ホルダと、前記ボールネジを正逆回転可能な1個のモータとから実現することができるであろう。上述のモータとしては、適宜なギア列を介在することにより、左右のモータ111,121のいずれかを流用すればよいであろう。また、突出状態にある尾部、ヒレ部、及び展望台部を畳み込ませるためには、適宜な引っ張り紐巻き取り機構により、それの先端を引き込みつつ折り畳めばよい。
本発明は、例えば、月面探査用ローバーの開発及び生産を行う宇宙産業において、広く利用することができる。
1 ローバー
10 車体
10A 車体ハウジング
10B 駆動部集成体
11 ハウジング左半体
11a ヒンジ軸
11b 車軸挿通孔
11e ヒンジ軸
12 ハウジング右半体
12b 車軸挿通孔
12c 円弧状凹部
12d 矩形状凹部
12e ヒンジ軸
13 ハウジング底板
14 支持プレート
14a 透孔
14b 透孔
14c 透孔
14a' ボス部
15 回路基板
16 電池
20 左車輪
30 右車輪
40 スタビライザ
40A スタビライザ
50 展望台部
51 ホルダ左半体
51a ヒンジ孔
51b 受光窓左半体
52 ホルダ右半体
52a ヒンジ孔
52b 受光窓右半体
53 光学素子搭載基板
53a 前面側受光部
53b 背面側受光部
53c 前面側基板
53d 背面側基板
53e 支持板
51a ヒンジ孔
52a ヒンジ孔
111 左車輪モータ
111a モータ軸
112 異形駆動ギア
112a 断面円形ギア部
112b 断面扇形幅広ギア部
113 従動ギア
114 左車軸
114a 突部
114b 突部
115 ブラケット
115a ネジ孔
115b ネジ孔
116 コイルスプリング
111b エンコーダ
121 右車輪モータ
121b エンコーダ
121a モータ軸
122 異形駆動ギア
122a 断面円形ギア部
122b 断面扇形幅広ギア部
123 従動ギア
124 右車軸
124a 突部
124b 突部
125 ブラケット
125a ネジ孔
125b ネジ孔
126 コイルスプリング
201 半球状外殻半体
202 極突部
203 第1周回帯
203a 開口
204 第2周回帯
204a 開口
205 第3周回帯
205a 開口
205b 窪み
301 半球状外殻半体
302 極突部
303a 開口
304a 開口
305a 開口
305b 窪み
401 左尾部
402 左ヒレ部
403 右尾部
404 右ヒレ部
411 単一の尾部
411a 本体部
411b 基端側取付部となるボス部
411c,411d 先端側取付部となるボス部
412 左側のヒレ部
412a 本体部
412b 基端側取付部となるボス部
413 右側のヒレ部
413a 本体部
413b 基端側取付部となるボス部
421 ヒンジ軸となるビス
431,441 ヒンジ軸となるビス

Claims (22)

  1. 車体と、
    左右の車輪と、
    前記車体に支持され、前記左右の車輪のそれぞれと結合される左右の車軸と、
    前記左右の車軸のそれぞれを回転させるための回転駆動部と、
    前記車輪の回転に伴う前記車体の連れ回りを防止するためのスタビライザとを有し、
    前記左右の車輪のそれぞれと前記左右の車軸のそれぞれとは、前記車輪の接地面と前記車軸との距離が車輪の回転角度に応じて大きく変動するように仕組まれている、ローバー。
  2. 前記左右の車輪は円形を含む多角形であって、前記左右の車輪のそれぞれと前記左右の車軸のそれぞれとは、互いに偏心させて結合されている、請求項1に記載のローバー。
  3. 前記左右の車輪は長円形乃至楕円形を含む扁平多角形であって、前記左右の車輪のそれぞれと前記左右の車軸のそれぞれとは、互いに同心にて結合されている、請求項1に記載のローバー。
  4. 前記回転駆動部が、前記の車軸の一方を回転させるための第1のモータを含む第1の回転駆動部と、前記の車軸の他方を回転させるための第2のモータを含む第2の回転駆動部とを有する、請求項1に記載のローバー。
  5. 前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転を連動して制御するための回転制御部を有する、請求項4に記載のローバー。
  6. 前記回転制御部は、前記左右の車輪のそれぞれがバタフライ泳法における両手の動きを模して回転するように、前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転を連動して制御する、請求項4に記載のローバー。
  7. 前記回転制御部は、前記左右の車輪がクロール泳法における両手の動きを模して回転するように、前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転を連動して制御する、請求項4に記載のローバー。
  8. 前記回転制御部は、前記左右の車輪が所定の回転数及び位相にて回転するように、前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転を連動して制御する、請求項6又は7に記載のローバー。
  9. 前記スタビライザが、前記車体後部から後方へと所定長さ延出されて、その先端が走行面と接する尾部である、請求項1に記載のローバー。
  10. 前記尾部の先端部から斜め後方へと左右に分岐して延出された、左右のヒレ部をさらに有する、請求項9に記載のローバー。
  11. 前記車体の上部には、カメラを備えた展望台部を有する、請求項1に記載のローバー。
  12. 前記カメラは、進行方向前方に視野を有する第1のカメラと進行方向後方に視野を有する第2のカメラとを含む、請求項11に記載のローバー。
  13. 前記車体は、
    前記回転駆動部を収容し、かつその左右側面には、左右の車軸挿通孔を有する車体ハウジングを有し、
    前記左右の車輪は、
    前記車体ハウジング全周を包囲する外殻体を左右2分割してなる左右の外殻半体からなり、さらに
    前記車体ハウジング内には、
    所定の起動条件が成立したとき、前記左右の車軸のそれぞれを前記左右の車軸挿通孔のそれぞれを通して前記車体ハウジングから所定量だけ突出させることにより、前記左右の外殻半体を、左右結合状態から左右離隔状態へと移行させる車軸突出機構を有する、請求項1に記載のローバー。
  14. 前記車軸突出機構が、
    前記左右の車軸のそれぞれを、前記車体ハウジングの左右の車軸挿通孔のそれぞれを通して直線的に摺動可能に案内する左右の摺動案内部材と、
    前記左右の車軸のそれぞれに軸止された左右の従動ギアと、
    前記左右の車軸のそれぞれと平行に延在する左右の駆動軸のそれぞれに軸止され、前記左右の車軸のそれぞれが初期位置から突出位置に至る間、前記従動ギアと噛合し続ける左右の駆動ギアと、
    前記左右の車軸のそれぞれを、前記車体ハウジングの左右挿通孔から突出する方向へと付勢する左右のスプリングと、
    前記車軸挿通孔のなす非円形孔を鍵穴とし、前記の車軸のそれぞれの先端部のなす非円形軸部を鍵として、鍵と鍵穴との相対回転により、両者非整合の挿通不能な施錠状態と両者整合の挿通可能な解錠状態とを作り出す錠機構とを含む、請求項13に記載のローバー。
  15. 前記車体ハウジングの左右中立線に沿う位置には、前記スタビライザに相当する弓なり棒状尾部とカメラ付き展望台部とが、それぞれ展開方向への付勢力に抗して折り畳み可能に取り付けられている、請求項13に記載のローバー。
  16. 前記棒状尾部の後端部から斜め後方へと左右に分岐して延出され、かつ折り畳み可能である、左右のヒレ部をさらに有する、請求項15に記載のローバー。
  17. 前記左右の外殻半体のそれぞれは、略半球状外殻半体として形成されており、前記左右結合状態にあっては、前記車体ハウジングを包囲する略球状の外殻体を形成する、請求項13に記載のローバー。
  18. 前記左右の外殻半体のそれぞれには、その全周にわたり、多数の開口が分散配置されている、請求項13に記載のローバー。
  19. 前記多数の開口のうちで、外殻半体の開口縁部に位置する左右一対の開口は、外殻半体が前記結合状態にあるとき、両者が隣接することで1つの撮影用窓を形成して、展望台部が折り畳まれた状態におけるカメラによる周囲映像の撮影を許容する、請求項18に記載のローバー
  20. 前記左右の外殻半体の最外周帯部には、大なる圧接力及び大なる掻き寄せ力が作用する角度範囲に対応して、窪み部又はリブが配置されている、請求項17に記載のローバー。
  21. 前記左右の外殻半体の極部には、極突部が形成されている、請求項17に記載のローバー。
  22. 前記左右の外殻体の左右結合状態において現出する略球体の直径は、50mm〜200mmの範囲である、請求項17に記載のローバー。
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