先ず、図1〜図6に示す本発明の第1実施形態より説明する。
図1において、自動車用シート1は、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4とより構成される。シートクッション2は、下部に複数の支持脚7,7を形成したシートクッションフレーム6を有しており、その支持脚7,7が自動車の床Fに固着される。尚、支持脚7,7と床Fとの間には、支持脚7,7の前後位置を調節可能とする従来周知の位置調節機構を介装してもよい。
シートクッションフレーム6の後端部には上方に突出する左右一対のブラケット8が連設され、これらブラケット8に、シートバック3が有するシートバックフレーム10が枢軸9を介してリクライニング可能に連結される。シートバックフレーム10は、上方に向かって後側に傾斜して上下方向に延びている。
またシートバックフレーム10の上端部には、左右一対の支持筒11,11が固設されており、これら支持筒11,11によってヘッドレスト4が昇降及び固定可能に支持され、任意の高さにヘッドレスト4を調節可能となっている。
図2〜図6に示すように、ヘッドレスト4は、ヘッドレストフレーム12と、それに支持される発泡ウレタン製のクッション部材13と、その表面を被覆する表皮14とよりティアドロップ型に構成され、そのヘッドレストフレーム12にダイナミックダンパDが取り付けられる。
ヘッドレストフレーム12は、パイプ材を屈曲させてなるもので、前記一対の支持筒11,11に支持される左右一対の主骨部材12a,12aと、これら主骨部材12a,12aの上端から前方へ屈曲した上骨部材12b,12bと、これら上骨部材12b,12bの前端から下方へ屈曲して延びる左右一対の傾斜骨部材12c,12cと、これら傾斜骨部材12c,12cの下端部を相互に一体に連結すべく左右方向に延びる横骨部材12dとで構成され、左右の傾斜骨部材12c,12cの上部には、上記パイプ材より小径の補強用クロスバー19が橋渡されるように溶接される。
而して、主骨部材12a,12aの上部から横骨部材12dまでに亘りヘッドレストフレーム12を覆うようにクッション部材13が形成される。即ち、クッション部材13は、これの成形と同時に主骨部材12a,12aの上部から横骨部材12dに亘る範囲でヘッドレストフレーム12に固定、支持されるものであり、クッション部材13の表面は表皮14で被覆される。このクッション部材13の形成前に、傾斜骨部材12c,12cと横骨部材12dを利用してダイナミックダンパDが取り付けられる。
傾斜骨部材12c,12cは、上方に向かって前後一方側(本実施形態では後方側)に傾斜して上下方向に延びる本発明の傾斜ピラー部の一例であり、また横骨部材12dは、傾斜ピラー部の下端間を連結する本発明の横連結バーの一例である。
そのダイナミックダンパDは、重錘15と、この重錘15の上・下端面間の外側面を全周に亘り被覆する第1弾性部材S1と、重錘15の上・下端面をそれぞれ被覆する第2,第3弾性部材S2,S3と、それら重錘15及び弾性部材S1〜S3を収納するダンパケース17とを備える。そして、重錘15は、後述するように、主として第2,第3弾性部材S2,S3を介してダンパケース17に少なくとも前後方向に振動可能に弾性支持される。
重錘15は、金属製(例えば鋳鉄製)であって、これの上半部と下半部とが対称形状に形成され、図示例では前後に扁平且つ上下方向に延びる略直方体状に形成される。そして、この重錘15は、図1,図2からも明らかなように、シート側面視で一鉛直線L(例えばダンパケース17の縦中心線)上を上下方向にストレートに延びるように配置され、それと共に、重錘15を上下に挟む上下一対の第2,第3弾性部材S2,S3も重錘15と上下に並んで、シート側面視で上記一鉛直線L上に配置される。而して第2,第3弾性部材S2,S3は、本発明の弾性部材の一例である。
更にダンパケース17も、図1,図2に明示されるようにシート側面視で上記一鉛直線L上を上下方向にストレートに延びるように配置される。即ち、ダンパケース17は、シート側面視で長手方向が鉛直方向となるように設定され、このダンパケース17の前・後側面が上記一鉛直線Lに沿って上下方向に延びるよう配置される。そして、この鉛直姿勢のダンパケース17は、シート側面視で傾斜骨部材12c(傾斜ピラー部)の軸線Lcと斜めに交差して重なる配置となる。
しかもこのダンパケース17は、ダンパケース17の上部が傾斜骨部材12cよりも前方側に、また下部が傾斜骨部材12cよりも後方側にそれぞれ張り出すと共に、傾斜骨部材12cに対する上部の前方張出量が下部の後方張出量よりも少なくなるように配置されている。
また第1弾性部材S1は、矩形のシート状に形成され、これを重錘15の外側面に全周に亘り巻き付けた状態で重錘15側面に固着(例えば接着)される。そして、第1弾性部材S1は、これを重錘15と共にダンパケース17内にセットした状態で、ダンパケース17の前後側壁内面及び左右側壁内面との間に若干の隙間91,92が設定される。而して、重錘15が前後左右に振動した際には、第1弾性部材Sの前後側面及び左右側面が、上記隙間91,92を埋めるようにダンパケース17の内面に衝接するが、その際の衝撃は第1弾性部材Sの弾性変形で吸収緩和される。
尚、第1弾性部材S1は、これを重錘15と共にダンパケース17内にセットした状態で上記隙間91,92が生じないように(即ちダンパケース17の内面に非圧縮状態又は多少の圧縮状態で当接するように)配置してもよい。
また第1弾性部材S1の上端部及び下端部は、重錘15の上側及び下側の左右の角部を含む上端部及び下端部を帯状に露出させる端部形状(即ち重錘15の上端及び下端よりそれぞれ上下中央側に後退した端部形状、換言すれば重錘15よりも上下方向寸法が短いサイズ)に形成されている。
また重錘15が前述のように略直方体状に形成される関係で、重錘15は横断面(より具体的には水平断面)多角形状に形成されるため、第1弾性部材S1は重錘15の外側面の角に対応した折り曲げ部S1cを有している。そして、この折り曲げ部S1cには、第1弾性部材S1の、折り曲げ部S1c以外の部位よりも折り曲げを容易化するための折り曲げ容易手段が設けられる。
その折り曲げ容易手段は、本実施形態では図4,図6に示すように、重錘15の外側面の角即ちコーナ部に対応して第1弾性部材S1の一部に形成される薄肉部81で構成される。また図示はしないが、重錘15の角に対応して第1弾性部材の一部に間隔をおいて(即ち折り曲げ部S1cに沿うミシン目状に)穿設される複数の小孔で折り曲げ容易手段を構成してもよい。
各弾性部材S1〜S3は、望ましくはクッション部材13よりも軟質のシート状弾性材で構成される。また実施形態において、第1弾性部材S1と、第2,第3弾性部材S2,S3とは、別の弾性材、例えば所望の肉厚に成形されたウレタンフォーム製であって発泡率(従って弾発力)が異なる弾性材で構成される。
特に第2,第3弾性部材S2,S3は、ダンパケース17内へのセット状態で第1弾性部材S1よりも厚みがあり且つ高硬度に設定されている。そして、第2,第3弾性部材S2,S3に十分な硬度を付与するために、第2,第3弾性部材S2,S3は、上記セット状態でダンパケース17の上・下側壁内面と重錘15の上・下端面との各間で圧縮状態に置かれる。
尚、第1弾性部材S1と、第2,第3弾性部材S2,S3とは、材質の異なる弾性材(例えばウレタンフォーム材とゴム材)で構成してもよく、或いは同一の弾性材で構成してもよい。また第2,第3弾性部材S2,S3は、これの自由状態でも第1弾性部材S1より高硬度な弾性材で構成されることが望ましい。
また第2,第3弾性部材S2,S3は、重錘15の横断面形態よりも小型の矩形シート状に形成され、重錘15の上・下端面にそれぞれ接合(例えば接着)される。第2,第3弾性部材S2,S3には、重錘15とは反対側に位置してダンパケース17の上・下側壁内面に当接する矩形平板状の摩擦軽減材よりなる支持プレート70が接合(例えば接着)されており、第2,第3弾性部材S2,S3は、これの弾発力でダンパケース17の上・下側壁内面に圧接、固定された支持プレート70と、重錘15端面との間に圧縮状態で介設される。
このように第2,第3弾性部材S2,S3の外端をダンパケース17の上・下側壁内面に直接固着しないで支持プレート70を介して圧接、固定させるようにしたことにより、第2,第3弾性部材S2,S3を支持プレート70を介してダンパケース17の内面にガタなく容易に圧接、固定可能である。そして、その固定作業の際に摩擦軽減材よりなる支持プレート70がダンパケース17内面にスムーズに摺接することで作業性が頗る良好であり、ダイナミックダンパの組立作業性が高められる。
また本実施形態の支持プレート70は、表面の摩擦係数が低い合成樹脂材で形成されており、これにより、所望形態の支持プレート70を容易に成形可能となる。尚、支持プレート70を表面の摩擦係数が低い他の材料、例えば表面を磨いた金属板で構成してもよい。尚、支持プレート70を省略して、第2,第3弾性部材S2,S3をダンパケース17の上・下側壁内面に直接結合(例えば接着等)することも可能である。
上記のようにしてシート状の第1〜第3弾性部材S1〜S3で覆った重錘15は、前後二つ割りのダンパケース17内に収容される。而して、この重錘15は、主として第2,第3弾性部材S2,S3を介してダンパケース17に振動可能に弾性支持されることになる。
図2〜図6に示すように、ダンパケース17は、重錘15の外形に概ね相似する形状をなすもので、前後方向に偏平且つ上下方向に延びる箱型をなしており、その前壁は、重錘15の前面15fに対応して平面もしくはそれに近い湾曲面に形成され、また後壁は、重錘15の後面15rに対応して平面もしくはそれに近い湾曲面に形成される。
このダンパケース17は、前側の第1ケース半体17Aと、後側の第2ケース半体17Bとに二分割され、各ケース半体17A,17Bは、それぞれ合成樹脂で成形される。両ケース半体17A,17Bの対向面の一方と他方には、互いに嵌合し得る方形の嵌合溝20と嵌合突壁21とがそれぞれ形成され、また嵌合突壁21の先端部には、外側方へ突出する複数の連結爪22,22…が形成され、これら連結爪22,22…が弾性的にスナップ係合し得る複数の連結孔23,23…が嵌合溝20の底部に形成される。
第1ケース半体17Aの右・左側壁には第1及び第2弾性支持部24A,24Bが一体に形成される。これら第1及び第2弾性支持部24A,24Bは、それぞれ第1ケース半体17Aの右・左側壁から外方へ突出する板状のアーム25a,25bと、このアーム25a,25bの先端に連設されて前記傾斜骨部材12c,12cに、それを把持するようにスナップ係合し得る優弧状の把持爪26a,26bとで構成される。
即ち、優弧状の把持爪26a,26bは、傾斜骨部材12c,12cを、それぞれの半周を超えて弾性的に把持することができる。この優弧状の把持爪26a,26bは、傾斜骨部材12c,12cの被把持部12cmに前方から係合するように、各開口部27a,27bを後方へ向けている。したがって、乗員の頭部からの後向き荷重は、第1及び第2弾性支持部24A,24Bの把持爪26a,26bを傾斜骨部材12c,12cに係合させる方向に作用することになり、把持爪26a,26bの離脱を防ぐことができる。またアーム25a,25bの長さの選定により、両把持爪26a,26bの中心線間距離を、両傾斜骨部材12c,12cの被把持部12cmの中心線間距離に一致させ、把持爪26a,26bの傾斜骨部材12c,12cへの係合を的確に行わせることができる。
優弧状の把持爪26a,26bは、それらの内径D1,D2が互いに異なるように形成される。図示例では、第2弾性支持部24Bの把持爪26bの内径D2は、第1弾性支持部24Aの把持爪26aの内径D1より大きく設定される。また優弧状の把持爪26a,26bは、それらの剛性が互いに異なるように形成される。図示例では、第1弾性支持部24Aの把持爪26aの剛性を、第2弾性支持部24Bの把持爪26bより低くするように、第1弾性支持部24Aの把持爪26aの先端部に切欠き28が設けられ、或いは把持爪26aの肉厚が把持爪26bより薄く設定される。また上記第1及び第2弾性支持部24A,24Bは、前記重錘15の重心を挟むように配置される。
また各把持爪26a,26bには窓孔29が設けられ、この窓孔29から、各把持爪26a,26bと傾斜骨部材12c,12cとの係合状態を目視で確認し得るようになっている。さらに各把持爪26a,26bの内面には、これと対面する傾斜骨部材12c,12cの被把持部12cmの外周面に凹設した少なくとも一条の環状ノッチnと凹凸係合可能な少なくとも1つの位置決め突部tが一体に突設される。そして、それらノッチnと位置決め突部tとの凹凸係合により、各把持爪26a,26bが傾斜骨部材12c,12cの被把持部12cmに対し軸方向にずれ動くのを効果的に防止できる。而してノッチnと位置決め突部tは、互いに協働して把持爪26a,26bと傾斜骨部材12c,12c間を凹凸係合させて、上記したずれ動き防止効果を発揮する凹凸係合手段を構成する。
尚、上記した把持爪26a,26bの内径D1,D2を同じに設定した別実施形態も実施可能である。
更に第1ケース半体17Aの下側壁には位置決め支持部30が一体に形成される。この位置決め支持部30は、第1ケース半体17Aの下側壁から下方へ突出して前側に延びる湾曲板状のアーム30aと、このアーム30aの下端に連設されて前記横骨部材12dに当接係合し得るU字状の当接爪30bとで構成され、この当接爪30bが、横骨部材12dに後方から当接係合することで、前記把持爪26a,26bと左右の傾斜骨部材12c,12cとの係合位置が規定される。こうしてヘッドレストフレーム12上でのダンパケース17の取り付け位置が決定される。
第1、第2弾性支持部24A,24B及び位置決め支持部30のアーム25a,25bの根元には、その根元の剛性を強化する増肉部31が形成され、さらに、第1、第2弾性支持部24A,24Bのアーム25a,25bに当接してそれらの前方への撓み、即ち把持爪26a,26bの開口部27a,27bと反対側へアーム25a,25bの撓みを規制する一対のストッパ32,32が第1ケース半体17Aの右・左側壁に形成される。各ストッパ32は、対応する把持爪26a,26bの背面に直線的に当接する中央壁部32aと、この中央壁部32aの両側端に連なっていて対応するアーム25a,25bから把持爪26a,26bの背面にわたる湾曲面に当接する一対の側壁部32b,32bとで、断面コ字状に構成される。このような構成のストッパ32は、剛性が高い上、対応するアーム25a,25bから把持爪26a,26bにわたる背面との当接面積を広く確保し得るので、集中応力を極力回避しつゝ、アーム25a,25bの撓みを効果的に規制することができる。したがって、乗員の頭部からダンパケース17に大きな後向きの荷重が作用しても、ストッパ32,32がアーム25a,25bの前面に当接して、アーム25a,25bの前方への撓みを規制することになり、ダンパケース17の無用な後方移動を規制することができる。
また上記ストッパ32は、前記嵌合溝20の外側壁に一体に連結されるので、嵌合溝20の外側壁の剛性強化に寄与することにもなる。また位置決め支持部30のアーム部30aには、第1ケース半体17Aの下側壁と当接爪30bとの間を連結する複数条の補強リブ33が形成される。
上記した第1及び第2弾性支持部24A,24Bは、ダンパケース17の左右両側壁にそれぞれ連設した本発明の取付腕部の一例であり、また、把持爪26a,26bは、傾斜ピラー部としての傾斜骨部材12c,12cを把持可能な本発明の把持手段の一例である。そして、第1及び第2弾性支持部24A,24Bが、傾斜骨部材12cの、シート側面視でダンパケース17と斜めに交差して重なる部分を把持する把持爪26a,26bを一体に有するので、把持爪26a,26bで把持される傾斜骨部材12cがダンパケース17と斜交した位置関係(換言すれば後傾姿勢の把持爪26a,26bと鉛直姿勢のダンパケース17とが捩じれた位置関係)にあっても、ダンパケース17を傾斜骨部材12cに支障なく取付可能となる。
ところでダイナミックダンパDは、重錘15の所定方向(図示例では上下方向)の移動を規制する移動規制手段WGを具備している。この移動規制手段WGは、本実施形態では重錘15の上記所定方向とは異なる特定方向(図示例では前後方向・左右方向)の移動を摺動可能に案内可能な重錘ガイド部WGで構成される。
より具体的に言えば、ダンパケース17を分割構成する第1,第2ケース半体17A,18Bの相対向する左右側壁部内面の上部及び下部には、互いに接近する方向に突出し且つ前後方向に延びる左右一対の突起状の重錘ガイド部WGが一体に突設される。そして、第1,第2ケース半体17A,18Bの下部の一対の重錘ガイド部WGの上面が重錘15の下端部に上下方向に若干の隙間93を介して対面し、また上部の一対の重錘ガイド部WGの下面が重錘15の上端部に若干の隙間93を介して対面する。
そして、重錘15は、上記隙間93を埋めるように第2,第3弾性部材S2,S3を弾性変形させつつ上下振動したときに、上下の重錘ガイド部WGに前後左右に摺動可能に当接することで、重錘15のダンパケース17に対する上下方向相対移動が規制される。尚、上記隙間93を無くして、上下の各重錘ガイド部WGを重錘15の上下端面にそれぞれ摺動可能に常時当接させるバリエーションも実施可能である。
また上下の各重錘ガイド部WGは、これと対応する上下の支持プレート70の、重錘15側の内面と当接していて、支持プレート70を重錘15側から支持している。
更にまたダンパケース17の他の変形例として、図示はしないが、第1,第2ケース半体17A,18Bのうちの何れか一方のケース半体の左右側壁部の内面にだけ左右一対の突起状の重錘ガイド部WGを突設してもよい。
上部及び下部の各重錘ガイド部WGは、各弾性部材S1〜S3を避けた位置に配置されている。しかも上部及び下部の各左右一対の重錘ガイド部WGは、第2弾性部材S2及び第3弾性部材S3をそれぞれ挟んで対向配置される。これにより、相対向する左右の重錘ガイド部WGにより、重錘15の移動規制及び摺動案内を安定よく的確に行うことができる。
また第2,第3弾性部材S2,S3の外端面(重錘15とは反対側の端面)に接合される前記した支持プレート70は、上下の重錘ガイド部WGとダンパケース17の上下内端面との各間に介挿される。これにより、重錘ガイド部WG(従って移動規制手段)とダンパケース17との間のデッドスペースを有効に利用して支持プレート70を無理なく配備でき、構造の簡素化及び小型化が図られる。また支持プレート70が、重錘ガイド部WGとダンパケース17の上・下側壁内面との間で定位置に安定よく強固に挟持される。
次に第1実施形態の作用を説明する。
ダイナミックダンパDの組立手順であるが、先ず重錘15の上・下端面間の外側面に第1弾性部材S1を巻付け固定(例えば接着)し、また重錘15の上・下端面に第2,第3弾性部材S2,S3をそれぞれ接合(例えば接着)して、重錘15・弾性部材S1〜S3の組立体を小組みする。そして、この組立体を第1,第2ケース半体17A,17Bの対向面間に挟むようにして、両ケース半体17A,17B相互の合せ面間を着脱可能に結合することでダンパケース17が組立てられ、その組立てと同時に重錘15が第2,第3弾性部材S2,S3及び支持プレート70を介してダンパケース17に支持される。
この場合、第2,第3弾性部材S2,S3は、これを上下に圧縮変形させた状態で支持プレート70を介してダンパケース17(第1,第2ケース半体17A,17B)の上・下側壁内面に圧入、嵌合され、重錘15の上・下端面と上下の重錘ガイド部WGとは、隙間93を挟んで近接、対面する。一方、第1弾性部材S1の前後側面・左右側面は、ダンパケース17(第1,第2ケース半体17A,17B)の前後側壁内面・左右側壁内面にそれぞれ隙間91,92を挟んで近接、対面する。
このようにして組立てられ、第1、第2弾性支持部24A,24Bを介してヘッドレストフレーム12の傾斜骨部材12cに取付けられたダイナミックダンパDは、ヘッドレスト4のクッション部材13を射出成形するための金型(図示せず)のキャビティ内にヘッドレストフレーム12や表皮14と共にセットされ、そのセット状態でクッション部材13が射出成形されるのと同時に、クッション部材13内の所定位置にダイナミックダンパDが一体に埋設される。
自動車の走行中、自動車の振動が床Fからシートクッション2及び枢軸9を経てシートバック3及びヘッドレスト4に伝達したとき、ダイナミックダンパDにおいて重錘15が主として第2,第3弾性部材S2,S3の弾性変形を伴って共振して、シートバック3及びヘッドレスト4の振動エネルギを代替吸収することにより、シートバック3及びヘッドレスト4を制振することができる。
また実施形態のダイナミックダンパDにおいては、重錘15の所定方向(例えば上下方向)の移動を規制する移動規制手段として重錘ガイド部WGが設けられるため、重錘15の上下方向への移動が規制されて、同方向への重錘の無用な動きが最小限に抑えられる。これにより、ダイナミックダンパDは、本来制振すべき特定方向(例えば前後及び左右方向)の振動に対する制振効果を効率よく発揮可能となり、また制振対象の振動形態に応じた制振態様の最適化(チューニング)が容易となる。
また重錘15は、これの上下方向の移動が規制されても、前後及び左右には移動(従って振動)可能であり、その際に比較的高い硬度の第2,第3弾性部材S2,S3の弾性変形を伴って前後及び左右方向に安定した状態で振動することから、ダイナミックダンパDは、前後・左右方向の振動に対し有効に制振効果を発揮することができる。この場合、本実施形態では、重錘15と重錘ガイド部WGとの間に上下方向に若干の隙間93が存するので、重錘15が第2,第3弾性部材S2,S3の弾性変形を伴って前後又は左右に振動する過程で、重錘15は、隙間93の存在により重錘ガイド部WGより大きな摺動抵抗を受けず、ダイナミックダンパDの立ち上がりのダンパ特性を安定させることができる。また重錘15が上下方向に強く加振された場合には、重錘15は、隙間93を詰めるようにして上下の重錘ガイド部WGに当接するので、それ以上の上下方向の移動が規制される。そして、この場合も、重錘15の前後及び左右方向の振動は、重錘15が重錘ガイド部WGに対し前後及び左右方向に摺接することで許容される。
ところで本実施形態では、上下方向に延びる重錘15が、シート側面視で一鉛直線L上を上下方向に延びるように配置されており、この重錘15の非傾斜配置により、重錘15が自重に因る前後方向一方側への偏倚力を受けにくくすることができる。これにより、重錘15は、これを単に鉛直姿勢に置くだけの簡単な構造で、ダンパケース17内で前後方向にバランスよくスムーズに振動可能となることから、従来のヘッドレストのようにダイナミックダンパの重錘が後傾姿勢で配備されていたものと比べて、制振効果を向上させることができる。
しかも鉛直姿勢にある重錘15は、これの上半部と下半部とが対称形状であるため、重錘15の重心の上下で重量バランスもよく前後に傾倒しにくくなる。これにより、重錘15が前後方向に一層バランスよく振動可能となり、制振効果が更に向上する。
その上、本実施形態の重錘15は、これを上下に挟む第2,第3弾性部材S2,S3を介してダンパケース17に支持され、その上下の弾性部材S2,S3と重錘15とが、シート側面視で一鉛直線L上に並ぶように配置される。これにより、重錘15の直上・直下の各弾性部材S2,S3を介して重錘15を安定した鉛直姿勢のまま弾性支持できるため、重錘15が前後方向に一層バランスよくスムーズに振動可能となる。
さらに本実施形態では、ダンパケース17の周辺でヘッドレストフレーム12の傾斜骨部材12cが後上がりに傾斜して延びる配置であるが、ダンパケース17は元より、同ケース17内の重錘15もまたシート側面視で一鉛直線L上に配置される。即ち、重錘15は、周辺に傾斜骨部材12cが在っても、これと斜めに交差する鉛直姿勢(即ち非傾斜姿勢)に置かれるため、重錘15を前後方向にバランスよくスムーズに振動させることができる。
また図1,図2に示されるように、ダンパケース17は、これがシート側面視で傾斜骨部材12cの軸線Lcと一部重なるように配置される。しかもこのダンパケース17は、これの上部が傾斜骨部材12cよりも前方側に、また下部が傾斜骨部材12cよりも後方側にそれぞれ張り出すと共に、傾斜骨部材12cに対するダンパケース17上部の前方張出量がダンパケース17下部の後方張出量よりも少なくなるように配置される。このようなダンパケース17の配置によれば、ヘッドレスト4の前面側に、ダンパケース17の前方張出しに因る違和感(より具体的に言えばダンパケース17前側のクッション部材13の肉厚減少に伴い乗員頭部が受ける違和感)が出るのを極力抑制できるばかりか、ダンパケース17の後方張出しに因るヘッドレスト4の大型化や他部材(例えばシートバック3の前面上部)との干渉も或る程度は抑制可能となる。
また本実施形態の第1弾性部材S1は、これを重錘15と共にダンパケース17内にセットした状態で、ダンパケース17の前後側壁内面及び左右側壁内面との間に若干の隙間91,92が設定されるが、重錘15が前述のように前後又は左右に振動した際には、第1弾性部材Sの前後側面又は左右側面が、上記隙間91,92を埋めるようにダンパケース17の内面に衝接することで、その衝撃が第1弾性部材Sの弾性変形で吸収緩和可能である。尚、仮に第1弾性部材S1を省略した場合には、重錘15が前後左右に振動したときにダンパケース17内面に直接衝突して不快な衝突音が発生する虞れがあるが、本実施形態では、第1弾性部材S1による上記緩衝効果により不快な衝突音発生を効果的に防止することができる。
また第1弾性部材Sは、これの前後側面及び左右側面が上記のようにダンパケース17内面に当接した後において、なおも重錘15が前後又は左右方向に振動する場合には弾性圧縮変形して、重錘15の過度の振動を抑制する。
また本実施形態では、重錘15を被覆する弾性部材S1〜S3が、重錘15の外側面を全周に亘り被覆する第1弾性部材S1と、重錘15の一端面及び他端面をそれぞれ被覆する第2及び第3弾性部材S2,S3とに分割構成される。これにより、単一のシート状弾性部材で重錘15を被覆する場合よりも、個々の弾性部材S1〜S3の形態を極力単純化できて、成形性が良好である。しかも第1弾性部材S1と、第2及び第3弾性部材S2,S3を構成する弾性材の材質や厚み等を容易に変更可能であるため、制振対象や設置部位・姿勢に応じて第1弾性部材S1と、第2及び第3弾性部材S2,S3とが各々、最適のダイナミックダンパ効果を発揮し得るように各弾性部材S1〜S3の材質や硬度、厚み等を選定可能である。
また図7(a)には第2実施形態が示され、図7(b)には第3実施形態が示される。第2,第3実施形態は何れも、ダンパケース17がシート側面視で、傾斜ピラー部としての傾斜骨部材12cの前面より後方側に配置(即ち傾斜骨部材12cの前面よりも前方側に張り出さないように配置)される。これにより、ヘッドレスト4のクッション部材13は、ダンパケース17より前側に十分な肉厚を確保可能となることから、ヘッドレスト4の前面側に、ダンパケース17の前方張出しに因る違和感(より具体的に言えばダンパケース17前側のクッション部材13の肉厚減少に伴い乗員頭部が受ける違和感)が出るのを十分に抑制することができる。また特に第2実施形態では、図7(a)に示すようにダンパケース17の上部がシート側面視で傾斜骨部材12cと一部オーバラップしているため、その分、ダンパケース17が前寄りとなって、ダンパケース17下部の傾斜骨部材12cより後方への張出量が多少は抑えられる。
ところで第2,第3実施形態では、ダンパケース17が、シート側面視で傾斜骨部材12cの前面より後方側に配置される関係で、ダンパケース17の少なくとも下半部が傾斜骨部材12cより後方側にかなり離間した配置となっている。しかしダンパケース17(より具体的には前側の第1ケース半体17A)に一体に連設される取付腕部としての第1,第2弾性支持部24A′,24B′を、ダンパケース17の前面よりも前側に長く延出させており、その延出先部に形成した把持爪26a,26bが、ダンパケース17の前面より前側においても傾斜骨部材12cを把持可能となっている。従って、第2,第3実施形態において、たとえダンパケース17の下半部が傾斜骨部材12cより後方側にかなり離間していても、ダンパケース17の前面よりも前側に延びる弾性支持部24A′,24B′を介してダンパケース17を傾斜骨部材12cに支障なく取付け可能である。
その他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、第2,第3実施形態の各構成要素には、これと対応する第1実施形態の構成要素と同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。そして、第2,第3実施形態においても、基本的に第1実施形態と同様の作用効果を達成可能である。
また図8(c)には第4実施形態が示され、図8(d)には第5実施形態が示される。特に第4実施形態では、図8(c)に示すようにヘッドレストフレーム12の左右の上骨部材12b,12bの前端から下方へ垂下する左右の鉛直骨部材12vの下端から左右の傾斜骨部材12c,12cが前下り傾斜で延出しており、ダンパケース17は、鉛直姿勢で鉛直骨部材12vに沿うように配置される。そして、ダンパケース17には、第2,第3実施形態と同様、取付腕部としての第1,第2弾性支持部24A,24Bをダンパケース17の前面よりも前側に長く延出させており、その先部に設けた把持手段としての把持爪26a,26bが鉛直骨部材12vを把持することで、ダンパケース17が第1,第2弾性支持部24A,24Bを介して鉛直骨部材12vに取付けられる。
また第5実施形態では、図8(d)に示すように鉛直姿勢のダンパケース17の下面がヘッドレストフレーム12の横骨部材12dの上面に載置、支持されており、その支持部から上方に離れるに従ってダンパケース17は、傾斜骨部材12cより前側に張出す配置となる。そして、ダンパケース17(より具体的には後側の第2ケース半体17B)には、取付腕部としての第1,第2弾性支持部24A,24Bをダンパケース17の後面よりも後側に延出させており、その先部に設けた把持手段としての把持爪26a,26bが傾斜骨部材12cを把持することで、ダンパケース17が第1,第2弾性支持部24A,24Bを介して傾斜骨部材12cに取付けられる。
その他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、第4,第5実施形態の各構成要素には、これと対応する第1実施形態の構成要素と同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。そして、第4,第5実施形態においても、基本的に第1実施形態と同様の作用効果を達成可能である。
更に第4実施形態では、ヘッドレストフレーム12に傾斜骨部材12cに連なる鉛直骨部材12vが有っても、これに鉛直姿勢のダンパケース17を支障なく取付可能である。更にまた第5実施形態では、鉛直姿勢にあるダンパケース17の下面が、横連結バーとしての横骨部材12dの上面に当接、支持されるため、先の実施形態の位置決め支持部30を省略可能となり、従って、ヘッドレストフレーム12によるダンパケース17の支持構造を然程複雑化することなく、ダンパケース17の下面をヘッドレストフレーム12(特に横骨部材12d)により安定よく直接、支持可能となる。
また図9には、第6実施形態が示されており、このものでは、ダイナミックダンパDがヘッドレストフレーム12の左右の上骨部材12b,12bに取り付けられる。即ち、ダンパケース17(第1,第2ケース半体17A,17Bの何れか一方)の右・左側壁上部には、取付腕部としての第1及び第2弾性支持部24A,24Bが一体に連設されており、その各弾性支持部24A,24Bの先部に設けた把持爪26a,26bが左右の上骨部材12b,12bに上方からスナップ係合される。また位置決め支持部30は、ダンパケース17の第2ケース半体17Bの上部に連設されて後方へ延びており、左右の上骨部材12b,12bの後端部間を連結するクロスメンバ46に下方から当接係合される。
第6実施形態においても、ダンパケース17の周辺にはヘッドレストフレーム12の後上がり傾斜した主骨部材12aや傾斜骨部材12cが位置するが、そのダンパケース17や内部の重錘15はシート側面視で一鉛直線L上を上下方向に延びるように配置される。その他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、図9中、第1実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
この第6実施形態によれば、左右の上骨部材12b,12b間のスペースをダイナミックダンパDの設置に有効利用することで、ヘッドレスト4のクッション部材13において、乗員の頭部が当接する前部の肉厚を充分に確保すると共に、シートクッション2及びヘッドレスト4よりなる振動系の支持点から重錘15の重心までの距離を充分に得て、ダイナミックダンパDの制振機能を高めることができる。
また図10には、第7実施形態が示されており、このものでは、ダンパケース17の第1,第2ケース半体17A,17B相互の合わせ面Zが、シート側面視で傾斜骨部材12cの軸線Lcに沿うように(即ち鉛直姿勢のダンパケース17の縦中心線Lに対し斜交するように)延びている。そして、第1,第2ケース半体17A,17Bの左右両側部は、左右の傾斜骨部材12cの外側まで延出され、その左右の延出端部17Ae,17Beの合わせ面間に左右の傾斜骨部材12cがそれぞれ挟持される。また一方のケース半体17Aの下側壁には、横骨部材12dに係合、支持される位置決め支持部30が一体に突設されており、この位置決め支持部30の機能は、第1実施形態の位置決め支持部30と同様である。
また第1,第2ケース半体17A,17Bの上・下側壁には、図示はしないが第1実施形態の連結爪22及び連結孔23と同様の連結爪及び連結孔が複数ずつ設けられており、それら連結爪及び連結孔相互の係脱により第1実施形態と同様、第1,第2ケース半体17A,17Bが着脱可能に結合される。更に第1,第2ケース半体17A,17Bの合わせ面の一方には、左右の傾斜骨部材12cの内側で該合わせ面の周方向に全周に亘り延びる方形状の嵌合溝20が形成されており、またその合わせ面の他方には、嵌合溝20に嵌合する同じく方形状の嵌合突壁21が突設される。第1,第2ケース半体17A,17B相互を結合したときに嵌合突壁21を嵌合溝20に嵌合させることで、クッション部材13の射出成形時に溶融状態の成形樹脂がダンパケース17内の重錘15等の収納空間に侵入するのを防止できる。
また図示はしないが、第1,第2ケース半体17A,17Bの左右の延出端部17Ae,17Beの合わせ面(特に傾斜骨部材12cとの当接面)には、第1実施形態の位置決め突起tと同様の位置決め突起を設け、且つ傾斜骨部材12cの外周面に、第1実施形態のノッチnと同様のノッチを設けるようにしてもよい。この場合には、それら位置決め突起とノッチの係合により左右の各延出端部17Ae,17Be(従ってダンパケース17)が傾斜骨部材12cに対し上下にずれ動くのを阻止し得るため、前述の位置決め支持部30の特設とも相俟って、ダンパケース17のヘッドレストフレーム12への位置決め、固定をより確実に行うことができる。
第7実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるので、第7実施形態の各構成要素には、これと対応する第1実施形態の構成要素と同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。そして、第7実施形態においても、基本的に第1実施形態と同様の作用効果を達成可能である。更に第7実施形態では、ダンパケース17の第1,第2ケース半体17A,17Bの合わせ面間に傾斜骨部材12cを直接挟持するので、ダンパケース17の外表面には、傾斜骨部材12cに取付けるための取付腕部(例えば前記実施形態の弾性支持部24A,24B)を特別に連設する必要はなくなり、ケース構造の簡素化が図られる。
また図11には、第8実施形態が示されており、このものでは、シートバック3において、そのシートバックフレーム10の上部の左右の角部の内隅に、前後に扁平な略直方体状のダンパケース17を備えたダイナミックダンパDを配置し、そのダンパケース17の上面及び一側面に形成される一対の弾性支持部24A,24Bがシートバックフレーム10の縦骨部材10a及び横骨部材10bにそれぞれスナップ係合される。ダイナミックダンパDの内部構造は、基本的には第1実施形態と同様であるが、シートバックフレーム10の、後上がりに傾斜した縦骨部材10aに対しダンパケース17や内部の重錘15はシート側面視で一鉛直線L上を上下方向に延びるように配置される。而して縦骨部材10aは、シートバックフレーム10における傾斜ピラー部の一例である。
この第8実施形態によれば、シートバックフレーム10の最上部に配置されるダイナミックダンパDの作用により、シートバック3の制振を効果的に行うことができる。この場合、特に重錘15やダンパケース17を鉛直姿勢に配置したことによる重錘15の前後振動に対する制振効果は、第1実施形態と同様である。しかもシートバックフレーム10の上部角部の内隅のデッドスペースをダイナミックダンパDの設置に有効利用することができる。尚、上記ダイナミックダンパDは、シートバックフレーム10の上部の左右何れか一方の角部の内隅のみに配設することもある。
また図12には、第9実施形態が示されており、このものでは、シートバックフレーム10の左右の縦骨部材10a,10aの上部間を一体に連結する波状骨部材49の中央部で互いに反対方向へ傾斜した一対の傾斜骨部49a,49aに、ダンパケース17の左右両側面に形成される一対の弾性支持部24A,24Bがそれぞれスナップ係合される。その際、一対の弾性支持部24A,24Bは、一対の傾斜骨部49a,49aに対応して斜めに配置され、これにより一対の弾性支持部24A,24Bは、一対の傾斜骨部49a,49aでの上下動が阻止される。ダイナミックダンパDの基本構造は、第1実施形態のものと同じである。
こうしてシートバックフレーム10の上部且つ中央部に取り付けられる一個のダイナミックダンパDの作用により、シートバック3の制振を効果的に行うことができる。また第9実施形態においても、重錘15やダンパケース17は、シート側面視で一鉛直線L上に配置(従って傾斜ピラー部としての縦骨部材10aに対し斜交配置)されており、この鉛直配置に基づく重錘15の前後振動に対する制振効果は、第8実施形態と同様である。
また図13には、第10実施形態が示されており、このものでは、ヘッドレスト4に設置されるダンパケース17には、第1〜第9実施形態のような弾性支持部24A,24Bを設けずに、鉛直姿勢のダンパケース17を、シート状弾性部材S1〜S3より硬質のクッション部材13に一体に埋設保持させたもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様であるので、図13中、第1実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。而して第10実施形態においても、基本的に第1実施形態と同様の作用効果を達成可能である。
更に第10実施形態によれば、ダンパケース17に弾性支持部を設けない分、ダイナミックダンパDの構造の簡素化が図られる。ダンパケース17を、発泡材製のクッション部材13に埋設する際には、ダンパケース17を糸でヘッドレストフレーム12に吊るして所定位置に保持し、クッション部材13の成形後、上記糸を切断することになる。
また図14及び図15には、第11実施形態が示される。この第11実施形態では、第10実施形態と同様、ヘッドレスト4に内蔵されるダンパケース17に爪状の弾性支持部24A,24Bは設けられておらず、その代わりに、鉛直姿勢にあって本発明の特徴を有するダンパケース17を、緩衝性に優れたEPP樹脂製の支持体100を介して硬質(例えば発泡ウレタン製)のクッション部材13に支持させている。
ここでEPP樹脂とは、ポリプロピレン製の多数の小さなビーズ体を成形型内に入れ、これを高温蒸気で再発泡させて成形品に仕上げられた発泡樹脂であり、緩衝性は元より、軽量性や寸法安定性にも優れた特性を有している。
第11実施形態では、このEPP樹脂で、ダンパケース17の少なくとも一部を後部に埋設保持した上記支持体100が一次成形される。
しかもヘッドレストフレーム12は、シートバックフレーム10に一対の支持筒11,11を介して支持される左右の主骨部材12a′,12a′の上端相互が、逆U字状の連結骨部材12tを介して一体に連結されており、その連結骨部材12tの上半部を支持体100内に埋設固定するようにして支持体100の上記一次成形が行われる。
またダンパケース17の下部及び前部には、貫通孔h1,h2を各々有する突出部17x,17yが一体に形成されており、それらの貫通孔h1,h2に上記一次成形の際にEPP樹脂が入り込むことで支持体100とダンパケース17との結合強度が高められる。即ち、貫通孔h1,h2は、結合強度アップのためのアンカ孔として機能する。
尚、このような貫通孔h1,h2付きの突出部17x,17yは、ダンパケース17の下部及び前部に設けることに代えて、又は加えて、ダンパケース17の左右少なくとも一方の側部及び/又は後部に設けてもよい。尚また、貫通孔h1,h2の孔の開口方向(即ち軸線方向)は、前後方向又は左右方向の何れか一方だけでもよいし、或いは、両方でもよい。或いはまた、少なくとも一部の貫通孔h1,h2の孔の開口方向を上下方向としてもよい。
而して、上記一次成形により得られた、ダンパケース17付きの支持体100は、ヘッドレスト4の硬質(例えば発泡ウレタン製)のクッション部材13に埋設保持されるが、この埋設は、例えば、クッション部材13の成形型内にダンパケース17付き支持体100を予めセットした状態でクッション部材13を二次成形することで行われる。
その他の構成は前記第1実施形態と同様であるので、図14及び図15中、第1実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。而して第11実施形態においても、基本的に第1実施形態と同様の作用効果を達成可能である。
更に第11実施形態によれば、第10実施形態と同様、ダンパケース17に弾性支持部を設けない分、ダイナミックダンパDの構造の簡素化が図られる。
その上、EPP樹脂よりなる支持体100の後部(即ち後端寄り部位)にダンパケース17を取付けたことで、ヘッドレスト4の前面に頭部が接する乗員に不快感や違和感を与えることなくダイナミックダンパDの取付けが可能となる。しかもダンパケース17を、EPP樹脂よりなる支持体100を介してヘッドレストフレーム12の上部(特に主骨部材12a′,12a′の上端相互を連結する連結骨部材12t)に取付けることで、ヘッドレストフレーム12の形状や角度、姿勢に極力影響されずに高い取付自由度を以てダンパケース17を取付け可能となり、設計上の自由度向上に寄与することができる。
尚、第11実施形態では、EPP樹脂よりなる支持体100の一次成形と同時に、その支持体100の後部にダンパケース17の一部を埋設保持(即ちダンパケース17と共に支持体100をインサート成形)するものを示したが、EPP樹脂よりなる支持体100の後面に、後付けでダンパケース17を接合、固定(例えば接着、貼着)してもよい。但し、この場合でも、支持体100の一次成形と同時にヘッドレストフレーム12の上部が支持体100に埋設保持(即ちヘッドレストフレーム12と共に支持体100がインサート成形)される。
また図16〜図19には第12実施形態が示される。第12実施形態では、ヘッドレストフレーム12と、これへのダンパケース17の取付け構造のみが第1実施形態と相違する。即ち、ヘッドレストフレーム12は、第1実施形態と同様、シートバックフレーム10に一対の支持筒11を介して支持される左右の主骨部材12a″を備えるが、その両主骨部材12a″は、各々の上端部に前方且つ左右方向内方側に屈曲して延びる屈曲骨部120を一体に有しており、その両屈曲骨部120は、各々の上端より上方に延びる左右の縦ピラー部121と、その両縦ピラー部121の上端間を接続する横ピラー部122とよりなる逆U字状の連結骨部材12t′を介して相互に一体に連結される。そして、ヘッドレストフレーム12の一部(主骨部材12a″の上部から連結骨部材12t′まで)と、ダンパケース17とを覆うようにクッション部材13が成形される。
ダンパケース17は、第1実施形態と同様、第1,第2ケース半体17A,17Bで前後に二分割され、両ケース半体17A,17Bの対向面の一方と他方には、第1実施形態と同様、互いに嵌合し得る嵌合溝20と嵌合突壁21とがそれぞれ形成される。また嵌合突壁21の先端部には複数の連結爪22がダンパケース17の上下左右に各々形成され、またその各々の連結爪22が弾性的にスナップ係合し得る連結孔23が嵌合溝20の底部に形成される。
第1ケース半体17Aの右・左側壁には、取付腕部としての第1及び第2弾性支持部24A,24Bがそれぞれ一体に形成される。これら第1及び第2弾性支持部24A,24Bは、第1ケース半体17Aの右・左側壁から外方へ突出する板状のアーム25a′,25b′と、このアーム25a′,25b′の先端に連設されて左右の縦ピラー部121に、それを把持するようにスナップ係合し得る把持爪26a′,26b′とを備える。優弧状をなす把持爪26a′,26b′は、対応する縦ピラー部121をその半周を超えて弾性的に把持し得るものであって、縦ピラー部121に前方から係合するように、各々の開口部を後方へ向けている。
各把持爪26a′,26b′には、これらに適度な弾性を付与可能な窓孔29が設けられる。そして、この窓孔29からは、各把持爪26a′,26b′と縦ピラー部121との係合状態を目視で確認可能となっている。また各把持爪26a′,26b′の、縦ピラー部121との対向面には、縦ピラー部121側に張出す突条部80が窓孔29の後端縁に沿って一体に形成される。この突条部80の特設によれば、各把持爪26a′,26b′の縦ピラー部121との係合領域を縦ピラー部121の周方向に拡張できるため、各把持爪26a′,26b′の縦ピラー部121に対する把持強度が窓孔29のために減ぜられるのを最小限に抑えて、各把持爪26a′,26b′を縦ピラー部121に的確に保持させることができる。
また第1,第2弾性支持部24A,24Bの各アーム25a′,25b′及び各把持爪26a′,26b′の基部、並びにそれらに対応する第1ケース半体17Aの左・右側壁外面には、その相互間を一体に結合すべく上下方向に間隔をおいて並ぶ水平な補強板部81,82が一体に形成され、その補強板部81,82の補強効果により第1,第2弾性支持部24A,24Bの剛性強度を高めることができる。但し、その補強効果が効き過ぎると、各把持爪26a′,26b′の左右方向の弾性変形が過度に制限されて、ダンパケース17のヘッドレストフレーム12a″(具体的には縦ピラー部121)への取付け作業が難しくなる虞れがあるので、本実施形態では、補強板部81,82にスリット状の撓み許容部81c,82cが設けられる。
この撓み許容部81c,82cにより、補強板部81,82を設けても各把持爪26a′,26b′の左右方向の弾性変形が適度に許容されるから、ダンパケース17の縦ピラー部121への取付け作業を無理なく容易に行うことができる。尚、撓み許容部81c,82cは、各把持爪26a′,26b′の左右方向の弾性変形が容易化される構造であれば実施形態(スリット)に限定されず、例えば、補強板部81,82の一部に形成した薄肉部を撓み許容部としてもよい。
更に第1ケース半体17Aの上側壁には、ダンパケース17のヘッドレストフレーム12への位置決め、固定をより確実に行うための位置決め支持部30′が一体に形成される。この位置決め支持部30′は、第1ケース半体17Aの上側壁の後部から起立すると共に前上がりに傾斜した板状のアーム30a′と、アーム30a′の上端部に連設されて横ピラー部122に当接係合し得る横断面略半円弧状の係合爪30b′とで構成される。この係合爪30b′が横ピラー部122に後上方から当接係合することで、前述の把持爪26a′,26b′と縦ピラー部121との、上下方向での係合位置が規定され、かくしてヘッドレストフレーム12上でのダンパケース17の取り付け位置が決定される。
また位置決め支持部30′の外面、特にアーム30a′の上半部および係合爪30b′の上部に跨がる部位には凹部84が形成される。この凹部84は、これが後方を向くアーム30a′の上半部後面において下方に徐々に深くなるように形成されており、それに対応してアーム30a′の上半部前面85は、横ピラー部122の後端面から鉛直下方に延びている。これにより、係合爪30b′の横ピラー部122との係合領域を横ピラー部122の周方向に拡張できるため、係合爪30b′、従ってダンパケース17上部を横ピラー部122に的確に係合、保持させることができる。また、アーム30a′の下半部前面には、ダンパケース17の上部に存する前述の連結爪22及び連結孔23の左右両外側において一対の補強板86が一体に突設され、その両補強板86は、アーム30a′の上半部と第1ケース半体17Aとの間を一体に結合してアーム30a′の全体的な剛性強度を高めることができる。
第12実施形態のダイナミックダンパDのその他の構造(例えば、ダンパケース17内での重錘15,第1〜第3弾性部材S1〜S3等の配置、取付構造等)は、第1実施形態のダイナミックダンパDと同様である。従って、第12実施形態の各構成要素には、これと対応する第1実施形態の各構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。而して、第12実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、本発明の乗物用シート1は、自動車用に限らず、鉄道車両、航空機等にも適用可能である。
また前記実施形態では、ダンパケース17を剛性のある素材(例えば硬質の合成樹脂)で構成したものを示したが、本発明では、比較的柔軟な素材(例えば柔軟な合成樹脂で形成されたソフトシェル)で構成してもよい。
また前記実施形態では、ダンパケース17を構成する第1及び第2ケース半体17A,17Bを何れも一端開放の扁平箱状に構成したものを示したが、本発明では、第1及び第2ケース半体17A,17Bの一方を、開口部を有する箱状に、他方を、上記開口部を閉鎖する蓋状に形成することもできる。
また前記実施形態では、ダンパケース17を構成する第1及び第2ケース半体17A,17Bの開放端相互を、各開放端の一方及び他方にそれぞれ設けた複数の連結爪22及び連結孔23の係脱により着脱可能且つ分離可能に結合したものを示したが、本発明では、第1及び第2ケース半体17A,17Bの各一側縁部(例えば上側縁部)相互をヒンジ連結して、そのヒンジ連結部回りに両ケース半体17A,17Bの開放面を開閉できるようにしてもよく、その開放状態で重錘15や弾性部材S1〜S3等をダンパケース17内に組付けるようにしてもよい。
また前記実施形態では、重錘15を弾性支持する弾性部材S1〜S3を、それらを収納するダンパケース17を介してヘッドレストフレーム12又はシートバックフレーム10或いはクッション部材13に支持させるものを示したが、本発明では、ダンパケース17を省略して、重錘15を弾性支持する弾性部材S1〜S3をヘッドレストフレーム12又はシートバックフレーム10或いはクッション部材13に直接取付けたり、或いは専用取付部材(例えば取付ステー、ブラケット)を介して取付けるようにしてもよい。
また前記実施形態では、弾性部材S1〜S3をシート状に成形して後付けで重錘15に被覆、固定するものを示したが、本発明では、重錘15の周囲に弾性部材を一体成形するようにしてもよい。
また前記実施形態では、重錘15を振動可能に弾性支持する弾性部材を、複数のシート状弾性部材S1〜S3より分割構成したものを示したが、本発明では、例えば特許第6110853号公報に示される如く、一枚の大きなシート状弾性部材で重錘15をくるむようにして重錘15の全面又は主要な表面を被覆、固定してもよい。
また前記実施形態では、シートバック3に、これと別部品であるヘッドレスト4を後付けで取付けるものを示したが、本発明は、シートバックにヘッドレストを一体化したヘッドレスト付きシートバックに設けられるダイナミックダンパとして実施してもよい。
また前記実施形態では、重錘ガイド部WG(移動規制手段)で重錘15の上下方向の移動規制を行うものを示したが、その移動規制方向は、制振対象に応じて任意に設定可能であり、例えば重錘15の左右方向の移動を規制するようにしてもよい。