JP2021016890A - 中空屈曲部品の製造方法及び中空屈曲部品 - Google Patents
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図6に示すように、この曲げ加工装置100では、一対の支持手段101,101によりその軸方向へ移動自在に支持された鋼管(以下、中空素材Pm)を上流側から下流側へ向けて矢印F方向へ図示しない送り装置により送りながら、支持手段101,101の下流位置で曲げ加工を行って、鋼製の中空屈曲部品Ppを製造する。すなわち、支持手段101,101の下流位置で高周波加熱コイル102によって中空素材Pmを部分的に焼入れ可能な温度域に急速加熱するとともに、高周波加熱コイル102の下流に配置される水冷装置103により中空素材Pmを急冷する。そして、中空素材Pmを支持しながら送るロール対104a,104aを少なくとも一組有する可動ローラダイス104の位置を三次元方向(場合によっては二次元方向)に変更して中空素材Pmの加熱された部分に曲げモーメントを付与することにより、中空素材Pmに曲げ加工を行う。この曲げ加工装置100によれば、高い作業効率で高強度の中空屈曲部品Ppを製造することが可能になる。
しかしながら、特許文献1の方法により、曲げ半径が例えば金属管の直径(矩形断面の場合には曲げ方向の辺の長さ)の1〜2倍あるいはそれ以下の曲げ半径を持つように曲げ加工をした場合、曲がり部の内周側にしわや折れこみを生じたり、あるいは曲がり部の外周側の板厚が大きく減少して破断が発生したりするおそれがある。そのため、小さな曲がり部を有する中空屈曲部品を製造することは困難であった。
さらに、中空屈曲部品の冷間曲げ加工においては、非特許文献2に記載されているように、曲がり部の外周側に引張応力が作用するため、板厚が減少する。同様に、特許文献1の方法も曲げ加工であるため、曲がり部の外周側の板厚減少は避けらない。
図7に示すように、このせん断曲げ加工装置200は、第1の支持手段201と、加熱手段202と、冷却手段203と、把持手段204と、を備える。第1の支持手段201は、金属製の中空素材Pmを、その長手方向へ相対的に送りながら、第1の位置Aにおいて支持する。加熱手段202は、中空素材Pmの送り方向に沿った第1の位置Aよりも下流にある第2の位置Bにおいて中空素材Pmを部分的に加熱する。冷却手段203は、中空素材Pmの送り方向に沿った第2の位置Bよりも下流にある第3の位置Cにおいて中空素材Pmの加熱部分を冷却(強制冷却または自然冷却)する。把持手段204は、中空素材Pmの送り方向に沿った第2の位置Cよりも下流にある第3の位置Dにおいて中空素材Pmを位置決めしながら二次元方向または三次元方向に移動させることによって、中空素材Pmの加熱部分にせん断力を与える。よって、このせん断曲げ加工装置200によれば、中空素材Pmの加熱部分に対しせん断加工と熱処理とを加えることが可能になる。そして、このせん断曲げ加工装置200によれば、金属管の直径(矩形断面の場合には曲げ方向の辺の長さ)の1〜2倍、あるいは、それ以下の曲げ半径の曲がり部を有する高強度の中空屈曲部品を、低コストで確実に量産可能である。
一方、機械部品として一体型の中空屈曲部品を設計する場合、設計上で必要となる強度や剛性や耐腐食性などを確保するために、部分的に強度を高めたり、部分的に製品板厚を増加させることが必要な部位が存在する。これらの要求に対し、非特許文献3に示すように、いわゆるテーラードブランクあるいはテーラードロールドブランクと呼ばれる、板厚や強度の異なる板を前もって溶接や圧延して素管とする方法が実用化されている。この方法は多くの部品で採用され、軽量化に大きく貢献している。ただし、板厚や強度の異なる板を前もって溶接や圧延する工程が煩雑であることは否めない。
このような理由により、テーラードブランクあるいはテーラードロールドブランクを用いずに、素材板厚が一定である中空金属管を使用することも考えられる。しかし、この場合、これまでの製造方法では、設計上で最も強度等が必要となる部位に合わせて他の部位の板厚を設定せざるを得ないため、得られる中空屈曲部品には、さらなる軽量化の余地が残されていた。
[1]本発明の一態様は、金属製の長尺な中空素材を、その長手方向に沿った送り方向へ送りながら第1の位置で支持し、前記送り方向に沿って前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置された加熱手段で前記中空素材を被加熱部において部分的に加熱し、前記送り方向に沿って前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置された冷却手段で前記中空素材を冷却し、前記送り方向に沿って前記第3の位置よりも下流の第4の位置で前記中空素材を支持して支持位置を二次元方向又は三次元方向に移動させることにより、前記中空素材の前記被加熱部にせん断力を与える、中空屈曲部品の製造方法であって、前記中空素材の、前記送り方向に対し前記せん断力の付与後に形成されるせん断角度をθ(度)とし、前記送り方向に対する前記加熱手段及び前記冷却手段の傾斜角度をα(度)としたときに、下式(1)を満たす。
図1は、本実施形態に係る中空屈曲部品の製造装置10を模式的に示す説明図である。
この製造装置10により、中空素材Pmをせん断曲げ加工して中空屈曲部品Ppを得る。中空素材Pmは、その長手方向に垂直な断面が中空矩形の閉断面形状を有する長尺な角管である。なお、本実施形態の加工対象は、角管に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、さらには各種異形の横断面形状を有するその他の鋼管にも適用可能である。また、矩形断面を持つ中空素材Pmとしては、その横断面形状が正方形、長方形の何れにも適用可能である。さらに言うと、鋼管以外の金属管を中空素材Pmとしてもよい。
(1)支持装置11
図1の矢印Fに示すように、支持装置11においては、中空素材Pmを図示しない送り装置によりその長手方向へ送る。
前記送り装置は、電動サーボシリンダーを用いたタイプが例示されるが、特定型式のものに限らず、ボールネジを用いたタイプやタイミングベルトやチェーンを用いたタイプ等、公知のものが採用できる。
支持装置11は、図示されない搭載台上に固定配置されている。しかし、この態様のみに限定されるものではなく、支持装置11を産業用ロボットのエンドエフェクター(図示略)によって支持してもよい。
中空素材Pmは、支持装置11が設置された第1の位置Aを通過した後、さらに矢印F方向へ送られる。
加熱装置12は、中空素材Pmの送り方向に沿った第1の位置Aよりも下流にある第2の位置Bに配置されている。加熱装置12は、支持装置11から送られてくる中空素材Pmの長手方向の一部分における横断面の全周を加熱する。加熱装置12として誘導加熱装置を用いる。この誘導加熱装置は、中空素材Pmを例えば高周波誘導加熱することができるコイルを有するものであればよく、公知のものが採用できる。
加熱装置12の加熱コイル12aは、中空素材Pmの外表面から所定の距離だけ離れて、中空素材Pmの長手方向の一部における横断面の全周を囲むように、配置される。そして、中空素材Pmは、加熱装置12により部分的に急速加熱される。
冷却装置13は、中空素材Pmの送り方向に沿った第2の位置Bよりも下流にある第3の位置Cに配置される。冷却装置13は、中空素材Pmのうち、第2の位置Bで加熱された部分を急速に冷却する。中空素材Pmは、冷却装置13で冷却されることによって、加熱装置12により加熱された第1の部分と、冷却装置13により冷却された第2の部分との間の部分が、高温であって変形抵抗が大幅に低下した状態となる。
冷却水は、中空素材Pmが送り出される方向へ向けて斜めに吹き付けることが、加熱装置12による中空素材Pmの加熱を阻害しない上で望ましい。また、中空素材Pmの軸方向と直交する断面において、各冷却水噴射ノズル13aと、中空素材Pmとの間の距離を変更して設定すれば、中空素材Pmの冷却される軸方向の領域を調整することができる。
冷却装置13による水冷の開始温度および冷却速度を適宜調整することにより、中空素材Pmにおける急速冷却部の一部または全部を焼入れたり、あるいは焼き鈍ますことが可能になる。これにより、例えば、中空素材Pmの曲がり部の一部または全部の強度を、例えば1500MPa以上と大幅に高めることも可能である。
せん断力付与装置14は、中空素材Pmの送り方向に沿った第3の位置Cよりも下流にある第4の位置Dに配置される。せん断力付与装置14は、中空素材Pmを位置決めしながら二次元方向または三次元方向に移動する。これにより、せん断力付与装置14は、中空素材Pmにおける、加熱装置12により加熱された第1の部分と、冷却装置13により冷却された第2の部分との間の領域に、せん断力を与えて中空素材Pmにせん断曲げ加工を行う。
中空素材Pmにせん断力Wsが作用することにより、曲がり部が形成される。本実施形態では、特許文献1により開示された発明のように中空素材Pmの加熱された部分に曲げモーメントを与えるのではなく、せん断力を与える。このため、曲げ半径が曲がり部の内周側の外形曲線と外周側の外形曲線との間の間隔である幅W(製品幅)の0.2倍〜2倍といった、極めて小さい曲げ半径の曲がり部を持つ中空屈曲部品Ppを製造することができる。
本実施形態の制御装置10を用いた製造方法は、せん断角度θと傾斜角度αの組み合わせを適宜設定することにより、曲げ半径の加工可能範囲を広くとることができる。そのため、前記曲げ半径が2倍を超える大きな曲げ半径の加工も可能である。一方、製品設計上の理由により小さな曲げ半径が求められる場合も、従来技術では難しかった0.2倍以上2倍以下の極めて小さい曲げ半径を得ることも可能としている。
なお、ここで言う幅Wと曲げ半径の詳細については、中空屈曲部品Ppの説明において後述する。
続いて、上記製造装置10を用いて、中空素材Pmより中空屈曲部品Ppを製造する方法について以下に説明する。この製造方法では、中空素材Pmにせん断曲げ加工を加えることにより、その長手方向に沿って見て、部分的な板厚増加を可能としている。
すなわち、本実施形態の製造方法によれば、(1)素材である中空素材Pmの送り方向と製品である中空屈曲部品Ppとの間における進行方向の角度(せん断角θ)と、(2)素材である中空素材Pmの送り方向と加熱装置12との間における角度(加熱コイル12aの傾きである傾斜角度α)とを適切に選ぶことによって、せん断曲げ加工を受けた後の中空屈曲部品Ppの板厚を増加させることが可能となる。
厳密には、図1に示す加工中における実際変形は純粋なせん断変形とはならず、中空素材Pmの寸法(外形寸法や板厚など)、加熱装置12及び冷却装置13の各寸法や、せん断力付与装置14の構造によって若干異なる場合がある。しかし、ここでは説明のために、理想的な純粋なせん断変形を仮定して説明する。
すなわち、図1において、始めに、鋼製で長尺な中空素材Pmを、前記送り装置によりその長手方向へ相対的に送りながら、第1の位置Aに配置された支持装置11により支持する。
中空素材Pmの加熱温度は、鋼を素材とした場合には、中空素材Pmを構成する鋼のAc3点以上とすることが望ましい。Ac3点以上とすることにより、加熱に続いて行われる冷却時の冷却速度を適宜設定することによって中空素材Pmの曲がり部を焼入れことができる。しかも、中空素材Pmの前記第1の部分と前記第2の部分との間の変形抵抗を、所望の小さな曲げ半径を有する加工を行うことができる程度に、十分に低下させることが可能になる。
このようにして、中空素材Pmの前記第1の部分と前記第2の部分との間に、せん断力Wsが与えられ、中空素材Pmにせん断曲げ加工が行われ、中空屈曲部品Ppが得られる。
中空屈曲部品Ppは、鋼製の中空かつ長尺部材であり、閉断面形状を有し、長手方向へ一体に構成された曲がり部を有する。本実施形態の中空屈曲部品Ppは、その曲がり部における曲げ半径が、曲がり部の内周側の外形曲線と外周側の外形曲線との間の間隔である幅Wの0.2倍〜2倍以下といった、極めて小さい曲げ半径の曲がり部を少なくとも一箇所有することができる。すなわち、曲がり部が複数箇所有る場合、それらのうちの一箇所以上において、上述のような極めて小さい曲げ半径を得ることができる。
前記曲げ半径は、内周側の外形曲線について求めた値でもよいし、外周側の外形線について求めた値でもよい。曲がり部がせん断変形により形成されたものであるため、通常の曲げ変形の場合と異なり、内周側の外形曲線について求めた曲げ半径と、外周側の外形曲線について求めた曲げ半径とが略同じになるからである。実際の加工において、内周側の外形曲線について求めた曲げ半径と、外周側の外形曲線について求めた曲げ半径との間で多少の違いが出る可能性もある。その場合には、それらのうちの小さい方をもって曲げ半径とすればよい。
[1]金属製の長尺な中空素材を、その長手方向に沿った送り方向へ送りながら第1の位置で支持し、前記送り方向に沿って前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置された加熱手段で前記中空素材を被加熱部において部分的に加熱し、前記送り方向に沿って前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置された冷却手段で前記中空素材を冷却し、前記送り方向に沿って前記第3の位置よりも下流の第4の位置で前記中空素材を支持して支持位置を二次元方向又は三次元方向に移動させることにより、前記中空素材の前記被加熱部にせん断力を与える、中空屈曲部品の製造方法であって、前記中空素材の、前記送り方向に対し前記せん断力の付与後に形成されるせん断角度をθ(度)とし、前記送り方向に対する前記加熱手段及び前記冷却手段の傾斜角度をα(度)としたときに、下式(6)を満たす。
以下、従来例1〜4と本発明例1〜4とのそれぞれについて、表1〜8に、製造時の傾斜角度αとせん断角θを示す。これら製造条件に対し、上式(2)及び上式(4)で算出した、製品板厚t(図3におけるtin、tout、tU、tL)を中空素材Pmの板厚t0で除算した比率を示す。
従来例1では、中空素材Pmの送り方向に対して、加熱コイル12aを垂直に設定した上で、領域Iではせん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。続いて、領域IIではせん断角θ=45°でせん断曲げ加工を行いつつ焼入れする。続いて、領域IIIでは、せん断力を付与せず真っ直ぐに送りながら焼入れを実施する。計算結果を下表1に示す。
特許文献2に開示された従来法では、せん断曲げ加工を受けた領域IIにおける曲げの外周側と内周側の製品板厚が約29%減少した。
従来例2では、中空素材Pmの送り方向に対して加熱コイル12aを垂直(90度)に設定した上で、領域Iではせん断力を付与せず真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角θ=60度でせん断曲げ加工を行いつつ焼入れする。続く領域IIIでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れを実施する。計算結果を下表2に示す。
特許文献2に開示された従来法では、せん断曲げ加工を受けた領域IIにおける曲げの外周側と内周側の製品板厚が約50%減少した。
従来例3も、特許文献2に開示された製造方法を用いる。中空素材Pm素材の送り方向に対して加熱コイル12aの傾斜角度をα=67.4度に傾斜させた設定で、領域Iではせん断力を付与せず真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角θ=45度でせん断加工を行いつつ焼入れする。続く領域IIIでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れを実施する。計算結果を下表3に示す。
特許文献2により開示された従来法では、板厚を減少させずに中空素材Pmの板厚t0を維持している。
従来例4も、特許文献2に開示された製造方法を用いた。中空素材Pmの送り方向に対して加熱コイル12aの傾斜角度をα=60度に傾斜させた設定で、領域Iではせん断力を付与せず真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角θ=60度でせん断曲げ加工を行いつつ焼入れする。続く領域IIIでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れを実施する。計算結果を下表4に示す。
特許文献2に開示された従来法では、せん断曲げ加工を受けた領域IIの曲げの外周側壁部と内周側壁部の板厚を減少させず、中空素材Pmの板厚t0を維持している。
本発明の製造方法を用いた実施例を説明する。
本例では、中空素材Pmの送り方向に対して加熱コイル12aを傾斜角度α=50度に傾斜させた設定で、領域Iではせん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角θ=45度でせん断曲げ加工を行いつつ焼入れする。続く領域IIIでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れを実施する。計算結果を下表5に示す。
本発明例1によれば、せん断加工を受けた領域IIの曲げの外周側壁部と内周側壁部の製品板厚が約30%増加した。
本発明の製造方法を用いた実施例を説明する。
本例では、中空素材Pmの送り方向に対して加熱コイル12aを傾斜角度α=45度に傾斜させた設定で、領域Iではせん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角θ=45度でせん断加工を行いつつ焼入れする。続く領域IIIでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れを実施する。計算結果を下表6に示す。
本発明例2によれば、せん断曲げ加工を受けた領域IIの曲げの外周側壁部と内周側壁部の製品板厚が約44%と大きく増加した。
本例では、中空素材Pmの送り方向に対して加熱コイル12aを傾斜角度α=45度に傾斜させた設定で、領域Iではせん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角θ=60度でせん断加工を行いつつ焼入れする。続く領域IIIでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れを実施する。計算結果を下表7に示す。
本発明例3によれば、せん断曲げ加工を受けた領域IIの曲げの外周側壁部と内周側壁部の製品板厚が約36%と大きく増加した。
本例では、中空素材Pmの送り方向に対して加熱コイル12aを傾斜角度α=40度に傾斜させた設定で、領域Iではせん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角θ=60度でせん断加工を行いつつ焼入れする。続く領域IIIでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れを実施する。計算結果を下表8に示す。
本発明例4によれば、せん断曲げ加工を受けた領域IIの曲げの外周側壁部と内周側壁部の製品板厚が約53%と大きく増加した。
表1〜8に示す傾斜角度αとせん断角度θの設定で、上述の従来例1〜4と本発明例1〜4の製造法を実施した。
製造に用いた中空素材Pmは、0.2%炭素鋼からなり、高さH=40mmで、幅W=50mmで、板厚to=1.2mmで、全長L=1000mmである。加熱コイル12aによる被加熱部の加熱温度を950℃として、各ケース毎に50本ずつ製造した。それら製品の板厚を測定したところ、表1〜8に示した板厚比に対し、±5%以内の誤差で一致した。また、製品の引張強度は全長に亘り1470MPa以上となり、100%のマルテンサイト組織が得られていた。
設計上、領域IIの部分において、図3に示すtin、toutの最低板厚が1.47mm必要である場合、従来の製造方法では、中空素材Pmの矩形断面における板厚が1.47mmのものを選んで製造する必要がある。一方、本発明例1では、中空素材Pmの矩形断面における板厚が1.2mmのものを選んで製造しても、tin、toutを1.47mmにすることが可能である。そのため、約18%の軽量化が可能となる。
設計上、領域IIの部分において、図3に示すtin、toutの最低板厚が1.64mm必要である場合、従来の製造方法では、中空素材Pmの矩形断面における板厚が1.64mmのものを選んで製造する必要がある。一方、本発明例2では、中空素材Pmの矩形断面における板厚が1.2mmのものを選んで製造しても、tin、toutを1.64mmにすることが可能である。そのため、約26%の軽量化が可能となる。
設計上、領域IIの部分において、図3に示すtin、toutの最低板厚が1.55mm必要である場合、従来の製造方法では、中空素材Pmの矩形断面における板厚が1.55mmのものを選んで製造する必要がある。一方、本発明例3では、中空素材Pmの矩形断面における板厚が1.2mmのものを選んで製造しても、tin、toutを1.55mmにすることが可能である。そのため、約23%の軽量化が可能となる。
設計上、領域IIの部分において、図3に示すtin、toutの最低板厚が1.74mm必要である場合、従来の製造方法では、中空素材Pmの矩形断面における板厚が1.74mmのものを選んで製造する必要がある。一方、本発明例4では、中空素材Pmの矩形断面における板厚が1.2mmのものを選んで製造しても、tin、toutを1.74mmにすることが可能である。そのため、約31%の軽量化が可能となる。
また、製品強度についても、図5のハッチングに示す様に、部分的に焼き入れを施すことが可能である。中空素材Pmにおける被加熱部の加熱温度や中空素材Pmの成分組成を組み合わせることにより、中空屈曲部品Ppの焼き入れ部におけるマルテンサイト量を制御できる。好適な様態として、焼入れ部のマルテンサイト量が50%以上の組成で、比較的高強度な鋼製の中空屈曲部品Ppを得ることができる。このため、本実施形態によれば、自動車の各種の車体構成部材の設計自由度を高めるとともに、これら各種部品のさらなる低コスト化および軽量化を図ることができる。
本発明に係る中空屈曲部品Ppは、せん断力による加工時に同時に熱処理(例えば焼入れ)が行われて製造される。そのため、冷間でせん断曲げ加工が行われてその後に熱処理(例えば焼入れ)を行った中空屈曲部品に比較して、例えば1470MPa以上の高強度の部分を有する中空屈曲部品Ppを、より単純な工程かつ高い加工精度で製造することができる。
(i)例えば、フロントサイドメンバー、クロスメンバー、サイドメンバー、サスペンションメンバー、ルーフメンバー、Aピラーのレインフォース、Bピラーのレインフォース、バンパーのレインフォース等といった自動車車体の構造部材
(ii)例えば、シートフレーム、シートクロスメンバー等といった自動車の強度部材や補強部材
(iii)自動車の排気管等の排気系部品
(iv)自転車や自動二輪車のフレームやクランク
(v)電車等の車輛の補強部材、台車部品(台車枠、各種梁等)
(vi)船体等のフレーム部品、補強部材
(vii)家電製品の強度部材、補強部材または構造部材
(a)金属製の中空の素材を、その長手方向へ相対的に送りながら第1の位置に配置された第1の支持手段により支持し、この素材の送り方向について第1の位置よりも下流の第2の位置に配置された加熱手段により送られる素材を部分的に加熱し、素材の送り方向について第2の位置よりも下流の第3の位置に配置された冷却手段により第2の位置で加熱された部分を冷却(強制冷却または自然冷却)するとともに、素材の送り方向について第3の位置よりも下流の領域に配置された、素材を位置決めするせん断力付与手段であるクランプを二次元方向または三次元方向に移動させることにより、素材における加熱された部分にせん断力を与えることによって、素材に加工を行う、中空屈曲部品の製造方法であって、加工された製品の進行方向のなす角度θに対して、該加熱手段および該冷却手段を、上式(4)を満たす範囲で、金属製の中空の素材の長手方向に対してα傾斜設定あるいは変更することによりせん断加工による曲げ外周側と内周側の板厚を増加させることを特徴とする中空屈曲部品の製造方法。
13 冷却装置(冷却手段)
A 第1の位置
B 第2の位置
C 第3の位置
D 第4の位置
Pm 中空素材
Pp 中空屈曲部品
α 傾斜角度
θ せん断角度
Claims (4)
- 金属製の長尺な中空素材を、その長手方向に沿った送り方向へ送りながら第1の位置で支持し、
前記送り方向に沿って前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置された加熱手段で前記中空素材を被加熱部において部分的に加熱し、
前記送り方向に沿って前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置された冷却手段で前記中空素材を冷却し、
前記送り方向に沿って前記第3の位置よりも下流の第4の位置で前記中空素材を支持して支持位置を二次元方向又は三次元方向に移動させることにより、前記中空素材の前記被加熱部にせん断力を与える、
中空屈曲部品の製造方法であって、
前記中空素材の、前記送り方向に対し前記せん断力の付与後に形成されるせん断角度をθ(度)とし、前記送り方向に対する前記加熱手段及び前記冷却手段の傾斜角度をα(度)としたときに、下式(1)を満たす
ことを特徴とする中空屈曲部品の製造方法。
- 金属製で中空かつ曲がり部を有する一体部品であって、
前記曲がり部が、前記曲がり部の内周側の外形と前記曲がり部の外周側の外形との間の寸法である幅の2倍以下の曲げ半径を有し、
熱処理された前記曲がり部における板厚が、前記曲がり部に隣接する他の部分の板厚よりも大きい
ことを特徴とする中空屈曲部品。 - 前記曲がり部の断面形状が矩形の閉断面形状であり、
前記曲がり部における曲げの外周側壁部の板厚と、前記曲がり部における曲げの内周側壁部の板厚とが略同じでかつ、前記隣接する他の部分の板厚よりも大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の中空屈曲部品。 - 鋼製であり、
前記曲がり部のマルテンサイト量が50%以上である、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の中空屈曲部品。
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