JP2021046752A - 建物状態検知装置の配置構造及び配置方法 - Google Patents
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Abstract
Description
前記構造体は中空状に形成されて内部中空部Hを有しており、
先端部10aにセンサー部12が設けられ、当該センサー部12によって前記構造体の状態を検知する建物状態検知装置10が、前記構造体における内部中空部H内に配置され、
前記建物状態検知装置10における前記先端部10aが、前記内部中空部Hのうち前記二次防水部に近接する位置に配置され、前記建物状態検知装置10における基端部10bが、前記先端部10aよりも前記建物1の室内側に位置した状態となっていることを特徴とする。
前記構造体は、内部中空部Hを形成する外郭部(框材2a、補助桟材2b、板材2c)を備えており、
前記外郭部のうち前記建物1の室内側に位置する部位に、当該部位を貫通し、かつ前記建物状態検知装置10が差し込まれる差込孔部HIが形成されていることを特徴とする。
前記建物状態検知装置10は、前記センサー部12が収容される筐体11を備え、
前記センサー部12は、前記筐体11の内部における先端部側に位置していることを特徴とする。
また、センサー部12は、筐体11の内部における先端部側に位置しているので、筐体11によってセンサー部12を保護しながら、構造体の内部中空部H内に建物状態検知装置10を配置し、検知対象の箇所の直近にセンサー部12を配置することができる。
前記筐体11は、全体として細長いスティック状に形成されていることを特徴とする。
前記構造体は中空状に形成されて内部中空部Hを有しており、
先端部10aにセンサー部12が設けられ、当該センサー部12によって前記構造体の状態を検知する建物状態検知装置10を、前記構造体における内部中空部H内に配置するに際し、
前記建物状態検知装置10における前記先端部10aを、前記建物1の室内側から前記二次防水部に近接する位置に向かって差し込むことを特徴とする。
本実施形態においては、子機である建物状態検知装置10が構造体内に設けられることで、当該構造体の状態、ひいては建物1の状態を検知することができる。そして、その検知結果のデータを、親機である中継器20を通じて管理用サーバ30に送信し、管理用サーバ30が蓄積・管理してモニタリングを行い、異常が発生した場合などに適宜対応できるようになっている。
建物状態検知装置10は、構造体の内部中空部Hに、センサー部12が検知対象箇所に位置するように差し込まれて配置される。検知対象箇所とは、室内側からのアプローチが利く箇所であって、室内側から視認しにくく、かつ二次防水部に対して極力近接する箇所を指す。
また、構造体の含水率を計測する上で湿度センサー12を用いることにより、含水率センサーを用いる場合よりもコストの低減を図ることができる。
建物状態検知装置10が構造体内に設けられる建物1は、本実施形態においては戸建て住宅が採用されている。ただし、これに限られるものではなく、マンションやアパート等の集合住宅であってもよいし、住宅以外の建物1であってもよい。
また、本実施形態における建物1は木造であり、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場でパネル化(建築用パネル2)しておき、施工現場でこれらの建築用パネル2を組み立てて構築するパネル工法で構築されている。ただし、これに限られるものではなく、従来の軸組構法や壁式工法によって構築されてもよいし、木造に限られるものでもない。すなわち、鉄骨造や鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造でもよい。
また、本実施形態における建物1は、上記のように、従来の軸組構法や壁式工法によって構築されてもよく、木造にも限られない。そのため、工法や造りにかかわらず、壁や床、屋根といった構成要素のうち、建物1における外周部(外壁W1,W2、最下階床F、屋根R)を構成する部分に内部中空部Hが設けられることが必要とされる。また、建物1における外周部を構成する部分が内部中空部Hを有する場合は、必然的に、内部中空部Hを形成するための外郭部が必要となる。なお、外郭部とは、上記の框材2aや補助桟材2b、板材2cを指す。また、後述する石膏ボード2dを外郭部に含めてもよい。
もしくは、通常の建築用パネル2よりも高さ寸法の短い腰高の建築用パネルと、その上方に間隔を空けて配置された上下寸法の短い建築用パネル(小壁パネル)との間を利用して窓3用の開口を形成してもよい。
このようにして形成された建築用パネル2の開口における縁部に、サッシ枠3aが嵌め込まれて固定されるとともに、窓障子3bが設けられる。更に図2に示す例においては、サッシ枠3aの室内側に、窓3の室内側を化粧する室内側窓枠3cが設けられている。
なお、サッシ枠3aと外装材2gとの間の目地には、シーリング材2hが充填されている。
図3に示す例においては、建物状態検知装置10の基端部10bが、差込孔部HIが形成された補助桟材2bの上面よりも突出している。そのため、差込孔部HIが形成された補助桟材2bの上に設けられる室内側窓枠3cの嵌込部3dのうち、補助桟材2bにおける差込孔部HIが形成された位置と対向する部位が、建物状態検知装置10における基端部10bの突出分だけ切削されている。
なお、建築用パネル2の内部中空部Hに装填される上記の断熱材は、内部中空部Hを構成する框材2a、補助桟材2b及び板材2cに沿って設けられるため、例えば框材2aや補助桟材2bに近い位置(際:きわ)には、装填された断熱材の端部が位置していることになる。図3に示す例の場合、建物状態検知装置10は、補助桟材2bに形成された差込孔部HIから斜め下方に向かって差し込まれる。そのため、建物状態検知装置10の差し込み方向の先には断熱材の端部が必ず存在するので、断熱材の端部をかき分けて建物状態検知装置10を差し込みやすい。
また、第一外壁W1と同様に、透湿防水シート2e(二次防水部)の表面には、胴縁2fが設けられるとともに、当該胴縁2fに、防水材(一次防水部)として外装材2gが設けられている。さらに、一方の外装材2gと他方の外装材2gとの間には、バックアップ材が設けられるとともに、外側からシーリング材2hが充填されている。
なお、このような差込孔部HIは、補助桟材2bに近い位置に形成されている。すなわち、建築用パネル2の内部中空部Hに装填される上記の断熱材は、内部中空部Hを構成する框材2a、補助桟材2b及び板材2cに沿って設けられるため、例えば框材2aや補助桟材2bに近い位置(際:きわ)には、装填された断熱材の端部が位置していることになる。建物状態検知装置10は、差込孔部HIから内部中空部Hに向かって差し込まれて使用されるため、設置時には、差し込み方向の先にある断熱材をかき分けるようにしながら差し込まなければならない。その際、差し込み方向の先にある断熱材が、断熱材の中央部よりも、断熱材の端部の方がかき分けやすいため、差込孔部HIは、框材2aや補助桟材2bに近い位置に形成されている。
第二外壁W2の室内側面に差込孔部HIを形成する場合は、建物状態検知装置10を差し込んだ後に、キャップ部材7が差し込まれて差込孔部HIを塞ぐことができるようになっている。キャップ部材7は、差込孔部HIの内径と略等しいか若干小さい外径に設定された筒状部7aと、筒状部7aよりも大径に設定されて当該筒状部7aの室内側開口を閉塞する表面板部7bと、を有する。
このようにキャップ部材7によって差込孔部HIを塞ぐ構造は、例えばリフォーム時において建築用パネル2の内部中空部H内に建物状態検知装置10を配置する場合に積極的に転用できる。キャップ部材7は、図示例に限定されるものではなく、壁に形成された貫通孔に差し込んで設置できる器具を用いてもよい。
さらに、最下階床Fを構成する建築用パネル2の下面には、防蟻シート(図示省略)が設けられる場合もある。その場合、建築用パネル2の下側に設けられる断熱ボードの下面に貼り付けられてもよい。
最下階床Fよりも上方に位置する上階床の場合も建築用パネル2によって構成される。
また、建築用パネル2によって構成された最下階床Fの外周には半土台4が設けられ、上階床の外周には半胴差5が設けられる。そして、第一外壁W1として用いられる建築用パネル2は、最下階床Fとして用いられる建築用パネル2と半土台4に跨って配置され、第二外壁W2として用いられる建築用パネル2は、上階床として用いられる建築用パネル2と半胴差5に跨って配置されている。
なお、このような差込孔部HIは、第二外壁W2と同様に、框材2aや補助桟材2bに近い位置に形成されるようにしてもよいが、建物1における基礎の立ち上がり部1aに近い位置に形成されてもよい。また、その基礎の立ち上がり部1aについては、外壁(第一外壁W1)に近い側の基礎でもよいし、建物1の中央側の基礎でもよい。
また、上面の板材2cに形成された差込孔部HIは、最下階床Fの上面に敷かれて設けられる床仕上げ材(フローリングなど)によって被覆されることになる。
また、屋根Rを構成する建築用パネル2の下面には、板材2cが設けられていない状態であるが、板材2cが設けられてもよい。
なお、屋根Rを構成する建築用パネル2は、上階の壁(第二外壁W2)の上端部に設けられた勾配調整材6上に設けられている。
一方、屋根Rを構成する建築用パネル2の下面に板材2cが設けられない場合は、専用の保持部材(図示省略)によって建物状態検知装置10を保持し、当該保持部材を、内部中空部Hの断熱材を避けて框材2aや補助桟材2bに固定することで、建物状態検知装置10を、屋根Rを構成する建築用パネル2の内部中空部Hに設けるようにしてもよい。
より詳細に説明すると、建物1の外周部(外壁W1,W2、最下階床F、屋根R)は、屋外側面に二次防水部が設けられ、その屋外側には更に一次防水部が設けられている。そして、本実施形態における建物状態検知装置10は、センサー部として湿度センサー12を備え、検知した湿度に基づいて含水率を推定するので、外周部が最も水の影響を受けやすい部分の直近に湿度センサー12が配置されることが求められる。
一次防水部は、例えば外装材2gや屋根材であり、その裏側に水が入り込みにくくなっているが、シーリング材2hの経年変化や地震などの災害に伴うひび割れ等によって、水が裏側に浸入する場合がある。しかしながら、一次防水部の裏側には、二次防水部が設けられているため、建物1の構造体は水に晒されにくい。このように水の浸入を防ぐ二次防水部は、建築用パネル2の屋外側に位置する板材2cの屋外側面に設けられているため、建物状態検知装置10は、建築用パネル2における屋外側の板材2cに極力近づくように配置されるものとする。
これを踏まえ、差込孔部HIは、框材2aや補助桟材2b、室内側の板材2cに対し、建物状態検知装置10における湿度センサー12が二次防水部に極力近づけることが可能な角度に形成されている。図3に示す例では、差込孔部HIは屋外側に向かう斜め下方に形成され、図4に示す例では、差込孔部HIは水平に形成されている。
パターンP1,P2は、湿度センサー12が二次防水部に近づくものの、先端部10aが屋外側の板材2c及び二次防水部(透湿防水シート2e)を越えるため、建物状態検知装置10の差し込み方向(角度)としては不可とされる。
パターンP3は、垂直方向であり、補助桟材2bに対する差込孔部HIの加工が容易ではあるものの、二次防水部までの距離が遠く不可とされる。
パターンP4は、補助桟材2bの上面からの突出寸法を抑えることができるものの、二次防水部までの距離がやや遠く不可とされる。
実線で示した建物状態検知装置10の差し込み方向(角度)は、先端部10aが、屋外側の板材2cを越えず、当該板材2cの室内側面に接して二次防水部に極力近づいているため、望ましい差し込み方向(角度)の一つとされている。
なお、パターンP1,P2のように屋外側の板材2cを越えて建物状態検知装置10を配置する場合は、当該板材2c及び二次防水部に開口を形成しなければならないが、当然、水分が浸入しやすい状態となるため、建築用パネル2の良好な状態を維持する観点から禁止事項とすることが望ましい。
以上のような建物1の外周部を構成する建築用パネル2の内部中空部Hに設けられる建物状態検知装置10は、図5〜図8に示すように、筐体11と、筐体11の内部に設けられたセンサー部12、電源部13、回路基板14と、を備えている。
筐体11は、上側分割体11aと下側分割体11bとを備え、これら上下の分割体11a,11b同士を連結させることで中空部が形成される。そして、この中空部が、センサー部12、電源部13、回路基板14が収容される収容部とされている。すなわち、筐体11は、収容部に収容される各部を保護することができる。
上側分割体11aのうちキー111の裏側に相当する部分は、キー111の押圧操作に伴って撓む弾性部111aとされている。この弾性部111aは、少なくとも中空部側に膨出している(本実施形態においてはキー111側にも膨出している。)。
さらに、LEDランプ14bの表示窓112が設けられた位置は開口しており、当該開口の縁部に沿ってリブ112aが形成されている。
また、上側分割体11aのうちセンサー部12が設けられた位置の上方には、通気用スリット113が形成されている。
また、筐体11の中空部には、図8に示すように、先端部の開口部114よりも基端部側に防塵フィルタ115が設けられている。すなわち、建物状態検知装置10は、建築用パネル2の内部中空部Hに対し、先端部10aから差し込まれて断熱材をかき分けて進んでいくため、防塵フィルタ115によって、開口部114から塵が中空部に入り過ぎないように防いでいる状態となっている。
なお、防塵フィルタ115は、開口部114の基端部(中空部)側だけに設けられるものではなく、通気用スリット113の中空部側に設けられてもよい。
センサー部12は、電源部13からの電力供給を受けて稼働しており、キー111の操作に応じて稼働がオンオフ切り替えされる。
スイッチング回路は、センサー部12の稼働をオンオフ切り替えするためのスイッチ14aと、センサー部12が稼働している際に点灯し、稼働が止まっている際に消灯するLEDランプ14bと、を有する。LEDランプ14bの光は、表示窓112を介して筐体11の外側から見ることができる。
また、スイッチ14aは、筐体11の上面に位置するキー111の下方に配置された状態となっており、キー111の押圧操作に伴って弾性部111aがスイッチ14a側に変形し、中空部側に膨出した部分がスイッチ14aに当たるようになっている。したがって、センサー部12の稼働がオフの状態でキー111を一度押すとスイッチ14aがオンの状態になってセンサー部12が稼働し、もう一度押すとスイッチ14aがオフの状態になってセンサー部12の稼働が止まるようになっている。
通信回路は、通信部として機能するものであり、建物1に設けられた中継器20に対してセンサー部12によって取得した検知結果のデータを送信する無線モジュール14cを有する。
本実施形態における建物状態検知装置10は、基端部10bを手で持ち、キー111を押してセンサー部12を稼働させた状態(LEDランプ14bの点灯で判別)にし、先端部10aから差込孔部HIに差し込むようにして、建物1の外周部を構成する構造体である建築用パネル2の内部中空部H内に配置する。
このようにして内部中空部H内に配置された建物状態検知装置10は、先端部10aが、内部中空部Hのうち二次防水部に近接する位置(検知対象箇所)に配置され、建物状態検知装置10における基端部10bが、先端部10aよりも建物1の室内側に位置した状態となっている。
なお、図示はしないが、差込孔部HIに、検知対象箇所まで伸びるガイド用配管を予め取り付けておき、建物状態検知装置10を内部中空部H内に配置する際に、当該ガイド用配管の内部を通して配置してもよい。
管理用サーバ30は、センサー部12である湿度センサー12によって検知した構造体の湿度から含水率を推定して構造体の状態をモニタリングするためのモニタリング装置である。
また、建物1内には、建物状態検知装置10を通信ネットワークNに接続するための中継器20が設置されており、この中継器20及び通信ネットワークNを介して、建物状態検知装置10からのデータが管理用サーバ30に送られるようになっている。これにより、建物1と管理用サーバ30との間に、建物1の状態をモニタリングして診断する建物状態モニタリングシステムを構築することができる。
中継器20としては、例えばルーターやゲートウェイが採用される。そして、中継器20は、図1,図9に示すように、建物状態検知装置10との間で無線通信を行うための第一通信部20aと、通信ネットワークNに接続されて管理用サーバ30との間で通信を可能とする第二通信部20bと、を有する。
また、通信ネットワークNとは、例えばインターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、専用回線、またはこれらの組み合わせによって構成される情報通信ネットワークを指すものとする。
より詳細に説明すると、管理用サーバ30は、図10に示すように、演算部31と、記憶部32と、入力部33と、出力部34と、通信部35と、を備える。
また、収集データ320aは、建物状態検知装置10に備えられたセンサー部12によって検知されたデータであり、本実施形態においては、センサー部12である湿度センサー12によって検知された湿度の検知結果を表すデータである。さらに、収集データ320aには、建物1の居住者に係るデータや、個々の建物状態検知装置10に割り当てられた識別データが紐づけられてもよい。このような紐づけデータがあることで、収集データ320aがデータベース化しやすくなる。
診断プログラム321aは、詳細については後述するが、演算部31によって実行され、建物状態検知装置10から収集した収集データ320aに基づいて建物1の状態を診断するためのプログラムである。すなわち、この診断プログラム321aは、演算部31によって実行されることで、建物状態モニタリングシステムにおける診断手段として機能する。
通知プログラム321bは、診断プログラム321aが実行されて建物1の状態が診断された際に出された診断結果(診断結果データ320c)に基づいて通知を行うためのプログラムである。すなわち、この通知プログラム321bは、演算部31によって実行されることで、建物状態モニタリングシステムにおける通知手段として機能する。なお、通知先は、管理用サーバ30の出力部34でもよいし、通信部35を介して管理者用の情報端末に通知されてもよい。
この通信部35は、建物1の中継器20から送信されたデータを収集するデータ収集手段として機能する。
なお、中継器20によるデータ収集(データ送信)のタイミングは、建物状態検知装置10に組み込まれたプログラムに基づくものでもよいし、中継器20に組み込まれたプログラムに基づくものでもよいし、中継器20に対してデータ送信の実行を指示する信号を送信するプログラムを管理用サーバ30に採用してもよい。
これにより、湿度センサー12によって湿度を検知して計測すれば、含水率を容易に推定することが可能となる。
より詳細に説明すると、図12(a)に示すグラフは、含水率の上昇が少ないパターンを表しており、含水率と相関関係にある湿度の数値において90%以上の状態がない。含水率についても、湿度が上昇している期間において一時的な含水率の上昇は見られるものの、概ね20%以下であり、乾燥木材としては問題がない。
図12(b)に示すグラフは、含水率の上昇が大きいパターンを表しており、湿度が90%以上のときに、含水率も概ね20%以上になっている状態が見て取れる。より詳細には、検証用の試験棟では、含水率及び湿度が共に、夏が過ぎて10月に入った頃から11月あたりにかけて数値が上昇し、その後、徐々に下降する時期が続き、2月を過ぎた頃から再び数値が上昇する傾向となっている。つまり、図12(b)中、双方向矢印の範囲で示す期間は、数値によって表される弧(カーブ)が上方に膨らむ向きになっている。
このようなグラフの数値を基準値(正常値)にしたときに、例えば一次防水部よりも内側(二次防水部側)に水が浸入すると、基準値からずれる場合がある。そして、基準値からのずれ幅によって建物1の状態を診断できるようになっている。また、このような基準値は、基準値データ320bとして記憶部32に記憶される。
すなわち、基準値(基準値データ320b)からのずれ幅が極めて大きい場合は、一次防水部よりも内側への漏水が疑われる。また、基準値からのずれ幅が極めて大きいわけではないものの、ずれていることが確認される場合は、シーリング材2hの経年変化や地震などの災害に伴うひび割れ等によって、一次防水部よりも内側への水の浸入(漏水よりも程度は低い)が疑われる。又は、シーリング材2hがより劣化したり、ひび割れが広がったりする等の予兆(漏水の予兆)として捉えることができる。
漏水が疑われる場合は、緊急の修理作業が必要となり、漏水よりも程度が低い水の浸入が疑われる場合は、ユーザに対して漏水調査やメンテナンス、リフォームを働きかける等の対応を行うことができる。
また、建物1の状態検知は毎日行うにしても、必ずしも一日ずつ基準値との比較を行わなくてもよく、例えば月ごとに診断を行うようにしてもよい。つまり、前年同月比の数値を基準値としてもよい。もちろん週ごとの診断(前年同週比)でもよいし、年ごとの診断(前年比)でもよい。
なお、初年度については、全国各地のユーザから収集した検知結果のデータの平均値を基準値としてもよいし、試験棟で検知された数値を基準値としてもよい。
さらに、閾値を超えない範囲での基準値からのずれ幅にも、建物の状態の度合いを診断するための診断基準値が設定されており、一次防水部よりも内側への水の浸入の度合い(レベル、段階)を診断できるようになっている。診断基準値は、基準値データ320bと閾値との間に設定されている。より具体的に説明すると、例えば推定される含水率(検知された湿度でもよい)の基準値データ320bが25%であり、閾値が40%とされた場合に、これらの数値の差は15%となる。診断基準値は、この数値の差に少なくとも一つの段階を設定した値であり、例えば真ん中の値である32.5%が診断基準値となる。検知結果データである収集データ320aが、閾値を超えない範囲で診断基準値に達している場合、記憶部32は診断結果データ320cとして記憶し、通知手段によって通知を行う。
なお、診断基準値は、少なくとも一つであるとしたが、実際には、より詳細な診断を行うために複数設定されるものとする。また、閾値及び診断基準値は、基準値データ320に対してプラス側にもマイナス側に設定されているものとする。
例えば、センサー部12として、木材の腐朽が進んでいる場合に発生する腐朽ガスを検知する腐朽ガスセンサーを採用した場合は、木材である構造体の腐朽(状態)を検知でき、検知した腐朽ガスの量の大小によって構造体の腐朽(状態)の度合いを診断することができる。
総じて言えば、どのようなセンサーを用いるにしても、建物1の状態とは、センサー部12によって検知される、建物1の外周部を構成する構造体の劣化の状態(あるいは、正常な状態)を指し、その度合いとは、構造体の劣化の状態がどの程度であるか(あるいは、正常な状態をどの程度維持しているか)を指している。上記の診断手段では、構造体の劣化の状態の進み具合(正常な状態の維持しているか)を診断する上で、基準値データ320bと閾値との間に設定された診断基準値を利用している。
また、基準値からのずれ幅が予め設定された閾値を超える場合には、一次防水部よりも内側への漏水が発生していると診断する。
さらに、管理用サーバ30は、診断プログラム321aに基づく診断が完了すると、上記の通知プログラム321bを実行することによって、建物1の状態が診断された際に導き出された診断結果(すなわち、診断結果データ320c)に基づいて通知を行う。すなわち、診断結果が漏水の場合はアラートを通知先に通知し、一次防水部よりも内側への水の浸入の度合いが高い場合も通知先に通知を行う。水の浸入の度合いが低い場合には通知を行わなくてもよい。
なお、毎日ログを取っていった場合に、図12に示すようなデータの曲線が、徐々に閾値に近づいていくような場合は、シーリング材2hの劣化や、一次防水部に生じたひび割れの広がりが進んでいることを読み取ることができる。つまり、基準値からのずれ幅が予め設定された閾値を超える前に異常を検知することができる。
また、建物1(建物状態検知装置10)と管理用サーバ30との間に構築された通信ネットワークNを、他の地域に建てられた他の建物1A,1B,1C,1D……にも適用すれば、広範な建物状態モニタリングシステムを構築できる。多数の建物1,1A,1B,1C,1D……の状態をモニタリング・診断できれば、上記した建物の寿命予測などに活用できる可能性が高まるので好ましい。
さらに、センサー部12は、筐体11の内部における先端部側に位置しているので、筐体11によってセンサー部12を保護しながら、建築用パネル2の内部中空部H内に建物状態検知装置10を配置し、検知対象の箇所の直近にセンサー部12を配置することができる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上述の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
上記の実施形態におけるセンサー部12は、湿度センサー12とされているが、本変形例におけるセンサー部12は、図示はしないが、湿度センサー以外の他のセンサーが採用されている。
他にも、木材の腐朽が進んでいる場合に発生する腐朽ガスを検知する腐朽ガスセンサーを採用してもよい。
また、シロアリが発するメタンガスを検知するメタンガスセンサーでもよい。
さらに、硫酸塩を含む土壌によって基礎が劣化することがある。そのため、最下階床Fを構成する建築用パネル2のうち基礎の立ち上がり部1aに近接する箇所に対して設けられ、硫酸塩を検知する硫酸塩センサーを採用してもよい。なお、硫酸塩センサーの場合は、最下階床Fを構成する建築用パネル2の上面から立ち上がり部1aまで建物状態検知装置10を差し込んで配置し、基礎の立ち上がり部1aに当接させてもよい。
上記の実施形態における筐体11は、細長いスティック状に形成されているが、本変形例における筐体11は、図示はしないが、他の形状に形成されている。
また、筐体11は、L字状(又は円弧状)に形成されてもよい。このように筐体11がL字状(又は円弧状)に形成されていれば、検知対象箇所の前に障害物があった場合に、この障害物を越えて建物状態検知装置10を配置させることができる。
さらに、筐体11は、先端部が先細(先鋭)な状態に形成されてもよい。このように筐体11の先端部が先細な状態に形成されていると、建物状態検知装置10を、断熱材の端部をかき分けて配置する場合に配置しやすい。
本変形例における建物状態検知装置10は、図13,図14に示すように、構造体である建築用パネル2の内部中空部H内で建物状態検知装置10が移動することを防ぐ移動防止手段を備える。
すなわち、建築用パネル2の内部中空部H内には断熱材が充填され、建物状態検知装置10は断熱材によって支持された状態にもなっているが、例えば振動等により、建物状態検知装置10の位置が移動してしまうことが考えられる。
なお、図13,図14中の斜め下方に向かう矢印は、図3の例に倣ったものであり、建物状態検知装置10の差し込み方向の一例である。よって、差し込み方向は、当該矢印の方向に限定されるものではない。
S 隙間
HI 差込孔部
W1 外壁
W2 外壁
F 最下階床
R 屋根
1 建物
2 建築用パネル
2a 框材
2b 補助桟材
2c 板材
2d 石膏ボード
2e 透湿防水シート(二次防水部)
2g 外装材(一次防水部)
2h シーリング材
3 窓
3c 室内側窓枠
3d 嵌込部
10 建物状態検知装置
10a 先端部
10b 基端部
11 筐体
12 センサー部
20 中継器
20a 第一通信部
20b 第二通信部
30 管理用サーバ
31 演算部
32 記憶部
320 データ記憶部
320a 収集データ
320b 基準値データ
320c 診断結果データ
321 プログラム記憶部
321a 診断プログラム
321b 通知プログラム
33 入力部
34 出力部
35 通信部
Claims (5)
- 建物の外周部を構成する構造体の屋外側に二次防水部が設けられるとともに、前記二次防水部よりも屋外側に一次防水部が設けられており、
前記構造体は中空状に形成されて内部中空部を有しており、
先端部にセンサー部が設けられ、当該センサー部によって前記構造体の状態を検知する建物状態検知装置が、前記構造体における内部中空部内に配置され、
前記建物状態検知装置における前記先端部が、前記内部中空部のうち前記二次防水部に近接する位置に配置され、前記建物状態検知装置における基端部が、前記先端部よりも前記建物の室内側に位置した状態となっていることを特徴とする建物状態検知装置の配置構造。 - 請求項1に記載の建物状態検知装置の配置構造において、
前記構造体は、内部中空部を形成する外郭部を備えており、
前記外郭部のうち前記建物の室内側に位置する部位に、当該部位を貫通し、かつ前記建物状態検知装置が差し込まれる差込孔部が形成されていることを特徴とする建物状態検知装置の配置構造。 - 請求項1又は2に記載の建物状態検知装置の配置構造において、
前記建物状態検知装置は、前記センサー部が収容される筐体を備え、
前記センサー部は、前記筐体の内部における先端部側に位置していることを特徴とする建物状態検知装置の配置構造。 - 請求項3に記載の建物状態検知装置の配置構造において、
前記筐体は、全体として細長いスティック状に形成されていることを特徴とする建物状態検知装置の配置構造。 - 建物の外周部を構成する構造体の屋外側に二次防水部が設けられるとともに、前記二次防水部よりも屋外側に一次防水部が設けられており、
前記構造体は中空状に形成されて内部中空部を有しており、
先端部にセンサー部が設けられ、当該センサー部によって前記構造体の状態を検知する建物状態検知装置を、前記構造体における内部中空部内に配置するに際し、
前記建物状態検知装置における前記先端部を、前記建物の室内側から前記二次防水部に近接する位置に向かって差し込むことを特徴とする建物状態検知装置の配置方法。
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