以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1〜図3(b)を参照して、本発明の実施形態に係る哺乳器を説明する。なお、図2(b)は、図2(a)に表した切断面A1−A1における部分断面図である。図1に表したように、本実施形態に係る哺乳器2は、ボトル3と、キャップ4と、人工乳首5と、を備える。ボトル3は、例えばミルクや予め搾取された母乳などの飲料を収容する容器である。ボトル3は、上端外周に形成された図示しない雄ねじ部を有する。一方で、図3(b)に表したように、キャップ4は、内周に形成された雌ねじ部43を有する。キャップ4の雌ねじ部43がボトル3の雄ねじ部に嵌まることにより、キャップ4は、ボトル3に装着される。
人工乳首5は、軟質合成樹脂等の弾性材料により一体に成形され、全体として略円錐状を呈する中空体の成形品である。人工乳首の材料としては、例えば、硬度10〜40(JIS−K6253(ISO7619)におけるA型デュロメータによる)のシリコーンゴム、イソプレンゴム、熱可塑性エラストマー、あるいは天然ゴムなどが挙げられる。図2(a)および図2(b)に表したように、本実施形態に係る人工乳首5は、基部51と、乳首部52と、先端部53と、を有する。
基部51は、ボトル3に装着される部分であり、ボトル3に収容された飲料が通過可能な基部開口511を有する。また、基部51は、膨出部513と、フランジ部514と、を有する。膨出部513は、人工乳首5の基端部54の近傍において全周にわたって径外方向に膨出している。フランジ部514は、膨出部513からみて基端部54の側に膨出部513から離れて設けられ、例えば全周にわたって径外方向に膨出している。言い換えれば、フランジ部514は、膨出部513からみて基端部54の側に膨出部513から離れた位置において、例えば全周にわたってリング状に形成されている。
乳首部52は、基部51と先端部53との間に設けられている。乳首部52の詳細については、後述する。先端部53は、飲料排出口531を有する。飲料排出口531は、ボトル3に収容された飲料を排出するための開口として機能する。つまり、ボトル3に収容された飲料は、基部開口511を通過し、飲料排出口531をさらに通過することにより、ボトル3および人工乳首5の外側に向かって排出される。飲料排出口531のカット形状は、特に限定されるわけではない。飲料排出口531のカット形状としては、例えば、丸穴、Y字状、十字状、および一方向のスリット状などが挙げられる。
図3(a)および図3(b)に表したように、キャップ4は、硬質合成樹脂の材料により成形され、全体として扁平な円筒体の成形品である。扁平な円筒体の内側面には、雌ねじ部43が形成されている。例えば、扁平な円筒体の一方の開口41の内径は、他方の開口42の内径よりも小さい。キャップ4の一方の端部には、一方の開口41の内側に向かって突出したフランジ部44が形成されている。フランジ部44は、一方の開口41に隣接して設けられ、下向き段部を構成する。
人工乳首5は、軟質合成樹脂等の弾性材料により成形されているため、キャップ4の開口41に挿入されると変形する。そして、キャップ4のフランジ部44が人工乳首5の膨出部513とフランジ部514との間の隙間に嵌まることにより、人工乳首5がキャップ4に装着される。また、前述したように、キャップ4の雌ねじ部43がボトル3の雄ねじ部に嵌まることにより、キャップ4は、ボトル3に装着される。そのため、人工乳首5は、キャップ4を介してボトル3に装着される。具体的には、人工乳首5の基部51が、キャップ4を介してボトル3に装着される。
次に、図4(a)〜図4(c)を参照して、人工乳首5の乳首部52の内部に形成された空間を説明する。図4(a)〜図4(c)は、図2(b)に表した切断面A2−A2における断面図である。切断面A2−A2は、人工乳首5の先端部53から基端部54に向かって約5mm以上、10mm以下程度の範囲の位置である。すなわち、図2(b)に表した断面図において、人工乳首5の先端部53と、切断面A2−A2と、の間の距離L1は、約5mm以上、10mm以下程度である。切断面A2−A2における人工乳首5の外径すなわち乳首部52の外径は、例えば約12mm以上、14mm以下程度である。
図4(a)および図4(b)に表したように、本実施形態に係る人工乳首5は、乳首部52の内部に形成された内部空間541を有する。内部空間541は、外力が乳首部52に加わる前に、あるいは外力が乳首部52に加わっていない状態において、乳首部52の内部に形成されている空間である。図4(a)〜図4(c)に表した人工乳首5では、内部空間541は、4つの角561、562、563、564を有する。4つの角561、562、563、564のそれぞれは、乳首部52の2つの内面が互いに交わった部分である。例えば、角561は、第1内面551と第2内面552とが互いに交わった部分である。例えば、角563は、第3内面553と第4内面554とが互いに交わった部分である。対向する角同士の距離は、例えば約10mm以上、12mm以下程度である。つまり、角561と角563との間の距離および角562と角564との間の距離のそれぞれは、例えば約10mm以上、12mm以下程度である。
また、内部空間541は、4つの山部571、572、573、574と、4つの谷部581、582、583、584と、を有する四角の星形を呈する。山部571、572、573、574は、角561、562、563、564が乳首部52の外側に向かって突出した部分である。谷部581、582、583、584は、隣り合う角561、562、563、564同士の間において乳首部52の中実部分が乳首部52の内側に向かって突出した部分である。例えば、谷部581は、角561と角564との間において乳首部52の中実部分が乳首部52の内側に向かって突出した部分である。例えば、谷部582は、角561と角562との間において乳首部52の中実部分が乳首部52の内側に向かって突出した部分である。対向する谷部同士の距離は、例えば約5mm以上、7mm以下程度である。つまり、谷部581と谷部583との間の距離および谷部582と谷部584との間の距離のそれぞれは、例えば約5mm以上、7mm以下程度である。
図4(b)に表した矢印A11および矢印A12のように、基部開口511の中心部512(図2(b)参照)と、飲料排出口531と、を通る軸A21(図2(b)参照)に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わると、乳首部52の弾性変形が生ずるとともに、乳首部52に反力(弾力)が生ずる。そして、図4(c)に表したように、内部空間541が潰れて、乳首部52の一部の内面同士が接触する。本実施形態では、第1内面551と第2内面552とが互いに接触する。また、第3内面553と第4内面554とが互いに接触する。
図4(c)に表したように、乳首部52の一部の内面同士が接触した後では、残留空間542が乳首部52の内部に残る。残留空間542は、乳首部52に加わった外力により内部空間541が潰れて乳首部52の一部の内面同士が接触した後に、乳首部52の内部に残った空間である。
軸A21に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52にさらに加わると、乳首部52の弾性変形がさらに生ずるとともに、乳首部52に反力が生ずる。そして、残留空間542が潰れる。この際、乳首部52の一部の内面同士が接触した部分において、摩擦が生ずる。本実施形態では、残留空間542が潰れる際に、第1内面551と第2内面552とが互いに擦れ合い、摩擦が生ずる。また、残留空間542が潰れる際に、第3内面553と第4内面554とが互いに擦れ合い、摩擦が生ずる。そのため、残留空間542が残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542が残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542が残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542が残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりも大きい。
本願明細書において、「挟み込み率に対する反力の勾配」とは、両側から与えられた外力により乳首が挟まれたときの挟み込みの割合(挟み込み率)に対する乳首の反力の勾配、傾き、あるいは変化率をいうものとする。ここでいう「乳首」には、本発明に係る人工乳首と、授乳婦の乳首と、の両方が含まれる。乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配の詳細については、後述する。
本実施形態に係る人工乳首5において、図4(b)に表したように、外力が乳首部52に加わる前に、4つの角561、562、563、564のうちの一対の角561、563が外力の方向(矢印A11および矢印A12の方向)に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置された場合を考える。この場合において、図4(b)に表した矢印A11および矢印A12の方向の外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わり、残留空間542が残ると、図4(c)に表したように、一対の角561、563とは異なる他の一対の角562、564が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に関して対称に配置される。
これによれば、残留空間542が残ったときに他の一対の角562、564が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に関して対称に配置されない場合と比較して、残留空間542は、潰れにくい。そのため、残留空間542が残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542が残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542が残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542が残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりもより確実に大きくなる。
次に、本発明の変形例に係る人工乳首を、図5(a)〜図7(c)を参照して説明する。図5(a)〜図7(c)は、図2(b)に表した切断面A2−A2における断面図に相当する。なお、変形例に係る人工乳首5A、5B、5Cの構成要素が、図1〜図3(c)に関して前述した本実施形態に係る人工乳首5の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
図5(a)および図5(b)に表したように、第1具体例に係る人工乳首5Aは、乳首部52の内部に形成された内部空間541Aを有する。内部空間541Aは、6つの角561、562、563、564、565、566を有する。対向する角同士の距離は、例えば約10mm以上、12mm以下程度である。つまり、角561と角564との間の距離、角562と角565との間の距離、および角563と角566との間の距離のそれぞれは、例えば約10mm以上、12mm以下程度である。
また、内部空間541Aは、6つの山部571、572、573、574、575、576と、6つの谷部581、582、583、584、585、586と、を有する六角の星形を呈する。対向する谷部同士の距離は、例えば約5mm以上、7mm以下程度である。つまり、谷部581と谷部584との間の距離、谷部582と谷部585との間の距離、および谷部581と谷部586との間の距離のそれぞれは、例えば約5mm以上、7mm以下程度である。
図5(b)に表した矢印A11および矢印A12のように、軸A21(図2(b)参照)に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わると、乳首部52の弾性変形が生ずるとともに、乳首部52に反力が生ずる。そして、図5(c)に表したように、内部空間541Aが潰れて、乳首部52の一部の内面同士が接触する。本変形例では、第1内面551と第2内面552とが互いに接触する。また、第3内面553と第4内面554とが互いに接触する。
図5(c)に表したように、乳首部52の一部の内面同士が接触した後では、残留空間542Aが乳首部52の内部に残る。残留空間542Aは、乳首部52に加わった外力により内部空間541Aが潰れて乳首部52の一部の内面同士が接触した後に、乳首部52の内部に残った空間である。
軸A21に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52にさらに加わると、乳首部52の弾性変形がさらに生ずるとともに、乳首部52に反力が生ずる。そして、残留空間542Aが潰れる。この際、乳首部52の一部の内面同士が接触した部分において、摩擦が生ずる。本変形例では、残留空間542Aが潰れる際に、第1内面551と第2内面552とが互いに擦れ合い、摩擦が生ずる。また、残留空間542Aが潰れる際に、第3内面553と第4内面554とが互いに擦れ合い、摩擦が生ずる。そのため、残留空間542Aが残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542Aが残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542Aが残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542Aが残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりも大きい。
本変形例に係る人工乳首5Aにおいて、図5(b)に表したように、外力が乳首部52に加わる前に、6つの角561、562、563、564、565、566のうちの一対の角561、564が外力の方向(矢印A11および矢印A12の方向)に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置された場合を考える。この場合において、図5(b)に表した矢印A11および矢印A12の方向の外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わり、残留空間542Aが残ると、図5(c)に表したように、一対の角561、564とは異なる他の一対の角562、566および他の一対の角563、565が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に関して対称に配置される。
これによれば、残留空間542Aが残ったときに他の一対の角562、566および他の一対の角563、565が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に関して対称に配置されない場合と比較して、残留空間542Aは、潰れにくい。そのため、残留空間542Aが残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542Aが残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542Aが残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542Aが残るに乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりもより確実に大きくなる。
図6(a)および図6(b)に表したように、第2具体例に係る人工乳首5Bは、乳首部52の内部に形成された内部空間541Bを有する。内部空間541Bは、8つの角561、562、563、564、565、566、567、568を有する。対向する角同士の距離は、例えば約10mm以上、12mm以下程度である。つまり、角561と角565との間の距離、角562と角566との間の距離、角563と角567との間の距離、および角564と角568との間の距離のそれぞれは、例えば約10mm以上、12mm以下程度である。
また、内部空間541Bは、8つの山部571、572、573、574、575、576、577、578と、8つの谷部581、582、583、584、585、586、587、588と、を有する八角の星形を呈する。対向する谷部同士の距離は、例えば約5mm以上、7mm以下程度である。つまり、谷部581と谷部585との間の距離、谷部582と谷部586との間の距離、谷部583と谷部587との間の距離、および谷部584と谷部588との間の距離のそれぞれは、例えば約5mm以上、7mm以下程度である。
図6(b)に表した矢印A11および矢印A12のように、軸A21(図2(b)参照)に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わると、乳首部52の弾性変形が生ずるとともに、乳首部52に反力が生ずる。そして、図6(c)に表したように、内部空間541Bが潰れて、乳首部52の一部の内面同士が接触する。本変形例では、第1内面551と第2内面552とが互いに接触する。また、第3内面553と第4内面554とが互いに接触する。
図6(c)に表したように、乳首部52の一部の内面同士が接触した後では、残留空間542Bが乳首部52の内部に残る。残留空間542Bは、乳首部52に加わった外力により内部空間541Bが潰れて乳首部52の一部の内面同士が接触した後に、乳首部52の内部に残った空間である。
軸A21に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52にさらに加わると、乳首部52の弾性変形がさらに生ずるとともに、乳首部52に反力が生ずる。そして、残留空間542Bが潰れる。この際、乳首部52の一部の内面同士が接触した部分において、摩擦が生ずる。本変形例では、残留空間542Bが潰れる際に、第1内面551と第2内面552とが互いに擦れ合い、摩擦が生ずる。また、残留空間542Bが潰れる際に、第3内面553と第4内面554とが互いに擦れ合い、摩擦が生ずる。そのため、残留空間542Bが残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542Bが残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542Bが残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542Bが残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりも大きい。
本変形例に係る人工乳首5Bにおいて、図6(b)に表したように、外力が乳首部52に加わる前に、8つの角561、562、563、564、565、566、567、568のうちの一対の角561、565が外力の方向(矢印A11および矢印A12の方向)に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置された場合を考える。この場合において、図6(b)に表した矢印A11および矢印A12の方向の外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わり、残留空間542Bが残ると、図6(c)に表したように、一対の角561、565とは異なる他の一対の角562、568、他の一対の角563、567および他の一対の角564、566が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に関して対称に配置される。
これによれば、残留空間542Bが残ったときに他の一対の角562、568、他の一対の角563、567および他の一対の角564、566が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に関して対称に配置されない場合と比較して、残留空間542Bは、潰れにくい。そのため、残留空間542Bが残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542Bが残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542Bが残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542Bが残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりもより確実に大きくなる。
図7(a)および図7(b)に表したように、第3具体例に係る人工乳首5Cは、乳首部52の内部に形成された内部空間541Cを有する。内部空間541Cは、8つの角561、562、563、564、565、566、567、568を有する。対向する角同士の距離は、例えば約10mm以上、12mm以下程度である。つまり、角561と角565との間の距離、角562と角566との間の距離、角563と角567との間の距離、および角564と角568との間の距離のそれぞれは、例えば約10mm以上、12mm以下程度である。
また、内部空間541Cは、8つの山部571、572、573、574、575、576、577、578と、8つの谷部581、582、583、584、585、586、587、588と、を有する八角の星形を呈するとともに、八角の星形の中央部に円591を有する。本変形例のように、本願明細書において「谷部」は、必ずしも尖っていなくともよく、乳首部52の内側に向かって突出していればよい。また、本変形例の内部空間541Cが呈する形状は、本発明の「八角の星形」に含まれる。八角の星形の中央部に形成された円591の直径は、例えば約6mm以上、8mm以下程度である。
図7(b)に表した矢印A11および矢印A12のように、軸A21(図2(b)参照)に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わると、乳首部52の弾性変形が生ずるとともに、乳首部52に反力が生ずる。そして、図7(c)に表したように、内部空間541Cが潰れて、乳首部52の一部の内面同士が接触する。本変形例では、第1内面551と第2内面552とが互いに接触する。また、第3内面553と第4内面554とが互いに接触する。
図7(c)に表したように、乳首部52の一部の内面同士が接触した後では、残留空間542Cが乳首部52の内部に残る。残留空間542Cは、乳首部52に加わった外力により内部空間541Cが潰れて乳首部52の一部の内面同士が接触した後に、乳首部52の内部に残った空間である。
軸A21に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52にさらに加わると、乳首部52の弾性変形がさらに生ずるとともに、乳首部52に反力が生ずる。そして、残留空間542Cが潰れる。この際、乳首部52の一部の内面同士が接触した部分において、摩擦が生ずる。本変形例では、残留空間542Cが潰れる際に、第1内面551と第2内面552とが互いに擦れ合い、摩擦が生ずる。また、残留空間542Cが潰れる際に、第3内面553と第4内面554とが互いに擦れ合い、摩擦が生ずる。そのため、残留空間542Cが残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542Cが残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542Cが残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542Cが残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりも大きい。
本変形例に係る人工乳首5Cにおいて、図7(b)に表したように、外力が乳首部52に加わる前に、8つの角561、562、563、564、565、566、567、568のうちの一対の角561、565が外力の方向(矢印A11および矢印A12の方向)に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置された場合を考える。この場合において、図7(b)に表した矢印A11および矢印A12の方向の外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わり、残留空間542Cが残ると、図7(c)に表したように、一対の角561、565とは異なる他の一対の角562、568、他の一対の角563、567および他の一対の角564、566が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に関して対称に配置される。
これによれば、残留空間542Cが残ったときに他の一対の角562、568、他の一対の角563、567および他の一対の角564、566が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に関して対称に配置されない場合と比較して、残留空間542Bは、潰れにくい。そのため、残留空間542Cが残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542Cが残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542Cが残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542Cが残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりもより確実に大きくなる。また、円591が八角の星形の中央部に形成されているため、残留空間542Cが残る前に、対向する谷部同士が接触することを抑えることができる。これにより、第1内面551と第2内面552との互いの接触および第3内面553と第4内面554との互いの接触をより確実に生じさせることができる。
次に、図8(a)〜図8(c)を参照して、人工乳首5の乳首部52の内部に形成された空間をさらに説明する。図8(a)〜図8(c)に関する説明では、図4(a)〜図4(c)に関して前述した人工乳首5を例に挙げる。但し、図8(a)〜図8(c)に関する説明は、図5(a)〜図7(c)に関して前述した人工乳首5A、5B、5Cについても適用可能である。図8(a)〜図8(c)は、図2(a)に表した切断面A1−A1における断面図である。
図4(a)〜図4(c)に関して前述した通り、人工乳首5は、乳首部52の内部に形成された内部空間541を有する。図4(a)〜図4(c)に表した例では、内部空間541は、四角の星形を呈する。例えば図8(a)に表したように、内部空間541の星形の部分は、乳首部52の上部521において略同じ幅を有し、乳首部52の中間部522から乳首部52の下部523に向かうと乳首部52の外形と同様に径外方向に広がる。具体的には、内部空間541のうち対向する角(例えば角561および角563)同士の距離、および内部空間541のうち対向する谷部(例えば谷部581および谷部583)同士の距離は、乳首部52の上部521において略同じであり、乳首部52の中間部522から乳首部52の下部523に向かうと長くなる。なお、乳首部52の上部521は、先端部53の近傍における乳首部52の部分である。乳首部52の中間部522は、先端部53と基部51との間における乳首部52の部分である。乳首部52の下部523は、基部51の近傍における乳首部52の部分である。
あるいは、例えば図8(b)に表したように、内部空間541の星形の部分は、乳首部52の中間部522において略同じ幅を有し、乳首部52の上部521および下部523のそれぞれにおいて上部521から下部523に向かうと乳首部52の外形と同様に径外方向に広がってもよい。具体的には、内部空間541のうち対向する角(例えば角561および角563)同士の距離、および内部空間541のうち対向する谷部(例えば谷部581および谷部583)同士の距離は、乳首部52の中間部522において略同じであり、乳首部52の上部521および下部523のそれぞれにおいて上部521から下部523に向かうと長くなってもよい。
あるいは、例えば図8(c)に表したように、内部空間541の星形の部分は、乳首部52の上部521、中間部522および下部523において略同じ幅を有していてもよい。具体的には、内部空間541のうち対向する角(例えば角561および角563)同士の距離、および内部空間541のうち対向する谷部(例えば谷部581および谷部583)同士の距離は、乳首部52の上部521、中間部522および下部523において略同じであってもよい。
次に、本発明者が実施した検討の例を説明しつつ、本実施形態に係る人工乳首の乳首部に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配を、図面を参照して説明する。本発明者は、乳頭混乱の原因のひとつとして乳首の力学的特性に着目し、人工乳首と授乳婦の乳首との間において力学的特性の違いが大きいと、人工乳首および授乳婦の乳首のいずれか一方に慣れた乳幼児が、人工乳首および授乳婦の乳首のいずれか他方を拒否するおそれがあると考えた。そこで、本発明者は、人工乳首および授乳婦の乳首の力学的特性の比較検討を行った。
まず、本発明者は、授乳婦の乳首を挟み授乳婦の乳首の反力(弾力)を測定する硬さ測定装置を製作した。図9に表したように、硬さ測定装置6は、第1挟み込み部61と、第2挟み込み部62と、を備える。第1挟み込み部61は、第1リニアモータ611と、第1ロッド612と、第1力覚センサ613と、第1挟み込みプレート614と、を有する。第2挟み込み部62は、第2リニアモータ621と、第2ロッド622と、第2力覚センサ623と、第2挟み込みプレート624と、を有する。
第1リニアモータ611が駆動すると、第1リニアモータ611に接続された第1ロッド612が図9に表した矢印A13の方向に移動する。第1挟み込みプレート614は、第1ロッド612に接続され、第1ロッド612の動きに連動して図9に表した矢印A15の方向に移動する。図10に表したように、授乳婦の乳首63が授乳婦の乳房から外側に向かって延びた方向における第1挟み込みプレート614の長さL3は、3mmである。
第2リニアモータ621が駆動すると、第2リニアモータ621に接続された第2ロッド622が図9に表した矢印A14の方向に移動する。第2挟み込みプレート624は、第2ロッド622に接続され、第2ロッド622の動きに連動して図9に表した矢印A16の方向に移動する。図10に表したように、授乳婦の乳首63が授乳婦の乳房から外側に向かって延びた方向における第2挟み込みプレート624のそれぞれの長さL3は、3mmである。
硬さ測定装置6は、第1挟み込みプレート614が図9に表した矢印A15の方向に移動し、第2挟み込みプレート624が図9に表した矢印A16の方向に移動することにより、授乳婦の乳首63を両側から挟み込む。このとき、授乳婦の乳首63の先端部と、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624のそれぞれと、の間の距離L2は、約5mm程度である。授乳婦の乳首63を挟み込む速度は、約1mm/秒程度である。そして、第1力覚センサ613および第2力覚センサ623は、授乳婦の乳首63が第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624により両側から挟み込まれたときの授乳婦の乳首63に生ずる反力を測定する。
また、本発明者は、硬さ測定装置6を用いて図12に表した比較例の人工乳首5Dを第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624により両側から挟み込む。図12は、図2(b)に表した切断面A2−A2における比較例の人工乳首5Dの断面図に相当する。人工乳首5Dが第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624により両側から挟み込まれる前の状態において、人工乳首5Dの内部に形成されている内部空間541Dは、円形を呈する。第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624により両側から人工乳首5Dを挟み込む条件は、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624により両側から授乳婦の乳首63を挟み込む条件と同様である。
授乳婦の乳首63が第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624により両側から挟み込まれたときの授乳婦の乳首63の反力の結果は、図11に表した実線の通りである。また、人工乳首5Dが第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624により両側から挟み込まれたときの人工乳首5Dの反力の結果は、図11に表した破線の通りである。
図11に表したグラフの横軸は、挟み込みの割合(挟み込み率)を表す。例えば、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624が授乳婦の乳首63を挟み込む位置における授乳婦の乳首63の外径が10mmである場合において、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624が授乳婦の乳首63を挟み込んだ結果、授乳婦の乳首63の外径が7mmになったとき挟み込み率は30%である。また、例えば、授乳婦の乳首63の外径が5mmになったとき挟み込み率は50%である。挟み込み率は、比較例の人工乳首5Dについても同様である。図11に表したグラフの縦軸は、授乳婦の乳首63および比較例の人工乳首5Dのそれぞれの反力である。反力は、第1力覚センサ613および第2力覚センサ623の測定値、あるいは第1力覚センサ613および第2力覚センサ623の測定値に基づいて算出される値である。
なお、本測定の例では、授乳婦の乳首63および人工乳首5Dのそれぞれの挟み込み率が50%になるまで、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624が授乳婦の乳首63および人工乳首5Dを挟み込む。また、授乳婦の乳首63については、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624が授乳婦の乳首63を挟み込むときの反力だけではなく、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624による授乳婦の乳首63の挟み込みを止めて授乳婦の乳首63が元の状態に戻るときの反力も測定する。
図11に表したグラフによれば、比較例の人工乳首5Dの反力は、挟み込み率に対して線形的に変化する。つまり、挟み込み率に対する人工乳首5Dの反力の勾配は、略一定である。
これに対して、授乳婦の乳首63の反力は、挟み込み率に対して非線形に変化する。具体的には、挟み込み率が約45%程度になると、授乳婦の乳首63の反力が急激に立ち上がる。言い換えれば、挟み込み率が約45%以上のときの授乳婦の乳首63の挟み込み率に対する反力の勾配は、挟み込み率が0%以上、約45%未満のときの授乳婦の乳首63の挟み込み率に対する反力の勾配よりも大きい。なお、図11に表したように、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624が授乳婦の乳首63を挟み込むとき反力と、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624による授乳婦の乳首63の挟み込みを止めて授乳婦の乳首63が元の状態に戻るときの反力と、の間には差が生ずる。
本測定の結果によれば、授乳婦の乳首63と比較例の人工乳首5Dとの間において、力学的特性の違いが存在することが分かった。具体的には、授乳婦の乳首63と比較例の人工乳首5Dとの間において、挟み込み率に対する乳首の反力の勾配が異なることが分かった。そこで、本発明者は、図4(a)〜図7(c)に関して前述した本実施形態に係る人工乳首5、5A、5B、5Cについてシミュレーションによる解析を行い、人工乳首5、5A、5B、5Cの力学的特性の検討を行った。
図13に表した解析モデル7は、硬さ測定装置6を模したモデルであり、第1挟み込みプレート614を模した第1プレートモデル71と、第2挟み込みプレート624を模した第2プレートモデル72と、を備える。解析モデル7は、第1プレートモデル71が図13に表した矢印A17の方向に移動し、第2プレートモデル72が図13に表した矢印A18の方向に移動することにより、人工乳首5、5A、5B、5Cを模した乳首モデル73を両側から挟み込む。乳首モデル73を両側から挟み込む方向は、図4(b)、図5(b)、図6(b)、図7(b)に表した矢印A11および矢印A12の通りである。すなわち、乳首モデル73の内部に形成された内部空間731(図13参照)の複数の角のうちの一対の角が外力の方向(矢印A11および矢印A12の方向)に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置されるように、乳首モデル73を配置する。そして、本解析では、乳首モデル73が第1プレートモデル71および第2プレートモデル72により両側から挟み込まれたときの乳首モデル73の反力と挟み込み率とが算出される。
図13に表した乳首モデル73のように、本解析では、乳首部52の内部に形成された内部空間541、541A、541B、541Cの形状が人工乳首5、5A、5B、5Cの力学的特性に及ぼす影響を分かりやすくするために、全体として略円錐状の人工乳首5、5A、5B、5Cを模した乳首モデル73の形状を全体として円柱に設定した。なお、図13に表した乳首モデル73は、図4(a)〜図4(c)に関して前述した人工乳首5を模した乳首モデルである。
乳首モデル73の外径は、12mmである。乳首モデル73の内部空間731において対向する角同士の距離は、10mmである。これは、例えば図4(a)〜図4(c)に関して前述した人工乳首5において、角561と角563との間の距離および角562と角564との間の距離のそれぞれが10mmであることに相当する。円柱の乳首モデル73の軸方向における第1プレートモデル71および第2プレートモデル72のそれぞれの長さは、3mmである。円柱の乳首モデル73の端面732と、第1プレートモデル71および第2プレートモデル72のそれぞれの側面と、の間の距離は、5mmである。これは、授乳婦の乳首63の先端部と、第1挟み込みプレート614および第2挟み込みプレート624のそれぞれと、の間の距離L2が5mmであることに相当する。
本解析において使用したソフトウェアは、「ANSYS Workbench Mechanical」である。境界条件を含む本解析の条件は、以下の通りである。すなわち、境界条件として、挟み込み率を0%以上、50%以下に設定した。つまり、乳首モデル73の外径が12mmであるため、第1プレートモデル71を図13に表した矢印A17の方向に3mm移動させ、第2プレートモデル72を図13に表した矢印A18の方向に3mm移動させることにより、第1プレートモデル71および第2プレートモデル72の両方を合わせて6mm移動させる。これにより、乳首モデル73は、乳首モデル73の外径が6mmになるまで第1プレートモデル71および第2プレートモデル72により両側から挟み込まれる。また、境界条件として、第1プレートモデル71および第2プレートモデル72のそれぞれの側面から5mm離れた位置に存在する乳首モデル73の端面732とは反対側の乳首モデル73の端面733を固定した。
乳首モデル73の材料は、硬度32のシリコーンゴムである。シリコーンゴムの物性値については、単軸圧縮試験の「応力−ひずみ」の結果を使用した。ひずみ密度関数については、2次Yeoh関数に当てはめた。乳首モデル73と、第1プレートモデル71および第2プレートモデル72と、の互いの接触は、ゴム同士の接触に相当するものとした。そこで、乳首モデル73と、第1プレートモデル71および第2プレートモデル72と、の間の摩擦係数を「0.5」に設定した。また、収束性を向上させるために、Newton-Raphsonの設定を非対称に設定した。乳首モデル73と、第1プレートモデル71および第2プレートモデル72と、の互いの接触の挙動については、非対称に設定した。このとき、片方の面が相対的に細かいメッシュである場合には、相対的に細かいメッシュの側をコンタクト面に設定し、相対的に粗いメッシュの側をターゲット面に設定する必要がある。そのため、本解析では、乳首モデル73をコンタクト面に設定した。
図4(a)〜図7(c)に関して前述したように、内部空間541、541A、541B、541Cが潰れて、乳首部52の一部の内面同士が接触する。そこで、乳首モデル73の一部の内面同士の摩擦係数を「0.5」に設定した。また、乳首モデル73の一部の内面同士の接触判定を確実に行うため、接触挙動を対称に設定した。
さらに、本解析の条件として、メッシュの形状は、0.6mmの六面体一次要素である。定式化方法は、拡大ラグランジュ法である。検出方法は、コンタクト面から垂直に投影する方法である。
人工乳首5、5A、5B、5Cを模した乳首モデル73についてのシミュレーションによる解析の結果は、図14および図15に表した通りである。すなわち、人工乳首5、5A、5Bを模した乳首モデル73の挟み込み率と、乳首モデル73に生ずる反力と、の関係が、図14に表されている。また、人工乳首5Cを模した乳首モデル73の挟み込み率と、乳首モデル73に生ずる反力と、の関係が、図15に表されている。図14および図15に表したグラフの横軸は、挟み込み率を表す。図14および図15に表したグラフの縦軸は、乳首モデル73の反力である。なお、図15に表したグラフでは、授乳婦の乳首63の挟み込み率と、授乳婦の乳首63の反力と、の関係が比較の対象として表されている。
図14および図15に表したグラフによれば、人工乳首5、5A、5B、5Cを模した乳首モデル73の反力は、挟み込み率に対して非線形に変化しており、約40%以上、約45%以下の範囲において急激に立ち上がっている。言い換えれば、挟み込み率が約40%以上、約45%以下の範囲に到達した後の人工乳首5、5A、5B、5Cを模した乳首モデル73の挟み込み率に対する反力の勾配は、挟み込み率が約40%以上、約45%以下の範囲に到達する前の人工乳首5、5A、5B、5Cを模した乳首モデル73の挟み込み率に対する反力の勾配よりも大きい。一方で、授乳婦の乳首63の反力は、挟み込み率に対して非線形に変化し、挟み込み率が約45%程度になると急激に立ち上がっている。これは、図11に関して前述した通りである。このように、本解析によれば、人工乳首5、5A、5B、5Cを模した乳首モデル73の力学的特性は、授乳婦の乳首63の力学的特性に近似することが分かった。また、人工乳首5、5A、5B、5Cを模した乳首モデル73の中で相対的に、人工乳首5Cを模した乳首モデル73において、乳首モデル73の反力の値を授乳婦の乳首63の反力の値に近づけることができることが分かった。
次に、本実施形態に係る人工乳首5、5A、5Bについての他のシミュレーションによる解析を、図16(a)〜図19を参照して説明する。母親等は、哺乳器2を用いて飲料を乳幼児に与えるときに、哺乳器2を常に同じように把持するとは限らない。そのため、乳幼児は、哺乳器2のボトル3に装着された人工乳首を常に同じ方向から咥えるとは限らない。そこで、本発明者は、人工乳首5、5A、5Bを模した乳首モデル73の挟み込み方向を変更し、図13に関して前述した解析条件と同様の条件により、人工乳首5、5A、5Bについてシミュレーションによる解析を行った。
本発明者は、乳首モデル73の内部に形成された内部空間731(図13参照)が潰れにくいと考えた挟み込み方向から第1プレートモデル71および第2プレートモデル72により乳首モデル73の両側を挟んだ。すなわち、図16(a)〜図16(c)に表したように、乳首モデル73の内部空間731の複数の谷部のうちの一対の谷部が外力の方向(矢印A11および矢印A12の方向)に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置されるように、乳首モデル73を配置した。具体的には、図16(a)に表したように、人工乳首5を模した乳首モデル73では、一対の谷部581、583が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置されるように、乳首モデル73を配置した。また、図16(b)に表したように、人工乳首5Aを模した乳首モデル73では、一対の谷部581、584が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置されるように、乳首モデル73を配置した。また、図16(c)に表したように、人工乳首5Bを模した乳首モデル73では、一対の谷部581、585が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置されるように、乳首モデル73を配置した。
挟み込み方向を変更した後の人工乳首5、5A、5Bを模した乳首モデル73についてのシミュレーションによる解析の結果は、図17〜図19に表した通りである。すなわち、挟み込み方向を変更した後の人工乳首5を模した乳首モデル73の挟み込み率と、乳首モデル73に生ずる反力と、の関係が、図17に表されている。挟み込み方向を変更した後の人工乳首5Aを模した乳首モデル73の挟み込み率と、乳首モデル73に生ずる反力と、の関係が、図18に表されている。挟み込み方向を変更した後の人工乳首5Bを模した乳首モデル73の挟み込み率と、乳首モデル73に生ずる反力と、の関係が、図19に表されている。
図17〜図19に表した「変更前」とは、挟み込み方向を変更する前、すなわち乳首モデル73の内部空間731の複数の角のうちの一対の角が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置されるように、乳首モデル73が配置された状態を示す(図4(b)、図5(b)、図6(b)参照)。また、図17〜図19に表した「変更後」とは、挟み込み方向を変更した後、すなわち乳首モデル73の内部空間731の複数の谷部のうちの一対の谷部が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置されるように、乳首モデル73が配置された状態を示す(図16(a)〜図16(c)参照)。
図17〜図19に表したグラフによれば、挟み込み方向を変更した後においても、人工乳首5、5A、5Bを模した乳首モデル73の反力は、挟み込み率に対して非線形に変化しており、約40%以上、約45%以下の範囲において急激に立ち上がっている。また、人工乳首5、5A、5Bを模した乳首モデル73の中で相対的に、人工乳首5B(内部空間が八角の星形を呈する乳首)を模した乳首モデル73において、挟み込み方向を変更した後の乳首モデル73の力学的特性が挟み込み方向を変更する前の乳首モデル73の力学的特性に近似することが分かった。
以上説明したように、本実施形態によれば、基部51の基部開口511の中心部512と、飲料排出口531と、を通る軸A21に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わると、乳首部52の弾性変形が生ずるとともに、乳首部52に反力(弾力)が生ずる。そして、乳首部52の一部の内面同士が接触する。乳首部52の一部の内面同士が接触した後では、残留空間542、542A、542B、542Cが乳首部52の内部に残る。軸A21に対して垂直な方向において互いに対向する外力が乳首部52の両側から乳首部52にさらに加わると、乳首部52の弾性変形がさらに生ずるとともに、乳首部52に反力が生ずる。そして、残留空間542、542A、542B、542Cが潰れる。この際、乳首部52の一部の内面同士が接触した部分において、摩擦が生ずる。そのため、残留空間542、542A、542B、542Cが残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542、542A、542B、542Cが残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542、542A、542B、542Cが残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542、542A、542B、542Cが残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりも大きい。
そのため、外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わるときの人工乳首5、5A、5B、5Cの反力は、非線形的に変化し、乳首部52の一部の内面同士が接触し残留空間542、542A、542B、542Cが潰れる際に急に立ち上がる。これにより、人工乳首5、5A、5B、5Cの力学的特性を授乳婦の乳首63の力学的特性に近づけることができる。そのため、授乳期の乳幼児における乳頭混乱の発生を抑えることができる。
また、軸A21に対して垂直な乳首部52の断面において、外力が乳首部52に加わる前の内部空間541、541A、541B、541Cは、複数の角を有する。外力が加わる前に複数の角のうちの一対の角が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に沿って配置された場合において、外力が乳首部52の両側から乳首部52に加わり、残留空間542、542A、542B、542Cが残ると、一対の角とは異なる他の一対の角が外力の方向に対して垂直な軸A22に関して対称に配置される。
これによれば、残留空間542、542A、542B、542Cが残ったときに他の一対の角が外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に対して対称に配置されない場合と比較して、残留空間542、542A、542B、542Cは、潰れにくい。そのため、残留空間542、542A、542B、542Cが残った後に乳首部52に生ずる反力は、残留空間542、542A、542B、542Cが残る前に乳首部52に生ずる反力よりも大きい。そのため、残留空間542、542A、542B、542Cが残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542、542A、542B、542Cが残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりもより確実に大きくなる。これにより、人工乳首5、5A、5B、5Cの力学的特性を授乳婦の乳首63の力学的特性により確実に近づけることができる。
また、軸A21に対して垂直な乳首部52の断面において、外力が乳首部52に加わる前の内部空間541、541A、541B、541Cは、山部と谷部とを有する星形を呈する。これにより、残留空間542、542A、542B、542Cが潰れた際に、乳首部52の一部の内面同士がより確実に接触し、乳首部52の一部の内面同士が接触した部分において、摩擦がより確実に生ずる。そのため、残留空間542、542A、542B、542Cが残った後に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配は、残留空間542、542A、542B、542Cが残る前に乳首部52に生ずる挟み込み率に対する反力の勾配よりもより確実に大きくなる。これにより、人工乳首5、5A、5B、5Cの力学的特性を授乳婦の乳首63の力学的特性により確実に近づけることができる。
また、軸A21に対して垂直な乳首部52の断面において、外力が乳首部52に加わる前の内部空間541は、四角の星形を呈する。内部空間541Aは、六角の星形を呈する。内部空間541B、541Cは、八角の星形を呈する。これによれば、乳首部52の内部空間541、541A、541B、541Cを比較的容易に形成することができるとともに、外力の方向に対して垂直な方向の軸A22に関して内部空間541、541A、541B、541Cの形状を対称形状に形成することができる。これにより、授乳期の乳幼児が人工乳首5、5A、5B、5Cを咥える方向に応じて乳首部52に生ずる反力が変化する度合を抑えることができる。そのため、人工乳首5、5A、5B、5Cの力学的特性を授乳婦の乳首63の力学的特性により確実に近づけることができる。そのため、授乳期の乳幼児における乳頭混乱の発生をより一層抑えることができる。なお、以上説明した効果は、人工乳首5、5A、5B、5Cを備えた哺乳器2においても同様に得られる。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。