JP2021016148A - 走査アンテナおよび走査アンテナの製造方法 - Google Patents
走査アンテナおよび走査アンテナの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】アンテナ性能が温度変化によって低下することを抑制する走査アンテナを提供する。【解決手段】走査アンテナ1000Aは、TFT基板と、スロット基板と、TFT基板とスロット基板との間に設けられ、少なくとも1つの液晶領域Rlおよび少なくとも1つの真空領域Roを含む液晶層と、液晶層を包囲し、TFT基板とスロット基板とを互いに接着する外周シール部73と、反射導電板とを有する。走査アンテナ1000Aは、TFT基板とスロット基板との間、かつ、外周シール部73の内側に配置され、感光性樹脂で形成され、液晶層を少なくとも1つの液晶領域Rlと少なくとも1つの真空領域Roとに仕切るように構成された壁構造体60をさらに有する。スロット基板の法線方向から見たとき、少なくとも1つの真空領域Roは、複数のパッチ電極および複数のスロット57と重ならず、少なくとも1つの液晶領域Rlの面積よりも大きい面積を有する。【選択図】図4A
Description
本発明は、走査アンテナに関し、特に、アンテナ単位(「素子アンテナ」ということもある。)が液晶容量を有する走査アンテナ(「液晶アレイアンテナ」ということもある。)およびそのような走査アンテナの製造方法に関する。
移動体通信や衛星放送用のアンテナは、ビームの方向を変えられる(「ビーム走査」または「ビームステアリング」と言われる。)機能を必要とする。このような機能を有するアンテナ(以下、「走査アンテナ(scanned antenna)」という。)として、アンテナ単位を備えるフェイズドアレイアンテナが知られている。しかしながら、従来のフェイズドアレイアンテナは高価であり、民生品への普及の障害となっている。特に、アンテナ単位の数が増えると、コストが著しく上昇する。
そこで、液晶材料(ネマチック液晶、高分子分散液晶を含む)の大きな誘電異方性(複屈折率)を利用した走査アンテナが提案されている(特許文献1〜5および非特許文献1)。液晶材料の誘電率は周波数分散を有するので、本明細書において、マイクロ波の周波数帯における誘電率(「マイクロ波に対する誘電率」ということもある。)を特に「誘電率M(εM)」と表記することにする。
特許文献3および非特許文献1には、液晶表示装置(以下、「LCD」という。)の技術を利用することによって低価格な走査アンテナが得られると記載されている。
本出願人は、従来のLCDの製造技術を利用して量産することが可能な走査アンテナを開発している。本出願人による特許文献6および7は、従来のLCDの製造技術を利用して量産することが可能な走査アンテナ、そのような走査アンテナに用いられるTFT基板ならびにそのような走査アンテナの製造方法および駆動方法を開示している。参考のために、特許文献6および7の開示内容の全てを本明細書に援用する。
R. A. Stevenson et al., "Rethinking Wireless Communications:Advanced Antenna Design using LCD Technology", SID 2015 DIGEST, pp.827−830.
M. ANDO et al., "A Radial Line Slot Antenna for 12GHz Satellite TV Reception", IEEE Transactions of Antennas and Propagation, Vol. AP−33, No.12, pp. 1347−1353 (1985).
本発明者の検討によると、特許文献6および7に記載されている走査アンテナには、温度変化によってアンテナ性能が低下するという問題が生じる場合がある。詳細は後述する。
本発明の目的は、走査アンテナのアンテナ性能が温度変化によって低下することを抑制することにある。
本発明の実施形態によると、以下の項目に記載の解決手段が提供される。
[項目1]
複数のアンテナ単位を含む送受信領域と、前記送受信領域以外の非送受信領域とを有し、
第1誘電体基板と、前記第1誘電体基板に支持された、複数のTFT、複数のゲートバスライン、複数のソースバスラインおよび複数のパッチ電極とを有するTFT基板と、
第2誘電体基板と、前記第2誘電体基板の第1主面上に形成されたスロット電極であって、前記複数のパッチ電極に対応して配置された複数のスロットを有するスロット電極とを有するスロット基板と、
前記TFT基板と前記スロット基板との間に設けられ、少なくとも1つの液晶領域および少なくとも1つの真空領域を含む液晶層と、
前記液晶層を包囲し、前記TFT基板と前記スロット基板とを互いに接着する外周シール部と、
前記第2誘電体基板の前記第1主面と反対側の第2主面に誘電体層を介して対向するように配置された反射導電板と
を有し、
前記TFT基板と前記スロット基板との間、かつ、前記外周シール部の内側に配置され、感光性樹脂で形成された壁構造体であって、前記液晶層を、前記少なくとも1つの液晶領域と前記少なくとも1つの真空領域とに仕切るように構成された壁構造体をさらに有し、
前記第1誘電体基板の法線方向から見たとき、前記少なくとも1つの真空領域は、前記複数のパッチ電極および前記複数のスロットと重ならず、前記少なくとも1つの液晶領域の面積よりも大きい面積を有する、走査アンテナ。
複数のアンテナ単位を含む送受信領域と、前記送受信領域以外の非送受信領域とを有し、
第1誘電体基板と、前記第1誘電体基板に支持された、複数のTFT、複数のゲートバスライン、複数のソースバスラインおよび複数のパッチ電極とを有するTFT基板と、
第2誘電体基板と、前記第2誘電体基板の第1主面上に形成されたスロット電極であって、前記複数のパッチ電極に対応して配置された複数のスロットを有するスロット電極とを有するスロット基板と、
前記TFT基板と前記スロット基板との間に設けられ、少なくとも1つの液晶領域および少なくとも1つの真空領域を含む液晶層と、
前記液晶層を包囲し、前記TFT基板と前記スロット基板とを互いに接着する外周シール部と、
前記第2誘電体基板の前記第1主面と反対側の第2主面に誘電体層を介して対向するように配置された反射導電板と
を有し、
前記TFT基板と前記スロット基板との間、かつ、前記外周シール部の内側に配置され、感光性樹脂で形成された壁構造体であって、前記液晶層を、前記少なくとも1つの液晶領域と前記少なくとも1つの真空領域とに仕切るように構成された壁構造体をさらに有し、
前記第1誘電体基板の法線方向から見たとき、前記少なくとも1つの真空領域は、前記複数のパッチ電極および前記複数のスロットと重ならず、前記少なくとも1つの液晶領域の面積よりも大きい面積を有する、走査アンテナ。
[項目2]
前記少なくとも1つの真空領域は、複数の真空領域であり、
前記壁構造体は、複数の壁部を含み、
前記複数の真空領域のそれぞれは、前記複数の壁部のそれぞれによって包囲されている、項目1に記載の走査アンテナ。
前記少なくとも1つの真空領域は、複数の真空領域であり、
前記壁構造体は、複数の壁部を含み、
前記複数の真空領域のそれぞれは、前記複数の壁部のそれぞれによって包囲されている、項目1に記載の走査アンテナ。
[項目3]
前記少なくとも1つの液晶領域は、1つの液晶領域である、項目2に記載の走査アンテナ。
前記少なくとも1つの液晶領域は、1つの液晶領域である、項目2に記載の走査アンテナ。
[項目4]
前記少なくとも1つの液晶領域は、複数の液晶領域であり、
前記壁構造体は、複数の壁部を含み、
前記複数の液晶領域のそれぞれは、前記複数の壁部のそれぞれによって包囲されている、項目1に記載の走査アンテナ。
前記少なくとも1つの液晶領域は、複数の液晶領域であり、
前記壁構造体は、複数の壁部を含み、
前記複数の液晶領域のそれぞれは、前記複数の壁部のそれぞれによって包囲されている、項目1に記載の走査アンテナ。
[項目5]
複数のアンテナ単位を含む送受信領域と、前記送受信領域以外の非送受信領域とを有し、
第1誘電体基板と、前記第1誘電体基板に支持された、複数のTFT、複数のゲートバスライン、複数のソースバスラインおよび複数のパッチ電極とを有するTFT基板と、
第2誘電体基板と、前記第2誘電体基板の第1主面上に形成されたスロット電極であって、前記複数のパッチ電極に対応して配置された複数のスロットを有するスロット電極とを有するスロット基板と、
前記TFT基板と前記スロット基板との間に設けられ、少なくとも1つの液晶領域および複数の真空領域を含む液晶層と、
前記液晶層を包囲し、前記TFT基板と前記スロット基板とを互いに接着する外周シール部と、
前記第2誘電体基板の前記第1主面と反対側の第2主面に誘電体層を介して対向するように配置された反射導電板と
を有し、
前記TFT基板と前記スロット基板との間、かつ、前記外周シール部の内側に配置され、シール材で形成された壁構造体であって、前記液晶層を、前記少なくとも1つの液晶領域と前記複数の真空領域とに仕切るように構成された壁構造体をさらに有し、
前記壁構造体は、複数の壁部を含み、
前記複数の真空領域のそれぞれは、前記複数の壁部のそれぞれによって包囲されており、
前記第1誘電体基板の法線方向から見たとき、前記複数の真空領域は、前記複数のパッチ電極および前記複数のスロットと重ならず、前記少なくとも1つの液晶領域の面積よりも大きい面積を有する、走査アンテナ。
複数のアンテナ単位を含む送受信領域と、前記送受信領域以外の非送受信領域とを有し、
第1誘電体基板と、前記第1誘電体基板に支持された、複数のTFT、複数のゲートバスライン、複数のソースバスラインおよび複数のパッチ電極とを有するTFT基板と、
第2誘電体基板と、前記第2誘電体基板の第1主面上に形成されたスロット電極であって、前記複数のパッチ電極に対応して配置された複数のスロットを有するスロット電極とを有するスロット基板と、
前記TFT基板と前記スロット基板との間に設けられ、少なくとも1つの液晶領域および複数の真空領域を含む液晶層と、
前記液晶層を包囲し、前記TFT基板と前記スロット基板とを互いに接着する外周シール部と、
前記第2誘電体基板の前記第1主面と反対側の第2主面に誘電体層を介して対向するように配置された反射導電板と
を有し、
前記TFT基板と前記スロット基板との間、かつ、前記外周シール部の内側に配置され、シール材で形成された壁構造体であって、前記液晶層を、前記少なくとも1つの液晶領域と前記複数の真空領域とに仕切るように構成された壁構造体をさらに有し、
前記壁構造体は、複数の壁部を含み、
前記複数の真空領域のそれぞれは、前記複数の壁部のそれぞれによって包囲されており、
前記第1誘電体基板の法線方向から見たとき、前記複数の真空領域は、前記複数のパッチ電極および前記複数のスロットと重ならず、前記少なくとも1つの液晶領域の面積よりも大きい面積を有する、走査アンテナ。
[項目6]
前記少なくとも1つの液晶領域は、1つの液晶領域である、項目5に記載の走査アンテナ。
前記少なくとも1つの液晶領域は、1つの液晶領域である、項目5に記載の走査アンテナ。
[項目7]
項目3または6に記載の走査アンテナを製造する方法であって、真空注入法を用いて前記液晶層を形成する工程を包含する、走査アンテナの製造方法。
項目3または6に記載の走査アンテナを製造する方法であって、真空注入法を用いて前記液晶層を形成する工程を包含する、走査アンテナの製造方法。
本発明の実施形態によると、走査アンテナのアンテナ性能が温度変化によって低下することを抑制することができる。
以下で、図面を参照しながら本発明の実施形態による走査アンテナ、走査アンテナの製造方法、および走査アンテナに用いられるTFT基板を説明する。なお、本発明は以下で例示する実施形態に限られない。また、本発明の実施形態は図面に限定されるものではない。例えば、断面図における層の厚さ、平面図における導電部および開口部のサイズ等は例示である。
<走査アンテナの基本構造>
液晶材料の大きな誘電率M(εM)の異方性(複屈折率)を利用したアンテナ単位を用いた走査アンテナは、LCDパネルの画素に対応付けられるアンテナ単位の各液晶層に印加する電圧を制御し、各アンテナ単位の液晶層の実効的な誘電率M(εM)を変化させることによって、静電容量の異なるアンテナ単位で2次元的なパターンを形成する(LCDによる画像の表示に対応する。)。アンテナから出射される、または、アンテナによって受信される電磁波(例えば、マイクロ波)には、各アンテナ単位の静電容量に応じた位相差が与えられ、静電容量の異なるアンテナ単位によって形成された2次元的なパターンに応じて、特定の方向に強い指向性を有することになる(ビーム走査)。例えば、アンテナから出射される電磁波は、入力電磁波が各アンテナ単位に入射し、各アンテナ単位で散乱された結果得られる球面波を、各アンテナ単位によって与えられる位相差を考慮して積分することによって得られる。各アンテナ単位が、「フェイズシフター:phase shifter」として機能していると考えることもできる。液晶材料を用いた走査アンテナの基本的な構造および動作原理については、特許文献1〜4および非特許文献1、2を参照されたい。非特許文献2は、らせん状のスロットが配列された走査アンテナの基本的な構造を開示している。参考のために、特許文献1〜4および非特許文献1、2の開示内容の全てを本明細書に援用する。
液晶材料の大きな誘電率M(εM)の異方性(複屈折率)を利用したアンテナ単位を用いた走査アンテナは、LCDパネルの画素に対応付けられるアンテナ単位の各液晶層に印加する電圧を制御し、各アンテナ単位の液晶層の実効的な誘電率M(εM)を変化させることによって、静電容量の異なるアンテナ単位で2次元的なパターンを形成する(LCDによる画像の表示に対応する。)。アンテナから出射される、または、アンテナによって受信される電磁波(例えば、マイクロ波)には、各アンテナ単位の静電容量に応じた位相差が与えられ、静電容量の異なるアンテナ単位によって形成された2次元的なパターンに応じて、特定の方向に強い指向性を有することになる(ビーム走査)。例えば、アンテナから出射される電磁波は、入力電磁波が各アンテナ単位に入射し、各アンテナ単位で散乱された結果得られる球面波を、各アンテナ単位によって与えられる位相差を考慮して積分することによって得られる。各アンテナ単位が、「フェイズシフター:phase shifter」として機能していると考えることもできる。液晶材料を用いた走査アンテナの基本的な構造および動作原理については、特許文献1〜4および非特許文献1、2を参照されたい。非特許文献2は、らせん状のスロットが配列された走査アンテナの基本的な構造を開示している。参考のために、特許文献1〜4および非特許文献1、2の開示内容の全てを本明細書に援用する。
なお、走査アンテナにおけるアンテナ単位はLCDパネルの画素に類似してはいるものの、LCDパネルの画素の構造とは異なっているし、複数のアンテナ単位の配列もLCDパネルにおける画素の配列とは異なっている。特許文献6に記載の走査アンテナ1000を示す図1を参照して、走査アンテナの基本構造を説明する。走査アンテナ1000は、スロットが同心円状に配列されたラジアルインラインスロットアンテナであるが、本発明の実施形態による走査アンテナはこれに限られず、例えば、スロットの配列は、公知の種々の配列であってよい。特に、スロットおよび/またはアンテナ単位の配列について、特許文献5の全ての開示内容を参考のために本明細書に援用する。
図1は、走査アンテナ1000の一部を模式的に示す断面図であり、同心円状に配列されたスロットの中心近傍に設けられた給電ピン72(図2B参照)から半径方向に沿った断面の一部を模式的に示す。
走査アンテナ1000は、TFT基板101と、スロット基板201と、これらの間に配置された液晶層LCと、スロット基板201と、空気層54を介して対向するように配置された反射導電板65とを備えている。走査アンテナ1000は、TFT基板101側からマイクロ波を送受信する。
TFT基板101は、ガラス基板などの誘電体基板1と、誘電体基板1上に形成された複数のパッチ電極15と、複数のTFT10とを有している。各パッチ電極15は、対応するTFT10に接続されている。各TFT10は、ゲートバスラインとソースバスラインとに接続されている。
スロット基板201は、ガラス基板などの誘電体基板51と、誘電体基板51の液晶層LC側に形成されたスロット電極55とを有している。スロット電極55は複数のスロット57を有している。スロット電極55は、誘電体基板51の第1主面51a上に形成されている。
スロット基板201と、空気層54を介して対向するように反射導電板65が配置されている。反射導電板65は、誘電体基板51の第1主面51aと反対側の第2主面51bに例えば空気層54を介して対向するように配置されている。空気層54に代えて、マイクロ波に対する誘電率Mが小さい誘電体(例えば、PTFEなどのフッ素樹脂)で形成された層を用いることができる。スロット電極55と反射導電板65と、これらの間の誘電体基板51および空気層54とが導波路301として機能する。
パッチ電極15と、スロット57を含むスロット電極55の部分と、これらの間の液晶層LCとがアンテナ単位Uを構成する。各アンテナ単位Uにおいて、1つのパッチ電極15が1つのスロット57を含むスロット電極55の部分と液晶層LCを介して対向しており、液晶容量を構成している。パッチ電極15とスロット電極55とが液晶層LCを介して対向する構造は、LCDパネルの画素電極と対向電極とが液晶層を介して対向する構造と似ている。すなわち、走査アンテナ1000のアンテナ単位Uと、LCDパネルにおける画素とは似た構成を有している。また、アンテナ単位は、液晶容量と電気的に並列に接続された補助容量を有している点でもLCDパネルにおける画素と似た構成を有している。しかしながら、走査アンテナ1000は、LCDパネルと多くの相違点を有している。
まず、走査アンテナ1000の誘電体基板1、51に求められる性能は、LCDパネルの基板に求められる性能と異なる。
一般にLCDパネルには、可視光に透明な基板が用いられ、例えば、ガラス基板またはプラスチック基板が用いられる。反射型のLCDパネルにおいては、背面側の基板には透明性が必要ないので、半導体基板が用いられることもある。これに対し、アンテナ用の誘電体基板1、51としては、マイクロ波に対する誘電損失(マイクロ波に対する誘電正接をtanδMと表すことにする。)が小さいことが好ましい。誘電体基板1、51のtanδMは、概ね0.03以下であることが好ましく、0.01以下がさらに好ましい。具体的には、ガラス基板またはプラスチック基板を用いることができる。ガラス基板はプラスチック基板よりも寸法安定性、耐熱性に優れ、TFT、配線、電極等の回路要素をLCD技術を用いて形成するのに適している。例えば、導波路を形成する材料が空気とガラスである場合、ガラスの方が上記誘電損失が大きいため、ガラスがより薄い方が導波ロスを減らすことができるとの観点から、好ましくは400μm以下であり、300μm以下がさらに好ましい。下限は特になく、製造プロセスにおいて、割れることなくハンドリングできればよい。
電極に用いられる導電材料も異なる。LCDパネルの画素電極や対向電極には透明導電膜としてITO膜が用いられることが多い。しかしながら、ITOはマイクロ波に対するtanδMが大きく、アンテナにおける導電層として用いることができない。スロット電極55は、反射導電板65とともに導波路301の壁として機能する。したがって、導波路301の壁におけるマイクロ波の透過を抑制するためには、導波路301の壁の厚さ、すなわち、金属層(Cu層またはAl層)の厚さは大きいことが好ましい。金属層の厚さが表皮深さの3倍であれば、電磁波は1/20(−26dB)に減衰され、5倍であれば1/150(−43dB)程度に減衰されることが知られている。したがって、金属層の厚さが表皮深さの5倍であれば、電磁波の透過率を1%に低減することができる。例えば、10GHzのマイクロ波に対しては、厚さが3.3μm以上のCu層、および厚さが4.0μm以上のAl層を用いると、マイクロ波を1/150まで低減することができる。また、30GHzのマイクロ波に対しては、厚さが1.9μm以上のCu層、および厚さが2.3μm以上のAl層を用いると、マイクロ波を1/150まで低減することができる。このように、スロット電極55は、比較的厚いCu層またはAl層で形成することが好ましい。Cu層またはAl層の厚さに上限は特になく、成膜時間やコストを考慮して、適宜設定され得る。Cu層を用いると、Al層を用いるよりも薄くできるという利点が得られる。比較的厚いCu層またはAl層の形成は、LCDの製造プロセスで用いられる薄膜堆積法だけでなく、Cu箔またはAl箔を基板に貼り付ける等、他の方法を採用することもできる。金属層の厚さは、例えば、2μm以上30μm以下である。薄膜堆積法を用いて形成する場合、金属層の厚さは5μm以下であることが好ましい。なお、反射導電板65は、例えば、厚さが数mmのアルミニウム板、銅板などを用いることができる。
パッチ電極15は、スロット電極55のように導波路301を構成する訳ではないので、スロット電極55よりも厚さが小さいCu層またはAl層を用いることができる。ただし、スロット電極55のスロット57付近の自由電子の振動がパッチ電極15内の自由電子の振動を誘起する際に熱に変わるロスを避けるために、抵抗が低い方が好ましい。量産性の観点からはCu層よりもAl層を用いることが好ましく、Al層の厚さは例えば0.3μm以上2μm以下が好ましい。
また、アンテナ単位Uの配列ピッチは、画素ピッチと大きく異なる。例えば、12GHz(Ku band)のマイクロ波用のアンテナを考えると、波長λは、例えば25mmである。そうすると、特許文献4に記載されているように、アンテナ単位Uのピッチはλ/4以下および/またはλ/5以下であるので、6.25mm以下および/または5mm以下ということになる。これはLCDパネルの画素のピッチと比べて10倍以上大きい。したがって、アンテナ単位Uの長さおよび幅もLCDパネルの画素長さおよび幅よりも約10倍大きいことになる。
もちろん、アンテナ単位Uの配列はLCDパネルにおける画素の配列と異なり得る。ここでは、同心円状に配列した例(例えば、特開2002−217640号公報参照)を示すが、これに限られず、例えば、非特許文献2に記載されているように、らせん状に配列されてもよい。さらに、特許文献4に記載されているようにマトリクス状に配列してもよい。
走査アンテナ1000の液晶層LCの液晶材料に求められる特性は、LCDパネルの液晶材料に求められる特性と異なる。LCDパネルは画素の液晶層の屈折率変化によって、可視光(波長380nm〜830nm)の偏光に位相差を与えることによって、偏光状態を変化させる(例えば、直線偏光の偏光軸方向を回転させる、または、円偏光の円偏光度を変化させる)ことによって、表示を行う。これに対して走査アンテナ1000は、アンテナ単位Uが有する液晶容量の静電容量値を変化させることによって、各パッチ電極から励振(再輻射)されるマイクロ波の位相を変化させる。したがって、液晶層は、マイクロ波に対する誘電率M(εM)の異方性(ΔεM)が大きいことが好ましく、tanδMは小さいことが好ましい。例えば、M. Wittek et al., SID 2015 DIGESTpp.824−826に記載のΔεMが4以上で、tanδMが0.02以下(いずれも19Gzの値)を好適に用いることができる。この他、九鬼、高分子55巻8月号pp.599−602(2006)に記載のΔεMが0.4以上、tanδMが0.04以下の液晶材料を用いることができる。
一般に液晶材料の誘電率は周波数分散を有するが、マイクロ波に対する誘電異方性ΔεMは、可視光に対する屈折率異方性Δnと正の相関がある。したがって、マイクロ波に対するアンテナ単位用の液晶材料は、可視光に対する屈折率異方性Δnが大きい材料が好ましいと言える。LCD用の液晶材料の屈折率異方性Δnは550nmの光に対する屈折率異方性で評価される。ここでも550nmの光に対するΔn(複屈折率)を指標に用いると、Δnが0.3以上、好ましくは0.4以上のネマチック液晶が、マイクロ波に対するアンテナ単位用に用いられる。Δnに特に上限はない。ただし、Δnが大きい液晶材料は極性が強い傾向にあるので、信頼性を低下させる恐れがある。液晶層の厚さは、例えば、1μm〜500μmである。
以下、走査アンテナの構造をより詳細に説明する。
まず、図1、図2Aおよび図2Bを参照する。図1は詳述した様に走査アンテナ1000の中心付近の模式的な部分断面図であり、図2Aおよび図2Bは、それぞれ、走査アンテナ1000が備えるTFT基板101およびスロット基板201を示す模式的な平面図である。
走査アンテナ1000は2次元に配列された複数のアンテナ単位Uを有しており、ここで例示する走査アンテナ1000では、複数のアンテナ単位が同心円状に配列されている。以下の説明においては、アンテナ単位Uに対応するTFT基板101の領域およびスロット基板201の領域を「アンテナ単位領域」と呼び、アンテナ単位と同じ参照符号Uを付すことにする。また、図2Aおよび図2Bに示す様に、TFT基板101およびスロット基板201において、2次元的に配列された複数のアンテナ単位領域によって画定される領域を「送受信領域R1」と呼び、送受信領域R1以外の領域を「非送受信領域R2」と呼ぶ。非送受信領域R2には、端子部、駆動回路などが設けられる。
図2Aは、走査アンテナ1000が備えるTFT基板101を示す模式的な平面図である。
図示する例では、TFT基板101の法線方向から見たとき、送受信領域R1はドーナツ状である。非送受信領域R2は、送受信領域R1の中心部に位置する第1非送受信領域R2aと、送受信領域R1の周縁部に位置する第2非送受信領域R2bとを含む。送受信領域R1の外径は、例えば200mm〜1500mmで、通信量などに応じて設定される。
TFT基板101の送受信領域R1には、誘電体基板1に支持された複数のゲートバスラインGLおよび複数のソースバスラインSLが設けられ、これらの配線によってアンテナ単位領域Uが規定されている。アンテナ単位領域Uは、送受信領域R1において、例えば同心円状に配列されている。アンテナ単位領域Uのそれぞれは、TFTと、TFTに電気的に接続されたパッチ電極とを含んでいる。TFTのソース電極はソースバスラインSLに、ゲート電極はゲートバスラインGLにそれぞれ電気的に接続されている。また、ドレイン電極は、パッチ電極と電気的に接続されている。
非送受信領域R2(R2a、R2b)には、送受信領域R1を包囲するようにシール領域Rsが配置されている。シール領域Rsにはシール材が付与されている。シール材は、TFT基板101およびスロット基板201を互いに接着させるとともに、これらの基板101、201の間に液晶を封入する。
非送受信領域R2のうちシール領域Rsによって包囲された領域の外側には、ゲート端子部GT、ゲートドライバGD、ソース端子部STおよびソースドライバSDが設けられている。ゲートバスラインGLのそれぞれはゲート端子部GTを介してゲートドライバGDに接続されている。ソースバスラインSLのそれぞれはソース端子部STを介してソースドライバSDに接続されている。なお、この例では、ソースドライバSDおよびゲートドライバGDは誘電体基板1上に形成されているが、これらのドライバの一方または両方は他の誘電体基板上に設けられていてもよい。
非送受信領域R2には、また、複数のトランスファー端子部PTが設けられている。トランスファー端子部PTは、スロット基板201のスロット電極55(図2B)と電気的に接続される。本明細書では、トランスファー端子部PTとスロット電極55との接続部を「トランスファー部」と称する。図示するように、トランスファー端子部PT(トランスファー部)は、シール領域Rs内に配置されてもよい。この場合、シール材として導電性粒子を含有する樹脂を用いてもよい。これにより、TFT基板101とスロット基板201との間に液晶を封入させるとともに、トランスファー端子部PTとスロット基板201のスロット電極55との電気的な接続を確保できる。この例では、第1非送受信領域R2aおよび第2非送受信領域R2bの両方にトランスファー端子部PTが配置されているが、いずれか一方のみに配置されていてもよい。
なお、トランスファー端子部PT(トランスファー部)は、シール領域Rs内に配置されていなくてもよい。例えば非送受信領域R2のうちシール領域Rs以外の領域内に配置されていてもよい。トランスファー部は、シール領域Rs内およびシール領域Rs以外の領域内の両方に配置されていてももちろんよい。
図2Bは、走査アンテナ1000におけるスロット基板201を例示する模式的な平面図であり、スロット基板201の液晶層LC側の表面を示している。
スロット基板201では、誘電体基板51上に、送受信領域R1および非送受信領域R2に亘ってスロット電極55が形成されている。
スロット基板201の送受信領域R1では、スロット電極55には複数のスロット57が配置されている。スロット57は、TFT基板101におけるアンテナ単位領域Uに対応して配置されている。図示する例では、複数のスロット57は、ラジアルインラインスロットアンテナを構成するように、互いに概ね直交する方向に延びる一対のスロット57が同心円状に配列されている。互いに概ね直交するスロットを有するので、走査アンテナ1000は、円偏波を送受信することができる。
非送受信領域R2には、複数の、スロット電極55の端子部ITが設けられている。端子部ITは、TFT基板101のトランスファー端子部PT(図2A)と電気的に接続される。この例では、端子部ITは、シール領域Rs内に配置されており、導電性粒子を含有するシール材によって対応するトランスファー端子部PTと電気的に接続される。
また、第1非送受信領域R2aにおいて、スロット基板201の裏面側に給電ピン72が配置されている。給電ピン72によって、スロット電極55、反射導電板65および誘電体基板51で構成された導波路301にマイクロ波が挿入される。給電ピン72は給電装置70に接続されている。給電は、スロット57が配列された同心円の中心から行う。給電の方式は、直結給電方式および電磁結合方式のいずれであってもよく、公知の給電構造を採用することができる。
図2Aおよび図2Bでは、シール領域Rsは、送受信領域R1を含む比較的狭い領域を包囲するように設けた例を示したが、これに限られない。特に、送受信領域R1の外側に設けられるシール領域Rsは、送受信領域R1から一定以上の距離を持つように、例えば、誘電体基板1および/または誘電体基板51の辺の近傍に設けてもよい。シール部によって包囲された領域は、送受信領域R1と、非送受信領域R2の一部とを含んでもよい。もちろん、非送受信領域R2に設けられる、例えば端子部や駆動回路は、シール領域Rsの外側(すなわち、液晶層が存在しない側)に形成してもよい。一般的には、TFT基板101のうち、端子部や駆動回路(例えば、ゲートドライバGD、ソースドライバSD、ソース端子部STおよびゲート端子部GT)を有する部分は、スロット基板201と重ならずに露出されている。なお、図面では、簡単のために、スロット基板201の端とTFT基板101の端とを区別せずに示すことがある。送受信領域R1から一定以上の離れた位置にシール領域Rsを形成することによって、シール材(特に、硬化性樹脂)に含まれている不純物(特にイオン性不純物)の影響を受けてアンテナ特性が低下することを抑制することができる。
<温度変化によるアンテナ性能の低下>
上述したように、走査アンテナは、アンテナ単位の各液晶層に印加する電圧を制御し、各アンテナ単位の液晶層の実効的な誘電率M(εM)を変化させることによって、静電容量の異なるアンテナ単位で2次元的なパターンを形成する。ところが、アンテナ単位の静電容量値が変動することがある。例えば走査アンテナの環境温度によって液晶材料の体積が変化し、それに起因して、液晶容量の静電容量値が変化することがある。その結果、アンテナ単位の液晶層がマイクロ波に与える位相差が所定の値からずれることになる。位相差が所定の値からずれると、アンテナ特性が低下する。このアンテナ特性の低下は、例えば、共振周波数のずれとして評価され得る。実際には、例えば、走査アンテナは予め決められた共振周波数でゲインが最大となるように設計されるので、アンテナ特性の低下は、例えば、ゲインの変化として現れる。あるいは、走査アンテナのゲインが最大となる方向が所望する方向からずれると、例えば、通信衛星を正確に追尾できないことになる。
上述したように、走査アンテナは、アンテナ単位の各液晶層に印加する電圧を制御し、各アンテナ単位の液晶層の実効的な誘電率M(εM)を変化させることによって、静電容量の異なるアンテナ単位で2次元的なパターンを形成する。ところが、アンテナ単位の静電容量値が変動することがある。例えば走査アンテナの環境温度によって液晶材料の体積が変化し、それに起因して、液晶容量の静電容量値が変化することがある。その結果、アンテナ単位の液晶層がマイクロ波に与える位相差が所定の値からずれることになる。位相差が所定の値からずれると、アンテナ特性が低下する。このアンテナ特性の低下は、例えば、共振周波数のずれとして評価され得る。実際には、例えば、走査アンテナは予め決められた共振周波数でゲインが最大となるように設計されるので、アンテナ特性の低下は、例えば、ゲインの変化として現れる。あるいは、走査アンテナのゲインが最大となる方向が所望する方向からずれると、例えば、通信衛星を正確に追尾できないことになる。
図3Aおよび図3Bは、走査アンテナ1000が有する液晶パネル100の模式的な断面図である。液晶パネル100は、TFT基板101と、スロット基板201と、これらの間に設けられた液晶層LCと、液晶層LCを包囲するシール部Rsとを有している。図3Aは、液晶層LCが形成された直後の状態(室温)を示し、図3Bは、図3Aの状態から例えば温度が上昇することによって液晶材料の体積が増加した状態を示している。
図3Aに示すように、液晶層LCは、TFT基板101とスロット基板201とシール部Rsとによって形成される空間に封入されている。言い換えると、TFT基板101とスロット基板201とシール部Rsとによって形成される空間は液晶材料で満たされている。走査アンテナの温度が上昇すると、各構成要素は熱膨張する。液晶層を構成する液晶材料の体積が増加すると、図3Bに示すように、TFT基板101が有する誘電体基板1および/またはスロット基板201が有する誘電体基板51のたわみによって液晶層LCの厚さが増加する。図3Bに示す液晶層LCの厚さD2は、図3Aに示す液晶層の厚さD1よりも大きい。液晶材料の体積の増加は、液晶層LCの厚さの増加への寄与が大きい。例えば液晶材料の温度が25℃から60℃に上昇すると、液晶材料の体積は約2%増加し、これにより液晶層の厚さが約2%増加することになる。液晶容量を構成する液晶層の厚さが増大すると、液晶容量の静電容量値が低下する。アンテナ性能に特に影響を与えるのは、パッチ電極とスロット電極との間の液晶層の厚さdLC(図1参照)である。パッチ電極とスロット電極との間の液晶層の厚さdLCは、各アンテナ単位の液晶容量の静電容量値を変化させ得るからである。
本発明の実施形態による走査アンテナは、以下で説明するように、液晶層を液晶領域と真空領域とに仕切る壁構造体を有することによって、温度変化に伴う液晶層の厚さの変化(特に液晶容量を構成する液晶層の厚さの変化)を抑制する。これにより、温度変化によってアンテナ性能が低下することが抑制される。
<実施形態1>
図4Aおよび図4Bを参照しながら、本発明の実施形態1による走査アンテナ1000Aを説明する。
図4Aおよび図4Bを参照しながら、本発明の実施形態1による走査アンテナ1000Aを説明する。
図4Aは、走査アンテナ1000Aを模式的に示す平面図である。図4Bは、走査アンテナ1000Aが有する液晶パネル100Aの模式的な断面図である。走査アンテナ1000の構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素には共通の参照符号を付し、説明を省略することがある。
図4Aおよび図4Bに示すように、走査アンテナ1000Aの液晶層は、少なくとも1つの液晶領域Rlおよび少なくとも1つの真空領域Roを含む。走査アンテナ1000Aは、液晶層LCを包囲し、TFT基板101とスロット基板201とを互いに接着する外周シール部73を有する。走査アンテナ1000Aは、TFT基板101とスロット基板201との間、かつ、外周シール部73の内側に配置され、感光性樹脂で形成された壁構造体60であって、液晶層LCを、少なくとも1つの液晶領域Rlと少なくとも1つの真空領域Roとに仕切るように構成された壁構造体60をさらに有する。第1誘電体基板1の法線方向(または第2誘電体基板51の法線方向)から見たとき、少なくとも1つの真空領域Roは、パッチ電極15およびスロット57と重ならず、少なくとも1つの液晶領域Rlの面積よりも大きい面積を有する。
走査アンテナ1000Aが有する外周シール部73の構成は、例えば走査アンテナ1000が有するシール部Rsの構成と同じであってもよい。走査アンテナ1000では、TFT基板101とスロット基板201とシール部Rsとによって形成される空間は全て液晶材料で満たされている。これに対して、走査アンテナ1000Aにおいては、液晶層LCが液晶領域Rlと真空領域Roとを含んでおり、TFT基板101とスロット基板201と外周シール部73とによって形成される空間の一部だけが液晶材料で満たされている。すなわち、走査アンテナ1000Aにおいては、TFT基板101とスロット基板201と外周シール部73とによって形成される空間の全てが液晶材料で満たされているわけではない。
走査アンテナ1000Aは、液晶層LCを液晶領域Rlと真空領域Roとに仕切るように構成されている壁構造体60を有する。真空領域Ro内の圧力は大気圧よりも低い。この圧力差により、図4Bに示すように、真空領域Roには液晶パネル100Aの外側から力Fが生じるので、温度変化によって液晶材料の体積が増加しても、液晶層LCの液晶領域Rlの厚さの増加が抑制される。第1誘電体基板1の法線方向から見たとき、少なくとも1つの真空領域Roの面積は、少なくとも1つの液晶領域Rlの面積よりも大きいので、液晶層LCの液晶領域Rlの厚さの増加を効果的に抑制することができる。これにより、走査アンテナ1000Aは、温度変化によってアンテナ性能が低下することが抑制される。
「真空」は、日本工業規格JISおよび国際規格ISOによると、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態と定義されている。本明細書では、この定義に則って、「真空領域」は、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされている空間をいう。
真空領域Roは、パッチ電極15およびスロット57と重ならないように配置されている。走査アンテナの液晶層のうちアンテナ性能に関わる重要な領域は、パッチ電極15およびスロット57の周囲であるので、真空領域Roを設けてもアンテナ性能への影響は小さい。
「少なくとも1つの真空領域Roの面積」は、真空領域Roが複数ある場合は複数の真空領域Roの面積の和である。同様に、「少なくとも1つの液晶領域Rlの面積」は、液晶領域Rlが複数ある場合は複数の液晶領域Rlの面積の和である。
この例では、図4Aに示すように、走査アンテナ1000Aの液晶層LCは、1つの液晶領域Rlおよび複数の真空領域Roを含む。壁構造体60は、複数の壁部60Aを含む。複数の真空領域Roのそれぞれは、複数の壁部60Aのそれぞれによって包囲されている。ただし、本発明の実施形態はこれに限られず、液晶層は少なくとも1つの液晶領域と少なくとも1つの真空領域とを含めばよい。少なくとも1つの液晶領域と少なくとも1つの真空領域とが壁構造体によって仕切られていると、上述したように、温度変化に伴うアンテナ性能の低下を抑制することができる。
壁構造体60は、TFT基板101またはスロット基板201の一方の基板に、壁構造体60の頂面がTFT基板101またはスロット基板201の他方の基板と接するように設けられている。量産性の観点からは、壁構造体60は、柱状スペーサと同じ基板に設けられることが好ましい。この場合、壁構造体60は、柱状スペーサと同じ感光性樹脂層から形成することができる。
壁構造体60は、例えばセルギャップを規定する柱状スペーサと同じ高さを有する。この場合、壁構造体60および柱状スペーサを形成しやすいという利点が得られる。「壁構造体60の高さ」は、壁構造体60が設けられているTFT基板101またはスロット基板201の一方の基板が有する誘電体基板の液晶層LCと反対側の面(液晶層LCから遠い方の面)から壁構造体60の頂面(液晶層LCに近い面)までの距離(第1誘電体基板1の法線方向における距離)をいう。「柱状スペーサの高さ」についても同様に定義される。例えば、壁構造体60および柱状スペーサをスロット基板201に設ける場合、壁構造体60が接する位置と柱状スペーサが接する位置とでTFT基板101の厚さが同じになるように、TFT基板101の構造(積層構造)、壁構造体60および柱状スペーサの位置等を調整すれば、同じ高さを有する壁構造体60および柱状スペーサを形成することができる。もちろん、壁構造体60は、柱状スペーサと異なる高さを有してもよい。複数の壁部60Aが接する位置と柱状スペーサが接する位置とでTFT基板101の厚さが異なる場合、例えばハーフトーンマスクを用いて同じ感光性樹脂層を露光・現像することによって、高さの異なる壁構造体60および柱状スペーサを同時に形成することができる。あるいは、壁構造体60および柱状スペーサをTFT基板101に設けてもよい。壁構造体60および柱状スペーサをTFT基板101に設けると、スロット基板201の厚さはスロット57を除いてほぼ一定であるので、TFT基板101の構造(積層構造)や壁構造体60および柱状スペーサの位置等を制限することなく、同じ高さを有する壁構造体60および柱状スペーサを形成することができるという利点がある。また、壁構造体60および柱状スペーサとTFT基板101とのアライメントずれの問題が生じないという利点もある。
図5は、特許文献7に記載の走査アンテナが有する液晶パネル100Q1を模式的に示す平面図である。特許文献7に記載の走査アンテナは、複数の液晶領域LCrに分割された液晶層LCを有する。なお、特許文献7には、液晶層に真空領域を設けることは開示されていない。複数の液晶領域LCrのそれぞれは、複数の個別シール部75q1のそれぞれによって包囲されている。複数の個別シール部75q1は、シール材で形成されており、TFT基板101とスロット基板201とを互いに接着する。液晶パネル100Q1の製造方法において、液晶材料は滴下注入法(One Drop Filling)で注入される。したがって、液晶材料は、未硬化のシール材(個別シール部75q1を形成するためのシール材)と接触するので、シール材に含まれる不純物(特にイオン性不純物)が液晶材料中に溶け出すことによってアンテナ特性を低下させるおそれがある。特許文献7には、含まれる不純物(特にイオン性不純物)が少ないシール材を用いることが好ましいことが記載されている。また、パッチ電極15から個別シール部75q1までの距離およびスロット57から個別シール部75q1までの距離は、所定の値以上に設定することが好ましいことも記載されている。
本実施形態による液晶パネル100Aは、以下に製造方法を説明するように、真空注入法によって液晶層LCを形成することができる。真空注入法を採用する際には、シール材を用いてTFT基板101とスロット基板201とを予め接着させておく。したがって、シール材を予め十分に硬化しておくことができるので、液晶材料が未硬化のシール材に接触するという問題が生じない。これにより、アンテナ性能の低下を抑制することができる。
真空注入法を用いる場合は、図4Aに示すように、注入口74aを画定するメインシール部74と、注入口74aを封止するエンドシール部75とで、外周シール部73の全体が形成される。なお、滴下注入法を用いる場合は、メインシール部が液晶層LCを包囲するように形成されるので、エンドシール部は形成されない。
<液晶パネル100Aの製造方法>
図6A、図6B、図7A、図7B、図8A、図8B、図9、図10A、図10B、図11A、図11Bおよび図12を参照しながら、液晶パネル100Aの製造方法を説明する。
図6A、図6B、図7A、図7B、図8A、図8B、図9、図10A、図10B、図11A、図11Bおよび図12を参照しながら、液晶パネル100Aの製造方法を説明する。
まず、図6Aに示すように、TFT基板101を用意する。また、図6Bに示すように、スロット基板201を用意し、スロット基板201に複数の壁部60Aを形成する。複数の壁部60Aは、感光性樹脂から形成される。複数の壁部60Aは、スロット電極55の上(スロット電極55を覆う絶縁層の上)に感光性樹脂層を付与し、所定のパターンの開口部を有するフォトマスクを介して、感光性樹脂層を露光・現像することによって形成することができる。感光性樹脂はネガ型であってもよいし、ポジ型であってもよい。複数の壁部60Aは、例えば柱状スペーサ(後述する図19参照)と同じ感光性樹脂層を露光・現像することによって形成することができる。
次に、図7Aおよび図7Bに示すように、TFT基板101およびスロット基板201の液晶層側に配置される表面に、配向膜32および42をそれぞれ形成する。配向膜は、配向膜を形成するための配向膜材料を印刷法により塗布し、焼成することによって形成する。本焼成の前に仮焼成を行い2段階で焼成してもよい。なお、図面では、簡単のために配向膜32および42を平坦化層のように示しているが、配向膜32および42は下地の段差を反映した表面を有する。典型的には、配向膜42は複数の壁部60Aおよび柱状スペーサを覆うように形成される。
続いて、図8Aおよび図8Bに示すように、配向膜32および42に配向処理を行う。配向処理として例えばラビング処理を行う。ロール状のラビング布RRで配向膜32および42をこする。ただし、配向処理の方法はこれに限られず、例えば光配向処理を行ってもよい。配向膜32および42は、例えば水平配向膜である。
次に、図9に示すように、メインシール部74を形成するためのシール材74’をスロット基板201に付与する。例えばディスペンサを用いて、注入口74aとなる部分に開口を有するパターンをシール材で描画する。ディスペンサによるシール材の描画に代えて、例えば、スクリーン印刷によって、所定のパターンにシール材74’を付与してもよい。なお、ここではスロット基板201にシール材74’を付与する例を示すが、スロット基板201およびTFT基板101の一方の基板に付与すればよく、TFT基板101に付与してもよい。シール材74’は例えば熱硬化型シール材である。シール材74’は、紫外線硬化型シール材であってもよい。シール材74’は、硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂)と粒状スペーサ(例えば、樹脂ビーズまたはシリカビーズ)とを含む。粒状スペーサの粒径は、セルギャップに応じて決められる。
次に、図10Aに示すように、TFT基板101とスロット基板201とを貼り合わせる。まず、TFT基板101とスロット基板201を貼り合わせ、その後、シール材74’を硬化させることによってメインシール部74を得る。このとき、複数の壁部60Aの頂面とTFT基板101との間にはほんのわずかではあるが隙間が存在する。続いて、貼り合わされたTFT基板101およびスロット基板201を液晶注入チャンバー内に入れ、液晶注入チャンバーを真空状態にする。チャンバー内が真空状態になると、複数の壁部60Aの頂面がTFT基板101に接し、TFT基板101とスロット基板201と壁部60Aとで囲まれた領域は閉じられた空間となり、図10Bに示すように、真空領域Roが得られる。
次に、図11Aおよび図11Bに示すように、液晶層(液晶領域Rl)を形成する。真空状態の液晶注入チャンバー内で、注入口74aに液晶材料を接触させた後、液晶注入チャンバー内に例えば窒素ガスを導入することによって、液晶注入チャンバー内を大気圧に戻す。これにより、液晶領域Rlとなる領域に液晶材料が充填される。液晶注入チャンバー内の圧力が真空状態よりも高くなると、真空領域Roには液晶パネルの外側から力が生じるので、複数の壁部60Aの頂面とTFT基板101との間に隙間が生じることはなく、真空領域Roには液晶材料は充填されない。
次に、図12に示すように、注入口74aを封止するエンドシール部75を形成する。
このようにして、液晶パネル100Aが製造される。
なお、液晶パネル100Aの製造方法においては、滴下注入法を用いて液晶層を形成することもできる。滴下注入法を採用すると、未硬化のシール材が液晶材料と接触するが、真空注入法よりも量産性に優れるという利点がある。さらに、液晶パネル100Aにおいては、液晶材料と接触し得る未硬化のシール材は外周シール部を形成するためのシール材のみであるので、特許文献7に記載の走査アンテナが有する液晶パネルに比べて、未硬化のシール材と接触する液晶材料の割合は小さい。滴下注入法を用いる場合は、シール材に含まれる不純物(特にイオン性不純物)が少ないものを用いることが好ましく、短時間で硬化できる紫外線硬化型シール材を用いることが好ましい。また、液晶材料を滴下するまでに、未硬化のシール材から溶剤および水分をできるだけ減少させておくことが好ましい。例えば、シール材を描画した後、液晶材料を滴下するまでに、加熱および/または減圧することによって、未硬化のシール材に含まれる水分を減少させることが好ましい。
<実施形態2>
図13を参照しながら、本発明の実施形態2による走査アンテナ1000Bを説明する。
図13を参照しながら、本発明の実施形態2による走査アンテナ1000Bを説明する。
図13は、走査アンテナ1000Bを模式的に示す平面図である。以降では、走査アンテナ1000Aと異なる点を主に説明する。
図13に示すように、走査アンテナ1000Bの液晶層LCは、複数の液晶領域Rlおよび1つの真空領域Roを含む。壁構造体60は、複数の壁部60Bを含む。複数の液晶領域Rlのそれぞれは、複数の壁部60Bのそれぞれによって包囲されている。
このような構造を有する走査アンテナ1000Bにおいても、走査アンテナ1000Aと同様に、温度変化に伴うアンテナ性能の低下が抑制される。
走査アンテナ1000Bが有する液晶パネルの製造方法においては、滴下注入法を用いて液晶層LCが形成される。液晶領域Rlのそれぞれは複数の壁部60Bのそれぞれに包囲されており、複数の壁部60Bは感光性樹脂で形成されているので、液晶材料が未硬化のシール材と接触するという問題は生じない。従って、走査アンテナ1000Bは、アンテナ性能の低下が抑制される。なお、走査アンテナ1000Bの外周シール部73は、エンドシール部を有しない。
<走査アンテナ1000Bの製造方法>
図14および図15を参照しながら、走査アンテナ1000Bが有する液晶パネルの製造方法を説明する。走査アンテナ1000Aが有する液晶パネル100Aの製造方法と異なる点を主に説明する。
図14および図15を参照しながら、走査アンテナ1000Bが有する液晶パネルの製造方法を説明する。走査アンテナ1000Aが有する液晶パネル100Aの製造方法と異なる点を主に説明する。
まず、図6A、図6B、図7A、図7B、図8A、図8B、図9を参照して説明したのと同様に、スロット基板201に複数の壁部60Bを形成し、TFT基板101およびスロット基板201に配向膜32および42をそれぞれ形成し、外周シール部73を形成するためのシール材73’をTFT基板101およびスロット基板201の一方に付与する。ここでは、誘電体基板51の法線方向から見たときの複数の壁部60Bの形状が、複数の壁部60Aの形状と異なる。シール材73’は、紫外線硬化型シール材であることが好ましい。シール材73’は、硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂)と粒状スペーサとを含む。粒状スペーサの粒径は、セルギャップに応じて決められる。
次に、図14に示すように、スロット基板201のうち、液晶領域Rlとなる領域、すなわち複数の壁部60Bに包囲された領域にのみ液晶材料lcを滴下する。滴下する液晶材料の量は、形成する液晶層の厚さや壁部60Bに包囲された領域の面積などによって適宜調整される。
次に、図15に示すように、TFT基板101とスロット基板201とを貼り合わせる。まず、真空状態のチャンバー内でTFT基板101をスロット基板201に貼り合わせる。続いて、チャンバー内を大気開放した後、シール材73’に紫外線を照射し、シール材73’を硬化させることによって、外周シール部73を得る。チャンバー内を大気開放してチャンバー内の圧力が上昇すると、それによってシール材73’の厚さがわずかに減少する(ただし、当然ながらシール材73’に含まれる粒状スペーサの粒径よりは小さくならない)。これにより、複数の壁部60Bの頂面がTFT基板101に接し、TFT基板101とスロット基板201と壁部60Bとで囲まれた領域が閉じられた空間となる。この状態でシール材73’に紫外線を照射することにより、真空領域Roと、壁部60Bで包囲された液晶領域Rlとが形成される。
このようにして、走査アンテナ1000Bが有する液晶パネルが製造される。
<実施形態3>
図16を参照しながら、本発明の実施形態3による走査アンテナ1000Cを説明する。
図16を参照しながら、本発明の実施形態3による走査アンテナ1000Cを説明する。
図16は、走査アンテナ1000Cを模式的に示す平面図である。以降では、走査アンテナ1000Aと異なる点を主に説明する。
走査アンテナ1000Cの壁構造体60は、複数の壁部60Cを含む。複数の壁部60Cは、シール材で形成されている点において、走査アンテナ1000Aが有する複数の壁部60Aと異なる。
このような構造を有する走査アンテナ1000Cにおいても、走査アンテナ1000Aと同様に、温度変化に伴うアンテナ性能の低下が抑制される。
走査アンテナ1000Cにおいては、複数の壁部60CがTFT基板101とスロット基板201とを互いに接着するシール材で形成されているので、液晶材料の体積が増加したときに、液晶層LC(液晶領域Rl)の厚さの増加を抑制する効果が大きい。
走査アンテナ1000Cが有する液晶パネルは、真空注入法によって液晶層LCを形成することが好ましい。真空注入法を採用する際には、シール材を用いてTFT基板101とスロット基板201とを予め接着させておく。したがって、シール材を予め十分に硬化しておくことができるので、液晶材料が未硬化のシール材に接触するという問題が生じない。これにより、アンテナ性能の低下を抑制することができる。
<走査アンテナ1000Cの製造方法>
図17A、図17Bおよび図18を参照しながら、走査アンテナ1000Cが有する液晶パネルの製造方法を説明する。先の実施形態と異なる点を主に説明する。
図17A、図17Bおよび図18を参照しながら、走査アンテナ1000Cが有する液晶パネルの製造方法を説明する。先の実施形態と異なる点を主に説明する。
まず、図17Aおよび図17Bに示すように、TFT基板101およびスロット基板201の液晶層側に配置される表面に、配向膜32および42をそれぞれ形成し、配向処理を行う。ここでは、複数の壁部60Cを形成する前に配向膜32および42を形成する。
次に、図18に示すように、メインシール部74を形成するためのシール材74’をスロット基板201またはTFT基板101の一方に付与する。このとき、複数の壁部60Cを形成するためのシール材60C’も付与する。シール材74’および60C’は例えば紫外線硬化型シール材である。シール材74’ および60C’は、熱硬化型シール材であってもよい。複数の壁部60Cを形成するためのシール材60C’は、メインシール部74を形成するためのシール材74’と同様に、例えばディスペンサを用いて、壁部60Cとなるパターンをシール材60C’で描画してもよいし、スクリーン印刷によって、所定のパターンにシール材60C’を付与してもよい。シール材74’および60’は、それぞれ、硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂)と粒状スペーサ(例えば、樹脂ビーズまたはシリカビーズ)とを含む。粒状スペーサは、セルギャップに応じて決められる。複数の壁部60Cと、外周シール部73とで、粒状スペーサの大きさが異なることがある。複数の壁部60Cは送受信領域に形成されるので、下地の厚さが、外周シール部73が設けられる領域と異なることがある。
この後、先の実施形態と同様にして、液晶パネルを製造する。
まず、走査アンテナ1000Bが有する液晶パネルの製造方法と同様の工程で、TFT基板101とスロット基板201とを貼り合わせる。真空状態のチャンバー内でTFT基板101とスロット基板201を貼り合わせ、続いて、チャンバー内を大気開放した後、シール材74’を硬化させることによってメインシール部74を得る。このとき同時にシール材60C’を硬化させることによって、壁部60Cを得る。チャンバー内を大気開放してチャンバー内の圧力が上昇すると、それによってシール材74’および60C’の厚さがわずかに減少する(ただし、当然ながらそれぞれシール材74’および60C’に含まれる粒状スペーサの粒径よりは小さくならない)。これにより、TFT基板101とスロット基板201と壁部60Cとで囲まれた領域が閉じられた空間となる。この状態でシール材74’および60C’に紫外線を照射することにより、壁部60Cと、壁部60Cで包囲された真空領域Roとが形成される。
次に、図11Aおよび図11Bを参照して説明した工程と液晶パネル100Aの製造工程と同様の工程で、液晶層(液晶領域Rl)を形成する。真空状態の液晶注入チャンバー内で、注入口74aに液晶材料を接触させた後、液晶注入チャンバー内に例えば窒素ガスを導入することによって、液晶注入チャンバー内を大気圧に戻す。これにより、液晶領域Rlとなる領域に液晶材料が充填される。ここでは、壁部60CはTFT基板101とスロット基板201とを互いに接着しているので、液晶チャンバー内の圧力が高くなっても、真空領域Roには液晶材料は充填されない。
次に、図12を参照して説明した工程と同様の工程で、注入口74aを封止するエンドシール部75を形成する。
このようにして、走査アンテナ1000Cが有する液晶パネルが製造される。
なお、走査アンテナ1000Cが有する液晶パネルの製造方法においては、滴下注入法を用いて液晶層を形成することもできる。走査アンテナ1000Cが有する液晶パネルにおいては、真空領域Roのそれぞれが壁部60Cのそれぞれに包囲されており、液晶領域Rlは壁部60Cの外側にある。従って、特許文献7に記載の走査アンテナが有する液晶パネルに比べて、未硬化のシール材と接触する液晶材料の割合は小さい。
以下で、本発明の実施形態による走査アンテナが有するTFT基板101およびスロット基板201の詳細な構造を説明する。ただし、TFT基板101およびスロット基板201の構造は、図示する例に限定されない。本発明の実施形態による走査アンテナは、基本的にはTFT基板101およびスロット基板201の構造によらず、上述したように温度変化に伴うアンテナ性能の低下を抑制することができる。
<TFT基板101の構造>
図19、図20Aおよび図20Bを参照しながら、走査アンテナ1000Aの送受信領域R1の構造を説明する。図19は、走査アンテナ1000Aの送受信領域R1のアンテナ単位Uの模式的な平面図であり、図20Aおよび図20Bは、走査アンテナ1000Aが有する液晶パネル100Aの送受信領域R1の模式的な断面図である。図20Aおよび図20Bは、それぞれ、図19中のA−A’線およびH−H’線に沿った断面を示している。
図19、図20Aおよび図20Bを参照しながら、走査アンテナ1000Aの送受信領域R1の構造を説明する。図19は、走査アンテナ1000Aの送受信領域R1のアンテナ単位Uの模式的な平面図であり、図20Aおよび図20Bは、走査アンテナ1000Aが有する液晶パネル100Aの送受信領域R1の模式的な断面図である。図20Aおよび図20Bは、それぞれ、図19中のA−A’線およびH−H’線に沿った断面を示している。
なお、断面図では、簡単のために、無機絶縁層(例えば、ゲート絶縁層4、第1絶縁層11、第2絶縁層17および第4絶縁層58)を平坦化層のように表している場合があるが、一般に、薄膜堆積法(例えばCVD法、スパッタ法、真空蒸着法)によって形成される層は、下地の段差を反映した表面を有する。
<TFT基板101の構造(アンテナ単位領域U)>
図19、図20Aおよび図20Bに示すように、TFT基板101は、誘電体基板1に支持された、TFT10のゲート電極3Gを含むゲートメタル層3と、誘電体基板1に支持された、TFT10のソース電極7Sを含むソースメタル層7と、誘電体基板1に支持された、TFT10の半導体層5と、ゲートメタル層3と半導体層5との間に形成されたゲート絶縁層4とを有する。ここでは、TFT基板101は、誘電体基板1に支持されたゲートメタル層3と、ゲートメタル層3上に形成された半導体層5と、ゲートメタル層3と半導体層5との間に形成されたゲート絶縁層4と、ゲート絶縁層4上に形成されたソースメタル層7と、ソースメタル層7上に形成された第1絶縁層11と、第1絶縁層11上に形成されたパッチメタル層15lと、パッチメタル層15l上に形成された第2絶縁層17とを有する。TFT基板101の非送受信領域R2の構造を後述するように、TFT基板101は、第1絶縁層11とパッチメタル層15lとの間に形成された下部導電層13をさらに有する。TFT基板101は、第2絶縁層17上に形成された上部導電層19をさらに有する。
図19、図20Aおよび図20Bに示すように、TFT基板101は、誘電体基板1に支持された、TFT10のゲート電極3Gを含むゲートメタル層3と、誘電体基板1に支持された、TFT10のソース電極7Sを含むソースメタル層7と、誘電体基板1に支持された、TFT10の半導体層5と、ゲートメタル層3と半導体層5との間に形成されたゲート絶縁層4とを有する。ここでは、TFT基板101は、誘電体基板1に支持されたゲートメタル層3と、ゲートメタル層3上に形成された半導体層5と、ゲートメタル層3と半導体層5との間に形成されたゲート絶縁層4と、ゲート絶縁層4上に形成されたソースメタル層7と、ソースメタル層7上に形成された第1絶縁層11と、第1絶縁層11上に形成されたパッチメタル層15lと、パッチメタル層15l上に形成された第2絶縁層17とを有する。TFT基板101の非送受信領域R2の構造を後述するように、TFT基板101は、第1絶縁層11とパッチメタル層15lとの間に形成された下部導電層13をさらに有する。TFT基板101は、第2絶縁層17上に形成された上部導電層19をさらに有する。
各アンテナ単位領域Uが有するTFT10は、ゲート電極3Gと、島状の半導体層5と、コンタクト部6Sおよび6Dと、ゲート電極3Gと半導体層5との間に配置されたゲート絶縁層4と、ソース電極7Sおよびドレイン電極7Dとを備える。この例では、TFT10は、ボトムゲート構造を有するチャネルエッチ型のTFTである。
ゲート電極3Gは、ゲートバスラインGLに電気的に接続されており、ゲートバスラインGLから走査信号電圧を供給される。ソース電極7Sは、ソースバスラインSLに電気的に接続されており、ソースバスラインSLからデータ信号電圧を供給される。この例では、ゲート電極3GおよびゲートバスラインGLは同じ導電膜(ゲート用導電膜)から形成されている。ここでは、ソース電極7S、ドレイン電極7DおよびソースバスラインSLは同じ導電膜(ソース用導電膜)から形成されている。ゲート用導電膜およびソース用導電膜は、例えば金属膜である。
半導体層5は、ゲート絶縁層4を介してゲート電極3Gと重なるように配置されている。図示する例では、半導体層5上に、ソースコンタクト部6Sおよびドレインコンタクト部6Dが形成されている。ソースコンタクト部6Sおよびドレインコンタクト部6Dは、半導体層5のうちチャネルが形成される領域(チャネル領域)の両側に配置されている。半導体層5は真性アモルファスシリコン(i−a−Si)層であり、ソースコンタクト部6Sおよびドレインコンタクト部6Dはn+型アモルファスシリコン(n+−a−Si)層であってもよい。
ソース電極7Sは、ソースコンタクト部6Sに接するように設けられ、ソースコンタクト部6Sを介して半導体層5に接続されている。ドレイン電極7Dは、ドレインコンタクト部6Dに接するように設けられ、ドレインコンタクト部6Dを介して半導体層5に接続されている。
ここでは、各アンテナ単位領域Uは、液晶容量と電気的に並列に接続された補助容量を有している。この例では、補助容量は、ドレイン電極7Dと電気的に接続された補助容量電極7Cと、ゲート絶縁層4と、ゲート絶縁層4を介して補助容量電極7Cと対向する補助容量対向電極3Cとによって構成される。補助容量対向電極3Cはゲートメタル層3に含まれており、補助容量電極7Cはソースメタル層7に含まれている。ゲートメタル層3は、補助容量対向電極3Cに接続されたCSバスライン(補助容量線)CLをさらに含む。CSバスラインCLは、例えば、ゲートバスラインGLと略平行に延びている。この例では、補助容量対向電極3Cは、CSバスラインCLと一体的に形成されている。補助容量対向電極3Cの幅は、CSバスラインCLの幅よりも大きくてもよい。また、この例では、補助容量電極7Cは、ドレイン電極7Dから延設されている。補助容量電極7Cの幅は、ドレイン電極7Dから延設された部分のうち補助容量電極7C以外の部分の幅よりも大きくてもよい。なお、補助容量とパッチ電極15との配置関係は図示する例に限定されない。
ゲートメタル層3は、TFT10のゲート電極3Gと、ゲートバスラインGLと、補助容量対向電極3Cと、CSバスラインCLとを含む。
ソースメタル層7は、TFT10のソース電極7Sおよびドレイン電極7Dと、ソースバスラインSLと、補助容量電極7Cとを含む。ソースメタル層7は、ドレイン電極7Dとパッチ電極15とを電気的に接続する配線7wをさらに含む。この例では、配線7wは、ドレイン電極7Dから延設された補助容量電極7Cから延設され、ドレイン電極7Dおよび補助容量電極7Cと一体的に形成されている。配線7wは、スロット57内をスロット57の長軸方向に延びており、スロット57内でパッチ電極15と重なっている。配線7wのうちパッチ電極15と重なっている部分は、第1絶縁層11に形成された開口部11aを介してパッチ電極15と接続されている。すなわち、パッチ電極15は、開口部11a内で配線7wと接している。なお、ドレイン電極7Dとパッチ電極15とを電気的に接続する方法は図示する例に限定されない。
第1絶縁層11は、TFT10を覆うように形成されている。第1絶縁層11は、配線7wに達する開口部11aを有する。
パッチメタル層15lは、パッチ電極15を含む。パッチ電極15は、第1絶縁層11上および開口部11a内に形成され、開口部11a内で配線7wと接続されている。
パッチメタル層15lは、金属層を含む。パッチメタル層15lは、金属層のみから形成されていてもよい。パッチメタル層15lは、例えば、低抵抗金属層と、低抵抗金属層の下に高融点金属含有層とを有する積層構造を有する。積層構造は、低抵抗金属層の上に高融点金属含有層をさらに有していてもよい。「高融点金属含有層」は、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)およびニオブ(Nb)からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む層である。「高融点金属含有層」は積層構造であってもよい。例えば、高融点金属含有層は、Ti、W、Mo、Ta、Nb、これらを含む合金、およびこれらの窒化物、ならびに前記金属または合金と前記窒化物との固溶体のいずれかで形成された層を指す。「低抵抗金属層」は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)および金(Au)からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む層である。「低抵抗金属層」は、積層構造であってもよい。パッチメタル層15lの低抵抗金属層を「主層」と呼ぶことがあり、低抵抗金属層の下および上の高融点金属含有層を、それぞれ「下層」および「上層」と呼ぶことがある。
パッチメタル層15lは、例えば主層としてCu層またはAl層を含む。すなわち、パッチ電極15は、例えば主層としてCu層またはAl層を含む。走査アンテナの性能はパッチ電極15の電気抵抗と相関があり、主層の厚さは、所望の抵抗が得られるように設定される。電気抵抗の観点から、Cu層の方がAl層よりもパッチ電極15の厚さを小さくできる可能性がある。パッチメタル層15lが有する金属層の厚さ(すなわち、パッチ電極15が有する金属層の厚さ)は、例えば、ソース電極7Sおよびドレイン電極7Dの厚さよりも大きくなるように設定される。パッチ電極15における金属層の厚さは、Al層で形成する場合、例えば0.3μm以上に設定される。
第2絶縁層17は、第1絶縁層11上およびパッチメタル層15l上に形成されている。第2絶縁層17は、第1絶縁層11およびパッチ電極15を覆うように形成されている。
図19および図20Bに示すように、走査アンテナ1000Aは、液晶層LCの厚さを制御するスペーサを有する。
図19および図20Bに示すように、走査アンテナ1000Aは、複数のアンテナ単位Uのそれぞれに形成された、液晶層LCの厚さを制御する柱状スペーサPSを有する。柱状スペーサは、紫外線硬化性樹脂などの感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィプロセスで形成されるスペーサであり、「フォトスペーサ」と呼ばれることもある。なお、スペーサとして、シール材に混合されたスペーサ(「粒状スペーサ」ということがある。)を併用してもよい。また、スペーサの個数や配置の具体例の図示は省略するが、任意であり得る。柱状スペーサPSは、各アンテナ単位Uに複数設けられていてもよい。スペーサは非送受信領域R2にも設けられていてもよい。
ここでは、アンテナ単位Uの柱状スペーサPSの厚さ(誘電体基板51の法線方向における厚さ)dpは、柱状スペーサPSと重なる凸部15hを構成する導電層の構成、液晶層LCの厚さ等によって適宜調整され得る。
図示する例では、TFT基板101は、誘電体基板1または51の法線方向から見たとき、複数のアンテナ単位領域Uのそれぞれにおいて、柱状スペーサPSと重なる凸部15hを有する。ここでは、凸部15hは、パッチメタル層15lに含まれる。凸部は、例えば、ゲートメタル層3、ソースメタル層7およびパッチメタル層15lの少なくとも1つの導電層を含んでもよい。凸部は、典型的には金属層を含む。
TFT基板101が凸部15hを有することで、以下の効果が得られる。液晶層LCの厚さが大きい場合、感光性樹脂を用いて高い柱状スペーサ(例えば、厚さが5μmを超える柱状スペーサ)を形成することが難しくなる。そのような場合に、TFT基板101が有する凸部15hの上に柱状スペーサPSを形成すれば、柱状スペーサPSの厚さを低減できる。
走査アンテナ1000Aにおいては、スロット基板201が柱状スペーサPSを有している。ただし、本発明の実施形態はこれに限られず、TFT基板が柱状スペーサPSを有していてもよい。このときは、感光性樹脂から形成された壁構造体60もTFT基板に設けられていることが好ましい。TFT基板に柱状スペーサPSを形成すると、TFT基板の凸部15hとのアライメントずれの問題が生じないという利点がある。
<スロット基板201の構造(アンテナ単位領域U)>
図19、図20Aおよび図20Bを参照しながら、走査アンテナ1000Aが備えるスロット基板201の構造を説明する。
図19、図20Aおよび図20Bを参照しながら、走査アンテナ1000Aが備えるスロット基板201の構造を説明する。
スロット基板201は、表面および裏面を有する誘電体基板51と、誘電体基板51の表面上に形成されたスロット電極55と、スロット電極55を覆う第4絶縁層58とを備える。反射導電板65が誘電体基板51の裏面に誘電体層(空気層)54を介して対向するように配置されている。スロット電極55および反射導電板65は導波路301の壁として機能する。スロット基板201は、誘電体基板51の表面とスロット電極55との間に形成された第3絶縁層(不図示)をさらに有してもよい。
送受信領域R1において、スロット電極55には複数のスロット57が形成されている。スロット57はスロット電極55を貫通する開口である。この例では、各アンテナ単位領域Uに1個のスロット57が配置されている。
第4絶縁層58は、スロット電極55上およびスロット57内に形成されている。第4絶縁層58としては、特に限定しないが、例えば酸化珪素(SiOx)膜、窒化珪素(SiNx)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy(x>y))膜、窒化酸化珪素(SiNxOy(x>y))膜等を適宜用いることができる。第4絶縁層58でスロット電極55を覆うことにより、スロット電極55と液晶層LCとが直接接触しないので、信頼性を高めることができる。スロット電極55がCu層で形成されていると、Cuが液晶層LCに溶出することがある。また、スロット電極55を薄膜堆積技術を用いてAl層で形成すると、Al層にボイドが含まれることがある。第4絶縁層58は、Al層のボイドに液晶材料が侵入するのを防止することができる。なお、アルミ箔を接着材により誘電体基板51に貼り付けることによってAl膜を形成し、これをパターニングすることによってスロット電極55を作製すれば、ボイドの問題を回避できる。
スロット電極55は、Cu層、Al層などの主層を含む。スロット電極55は、主層55Mと、それを挟むように配置された上層55Uおよび/または下層55Lとを含む積層構造を有していてもよい。主層の厚さは、材料に応じて表皮効果を考慮して設定され、例えば2μm以上30μm以下であってもよい。主層の厚さは、典型的には上層および下層の厚さよりも大きい。
例えば、主層はCu層、上層および下層はTi層である。主層と誘電体基板51(誘電体基板51の表面に絶縁層が形成されている場合はその絶縁層)との間に下層を配置することにより、スロット電極55と誘電体基板51(誘電体基板51の表面に絶縁層が形成されている場合はその絶縁層)との密着性を向上できる。また、上層を設けることにより、主層(例えばCu層)の腐食を抑制できる。
反射導電板65は、導波路301の壁を構成するので、表皮深さの3倍以上、好ましくは5倍以上の厚さを有することが好ましい。反射導電板65は、例えば、削り出しによって作製された厚さが数mmのアルミニウム板、銅板などを用いることができる。
なお、本発明の実施形態は図示する例に限られない。例えば、TFTの構造は、図示する例に限られない。ゲートメタル層3とソースメタル層7との配置関係は逆であってもよい。また、パッチ電極は、ゲートメタル層3またはソースメタル層7に含まれていてもよい。
<TFT基板101の構造(非送受信領域R2)>
図21A、図21B、図22A、図22B、図22C、図22D、図23A、図23Bおよび図23Cを参照して、走査アンテナ1000Aが備えるTFT基板101の非送受信領域R2の構造を説明する。
図21A、図21B、図22A、図22B、図22C、図22D、図23A、図23Bおよび図23Cを参照して、走査アンテナ1000Aが備えるTFT基板101の非送受信領域R2の構造を説明する。
図21Aおよび図21Bは、走査アンテナ1000Aが備えるTFT基板101の非送受信領域R2の模式的な平面図である。図21Aは、非送受信領域R2に設けられたソース−ゲート接続部SGおよびソース端子部STを示しており、図21Bは、非送受信領域R2に設けられたトランスファー端子部PT、ゲート端子部GTおよびCS端子部CTを示している。
シール領域Rsは、外周シール部73が設けられる領域である。トランスファー端子部PTは、シール領域Rsに位置する第1トランスファー端子部PT1と、シール領域Rsの外側(液晶層の反対側)に設けられた第2トランスファー端子部PT2とを含む。図示する例では、第1トランスファー端子部PT1は、シール領域Rsに沿って、送受信領域R1を包囲するように延びている。
図22A、図22B、図22C、図22D、図23A、図23Bおよび図23Cは、TFT基板101の非送受信領域R2の模式的な断面図である。図22Aは、図21B中のB−B’線に沿った第1トランスファー端子部PT1の断面を示しており、図22Bは、図21A中のC−C’線に沿ったソース−ゲート接続部SGの断面を示しており、図22Cは、図21A中のD−D’線に沿ったソース端子部STの断面を示しており、図22Dは、図21B中のE−E’線に沿った第2トランスファー端子部PT2の断面を示しており、図23Aは、図21B中のF−F’線に沿った第1トランスファー端子部PT1の断面を示しており、図23Bは、図21A中のG−G’線に沿ったソース−ゲート接続部SGの断面を示しており、図23Cは、図21A中のH−H’線に沿ったソース−ゲート接続部SGおよびソース端子部STの断面を示している。
一般に、ゲート端子部GTおよびソース端子部STはそれぞれゲートバスライン毎およびソースバスライン毎に設けられる。ソース−ゲート接続部SGは、一般に各ソースバスラインに対応して設けられる。図21Bには、ゲート端子部GTと並べて、CS端子部CTおよび第2トランスファー端子部PT2を図示しているが、CS端子部CTおよび第2トランスファー端子部PT2の個数および配置は、それぞれゲート端子部GTとは独立に設定される。通常、CS端子部CTおよび第2トランスファー端子部PT2の個数は、ゲート端子部GTの個数より少なく、CS電極およびスロット電極の電圧の均一性を考慮して適宜設定される。また、第2トランスファー端子部PT2は、第1トランスファー端子部PT1が形成されている場合には省略され得る。
各CS端子部CTは、例えば、各CSバスラインに対応して設けられる。各CS端子部CTは、複数のCSバスラインに対応して設けられていてもよい。例えば、各CSバスラインにスロット電圧と同じ電圧が供給される場合、TFT基板101は、CS端子部CTを少なくとも1つ有すればよい。ただし、配線抵抗を下げるためには、TFT基板101は複数のCS端子部CTを有することが好ましい。なお、スロット電圧は、例えばグランド電位である。また、CSバスラインにスロット電圧と同じ電圧が供給される場合、CS端子部CTまたは第2トランスファー端子部PT2のいずれかは省略され得る。
・ソース−ゲート接続部SG
TFT基板101は、図21Aに示すように、非送受信領域R2にソース−ゲート接続部SGを有する。ソース−ゲート接続部SGは、一般に、ソースバスラインSL毎に設けられる。ソース−ゲート接続部SGは、各ソースバスラインSLをゲートメタル層3内に形成された接続配線(「ソース下部接続配線」ということがある。)に電気的に接続する。
TFT基板101は、図21Aに示すように、非送受信領域R2にソース−ゲート接続部SGを有する。ソース−ゲート接続部SGは、一般に、ソースバスラインSL毎に設けられる。ソース−ゲート接続部SGは、各ソースバスラインSLをゲートメタル層3内に形成された接続配線(「ソース下部接続配線」ということがある。)に電気的に接続する。
図21A、図22B、図23Bおよび図23Cに示すように、ソース−ゲート接続部SGは、ソース下部接続配線3sgと、ゲート絶縁層4に形成された開口部4sg1と、ソースバスライン接続部7sgと、第1絶縁層11に形成された開口部11sg1および開口部11sg2と、ソースバスライン上部接続部13sgとを有する。
ソース下部接続配線3sgは、ゲートメタル層3に含まれる。ソース下部接続配線3sgは、ゲートバスラインGLと電気的に分離されている。
ゲート絶縁層4に形成された開口部4sg1は、ソース下部接続配線3sgに達している。
ソースバスライン接続部7sgは、ソースメタル層7に含まれ、ソースバスラインSLに電気的に接続されている。この例では、ソースバスライン接続部7sgは、ソースバスラインSLから延設され、ソースバスラインSLと一体的に形成されている。ソースバスライン接続部7sgの幅は、ソースバスラインSLの幅よりも大きくてもよい。
第1絶縁層11に形成された開口部11sg1は、誘電体基板1の法線方向から見たとき、ゲート絶縁層4に形成された開口部4sg1に重なっている。ゲート絶縁層4に形成された開口部4sg1および第1絶縁層11に形成された開口部11sg1は、コンタクトホールCH_sg1を構成する。
第1絶縁層11に形成された開口部11sg2は、ソースバスライン接続部7sgに達している。開口部11sg2をコンタクトホールCH_sg2ということがある。
ソースバスライン上部接続部13sg(単に「上部接続部13sg」ということがある。)は、下部導電層13に含まれる。上部接続部13sgは、第1絶縁層11上、コンタクトホールCH_sg1内、およびコンタクトホールCH_sg2内に形成され、コンタクトホールCH_sg1内でソース下部接続配線3sgと接続されており、コンタクトホールCH_sg2内でソースバスライン接続部7sgと接続されている。例えばここでは、上部接続部13sgは、ゲート絶縁層4に形成された開口部4sg1内でソース下部接続配線3sgと接触しており、第1絶縁層11に形成された開口部11sg2内でソースバスライン接続部7sgと接触している。
ソース下部接続配線3sgの内、開口部4sg1によって露出されている部分は、上部接続部13sgで覆われていることが好ましい。ソースバスライン接続部7sgの内、開口部11sg2によって露出されている部分は、上部接続部13sgで覆われていることが好ましい。
下部導電層13は、例えば透明導電層(例えばITO層)を含む。
この例では、ソース−ゲート接続部SGは、パッチメタル層15lに含まれる導電部および上部導電層19に含まれる導電部を有しない。
TFT基板101は、ソース−ゲート接続部SGに上部接続部13sgを有することによって、優れた動作安定性を有する。ソース−ゲート接続部SGが上部接続部13sgを有することによって、パッチメタル層15lを形成するためのパッチ用導電膜をエッチングする工程における、ゲートメタル層3および/またはソースメタル層7へのダメージが軽減される。この効果について説明する。
上述したように、TFT基板101において、ソース−ゲート接続部SGはパッチメタル層15lに含まれる導電部を有しない。つまり、パッチ用導電膜のパターニング工程において、ソース−ゲート接続部形成領域のパッチ用導電膜は除去される。ソース−ゲート接続部SGに上部接続部13sgを有しない場合、コンタクトホールCH_sg1内でゲートメタル層3(ソース下部接続配線3sg)が露出されるので、除去されるべきパッチ用導電膜は、コンタクトホールCH_sg1内に堆積され、ソース下部接続配線3sgに接して形成される。同様に、ソース−ゲート接続部SGに上部接続部13sgを有しない場合、コンタクトホールCH_sg2内でソースメタル層7(ソースバスライン接続部7sg)が露出されるので、除去されるべきパッチ用導電膜は、コンタクトホールCH_sg2内に堆積され、ソースバスライン接続部7sgに接して形成される。このような場合、ゲートメタル層3および/またはソースメタル層7がエッチングダメージを受ける可能性がある。パッチ用導電膜をパターニングする工程では、例えばリン酸、硝酸および酢酸を含むエッチング液が用いられる。ソース下部接続配線3sgおよび/またはソースバスライン接続部7sgがエッチングダメージを受けると、ソース−ゲート接続部SGにおいてコンタクト不良が生じる可能性がある。
TFT基板101のソース−ゲート接続部SGは、コンタクトホールCH_sg1内およびコンタクトホールCH_sg2内に形成された上部接続部13sgを有する。従って、パッチ用導電膜のパターニング工程における、エッチングによるソース下部接続配線3sgおよび/またはソースバスライン接続部7sgへのダメージが軽減される。従って、TFT基板101は動作安定性に優れている。
ゲートメタル層3および/またはソースメタル層7へのエッチングダメージを効果的に軽減する観点からは、ソース下部接続配線3sgの内、コンタクトホールCH_sg1によって露出されている部分は、上部接続部13sgで覆われており、ソースバスライン接続部7sgの内、開口部11sg2によって露出されている部分は、上部接続部13sgで覆われていることが好ましい。
走査アンテナに用いられるTFT基板では、比較的厚い導電膜(パッチ用導電膜)を用いてパッチ電極が形成されることがある。この場合、パッチ用導電膜のエッチング時間およびオーバーエッチング時間が、他の層のエッチング工程よりも長くなり得る。このとき、コンタクトホールCH_sg1内およびコンタクトホールCH_sg2内で、ゲートメタル層3(ソース下部接続配線3sg)およびソースメタル層7(ソースバスライン接続部7sg)が露出されていると、これらのメタル層が受けるエッチングダメージが大きくなる。このように、比較的厚いパッチメタル層を有するTFT基板においては、ソース−ゲート接続部SGが上部接続部13sgを有することによって、ゲートメタル層3および/またはソースメタル層7へのエッチングダメージが軽減される効果が特に大きい。
図示する例では、コンタクトホールCH_sg2は、コンタクトホールCH_sg1から離間した位置に形成されている。本実施形態はこれに限られず、コンタクトホールCH_sg1およびコンタクトホールCH_sg2は、連続していてもよい(すなわち、単一のコンタクトホールとして形成されていてもよい)。コンタクトホールCH_sg1およびコンタクトホールCH_sg2は、単一のコンタクトホールとして同じ工程で形成されてもよい。具体的には、ソース下部接続配線3sgおよびソースバスライン接続部7sgに達する単一のコンタクトホールをゲート絶縁層4および第1絶縁層11に形成し、このコンタクトホール内および第1絶縁層11上に上部接続部13sgを形成してもよい。このとき、上部接続部13sgは、ソース下部接続配線3sgおよびソースバスライン接続部7sgの内、コンタクトホールによって露出されている部分を覆うように形成されることが好ましい。
また、後述するように、ソース−ゲート接続部SGを設けることによって、ソース端子部STの下部接続部をゲートメタル層3で形成することができる。ゲートメタル層3で形成された下部接続部を有するソース端子部STは、信頼性に優れる。
・ソース端子部ST
TFT基板101は、図21Aに示すように、非送受信領域R2にソース端子部STを有する。ソース端子部STは、一般に、各ソースバスラインSLに対応して設けられる。ここでは、各ソースバスラインSLに対応して、ソース端子部STおよびソース−ゲート接続部SGが設けられている。
TFT基板101は、図21Aに示すように、非送受信領域R2にソース端子部STを有する。ソース端子部STは、一般に、各ソースバスラインSLに対応して設けられる。ここでは、各ソースバスラインSLに対応して、ソース端子部STおよびソース−ゲート接続部SGが設けられている。
ソース端子部STは、図21A、図22Cおよび図23Cに示すように、ソース−ゲート接続部SGに形成されたソース下部接続配線3sgに接続されたソース端子用下部接続部3s(単に「下部接続部3s」ということもある。)と、ゲート絶縁層4に形成された開口部4sと、第1絶縁層11に形成された開口部11sと、ソース端子用上部接続部13s(単に「上部接続部13s」ということもある。)と、第2絶縁層17に形成された開口部17sとを有している。
下部接続部3sは、ゲートメタル層3に含まれる。下部接続部3sは、ソース−ゲート接続部SGに形成されているソース下部接続配線3sgと電気的に接続されている。この例では、下部接続部3sは、ソース下部接続配線3sgから延設され、ソース下部接続配線3sgと一体的に形成されている。
ゲート絶縁層4に形成された開口部4sは、下部接続部3sに達している。
第1絶縁層11に形成された開口部11sは、誘電体基板1の法線方向から見たとき、ゲート絶縁層4に形成された開口部4sに重なっている。ゲート絶縁層4に形成された開口部4s、および第1絶縁層11に形成された開口部11sは、コンタクトホールCH_sを構成する。
上部接続部13sは、下部導電層13に含まれる。上部接続部13sは、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH_s内に形成され、コンタクトホールCH_s内で、下部接続部3sと接続されている。ここでは、上部接続部13sは、ゲート絶縁層4に形成された開口部4s内で、下部接続部3sと接触している。
第2絶縁層17に形成された開口部17sは、上部接続部13sに達している。
誘電体基板1の法線方向から見たとき、上部接続部13sの全ては、下部接続部3sと重なっていてもよい。
この例では、ソース端子部STは、ソースメタル層7に含まれる導電部、パッチメタル層15lに含まれる導電部、および上部導電層19に含まれる導電部を含まない。
ソース端子部STは、ゲートメタル層3に含まれる下部接続部3sを有するので、優れた信頼性を有する。
端子部、特にシール領域Rsよりも外側(液晶層と反対側)に設けられた端子部には、大気中の水分(不純物を含み得る。)によって腐食が生じることがある。大気中の水分は、下部接続部に達するコンタクトホールから侵入し、下部接続部に達し、下部接続部に腐食が起こり得る。腐食の発生を抑制する観点からは、下部接続部に達するコンタクトホールが深いことが好ましい。すなわち、コンタクトホールを構成する開口部が形成されている絶縁層の厚さが大きいことが好ましい。
また、誘電体基板としてガラス基板を有するTFT基板を作製する工程において、ガラス基板の破片や切り屑(カレット)によって、端子部の下部接続部にキズや断線が生じることがある。例えば、1つのマザー基板から複数のTFT基板が作製される。カレットは、例えば、マザー基板を切断する時、マザー基板にスクライブラインを形成する時、等に生じる。端子部の下部接続部のキズや断線を防ぐ観点からは、下部接続部に達するコンタクトホールが深いことが好ましい。すなわち、コンタクトホールを構成する開口部が形成されている絶縁層の厚さが大きいことが好ましい。
TFT基板101のソース端子部STにおいて、下部接続部3sはゲートメタル層3に含まれているので、下部接続部3sに達するコンタクトホールCH_sは、ゲート絶縁層4に形成された開口部4sおよび第1絶縁層11に形成された開口部11sを有する。コンタクトホールCH_sの深さは、ゲート絶縁層4の厚さおよび第1絶縁層11の厚さの和である。これに対して、例えば下部接続部がソースメタル層7に含まれている場合、下部接続部に達するコンタクトホールは、第1絶縁層11に形成された開口部のみを有し、その深さは第1絶縁層11の厚さであり、コンタクトホールCH_sの深さよりも小さい。ここで、コンタクトホールの深さおよび絶縁層の厚さは、それぞれ、誘電体基板1の法線方向における深さおよび厚さをいう。他のコンタクトホールおよび絶縁層についても特に断らない限り同様である。このように、TFT基板101のソース端子部STは、下部接続部3sがゲートメタル層3に含まれているので、例えば下部接続部がソースメタル層7に含まれている場合に比べて、優れた信頼性を有する。
ゲート絶縁層4に形成された開口部4sは、下部接続部3sの一部のみを露出するように形成されている。誘電体基板1の法線方向から見たとき、ゲート絶縁層4に形成された開口部4sは、下部接続部3sの内側にある。従って、開口部4s内の全ての領域は、誘電体基板1上に下部接続部3sおよび上部接続部13sを有する積層構造を有する。ソース端子部STにおいて、下部接続部3s以外の領域は、ゲート絶縁層4および第1絶縁層11を有する積層構造を有する。これにより、TFT基板101のソース端子部STは優れた信頼性を有する。優れた信頼性を得る観点からは、ゲート絶縁層4の厚さおよび第1絶縁層11の厚さの和が大きいことが好ましい。
下部接続部3sの内、開口部4sによって露出されている部分は、上部接続部13sで覆われている。
端子部の上部接続部の厚さが大きい(すなわち上部導電層19の厚さが大きい)と、下部接続部に腐食が生じることが抑制される。下部接続部に腐食が生じることを効果的に抑制するために、上述したように、上部導電層19は、透明導電層(例えばITO層)を含む第1上部導電層と、第1上部導電層の下に形成され、Ti層、MoNbNi層、MoNb層、MoW層、W層およびTa層からなる群から選択される1つの層または2以上の層の積層から形成されている第2上部導電層とを含む積層構造を有してもよい。下部接続部に腐食が生じることをより効果的に抑制するために、第2上部導電層の厚さを例えば100nm超としてもよい。
・ゲート端子部GT
TFT基板101は、図21Bに示すように、非送受信領域R2にゲート端子部GTを有する。ゲート端子部GTは、図21Bに示すように、ソース端子部STと同様の構成を有し得る。ゲート端子部GTは、一般に、ゲートバスラインGL毎に設けられる。
TFT基板101は、図21Bに示すように、非送受信領域R2にゲート端子部GTを有する。ゲート端子部GTは、図21Bに示すように、ソース端子部STと同様の構成を有し得る。ゲート端子部GTは、一般に、ゲートバスラインGL毎に設けられる。
図21Bに示すように、この例では、ゲート端子部GTは、ゲート端子用下部接続部3g(単に「下部接続部3g」ということもある。)と、ゲート絶縁層4に形成された開口部4gと、第1絶縁層11に形成された開口部11gと、ゲート端子用上部接続部13g(単に「上部接続部13g」ということもある。)と、第2絶縁層17に形成された開口部17gとを有している。
下部接続部3gは、ゲートメタル層3に含まれ、ゲートバスラインGLと電気的に接続されている。この例では、下部接続部3gは、ゲートバスラインGLから延設され、ゲートバスラインGLと一体的に形成されている。
ゲート絶縁層4に形成された開口部4gは、下部接続部3gに達している。
第1絶縁層11に形成された開口部11gは、誘電体基板1の法線方向から見たとき、ゲート絶縁層4に形成された開口部4gに重なっている。ゲート絶縁層4に形成された開口部4g、および第1絶縁層11に形成された開口部11gは、コンタクトホールCH_gを構成する。
上部接続部13gは、下部導電層13に含まれる。上部接続部13gは、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH_g内に形成され、コンタクトホールCH_g内で、下部接続部3gと接続されている。ここでは、上部接続部13gは、ゲート絶縁層4に形成された開口部4g内で、下部接続部3gと接触している。
第2絶縁層17に形成された開口部17gは、上部接続部13gに達している。
誘電体基板1の法線方向から見たとき、上部接続部13gの全ては、下部接続部3gと重なっていてもよい。
この例では、ゲート端子部GTは、ソースメタル層7に含まれる導電部、パッチメタル層15lに含まれる導電部、および上部導電層19に含まれる導電部を有しない。
ゲート端子部GTは、ゲートメタル層3に含まれる下部接続部3gを有するので、ソース端子部STと同様に、優れた信頼性を有する。
・CS端子部CT
TFT基板101は、図21Bに示すように、非送受信領域R2にCS端子部CTを有する。CS端子部CTは、ここでは、図21Bに示すように、ソース端子部STおよびゲート端子部GTと同様の構成を有する。CS端子部CTは、例えば各CSバスラインCLに対応して設けられていてもよい。
TFT基板101は、図21Bに示すように、非送受信領域R2にCS端子部CTを有する。CS端子部CTは、ここでは、図21Bに示すように、ソース端子部STおよびゲート端子部GTと同様の構成を有する。CS端子部CTは、例えば各CSバスラインCLに対応して設けられていてもよい。
図21Bに示すように、CS端子部CTは、CS端子用下部接続部3c(単に「下部接続部3c」ということもある。)と、ゲート絶縁層4に形成された開口部4cと、第1絶縁層11に形成された開口部11cと、CS端子用上部接続部13c(単に「上部接続部13c」ということもある。)と、第2絶縁層17に形成された開口部17cとを有している。
下部接続部3cは、ゲートメタル層3に含まれる。下部接続部3cは、CSバスラインCLと電気的に接続されている。この例では、下部接続部3cは、CSバスラインCLから延設され、CSバスラインCLと一体的に形成されている。
ゲート絶縁層4に形成された開口部4cは、下部接続部3cに達している。
第1絶縁層11に形成された開口部11cは、誘電体基板1の法線方向から見たとき、ゲート絶縁層4に形成された開口部4cに重なっている。ゲート絶縁層4に形成された開口部4c、および第1絶縁層11に形成された開口部11cは、コンタクトホールCH_cを構成する。
上部接続部13cは、下部導電層13に含まれる。上部接続部13cは、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH_c内に形成され、コンタクトホールCH_c内で、下部接続部3cと接続されている。ここでは、上部接続部13cは、ゲート絶縁層4に形成された開口部4c内で、下部接続部3cと接触している。
第2絶縁層17に形成された開口部17cは、上部接続部13cに達している。
誘電体基板1の法線方向から見たとき、上部接続部13cの全ては、下部接続部3cと重なっていてもよい。
この例では、CS端子部CTは、ソースメタル層7に含まれる導電部、パッチメタル層15lに含まれる導電部、および上部導電層19に含まれる導電部を有しない。
CS端子部CTは、ゲートメタル層3に含まれる下部接続部3cを有するので、ソース端子部STと同様に、優れた信頼性を有する。
・トランスファー端子部PT
TFT基板101は、図21Bに示すように、非送受信領域R2に第1トランスファー端子部PT1を有する。第1トランスファー端子部PT1は、ここでは、シール領域Rs内に設けられている(すなわち、第1トランスファー端子部PT1は、液晶層を包囲するシール部に設けられている)。
TFT基板101は、図21Bに示すように、非送受信領域R2に第1トランスファー端子部PT1を有する。第1トランスファー端子部PT1は、ここでは、シール領域Rs内に設けられている(すなわち、第1トランスファー端子部PT1は、液晶層を包囲するシール部に設けられている)。
第1トランスファー端子部PT1は、図21Bおよび図22Aに示すように、第1トランスファー端子用下部接続部3p1(単に「下部接続部3p1」ということもある。)と、ゲート絶縁層4に形成された開口部4p1と、第1絶縁層11に形成された開口部11p1と、第1トランスファー端子用導電部15p1(単に「導電部15p1」ということもある。)と、第2絶縁層17に形成された開口部17p1と、第1トランスファー端子用上部接続部19p1(単に「上部接続部19p1」ということもある。)とを有している。
下部接続部3p1は、ゲートメタル層3に含まれる。すなわち、下部接続部3p1は、ゲートバスラインGLと同じ導電膜から形成されている。下部接続部3p1は、ゲートバスラインGLと電気的に分離されている。例えば、CSバスラインCLにスロット電圧と同じ電圧が供給されている場合、下部接続部3p1は、例えばCSバスラインCLと電気的に接続されている。図示するように、下部接続部3p1は、CSバスラインから延設されていてもよい。ただしこの例に限られず、下部接続部3p1は、CSバスラインと電気的に分離されていてもよい。
ゲート絶縁層4に形成された開口部4p1は、下部接続部3p1に達している。
第1絶縁層11に形成された開口部11p1は、誘電体基板1の法線方向から見たとき、ゲート絶縁層4に形成された開口部4p1に重なっている。ゲート絶縁層4に形成された開口部4p1、および第1絶縁層11に形成された開口部11p1は、コンタクトホールCH_p1を構成する。
導電部15p1は、パッチメタル層15lに含まれる。導電部15p1は、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH_p1内に形成され、コンタクトホールCH_p1内で下部接続部3p1と接続されている。ここでは、導電部15p1は、開口部4p1内で下部接続部3p1と接触している。
第2絶縁層17に形成された開口部17p1は、導電部15p1に達している。
上部接続部19p1は、上部導電層19に含まれる。上部接続部19p1は、第2絶縁層17上および開口部17p1内に形成され、開口部17p1内で導電部15p1と接続されている。ここでは、上部接続部19p1は、開口部17p1内で導電部15p1と接触している。上部接続部19p1は、例えば導電性粒子を含むシール材によって、スロット基板側のトランスファー端子用上部接続部と接続される(図9参照)。
この例では、第1トランスファー端子部PT1は、ソースメタル層7に含まれる導電部および下部導電層13に含まれる導電部を有しない。
上部導電層19は、例えば透明導電層(例えばITO層)を含む。上部導電層19は、例えば透明導電層のみから形成されていてもよい。あるいは、上部導電層19は、透明導電層を含む第1上部導電層と、第1上部導電層の下に形成された第2上部導電層とを含んでいてもよい。第2上部導電層は、例えば、Ti層、MoNbNi層、MoNb層、MoW層、W層およびTa層からなる群から選択される1つの層または2以上の層の積層から形成されている。
第1トランスファー端子部PT1は、下部接続部3p1と上部接続部19p1との間に導電部15p1を有する。これにより、第1トランスファー端子部PT1は、下部接続部3p1と上部接続部19p1との間の電気抵抗が低いという利点を有する。
誘電体基板1の法線方向から見たとき、上部接続部19p1の全ては、導電部15p1と重なっていてもよい。
この例では、下部接続部3p1は、互いに隣接する2つのゲートバスラインGLの間に配置されている。ゲートバスラインGLを挟んで配置された2つの下部接続部3p1は、導電接続部(不図示)を介して電気的に接続されていてもよい。2つの下部接続部3p1を電気的に接続する導電接続部は、例えばソースメタル層7に含まれていてもよい。
ここでは、複数のコンタクトホールCH_p1が設けられることによって、下部接続部3p1が、導電部15p1を介して、上部接続部19p1と接続されているが、コンタクトホールCH_p1は、1つの下部接続部3p1に対して1つ以上設けられていればよい。1つの下部接続部3p1に対して1つのコンタクトホールが設けられていてもよい。コンタクトホールの個数や形状は図示する例に限られない。
ここでは、上部接続部19p1は、1つの開口部17p1によって導電部15p1と接続されているが、開口部17p1は、1つの上部接続部19p1に対して1つ以上設けられていればよい。1つの上部接続部19p1に対して複数の開口部が設けられていてもよい。開口部の個数や形状は図示する例に限られない。
第2トランスファー端子部PT2は、シール領域Rsの外側(送受信領域R1と反対側)に設けられている。第2トランスファー端子部PT2は、図21Bおよび図22Dに示すように、第2トランスファー端子用下部接続部15p2(単に「下部接続部15p2」ということもある。)と、第2絶縁層17に形成された開口部17p2と、第2トランスファー端子用上部接続部19p2(単に「上部接続部19p2」ということもある。)とを有している。
第2トランスファー端子部PT2は、第1トランスファー端子部PT1の内、下部接続部3p1、およびコンタクトホールCH_p1を有しない部分(図23A参照)と同様の断面構造を有している。
下部接続部15p2は、パッチメタル層15lに含まれる。下部接続部15p2は、ここでは、第1トランスファー端子用導電部15p1から延設され、第1トランスファー端子用導電部15p1と一体的に形成されている。
第2絶縁層17に形成された開口部(コンタクトホール)17p2は、下部接続部15p2に達している。
上部接続部19p2は、上部導電層19に含まれる。上部接続部19p2は、第2絶縁層17上および開口部17p2内に形成され、開口部17p2内で下部接続部15p2と接続されている。ここでは、上部接続部19p2は、開口部17p2内で下部接続部15p2と接触している。
この例では、第2トランスファー端子部PT2は、ゲートメタル層3に含まれる導電部、ソースメタル層7に含まれる導電部および下部導電層13に含まれる導電部を有しない。
第2トランスファー端子部PT2においても、上部接続部19p2は、例えば導電性粒子を含むシール材によって、スロット基板側のトランスファー端子用接続部と接続されていてもよい。
<TFT基板101の製造方法>
図24〜図29を参照しながら、TFT基板101の製造方法を説明する。
図24〜図29を参照しながら、TFT基板101の製造方法を説明する。
図24〜図29に、TFT基板101の製造方法を説明するための模式的な断面図を示す。図24、図26および図28には、図20Aおよび図20Bに対応する断面(TFT基板101のA−A’断面およびH−H’断面)を示しており、図25、図27および図29には、図22A、図22B、図22Cおよび図22Dに対応する断面(TFT基板101のB−B’断面、C−C’断面、D−D’断面、およびE−E’断面)を示している。
まず、図24(a)および図25(a)に示すように、誘電体基板1上に、スパッタ法などによって、ゲート用導電膜3’を形成する。ゲート用導電膜3’の材料は特に限定されず、例えば、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属またはその合金、若しくはその金属窒化物を含む膜を適宜用いることができる。ここでは、ゲート用導電膜3’として、Al膜(厚さ:例えば150nm)およびMoN膜(厚さ:例えば100nm)をこの順で積層した積層膜(MoN/Al)を形成する。
次いで、ゲート用導電膜3’をパターニングすることにより、図24(b)および図25(b)に示すように、ゲートメタル層3を形成する。具体的には、複数のアンテナ単位形成領域のそれぞれにゲート電極3G、ゲートバスラインGL、補助容量対向電極3C、およびCSバスラインCLを形成し、ソース−ゲート接続部形成領域にソース下部接続配線3sgを形成し、各端子部形成領域に下部接続部3s、3g、3cおよび3p1を形成する。ここでは、ゲート用導電膜3’のパターニングは、ウェットエッチングによって行う。
この後、図24(c)および図25(c)に示すように、ゲートメタル層3を覆うようにゲート絶縁膜4’、真性アモルファスシリコン膜5’およびn+型アモルファスシリコン膜6’をこの順で形成する。ゲート絶縁膜4’は、CVD法等によって形成され得る。ゲート絶縁膜4’としては、酸化珪素(SiOx)膜、窒化珪素(SixNy)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy(x>y))膜、窒化酸化珪素(SiNxOy(x>y))膜等を適宜用いることができる。ここでは、ゲート絶縁膜4’として、例えば厚さ350nmの窒化珪素(SixNy)膜を形成する。また、例えば厚さ120nmの真性アモルファスシリコン膜5’および例えば厚さ30nmのn+型アモルファスシリコン膜6’を形成する。
次いで、真性アモルファスシリコン膜5’およびn+型アモルファスシリコン膜6’をパターニングすることにより、図24(d)および図25(d)に示すように、島状の半導体層5およびコンタクト部6Cを得る。なお、半導体層5に用いる半導体膜はアモルファスシリコン膜に限定されない。例えば、半導体層5として酸化物半導体層(例えば厚さ70nmのIn−Ga−Zn−O系半導体層)を形成してもよい。この場合には、半導体層5と、ソース電極およびドレイン電極との間にコンタクト部を設けなくてもよい。
次いで、図24(e)および図25(e)に示すように、ゲート絶縁膜4’上およびコンタクト部6C上に、スパッタ法などによってソース用導電膜7’を形成する。ソース用導電膜7’の材料は特に限定されず、例えば、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属またはその合金、若しくはその金属窒化物を含む膜を適宜用いることができる。ここでは、ソース用導電膜7’として、MoN(厚さ:例えば50nm)、Al(厚さ:例えば150nm)およびMoN(厚さ:例えば100nm)をこの順で積層した積層膜(MoN/Al/MoN)を形成する。
次いで、ソース用導電膜7’をパターニングすることによって、図24(f)および図25(f)に示すように、ソースメタル層7を形成する。具体的には、アンテナ単位形成領域にソース電極7S、ドレイン電極7D、ソースバスラインSL、補助容量電極7C、および配線7wを形成し、ソース−ゲート接続部形成領域にソースバスライン接続部7sgを形成する。このとき、コンタクト部6Cもエッチングされ、互いに分離されたソースコンタクト部6Sとドレインコンタクト部6Dとが形成される。ここでは、ソース用導電膜7’のパターニングは、ウェットエッチングによって行う。例えばリン酸、硝酸および酢酸を含む水溶液を用いて、ウェットエッチングでMoN膜およびAl膜を同時にパターニングする。その後、例えばドライエッチングにより、コンタクト部6Cのうち、半導体層5のチャネル領域となる領域上に位置する部分を除去してギャップ部を形成し、ソースコンタクト部6Sとドレインコンタクト部6Dとに分離する。このとき、ギャップ部において、半導体層5の表面近傍もエッチングされる(オーバーエッチング)。このようにして、TFT10が得られる。
なお、例えばソース用導電膜としてTi膜およびAl膜をこの順で積層した積層膜を用いる場合には、例えばリン酸酢酸硝酸水溶液を用いて、ウェットエッチングでAl膜のパターニングを行った後、ドライエッチングでTi膜およびコンタクト部(n+型アモルファスシリコン層)6Cを同時にパターニングしてもよい。あるいは、ソース用導電膜およびコンタクト部を一括してエッチングすることも可能である。ただし、ソース用導電膜またはその下層とコンタクト部6Cとを同時にエッチングする場合には、基板全体における半導体層5のエッチング量(ギャップ部の掘れ量)の分布の制御が困難となる場合がある。これに対し、上述したように、ソース・ドレイン分離とギャップ部の形成と別個のエッチング工程で行うと、ギャップ部のエッチング量をより容易に制御できる。
ここで、ソース−ゲート接続部形成領域において、ソース下部接続配線3sgの少なくとも一部は、ソースバスライン接続部7sgと重ならないようにソースメタル層7が形成されている。また、各端子部形成領域は、ソースメタル層7に含まれる導電部を有しない。
次に、図24(g)および図25(g)に示すように、TFT10およびソースメタル層7を覆うように第1絶縁膜11’を形成する。第1絶縁膜11’は、例えばCVD法によって形成される。第1絶縁膜11’としては、酸化珪素(SiOx)膜、窒化珪素(SixNy)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy(x>y))膜、窒化酸化珪素(SiNxOy(x>y))膜等を適宜用いることができる。この例では、第1絶縁膜11’は、半導体層5のチャネル領域と接するように形成される。ここでは、第1絶縁膜11’として、例えば厚さ330nmの窒化珪素(SixNy)膜を形成する。
続いて、図24(h)および図25(h)に示すように、公知のフォトリソグラフィプロセスによって、第1絶縁膜11’およびゲート絶縁膜4’のエッチングを行うことによって、第1絶縁層11およびゲート絶縁層4を形成する。具体的には、アンテナ単位形成領域においては、ソースメタル層7のうちのドレイン電極7Dに電気的に接続された部分(ここでは配線7w)に達する開口部11aを第1絶縁膜11’に形成する。第1トランスファー端子部形成領域においては、下部接続部3p1に達するコンタクトホールをゲート絶縁膜4’および第1絶縁膜11’に形成する。ソース−ゲート接続部形成領域においては、ソース下部接続配線3sgに達するコンタクトホールCH_sg1をゲート絶縁膜4’および第1絶縁膜11’に形成し、ソースバスライン接続部7sgに達する開口部11sg2(コンタクトホールCH_sg2)を第1絶縁膜11’に形成する。ソース端子部形成領域においては、下部接続部3sに達するコンタクトホールCH_sをゲート絶縁膜4’および第1絶縁膜11’に形成する。
このエッチング工程では、ソースメタル層7をエッチストップとして第1絶縁膜11’およびゲート絶縁膜4’のエッチングが行われる。
ソース−ゲート接続部形成領域では、ソース下部接続配線3sgに重なる領域においては、第1絶縁膜11’およびゲート絶縁膜4’が一括してエッチングされるとともに、ソースバスライン接続部7sgに重なる領域においてはソースバスライン接続部7sgがエッチストップとして機能することにより第1絶縁膜11’がエッチングされる。これにより、コンタクトホールCH_sg1およびCH_sg2が得られる。
コンタクトホールCH_sg1は、ゲート絶縁膜4’に形成された開口部4sg1と、第1絶縁膜11’に形成された開口部11sg1とを有する。ここで、ソース下部接続配線3sgの少なくとも一部は、ソースバスライン接続部7sgと重ならないように形成されているので、ゲート絶縁膜4’および第1絶縁膜11’にコンタクトホールCH_sg1が形成される。コンタクトホールCH_sg1の側面において、開口部4sg1の側面と開口部11sg1の側面とが整合していてもよい。本明細書において、コンタクトホール内において、異なる2以上の層の「側面が整合する」とは、これらの層におけるコンタクトホール内に露出した側面が、垂直方向に面一である場合のみでなく、連続してテーパー形状などの傾斜面を構成する場合をも含む。このような構成は、例えば、同一のマスクを用いてこれらの層をエッチングする、あるいは、一方の層をマスクとして他方の層のエッチングを行うこと等によって得られる。
第1絶縁膜11’およびゲート絶縁膜4’は、例えば、同一のエッチャントを用いて一括してエッチングされる。ここでは、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって第1絶縁膜11’およびゲート絶縁膜4’をエッチングする。第1絶縁膜11’およびゲート絶縁膜4’は、異なるエッチャントを用いてエッチングされてもよい。
第1トランスファー端子部形成領域においては、第1絶縁膜11’およびゲート絶縁膜4’が一括してエッチングされることによって、ゲート絶縁膜4’に開口部4p1が形成され、第1絶縁膜11’に開口部11p1が形成される。開口部4p1の側面と開口部11p1の側面とは整合していてもよい。
この工程では、ソース端子部形成領域、ゲート端子部形成領域、CS端子部形成領域および第2トランスファー端子部形成領域においてはゲート絶縁膜4’および第1絶縁膜11’に開口部を形成しない。
次に、図24(i)および図25(i)に示すように、第1絶縁層11上、開口部11a内、コンタクトホールCH_sg1内、コンタクトホールCH_sg2内、および開口部4p1内に、例えばスパッタ法により下部導電膜13’を形成する。下部導電膜13’は、例えば透明導電膜を含む。透明導電膜として、例えばITO(インジウム・錫酸化物)膜、IZO膜、ZnO膜(酸化亜鉛膜)などを用いることができる。ここでは、下部導電膜13’として、例えば厚さ70nmのITO膜を形成する。
次いで、下部導電膜13’をパターニングすることにより、図26(a)および図27(a)に示すように、下部導電層13を形成する。具体的には、ソース−ゲート接続部形成領域において、コンタクトホールCH_sg1内でソース下部接続配線3sgと接触し、コンタクトホールCH_sg2内でソースバスライン接続部7sgと接触するソースバスライン上部接続部13sgを形成し、ソース端子部形成領域において、コンタクトホールCH_s内で下部接続部3sと接触する上部接続部13sを形成し、ゲート端子部形成領域において、コンタクトホールCH_g内で下部接続部3gと接触する上部接続部13gを形成し、CS端子部形成領域において、コンタクトホールCH_c内で下部接続部3cと接触する上部接続部13cを形成する。
次に、図26(b)および図27(b)に示すように、下部導電層13上および第1絶縁層11上にパッチ用導電膜15l’を形成する。パッチ用導電膜15l’の材料として、ゲート用導電膜3’またはソース用導電膜7’と同様の材料が用いられ得る。ここでは、パッチ用導電膜15l’として、Ti膜(厚さ:例えば20nm)およびCu膜(厚さ:例えば500nm)をこの順で含む積層膜(Cu/Ti)を形成する。あるいは、パッチ用導電膜15l’として、MoN膜(厚さ:例えば50nm)、Al膜(厚さ:例えば1000nm)およびMoN膜(厚さ:例えば50nm)をこの順で含む積層膜(MoN/Al/MoN)を形成してもよい。
パッチ用導電膜は、ゲート用導電膜およびソース用導電膜よりも厚くなるように設定されることが好ましい。これにより、パッチ電極のシート抵抗を低減させることで、パッチ電極内の自由電子の振動が熱に変わるロスを低減させることが可能になる。パッチ用導電膜の好適な厚さは、例えば、0.3μm以上である。これよりも薄いと、シート抵抗が0.10Ω/sq以上となり、ロスが大きくなるという問題が生じる可能性がある。パッチ用導電膜の厚さは、例えば3μm以下、より好ましくは2μm以下である。これよりも厚いとプロセス中の熱応力により基板の反りが生じる場合がある。反りが大きいと、量産プロセスにおいて、搬送トラブル、基板の欠け、または基板の割れなどの問題が発生することがある。
次いで、パッチ用導電膜15l’をパターニングすることにより、図26(c)および図27(c)に示すように、パッチメタル層15lを形成する。具体的には、アンテナ単位形成領域に凸部15hおよびパッチ電極を形成し、第1トランスファー端子部形成領域に導電部15p1を形成し、第2トランスファー端子部形成領域に下部接続部15p2を形成する。
第1トランスファー端子部形成領域において、導電部15p1は、コンタクトホールCH_p1内で下部接続部3p1と接続されるように形成される。
パッチ用導電膜15l’として、MoN、AlおよびMoNをこの順で積層した積層膜(MoN/Al/MoN)を形成した場合は、パッチ用導電膜15l’のパターニングは、例えば、エッチング液としてリン酸、硝酸および酢酸を含む水溶液を用いて、ウェットエッチングでMoN膜およびAl膜を同時にパターニングする。パッチ用導電膜15l’として、TiおよびCuをこの順で積層した積層膜(Cu/Ti)を形成した場合は、パッチ用導電膜15l’は、例えば、エッチング液として混酸水溶液を用いてウェットエッチングでパターニングすることができる。
パッチ用導電膜15l’のパターニング工程において、ソース−ゲート接続部形成領域のパッチ用導電膜15l’は除去される。コンタクトホールCH_sg1内およびコンタクトホールCH_sg2内にはソースバスライン上部接続部13sgが形成されているので、パッチ用導電膜15l’のパターニング工程において、エッチングによるソース下部接続配線3sgおよび/またはソースバスライン接続部7sgへのダメージが軽減される。
ここでは、ソース下部接続配線3sgの内、コンタクトホールCH_sg1によって露出されている部分は、ソースバスライン上部接続部13sgで覆われており、ソースバスライン接続部7sgの内、コンタクトホールCH_sg2によって露出されている部分は、ソースバスライン上部接続部13sgで覆われている。これにより、ソースバスライン接続部7sgおよび/またはソース下部接続配線3sgへのエッチングダメージは、効果的に軽減される。
次いで、図26(d)および図17(d)に示すように、パッチメタル層15l上、下部導電層13上および第1絶縁層11上に第2絶縁膜17’を形成する。第2絶縁膜17’は、例えばCVD法によって形成される。第2絶縁膜17’としては、酸化珪素(SiOx)膜、窒化珪素(SixNy)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)膜等を適宜用いることができる。ここでは、第2絶縁膜17’として、例えば厚さ100nmの窒化珪素(SixNy)膜を形成する。第2絶縁膜17’は、パッチメタル層15lを覆うように形成される。
次いで、公知のフォトリソグラフィプロセスによって、第2絶縁膜17’のエッチングを行うことにより、図26(e)および図27(e)に示すように、第2絶縁層17を形成する。具体的には、ソース端子部形成領域においては、上部接続部13sの少なくとも一部を露出させる開口部17sを形成する。ゲート端子部形成領域においては、上部接続部13gの少なくとも一部を露出させる開口部17gを形成する。CS端子部形成領域においては、上部接続部13cの少なくとも一部を露出させる開口部17cを形成する。第1トランスファー端子部形成領域においては、導電部15p1に達する開口部17p1を形成する。第2トランスファー端子部形成領域においては、下部接続部15p2に達する開口部17p2を形成する。
次いで、図28(a)および図29(a)に示すように、第2絶縁層17上、開口部17a内、開口部17s内、開口部17g内、開口部17c内、開口部17p1内、および開口部17p2内に、例えばスパッタ法により上部導電膜19’を形成する。上部導電膜19’は、例えば透明導電膜を含む。透明導電膜として、例えばITO(インジウム・錫酸化物)膜、IZO膜、ZnO膜(酸化亜鉛膜)などを用いることができる。ここでは、上部導電膜19’として、例えば厚さ70nmのITO膜を用いる。あるいは、上部導電膜19’として、Ti(厚さ:例えば50nm)およびITO(厚さ:例えば70nm)をこの順で積層した積層膜(ITO/Ti)を用いてもよい。積層順は逆でもよい。すなわち、上部導電膜19’として、ITO(厚さ:例えば70nm)およびTi(厚さ:例えば50nm)をこの順で積層した積層膜(Ti/ITO)を用いてもよい。Ti膜に代えて、MoNbNi膜、MoNb膜、MoW膜、W膜およびTa膜からなる群から選択される1つの膜または2以上の膜の積層膜を用いてもよい。すなわち、上部導電膜19’として、Ti膜、MoNbNi膜、MoNb膜、MoW膜、W膜およびTa膜からなる群から選択される1つの膜または2以上の膜の積層膜と、ITO膜とを積層した積層膜を用いてもよい。
次いで、上部導電膜19’をパターニングすることにより、図28(b)および図29(b)に示すように、上部導電層19を形成する。具体的には、第1トランスファー端子部形成領域において開口部17p1内で導電部15p1と接続される上部接続部19p1と、第2トランスファー端子部形成領域において開口部17p2内で下部接続部15p2と接続される上部接続部19p2とを形成する。これにより、第1アンテナ単位領域U1、第2アンテナ単位領域U2、ソース−ゲート接続部SG、ソース端子部ST、ゲート端子部GT、CS端子部CT、第1トランスファー端子部PT1、および第2トランスファー端子部PT2が得られる。
このようにして、TFT基板101が製造される。
<スロット基板201の製造方法>
図30を参照しながら、スロット基板201の製造方法を説明する。図30は、スロット基板201の製造方法を説明するための模式的な断面図である。図30には、図20Aおよび図20Bに対応する断面(スロット基板201のA−A’断面およびH−H’断面)を示している。なお、非送受信領域R2の図示は省略する。
図30を参照しながら、スロット基板201の製造方法を説明する。図30は、スロット基板201の製造方法を説明するための模式的な断面図である。図30には、図20Aおよび図20Bに対応する断面(スロット基板201のA−A’断面およびH−H’断面)を示している。なお、非送受信領域R2の図示は省略する。
まず、図30(a)に示すように、誘電体基板51上に金属膜55’を形成する。その後、これをパターニングすることによって、図30(b)に示すように、複数のスロット57を有するスロット電極55を得る。金属膜55’としては、厚さが2μm〜5μmのCu膜(またはAl膜)を用いてもよい。ここでは、Ti(厚さ:例えば20nm)およびCu(厚さ:例えば3000nm)をこの順で積層した積層膜を用いる。なお、代わりに、Ti膜、Cu膜およびTi膜をこの順で積層した積層膜を形成してもよい。
誘電体基板51としては、ガラス基板、樹脂基板などの、電磁波に対する透過率の高い(誘電率εMおよび誘電損失tanδMが小さい)基板を用いることができる。誘電体基板51は電磁波の減衰を抑制するために薄い方が好ましい。例えば、ガラス基板の表面に後述するプロセスでスロット電極55などの構成要素を形成した後、ガラス基板を裏面側から薄板化してもよい。これにより、ガラス基板の厚さを例えば500μm以下に低減できる。
誘電体基板51として樹脂基板を用いる場合、TFT等の構成要素を直接、樹脂基板上に形成してもよいし、転写法を用いて樹脂基板上に形成してもよい。転写法によると、例えば、ガラス基板上に樹脂膜(例えばポリイミド膜)を形成し、樹脂膜上に後述するプロセスで構成要素を形成した後、構成要素が形成された樹脂膜とガラス基板とを分離させる。一般に、ガラスよりも樹脂の方が誘電率εMおよび誘電損失tanδMが小さい。樹脂基板の厚さは、例えば、3μm〜300μmである。樹脂材料としては、ポリイミドの他、例えば、液晶高分子を用いることもできる。
なお、誘電体基板51とスロット電極55との間に第3絶縁層(厚さ:例えば200nm)を形成してもよい。絶縁層は、後述する第4絶縁層58と同じ材料から形成することができる。
この後、図30(c)に示すように、スロット電極55上およびスロット57内に第4絶縁層58(厚さ:例えば100nmまたは200nm)を形成する。具体的には、スロット電極55上およびスロット57内に第4絶縁膜を形成した後、非送受信領域R2において、スロット電極55に達する開口部58aを形成することによって、第4絶縁層58を得る。第4絶縁層58としては、例えば酸化珪素(SiOx)膜、窒化珪素(SiNx)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy(x>y))膜、窒化酸化珪素(SiNxOy(x>y))膜等を適宜用いることができる。ここでは、第4絶縁層58として、例えば厚さ100nmの窒化珪素(SixNy)膜を形成する。
次いで、第4絶縁層58上および第4絶縁層58の開口部58a内に透明導電膜を形成し、これをパターニングすることにより、開口部58a内でスロット電極55と接する上部接続部を形成する。これにより、端子部ITを得る。
この後、第4絶縁層58上および上部接続部上に感光性樹脂膜を形成し、所定のパターンの開口部を有するフォトマスクを介して、感光性樹脂膜を露光・現像することによって、図30(d)に示すように、柱状スペーサPSおよび複数の壁部60Aを形成する。例えばハーフトーンマスクを用いて感光性樹脂層を露光・現像することによって、高さの異なる柱状スペーサPSおよび複数の壁部60Aを同時に形成することができる。感光性樹脂は、ネガ型でもポジ型でもよい。ここでは、アクリル樹脂膜を用いることによって、柱状スペーサPS(厚さdp:例えば2.55μm)と壁部60Aとを形成する。
このようにして、スロット基板201が製造される。
なお、TFT基板が柱状スペーサPSおよび壁構造体60を有する場合には、上記の方法でTFT基板101を製造した後、第2絶縁層17上および上部導電層19上に感光性樹脂膜を形成し、露光・現像することによって、柱状スペーサPSおよび壁部60Aを形成すればよい。
図31に、走査アンテナ1000Bの送受信領域R1のアンテナ単位Uの模式的な平面図を示す。上述したように、走査アンテナ1000Bは、壁構造体60が有する複数の壁部60Bの形状において、走査アンテナ1000Aが有する複数の壁部60Aと異なる。
本発明の実施形態による走査アンテナは、例えば出願人による国際公開第2017/065088号に記載されているように、複数の走査アンテナ部分をタイリングすることによって作製されてもよい。例えば、走査アンテナの液晶パネルを分割して作製することができる。走査アンテナの液晶パネルは、それぞれ、TFT基板と、スロット基板と、これらの間に設けられた液晶層とを有している。空気層(あるいは他の誘電体層)54および反射導電板65は、複数の走査アンテナ部分に対して共通に設けられていてもよい。本発明の実施形態による走査アンテナを、複数の走査アンテナ部分をタイリングすることによって作製する場合は、それぞれの走査アンテナ部分に対応する液晶パネルに、上述した実施形態を適用すればよい。
本発明による実施形態は、例えば、移動体(例えば、船舶、航空機、自動車)に搭載される衛星通信や衛星放送用の走査アンテナおよびその製造に用いられる。また、本発明の実施形態は、液晶表示装置、走査アンテナ等、広く液晶装置に好適に用いられる。
60 壁構造体
60A、60B、60C 壁部
73 外周シール部
74a 注入口
74 メインシール部
75 エンドシール部
1000A、1000B、1000C 走査アンテナ
60A、60B、60C 壁部
73 外周シール部
74a 注入口
74 メインシール部
75 エンドシール部
1000A、1000B、1000C 走査アンテナ
Claims (7)
- 複数のアンテナ単位を含む送受信領域と、前記送受信領域以外の非送受信領域とを有し、
第1誘電体基板と、前記第1誘電体基板に支持された、複数のTFT、複数のゲートバスライン、複数のソースバスラインおよび複数のパッチ電極とを有するTFT基板と、
第2誘電体基板と、前記第2誘電体基板の第1主面上に形成されたスロット電極であって、前記複数のパッチ電極に対応して配置された複数のスロットを有するスロット電極とを有するスロット基板と、
前記TFT基板と前記スロット基板との間に設けられ、少なくとも1つの液晶領域および少なくとも1つの真空領域を含む液晶層と、
前記液晶層を包囲し、前記TFT基板と前記スロット基板とを互いに接着する外周シール部と、
前記第2誘電体基板の前記第1主面と反対側の第2主面に誘電体層を介して対向するように配置された反射導電板と
を有し、
前記TFT基板と前記スロット基板との間、かつ、前記外周シール部の内側に配置され、感光性樹脂で形成された壁構造体であって、前記液晶層を、前記少なくとも1つの液晶領域と前記少なくとも1つの真空領域とに仕切るように構成された壁構造体をさらに有し、
前記第1誘電体基板の法線方向から見たとき、前記少なくとも1つの真空領域は、前記複数のパッチ電極および前記複数のスロットと重ならず、前記少なくとも1つの液晶領域の面積よりも大きい面積を有する、走査アンテナ。 - 前記少なくとも1つの真空領域は、複数の真空領域であり、
前記壁構造体は、複数の壁部を含み、
前記複数の真空領域のそれぞれは、前記複数の壁部のそれぞれによって包囲されている、請求項1に記載の走査アンテナ。 - 前記少なくとも1つの液晶領域は、1つの液晶領域である、請求項2に記載の走査アンテナ。
- 前記少なくとも1つの液晶領域は、複数の液晶領域であり、
前記壁構造体は、複数の壁部を含み、
前記複数の液晶領域のそれぞれは、前記複数の壁部のそれぞれによって包囲されている、請求項1に記載の走査アンテナ。 - 複数のアンテナ単位を含む送受信領域と、前記送受信領域以外の非送受信領域とを有し、
第1誘電体基板と、前記第1誘電体基板に支持された、複数のTFT、複数のゲートバスライン、複数のソースバスラインおよび複数のパッチ電極とを有するTFT基板と、
第2誘電体基板と、前記第2誘電体基板の第1主面上に形成されたスロット電極であって、前記複数のパッチ電極に対応して配置された複数のスロットを有するスロット電極とを有するスロット基板と、
前記TFT基板と前記スロット基板との間に設けられ、少なくとも1つの液晶領域および複数の真空領域を含む液晶層と、
前記液晶層を包囲し、前記TFT基板と前記スロット基板とを互いに接着する外周シール部と、
前記第2誘電体基板の前記第1主面と反対側の第2主面に誘電体層を介して対向するように配置された反射導電板と
を有し、
前記TFT基板と前記スロット基板との間、かつ、前記外周シール部の内側に配置され、シール材で形成された壁構造体であって、前記液晶層を、前記少なくとも1つの液晶領域と前記複数の真空領域とに仕切るように構成された壁構造体をさらに有し、
前記壁構造体は、複数の壁部を含み、
前記複数の真空領域のそれぞれは、前記複数の壁部のそれぞれによって包囲されており、
前記第1誘電体基板の法線方向から見たとき、前記複数の真空領域は、前記複数のパッチ電極および前記複数のスロットと重ならず、前記少なくとも1つの液晶領域の面積よりも大きい面積を有する、走査アンテナ。 - 前記少なくとも1つの液晶領域は、1つの液晶領域である、請求項5に記載の走査アンテナ。
- 請求項3または6に記載の走査アンテナを製造する方法であって、真空注入法を用いて前記液晶層を形成する工程を包含する、走査アンテナの製造方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE112022000948T5 (de) | 2021-02-03 | 2023-11-30 | Denso Corporation | Piezoelektrisches element, piezoelektrische vorrichtung und verfahren zum herstellen eines piezoelektrischen elements |
-
2020
- 2020-06-04 JP JP2020097553A patent/JP2021016148A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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DE112022000948T5 (de) | 2021-02-03 | 2023-11-30 | Denso Corporation | Piezoelektrisches element, piezoelektrische vorrichtung und verfahren zum herstellen eines piezoelektrischen elements |
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