JP2021048502A - 近接非接触型の通信システム - Google Patents
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Abstract
【課題】一対の結合器の相対的な位置誤差に対する出力低下を抑えることができる近距離非接触型の通信システムを提供する。【解決手段】通信システム2は、一対の通信器10、20を備えている。それぞれの通信器は、誘電体11(21)を挟んで対向している接地板15(25)と結合器14(24)を備えている。一対の通信器10、20は、互いの結合器14、24が電磁界的に結合する距離で対向するように配置されている。接地板15(25)と結合器14(24)に挟まれている誘電体11(21)は、結合器14(24)に対向している第1誘電部12(22)と、接地板15(25)と誘電体11(21)の積層方向からみて第1誘電部12(22)を囲んでいるとともに第1誘電部12(22)よりも誘電率が高い第2誘電部13(23)を備えている。【選択図】図1
Description
本明細書は、電磁界的な結合を利用して近距離非接触で通信する通信システムに関する。
特許文献1、2に、電磁界的な結合を利用して近距離非接触で通信する一対の通信器を含む通信システム(近距離非接触型の通信システム)が開示されている。一対の通信器は、いずれも、誘電体を挟んで対向している接地板と結合器(coupler)を備えている。一対の通信器は、互いの結合器が電磁界的に結合する距離で対向するように配置されている。一方の通信器の結合器に所定の周波数の電流(あるいはパルス電流)を流すと、電磁界的な結合によって他方の通信器の結合器に電流が生じる。その結果、信号を送信/受信することができる。そのような通信システムは、高速通信が可能である。また、そのような通信システムは消費電力が小さい。
特許文献1、2の通信システムは、小さい電力で通信が可能であるが、その反面、一対の通信器の結合器の相対的な位置誤差(ミスアラインメント)に対して出力が敏感に変化する。別言すれば、特許文献1、2の通信システムは、一対の結合器の相対的な位置誤差に対する出力低下が大きい。ここで、一対の結合器の相対的な位置誤差とは、結合器と接地板の積層方向に対して直交する面内の位置誤差(ミスアラインメント)を意味する。本明細書は、一対の結合器の相対的な位置誤差に対する受信側の結合器の出力低下を抑えることができる近距離非接触型の通信システムを提供する。
本明細書が開示する通信システムは、一対の通信器を備えている。それぞれの通信器は、誘電体を挟んで対向している接地板と結合器を備えている。一対の通信器は、互いの結合器が電磁界的に結合する距離で対向するように配置されている。接地板と結合器に挟まれている誘電体は、結合器に対向している第1誘電部と、接地板と誘電体の積層方向からみて第1誘電部を囲んでいるとともに第1誘電部よりも誘電率が高い第2誘電部を備えている。
一対の結合器の相対的な位置誤差に対して受信側の結合器の出力低下が大きいことの一因は、送信側の通信器(結合器)から受信側の通信器(結合器)へ伝播する電気エネルギが小さいことである。従って、位置誤差に対する出力低下を抑えるには、送信側の通信器(結合器)から受信側の通信器(結合器)へ伝播する電気エネルギを増大させればよい。以下に説明するように、誘電率が低い第1誘電部と誘電率が高い第2誘電部を備えることで、送信側の結合器の背後(接地板側)に拡散する電気エネルギを減らすことができ、その結果、送信側の通信器(結合器)から受信側の通信器(結合器)へ伝播する電気エネルギを増大させることができる。
送信側の通信器の結合器に流れる電流変化に起因して放出される電気エネルギは、結合器の背後の接地板と受信側の通信器の結合器に分配される。接地板の側に向かう電気エネルギは、結合器と接地板の間の容量に対して正の相関を有している。すなわち、結合器と接地板の間の容量が小さいほど、接地板の側に向かう電気エネルギが小さくなる。すなわち、結合器と接地板の間の容量が小さいほど、受信側の通信器の結合器に向かう電気エネルギが大きくなる。従って、接地板と結合器の間の誘電体の誘電率は低い方が望ましい。
一方、結合器と接地板の広い範囲で誘電率が低いと電気エネルギが拡散してしまう。そこで、本明細書が開示する通信システムでは、結合器と接地板で挟まれている誘電体を第1誘電部と第2誘電部で構成する。第1誘電部は、結合器に対向しているとともに、第2誘電部の誘電率よりも低い誘電率を有している。第2誘電部は、誘電体と接地板の積層方向からみて第1誘電部を囲んでいるとともに第1誘電部の誘電率よりも高い誘電率を有している。結合器と接地板の間の誘電体において、結合器と対向する部位には誘電率の低い第1誘電部を配置し、結合器から接地板へ向かう電気エネルギを小さくする。また、積層方向からみて結合器を囲む部位には誘電率の高い第2誘電部を配置し、接地板へ向かう電気エネルギの拡散を抑える。第1誘電部の効果と第2誘電部の相乗効果により、結合器の背後に拡散する電気エネルギが減り、かわりに受信側の通信器の結合器へ向かう電気エネルギが増大する。受信側の通信器の結合器へ向かう電気エネルギが増大するので、送信側の通信器の結合器と受信側の通信器の結合器の相対的な位置誤差に対する出力(受信側の結合器の出力)の低下が抑制される。
誘電率の低い第1誘電部の典型は、空気である。一方、結合器に対向する第1誘電部が空気である場合、第1誘電部で結合器を支持することができない。それゆえ、結合器は第2誘電部に支持されているとよい。
受信側の通信器へ向かう電気エネルギが最も効果的に増大するのは、第1誘電部と第2誘電部の境界が積層方向からみて結合器の輪郭と一致している場合である。
結合器は、典型的にはマイクロストリップ線であってよい。
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
(実施例)図面を参照して実施例の通信システム2を説明する。図1に、通信システム2の斜視図を示す。通信システム2は、一対の通信器10、20で構成されている。説明の都合上、通信器10を第1通信器10と称し、通信器20を第2通信器20と称する場合がある。通信器10、20は、絶縁層を挟んで対向しているが、図1では、理解を助けるために、第1通信器10と第2通信器20を離間して描いてある。また、図1の一点鎖線CLの右側と左側で、座標系の向きが異なることに留意されたい。一点鎖線CLより右側の図は、左側の図の座標系をY軸周りに90度反時計周りに回転させた座標系を採用して描いてある。別言すれば、通信器10、20は、それぞれの結合器14、24同士が対向するよう配置される。
図2に、通信システム2の断面図を示す。図2は、図1の座標系においてXZ平面に平行な平面であって結合器14、24を横断する平面で通信システム2をカットした断面を示している。先に述べたように、第1通信器10と第2通信器20は、絶縁層30を挟んで対向している。また、第1通信器10の結合器14と第2通信器20の結合器24が対向する。
第1通信器10について説明する。第1通信器10は、接地板15と、誘電体11と、結合器14を備えている。接地板15と結合器14が誘電体11を挟んでいる。図1、図2では、通信すべき信号を生成する回路(信号処理回路)の図示は省略している。接地板15は回路のグランド電位を保持される。
誘電体11は、ガラスエポキシの基板であり、一方の面の全体に、蒸着やエッチング等で導電パターンが形成されている。その導電パターンが接地板15に相当する。他方の面には、線状の導電パターンが形成されている。その線状の導電パターンが結合器14に相当する。結合器14には一対のリード線16が接続されており、リード線16を通じて結合器14に電気信号が送られる。一対のリード線16の一方が不図示の信号処理回路に接続され、他方は接地板15に接続される。結合器14とリード線16は、誘電体11に支持されている。一対のリード線16も、ガラスエポキシの基板の表面に形成された導電パターンである。導体パターンは、典型的には銅で形成されている。
結合器14と裏面の接地板15は、単純な導電パターンであるが、結合器14の横幅W、縦幅、誘電体11の誘電率、誘電体11の厚みD、相手の結合器24との間のギャップGなどは、相手の通信器20との間で所定の周波数で通信が可能なように定められている。結合器14と裏面の接地板15とリード線16は、誘電体11であるガラスエポキシの基板の両面に蒸着やエッチング等で形成された単純な導電パターンであるが、上記の寸法を適宜に選定することで、マイクロストリップアンテナとして機能する。すなわち、結合器14は、マイクロストリップ線である。マイクロストリップ線間の電磁界的な結合による通信は、ギガbps(bit per second)レベルの高速通信が可能となる。
リード線16を介して結合器14に接続されている信号処理回路(不図示)は、相手の通信器20に送りたい信号を生成するとともに、相手の通信器20から送られた信号を復号化する回路である。周波数分割複信方式、時分割複信方式、あるいは、エコーキャンセラ方式などのプロトコルを採用することで、第1通信器10と第2通信器20の間で同時双方向通信を行うことができる。
誘電体11は、結合器14に対向している第1誘電部12と、誘電体11と接地板15の積層方向(図中のZ方向)からみて第1誘電部12を囲んでいる第2誘電部13に分かれている。第1誘電部12の誘電率は、第2誘電部13の誘電率よりも低い。図1では、理解を助けるために、第1誘電部12をグレーで示してある。実施例の通信器10では、結合器14は、接地板15と誘電体11の積層方向(図中の座標系のZ方向)からみたときに第1誘電部12と第2誘電部13の境界の内側に位置するように配置されている。
第2通信器20は、第1通信器10と同じ構造を有している。第2通信器20の結合器24、リード線26、接地板25、誘電体21(第1誘電部22、第2誘電部23)は、それぞれ、第1通信器10の結合器14、リード線16、接地板15、誘電体11(第1誘電部12、第2誘電部13)と同じ構造を有している。
図2に示すように、第1通信器10(結合器14)と第2通信器20(結合器24)は、絶縁層30を挟んで対向している。そして、結合器14、24はマイクロストリップ線であり、第1通信器10と第2通信器20は、マイクロストリップアンテナである。結合器14と結合器24の間のギャップGは、結合器14、24が、電磁界的に結合する距離に設定されており、第1通信器10の結合器14と第2通信器20の結合器24の一方に流れた電気信号に起因して他方の結合器に電流が流れ、電気信号が伝わる。第1通信器10と第2通信器20は、近距離非接触型の通信システム2を構成する。
誘電体11(21)が結合器14(24)に対向する第1誘電部12(22)と、第1誘電部12(22)を囲んでいる第2誘電部13(23)に分かれていることの利点を説明する。
送信側の通信器の結合器に流れる電流変化に起因して放出される電気エネルギは、結合器の背後の接地板と受信側の通信器の結合器に分配される。接地板の側に向かう電気エネルギは、結合器と接地板の間の容量に対して正の相関を有している。すなわち、結合器と接地板の間の容量が小さいほど、接地板の側に向かう電気エネルギが小さくなる。すなわち、結合器と接地板の間の容量が小さいほど、受信側の通信器の結合器に向かう電気エネルギが大きくなる。従って、接地板と結合器の間の誘電体の誘電率が低いほど、相手の結合器に伝わる電気エネルギが増大する。
一方、結合器と接地板の広い範囲で誘電率が低いと電気エネルギが拡散してしまう。そこで、実施例の通信システム2では、結合器と接地板で挟まれている誘電体を第1誘電部と第2誘電部で構成する。第1誘電部は、結合器に対向しているとともに、第2誘電部の誘電率よりも低い誘電率を有している。第2誘電部は、誘電体と接地板の積層方向からみて第1誘電部を囲んでいるとともに第1誘電部の誘電率よりも高い誘電率を有している。結合器と接地板の間の誘電体において、結合器と対向する部位には誘電率の低い第1誘電部を配置し、結合器から接地板へ向かう電気エネルギを小さくする。また、積層方向からみて結合器を囲む部位には誘電率の高い第2誘電部を配置し、接地板へ向かう電気エネルギの拡散を抑える。第1誘電部の効果と第2誘電部の相乗効果により、結合器の背後に拡散する電気エネルギが減り、かわりに受信側の通信器の結合器へ向かう電気エネルギが増大する。受信側の通信器の結合器へ向かう電気エネルギが増大するので、送信側の通信器の結合器と受信側の通信器の結合器の相対的な位置誤差に対する出力(受信側の結合器の出力)の低下が抑制される。
(第1変形例)図3に、第1変形例の通信器10aの斜視図を示す。第1変形例の通信器10aでは、第1誘電部12aが空気である。別言すれば、通信器10aは、接地板15と結合器14の間に挟まれている誘電体11aを有しており、誘電体11aは、結合器14と対向する位置に貫通孔17有している第2誘電部13aで構成される。貫通孔17には空気が満たされており、その空気で満たされた領域が第1誘電部12aに相当する。
第2誘電部13aの誘電率は、空気(すなわち、第1誘電部12a)の誘電率よりも高い。第1変形例の通信器10aも、実施例の通信器10、20と同じ利点を有する。第1誘電部12aが空気なので、リード線16は、第2誘電部13aに支持されている。なお、貫通孔17に、発泡スチロールなどの多孔質体を充填し、誘電率は空気とほぼ等しく、かつ、リード線16を支持可能な構造としてもよい。
(第2変形例)図4に第2変形例の通信器10bを示す。図4(A)は、通信器10bの平面図である。ただし、図4(A)では、結合器14bは除いてある。図4(B)に、結合器14bの平面図を示す。通信器10bの誘電体11bは、第1誘電部12bと、接地板と誘電体11bの積層方向(図中のZ方向)からみて第1誘電部12bを囲んでいる第2誘電部13bで構成されている。第1誘電部12bの横幅W1は結合器14bの横幅W2に等しく、第1誘電部12bの縦幅H1は、結合器14bの縦幅H2に等しい。通信器10bでは、結合器14bは、その輪郭が、積層方向からみて第1誘電部12bと第2誘電部13bの境界に一致するように配置される。第1誘電部12bと第2誘電部13bの境界と、結合器14bの輪郭が一致しているとき、最も効率よく相手の通信器(結合器)に電気エネルギが伝達される。
(第3変形例)図5に第3変形例の通信器10cの平面図を示す。通信器10cは、接地板(図の紙面奥側)と結合器14に挟まれている誘電体11cを備えている。誘電体11cは、第1誘電部12cと、接地板と誘電体11cの積層方向(図中のZ方向)からみて第1誘電部12cを囲んでいる第2誘電部13cを備えている。第1誘電部12cは、結合器14に対向している。ただし、積層方向からみて第1誘電部12cの大部分が結合器14と重なるが、第1誘電部12cの一部は結合器14と重なっていない。実施例の通信システム2には若干劣るが、第1誘電部12cの一部が結合器14と重なっていない第3変形例の通信器10cであっても、実施例の通信システム2と同様の効果が得られる。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。送信側の結合器へ流す電気信号の生成方法、および、受信側の結合器に生じた電気信号の復号の方法については従来の技術を利用すればよいので、それらの説明は割愛する。また、通信器は、第1誘電部に対向するように2個の結合器を備えており、2個の結合器に互いに逆相となる電気信号を供給してもよい。その場合、受信側の通信器にも、送信側の通信器の2個の結合器の夫々に対向する2個の結合器が備えられている。
通信器は、複数の結合器を備えていてもよい。例えば、それぞれの通信器は、平行に延びている2個の結合器を備えている。平行に延びている結合器は、互いに逆方向に電流が流れるように結線されている。そのような結合器を用いることで、相手の通信器の結合器に誘起される電流が増幅される。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2:通信システム
10:第1通信器
10a、10b、10c:通信器
11、11a、11b、11c、21:誘電体
12、12a、12b、12c、22:第1誘電部
13、13a、13b、13c、23:第2誘電部
14、14b、24:結合器
15、25:接地板
16、26:リード線
17:貫通孔
20:第2通信器
30:絶縁層
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12、12a、12b、12c、22:第1誘電部
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Claims (5)
- 一対の通信器であって夫々が誘電体を挟んで対向している接地板と結合器を備えている前記一対の通信器を備えている近接非接触型の通信システムであり、
前記一対の通信器は、互いの前記結合器が電磁界的に結合する距離で対向するように配置されており、
前記誘電体は、前記結合器と対向している第1誘電部と、前記誘電体と前記接地板の積層方向からみて前記第1誘電部を囲んでいるとともに前記第1誘電部よりも誘電率が高い第2誘電部を備えている、通信システム。 - 前記第1誘電部は空気である、請求項1に記載の通信システム。
- 前記結合器は前記第2誘電部に支持されている、請求項2に記載の通信システム。
- 前記積層方向からみて前記第1誘電部と前記第2誘電部の境界が前記結合器の輪郭と一致している、請求項1または2に記載の通信システム。
- 前記結合器は、マイクロストリップ線である、請求項1から4のいずれか1項に記載の通信システム。
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