JP2021029145A - 多能性細胞の分化能マーカー、多能性細胞の分化能の評価方法、多能性細胞の製造方法および多能性細胞の分化能向上候補物質のスクリーニング方法 - Google Patents

多能性細胞の分化能マーカー、多能性細胞の分化能の評価方法、多能性細胞の製造方法および多能性細胞の分化能向上候補物質のスクリーニング方法 Download PDF

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英政 加藤
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啓子 加門
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Abstract

【課題】 iPS細胞等の多能性細胞の分化能を評価可能な、新たな多能性細胞の分化能マーカーを提供する。【解決手段】 本発明の多能性細胞の分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つを含む。【選択図】 図2

Description

本発明は、多能性細胞の分化能マーカー、多能性細胞の分化能の評価方法、多能性細胞の製造方法および多能性細胞の分化能向上候補物質のスクリーニング方法に関する。
マウス人工多能性幹細胞(iPS細胞)の分化能の評価方法としては、四倍体の胚内に対象のiPS細胞を導入し、偽妊娠マウスに胚移植を行ない、評価する方法が知られている。
また、ヒトiPS細胞の分化能の評価方法として、NOD−Scidマウス等の免疫不全マウスに対象のiPS細胞を移植し、形成されたテラトーマの組織構造に基づき評価する方法が知られている(非特許文献1)。
しかしながら、テラトーマによるiPS細胞の評価方法は、三胚葉への分化能の定性的な評価方法であり、定量的な評価方法ではない。このため、評価したiPS細胞を各胚葉の細胞に分化させた際に、分化のしやすさが異なるという問題がある。
そこで、本発明は、iPS細胞等の多能性細胞の分化能を評価可能な新たな多能性細胞の分化能マーカーの提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の多能性細胞の分化能マーカー(以下、「分化能マーカー」ともいう)は、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
本発明の多能性細胞の分化能の評価方法(以下、「評価方法」ともいう)は、多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程と、
前記測定工程における多能性細胞の分化能マーカーの発現量に基づき、前記多能性細胞の分化能を評価する評価工程とを含み、
前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つである。
本発明の多能性細胞の分化能の評価試薬(以下、「評価試薬」ともいう)は、多能性細胞の分化能マーカーの発現測定試薬を含み、
前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記本発明の評価方法に用いる。
本発明の多能性細胞の製造方法(以下、「製造方法」ともいう)は、対象の多能性細胞の分化能を評価する評価工程と、
前記対象の多能性細胞から、分化能が相対的に高いと評価された多能性細胞を選抜する選抜工程とを含み、
前記評価工程が、前記本発明の評価方法により実施される。
本発明の多能性細胞の分化能向上候補物質のスクリーニング方法(以下、「スクリーニング方法」ともいう)は、被検物質から、多能性細胞の分化能マーカーの発現を抑制する物質を、多能性細胞の分化能向上候補物質として選抜する選抜工程を含み、
前記多能性細胞の分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つである。
本発明によれば、多能性細胞の分化能を評価できる。
図1は、実施例1におけるTET1遺伝子を用いたヒトiPS細胞の誘導方法の概略を示す図である。 図2は、実施例1における各分化能マーカーと、各外胚葉系細胞の分化マーカーとの相関性を示す図である。 図3は、実施例1における分化能マーカーの発現量と、分化マーカーの発現量とを比較した結果を示すグラフである。 図4は、実施例2における腹側中脳領域の細胞の誘導方法の概略を示す図である。 図5は、実施例2におけるFOXA2の発現を示す写真である。
<多能性細胞の分化能マーカー>
本発明の多能性細胞の分化能マーカーは、前述のように、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つを含む。本発明は、多能性細胞の分化能の指標として、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つを用いることにより、多能性細胞の分化能を評価できる。前記分化能は、外胚葉、中胚葉、および内胚葉のいずれか1つ以上系統の細胞への分化能を意味し、好ましくは、外胚葉、中胚葉、および内胚葉の細胞への分化能を意味する。
本発明者は、鋭意研究の結果、多能性細胞におけるHAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、またはDNMT3Lの発現が、多能性細胞の分化能と相関を示すこと、より具体的には、これらの分化マーカーの発現と、多能性細胞の分化能とが負の相関を示すことを見出し、本発明を確立するに至った。本発明によれば、前記分化能マーカーであるHAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、またはDNMT3Lを測定することによって、多能性細胞の分化能を評価できる。多能性細胞の分化能マーカーとしては、一般的に、マーカーの発現と正の相関を示すマーカーが探索されている。本発明の分化能マーカーは、このようなマーカーとは異なり、多能性細胞の分化能とが負の相関を示すマーカーという点で、新たな着眼に基づき見出されたマーカーである。さらに、本発明において、前記分化能マーカーを用いることにより、その量に基づき、分化能を評価することも可能である。このため、本発明の分化能マーカーによれば、例えば、定量的な評価が可能である。本発明において、前記分化能マーカーは、多能性細胞の分化能の指標となることから、前記分化能マーカーを用いたスクリーニングにより、多能性細胞の分化能向上候補物質を得ることもできる。
本発明において、「多能性」は、例えば、内胚葉、中胚葉および外胚葉を含む三胚葉への分化能を有することを意味する。また、本発明において、「多能性」は、例えば、全ての細胞への分化能、すなわち全能性を有することも含む。前記多能性細胞は、特に制限されず、例えば、ES細胞、iPS細胞、核移植ES細胞(ntES細胞)、生殖性幹細胞、体性幹細胞、胚性腫瘍細胞等があげられるが、好ましくは、iPS細胞である。前記多能性細胞の由来は、特に制限されず、例えば、ヒトおよびヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物は、例えば、サル、ゴリラ、チンパンジー、マーモセット等の霊長類、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、ヒツジ、ウマ、モルモット等があげられる。
本発明において、「分化能」は、例えば、前記多能性細胞を、目的の分化細胞に分化させる条件下で培養した際に、前記多能性細胞がその一部または全部が、前記目的の分化細胞に分化可能であることを意味する。
HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lの由来は、特に制限されず、例えば、対象(被検者)の種類によって適宜設定できる。前記由来は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物等があげられ、前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類があげられる。各種動物由来のHAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lは、例えば、既存のデータベースに登録されている情報を参照できる。
本発明において、HAND1は、Heart- and neural crest derivatives-expressed protein 1を意味する。具体例として、ヒト由来HAND1のmRNAは、例えば、NCBIアクセッション番号NM_004821で登録されている。また、ヒト由来HAND1のタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号NP_004812で登録されている。
本発明において、N−MYCは、N-myc proto-oncogene protein(basic helix-loop-helix protein 37:bHLHe37)を意味する。具体例として、ヒト由来N−MYCのmRNAは、例えば、NCBIアクセッション番号NM_005378、NM_001293228、NM_001293231、NM_001293233等で登録されている。また、ヒト由来N−MYCのタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号NP_001280157、NP_001280160、NP_001280162、NP_005369等で登録されている。
本発明において、KLF4は、Kruppel-like factor 4(gut-enriched Kruppel-like factor:GKLF)を意味する。具体例として、ヒト由来KLF4のmRNAは、例えば、NCBIアクセッション番号NM_001314052、NM_004235等で登録されている。また、ヒト由来KLF4のタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号NP_001300981、NP_004226等で登録されている。
本発明において、NLRP7は、NACHT, LRR and PYD domains-containing protein 7を意味する。具体例として、ヒト由来NLRP7のmRNAは、例えば、NCBIアクセッション番号NM_001127255、NM_139176、NM_206828等で登録されている。また、ヒト由来NLRP7のタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号NP_001120727、NP_631915、NP_996611等で登録されている。
本発明において、DNMT3Lは、DNA (cytosine-5)-methyltransferase 3-likeを意味する。具体例として、ヒト由来DNMT3LのmRNAは、例えば、NCBIアクセッション番号NM_013369、NM_175867等で登録されている。また、ヒト由来DNMT3Lのタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号NP_037501、NP_787063等で登録されている。
前記HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lは、多能性細胞の分化能マーカーとして使用できる。本発明は、前記分化能マーカーとして、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、またはDNMT3Lを用いるため、その発現量を定量的に評価可能である。このため、本発明によれば、例えば、前記多能性細胞の分化能を定量的に評価可能である。本発明において、分化能マーカーとして、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lのうちいずれか1つを用いてもよいし、2つ以上を用いてもよいし、全部を用いてもよい。本発明の分化能マーカーは、例えば、前記多能性細胞の分化能とより高い相関性を示すことから、HAND1を含むことが好ましく、さらに高い相関性を示すことから、HAND1と、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択された少なくとも1つとを含むことが好ましく、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lを含むことが特に好ましい。
本発明の分化能マーカーは、各分化能マーカーのタンパク質でもよいし、各分化能マーカーの遺伝子から転写されたmRNAでもよく、より高い精度で定量でき、前記多能性細胞の分化能をより精度よく評価できることから、好ましくは、各分化能マーカーのmRNAである。
本発明の分化能マーカーによれば、前述のように、前記多能性細胞の分化能、すなわち、内胚葉、中胚葉および外胚葉のいずれか1つ以上の系統の細胞への分化能を評価できる。このため、本発明の分化能マーカーによれば、例えば、複数の新規な多能性細胞株を樹立した際に、前記多能性細胞株において、より分化能の高い多能性細胞を選抜できる。本発明の分化能マーカーは、例えば、三胚葉の各系統への分化のうち、特に、神経系細胞等の外胚葉系細胞への分化を好適に評価できる。この場合、本発明の分化能マーカーは、例えば、多能性細胞の外胚葉系細胞への分化能マーカーということもできる。本発明の分化能マーカーによれば、例えば、複数の新規な多能性細胞株を樹立した際に、前記多能性細胞株において、より分化能の低い多能性細胞、すなわち、多能性の維持機能が高い多能性細胞を選抜できる。
<多能性細胞の分化能の評価方法>
本発明の多能性細胞の分化能の評価方法は、前述のように、多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程と、前記測定工程における多能性細胞の分化能マーカーの発現量に基づき、前記多能性細胞の分化能を評価する評価工程とを含み、前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つである。本発明の評価方法は、前記分化能マーカーとして、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つの発現を測定することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の評価方法は、例えば、前記本発明の分化能マーカーの説明を援用できる。
本発明の評価方法によれば、例えば、前記多能性細胞の内胚葉、中胚葉、および/または外胚葉の系統の細胞への分化のしやすさ(例えば、分化する細胞の割合等)、または内胚葉、中胚葉、および/または外胚葉で特異的に発現する遺伝子の発現の可能性もしくはその予測される発現量を評価できる。本発明の評価方法によれば、三胚葉の各系統への分化のうち、特に、神経系細胞等の外胚葉系細胞への分化を好適に評価できる。この場合、本発明の評価方法は、例えば、多能性細胞の外胚葉系細胞への分化能の評価方法ということもできる。
前記測定工程は、多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する工程である。本発明の評価方法において、前記多能性細胞の由来は、特に制限されず、例えば、ヒトおよびヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物は、例えば、サル、ゴリラ、チンパンジー、マーモセット等の霊長類、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、ヒツジ、ウマ、モルモット等があげられる。
本発明の評価方法において、前記多能性細胞の種類は、特に制限はされず、例えば、既に樹立された多能性細胞でもよいし、新規に誘導された多能性細胞でもよい。後者の場合、前記新規に誘導された多能性細胞は、例えば、多能性を確認した細胞でもよいし、多能性を未確認の細胞、すなわち、多能性を有するか不明の細胞でもよい。また、前記多能性細胞が生体由来の多能性細胞の場合、前記多能性細胞は、生体から分離された多能性細胞でもよい。
前記測定工程において、測定対象である分化能マーカーの発現は、例えば、各分化能マーカーの遺伝子のmRNAおよび各分化能マーカーのタンパク質の発現があげられる。前記分化能マーカーの発現量が前記分化能マーカーの遺伝子のmRNAの発現量の場合、前記分化能マーカーの遺伝子のmRNAの発現量は、前記分化能マーカーのmRNAのコピー数であることが好ましい。前記分化能マーカーのmRNAのコピー数は、1細胞当たりの分化能マーカーのmRNAのコピー数である。前記発現は、例えば、前記多能性細胞について、前記mRNAまたは前記タンパク質のいずれか一方のみを測定してもよいし、両方を測定してもよい。これらの測定方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。具体例として、前記mRNA発現の測定方法は、例えば、逆転写(Reverse transcription:RT)−PCR法等の逆転写反応を利用した遺伝子増幅法(例えば、qPCR)、Taqman(商標)プローブを用いる方法、デジタルPCRを用いる方法等があげられる。また、前記タンパク質発現の測定方法は、例えば、免疫抗体法、ELISA法、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ(Radioimmunoassay)等があげられる。前記多能性細胞から前記各分化能マーカーの遺伝子のmRNAおよび各分化能マーカーのタンパク質の調製は、例えば、常法により実施でき、市販のキット等を用いてもよい。
つぎに、前記評価工程は、前記測定工程における多能性細胞の分化能マーカーの発現量に基づき、前記多能性細胞の分化能を評価する。前記多能性細胞の分化能は、例えば、前記分化能マーカーの発現量の絶対量に基づき、評価してもよいし、前記分化能マーカーの発現量の相対量に基づき、評価してもよい。前記分化能マーカーの発現量の絶対量は、例えば、各分化能マーカーのmRNAのコピー数、各分化能マーカーのタンパク質の分子数等があげられる。前記分化能マーカーの発現量の相対量は、例えば、ハウスキーピング遺伝子またはそのタンパク質等の内部標準に対する比較発現量である。具体例として、前記評価工程は、例えば、前記対象の多能性細胞(以下、「対象試料」ともいう)における分化能マーカーの発現量を、基準値と比較することにより、前記多能性細胞の分化能を評価する。前記基準値は、例えば、公知の多能性細胞における各分化能マーカーの発現量であげられる。評価対象の多能性細胞が複数の場合、前記基準値は、前記複数の多能性細胞のうち、いずれか1つの多能性細胞における各分化能マーカーの発現量としてもよい。また、前記基準値は、予め設定された基準値でもよい。前記予め設定された基準値は、例えば、基準設定用の多能性細胞における分化能マーカーの発現と、前記基準設定用の多能性細胞の分化能とに基づき、設定できる。前記公知の多能性細胞は、例えば、後述の国際公開2014/069479号公報(米国特許第9,868,934号明細書)の多能性細胞の製造方法で得られた多能性細胞等があげられる。この場合、前記公知の多能性細胞は、例えば、複数の細胞株を樹立し、前記複数の細胞株における分化能マーカーの発現量に基づく、数値範囲として設定してもよい。前記公知の多能性細胞は、評価対象の多能性細胞と同じ種類の細胞が好ましい。具体例として、前記多能性細胞の分化能がiPS細胞の場合、前記公知の多能性細胞は、iPS細胞であることが好ましい。
前記基準値は、例えば、前述のような、公知の多能性細胞または複数の多能性細胞のうち、基準とする多能性細胞(以下、「基準試料」ともいう)を用いて、得ることができる。前記基準値は、例えば、前記被検試料と同時に測定してもよいし、予め測定してもよい。後者の場合、例えば、前記被検試料を測定する度に、基準値を得ることが不要となるため、好ましい。前記被検試料と前記基準試料は、例えば、同じ条件で各分化能マーカーの遺伝子のmRNAおよび各分化能マーカーのタンパク質を調製し、同じ条件で各分化能マーカーの測定を行うことが好ましい。
前記評価工程において、前記多能性細胞の分化能の評価方法は、特に制限されず、前記基準値の種類によって適宜決定できる。具体的には、前記評価工程では、例えば、前記被検試料における分化能マーカーの発現量が、前記基準試料における分化能マーカーの発現量よりも(有意に)低い場合、前記多能性細胞は、分化能が高いと評価できる。
前記評価工程では、前記測定工程における分化能マーカーの発現量が対応する下記条件のいずれか1つを満たす場合、前記多能性細胞は、分化能が高いと評価することが好ましい。この場合、前記評価工程では、分化能をより高い精度で評価できることから、下記条件(a)を満たす場合、前記多能性細胞は、分化能が高いと評価することが好ましく、分化能をさらに高い精度で評価できることから、下記条件(a)と、下記条件(b)〜(e)の少なくとも1つとを満たす場合、前記多能性細胞は、分化能が高いと評価することがさらに好ましく、下記条件(a)〜(e)の全てを満たす場合、前記多能性細胞は、分化能が高いと評価することが特に好ましい。
(a)前記評価工程におけるHAND1の発現量が、前記基準値におけるHAND1の発現量の発現量より(有意に)低い場合
(b)前記評価工程におけるN−MYCの発現量が、前記基準値におけるN−MYCの発現量の発現量より(有意に)低い場合
(c)前記評価工程におけるKLF4の発現量が、前記基準値におけるKLF4の発現量の発現量より(有意に)低い場合
(d)前記評価工程におけるNLRP7の発現量が、前記基準値におけるNLRP7の発現量の発現量より(有意に)低い場合
(e)前記評価工程におけるDNMT3Lの発現量が、前記基準値におけるDNMT3Lの発現量の発現量より(有意に)低い場合
前記評価工程では、前記測定工程における分化能マーカーの発現量が対応する下記条件の少なくとも1つを満たす場合、前記多能性細胞は、分化能が高いと評価することが好ましい。下記条件(A)〜(E)において、各分化能マーカーのmRNAのコピー数は、1細胞当たりの各分化能マーカーのmRNAのコピー数である。前記評価工程では、分化能をより高い精度で評価できることから、下記条件(A)を満たす場合、前記多能性細胞は、分化能が高いと評価することが好ましく、分化能をさらに高い精度で評価できることから、下記条件(A)と、下記条件(B)〜(E)の少なくとも1つとを満たす場合、前記多能性細胞は、分化能が高いと評価することがさらに好ましく、下記条件(A)〜(E)の全てを満たす場合、前記多能性細胞は、分化能が高いと評価することが特に好ましい。
(A)前記評価工程におけるHAND1のmRNAのコピー数が、1コピー/細胞以下または未満、好ましくは、0.135コピー/細胞以下または未満、より好ましくは、0.075コピー/細胞以下または未満である場合
(B)前記評価工程におけるN−MYCのmRNAのコピー数が、200コピー/細胞以下または未満、好ましくは、105コピー/細胞以下または未満、より好ましくは、90コピー/細胞以下または未満である場合
(C)前記評価工程におけるKLF4のmRNAのコピー数が、20コピー/細胞以下または未満、好ましくは、18.6コピー/細胞以下または未満、より好ましくは、18コピー/細胞以下または未満である場合
(D)前記評価工程におけるNLRP7のmRNAのコピー数が、10コピー/細胞以下または未満、好ましくは、5コピー/細胞以下または未満、より好ましくは、3コピー/細胞以下または未満である場合
(E)前記評価工程におけるDNMT3LのmRNAのコピー数が、1コピー/細胞以下または未満、好ましくは、0.75コピー/細胞以下または未満、より好ましくは、0.51コピー/細胞以下または未満である場合
本発明の評価方法では、例えば、さらに、前記評価対象の多能性細胞の核型等により、前記多能性細胞の安全性を評価してもよい。
本発明の評価方法によれば、例えば、より分化能の低い多能性細胞、すなわち、多能性の維持機能が高い多能性細胞を評価できる。このため、本発明の評価方法は、前記多能性細胞の多能性の維持機能を評価してもよい。この場合、本発明の評価方法は、例えば、前記多能性細胞の分化能の評価方法とは逆の条件で、前記多能性細胞の多能性の維持機能を評価できる。
<評価試薬>
本発明の多能性細胞の分化能の評価試薬は、前述のように、多能性細胞の分化能マーカーの発現測定試薬を含み、前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記本発明の評価方法に用いる。本発明の評価試薬は、前記分化能マーカーの発現測定試薬を前記本発明の評価方法に用いること、すなわち、前記分化能マーカーの発現に基づき、前記多能性細胞を評価できることが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の評価試薬によれば、前記本発明の評価方法を簡便に行える。本発明の評価試薬は、例えば、前記本発明の分化能マーカーおよび評価方法の説明を援用できる。
前記分化能マーカーの発現試薬は、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つの発現測定試薬を含んでもよいし、2つ以上の分化能マーカーの発現測定試薬を含んでもよいし、全部の分化能マーカーの発現測定試薬を含んでもよい。本発明の評価試薬は、例えば、分化能をより高い精度で評価できることから、HAND1の発現測定試薬を含むことが好ましく、分化能をさらに高い精度で評価できることから、HAND1の発現測定試薬と、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択された少なくとも1つの発現測定試薬とを含むことが好ましく、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lの発現測定試薬を含むことが特に好ましい。
前記分化能マーカーの発現測定試薬は、例えば、前記分化能マーカーのタンパク質の発現測定試薬でもよく、前記分化能マーカーのmRNAの発現測定試薬でもよい。
前者は、例えば、前記分化能マーカーのタンパク質に結合する結合物質があげられ、具体例として、抗体があげられる。この場合、本発明の評価試薬は、例えば、さらに、前記分化能マーカーのタンパク質と前記抗体との結合を検出する検出物質を含むことが好ましい。前記検出物質は、例えば、前記抗体に対する検出可能な標識化抗体と、前記標識に対する基質等の組合せがあげられる。
後者は、例えば、前記分化能マーカーの遺伝子のmRNAを逆転写および増幅する試薬があげられ、具体例として、逆転写酵素、逆転写用プライマー、PCR用プライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP等があげられる。前記PCR用プライマーは、例えば、前記分化能マーカーの遺伝子配列に基づいて適宜設計できる。
本発明の評価試薬が複数の発現測定試薬を含む場合、各発現測定試薬は、同一の容器に混合状態または未混合状態で収容されてもよいし、それぞれが別個の容器に収容されてもよい。各発現測定試薬が別個の容器に収容されている場合、本発明の評価試薬は、例えば、評価キットということもできる。本発明の評価試薬は、例えば、取扱説明書、各種バッファー等の他の構成を含んでもよい。
<多能性細胞の製造方法>
本発明の多能性細胞の製造方法は、前述のように、対象の多能性細胞の分化能を評価する評価工程と、前記対象の多能性細胞から、分化能が相対的に高いと評価された多能性細胞を選抜する選抜工程とを含み、前記評価工程が、前記本発明の評価方法により実施される。本発明の製造方法は、前記評価工程が前記本発明の評価方法により実施されることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の製造方法によれば、例えば、基準とする多能性細胞と比較して、分化能が高い多能性細胞を製造できる。本発明の製造方法は、前記本発明の分化能マーカー、評価方法、および評価試薬の説明を援用できる。
前記評価工程は、前記対象の多能性細胞の分化能を評価する工程である。前記評価工程は、前記本発明の評価方法の説明を援用できる。前記対象の多能性細胞は、例えば、既に樹立された多能性細胞でもよいし、新規に誘導された多能性細胞でもよい。後者の場合、前記新規に誘導された多能性細胞は、例えば、多能性を確認した細胞でもよいし、多能性を未確認の細胞、すなわち、多能性を有するか不明の細胞でもよい。また、前記多能性細胞が生体由来の多能性細胞の場合、前記多能性細胞は、生体から分離された多能性細胞でもよい。
前記選抜工程は、前記対象の多能性細胞から、分化能が相対的に高いと評価された多能性細胞を選抜する。具体的には、前記選抜工程では、例えば、前記対象の多能性細胞における分化能マーカーの発現量を、基準値と比較し、前記分化能マーカーの発現量が前記基準値以下または未満の細胞を、分化能が相対的に高い多能性細胞であるとして選抜する。
本発明の製造方法は、例えば、前記対象の多能性細胞を誘導してもよい。この場合、本発明の製造方法は、多能性細胞を誘導する誘導工程を含んでもよい。前記多能性細胞の誘導方法は、特に制限されず、前記対象の多能性細胞の種類に応じて、公知の方法により実施できる。前記多能性細胞がiPS細胞の場合、前記多能性細胞の誘導方法は、例えば、国際公開2007/069666号公報(米国特許第8,048,999号明細書)、国際公開2014/069479号公報(米国特許第9,868,934号明細書)等が参照できる。前記多能性細胞がiPS細胞の場合、誘導前の細胞は、任意の細胞を使用できる。
本発明の製造方法は、前記選抜された多能性細胞から目的の分化細胞を分化誘導する分化誘導工程を含んでもよい。前記目的の分化細胞は、特に制限されず、例えば、組織における分化細胞またはその前駆細胞等があげられる。前記目的の分化細胞の分化誘導方法は、特に制限されず、前記目的の分化細胞に応じて、適宜決定できる。
<スクリーニング方法>
本発明の多能性細胞の分化能向上候補物質のスクリーニング方法は、前述のように、被検物質から、多能性細胞の分化能マーカーの発現を抑制する物質を、多能性細胞の分化能向上候補物質として選抜する選抜工程を含み、前記多能性細胞の分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つである。本発明のスクリーニング方法は、前記分化能向上候補物質のターゲットが、前記多能性細胞の分化能マーカーであることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明のスクリーニング方法は、前記本発明の分化能マーカー、評価方法、評価試薬、および製造方法の説明を援用できる。
前記被検物質は、特に制限されず、例えば、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、核酸、培地(培養液)等があげられる。前記タンパク質は、例えば、サイトカイン、成長因子、抗体等があげられる。前記抗体は、その抗原結合断片であってもよい。前記被検物質は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
前記被検物質は、前記分化能マーカーの発現抑制物質が好ましい。前記発現抑制物質は、例えば、前記分化能マーカーの遺伝子からのmRNAの転写を抑制する物質、転写されたmRNAを切断する物質およびmRNAからのタンパク質の翻訳を抑制する物質等があげられる。具体例として、前記発現抑制物質は、例えば、siRNA等のRNA干渉剤、アンチセンス、リボザイム等があげられる。
本発明のスクリーニング方法において、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つの発現を抑制する物質を前記多能性細胞の分化能向上候補物質として選抜してもよいし、2つ以上の発現を抑制する物質を前記多能性細胞の分化能向上候補物質として選抜してもよいし、全部の発現を抑制する物質を前記多能性細胞の前記多分化能向上候補物質として選抜してもよい。
本発明のスクリーニング方法は、例えば、前記被検物質から、前記多能性細胞の誘導時に前記多能性細胞の分化能を向上させる物質を前記多能性細胞の分化能向上候補物質として選抜してもよいし、前記多能性細胞の維持時に前記多能性細胞の分化能を向上させる物質を前記多能性細胞の分化能向上候補物質として選抜してもよい。以下、それぞれについて説明する。
前者の場合、本発明のスクリーニング方法は、例えば、前記被検物質の存在下、多能性細胞を誘導する誘導する誘導工程と、得られた多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程とを含み、前記選抜工程において、前記多能性細胞の分化能マーカーの発現が、前記被検物質を共存させていないコントロールの誘導系より低い被検物質を、前記分化能向上候補物質として選抜する。前記誘導工程は、例えば、前記本発明の製造方法における誘導工程の説明を援用できる。また、前記測定工程は、例えば、前記本発明の評価方法における測定工程の説明を援用できる。前記選抜工程において、前記コントロールの誘導系は、前記被検物質の非存在下である点を除き、前記誘導工程と同様に実施することが好ましい。前記選抜工程において、前記分化能マーカーの発現は、例えば、前記分化能マーカーの遺伝子のmRNAの発現でもよいし、前記分化能マーカーのタンパク質の発現でもよい。
後者の場合、本発明のスクリーニング方法は、例えば、前記被検物質の存在下、多能性細胞を維持培養する誘導する培養工程と、得られた多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程とを含み、前記選抜工程において、前記多能性細胞の分化能マーカーの発現が、前記被検物質を共存させていないコントロールの維持系より低い被検物質を、前記分化能向上候補物質として選抜する。前記培養工程において、前記多能性細胞の維持培養は、例えば、下記参考文献1を参照できる。前記測定工程は、例えば、前記本発明の評価方法における測定工程の説明を援用できる。前記選抜工程において、前記コントロールの維持系は、前記被検物質の非存在下である点を除き、前記培養工程と同様に実施することが好ましい。前記選抜工程において、前記分化能マーカーの発現は、例えば、前記分化能マーカーの遺伝子のmRNAの発現でもよいし、前記分化能マーカーのタンパク質の発現でもよい。
参考文献1:Takashi Ono et.al., “A Single-Cell and Feeder-Free Culture System for Monkey Embryonic Stem Cells”, 2014, PlosOne, Volume9, Issue 2, e88346
前記多能性細胞の誘導または維持における培養に用いる培地は、特に制限されず、例えば、CFA、E8、StemFit(登録商標)(味の素ヘルシーサプライ株式会社製)、StemFlex(ThermoScientific社製)、mTeSR(STEMCELL Technologies社製)等があげられる。前記培地は、Knockout Serum Replacement(KSR)添加剤(ThermoScientific社製)、グルタミン酸等の添加剤を添加してもよい。
本発明のスクリーニング方法では、前記分化能マーカーの発現に基づき、前記分化能向上候補物質をスクリーニングしたが、本発明はこれに限定されず、前記分化能向上候補物質、すなわち、多能性維持候補物質(多能性向上候補物質)をスクリーニングしてもよい。この場合、本発明のスクリーニング方法は、例えば、前記分化能向上候補物質のスクリーニング方法とは逆の条件で、前記多能性維持候補物質をスクリーニングできる。具体的には、前記多能性維持候補物質のスクリーニング方法は、例えば、前記分化能向上候補物質のスクリーニング方法の説明において、「抑制」を「増強」、「低い」を「高い」、「分化能向上候補物質」を「多能性維持候補物質」に読み替えて、その説明を援用できる。
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により何ら制限されない。
[実施例1]
本発明の分化能マーカーが、多能性細胞をデフォルト分化の条件下で分化させ、得られた外胚葉系細胞における外胚葉系細胞の分化マーカーと負の相関をすることを確認した。
(1)iPS細胞の誘導
多能性細胞として、iPS細胞を国際公開2014/069479号公報に記載の方法に準じて誘導した。具体的には、まず、ヒト線維芽細胞(男性の新生児包皮由来:106-05n、女性胎児由来:106-05f、Cell Applications Inc.から購入)を、10%ウシ胎児血清(FBS、Hyclone社製)および1×penicillin/streptomycin(GIBCO社製)を含むDMEM培地(Nacalai Tesque)で培養した。培養条件は、37℃、5%COの湿潤条件下とした(以下、同様)。つぎに、前記線維芽細胞に、下記参考文献2に記載のエピソーマルベクターを用いて、下記参考文献2に記載のiPS細胞の誘導方法により、ヒトiPS細胞(C-iPSC)を誘導した。前記エピソーマルベクター(pCXLE-hOCT3/4-shp53-F: 27077、pCXLE-hSK: 27078、pCXLE-hUL: 27080)は、Addgene社から入手した。
参考文献2:Okita, K. et al. “A more efficient method to generate integration-free human iPS cells.” Nat Methods 8, 409-412, doi:10.1038/nmeth.1591 (2011).
つぎに、図1に示すように、TET1遺伝子を用いてヒトiPS細胞(T-iPSC)を誘導した。まず、ヒトTET1遺伝子のオープンリーディングフレームをコードするcDNAをpCXLEベクターにクローニングすることで、TET1用エピソーマル発現ベクターを調製した。つぎに、前述の参考文献2に記載のエピソーマルベクターおよびTET1用エピソーマルベクターを、ヌクレオフェクションキット(Human Dermal Fibroblast Nucleofection(登録商標)Kit、Amaxa Biosystems社製(Lonza))およびヌクレオフェクション装置(Nucleofector(商標) I apparatus、Amaxa Biosystems社製(Lonza))のU20プログラムを用いて、添付のプロトコルにしたがって、前記線維芽細胞に導入した。前記導入において、1×10細胞/1μgエピソーマルベクターとなるように、各エピソーマルベクターを導入した。前記導入後、前記線維芽細胞をすぐに10%FCS含有DMEMに懸濁し、プレートに播種し、1日間培養した。さらに、前記プレートについて、1日毎に培地交換を行ない、合計10日間培養した。培地交換に用いる培地は、100nmol/L ヒドロコルチゾン含有Essential 8(商標)培地とした。さらに、10日間の培養後、1日毎に培地交換を行ない、合計8日間培養した。培地交換に用いる培地は、ヒドロコルチゾン不含Essential 8(商標)培地とした。
つぎに、前記プレートから、C-iPSCおよびT-iPSC(以下、あわせて「iPSC」ともいう)を回収し、回収した細胞塊を10μmol/L Y-27632(WAKO社製)含有Essential 8(商標)培地に懸濁し、マイトマイシンC(mitomycin C、WAKO社製)処理したSNLフィーダー細胞上に播種し、1日間培養した。前記培養後、20%KSR(KnockOut(商標)Serum Replacement、GIBCO社製)、2mmol/L GlutaMAX(商標)-I(GIBCO社製)、0.1mmol/L 非必須アミノ酸(MEM Non-Essential Amino Acids:NEAA、GIBCO社製)、0.1mmol/L βメルカプトエタノール(2-ME)、 15ng/mL basic FGF(Peprotech社製)、5mmol/L NaOH(WAKO社製)、および1×penicillin/streptomycin(P/S、GIBCO社製)を含DMEM/F12培地(KF培地)に培地交換した。
さらに、iPSCのコロニーが成長した後、0.07%トリプシン/0.07mmol/L EDTAを含む解離緩衝液(Nacalai Tesque社製)を用いて、iPSCを解離させ、5ng/mL ビトロネクチン(vitronectin、Invitrogen社製)でコートした6ウェルプレートに播種した。前記播種時の培養液は、KFA培地を使用した。前記KFA培地は、前記KF培地におけるbFGFの濃度を、15ng/mLとし、10ng/mL Activin A(R&D社製)および0.1μg/mL ヘパラン硫酸(Nacalai Tesque社製)となるように、Activin Aおよびヘパラン硫酸を添加したものである。再度、iPSCのコロニーが成長した後、同様に、iPSCを解離させ、5ng/mL ビトロネクチンでコートした100mmディッシュ(BD社製)に播種した。
そして、iPSCがコンフルーエント状態となるまで培養後、iPSCの半量を回収し、細胞培養用にストック溶液(10% DMSO(Nacalai Tesque社製)および 90% FBS)に保存した。また、iPSCの残りの半量は、プラスミドベクターがゲノムに導入されていないかを分析するために用いた。
(2)ベクター導入の検討
前記実施例1(1)で得られた各iPSCから、DNA抽出キット(DNeasy Blood & Tissue kit 、QIAGEN社製)を用い、添付のプロトコルにしたがって、ゲノムDNAを抽出した。つぎに、20ng ゲノムDNA(gDNA)、下記エピソーマルベクター用プライマーセット、およびqPCRキット(HUNDERBIRD SYBR qPCR mix、TOYOBO社製)を用いて、エピソーマルベクターのコピー数を検討した。エピソーマルベクターのCt値は、前記エピソーマルベクター用プライマーセットに代えて、下記CTFRプライマーセットを用いてgDNAを増幅し、これにより標準化することで算出した。具体的には、CTFR遺伝子は、ゲノム上に2コピー存在する。このため、CTFR遺伝子のシグナル値を2.0として、ΔΔCt法により、エピソーマルベクターのコピー数を検討した。
(エピソーマルベクター用プライマーセット)
フォワードプライマー(pEP4-SF1、配列番号1)
5'-TTCCACGAGGGTAGTGAACC-3'
リバースプライマー(pEP4-SR2R、配列番号2)
5'-CAGGCGAAGATTCAGGAGAG-3'
(CTFRプライマーセット)
フォワードプライマー(CFTRexon24-F、配列番号3)
5'-GGCAGTACGATTCCATCCAG-3'
リバースプライマー(CFTRexon24-R、配列番号4)
5'-GAAAGAGCTTCACCCTGTCG-3'
(3)iPSCの選抜
前記実施例1(2)で得られた各iPSCのエピソーマルベクターのCt値に基づき、Ct値が0.03未満(0.03コピー未満)のiPSCを、エピソーマルベクターがゲノムDNAに導入されていないiPSCとして選抜した。この結果、前記男性の線維芽細胞由来のiPSCからは、C-iPSC 3株およびT-iPSC 19株、前記女性の線維芽細胞由来のiPSCからは、C-iPSC 3株およびT-iPSC 21株を、エピソーマルベクターがゲノムDNAに導入されていないiPSCとして選抜した。
(4)iPSCのデフォルト分化
前記実施例1(3)において選抜したiPSCと対応する保存済のiPSCについて、KFA培地の存在下、培養し、さらに1回継代培養した。iPSCがコンフルーエント状態となった後、0.01%トリプシン/0.1mmol/L EDTAを含む解離緩衝液(トリプシン/EDTA)でiPSCを解離後、1×10細胞をビトロネクチンでコートした100mmディッシュに播種した。播種時の培養液は、10ng/mL bFGF、2ng/mL Activin A、3% KSR、および10μmol/L Y-27632を含むfCDM培地とした。なお、fCDM培地の組成は、mCDM(KHOJIN BIO社製)、0.2mmol/L アスコルビン酸(ascorbic acid 、WAKO社製、0.1mmol/L NEAA、80nmol/L 亜セレン酸塩(selenite、Sigma社製)および1×penicillin/streptomycinとした。そして、前記ディッシュ中の半量のfCDM培地を毎日交換しながら、3日間培養した。
つぎに、トリプシン/EDTAでiPSCを解離後、96ウェルプレート(96 well Lipidure plate、NUNC、Thermofisher社製)に、500細胞/150μL fCDM培地/ウェルとなるように播種し、2日間培養した。前記播種時に使用するfCDM培地には、10μmol/LとなるようにY-27632を添加した。前記培養後、各ウェルから100μLの培地を除去し、150μLの新たなfCDM培地を添加し、さらに3日間培養した。前記培養後、各ウェルから100μLの培地を除去し、100μLの新たなfCDM培地を添加し、さらに3日培養した。そして、各ウェルから、誘導された細胞塊を回収後、前記細胞塊をリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Nacalai tesque社製)で洗浄した。前記洗浄後、2−ME含有溶解バッファー(RLT buffer、QIAGEN社製)で前記細胞塊を溶解して、溶解液(d8)を調製し、使用するまで−80℃で保存した。また、96ウェルプレートに播種時に使用しなかったiPSCについて、同様に溶解バッファーで細胞を溶解し、溶解液(d0)を調製した。
(5)分化能マーカーと外胚葉系細胞の分化マーカーとの比較
前記実施例1(4)で得られた溶解液(d0およびd8)からRNA抽出キット(RNeasy Plus Mini Kit 、QIAGEN社製)を用いてトータルRNAを抽出した。得られたトータルRNA、逆転写酵素(Revertra Ace、TOYOBO社製)およびオリゴdT(Oligo-dT、TOYOBO社製)を用いて、逆転写を実施し、cDNAを調製した。得られたcDNAについて、下記プライマーセット、qPCRキット(Thunderbird、TOYOBO社製)、およびサーマルサイクラー(Thermal Cycler Dice Real Time System、Bio-Rad社製)を用い、分化能マーカーであるHAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lの発現量と、外胚葉系細胞の分化マーカーであるSOX21、SOX3、PAX6、HES5、およびSOX1と、未分化細胞、すなわちiPSCに発現するNANOG、POU5F1およびSOX2との発現量を測定した。なお、内部標準はGAPDHとした。そして、各分化能マーカーと、各外胚葉系細胞の分化マーカーとのノンパラメトリックなスピアマンの順位相関とを算出した。この結果を図2に示す。
(HAND1プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号5)
5'-AACTCAAGAAGGCGGATGG-3'
リバースプライマー(配列番号6)
5'-GGAGGAAAACCTTCGTGCT-3'
(N−MYCプライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号7)
5'-CCCTGAGCGATTCAGATGATGA-3'
リバースプライマー(配列番号8)
5'-TTGGTGTTGGAGGAGGAACG-3'
(KLF4プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号9)
5'-GCCGCTCCATTACCAAGA-3'
リバースプライマー(配列番号10)
5'-TCTTCCCCTCTTTGGCTTG-3'
(NLRP7プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号11)
5'-GCTGGAAGCAAGACCTGACC-3'
リバースプライマー(配列番号12)
5'-CTAGCTGGGGCGATGTCATA-3'
(DNMT3Lプライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号13)
5'-TCAAGGCTAACCAGCGAAAT-3'
リバースプライマー(配列番号14)
5'-GCTGTGTGTGAACCTGGAGA-3'
(SOX21プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号15)
5'-GGGGCCCGGTTTGTATGTA-3'
リバースプライマー(配列番号16)
5'-GAATTCACAGGCCTGCTCGC-3'
(SOX3プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号17)
5'-TCAAGAACCCCGTAGGGACA-3'
リバースプライマー(配列番号18)
5'-CTGCGTTCGCACTACTCTTG-3'
(PAX6プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号19)
5'-ACCCATTATCCAGATGTGTTTGCCCGAG-3'
リバースプライマー(配列番号20)
5'-ATGGTGAAGCTGGGCATAGGCGGCAG-3'
(HES5プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号21)
5'-AGCACAGCAAAGCCTTCGTC-3'
リバースプライマー(配列番号22)
5'-CTGCAGGCACCACGAGTAG-3'
(SOX1プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号23)
5'-GGCTGAGCACCACTACGACT-3'
リバースプライマー(配列番号24)
5'-GCATTATAAAATTTCCCAAATCATC-3'
(NANOGプライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号25)
5'-TCTCCAACATCCTGAACCTCA-3'
リバースプライマー(配列番号26)
5'-TTGCTATTCTTCGGCCAGTT-3'
(POU5F1プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号27)
5'-CTTTGAGGCTCTGCAGCTTAG-3'
リバースプライマー(配列番号28)
5'-TCTGCTTTGCATATCTCCTGAA-3'
(SOX2プライマーセット)
フォワードプライマー(配列番号29)
5'-GGGGGAATGGACCTTGTATAG-3'
リバースプライマー(配列番号30)
5'-GCAAAGCTCCTACCGTACCA-3'
図2は、各分化能マーカーと、各外胚葉系細胞の分化マーカーとの相関性を示す図である。図2において、図の左側および上側は、溶解液(d0)または溶解液(d8)における各分化能マーカーの種類を示す。また、図2において、図中の丸の大きさは、各遺伝子の相関係数を示す。図2に示すように、溶解液(d0)における分化能マーカーの発現は、溶解液(d8)における外胚葉系細胞の分化マーカーと負の相関を示した。また、分化能マーカーのうちHAND1が、全分化マーカーと負の相関を示し、分化能マーカーとして特に好適であった。他方、多能性細胞の分化能マーカーとして一般的に用いられている、NANOG、POU5F1およびSOX2の溶解液(d0)における発現は、溶解液(d8)における外胚葉系細胞の分化マーカーと何ら相関を示さなかった。これらの結果から、iPSC(iPS細胞)、すなわち、多能性細胞における各分化能マーカーと、分化後の細胞における分化マーカーとが相関することが分かった。また、多能性細胞のデフォルト分化は、外因性の分化誘導ではなく、多能性細胞が有する内因性の分化誘導であり、多能性細胞の分化能を表していると考えられている。前述のように、分化前の分化能マーカーの発現と、分化後の分化マーカーの発現とが相関することから、多能性細胞における分化能マーカーの発現に基づき、多能性細胞が分化後の細胞となるか、すなわち、分化能を有するかを評価できることが分かった。さらに、HAND1が全分化マーカーと負の相関を示すことから、多能性細胞の分化能と強く相関するマーカーであることが分かった。
(6)分化能マーカーの発現量の閾値
つぎに、前記実施例1(5)で得られた、溶解液(d0)における分化能マーカーの発現量(コピー数/細胞)と、溶解液(d8)における分化マーカーの発現量とを比較した結果を図3に示す。図3において、(A)は、HAND1および分化マーカーの発現量を比較した結果であり、(B)は、N−MYCおよび分化マーカーの発現量を比較した結果であり、(C)は、KLF4および分化マーカーの発現量を比較した結果であり、(D)は、NLRP7および分化マーカーの発現量を比較した結果であり、(E)は、DNMT3Lおよび分化マーカーの発現量を比較した結果である。図3において、横軸は、GPADHに対する各分化能マーカーの発現量であり、縦軸は、GAPDHに対する各分化マーカーの発現量を示す。図3(A)に示すように、HAND1の場合、HAND1の発現量が、4.5×10−5以下となると、発現がなくなる分化マーカーが生じ、2.5×10−5以下となると、全分化マーカーは発現しないと推定される。また、1細胞あたりのGAPDHのコピー数は約3000コピーであることが知られている。このため、多能性細胞におけるHAND1のコピー数が、0.135コピー/細胞以下となると、多能性細胞の分化がより抑制され、0.075コピー/細胞以下となると、多能性細胞の分化がかなり抑制されることが示唆された。また、図3(B)に示すように、N−MYCの場合、N−MYCの発現量が、0.035以下となると、発現がなくなる分化マーカーが生じ、0.03以下となると、全分化マーカーは発現しないと推定される。このため、多能性細胞におけるN−MYCのコピー数が、105コピー/細胞以下となると、多能性細胞の分化がより抑制され、90コピー/細胞以下となると、多能性細胞の分化がかなり抑制されることが示唆された。図3(C)に示すように、KLF4の場合、KLF4の発現量が、0.0062以下となると、発現がなくなる分化マーカーが生じ、0.006以下となると、全分化マーカーは発現しないと推定される。このため、多能性細胞におけるKLF4のコピー数が、18.6コピー/細胞以下となると、多能性細胞の分化がより抑制され、18コピー/細胞以下となると、多能性細胞の分化がかなり抑制されることが示唆された。図3(D)に示すように、NLRP7の場合、NLRP7の発現量が、1.0×10−3以下となると、全分化マーカーは発現しないと推定される。このため、多能性細胞におけるNLRP7のコピー数が、3コピー/細胞以下となると、多能性細胞の分化がより抑制されることが示唆された。図3(E)に示すように、DNMT3Lの場合、DNMT3Lの発現量が、2.5×10−4以下となると、発現がなくなる分化マーカーが生じ、1.7×10−4以下となると、全分化マーカーは発現しないと推定される。このため、多能性細胞におけるDNMT3Lのコピー数が、0.75コピー/細胞以下となると、多能性細胞の分化がより抑制され、0.51コピー/細胞以下となると、多能性細胞の分化がかなり抑制されることが示唆された。
[実施例2]
本発明の分化能マーカーを用いて、新規に樹立したiPS細胞の分化能を評価し、分化能の評価が高いiPS細胞が、より効率よく神経系細胞に分化することを確認した。
前記実施例1(3)で選抜した各iPSCについて、前記実施例1(5)で測定した各分化能マーカーの発現量に基づき、各分化能マーカーにおけるランキングを付した。具体的には、各分化能マーカーについて、発現量が少ないiPSCを1位として、順位付けをし、全マーカーの順位を合算することにより、各iPSCの分化能をランキング化した。これにより、分化能が高いと推定される1T47株と、1T47株より分化能が低いと推定されるiPSCからランダムに2C10株、6C7株、4T17株および6T8株とを選抜した(選抜iPSC)。
つぎに、前記選抜iPSCについて、図4に示すプロトコルに基づき、腹側中脳領域の細胞に分化させた。具体的には、前記選抜iPSCを前記KFA培地で培養し、2または3回継代培養した。さらに、前記選抜iPSCを、前記トリプシン/EDTAで解離後、分化培地(DM培地)に懸濁した。DM培地には、10μmol/L Y-27632、100nmol/L LDN193189(LDN、Sigma社製)、10μmol/L SB431542(SB、Sigma社製)および10nmol/L WNT-C59(Cellagen Technology社製)となるように、各化合物を添加した。また、DM培地の組成は、15% KSR、2mmo/L GlutaMAX(商標)-I、1mmo/L ピルビン酸ナトリウム(sodium pyruvate、Sigma社製)、10μmol/L 2-MEおよび0.1×penicillin/streptomycinを含むDMEM培地とした。そして、得られた懸濁液を、0.5μg/cmとなるようにラミニン511(Laminin-511、Nipppi社製)でコートしたプレートに、1.5×10細胞/cmとなるように播種した。以下、播種日を、分化第0日目という。前記KFA培地は、毎日交換した。
腹側化は、分化第2日目に、100ng/mL SHH C25IIおよび2μmol/L パルモルファミン(Purmorphamine、WAKO社製)となるようにSHH C25IIおよびパルモルファミンを添加し、さらに添加条件下で5日間培養することで、誘導した。また、分化第3日目から分化第13日目まで、3μmol/L CHIR99021となるように、DM培地等の各培地に化合物を添加した。さらに、分化第5日目に培地をDM培地からDM/N2M培地(3:1)に変更した。DM/N2M培地(3:1)は、DM培地(D)とN2培地(N)とを、D:N=3:1となるように混合した。また、DM/N2M培地(3:1)には、100nmol/L LDN193189、100ng/mL SHH C25II、2μmol/L パルモルファミン、および3μmol/L CHIR99021となるように、各化合物を添加した。
つぎに、分化第7日目に、DM/N2M培地(3:1)からDM/N2M培地(1:1)に培地を変更した。DM/N2M培地(1:1)は、DM培地(D)とN2培地(N)とを、D:N=1:1となるように混合した。また、DM/N2M培地(1:1)には、100nmol/L LDN193189および3μmol/L CHIR99021となるように、各化合物を添加した。なお、N2培地は、1× N-2 supplement(Gibco社製)および2mmol/L GlutaMAX(商標)-Iおよび0.1×penicillin/streptomycinを含むDMEM/F12培地(Wako社製)とした。さらに、分化第9日目に、DM/N2M培地(1:1)からDM/N2M培地(1:3)に培地を交換した。DM/N2M培地(1:3)は、DM培地(D)とN2培地(N)とを、D:N=1:3となるように混合した。また、DM/N2M培地(1:3)には、100nmol/L LDN193189および3μmol/L CHIR99021となるように、各化合物を添加した。そして、分化第11日目に、N2M培地(1:3)からDMEM/F12培地に培地を変更した。前記DMEM/F12培地には、1× N-2 supplement、0.5×B27 supplement minus vitamin A(Gibco社製)および2mmol/L GlutaMAX(商標)-I、0.1×penicillin/streptomycin、100μmol/L アスコルビン酸(ascorbic acid)、200μmol/L ジブチリルcAMP(dibutyryl cAMP(dbcAMP)、Sigma社製)、および5μmol/L DAPT(Tocris社製)となるように、各化合物を添加した。
つぎに、分化第13日目に、前記DMEM/F12培地から神経分化培地(NIM)に培地を変更した。前記NIMは、10ng/mL BDNF(WAKO社製)、10ng/mL GDNF(WAKO社製)、1ng/mL TGF-β3(R&D社製)、100μmol/L アスコルビン酸(ascorbic acid)、200μmol/L ジブチリルcAMP(dibutyryl cAMP(dbcAMP)、Sigma社製)、および5μmol/L DAPT(Tocris社製)を添加した。なお、前記NIMは、前記N2M培地とneurobasal medium(ThermoFisher Scientific社)とを1:1で混合し、さらに、1× B27 supplement minus vitamin A(Gibco社製)、GlutaMAX(商標)-I、および0.1×penicillin/streptomycinとなるように、各化合物を添加した。
そして、分化第19日目に誘導された細胞を、解離溶液(Accumax(商標)、ICT社製)で解離後、4×10細胞/cmとなるように、スライドに播種し、1日培養し、接着させた。また、別途、分化第20日目に誘導された細胞を、解離溶液で解離後、4×10細胞/cmとなるように、スライドに播種し、分化第29日目まで培養した。なお、前記スライドは、前記播種に先立ち、15μg/mL ポリ−L−オルニチン(poly-L-ornithine)、15μg/mL フィブロネクチン(fibronectin、Sigma社製)および0.5μg/cm ラミニン511でコートした。また、スライドでの培養には、前記分化第13日目で添加した各化合物と、10μmol/Lとなるように、Y-27632を添加したNIMを用いた。そして、分化第29日目まで、2または3日ごとに、培地の半分を新たな培地に交換した。
前記スライドの細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA、Wako社製)により、室温で10分間固定し、PBSで洗浄後、4℃で使用するまで保存した。つぎに、各スライドに対して、5%健常ロバ血清(NDS、Millipore社製)および0.3%(v/v)Triton(登録商標) X-100(Nacalai tesque社製)を含むPBSを用いて、室温で1時間ブロッキング処理を行なった。さらに、一次抗体を1%NDSおよび0.3%Triton(登録商標) X-100を含むPBSで希釈後、得られた希釈液を用いて、4℃で終夜各スライドを染色した。前記分化第19日目に播種した細胞については、一次抗体として、anti-LMX1A 抗体(1000倍希釈で使用、millipore社製)またはanti-FOXA2抗体(500倍希釈で使用、R&D社製)を使用した。また、分化第20日目に播種した細胞については、一次抗体として、anti-NURR1抗体(1000倍希釈で使用、SantaCruz社製)を使用した。つづいて、前記スライドを0.05%(v/v)Tween(登録商標)20を含むPBS(T−PBS)で洗浄した。二次抗体(アレクサ標識抗抗体500倍希釈で使用、Invitrogen社製)を、1%NDSおよび0.3%Triton(登録商標) X-100を含むPBSで希釈後、得られた希釈液を用いて、室温で2時間各スライドを染色した。そして、T−PBSで洗浄し、核染色液を用いて、室温で10分間染色した。核染色液は、4, 6-diamidino-2-phenylindole(DAPI、Invitrogen社製)を1%NDSおよび0.3%Triton(登録商標) X-100を含むPBSで溶解することにより調製した。
前記核染色後、T−PBSで洗浄し、光退色防止マウント剤でマウントした。前記光退色防止マウント剤は、2.4g mowiol(登録商標)(Calbiochem社製)、6mLグリセロール(WAKO社製)、6mL蒸留水、12mLの200mmol/L Tris-HCl(Nacalai tesque社製)および0.66g 1.4-Diazabicycle (2.2.2) octane (WAKO社製)を用いて調製した。マウント後の各スライドは、蛍光顕微鏡(HSオールインワン蛍光顕微鏡BZ-9000シリーズ(BIOREVO)、キーエンス社製)を用いて観察した。そして、各スライドにおけるFOXA2陽性細胞の割合、およびFOXA2陽性細胞におけるLMX1A陽性細胞の割合を求めた。FOXA2を染色した写真を図5に示す。図5に示すように、FOXA2陽性細胞の割合に関して、1T47株は、96.8%、2C10株は、68.9%、6C7株は、61.9%、4T17株は、79.6%、6T8株は、78.1%であり、分化能が高いと推定される1T47株は、1T47株より分化能が低いと推定される2C10株、6C7株、4T17株および6T8株と比較して、神経系細胞マーカー(特に、ドーパミン作動性(DA)ニューロンマーカー)であるFOXA2を発現している細胞の割合が高かった。すなわち、前記分化能マーカーは、外胚葉系細胞である神経系細胞の分化率と相関していた。さらに、1T47株では、FOXA2陽性細胞のうち、80〜90%の細胞(88.5%±1.47%)がDAニューロン前駆細胞を特異的に標識する腹側中脳マーカーであるLMX1Aを発現しており、その他についてもほとんどの細胞が、神経管の背腹軸のニューロンに発現するNKX6.1を発現していた。これらのことから、本発明の分化能マーカーを用いて、多能性細胞の分化能を評価でき、かつ分化能の評価が高いと評価された多能性細胞が、相対的に分化能が低いと評価された多能性細胞と比較して、より効率よく神経系細胞に分化することが分かった。なお、1T47株からDAニューロン前駆細胞の誘導率(88.5%±1.47%)は、ヒトES細胞からDAニューロン前駆細胞の最高誘導率(参考文献3)と同程度である。このことから、本発明の分化能マーカーが、極めて精度の高い多能性細胞の分化能マーカーとなることが分かった。
参考文献3:Kriks, S. et al. “Dopamine neurons derived from human ES cells efficiently engraft in animal models of Parkinson's disease.” Nature 480, 547-551, doi:10.1038/nature10648 (2011).
つぎに、分化第20日目に播種した細胞について、DAニューロン前駆細胞およびニューロンマーカーであるNURR1陽性細胞の割合を検討したところ、分化第29日目において、1T47株は、56.5±5.22%の細胞がNURR1陽性細胞であった。なお、1T47株からDAニューロン前駆細胞/ニューロンの誘導率は、ヒトES細胞からDAニューロン前駆細胞/ニューロンの最高誘導率(参考文献3)と同程度であった。
以上のことから、本発明の分化能マーカーを用いて、新規に樹立したiPS細胞の分化能を評価でき、かつ分化能の評価が高いiPS細胞が、より効率よく神経系細胞に分化することがわかった。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つを含む、多能性細胞の分化能マーカー。
(付記2)
HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lを含む、付記1記載の分化能マーカー。
(付記3)
前記多能性細胞の分化能マーカーは、多能性細胞の外胚葉系細胞への分化能マーカーである、付記1または2記載の分化能マーカー。
(付記4)
多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程と、
前記測定工程における多能性細胞の分化能マーカーの発現量に基づき、前記多能性細胞の分化能を評価する評価工程とを含み、
前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つである、多能性細胞の分化能の評価方法。
(付記5)
前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lを含む、付記4記載の評価方法。
(付記6)
前記評価工程において、前記測定工程における分化能マーカーの発現量を基準値と比較することにより、前記多能性細胞の分化能を評価する、付記4または5記載の評価方法。
(付記7)
前記分化能マーカーの発現量が、分化能マーカーのmRNAのコピー数である、付記4から6のいずれかに記載の評価方法。
(付記8)
前記分化能は、外胚葉系細胞への分化能である、付記4から7のいずれかに記載の評価方法。
(付記9)
多能性細胞の分化能マーカーの発現測定試薬を含み、
前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つであり、
付記4から8のいずれかに記載の評価方法に用いる、多能性細胞の分化能の評価試薬。
(付記10)
対象の多能性細胞の分化能を評価する評価工程と、
前記対象の多能性細胞から、分化能が相対的に高いと評価された多能性細胞を選抜する選抜工程とを含み、
前記評価工程が、付記4から8のいずれかに記載の評価方法により実施される、多能性細胞の製造方法。
(付記11)
多能性細胞を誘導する誘導工程を含む、付記10記載の製造方法。
(付記12)
被検物質から、多能性細胞の分化能マーカーの発現を抑制する物質を、多能性細胞の分化能向上候補物質として選抜する選抜工程を含み、
前記多能性細胞の分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つである、多能性細胞の分化能向上候補物質のスクリーニング方法。
(付記13)
前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lを含む、付記12記載のスクリーニング方法。
(付記14)
前記被検物質の存在下、多能性細胞を誘導する誘導する誘導工程と、
得られた多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程とを含み、
前記選抜工程において、前記多能性細胞の分化能マーカーの発現が、前記被検物質を共存させていないコントロールの誘導系より低い被検物質を、前記分化能向上候補物質として選抜する、付記12または13記載のスクリーニング方法。
(付記15)
前記被検物質の存在下、多能性細胞を維持培養する誘導する培養工程と、
得られた多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程とを含み、
前記選抜工程において、前記多能性細胞の分化能マーカーの発現が、前記被検物質を共存させていないコントロールの維持系より低い被検物質を、前記分化能向上候補物質として選抜する、付記12または13記載のスクリーニング方法。
(付記16)
前記被検物質が、低分子化合物、ペプチド、タンパク質および核酸からなる群から選択された少なくとも1つである、付記12から15のいずれかに記載のスクリーニング方法。
以上のように、本発明によれば、前記分化能マーカーであるHAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、またはDNMT3Lを測定することによって、多能性細胞の分化能を評価できる。また、本発明において、前記分化能マーカーは、多能性細胞の分化能の指標となることから、前記分化能マーカーを用いたスクリーニングにより、多能性細胞の分化能向上候補物質を得ることもできる。このため、本発明は、生命科学分野、再生医療分野、医薬分野等において極めて有用である。

Claims (16)

  1. HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つを含む、多能性細胞の分化能マーカー。
  2. HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lを含む、請求項1記載の分化能マーカー。
  3. 前記多能性細胞の分化能マーカーは、多能性細胞の外胚葉系細胞への分化能マーカーである、請求項1または2記載の分化能マーカー。
  4. 多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程と、
    前記測定工程における多能性細胞の分化能マーカーの発現量に基づき、前記多能性細胞の分化能を評価する評価工程とを含み、
    前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つである、多能性細胞の分化能の評価方法。
  5. 前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lを含む、請求項4記載の評価方法。
  6. 前記評価工程において、前記測定工程における分化能マーカーの発現量を基準値と比較することにより、前記多能性細胞の分化能を評価する、請求項4または5記載の評価方法。
  7. 前記分化能マーカーの発現量が、分化能マーカーのmRNAのコピー数である、請求項4か6のいずれか一項に記載の評価方法。
  8. 前記分化能は、外胚葉系細胞への分化能である、請求項4から7のいずれか一項に記載の評価方法。
  9. 多能性細胞の分化能マーカーの発現測定試薬を含み、
    前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つであり、
    請求項4から8のいずれか一項に記載の評価方法に用いる、多能性細胞の分化能の評価試薬。
  10. 対象の多能性細胞の分化能を評価する評価工程と、
    前記対象の多能性細胞から、分化能が相対的に高いと評価された多能性細胞を選抜する選抜工程とを含み、
    前記評価工程が、請求項4から8のいずれか一項に記載の評価方法により実施される、多能性細胞の製造方法。
  11. 多能性細胞を誘導する誘導工程を含む、請求項10記載の製造方法。
  12. 被検物質から、多能性細胞の分化能マーカーの発現を抑制する物質を、多能性細胞の分化能向上候補物質として選抜する選抜工程を含み、
    前記多能性細胞の分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lからなる群から選択される少なくとも1つである、多能性細胞の分化能向上候補物質のスクリーニング方法。
  13. 前記分化能マーカーは、HAND1、N−MYC、KLF4、NLRP7、およびDNMT3Lを含む、請求項12記載のスクリーニング方法。
  14. 前記被検物質の存在下、多能性細胞を誘導する誘導する誘導工程と、
    得られた多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程とを含み、
    前記選抜工程において、前記多能性細胞の分化能マーカーの発現が、前記被検物質を共存させていないコントロールの誘導系より低い被検物質を、前記分化能向上候補物質として選抜する、請求項12または13記載のスクリーニング方法。
  15. 前記被検物質の存在下、多能性細胞を維持培養する誘導する培養工程と、
    得られた多能性細胞における多能性細胞の分化能マーカーの発現を測定する測定工程とを含み、
    前記選抜工程において、前記多能性細胞の分化能マーカーの発現が、前記被検物質を共存させていないコントロールの維持系より低い被検物質を、前記分化能向上候補物質として選抜する、請求項12または13記載のスクリーニング方法。
  16. 前記被検物質が、低分子化合物、ペプチド、タンパク質および核酸からなる群から選択された少なくとも1つである、請求項12から15のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
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