JP2021001165A - オンコスタチンm受容体シグナリング制御による尿路結石の予防と治療 - Google Patents

オンコスタチンm受容体シグナリング制御による尿路結石の予防と治療 Download PDF

Info

Publication number
JP2021001165A
JP2021001165A JP2020105541A JP2020105541A JP2021001165A JP 2021001165 A JP2021001165 A JP 2021001165A JP 2020105541 A JP2020105541 A JP 2020105541A JP 2020105541 A JP2020105541 A JP 2020105541A JP 2021001165 A JP2021001165 A JP 2021001165A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oncostatin
osm
receptor
gene
antibody
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020105541A
Other languages
English (en)
Inventor
吉博 森川
Yoshihiro Morikawa
吉博 森川
忠祐 小森
Tadasuke Komori
忠祐 小森
真平 山下
Shimpei Yamashita
真平 山下
康夫 柑本
Yasuo Kojimoto
康夫 柑本
勲 原
Isao Hara
勲 原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Wakayama Medical University
Original Assignee
Wakayama Medical University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Wakayama Medical University filed Critical Wakayama Medical University
Publication of JP2021001165A publication Critical patent/JP2021001165A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)

Abstract

【課題】結石の形成を抑制し得る新規な尿路結石症治療薬を提供すること。【解決手段】オンコスタチンMもしくはその受容体の機能又は発現を阻害する物質を含有してなる、尿路結石の形成抑制剤。【選択図】なし

Description

本発明は、結石の形成を抑制し得る新規の尿路結石症の予防・治療剤に関する。より詳細には、本発明は、オンコスタチンMもしくはその受容体の機能又は発現を阻害する物質を含有してなる、尿路結石の形成抑制剤等に関する。
尿路結石症は、腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる疾患であり、尿管に嵌頓することにより疝痛発作や血尿を来すばかりでなく、水腎症による腎後性腎不全の原因となる。食生活や生活様式の欧米化、人口構成の高齢化などに伴い、本邦における尿路結石症の年間罹患率は増加傾向にある。また、生涯罹患率も高く、男性では7人にl人、女性では15人にl人が、一生に一度は尿路結石症に罹患する(非特許文献1)。
尿路結石症は5年再発率が40〜50%と高く、医療経済を圧迫している。その原因として、現在の尿路結石の治療法は内服薬による排石促進や外科的治療による結石破砕が主であり、結石の形成自体を抑制する治療法が確立されていないことが挙げられる。従って、結石の形成を抑制する新たな治療薬の開発が求められている。
オンコスタチンM(OSM)は、その受容体複合体の中にgp130を共有するIL-6ファミリーに属するサイトカインである。OSMはヒト腫瘍細胞の増殖抑制作用を有する因子として見出されたが、抗腫瘍作用のみならず、多彩な機能を担う分子であることが明らかとなってきている。本発明者らは以前、OSMがその受容体を介して疼痛に関与しており、OSMアンタゴニストの投与やOSM受容体(OSMR)を発現する侵害受容性ニューロンの選択的除去により、疼痛を抑制し得ることを報告した(特許文献1)。また、OSMはその受容体を介して、肥満における脂肪組織の炎症及びインスリン抵抗性を改善することも報告している(特許文献2)。しかしながら、OSM又はOSMRと、尿路結石との関連については全く知られていない。
特開2005-247836号公報 特開2013-67593号公報
Yasui, T. et al., Urology, 71(2): 209-213 (2008)
本発明の目的は、結石の形成を抑制し得る新規な尿路結石症治療薬を提供することである。
尿路結石はシュウ酸カルシウム結晶が結晶結合タンパク質(オステオポンチンやアネキシン2等)と結合することにより形成される。本発明者らは、尿路結石の形成過程に関与する分子を同定すべく、尿路結石症モデルであるグリオキシレート投与マウスの腎臓における遺伝子発現の変動を調べたところ、尿細管内にシュウ酸カルシウム結晶が出現すると、腎尿細管においてOSMの産生が増加するとともに、尿細管上皮細胞にOSMRが発現することを見出した。そこで、オンコスタチンM受容体β(OSMRβ)欠損マウスにグリオキシレートを投与すると、シュウ酸カルシウム結晶の形成はほとんど認められなかった。OSMRβ欠損マウスでは、グリオキシレート投与後の腎臓における炎症関連遺伝子の発現上昇が抑制され、マクロファージ(特に炎症惹起型のM1マクロファージ)の細胞数が顕著に減少した。さらに、OSMRβ欠損マウスでは、グリオキシレート投与後の腎臓における結晶結合タンパク質の発現が抑制された。一方で、野生型マウス由来の尿細管上皮細胞をOSMで刺激すると、結晶結合タンパク質の発現が上昇し、野生型マウス由来の線維芽細胞をOSMで刺激すると、炎症性サイトカインであるTNF-αの発現が上昇することを見出した。
以上の知見に基づいて、本発明者らは、シュウ酸カルシウム結晶の出現により尿細管上皮細胞におけるOSMの発現が上昇し、当該細胞におけるOSMRを介したシグナリングが活性化され、その結果、種々の結晶結合タンパク質の発現が誘導されてシュウ酸カルシウム結晶と結合し、尿路結石を形成するものと結論した(図8上パネル参照)。そして、OSMRからのシグナルを遮断することにより、結晶結合タンパク質の発現を抑制して、尿路結石の形成、即ち尿路結石症の発症・再発を予防し得ることを示して(図8下パネル参照)、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]オンコスタチンMもしくはその受容体の機能又は発現を阻害する物質を含有してなる、尿路結石の形成抑制剤。
[2]オンコスタチンMの機能を阻害する物質が、
(a)オンコスタチンMに対する抗体、又は
(b)オンコスタチンMに対するアンタゴニスト
であり、
オンコスタチンMの発現を阻害する物質が、
(c)オンコスタチンM遺伝子の転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体、
(d)オンコスタチンM遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸、又は
(e)オンコスタチンM遺伝子の転写産物に対するリボザイム核酸
である、[1]に記載の剤。
[3]オンコスタチンMの受容体の機能を阻害する物質が、
(a)オンコスタチンM受容体βに対する抗体、又は
(b)オンコスタチンM受容体βに対するアンタゴニスト
であり、
オンコスタチンM受容体の発現を阻害する物質が、
(c)オンコスタチンM受容体β遺伝子の転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体、
(d)オンコスタチンM受容体β遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸、又は
(e)オンコスタチンM受容体β遺伝子の転写産物に対するリボザイム核酸
である、[1]に記載の剤。
[4]オンコスタチンMの受容体の機能を阻害する物質が、オンコスタチンM受容体βに対する抗体であり、該抗体が細胞毒素とのコンジュゲートの形態である、[3]に記載の剤。
[5]尿路結石症の予防又は治療用である、[1]〜[4]のいずれかに記載の剤。
[6]オンコスタチンMに特異的に結合する物質を含有してなる、尿路結石症のリスク診断剤。
[7]尿路結石の形成抑制薬のスクリーニング方法であって、
(1)被検物質の存在下及び非存在下で、オンコスタチンMとその受容体とを接触させる工程、
(2)上記両条件におけるオンコスタチンMとその受容体との結合を比較する工程、並びに
(3)オンコスタチンMとその受容体との結合を減少させた被検物質を、尿路結石の形成抑制薬の候補として選択する工程を含む、方法。
[8]尿路結石の形成抑制薬のスクリーニング方法であって、
(1)被検物質の存在下及び非存在下で、オンコスタチンM受容体を発現する細胞にオンコスタチンMを接触させる工程、
(2)上記両条件におけるオンコスタチンM受容体シグナリングを比較する工程、並びに
(3)オンコスタチンM受容体シグナリングを減少させた被検物質を、尿路結石の形成抑制薬の候補として選択する工程を含む、方法。
本発明によれば、OSMRシグナリングを遮断することで結晶結合タンパク質の発現を抑制し、尿路結石の形成を防止できるので、尿路結石症の根本的な予防及び治療(進展抑制・再発防止)が可能となる。また、OSM-OSMRシグナル伝達系を用いて、新規の尿路結石症の予防・治療薬を探索することができる。
尿路結石症モデルマウスの腎臓におけるOSM(A)、及びOSMRβ(B)の発現を示す図である。 グリオキシレート投与後6日目の腎臓におけるOSM、及びOSMRβの発現を示す図である。矢頭は二重陽性細胞を示す。スケールバー=100μm OSMRβ欠損マウスにおけるグリオキシレート投与後の結晶形成を示す図である。*P<0.05 スケールバー=500μm 図3Aの左下は四角で囲んだ部分の拡大図である。 OSMRβ欠損マウスにおけるグリオキシレート投与後の炎症関連遺伝子(TNF-α(A)、IL-1β(B)、F4/80(C)、及びMCP-1(D))の発現変化を示す図である。*P<0.05 OSMRβ欠損マウスにおけるグリオキシレート投与後の腎総マクロファージ(A)及びM1マクロファージ(B)の細胞数の変化を示す図である。*P<0.05 OSMRβ欠損マウスにおけるグリオキシレート投与後の結晶結合蛋白(オステオポンチン(OPN; A)、アネキシンa1(ANXa1; B)、アネキシンa2(ANXa2; C)及びKIM1(D))の発現変化を示す図である。*P<0.05 尿細管上皮細胞における結晶結合蛋白の遺伝子発現変化を示す図である。(A)グリオキシレート投与開始後6日目の腎臓におけるOSMRβとオステオポンチン(OPN)の発現。(B)OSMで刺激した野生型マウスの尿細管上皮細胞におけるOPN、アネキシンa1(ANXa1)、及びアネキシンa2(ANXa2)の発現。(C)OSMで刺激した野生型マウス由来の線維芽細胞(Fibroblast)、マクロファージ(Macrophage)、及び尿細管上皮細胞(PREC)におけるTNF-αの発現。*P<0.05 スケールバー=100μm 通常の尿路結石の形成過程(上パネル)及びOSMRβシグナルを遮断することによる尿路結石の形成抑制のメカニズムの模式図である。 グリオキシレート投与による結晶形成に対する抗OSMRβ抗体(clone 7D2)の抑制効果を示す図である。(A)8週齢の野生型マウス(C57BL/6J)の背部皮下に7D2(80 μg)、又はそのアイソタイプコントロール抗体(Isotype)(80 μg)を膨潤させたメドジェルを埋め込み、その2日後よりグリオキシレート(80 mg/kg体重)を6日間連日腹腔内投与した場合の、腎臓における結晶形成。(B)ピゾラート染色陽性の結晶の面積を腎全体の面積で補正し、定量化した。スケールバー=500μm グリオキシレート投与後の結晶結合蛋白(オステオポンチン(OPN)、アネキシンa1(ANXa1)、アネキシンa2(ANXa2))、及び炎症関連分子(TNF-α、IL-1β、F4/80、MCP-1)の発現に対する抗OSMRβ抗体(7D2)の抑制効果を示す図である。*P<0.05
本発明は、オンコスタチンMもしくはその受容体の機能又は発現を阻害する物質を含有してなる、尿路結石の形成抑制剤(以下、「本発明の結石抑制剤」ともいう。)を提供する。
本明細書において「尿路結石」とは、腎臓から尿道までの尿路に生じる結石であれば特に限定されず、例えば、シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シスチン結石及びそれらが混在する結石が挙げられるが、好ましくは、カルシウム結石、より好ましくはシュウ酸カルシウム結石である。
(オンコスタチンM(OSM))
本発明の結石抑制剤の標的分子の1つであるオンコスタチンM(OSM)は、IL-6ファミリーに属するサイトカインであり、ヒトでは、配列番号2で表される252アミノ酸からなるアミノ酸配列を有する前駆体として翻訳された後、1-25位のシグナルペプチド及びC末端の31アミノ酸が除かれ、26-221位の196アミノ酸からなる成熟型となる。
本明細書において、「オンコスタチンM(OSM)」とは、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質である。本明細書において、タンパク質及びペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。
「配列番号2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」とは、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるヒトOSMの、他の温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)におけるオルソログのアミノ酸配列;又は
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるヒトOSMもしくは上記(a)のオルソログの天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型におけるアミノ酸配列
を意味する。
好ましくは、OSMは配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるヒトOSMもしくはその天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型である。該遺伝子多型としては、例えば、dbSNPにrs5763919として登録されている、9位のThr(ACG)がMet(ATG)に置換するSNPが挙げられるが、それに限定されない。
(オンコスタチンM受容体(OSMR))
本発明の結石抑制剤の他方の標的分子であるオンコスタチンM受容体(OSMR)は、OSMと結合して下流の因子にシグナルを伝達する細胞表面受容体であり、OSM特異的なオンコスタチンM受容体β(OSMRβ)と、IL-6ファミリーの受容体に共通するgp130とのヘテロ二量体である。OSMはOSMRβ及びgp130のいずれとも低親和性で結合できるが、単独で結合しても細胞内にシグナルを伝達できない。OSMRβは1回膜貫通型のタンパク質であり、ヒトでは、配列番号4で表される979アミノ酸からなるアミノ酸配列を有し、そのうち1-27位がシグナルペプチドであり、28-740位が細胞外領域、741-761位が膜貫通領域、762-979位が細胞内領域である。
本明細書において、「OSMRβ」とは、配列番号4で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質である。「配列番号4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」とは、
(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるヒトOSMRβの、他の温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)におけるオルソログのアミノ酸配列;又は
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるヒトOSMRβもしくは上記(a)のオルソログの天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型におけるアミノ酸配列
を意味する。
好ましくは、OSMRβは配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるヒトOSMRβもしくはその天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型である。該遺伝子多型としては、例えば、dbSNPにrs34675408として登録されている、187位のHis(CAT)がGln(CAG)に置換するSNPが挙げられるが、それに限定されない。
(OSMの機能抑制物質)
本発明において「OSMの機能を抑制する物質」とは、いったん機能的に産生されたOSMの結石形成促進機能(例、尿細管上皮細胞におけるOSMRの発現誘導、尿細管上皮細胞におけるOSMRを介した結晶結合タンパク質の発現誘導、腎臓における結晶形成促進、腎臓における炎症関連遺伝子の発現誘導、腎臓におけるM1マクロファージの誘導、腎線維芽細胞におけるTNF-αの発現誘導等)を抑制する限りいかなるものでもよく、例えば、OSMに結合してOSMRとの結合を阻害することにより、OSMRのシグナリングを遮断する物質等が挙げられる。
具体的には、OSMの機能を抑制する物質として、例えば、OSMに対する抗体が挙げられる。該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。また、該抗体は、OSMを特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
好ましい一実施態様において、OSMに対する抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、該抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス−ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、常法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生マウスやファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。
OSMの機能を抑制する物質はまた、例えば、受容体であるOSMRと競合的にOSMに結合するアンタゴニストであってもよい。そのようなアンタゴニストとしては、例えば、OSMRβもしくはgp130の細胞外領域又はその複合体、あるいはOSMとの結合ドメインを含むそれらのフラグメント等が挙げられる。また、OSMに対するアンタゴニストは、OSMとOSMRとを用いた競合アッセイ系を構築し、化合物ライブラリーをスクリーニングすることにより取得することもできる。
別の好ましい一実施態様において、OSMの機能を抑制する物質として、例えば、米国特許出願公開第2015/0093391号明細書の表1及び2に記載される低分子化合物等を挙げることができる。
(OSMの発現抑制物質)
本発明において「OSMの発現を抑制する物質」とは、OSM遺伝子の転写レベル、転写後調節のレベル、タンパク質への翻訳レベル、翻訳後修飾のレベル等のいかなる段階で作用するものであってもよい。従って、OSMの発現を抑制する物質としては、例えば、OSM遺伝子の転写を阻害する物質(例、アンチジーン)、初期転写産物からmRNAへのプロセッシングを阻害する物質、mRNAの細胞質への輸送を阻害する物質、mRNAからタンパク質への翻訳を阻害するか(例、アンチセンス核酸、miRNA)あるいはmRNAを分解する(例、siRNA、リボザイム、miRNA)物質、初期翻訳産物の翻訳後修飾を阻害する物質などが含まれる。いずれの段階で作用するものであっても用いることができるが、mRNAに相補的に結合してタンパク質への翻訳を阻害するかあるいはmRNAを分解する物質が好ましい。
OSM遺伝子のmRNAからタンパク質への翻訳を特異的に阻害する(あるいはmRNAを分解する)物質として、好ましくは、該mRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列またはその一部を含む核酸が挙げられる。
OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列とは、生理的条件下において、該mRNAの標的配列に結合してその翻訳を阻害し得る(あるいは該標的配列を切断する)程度の相補性を有するヌクレオチド配列を意味し、具体的には、例えば、該mRNAのヌクレオチド配列と完全相補的なヌクレオチド配列(すなわち、mRNAの相補鎖のヌクレオチド配列)と、オーバーラップする領域に関して、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有するヌクレオチド配列である。本発明における「ヌクレオチド配列の相同性」は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。
より具体的には、OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列とは、配列番号1で表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列である。ここで「ストリンジェントな条件」とは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons,6.3.1-6.3.6, 1999に記載される条件、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1% SDS/50〜65℃での一回以上の洗浄等が挙げられるが、当業者であれば、これと同等のストリンジェンシーを与えるハイブリダイゼーションの条件を適宜選択することができる。
OSM遺伝子のmRNAの好ましい例としては、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を含むヒトOSM、あるいは他の温血動物におけるそのオルソログ、さらにはそれらの天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型などのmRNAがあげられる。
「OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列の一部」とは、OSM遺伝子のmRNAに特異的に結合することができ、且つ該mRNAからのタンパク質の翻訳を阻害(あるいは該mRNAを分解)し得るものであれば、その長さや位置に特に制限はないが、配列特異性の面から、標的配列に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは19塩基以上含むものである。
具体的には、OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列の一部を含む核酸として、以下の(a)〜(c)のいずれかのものが好ましく例示される。
(a) OSM遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
(b) OSM遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
(c) OSM遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸
(a) OSM遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
本明細書においては、OSM遺伝子のmRNAに相補的なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、いわゆるsiRNAは、OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。
siRNAは、標的遺伝子のcDNA配列情報に基づいて、例えば、Elbashirら(Genes Dev., 15, 188-200 (2001))の提唱する規則に従って設計することができる。また、siRNAの前駆体であるショートヘアピンRNA(shRNA)は、ループ構造を形成しうる任意のリンカー配列(例えば、5-25塩基程度)を適宜選択し、設計したセンス鎖とアンチセンス鎖とを該リンカー配列を介して連結することにより取得することができる。
siRNA及び/又はshRNAの配列は、種々のwebサイト上に無料で提供される検索ソフトを用いて検索が可能である。このようなサイトとしては、例えば、Dharmaconが提供するsiDESIGN Center(http://dharmacon.horizondiscovery.com/jp/design-center/?rdr=true&LangType=1041&pageid=17179928204)、GenScriptが提供するsiRNA Target Finder(https://www.genscript.com/tools/sirna-target-finder )等が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書においては、OSM遺伝子のmRNAを標的とするマイクロRNA(miRNA)もまた、OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。miRNAは、種々のwebサイト上に無料で提供される標的予測ソフトを用いて検索が可能である。このようなサイトとしては、例えば、米国ホワイトヘッド研究所が公開しているTargetScan(http://www.targetscan.org/vert_72/)、ギリシアのアレクサンダー・フレミング生体医科学研究センターが公開しているDIANA-micro-T-CDS(http://diana.imis.athena-innovation.gr/DianaTools/index.php?r=microT_CDS/index)等が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、チェザレー大学・パスツール研究所等が公開している、標的mRNAに作用することが実験的に証明されているmiRNAに関するデータベースであるTarBase(http://carolina.imis.athena-innovation.gr/diana_tools/web/index.php?r=tarbasev8/index)を用いて、OSM mRNAを標的とするmiRNAを検索することもできる。
siRNA及び/又はshRNA、あるいはmiRNA及び/又はpre-miRNAを構成するヌクレオチド分子は、天然型のRNAもしくはDNAでもよいが、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンス核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、-OR(R=CH3(2’-O-Me)、CH2CH2OCH3(2’-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。
RNAの糖部のコンフォーメーションはC2’-endo(S型)とC3’-endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的RNAに対して強い結合能を付与するために、2’酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したRNA誘導体であるBNA(LNA)(Imanishi, T. et al., Chem. Commun., 1653-9, 2002; Jepsen, J.S. et al., Oligonucleotides, 14, 130-46, 2004)やENA(Morita, K. et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 1619-21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。
siRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、siRNAの前駆体となるshRNAを合成し、これをダイサー(dicer)を用いて切断することにより調製することもできる。miRNA及びpre-miRNAは、それらの配列情報に基づいて、DNA/RNA自動合成機で合成することができる。
本明細書においては、生体内でOSM遺伝子のmRNAに対するsiRNA又はmiRNAを生成し得るようにデザインされた核酸もまた、OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。そのような核酸としては、上記したshRNAもしくはsiRNA又はmiRNAもしくはpre-miRNAを発現するように構築された発現ベクターなどが挙げられる。プロモーターとしては、短いRNAの転写を正確に行わせるために、polIII系プロモーターを使用するのが一般的である。polIII系プロモーターとしては、マウスおよびヒトのU6-snRNAプロモーター、ヒトH1-RNase P RNAプロモーター、ヒトバリン-tRNAプロモーターなどが挙げられる。また、転写終結シグナルとして4個以上Tが連続した配列が用いられる。miRNAやpre-miRNAの発現カセットも、shRNAと同様にして作製することができる。
このようにして構築したsiRNAもしくはshRNA又はmiRNAもしくはpre-miRNA発現カセットを、次いでプラスミドベクターやウイルスベクターに挿入する。このようなベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルスなどのウイルスベクターや、動物細胞発現プラスミドなどが用いられる。
(b) OSM遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
本発明における「OSM遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸」とは、該mRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列またはその一部を含む核酸であって、標的mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、タンパク質合成を抑制する機能を有するものである。
アンチセンス核酸は、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに、公知の修飾の付加されたものであってもよい。修飾されたヌクレオチドは糖部分が修飾されていてもよい。上記の通り、アンチセンス核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。アンチセンス核酸がDNAの場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNase Hに認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起こすことができる。したがって、RNase Hによる分解を指向するアンチセンスDNAの場合、標的配列は、mRNA中の配列だけでなく、OSM遺伝子の初期翻訳産物におけるイントロン領域の配列であってもよい。
本発明のアンチセンス核酸の標的領域は、該アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、結果としてタンパク質への翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、タンパク質をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAもしくは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性、細胞内移行性の問題等を考慮すれば、約10〜約40塩基、特に約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいが、それに限定されない。
アンチセンス核酸を構成するヌクレオチド分子もまた、安定性、比活性などを向上させるために、上記のsiRNA等の場合と同様の修飾を受けていてもよい。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、OSM遺伝子のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。また、上記した各種修飾を含むアンチセンス核酸も、いずれも自体公知の手法により、化学的に合成することができる。
(c) OSM遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸
OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列またはその一部を含む核酸の他の例としては、該mRNAをコード領域の内部で特異的に切断し得るリボザイム核酸が挙げられる。「リボザイム」とは、狭義には、核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。
OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列またはその一部を含む核酸は、リポソーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療に適用されたり、付加された形態で与えられることができる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
本発明におけるOSMの発現を抑制する物質は、上記のようなOSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列またはその一部を含む核酸に限定されず、OSMタンパク質の産生を直接的または間接的に阻害する限り、低分子化合物などの他の物質であってもよい。
(OSMRの機能抑制物質)
本発明において「OSMRの機能を抑制する物質」とは、いったん機能的に産生されたOSMRの結石形成促進機能(例、尿細管上皮細胞における結晶結合タンパク質の発現誘導、腎臓における結晶形成促進、腎臓における炎症関連遺伝子の発現誘導、腎臓におけるM1マクロファージの誘導、腎線維芽細胞におけるTNF-αの発現誘導等)を抑制する限りいかなるものでもよく、例えば、OSMRに結合してOSMとの結合を阻害することにより、OSMからのシグナルの伝達を遮断する物質等が挙げられる。
具体的には、OSMRの機能を抑制する物質として、例えば、OSMRβ及び/又はgp130に対する抗体が挙げられる。該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。また、該抗体は、OSMR(OSMRβ、gp130又はそれらの複合体)の細胞外領域を特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
gp130はIL-6ファミリーに属するサイトカインの受容体に共通する受容体サブユニットであるため、gp130を単独で認識する抗体は、他のIL-6ファミリーのサイトカイン受容体にも作用し、好ましくない影響を及ぼす可能性がある。従って、OSMRに対する抗体は、好ましくはOSMRβに対する抗体、又はOSMRβとgp130との複合体に対する抗体である。
好ましい一実施態様において、OSMRに対する抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、該抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス−ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、常法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生マウスやファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。
別の好ましい実施態様において、OSMRに対する抗体は、細胞毒素とのコンジュゲートの形態で提供され得る。OSMRを発現する尿細管上皮細胞や腎間質の線維芽細胞を選択的に除去することにより、OSMRを介したシグナリングを遮断するのと同様の効果を奏することができるので、OSMRに対する抗体を用いて、細胞毒素をOSMRを発現する尿細管上皮細胞や腎間質の線維芽細胞に選択的に送達することで、当該細胞を選択的に傷害することができる。ここで細胞毒素としては、例えば、サポリン、ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
OSMRの機能を抑制する物質はまた、例えば、リガンドであるOSMと競合的にOSMRに結合するアンタゴニストであってもよい。そのようなアンタゴニストとしては、例えば、OSMRβ及び/又はgp130に結合するが、OSMRにシグナルを伝達しないOSMのドミナントネガティブ変異体等が挙げられる。また、OSMRに対するアンタゴニストは、OSMRとOSMとを用いた競合アッセイ系を構築し、化合物ライブラリーをスクリーニングすることにより取得することもできる。
(OSMRの発現抑制物質)
本発明において「OSMRの発現を抑制する物質」とは、OSMRβ遺伝子及び/又はgp130遺伝子、好ましくはOSMRβ遺伝子の、転写レベル、転写後調節のレベル、タンパク質への翻訳レベル、翻訳後修飾のレベル等のいかなる段階で作用するものであってもよい。従って、OSMRの発現を抑制する物質としては、例えば、OSMRβ遺伝子及び/又はgp130遺伝子、好ましくはOSMRβ遺伝子の、転写を阻害する物質(例、アンチジーン)、初期転写産物からmRNAへのプロセッシングを阻害する物質、mRNAの細胞質への輸送を阻害する物質、mRNAからタンパク質への翻訳を阻害するか(例、アンチセンス核酸、miRNA)あるいはmRNAを分解する(例、siRNA、リボザイム、miRNA)物質、初期翻訳産物の翻訳後修飾を阻害する物質などが含まれる。いずれの段階で作用するものであっても用いることができるが、mRNAに相補的に結合してタンパク質への翻訳を阻害するかあるいはmRNAを分解する物質が好ましい。
OSMRβ遺伝子及び/又はgp130遺伝子、好ましくはOSMRβ遺伝子のmRNAからタンパク質への翻訳を特異的に阻害する(あるいはmRNAを分解する)物質として、好ましくは、該mRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列またはその一部を含む核酸が挙げられる。
OSMRβ遺伝子及び/又はgp130遺伝子、好ましくはOSMRβ遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列とは、生理的条件下において、該mRNAの標的配列に結合してその翻訳を阻害し得る(あるいは該標的配列を切断する)程度の相補性を有するヌクレオチド配列を意味し、具体的には、例えば、該mRNAのヌクレオチド配列と完全相補的なヌクレオチド配列(すなわち、mRNAの相補鎖のヌクレオチド配列)と、オーバーラップする領域に関して、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有するヌクレオチド配列である。本発明における「ヌクレオチド配列の相同性」は、上記と同様にして計算することができる。
より具体的には、OSMRβ遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列とは、配列番号3で表されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列である。ここで「ストリンジェントな条件」とは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons,6.3.1-6.3.6, 1999に記載される条件、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1% SDS/50〜65℃での一回以上の洗浄等が挙げられるが、当業者であれば、これと同等のストリンジェンシーを与えるハイブリダイゼーションの条件を適宜選択することができる。
OSMRβ遺伝子のmRNAの好ましい例としては、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を含むヒトOSM、あるいは他の温血動物におけるそのオルソログ、さらにはそれらの天然のアレル変異体もしくは遺伝子多型などのmRNAがあげられる。
「OSMRβ遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列の一部」とは、OSMRβ遺伝子のmRNAに特異的に結合することができ、且つ該mRNAからのタンパク質の翻訳を阻害(あるいは該mRNAを分解)し得るものであれば、その長さや位置に特に制限はないが、配列特異性の面から、標的配列に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは19塩基以上含むものである。
具体的には、OSMRβ遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列の一部を含む核酸として、以下の(a)〜(c)のいずれかのものが好ましく例示される。
(a) OSMRβ遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
(b) OSMRβ遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
(c) OSMRβ遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸
これらの核酸の具体的な態様や、それらの製造方法は、標的のmRNAがOSMRβ遺伝子のmRNAに置き換わることを除いて、上記「OSM遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列の一部を含む核酸」の場合と同様である。
(OSM又はOSMRに対する抗体、OSM又はOSMRの発現もしくは機能を抑制する低分子化合物等を含有する医薬)
OSM又はOSMRに対する抗体や、OSM又はOSMRの発現もしくは機能を抑制する低分子化合物は、OSMRのシグナリングを遮断して結晶結合タンパク質の発現を抑制し、尿路結石の形成を抑制することができる。したがって、これらの物質は、尿路結成の形成抑制薬、ひいては尿路結石症の予防及び/又は治療薬として使用することができる。ここで「予防」とは、発症を防止することだけでなく、発症を遅延させることを含む。また「治療」とは、形成した尿路結石の進展抑制、再発の予防を含む。
上記の抗体や低分子化合物を含有する医薬は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは他の温血動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、ニワトリなど)、好ましくはヒト、特に尿路結石症のハイリスク群(例、高カルシウム尿症及び/又は高尿酸尿症患者、尿路結石症の家族歴のある者)や尿路結石症の既往歴のある者に対して、経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
上記の抗体や低分子化合物は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、上記の抗体もしくは低分子化合物またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってもよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤、鼻腔内投与剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の抗体もしくは低分子化合物またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されても良い。
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。抗体や低分子化合物は、投薬単位剤形当たり通常0.1〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mg含有されていることが好ましい。
上記の抗体もしくは低分子化合物またはその塩を含有する上記医薬の投与量は、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、抗体もしくは低分子化合物を1回量として、通常0.0001〜20mg/kg体重程度、低分子化合物であれば1日1〜5回程度、経口または非経口で、抗体であれば1日〜数ヶ月に1回、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
なお前記した各組成物は、上記抗体や低分子化合物との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。例えば、他の活性成分として、マグネシウム、クエン酸、アロプリロール等の尿酸生成抑制薬、サイアザイド等が挙げられるが、これらに限定されない。
(アンチセンス核酸、リボザイム核酸、siRNAおよびその前駆体を含有する医薬)
OSM又はOSMR遺伝子の転写産物に相補的に結合し、該転写産物からのタンパク質の翻訳を抑制することができる本発明のアンチセンス核酸(もしくはmiRNA)や、OSM又はOSMR遺伝子の転写産物における相同な(もしくは相補的な)塩基配列を標的として該転写産物を切断し得るsiRNA(もしくはリボザイム、miRNA)、さらに該siRNAやmiRNAの前駆体であるshRNAやpre-miRNAなど(以下、包括的に「本発明の核酸」という場合がある)は、尿路結成の形成抑制薬、ひいては尿路結石症の予防及び/又は治療薬として使用することができる。
本発明の核酸を含有する医薬はそのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは非ヒト温血動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、ニワトリなど)、好ましくはヒト、特に尿路結石症のハイリスク群(例、高カルシウム尿症及び/又は高尿酸尿症患者、尿路結石症の家族歴のある者)や尿路結石症の既往歴のある者に対して、経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
本発明の核酸を尿路結石の形成抑制薬として使用する場合、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。即ち、本発明の核酸を単独で用いてもよいし、あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当な哺乳動物細胞用の発現ベクターに機能可能な態様で挿入することもできる。該核酸は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記核酸を単独またはリポソームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与してもよい。
本発明の核酸は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明の核酸と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤、鼻腔内投与剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の核酸を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記核酸を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されてもよい。
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。本発明の核酸は、例えば、投薬単位剤形当たり通常0.01〜500mg程度含有されていることが好ましい。
本発明の核酸を含有する上記医薬の投与量は、投与対象、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、本発明の核酸を1回量として、通常0.0001〜20mg/kg体重程度を、1日〜6ヶ月に1回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
なお前記した各組成物は、本発明の核酸との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。他の活性成分としては、例えば、尿路結石症に対して治療効果を有する種々の化合物を適宜配合することができる。例えば、他の活性成分として、マグネシウム、クエン酸、アロプリロール等の尿酸生成抑制薬、サイアザイド等が挙げられるが、これらに限定されない。
(尿路結石症のリスク診断剤)
本発明はまた、OSMに特異的に結合する物質を含有してなる、尿路結石症のリスク診断剤を提供する。尿路結石の形成過程で尿細管上皮細胞におけるOSMの分泌発現量が著増するので、尿路結石症においては、尿中OSM量が増大していると考えられる。従って、例えば、被験動物、好ましくはヒト、より好ましくは尿路結石症が疑われるヒトより採尿し、該尿サンプル中のOSM量を測定し、健常者のそれと比較することで、尿路結石症の発症・再発リスクを診断することができる。
本発明の診断剤に含まれる「OSMに特異的に結合する物質」としては、上記のOSMに対する抗体やOSMに対するアンタゴニストを用いることができる。OSMの発現は、好ましくはOSMに対する抗体を用いて、各種免疫化学的手法を用いて検出することができる。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、[125I]、[131I]、[3H]、[14C]などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)などが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。
OSMに対する抗体を直接標識物質で標識してもよいし、間接的に標識してもよい。好ましい態様においては、抗OSM抗体は非標識抗体とし、該抗OSM抗体を作製した動物に対する抗血清や抗Ig抗体等の標識された二次抗体により、OSMを検出することができる。あるいは、ビオチン化した二次抗体を用いて、OSM-抗OSM抗体-二次抗体の複合体を形成させ、これを標識したストレプトアビジンを用いて可視化することもできる。
抗OSM抗体は、自体公知の適切な緩衝液中に溶解して凍結保存することができる。本発明の診断剤は、抗OSM抗体に加えて、標識化した二次抗体、反応用バッファー、ブロッキング液、洗浄液等を組み合わせてキット化することもできる。
本発明はまた、OSMとOSMRの結合阻害を指標とした、尿路結石の形成抑制薬のスクリーニング方法(本発明のスクリーニング法(I))を提供する。当該方法は、
(1)被検物質の存在下及び非存在下で、OSMとOSMRとを接触させる工程、
(2)上記両条件におけるOSMとOSMRとの結合を比較する工程、並びに
(3)OSMとOSMRとの結合を減少させた被検物質を、尿路結石の形成抑制薬の候補として選択する工程を含む。
ここでOSMRとしては、OSMRβ又はgp130を単独で用いることもできるが、OSMとの親和性を考慮すると、OSMβとgp130との複合体を用いることが望ましい。また、OSMRはその全長を使用してもよいし、OSMとの結合に必要なドメインを含むフラグメント、例えば細胞外領域を用いてもよい。
例えば、OSMRを固相化して、被検物質の存在下及び非存在下で該固相にOSMを接触させてインキュベートした後、液相を分離除去し、該固相に酵素や蛍光物質で標識した抗OSM抗体を反応させ、サンドイッチ法により固相に結合したOSM量を測定し、被検物質の存在下でOSM量が有意に減少した場合に、該被検物質を尿路結石の形成抑制薬の候補として選択することができる。
本発明はまた、OSMRのシグナリングの阻害を指標とした、尿路結石の形成抑制薬のスクリーニング方法(本発明のスクリーニング法(II))を提供する。当該方法は、
(1)被検物質の存在下及び非存在下で、OSMRを発現する細胞にOSMを接触させる工程、
(2)上記両条件におけるOSMRシグナリングを比較する工程、並びに
(3)OSMRシグナリングを減少させた被検物質を、尿路結石の形成抑制薬の候補として選択する工程を含む。
ここで、OSMRβ又はgp130を単独で用いてもOSMからのシグナル伝達は生じないので、OSMRとしては、OSMβとgp130との複合体が用いられる。OSMRを発現する細胞としては、例えば、尿細管上皮細胞や線維芽細胞が用いられ得る。
例えば、OSMRを発現する尿管上皮細胞を用いる場合、被検物質の存在下及び非存在下で当該細胞の培地にOSMを添加してインキュベートした後、例えば、当該細胞における結晶結合タンパク質(例、オステオポンチン、アネキシンa1、アネキシンa2、KIM1等)遺伝子の発現量を、RT-PCRや各種抗体を用いた免疫学的アッセイにより測定し、被検物質の存在下で該遺伝子の発現量が有意に減少した場合に、該被検物質を尿路結石の形成抑制薬の候補として選択することができる。あるいは、該結晶結合タンパク質遺伝子のプロモーターの下流にGFPやルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子を繋いだコンストラクトを細胞に導入し、同様にOSMで刺激して、被検物質の存在下と非存在下で、レポーターの発現量を比較し、被検物質の存在下で該レポーター遺伝子の発現量が有意に減少した場合に、該被検物質を尿路結石の形成抑制薬の候補として選択することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(材料及び方法)
動物
8週齢の雄性C57BL/6Jマウスを日本SLC (浜松) から購入した。OSMRβ-/-の作製プロトコールは既報 (Tanaka, M., et al. Blood 102: 3154-3162, 2003) のとおりである。ヘテロ接合性の繁殖ペアを用いて、我々の繁殖コロニーからOSMRβ+/+(WT; 野生型) 及びOSMRβ-/- の同腹仔を得た。すべてのマウスをSPF施設内において、12時間 明/暗サイクルで、温度は22-25℃、 湿度は50-60%相対湿度に制御された条件下で飼育した。マウスは自由摂餌 (MF; オリエンタル酵母, 東京)、自由摂水させた。すべての実験手順はthe National Institutes of Health Guide for the Care and Use of Laboratory Animals (NIH publication No. 80-23, revised 1978) 又は環境省の実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の経験に関する基準に従って行われ、また、和歌山県立医科大学の動物実験ガイドラインに従って、動物実験委員会により承認された。
マウスへのグリオキシレート(GOx)注射
既報(Okada, A., et al. Urological research 35: 89-99, 2007) に従って、マウスにグリオキシレート (GOx; PBS中に溶解, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO) 80 mg/kgを3, 6, 9, 12又は15日間、1日1回腹腔内注射することで腎臓結石症モデルマウスを作製した。
抗OSMRβ抗体(clone 7D2)の投与
本研究では、抗OSMRβ抗体(clone 7D2; Esashi E., et al. J Immunol 173: 4360-4367, 2004)、及びそのアイソタイプコントロール抗体(R&D Systems、ミネソタ、米国)を用いた。抗体の投与には、徐放用ハイドロゲルであるメドジェルシートII(新田ゼラチン、大阪、日本)を用いた。それぞれの抗体(1 mg/mlの濃度の抗体を80 μl)を8 mgのメドジェルに滴下し、4℃で一晩静置することで抗体をメドジェルシートIIに膨潤させた。抗体を膨潤させたメドジェルシートIIをマウス背部皮膚に埋め込み、その2日後よりグリオキシレート(80 mg/kg)を6日間マウスに連日投与した。
ピゾラート染色及び結晶沈着の定量
マウスをイソフルランで深麻酔し、氷冷した0.9% NaCl、次いで4%パラホルムアルデヒドで経心的に灌流した。次に、腎臓標本を素早く摘出し、同じ固定液中で、4℃、3時間又は4時間固定し、0.1 M PBS中の30%スクロース中で16時間凍結防止した。当該標本をoptimal cutting temperature (OCT) 包埋剤 (Sakura Finetek, Torrance, CA) 中に包埋し、ドライアイス上の冷ヘキサン中で急速凍結し、-80℃で保存した。凍結切片をクリオスタットを用いて、6μm厚で作製した。既報 (Pizzolato P. The journal of histochemistry and cytochemistry: official journal of the Histochemistry Society 12: 333-336, 1964) に従ってピゾラート染色を行い、シュウ酸塩含有結晶を検出した。結晶沈着の定量は、Image J (US National Institutes of Health, Bethesda, MD) を用いて、ピゾラート染色の陽性面積を測定し、腎臓の横断切片の総組織面積に対するパーセンテージとして表した。各腎臓において、120μm離れた複数の切片を選択した。
免疫組織化学染色
マウスをイソフルランで深麻酔し、氷冷した0.9% NaCl、次いで氷冷した改変Zamboni固定液 (0.1 M PBS中の2% パラホルムアルデヒド及び0.2% ピクリン酸)で経心的に灌流した。腎臓標本を素早く摘出し、同じ固定液中で、4℃、3時間固定した。次いで、すべての標本を0.1 M PBS中の20%スクロース中に16時間浸漬した。当該標本をOCT包埋剤中に包埋し、ドライアイス上の冷ヘキサン中で急速凍結し、-80℃で保存した。凍結切片をクリオスタットを用いて、6μm厚で、作製した。その後、既報(Komori, T., et al. J Biol Chem 287: 19985-19996, 2012) に従って、免疫蛍光組織染色を行った。簡潔に言えば、切片を5%正常ロバ血清で、室温で1時間プレインキュベートした後、一次抗体を4℃で、16時間、反応させた。一次抗体は以下のとおり希釈して用いた:ヤギ抗OSMRβ抗体 (1:200; R&D Systems, Minneapolis, MN), ヤギ抗OSM抗体 (1:100; Abcam, Cambridge, UK), ウサギ抗EpCAM抗体 (1:100; Abcam), ウサギ抗PDGFRβ抗体 (1:100; Abcam), ラット抗F4/80抗体 (1:50; Serotec, Oxford, UK), 及びウサギ抗OPN抗体 (1:100; Abcam)。次いで、切片をCy2又はCy3をコンジュゲートした二次抗体(Jackson ImmunoResearch) と室温で1時間反応させた。当該切片を4’, 6-diamino-2-phenylindole (DAPI) で対比染色した。デジタルCCDカメラ (オリンパス, 東京) を装着した蛍光顕微鏡 (オリンパス) を用いて免疫蛍光像を得た。
マウス腎臓からのシングルセル懸濁液の調製
マウスをイソフルランで深麻酔し、腎臓を素早く摘出した。腎臓をみじん切りにし、gentleMACS Dissociator (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany) を用い、2% 胎児ウシ血清(FCS) を添加したダルベッコ改変イーグル培地 (DMEM; Invitrogen, Carlsbad, CA) 中に溶解したII型コラゲナーゼ (Sigma-Aldrich) で消化した。次に、試料をナイロンメッシュ (孔径100μm ; BD Biosciences) に通し、1200 rpmで5分間遠心分離した。ペレット中の細胞を2% FCSを添加したDMEM中に再懸濁し、フローサイトメトリー用、並びに初代腎上皮細胞 (PREC)、マクロファージ及び線維芽細胞の単離用の試料として用いた。
フローサイトメトリー
腎臓から単離した細胞を抗CD16/CD32抗体 (1:100, BD Biosciences, San Jose, CA) と4℃で20分間反応させることでFc結合をブロックした後、蛍光標識した一次抗体又はコントロールIgGと4℃で30分間反応させた。FITCをコンジュゲートした抗CD45抗体、PEをコンジュゲートした抗CD11b抗体、APCをコンジュゲートした抗F4/80抗体、PE-Cy7をコンジュゲートした抗-Ly6C抗体を、eBiosciences (San Diego, CA) から購入した。染色した細胞を、BD FACSVerse flow cytometer (BD Biosciences) を用いて解析した。死細胞を7-aminoactinomycin-D (7-AAD) 染色 (eBioscience, San Diego, CA) を用いて除去した。フローサイトメトリーの結果をFlowJo software suites (Tree Star, Ashland, OR) を用いて解析した。フォーワードスキャッター対サイドスキャッタープロットを第1ゲートとして用い、凝集物やデブリスを除去した。次いで、サイドスキャッター対7-AADに基づく第2ゲートにより個々の生細胞を同定した。次に、CD45、F4/80及びCD11bの三重陽性細胞を腎臓中のマクロファージとして選別した。既報 (Taguchi K., et al. J Am Soc Nephrol 25: 1680-1697, 2014) に従って、マクロファージ画分中のLy6C陽性細胞をM1マクロファージとして同定した。シングルカラーコントロールを用いてコンペンセーション及びゲートを設定した。
腎臓からのPREC、マクロファージ及び線維芽細胞の単離
磁気活性化セルソーティング(MACS) anti-APC Multisort kit (Miltenyi Biotech) 及びautoMACS Pro Separator (Miltenyi Biotech) を用いて、PRECとマクロファージの単離を行なった。腎臓から単離した細胞を抗CD16/CD32抗体、次いでAPCをコンジュゲートした抗EpCAM抗体 (eBioscience) 及びAPCをコンジュゲートした抗F4/80抗体(eBioscience) と反応させ、EpCAM染色細胞とF4/80染色細胞の両方を得た。選別されたPREC及びマクロファージを、10% FCS、100 U/ml ペニシリン (Invitrogen) 及び100 μg/ml ストレプトマイシン (Invitrogen) を添加したDMEM中で3日間培養した。次いで、当該細胞をビヒクル又は50 ng/ml OSMで処理し、1及び2時間、培養した。すべての細胞を5% CO2の湿潤環境で、37℃で培養した。
腎線維芽細胞の単離については、腎臓から単離した細胞を10% FCS、100 U/ml ペニシリン (Invitrogen) 及び100 μg/ml ストレプトマイシン(Invitrogen) を添加したDMEMに再懸濁し、コラーゲンでコーティングした6-wellプレート (Corning, Corning, NY) に播種した。コンフルエントな状態に達した時細胞を継代し、4継代目の細胞を腎線維芽細胞として用いた。
定量的PCR
定量的リアルタイムPCRは、既報(Komori T., et al. J Biol Chem288: 21861-21875, 2013) の方法を改変して行った。簡潔に言えば、TRI reagent (Molecular Research Center, Cincinnati, OH) を用いて、腎臓、及び培養した尿細管上皮細胞、マクロファージ、腎線維芽細胞から全RNAを抽出し、調製した。全RNAからcDNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems, Foster City, CA) を用いて合成した。
以下のTaqMan Gene Expression Assays (Applied Biosystems)を用いた:OSM (Mm01193966_m1), OSMRβ (Mm00495424_m1), F4/80 (Mm00802529_m1), TNF-α (Mm00443258_m1), IL-1β (Mm00434228_m1), monocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1) (Mm00441242_m1), OPN (Mm00436767_m1), ANXa1 (Mm00440225_m1), ANXa2 (Mm01150673_m1), KIM1 (Mm00506686_m1), 及び 18S (Hs99999901_s1)。
Rotor Gene Probe PCR Kits (QIAGEN) を用いて、各遺伝子についてRotor Gene Q (QIAGEN, Hilden, Germany)で定量的リアルタイムPCRを行った。PCR増幅プロトコールは、95℃、10分の後、95℃、10秒及び60℃、45秒を40サイクルであった。ΔΔCT法で解析し、各転写産物のmRNA量を18S リボソームRNA量で補正した。
統計解析
結果は平均値±SEMで表す。2群間の比較はStudent’s t-検定で解析した。多重群間比較については、ANOVAの後、post-hoc Bonferroni検定を用いた。すべての統計学的検定について、有意差の閾値はp < 0.05とした。
(結果)
実施例1 尿路結石症モデルマウスの腎臓におけるOSM、及びOSMRβの発現
尿路結石症のモデルマウスとして、8週齢の野生型マウス(C57BL/6J)にシュウ酸前駆物質であるグリオキシレート(80mg/kg体重)を連日腹腔内投与するモデルを用いた。このモデルマウスの腎臓におけるOSMとOSMRβの遺伝子発現をリアルタイムPCRにより検討した。結果を図1に示す。OSM(図1A)、OSMRβ(図1B)共に、グリオキシレート投与後3日目より増加し、OSMは6日目で、OSMRβは3日目で最大値となった。また、グリオキシレート投与後6日目の腎臓におけるOSM、及びOSMRβの発現を図2に示す。OSM、OSMRβともに尿細管上皮において発現が認められ、OSMRβはEpCAM陽性の尿細管に発現が認められた。また、 OSMRβはPDGFRβ陽性の線維芽細胞にも発現が認められた。
実施例2 OSMRβ欠損マウスにおけるグリオキシレート投与後の結晶形成
OSMRβ欠損マウス(OSMRβ-/-)とそのコントロールである野生型マウス(WT)にグリオキシレート(80mg/kg体重)を連日腹腔内投与し、腎臓における結晶の形成を検討した。結果を図3に示す。野生型マウスでは、グリオキシレート投与後6日目で皮髄境界部にピゾラート染色陽性の結晶の形成が多数認められた(図3A)。一方、OSMRβ-/-マウスにおいては、結晶の形成はほとんど認められなかった(図3A)。図3Bは、ピゾラート染色陽性の結晶の面積を腎全体の面積で補正し、定量化した結果である。
実施例3 OSMRβ欠損マウスにおけるグリオキシレート投与後の炎症関連遺伝子の発現変化
OSMRβ欠損マウス(OSMRβ-/-)とそのコントロールである野生型マウス(WT)にグリオキシレート(80mg/kg体重)を連日腹腔内投与し、腎臓におけるTNF-α、IL-1β、F4/80及びMCP-1の発現を検討した。結果を図4に示す。グリオキシレート投与後3日目、及び6日目のOSMRβ-/-マウスの腎臓において、TNF-α(図4A)とIL-1β(図4B)の発現の減少が認められた。また、グリオキシレート投与後6日目のOSMRβ-/-マウスの腎臓において、F4/80(図4C)とMCP-1(図4D)の発現の減少が認められた。
実施例4 OSMRβ欠損マウスにおけるグリオキシレート投与後の腎マクロファージの細胞数の変化
OSMRβ欠損マウス(OSMRβ-/-)とそのコントロールである野生型マウス(WT)にグリオキシレート(80mg/kg体重)を連日腹腔内投与し、腎臓における総マクロファージ数、及びM1マクロファージ数をフローサイトメトリーにより解析した。結果を図5に示す。グリオキシレート投与後6日目のOSMRβ-/-マウスの腎臓において、総マクロファージ数(図5A)、及びM1マクロファージ数(図5B)の減少が認められた。
実施例5 OSMRβ欠損マウスにおけるグリオキシレート投与後の結晶結合蛋白の発現変化
OSMRβ欠損マウス(OSMRβ-/-)とそのコントロールである野生型マウス(WT)にグリオキシレート(80mg/kg体重)を連日腹腔内投与し、結晶結合蛋白であるオステオポンチン(OPN)、アネキシンa1(ANXa1)、アネキシンa2(ANXa2)及びKIM1の腎臓における発現を検討した。結果を図6に示す。グリオキシレート投与後3日目と6日目のOSMRβ-/-マウスにおいて、OPN(図6A)、ANXa1(図6B)、ANXa2(図6C)、及びKIM1(図6D)の発現の減少が認められた。
実施例6 尿細管上皮細胞における結晶結合蛋白の遺伝子発現変化
グリオキシレート投与開始後6日目の腎臓におけるOSMRβとオステオポンチン(OPN)の発現を検討した。 結果を図7Aに示す。オステオポンチンは、OSMRβ陽性の尿細管上皮に発現が認められた。また、野生型マウスよりEpCAM陽性の尿細管上皮細胞を採取し、OSM(50 ng/ml)で刺激後、1時間、及び2時間におけるOPN、アネキシンa1(ANXa1)、及びアネキシンa2(ANXa2)の発現を検討した。結果を図7Bに示す。OPN、ANXa1、ANXa2ともに、OSMによる発現増加が認められた。さらに、野生型マウスより線維芽細胞(Fibroblast)、F4/80陽性のマクロファージ(Macrophage)、及びEpCAM陽性の尿細管上皮細胞(PREC)を採取し、OSM(50 ng/ml)で刺激後、1時間、及び2時間におけるTNF-αの発現を検討した。結果を図7Cに示す。線維芽細胞において、OSMによるTNF-αの発現増加が認められた。
実施例7 グリオキシレート投与による結晶形成に対する抗OSMRβ抗体(clone 7D2)の抑制効果
8週齢の野生型マウス(C57BL/6J)の背部皮下に7D2(80 μg)、又はそのアイソタイプコントロール抗体(80 μg)を膨潤させたメドジェルを埋め込み、その2日後よりグリオキシレート(80 mg/kg体重)を6日間連日腹腔内投与し、腎臓における結晶の形成量を検討した。結果を図9に示す。アイソタイプコントロール群(Isotype)において、グリオキシレート投与後6日目で皮髄境界部にピゾラート染色陽性の結晶の形成が多数認められたのに対し、7D2群(7D2)では結晶の形成が減少していた(図9A)。図9Bは、ピゾラート染色陽性の結晶の面積を腎全体の面積で補正し、定量化した結果である。
実施例8 グリオキシレート投与後の結晶結合蛋白、及び炎症関連分子の発現に対する抗OSMRβ抗体(7D2)の抑制効果
8週齢の野生型マウス(C57BL/6J)の背部皮下に7D2(80 μg)、又はそのアイソタイプコントロール抗体(80 μg)を膨潤させたメドジェルを埋め込み、その2日後よりグリオキシレート(80 mg/kg体重)を6日間連日腹腔内投与し、腎臓における結晶結合蛋白(OPN、ANXa1、ANXa2)、及び炎症関連分子(TNF-α、IL-1β、F4/80、MCP-1)の遺伝子発現を検討した。結果を図10に示す。アイソタイプコントロール群(Isotype)と比較して7D2群(7D2)において、結晶結合蛋白(OPN、ANXa1、ANXa2)、及びF4/80の発現が有意に減少しており、他の炎症関連分子(TNF-α、IL-1β、MCP-1)も減少傾向が認められた。
以上の結果から、シュウ酸カルシウム結晶の出現により尿細管上皮細胞におけるOSMの発現が上昇し、当該細胞におけるOSMRを介したシグナリングが活性化され、その結果、種々の結晶結合タンパク質の発現が誘導されてシュウ酸カルシウム結晶と結合し、尿路結石を形成することが強く示唆される(図8上パネル)。また、OSMは腎線維芽細胞に作用してTNF-αの発現を誘導し、OSMR発現細胞における炎症性応答をさらに惹起することが示唆された(図8上パネル)。一方、OSMRからのシグナルを遮断すると、結晶結合タンパク質の発現が抑制され、尿路結石の形成が抑制される(図8下パネル)。
本発明の抑制剤は、OSMRシグナリングを遮断することで結晶結合タンパク質の発現を抑制し、尿路結石の形成を防止できるので、尿路結石症の根本的な予防及び治療(進展抑制・再発防止)を可能にする点できわめて有用である。また、本発明のスクリーニング法は、OSM-OSMRシグナル伝達系を用いて、新規な尿路結石症の予防・治療薬を探索・同定し得るので、尿路結石症の根治薬の開発のための創薬ツールとして有用である。

Claims (8)

  1. オンコスタチンMもしくはその受容体の機能又は発現を阻害する物質を含有してなる、尿路結石の形成抑制剤。
  2. オンコスタチンMの機能を阻害する物質が、
    (a)オンコスタチンMに対する抗体、又は
    (b)オンコスタチンMに対するアンタゴニスト
    であり、
    オンコスタチンMの発現を阻害する物質が、
    (c)オンコスタチンM遺伝子の転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体、
    (d)オンコスタチンM遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸、又は
    (e)オンコスタチンM遺伝子の転写産物に対するリボザイム核酸
    である、請求項1に記載の剤。
  3. オンコスタチンMの受容体の機能を阻害する物質が、
    (a)オンコスタチンM受容体βに対する抗体、又は
    (b)オンコスタチンM受容体βに対するアンタゴニスト
    であり、
    オンコスタチンM受容体の発現を阻害する物質が、
    (c)オンコスタチンM受容体β遺伝子の転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体、
    (d)オンコスタチンM受容体β遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸、又は
    (e)オンコスタチンM受容体β遺伝子の転写産物に対するリボザイム核酸
    である、請求項1に記載の剤。
  4. オンコスタチンMの受容体の機能を阻害する物質が、オンコスタチンM受容体βに対する抗体であり、該抗体が細胞毒素とのコンジュゲートの形態である、請求項3に記載の剤。
  5. 尿路結石症の予防又は治療用である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の剤。
  6. オンコスタチンMに特異的に結合する物質を含有してなる、尿路結石症のリスク診断剤。
  7. 尿路結石の形成抑制薬のスクリーニング方法であって、
    (1)被検物質の存在下及び非存在下で、オンコスタチンMとその受容体とを接触させる工程、
    (2)上記両条件におけるオンコスタチンMとその受容体との結合を比較する工程、並びに
    (3)オンコスタチンMとその受容体との結合を減少させた被検物質を、尿路結石の形成抑制薬の候補として選択する工程を含む、方法。
  8. 尿路結石の形成抑制薬のスクリーニング方法であって、
    (1)被検物質の存在下及び非存在下で、オンコスタチンM受容体を発現する細胞にオンコスタチンMを接触させる工程、
    (2)上記両条件におけるオンコスタチンM受容体シグナリングを比較する工程、並びに
    (3)オンコスタチンM受容体シグナリングを減少させた被検物質を、尿路結石の形成抑制薬の候補として選択する工程を含む、方法。
JP2020105541A 2019-06-19 2020-06-18 オンコスタチンm受容体シグナリング制御による尿路結石の予防と治療 Pending JP2021001165A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019113434 2019-06-19
JP2019113434 2019-06-19

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021001165A true JP2021001165A (ja) 2021-01-07

Family

ID=73994760

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020105541A Pending JP2021001165A (ja) 2019-06-19 2020-06-18 オンコスタチンm受容体シグナリング制御による尿路結石の予防と治療

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021001165A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10894826B2 (en) Treatment of fibrosis with interleukin-11 receptor alpha antibody
US9982265B2 (en) Inhibition of Bruton&#39;s tyrosine kinase (Btk) in the lung to treat severe lung inflammation and lung injury
JP7536049B2 (ja) 血管新生障害の処置
US20210332118A1 (en) Monoclonal antibody and antigens for diagnosing and treating lung disease and injury
JP6437946B2 (ja) 線維症の検出および処置
US9453050B2 (en) Compositions for treating glioma
JP2009528977A (ja) 慢性線維形成性疾患を治療するための物質および方法
CN111655724A (zh) Smc介导的疾病的治疗
JP6293137B2 (ja) 慢性腎臓病(ckd)を予防および処置するための方法
JP2021001165A (ja) オンコスタチンm受容体シグナリング制御による尿路結石の予防と治療
JP2023547468A (ja) 健康寿命を延長し加齢性疾患を処置する方法
JP6445446B2 (ja) 骨転移の治療のための方法及び医薬組成物
US9212361B2 (en) Methods and pharmaceutical compositions for the treatment of hypertension
WO2004078210A1 (ja) 開腹手術後の癒着の予防剤
WO2014064192A1 (en) Method and pharmaceutical composition for use in the treatment and prediction of myocardial infraction
WO2023111196A1 (en) Treatment and prevention of glomerular disease
JP6143363B2 (ja) 気管支喘息の予防又は治療薬及びそのスクリーニング方法
WO2024126765A1 (en) Rnai-based therapies targeting claudin-1 for the treatment and prevention of fibrotic diseases
CN117858726A (zh) 酒精性肝病的治疗和预防

Legal Events

Date Code Title Description
AA64 Notification of invalidation of claim of internal priority (with term)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A241764

Effective date: 20200707

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230606

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240528

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240723

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20240723

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20241001