JP2021042170A - 有機溶媒可溶性リグニンの製造方法 - Google Patents

有機溶媒可溶性リグニンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特定の性質を有する有機溶媒可溶性リグニンの製造方法を提供する。【解決手段】有機溶媒可溶性リグニンの製造方法は、草本系バイオマスを希硫酸蒸解法により前処理する前処理工程と、前記前処理工程で得られた前処理済み草本系バイオマスを酵素により糖化処理する糖化工程と、前記糖化工程で得られた糖化処理生成物を固液分離して糖化残渣を得る固液分離工程と、前記糖化残渣に水及び有機溶媒の混合溶媒を添加して有機溶媒可溶性リグニンを抽出する抽出工程と、を含み、前記抽出工程において、得られる有機溶媒可溶性リグニンのβ−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量がそれぞれ所定の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する。【選択図】なし

Description

本発明は、有機溶媒可溶性リグニンの製造方法に関する。
近年、地球温暖化対策や、廃棄物の有効活用の観点から、植物資源を原料とするバイオマスの利用が注目されている。一般に、バイオマスからエタノール等の化合物を製造するための原料としては、サトウキビ等の糖質やトウモロコシ等のデンプン質が多く用いられている。しかしながら、これらの原料はもともと食料又は飼料として用いられており、長期的に工業用利用資源として活用することは、食料又は飼料用途との競合を引き起こし、原料価格の高騰を招く危険性がある。
従って、非食用バイオマスをエネルギー資源として活用する技術開発が進められている。非食用バイオマスとしては、地球上に最も多く存在するセルロースが挙げられるが、その大部分は芳香族ポリマーのリグニンやヘミセルロースとの複合体であるリグノセルロースとして存在する。
リグノセルロース系バイオマスを原料としたエタノール製造では、バイオマス原料を熱化学的に前処理する前処理工程、前処理工程後のバイオマスを酵素処理し糖化液を生成する糖化工程、糖化工程で得られた糖化液に微生物培養液を添加してエタノール発酵を行なう発酵工程、及び、発酵工程で得られた発酵液から蒸留等によってエタノールを分離する精製工程からなる。このエタノール製造において、リグニンが固体として残存するため、大量の発酵残渣が発生するという問題がある。この発酵残渣は、一般に併設される工場のボイラーやメタン発酵等により処理されており、有効利用されていないのが現状である。
非食用バイオマスを原料とする製紙プロセスにおいても同様に残渣物としてリグニン主体の生成物(黒液、リグニンスルホン酸塩)が発生し、長年に亘り有効利用する技術が開発されている。しかしながら、バイオマスを化学的に分解する工程において、リグニンがスルホ化又は塩化の影響を受けているため、利用しづらく、その多くはボイラー熱源としての燃料利用にとどまっている。
一方で、リグニンを分解すると、フェノール誘導体等が得られることから、樹脂原料、コンポジット材料、界面活性剤等の化学工業製品の原料として利用することができる。そのため、リグニンの分解物を効率よく製造する方法の開発が望まれている。
特許文献1には、水とアルコールのモル比が1/1〜20/1である混合溶媒を用いてリグニン含有バイオマスを処理することでリグニン分解物を製造する方法が開示されている。特許文献2には、炭化水素及びアルコールの混合溶媒中において酸触媒存在下でリグニン含有バイオマスを加熱することで低分子リグニンを製造する方法が開示されている。特許文献3には、リグニン含有バイオマスを水熱処理及び粉砕処理を組み合わせて前処理し、該前処理したバイオマスを酵素糖化した際に発生する酵素糖化残渣をさらにオートクレーブにより水熱処理を行い、その処理物の固液分離から固形物を得た後に、該固形物を有機溶媒に溶解して、リグニン分解物を製造する方法が開示されている。特許文献4には、リグニン含有バイオマスを酵素により糖化処理して糖化残渣を得て、該糖化残渣を20℃の水に対する溶解度が90g/L以上の有機溶媒と水とを含む混合溶媒中で加熱処理して、リグニン分解物を含む加熱処理液を得た後に、該加熱処理液を固液分離して不溶分を除去し、リグニン分解物を製造する方法が開示されている。
特開2014−015439号公報 特開2016−050200号公報 特開2015−157792号公報 特開2013−241391号公報
バイオマス原料中に含まれるリグニンは、複雑な構造を有し、リグニン分解物を製造する方法における各種条件によってその特性がランダムに変化する。そのため、特許文献1〜4等に記載の方法では、特定の性質を有するリグニンを得ることができない。また、特定の性質を有するリグニンを得るために、その製造方法における各種条件を制御することはこれまで行われていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、特定の性質を有する有機溶媒可溶性リグニンの製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 草本系バイオマスを希硫酸蒸解法により前処理する前処理工程と、
前記前処理工程で得られた前処理済み草本系バイオマスを酵素により糖化処理する糖化工程と、
前記糖化工程で得られた糖化処理生成物を固液分離して糖化残渣を得る固液分離工程と、
前記糖化残渣に水及び有機溶媒の混合溶媒を添加して有機溶媒可溶性リグニンを抽出する抽出工程と、
を含み、
前記抽出工程において、得られる有機溶媒可溶性リグニンのβ−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量がそれぞれ所定の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(2) 前記抽出工程において、前記β−O−4結合の含有量としてチオアシドリシス法により定量された前記有機溶媒可溶性リグニンのチオアシドリシスモノマーの含有量が175μmol/g以上270μmol/g以下の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、(1)に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(3) 前記抽出工程において、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により定量された前記有機溶媒可溶性リグニンの重量平均分子量が3000以上5100以下の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、(1)に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(4) 前記抽出工程において、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により定量された前記有機溶媒可溶性リグニンの分子量分布が1.0以上3.0以下の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、(1)に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(5) 前記抽出工程において、前記水酸基の含有量として水酸基をリン化してリン31核磁気共鳴分光法により定量された前記有機溶媒可溶性リグニンのフェノール性水酸基の含有量が7mmol/g以上10mmol/g以下の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、(1)に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(6) 前記抽出工程において、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で0/100超40/60以下である、(1)〜(5)のいずれか一つに記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(7) 前記抽出工程において、前記有機溶媒可溶性リグニンのβ−O−4結合の含有量が極大となるように、有機溶媒に対する水の混合比を質量比で15/85以上5/95以下の範囲に制御する、(6)に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(8) 前記抽出工程において、前記有機溶媒可溶性リグニンの重量平均分子量が極大となるように、有機溶媒に対する水の混合比を質量比で35/65以上25/75以下の範囲に制御する、(6)に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(9) 前記抽出工程において、前記有機溶媒可溶性リグニンの分子量分布を減少させるために有機溶媒に対する水の混合比が0/100に近づくように制御し、一方、前記有機溶媒可溶性リグニンの分子量分布を増加させるために有機溶媒に対する水の混合比が40/60に近づくように制御する、(6)に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(10) 前記抽出工程において、前記有機溶媒可溶性リグニンの水酸基の含有量が極大となるように、有機溶媒に対する水の混合比を質量比で35/65以上25/75以下の範囲に制御する、(6)に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
(11) 前記有機溶媒がアセトン、メタノール、エタノール、又はテトラヒドロフランである、(1)〜(10)のいずれか一つに記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
上記態様の製造方法によれば、特定の性質を有する有機溶媒可溶性リグニンの製造方法を提供することができる。
実施例1におけるサトウキビバガスを原料として有機溶媒に対する水の混合比が異なる条件下で抽出して得られた有機溶媒可溶性リグニンについてチオアシドリシス法により定量されたチオアシドリシスモノマーの含有量を示すグラフである。 実施例1におけるサトウキビバガスを原料として有機溶媒に対する水の混合比が異なる条件下で抽出して得られた有機溶媒可溶性リグニンをゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定して得られたクロマトグラムである。 図2Aのクロマトグラムのピークのうち、重量平均分子量が最大のピークの重量平均分子量の測定値を示すグラフである。 実施例1におけるサトウキビバガスを原料として有機溶媒に対する水の混合比が異なる条件下で抽出して得られた有機溶媒可溶性リグニンの水酸基をリン化して31P−NMR法により定量されたフェノール性水酸基の含有量を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る有機溶媒可溶性リグニンの製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」と略記する場合がある)について、詳細に説明する。なお、本明細書及び請求の範囲において、各種用語の意味を以下のとおり定義する。
<草本系バイオマス>
本実施形態の製造方法では、原料として草本系バイオマスを用いる。また草本系バイオマスの代わりに、草本系バイオマス中のセルロース及びヘミセルロースからバイオエタノール、バイオブタノール又はバイオ化学品等を製造する過程で発生した残渣を用いてもよい。原料として用いられる草本系バイオマスは、粉砕されたものを用いることができ、また、ブロック、チップ、粉末等、いずれの形状でもよい。なお、以降において草本系バイオマスを単に「バイオマス」と称する場合がある。
草本系バイオマスとしては、タケ、パームヤシの樹幹及び空房、パームヤシ果実の繊維及び種子;バガス(さとうきび及び高バイオマス量さとうきびの搾り滓)、稲わら、麦わら、トウモロコシの穂軸、茎葉及び残渣(コーンストーバー、コーンコブ、コーンハル)、ソルガム(スイートソルガムを含む)残渣、スイッチグラス、エリアンサス、ネピアグラス等のイネ科植物から得られるもの;ヤトロファ種皮・殻、カシュー殻、エネルギー作物等の植物油搾取過程で発生する残渣物等が挙げられる。中でも、草本系バイオマスとしては、入手容易性や本実施形態の製造方法との適合性の観点から、イネ科植物から得られるものが好ましく、バガス又はネピアグラスがより好ましい。
<セルロース及びヘミセルロース>
本明細書において、「セルロース」には、6つの炭素を構成単位とする六炭糖が含まれる。よって、セルロースは加水分解を受けると、炭素6つからなる六炭糖の単糖(グルコース等)やその単糖が複数個連結された六炭糖のオリゴ糖(例えば、セロビオース等)を生ずる。
「ヘミセルロース」には、キシロース等の5つの炭素を構成単位とする五炭糖(C5糖)やマンノース、アラビノース、4−O−メチルグルクロン酸等の6つの炭素を構成単位とする六炭糖(C6糖)から構成されるグルコマンナンやグルクロノキシラン等の複合多糖等が含まれる。よって、ヘミセルロースは加水分解を受けると、炭素5つからなる五炭糖の単糖やその単糖が複数個連結された五炭糖のオリゴ糖、炭素6つからなる六炭糖の単糖やその単糖が複数個連結された六炭糖のオリゴ糖、五炭糖の単糖と六炭糖の単糖が複数個連結されたオリゴ糖を生ずる。
一般に、ヘミセルロース又はセルロースから生ずる単糖又はオリゴ糖の構成比率や生成量は、前処理方法や原料として用いた草本系バイオマスの種類によって異なる。
<リグニン>
一般に、リグニンは、草本系バイオマスの3大主成分の一つの天然高分子である。草本系バイオマスの中でもバガスには、5質量%以上30質量%以下のリグニンが含まれる。
リグニンは、基本骨格が芳香核(ベンゼン核)で構成されており、その構造から、G核、S核及びH核に分類される。G核とは、フェノール骨格部分のオルト位に1つのメトキシ基(−OCH)を有するものであり、S核とは、オルト位に2つのメトキシ基を有するものであり、H核とは、オルト位にメトキシ基を有していないものである。また、バガス等の草本系バイオマス中のリグニンは基本骨格として、H核、G核及びS核の全てを含む。なお、木本系バイオマス由来のリグニンのうち、針葉樹由来のリグニンは、G核を基本骨格とし、広葉樹由来のリグニンは、G核及びS核を基本骨格とする。
リグニンには多様な分子間の結合様式があるが、その中で最も多く存在するのがβ−O−4結合であり、リグニン分子内の全結合様式の50モル%以上70モル%以下程度を占めるエーテル結合である。β−O−4結合は、以下の式(II)で表される結合様式であり、リグニンの直鎖構造を形成している。植物細胞におけるリグニンの重合過程では、モノマーの側鎖β位と隣接するモノマーの芳香核4位の間が連続的に連結して高分子化する。
Figure 2021042170
本明細書において、「水可溶性リグニン」とは、水に対して可溶性であるリグニンであり、具体的には、後述する糖化工程後の糖化生成物、発酵工程後の発酵生成物及び精製工程後の廃液を固液分離した際に、液体成分中に含まれるリグニンを示す。水可溶性リグニンは、数平均分子量が約1000以下程度と比較的小さいことから、水に対して可溶性であるものと推察される。
「水不溶性リグニン」とは、水に対して不溶性であるリグニンであり、具体的には、後述する糖化工程後の糖化生成物、発酵工程後の発酵生成物及び精製工程後の廃液を固液分離した際に、固体成分(すなわち、糖化残渣、発酵残渣及び固形残渣)中に含まれるリグニンを示す。水不溶性リグニンは、数平均分子量が1000超10000以下程度と比較的大きいことから、水に対して不溶性であるものと推察される。
なお、ここでいう「糖化生成物」には液体成分である糖化液と、固体成分である糖化残渣とが含まれ、糖化液には水可溶性リグニンが含まれ、糖化残渣には水不溶性リグニンが含まれる。「発酵生成物」には液体成分である発酵液と、固体成分である発酵残渣が含まれ、発酵液には水可溶性リグニンが含まれ、発酵残渣には水不溶性リグニンが含まれる。廃液には、液体成分である液体残渣と固体成分である固形残渣が含まれ、液体残渣には水可溶性リグニンが含まれ、固形残渣には水不溶性リグニンが含まれる。
「有機溶媒可溶性リグニン」とは、有機溶媒に対して可溶性であるリグニンであり、具体的には、後述する抽出工程において、水不溶性リグニンを有機溶媒に添加して、混合し、攪拌した後に、固液分離した際に、液体成分中に含まれるリグニンを示す。有機溶媒可溶性リグニンは、数平均分子量が1000超3000以下程度であることから、水に対して不溶性である一方で、有機溶媒に対して可溶性であるものと推察される。
「有機溶媒不溶性リグニン」とは、後述する抽出工程において、水不溶性リグニンを有機溶媒に添加して、混合し、攪拌した後に、固液分離した際に、固体成分中に含まれるリグニンを示す。有機溶媒不溶性リグニンは、数平均分子量が3000超10000以下と比較的大きいことから、水及び有機溶媒に対して不溶性であるものと推察される。
なお、各リグニンの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
<糖化酵素>
本明細書において、「糖化酵素」としては、セルロースを分解するセルラーゼ、ヘミセルロースを分解するヘミセルラーゼ、デンプンを分解するアミラーゼ等が挙げられる。
前記セルラーゼとしては、セルロースをグルコース等の単糖又はオリゴ糖に分解するものであればよく、例えば、エンドグルカナーゼ(endoglucanase;EG)、セロビオハイドロラーゼ(cellobiohydrolase;CBH)、及びβ−グルコシダーゼ(β−glucosidase;BGL)の各活性の少なくとも1つの活性を有するものが挙げられ、これらの各活性を有する酵素混合物であることが、酵素活性の観点から好ましい。
前記ヘミセルラーゼとしては、ヘミセルロースをキシロース等の単糖又はオリゴ糖に分解するものであればよく、例えば、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、マンナナーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、及びアラビノフラノシダーゼの各活性の少なくとも1つの活性を有するものが挙げられ、これらの各活性を有する酵素混合物であることが、酵素活性の観点から好ましい。
これらセルラーゼ及びヘミセルラーゼ等の糖化酵素の由来は限定されることはなく、例えば、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ペニシリウム(Penicillium)属、アエロモナス(Aeromonus)属、イルペックス(Irpex)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、フミコーラ(Humicola)属等の微生物由来のセルラーゼ及びヘミセルラーゼ等の糖化酵素を用いることができる。
<有機溶媒可溶性リグニンの製造方法>
本実施形態の製造方法は、以下の工程を含む。
草本系バイオマスを希硫酸蒸解法により前処理する前処理工程;
前記前処理工程で得られた前処理済み草本系バイオマスを酵素により糖化処理する糖化工程;
前記糖化工程で得られた糖化処理生成物を固液分離して糖化残渣を得る固液分離工程;
前記糖化残渣に有機溶媒を添加して有機溶媒可溶性リグニンを抽出する抽出工程
本実施形態の製造方法では、抽出工程において、得られる有機溶媒可溶性リグニンのβ−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量がそれぞれ所定の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する。
発明者らは、後述する実施例に示すように、抽出工程における有機溶媒に対する水の混合比と、β−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量との間に相関関係があることを見出し、これら特性が所定の範囲内である有機溶媒可溶性リグニンを得るために、抽出工程における有機溶媒に対する水の混合比を制御することで、本発明を完成するに至った。
本実施形態の製造方法において得られる有機溶媒可溶性リグニンのβ−O−4結合の含有量は、チオアシドリシス法により定量された有機溶媒可溶性リグニンのチオアシドリシスモノマーの含有量で表すことができる。本実施形態の製造方法によれば、このチオアシドリシスモノマーの含有量が175μmol/g以上270μmol/g以下、好ましくは220μmol/g以上270μmol/g以下、より好ましくは245μmol/g以上270μmol/g以下の範囲である有機溶媒可溶性リグニンを製造することができる。
チオアシドリシスモノマーの含有量は、チオアシドリシス法により定量することができ、具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
本実施形態の製造方法では、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により定量された有機溶媒可溶性リグニンの重量平均分子量が3000以上5100以下の範囲である有機溶媒可溶性リグニンを製造することができる。ここで数値範囲が規定されている重量平均分子量は、後述する実施例に示すように、有機溶媒可溶性リグニンをGPC法により測定して得られたクロマトグラムのピークのうち、重量平均分子量が最大であるピークの重量平均分子量の測定値である。
重量平均分子量は、GPC法により定量することができ、具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
本実施形態の製造方法では、GPC法により定量された有機溶媒可溶性リグニンの分子量分布が1.0以上3.0以下の範囲である有機溶媒可溶性リグニンを製造することができる。ここで数値範囲が規定されている分子量分布は、後述する実施例に示すように、有機溶媒可溶性リグニンをGPC法により測定して得られたクロマトグラムのピークのうち、重量平均分子量が最大であるピークの重量平均分子量Mwの測定値を数平均分子量Mnの測定値で除した値である。
分子量分布は、GPC法により数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを測定し、得られた重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除することで算出することができる。具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて算出することができる。
有機溶媒可溶性リグニンが有する水酸基としては、例えば、脂肪族炭化水素基に結合している水酸基、芳香族炭化水素基に結合している水酸基(フェノール性水酸基等)、カルボキシ基の末端のOH基等、各種水酸基が挙げられるが、中でも、得られた有機溶媒可溶性リグニンに各種修飾を施す観点から、フェノール性水酸基を多く有することが好ましい。フェノール性水酸基には、シリンギル及びグアイアシルのベンゼン環に結合している水酸基も包含される。
本実施形態の製造方法では、水酸基をリン化してリン31核磁気共鳴分光法(31P−NMR法)により定量された有機溶媒可溶性リグニンのフェノール性水酸基の含有量が7mmol/g以上10mmol/g以下の範囲である有機溶媒可溶性リグニンを製造することができる。
本実施形態の製造方法によれば、β−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量が上記範囲内である有機溶媒可溶性リグニンが得られる。
次いで、本実施形態の製造方法の各工程について、以下に詳細を説明する。
[抽出工程]
抽出工程では、固液分離工程で得られた糖化残渣に有機溶媒を添加して、有機溶媒可溶性リグニンを抽出する。
抽出工程において、糖化残渣中には、β−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量が異なるリグニンが混在している。よって、抽出条件を制御することで、所望の特性を有する有機溶媒可溶性リグニンを選択して抽出することができる。
抽出条件としては、温度、時間、溶媒の組成等のいくつかのパラメータが存在するが、中でも、有機溶媒可溶性リグニンの抽出率に大きく関与することから、抽出に用いられる溶媒の組成が重要なパラメータとなり得る。
抽出工程に用いられる溶媒は、有機溶媒と水との混合溶媒である。後述する実施例に示すように、得られる有機溶媒可溶性リグニンのβ−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量と有機溶媒に対する水の混合比との間には、相関関係がある。よって、有機溶媒可溶性リグニンのβ−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量をそれぞれ上記範囲内とするために、有機溶媒に対する水の混合比を制御する。
また、有機溶媒に対する水の混合比が大きくなる、すなわち、混合溶媒中の水の含有量が増加すると、後述する実施例に示すように、β−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量が増加する傾向がある。一方で、有機溶媒に対する水の混合比が大きくなりすぎる、すなわち、混合溶媒中の水の含有量が50質量%程度まで増加すると、混合溶媒中の有機溶媒の含有量が減少することに起因して、有機溶媒可溶性リグニンの抽出率が低下し、さらに、後述する実施例に示すように、β−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量はそれぞれ極大値を超えて減少する傾向がある。よって、β−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量がそれぞれ極大値となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する。
β−O−4結合の含有量を所望の範囲内とする場合に、例えば、チオアシドリシス法により定量された有機溶媒可溶性リグニンのチオアシドリシスモノマーの含有量を増加させて極大値となるようにするためには、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で15/85以上5/95以下(好ましくは、10/90)の範囲内となるように制御し、一方、前記チオアシドリシスモノマーの含有量を減少させるためには、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で40/60又は0/100に近づくように制御する。
重量平均分子量を所望の範囲内とする場合に、例えば、有機溶媒可溶性リグニンの重量平均分子量を増加させて極大値となるようにするためには、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で35/65以上25/75以下(好ましくは、30/70)の範囲内となるように制御し、一方、有機溶媒可溶性リグニンの重量平均分子量を減少させるためには、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で0/100に近づくように制御する。
分子量分布を所望の範囲内とする場合に、例えば、有機溶媒可溶性リグニンの分子量分布を減少させるためには、有機溶媒に対する水の混合比が小さくなるように、すなわち、混合溶媒中の水の含有量が少なくなるように制御し、一方、有機溶媒可溶性リグニンの分子量分布を増加させるためには、有機溶媒に対する水の混合比が大きくなるように、すなわち、混合溶媒中の水の含有量が多くなるように制御する。
水酸基の含有量を所望の範囲内とする場合に、例えば、水酸基をリン化して31P−NMR法により定量された有機溶媒可溶性リグニンのフェノール性水酸基の含有量を増加させて極大値となるようにするためには、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で35/65以上25/75以下(好ましくは、30/70)の範囲内となるように制御し、一方、前記フェノール性水酸基の含有量を減少させるためには、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で15/85以上5/95以下(好ましくは、10/90)の範囲内となるように制御する。
これらのことから、前記チオアシドリシスモノマーの含有量が175μmol/g以上270μmol/g以下、前記重量平均分子量が3000以上5100以下、前記分子量分布が1.0以上3.0以下であり、且つ、前記フェノール性水酸基の含有量が7mmol/g以上10mol/g以下である有機溶媒可溶性リグニンを製造するためには、有機溶媒に対する水の混合比は、質量比で0/100超40/60以下が好ましく、10/90以上40/60以下がより好ましく、10/90以上30/70以下がさらに好ましい。割合が上記範囲内であることで、有機溶媒可溶性リグニンをより効率よく抽出することができ、且つ、β−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量が上記範囲内である有機溶媒可溶性リグニンを製造することができる。
また、有機溶媒と水との混合溶媒を用いる場合に、該水には、糖化残渣に含まれる水分も含まれる。例えば、含水率が60質量%である糖化残渣1質量部に対して、濃度が90質量%である有機溶媒(好ましくは、アセトン又はエタノール)4質量部以上5質量部以下程度を添加することで、有機溶媒に対する水の割合である上記範囲内の条件下で抽出を行なうことができる。
有機溶媒としては、水に対する親和性(親水性)を有するものが好ましい。また、有機溶媒可溶性リグニンの抽出率を向上させる観点から、20℃の水に対する溶解度が90g/L以が好ましく、100g/L以上がより好ましく、120g/L以上がさらに好ましい。
また、有機溶媒は、有機溶媒可溶性リグニンの抽出率を向上させる観点から、SP値が8以上23以下が好ましく、8以上16以下がより好ましく、9以上15以下がさらに好ましい。
なお、ここで、「SP値」とは、溶解性パラメータ(Solubility Parameter;SP値)を意味し、Fedorsの方法(参考文献1:「Fedors R. F., “A Method for Estimating Both the Solubility Parameters and Molar Volumes of liquids”, Polymer Engineering and Science, Vol. 14, No. 2, p147-154, 1974.」参照)により、下記のFedorsの式に基づいて求められた値δ[(cal/cm1/2]であり、化合物の化学構造の原子または原子団の蒸発エネルギーの総和(Δei)とモル体積の総和(Δvi)の比の平方根から求められる。
Fedorsの式: δ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
このような有機溶媒として具体的には、例えば、アルコール類、ニトリル類、エーテル類、ケトン類が挙げられる。これらの有機溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、ジエチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
中でも、有機溶媒としては、有機溶媒可溶性リグニンの抽出率が優れることから、メタノール、エタノール、THF、又はアセトンが好ましく、アセトンがより好ましい。これらの有機溶媒は、グルコース、キシロース等のバイオマスの糖化物の溶解度が低く、さらにセルロースやヘミセルロース等も溶解しないことから、リグニンを効率的に抽出することができる。
抽出方法としては、例えば、糖化残渣と有機溶媒と水とを混合及び攪拌して、有機溶媒可溶性リグニンを有機溶媒に溶解させる。抽出工程は、例えば、ロートセル型抽出装置等の公知の抽出装置を用いて行なうことができる。
有機溶媒と水との混合溶媒の添加量は、糖化残渣の乾燥質量に対して質量比で2倍以上20倍以下とすることができ、5倍以上15倍以下とすることができ、これに限定されない。
抽出時間(糖化残渣と有機溶媒との混合及び攪拌を行う時間)は、例えば、30分以上240分以下とすることができ、これに限定されない。また、抽出工程において有機溶媒可溶性リグニンが有機溶媒に溶解し、抽出液が得られるまでの温度条件は、使用する有機溶媒の沸点以下の温和な温度条件下で行うことができ、例えば、室温(具体的には、15℃以上35℃以下程度)条件下で行うことができる。攪拌速度等のその他の条件は、糖化残渣及び有機溶媒の混合量に応じて、適宜設定することができる。
次いで、攪拌後の溶液を固液分離することで、有機溶媒可溶性リグニンを含む抽出液を得ることができる。固液分離する方法としては、後述する「固液分離工程」で例示された方法と同様の方法が挙げられる。抽出液に含まれる有機溶媒可溶性リグニンは、蒸留塔等を用いる等の公知の方法で有機溶媒を除去することで粉末状の有機溶媒可溶性リグニンとして得られる。
このとき、除去された有機溶媒は、コンデンサ等の凝縮器を用いて冷却濃縮して回収し、再利用することが好ましい。
[前処理工程]
前処理工程では、草本系バイオマスを希硫酸蒸解法により前処理する。
希硫酸蒸解法は、希硫酸存在下で加熱及び加圧を行なう方法である。使用する希硫酸は、例えば、草本系バイオマスを含む前処理溶液のpHが0.8以上6.7以下程度となるように添加することができる。
前処理工程を行なうことで、草本系バイオマスを適度に分解することができ、続く糖化工程において、糖化反応を効率的に行うことができる。
前処理の強度、すなわち、リグニン、セルロース及びヘミセルロースを分解する強度は、温度、時間及びpHの3つのパラメータによって制御することができる。このことから、処理強度を、上記3つのパラメータを変数とした以下に示す式(I)で表した示CSI(Combined Severity Index)で評価することができる。なお、CSIの数値が大きいほど、バイオマスの分解強度が高い傾向があり、CSIの数値が小さいほど、バイオマスの分解強度が低い傾向がある。式(I)から算出された数値であるCSIが所定の範囲内となるように前処理条件を設定することで、目的の分解強度を達成することができる。
Figure 2021042170
(式(I)中、Xは時間、Yは温度、ZはpHである。)
バイオマスの分解強度が高い、すなわち、CSIの数値が大きいほど、有機溶媒可溶性リグニンが多く得られる傾向がある。一方で、CSIの数値が大きすぎると、C5糖及びC6糖の酵素糖化率が低下する傾向がある。
CSIは1.0以上3.0以下が好ましく、1.2以上2.8以下がより好ましく、1.5以上2.7以下がさらに好ましく、1.5以上2.5以下が特に好ましい。CSIが上記下限値以上であることで、有機溶媒可溶性リグニンの生成量をより向上させ、且つ、C5糖及びC6糖の酵素糖化率をより向上させることができる。一方で、CSIが上記上限値以下であることで、キシロースの過分解によるフルフラールの生成をより効果的に抑制することができ、C5糖及びC6糖の酵素糖化率の低下をより効果的に抑制することができる。
前処理工程において、上記CSIの範囲となる具体的な処理条件としては、pHは0.8以上1.5未満とすることができ、0.8以上1.4以下とすることができ、0.8以上1.2以下とすることができる。
処理温度は、例えば100℃以上250℃以下とすることができ、120℃以上200℃以下とすることができ、150℃以上180℃以下とすることができる。
処理時間は例えば3分以上150分以下とすることができ、5分以上120分以下とすることができ、7分以上90分以下とすることができ、8分以上40分以下とすることができる。
希硫酸蒸解法に用いられる反応容器は蒸気供給式のものであれば特に限定はないが、耐酸性を有するオートクレーブのような加熱圧力装置、又は耐酸性を有する加熱圧力容器を有し、さらにスクリューフィーダーが一体となり連続的に処理を行なえる装置等に入れて処理する形態が考えられる。
前処理工程において、希硫酸蒸解法による処理の前後に、ミル等を用いてバイオマスを粉砕させてもよい。
[糖化工程]
糖化工程では、前処理工程で得られた前処理済み草本系バイオマスに含まれるセルロース及びヘミセルロースを基質として、酵素を用いて、糖化反応を行う。
ここでいう酵素とは、主に糖化酵素であり、上記「糖化酵素」において例示されたものを用いることができる。
糖化温度は、45℃以上70℃以下が好ましく、45℃以上55℃以下がより好ましく、50℃が特に好ましい。また、糖化時間は12時間以上120時間以下が好ましく、24時間以上96時間以下がより好ましく、24時間以上72時間以下がさらに好ましい。
糖化工程は、特別な限定はなく、公知の糖化装置を用いて行なうことができる。具体的には、撹拌型、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型等の糖化装置が挙げられる。
また、糖化装置は、装置内の温度を一定に保つために、装置の外側に温水循環式のジャケット等の温度調節装置を備えてもよい。
[固液分離工程]
固液分離工程では、糖化工程で得られた糖化処理生成物を固液分離して、液体分画である糖化液と固体分画である糖化残渣とに分けることで、糖化残渣を得る。この糖化残渣には、水不溶性リグニンが含まれる。
固液分離する方法としては、固形分と液体分を分けられる公知の方法を用いることができ、例えば、フィルター、振動篩等によりろ過する方法、遠心分離法、スクリュープレスを用いた分離法等が挙げられ、これらに限定されない。
固液分離工程で得られた糖化液は、糖化液から不純物を取り除き精製して、精糖蜜として販売してもよく、又は、糖化液を微生物発酵により生成される有用成分を製造するために用いてもよい。該有用成分の詳細については、後述する。
[その他の工程]
本実施形態の製造方法は、上記工程に加えて、更に、その他の工程を含んでもよい。
本実施形態の製造方法は、糖化工程後に、発酵工程を更に含んでもよい。
発酵工程では、糖化工程で得られた糖化液に微生物を添加し、攪拌ながら発酵反応を行う。発酵反応において、微生物が糖化液中のグルコースやキシロース等の単糖やオリゴ糖を摂取することで、有機溶媒可溶性リグニンとは異なる有用成分が生成される。
また、本実施形態の製造方法は、糖化工程後であって、固液分離工程前に、発酵工程を更に含んでもよい。この場合、発酵工程では、糖化工程で得られた糖化生成物(糖化液及び糖化残渣)に微生物を添加し、攪拌ながら発酵反応を行う。また、固液分離工程では、発酵工程で得られた発酵生成物を固液分離して発酵残渣を得る。さらに、抽出工程では、発酵残渣に有機溶媒を添加して有機溶媒可溶性リグニンを抽出する。
リグニンの物性は発酵工程や後述する精製工程を経てもほとんど影響を受けず、リグニンは難分解性を示す。そのため、発酵工程や後述する精製工程を経ても、得られる有機溶媒可溶性リグニンの物性や収量はほとんど変化せず、上記抽出工程において、特定の性質を有する有機溶媒可溶性リグニンを選択的に抽出するできるものと推察される。よって、発酵工程後に得られる発酵生成物から分離された発酵残渣や精製工程後に得られる廃液から分離された固形残渣を、有機溶媒可溶性リグニンの抽出対象原料として上記糖化残渣と同様に用いることができる。
発酵工程で用いられる微生物としては、目的の有機溶媒可溶性リグニンとは異なる有用成分を生成できるものであれば、特別な限定はない。具体的には、酵母や細菌等が挙げられ、遺伝子組換え微生物も好ましく用いられる。遺伝子組換え微生物とは、アルコール等の目的の有機溶媒可溶性リグニンとは異なる有用成分への変換に必要な酵素遺伝子を有していない微生物に、遺伝子工学技術によりこれら遺伝子を導入し、アルコール等の目的の有機溶媒可溶性リグニンとは異なる有用成分の生成を可能にしたものである。遺伝子組換え微生物としては、例えば、アルコール発酵性を有する遺伝子組換え大腸菌等が挙げられる。中でも、本実施形態の製造方法で用いられる微生物としては、酵母が好ましい。
また、微生物は微生物を含む培養液をそのまま使用してもよく、又は、微生物を含む培養液を遠心分離により濃縮したもの、乾燥状態のもの等を適宜使用してよい。
使用する微生物の量は、微生物の増殖速度、発酵装置の大きさ、及び発酵に用いる糖化液の量等を元に算出すればよい。
中でも、発酵工程では、微生物として酵母を用いて、糖化生成物を発酵して、有機溶媒可溶性リグニンとは異なる有用成分としてエタノール等のアルコールを生成させることが好ましい。
発酵工程は従来技術に基づき適宜行えばよく、例えば、発酵温度は、25℃以上50℃以下が好ましく、28℃以上35℃以下がより好ましく、32℃が特に好ましい。また、発酵時間は、24時間以上120時間以下が好ましく、24時間以上96時間以下がより好ましく、24時間以上72時間以下がさらに好ましい。
発酵工程は、特別な限定はなく、公知の発酵装置を用いて行なうことができる。具体的には、撹拌型、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型等の発酵装置が挙げられ、これらに限定されない。
また、発酵装置は装置内の温度を一定に保つために、装置の外側に温水循環式のジャケット等の温度調節装置を備えていてもよい。
本実施形態の製造方法は、発酵工程後に、精製工程を更に含んでもよい。
精製工程では、発酵工程で得られた発酵生成物から有機溶媒可溶性リグニンとは異なる有用成分を取り出す。
また、本実施形態の製造方法は、発酵工程後であって、固液分離工程前に、精製工程を更に含んでもよい。この場合、精製工程では、発酵工程で得られた発酵生成物から有機溶媒可溶性リグニンとは異なる有用成分を取り出す。これにより、有機溶媒可溶性リグニンとは異なる有用成分が取り出された後に廃液が排出される。該廃液には、水可溶性リグニン及び水不溶性リグニンが含まれる。また、固液分離工程では、精製工程で得られた廃液を固液分離して廃液中の固形残渣を得る。さらに、抽出工程では、固形残渣に有機溶媒を添加して有機溶媒可溶性リグニンを抽出する。上述したように、リグニンの物性は精製工程を経てもほとんど影響を受けず、リグニンは難分解性を示す。そのため、精製工程を経ても、得られる有機溶媒可溶性リグニンの物性や収量はほとんど変化せず、上記抽出工程において、特定の性質を有する有機溶媒可溶性リグニンを選択的に抽出するできるものと推察される。よって、精製工程後に得られる廃液から分離された固形残渣を、有機溶媒可溶性リグニンの抽出対象原料として上記糖化残渣と同様に用いることができる。
有機溶媒可溶性リグニンとは異なる有用成分とは、草本系バイオマスを分解して得られた単糖及びオリゴ糖を、酵母等の微生物が摂取することにより生成された化合物を意味する。有用成分として具体的には、例えば、エタノール、ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロール等のアルコール;ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、乳酸等の有機酸;イノシン、グアノシン等のヌクレオシド;イノシン酸、グアニル酸等のヌクレオチド;カダベリン等のジアミン化合物等が挙げられる。発酵によって得られた化合物が乳酸等のモノマーである場合は、重合によりポリマーに変換することもある。中でも、上述した発酵工程で生成される有用成分としては、エタノールが好ましい。
精製方法としては、草本系バイオマス化合物がアルコール類である場合は、例えば、前記発酵液を蒸留する方法(蒸留法)等が挙げられる。また、草本系バイオマス化合物がアミノ酸類である場合は、例えば、イオン交換法、活性炭を用いた異物の吸着除去法等が挙げられる。中でも、発酵工程で、微生物として酵母を用いて、糖化生成物を発酵して、有用成分としてエタノール等のアルコールを生成させた後、精製工程で、蒸留法により発酵生成物からエタノール等のアルコールを取り出すことが好ましい。
<有機溶媒可溶性リグニンの使用用途>
本実施形態の製造方法で得られた有機溶媒可溶性リグニンは、フェノール性水酸基を有するため、各種修飾を施すことができる。例えば、有機溶媒可溶性リグニンにエピハロゲノヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン等)を付加反応させることでエポキシ樹脂が得られる。また、例えば、有機溶媒可溶性リグニンとイソシアネート化合物と反応させることで、ウレタン樹脂が得られる。また、例えば、ヘキサミンを硬化剤として用いて有機溶媒可溶性リグニンの硬化反応を行なうことで、フェノール樹脂が得られる。有機溶媒可溶性リグニンは芳香族骨格を含むことから、耐火性、耐熱性、硬度等の機械的物性に優れた原料とすることができ、上記各種樹脂は、電気基板材料や耐熱プラスチック材料等として利用することができる。或いは、有機溶媒可溶性リグニンは分散性に優れることから、例えば、有機溶媒可溶性リグニンに長鎖炭化水素基等を導入させる修飾を施すことで、界面活性剤として利用することもできる。
一般に、化成品合成原料には、(1)立体障害が少ない(直鎖構造を多く有する);(2)比較的低分子である;(3)水酸基が多い、ということが仕様として求められる。本実施形態の製造方法で得られた有機溶媒可溶性リグニンは、上述のとおり、β−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに水酸基の含有量が所定の範囲であるものであり、上記仕様に応え得るリグニンを提供することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(希硫酸蒸解法による前処理)
草本系バイオマスであるサトウキビバガスに希硫酸を添加し、pH0.8以上1.2以下、温度150℃以上180℃以下、処理時間8分間以上40分間以下で、CSIが2.0となるような条件下で、水蒸気供給型加圧式前処理装置を用いて行なった。
なお、CSI(Combined Severity Index)は、希硫酸蒸解法の条件のパラメータである温度、pH及び処理時間を変数として以下に示す式(I)を用いて算出される数値である。CSIの数値が大きいほど、バイオマスの分解強度が高く、CSIの数値が小さいほど、バイオマスの分解強度が低い。
Figure 2021042170
(式(I)中、Xは時間、Yは温度、ZはpHである。)
上記条件で前処理を行なったサトウキビバガスについて、糖化酵素(セルラーゼ及びヘミセルラーゼ)を加えて糖化処理を行い、糖化生成物を得た。得られた糖化生成物をろ過して、糖化残渣を得た。
(有機溶媒可溶性リグニンの抽出)
次いで、上記プロセスで得られた糖化残渣を乾燥させて糖化残渣乾燥物を得た。この糖化残渣乾燥物を用いて、有機溶媒可溶性リグニンの抽出を行なった。
まず、糖化残渣乾燥物1gを、アセトン、又は、アセトンと水との混合溶媒(混合比は質量比で90:10、80:20、70:30及び60:40)各40mL(31g以上34g以下程度)に添加し、攪拌した後、遠心分離機を用いて固液分離し、抽出液と抽出残渣とを得た。抽出液及び抽出残渣をそれぞれ乾燥させて、抽出液乾燥物及び抽出残渣乾燥物を得た。
(有機溶媒可溶性リグニンの物性)
上記抽出液乾燥物に含まれる有機溶媒可溶性リグニンの各種物性を調べた。
(1)β−O−4結合の含有量
有機溶媒可溶性リグニン中のβ−O−4結合の含有量は、チオアシドリシス法を用いて測定した。チオアシドリシス法では、β−O−4結合を開裂させることでシリンギル及びグアイアシルからなるチオアシドリシスモノマーを含む分解物が生成され、その分解物の分析を行うことで、リグニンに含まれるβ−O−4結合を定量する。すなわち、β−O−4結合の含有量として、チオアシドリシスモノマーの含有量を定量する。具体的には、まず、各サンプル5mgをジオキサン/エタンチオール(9:1)溶液に添加し、100℃で4時間加熱処理した。次いで、加熱処理後の溶液を炭酸水素ナトリウムで中和し、塩酸を加えて、塩化ナトリウムを沈殿させて、ろ過し、脱ナトリウム処理を行なった。ろ液に塩化メチレンを加えて、塩化メチレン相にモノマーを抽出した。得られた抽出液を濃縮した。濃縮液にシリル化剤としてN,O−Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide(BSTFA)のピリジン溶液を添加し、室温で30分以上60分以下程度攪拌して、誘導体化したサンプルを調製した。誘導体化したサンプルを以下に示す測定条件のガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)により測定して、シリンギル(S)及びグアイアシル(G)からなるチオアシドリシスモノマーの含有量を算出した。結果を図1に示す。図1において、「チオアシドリシス S+G」とは、シリンギル(S)及びグアイアシル(G)からなるチオアシドリシスモノマーの含有量(μmol/g)である。
(測定条件)
GC/MS装置:Shimadzu GCMS−QP2010SE
カラム:DB−5MS column(30m×0.25mm、id、0.25μm膜厚)
カラム温度:170℃、3min、2℃/minで280℃まで昇温後30min保持
カラム流量:1.0mL/min
注入口温度:250℃
注入法:スプリット法
イオン源温度:200℃
インターフェイス温度:250℃
イオン化法:EI
試料量:1.0μL
図1から、アセトン濃度が溶媒の総質量に対して90質量%付近(有機溶媒に対する水の混合比が質量比で10/90程度)のとき、チオアシドリシスモノマーの含有量、すなわち、β−O−4結合の含有量が極大となることが明らかとなった。
また、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で0/100超40/60以下の範囲の抽出条件下において、β−O−4結合の含有量としてチオアシドリシス法により定量された有機溶媒可溶性リグニンのチオアシドリシスモノマーの含有量は175μmol/g以上250μmol/g以下であった。
これらのことから、チオアシドリシスモノマーの含有量、すなわち、β−O−4結合の含有量が特定の範囲である有機溶媒可溶性リグニンを得るために、抽出工程における有機溶媒に対する水の混合比の制御が有効であることが示唆された。
(2)重量平均分子量及び分子量分布
有機溶媒可溶性リグニンの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを、以下に示す測定条件のGPCにより測定した。得られた数平均分子量Mnで重量平均分子量Mwを除することで、分子量分布Mw/Mnを得た。
(測定条件)
装置:Shimadzu Prominenceシステム
カラム:東ソー社製、TSKgel Supermultipore HZ−M 4.6mm×150mm 3連
キャリア:テトラヒドロフラン(THF、安定剤不含)
検出方法:UV 280nm、吸光
試料濃度:4mg/mL
流出量:0.35mL/min
カラム温度:40℃
図2Aは、有機溶媒に対する水の混合比が異なる条件下で抽出して得られた有機溶媒可溶性リグニンをゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定して得られたクロマトグラムである。図2Aに示す各クロマトグラムの各ピークにおける重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを以下の表1に示す。
Figure 2021042170
図2Bは、図2Aに示すクロマトグラムのピークのうち重量平均分子量が最大であるピーク(上記表1のピーク1)の重量平均分子量の測定値を示すグラフである。
図2A及び図2Bから、抽出工程におけるアセトン濃度が溶媒の総質量に対して70質量%の条件では、アセトン濃度が溶媒の総質量に対して90質量%の条件と比較して、低分子の有機溶媒可溶性リグニンが減少し、高分子の有機溶媒可溶性リグニンが増加する傾向がみられた。これは、抽出工程において、混合溶媒中の水の含有量が増加することで、有機溶媒可溶性リグニンのうち高分子領域のものの溶解性が上昇するのに対して、低分子領域のものの溶解性が低下するためであると推察された。
また、アセトン濃度が溶媒の総質量に対して70質量%付近(有機溶媒に対する水の混合比が質量比で30/70程度)のとき、重量平均分子量が極大となることが明らかとなった。また、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で0/100超40/60以下の範囲の抽出条件下において、図2Aに示すクロマトグラムのピークのうち重量平均分子量Mwが最大であるピークの重量平均分子量の測定値は3021以上5060以下であり、分子量分布Mw/Mnは1.30以上1.74以下であった。
また、図1及び図2Bにおいて、β−O−4結合の含有量(チオアシドリシスモノマーの含有量)と重量平均分子量とで、極大となる有機溶媒に対する水の混合比の条件が異なる理由としては、以下のとおりである。β−O−4結合を多く有する有機溶媒可溶性リグニンは、重量平均分子量が700以上2700以下程度の比較的低分子の有機溶媒可溶性リグニンである可能性がある。これに対して、上述のとおり、混合溶媒中の水の含有量が増加することで、低分子の有機溶媒可溶性リグニンが減少し、高分子の有機溶媒可溶性リグニンが増加するため、高分子の有機溶媒可溶性リグニンでは、β−O−4結合の含有量が減少するものと考えられる。
これらのことから、重量平均分子量及び分子量分布が特定の範囲である有機溶媒可溶性リグニンを得るために、抽出工程における有機溶媒に対する水の混合比の制御が有効であることが示唆された。
(3)水酸基の含有量
有機溶媒可溶性リグニン中の水酸基の含有量は、水酸基をリン化した後、リン31核磁気共鳴分光法(31P−NMR法)により定量した。具体的には、有機溶媒可溶性リグニン:25mgに、2−Chloro4,4,5,5−tetramethyl−1,3,2−dioxaphospholane:115mg(100μL:過剰量)、並びにTris(2,4−pentanedionato)−chromium(III):0.5mg、また内標としてN−Hydroxy−1,8−naphthalimide:1.14mgを添加し、25℃(室温)で180分間反応させた。得られた反応液を試料として、31P−NMRに供した。31P−NMRの測定条件は以下のとおりである。31P−NMRにより定量された水酸基のうち、フェノール性水酸基(シリンギル及びグアイアシルのベンゼン環に結合している水酸基も含む)の含有量を算出した。結果を図3に示す。
(測定条件)
測定装置:JEOL JNM−LA400MK
観測周波数:400MHz
積算回数:4096回
測定温度:16℃(室温)
使用溶媒:ピリジン・重クロロホルム混合液(質量比率8:5)
図3から、アセトン濃度が溶媒の総質量に対して70質量%付近(有機溶媒に対する水の混合比が質量比で30/70程度)及び100質量%付近(有機溶媒に対する水の混合比が質量比で0/100程度)のとき、水酸基の含有量として31P−NMR法により定量された有機溶媒可溶性リグニンのフェノール性水酸基(シリンギル及びグアイアシルのベンゼン環に結合している水酸基も含む)の含有量が極大となることが明らかとなった。
また、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で0/100超40/60以下の範囲の抽出条件下において、前記フェノール性水酸基の含有量は7mmol/g以上10mmol/g以下であった。
これらのことから、水酸基の含有量が特定の範囲である有機溶媒可溶性リグニンを得るために、抽出工程における有機溶媒に対する水の混合比の制御が有効であることが示唆された。
本実施形態の製造方法によれば、特定の性質を有する有機溶媒可溶性リグニンを製造することができる。

Claims (11)

  1. 草本系バイオマスを希硫酸蒸解法により前処理する前処理工程と、
    前記前処理工程で得られた前処理済み草本系バイオマスを酵素により糖化処理する糖化工程と、
    前記糖化工程で得られた糖化処理生成物を固液分離して糖化残渣を得る固液分離工程と、
    前記糖化残渣に水及び有機溶媒の混合溶媒を添加して有機溶媒可溶性リグニンを抽出する抽出工程と、
    を含み、
    前記抽出工程において、得られる有機溶媒可溶性リグニンのβ−O−4結合の含有量、重量平均分子量及び分子量分布、並びに、水酸基の含有量がそれぞれ所定の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  2. 前記抽出工程において、前記β−O−4結合の含有量としてチオアシドリシス法により定量された前記有機溶媒可溶性リグニンのチオアシドリシスモノマーの含有量が175μmol/g以上270μmol/g以下の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、請求項1に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  3. 前記抽出工程において、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により定量された前記有機溶媒可溶性リグニンの重量平均分子量が3000以上5100以下の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、請求項1に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  4. 前記抽出工程において、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により定量された前記有機溶媒可溶性リグニンの分子量分布が1.0以上3.0以下の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、請求項1に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  5. 前記抽出工程において、前記水酸基の含有量として水酸基をリン化してリン31核磁気共鳴分光法により定量された前記有機溶媒可溶性リグニンのフェノール性水酸基の含有量が7mmol/g以上10mmol/g以下の範囲となるように、有機溶媒に対する水の混合比を制御する、請求項1に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  6. 前記抽出工程において、有機溶媒に対する水の混合比が質量比で0/100超40/60以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  7. 前記抽出工程において、前記有機溶媒可溶性リグニンのβ−O−4結合の含有量が極大となるように、有機溶媒に対する水の混合比を質量比で15/85以上5/95以下の範囲に制御する、請求項6に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  8. 前記抽出工程において、前記有機溶媒可溶性リグニンの重量平均分子量が極大となるように、有機溶媒に対する水の混合比を質量比で35/65以上25/75以下の範囲に制御する、請求項6に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  9. 前記抽出工程において、前記有機溶媒可溶性リグニンの分子量分布を減少させるために有機溶媒に対する水の混合比が0/100に近づくように制御し、一方、前記有機溶媒可溶性リグニンの分子量分布を増加させるために有機溶媒に対する水の混合比が40/60に近づくように制御する、請求項6に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  10. 前記抽出工程において、前記有機溶媒可溶性リグニンの水酸基の含有量が極大となるように、有機溶媒に対する水の混合比を質量比で35/65以上25/75以下の範囲に制御する、請求項6に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
  11. 前記有機溶媒がアセトン、メタノール、エタノール、又はテトラヒドロフランである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機溶媒可溶性リグニンの製造方法。
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