JP2021031510A - 消火薬剤を噴出する塗料又はシーラント - Google Patents

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孝 松浦
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Abstract

【課題】建築物の火災を延焼前に自己消火することで初期対応できる、火災を感知してフッ化酸化炭化水素系消火薬剤を自動で噴出する塗料並びにシーラントを提供する。【解決手段】水性若しくは油性の液体又はゾル状物と消火薬剤を内包し、液体又はゾル状物中に体積比20%以上で含有するマイクロカプセルと、を有し、消火薬剤は、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を主成分とし、かつ大気圧下での沸点が−20℃から60℃の間で、かつ25℃における蒸気圧が0.03MPa(0.3Bar)以上の消火薬剤であり、マイクロカプセルは、所定の外殻材を有し、直径10〜200μm、常温でガス非透過性であり、周囲温度が80〜180℃に上昇すると、可塑化、溶解、燃焼、変形又は破壊により、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を放出するマイクロカプセルである、塗料またはシーラント。【選択図】図2

Description

本発明は、消火薬剤を噴出する塗料又はシーラントに係り、塗工乾燥後、周囲が設定温度を超えると、その内部からフッ化酸化炭化水素系消火薬剤を自動で噴出する塗料又はシーラントに関するものである。
近年、ブラジル・リオデジャネイロの国立博物館での火災が生じ、約2000万点の貴重な収蔵品が焼失したり、フランス・パリのノートルダム大聖堂で火災が生じ、貴重な文化財が消失するなどの、極めて残念な大火災が生じている。また、英国・ロンドンのグレンフェルタワーマンション火災を代表例とするような集合住宅やビルの火災も深刻な問題となっている。すなわち、建造物にとって、火災延焼は大きな脅威である。
これらの火災例では、建造物の全体に火が拡がってしまったが、もし、発火場所付近で自動で鎮火することができていれば、建造物の一部のみの焼け焦げ程度で済み、建物全体への延焼は防げていた可能性が高い。すなわち、発火源近傍で極めて簡単なシステムで自動で初期消火を有効に行える方式が待望されている。
こうした建造物の防火を目的に、自己消火性シートや消火性ペンキが開示されている。例えば、特許文献1には、油性又は水性塗料に、ジブロテトラフルオロエタン(通称ハロン2402)をアクリル系の樹脂で包含した微粒樹脂カプセルを混入した消火性ペンキが開示されている。しかしながら、ハロン2402は毒性があり、オゾン層破壊防止の点から、1994年から生産が全廃されており、この方法により消火性ペンキを工業生産することはできなくなっている。
また、特許文献2には、ブロモトリクロロメタン、四塩化炭素、四臭化エタン、フレオン114B2、パラニトロアニリン、トリヨードエタン等のハロゲン化物あるいは水を芯物質とする消火性マイクロカプセルを、アルミニウム、珪素、マンガン、鉄、チタンなどの金属アルコキシドの無機質塗料に分散させて塗工後乾燥させた自己消火性シートが開示されている。しかしながら、これらのハロゲン化物は毒性があり、火災時やシート製造時ばかりでなく、シートを用いた建築施工時にも消火薬剤一部漏出による中毒の危険性があるなど、安全性に問題がある。
また、特許文献3には、赤リン、リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、樹脂バインダーを成分とする消火性塗料が開示されている。しかしながら、この塗料は、防水シートの裏面側に配置して燃焼を抑制する用途に限られており、消火までに5分以上かかっておりその消火性能が不十分と考えられる上、赤リンの安全性確保といった課題もあって、実用に供しにくい。
さらに、特許文献4には、CHBr又はCHBrを、ジアジンエポキシレジン又は脂肪族エポキシレジン又はこれらの混合物を殻としたマイクロカプセル内に閉じ込めて、難燃性の金属アルコキドと混合した塗料が開示されている。しかしながら、CHBrやCHBrは有毒であるうえ、特許文献4に開示された直径100〜400ミクロンで消火薬剤の分量が90〜94重量%のマイクロカプセルでは、機械的ストレスだけでも容易に毒性消火薬剤の漏出の危険がある。さらにその消火性能は、住環境とは桁違いに小さい150×150×150mmの小さな金属箱ボックス内での消火でさえ、その内側全面を、塗料としては厚すぎる5mm厚ものシートで完全にカバーして試験を行う必要があったことから、一般火災の延焼には十分対応できないもので、不十分なものである。
すなわち、従来の公知技術によっては、人体や環境に対して安全で、消火性能として十分な効果が得られる、自動消火塗料は完成しておらず、当然ながら現在市場にも有効な製品は見当たらない。
特開昭58−132056号公報 特開平5−84873号公報 特開2003−238896号公報 特開2007−319350号公報
本発明者らは、上記のような、建造物の火災の深刻性を憂慮して本発明を想到するに至ったものであり、本発明は、建築物の一部から発火した場合に、その発火危険が想定される場所付近に塗工設置しておくことで、火災を延焼前に自己消火することで初期対応できる、火災を感知してフッ化酸化炭化水素系消火薬剤を自動で噴出する塗料又はシーラントを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段は、次の態様を含む、
<1>
塗工後に火災を感知して消火薬剤を自動で噴出する塗料またはシーラントであって、
水性若しくは油性の液体又はゾル状物と、
消火薬剤を内包し、前記液体又はゾル状物中に体積比20%以上で含有するマイクロカプセルと、
を有し、
前記消火薬剤は、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を主成分とし、かつ大気圧下での沸点が−20℃から60℃の間で、かつ25℃における蒸気圧が0.03MPa(0.3Bar)以上の消火薬剤であり、
前記マイクロカプセルは、ポリエステル、ポリ尿素、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、熱硬化性樹脂、シリコンゴム、ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリエチレン、ポリイソブチレン、耐熱性合成ゴム、セルロース、硝酸セルロース及びこれらの誘導体、のうち少なくとも一種を含む単体又は混合物を含む外殻材を有し、直径10〜200μm、常温でガス非透過性であり、周囲温度が80〜180℃に上昇すると、可塑化、溶解、燃焼、変形又は破壊により、前記フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を放出するマイクロカプセルである、
塗料またはシーラント。
<2>
前記液体又は前記ゾル状物中に含有する硝酸セルロース又はその誘導体を有する<1>に記載の塗料またはシーラント。
本発明によれば、文化財を含む建造物や歴史的建造物並びに重要機器が設置されている建造物に代表される貴重な建造物の火災を、その発火源近傍で感知して自動鎮火するための、毒性の低く環境にも優しくありながら消化能力の優れたフッ化酸化炭化水素系消火薬剤を噴出する塗料又はシーラントを提供することができる。
本発明の実施例に係る、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を内包するマイクロカプセルの一例を示す模式図である。 本発明の実施例に係る、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を噴出する塗料又はシーラントを塗工適用した一例を示す模式図である。 本発明の実施例に係る、塗料を塗工乾燥した塗工層の断面の電子顕微鏡写真である。本写真では、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を内包していたマイクロカプセルの外殻の切断面が多数確認でき、その直径はおよそ10〜200μmである。 本発明の実施例に係る、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤の含有量と防護空間の体積(V)及び防護空間を囲う全塗料塗工面積(S)から塗料の塗工必要最小厚み(t)を計算する場合の説明図である。
本発明の具体的な実施形態を、図面を参照して限定的にではなく例示的に以下に説明する。図面において同一の参照符号は、同一又は類似の構成要素や部分を示す。図面は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを当業者は理解しなければならない。
本発明の塗料又はシーラントは、火災を感知して消火薬剤を自動で噴出する塗料またはシーラントである。
本発明の塗料又はシーラントは、水性若しくは油性の液体又はゾル状物と、消火薬剤を内包し、液体又はゾル状物中に体積比20%以上で含有するマイクロカプセルと、を有する。なお、ゾル状物とは、コロイド、サスペンジョン、エマルジョン等ともよばれる物質である。
具体的には、本発明の塗料又はシーラントは、例えば、水性または油性の液体またはゾル状物を塗料又はシーラント母材とし、母材中に、消火薬剤を内包したマイクロカプセルが液体又はゾル状物中に体積比20%以上で含有している。
ここで、「塗工後に火災を感知して消火薬剤を自動で噴出する」とは、火災による炎で昇温したとき、マイクロカプセルの、可塑化、溶解、燃焼、変形又は破壊により、マイクロカプセルに内包された消火薬剤が、塗料又はシーラントの塗工層の外部へ放出されることを意味する。
−液体又はゾル状物−
本発明の塗料又はシーラントは、既知の塗料又はシーラント母材の中から選択することができ、金属アルコキシドなどの無機質塗料又は無機質シーラントであってもなくてもどちらでも構わない。従って、建築物に適用する場合の主たる用途に合わせた性状の液体又はゾル状物)を選択することができる。
例えば、液体としては、水性アクリル樹脂塗料、水性ポリウレタン樹脂塗料、水性アクリルシリコン樹脂塗料、水性フッ素樹脂塗料等が挙げられる。
ゾル状物は、アクリルゾル、変性シリコーンシーラントゾル、ポリウレタンシーラントゾル等が挙げられる。
−消火薬剤−
消火薬剤は、人体や生態系への毒性が低く地球環境にも優しい消火薬剤でなくてはならない。従って、塩素原子、臭素原子、沃素原子を含んだ化合物は避けるべきである。
消火薬剤は、液体またはゾル状の塗料又はシーラント母材中に分散させる必要があるので、消火薬剤自身が固体または液体といった物理的性状が凝縮相であること、言い換えると、常温で気体ではないこと、より正確には常温での蒸気圧が大気圧以下であること、が好適である。一方、火災時に自動放出されたときに、十分に高い蒸気圧で放出されて消火効果が発揮できるように、その蒸気圧がある程度は高くなくてはならない。
そのような物理的蒸気圧特性を持つ物質は、通常、常温で液体である有機化合物である。しかしながら、消化能力がありながら、塩素原子、臭素原子、沃素原子を含まない液体有機化合物は、これまでに合成されたものの中では限られた物質系だけである。
すなわち、塩素原子、臭素原子、あるいは沃素原子ではなくて、酸素原子を有機化合物中の構成元素の一つとすることで、消化能力の高い有機化合物でありながら、液体性状とすることができる。その代表例はフルオロケトン等で代表されるフッ化酸化炭化水素系消火薬剤である。
よって、消火薬剤は、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を主成分とし、かつ大気圧下での沸点が−20℃から60℃の間で、かつ25℃における蒸気圧が0.03MPa(0.3Bar)以上(好ましくは、0.03〜0.10MPa)の消火薬剤が適用される。
ここで、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤とは、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されており、かつケトン基又はエーテル基として酸素原子を含む炭化水素化合物である。フッ化酸化水素系消火薬剤としては、例えば、フルオロケトン(例えば、ヘプタフルオロイソプロピルペンタフルオロエチルケトン等)、ペルフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロポリエーテル等が挙げられる。
−マイクロカプセル−
消火薬剤を塗料又はシーラント母材中に分散させた塗料又はシーラントを塗工した場合に、火災発生前に蒸散してしまわないようにすることが必要である。このため、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を内包させたマイクロカプセルを塗料又はシーラント母材中に分散させることがよい。図1に、製造したマイクロカプセル1の模式図を示す。図1のマイクロカプセル1は、合成樹脂外殻2中に、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤3が覆われて内包している。
消火薬剤を内包させるマイクロカプセルとしては、常温(25℃)でガス非透過性であり、周囲温度が火災による温度上昇として想定される80〜180℃に上昇すると、可塑化、溶解、燃焼、変形又は破壊により、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を放出する構成であることが好適である。
こうした性能を持つマイクロカプセルの外殻材としては、ポリエステル、ポリ尿素、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、熱硬化性樹脂、シリコンゴム、ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリエチレン、ポリイソブチレン、耐熱性合成ゴム、及びこれらの誘導体、のうち少なくとも一種を含む単体又は混合物から選択することができる。また、外殻材には、界面活性剤、ガラス繊維、シリカゲル、その他安定剤等を加えて、性能の最適化を行うことも有効である。
ここで、樹脂の誘導体としては、不飽和ポリエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル、導電性シリコンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ニトリル・ブタジエンゴム、ポリエチレンオキシド、ポリイソブチレンオキシドが例示できる。
マイクロカプセルのサイズについては、あまり小さすぎては、粘性のある塗料やシーラント中に均一に分散させにくく、また、含有消火薬剤量を高くできないので、消化能力に問題が起こる。一方、あまり大きすぎては、塗工時の不均一性や、塗工後の圧迫といった機械的応力によってマイクロカプセルの破壊が起き、消火薬剤が消散し、経年劣化に耐えられない。これら両者の観点から、直径10〜200μmのマイクロカプセルを主成分とするマイクロカプセルであれば、塗料又はシーラント母材に分散することで、十分な消火能力を持たせながら、機械的応力にも実効的に耐えられる塗料またはシーラントを製造することができる。
よって、マイクロカプセルは、ポリエステル、ポリ尿素、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、熱硬化性樹脂、シリコンゴム、ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリエチレン、ポリイソブチレン、耐熱性合成ゴム、セルロース、硝酸セルロース及びこれらの誘導体、のうち少なくとも一種を含む単体又は混合物を含む外殻材を有し、直径10〜200μm、常温でガス非透過性であり、周囲温度が80〜180℃に上昇すると、可塑化、溶解、燃焼、変形又は破壊により、前記フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を放出するマイクロカプセルを適用する。
ここで、マイクロカプセルの直径は、任意の10個のマイクロカプセルの最大径を測定し、その平均値とする。
「常温(25℃)でのガス非透過性」とは、気化した内包薬剤の透過率が、JIS K7126−1(2006)で規定するガスクロマトグラフ法によるガス透過度試験方法で検出限界)以下であることを意味する。
つまり、「常温(25℃)でのガス非透過性」とは、常温(25℃)で、マイクロカプセルの殻が気化した内包薬剤を透過し難い性質を意味し、塗料又はシーラントの実用年数(例えば1〜5年)内で、消火機能が働かない程度までマイクロカプセル内の内包薬剤が減少しない性質を意味する。
消火薬剤を内包したマイクロカプセルの含有量は、十分な消火機能を発揮する観点から、塗料又はシーラントに対する体積比で20%以上とする。同観点から、マイクロカプセルの含有量は、好ましくは30%以上とする。ただし、マイクロカプセルの含有量の上限は、塗料又はシーラントの塗工上の観点から、例えば、70%以下とする。
なお、マイクロカプセルの製造方法としては、外殻材の原料樹脂を密閉製造容器内で硬化させる工程中に、原料樹脂の流体を攪拌しながらフッ化酸化炭化水素系消火薬剤の液体を微細ノズルから原料樹脂の流体中に噴出させることなどにより、マイクロサイズの粒滴状のままの消火薬剤を内包したカプセルを得る方法が例示できる。
−その他−
本発明の塗料又はシーラントは、硝酸セルロース又はその誘導体を含有してもよい。なお、硝酸セルロースの誘導体としては、膠化剤や安定化剤を添加した硝酸セルロース、溶剤に溶かした硝酸セルロース等の、製造工程の利便さを向上させる硝酸セルロースの誘導体が例示される。
塗料又はシーラントに硝酸セルロース又はその誘導体を含有すると、塗料又はシーラントの塗工により形成された塗膜の表面の一部分の温度が150℃またはそれ以上の設定温度に上昇すると、硝酸セルロース又はその誘導体が分解して自己加熱する。それにより、塗料またはシーラント全体が連鎖的に自己加熱を続け、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を塗工箇所全体から連鎖的に放出して火災を一気に鎮火することができる。
本発明の塗料又はシーラントは、対象物に塗工乾燥後、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤の包含するマイクロカプセルを含む固体またはゲル状物として固定される。そして、この塗工層(つまり固体またはゲル状物)が消火部材として機能する。
上記に例示された本発明の塗料又はシーラントによれば、毒性の低く環境にも優しくありながら消化能力の優れたフッ化酸化炭化水素系消火薬剤を噴出する塗料並びにシーラントを提供することができる。
<実施例1>
本実施例においては、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤としてヘプタフルオロイソプロピルペンタフルオロエチルケトンを用いた。これは室温常圧で液体である。また、マイクロカプセルの外殻材としてエポキシ系熱硬化樹脂を用い、塗料剤としてアクリル樹脂系水溶性塗料を用いた。
まず、加熱反応容器中にエポキシ系熱硬化樹脂材料を充填し、密閉して40℃に加熱して回転翼で攪拌しながら、噴射ノズルから毎秒1mLでヘプタフルオロイソプロピルペンタフルオロエチルケトンを噴射注入した。所定量のヘプタフルオロイソプロピルペンタフルオロエチルケトンを注入して十分攪拌し乳化分散させた後、硬化剤を添加してさらに6時間攪拌し続けた。その結果、平均厚さ5μmのエポキシ系熱硬化樹脂製の外殻内に、約350pLのヘプタフルオロイソプロピルペンタフルオロエチルケトンの粒滴が内包された、直径100μmのマイクロカプセルを得た。図1に、製造したマイクロカプセル1の模式図を示す。
次いで、このマイクロカプセルを、アクリル樹脂系水溶性塗料中に約50%体積比で分散した。図2の模式図に示すように、この塗料を建材の壁面に3回重ね塗り乾燥を繰り返し、塗工厚を約1mmとした塗工層を形成した。図3は、塗工層の資料片の一部を切り取った試料の断面の電子顕微鏡写真である。上記のようにして塗工した本実施例の試料片を熱重量分析により分析した結果、150℃でマイクロカプセルの分解(つまり破壊)が開始し、消火薬剤が放出されることが確認された。
さらに、本実施例の塗料を塗布したベニヤ板上に、マッチの炎や、煙草着火ライターの炎を近づけたところ、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤が塗工層の表面から噴出し、数秒以内に炎は消火された。
なお、本実施例のように、建造物に塗工する場合には、同時に別の数枚の試験板にも同条件で塗工し、建造物とともに長年保存して、随時経年劣化の有無を試験モニターすることが実用上有効である。
<実施例2>
消火薬剤を自動放出する塗工層の最低厚みを防火区画の空間体積から見積もる方法を以下に示す。これにより、塗工時の作業ガイドラインを与えることができる。図4に示すように、防護空間の体積をV(単位=m)、防護空間を囲う全塗料塗工面積をS(単位=m)、塗料の塗工必要最小厚みをt(単位=m)とすると
V×消火薬剤の有効消火濃度×安全率=S×t×塗料中の消火薬剤濃度
の関係がある。
消火薬剤の有効消火濃度を0.35kg/m、安全率を1.4、実施例1の場合の塗料中の消火薬剤濃度500kg/mの値を使うと、V/(S×t)=1000となる。 すなわち、一様に消火ガスが拡がるとして塗工層の体積の約1000倍の空間体積を防護できることになる。換言すると、建材の壁面全面に1mm厚で塗料を塗工すれば壁面から1m、建材の壁面全面に2mm厚で塗料を塗工すれば約2mの距離まで、消火可能となる。
この結果からもわかるように、本発明における消火薬剤を自動で噴出する塗料並びにシーラントは、塗工機能が維持される限り多量であることが望ましいが、その含有量を体積比20%以上、好ましくは30%以上で含有させることで、十分な消火性能を有する塗料またはシーラントを製作することができることがわかる。
<実施例3>
さらに高機能の塗料とするために、実施例1に記載のマイクロカプセルを使用し、これを液体塗料に分散させるときに、同時に硝酸セルロースを約15%分散含有させた。この塗料を35cm×35cmの面積のベニヤ板上に全面塗工し、厚さ約1mmの塗工層を形成した。
この板を、50cm×50cm×40cmの消火試験室中の壁面に設置した。続いて、水分含有率約10重量%の2.5cm×2.5cm×11cmの松の木材を使用して、1段に3個ずつ均等に配列して4段に交差して配置(3列4段)した木材組とした。
この木材組に点火して予備燃焼を3分間外部で行った後、消火試験室の中央に移動配置した。火災試験室の扉を閉鎖後約15秒で、硝酸セルロースが塗工面で反応し、塗工面全面から消火薬剤が噴出して数秒以内に炎は自動で消し止められた。その後、30分以上放置したが、再発火は起こらなかった。
本実施例で示されるように、硝酸セルロースを含有する塗料は、火災による温度上昇に反応して塗工面全体から一気に消火薬剤を噴出させることができるため、消火機能の向上が達成される。
ここまで本発明の複数の実施形態を示して詳細に説明したが、本発明の精神や範囲から逸脱しない限り本発明に開示される内容に従って、本発明の原理に合致する他の多くの変更や改良を直接見出したり導き出したりすることも可能であることを、当業者は理解すべきである。したがって、本発明の範囲はこれら他の変更や改良をすべて包含するものと理解され判断されなければならない。
1 フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を内包するマイクロカプセル
2 フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を内包するマイクロカプセルの外殻
3 内包されたフッ化酸化炭化水素系消火薬剤
4 フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を内包するマイクロカプセルを含有した塗料を塗工した建材表面
5 フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を自動で噴出する塗料を塗工した塗工層
6 塗料が塗工される建材
7 火災を防護されるべき空間層

Claims (2)

  1. 塗工後に火災を感知して消火薬剤を自動で噴出する塗料またはシーラントであって、
    水性若しくは油性の液体又はゾル状物と、
    消火薬剤を内包し、前記液体又はゾル状物中に体積比20%以上で含有するマイクロカプセルと、
    を有し、
    前記消火薬剤は、フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を主成分とし、かつ大気圧下での沸点が−20℃から60℃の間で、かつ25℃における蒸気圧が0.03MPa(0.3Bar)以上の消火薬剤であり、
    前記マイクロカプセルは、ポリエステル、ポリ尿素、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、熱硬化性樹脂、シリコンゴム、ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリエチレン、ポリイソブチレン、耐熱性合成ゴム、セルロース、硝酸セルロース及びこれらの誘導体、のうち少なくとも一種を含む単体又は混合物を含む外殻材を有し、直径10〜200μm、常温でガス非透過性であり、周囲温度が80〜180℃に上昇すると、可塑化、溶解、燃焼、変形又は破壊により、前記フッ化酸化炭化水素系消火薬剤を放出するマイクロカプセルである、
    塗料またはシーラント。
  2. 前記液体又は前記ゾル状物中に含有する硝酸セルロース又はその誘導体を有する請求項1に記載の塗料またはシーラント。
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