JP2021008730A - 着床式洋上架台 - Google Patents

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博昭 大塚
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Abstract

【課題】着床式とすることで安定した発電や風況計測を実現しながら、洋上において安価に設置可能な着床式洋上架台を提供する。【解決手段】着床式洋上架台は、風力発電を行う風力発電機又は風力発電用の風況データの計測を行う風況観測機を洋上に設置するための架台であって、風力発電機30又は風況観測機35を設置するための台座部3と、下端を海底50に配置して、上端を洋上に突出させるように上下方向に延長されて、上端部に台座部3を固定してなる支柱部1と、海底50に載置されて、支柱部1の下端部が固定されるベース部2とを備えている。支柱部1は、少なくとも一部を中空とする浮体部4を備えており、浮体部4にはたらく浮力の浮心Fが、ベース部2が固定された支柱部1の重心Gよりも上方に位置して、支柱部1を鉛直姿勢に保持している。【選択図】図1

Description

本発明は、洋上で風況などの気象データの計測を行う観測機や洋上風力発電機を支持する基台となる着床式洋上架台に関する。
近年の石油資源の枯渇に伴い、太陽エネルギーに代表される再生可能エネルギーが注目されている。しかしながら、太陽光発電は、天気による変動が大きく、また、夜間には発電できないため、これに代わる再生可能エネルギーとして風力発電が注目されている。風力発電は、民家近くでは低周波騒音などの問題が指摘されているため、これを回避するため、洋上に風力発電設備を設置することに注目されている。洋上風力発電機を設置するには、洋上に発電機を設置するための架台(プラットフォーム)が必要となる。また、洋上風力発電機を設置するに際して、その設置環境の選定や発電能力試算のため、予め設置候補の洋上にて風向、風量、風速などの風況観測を行う必要がある。
洋上における風力発電機の設置や、風況などの気象データを計測する観測機等の洋上架台システム(プラットフォーム)の設置方法としては、固定式(着床式)と浮体式に大別される。固定式のプラットフォームとして、例えば特許文献1に示す構造が提案されている。この観測塔は、図6に示すように、主柱110、ブーム120、計測機器140等を有する。ブーム120は主柱110から側方に延び、長手方向と直交する方向の断面が扁平状であるブーム本体を有する。計測機器140はブーム先端に設けられ、風況などの気象データの計測を行う。ブーム120は、主柱110から架け渡されたワイヤ130により保持される。これにより、水上において好適に気象データを計測できるとされている。
しかしながら、この観測塔では、海底に基礎を打設しなければならず、設置工事に多大の費用と手間がかかるという問題があった。
一方で、浮体式のプラットフォームとしては、例えば特許文献2に示すような海上風況観測装置が提案されている。この海上風況観測装置は、図7に示すように、風向風速計201と、風向風速計201を海面202上所定の高さに保持する高さ保持用ポ−ル203と、高さ保持用ポール203の下端部に接続した浮力体204と、浮力体204に接続した係留索205と、係留索205に接続したシンカー206と、風向風速計201の姿勢を水平に保つために、高さ保持用ポール203の傾斜にともなって風向風速計201を取り付けた部材を回動させる姿勢保持用ロッド207とで構成される。
しかしながら、このような浮体式のプラットフォームでは、上下に移動するため安定しないという問題がある。また、現状では浮体式の風況観測装置で測定された風況データは、正式な風況データとして扱われないという問題がある。すなわち、風況測定は着床式で行わねばならない。
特開2017−161392号公報 特許3951631号公報
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、着床式とすることで安定した発電や風況計測を実現しながら、洋上において安価に設置可能な着床式洋上架台を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の第1の実施形態にかかる着床式洋上架台は、風力発電を行う風力発電機又は風力発電用の風況データの計測を行う風況観測機を洋上に設置するための架台であって、風力発電機又は風況観測機を設置するための台座部と、下端を海底に配置して、上端を洋上に突出させるように上下方向に延長されて、上端部に台座部を固定してなる支柱部と、海底に載置されて、支柱部の下端部が固定されるベース部とを備えている。支柱部は、少なくとも一部を中空とする浮体部を備えており、浮体部にはたらく浮力の浮心が、ベース部が固定された支柱部の重心よりも上方に位置して、支柱部を鉛直姿勢に保持するようにしている。
上記構成により、支柱部の下端部が固定されるベース部を海底に載置した着床式としたことで、台座部は上下方向に移動せず安定した発電や風況計測を実施できる。また、支柱部の一部を中空状として簡単な構造の浮体部を設けることで、製造コストを削減しながら支柱部を安定した姿勢に保持できる。とくに、ベース部が固定された支柱部の重心を架台の下部に配置することで、架台を安定して海底に着床させながら、浮体部の浮心を重心よりも上方に配置することで、上下方向に延長された支柱部を安定して鉛直姿勢に保持できる。このように、上記構成の着床式洋上架台によれば浮体式と着床式の両方の利点を享受できる。
本発明の第2の実施形態にかかる着床式洋上架台は、さらに、支柱部を海底に固定するための複数の索体を備えており、複数の索体を、支柱部の中間部から放射状に張設して海底に固定している。
上記構成により、台風等により海が荒れる環境下においても安定的に架台を保持できる利点が得られる。
本発明の第3の実施形態にかかる着床式洋上架台は、支柱部を円筒状の鋼管で形成しており、鋼管の内部を中空として浮体部を構成している。
上記構成によると、支柱部を円筒状の鋼管とすることで、トラスや鉄塔のような複雑な構造体とすることなく製造コストを削減できと共に、鋼管の内部を中空とすることで簡単に浮体部を設けつつ、大きな浮力を得ることができる。
本発明の第4の実施形態にかかる着床式洋上架台は、浮体部が、内部に隔壁を備えており、隔壁を介して中空状の内部を複数に区画している。
上記構成により、仮に浮体部の内部に浸水することがあっても隔壁によって浸水領域が拡大することを抑制し、安全性が高められる。また、浮体部の内部を隔壁で複数に区画することで、浮心の位置を安定させることができ、支柱部を安定して所定の鉛直姿勢に保持できる特長もある。
本発明の第5の実施形態にかかる着床式洋上架台は、支柱部の下端部を中実として重り部を形成している。
上記構成によると、支柱部の下端部を中実として重り部を形成することで、架台の重心位置を下方に配置しつつ、支柱部の中空領域で形成される浮体部の浮心を上方に配置して、支柱部をより安定して鉛直姿勢に保持できる。
本発明の第6の実施形態にかかる着床式洋上架台は、支柱部が、下部にコンクリートブロックを一体的に連結して重り部を形成している。
上記構成によると、支柱部の下部にコンクリートブロックを一体的に連結して重り部を形成することで、架台の重心位置を下方に配置しつつ、支柱部の中空領域で形成される浮体部の浮心を上方に配置して、支柱部をより安定して鉛直姿勢に保持できる。また、この構造は、コンクリートブロックの体積や形状を変更することで、重り部の重量を容易に調整できる特徴がある。
本発明の第7の実施形態にかかる着床式洋上架台は、ベース部がコンクリートケーソンで、コンクリートケーソンの重量を、浮体部にはたらく浮力よりも大きくしている。
上記構成によれば、架台をコンクリートケーソンで確実に海底に着床させることが可能となる。また、支柱部の下端にコンクリートケーソンを固定することで、支柱部の下端をシンカーとして利用し、浮力とのバランスを維持できる。特に、この構成によると、水深20〜50m程度の浅い海域の洋上での着床式洋上架台として好適に利用できる。
本発明の第8の実施形態にかかる着床式洋上架台は、ベース部が、海底に敷設された金属プレートで、支柱部は、下端部を中実とすると共に、下端から下方に突出するパイル部を有しており、パイル部を金属プレートに貫通させて海底に埋設している。
上記構成によると、ベース部を金属プレートとして海底に敷設すると共に、支柱部の下端に設けたパイル部を金属プレートに貫通させて海底に埋設することで、架台の下端を確実に海底に固定して、台風等により架台が横移動するのを有効に防止できる。さらに、以上の構成によると、支柱部の重量を海底に敷設された金属プレートで支持できるので、支柱部の重量による海底面への圧力を金属プレートで小さくでき、支柱部が必要以上に海底に深く埋設されるのを防止して架台の着床位置を安定させることができる。
本発明の実施形態1に係る着床式洋上架台の側面図である。 図1に示す着床式洋上架台の浮体部の拡大断面図である。 図1に示す着床式洋上架台のベース部の拡大断面図である。 本発明の実施形態2に係る着床式洋上架台の側面図である。 図4に示す着床式洋上架台の支柱部とベース部の分解断面図である。 従来の観測塔の側面図である。 従来の海上風況観測装置の側面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部品を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
本発明の着床式洋上架台は、風力発電を行う風力発電機又は風力発電用の風況データの計測を行う風況観測機を洋上に設置するための架台である。この着床式洋上架台は、主として、水深を20m〜100mとする海洋において、風力発電機や風況観測機を洋上に設置するために使用される。ただ、本発明の着床式洋上架台は、海洋上のみならず、所定の水深を有する湖の湖底に着床させて水面上に風力発電機や風況観測機を配置する架台として使用することもできる。したがって、本明細書において、洋上とは、海洋上だけでなく、湖上も含む広い意味で使用する。
図1〜図3に実施形態1に係る着床式洋上架台100を、図4と図5に実施形態2に係る着床式洋上架台200をそれぞれ示す。図1〜図3に示す実施形態1の着床式洋上架台100は、風況観測機35を洋上に設置する例を示しており、図4と図5に示す実施形態2の着床式洋上架台200は、風力発電機30を洋上に設置する例を示している。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る着床式洋上架台100の設置状態を示す側面図であり、図2は図1に示す着床式洋上架台100の浮体部の拡大断面図であり、図3は図1に示す着床式洋上架台100のベース部の拡大断面図である。この着床式洋上架台100は、風況観測機35又は風力発電機又を設置するための台座部3と、下端を海底50に配置して、上端を洋上に突出させるように上下方向に延長されて、上端部に台座部3を固定してなる支柱部1と、海底50に載置されて、支柱部1の下端部が固定されるベース部2とを備えている。
(台座部3)
台座部3は、風況観測機35又は風力発電機を洋上の所定の位置に配置するための台座であって、上端部を洋上に突出させるように配置された支柱部1の上端に設けられている。図1に示す台座部3は、プラットホームとしており、支柱部1の上端に水平な姿勢で固定されている。
水平姿勢で配置される台座部3は、上面に風力発電用の風況を観測する各種風況観測機が設置され、あるいは風力発電機が設置される。風力発電用の風況を観測する各種風況観測機35は、図1に示すように、風向計、風量計、風力計等である。これらの風況観測機35は、観測地点における風向き、風量、風速を検出して風況を観測する。
風力発電機30は、図4に示すように、風力を受けて回転する複数のブレード31と、回転するブレード31の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機32と、発電機32を収納しているナセル33と、ナセル33を所定の高さに配置するためのタワー34とを備えている。風力発電機30は、タワー34の基部が着床式洋上架台200の台座部3の上面に固定されて、洋上において所定の姿勢で配置される。
さらに、台座部3は、風況観測機35や風力発電機30に加えて、各種監視装置や各種観測装置を設置することもできる。このような装置として、例えば、バードレーダーや監視カメラ、気象観測用の気象レーダ等が挙げられる。
(支柱部1)
図1に示す支柱部1は、上下方向に延長された柱状であって、下端が海底50に配置されると共に、上端が洋上に突出する全長を有している。海底50から海洋上に延長して配置される支柱部1は、鉛直姿勢で配置されており、海中に配置される本体部分の下端部にベース部2を固定し、海面上に突出する突出部の上端に台座部3を固定している。支柱部1は、台座部3を海面から3m〜10m突出させる姿勢で配置している。したがって、支柱部1の全長は、設置場所の水深よりも3m〜10m長くなるようにしている。例えば、水深を30mとする海域に設置される架台においては、支柱部1の全長を33m〜40mとして、上端部を海面上に3m〜10m突出させる。
図1に示す支柱部1は、所定の外径を有する円筒状の鋼管10で形成されている。円筒状の鋼管10で形成される支柱部1は、複数本の鋼管10を連結して所定の長さに形成される。図1に示す支柱部1は、長さを10mとする鋼管10を4本連結して、全長を40mとしている。図2及び図3に示す各々の鋼管10は、端縁に沿って外側に突出するフランジ部11を設けており、対向するフランジ部11同士を連結具12を介して連結することで、複数の鋼管10を直線状に連結して所定の全長としている。ただ、使用する鋼管10の長さや連結する本数は、種々に設計変更することができる。このように、支柱部1を複数の鋼管10で形成する構造は、既成の鋼管を使用することで、製造コストを低減しながら、簡単かつ容易に製造できる特長がある。
支柱部1は、安定した姿勢で配置するために、少なくともの一部を中空とする浮体部4を備えている。円筒状の鋼管10で構成される支柱部1は、海中に配置される本体部分において、内部を中空とする領域を設けて浮体部4を形成している。浮体部4は、内部を中空状とすることで、浮力に対する重量を少なくして、実質的に浮力を大きくしている。
複数の鋼管で形成される支柱部は、鋼管の内部全体を一つの空間として、浮体部を構成することもできるが、好ましくは、内部に隔壁13を設けて、浮体部4を形成する中空部14を複数の領域に分割する。図2に示す浮体部4は、複数の隔壁13を設けて、中空部14を複数の区画室14Aに区画している。図2に示す支柱部1は、互いに連結される鋼管10同士の間に挟着プレート13Aを介在させて、この挟着プレート13Aを隔壁13としている。鋼管10同士の間に配置される挟着プレート13Aは、鋼管10の端縁に設けたフランジ部11に沿う外形を有しており、対向するフランジ部11同士の間に密着状態で挟着されて、隣接する鋼管10同士の内部を区画している。この挟着プレート13Aは、鋼管10のフランジ部11との間にパッキンを介在させることで、各々の区画室14Aを水密構造に閉塞できる。
さらに、図2に示す支柱部1は、鋼管10の中間部分において、鋼管10の内部領域を分割する分割プレート13Bを設けて隔壁13としている。図に示す分割プレート13Bは、鋼管10の内形に沿う外形を有しており、外周面を鋼管10の内周面に密着させる状態で固定されて、鋼管10の内部を複数の区画室14Aに分割している。
以上のように、支柱部1の内部に形成される中空部14を、隔壁13によって複数の区画室14Aに分割する構造は、浮体部4の内部に浸水することがあっても隔壁13によって浸水領域の拡大を抑制できると共に、浮体部4の内部を隔壁13で複数に区画することで、浮体部4にはたらく浮力の中心(以後、浮心Fと呼ぶ)の位置を安定させて、支柱部1を所定の鉛直姿勢に保持できる。
ここで、海水中の物体にはたらく浮力Pは、海水中に浸かっている物体の体積に、海水の比重を乗じたものとなる。すなわち、浮力Pの大きさは、海水中の物体の体積に比例する。このため、浮体部4は、支柱部1の外径を大きくすることで、より大きな浮力Pが得られることになる。したがって、支柱部1は、架台に要求される浮力Pを考慮して最適な外径に調整される。支柱部1の外径は、台座部3に配置する機器や架台を設置する海域の水深によっても変更されるが、例えば、水深20m〜50mの海域に設置される架台においては、台座部3に風況観測機(例えば、重量を約1tとする)を配置する場合、支柱部1の外径を0.8m〜2mとすることができる。また、水深40m〜100mの海域に設置される架台においては、台座部3に風力発電機を配置する場合、支柱部1の外径を5m〜12m、好ましくは7〜10mとすることができる。
さらに、支柱部1は、架台を海底50に着床させて設置した状態で、支柱部1を安定して鉛直姿勢に保持するために、浮体部4にはたらく浮力の浮心Fが、ベース部2に固定された支柱部1の重心Gよりも上方に位置するように構成される。すなわち、上下に延長される支柱部1は、浮体部4に上向きに作用する浮力Pの浮心Fを上方に配置し、下向きに作用する重力Wの重心Gが下方に位置する低重心とすることで鉛直姿勢に保持される。
図1に示す支柱部1は、後述するベース部2を下端部に固定することで、ベース部2に固定される支柱部1の重心Gを浮体部4の浮心Fよりも下方に配置することができる。さらに、支柱部1は、好ましくは、下端部を中実として重り部15を形成することにより、支柱部1における重心Gを下方に配置することができる。図3に示す支柱部1は、下端部において、鋼管10の内部にコンクリートを充填して重り部15を形成している。この構造によると、支柱部1の下端部に形成される重り部15により、支柱部1の重心Gを下方に配置しつつ、支柱部1の中空領域で形成される浮体部4の浮心Fを上方に配置して、支柱部1をより安定して鉛直姿勢に保持できる。
図に示す支柱部1は、下端部に充填するコンクリートを介して、ベース部2と一体的に連結している。この構造によると、支柱部1とベース部2との連結構造をより強固にできる。この支柱部1は、下端にベース部2を固定して、ベース部2と支柱部1とを一体とした状態で海底に沈降できる。この架台は、ベース部2をシンカーとしてスムーズに沈降できる。ただ、下端部にベース部2が固定される支柱部1は、必ずしも下端部に重り部15を設ける必要はなく、ベース部2の重量のみで架台を沈降させて海底50に着床させることもできる。
(ベース部2)
ベース部2は、海底50に載置されて、支柱部1の下端部が固定される。ベース部2は、海水よりも比重が大きく、支柱部1の下端部に固定された状態で、ベース部2が固定された支柱部1全体の重心位置を、支柱部1単体の重心位置よりも下方に移動させている。図1及び図3に示すベース部2は、コンクリートケーソン21としている。コンクリートケーソン21は、全体を所定の形状に形成した鉄筋コンクリート製で、図に示すように、海底50に水平姿勢で載置している。鉄筋コンクリートは、比重が約2.4t/mであって、簡単かつ安価に製造できるので、支柱部1の下端部に固定されるケーソンの材料として最適である。
コンクリートケーソン21は、その重量が、浮体部4にはたらく浮力Pよりも大きくなるように、好ましくは、浮体部4にはたらく浮力Pの2倍よりも大きくなるように製造される。コンクリートケーソン21は、平面視を多角形状または円形状とする柱状とし、あるいは、角錐台形状や円錐台形状とすることができる。コンクリートケーソン21は、海底50に対する設置面積が大きくなるように底面積を広く成形することで、支柱部1の傾動や架台の横ずれを有効に防止できる。
図3のコンクリートケーソン21は、支柱部1の下端をインサート成形しており、支柱部1の下端部とコンクリートケーソン21とを一体的に連結している。さらに、コンクリートケーソン21は、支柱部1をより確実に連結して固定するために、金属板からなる複数の固定部22をインサート成形している。複数の固定部22は、コンクリートケーソン21の上面から上方に突出しており、支柱部1の下端部の外周面に放射状に固定された複数の固定リブ16に固定具17を介して固定されている。
(索体5)
さらに、図1に示す着床式洋上架台100は、支柱部1を海底50に固定するための複数の索体5を備えている。索体5は、ワイヤー等の線材、あるいは鎖やチェーン等であって、支柱部1が台風等の影響で強風や荒波を受けた際に、支柱部1を安定して保持できる強度を有している。複数の索体5は、支柱部1の中間部から放射状に張設されて海底50に固定されている。索体5は、その一端が、支柱部1の中間部であって、海中に配置される本体部分に設けた連結部18に固定されると共に、他端がアンカー23を介して海底50に固定されている。索体5は、支柱部1とアンカー23との間において、所定の引張り力を受けるように、その長さとアンカーによる固定位置が決定されて所定のテンションとなるように張設される。支柱部1から放射状に配置される複数の索体5は、好ましくは3〜6本として、架台を安定して保持できる。
(実施形態2)
図4は実施形態2に係る着床式洋上架台200の設置状態を示す側面図であり、図5は図4に示す着床式洋上架台200の支柱部1とベース部2の連結構造を示す分解断面図である。これらの図に示す着床式洋上架台200は、重量の大きな風力発電機30を支持しながら所定の位置に保持できるように、支柱部1の外径を大きくすると共に、支柱部1の下端部をベース部2に対して連結、固定する構造を独特の構造としている。
図5に示す支柱部1は、下端部を中実として重り部15を形成すると共に、下端から下方に突出するパイル部6を設けている。パイル部6は、図4に示すように、海底50に埋設されるアンカー部材として支柱部1を海底50の定位置に固定する。図5に示すパイル部6は、円筒状の鋼管19であって、支柱部1を構成する円筒状の鋼管10よりも外径を小さくしている。重り部15は、支柱部1を形成する鋼管10の内部に鉄筋コンクリート製のコンクリートブロックを成形して設けている。この構成によると、重り部15の重量を大きくすることで、支柱部1を自重により海底50に沈降できるので、水深40m〜100mの比較的大水深海域で使用する着床式洋上架台とする場合、経済的にも優れており好適である。支柱部1の下部に形成されて重り部15を構成するコンクリートブロックは、図5に示すように、パイル部6となる鋼管19の上部を埋設しており、鋼管19の下部を支柱部1の下端面の中央部から下方に突出させてパイル部6としている。
ただ、支柱部は、全体を鋼管で形成することなく、一部をコンクリート製とすることもできる。この支柱部は、例えば、上部を鋼管で形成し、下部をコンクリートブロックで構成し、このコンクリートブロックを重り部として機能させることができる。支柱部の下部を構成するコンクリートブロックからなる重り部は、内部に鉄骨や鉄筋等で形成される骨格を埋設することで全体を補強できる。さらに、重り部を構成するコンクリートブロックは、上部に配置される鋼管の下端部を上面にインサートして一体的に成形されると共に、パイル部となる鋼管の上部を下面にインサートして定位置に配置できる。この支柱部は、コンクリートブロックの体積や形状を変更することで、重り部の重量を容易に調整できる特徴がある。この構造も、水深40m〜100mの比較的大水深海域で使用する着床式洋上架台として好適である。
ベース部2は、所定の面積を有する金属プレート25である。金属プレート25であるベース部2は、例えば鋼板としている。金属プレート25であるベース部2は、海底25に敷設されると共に、複数の固定杭26を介して海底50に固定される。金属プレート25は、支柱部1の下端から突出するパイル部6を貫通させるための貫通穴25Aを開口している。この貫通孔25Aは、パイル部6を通過できるが、支柱部1を通過できない大きさに開口している。この金属プレート25は、支柱部1から突出するパイル部6を貫通穴25Aに貫通させて海底50に埋設させると共に、支柱部1の底面を上面で支持するようにしている。
図に示すパイル部6は、金属プレート25の貫通穴25Aに挿入された状態で、支柱部1の自重により海底50に押し込まれて埋設される。ただ、パイル部6は、金属プレートの貫通穴25Aに挿入された状態で、支柱部1の上端に下向きの負荷をかけて、パイル部6を海底50に押し込むこともできる。
金属プレート25は、その面積を広くすることで、上面に載置される支柱部1による加重を分散させて、海底面に対する圧力を小さくできる。例えば、海底が砂地である場合には、面積の広い金属プレート25を敷設することで、支柱部1が砂地に沈むのを阻止できる。図に示す金属プレート25は、例えば、その面積を支柱部1の底面積の5倍以上、好ましくは10倍以上として、支柱部1による圧力を小さくして、支柱部1の下端が、必要以上に海底50に押し込まれるのを防止している。以上の支柱部1は、下端から突出するパイル部6が金属プレート25の貫通穴25Aを貫通する状態で海底50に埋設されることにより海底50に強固に固定されて、ベース部2の上面の定位置に固定される。
(実施例1)
以下、着床式洋上架台の具体例を示す。ここでは、実施例1として、図1に示すように、水深30mの海底50に着床させる架台であって、支柱部1の上端部の10mを海洋上に突出させて、上端の台座部3に風況観測機35を設置する着床式洋上架台100とする。
支柱部1は、外径を1m、厚さを2cmとする円筒状の鋼管10で形成し、全長を40mとして、下端部に6mの高さまでコンクリートを充填して重り部15を設ける。
ベース部2は、5m×5m×1mのコンクリートケーソン21とし、支柱部1の下端部を埋設して一体構造とする。
支柱部1の上端には風況観測機35が固定された台座部3を設置する。
この着床式洋上架台100の全体の重量Wは、
W=支柱部の重量+重り部の重量+ベース部の重量+台座部の重量
=19.7t+10.4t+60t+1t
=91.1t
となって、約91tとなり、その重心Gの位置は、図1に示すように、支柱部1の下端部であってベース部2との境界の近傍となる。
また、この着床式洋上架台100は、支柱部1の内部を中空として浮体部4を設けている。この浮体部4は、支柱部1の内部において約24mにわたって形成された中空部14と考えると、この浮体部4にはたらく実質的な浮力Pは、以下のように考えることができる。
P=浮体部の中空部の容積×海水の比重
=0.48m×0.48m×3.14×24m×1.03t/m
=17.9t
また、この浮体部4にはたらく浮力Pの浮心Fは、浮体部4の中心であって、図1に示すように、支柱部1のほぼ中央部分となる。
以上のように、この着床式洋上架台100は、重心Gが支柱部1の下端部に位置することで低重心を実現し、海底50に着床した状態で設置しながら、支柱部1に形成される浮体部4にはたらく浮力の中心である浮心Fを支柱部1の中央部に配置することで、上下に延長された支柱部1を安定して鉛直姿勢に保持することができる。
(実施例2)
また、実施例2として、図4に示すように、水深30mの海底50に着床させる架台であって、支柱部1の上端部の10mを海洋上に突出させて、上端の台座部3に風力発電機30を設置する着床式洋上架台200とする。
支柱部1は、外径を10m、厚さを10cmとする円筒状の鋼管10で形成し、全長を40mとして、下端部に12mの高さまでコンクリートを充填して重り部15を設ける。 さらに、この重り部15には、外径を5m、厚さを2cmとする円筒状であって、全長を10mとする鋼管19を埋設し、支柱部1の下面から下方に5m突出させてパイル部6を設ける。
ベース部2は、20m×20m×5cmの鋼板とし、中央部には、支柱部1の下端から突出するパイル部6を貫通させる直径7mの貫通穴15Aを開口する。
支柱部1の上端に固定された台座部3には風力発電用機30を設置する。
この着床式洋上架台200の支柱部1の重量Wは、
W=支柱部の重量+重り部の重量+パイル部の重量
=982t+2167t+24.7t=3173.7t
となって、約3174tとなり、その重心Gの位置は、図4に示すように、支柱部1の下端部となる。
また、この着床式洋上架台200は、支柱部1の内部を中空として浮体部4を設けている。この浮体部4は、支柱部1の内部において約18mにわたって形成された中空部14と考えると、この浮体部4にはたらく実質的な浮力Pは、以下のように考えることができる。
P=浮体部の中空部の容積×海水の比重
=4.9m×4.9m×3.14×18m×1.03t/m
=1356t
また、この浮体部4にはたらく浮力Pの浮心Fは、浮体部4の中心であって、図1に示すように、支柱部1のほぼ中央部分となる。
以上のように、この着床式洋上架台100は、重心Gが支柱部1の下端部に位置することで低重心を実現しながら、支柱部1に設けたパイル部6をベース部2に貫通させて海底50に埋設することで、海底50に確実に固定できる。また、支柱部1に形成される浮体部4にはたらく浮力の中心である浮心Fを支柱部1の中央部に配置することで、上下に延長された支柱部1を安定して鉛直姿勢に保持することができる。
本発明の着床式洋上架台は、洋上で風況などの気象データの計測を行う風況観測機や洋上風力発電機を支持する架台として好適に使用できる。
100、200…着床式洋上架台
1…支柱部
2…ベース部
3…台座部
4…浮体部
5…索体
6…パイル部
10…鋼管
11…フランジ部
12…連結具
13…隔壁
13A…挟着プレート
13B…分割プレート
14…中空部
14A…区画室
15…重り部
16…固定リブ
17…固定具
18…連結部
19…鋼管
21…コンクリートケーソン
22…固定部
23…アンカー
25…金属プレート
25A…貫通穴
26…固定杭
30…風力発電機
31…ブレード
32…発電機
33…ナセル
34…タワー
35…風況観測機
50…海底
110…主柱
120…ブーム
130…ワイヤ
140…計測機器
201…風向風速計
202…海面
203…高さ保持用ポール
204…浮力体
205…係留索
206…シンカー
207…姿勢保持用ロッド

Claims (8)

  1. 風力発電を行う風力発電機又は風力発電用の風況データの計測を行う風況観測機を洋上に設置するための架台であって、
    風力発電機又は風況観測機を設置するための台座部と、
    下端を海底に配置して、上端を洋上に突出させるように上下方向に延長されて、上端部に前記台座部を固定してなる支柱部と、
    海底に載置されて、前記支柱部の下端部が固定されるベース部と、
    を備え、
    前記支柱部は、少なくとも一部を中空とする浮体部を備えており、
    前記浮体部にはたらく浮力の浮心が、前記ベース部が固定された該支柱部の重心よりも上方に位置して、該支柱部を鉛直姿勢に保持するようにしてなる着床式洋上架台。
  2. 請求項1に記載の着床式洋上架台であって、さらに、
    前記支柱部を海底に固定するための複数の索体を備えており、
    複数の前記索体が、前記支柱部の中間部から放射状に張設されて海底に固定されてなる着床式洋上架台。
  3. 請求項1又は2に記載の着床式洋上架台であって、
    前記支柱部が円筒状の鋼管で形成されており、前記鋼管の内部を中空として前記浮体部を構成してなる着床式洋上架台。
  4. 請求項3に記載の着床式洋上架台であって、
    前記浮体部が、内部に隔壁を備えており、前記隔壁を介して中空状の内部を複数に区画してなる着床式洋上架台。
  5. 請求項3又は4に記載の着床式洋上架台であって、
    前記支柱部が、下端部を中実として重り部を形成してなる着床式洋上架台。
  6. 請求項3又は4に記載の着床式洋上架台であって、
    前記支柱部が、下部にコンクリートブロックを一体的に連結して重り部を形成してなる着床式洋上架台。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載の着床式洋上架台であって、
    前記ベース部がコンクリートケーソンで、前記コンクリートケーソンの重量が、前記浮体部にはたらく浮力よりも大きい着床式洋上架台。
  8. 請求項1から6のいずれか一項に記載の着床式洋上架台であって、
    前記ベース部が、海底に敷設された金属プレートであって、
    前記支柱部は、下端部を中実とすると共に、下端から下方に突出するパイル部を有しており、
    前記パイル部を前記金属プレートに貫通させて海底に埋設してなる着床式洋上架台。
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