図1には、本発明の第1実施形態に係るトランス1の斜視図が示されている。トランス1は、略円柱形状のプライマリコア10、略円柱形状のセカンダリコア12を備えている。図2には、プライマリコア10およびセカンダリコア12を離して配置した場合の斜視図が示されている。ただし、図2では、セカンダリコア12およびプライマリコア10が上下の配置を逆にして描かれている。プライマリコア10とセカンダリコア12のそれぞれは、中心軸を含む断面で円柱形状が分割された形状を有している。
プライマリコア10を構成する2つの分割コア10Aおよび10Bのうちの一方の断面と、他方の断面とが対向して分割ギャップ10Gが形成されている。また、セカンダリコア12を構成する2つの分割コア12Aおよび12Bのうちの一方の断面と、他方の断面とが対向して分割ギャップ12Gが形成されている。
図2においては、プライマリコア10およびセカンダリコア12の軸方向にz軸が定義され、プライマリコア10およびセカンダリコア12の軸に垂直なxy平面が定義されている。特に断らない限り、以下の説明においてはこのxyz座標系が用いられる。また、各図を参照した説明における「奥」、「手前」、「上」、「下」、「左」および「右」の用語は、それぞれ、y軸正方向、y軸負方向、z軸正方向、z軸負方向、x軸負方向およびx軸正方向を意味する。これらの用語は、説明の便宜上のものであり、トランス1を配置する際の姿勢を限定するものではない。
プライマリコア10およびセカンダリコア12は、プライマリコア10の上面が、セカンダリコア12の下面に対向するように配置され、プライマリコア10およびセカンダリコア12との間にプライマリ/セカンダリギャップ14が形成される。プライマリコア10を構成する各分割コア10Aおよび10Bの上面には、円形状の溝16が形成されている。分割コア10Aに形成された溝16の内側には分割柱18Aが形成され、分割コア10Aに形成された溝16の外側には弧状壁20Aが形成されている。分割コア10Bに形成された溝16の内側には分割柱18Bが形成され、分割コア10Bに形成された溝16の外側には弧状壁20Bが形成されている。
分割柱18Aおよび18Bの周囲には、それぞれ第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bが設けられている。
セカンダリコア12は、プライマリコア10と同様の形状を有している。セカンダリコア12の下面には円形状の溝が形成されている。その溝にはセカンダリ巻線が設けられている。すなわち、溝の内側には柱状の部分が形成されており、柱状部の周囲にはセカンダリ巻線が設けられている。
このように、プライマリコア10の上面には円形状の溝26が形成されており、溝26の内側に、柱状の部分であるプライマリ柱状部が形成されている。同様に、セカンダリコア12の下面にも円形状の溝が形成されており、溝の内側に柱状の部分であるセカンダリ柱状部が形成されている。すなわち、プライマリ柱状部およびセカンダリ柱状部を1つの柱状部とみなした場合、柱状部は、その軸を横切るプライマリ/セカンダリギャップ14によってプライマリ柱状部およびセカンダリ柱状部に分割されている。プライマリ柱状部およびセカンダリ柱状部のそれぞれは、柱形状を軸方向断面で分割して得られる形状をそれぞれが有する2つの分割柱を備えている。2つの分割柱は、それぞれの軸方向断面が分割ギャップを形成するように配置されている。
プライマリコア10には第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bが設けられ、プライマリコア10、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bがプライマリ巻線構造Pを構成する。セカンダリコア12にはセカンダリ巻線が設けられ、セカンダリコア12およびセカンダリ巻線がセカンダリ巻線構造Sを構成する。プライマリ巻線構造Pにおけるプライマリコア10の上面と、セカンダリ巻線構造Sにおけるセカンダリコア12の下面とが対向するように各巻線構造が配置されることで、トランス1が構成される。
図3には、セカンダリコア12およびセカンダリ巻線を取り除き、プライマリコア10の上面側からトランス1を眺めた図が模式的に示されている。第1プライマリ巻線22Aの両端は第1プライマリ端子30およびタップ32に接続されており、分割柱18Aを図の時計回りに3周する。第1プライマリ巻線22Aは、第1プライマリ端子30から分割コア10Aの溝16の手前側の一端まで伸びる。第1プライマリ巻線22Aは、分割柱18Aの周囲を時計回りに半周した後、分割柱18Aの分割面に沿って直線区間401をy軸負方向に伸びる。第1プライマリ巻線22Aは、1ピッチだけ内側に入って分割柱18Aの周囲を時計回りに半周した後、分割柱18Aの分割面に沿って直線区間402をy軸負方向に伸びる。第1プライマリ巻線22Aは、さらに1ピッチだけ内側に入って分割柱18Aの周囲を時計回りに半周した後、分割柱18Aの分割面に沿って直線区間403をy軸負方向に伸び、タップ32に至る。
ここでは、第1プライマリ巻線22Aが分割柱18Aの周囲を周回するごとに、1ピッチだけ内側に入る構造について説明した。第1プライマリ巻線22Aは、分割柱18Aの周囲を周回するごとに、1ピッチだけ上側または下側に向かう構造であってもよい。
第2プライマリ巻線22Bの両端は、タップ32および第2プライマリ端子34に接続されており、分割柱18Bを図の時計回りに3周する。第2プライマリ巻線22Bは、タップ32から分割柱18Bの分割面に沿って直線区間404をy軸正方向に伸び、分割コア10Bの溝16の奥側の一端まで伸びる。第2プライマリ巻線22Bは、分割柱18Bの周囲を時計回りに半周した後、分割柱18Bの分割面に沿って直線区間405をy軸正方向に伸びる。第2プライマリ巻線22Bは、1ピッチだけ内側に入って分割柱18Bの周囲を時計回りに半周した後、分割柱18Bの分割面に沿って直線区間406をy軸正方向に伸びる。第2プライマリ巻線22Bは、分割柱18Bの周囲を時計回りに半周した後、第2プライマリ端子34に至る。
ここでは、第2プライマリ巻線22Bが分割柱18Bの周囲を周回するごとに、1ピッチだけ内側に入る構造について説明した。第2プライマリ巻線22Bは、分割柱18Bの周囲を周回するごとに、1ピッチだけ上側または下側に向かう構造であってもよい。
本実施形態においては、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bが形成する中途接続点としてのタップ32は、第1プライマリ端子30側の巻き数と第2プライマリ端子34側の巻き数とが等しくなる位置におけるセンタータップである。以下の説明における各実施形態におけるタップもまた、センタータップであってよい。
図4には、セカンダリコア12の下面側からトランス1を眺めた図が模式的に示されている。セカンダリ巻線24の両端は、第1セカンダリ端子36および第2セカンダリ端子38に接続されており、セカンダリコア12の下面に形成された溝26に沿って、分割柱28Aの周囲のうちの円弧状の区間および分割柱28Bの周囲のうちの円弧状の区間(以下、単に、分割柱28Aおよび28Bの周囲という)を図の反時計回りに3周する。
セカンダリ巻線24は、第1セカンダリ端子36から、分割柱28Aおよび28Bの間の分割ギャップ12Gを通って分割柱28Aの溝26の手前側の一端まで伸びる。セカンダリ巻線24は、分割柱28Aおよび28Bの周囲を図の反時計回りに1周し、1ピッチだけ内側に入って、分割柱28Aおよび28Bの周囲を図の反時計回りに1周する。セカンダリ巻線24は、さらに、分割柱28Aおよび28Bの周囲を図の反時計回りに1周し、1ピッチだけ内側に入って、分割柱28Aおよび28Bの周囲を図の反時計回りに1周する。このようにしてセカンダリ巻線24は、分割柱28Aおよび28Bの周囲を反時計回りに3周した後、分割柱28Aおよび28Bの間の分割ギャップ12Gを手前側に伸びて第2セカンダリ端子38に至る。
ここでは、セカンダリ巻線24が分割柱28Aおよび28Bの周囲を周回するごとに、1ピッチだけ内側に入る構造について説明した。セカンダリ巻線24は、分割柱28Aおよび28Bの周囲を周回するごとに、1ピッチだけ上側または下側に向かう構造であってもよい。
プライマリコア10の上面が、セカンダリコア12の下面に対向するように、これらのコアが配置されることで、第1プライマリ巻線22Aのうち、分割柱18Aの円弧状の外周に沿って周回する区間と、セカンダリ巻線24とが対向する。同様に、第2プライマリ巻線22Bのうち、分割柱18Bの円弧状の外周に沿って周回する区間と、セカンダリ巻線24とが対向する。
第1プライマリ巻線22Aのうち、分割コア10Aの溝16に配置された区間から発せられる磁束は、分割柱18Aおよび28Aを通ってセカンダリ巻線24に鎖交する。また、セカンダリ巻線24から発せられる磁束は、分割柱28Aおよび18Aを通って、第1プライマリ巻線22Aのうち、分割コア10Aの溝16に配置された区間に鎖交する。これによって、第1プライマリ巻線22Aとセカンダリ巻線24とが結合する。
同様に、第2プライマリ巻線22Bのうち、分割コア10Bの溝16に配置された区間から発せられる磁束は、分割柱18Bおよび28Bを通ってセカンダリ巻線24に鎖交する。また、セカンダリ巻線24から発せられる磁束が、分割柱28Bおよび18Bを通って、第2プライマリ巻線22Bのうち、分割コア10Bの溝16に配置された区間に鎖交する。これによって、第2プライマリ巻線22Bとセカンダリ巻線24とが結合する。
本実施形態に係るトランス1では、プライマリコア10が分割コア10Aおよび10Bに分割され、セカンダリコア12が分割コア12Aおよび12Bに分割されている。そのため、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bのうちの一方から発生し、他方に鎖交する磁束は小さい。これによって、第1プライマリ巻線22Aと第2プライマリ巻線22Bとの間の結合度は小さくなり、第1プライマリ巻線22Aと第2プライマリ巻線22Bにおいて適度な漏れインダクタンスが得られる。
また、第1プライマリ巻線22Aおよびセカンダリ巻線24は、プライマリコア10において溝16を囲む磁路と、セカンダリコア12において溝26を囲む磁路によって囲まれている。したがって、第1プライマリ巻線22Aとセカンダリ巻線24との結合度が大きくなる。同様の原理によって、第2プライマリ巻線22Bとセカンダリ巻線24との結合度が大きくなる。さらに、プライマリコア10とセカンダリコア12との間には、プライマリ/セカンダリギャップ14が設けられているため、磁気飽和が生じ難くなる。
本実施形態に係るトランス1では、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bが昇圧用または降圧用のインダクタとして用いられる。それと共に、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bのそれぞれがセカンダリ巻線24に結合し、電力伝送路としての変圧器が構成される。
図5には第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bの第2の構成例が示されている。この構成例では、分割柱18Aおよび18Bの間に形成される分割ギャップ10Gに、第1プライマリ巻線22Aの直線区間と第2プライマリ巻線22Bの直線区間が隣接するように配置されている。すなわち、x軸正方向に分割ギャップ10Gを横切る方向を見たときに、直線区間403、404、402、405、401および406の順に、直線区間401〜406が配置され、第1プライマリ巻線22Aの直線区間および第2プライマリ巻線22Bの直線区間が交互に配置されている。
図6には、本発明の実施形態に係るトランス1の等価回路が示されている。トランス1は、プライマリ巻線22およびセカンダリ巻線24を備えている。プライマリ巻線22にはタップ32が設けられている。プライマリ巻線22の一端に設けられた第1プライマリ端子30とタップ32との間の巻線が第1プライマリ巻線22Aであり、プライマリ巻線22の他端に設けられた第2プライマリ端子34とタップ32との間の巻線が、第2プライマリ巻線22Bである。プライマリ巻線22とセカンダリ巻線24とが結合することで、第1プライマリ巻線22Aとセカンダリ巻線24とが結合し、さらに、第2プライマリ巻線22Bとセカンダリ巻線24とが結合する。第1プライマリ巻線22Aと第2プライマリ巻線22Bの結合度は小さい。
図7には図4に示されたセカンダリ巻線24の具体的な構造が示されている。セカンダリ巻線24は、y軸方向に伸びる端子区間αおよびβを備えている。セカンダリ巻線24は3枚の円環板501〜503を備えている。これらの円環板は上下に対向する板面が絶縁体によって絶縁された上で、あるいは所定の間隔を隔てて上下方向に重ねられている。端子区間αは、第1セカンダリ端子36から奥(y軸正方向)に向かって伸び、最上の円環板501の一端に接続されている。円環板501の他端は、上から第2番目の円環板502の一端に接続されている。円環板502の他端は、上から3番目の円環板503の一端に接続されている。円環板503の他端は、端子区間βに接続されている。端子区間βは、円環板503の他端から手前(y軸負方向)に向かって伸び、第2セカンダリ端子38に接続されている。
図8には、図5に示された第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bの具体的な構造が示されている。図9には、第2プライマリ巻線22Bの具体的な構造が示されている。第2プライマリ巻線22Bは、端子区間γ、端子区間δ、半円板521〜523、第4直線板424、第5直線板425および第6直線板426を備えている。
端子区間γ、端子区間δ、第4直線板424、第5直線板425および第6直線板426はy軸方向に伸び、yz平面内に広がっている帯状の導体である。第4直線板424〜第6直線板426は、y軸方向に延伸方向を揃え、対向する板面が絶縁体によって絶縁された上で、あるいは、所定の間隔を隔ててx軸方向に並べて配置されている。
半円板521〜523は、xy平面内に広がった円環板を折半した形状を有する。半円板521〜523は、上下に対向する板面が絶縁体によって絶縁された上で、あるいは所定の間隔を隔てて上下方向に重ねられている。
端子区間γは、タップ32から奥(y軸正方向)に伸び、第4直線板424の手前側の一端に接続されている。第4直線板424の奥側の他端は、最上の半円板521の奥側の一端に接続されている。半円板521の手前側の他端は、第4直線板424の右側に隣接する第5直線板425の手前側の一端に接続されている。第5直線板425の奥側の他端は、上から第2番目の半円板522の奥側の一端に接続されている。半円板522の手前側の他端は、第5直線板425の右側に隣接する第6直線板426の手前側の一端に接続されている。第6直線板426の奥側の他端は、上から第3番目の半円板523の奥側の一端に接続されている。半円板523の手前側の他端は、端子区間δに接続されている。端子区間δは、半円板523の手前側の他端から手前(y軸負方向)に伸び、第2プライマリ端子34に接続されている。
第5直線板425は、第4直線板424よりも手前側に伸びており、第5直線板425の一端は、第4直線板424の一端よりも手前側にある。第6直線板426は、第5直線板425よりも手前側に伸びており、第6直線板426の一端は、第5直線板425の一端よりも手前側にある。
図10には、図2に示されるAA線においてトランス1を切断し、y軸正方向から眺めたときの断面図が示されている。セカンダリコア12の溝26には、上から順に円環板501〜503が設けられている。分割コア10Aの溝16には、上から順に半円板541〜543が設けられている。分割コア10Bの溝16には、上から順に半円板521〜523が設けられている。
分割コア10Aと分割コア10Bとの間の分割ギャップ10Gには、左から順に、第3直線板423、第4直線板424、第2直線板422、第5直線板425、第1直線板421および第6直線板426が配置されている。これらの直線板は、それぞれ、図5に示された直線区間403、直線区間404、直線区間402、直線区間405、直線区間401および直線区間406に対応している。
図8および9を参照して第1プライマリ巻線22Aの構造について説明する。第1プライマリ巻線22Aは、端子区間ε、端子区間ζ、第1直線板421、第2直線板422および第3直線板423、半円板541〜543を備えている。端子区間ε、端子区間ζ、第1直線板421、第2直線板422および第3直線板423はy軸方向に伸び、yz平面内に広がっている帯状の導体である。半円板541〜543は、xy平面内に広がった円環板を折半した形状を有する。半円板541〜543は、上下に対向する板面が絶縁体によって絶縁された上で、あるいは所定の間隔を隔てて上下方向に重ねられている。
端子区間εは、第1プライマリ端子30から奥に伸び、半円板541の手前側の一端に接続されている。半円板541の奥側の他端には、第1直線板421の奥側の一端が接続されている。第1直線板421は、第5直線板425と第6直線板426との間に位置し、手前側に伸びている。第1直線板421の手前側の他端は、半円板521および第5直線板425を上側に跨いで半円板521〜523の左側に至り、半円板542の手前側の一端に接続されている。半円板542の奥側の他端には、第2直線板422の奥側の一端が接続されている。第2直線板422は、第4直線板424と第5直線板425との間に位置し、手前側に伸びている。第2直線板422の手前側の他端は、第4直線板424を上側に跨いで半円板521〜523の左側に至り、半円板543の手前側の一端に接続されている。半円板543の奥側の他端には、第3直線板423の奥側の一端が接続されている。第3直線板423は、第4直線板424の左側に位置し、手前側に伸びている。端子間区間ζは、第4直線板424から手前側に伸び、タップ32に接続されている。
本実施形態に係るトランス1では、分割柱18Aおよび18Bの間に形成される分割ギャップ10Gに、第1プライマリ巻線22Aの直線板と第2プライマリ巻線22Bの直線板とが隣接するように配置されている。すなわち、x軸正方向に分割ギャップ10Gを横切る方向を見たときに、第3直線板423、第4直線板424、第2直線板422、第5直線板425、第1直線板421および第6直線板426の順に、これらの直線板が配置され、第1プライマリ巻線22Aの直線板および第2プライマリ巻線22Bの直線板が交互に配置されている。
第1プライマリ端子30から第1プライマリ巻線22Aに電流が流入し、タップ32を経て第2プライマリ巻線22Bに電流が流入し、さらに、第2プライマリ端子34から電流が流出するとき、あるいは、その逆向きに電流が流れるとき、分割ギャップ10Gにおいて隣接する直線板には互いに逆向きの電流が流れる。
したがって、隣接する導体板によって生じる近接効果が抑制され、各導体板で生じる損失が低減される。ここで、近接効果とは、方向を揃えて隣接する2つの導線に同一方向の電流が流れた場合、各導線に流れる電流が発生する磁束によって、各導線の断面における電流分布が不均一となり、損失が増加する効果をいう。
図11には、上記のトランス1が用いられた電力変換システム100が示されている。電力変換システム100は、電源部102、プライマリ・スイッチング回路104、トランス1およびセカンダリ・スイッチング回路106を備えている。
電力変換システム100は、第1スイッチング回路としてのプライマリ・スイッチング回路104のスイッチングに応じて、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bに誘導起電力を発生させて、プライマリ・スイッチング回路104が備えるプライマリコンデンサCpを充電する。さらに、プライマリ・スイッチング回路104およびセカンダリ・スイッチング回路106のスイッチングによって、プライマリ・スイッチング回路104とセカンダリ・スイッチング回路106との間で電力が伝送される。
プライマリ・スイッチング回路104は、ハーフブリッジX、ハーフブリッジY、およびプライマリコンデンサCpを備えている。ハーフブリッジXは、2つのスイッチング素子を直列に接続したものである。2つのスイッチング素子の一方がオンであるときは、他方はオフになり、2つのスイッチング素子は交互にオンオフする。
図9にはスイッチング素子としてMOSFETが用いられた場合が示されている。一方のMOSFETのソース端子に他方のMOSFETのドレイン端子が接続されている。各MOSFETのドレイン端子とソース端子との間には、ドレイン端子の側をカソード端子としてダイオードが接続されている。
ハーフブリッジXにおける2つのスイッチング素子の接続点(以下、ブリッジ接続点という。他のハーフブリッジについても同様である。)は、トランス1の第1プライマリ端子30に接続されている。ハーフブリッジYにおけるブリッジ接続点は、トランス1の第2プライマリ端子34に接続されている。ハーフブリッジXおよびYは並列接続され、ハーフブリッジXおよびYの上側の並列接続点と、ハーフブリッジXおよびYの下側の並列接続点との間には、プライマリコンデンサCpが接続されている。
ハーフブリッジX、ハーフブリッジYおよびプライマリコンデンサCpの下側の並列接続点と、トランス1のタップ32との間には、電源部102が接続されている。
セカンダリ・スイッチング回路106は、ハーフブリッジU、ハーフブリッジV、およびセカンダリコンデンサCsを備えている。ハーフブリッジUおよびVは並列接続され、ハーフブリッジUおよびVの上側の並列接続点と、ハーフブリッジUおよびVの下側の並列接続点との間には、セカンダリコンデンサCsが接続されている。ハーフブリッジUにおけるブリッジ接続点は、トランス1の第1セカンダリ端子36に接続されている。ハーフブリッジVにおけるブリッジ接続点はトランス1の第2セカンダリ端子38に接続されている。セカンダリコンデンサCsの上側の端子は、セカンダリ正極端子108Pに接続され、セカンダリコンデンサCsの下側の端子は、セカンダリ負極端子108Nに接続されている。セカンダリ正極端子108Pとセカンダリ負極端子108Nには、負荷/発電回路(図示せず)が接続される。負荷/発電回路は、セカンダリ・スイッチング回路106から供給される電力を消費する回路であってもよいし、セカンダリ・スイッチング回路106に電力を供給する回路であってもよい。
ハーフブリッジXおよびYのスイッチング位相差と、オン時比率を調整することで、電源部102が出力する直流電圧が昇圧され、プライマリコンデンサCpが充電される。ここで、各ハーフブリッジのスイッチングタイミングは、各ハーフブリッジにおける上側のスイッチング素子のオンオフのタイミングとして定義される。各ハーフブリッジのオン時比率は、スイッチング周期に対する、各ハーフブリッジにおける上側のスイッチング素子がオンになる時間の比率として定義される。
すなわち、ハーフブリッジXのスイッチングによって、第1プライマリ巻線22Aに誘導起電力が発生し、電源部102が出力する電圧と誘電起電力に基づく昇圧後の電圧がプライマリコンデンサCpに印加される。また、ハーフブリッジYのスイッチングによって、第2プライマリ巻線22Bに誘導起電力が発生し、電源部102が出力する電圧と誘電起電力に基づく昇圧後の電圧がプライマリコンデンサCpに印加される。
ハーフブリッジUおよびVのオン時比率は、ハーフブリッジXおよびYのオン時比率と同一であってよい。ハーフブリッジUおよびVは、例えば、180°の位相差でスイッチングする。また、ハーフブリッジXおよびYと、ハーフブリッジUおよびVのスイッチング位相差が調整されることで、プライマリ・スイッチング回路104からセカンダリ・スイッチング回路106に伝送される電力、または、セカンダリ・スイッチング回路106からプライマリ・スイッチング回路104に伝送される電力が調整されてよい。
すなわち、ハーフブリッジXおよびYと、ハーフブリッジUおよびVとの間にスイッチング位相差が生じることで、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bのそれぞれの端子間電圧と、セカンダリ巻線24の端子間電圧との差異が大きくなる。これによって、ハーフブリッジUおよびVを介して、セカンダリコンデンサCsおよび負荷/発電回路に流れる電流が大きくなり、セカンダリコンデンサCsおよび負荷/発電回路に電力が供給される。あるいは、セカンダリコンデンサCsおよび負荷/発電回路からプライマリ・スイッチング回路104に向けて電力が供給される。
上記のように、本実施形態に係るトランス1は、プライマリコア10、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bから構成されるプライマリ巻線構造Pと、セカンダリコア12およびセカンダリ巻線24から構成されるセカンダリ巻線構造Sから構成されている。トランス1は、プライマリ巻線構造Pと、セカンダリ巻線構造Sとが接近および離反自在な構造であってよい。この場合、プライマリ巻線構造Pがプライマリ側コネクタを形成し、セカンダリ巻線構造Sがセカンダリ側コネクタを形成してよい。
プライマリ側コネクタは、電源部102およびプライマリ・スイッチング回路104から引き出された導線の先に接続されてよい。また、セカンダリ側コネクタは、セカンダリ・スイッチング回路106から引き出された導線の先に接続されてよい。プライマリコア10の接続面(図2に示されている上面)と、セカンダリコア12の接続面(図2に示されている下面)とが対向することで、プライマリ側コネクタとセカンダリ側コネクタとが結合し、プライマリ・スイッチング回路104とセカンダリ・スイッチング回路106とが結合する。
本実施形態に係る電力変換システム100では、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bの結合度が小さい。そのため、プライマリ・スイッチング回路104のスイッチングによって、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bに、十分な誘導起電力が発生し、電源部102の出力電圧を昇圧してプライマリコンデンサCpに印加するという昇圧効果が高められる。さらに、第1プライマリ巻線22Aとセカンダリ巻線24との結合、および第2プライマリ巻線22Bとセカンダリ巻線24との結合によって、プライマリ・スイッチング回路104とセカンダリ・スイッチング回路106との間で電力が授受される。
図12には、電池制御システム120が示されている。電池制御システム120は、図11に示された電力変換システム100における電源部102を、複数の電池モジュール122に置き換えたものである。複数の電池モジュール122のそれぞれは、正極端子128Pおよび負極端子128Nを備えており、複数の電池モジュール122は、前段の電池モジュール122の負極端子128Nに後段の電池モジュール122の正極端子128Pが接続されるように直列接続されている。
各電池モジュール122は、電池124、シリーズスイッチング素子126S、パラレルスイッチング素子126P、モジュール内コンデンサCmを備えている。正極端子128Pと負極端子128Nとの間にはパラレルスイッチング素子126Pが接続されている。図10には、パラレルスイッチング素子126PとしてMOSFETが用いられた例が示されている。この場合、ドレイン端子が正極端子128Pに接続され、ソース端子が負極端子128Nに接続される。
正極端子128Pと電池124の正電極との間には、シリーズスイッチング素子126Sが接続されている。シリーズスイッチング素子126SとしてMOSFETが用いられた場合、ソース端子が正極端子128Pに接続され、ドレイン端子が電池124の正電極に接続される。電池124の負電極は負極端子128Nに接続されている。
各スイッチング素子にMOSFETが用いられた場合、各MOSFETのドレイン端子とソース端子との間には、ドレイン端子の側をカソード端子としてダイオードが接続される。電池124の正電極とシリーズスイッチング素子126Sとの接続点と、負極端子128Nとの間にはモジュール内コンデンサCmが接続されている。
各電池モジュール122の動作について説明する。パラレルスイッチング素子126P、シリーズスイッチング素子126Sおよびモジュール内コンデンサCmは、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bと共に、降圧コンバータ回路を構成する。 すなわち、パラレルスイッチング素子126Pおよびシリーズスイッチング素子126Sが交互にオンオフすることによって、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bに誘導起電力が発生し、複数の電池モジュール122における電池124の出力電圧の加算合計値に対する降圧電圧が、ハーフブリッジXのブリッジ接続端とハーフブリッジYのブリッジ接続端との間に印加される。
各電池モジュール122におけるシリーズスイッチング素子126Sおよびパラレルスイッチング素子126Pは、各電池モジュール122における電池124の充電量の指標であるSOC(State Of Charge)に応じたオン時比率でオンオフ制御されてよい。この場合、スイッチング周期に対する、シリーズスイッチング素子126Sがオンになる時間の比率としてオン時比率を定義すると、電池124のSOCが大きいほどオン時比率が小さくされる。これによって、複数の電池124の出力電圧のバラツキが抑制され、ハーフブリッジXのブリッジ接続端とハーフブリッジYのブリッジ接続端との間に印加される電圧が安定化される。
図12の上から第i番目の電池モジュール122における電池124の出力電圧Vbiと、プライマリコンデンサCpの端子間電圧V1との関係は、(数1)によって表される。
(数1)V1=(Dd/Db)・ΣVbi
Σは整数iについて加算合計することを意味する。Ddは各電池モジュール122のオン時比率であり、DbはハーフブリッジX、Y、UおよびVのオン時比率である。本実施形態では、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bを併せた巻き数と、セカンダリ巻線24の巻き数とを同一としてよい。この場合、プライマリコンデンサCpの端子間電圧V1と、セカンダリコンデンサCsの端子間電圧V2、すなわちセカンダリ電圧V2とは等しくなり、セカンダリ電圧V2は(数2)のように表される。
(数2)V2=(Dd/Db)・ΣVbi
ハーフブリッジX、Y、UおよびVのオン時比率Dbを0.5とすることで、各スイッチング素子におけるスイッチング損失や、トランス1における銅損が低減される。(数2)においてDb=0.5、Dd=1とした場合、セカンダリ電圧V2はV2=2・ΣVbiである。各電池モジュール122のオン時比率DdをDd=1として一定にすることは、各電池モジュール122におけるパラレルスイッチング素子126Pをオフに維持し、各電池モジュール122におけるシリーズスイッチング素子126Sをオンに維持することを意味している。セカンダリ・スイッチング回路106が、2・ΣVbiよりも小さい電圧をセカンダリ電圧V2として出力する場合、0を超える1未満の範囲で時比率Ddを調整することで、(数3)に示されるように、セカンダリ電圧V2が0を超える2・ΣVbi未満の電圧に調整される。
(数3)V2=2・Dd・ΣVbi
これによって、電力損失を抑制しつつ、2・ΣVbiよりも小さいセカンダリ電圧V2がセカンダリ・スイッチング回路106から出力される。
次に、2・ΣVbiよりも大きいセカンダリ電圧V2をセカンダリ・スイッチング回路106が出力する場合について説明する。(数2)においてDd=1とした場合、セカンダリ電圧V2は(数4)で表される。
(数4)V2=(1/Db)・ΣVbi
したがって、各電池モジュール122のオン時比率DdをDd=1として一定に維持し、ハーフブリッジX、Y、UおよびVのオン時比率Dbを0を超える0.5未満の値に調整することで、セカンダリ電圧V2が2・ΣVbiを超える電圧に調整される。
図13には、横軸にΣVbiをとり、縦軸にセカンダリ電圧V2をとったV2−ΣVbi平面によって、電池制御システム120の制御アルゴリズムが概念的に示されている。傾きが正の直線LLは、V2=2ΣVbiで表される直線である。
直線LLよりも下側の領域Lowは、ハーフブリッジX、Y、UおよびVのオン時比率Dbを0.5に維持した上で、0を超える1未満の範囲で時比率Ddを調整することで、セカンダリ電圧V2が(数3)に従って調整される領域である。直線LLよりも上側の領域Highは、各電池モジュール122のオン時比率Ddを1に維持した上で、0を超える0.5未満の範囲で時比率Dbを調整することで、セカンダリ電圧V2が(数4)に従って調整される領域である。
図14(a)〜(d)には電池制御システム120のシミュレーション結果が示されている。図14(a)には、セカンダリ電圧V2に対する電力伝送効率ηが示されている。横軸はセカンダリ電圧V2を示し、縦軸は電力伝送効率ηを示す。電池モジュール122の個数は6個であり、各電池124の出力電圧Vbの範囲は、40V〜55Vである。セカンダリ電圧V2の可変範囲において、電力伝送効率ηは94%以上97%以下の範囲内にある。図14(b)には、タップ32に流入する電流Imの時間波形が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は電流Imを示す。第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bのインダクタンスによって、電流Imのリプル成分が抑制されている。図14(c)には、第1プライマリ端子30に流入する電流Ia3および第2プライマリ端子34から流出する電流Ia4の時間波形が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は電流Ia3およびIa4を示す。図14(d)には、第1セカンダリ端子36に流入する電流Ib3が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は電流Ib3を示す。
図15には、交換型電池充放電システム140が示されている。交換型電池充放電システム140は、複数の電池側システム142および1つのアプリケーション側システム143を備えている。各電池側システム142は、複数の電池モジュール122、プライマリ・スイッチング回路104、およびプライマリ側コネクタ144を備えている。各電池側システム142におけるプライマリ側コネクタ144は、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bを備えている。図に示されている白抜きの両矢印は、トランス1がプライマリ側コネクタ144およびセカンダリ側コネクタ146を備え、これらのコネクタが接近および離反自在であることを意味する。以下の図面についても同様である。
アプリケーション側システム143は、セカンダリ側コネクタ146およびセカンダリ・スイッチング回路106を備えている。セカンダリ側コネクタ146はセカンダリ巻線24を備えている。セカンダリ・スイッチング回路106のセカンダリ正極端子108PはDCバス148の正極線148Pに接続され、セカンダリ負極端子108NはDCバス148の負極線148Nに接続されている。DCバス148には直流電力で動作し、あるいは、直流電力を出力する負荷/発電装置が接続されている。
複数の電池側システム142のうち1つは、プライマリ側コネクタ144がセカンダリ側コネクタ146に結合することで、アプリケーション側システム143に結合する。複数の電池側システム142のうち、アプリケーション側システム143に結合するものは、ユーザの操作によって選択されてよい。すなわち、ユーザは、複数の電池側システム142のうち1つを選択し、選択した1つのプライマリ側コネクタ144をセカンダリ側コネクタ146に結合させる。また、複数の電池側システム142のうち1つを選択し、選択した1つのプライマリ側コネクタ144をセカンダリ側コネクタ146に結合させる機構が設けられてもよい。
アプリケーション側システム143は、DCバス148との間で電力を授受し、アプリケーション側システム143に結合した電池側システム142はアプリケーション側システム143との間で電力を授受する。電池側システム142とアプリケーション側システム143との間の電力の授受に伴い、電池側システム142における複数の電池モジュール122のそれぞれは充電されあるいは放電する。
複数の電池側システム142のうち、アプリケーション側システム143に結合していないものについては、電池モジュール122が交換されてもよい。また、アプリケーション側システム143に結合している電池側システム142における複数の電池モジュール122のうちいずれかに交換の必要が生じた場合には、その電池側システム142に代えて別の電池側システム142をアプリケーション側システム143に結合し、電池モジュール122を交換する操作が行われてもよい。
図16には、交換型電池/モータジェネレータシステム150が示されている。このシステムは、図15に示された交換型電池充放電システム140において、DCバス148にモータジェネレータ駆動装置152を接続したものである。モータジェネレータ駆動装置152は、固定電池154、リレースイッチ156、インバータ158およびモータジェネレータ160を備えている。固定電池154の正電極は、リレースイッチ156の一端に接続され、リレースイッチ156の他端はインバータ158の正極端子158Pに接続されている。固定電池154の負電極は、インバータ158の負極端子158Nに接続されている。インバータ158の交流端子158ACにはモータジェネレータ160が接続されている。インバータ158の正極端子158Pは、DCバス148の正極線148Pに接続され、インバータ158の負極端子158Nは、DCバス148の負極線148Nに出力されている。
インバータ158は、正極端子158Pおよび負極端子158Nから供給される直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ160に出力する。あるいは、モータジェネレータ160が発電した交流電力を直流電力に変換して正極端子158Pおよび負極端子158Nに出力する。
リレースイッチ156がオフのときは、アプリケーション側システム143とモータジェネレータ160との間で電力の授受が行われる。リレースイッチ156がオンのときは、固定電池154、アプリケーション側システム143およびモータジェネレータ160の相互間で電力の授受が行われる。
交換型電池/モータジェネレータシステム150は、モータジェネレータ160で駆動される電気自動車や、モータジェネレータ160およびエンジンの少なくとも一方によって駆動されるハイブリッド自動車等の電動自動車に搭載されてよい。
図17には、交換型電池/DCバスシステム170が示されている。このシステムは、図15に示された交換型電池充放電システム140において、DCバス148に複数のセカンダリ・スイッチング回路106を並列に接続したものである。各セカンダリ・スイッチング回路106のセカンダリ正極端子108PはDCバス148の正極線148Pに接続され、セカンダリ負極端子108NはDCバス148の負極線148Nに接続されている。また、各セカンダリ・スイッチング回路106には、セカンダリ側コネクタ146を構成するセカンダリ巻線24が接続されている。DCバス148には、負荷/発電装置として太陽電池を用いた太陽光発電装置が接続されてよい。複数のセカンダリ・スイッチング回路106のうちいずれかまたは総てには、電池側システム142が結合する。
このような構成によれば、発電電力または消費電力が一定でない負荷/発電装置がDCバス148に接続されていたとしても、発電電力または消費電力に応じた数の電池側システム142およびセカンダリ・スイッチング回路106が用いられることで、負荷/発電装置が適切な状態で使用される。すなわち、負荷/発電装置の発電電力に過不足があったり、負荷/発電装置への供給電力に過不足があったりすることが回避され、負荷/発電装置の電気的負担が軽減される。
図18には、本発明の第2実施形態に係るトランス2が示されている。トランス2は、1次側巻線構造Q1および2次側巻線構造Q2を備えている。1次側巻線構造Q1および第2巻線構造Q2のそれぞれは、図1に示されているトランス1におけるプライマリ巻線構造Pと同一の構造を有している。すなわち、トランス2は、トランス1におけるセカンダリ巻線構造Sを、プライマリ巻線構造Pと同一の構造に置き換えたものに相当する。
なお、トランス2の構造に関する説明では、トランス1の構造と区別するため、「プライマリ」および「セカンダリ」の用語の代わりに、それぞれ「1次側」および「2次側」の用語を用いる。
トランス2における1次側巻線構造Q1については、プライマリ巻線構造Pにおけるプライマリコア10、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bに対応する構成要素を、それぞれ、1次側コア60、1次側・第1巻線および1次側・第2巻線という。2次側巻線構造Q2については、プライマリコア10、第1プライマリ巻線22Aおよび第2プライマリ巻線22Bに対応する構成要素を、それぞれ、2次側コア62、2次側・第1巻線および2次側・第2巻線という。
1次側巻線構造Q1および2次側巻線構造Q2は、1次側コア60の上面が2次側コアの下面に対向するように配置され、1次側コア60および2次側コア62との間にギャップが形成される。
図19には、トランス2の等価回路が示されている。トランス2は、1次巻線76および2次巻線78を備えている。1次巻線76には1次側タップ66が設けられ、2次巻線78には2次側タップ72が設けられている。
1次巻線76の一端に設けられた1次側・第1端子64と1次側タップ66との間の巻線が1次側・第1巻線76Aであり、1次巻線76の他端に設けられた1次側・第2端子68と1次側タップ66との間の巻線が、1次側・第2巻線76Bである。2次巻線78の一端に設けられた2次側・第1端子70と2次側タップ72との間の巻線が2次側・第1巻線78Aであり、2次巻線78の他端に設けられた2次側・第2端子74と2次側タップ72との間の巻線が、2次側・第2巻線78Bである。
1次巻線76と2次巻線78とが結合することで、1次側・第1巻線76Aと2次側・第1巻線78Aとが結合し、さらに、1次側・第2巻線76Bと2次側・第2巻線78Bとが結合する。1次側・第1巻線76Aと1次側・第2巻線76Bの結合度は小さい。また、1次側・第1巻線76Aと2次側第・第2巻線78Bの結合度は小さく、さらに、1次側・第2巻線76Bと2次側・第1巻線78Aの結合度も小さい。
図18に示されている1次側巻線構造Q1では、1次側コア60に形成された分割ギャップ60Gから、端子区間ε1、ζ1、δ1およびγ1が引き出されている。これらの端子区間は、それぞれ、プライマリ巻線構造Pにおける端子区間ε、ζ、δおよびγに対応する。端子区間ε1は1次側・第1端子64に接続され、端子区間δ1は1次側・第2端子68に接続される。端子区間ζ1およびγ1は、1次側タップ66に接続される。
2次側巻線構造Q2では、2次側コア62に形成された分割ギャップ62Gから、端子区間ε2、ζ2、δ2およびγ2が引き出されている。これらの端子区間は、それぞれ、プライマリ巻線構造Pにおける端子区間ε、ζ、δおよびγに対応する。端子区間ε2は2次側・第1端子70に接続され、端子区間δ2は2次側・第2端子74に接続される。端子区間ζ2およびγ2は、2次側タップ72に接続される。
図20には、トランス2が用いられた電力変換システム200が示されている。電力変換システム200は、1次側電源部202、1次側スイッチング回路204、トランス2、2次側スイッチング回路206および2次側・負荷/発電装置208を備えている。
1次側スイッチング回路204は、ハーフブリッジX、ハーフブリッジY、および1次側コンデンサC1を備えている。2次側スイッチング回路206は、ハーフブリッジW、ハーフブリッジZ、および2次側コンデンサC2を備えている。1次側スイッチング回路204および2次側スイッチング回路206は同一の構成を有している。1次側スイッチング回路204および2次側スイッチング回路206は、さらに、図11に示されたプライマリ・スイッチング回路104と同一の構成を有している。
1次側電源部202は、1次側タップ66と、ハーフブリッジX、ハーフブリッジYおよびコンデンサC1の下側の並列接続点との間に直流電圧を出力する。2次側・負荷/発電装置208は、2次側タップ72と、ハーフブリッジW、ハーフブリッジZおよびコンデンサC2の下側の並列接続点との間に直流電圧を出力する。ハーフブリッジXおよびYと、ハーフブリッジWおよびZのスイッチング位相差を調整することで、1次側電源部202と2次側・負荷/発電装置208との間で授受される電力が調整される。
図21には、トランス2が用いられた電池交換式モータジェネレータシステム215が示されている。このシステムは、1次側電源部202として、直列接続された複数の電池モジュール122が用いられ、2次側・負荷/発電装置208としてモータジェネレータ駆動装置152が設けられたものである。
モータジェネレータ駆動装置152は、固定電池154、リレースイッチ156、昇圧コンバータ210、インバータ158およびモータジェネレータ160を備えている。固定電池154の正電極は、リレースイッチ156の一端に接続され、リレースイッチ156の他端は昇圧コンバータ210の低圧側正極端子210Lに接続されている。
固定電池154の負電極は、昇圧コンバータ210の負極端子210Nに接続されている。昇圧コンバータ210の高圧側正極端子210Hおよび負極端子210Nは、それぞれ、インバータ158の正極端子158Pおよび負極端子158Nに接続されている。インバータ158の3相交流端子158ACにはモータジェネレータ160が接続されている。また、インバータ158の正極端子158Pは、2次側スイッチング回路206の2次側正極端子206Pを介して、2次側タップ72に接続されている。インバータ158の負極端子158Nは、2次側スイッチング回路206の2次側負極端子206Nを介して、ハーフブリッジW、ハーフブリッジZおよび2次側コンデンサC2の下側の並列接続点に接続されている。
モータジェネレータ駆動装置152では、昇圧コンバータ210によって、固定電池154の出力電圧が昇圧され、昇圧後の電圧がインバータ158および2次側スイッチング回路206に印加される。昇圧コンバータ210が昇圧後の出力電圧を調整することで、2次側スイッチング回路206およびインバータ158において生じる電力損失が低減される。
図22には、2モード型電池交換式モータジェネレータシステム220が示されている。このシステムは、図21に示されている昇圧コンバータ210を2モード型昇圧コンバータ222に置き換え、リレースイッチ156を省略したものである。2モード型昇圧コンバータ222は特許文献5に記載されている電源システムと同様の構成を有し、この電源システムと同様に動作する。2モード型昇圧コンバータ222は、スイッチング素子SW1〜SW4およびリアクトルLを備えている。スイッチング素子SW1〜SW4は直列接続されている。
スイッチング素子SW1の上端は、インバータ158の正極端子158Pに接続されている。スイッチング素子SW1およびSW2の接続点は、2次側正極端子206Pを介して2次側タップ72に接続されている。スイッチング素子SW3およびSW4の接続点は、2次側負極端子206Nを介してハーフブリッジW、ハーフブリッジZおよび2次側コンデンサC2の下側の並列接続点に接続されている。
スイッチング素子SW2およびSW3の接続点は、リアクトルLの一端に接続され、リアクトルLの他端は、固定電池154の正電極に接続されている。スイッチング素子SW4の下端は固定電池154の負電極およびインバータ158の負極端子158Nに接続されている。
2モード型昇圧コンバータ222は、固定電池154および2次側スイッチング回路206が直列に接続された状態で、リアクトルL、2次側・第1巻線78Aおよび2次側・第2巻線78Bに誘導起電力を発生させるシリーズ接続モードで動作する。ここで、2次側スイッチング回路206が、2次側正極端子206Pおよび2次側負極端子206Nの左側に接続された2端子のデバイスであるものとして、固定電池154および2次側スイッチング回路206の直列接続が定義される。
また、2モード型昇圧コンバータ222は、固定電池154およびリアクトルLの直列接続部分と、2次側スイッチング回路206とが並列に接続された状態で、リアクトルL、2次側・第1巻線78Aおよび2次側・第2巻線78Bに誘導起電力を発生させるパラレル接続モードで動作する。この場合、2次側スイッチング回路206が、2次側正極端子206Pおよび2次側負極端子206Nの左側に接続された2端子のデバイスであるものとして、固定電池154およびリアクトルLの直列接続部分と、2次側スイッチング回路206との並列接続が定義される。シリーズ接続モード、またはパラレル接続モードのいずれで動作するかは、スイッチング素子SW1〜SW4のスイッチングの状態によって定まる。
2モード型昇圧コンバータ222では、パラレル接続モードおよびシリーズ接続モードを適宜切り替えることによって、各スイッチング素子の耐圧を大きくすることなく、インバータ158に出力される電圧の範囲が拡大される。本実施形態に係るトランス2では、1次側スイッチング回路204と2次側スイッチング回路206との間での電力伝送がされる共に、2次側・第1巻線78Aおよび2次側・第2巻線78Bが、2モード型昇圧コンバータ222の昇圧用のインダクタとして用いられる。これによって、2モード型電池交換式モータジェネレータシステム220が小型化される。