JP2021038104A - セメント組成物の製造方法、及び、セメント組成物 - Google Patents

セメント組成物の製造方法、及び、セメント組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】セメント組成物のひび割れを適切に抑制することである。【解決手段】収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを混入し、膨張材を混入せずに、セメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法であって、高性能減水剤を混入したベースセメント組成物の自己収縮ひずみに対する前記セメント組成物の自己収縮ひずみの比である自己収縮ひずみ比を、前記鋼繊維の混入量と前記鋼繊維の繊維強度とに基づいて算出するための算出式を準備する準備ステップと、前記算出式に基づいて前記混入量と前記繊維強度を決めて、前記セメント組成物を製造する製造ステップと、を有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、セメント組成物の製造方法、及び、セメント組成物に関する。
セメント組成物(例えば、超高強度コンクリート)は、水、結合材、細骨材、粗骨材に加えて様々な機能材を混入して製造するのが一般的である。(例えば、特許文献1、特許文献2、及び非特許文献1参照)。
特開2015−6977号公報 特許第6363354号公報
コンクリート工学年次論文集、vol.41、No.1、2019、p.1199−1204
セメント組成物の製造方法として、例えば、機能材として収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを混入し、膨張材を混入せずに、セメント組成物を製造する製造方法が知られている。
そして、かかるセメント組成物の従来の製造方法では、セメント組成物に自己収縮ひずみが生じるため、セメント組成物にひび割れが発生することがあった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することである。
上記目的を達成するための主たる発明は、収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを混入し、膨張材を混入せずに、セメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法であって、高性能減水剤を混入したベースセメント組成物の自己収縮ひずみに対する前記セメント組成物の自己収縮ひずみの比である自己収縮ひずみ比を、前記鋼繊維の混入量と前記鋼繊維の繊維強度とに基づいて算出するための算出式を準備する準備ステップと、前記算出式に基づいて前記混入量と前記繊維強度を決めて、前記セメント組成物を製造する製造ステップと、を有することを特徴とするセメント組成物の製造方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
本発明によれば、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
算出式を求める準備ステップと目的とするセメント組成物の製造ステップを示したフロー図である。 第1実施形態に係るベースセメント組成物及び算出式用セメント組成物に含まれる材料の一覧表である。 ひび割れ目視検査用の試験体を示した図である。 実施例1〜5の自己収縮試験、スランプフロー試験、及び圧縮強度試験の結果である。 ひび割れ目視検査の結果を示した図である。 実施例1〜5の重回帰分析に用いるパラメータ一覧である。 実施例1〜5の自己収縮ひずみ比と混入量×引張強度の一覧である。 実施例1〜5の自己収縮ひずみ比と混入量×引張強度の回帰式を示したグラフである。 水結合材比が反映された算出式を求める準備ステップと目的とするセメント組成物の製造ステップを示したフロー図である。 第3実施形態に係るベースセメント組成物及び算出式用セメント組成物に含まれる材料の一覧表である。 実施例1〜7の自己収縮試験、スランプフロー試験、及び圧縮強度試験の結果である。 実施例1〜7の重回帰分析に用いるパラメータ一覧である。 実施例1〜7の自己収縮ひずみ比と混入量×引張強度/水結合材比の一覧である。 実施例1〜7の自己収縮ひずみ比と混入量×引張強度/水結合材比の回帰式を示したグラフである。
本明細書及び添付図面により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを混入し、膨張材を混入せずに、セメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法であって、高性能減水剤を混入したベースセメント組成物の自己収縮ひずみに対する前記セメント組成物の自己収縮ひずみの比である自己収縮ひずみ比を、前記鋼繊維の混入量と前記鋼繊維の繊維強度とに基づいて算出するための算出式を準備する準備ステップと、前記算出式に基づいて前記混入量と前記繊維強度を決めて、前記セメント組成物を製造する製造ステップと、を有することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
かかるセメント組成物の製造方法であって、前記算出式は、鋼繊維の混入量と、鋼繊維の繊維強度とをパラメータとした回帰式を用いて求められることが望ましい。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、回帰式を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
かかるセメント組成物の製造方法であって、前記算出式は、自己収縮ひずみ比=1.0−a×混入量kg/m×繊維強度N/mm、であることが望ましい(ただし、a>0)。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、かかる算出式を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
かかるセメント組成物の製造方法であって、前記算出式は、自己収縮ひずみ比=1.0−b×混入量kg/m−c×繊維強度N/mm、であることが望ましい(ただし、b>0、c>0)。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、かかる算出式を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
かかるセメント組成物の製造方法であって、前記算出式は、前記自己収縮ひずみ比を、前記混入量と、前記繊維強度と、水結合材比と、に基づいて算出するための式であることが望ましい。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、水結合材比を算出結果に反映させることが可能となる。
かかるセメント組成物の製造方法であって、前記算出式は、自己収縮ひずみ比=1.0−d×混入量kg/m×繊維強度N/mm/水結合材比%、であることが望ましい(ただし、d>0)。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、水結合材比が反映されたかかる算出式を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することが製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
かかるセメント組成物の製造方法であって、前記算出式は、自己収縮ひずみ比=0.5−e×混入量kg/m−f×繊維強度N/mm+g×水結合材比%、であることが望ましい(ただし、e>0、f>0、g>0)。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、水結合材比が反映されたかかる算出式を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
かかるセメント組成物の製造方法であって、前記算出式が、試験体の自己収縮ひずみ比と、鋼繊維の混入量と、鋼繊維の繊維強度と、を用いて機械学習された情報であることが望ましい。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、機械学習された情報(例えば人工知能による回帰分析)を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
かかるセメント組成物の製造方法であって、前記自己収縮ひずみ比は、0.50〜0.90であることが望ましい。
このようなセメント組成物の製造方法によれば、自己収縮ひずみを適切な範囲とすることができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
膨張材を含まず、収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを含むセメント組成物であって、前記鋼繊維は、フック型鋼繊維であり、混入量が20〜160kg/mであり、引張強度が1000〜4000N/mmであり、繊維径が0.30〜0.70mmであり、繊維長が28〜38mmであることを特徴とするセメント組成物。
このようなセメント組成物によれば、自己収縮ひずみが低減され、高い流動性が確保でき、圧縮強度の低下を抑制することが可能となる。
かかるセメント組成物であって、前記セメント組成物の自己収縮ひずみは、材齢28日において−497〜−392マイクロであることが望ましい。
このようなセメント組成物によれば、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
===第1実施形態===
本実施形態においては、超高強度コンクリートのセメント組成物に混入させる材料やその材料の混入量に対してセメント組成物の自己収縮ひずみ比(詳細は後述する)がいくらになるかを算出した式からセメント組成物に混入させる材料と混入量を決め、超高強度コンクリートのセメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法である。
そして、本実施形態に係るセメント組成物の製造方法は、自己収縮ひずみ比を算出するための算出式を準備する準備ステップと、算出式に基づいて目的とするセメント組成物を製造する製造ステップと、を有する。図1は、算出式を求める準備ステップ(S1〜S3)と目的とするセメント組成物の製造ステップ(S4)を示したフロー図である。
<<<算出式用試験体について>>>
本実施形態においては、目的とするセメント組成物の材料や混入量に対する自己収縮ひずみ比を算出するための算出式を試験した実測値から求める(準備ステップ)。具体的には、いくつかの算出式用試験体(以下、単に試験体ともいう)を製作して、試験体の自己収縮ひずみを測定し、かかる測定値から算出式を求める。
試験体としては、高性能減水剤SPを混入した算出式用ベースセメント組成物(従来のセメント組成物を再現したセメント組成物。以下、単にベースセメント組成物ともいう)と、鋼繊維と収縮低減剤一液型高性能減水剤SR(詳細は後述する)を混入して膨張材を混入しない算出式用セメント組成物(算出式を求めるためのセメント組成物)と、を製作する(図1のステップS1)。
なお、膨張材は、自己収縮ひずみの低減効果はあるが、デメリットとしてフレッシュ性状では粘性が上がり、硬化後性状では圧縮強度を低下させる恐れがあるので、本実施形態では試験体に使用しない。つまり、本実施形態のセメント組成物の製造方法は、収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを混入し、膨張材を混入せずに、セメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法である。
図2は、第1実施形態に係るベースセメント組成物及び算出式用セメント組成物に含まれる材料の一覧表である。図2の実施例1がベースセメント組成物を示しており、実施例2〜5が算出式用セメント組成物を示している。
ベースセメント組成物は、水Wと、結合材B(セメント)と、粗骨材Gと、細骨材Sと、混和剤として従来の高性能減水剤SPと、を含んでいる。
算出式用セメント組成物は、水Wと、結合材Bと、粗骨材Gと、細骨材Sと、混和剤として収縮低減剤一液型高性能減水剤SRを含み、さらに、鋼繊維(軟鋼製フック型鋼繊維DR、硬鋼製フック型鋼繊維HDR)を含んでいる。
水Wと、結合材B、粗骨材G、及び細骨材Sは、ベースセメント組成物と算出式用セメント組成物(実施例1〜5)で同じ材料を同じ分量だけ使用している。結合材B、粗骨材G、及び細骨材Sは、一般的な材料を用いており、結合材Bにはシリカヒュームプレミックスセメント(SFPC)、粗骨材G及び細骨材Sには硬質砂岩の砕石を用いている。そして、図2に示す分量(単位はkg/m)で各々を調合しており、実施例1〜5に係る水結合材比W/Bは15.4%である。
高性能減水剤SPは、従来ものを従来と同様に使用しており、所要のスランプを得るのに必要な単位水量を大幅に減少させるか、又は、単位水量を変えることなくスランプを大幅に増加させる化学混和剤のことである(JIS A 6204より)。
収縮低減剤一液型高性能減水剤SRは、高性能減水剤と収縮低減剤を一液化した材料である。かかる一液化は、例えば、特許文献2に記載のように、セメント組成物の製造を簡便化するために行われている。すなわち、セメント組成物に収縮低減剤一液型高性能減水剤SRを混入させるということは、収縮低減剤と高性能減水剤をほぼ同時に混入するということである。
収縮低減剤一液型高性能減水剤SRの例としては、BASFジャパン株式会社のマスターグレニウムSP8HU(SR)、日本シーカ株式会社のシーカメント1200N−AS、及び竹本油脂株式会社のチューポールHSPを挙げることができる。
それぞれの主成分は、マスターグレニウムSP8HU(SR)がポリカルボン酸エーテル系化合物とグリコール系化合物の複合体であり、シーカメント1200N−ASがポリカルボン酸系化合物とグリコール系化合物の複合体であり、チューポールHSPがポリカルボン酸コポリマーとポリエーテル誘導体である。
また、それぞれの使用量は1%〜5、6%程度の範囲で使用され、試し練りにて適切な使用量を決定する(高性能減水剤SPも同様)。図2においては、右から3、4列目のSPorSRの項目に示しており、単位(C×%)は、結合材Bに対する割合をパーセントで示している。単位(kg/m)は、実際の混入量を示している。なお、実施例2〜5においては、収縮低減剤一液型高性能減水剤SRとして、シーカメント1200N−ASを用いている(従来の高性能減水剤SPも日本シーカ株式会社のものである)。
鋼繊維は、軟鋼製フック型鋼繊維DRと硬鋼製フック型鋼繊維HDR(以下、単に軟鋼繊維DR、硬鋼繊維HDRともいう)があり、実施例2では軟鋼繊維DRを80kg/m、実施例3では硬鋼繊維HDRを20kg/m、実施例4では硬鋼繊維HDRを30kg/m、実施例5では硬鋼繊維HDRを40kg/m混入している。なお、鋼繊維は、外割りで混入している。
軟鋼繊維DRは、引張強度(繊維強度に相当)1440±216(N/mm)、径620±60(μm)、長さ30±2(mm)のフック形状であり、硬鋼繊維HDRは、引張強度3070±460(N/mm)、径380±50(μm)、長さ30±2(mm)のフック形状である。
また、爆裂防止(耐火性能向上)のために、有機繊維PPのポリプロピレン繊維を2kg/m混入している。
<<<自己収縮ひずみを測定するための試験について>>>
次に、試験体であるベースセメント組成物及び算出式用セメント組成物(実施例1〜5)の自己収縮ひずみを測定するための試験について説明する。本実施形態においては、自己収縮試験の他に、スランプフロー試験、圧縮強度試験、ひび割れ目視検査を行う(図1のステップS2)。以下、それぞれの試験内容について説明する。
自己収縮試験は、試験体であるベースセメント組成物及び算出式用セメント組成物がどれだけ自己収縮したのかをひずみ量で測定する試験(算出式に用いる自己収縮ひずみの実測値を測定する試験)であって、「JCI超流動コンクリート研究委員会報告書(II)付録1(仮称)高流動コンクリートの自己収縮試験方法、p.209−210、1994」を参考にしている。以下、試験の詳細を記載する。
試験用器具は、型枠、PTFEシート、埋め込み型ひずみ計、熱電対、包装用ラップフィルム、及びビニール袋である。
型枠は、内径が10×10×40cmとする。また、埋め込み型ひずみ計及び熱電対のコードを折り曲げないようにするため、型枠の一方の側面10×10cmにコード用の穴をあける。
PTFEシートは、型枠の内側の底面と試験体(実施例1〜5)との摩擦を少なくする目的で底面上に設置される。そのため、型枠の内側の底面に隙間なく敷設できる大きさとする。
埋め込み型ひずみ計は、長さが10cmの略円柱形状で、型枠内に満たした実施例1〜5の自己収縮ひずみを測定できるものとする。
熱電対は、埋め込み型ひずみ計と同じ位置に埋め込まれ、その位置での温度を測定できるものとする。なお、温度を同時に測定できる機能をもつ埋め込み型ひずみ計を用いる場合は、熱電対を省略してもよい。
包装用ラップフィルムは、1個の型枠を十分に包める大きさとする。また、ビニール袋は、1個の型枠が十分に入る大きさとする。
試験環境は、原則として、室温20±3℃、湿度60%以上とする。型枠は、その内側の底面上にPTFEシートを敷き、その上にグリースを薄く塗布するともに、内側の側面にもグリースを薄く塗布する。
埋め込み型ひずみ計は、型枠の長手方向に沿うように型枠の中央部に設置され、熱電対は、埋め込み型ひずみ計の温度を測定する位置に設置される。埋め込み型ひずみ計と熱電対のコードは、型枠の側面の穴を通して外に出し、穴はパテ又はグリース等を用いて漏れがないように処置される。
そして、試験体を型枠に打設できる状態としてから、埋め込み型ひずみ計が移動しないように、試験体を型枠内に静かに流し込み、ほぼ型枠天端と同一面まで満たす。なお、試験体を流し込む直前に埋め込み型ひずみ計の初期値を計測する。そして、打ち込み直後より型枠全体を包装用ラップフィルムで包み、ビニール袋に入れて封をする。
試験体が自立できるようになった後、ビニール袋の封を開いて包装用ラップフィルムを取り外して脱型し(材齢1日程度)、再び包装用ラップフィルムで試験体を包み、ビニール袋の中に入れて封をする。
埋め込み型ひずみ計のひずみ及び熱電対の温度を測定し、材齢28日(一部の試験体は材齢56日と材齢91日も)における試験体の自己収縮ひずみを計算する。なお、自己収縮ひずみは、次式によって有効数字3桁まで求める。
自己収縮ひずみ=ε−γΔT
ここに、ε:埋め込みひずみ計から得られた材齢28日のひずみ
(埋め込み型ひずみ計の温度補正後のひずみの値)
γ:コンクリートの熱膨張係数(一般に10×10−6/℃)
ΔT:熱電対より得られた材齢28日の試験体の温度と打ち込み温度との差(℃)
スランプフロー試験は、試験体のフレッシュ性状における流動性に問題がないかを確認するために行う試験であって、JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験」に基づいて行われる。スランプフローは、57cm〜68cm(57cm以上68cm以下を示す。以下同様とする)であればよい。
圧縮強度試験は、試験体の材齢28日における圧縮強度を測定する試験であって、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に基づいて行われる。圧縮強度は、ベースセメント組成物に対して大きな低下(10%以上)が無ければよい。
ひび割れ目視検査は、特に内部のひび割れを確認する検査である。つまり、一般的に、コンクリートのひび割れは、コンクリート内部の鉄筋とコンクリートの間(界面)で発生するので、ひび割れを検査するには、切断等することが必要である。また、ひび割れの発生は、鉄筋の数量にも影響を受け、鉄筋の数量が多いほどひび割れが発生しやすい。
そのため、本実施形態においては、鉄筋が多く配置された柱梁接合部を模擬したひび割れ目視検査用の試験体を実施例5について製作し、材齢91日以降に切断して試験体内部のひび割れを確認することとした。
図3は、ひび割れ目視検査用の試験体を示した図である。図3の断面及び立面の○印と外枠以外の直線は全て鉄筋である。かかる試験体は、材齢91日以降に図3に示す切断面で切断され、人が目視により鉄筋周囲におけるひび割れを確認する。
<<<試験結果について>>>
上記した実施例1〜5の試験結果について図4、図5を用いて説明する。図4は、実施例1〜5の自己収縮試験、スランプフロー試験、及び圧縮強度試験の結果である。図5は後述する。
自己収縮ひずみ(収縮した長さΔL/元の長さL。単位は10−6で無単位。単にマイクロという)について、ベースセメント組成物の実施例1と、算出式用セメント組成物の実施例2〜5を比較すると、材齢28日の自己収縮ひずみは、実施例1が−588、実施例2が−436、実施例3が−497、実施例4が−436、実施例5が−395であり、算出式用セメント組成物(実施例2〜5)の自己収縮ひずみの方がベースセメント組成物(実施例1)の自己収縮ひずみよりもひずみが抑制されている。
スランプフロー(単位はcm)は、実施例1が62.5、実施例2が58.0、実施例3が67.5、実施例4が67.0、実施例が62.0であり、いずれも57.0〜68.0の範囲内である。
圧縮強度(単位はN/mm)は、実施例1が174、実施例2が171、実施例3が174、実施例4が171、実施例5が160であり、ベースセメント組成物(実施例1)の圧縮強度と比べて、算出式用セメント組成物(実施例2〜5)の圧縮強度の低下は10%以内である。
図5は、ひび割れ目視検査の結果を示した図である。図5に示すように、ひび割れ目視検査の試験体を切断した切断面には、鉄筋付近においてもコンクリートのひび割れが認められない。したがって、図4に示すように、実施例5の材齢91日の自己収縮ひずみである−504程度に自己収縮ひずみが抑えられていれば、内部においてひび割れが発生していないと推定できる。
<<<算出式について>>>
以下では、上記の試験結果からセメント組成物の自己収縮ひずみ比を算出するための算出式を求める。具体的には、試験体である実施例1〜5のベースセメント組成物の自己収縮ひずみに対する算出式用セメント組成物の自己収縮ひずみの比を取って試験体の自己収縮ひずみ比とし、試験体の自己収縮ひずみ比と試験体の鋼繊維の混入量及び繊維強度とから、セメント組成物(目的とするセメント組成物)の自己収縮ひずみ比をセメント組成物(目的とするセメント組成物)の鋼繊維の混入量と鋼繊維の繊維強度とで算出するための算出式を求める(図1のステップS3)。
つまり、算出式とは、ベースセメント組成物の自己収縮ひずみに対するセメント組成物(目的とするセメント組成物)の自己収縮ひずみの比である自己収縮ひずみ比を、セメント組成物(目的とするセメント組成物)の鋼繊維の混入量と鋼繊維の繊維強度とに基づいて算出するための式である。そして、自己収縮ひずみ比は、自己収縮ひずみ比=セメント組成物(目的とするセメント組成物)の自己収縮ひずみ/ベースセメント組成物の自己収縮ひずみ、で表すことができる。
本実施形態においては、試験体の自己収縮ひずみ比を被説明変数とし、鋼繊維の混入量及び引張強度を説明変数とした、重回帰分析による回帰式により算出式を求める。つまり、算出式は、鋼繊維の混入量(試験体の鋼繊維の混入量)と、鋼繊維の繊維強度(試験体の鋼繊維の繊維強度)とをパラメータとした回帰式を用いて求められる。図6は、実施例1〜5の重回帰分析に用いるパラメータ一覧である。
そして、実施例1〜5の重回帰分析の結果から、切片と、混入量(外割)の係数bと、引張強度の係数cと、を用いると次式で算出式を表すことができる(ただし、b>0、c>0)。なお、分析に用いるパラメータの個数等によって、求まる係数の値が変動するので、本実施形態においては、係数を変数としアルファベットで表すこととする。
自己収縮ひずみ比=1.0−b×混入量kg/m−c×繊維強度N/mm …(1)
なお、次式のように変換することにより、セメント組成物の自己収縮ひずみを求めることが可能である。
自己収縮ひずみ=(1.0−b×混入量kg/m−c×繊維強度N/mm)×ベースセメント組成物の自己収縮ひずみ …(1−1)
式(1)((1−1))を用いると混入量と繊維強度から自己収縮ひずみ比(自己収縮ひずみ)を算出することができる。つまり、かかる算出式に基づいて混入量と繊維強度を決めて、セメント組成物を製造する(製造ステップ。図1のステップS4)。
すなわち、本実施形態は、高性能減水剤を混入したベースセメント組成物の自己収縮ひずみに対するセメント組成物の自己収縮ひずみの比である自己収縮ひずみ比を、鋼繊維の混入量と鋼繊維の繊維強度とに基づいて算出するための算出式を準備する準備ステップと、算出式に基づいて混入量と繊維強度を決めて、セメント組成物を製造する製造ステップと、を有する。
<<<算出式を用いた製造方法(製造ステップ)について>>>
次に、上記の算出式(1)に具体的な数値を代入してセメント組成物の製造方法を説明する。すなわち、製造ステップについて数値を用いて具体的に説明する。以下では、一例として、自己収縮ひずみ比が材齢28日において0.765以下になるように軟鋼繊維DRを混入し、係数bを0.00254、係数cを0.00006とする(かかる係数の値は、図6のパラメータを用いた重回帰分析で求めた値である)。
先ず、係数bと係数cを式(1)に代入して次式とする。
自己収縮ひずみ比=1.0−0.00254×混入量kg/m−0.00006×繊維強度N/mm …(1−2)
次に、軟鋼繊維DRの繊維強度が1440±216(N/mm)なので、式(1−2)の繊維強度に1440を代入して次式を求める。
自己収縮ひずみ比=1.0−0.00254×混入量kg/m−0.0864 …(1−3)
そして、自己収縮ひずみ比が0.765以下となるような混入量を式(1−3)から求める。例えば、混入量に60を代入すると自己収縮ひずみ比が0.761となり、目的の0.765以下となる。すなわち、軟鋼繊維DRを60kg/m混入して、セメント組成物を製造すれば目的のセメント組成物を製造することができる。
具体的には、水Wを160kg/m、結合材Bを1039kg/m、粗骨材Gを713kg/m、細骨材Sを539kg/m、有機繊維PPを2kg/m、収縮低減剤一液型高性能減水剤SRを15.07kg/m、及び軟鋼繊維DR60kg/m、を混ぜ合わせてセメント組成物を製造する。
また、例えば、繊維強度には範囲があるので、この範囲を考慮して繊維強度に1440−216=1224を代入した算出式とし、自己収縮ひずみ比を計算することもできる。かかる場合は、混入量に65を代入すると自己収縮ひずみ比が0.761となるので、軟鋼繊維DRを65kg/m混入して、セメント組成物を製造すれば目的のセメント組成物を製造することができる。
なお、上記した自己収縮ひずみ比の代わりに自己収縮ひずみを用いても混入量を求めることが可能である。例えば、自己収縮ひずみ比の0.765以下は、自己収縮ひずみの−450マイクロ以上に相当するので、自己収縮ひずみが−450マイクロ以上となるような混入量を算出式(1−1)から求めればよい。
===第2実施形態===
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様な説明となる部分については説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態の相違点は、算出式の求め方である。つまり、第2実施形態においては、第1実施形態とは異なる方法(重回帰分析ではない方法)を用いて、自己収縮ひずみ比を鋼繊維の混入量と鋼繊維の繊維強度とに基づいて算出する算出式を求める。
第1実施形態で算出した算出式(1)を見てみると、混入量kg/mには、マイナスの係数(−b)を掛けており、繊維強度N/mmには、マイナスの係数(−c)を掛けている。すなわち、鋼繊維の混入量が大きく(小さく)なると、自己収縮ひずみ比が小さく(大きく)なり、鋼繊維の繊維強度が大きく(小さく)なると、自己収縮ひずみ比が小さく(大きく)なる。
そこで、本実施形態においては、鋼繊維の混入量と繊維強度の積の値を求めて、自己収縮ひずみ比に対応する変数を1つとし、係数をaとした単回帰分析による回帰式を求めて算出式とする(ただし、a>0)。
図7は、実施例1〜5の自己収縮ひずみ比と混入量×引張強度の一覧である。図8は、実施例1〜5の自己収縮ひずみ比と混入量×引張強度の回帰式を示したグラフである。図8に示す回帰式のxとyを自己収縮ひずみ比と鋼繊維の混入量と鋼繊維の引張強度の積に置き換えると次式となる。
自己収縮ひずみ比=1.0−a×混入量kg/m×繊維強度N/mm …(2)
なお、次式のように変換することにより、セメント組成物の自己収縮ひずみを求めることが可能である。
自己収縮ひずみ=(1.0−a×混入量kg/m×繊維強度N/mm)×ベースセメント組成物の自己収縮ひずみ …(2−1)
第2実施形態においては、式(2)((2−1))を用いると混入量と繊維強度から自己収縮ひずみ比(自己収縮ひずみ)を算出することができる。つまり、かかる算出式に基づいて混入量と繊維強度を決めて、セメント組成物を製造する。
===第3実施形態===
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様な説明となる部分については説明を省略する。図9は、水結合材比が反映された算出式を求める準備ステップと目的とするセメント組成物の製造ステップを示したフロー図である。
第3実施形態においては、実施例1〜5とは水結合材比W/Bが異なる実施例6、7の試験体を製作し、試験体として実施例1〜7を用いて自己収縮ひずみ比を、混入量と、繊維強度と、水結合材比W/Bと、に基づいて算出する算出式を求める。
先ずは、実施例1〜7の試験体を製作する(図9のステップS1)。図10は、第3実施形態に係るベースセメント組成物及び算出式用セメント組成物に含まれる材料の一覧表である。図10の実施例6は水結合材比W/Bが13.5%におけるベースセメント組成物を示しており、実施例7は算出式用セメント組成物を示している。
ベースセメント組成物(実施例6)は、水Wと、結合材Bと、粗骨材Gと、細骨材Sと、混和剤として従来の高性能減水剤SPと、を含んでおり、算出式用セメント組成物(実施例7)は、水Wと、結合材Bと、粗骨材Gと、細骨材Sと、混和剤として収縮低減剤一液型高性能減水剤SRを含み、さらに、軟鋼繊維DRを含んでいる。なお、実施例6、7においては、高性能減水剤SP及び収縮低減剤一液型高性能減水剤SRについて、BASFジャパン株式会社のものを用いている(つまり、収縮低減剤一液型高性能減水剤SRはマスターグレニウムSP8HU(SR)である)。
実施例6、7は、実施例1〜5と使用している材料はほぼ同じであるが、各材料の分量が図10に示すように異なっており、水結合材比W/Bは13.5%となっている。そして、実施例7では軟鋼繊維DRを80kg/m混入している。
次に、実施例1〜7の試験体について自己収縮ひずみを測定するための試験を行う(図9のステップS2)。つまり、実施例1〜7について、上記した自己収縮試験、スランプフロー試験、及び圧縮強度試験を行う。図11は、実施例1〜7の自己収縮試験、スランプフロー試験、及び圧縮強度試験の結果である。
自己収縮ひずみについて、ベースセメント組成物の実施例6と、算出式用セメント組成物の実施例7を比較すると、材齢28日の自己収縮ひずみは、実施例6が−649、実施例7が−392であり、算出式用セメント組成物(実施例7)の自己収縮ひずみの方がベースセメント組成物(実施例6)の自己収縮ひずみよりもひずみが抑制されている。
また、実施例6、7においては、材齢56日と91日の自己収縮ひずみの測定を行っており、材齢56日においては、実施例6が−735、実施例7が−445であり、材齢91日においては、実施例6が−782、実施例7が−477である。いずれにおいても、セメント組成物(実施例7)の自己収縮ひずみの方がベースセメント組成物(実施例6)の自己収縮ひずみよりもひずみが抑制されている。
スランプフローは、実施例6が62.0、実施例7が59.5であり、どちらも57.0〜68.0の範囲内である。
圧縮強度は、実施例6が162、実施例7が157であり、ベースセメント組成物(実施例6)の圧縮強度と比べて、算出式用セメント組成物(実施例7)の圧縮強度の低下は10%以内である。
次に、第1実施形態と同様の手法で、自己収縮ひずみ比を、鋼繊維の混入量、引張強度、及び水結合材比に基づいて算出する算出式を求める(図9のステップS3)。
つまり、試験体の自己収縮ひずみ比を被説明変数とし、鋼繊維の混入量、引張強度、及び水結合材比を説明変数とした、重回帰分析による回帰式を求める。図12は、実施例1〜7の重回帰分析に用いるパラメータ一覧である。
そして、実施例1〜7の重回帰分析の結果から切片と、混入量(外割)の係数eと、引張強度の係数fと、水結合材比の係数gと、を用いると、次式で算出式を表すことができる(ただし、e>0、f>0、g>0)。
自己収縮ひずみ比=0.5−e×混入量kg/m−f×繊維強度N/mm+g×水結合材比% …(3)
なお、次式のように変換することにより、セメント組成物の自己収縮ひずみを求めることが可能である。
自己収縮ひずみ=(0.5−e×混入量kg/m−f×繊維強度N/mm+g×水結合材比%)×ベースセメント組成物の自己収縮ひずみ …(3−1)
第3実施形態においては、式(3)((3−1))を用いると混入量と繊維強度から自己収縮ひずみ比(自己収縮ひずみ)を算出することができる。つまり、かかる算出式に基づいて混入量と繊維強度を決めて、セメント組成物を製造する(図9のステップS4)。
また、収縮低減剤が入っていない従来の高性能減水剤SPを用いた場合には、水結合材比W/Bが小さいほど自己収縮ひずみが大きくなり、自己収縮ひずみ比も大きくなるが、本実施形態では、収縮低減剤が入っている高性能減水剤(収縮低減剤一液型高性能減水剤SR)を用いているので、水結合材比W/Bが小さいほど、所定の流動性を得るために収縮低減剤一液型高性能減水剤SRの混入量が増えるので、自己収縮ひずみ比(自己収縮ひずみ)が小さくなる。
===第4実施形態===
次に、第4実施形態について説明する。なお、第3実施形態と同様な説明となる部分については説明を省略する。
第4実施形態と第3実施形態の相違点は、算出式の求め方であり、第2実施形態と第1実施形態の相違点と同じである。つまり、第4実施形態においては、第3実施形態とは異なる方法(重回帰分析ではない方法)を用いて、自己収縮ひずみ比を、混入量と、繊維強度と、水係合材比W/Bと、に基づいて算出する算出式を求める。
第3実施形態で算出した算出式(3)を見てみると、混入量kg/mには、マイナスの係数(−e)を掛けており、繊維強度N/mmには、マイナスの係数(−f)を掛けており、水結合材比%には、プラスの係数(+g)を掛けている。
すなわち、鋼繊維の混入量が大きく(小さく)なると、自己収縮ひずみ比が小さく(大きく)なり、鋼繊維の繊維強度が大きく(小さく)なると、自己収縮ひずみ比が小さく(大きく)なり、水結合材比が大きく(小さく)なると、自己収縮ひずみ比が大きく(小さく)なる。
そこで、本実施形態においては、鋼繊維の混入量と繊維強度の積の値を水結合材比で割った値を求めて、自己収縮ひずみ比に対応する変数を1つとし、係数をdとした単回帰分析による回帰式を求めて算出式とする(だたし、d>0)。図13は、実施例1〜7の自己収縮ひずみ比と混入量×引張強度/水結合材比の一覧である。図14は、実施例1〜7の自己収縮ひずみ比と混入量×引張強度/水結合材比の回帰式を示したグラフである。図14に示す回帰式のxとyを自己収縮ひずみ比と鋼繊維の混入量と引張強度の積の値を水結合材比で割った値に置き換えると次式となる。
自己収縮ひずみ比=1.0−d×混入量kg/m×繊維強度N/mm/水結合材比% …(4)
なお、次式のように変換することにより、セメント組成物の自己収縮ひずみを求めることが可能である。
自己収縮ひずみ=(1.0−d×混入量kg/m×繊維強度N/mm/水結合材比%)×ベースセメント組成物の自己収縮ひずみ …(4−1)
第4実施形態においては、式(4)((4−1))を用いると混入量と繊維強度から自己収縮ひずみ比(自己収縮ひずみ)を算出することができる。つまり、かかる算出式に基づいて混入量と繊維強度を決めて、セメント組成物を製造する。
また、上記実施形態に係るセメント組成物の自己収縮ひずみ比は、図13の左から2列目に示すように0.846〜0.603の範囲にあり、自己収縮ひずみ比は、0.50〜0.90であれば、適切な範囲と言える。
===鋼繊維の物性値について===
上記実施形態においては、鋼繊維として軟鋼繊維DRと硬鋼繊維HDRの2種類を使用している。ここで、鋼繊維の物性値として軟鋼繊維DRの物性値と硬鋼繊維HDRの物性値をまとめると、フック型鋼繊維であり、引張強度が1000〜4000N/mm、繊維径が0.30〜0.70mm、繊維長が28〜38mmとなる。
鋼繊維の引張強度については、上記物性値の範囲より低くなると靱性が低くなってしまう。繊維径については、上記物性値の範囲より小さくなると流動性が悪くなり、大きくなると靱性が低くなってしまう。繊維長については、上記物性値の範囲より小さくなると靱性が低くなり、大きくなると製造時に折れ曲がる等してしまう。つまり、上記で示した鋼繊維のそれぞれの物性値の範囲は、セメント組成物及びセメント組成物の製造において適切な範囲を示している。
また、図11の結果を見ると、スランプフローと圧縮強度にまだ余裕があり、鋼繊維を追加することが可能である。特許文献1や上記結果等から、鋼繊維の混入量は外割りで160kg/m(約2%)が可能である。
すなわち、上記実施形態によって製造されるセメント組成物は、膨張材を含まず、収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを含むセメント組成物であって、鋼繊維は、フック型鋼繊維であり、混入量が20〜160kg/mであり、引張強度が1000〜4000N/mmであり、繊維径が0.30〜0.70mmであり、繊維長が28〜38mmである。
かかるセメント組成物によると、自己収縮ひずみが低減され、高い流動性が確保でき、圧縮強度の低下を適切に抑制することが可能となる。
そして、実施例1〜7の結果より、セメント組成物の自己収縮ひずみは、材齢28日において−497〜−392マイクロである。そのため、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
===上記実施形態に係るセメント組成物の製造方法の有効性について===
上記実施形態においては、収縮低減剤一液型高性能減水剤SRと鋼繊維とを混入し、膨張材を混入せずに、セメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法であって、高性能減水剤SPを混入したベースセメント組成物の自己収縮ひずみに対するセメント組成物の自己収縮ひずみの比である自己収縮ひずみ比を、鋼繊維の混入量と鋼繊維の繊維強度とに基づいて算出するための算出式を準備する準備ステップと、算出式に基づいて混入量と繊維強度を決めて、セメント組成物を製造する製造ステップと、を有することとした。そのため、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
機能材として収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを混入し、膨張材を混入せずに、セメント組成物を製造するセメント組成物の製造において、従来においては、セメント組成物に自己収縮ひずみが生じるため、セメント組成物にひび割れが発生することがあった。
これに対し、上記実施形態においては、算出式を準備する準備ステップと、算出式に基づいて混入量と繊維強度を決めて、セメント組成物を製造する製造ステップと、を有する。すなわち、算出式を用いて事前に自己収縮ひずみ比を算出し、算出結果に基づいて鋼繊維の混入量と繊維強度を決めて、セメント組成物を製造することとした。
つまり、かかるセメント組成物の製造において、算出式に仮の鋼繊維の混入量と繊維強度を代入し、算出結果を確認してから(事前検討してから)、鋼繊維の混入量と繊維強度を決めて実際のセメント組成物の製造を行うことが可能となる。すなわち、算出式を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
また、上記実施形態においては、算出式は、鋼繊維の混入量と、鋼繊維の繊維強度とをパラメータとした回帰式を用いて求められることとした。
そのため、回帰式を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
また、上記実施形態においては、自己収縮ひずみ比を鋼繊維の混入量と鋼繊維の繊維強度とに基づいて算出する算出式は、自己収縮ひずみ比=1.0−a×混入量kg/m×繊維強度N/mm、及び、自己収縮ひずみ比=1.0−b×混入量kg/m−c×繊維強度N/mm、であることとした。
そのため、2つの算出式を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
また、上記実施形態においては、算出式は、自己収縮ひずみ比を、混入量と、繊維強度と、水結合材比と、に基づいて算出するための式であることとした。
つまり、上記のように、混入量と、繊維強度と、水結合材比とをパラメータとした回帰式を算出式とすることができ、水結合材比を算出結果に反映させることが可能となる。
また、上記実施形態においては、自己収縮ひずみ比を、混入量と、繊維強度と、水係合材比W/Bと、に基づいて算出する算出式は、自己収縮ひずみ比=1.0−d×混入量kg/m×繊維強度N/mm/水結合材比%、及び、自己収縮ひずみ比=0.5−e×混入量kg/m−f×繊維強度N/mm+g×水結合材比%、であることとした。
そのため、2つの水結合材比が反映された算出式を使って適切な自己収縮ひずみとなるような鋼繊維の混入量及び鋼繊維の繊維強度を決めてからセメント組成物を製造することができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
また、上記実施形態においては、自己収縮ひずみ比は、0.50〜0.90であることとした。
そのため、自己収縮ひずみを適切な範囲とすることができ、セメント組成物のひび割れを適切に抑制することが可能となる。
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
上記実施形態では、鋼繊維の混入量等からの回帰式を算出式として自己収縮ひずみを算出していたが、これに限るものではない。例えば、試験体の自己収縮ひずみ比と、鋼繊維の混入量と、鋼繊維の繊維強度と、を用いて人工知能によって回帰分析した結果(機械学習された情報)を算出式として自己収縮ひずみ比を算出してもよいし、別の分析手法を用いて算出式を求めて自己収縮ひずみ比を算出してもよい。
W 水
B 結合材
G 粗骨材
S 細骨材
PP 有機繊維
SP 高性能減水剤
SR 収縮低減剤一液型高性能減水剤
DR 軟鋼繊維(軟鋼製フック型鋼繊維)
HDR 硬鋼繊維(硬鋼製フック型鋼繊維)
W/B 水結合材比

Claims (11)

  1. 収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを混入し、膨張材を混入せずに、セメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法であって、
    高性能減水剤を混入したベースセメント組成物の自己収縮ひずみに対する前記セメント組成物の自己収縮ひずみの比である自己収縮ひずみ比を、前記鋼繊維の混入量と前記鋼繊維の繊維強度とに基づいて算出するための算出式を準備する準備ステップと、
    前記算出式に基づいて前記混入量と前記繊維強度を決めて、前記セメント組成物を製造する製造ステップと、
    を有することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
  2. 請求項1に記載のセメント組成物の製造方法であって、
    前記算出式は、鋼繊維の混入量と、鋼繊維の繊維強度とをパラメータとした回帰式を用いて求められることを特徴とするセメント組成物の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のセメント組成物の製造方法であって、
    前記算出式は、自己収縮ひずみ比=1.0−a×混入量kg/m×繊維強度N/mm、であることを特徴とするセメント組成物の製造方法(ただし、a>0)。
  4. 請求項1又は請求項2に記載のセメント組成物の製造方法であって、
    前記算出式は、自己収縮ひずみ比=1.0−b×混入量kg/m−c×繊維強度N/mm、であることを特徴とするセメント組成物の製造方法(ただし、b>0、c>0)。
  5. 請求項1又は請求項2に記載のセメント組成物の製造方法であって、
    前記算出式は、
    前記自己収縮ひずみ比を、前記混入量と、前記繊維強度と、水結合材比と、に基づいて算出するための式であることを特徴とするセメント組成物の製造方法。
  6. 請求項5に記載のセメント組成物の製造方法であって、
    前記算出式は、自己収縮ひずみ比=1.0−d×混入量kg/m×繊維強度N/mm/水結合材比%、であることを特徴とするセメント組成物の製造方法(ただし、d>0)。
  7. 請求項5に記載のセメント組成物の製造方法であって、
    前記算出式は、自己収縮ひずみ比=0.5−e×混入量kg/m−f×繊維強度N/mm+g×水結合材比%、であることを特徴とするセメント組成物の製造方法(ただし、e>0、f>0、g>0)。
  8. 請求項1に記載のセメント組成物の製造方法であって、
    前記算出式が、試験体の自己収縮ひずみ比と、鋼繊維の混入量と、鋼繊維の繊維強度と、を用いて機械学習された情報であることを特徴とするセメント組成物の製造方法。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法であって、
    前記自己収縮ひずみ比は、0.50〜0.90であることを特徴とするセメント組成物の製造方法。
  10. 膨張材を含まず、収縮低減剤一液型高性能減水剤と鋼繊維とを含むセメント組成物であって、
    前記鋼繊維は、フック型鋼繊維であり、混入量が20〜160kg/mであり、引張強度が1000〜4000N/mmであり、繊維径が0.30〜0.70mmであり、繊維長が28〜38mmであることを特徴とするセメント組成物。
  11. 請求項10に記載のセメント組成物であって、
    前記セメント組成物の自己収縮ひずみは、材齢28日において−497〜−392マイクロであることを特徴とするセメント組成物。
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