JP2021043081A - ガンマ線測定器、粒子線照射システム、及び測定方法 - Google Patents

ガンマ線測定器、粒子線照射システム、及び測定方法 Download PDF

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Taisuke Takayanagi
泰介 高柳
祐介 藤井
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祐介 藤井
耕一 岡田
Koichi Okada
耕一 岡田
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Yuichiro Ueno
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Abstract

【課題】粒子線治療システムに適用される高バックグラウンド環境で高精度にガンマ線源の方角を検出できるガンマ線測定器を提供する。【解決手段】ガンマ線測定器は、所定方向に電場が形成されたチェンバを備え、当該チェンバ内に入射したガンマ線にコンプトン散乱を発生させ、その際発生する反跳電子の軌跡と運動エネルギーとを計測する第1の検出器と、散乱したガンマ線のエネルギーと当該ガンマ線が入射した位置とを計測する第2の検出器と、第1の検出器の内部に配置され、反跳電子の残運動エネルギーを計測する第3の検出器と、第1、第2及び第3の検出器からデータを収集するデータ収集部とを備える。データ収集部は、第2の検出器と第3の検出器との同時計測が発生した場合に、データ収集を開始する。【選択図】図5

Description

本発明は、ガンマ線測定器、及び粒子線照射システムに関する。
近年、陽子線や炭素線などの粒子線を利用した治療方法が開発されている。粒子線は媒質中で連続的にエネルギーを損失し、一定の深さで停止し、粒子線の入射エネルギーが高いほど停止位置までの距離(これを飛程と呼ぶ)は長くなるという特徴がある。粒子線治療は、このような粒子線の特徴を活かし、腫瘍形状に合致した線量分布を形成可能であり、従来のX線治療に対して周囲の正常組織への被ばくを抑えた治療として期待される。
粒子線治療を行う場合、正確に飛程を予測することが必要であり、腫瘍に照射する粒子線のエネルギーを、患者のCT画像を用いたシミュレーションによって事前に決定している(このプロセスは、照射計画、治療計画などと呼ばれる)。しかしながら、シミュレーションで用いられるCT値−粒子線阻止能変換係数の不確定性などのために、シミュレーション上の飛程は実際と最大3%程度の誤差があると言われており、そのため腫瘍周辺にマージンをつけた照射計画の立案が求められている(非特許文献1)。このマージンのために、現状の粒子線治療は、飛程による高い線量集中性を最大限に活かすことが困難な場合がある。
これに対し、飛程を体外から観測することで体内における飛程の不確定性を排除し、マージンを抑制する手法、すなわち、飛程検証法が複数提案されている(非特許文献2)。その1つとして、媒質中の原子核から生じる即発ガンマ線を利用するものがある。粒子線が媒質中を通過すると、一定の確率で媒質原子核を励起し、励起した原子核から即発ガンマ線が放出される。励起原子核は粒子線の通過位置、つまり体表から飛程までの間にしか発生しないため、体外に設置したガンマ線測定器により即発ガンマ線源の方角を観測することで、体内の粒子線の飛程を特定することができる。
ガンマ線源の方角を観測可能なガンマ線測定器の代表的なものとして、電子飛跡型コンプトンカメラ(ETCC:Electron Tracking Compton Camera)がある(非特許文献3)。ETCCは、電子を検出するマイクロピクセルチェンバー(μ−PIC)を備えたタイムプロジェクションチェンバー(TPC:Time Projection Chamber)とシンチレーションカウンタの2段の検出器で構成される。
TPC内部にはアルゴンなどの気体が封入されており、TPC内部でガンマ線がコンプトン散乱すると、反跳電子が気体を電離し、反跳電子の軌跡に沿って電離電子が発生する。TPCには一定方向に電場がかけられており、電場方向にドリフトした電離電子は、最終的にμ−PICにて収集される。μ−PICは短冊状に分割された2軸の電極を持ち、μ−PIC上のどの位置に電離電子が到達したか観測することで、TPC上での反跳電子の軌跡およびコンプトン散乱の発生位置の再構成することができる。また、電離電子の総和から反跳電子の運動エネルギーKが再構成される。一方、シンチレーションカウンタは、ピクセル上に分割されたシンチレーション結晶とマルチアノード型の光電子増倍管で構成され、散乱ガンマ線のエネルギーEγとシンチレーションカウンタへの入射位置を観測する。
最終的に、ガンマ線源の方角は、反跳電子の軌跡から求められる電子反跳方向の単位ベクトルと、コンプトン散乱の発生位置とシンチレーションカウンタ上での散乱ガンマ線の入射位置から求められるガンマ線散乱方向の単位ベクトルと、観測されたデータ(反跳電子の運動エネルギーK、散乱ガンマ線のエネルギーEγ)を用いて以下の式(1)で再構成される。
Figure 2021043081
特許文献1には、このようなETCCを粒子治療に適用する技術が開示されている。
特開2010−32451号公報
H.Paganetti,"Range uncertainties in proton therapy and the role of Monte Carlo simulations", Phys. Med. Biol., 57, (2012) R99−R117 A.Knopf and A.Lomax, "In vivo proton range verification: a review", Phys. Med. Biol., 58, (2013)R131−R160 A.Takada, et al., "Observation of diffuse cosmic and atmospheric gamma rays at balloon altitudes with an electron−tracking compton camera",Astrophysical J. 733(2011) 13
ETCCのデータ収集システムは、シンチレーションカウンタで何らかの信号が検出されると、「TPCにてコンプトン散乱が生じ、その結果、シンチレーションカウンタにて散乱ガンマ線が観測された」と判断し、TPCでの反跳電子の測定開始を指示する。このとき、TPCにおけるデータのサンプリング時間は、反跳電子によって生じた電離電子がμ−PICに到達するまでのドリフト時間を考慮し、約数μ秒間に設定される。サンプリング中は、仮にシンチレーションカウンタにて新たな信号が観測されたとしても、TPCへの測定開始指示が無視される不感時間となる。データの不整合を防止するためである。
従って、中性子や、コンプトン散乱を起こさずに直接シンチレーションカウンタに入射するガンマ線が多量に存在する高バックグラウンド環境下では、本来のターゲットとなるコンプトン散乱事象の測定ができなくなる課題がある。実際にはTPCにおいてコンプトン散乱が発生していないのにも関わらず、これらのバックグランド事象がETCCに対し常に不感時間を発生させるためである。
一般的に、このような課題の解決には、ガンマ線源からETCCを遠ざける、粒子線の強度を低下させる、といった対策が考えられる。しかしながら、前者はガンマ線源の位置分解能の低下を招き、粒子線治療で求められるサブmmやmm単位の精度での飛程計測が困難となる。また、後者は、計測時間の増大を招き、治療中の飛程計測が完了しない可能性がある。
本発明は、上記課題を解決するため、コンプトン散乱事象を利用した、ガンマ線源の方角を観測可能なガンマ線測定器において、コンプトン散乱によって発生した反跳電子の軌跡と運動エネルギーとを計測する検出器(例えばTPC)に加えて、この検出器内に反跳電子の運動エネルギーを計測する第3の検出器を設ける。そして、散乱したガンマ線を検出した信号と、この第3の検出器からの信号とを同時入力したことをトリガーとして、ガンマ線測定器のデータ収集を開始する。
即ち、本発明のガンマ線測定器は、所定方向に電場が形成されたチェンバを備え、当該チェンバ内に入射したガンマ線にコンプトン散乱を発生させ、その際発生する反跳電子の軌跡と運動エネルギーとを計測する第1の検出器と、散乱したガンマ線のエネルギーと当該ガンマ線が入射した位置とを計測する第2の検出器と、前記第1の検出器の内部に配置され、前記反跳電子の残運動エネルギーを計測する第3の検出器と、前記第1、第2及び第3の検出器からデータを収集するデータ収集部と、を備える。
好適な態様において、前記データ収集部は、第2の検出器と第3の検出器との同時計測が発生した場合に、データ収集を開始する。
また本発明の粒子線照射システムは、ビームの飛程を算出するための手段として、本発明のガンマ線測定器を用いるものである。具体的には、粒子線を生成する粒子線発生装置と、前記粒子線発生装置が生成した粒子線を加速し、被照射体に対し照射する粒子線照射装置と、前記非照射体内の原子核と粒子線との反応により生成するガンマ線を検出するガンマ線測定器と、前記ガンマ線測定器の前記データ収集検出結果を用いて前記被照射体内における粒子線の飛程を算出するデータ解析装置と、を備え、前記ガンマ線測定器は、所定方向に電場が形成されたチェンバを備え、当該チェンバ内に入射したガンマ線にコンプトン散乱を発生させ、その際発生する反跳電子の軌跡と運動エネルギーとを計測する第1の検出器と、散乱したガンマ線のエネルギーと当該ガンマ線が入射した位置とを計測する第2の検出器と、前記第1の検出器の内部に配置され、前記反跳電子の残運動エネルギーを計測する第3の検出器と、前記第1、第2及び第3の検出器からデータを収集するデータ収集部と、を備える。
さらに本発明の測定方法は、粒子線を被照射体に照射する際に、被照射体内で生成する即発ガンマ線の線源の方角を測定する方法であって、前記粒子線の照射方向と直交する方向の、前記被照射体に近傍に配置され、所定方向に電場が形成されたチェンバを備えた第1の検出器により、当該チェンバ内に入射したガンマ線にコンプトン散乱を発生させ、その際発生する反跳電子の軌跡と運動エネルギーとを計測し、第1の検出器に近接して配置された第2の検出器により、散乱したガンマ線のエネルギーと当該ガンマ線が入射した位置とを計測し、前記第1の検出器の内部に配置された第3の検出器により、前記反跳電子の残運動エネルギーを計測し、その際、前記第2の検出器におけるガンマ線の検出と前記第3の検出器における反跳電子の検出とが同時に生起したときに各検出器からのデータ収集を行い、前記第1の検出器が計測した反跳電子の軌跡と運動エネルギー、前記第2の検出器が計測した散乱ガンマ線のエネルギーと前記チェンバにおける入射位置、及び前記第3の検出器が計測した前記反跳電子の残運動エネルギーとを用いて即発ガンマ線の線源の方角を算出することを特徴とする。
本発明によれば、コンプトン散乱によって発生した反跳電子と、散乱ガンマ線が同時に観測された場合にのみ、第1の検出器(TPC)の計測が開始される。これにより、高バックグラウンド環境下においてもデータ収集の不感時間発生を抑制し、ガンマ線源の方角の観測が可能となる。また本発明のガンマ線測定器は、高バックグラウンド環境下においてもガンマ線の方角を計測できるので、ガンマ線源に近づけて配置することができ、粒子線の飛程の計測精度が改善する。また、粒子線の強度を維持したまま、飛程計測が可能となる。さらに、第1の検出器の内部に反跳電子の残運動エネルギーを計測する第3の検出器を配置したので、第1の検出器内に反跳電子の軌跡全体を収める必要がないため、ガンマ線測定器の小型化が可能になる。
本発明の実施形態による粒子線治療システムの全体構成を示す図である。 粒子線照射装置の構成を示す図である。 スキャニング照射方式を採用した粒子線治療システムの全体構成図である。 図3の粒子線治療システムの動作の一例を示すフローである。 本発明の実施形態によるガンマ線測定器の概略図である。 (a)、(b)は、それぞれ、図5のガンマ線測定器における第3の検出器の配置の変形例を示す図である。 図5のガンマ線測定器を構成する各検出器の信号のタイミングチャートである。 本発明の実施形態によるガンマ線源測定器の変形例を示す図である。 本発明の実施形態によるガンマ線源測定器の変形例を示す図である。 本発明の実施形態によるガンマ線源測定器の変形例を示す図である。
以下、本発明のガンマ線測定器、及び粒子線照射システムの実施形態を、図面を用いて説明する。以下の実施形態では、粒子線照射システムが粒子として陽子を用いる粒子線治療システムである場合を例に説明するが、本発明は陽子より質量の重い粒子(炭素線など)を用いた重粒子線を用いた治療システムにも適用することができる。
<粒子線治療システムの実施形態1>
本実施形態の粒子線治療システム(粒子線照射システム)10は、図1に示すように、被照射体(患者)200に陽子線を照射するための陽子線照射装置100と、陽子線の照射を受けて被照射体200内で発生する即発ガンマ線を測定するガンマ線測定器300と、ガンマ線測定器300が測定したデータを解析し、その結果を陽子線照射装置100にフィードバックするデータ解析装置500とを備えている。粒子線治療システム10は、さらに治療部位(標的)の位置を確認するためのX線透視装置などの撮像手段(不図示)を備えていてもよい。
陽子線照射装置100は、図2に示すように、イオン源及び加速器などを備えた陽子線発生装置110と、陽子線発生装置110が発生した陽子線を被照射体(患者)200に照射する照射装置120と、陽子線発生装置110と照射装置120とを連結し陽子線を輸送する陽子線輸送装置130とを備える。
陽子線発生装置110は、図2に示す例では、イオン源111、前段加速器112(例えば、直線加速器)及び、シンクロトロン113を有する。イオン源111で発生した陽子イオンは、まず、前段加速器112で加速される。前段加速器112から出射した陽子線(以下、ビームという)は、シンクロトロン113で所定のエネルギーまで加速された後、シンクロトロン113の出射デフレクタ114から陽子線輸送装置130に出射される。図2では、陽子線の加速装置としてシンクロトロン113を採用した場合を示したが、サイクロトロンや直線加速器を採用してもよい。
照射装置120は、陽子線輸送装置130を介して送られたビームの方向性やビーム径(照射野)を制御して被照射体200内の標的、例えば腫瘍に向けてビームを照射する装置で、照射方式に応じて、ビームの方向や照射野を制御する手段あるいはビームの散乱を制御する手段や、必須ではないが、ビームのエネルギーを変更するレンジシフタ等を搭載した照射野形成装置121を備えている。照射装置120には、固定式と回転式とがあり、いずれを採用してもよいが、図2では、回転式照射装置120を採用する実施形態を示している。回転式照射装置120は、被照射体200が置かれる空間を囲むように開口が形成された回転ガントリー(不図示)の内部に、上述した照射野形成装置121及び陽子線輸送装置130の一部が収納され、回転式照射装置120と共に回転する。この際、照射野形成装置121のビーム出射口はガントリーの開口側に配置され、回転の各角度でビームは標的に向かって照射される。
ガンマ線測定器300は、コンプトン散乱事象を利用した、ガンマ線源の方角を観測可能なガンマ線測定器(電子線飛跡検出型コンプトンカメラ:以下、ETCCと略す)であり、被照射体200の近傍に設置される。特に、その中心が、被照射体における粒子線の飛程の計画値に相当する位置と同じ、または近傍に配置されていることが好ましい。また図1では、簡単のため1台のETCCを示しているが、被照射体200の周囲を取り囲むように複数台設置してもよい。例えば、被照射体200を囲む円又は楕円の一部に沿った円弧状に、複数配置されていることが好ましい。
ETCC300は、図3に示すように、3つの検出器310、320、330を備えている。第1の検出器310は、電場が形成されたチェンバを備え、チェンバ内に入社した散乱ガンマ線にコンプトン散乱を発生させて、その際に発生する反跳電子の軌跡と運動エネルギーとを計測する。第2の検出器320は、第一検出器310のチェンバの外側に配置され、第1の検出器310の内部で発生して飛来する散乱ガンマ線のエネルギーとその入射位置とを計測する。第3の検出器330は、第1の検出器のチェンバ内に配置され、第1の検出器内を飛来する反跳電子を捉え、その残運動エネルギーを計測する。ガンマ線測定器300は、さらに、第1、第2及び第3の検出器からデータを収集するデータ収集部350を備え、データ収集部350が収集した各検出器の計測データは、データ解析装置500に送られる。データ収集部350は、第2及び第3の検出器から送られる計測信号の同時入力をトリガーとして検出器からの計測信号のデータ収集とそのサンプリング期間の不感時間設定を行う。
本実施形態のガンマ線測定器(ETCC)300は、第3の検出器330を備え、その信号をデータ収集開始のトリガーに利用することにより、即発ガンマ線以外のガンマ線やその他の粒子等の飛来が多い高バックグラウンド環境の粒子線治療システムにおいても、即発ガンマ線以外の放射線に起因する不感時間発生を防止し、効率よく測定を行うことができる。本実施形態のガンマ線測定器300の構成と動作の詳細は後述する。
データ解析装置500は、CPU、GPU等の中央処理装置を備えたコンピュータで構成することができ、ガンマ線測定器300の測定結果を入力し、種々の演算を行うとともに、陽子線照射装置100の制御を行う。このためデータ解析装置500は、付属装置として、表示装置510や、図示しないマウス、キーボード等の入力装置を備えている。データ解析装置500が行う演算や制御は、予め定めたプログラムを中央処理装置が読み込んで実行することによりソフトウェアとして実現される。但し、データ解析装置500が実行する機能の一部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programable Gate Array)等のハードウェアで実現してもよい。
本実施形態において、データ解析装置500は、具体的には、陽子線の照射を受けて、被照射体200を構成する組織等の原子核から生じる即発ガンマ線の発生位置(ガンマ線源の位置)と方向(方角)及びビーム進行方向におけるガンマ線強度分布からビームの飛程距離を算出する。
またデータ解析装置500は、予め計画されたビーム飛程距離(計画飛程)と算出した飛程とを比較し、その結果を陽子線照射装置100にフィードバックする。計画飛程は、照射計画や治療計画において、陽子線のエネルギーを決定する際に、患者のCT画像を用いたシミュレーションによって事前に決定される。シミュレーションによる計画飛程の算出は、粒子線治療システム10で行ってもよいし、粒子線治療システム10とは別の演算装置(例えば、データ解析装置が接続された照射計画システム20)で行ってもよい。
次に上述した粒子線治療システム10の動作を、図4を参照して説明する。ビームの照射方式には、陽子線の散乱による拡大を利用して標的に合わせた径のビームを照射する散乱体照射法と、ビームの角度と深度を制御しながらビームをスキャンするスキャニング照射法があるが、ここでは、スキャニング照射法を採用する場合を説明する。
スキャニング照射法では、図3に示すように、腫瘍などの標的201を微少領域(スポット)202に分割し、各スポット202に対し細径のビームを順番に照射していく(S41)。このため、ビームの方向を制御する走査電磁石122やビームが照射されるスポットの位置を監視するためのスポットポジションモニタ123を備えた照射野形成装置121を用いる。図3において、走査電磁石122を励磁しない状態においてビームの中心が通過する直線をZ軸と定義する。また、回転式照射装置121の回転軸をY軸とし、Y軸及びZ軸と直交する軸をX軸とする。XYZの3軸の交点がアイソセンタである。スポット202毎のビームの横方向線量分布は、アイソセンタ面(アイソセンタを含むXY平面)上において1σ=数mmのガウス分布状に広がっている。
スキャニング照射法では、あるスポット202に照射計画で決定した所定の線量が付与されると、照射を停止して次の所定スポット202に向けてビームが走査される。横方向、すなわちX軸Y軸方向へのビーム走査には照射野形成装置121に搭載した走査電磁石122を用いる。スポットポジションモニタ123は、ビームの横方向の位置、ビームの進行方向を監視し(S42)、スポットポジションモニタ123で観測されたビームの照射位置が、照射計画に対し所定の基準値(例えば、2mm)以上のズレを示す場合は、粒子線治療システムに何らかの不具合があったと判断し(S44)、陽子線照射装置100に照射停止信号を送信する(S45)。
被照射体200の表面から飛程に達するまでの間、ビームは原子核を励起し、励起した原子核は即発ガンマ線を4π方向に放出する。被照射体200の近傍に設置されたガンマ線測定器300は、被照射体200から飛来する即発ガンマ線を測定し、得られた測定データをデータ解析システム500に送信する。データ解析システム500は送信された測定データから、反跳電子の軌跡、運動エネルギーなどを再構成し、ガンマ線源の方角を特定し、ビームの飛程を推定する(S43)。
即発ガンマ線の方角の特定は、次のように行う。ガンマ線測定器300のデータ収集部350が収集するデータは、第1の検出器310が計測した計測信号から得られる電離電子のエネルギーと反跳電子の軌跡の情報、第2の検出器320の計測信号から得られる散乱ガンマ線のエネルギーEγと第2の検出器320への入射位置P2のデータ、第3の検出器330の計測信号から得られる反跳電子の残運動エネルギーKe2である。
データ解析システム500は、電離電子のエネルギーの総和から反跳電子の運動エネルギーKe1を再構成するとともに、反跳電子の軌跡の情報からコンプトン散乱の発生位置P1を求める。コンプトン散乱の発生位置P1と第2の検出器320への入射位置P2からガンマ線散乱方向の単位ベクトルが求められ、第1の検出器310が計測した反跳電子の軌跡から電子反跳方向の単位ベクトルが求められるので、これらのデータを用いることで、式(1)により、即発ガンマ線の方角を算出することができる。
Figure 2021043081
従来技術では、反跳電子の運動エネルギーKeは第1の検出器にて収集された電離電子の電荷の総和から再構成されるが、本実施形態では電離電子の電荷の総和に加え、第3の検出器で得られた信号の強度に基づいて再構成される。
最後に算出した即発ガンマ線の方角とビームの進行方向との交点をガンマ線源の位置として求めることができる。
データ解析システム500には、ビーム照射中に連続してガンマ線測定器300からのデータが入力される。これによりデータ解析システム500は、ビームの軌跡に沿った、ガンマ線の発生位置と発生位置毎のガンマ線エネルギー(エネルギー分布)を得ることができる。媒質中を飛来するビームが媒質中でエネルギーを失い停止すると、即発ガンマ線の発生もなくなる。従って、ビーム軌跡に沿ったガンマ線のエネルギー分布からビームの飛程を求めることができる。具体的には、データ解析システム500は予め定められた定義に基づいて、例えば、ガンマ線源の強度のピーク値を100%としたときに、ガンマ線強度がピークから80%に低下する位置をビームの飛程として算出する。
データ解析システム500は、その演算結果を画像表示装置510に表示することができる。表示は、種々の表示方法をとることができるが、例えば、図3に示す例では、得られたガンマ線源の位置をZ軸上に射影し、ガンマ線強度をグラフとして示すとともに、照射計画においてシミュレーションして求めた計画飛程を合わせて表示する。これによりユーザーが実際のビーム飛程が適切かどうかを確認することができる。
なお表示方法は、図3に示す例に限らず、例えばガンマ線源の位置をZ軸上に射影するのではなく、スポットポジションモニタ123によって得られたビームの進行方向上に射影する方法でもよい。この場合、ビームの照射位置が3次元で可視化されるため、より高精度な監視が可能となる。
データ解析システム500は、さらに、照射計画システム20から飛程のシミュレーション値を取得し、算出した飛程がシミュレーション値と比較し、所定の基準値(例えば、5mm)以上のズレがあるかを判断し(S44)、ズレがある場合は、粒子線治療システムに何らかの不具合があった、若しくは治療計画の線量計算に誤差があったと判断し、直ちに陽子線照射装置100に照射停止信号を送信する(S45)。
ズレがない場合は、照射野形成装置121はビーム走査を継続し(S41)、ある深さ(Z軸方向の位置)についてすべてのスポット202に所定線量を付与すると、深さ(Z軸)方向にビームを走査し、次の深さのXY面でビーム走査をする。深さ方向へのビームの走査は、シンクロトロン113での加速条件を変更する、もしくは、ビームを照射野形成装置121等に搭載したレンジシフタ(図示せず)を通過させる等の方法によりビームのエネルギーを変更することによって行う。
このような手順S41〜S44を繰り返し、それぞれのスポット202への照射ビームが事前に立案した照射計画通りの横方向位置、飛程を維持していることを監視しながら、最終的に標的201全体に一様な線量分布が形成される(S46)。なお陽子線照射装置100に照射停止信号を送信後に、照射位置の調整等の不具合の調整が簡単に完了できる場合には(S47)、再度、ステップS41に戻り、照射していないスポットからビームの照射を再開することもできる。
以上、ビームの照射手法としてスキャニング照射法を採用する場合の粒子線治療システム10の動作を説明したが、照射方法として散乱体照射法を用いた場合でも、ビーム走査を行わないこと以外は同様の手順で進められる。
本実施形態の粒子線治療システムによれば、ビームの飛程を検出する装置として、3つの検出器を備えたガンマ線測定器を用いることにより、飛程の検出精度を高めることができる。3つの検出器を備えたガンマ線測定器を用いることにより得られる更なる効果については、後述のガンマ線測定器の実施形態において詳述する。
<ガンマ線測定器の実施形態>
次に、上述した粒子線治療システムに好適に用いられるガンマ線測定器の実施形態を説明する。
図5に、本実施形態のガンマ線測定器(ETCC)300の概略図を示す。図示するように、このETCC300は、タイムプロジェクションチェンバー(TPC)(第1の検出器)310と、シンチレーションカウンタ(第2の検出器)320と、TPC310の内部に設置された電子ストッパー(第3の検出器)330の3つの放射線測定器(検出器)を備え、さらに3つの検出器が計測したデータを収集するデータ収集部350を備え、データ収集部350の前段にはデータ収集部350におけるサンプリングの開始及び不感時間を制御する計測制御回路340が備えられている。
TPC310は、飛来するガンマ線にコンプトン散乱を発生させ、それによって生じる反跳電子の軌跡とエネルギーを計測する検出器で、内部に所定の空間を持つチェンバ311と、チェンバ311の内側に対向して配置された高圧電極312と、マイクロピクセルチェンバ(μ−PIC)313とを備えている。高圧電極312には、高圧電源315から電力が供給されており、これによりTPC310の内部に一定方向の電場を形成している。ここでは電場の方向は、X軸に平行な方向とする。なおチェンバ311の形状は立方体や直方体であってもよいし、円筒形など種々の形状を取りえる。
またチェンバ311内部にはアルゴンなどの気体が封入されている。TPC310に即発ガンマ線が入射すると、コンプトン散乱により、反跳電子が発生する。反跳電子はチェンバ内の気体を電離し、それにより反跳電子の軌跡に沿って電離電子が発生する。電離電子は、電場方向と同じ方向にドリフトする。
μ−PIC313は、2つの電極を持ち、これら電極はそれぞれ電場の方向と直交する方向(Y方向及びZ方向)に短冊状に分割されている(但し、図5では、簡単のためZ方向に分割された電極のみ図示している)。これら電極によって、反跳電子の移動に伴って生成する電離電子を補足し、反跳電子の三次元的な移動の軌跡とエネルギーを計測する。三次元的な移動の軌跡のうち、Y方向及びZ方向の情報は、Y方向及びZ方向に分割された電極の位置から得ることができ、X方向の情報は、電離電子が電場方向即ちX方向にドリフトしてμ−PIC313に到達するまでの移動時間から得ることができる。即ち反跳電子の移動時間が極めて短いのに対し、電離電子がドリフトして移動する時間は比較的長く、その時間はμ−PIC313からの距離(X方向の距離)に比例する。従って移動時間からX方向の位置情報を得ることができる。
シンチレーションカウンタ320は、コンプトン散乱によって散乱したガンマ線を計測するガンマ線測定器であり、TPC310のチェンバ311の外側であって、散乱ガンマ線を補足する位置に配置される。図5に示す例では、μ−PIC313と同じ側に配置されているが、この位置に限定されるものではない。
シンチレーションカウンタ320は、たとえば、無機結晶シンチレータ321とマルチアノード型光電子増倍管322で構成することができ、無機結晶シンチレータ321に散乱ガンマ線が入射すると、散乱ガンマ線のエネルギーに比例した量の蛍光を発生する。散乱ガンマ線は電磁シャワーなどを経て無機結晶シンチレータ321内に吸収される。無機結晶シンチレータ321は、YZ平面に対しピクセル状に分割されており、散乱ガンマ線がシンチレーションカウンタ320に対してYZ平面上のどの位置に入射したかを判別可能とする。マルチアノード型の光電子増倍管322は各ピクセルで発生した蛍光をそれぞれ電気信号に変換して出力する。電気信号の大きさは蛍光量と正の相関があり、シンチレーションカウンタ320で発生した信号の総和が予め設定した閾値を超える場合、シンチレーションカウンタ320に散乱ガンマ線が入射したと判断し、シンチレーションカウンタ320は計測制御回路340に計測開始信号を送信する。
なお、シンチレーションカウンタ320の構成は、マルチアノード型光電子増倍管と無機結晶シンチレータの組み合わせに限定されるものではなく、例えば、マルチアノード型光電子増倍管の代わりに、複数の小型の光電子増倍管を用いても同様の効果が得られる。また、無機結晶シンチレータを分割せず、マルチアノード型光電子増倍管、若しくは複数の光電子増倍管で得られた信号の重心からガンマ線の入射位置を特定することも可能である。
さらに、散乱ガンマ線を検出する第2の検出器として、シンチレーションカウンタではなく、半導体検出器を用いてもよく、同様の情報を得ることができる。一般的に、半導体検出器はシンチレーションカウンタよりもエネルギー分解能に優れるため、より高精度にガンマ線源の方角を特定することができる。
電子ストッパー330は、TPC310のチェンバ内を飛来する反跳電子がその運動エネルギーを消失する前に反跳電子を捉え、運動エネルギーを計測する。コンプトン散乱により発生した反跳電子の運動エネルギーは、TPC310を移動しながら減少し、その際消耗した運動エネルギーはμ−PIC313で計測されるので、電子ストッパー330が計測する運動エネルギーは、残りの運動エネルギーである。このような残運動エネルギーを計測するために、電子ストッパー330はTPC310内で反跳電子が飛来する方向に配置される。具体的には、TPC310のチェンバ311を構成する面のうち、電離電子が移動する方向、電場方向と平行な面に配置することが好ましい。なお図5では、TPC310の一側面に配置されている構成を示しているが、例えば、図6(a)、(b)に示すように、TPC310が直方体である場合、高圧電極312及びμPIC313が配置される2つ面を除く4つ側面の1ないし複数の側面に配置することができる。
電子ストッパー330は、電子のエネルギーを計測可能なものであればよく、本実施形態では、プラスチックシンチレータ331、ライトガイド332、及び光電子増倍管333で構成されている。発生した反跳電子がプラスチックシンチレータ331に入射すると、プラスチックシンチレータ331は反跳電子の残りの運動エネルギーに比例した量の蛍光を発生し、反跳電子はプラスチックシンチレータ331内で停止する。蛍光はライトガイド332を通じて光電子増倍管333に検出され、光電子増倍管333は蛍光を電気信号に変換して出力する。電気信号の大きさは蛍光量と正の相関があり、電子ストッパー330で発生した信号が予め設定した閾値を超える場合、電子ストッパー330に反跳電子が入射したと判断し、電子ストッパー330は計測制御回路340に計測開始信号を送信する。なお、電子ストッパー330として、プラスチックシンチレータを用いたシンチレーションカウンタの代わりに、その他のシンチレーションカウンタや半導体検出器を用いてもよい。
計測制御回路340は、シンチレーションカウンタ320及び電子ストッパー330の両方からの計測開始信号が同時に入力されたときに、データ収集部350に計測開始のためのトリガー信号を送るとともに、自らにVETO信号を送り、不感時間を設定する。これにより、不感時間中(サンプリング中)はシンチレーションカウンタ320及び電子ストッパー320から計測開始信号が出されてもそれを無視し、サンプリング中の別イベントの信号が混入するのを防止する。
データ収集部350は、計測制御回路340からのトリガー信号を入力すると、それをトリガーとして、3つの検出器310〜330のそれぞれからの計測結果である電気信号を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、データ収集する。μ−PIC313については、それぞれの電極で収集された電離電子の電荷が、時間毎にデータ収集部350に記録される。
以上のETCC300の動作を、図7のタイムチャートを参照してさらに説明する。図7において、横軸は時間、(A1)、(A2)、(A3)はそれぞれ第1〜第3の検出器(TPC310、シンチレーションカウンタ320、電子ストッパー330)の計測信号を表し、(B)は計測制御回路340が発するトリガー信号、(C1)、(C2)、(C3)はそれぞれデータ収集部における第1〜第3の検出器の計測信号のサンプリング時間、(D)は不感時間を表している。また第1の検出器については、(A1)においてμPICの電極毎の計測信号を示している。
図7の(A2)、(A3)に示すように、シンチレーションカウンタ320と電子ストッパー330には、即発ガンマ線に由来する散乱ガンマや電子以外に、環境からの放射線等が入射し、それによる計測信号が生じているが、シンチレーションカウンタ320からの信号71又は電子ストッパー330からの信号72の一方のみが入力されても、計測制御回路340はトリガー信号をデータ収集部350に出力しない。
一方、即発ガンマ線がETCC300に入射すると散乱ガンマ線と反跳電子が同時に生成され、計測制御回路340に、シンチレーションカウンタ320と電子ストッパー330とからの計測信号73、74が同時に入力される。計測制御部340は、両者からの信号を同時に入力したときにトリガー信号81をデータ収集部350に出力する。それと同時にデータ収集部350に対して新たな計測開始信号が送信されないように、自身にVETO開始信号を送信する。
ここで「同時に入力」とは、シンチレーションカウンタ320と電子ストッパー330のそれぞれが出力した計測開始信号が計測制御回路340に到達するまでの時間の差を加味した時間幅を持つものとする。具体的には、計測制御回路340は、所定の時間(例えば、数十から数百ns)の間に両者からの信号を入力したときトリガー信号81を出力する。また検出器毎の応答速度の違い等による計測開始信号の計測制御回路340への到達時間差を調整するため、シンチレーションカウンタ320及び電子ストッパー330と、計測制御回路340の間に、遅延回路を設置してもよい。
データ収集部350は、トリガー信号81によってサンプリングを開始し、予め設定されたサンプリング時間だけ、各検出器(TPC310、シンチレーションカウンタ320、電子ストッパー330)からの計測信号をサンプリングしてデータ収集を行う。
具体的には、所定のサンプリング時間の間にシンチレーションカウンタ320から出力された信号を積分し、ピクセル毎に記録する。また、所定のサンプリング時間の間に電子ストッパー330から出力された信号を積分し、記録する。さらに、所定のサンプリング時間の間にTPC310から出力された信号を、時間毎に記録する。このとき、サンプリングレートは例えば数百MHzから数GHzとする。サンプリング時間については、暗電流(ノイズ)の影響をできるだけ排除するために、それぞれの検出器に応答時間に応じて、TPC310、シンチレーションカウンタ320、電子ストッパー330のそれぞれの検出器において独立に設定される。例えば、TPC310のμ―PICのサンプリング時間82は、反跳電子によって生じた電離電子がμ-PIC313に到達するまでのドリフト時間を考慮し、最も長く、約数μ秒間に設定される。
データ収集部350によるサンプリング時間内は、「VETO」状態であるため、図7に示すように、シンチレーションカウンタ320からの計測信号75と電子ストッパー330からの計測信号76が同時に計測制御回路340に入力されても、トリガー信号は出力されない。
TPC310、シンチレーションカウンタ320、電子ストッパー330のそれぞれの検出器において、データのサンプリング時間が終了すると、データ収集部350はデータ収集完了信号を計測制御回路340に送信する。データ収集完了信号を受信すると、計測制御回路340はVETO状態を終了し、再び待機状態に戻る。即ち、シンチレーションカウンタ320、及び電子ストッパー330から得られた計測開始信号が、ある所定の時間内(例えば、数十から数百ns)に同時に入力された場合、データ収集システム305に計測開始信号を送信可能となる。
従来のETCCは、データ収集部350は、第2の検出器(シンチレーションカウンタ)からの信号をトリガーとしてデータ収集(サンプリング)を開始し、サンプリング中、VETO(不感時間)が設定される。第2の検出器が散乱ガンマ線以外のガンマ線を検出した場合にも同様に動作するため、高バックグラウンド環境では不感時間となる割合が多くなり、測定効率が低下する。これに対し、本実施形態では上述したように第2の検出器からの計測信号と第3の検出器からの計測信号を同時入力したときにサンプリングが開始され且つVETOが設定されるので、不要なVETOの設定がないので効率よく即発ガンマ線の計測を行うことができる。
ガンマ線測定器300のデータ収集部350が収集するデータは、粒子線治療システムの実施形態において説明したように、TPC310からは電離電子のエネルギーと反跳電子の軌跡の情報、シンチレーションカウンタ320からは散乱ガンマ線のエネルギーEγとシンチレーションカウンタ320への入射位置P2のデータ、電子ストッパー330からは反跳電子の残運動エネルギーKe2である。これらを用いて、ガンマ線測定器300に入射したガンマ線の方角やエネルギーについても情報を得ることができる。
また本実施形態のETCC300が、図1や図2に示すような粒子線治療システム10に組み込まれている場合には、データ収集部350が収集したデータは当該システム10のデータ解析部500に送られ、即発ガンマ線源の方角や位置、即発ガンマ線を発生させたビームの軌跡や飛程などを算出することができる。
即ち、前述したように、データ解析システム500は送信された測定データから反跳電子の軌跡、運動エネルギーKeなどを再構成し、式1に基づいてガンマ線源の方角を特定する。ここで、従来技術では、反跳電子の運動エネルギーKeはμ−PIC313にて収集された電離電子の電荷の総和から再構成されるが、本実施形態では電離電子の電荷の総和に加え、電子ストッパー330で得られた信号の強度に基づいて再構成される。
本実施形態のガンマ線測定器によれば、コンプトン散乱によって発生した反跳電子と、散乱ガンマ線が同時に観測された場合にのみ、第1の検出器(TPC)の計測が開始される。従って、高バックグラウンド環境下においても不要な不感時間の発生を抑制し、ガンマ線源の方角の効率のよい観測が可能となる。従って、本実施形態のガンマ線測定器は、粒子線治療システム等の高バックグラウンド環境下においてガンマ線計測に好適である。具体的には、ETCCをガンマ線源に近づけることが可能なため、粒子線の飛程の計測精度が改善する。また、粒子線の強度を維持したまま、飛程計測が可能となる。
さらに、本実施形態のガンマ線測定器は、反跳電子の運動エネルギーを第1及び第3の検出器で分けて計測するので、反跳電子の全運動エネルギーを計測するために反跳電子の軌跡全体をTPC内部におさめる必要がないため、ETCCの小型化が可能になる。
<ガンマ線測定器の変形例1>
図5に示す実施形態では、ガンマ線測定器300を粒子線治療システムに配置する場合に、ビームの進行方向をZ方向としたとき、TPC310において、Z方向と直交する方向(X軸に平行)に電場方向が形成されるように高圧電極とμPICとを配置する場合を示したが、Y軸又はZ軸に平行な電場が形成される配置としてもよい。この場合、電子ストッパー330は、電場方向と平行なTPC310の壁面に配置される。
図8にZ軸に平行に電場方向を形成した変形例を示す。この場合、電子ストッパー330は、Z軸と平行なTPC310の壁面に配置される。一般的に、コンプトン散乱は散乱角(反跳電子と散乱ガンマ線の軌跡が成す角度)の小さい前方散乱の確率が高い。従って、図8に示す配置では、より効率的に測定を行う事ができる。ただし、図8の配置は、低エネルギーのガンマ線を測定することは困難である。前方散乱は反跳電子に与えられる運動エネルギーが小さくなるために、電子ストッパーへ到達する前に反跳電子が停止してしまうためである。比較的低エネルギーのガンマ線を測定する場合は、反跳電子の運動エネルギーが増大する大散乱角のコンプトン散乱事象を捉える必要がある。その場合は、図5に示す配置が好適である。
<ガンマ線測定器の変形例2>
粒子治療システムの実施形態において、ガンマ線測定器(ETCC)300は被照射体200の周囲を取り囲むように複数台設置してもよいことを説明したが、被照射体200を取り囲んで配置するために、ETCC300の形状を立方体や直方体の形状ではなく、扇形やドーナツ形状にしてもよい。
図9に、扇形のETCCの一例を示す。このETCC300は、右側の図に示すように、ビームの進行方向から見た形状が扇形を有し、TPC310の、被照射体200に近い側の面とそれと対向する外側の面は、円弧状の曲面で、それら曲面をつなぐ側面が扇形になっている。これら2つの扇形の側面の一方に高電圧電極が配置され、他方にμPICが配置され、紙面と直交する方向に電場が形成されている。シンチレーションカウンタ320は、被照射体200から遠いほうの円弧状曲面の外側に配置される。また第3の検出器である電子ストッパー330は、電場方向と平行な2つの円弧状曲面に沿ってTPC310内に配置される。
この変形例のETCC300は、例えば、図示するように、被照射体200である患者の腹部から頭部を覆うように設置される。ビームの照射により被照射体200を構成する組織中の原子核から発生する即発ガンマ線は、概ね被照射体200に近い円弧状の曲面からETCC300に入射し、チェンバ内でコンプトン散乱することで検出される。ここで、本変形例のETCC300では、電場の方向が図5の実施形態とは異なり、粒子治療システムにおけるビームの進行方向と平行(Z軸の方向)である。従って電場方向に沿ってドリフトする電離電子は、図7の右図において左側の側面に配置されているμPIC313により補足され、そのエネルギーの総和である反跳電子のエネルギーと軌跡が計測される。散乱ガンマ線が、入射側と反対側に置かれたシンチレーションカウンタ320で計測されること、また反跳電子の残運動エネルギーが電子ストッパー330で計測されることは図5の実施形態と同様であり、またその動作も図7を用いて説明した動作と同様である。
なお図9では、一つのETCCを扇形に形成した例を示したが、例えば、患者の顔面等に相当する部分はETCCが配置されない窓部などを形成してもよいし、図10に示すように、角度の小さい扇形のETCCを、被照射体200の体の大きさ等を考慮して所定の数、間隔で配置してもよい。
10・・・粒子線治療システム(粒子線照射システム)
20・・・照射計画システム
100・・・陽子線照射装置(粒子線照射装置)
110・・・陽子線発生装置
111・・・イオン源
112・・・前段加速器
113・・・シンクロトロン
114・・・出射デフレクタ
120・・・回転式照射装置
121・・・照射野形成装置
122・・・走査電磁石
123・・・スポットポジションモニタ
130・・・陽子線輸送装置
200・・・被照射体
201・・・標的
202・・・スポット
300・・・ガンマ線測定器(ETCC)
310・・・タイムプロジェクションチェンバー(第1の検出器)
311・・・チェンバ
312・・・高圧電極
313・・・μ−PIC
315・・・高圧電源
320・・・シンチレーションカウンタ(第2の検出器)
321・・・無機結晶シンチレータ
322・・・マルチアノード型光電子増倍管
330・・・電子ストッパー(第3の検出器)
331・・・プラスチックシンチレータ
332・・・ライトガイド
333・・・光電子増倍管
340・・・計測制御回路
350・・・データ収集部
500・・・データ解析部
510・・・表示装置

Claims (15)

  1. 所定方向に電場が形成されたチェンバを備え、当該チェンバ内に入射したガンマ線にコンプトン散乱を発生させ、その際発生する反跳電子の軌跡と運動エネルギーとを計測する第1の検出器と、
    散乱したガンマ線のエネルギーと当該ガンマ線が入射した位置とを計測する第2の検出器と、
    前記第1の検出器の内部に配置され、前記反跳電子の残運動エネルギーを計測する第3の検出器と、
    前記第1、第2及び第3の検出器からデータを収集するデータ収集部と、
    を備えることを特徴とするガンマ線測定器。
  2. 請求項1に記載のガンマ線測定器であって、
    前記データ収集部は、前記第2の検出器と第3の検出器との同時計測が発生した場合に、第2の検出器及び第3の検出器からの信号を不感として、データ収集を開始することを特徴とするガンマ線測定器。
  3. 請求項1に記載のガンマ線測定器であって、
    前記第1の検出部は、前記チェンバの一端に配置され、高電圧が印加された高圧電極と、当該高圧電極に対向して配置され、前記反跳電子の移動に伴う電離電子のドリフトを検出するマイクロピクセルチェンバとを備え、前記高圧電極から前記マイクロピクセルチェンバに向かう電場が形成されており、
    前記第3の検出部は、前記電場の方向と平行な面に配置されていることを特徴とするガンマ線測定器。
  4. 請求項3に記載のガンマ線測定器であって、
    前記第3の検出器は、前記チェンバの、前記高圧電極及び前記マイクロピクセルチェンバが配置され2つの面を連結する1又は複数の側面に配置されていることを特徴とするガンマ線測定器。
  5. 請求項3に記載のガンマ線測定器であって、
    前記チェンバは、直方体形状、又は、前記高電圧電極及び前記マイクロピクセルチェンバが配置される2つの面を連結する2つの側面の形状が扇形であることを特徴とするガンマ線測定器。
  6. 請求項1に記載のガンマ線測定器であって、
    前記第3の検出器は、照射された電子を光に変換するシンチレータと、当該シンチレータが発する光を電気信号に変換する光電変換器と、を備えることを特徴とするガンマ線測定器。
  7. 請求項6に記載のガンマ線測定器であって、
    前記シンチレータは、プラスチックシンチレータであることを特徴とするガンマ線測定器。
  8. 請求項1に記載のガンマ線測定器であって、
    前記反跳電子の軌跡と運動エネルギー、及び、前記散乱ガンマ線のエネルギーと当該ガンマ線が入射した位置を用いて、前記ガンマ線の発生源の方角を算出するデータ解析部をさらに備え、前記データ解析部は、前記反跳電子の運動エネルギーとして、前記第1の検出器が計測した運動エネルギーと前記第3の検出器が計測した残運動エネルギーの和を用いることを特徴とするガンマ線測定器。
  9. 粒子線を生成する粒子線発生装置と、
    前記粒子線発生装置が生成した粒子線を加速し、被照射体に対し照射する粒子線照射装置と、
    前記被照射体内の原子核と粒子線との反応により生成するガンマ線を検出するガンマ線測定器と、
    前記ガンマ線測定器の測定結果を用いて前記被照射体内における粒子線の飛程を算出するデータ解析装置と、を備えた粒子線照射システムであって、
    前記ガンマ線測定器が請求項1または2に記載のガンマ線測定器であることを特徴とする粒子線照射システム。
  10. 請求項9に記載の粒子線照射システムであって、
    前記ガンマ線測定器は、前記被照射体に対する粒子線の飛来方向と直交する方向に少なくとも1つ配置されていることを特徴とする粒子線照射システム。
  11. 請求項10に記載の粒子線照射システムであって、
    前記ガンマ線測定器は、前記被照射体を囲む円又は楕円の一部に沿った円弧状であるか、円弧に沿って複数配置されていることを特徴とする粒子線照射システム。
  12. 請求項10に記載の粒子線照射システムであって、
    前記ガンマ線測定器は、前記粒子線の飛来方向の中心位置が、前記被照射体における前記粒子線の飛程の計画値に相当する位置と同じ、または近傍に配置されていることを特徴とする粒子線照射システム。
  13. 請求項9に記載の粒子線照射システムであって、
    前記データ解析装置は、算出した粒子線の飛程と計画値とのズレが予め設定した閾値を超えた場合に、前記粒子線発生装置に対し、粒子線の照射停止を指示することを特徴とする粒子線照射システム。
  14. 粒子線を被照射体に照射する際に、被照射体内で生成する即発ガンマ線の線源の方角を測定する方法であって、
    前記粒子線の照射方向と直交する方向の、前記被照射体に近傍に配置され、所定方向に電場が形成されたチェンバを備えた第1の検出器により、当該チェンバ内に入射したガンマ線にコンプトン散乱を発生させ、その際発生する反跳電子の軌跡と運動エネルギーとを計測し、
    第1の検出器に近接して配置された第2の検出器により、散乱したガンマ線のエネルギーと前記チェンバにおける入射位置とを計測し、
    前記第1の検出器の内部に配置された第3の検出器により、前記反跳電子の残運動エネルギーを計測し、
    その際、前記第2の検出器におけるガンマ線の検出と前記第3の検出器における反跳電子の検出とが同時に生起したときに各検出器からのデータ収集を行うとともにデータ収集中の前記第2及び第3の検出器における検出を不感とし、
    データ収集により得られた、前記第1の検出器が計測した反跳電子の軌跡と運動エネルギー、前記第2の検出器が計測した散乱ガンマ線のエネルギーと前記チェンバにおける入射位置、及び前記第3の検出器が計測した前記反跳電子の残運動エネルギーとを用いて即発ガンマ線の線源の方角を算出することを特徴とする測定方法。
  15. 請求項14に記載の測定方法であって、前記即発ガンマ線の線源の位置を、式(1)により算出することを特徴とする測定方法。
    Figure 2021043081
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