JP2021038445A - 多層材及びその製造方法、多層材メッキ方法 - Google Patents

多層材及びその製造方法、多層材メッキ方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Ni-W合金又はNi-P合金に生じる経時的な脆化を抑制すること。【解決手段】Ni層とNi-W層又はNi-P合金層とが交互に積層されており; Ni層、Ni-W層又はNi-P層の1層あたりの厚さが0.75μm以上2μm以下であり;Ni層とNi-W層又はNi-P層が好ましくは合計3層以上である多層材とする。【選択図】図16

Description

本発明は、Ni-W層又はNi-P層とNi層とを交互に積層することにより、機械的強度を向上させた複合材である多層材、及びその製造方法に関する。また、本発明は、Ni-W層又はNi-P層とNi層とを交互に積層させた多層材で基材をメッキするメッキ方法に関する。
各種の流体を射出してその流体の形態を制御する金属製ノズルまたは移送管としての細孔または細管は、種々のステンレス鋼や高強度合金鋼などの部材により作製されているが、これらは、機械的強度が高いものの、前記流体が溶融した樹脂の場合には部材との反応性が高く、腐食による摩耗が激しい。酸性流体を射出する場合も同様である。また、泥水のような流体では機械的磨耗が激しく起こる。
このような欠点を改善するため、ノズル内壁表面に高耐磨耗性、高耐食性、高耐熱性等の優れた特性を有する金属もしくは合金の被膜の形成が求められている。このような被覆材は同時に高付着性をも要求される。無電解メッキでは高耐摩耗性、且つ高付着性の金属が存在しない。幸い、数年前に本発明者によって、電解析出法を用い、上記の特性を全て満足する理想的なナノ結晶ニッケルータングステン(Ni-W)合金被覆材が開発されている。
ナノ結晶単相材料及びアモルファス単相材料は、一般的には極端に硬質化しており、塑性変形中の加工硬化を生ずることなく脆性的に破壊されることが知られている(非特許文献1)。本発明者等は、電解析出法を用いて2〜3 GPa程度の引張強度を示すNi-W合金を開発してきており、この合金のW含有量を制御することにより組織が変化することが判明している(非特許文献2及び3)。非特許文献2及び3の方法で作製されたナノ結晶単相Ni-W合金・アモルファス単相Ni-W合金は、従来どおり脆性的な破壊を示している。
一方、本発明者等は、W含有量が約14〜20原子%となるように作製されたNi-W合金は、ナノ結晶/アモルファス複合組織を有しており、5 %を超える塑性伸びを示すことも確認している。
特開2001−342591号公報
J. R.Trelewicz, C. A. Schuh: Acta Materialia, 55 (2007), 5948-5958 I. Matsui, Y. Takigawa, T. Uesugi, K. Higashi: Materials Letters, 99 (2013), 65-67 山▲崎▼徹: 表面技術, Vol.55 No.4 (2004), 242-247
電解析出されたNi-W合金は、ナノ結晶/アモルファス複合組織を有し、2〜3 GPa程度の高引張強度と5%を超える高い塑性伸びを示す。しかし、ナノ結晶単相及びアモルファス単相は極端に硬質化しており、塑性変形中の加工硬化を生じることなく、脆弱的に破壊される。そして、ナノ結晶/アモルファス複合組織を有するNi-W合金も、室温保存中に体積減少(収縮)を伴って延性が低下し、脆化が進行することが確認されている。
図1は、作製直後及び室温2年保管後のNi-W合金試料の公称ひずみと公称応力との関係を測定した結果を示す。Ni-W合金試料は、後述するNi-W層単層材の引張試験片と同じであり、公称ひずみと公称応力の測定方法は、後述する引張試験と同じである。作製直後(製造直後)のNi-W合金試料は、公称ひずみが6%を超えて破断したが、作製後室温で2年保管した後のNi-W合金試料は、公称ひずみが3%に到達する前に破断した。すなわち、室温2年保管後のNi-W合金試料は、作製直後のNi-W合金試料と比較して延性が著しく低下している。
図2は、Ni-W合金が脆化する原理を説明する概念図を示す。Ni-W合金は、ナノ結晶/アモルファス複合組織を有する。作製直後のNi-W合金は、アモルファス部分の自由体積が大きいが経時変化後はアモルファス部分の自由体積が減少して、金属原子の移動が困難となる。その結果、ナノ結晶/アモルファス界面で結晶成長が起きなくなり、収縮を伴って脆化する。
本発明者等は、Ni-W合金に生じる経時的な脆化を抑制する手段について、鋭意検討を重ねた。その結果、Ni-W合金よりも収縮量の少ない電解析出Ni層と、電解析出Ni-W合金層とを、特定の厚さで交互に複数層積層させることによって、界面におけるNi-W層の収縮を抑制し得ることを見出した。また、本発明者等は、Ni-W合金と類似する物性を有するNi-P合金についても、特定の厚さで電解析出Niと交互に複数層積層させることによって、界面におけるNi-P層の収縮を抑制し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的に本発明は、
Ni層とNi-W層又はNi-P層とが交互に積層されており、
前記Ni層と前記Ni-W層又は前記Ni-P層の1層あたりの厚さが0.75μm以上2μm以下である、
多層材に関する。
Ni-W合金は、高強度であるが室温においても経時的に収縮し、脆化する。これに対してNiは収縮量が少なく延性が高い。Ni層とNi-W層の1層あたりの厚さを0.75μm以上2μm以下に調整して、複数層交互に積層することにより、Ni-W層の経時的な収縮が抑制され、高強度・高延性な多層材として機能し得る。また、Ni-P合金もNi-W合金と類似する物性を有しており、Ni層とNi-W層の1層あたりの厚さを0.75μm以上2μm以下に調整して、複数層交互に積層することにより、Ni-W層の経時的な収縮が抑制され、高強度・高延性な多層材として機能し得る。
Ni-W層におけるWの割合、又はNi-P層におけるPの割合は、15原子%以上20原子%以下であることが好ましい。
本発明はまた、
電解析出法によって基材上にNi層を析出させる工程(a)と、
電解析出法によって基材上にNi-W層を析出させる工程(b1)又はNi-P層を析出させる工程(b2)と、
基材を溶解させる工程(c)とを有し、
前記工程(a)と前記工程(b1)又は前記工程(b2)とを交互に繰り返し、
前記工程(a)において形成される前記Ni層の厚さが0.75μm以上2μm以下であり、
前記工程(b1)において形成される前記Ni-W層又は前記工程(b2)において形成される前記Ni-P層の厚さがそれぞれ0.75μm以上2μm以下である、
ことを特徴とする、多層材の製造方法に関する。
本発明はさらに、
電解析出法によって基材上にNi層を析出させる工程(a)と、
電解析出法によって基材上にNi-W層を析出させる工程(b1)又はNi-P層を析出させる工程(b2)とを有し、
前記工程(a)と前記工程(b1)又は前記工程(b2)とを交互に繰り返し、
前記工程(a)において形成される前記Ni層の厚さが0.75μm以上2μm以下であり、
前記工程(b1)において形成される前記Ni-W層又は前記工程(b2)において形成される前記Ni-P層の厚さがそれぞれ0.75μm以上2μm以下である、
ことを特徴とする、多層材メッキ方法に関する。
本発明の多層材の製造方法及び多層材メッキ方法は、
前記工程(b1)において形成されるNi-W層におけるWの割合、又は前記工程(b2)において形成されるNi-P層におけるPの割合は、15原子%以上20原子%以下であることが好ましい。
本発明によれば、Ni-W合金又はNi-P合金に生じる経時的な収縮を抑制し、高強度・高延性な多層材及び多層材メッキが得られる。
作製直後及び室温2年保管後のNi-W合金試料の公称ひずみと公称応力との関係を測定した結果を示す。 Ni-W合金が脆化する原理を説明する概念図を示す。 (a)は使用されたフォトマスクのパターン、(b)は引張試験片の形状を示す。 Ni層及びNi-W層を24層ずつ積層させた引張試験片の断面の走査電子顕微鏡写真を示す。 作製直後の引張試験片の応力−ひずみ曲線を示す。 破断試験終了後の引っ張り試験片の破断面の電子顕微鏡写真を示す。 室温で1週間及び1か月保管後のNi-W単層材及びNi単層材である引張試験片の応力−ひずみ曲線を示す。 破断試験終了後の引張試験片(単層材)の破断面の変化を示す電子顕微鏡写真である。 多層材である引張試験片の応力−ひずみ曲線の変化を示すグラフである。 破断試験終了後の引張試験片(多層材)の破断面の変化を示す電子顕微鏡写真である。 Ni/Ni-W多層材におけるNi-WとNiのピーク分離を説明する概念図を示す。 TMA測定装置の測定部の概略図を示す。 熱機械分析の測定結果を示す。 Ni単層材(粗大粒Ni)とNi-W単層材の317 ℃-110 分等温保持区間における熱収縮量を示す。 3種類の単層材及び3種類の積層材の317 ℃-110 分等温保持区間における熱収縮量を示す。 Ni/Ni-W多層材の1層あたりの厚さと、塑性ひずみとの関係をプロットしたグラフを示す。 Ni/Ni-W多層材における脆化抑制の概念図を示す。
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の記載に限定されない。
[Ni/Ni-W多層材の作製例]
フォトリソグラフィー技術を用いて、引張試験片の形状の試験サンプルを以下の手順に従って作製した。Ni-W合金は、ナノ結晶/アモルファス二相混合組織となるような条件で作製され、EPMA分析により合金組成はNi-16.9 原子%であった。Niメッキは、強度の高い試料作製のできるワット浴Niを使用して作製された。表1にNi-W合金メッキ、表2にワット浴Niメッキの浴組成と電析条件を示す。
フォトリソグラフィー技術を用いて、Cu基板上に引張試験片の形状に電解析出法によってNi-W合金層及び純Ni層を成形させた後、基板(基材)のCuはクロム酸混液(酸化クロム(VI)の飽和溶液+濃硫酸)を用いて溶解させ、電解析出物であるNi層/Ni-W層の積層材を得た。図3は、使用されたフォトマスクのパターン及び引張試験片の形状を示す。
図4は、Ni層及びNi-W層を24層ずつ積層(合計48層、各層の厚さ0.33μm)させた引張試験片の断面の走査電子顕微鏡写真を示す。図4においては、明るく見える層がNi層である。図4に示されているように、引張試験片には欠陥が存在せず、Ni層とNi-W層との界面に剥離も生じていなかった。
引張試験片として、表3に示される2種類の単層材及び3種類の多層材(積層材)を作製した。Ni単層材は、ナノ結晶構造を有するNi単層材である。
[引張試験]
作製された5種類の引張試験片の引張強度及び延性を測定するために、室温において引張試験を行った。試験には島津製マイクロオート(MST-I Type HS/HR)を用いた。引張試験片の平行部形状は、図3(b)に示されるとおりであり、初期ひずみ速度は4.2×10-4 /secとした。塑性伸びの算出方法は、応力−ひずみ曲線の破断点から、弾性変形域での傾きの直線を引き、横軸との交点を塑性伸びとした。
図5は、作製直後の引張試験片の応力−ひずみ曲線を示す。引張強度は、Ni-W単層材では約3GPa、Ni単層材で約2GPaであった。続いて塑性伸びについてみると、Ni単層材及びNi-W単層材に比べ8層材及び16層材はより大きな塑性伸びを示した。一方、48層材は、Ni-W単層材とNi単層材の中間の伸びを示した。
図6は、破断試験終了後の引張試験片の破断面の電子顕微鏡写真を示す。Ni-W層の破断面を見ると、単層材に比べ多層材ではディンプルパターンが細かくなっており、多層化による効果で延性が向上していることが確認できた。また、多層材における破断は、層の界面剥離により生じたのではないことも確認できた。このことは、図5に示される応力−ひずみ曲線の結果と整合している。
図7は、室温で1週間及び1か月保管後のNi-W単層材及びNi単層材である引張試験片の応力−ひずみ曲線を示す。室温保管後の引張試験片は、作製直後の引張試験片と比較して延性が低下し、脆化していることが確認された。
図8は、破断試験終了後の引張試験片(Ni-W単層材及びNi単層材)の破断面の変化を示す電子顕微鏡写真である。Ni単層材は、破断面に大きな違いは認められなかった。一方、Ni-W単層材は、室温1ヶ月保管後は、ディンプルの数及び深さが作製直後よりも減少しており、脆化していることが確認された。
図9は、多層材である引張試験片の応力−ひずみ曲線の変化を示すグラフである。8層材及び16層材については、室温1ヶ月保管後も2%程度の塑性伸びを維持していた。48層材については、塑性伸びが少なく、経時的な変化もあまり認められなかった。
図10は、破断試験終了後の引張試験片(多層材)の破断面の変化を示す電子顕微鏡写真である。図10からは、作製直後と室温1ヶ月保管後で変化があまり認められなかった。
[結晶サイズの測定]
スルファミン酸浴電解析出Ni単層材を含む6種類の引張試験片についてin-situ XRD測定を行い、X線プロファイル形状から結晶子サイズを算出した。in-situ XRD測定は、引張試験と同時に行われた。結晶子サイズは、Niの(111)及びNi-Wの(111)回折ピークから、それぞれScherrer式(数1)から算出した。ただし、Ni-Wについてはナノ結晶/アモルファス複合組織であるために、本来(111)といった結晶相のみを示す表記は正確ではないが、ここでは便宜的にこのように表すものとした。
ここで、Dは結晶子サイズ(nm)、λは波長(nm)、Bは半値幅(rad.),θBは回折角(deg.)である。測定は大型放射光施設SPring-8のBL46XUにて行われ、測定角度は7.7027°〜38.3841°、ビームエネルギーは30 keV(波長0.04133 nm)とした。
XRD測定は、試験片平行部に0.4×0.4 mm2の範囲でビームを連続照射し、時間分解能2.0 sec、測定角度7.7027°〜38.3841°、ビームエネルギー30 keV(波長0.04133 nm)という条件で行われた。このとき得られる回折線は、6つ連結させた一次元検出器MYTHENで同時に広範囲の測定が短時間で可能となる。
得られたXRD測定と引張試験の結果、応力印加に伴うX線回折プロファイルのピークシフト量と半値幅の変化を求めた。ピークシフト量については、一般に試料へ引張応力を印加すると、X線回折ピークが低角側にシフトする。するとブラッグの式(数2及び数3)より求められる(hkl)格子面間隔dhkl(nm)が大きくなる。
ここで、応力0 MPaの時点における格子面間隔をd0 hklとして、数4から格子ひずみεhklを求めた。
この格子ひずみεhklと印加した真応力をプロットした。この測定結果の解析は、Ni-Wの(111)、Niの(111), (200)ピークについて行われた。ただし、Ni/Ni-W積層材については回折ピークがそれぞれ近い位置にあり分離が必要なため、図11に示されるようにピーク分離を行った。すなわち、Ni及びNi-Wともに強度が最も高いのは(111)面の回折ピークであるため、この2つのピークを分離し、ピーク位置及び半値幅を求めた。このときNi-Wはアモルファス相を含んでいるため、(111)面という表記は本来正確ではないが、ここでは便宜上(111)面とする。
XRD測定結果から得られた回折ピーク位置及び半値幅からScherrer式(数1)を用いて単層材及び多層材のNi及びNi-Wの結晶子サイズを算出した。表4は、5種類の引張試験片の結晶子サイズの測定結果を示す。表4より、単層材又は多層材にかかわらずNi-W層とNi層は同様の組織を有していることが確認された。
[熱機械分析]
Ni-W単層材、Ni単層材及びNi/Ni-W多層材の自由体積減少による収縮量を調べるために、熱機械分析装置(TMA分析装置/リガク製 TMA8310)を用いて一定の引張応力下、高温保持中の変位(試料の変形)を測定した。図12は、TMA測定装置の測定部の概略図を示す。ここでは、引張試験片を試料として取り付け、引張荷重は1.96 MPaとした。温度は約300 ℃まで昇温速度10 K/分で設定し、2時間保持した後,室温まで空冷した。ただし、設定温度300 ℃にした場合、等温保持時の温度は317 ℃となった。
図13は、TMA分析の測定結果を示す。参考試料として、スルファミン酸浴より作製され粗大粒Ni単層材についても測定した。通常の材料では、温度上昇と共に膨張し、等温保持中にわずかに膨張し、冷却すると変位は0よりもわずかに大きな値まで戻ってくる挙動を示す。Watt浴により作製された微細粒Ni単層材は、約20 μmの収縮を示しており、Ni-W単層材は30μm程度と大きな収縮を示した。さらに多層材3種類にも収縮が起きていた。
このTMA分析の測定結果について、さらに比較しやすいように温度が300 ℃に達してから10 分後から110分の間のデータで比較した。このようにすると、昇温・冷却のタイミングによるわずかな膨張・収縮のずれを修正可能であり、擬似的な経時変化の高速試験結果が得られると見込まれる。図14は、Ni単層材(粗大粒Ni、スルファミン酸浴)とNi-W単層材の317 ℃-110 分等温保持区間における熱収縮量を示す。粗大粒Ni単層材のような一般的な金属材料は、TMAの等温保持区間では変位はほぼ移動しなかった。一方、作製直後のNi-W単層材は、0.05%程度の大きな収縮を示した。さらに4ヶ月経過後のNi-W単層材においては、作製直後よりも収縮量は小さくなっていた。このことより、Ni-W単層材は室温においても収縮していることが確認された。
図15は、3種類の単層材及び3種類の積層材の317 ℃-110 分等温保持区間における熱収縮量を示す。等温保持中、微細粒Ni単層材は約0.02%の収縮を示したが、Ni-W単層材は約0.05%と大きな収縮を示している。一方、Ni/Ni-W多層材は単層材の中間の収縮量を示し、8層材では約0.045%、16層材では約0.035 %、48層材では約0.03 %と層厚(1層あたりの厚さ)が薄くなっていくに従い、収縮量が小さくなった。このことから、微細粒Ni単層材及びNi-W単層材は、それぞれ単独では収縮を示すが、微細粒Ni材の収縮量がNi-Wよりも小さいために、Ni/Ni-W多層材においては、Ni層によってNi-W層の収縮が抑制されていると考察された。また、Ni/Ni-W多層材においては、層数が増える(1層あたり厚さを減少させる)と収縮抑制効果が大きくなることが示唆された。
図16は、Ni/Ni-W多層材の1層あたりの厚さと、塑性伸び及びTMA収縮との関係をプロットしたグラフを示す。TMA分析より、多層材においては1層あたりの厚さを薄くするほど経時変化による収縮を抑制し得るが、引張試験においては1層あたりの厚さを1μmにしたときに最も大きな塑性伸びが示された。このことから、経時変化による脆化を抑制し、かつ、良好な塑性伸びを示すためには、多層材の厚さは1層あたり0.75μm以上2μm以下とすることが好ましく、0.85μm以上1.3μm以下とすることがより好ましいと判断された。
本発明の多層材は、Ni層とNi-W層又はNi-P層が2層以上積層される。円筒形状のような残留応力が発生してもバランスの取れる部材である場合には、多層材全体として合計2層以上積層されればよいが、平面形状の部材の場合には合計3層以上積層されることが好ましい。電析時の残留応力の発生の見地からは、多層材全体としての積層数は、50層以下であることが実用的である。
Ni-W層又はNi-P層は、全体として3層以上積層する場合には、最外層(最表層)がNi-W層又はNi-P層であってもよい。
本発明においては、Ni層は、Niのみから構成されるNi層に限定されず、微量のB. P等を添加して硬質化されたNi層であってもよい。このような硬質化されたNi層は、Niのみから構成されるNi層の場合と同様に、面心立方型の最密充填の原子構造を維持している場合には、加熱雰囲気中での体積収縮が無いため、Niのみから構成されるNi層と同様の効果を有する。
図17は、Ni/Ni-W多層材における脆化抑制の概念図を示す。Ni-W層は、時間経過によりアモルファス相での自由体積の減少により経時的に収縮する。Ni層は、電解析出法で作製された微細粒材であるために結晶粒界が非平衡粒界からなっており、経時的に平衡になろうとする。その際に非平衡粒界中の自由体積が失われ、収縮すると考えられる。Ni層及びNi-W層は、いずれも室温で時間経過に伴い収縮するが、Ni層の収縮量がNi-W層の収縮量の半分以下と小さいために、Ni/Ni-W多層材ではNi層がNi-W層の収縮を抑制していると考えられる。この場合、Ni-W層には引張残留応力、Ni層には圧縮残留応力がかかっていると予測される。
本明細書においては、フォトリソグラフィー技術を用いて、Cu基板上に引張試験片の形状に電解析出法によってNi-W合金層及び純Ni層を成形させた後、基板(基材)であるCuを酸によって溶解させた。しかし、基材を除去しない場合には、多層材によってメッキされたメッキ製品として利用し得る。
本願明細書においては、Ni/Ni-W多層材の作製例について説明したが、Ni-P合金は、Ni-W合金と同様に、アモルファス単層組織、ナノ結晶単層組織もしくはアモルファスとナノ結晶の複合組織を有することが可能であり、Ni/Ni-P積層材についても、Ni/Ni-W積層材と同様の実験結果が得られることが推測される。
本発明の多層材及びその製造方法、多層材メッキ方法は、金属、冶金分野、又は高強度・高耐久性の表面被膜形成、高強度のナノ金属金型、優れたばね特性を生かしたマイクロ構造部材開発等の技術分野において有用である。

Claims (6)

  1. Ni層とNi-W層又はNi-P層とが交互に積層されており、
    前記Ni層と前記Ni-W層又は前記Ni-P層の1層あたりの厚さが0.75μm以上2μm以下である、
    多層材。
  2. 前記Ni-W層におけるWの割合、又は前記Ni-P層におけるPの割合が15原子%以上20原子%以下である、
    請求項1に記載の多層材。
  3. 電解析出法によって基材上にNi層を析出させる工程(a)と、
    電解析出法によって基材上にNi-W層を析出させる工程(b1)又はNi-P層を析出させる工程(b2)と、
    基材を溶解させる工程(c)とを有し、
    前記工程(a)と前記工程(b1)又は前記工程(b2)とを交互に繰り返し、
    前記工程(a)において形成される前記Ni層の厚さが0.75μm以上2μm以下であり、
    前記工程(b1)において形成される前記Ni-W層又は前記工程(b2)において形成される前記Ni-P層の厚さがそれぞれ0.75μm以上2μm以下である、
    ことを特徴とする、多層材の製造方法。
  4. 前記工程(b1)において形成される前記Ni-W層におけるWの割合、又は前記工程(b2)において形成される前記Ni-P層におけるPの割合が15原子%以上20原子%以下である、
    請求項3に記載の多層材の製造方法。
  5. 電解析出法によって基材上にNi層を析出させる工程(a)と、
    電解析出法によって基材上にNi-W層を析出させる工程(b1)又はNi-P層を析出させる工程(b2)とを有し、
    前記工程(a)と前記工程(b1)又は前記工程(b2)とを交互に繰り返し、
    前記工程(a)において形成される前記Ni層の厚さが0.75μm以上2μm以下であり、
    前記工程(b1)において形成される前記Ni-W層又は前記工程(b2)において形成される前記Ni-P層の厚さがそれぞれ0.75μm以上2μm以下である、
    ことを特徴とする、多層材メッキ方法。
  6. 前記工程(b1)において形成される前記Ni-W層におけるWの割合、又は前記工程(b2)において形成される前記Ni-P層におけるPの割合が15原子%以上20原子%以下である、
    請求項5に記載の多層材メッキ方法。
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