JP2021024772A - 金属含有ゼオライト複合体、およびその触媒、ならびに2−ピロリドンの製造方法 - Google Patents

金属含有ゼオライト複合体、およびその触媒、ならびに2−ピロリドンの製造方法 Download PDF

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学史 菅沼
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直伸 片田
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Abstract

【課題】新規な金属含有ゼオライト複合体、その触媒、及びその金属含有ゼオライト複合体の製造方法、並びに上記触媒を用いた2−ピロリドンの製造方法の提供。【解決手段】周期表で第8族〜第11族に分類される金属と、MFI型ゼオライトおよびYFI型ゼオライトから選ばれるゼオライトとを含み、MFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO2/Al2O3)として、10〜250であり、YFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO2/Al2O3)として、18〜700である、金属含有ゼオライト複合体。金属含有ゼオライト複合体を触媒に用いて、水素の存在下、ピログルタミン酸、グルタミン酸、およびピログルタミノールから選ばれる少なくとも1つの反応基質を反応させて、2−ピロリドンを生成する、2−ピロリドンの製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、触媒として使用可能な、金属を含有するゼオライト複合体、およびその触媒、ならびに、その金属含有ゼオライト複合体を用いた2−ピロリドンの製造方法に関する。
従来、2−ピロリドンは石油資源からの合成で工業的に製造されている。例えば、γ−ブチロラクトンとアンモニアを反応させることで、2−ピロリドンが得られる。しかしながら、アンモニアによる窒素の導入反応は、アンモニアの製造に大量のエネルギーを要し、また、設備の耐腐食対策などが求められるため、製造コストが高くなるというデメリットがある。
一方、近年、バイオマス資源から、微生物を利用して、2−ピロリドンを製造する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。また、グルタミン酸から、Pd/Al触媒を用いて2−ピロリドンを合成することが報告されている(非特許文献1参照)。この文献の方法では、窒素雰囲気下、250℃の高温で触媒反応を行っている。しかしながら、2−ピロリドンをより簡便に効率よく製造することが求められる。
特開2012−214496号公報
本発明は、新規な金属含有ゼオライト複合体、およびその触媒、ならびにその金属含有ゼオライト複合体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、2−ピロリドンを簡便に効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記に挙げられる実施態様を含むが、これらに限定されるものではない。
[1] 周期表で第8族〜第11族に分類される金属と、MFI型ゼオライトおよびYFI型ゼオライトから選ばれるゼオライトとを含み、
前記MFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、10〜250であり、
前記YFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、18〜700である、金属含有ゼオライト複合体。
[2] 前記金属が、Ru、Rh、Pt、およびPdからなる群から選択される少なくとも1つの金属である、[1]に記載の金属含有ゼオライト複合体。
[3] 金属含有ゼオライト複合体の総重量100重量%に対する、前記金属の総含有率が、0.001〜20重量%である、[1]または[2]に記載の金属含有ゼオライト複合体。
[4] 前記金属の粒子が、前記ゼオライトの担体の表面に担持されている、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の金属含有ゼオライト複合体。
[5] 前記金属の粒子の粒子径が0.2〜30nmである、[4]に記載の金属含有ゼオライト複合体。
[5−1] 前記金属の粒子の粒子径が0.2〜10nmである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の金属含有ゼオライト複合体。
[6] 前記金属の塩およびゼオライトを含む混合物を、焼成し、その後または焼成と同時に水素の存在下で還元処理することにより得た、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の金属含有ゼオライト複合体。
[7] 前記金属の塩およびゼオライトを含む混合物を、焼成し、その後または焼成と同時に水素の存在下で還元処理することにより、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の金属含有ゼオライト複合体を得ることを含む、金属含有ゼオライト複合体の製造方法。
[8] ピログルタミン酸、グルタミン酸、およびピログルタミノールから選ばれる少なくとも1つの反応基質から、2−ピロリドンを生成するための、[1]〜[6]のいずれか1つに記載する金属含有ゼオライト複合体からなる触媒。
[8−1] 前記金属が、Ru、Rh、Pt、およびPdからなる群から選択される少なくとも1つの金属である、[8]に記載の触媒。
[8−2] 反応基質が、ピログルタミン酸またはグルタミン酸である、[8]または[8−1]に記載の触媒。
[9] [1]〜[6]のいずれか1つに記載の金属含有ゼオライト複合体を用いて、水素の存在下、ピログルタミン酸、グルタミン酸、およびピログルタミノールから選ばれる少なくとも1つの反応基質を反応させて、2−ピロリドンを生成する、2−ピロリドンの製造方法。
[10] 温度が100℃以上、圧力が0.5MPa以上で、反応を行う、[9]に記載の2−ピロリドンの製造方法。
[11] 金属含有ゼオライト複合体の総重量が、反応基質1molに対して、0.1〜2000gの比率である、[9]または[10]に記載の2−ピロリドンの製造方法。
[12] ピログルタミン酸からピログルタミノールへの変換、および、ピログルタミノールから2−ピロリドンへの変換を1ステップで行う、[9]〜[11]のいずれか1つに記載の2−ピロリドンの製造方法。
[13] グルタミン酸からピログルタミン酸への変換、ピログルタミン酸からピログルタミノールへの変換、および、ピログルタミノールから2−ピロリドンへの変換を1ステップで行う、[9]〜[11]のいずれか1つに記載の2−ピロリドンの製造方法。
[14] CO化学吸着量測定において、前記金属1gあたりのCO化学吸着量が、0.001〜0.5mmolである、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の金属含有ゼオライト複合体。
[15] COを化学吸着させたときの赤外分光測定において、COのピークの波数が1800〜2200cm−1である、[1]〜[6]および[14]のいずれか1つに記載の金属含有ゼオライト複合体。
本発明によれば、新規な金属含有ゼオライト複合体、およびその触媒を提供することができる。また、本発明によれば、2−ピロリドンを簡便に効率よく製造することができる。
X線回折(XRD)測定の結果であり、(a)は、触媒例1、2および比較触媒例4のXRDのチャートを示し、(b)は、比較触媒例1〜3のXRDのチャートを示す。 透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果であり、(a)は触媒例1、(b)は触媒例2、(c)は比較触媒例1、(d)は比較触媒例2、(e)は比較触媒例3、(f)は比較触媒例4のTEMの画像を示す。 触媒例1、2および比較触媒例1〜4に、COを化学吸着させたときの赤外分光測定の結果である。 製造例1、2および比較製造例1〜4により、ピログルタミン酸から2−ピロリドンを製造したときの生成物の結果を示すグラフである。 製造例3により、グルタミン酸から2−ピロリドンを製造したときの生成物の結果を示すグラフである。
本発明の金属含有ゼオライト複合体は、周期表で第8族〜第11族に分類される金属と、MFI型ゼオライトおよびYFI型ゼオライトから選ばれるゼオライトとを含む。前記MFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、10〜250である。また、前記YFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、18〜700である。金属含有ゼオライト複合体は、金属を含有し、この金属がゼオライトと複合した複合体となっている。
上記の金属含有ゼオライト複合体において、周期表で第8族〜第11族に分類される金属としては、具体的には、第8族では、Fe(鉄)、Ru(ルテニウム)、Os(オスミウム)、第9族では、Co(コバルト)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、第10族では、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、第11族では、Cu(銅)、Ag(銀)、Au(金)、が挙げられる。これらの金属を含有する金属含有ゼオライト複合体は、本明細書に記載する2−ピロリドンの製造のための反応において、触媒活性が高い。
上記の金属含有ゼオライト複合体に含まれる金属としては、Ru、Rh、Pt、およびPdからなる群から選択される少なくとも1つの金属であること(例えば、1つ、2つ、または3つ)が好ましい。これらの金属により、さらに高い触媒作用を奏することができる。これらの中でも、Ru、Rhがより好ましく、Ruがさらに好ましい。Ruは、優れた触媒作用を奏することができ、より簡便に効率よく2−ピロリドンを製造することができる。
上記の金属含有ゼオライト複合体に含まれる金属は、酸化物などの化合物になっているものであってもよいが、好ましくは、ゼロ価の金属である。すなわち、金属単体が好ましい。なお、周期表で第8族〜第11族に分類される金属が複数種、混合されていてもよいが、単一の金属の方が、調製が容易なため、好ましい。
上記の金属含有ゼオライト複合体では、金属が粒子の状態であり、金属の粒子がゼオライトの担体の表面に担持されていることが好ましい。ここで、担持とは、基材として機能する担体の上に、担持される物質が固定されている状態のことを意味する。担持は、粒子状の金属が、ゼオライトの担体の表面に付着している状態であり得る。例えば、金属粒子が、ゼオライトの担体上に、点在していているような状態でもよい。ゼオライトの担体が結晶であると、その結晶上に金属粒子が配置され得る。ゼオライトは、分子または分子の集合体であってもよい。金属の粒子は、金属含有ゼオライト複合体の状態では、非共有結合によって担持され得る。その場合、共有結合を介しないで、金属の粒子がMFI型ゼオライトの担体の表面に固定される。
金属の粒子は、粒子径が0.2〜30nmであることが好ましい。それにより、粒子の表面積が大きくなり、優れた触媒作用を奏することができる。金属の粒子の粒子径が小さくなると、触媒作用が高くなる傾向にある。その観点から、金属の粒子の粒子径は、20nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましく、5nm以下がよりさらに好ましい。金属の粒子の粒子径は、好ましい範囲として、例えば、0.2〜10nmであってもよい。また、金属の粒子の粒子径は、0.5nm以上であってもよく、さらに1nm以上であってもよい。なお、金属の粒子の粒子径の平均値(平均粒子径)については、0.2〜30nmが好ましく、0.2〜20nmがより好ましく、0.5〜10nmがさらに好ましく、1〜5nmがよりさらに好ましい。
金属の粒子の大きさは、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察によって測定することができる。上記の金属含有ゼオライト複合体では、金属の粒子がゼオライトにより固定されているため、レーザ回折式粒度分布測定装置などの方法では粒子の大きさは確認しにくいが、TEMによれば、容易に粒子径を確認することができる。例えば、TEMにより金属含有ゼオライト複合体の表面を観測することで、金属の粒子の粒子径を測定することができる。このとき、任意に選択した所定個数(例えば、50個、100個、200個、または300個)の金属の粒子の粒子径を計測し、その平均値を算出することで、金属の粒子の平均粒子径を求めることができる。
上記の金属含有ゼオライト複合体では、MFI型ゼオライトおよびYFI型ゼオライトから選ばれるゼオライトが担体として機能する。MFI型ゼオライトあるいはYFI型ゼオライトが金属粒子の担体となることによって、表面積の大きい担体上に金属粒子を分散させて配置させることができるため、優れた触媒作用を奏することができる。
MFI型ゼオライトは、結晶構造としてMFI型を有するゼオライトである。また、YFI型ゼオライトは、結晶構造としてYFI型を有するゼオライトである。ゼオライトは、通常、細孔を有している。細孔の径は、0.2〜1nmであることが好ましい。金属粒子は、ゼオライトの細孔内にも存在し得るし、細孔外にも存在し得る。すなわち、細孔のサイズよりも小さいサイズの金属粒子は、ゼオライトの細孔内に存在する可能性がある。一方、細孔のサイズよりも大きいサイズの金属粒子は、ゼオライトの細孔外において、ゼオライト表面に存在することになる。本願明細書中、特に断りのない限り、「ゼオライト」とは、MFI型ゼオライトおよびYFI型ゼオライトを意味する。ここで、本発明で使用するこれらゼオライト(すなわちMFI型およびYFI型)は、アンモニアの脱離エンタルピーが125kJmol−1以上の強いブレンステッド酸点を持つ、との特性を有し得る。
ゼオライトの結晶構造におけるMFI型については、例えば、次の文献に記載されている。
1. Kokotailo, G.T., Lawton, S.L., Olson, D.H. and Meier, W.M. “Structure of synthetic zeolite ZSM−5” Nature, 272, 437−438 (1978)。
2. Olson, D.H., Kokotailo, G.T., Lawton, S.L. and Meier, W.M. “Crystal Structure and Structure−Related Properties of ZSM−5” J. Phys. Chem., 85, 2238−2243 (1981)。
3. van Koningsveld, H., van Bekkum, H. and Jansen, J.C. “On the location and disorder of the tetrapropylammonium (TPA) ion in zeolite ZSM−5 with improved framework accuracy” Acta Crystallogr., B43, 127−132 (1987)。
YFI型ゼオライトは、2018年5月にIZA(International Zeolite Association)において、コード「YFI」および名称「YNU−5」等が登録された新規のゼオライトである。YFI型ゼオライトは、酸素12員環の環状構造(大細孔と称される)と、酸素8員環の環状構造(小細孔と称される)とを有する。大細孔は直径0.60〜0.80nm程度であり得、小細孔は直径0.30〜0.50nm程度であり得る。大細孔および小細孔は、それぞれ通路を形成している。そして、大細孔の通路が交差しながら2次元にのびる構造となっている。YFI型ゼオライトの結晶構造の特性等については、次の文献に記載されている。
Nakazawa, N., Ikeda, T., Hiyoshi, N., Yoshida, Y., Han, Q., Inagaki, S. and Kubota, Y.“A microporous aluminosilicate with 12−, 12− and 8−ring pores and isolated 8−ring channels”, J. Am. Chem. Soc. 139, 7989−7997 (2017)。
YFI型ゼオライトに関する発明は、国際公開WO2018/061827号において開示されている(この文献は、文献中にYFIとの記載はないが、実質的にYFI型ゼオライトに関するものである)。
本発明では、上記文献に記載の方法で、YFI型ゼオライトを製造して得ることができ、それを本発明の金属含有ゼオライト複合体に用いることができる。
MFI型ゼオライトおよびYFI型ゼオライトから選ばれるゼオライトの担体は、粒子であってよい。ただし、担体として機能するために、ゼオライトは、通常、金属の粒子よりも大きい粒子径の粒子である。例えば、ゼオライトの粒子径は、金属の粒子の粒子径よりも、2倍以上、5倍以上、10倍以上、50倍以上、または100倍以上であり得る。ゼオライトの粒子径は、10〜5000nmであることが好ましい。粒子径がこの範囲になることにより、金属粒子を効果的に配置することができる。ゼオライトの粒子径は、20〜4000nmであることがより好ましく、50〜1000nmであることがさらに好ましい。ゼオライトの粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察で得られた画像を解析することにより得ることができる。その際、任意に選択した所定個数(例えば、50個、100個、200個、または300個)のゼオライト粒子の粒子径を計測し、その平均値を算出することで、ゼオライト粒子の平均粒子径を求めることができる。
MFI型ゼオライトおよびYFI型ゼオライトから選ばれるゼオライトは、電荷補償カチオンを有するものであってもよい。電荷補償カチオンとしては、例えば、NH 、H、Na、K、Ca2+などが挙げられる。なお、電荷補償カチオンとは、アルミニウムの周りにできる負電荷を補償する陽イオンを意味する。
上記の金属含有ゼオライト複合体では、MFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比は、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、10〜250であることが好ましい。それにより、ゼオライト表面に金属粒子を適度に配置することができ、優れた触媒作用を奏することができる。このモル比(SiO/Al)は、15〜200であることがより好ましく、20〜100であることがさらに好ましい。
また、上記の金属含有ゼオライト複合体では、YFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、18〜700であることが好ましい。それにより、ゼオライト表面に金属粒子を適度に配置することができ、優れた触媒作用を奏することができる。このモル比(SiO/Al)は、20〜200であることがより好ましく、22〜100であることがさらに好ましい。
上記の金属含有ゼオライト複合体では、金属含有ゼオライト複合体の総重量100重量%に対する、金属の総含有率が、0.001〜20重量%であることが好ましい。金属の含有率がこの範囲になることにより、優れた触媒作用を奏することがより可能になる。この含有率が、金属含有ゼオライト複合体における金属の担持率(重量%)となる。金属含有ゼオライト複合体における金属の含有率は、0.01〜10重量%がより好ましく、0.1〜8重量%がさらに好ましく、1〜6重量%がよりさらに好ましい。
MFI型ゼオライトは、限定されるものではないが、日本触媒学会の参照触媒を用いてもよい。日本触媒学会は、MFI型ゼオライトをZSM−5として配布している。試料名は、例えば、JRC−Z5−90NA、JRC−Z5−30NA、JRC−Z5−30NH4である。
上記の金属含有ゼオライト複合体は、例えば、Ru/MFI、Rh/MFI、Pt/MFI、Pd/MFI、Ru/YFI、Rh/YFI、Pt/YFI、およびPd/YFIであり得る。これらの中でも、Ru/MFI、Rh/MFI、Ru/YFI、およびRh/YFIがより好ましく、Ru/MFIおよびRu/YFIがさらに好ましい。なお、これらは触媒でよく用いられる表記であり、触媒の表記において、[/」は金属が担体に担持されていることを示しており、例えば、Ru/MFIは、Ruが、MFI型ゼオライトの担体に担持されている触媒であることを意味する。
上記の金属含有ゼオライト複合体を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、含浸法によって得ることができる。具体的には、MFI型ゼオライトまたはYFI型ゼオライトの担体を金属塩の水溶液に含浸し、次いで、水溶液を蒸発乾固し、その後、焼成することによって、金属含有ゼオライト複合体を得ることができる。金属塩としては、例えば、金属ハロゲン化物(例えば、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物)、金属水酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属酢酸塩、金属カルボニル、金属シクロペンタジエニル錯体、などが挙げられる。金属塩の具体例としては、ルテニウム(Ru)では、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、ルテニウムアセチルアセトナート、ルテニウムカルボニル、ニトロシル硝酸ルテニウム、ペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムなどが挙げられ、ロジウム(Rh)では、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、酢酸ロジウム、テトラカルボニルジクロロ二ロジウムなどが挙げられ、白金(Pt)では、塩化白金、硝酸白金、白金アセチルアセトネート、硝酸テトラアンミン白金などが挙げられ、パラジウム(Pd)では、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、鉄(Fe)では、塩化鉄、硝酸鉄、酢酸鉄、硫酸鉄など、オスミウム(Os)では、塩化オスミウム、オスミウムカルボニル、オスミウムテトラオキシドなど、コバルト(Co)では、塩化コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルトなど、イリジウム(Ir)では、塩化イリジウム、酢酸イリジウム、イリジウムカルボニル、ヨウ化イリジウム、臭化イリジウムなど、ニッケル(Ni)では、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸ニッケルなど、銅(Cu)では、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅、硫酸銅など、銀(Ag)では、塩化銀、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀など、金(Au)では、塩化金、酢酸金など、が挙げられるが、これに限定されるものではない。
金属含有ゼオライト複合体を得る際の焼成温度は、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。また、焼成温度は、800℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましく、600℃以下がさらに好ましい。焼成時間は、限定されるものではないが、例えば、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、2時間以上がさらに好ましい。また、焼成時間は、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、4時間以下がさらに好ましい。焼成により、金属塩は還元され、ゼロ価の金属となり、その際、金属の粒子となってゼオライトに担持される。金属イオンの対となった塩の成分は、焼成によって、分解、蒸発などして、消失する。
金属含有ゼオライト複合体の製造においては、好ましくは、金属の塩およびゼオライトを含む混合物を、焼成し、その後または焼成と同時に水素の存在下で還元処理することにより、金属含有ゼオライト複合体を得ることができる。水素による還元処理を行うことにより、金属が安定化し、触媒作用を高めることができる。金属塩およびゼオライトを含む材料を、焼成、および、水素の存在下で還元処理することにより得た金属含有ゼオライト複合体は、金属がゼロ価の状態になりやすく、触媒能力が向上するのである。金属は、水素の存在下でないと、焼成後は、酸化物として存在することがあり得るが、水素還元処理によって、酸化物が還元されて、ゼロ価(メタル種)の金属となる。好ましくは、金属含有ゼオライト複合体は、所定の時間、水素と接触する。より好ましくは、金属含有ゼオライト複合体は、高温で水素と接触する。上記の水素の存在下での還元処理は、好ましくは、上記の金属含有ゼオライト複合体を製造する際の焼成とともに行われる。もちろん、焼成とは別に、水素還元処理を行ってもよい。その場合、焼成が行われた後、水素還元処理が行われる。
水素還元処理の温度は、焼成温度と同じであってよいし、異なっていてもよい。焼成と同時に水素還元処理を行う場合は、これらは同じ温度となり得る。水素還元処理の温度は、還元処理を確実に行う観点から、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。また、水素還元処理の温度は、還元処理の効率化の観点から、800℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましく、600℃以下がさらに好ましい。水素還元処理の時間は、限定されるものではないが、例えば、還元処理を確実に行う観点から、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、2時間以上がさらに好ましい。また、水素還元処理の時間は、還元処理の効率化の観点から、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、4時間以下がさらに好ましい。水素還元処理は、例えば、高温となった金属含有ゼオライト複合体を形成する材料に、水素を流すことにより行うことができる。具体的には、水素を常時供給する水素雰囲気下で焼成することで、水素還元処理を行うことができる。
金属の粒子は、好ましくは、ゼオライト上で、分散して担持されている。分散して担持されていることは、TEMで確認できるが、X線回折(XRD)でも確認することができる。金属含有ゼオライト複合体のXRDでは、MFI型ゼオライトまたはYFI型ゼオライトに由来するピークと、金属に由来するピークとが観測され得るが、分散の程度が大きくなると、金属に由来するピークが小さくなる。そして、分散の程度がかなり大きくなると、XRDでは、MFI型ゼオライトまたはYFI型ゼオライト由来のピークのみが観測され、金属に由来するピークが見えなくなる。上記の金属含有ゼオライト複合体の好ましい態様では、このように、金属粒子の分散の程度が進んで、XRDにおいて、金属由来のピークが見えなくなるのである。
上記の金属含有ゼオライト複合体は、CO化学吸着量測定において、前記金属1gあたりのCO化学吸着量が、0.001〜0.5mmolであることが好ましい。CO化学吸着量の範囲がこの範囲になることにより、優れた触媒作用を奏することができる。CO化学吸着量は、触媒として寄与する金属表面の量を示す値であり、金属の分散の程度の指標ともなる。したがって、CO化学吸着量の範囲が上記の範囲になると、金属の分散の程度が触媒反応に適したものになる。また、金属含有ゼオライト複合体は、後述する触媒反応の際には、COの吸着が関与して反応を進行させると考えられ、COの化学吸着量が上記の範囲になることによって、適切な活性が得られやすくなるものと考えられる。CO化学吸着量は、0.003〜0.2mmolであることがより好ましい。
CO化学吸着量は、通常の測定方法によって測定することができる。例えば、蒸気吸着量測定装置を用いた方法(静止法)により測定可能である。この方法では、一定の温度で、測定サンプルが入った検査スペースに、CO(一酸化炭素)を送り込む。その際、COを送り込む圧力を変化させる(例えば、徐々に上げる)。そして、測定される等温線(気体を吸着させるときの等温線を吸着等温線という)のグラフから、CO化学吸着量を求めることができる。蒸気吸着量測定装置としては、例えば、日本ベル株式会社製BELSORP−max−2を使用することができる。CO化学吸着量の測定は、50℃で測定したときの値であってよい。COの導入は、例えば、0.01〜50kPaの圧力で行われ得る。金属の量は、例えば、測定に使用した金属含有ゼオライト複合体の量と、金属含有ゼオライト複合体における金属の担持率とから算出される。
上記の金属含有ゼオライト複合体は、COを化学吸着させたときの赤外分光測定(IR)において、COのピークの波数が1800〜2200cm−1であることが好ましい。ピークの波数の範囲がこの範囲であることにより、優れた触媒作用を奏することができる。金属含有ゼオライト複合体は、触媒反応の際には、COの吸着が関与して反応を進行させると考えられ、COのピークの波数の範囲がこの範囲になることによって、適切な活性が得られやすくなるものと考えられる。この波数は、吸着したCOのC−O間の結合の程度によってシフトが移動する。ピークの波数は、1900〜2150cm−1であることがより好ましく、1950〜2050cm−1であることがさらに好ましい。COのピークには、0価のRuとCOの吸着であるRu−(CO)と、わずかに酸化したRuとCOの吸着であるRuδ+−(CO)と、わずかに酸化したRuと複数のCOの吸着であるRuδ+−(CO)との3種があり得るが、好ましくは、Ru−(CO)のピークで決められる。なお、ピークの波数は、ピークのトップ(極大値)が存在する位置で決められる。
COを化学吸着させた金属含有ゼオライト複合体の赤外分光測定は、例えば、25℃で金属含有ゼオライト複合体にCOを化学吸着させ、その後、真空にし、IR測定装置で測定することによって、行うことができる。COの導入は、例えば、5kPaの圧力で行われ得る。
上記の金属含有ゼオライト複合体は、化学反応の触媒として使用可能であり、好適には、ピログルタミン酸、グルタミン酸、およびピログルタミノールから選ばれる少なくとも1つの反応基質を反応させて、2−ピロリドンを生成するために、使用することができる。
本明細書において、ピログルタミン酸、グルタミン酸、およびピログルタミノールから選ばれる少なくとも1つの反応基質から、2−ピロリドンを生成するための、上記の金属含有ゼオライト複合体からなる触媒が、開示される。
以下、本発明の2−ピロリドンの製造方法について、説明する。
本発明の2−ピロリドンの製造方法は、上記の金属含有ゼオライト複合体を用いて、水素の存在下、ピログルタミン酸、グルタミン酸、およびピログルタミノールから選ばれる少なくとも1つの反応基質を反応させて、2−ピロリドンを生成する。
2−ピロリドンの製造においては、金属含有ゼオライト複合体を用いることができる。金属含有ゼオライト複合体は、水素化反応(水素添加反応)を触媒する機能を有し得る。金属含有ゼオライト複合体は、2−ピロリドンを生成するための触媒となる。金属含有ゼオライト複合体により、2−ピロリドンを効率よく合成することができる。
なお、2−ピロリドンの製造においては、ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、MFI型ゼオライトの場合は10〜250であることが好ましく、YFI型ゼオライトの場合は18〜700であることが好ましいが、そうでない場合も、2−ピロリドンの生成反応は進行し得る。この場合も、SiおよびAlの組成比以外の好ましい態様は、上記で説明したものと同じである。ただし、より好ましい態様としては、上記で説明した金属含有ゼオライト複合体が、2−ピロリドンの製造に好適に使用される。
2−ピロリドンの製造では、水素が用いられる。この水素は、気体の水素であってよい。気体の水素は、水素ガスボンベから得ることができる。例えば、水素は、ガスボンベから反応容器に送られ、充填されて、反応に用いられる。
2−ピロリドンの反応は、水素の存在下で行われるが、気体内に、水素以外の気体が含まれていてもよい。水素が存在すれば、反応は進行し得るからである。水素以外の気体が含まれる場合、不活性ガスが好ましい。不活性ガスは、反応に関与しにくいからである。不活性ガスとして、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。ただし、より好ましくは、水素のみのガスが用いられる。
水素は、反応前に密閉容器内に充填されて充填状態が保持されていてもよいし、反応中に反応容器に常時供給されてもよい。充填状態が保持される場合、バッチ式の反応器とすることができ、反応を容易に行うことができる。
本発明の一態様では、金属含有ゼオライト複合体および水素の存在下、ピログルタミン酸を反応させることにより、2−ピロリドンを生成する。この場合、出発物質(反応基質)が、ピログルタミン酸となる。
ピログルタミン酸は、グルタミン酸が分子内で環化した化合物であり、グルタミン酸から容易に誘導される。金属含有ゼオライト複合体は、ピログルタミン酸から2−ピロリドンを合成する反応の触媒として使用することができる。
ピログルタミン酸から2−ピロリドンが生成する反応は、以下の経路で示す機構で進行すると考えられる。この反応は、還元反応である。水素および金属含有ゼオライト複合体の存在下、ピログルタミン酸を反応させると、ピログルタミン酸は、還元反応により、ピログルタミノールに変換する。ピログルタミノールは、合成反応の中間体となる。そして、ピログルタミノールは、水素および金属含有ゼオライト複合体の存在下、さらなる還元反応により、2−ピロリドンに変換する。ここで、2−ピロリドンの製造においては、目的とする2−ピロリドン以外に、還元反応が別のルートで進行した5−メチル−2−ピロリドン、および、還元反応がさらに進行したピロリジンといった副生成物、ならびに、中間体残存物としてのピログルタミノールなどが生成し、反応物中に共存し得る。しかしながら、本態様では、金属含有ゼオライト複合体を用いた水素による還元反応を利用することによって、選択性高く、目的とする2−ピロリドンを得ることが可能である。
ピログルタミン酸からピログルタミノールへの反応は、水素化反応である。この反応により、カルボニル基の酸素原子が除去され、水素原子に置き換わる。また、ピログルタミノールから2−ピロリドンへの反応は、ヒドロキシメチル基が脱離する反応である。このとき、少なくとも触媒近傍においては一酸化炭素(CO)が発生していると考えられるが、反応系全体としては、その一酸化炭素(CO)がさらに還元されたメタン(CH)が発生すると考えられ、実際に、メタンが反応後のガスクロマトグラフィー分析で確認される。このように、本態様では、ピログルタミン酸からピログルタミノールへの変換、および、ピログルタミノールから2−ピロリドンへの変換を1ステップで行うことが可能である。
本発明の一態様では、金属含有ゼオライト複合体および水素の存在下、ピログルタミノールを反応させることにより、2−ピロリドンを生成する。この場合、出発物質(反応基質)が、ピログルタミノールとなる。
上記で説明したように、金属含有ゼオライト複合体は、水素還元反応によって、ピログルタミノールを2−ピロリドンに変換することができる。この態様では、上記で中間体として記載されたピログルタミノールを出発物質として用い、このピログルタミノールを2−ピロリドンに変換させる。
本発明の一態様では、金属含有ゼオライト複合体および水素の存在下、グルタミン酸を反応させることにより、2−ピロリドンを生成する。この場合、出発物質(反応基質)が、グルタミン酸となる。
グルタミン酸は、アミノ酸の一種である含窒素化合物であり、天然に存在する物質であるため、窒素導入反応を経ることなく、有用な含窒素化合物に誘導可能である。また、グルタミン酸は、糖類を発酵させて容易に製造することができる。さらに、グルタミン酸は、余剰な植物由来のタンパク質から分解および抽出して得ることもでき、資源が豊富である。この態様では、グルタミン酸を原料として用いることによって、容易に2−ピロリドンを製造することができる。そして、金属含有ゼオライト複合体を使用することによって、グルタミン酸からの2−ピロリドンの製造(合成)を1ステップで行うことが可能である。
グルタミン酸が反応して、2−ピロリドンが生成する反応の機構を下記に示す。
グルタミン酸は、反応させると、まず、環化反応により、ピログルタミン酸が生成する。グルタミン酸からピログルタミン酸への反応は、分子内の脱水反応である。環化反応は、無触媒でも起こり得るが、本態様では、1ステップでの反応を実現するために、水素と金属含有ゼオライト複合体の存在下で行う。グルタミン酸の環化反応は、引き続き進行するピログルタミン酸からピログルタミノールを経て2−ピロリドンを生成するときの反応条件で、進行し得る。そのため、1ステップ反応が実現可能である。ピログルタミン酸が生じると、上記で説明したように、金属含有ゼオライト複合体と水素とによって還元反応が進行し、中間体のピログルタミノールが生成し、さらに還元反応が進行すると、目的物である2−ピロリドンが生成する。なお、上記の反応機構では副生成物の記載を省略しているが、副生成物の生成は、ピログルタミン酸から2−ピロリドンへの反応の場合と同様である。本態様では、グルタミン酸からピログルタミン酸への変換、ピログルタミン酸からピログルタミノールへの変換、および、ピログルタミノールから2−ピロリドンへの変換を1ステップで行うことが可能である。
このように、金属含有ゼオライト複合体を用いることにより、グルタミン酸、ピログルタミン酸、およびピログルタミノールのいずれを出発物質(反応基質)とした場合も、2−ピロリドンを製造することができる。もちろん、出発物質は、グルタミン酸、ピログルタミン酸、およびピログルタミノールからなる群から選ばれる2種または3種の混合物であってもよい。その場合も、2−ピロリドンを製造することが可能である。
以下、2−ピロリドンを製造する条件の例について説明する。以下の条件は、特に断りのない限り、グルタミン酸、ピログルタミン酸、およびピログルタミノールのいずれを出発物質(反応基質)とした場合も適用され得る。
2−ピロリドンの製造は、好ましくは、溶媒の存在下で行われる。反応基質は、好ましくは、溶媒に溶解されて、用いられる。上記の反応では、好ましくは、反応基質の溶液が用いられる。溶媒としては、限定されるものではないが、水、および、エタノール、メタノールなどのアルコール、テトラヒドロフランなどのエーテルなどに例示される有機溶媒(例えば水混和性有機溶媒)が挙げられる。溶媒としては、水を含むことが好ましい。水は、入手が容易であり、反応に関与しにくく、効率よく反応を行うことができるからである。さらに、溶媒は、水であってよく、実質的に水のみであってもよい。本態様では、反応基質(例えばグルタミン酸またはピログルタミン酸)の水溶液を好ましく用いることができる。なお、反応基質の溶液、および反応基質の水溶液は、さらに、その他の成分(酸、塩基など)を含有してもよいし、含有してなくてもよい。
反応基質(例えばグルタミン酸またはピログルタミン酸)の溶液または水溶液を用いる場合、反応基質の濃度は、0.0001〜0.1mol/Lが好ましい。反応基質の濃度がこの範囲になることにより、効率よく2−ピロリドンを得ることができる。さらに、上記の反応基質の濃度は、0.001〜0.05mol/Lがより好ましく、0.01〜0.04mol/Lがさらに好ましく、0.02〜0.03mol/Lがよりさらに好ましい。
反応基質(例えばグルタミン酸またはピログルタミン酸)に対する金属含有ゼオライト複合体(例えばRu/MFIまたはRu/YFI)の総重量は、反応基質1molに対して、0.1g〜2000gの比率であることが好ましい。金属含有ゼオライト複合体の量がこの範囲になることにより、優れた触媒作用を奏することができる。反応基質に対する金属含有ゼオライト複合体の量(上記の比率)は、反応基質1molに対し、1〜1000gがより好ましく、10〜500gがさらに好ましい。
反応基質(例えばグルタミン酸またはピログルタミン酸)に対する、金属含有ゼオライト複合体に担持された金属(例えばRu)の総重量は、反応基質1molに対し、0.01〜100gの比率であることが好ましい。金属含有ゼオライト複合体に含まれる金属の量がこの範囲になることにより、優れた触媒作用を奏することができる。反応基質に対する、金属含有ゼオライト複合体中の金属の量(上記の比率)は、反応基質1molに対し、0.1〜50gがより好ましく、1〜30gがさらに好ましく、5〜20gがよりさらに好ましい。
2−ピロリドンの製造にあたっては、まず、反応基質(例えばグルタミン酸またはピログルタミン酸)の溶液および金属含有ゼオライト複合体を、反応容器に入れる。反応容器としては、水素雰囲気を保持することができるバッチ式の反応容器を好ましく用いることができる。反応容器として、例えば、バッチ式のオートクレーブ反応容器が挙げられる。ここで、金属含有ゼオライト複合体は、上述したように、水素還元処理を経て得られたものが好ましい。
次に、反応容器に気体の水素を入れる。気体の水素は、例えば、水素ガスボンベから送ることができる。気体の水素を送り込むことにより、水素が反応容器に充填される。反応においては、水素が密閉容器に充填された後、密閉状態が維持されてもよいし、反応容器の中の圧力が一定になるように、水素の供給が維持されてもよい。
そして、反応基質(例えばグルタミン酸またはピログルタミン酸)の溶液を攪拌すると、上記で説明した反応が進行する。
上記の反応においては、温度が、50〜300℃で反応を行うことが好ましい。温度がこの範囲になることで、反応基質を効率よく反応させることができる。温度は、100℃〜300℃がより好ましく、150〜200℃がさらに好ましい。上記の温度は、例えば、加熱式の反応容器を使用することで得ることができる。具体的には、例えば、オートクレーブ反応容器を用いることができる。
上記の反応においては、圧力が、0.1〜50MPaで反応を行うことが好ましい。圧力がこの範囲になることで、グルタミン酸を効率よく反応させることができる。圧力は、0.5〜6MPaがより好ましく、1〜5MPaがさらに好ましく、1.5〜2.5MPaがよりさらに好ましい。上記の圧力は、例えば、反応系を加圧することで得ることができる。反応容器内の圧力は、水素ガスの注入時の圧力で調整することができる。なお、反応中、圧力が低下し得ることもあるが、上記の圧力は、反応開始時の圧力であってよい。好ましくは、反応終了時も、上記の圧力の範囲が維持されている。
上記の反応においては、温度が100℃以上、圧力が0.5MPa以上で、反応を行うことがさらに好ましい。この場合、高温、高圧の条件となり、反応基質(例えばグルタミン酸またはピログルタミン酸)をさらに効率よく反応させることができる。またさらに、温度が150℃以上、圧力が1.5MPa以上で、反応を行うことがさらに好ましい。
このようにして、上記で説明したように、反応基質の反応が進行して、反応基質がグルタミン酸である場合には、グルタミン酸が、ピログルタミン酸およびピログルタミノールを経て、2−ピロリドンに変化する。また、反応基質がピログルタミン酸である場合は、ピログルタミン酸が、ピログルタミノールを経て、2−ピロリドンに変化する。また、反応基質がピログルタミノールである場合は、ピログルタミノールが2−ピロリドンに変化する。
上記の金属含有ゼオライト複合体は、再利用可能である。例えば、上記の2−ピロリドンの製造に用いた金属含有ゼオライト複合体について、使用後に、回収し、水で洗浄し、高温乾燥したもの(好ましくはさらに水素還元処理を行う)は、再度、2−ピロリドンの製造に用いることができる。その際、金属含有ゼオライト複合体の触媒の活性は、初回の活性と同等程度のレベルである。したがって、金属含有ゼオライト複合体を効率よく使用して、2−ピロリドンを製造することができる。
2−ピロリドンの製造では、2−ピロリドンを含む2−ピロリドン含有混合物が得られる。上記で説明したように、2−ピロリドンの製造においては、金属含有ゼオライト複合体および水素の存在下、反応基質(例えばグルタミン酸またはピログルタミン酸)を反応させることにより2−ピロリドンが製造され、製造された2−ピロリドンは、中間体、副生成物などを含む反応混合物の中に含まれる。この混合物から、2−ピロリドンを単離することも可能であるし、反応混合物をそのまま、あるいはある程度精製して、次の用途に用いることも可能である。
2−ピロリドンは、高沸点の溶媒であり、水、および様々な有機溶媒と混和し得る。また、ポリアミドなどの高分子の原料になり得る。このように、2−ピロリドンは、工業的価値が高い。そのため、本態様により、2−ピロリドンを製造することは工業的に有用である。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[触媒の調製]
触媒例1:金属含有ゼオライト複合体(Ru/MFI)
金属含有ゼオライト複合体として、RuがMFI型ゼオライトの担体に担持された金属含有ゼオライト複合体(Ru/MFI、担持率:5重量%)を製造した。なお、この担持率5重量%の触媒においては、触媒(金属含有ゼオライト複合体)総重量100重量%に対する、金属(Ru)の含有率が5重量%である。MFI型ゼオライトは、日本触媒学会の参照触媒のMFI型ゼオライト(JRC−Z5−90NA)を使用した。このMFI型ゼオライトは、SiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、90である。まず、MFI型ゼオライトを、RuCl水溶液に、Ruの担持量が5重量%となるように含浸した。次に、含浸後のゼオライトを蒸発乾固し、110℃で24時間乾燥した。その後、6mL/minの水素流中、300℃で、3時間焼成および水素還元処理を行った。これにより、触媒例1の金属含有ゼオライト複合体(Ru/MFI)が得られた。
触媒例2:金属含有ゼオライト複合体(Ru/YFI)
国際公開WO2018/061827号の実施例1(段落[0074]〜[0077]参照)の方法に準じて、YFI型ゼオライトを製造した。このYFI型ゼオライトは、SiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、25であった。このYFI型ゼオライトを担体として用い、触媒例1と同様の方法により、RuがYFI型ゼオライトの担体に担持された金属含有ゼオライト複合体(Ru/YFI、担持率:5重量%)を製造した。
なお、ゼオライト中の組成比の分析は、ゼオライトをフッ化水素酸、濃硫酸、濃塩酸の混合溶液中で溶解させ、その溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(例えば、アジレント・テクノロジー株式会社、5110ICP−OES)で分析し、ゼオライト中の各元素の発光強度からそれらの濃度を求め、組成比を算出すること、によって行うことができる。
比較触媒例1:触媒(Ru/Al
担体として、MFI型ゼオライトの代わりに、アルミナ(Al、日本触媒学会の参照触媒、JRC−ALO−6)を用いた以外は、触媒例1と同様にして、Ruが担体に担持された触媒(Ru/Al、担持率:5重量%)を調製した。
比較触媒例2:触媒(Ru/ZrO
担体として、MFI型ゼオライトの代わりに、ジルコニア(ZrO、日本触媒学会の参照触媒、JRC−ZRO−6)を用いた以外は、触媒例1と同様にして、Ruが担体に担持された触媒(Ru/ZrO、担持率:5重量%)を調製した。
比較触媒例3:触媒(Ru/Nb
担体として、MFI型ゼオライトの代わりに、酸化ニオブ(Nb、日本触媒学会の参照触媒、JRC−NBO−1)を用いた以外は、触媒例1と同様にして、Ruが担体に担持された触媒(Ru/Nb、担持率:5重量%)を調製した。
比較触媒例4:触媒(Ru/FAU)
担体として、MFI型ゼオライトの代わりに、FAU型ゼオライト(日本触媒学会の参照触媒、JRC−ZY−5.3NA)を用いた以外は、触媒例1と同様にして、Ruが担体に担持された触媒(Ru/FAU、担持率:5重量%)を調製した。
[キャラクタリゼーション]
X線回折(XRD)測定
図1(a)及び(b)に、触媒例1、2および比較触媒例1〜4のXRD測定の結果(チャート)を示す。チャートでは、それぞれの担体のみのXRD測定の結果も記載している。ちなみに、ゼオライト以外の担体の結晶構造は、Alがγ−Al、ZrOが単斜晶、Nbがアモルファスである。チャートによると、触媒例1、2および比較触媒例1〜4は、いずれも、担体と同様の回折パターンが観察され、Ruに帰属される回折パターンは見られなかった。したがって、Ru粒子は、担体上でよく分散して担持されていると示唆される。
透過型電子顕微鏡(TEM)観察
図2(a)〜(f)に、触媒例1、2および比較触媒例1〜4のTEM観察の結果(画像)を示す。画像では、Ru粒子を点線の円で囲っている。TEM画像から、Ru粒子は、担体上でよく分散して担持されていることが確認される。TEM画像に基づき、Ru粒子の平均粒子径を算出したところ、触媒例1は3.3nm、触媒例2は3.5nm、比較触媒例1は3.2nm、比較触媒例2は2.6nm、比較触媒例3は2.0nm、比較触媒例4は2.8nmであった。したがって、Ru粒子は、担体上で粒子径1.5〜3.5nm程度の微細な粒子として担持されていることが示唆される。
CO化学吸着量の測定
CO化学吸着量は、蒸気吸着量測定装置(日本ベル株式会社、BELSORP−max−2)を用い、50℃で、CO(一酸化炭素)を送り込む方法(静止法)によって測定した。
表1に、触媒例1、2および比較触媒例1〜4のCO化学吸着量の結果を示す。表1の結果では、1gのRuに対して吸着したCOのモル数として、吸着量を示している。
表1に示すように、担体の違いにより、COの化学吸着量が異なっている。XRDおよびTEMの結果から、Ru粒子は、いずれも微粒子となってよく分散していると思われる一方、CO化学吸着量に有意な差異があるのは、COの吸着点の数だけではなく、COの吸着状態が異なっていることが要因であると推察される。この違いが、後述の2−ピロリドンの製造における触媒活性の違いに影響していると推察される。
COを化学吸着させたときの赤外分光測定
触媒例1、2および比較触媒例1〜4について、25℃で、5kPaの圧力でCO(一酸化炭素)を吸着させ、系内を真空にし、赤外分光(IR)を測定した。
図3に、IRの結果(チャート)を示す。チャートでは、COの波数付近(1700〜2300cm−1)を抽出して記載している。波数の小さい方(チャートの右側)から、順に、Ru−(CO)、Ruδ+−(CO)、Ruδ+−(CO)の吸収が観測されている。
表2に、ピークのトップの波数の値を示す。
図3および表2に示されるように、Ruδ+−(CO)、Ruδ+−(CO)は、いずれの担体においても、同様の波数位置にピークがある。一方、Ru−(CO)は、触媒例1は、比較触媒例1〜3よりも低波数側に、波数位置がシフトしている。したがって、触媒例1では、Ru上に吸着したCOのC−O間の結合が、比較触媒例1〜3よりも弱いと考えられる。このようなCO結合間力の違いが、後述の2−ピロリドンの製造における触媒活性の違いに影響している可能性があると推察される。また、触媒例2も、Ru−(CO)が、比較触媒例1〜3よりも低波数側に波数位置がシフトしており、同様のことが推察される。
[ピログルタミン酸から2−ピロリドンの製造]
製造例1:Ru/MFI触媒による製造
ピログルタミン酸(東京化成工業株式会社製)を水に溶解し、0.026mol/Lのピログルタミン酸水溶液を調製した。ピログルタミン酸水溶液50mLと、上記の触媒例1の金属含有ゼオライト複合体(Ru/MFI、担持率:5重量%)0.2gとをバッチ式オートクレーブ反応器(耐圧硝子工業株式会社製)に入れ、圧力2MPaの水素存在下、反応温度160℃、撹拌速度500rpmの条件で、2時間、反応を行った。この反応により、上記で説明したように、ピログルタミン酸は還元され、ピログルタミノールに変化し、さらに、2−ピロリドンに変化する。したがって、反応液は、2−ピロリドンを含む混合物の溶液となる。反応後、遠心分離により触媒を沈殿させ、上澄みとなる反応液を取り出して、FID−GC(水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフィー)で測定し、生成物を定量した。
製造例2:Ru/YFI触媒による製造
触媒として、触媒例2の金属含有ゼオライト複合体(Ru/YFI、担持率:5重量%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、ピログルタミン酸の反応を行った。製造例1と同様に、生成物を定量した。
比較製造例1:Ru/Alによる製造
触媒として、比較触媒例1の触媒(Ru/Al、担持率:5重量%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、ピログルタミン酸の反応を行った。製造例1と同様に、生成物を定量した。
比較製造例2:Ru/ZrOによる製造
触媒として、比較触媒例2の触媒(Ru/ZrO、担持率:5重量%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、ピログルタミン酸の反応を行った。製造例1と同様に、生成物を定量した。
比較製造例3:Ru/Nbによる製造
触媒として、比較触媒例3の触媒(Ru/Nb、担持率:5重量%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、ピログルタミン酸の反応を行った。製造例1と同様に、生成物を定量した。
比較製造例4:Ru/FAUによる製造
触媒として、比較触媒例4の触媒(Ru/FAU、担持率:5重量%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、ピログルタミン酸の反応を行った。製造例1と同様に、生成物を定量した。
図4に、製造例1、2および比較製造例1〜4によって得られた生成物の定量の結果をグラフで示す。グラフ中、転化率は、ひし形の記号「◇」で表されている。製造例1、2および比較製造例1〜4のいずれにおいても、出発物質(反応基質)のピログルタミン酸は定量されず、転化率は100%であった。生成物としては、目的とする2−ピロリドン(グラフの最下部)、およびそれ以外に(グラフの下から順に)、ピログルタミノール、5−メチル−2ピロリドン、ピロリジンが観測された。グラフでは、棒グラフで生成物の割合(選択率)を示している。なお、グラフ中、「その他」は、副生成物以外の反応などによって、ピログルタミン酸が消費されたものと考えられる。
図4のグラフに示すように、各触媒において、中間体のピログルタミノールが検出されており、ピログルタミン酸からピログルタミノールへの変化が進行していることが分かる。そして、製造例1では、ピログルタミノールの量が少なく、2−ピロリドンの量が多い。これは、ピログルタミノールが速やかに2−ピロリドンに変化しているからであると考えられる。また、製造例1では、還元反応がさらに進行したピロリジンの生成も比較触媒例に比べて多くなかった。このように、触媒例1の触媒は、2−ピロリドンの選択率が高い。そのため、触媒例1の触媒は、2−ピロリドンの製造に有効であることが示唆される。また、製造例2では、製造例1と同程度の高い選択率で2−ピロリドンが生成している。そして、製造例2では、2−ピロリドン以外の生成物の大部分はピログルタミノールであり、ピロリジンの生成は少ない。ピログルタミノールは、目的物(2−ピロリドン)の中間体であり、反応を継続した場合、2−ピロリドンに変換され得る。このように、製造例2では、副生成物の生成が少なく、効果的に反応が進行する。そのため、触媒例2の触媒は、2−ピロリドンの製造に有効であることが示唆される。なお、これらの製造例において、1ステップで、ピログルタミン酸から2−ピロリドンを製造できることが示唆される。
2−ピロリドンの製造における触媒活性について考察する。以下の考察は、考えられ得る推測の一例を示したものであり、本発明を限定するものではない。
ピログルタミン酸の反応では、次の機構で反応が進行していると考えられる。
上記の機構の中で、ピログルタミノールから2−ピロリドンへの変換速度が、担体が異なると、大きく異なると考えられる。これは、主にCOの脱離の反応速度の影響と考えられる。CO化学吸着量測定およびIR測定の結果から、担体が異なると、触媒の吸着量だけではなく、COの吸着状態にも影響があることが分かる。ピログルタミノールから2−ピロリドンへの変換過程で生成したCOが触媒上に吸着するが、このCOはCO分子として脱離するのではなく、金属(Ru)表面上で水素化され、メタンとして脱離するものと考えられる。実際、ガスクロマトグラフィーにおいてメタンが検出されている。触媒例1(Ru/MFI)および触媒例2(Ru/YFI)では、Ru上に、吸着したCOのC−O間の結合が弱く、開裂しやすいため、容易にCOの水素化が進んで脱離し、活性な状態に戻ると考えられる。そのため、反応速度が速いと考えられる。なお、ゼオライトが担体である比較触媒例4(Ru/FAU)では、触媒例1および2と同様にIRのピークが低波数側にシフトしているにもかかわらず、触媒例1および2よりも触媒活性が弱いのは、CO化学吸着量が低いことに起因しているのではないかと推察される。以上より、触媒例1および2は、ピログルタミノールから2−ピロリドンへの変換速度が高いため、2−ピロリドンを高い選択性で製造することができるものと考えられる。
[グルタミン酸から2−ピロリドンの製造]
製造例3:Ru/MFI触媒による、グルタミン酸から2−ピロリドンの製造
グルタミン酸(L−グルタミン酸、富士フイルム和光純薬株式会社製)を水に溶解し、グルタミン酸の濃度が0.026mol/Lのグルタミン酸水溶液を調製した。グルタミン酸水溶液50mLと、上記の触媒例1の金属含有ゼオライト複合体(Ru/MFI、担持率:5重量%)0.2gとをバッチ式オートクレーブ反応器(耐圧硝子工業株式会社製)に入れ、圧力2MPaの水素存在下、反応温度160℃、撹拌速度500rpmの条件で、2時間、反応を行った。この反応により、上記で説明したように、グルタミン酸はピログルタミン酸に変化し、生成したピログルタミン酸は還元されてピログルタミノールに変化し、さらに、生成したピログルタミノールは2−ピロリドンに変化する。反応液は、2−ピロリドンを含む混合物の溶液となった。反応後、遠心分離により触媒を沈殿させ、上澄みとなる反応液を取り出して、FID−GC(水素炎イオン化検出器のガスクロマトグラフィー)で測定し、生成物を定量した。
図5に、製造例3によって得られた生成物の定量結果をグラフで示す。グラフ中、転化率は、三角形の記号「△」で表されている。グラフから分かるように、グルタミン酸からの反応においても、ピログルタミン酸から2−ピロリドンを製造したときと同様の2−ピロリドン選択性を示した。グルタミン酸は、160℃では容易に脱水環化し、ピログルタミン酸に変化するため、グルタミン酸を出発物質(反応基質)とする場合も、2−ピロリドンが効率よく得られるものと考えられる。本製造例において、1ステップで、グルタミン酸から2−ピロリドンを製造できることが示唆される。なお、触媒例2の金属含有ゼオライト複合体(Ru/YFI)でも、同様にグルタミン酸から2−ピロリドンを製造することが可能である。

Claims (13)

  1. 周期表で第8族〜第11族に分類される金属と、MFI型ゼオライトおよびYFI型ゼオライトから選ばれるゼオライトとを含み、
    前記MFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、10〜250であり、
    前記YFI型ゼオライトに含まれるSiおよびAlの組成比が、シリカとアルミナに換算したモル比(SiO/Al)として、18〜700である、金属含有ゼオライト複合体。
  2. 前記金属が、Ru、Rh、Pt、およびPdからなる群から選択される少なくとも1つの金属である、請求項1に記載の金属含有ゼオライト複合体。
  3. 金属含有ゼオライト複合体の総重量100重量%に対する、前記金属の総含有率が、0.001〜20重量%である、請求項1または2に記載の金属含有ゼオライト複合体。
  4. 前記金属の粒子が、前記ゼオライトの担体の表面に担持されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属含有ゼオライト複合体。
  5. 前記金属の粒子の粒子径が0.2〜30nmである、請求項4に記載の金属含有ゼオライト複合体。
  6. 前記金属の塩およびゼオライトを含む混合物を、焼成し、その後または焼成と同時に水素の存在下で還元処理することにより得た、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属含有ゼオライト複合体。
  7. 前記金属の塩およびゼオライトを含む混合物を、焼成し、その後または焼成と同時に水素の存在下で還元処理することにより、請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属含有ゼオライト複合体を得ることを含む、金属含有ゼオライト複合体の製造方法。
  8. ピログルタミン酸、グルタミン酸、およびピログルタミノールから選ばれる少なくとも1つの反応基質から、2−ピロリドンを生成するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載する金属含有ゼオライト複合体からなる触媒。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属含有ゼオライト複合体を用いて、水素の存在下、ピログルタミン酸、グルタミン酸、およびピログルタミノールから選ばれる少なくとも1つの反応基質を反応させて、2−ピロリドンを生成する、2−ピロリドンの製造方法。
  10. 温度が100℃以上、圧力が0.5MPa以上で、反応を行う、請求項9に記載の2−ピロリドンの製造方法。
  11. 金属含有ゼオライト複合体の総重量が、反応基質1molに対して、0.1〜2000gの比率である、請求項9または10に記載の2−ピロリドンの製造方法。
  12. ピログルタミン酸からピログルタミノールへの変換、および、ピログルタミノールから2−ピロリドンへの変換を1ステップで行う、請求項9〜11のいずれか1項に記載の2−ピロリドンの製造方法。
  13. グルタミン酸からピログルタミン酸への変換、ピログルタミン酸からピログルタミノールへの変換、および、ピログルタミノールから2−ピロリドンへの変換を1ステップで行う、請求項9〜11のいずれか1項に記載の2−ピロリドンの製造方法。
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