JP2021020889A - ミエリン形成を促進するための組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ミエリン形成を促進するための組成物を提供する。【解決手段】本発明のミエリン形成を促進するための組成物は、第1の有効成分としての、グリセロホスホコリン(G)及びその薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、第2の有効成分としての、ヘスペリジン(H)、ナリルチン(N)、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、第3の有効成分としての、シンナミルエステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド(C)、ケイ皮酸(C)、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、を含む。これらの有効成分が相乗的に作用して、ミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPを顕著に増加させる。【選択図】図7

Description

本発明は、アルツハイマー病などのミエリン形成の障害を発症する疾患の治療及び/又は予防のために用いられる、ミエリン形成を促進するための組成物に関する。
超高齢化社会を迎えつつある現在、医療機関を受診する認知症患者の数は急激に増加しており、2015年の世界アルツハイマー報告によると、2015年に全世界で4,680万人の認知症患者が生存し、2050年までに1億3,150万人に増加すると予想されている。この数値は20年ごとに約2倍になる数値であり、認知症が世界規模で危機をもたらす疾患であると警告されている。このため、認知症に対する効果的な治療法と予防法とを確立することが急務となっている。
認知症の原因の最も多くを占めるアルツハイマー病は、進行性の痴呆を主症状としているが、病理学的特徴として、老人斑、神経原線維変化が脳内に多数認められ、ニューロンの脱落による脳の萎縮も認められることから、従来は灰白質部位の神経細胞の変性や脱落がアルツハイマー病発症の原因と考えられてきた。すなわち、アミロイド前駆体タンパク質の代謝異常に伴う脳内アミロイドβタンパク質の凝集沈着(以下、アミロイドβタンパク質を「Aβ」と表す。)によって老人班が形成されるが、このAβの凝集沈着が引き金となって、神経原線維変化の形成、ニューロンの消失、ひいては認知機能の低下が引き起こされると考えられてきた。このような考え方は「アミロイドカスケード仮説」と言われる。この仮説に基づきAβの発現量の低減を目的としたアルツハイマー病の治療法及び/又は予防法がこれまで広く検討されてきたが、この仮説に基づくアルツハイマー病の病状の正確な予測或いは生産的な治療法の開発が困難であったため、現在ではこの仮説はむしろ批判されている。そして、アミロイドカスケード仮説に代わるアルツハイマー病の病因の検討が行われており、脱髄などの種々な病因が提示されている(非特許文献1(J. Neurochem. (2017)143,432−444)参照)。
脱髄がアルツハイマー病発症の原因であるとする考え方は、「ミエリン仮説」と言われる。この仮説は、アルツハイマー病患者の脳において白質異常が認められ、特にミエリンの減少が著しく、初期ミエリン形成部位である脳梁膨大部や後期ミエリン形成部位である脳梁膝状部だけでなく、海馬CAI下部領域でも白質異常が見られることに基づいている。
そして、このミエリン仮説に基づき、脱髄の回復を目的として、人参、当帰、芍薬、地黄、白朮、茯苓、桂皮、黄耆、陳皮、遠志、五味子及び甘草の12種類の生薬の混合物から抽出された人参養栄湯を用いたアルツハイマー病の治療法及び/又は予防法が検討されてきた。非特許文献2(J neurosci Res 85:954−966,2007)には、リン酸化ミエリン塩基性タンパク質、特にリン酸化した分子質量21.5kDaのミエリン塩基性タンパク質(以下、ミエリン塩基性タンパク質を「MBP」と表し、リン酸化MBPを「p−MBP」と表し、分子質量XkDaのMBPを「XkDaMBP」と表し、リン酸化したXkDaMBPを「p−XkDaMBP」と表す。)の量が、老化及び脱髄誘導薬であるカプリゾンの適用により誘発された脱髄の間に顕著に減少すること、及び、カプリゾン処理マウス及び老齢マウスにおける脱髄の回復が人参養栄湯の投与によって達成されたことが報告されている。また、非特許文献3(Evid Based Complement Alternative Med.2011.[doi:10.1093/ecam/neq001])には、人参養栄湯を構成する上述の12種類の生薬のうち、ウンシュウミカン由来の陳皮が老齢による脱髄状態を回復する主要な成分であること、及び、脱髄状態の回復が脱髄の抑制ではなく再ミエリン化によってもたらされることが報告されており、さらに、上記陳皮の主成分であるヘスペリジン及び/又はナリルチンの存在下でミエリンへと発展するオリゴデンドロサイト前駆細胞を培養すると、陳皮の存在下で培養したのと同じく、p−21.5kDaMBPの生成が亢進され、急速にオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖・分化が進行することが報告されている。
さらに、本願の発明者らは、アルツハイマー病の病態モデルマウスを用いた検討を通じて、脱髄が進行した高齢マウスの脳では特にp−21.5kDaMBPが著しく減少しているが、非特許文献3に示されているヘスペリジン及び/又はナリルチンと、L−α−グリセリルホスホリルコリン或いはα−GPCともいわれるグリセロホスホコリン(以下、グリセロホスホコリンを「α−GPC」と表す。)と、を併用すると、これらの相乗効果により、p−21.5kDaMBPの発現量が顕著に増加し、この顕著な増加により、再ミエリン化が顕著に亢進されて脱髄が回復することを発見し、特許文献1(WO2018/190146A1)において、第1の有効成分としての、グリセロホスホコリン及びその薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、第2の有効成分としての、ヘスペリジン、ナリルチン、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物とを含む、アルツハイマー病の治療及び/又は予防のための組成物を提案した。α−GPCは、脳および乳にみられる天然化合物であり、コリン代謝系においてミエリン形成担当細胞であるオリゴデンドロサイトの細胞膜上に存在するENPP6(コリン特異的ホスホジエステラーゼ)によってコリンに代謝され、生成したコリンがオリゴデンドロサイトの脂質合成に利用されてミエリン化が進行する(非特許文献4(Scientific reports|6:20995|Doi:10.1038/srep20995)参照)。しかし、ヘスペリジン及び/又はナリルチンとα−GPCとの併用による相乗効果は非特許文献3,4からは予測されなかった。
WO2018/190146A1 特開2006−206584号公報 特開2010−106001号公報 特開2016−079125号公報 特開2016−088851号公報
J. Neurochem. (2017)143,432−444 J neurosci Res 85:954−966,2007 Evid Based Complement Alternative Med.2011.[doi:10.1093/ecam/neq001] Scientific reports|6:20995|Doi:10.1038/srep20995 J. Neurosci.,July 2,2003・23(13):5963−5973 J. Neurosci.,June 1,2003・23(11):4549−4559 J. Neurosci.,June 17,2009・29(24):7743−7752 Acta Neuropathologica Communications (2018)6:144 J Biosci Vol.43,No.5,December 2018,pp.1055−1068|DOI:10.1007/s12038−018−9811−0
上述したように、特許文献1において提案された上記第1の有効成分と上記第2の有効成分との相乗効果により、アルツハイマー病の効果的な治療及び/又は予防が期待される。しかし、治療及び/又は予防の効果の迅速化は常に要請されている。
そこで、本願の発明者らは、ミエリン形成担当細胞としてのオリゴデンドロサイト及びこれと連結しているアストロサイトに着目した。アストロサイトは、栄養因子を放出してオリゴデンドロサイトのミエリン形成能を高めるとともに、再ミエリン形成時には脱髄により発生するデブリを取り除く機能を有し、再ミエリン化にとってはなくてはならない細胞であるが、この他、血液脳関門の形成、細胞外環境の恒常性維持、神経伝達物質の取り込み等、様々な役割を果たす細胞でもある。図1は、ニューロンの軸索の周囲にミエリンを巻きつけているオリゴデンドロサイト及びオリゴデンドロサイトと血管との間に介在しているアストロサイトを概念的に示した図である。この図から把握されるように、アストロサイト同士、オリゴデンドロサイト同士、及び、アストロサイトとオリゴデンドロサイトとは、ギャップ結合チャネル(図1では「GJC」と表されている。)によって連結されている。このギャップ結合チャネルは、隣接する細胞間の直接的な細胞質内連絡を促進し、細胞シグナル伝達および代謝に関与する低分子量分子の移動を促進する役割を果たしており、隣接する細胞からそれぞれ提供されたコネキシン(図1では「Cx」と表されている)と呼ばれる6つのオリゴマータンパク質サブユニットからなるヘミチャネルの結合によって形成されている。アストロサイト同士のギャップ結合チャネルはコネキシン43/コネキシン43及びコネキシン30/コネキシン30によって構成されており、オリゴデンドロサイト同士のギャップ結合チャネルは、コネキシン47/コネキシン47及びコネキシン32/コネキシン32により構成されており、アストロサイトとオリゴデンドロサイトとのギャップ結合チャネルは、コネキシン43/コネキシン47及びコネキシン30/コネキシン32により構成されている。
そして、これらのコネキシンと脱髄との関係がこれまでに報告されている。非特許文献5(J. Neurosci.,July 2,2003・23(13):5963−5973)は、オリゴデンドロサイトにおいて発現するコネキシン47またはコネキシン32のいずれかを欠くマウスは生存可能であるものの、両方のコネキシンを欠くダブルノックアウトマウスは、薄いか又は存在しないミエリン鞘、空胞化、軸索周囲襟の拡大、オリゴデンドロサイトの細胞死、および軸索の喪失を特徴とする中枢ミエリンの深刻な異常により、生後6週までに死亡することを報告した上で、ギャップ結合のコミュニケーションが正常なミエリン形成にとって極めて重要であると述べている。非特許文献6(J. Neurosci.,June 1,2003・23(11):4549−4559)は、コネキシン47欠損マウスにおける中枢神経系の白質の電子顕微鏡分析を実施した結果、神経線維、特に軸索がオリゴデンドロサイトと最初に接触してミエリン形成がスタートする視神経の部位における神経線維の顕著な空胞化が発見されたこと、及び、コネキシン32/コネキシン47のダブルノックアウトマウスが行動振戦を発症し、平均して生後51日で死亡したことを報告している。
非特許文献7(J. Neurosci.,June 17,2009・29(24):7743−7752)は、アストロサイトにおいて発現するコネキシン43及びコネキシン30のダブルノックアウトマウスにおいて、空砲化したオリゴデンドロサイトおよび髄鞘内浮腫を含む白質域の広範な異変が現れていること、CC1陽性成熟オリゴデンドロサイトの数が少なくなっていること、及びMBPが減少していることを報告した上で、アストロサイトのギャップ結合の喪失が機能的な欠落を有する白質病理へとつながりうると述べている。一方で、非特許文献8(Acta Neuropathologica Communications (2018)6:144)は、コネキシン43の発現量の増加と臨床認知症尺度(CDR)やミニメンタルステート検査(MMSE)のスコア等によって把握される認知機能障害の重症度とが相関していることを示した上で、孤発性アルツハイマー病の発病の間に脳において進行するコネキシン43の慢性的、長期的なアップレギュレーションにより増加した神経活動が神経細胞の摩耗及び最終的な死への引き金となるという作業仮説を提案している。
さらに、非特許文献9(J Biosci Vol.43,No.5,December 2018,pp.1055−1068|DOI:10.1007/s12038−018−9811−0)は、レビューであるが、アストロサイトのコネキシン43とその結合パートナーであるオリゴデンドロサイトのコネキシン47が、中枢神経系のミエリン及びオリゴデンドロサイトの機能を維持するために非常に重要であることを示している。
したがって、再ミエリン化(脱髄の回復)を介したアルツハイマー病の迅速な治療のためには、アストロサイトに関しては、アルツハイマー病によりアップレギュレーションされたアストロサイトのコネキシン43を減少させつつ、健全なミエリンが形成される量のコネキシン43及びコネキシン30の発現を確保し、オリゴデンドロサイトに関しては、健全なミエリンが形成される量のコネキシン47及びコネキシン32、特にコネキシン47の発現を確保し、さらにアストロサイトのコネキシン43とオリゴデンドロサイトのコネキシン47とによる健全な連結を保つことによって両細胞間の情報交換を活発化させて、オリゴデンドロサイトの成熟・分化・生存ひいてはミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量を増加させることが要請される。
また、ミエリン形成の障害は、アルツハイマー病においてのみ認められるものではなく、アルツハイマー病以外の認知症や軽度認知機能障害に加えて、多発性硬化症及び亜急性硬化性全脳炎などの一旦形成されたミエリンが何らかの原因で破壊される脱髄疾患が知られており、この他、てんかんやダウン症、筋委縮性側索硬化症のような神経変性疾患、統合失調症のような精神疾患においても、ミエリン形成の障害の関与が指摘されている。ミエリン形成を迅速に促進する方法が発見されれば、アルツハイマー病の治療及び/又は予防に限定されず、上述したミエリン形成の障害を発症する疾患の治療及び/又は予防のためにも広く有効利用することができると期待される。
したがって、本発明の目的は、上述の要請に答えることができる、ミエリン形成を促進するための組成物を提供することである。
発明者らは、特許文献1において開示されている、第1の有効成分としてのグリセロホスホコリン及びその薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物及び第2の有効成分としてのヘスペリジン、ナリルチン、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物とを含む組成物から出発して、これらにさらに第3の有効成分として、シンナミルエステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物を併用すると、上述の要請に答えることができることを発見し、本発明を完成させた。シンナミルエステル、シンナミルアルコール及びシンナムアルデヒドは、体内でケイ皮酸に代謝されることがわかっている。
したがって、本発明は、
第1の有効成分としての、グリセロホスホコリン及びその薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、
第2の有効成分としての、ヘスペリジン、ナリルチン、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、
第3の有効成分としての、シンナミルエステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と
を含む、ミエリン形成を促進するための組成物に関する。
本発明では、主に第3の有効成分の作用により、アルツハイマー病の発症によってアップレギュレーションされたコネキシン43の発現量が減少し、主に第1の有効成分と第2の有効成分との併用により、コネキシン32の発現量が増加し、第1の有効成分と第2の有効成分と第3の有効成分との相乗効果により、コネキシン47の発現量が顕著に増加するとともに、ミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量が顕著に増加する。
第3の有効成分は、非特許文献2及び非特許文献3に示されている人参養栄湯の中にも、桂皮からもたらされて含まれている。しかし、これらの文献には、第3の有効成分として挙げられた化合物或いはこれを含む桂皮の作用に関する特別な記載が存在しない。また、第3の有効成分として挙げられた化合物或いはこれを含む桂皮を用いたアルツハイマー病の治療及び/又は予防に関連する先行文献は存在する。例えば、特許文献2(特開2006−206584号公報)には桂皮及び/又はそのエキスによるAβの凝集抑制作用及び凝集したAβの分解作用が記載されており、特許文献3(特開2010−106001号公報)にはケイ皮酸及びその誘導体によるペリオキシソーム増殖剤応答性受容体活性化剤及びこの活性化剤によるアルツハイマー病の予防又は改善が記載されており、特許文献4(特開2016−079125号公報)にはシンナムアルデヒド等のβ−セクレターゼ阻害作用が記載されており、特許文献5(特開2016−088851号公報)には桂皮を含有するタウタンパク質リン酸化抑制用組成物及びこの組成物を用いたアルツハイマー病の治療が記載されている。しかし、これらの文献には、コネキシン或いはp−21.5kDaMBPの発現に関する記載が存在しない。また、これらの文献には、第1の有効成分と第2の有効成分と第3の有効成分との併用が記載されていない。
上述したように、本発明の組成物によってミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量が顕著に増加するため、本発明の組成物は、アルツハイマー病の治療及び/又は予防に限定されず、上述したミエリン形成の障害を発症する疾患の治療及び/又は予防のために広く有効利用することができる。
本発明のミエリン形成を促進するための組成物は、好ましくは、成人一人当たりの一日当たりの投与量として、10〜200mgの第1の有効成分と、30〜350mgの第2の有効成分と、0.6〜15mgの第3の有効成分とを含む。
本発明のミエリン形成を促進するための組成物では、第2の有効成分として、ヘスペリジンとナリルチンの両方を含むのが好ましい。また、本発明のミエリン形成を促進するための組成物では、第2の有効成分の少なくとも一部を、ウンシュウミカン由来の陳皮、該陳皮の抽出物、ジャバラ、ジャバラの抽出物、及びこれらの混合物のうちのいずれかの形態で含むのが好ましい。ウンシュウミカン由来の陳皮は、ヘスペリジンとナリルチンの両方を多く含み、両者を簡便に組成物中に含ませることができる。ジャバラは、ナリルチンを多く含みヘスペリジンをほとんど含まない点で特徴的な柑橘類であり、ナリルチンを簡便に組成物中に含ませることができる。さらに、本発明のミエリン形成を促進するための組成物では、第3の有効成分の少なくとも一部を、桂皮又は桂皮の抽出物の形態で含むのが好ましい。桂皮又は桂皮の抽出物は、特にシンナムアルデヒドを多く含み、シンナムアルデヒドを簡便に組成物中に含ませることができる。もちろん、第2の有効成分及び第3の有効成分として列記された化合物自体を用いて本発明のミエリン形成を促進するための組成物を得ても良い。
本発明のミエリン形成を促進するための組成物を製剤化する場合には、第1の有効成分、第2の有効成分、及び第3の有効成分の全てを含む配合剤の形態であっても良く、第1の有効成分、第2の有効成分及び第3の有効成分のうちのいずれか一つ或いは2つを含む複数の剤から成るキットの形態であっても良い。配合剤及びキットを構成する各剤には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限りにおいて、第1の有効成分、第2の有効成分、及び第3の有効成分以外の成分が含まれていても良い。キットの形態である場合には、投与される順番に制限はなく、いずれの剤が先に投与されても良い。
本発明のミエリン形成を促進するための組成物は、経口及び非経口のいずれの形態でも投与することができ、医薬品、医薬部外品、健康食品(サプリメントを含む。)等の形態で投与することができる。本発明のミエリン形成を促進するための組成物は、有害な副作用が懸念されないため継続的に投与することができ、簡便さの点から健康食品として経口投与されるのが好ましい。
本発明のミエリン形成を促進するための組成物によると、第1の有効成分と第2の有効成分と第3の有効成分との相乗効果により、健全なミエリンが形成される量のコネキシン43、コネキシン30、コネキシン47、コネキシン32の発現が確保され、アストロサイトのコネキシン43とオリゴデンドロサイトのコネキシン47とによる健全な連結が確保され、オリゴデンドロサイトの成熟・分化・生存ひいてはミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量が顕著に増加する。したがってミエリン形成が迅速に進行する。
ニューロンの軸索の周囲にミエリンを巻いているオリゴデンドロサイト及びオリゴデンドロサイトと血管との間に介在しているアストロサイトを概念的に示した図である。 アルツハイマー病の病態モデルマウスに、α−GPCとヘスペリジンとナリルチンとを含む組成物(GHN)、シンナムアルデヒドとケイ皮酸とを含む桂皮(C)、及び両者(GHN+C)を投与したときの、脳におけるコネキシン30の存在量を調査した結果を示した図である。 アルツハイマー病の病態モデルマウスに、α−GPCとヘスペリジンとナリルチンとを含む組成物(GHN)、シンナムアルデヒドとケイ皮酸とを含む桂皮(C)、及び両者(GHN+C)を投与したときの、脳におけるコネキシン43の存在量を調査した結果を示した図である。 アルツハイマー病の病態モデルマウスに、α−GPCとヘスペリジンとナリルチンとを含む組成物(GHN)、シンナムアルデヒドとケイ皮酸とを含む桂皮(C)、及び両者(GHN+C)を投与したときの、脳におけるコネキシン32の存在量を調査した結果を示した図である。 アルツハイマー病の病態モデルマウスに、α−GPCとヘスペリジンとナリルチンとを含む組成物(GHN)、シンナムアルデヒドとケイ皮酸とを含む桂皮(C)、及び両者(GHN+C)を投与したときの、脳におけるコネキシン47の存在量を調査した結果を示した図である。 アルツハイマー病の病態モデルマウスに、α−GPCとヘスペリジンとナリルチンとを含む組成物(GHN)、シンナムアルデヒドとケイ皮酸とを含む桂皮(C)、及び両者(GHN+C)を投与したときの、脳におけるp−MBPの発現をイムノブロッティングにより検出した結果を示した図である。 アルツハイマー病の病態モデルマウスに、α−GPCとヘスペリジンとナリルチンとを含む組成物(GHN)、シンナムアルデヒドとケイ皮酸とを含む桂皮(C)、及び両者(GHN+C)を投与したときの、脳におけるp−21.5kDaMBPの存在量を調査した結果を示した図である。 ダウン症発症者に対して本発明の組成物を投与したときの社会性に対する退行症状の変化を評価した結果を示す図である。 ダウン症発症者に対して本発明の組成物を投与したときの認知機能の変化を評価した結果を示す図である。
本発明のミエリン形成を促進するための組成物は、
第1の有効成分としての、グリセロホスホコリン及びその薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、
第2の有効成分としての、ヘスペリジン、ナリルチン、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、
第3の有効成分としての、シンナミルエステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と
を含む。主に第3の有効成分の作用により、アルツハイマー病の発症によってアップレギュレーションされたコネキシン43の発現量が減少し、主に第1の有効成分と第2の有効成分との併用により、コネキシン32の発現量が増加し、第1の有効成分と第2の有効成分と第3の有効成分との相乗効果により、コネキシン47の発現量が顕著に増加するとともにオリゴデンドロサイトの成熟・分化・生存ひいてはミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量が顕著に増加する。また、このミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量の顕著な増加のため、本発明の組成物は、アルツハイマー病の治療及び/又は予防に限定されず、ミエリン形成の障害を発症する疾患の治療及び/又は予防のために広く有効利用することができる
第1の有効成分であるα−GPCは、例えば大豆の搾油・精製により得られるホスファチジルコリンをリパーゼにより加水分解することにより合成することができるが、市販のものを入手することもできる。α−GPCは、薬理的に許容された塩、例えば、塩酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩の形態で使用されても良く、溶媒和物の形態で使用されても良い。第2の有効成分であるヘスペリジン及びナリルチンも、市販のものを入手することができ、薬理的に許容された塩、例えば、塩酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩の形態で使用されても良く、溶媒和物の形態で使用されても良く、さらには水溶性を向上させるために糖転移体の形態で使用されても良い。糖転移体は体内でヘスペリジン或いはナリルチンに加水分解される。また、第2の有効成分のために、ヘスペリジンとナリルチンの両方を多く含むウンシュウミカン由来の陳皮或いは該陳皮に熱水抽出等の抽出処理を施して得た抽出物を使用することもできる。熱水抽出液を乾燥したものが乾燥エキスとして市販されているため、乾燥エキスを使用するのが簡便である。さらに、第2の有効成分のために、ナリルチンを多く含みヘスペリジンをほとんど含まないジャバラ或いはジャバラに熱水抽出等の抽出処理を施して得た抽出物を使用することもできる。ウンシュウミカン及びジャバラ以外の柑橘類の乾燥物或いはその抽出物も第2の有効成分のために利用することができる。第3の有効成分であるシンナミルエステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド及びケイ皮酸も、市販のものを入手することができ、薬理的に許容された塩、例えば、塩酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩の形態で使用されても良く、溶媒和物の形態で使用されても良い。また、第3の有効成分のために、桂皮又は桂皮に熱水抽出等の抽出処理を施して得た抽出物を使用することもできる。
本発明のミエリン形成を促進するための組成物では、第1の有効成分と第2の有効成分と第3の有効成分とが所望量で組み合わせられるが、これらは経口及び非経口のいずれの形態でも投与することができ、医薬品、医薬部外品、健康食品(サプリメントを含む。)等の形態で投与することができる。本発明のミエリン形成を促進するための組成物は、有害な副作用を有さないため、継続的に投与することができ、簡便さの点からサプリメントとして経口投与されるのが好ましい。
製剤化する場合には、第1の有効成分、第2の有効成分、及び第3の有効成分の全てを含む配合剤の形態であっても良く、第1の有効成分、第2の有効成分及び第3の有効成分のうちのいずれか一つ或いは2つを含む複数の剤から成るキットの形態であっても良い。キットの形態である場合には、投与される順番に制限はなく、いずれの剤が先に投与されても良く、各剤が連続的に投与されても良く時間を空けて投与されても良い。
配合剤の場合も、キットを構成する各剤の場合も、使用目的に応じて、カプセル剤、チュアブル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与用製剤、又は、注射剤、点滴剤、坐剤等の非経口投与用製剤の形態に製剤化することができる。キットの形態の場合には、各剤の剤型は同一であっても異なっていてもよい。
これらの製剤の製造において、第1の有効成分と第2の有効成分と第3の有効成分とが、通常、使用目的に応じて選択される薬理的に許容される賦形剤、即ち、デキストリン、ラクトース等の固体賦形剤、水、塩水、グリセリン等の液体賦形剤と混合され、所定形状に剤型化される。これらの製剤には、本発明の効果に悪影響を与えない限り、他の成分、例えば、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、鉄、亜鉛等のミネラル類、イチョウ葉エキス、ドコサヘキサエン酸等の機能性成分の他、結合剤、増粘剤、潤滑剤、香料、甘味料、緩衝剤、保存剤、抗菌剤等の慣用の添加物が含まれていても良い。
さらに、本発明のミエリン形成を促進するための組成物は、ミネラルウェーター、清涼飲料水等の飲料、チーズ、ヨーグルト等の乳製品、ゼリー、ビスケット、キャンディー等の菓子類等の、各種飲食品に配合することもできる。
本発明のミエリン形成を促進するための組成物の投与量は、ミエリン形成の障害を発症する疾患の罹患者の症状、年齢、体重等や、投与形態、投与回数、他剤の併用等に応じて適宜決定することができるが、成人一人当たりの一日当たりの投与量として、一般的には、第1の有効成分が10〜200mg、第2の有効成分が30〜350mgの範囲、第3の有効成分が0.6〜15mgで組み合わせられるのが好ましい。第2の有効成分としてヘスペリジンとナリルチンとの両方が用いられる場合には、成人一人当たりの一日当たりの投与量として、ヘスペリジンが20〜300mg、ナリルチンが4〜50mgの範囲で組み合わせられるのが好ましい。第3の有効成分としてのシンナミルエステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸のうち、シンナミルエステル、シンナミルアルコール及びシンナムアルデヒドは、体内でケイ皮酸に代謝されるため、シンナミルエステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸のうちの2種以上が第3の有効成分として用いられる場合でも、成人一人当たりの一日当たりの投与量として、合計で0.6〜15mgであれば良い。本発明では、このような少量の投与でも十分な改善効果が期待され、また有害な副作用が回避される。
本発明の組成物は、オリゴデンドロサイトの成熟・分化・生存ひいてはミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量が顕著に増加するため、迅速に再ミエリン化(脱髄の回復)を介したアルツハイマー病の治療及び/又は予防の効果を得ることができる。また、ミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量が顕著に増加するため、本発明の組成物をミエリン形成の障害を発症する疾患の治療及び/又は予防のために広く有効利用することができる。このような疾患の例としては、アルツハイマー病以外の認知症や軽度認知機能障害の他、多発性硬化症、視神経脊髄炎及び急性散在性脳脊髄炎などの炎症性脱髄疾患、進行性多巣性白質脳症、HTLV−1関連脊髄症及び亜急性硬化性全脳炎などのウィルス性脱髄疾患、浸透圧性脱髄症候群、亜急性脊髄連合変性症及び中毒性白質脳症などの中毒性脱髄疾患、動脈硬化症及び慢性高血圧症のような血管性疾患などの一旦形成されたミエリンが何らかの原因で破壊される脱髄疾患、てんかんやダウン症、筋委縮性側索硬化症のような神経変性疾患、さらには、統合失調症、双極性障害、大うつ病性障害、自閉症、注意欠如多動性障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害及び薬物依存症などの精神疾患、が挙げられる。
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(1)アルツハイマー病の病態モデルマウスを用いた検討
(A)動物・飼育環境
以下の実験においてアルツハイマー病の病態モデルマウスとして使用したヒトのスウェーデン変位型APP(APPK670N/M671L)遺伝子を導入した遺伝子改変マウスTg2576は、米国のThe Jackson Laboratoryから入手した。入手したTg2576マウスを、室温25±1℃、相対湿度55±1%の飼育施設で、12時間/12時間の明暗の照明サイクル(7:00点灯、19:00消灯)の環境下で飼育した。なお、この動物実験は、実験動物の適正な使用及び管理を定めたNIHガイドラインに基づき作成された慶應義塾大学動物実験ガイドラインに則り、同大学内動物実験施設で行った。
(B)α−GPC/ヘスペリジン・ナリルチン/シンナムアルデヒド・ケイ皮酸の投与
15月齢のTg2576マウス(平均体重30g)を4つの群に分け、それぞれの群に以下の練り餌さを与えて1か月間飼育した。なお、以下に示す練り餌さの量はマウス一匹に対して一日に与えた量であり、各マウスが1日で食べきっていることを確認した。
対照:5.26gの飼料の練り餌さ。
GHN投与:0.833mgのα−GPC(G)と、合計で1.458mgのヘスペリジン(H)とナリルチン(N)とを還元麦芽糖水飴、でんぷん等の慣用の添加物と混合した組成物の20mgを5.26gの飼料に混ぜた練り餌さ。
C投与:桂皮粉末(シンナムアルデヒドを1.3質量%、ケイ皮酸を0.025質量%含有)の5mg(シンナムアルデヒドとケイ皮酸とを合計で0.06625mg)を5.26gの飼料に混ぜた練り餌さ。
GHN+C投与:0.833mgのα−GPC(G)と、合計で1.458mgのヘスペリジン(H)とナリルチン(N)とを還元麦芽糖水飴、でんぷん等の慣用の添加物と混合した組成物の20mgと、桂皮粉末(シンナムアルデヒドを1.3質量%、ケイ皮酸を0.025質量%含有)の5mg(シンナムアルデヒドとケイ皮酸とを合計で0.06625mg)とを5.26gの飼料に混ぜた練り餌さ。
この投与実験におけるα−GPCの量、ヘスペリジンとナリルチンとの合計量、及びシンナムアルデヒドとケイ皮酸との合計量を、ヒトとマウスの間の種差を換算する係数「10」(“Regul.Toxicol.Pharmacol.24,108−120”参照)を用いてヒト50kg成人の投与量に換算すると、α−GPCが138.8mg/day、ヘスペリジンとナリルチンとの合計量が243mg/day、及びシンナムアルデヒドとケイ皮酸との合計量が11.0mg/dayの投与量になる。
(C)細胞溶解バッファーによる脳の可溶化
1か月の飼育後に、対照マウス、GHN投与マウス、C投与マウス、及びGHN+C投与マウスを、イソフルラン(和光純薬工業株式会社)を用いた吸引麻酔下で安楽死させ、直ちに開頭した後、全脳を摘出した。摘出した脳の1/2の重さを測定し、脳重量1gにつき、氷冷したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を10mL添加し、さらに、100xプロテアーゼ阻害剤カクテル(メルク株式会社)の100倍希釈液に10容量%のRIPAバッファー(20mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)(ナカライテスク株式会社)、150mMのNaCl(シグマアルドリッチジャパン合同会社)、1%のポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル(商品名Tx−100;シグマアルドリッチジャパン合同会社)、1%のデオキシコール酸ナトリウム(シグマアルドリッチジャパン合同会社)、0.1%のラウリル硫酸ナトリウム(SDS)(シグマアルドリッチジャパン合同会社))を添加した液を10mL添加した後、ホモジナイザーを用いて脳を可溶化した。得られた脳ホモジネート懸濁液を1.5mLのエッペンドルフチューブに回収し、4℃、20000×Gの条件で20分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液を可溶性画分、沈渣を不溶性画分として分離し、−80℃で保存した。
(D)電気泳動(SDS−PAGE)
上記(C)工程にて得られた可溶性画分をLaemmliサンプルバッファー(メルクミリポア社:62.5mM Tris−HCl(pH6.8)、25% グリセロール、2% SDS、0.01% ブロモフェノールブルー含有)で4倍に希釈し、100℃の恒温槽中に10分間放置して、SDS−PAGE用サンプルを得た。
SDS−PAGEは4〜20%グラジエントゲル(テフコ株式会社)を使用して行った。ゲル板を電気泳動装置にセットし、泳動バッファー(25mMのTris(ナカライテスク株式会社)、192mMのグリシン(シグマアルドリッチジャパン合同会社)、0.1%のSDS(シグマアルドリッチジャパン合同会社)、pH8.3)を導入した後、上記SDS−PAGE用サンプルの25μLをゲル板ウェルに導入し、室温にて5mAの条件下で約30分間泳動し、さらに25mAの条件下で約90分間泳動した。
(E)イムノブロッティング
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(商品名;immobilon−p:孔径0.45μm:メルクミリポア社)を転写液(31mM Tris(ナカライテスク株式会社)、0.24M グリシン(シグマアルドリッチジャパン合同会社)、20% メタノール(和光純薬工業株式会社))中に導入して15分間振とうし、回収したPVDF膜と上記(D)工程にて得られた電気泳動後のゲルとを接触させ、室温にて20mA/cmの条件下で電流を流し、タンパク質をPVDF膜に転写した。転写後のPVDF膜に、10倍希釈した10xトリス緩衝生理食塩水(TBS)(0.5M Tris(pH8.1)(ナカライテスク株式会社)、1.5M NaCl(シグマアルドリッチジャパン合同会社)、1N 塩酸(和光純薬工業株式会社))に5%のスキムミルク(株式会社Defco)を溶解させたブロッキングバッファーを用いて、1時間室温にてブロッキング処理を施した。
ブロッキング処理後のPVDF膜に、一次抗体として、内部標準のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対するマウスモノクロナール抗体(プロテインテック株式会社、1/1000希釈)と共に、抗p−MBPモノクロナール抗体PC12(Merck Millipore社、1/500希釈)、Purified Mouse Anti−Connexin−43(BD Transduction Laboratories社)、Connexin 30 Polyclonal Antibody(Thermo Fisher Scientific社)、Connexin 47 Monoclonal Antibody(invitrogen社)、及びConnexin 32 Polyclonal Antibody(invitrogen社)を使用して、4℃で一晩、一次抗体反応を施した。各抗体の希釈には上記ブロッキングバッファーを使用した。一次抗体反応後のPVDF膜を、10倍希釈した10xTBSに1%のスキムミルクを溶解させたブロッキングバッファーを用いて10分間ずつ3回洗浄した。続いてブロッキングバッファーで800〜1000倍に希釈したAlkaline Phosphatase−conjugated Affinipure Goat Anti−Mouse IgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories社)を用いて、室温にて2時間二次抗体反応を行い、10倍希釈した10xTBSに1%のスキムミルクを溶解させたブロッキングバッファーを用いて10分間ずつ3回洗浄した後、アルカリホスファターゼ反応による抗原の検出を行った。アルカリホスファターゼ反応は、アルカリホスファターゼの基質としての5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(和光純薬工業株式会社)と、発色剤としてのニトロブルーテトラゾリウム(和光純薬工業株式会社)と、緩衝液(0.1M Tris(ナカライテスク株式会社)、0.1M NaCl(シグマアルドリッチジャパン合同会社)、0.05M MgCl(シグマアルドリッチジャパン合同会社))とを用いて、遮光下30分〜1時間反応させることにより行った。また、抗原の検出結果は、3回の独立した実験における平均値±標準誤差で評価した。
(F)実験結果
図2は、内部標準のGAPDHにて正規化されたコネキシン30の存在量を、対照マウスの脳における存在量を1とした存在量比の形式で示した図である。図2から把握されるように、コネキシン30の発現量は、GHN投与及びC投与によってそれぞれ増加したものの、顕著な発現量の増加は認められなかった。また、GHN+C投与によるコネキシン30発現の増加量は、GHN投与による増加分にC投与による増加分を加算した量にほぼ相当し、加算効果が認められた。
図3は、内部標準のGAPDHにて正規化されたコネキシン43の存在量を、対照マウスの脳における存在量を1とした存在量比の形式で示した図である。図3から把握されるように、コネキシン43の発現量は、GHN投与によって対照の発現量の0.86倍に減少した。これに対し、C投与によるコネキシン43の発現量の減少は極めて大きく、対照の発現量の0.41倍にも及んだ。アルツハイマー病の発症によりコネキシン43のアップレギュレーションが報告されている(非特許文献8参照。)ため、コネキシン43の発現量の減少はアルツハイマー病の治療及び/又は予防にとって好ましい。GHN+C投与によるコネキシン43の発現量は0.62倍であり、C単独の投与には及ばなかったものの、GHNに加えてCを併用することにより、GHN投与による発現量よりもさらに減少した発現量が得られた。
図4は、内部標準のGAPDHにて正規化されたコネキシン32の存在量を、対照マウスの脳における存在量を1とした存在量比の形式で示した図である。図4から把握されるように、コネキシン32の発現量は、GHN投与によって顕著に増加するものの、C投与による発現量の増加はわずかであった。また、GHN+C投与によるコネキシン32の発現の増加量は、GHN投与による増加分にC投与による増加分を加算した量にほぼ相当し、加算効果が認められた。コネキシン32はオリゴデンドロサイトに発現する(図1参照)。GHN投与によるコネキシン32の増加は、特許文献1の組成物によるオリゴデンドロサイトの成熟・分化の亢進と一致している。
図5は、内部標準のGAPDHにて正規化されたコネキシン47の存在量を、対照マウスの脳における存在量を1とした存在量比の形式で示した図である。図5から把握されるように、コネキシン47の発現量は、GHN投与によって対照の発現量の1.18倍に増加し、C投与によって対照の発現量の1.10倍に増加した。コネキシン47はオリゴデンドロサイトに発現する(図1参照)。GHN投与によるコネキシン47の増加は、特許文献1の組成物によるオリゴデンドロサイトの成熟・分化の亢進と一致している。そして、意外にも、GHNに加えてCを使用することにより、コネキシン47の発現量が対照の1.52倍にも増加した。この増加量は、GHN投与による増加分にC投与による増加分を加算した量よりも顕著に大きく、GHNとCとの相乗効果が認められた。アストロサイトのコネキシン43とその結合パートナーであるオリゴデンドロサイトのコネキシン47が、中枢神経系のミエリン及びオリゴデンドロサイトの機能を維持するために非常に重要であることが報告されている(非特許文献9参照。)ことから、この相乗効果は再ミエリン化を介したアルツハイマー病の治療及び/又は予防にとって極めて好ましい。
図6は、アルカリホスファターゼ反応によりp−MBPを検出したPVDF膜の画像を示している。Tg2576マウスは、分子質量が21.5kDa、18.5kDa、17kDa、及び14kDaの4種のMBPアイソフォームを有している。図6から把握されるように、p−18.5kDaMBP、p−17kDaMBP及びp−14kDaMBPのアイソフォームの発現量については、GHN投与、C投与、及びGHN+C投与のいずれにおいても対照における発現量と差がないのに対して、p−21.5kDaMBPの発現量のみが投与の種類に応じて大きく変化している。そして、脱髄が進行すると特にp−21.5kDaMBPが減少すること、及び、p−21.5kDaMBPの発現量の増加により再ミエリン化が進行することが報告されている(特許文献1参照。)。したがって、再ミエリン化を進行させるp−21.5kDaMBPの発現量の増加に着目する必要がある。
図7は、内部標準のGAPDHにて正規化されたp−21.5kDaMBPの存在量を、対照マウスの脳における存在量を1とした存在量比の形式で示した図である。図7から把握されるように、p−21.5kDaMBPの発現量は、C投与によっては対照の発現量の1.07倍に過ぎないが、GHN投与によって明瞭に増加し、対照の発現量の1.28倍に達した。その上、GHNに加えてCを使用することにより、p−21.5kDaMBPの発現量は対照の1.61倍にも増加した。この増加量は、GHN投与による増加分にC投与による増加分を加算した量よりも顕著に大きく、GHNとCとの相乗効果が認められた。この相乗効果は、再ミエリン化を介したアルツハイマー病の治療及び/又は予防にとって極めて好ましい。
以上の結果より、第1の有効成分としてのα−GPC、第2の有効成分としてのヘスペリジン及びナリルチン、及び第3の有効成分としてのシンナムアルデヒド及びケイ皮酸、を組み合わせたアルツハイマー病の治療及び/又は予防のための組成物によると、主にシンナムアルデヒド及びケイ皮酸の作用により、アルツハイマー病の発症によってアップレギュレーションされたコネキシン43の発現量が減少し、主にα−GPCとヘスペリジン・ナリルチンとの併用により、コネキシン32の発現量が増加し、α−GPCとヘスペリジン・ナリルチンとシンナムアルデヒド・ケイ皮酸との相乗効果により、コネキシン47の発現量が顕著に増加するとともに、オリゴデンドロサイトの成熟・分化・生存ひいてはミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量が顕著に増加することがわかった。したがって、本発明の組成物はアルツハイマー病の治療及び/又は予防のために極めて有効である。
(2)ダウン症発症者への適用
ダウン症のモデルマウスを用いたダウン症の発症過程の遺伝子発現研究によって、オリゴデンドロサイトとミエリンの異常が報告されている(2016 Mar 16;89(6):1208−1222. doi: 10.1016/j.neuron.2016.01.042)。一方、本発明の組成物によりミエリン形成のカギを握るp−21.5kDaMBPの発現量が顕著に増加するため、本発明の組成物がダウン症の改善のために有効であると期待される。そのため、退行症状を有し器質的合併症を有していない成人のダウン症発症者7名に対して、一日当たり、α−GPCを40mg、ヘスペリジンとナリルチンとを合計で70mg、及び、ケイ皮酸とシンナムアルデヒドを合計で0.6mgの量で含む桂皮エキスパウダーを含む組成物を6か月間服用させ、社会性に対する退行症状と認知機能の評価とを行った。
社会性に対する退行症状は、黒木良和らにより開発された以下の社会性に対する退行症状チェックリストを用いて評価した。各項目にそれぞれ該当すれば1点ずつ加えていき、6点以上になれば明らかに退行、4〜5点であれば退行度が高く、3点以下では退行無し、と評価することができる。一方、認知機能の評価は、イギリスのカウラーらにより開発されたダウン症者のための認知機能評価尺度(CS−DS)のスコアを用いて行った。この評価では、得点が高いほど認知機能が改善していると評価することができる。図8及び図9にダウン症発症者7名(A〜Gで表示)についての評価結果を示す。
社会性に対する退行症状の評価では、1例の悪化(スコア上昇)を除いて6例において改善が認められた。また、認知機能の評価では、3例が改善、3例が不変、1例が悪化という結果であった。これらの結果から、本発明の組成物の服用によるダウン症の退行症状の改善が期待される。
本発明により、ミエリン形成の障害を発症する疾患の治療又は予防が可能になる。

Claims (9)

  1. 第1の有効成分としての、グリセロホスホコリン及びその薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、
    第2の有効成分としての、ヘスペリジン、ナリルチン、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と、
    第3の有効成分としての、シンナミルエステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、及びこれらの薬理的に許容された塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物と
    を含む、ミエリン形成を促進するための組成物。
  2. アルツハイマー病の治療及び/又は予防のための組成物である、請求項1に記載のミエリン形成を促進するための組成物。
  3. 成人一人当たりの一日当たりの投与量として、10〜200mgの第1の有効成分と、30〜350mgの第2の有効成分と、0.6〜15mgの第3の有効成分とを含む、請求項1又は2に記載のミエリン形成を促進するための組成物。
  4. 第2の有効成分としてヘスペリジンとナリルチンとを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のミエリン形成を促進するための組成物。
  5. 第2の有効成分の少なくとも一部を、ウンシュウミカン由来の陳皮、該陳皮の抽出物、ジャバラ、ジャバラの抽出物、及びこれらの混合物のうちのいずれかの形態で含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のミエリン形成を促進するための組成物。
  6. 第3の有効成分の少なくとも一部を、桂皮又は桂皮の抽出物の形態で含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のミエリン形成を促進するための組成物。
  7. 第1の有効成分、第2の有効成分、及び第3の有効成分の全てを含む配合剤として製剤化される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のミエリン形成を促進するための組成物。
  8. 第1の有効成分、第2の有効成分及び第3の有効成分のうちのいずれか一つ或いは2つを含む複数の剤から成るキットとして製剤化される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のミエリン形成を促進するための組成物。
  9. 健康食品として投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のミエリン形成を促進するための組成物。
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