発明の詳細な説明
本発明は、遺伝子治療用途に必要な造血幹細胞へのレンチウイルスによる形質導入が改善された、レンチウイルスを産生するために有用な組成物および方法を提供する。以下に記載される好ましい実施態様は、これらの組成物および方法の適応を例示する。それにもかかわらず、これらの実施態様の記載から、以下に提供される記載に基づき本発明の他の態様を作製および/または実施することができる。
I.一般的な技術
本発明の実施は、別段の指定がない限り、細胞生物学、分子生物学、細胞培養、ウイルス学の従来の技術、および当業者の能力の範囲内の技術などを採用すると予想される。これらの技術は、現在の文献で詳細に開示され、具体的には、Sambrook、FritschおよびManiatis編、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989年);Celis J. E.「Cell Biology, A Laboratory Handbook」Academic Press, Inc.(1994年)およびBahnsonら、J. of Virol. Methods、54巻:131〜143頁(1995年)を参照されたい。さらに、本明細書で引用された全ての公報および特許出願は、本発明が関連する分野の当業者の能力のレベルを示し、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
II.定義
本発明の開示にわたり、数々の用語が採用されており、それらを以下の段落で定義する。
オープンエンドの用語「含む」は、本明細書では、包含する、含有する、または有するなどの非制限的な用語の同義語として、本発明の技術の実施態様を記載し、特許請求するために使用されるが、実施態様は、代替として、「からなる」または「から本質的になる」などのより限定的な用語を使用して記載される場合がある。
本明細書で使用される場合、用語「約」は、値に適用される場合、計算または測定において値に多少のわずかな不正確さが許容されることを示す(その値がある程度正確に近い;およそその値またはその値に合理的に近い;ほぼ)。何らかの理由で、「約」によってもたらされる不正確さが、この通常の意味で当業界で他に理解されない場合、「約」は、本明細書で使用される場合、少なくとも、このようなパラメーターを測定または使用する通常の方法に起因する可能性がある変動を示す。
本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙した項目のうち1つまたは複数のいずれかおよび全ての組合せを含む。
用語「レンチウイルス」は、複合レトロウイルスの属を指し、一方で用語「組換えレンチウイルス」は、複製できないが培養細胞(例えば、293T細胞)中で産生でき、目的の細胞に遺伝子を送達できるように操作されたレンチウイルスゲノム(例えばHIV−1ゲノム)由来の組換えウイルスを指す。
用語「ベシクロウイルス」は、ラブドウイルス科ファミリー中のマイナスセンス一本鎖レトロウイルスの属を指す。
用語「形質導入」は、目的の細胞の感染とそれに続く遺伝子送達および発現の組み合わされたプロセスを指す。
用語「形質導入決定基」は、ウイルスエンベロープタンパク質内の特定の1つまたは複数のアミノ酸であって、そのウイルスによる細胞への形質導入を媒介するかまたは強化するものを指す。例えば、「CD34+細胞形質導入決定基」は、CD34+細胞への形質導入を媒介するかまたは強化する、ウイルスエンベロープタンパク質中に見出される一群のアミノ酸を指す。これらのアミノ酸は、得られたシュードタイプレンチウイルスが、プロトタイプのVSV−Gインディアナシュードタイプレンチウイルスに類似の、またはそれより大きい程度にCD34+細胞に形質導入できるように、レンチウイルスをシュードタイプ化するために使用される。
用語「エンベロープタンパク質」は、どの種および細胞型にウイルスが形質導入できるかを決定するウイルス表面上の膜貫通タンパク質を指す。
用語「シュードタイプ化」は、ウイルスのいずれかの構成要素を異種ウイルス由来のもので置き換えることを指す。特定には、「シュードタイプ化」は、野生型エンベロープとは異なるエンベロープを含み、したがって改変された親和性を有する組換えウイルスを意味する。シュードタイプレンチウイルスの場合、それらは、非レンチウイルス起源またはレンチウイルスの異なる種もしくは亜種の異種エンベロープ、例えば別のウイルスまたは細胞に由来する異種エンベロープを有するレンチウイルスであるか、またはエンベロープは、別のウイルスまたは細胞に由来する別の細胞膜タンパク質で置き換えられる。
用語「VSVエンベロープ」は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)と称されるラブドウイルス由来のエンベロープタンパク質を指す。このタンパク質はVSV−Gタンパク質と称されることも多く、ここで「G」は糖タンパク質を意味する。ラブドウイルスのエンベロープタンパク質は、グリコシル化される唯一のラブドウイルスタンパク質である。
用語「造血幹細胞」は、幹細胞が不足した受容者に移植すると、骨髄に帰巣し、分割し、骨髄からの血液または赤血球系統に見出される最終分化細胞、例えば赤血球、T細胞、好中球、顆粒球、単球、ナチュラルキラー細胞、好塩基球、樹状細胞、好酸球、肥満細胞、B細胞、血小板、および巨核球に分化できる細胞を指す。一部の実施態様において、造血幹細胞は、ヒト造血幹細胞である。
CD34は、グリコシル化した膜貫通タンパク質であり、初期の血液および骨髄由来前駆細胞、例えば造血細胞および内皮幹細胞のマーカーとして一般的に使用される。用語「CD34+細胞」は、CD34タンパク質を発現する細胞、例えば造血幹細胞、内皮幹細胞および間葉幹細胞を指す。
用語「付着性造血幹細胞」は、固体または半固体基板、例えば細胞培養容器の表面、または別の好適な基質に付着する造血幹細胞を指す。付着性ヒト造血幹細胞は、in vitroで、細胞培養容器または基質の利用可能な表面積を被覆するまで、または培地から栄養素が欠乏するまで増殖すると予想される。
用語「懸濁液中の造血幹細胞」は、in vitroで増殖するが細胞培養容器の表面に付着せず、in vitroで培養培地中に浮遊しながら増殖する造血幹細胞を指す。
用語「導入遺伝子」は、ベクター、例えば組換えレンチウイルスベクターを介して宿主細胞または生物のゲノムに導入される外因性核酸配列を指す。「異種導入遺伝子」は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、酵素、または別の目的の生成物と、宿主細胞中でのコードされた生成物の転写および/または翻訳を指示し、宿主細胞中でコードされた生成物の発現を可能にする調節配列とをコードする、異なる生物に導入されるある生物由来の外因性核酸配列を指す。例えば、異種導入遺伝子は、レンチウイルス配列にとって異種であり、宿主細胞中でのコードされた生成物の発現を可能にする。
用語「配列同一性」は、配列を比較することによって決定される2つまたはそれより多くのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の類似性を指す。当業界において、「同一性」はまた、場合によっては、2つまたはそれより多くのヌクレオチドまたは2つまたはそれより多くのアミノ酸配列のストリング間のマッチによって決定される、核酸分子またはポリペプチド間の配列の関連の程度を意味することもある。「同一性」は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラムによって割り当てられたギャップアライメント(存在してもしなくてもよい)を含む2つまたはそれより多くの配列のうち小さいほうの配列間の同一なマッチのパーセントを測定する。
2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、最適な比較目的のために配列をアライメントする(例えば、第2のアミノまたは核酸配列との最適なアライメントのために第1の核酸の配列にギャップを導入することができる)。次いでヌクレオチド位置におけるヌクレオチド残基を比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸またはヌクレオチド残基によって占められている場合、その分子は、その位置において同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列に共通する同一な位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一な位置の数/位置の総数(すなわちオーバーラップする位置)×100)。好ましくは、2つの配列は、同じ長さである。
配列比較は、比較される2つの配列の全長にわたり、または2つの配列の断片にわたり行われてもよい。典型的には、比較は、比較される2つの配列の全長にわたり行われると予想される。しかしながら、配列同一性は、例えば、約20、約50、約100、約200、約500、約1000、約2000、約3000、約4000、約4500、約5000またはそれより多くの連続する核酸残基の領域にわたり行われてもよい。同一性および/または類似性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最も大きいマッチが得られるように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公共的に利用可能であるコンピュータプログラムに記載されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法としては、これらに限定されないが、GCGプログラムパッケージ、例えばGAP(Devereuxら、Nucl. Acid. Res.、12巻:387号(1984年);Genetics Computer Group、University of Wisconsin、Madison、WI)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻:403〜410頁(1990年))などが挙げられる。BLASTXプログラムは、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)および他の供給元(BLASTマニュアル、Altschulら、NCB/NLM/NIH Bethesda、MD20894;Altschulら、上記)から公共的に入手可能である。周知のスミスウォーターマンアルゴリズムも、同一性を決定するために使用することができる。
用語「CD34+細胞への結合のためのリガンド」は、レンチウイルスが形質導入のためにCD34+細胞の細胞表面に結合することを容易にする分子である。リガンドは、タンパク質、糖タンパク質、糖または脂質であり得る。ヒトCD34+細胞への結合のための例示的なリガンドは、L−セレクチンである。用語「ベクター」は、核酸配列を細胞に導入するための核酸分子を指す。例えば、組換えレンチウイルスは、核酸配列をヒトCD34+細胞に導入するためのベクターとして役立つ。
用語「作動可能に連結した」は、1つまたは複数のヌクレオチド配列の機能が、前記核酸分子上に存在する少なくとも1つの他のヌクレオチド配列によって影響を受けるような形で、単一の核酸分子、例えば発現カセットまたはベクター上のヌクレオチド配列が互いに結び付けられていることを指す。例えば、発現制御配列、例えばプロモーターは、それがその導入遺伝子の核酸配列の発現を実行することが可能な場合、導入遺伝子と作動可能に連結している。
用語「プロモーター」は、酵素RNAポリメラーゼが結合してDNAのRNAへの転写を開始させることができる核酸配列を指す。これは、導入遺伝子の発現を容易にするように機能する発現制御配列である。
用語「自己不活性化レンチウイルスベクター」は、機能しないかまたは改変された3’ロングターミナルリピート(LTR)配列を含有するレンチウイルスベクターを指す。この配列は、組込みの間、ベクターゲノムの5’末端にコピーされ、結果として両方のLTRによるプロモーター活性の不活性化が起こる。
III.発明の説明
A.組換えレンチウイルス
本発明は、レンチウイルス遺伝子治療用ベクターを、造血幹細胞、例えばヒトCD34+細胞への形質導入を可能にするウイルスエンベロープタンパク質と組み合わせて含む組換えウイルスを提供する。一実施態様において、本発明は、ラブドウイルスエンベロープタンパク質の結合ドメインまたはそれに由来するアミノ酸配列を含む異種エンベロープ中にパッケージングされたレンチウイルス遺伝子ベクターで構成される組換えレンチウイルスを提供する。本発明のレンチウイルスベクターは、最低限でも、レンチウイルス5’ロングターミナルリピート(LTR)配列、宿主細胞への送達のための分子、およびレンチウイルス3’LTR配列の機能的部分を含有する。必要に応じて、ベクターはさらに、ψ(プサイ)キャプシド化配列、Rev応答エレメント(RRE)配列または等価なもしくは類似の機能を提供する配列を含有していてもよい。宿主細胞への送達のためにベクターで運搬される異種分子は、これらに限定されないが、ポリペプチド、タンパク質、酵素、炭水化物、化学成分、またはオリゴヌクレオチド、RNA、DNA、および/もしくはRNA/DNAハイブリッドなども含み得る核酸分子などのあらゆる所望の物質であり得る。一実施態様において、異種分子は、例えば突然変異した遺伝子の修正のために、ヒト染色体に特異的な遺伝学的改変を導入する核酸分子である。別の所望の実施態様において、異種分子は、所望のタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、酵素、または別の生成物と、宿主細胞中でコードされた生成物の転写および/または翻訳を指示し、宿主細胞中でコードされた生成物の発現を可能にする調節配列とをコードする核酸配列を含む導入遺伝子を含む。好適な生成物および調節配列は、以下でより詳細に論じられる。しかしながら、ベクターで運搬され、本発明のウイルスにより送達された異種分子の選択は、本発明の限定ではない。
1.レンチウイルスのエレメント
レンチウイルスベクターおよび本発明の組換えウイルスの構築のために本明細書に記載されるレンチウイルスのエレメントを選択することにおいて、あらゆる好適なレンチウイルスおよびあらゆる好適なレンチウイルスの血清型または株から配列を容易に選択することができる。好適なレンチウイルスとしては、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヤギ関節炎および脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナウイルス、およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。本明細書で提供される例は、HIV由来のベクターの使用を例示する。しかしながら、FIVおよびヒト以外の起源の他のレンチウイルスも特に望ましい場合がある。本発明の構築物で使用される配列は、レンチウイルスのアカデミックな、非営利的な(例えば、American Type Culture Collection、Manassas、Virginia)または商業的な供給源に由来するものであってもよい。代替として、配列は、遺伝子工学技術を使用して組換え産生されてもよいし、または公共的にアクセス可能な電子データベース中に含有される配列などの公開されたウイルス配列を参照して、従来の技術を使用して合成されてもよい(例えば、G. BaronyおよびR.B. Merrifield、THE PEPTIDES: ANALYSIS, SYNTHESIS & BIOLOGY、Academic Press、3〜285頁(1980年))。
a)LTR配列
レンチウイルスベクターは、ゲノムの逆転写を許容する、cDNAを生成する、およびレンチウイルスベクターに存在するRNA配列の発現を許容するために十分な量のレンチウイルスのロングターミナルリピート(LTR)配列を含有する。好適には、これらの配列は、ベクターの5’末端の最も端に配置される5’LTR配列と、ベクターの3’末端の最も端に配置される3’LTR配列の両方を含む。これらのLTR配列は、選択されたレンチウイルスまたは交差反応性のレンチウイルスにとって天然の無傷のLTRであってもよいし、またはより望ましくは改変されたLTRであってもよい。
レンチウイルスLTRへの様々な改変が記載されている。1つの特に望ましい改変は、自己不活性化LTRであり、例えば、HIVに関してH. Miyoshiら、J. Virol.、72巻:8150〜8157頁(1998年10月)に記載されるものである。これらのHIVのLTRにおいて、5’LTRのU3領域は、強い異種プロモーター(例えば、CMV)で置き換えられ、133bpの欠失は、3’LTRのU3領域中でなされている。したがって、逆転写されると、3’LTRの欠失は5’LTRに移され、結果としてLTRの転写不活性化が起こる。HIVの完全ヌクレオチド配列は公知であり、L. Ratnerら、Nature. 313巻(6000号):277〜284頁(1985年)を参照されたい。さらに別の好適な改変は、5’LTRが強い異種プロモーター、R領域、およびU5領域のみを含有し、3’LTRがポリAを包含するR領域のみを含有するように、U3領域における完全な欠失を含む。さらに別の実施態様において、5’LTRのU3およびU5領域の両方が欠失し、3’LTRはR領域のみを含有する。これらのおよび他の好適な改変は、当業者によって、HIVおよび/または別の選択されたレンチウイルスの匹敵する領域中で容易に操作することができる。
必要に応じて、レンチウイルスベクターは、5’レンチウイルスLTR配列の下流にψ(プサイ)パッケージングシグナル配列を含有していてもよい。必要に応じて、1つまたは複数のスプライスドナー部位が、LTR配列とψ配列のすぐ上流の間に配置されていてもよい。本発明によれば、ψ配列は、gag配列とのオーバーラップを除去し、パッケージングが改善されるように改変されていてもよい。例えば、gagコード配列の上流に終止コドンが挿入されていてもよい。ψ配列への他の好適な改変が当業者によって操作されてもよい。このような改変は、本発明の限定ではない。
1つの好適な実施態様において、レンチウイルスベクターは、LTRおよびψ配列の下流に配置されたレンチウイルスのRev応答エレメント(RRE)配列を含有する。好適には、RRE配列は、最小限の約275から約300ntの天然のレンチウイルスのRRE配列を含有し、より好ましくは、少なくとも約400から約450ntのRRE配列を含有する。必要に応じて、RRE配列は、gag/polの発現および細胞核へのその輸送を助ける別の好適なエレメントによって置換されていてもよい。例えば、他の好適な配列としては、マソン(Manson)−ファイザーウイルスのCTエレメント、またはウッドチャック肝炎ウイルス調節後エレメント(WPRE)を挙げることができる。代替として、gagおよびgag/polをコードする配列は、gagおよびgag/polポリペプチドのアミノ酸配列を変更することなく核局在化が改変されるように変更されていてもよい。好適な方法は、当業者であれば容易に理解できるものと予想される。
b)導入遺伝子
上述したように、1つの所望の実施態様において、レンチウイルスベクターによって運搬される分子は、導入遺伝子である。導入遺伝子は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、酵素、または目的の別の生成物と、宿主細胞中でのコードされた生成物の転写および/または翻訳を指示し、宿主細胞中でのコードされた生成物の発現を可能にする調節配列とをコードする、レンチウイルス配列にとって異種の核酸配列を含む核酸分子である。導入遺伝子の組成は、本発明のベクターおよびシュードタイプウイルスに関して意図した使用に依存する。
例えば、1つのタイプの導入遺伝子は、発現されると検出可能なシグナルを産生するレポーターまたはマーカー配列を含む。このようなレポーターまたはマーカー配列としては、これらに限定されないが、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えばCD2、CD4、CD8などの膜結合タンパク質、およびインフルエンザヘマグルチニンタンパク質、加えて当業界において周知のものをコードするDNA配列が挙げられる。代替例において、本発明の組換えウイルスは、例えばワクチン目的で抗体および/または細胞媒介性免疫応答を誘導する遺伝子産物および他の分子の送達に有用である。好適な遺伝子産物は、ウイルス由来の免疫原性タンパク質およびポリペプチドから、加えて、単細胞および多細胞性寄生虫を含む原核および真核生物から当業者によって容易に選択することができる。別の代替例において、本発明の組換えウイルスは、研究に望ましい分子の送達に有用である。
1つの特に望ましい実施態様において、本発明の組換えウイルスは、これらに限定されないが、正常な遺伝子は発現されるが正常なレベルより低く発現される遺伝子不全を修正または改善することなどの治療目的に有用である。組換えウイルスはまた、機能的な遺伝子産物が発現されない遺伝的欠陥を修正または改善することにも使用することができる。好ましいタイプの導入遺伝子は、宿主細胞中での発現のための、所望の治療的生成物をコードする配列を含有する。これらの治療的核酸配列は、典型的には、発現されると、遺伝性または非遺伝性の遺伝学的欠陥を修正もしくは補完する、または後成的障害または疾患を処置できる生成物をコードする。したがって、本発明は、マルチサブユニットのタンパク質によって引き起こされる遺伝子の欠陥を修正または改善するために使用できる組換えウイルスを産生する方法を含む。ある特定の状況において、タンパク質の各サブユニットをコードするために、異なる導入遺伝子が使用されていてもよい。これは、タンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい場合、例えば免疫グロブリンまたは血小板由来増殖因子受容体の場合に望ましい。細胞にマルチサブユニットのタンパク質を産生させるには、細胞を、異なるサブユニットのそれぞれを含有する組換えウイルスで感染させると予想される。代替として、タンパク質の異なるサブユニットは、同じ導入遺伝子によってコードされていてもよい。この場合、単一の導入遺伝子は、サブユニットのそれぞれをコードするDNAを含むと予想され、各サブユニットのDNAは内部リボソーム侵入部位(IRES)によって分離されている。これは、サブユニットをコードするDNAとIRESの全体が9キロベース未満であるように、サブユニットのそれぞれをコードするDNAのサイズが小さい場合に望ましい。代替として、IRESの使用を必要としない他の方法が、タンパク質の共発現のために使用される場合がある。このような他の方法は、当業者に公知のもののなかでも特に、第2の内部プロモーター、オルタナティブスプライシングシグナル、または翻訳と同時の、もしくは翻訳後タンパク質分解による切断戦略の使用を含んでいてもよい。本発明の特定の一実施態様において、導入遺伝子によってコードされた遺伝子産物は、機能的なヒトヘモグロビンタンパク質である。
他の有用な導入遺伝子は、自然に存在しないポリペプチド、例えばキメラもしくはハイブリッドポリペプチド、または挿入、欠失またはアミノ酸置換を含有する自然に存在しないアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。他のタイプの自然に存在しない遺伝子配列としては、アンチセンス分子および触媒性の核酸、例えば遺伝子の過剰発現を低減するために使用できるリボザイムが挙げられる。レンチウイルスベクターによって運搬される導入遺伝子配列または他の分子の選択は、本発明の限定ではない。導入遺伝子配列の選択は、本出願の教示に従って当業者の技術の範囲内である。
c)調節エレメント
細胞および宿主で所望の遺伝子産物を得るのに転写、翻訳および/または発現を必要とする導入遺伝子または別の核酸配列の設計は、コードされた生成物の発現を促進するために目的のコード配列に作動可能に連結する適切な配列を含んでいてもよい。「作動可能に連結した」配列は、目的の核酸配列に隣接する発現制御配列と、トランスで、または目的の核酸配列を制御するような距離で作用する発現制御配列の両方を含む。
発現制御配列としては、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的なRNAプロセシングシグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質内のmRNAを安定化させる配列;翻訳効率を強化する配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を強化する配列;ならびに望ましい場合、タンパク質分泌を強化する配列が挙げられる。多数の発現制御配列が、天然のものから、構成的、誘導性および/または組織特異的なものまで当業界において公知であり、所望の発現のタイプに応じて遺伝子の発現を駆動させるのに利用することができる。真核細胞の場合、発現制御配列としては、典型的には、プロモーター、エンハンサー、例えば免疫グロブリン遺伝子由来のもの、SV40、サイトメガロウイルスなど、ならびにスプライスドナーおよびアクセプター部位を含んでいてもよいポリアデニル化配列が挙げられる。ポリアデニル化(ポリA)配列は、一般的に、導入遺伝子配列の後、3’レンチウイルスLTR配列の前に挿入される。最も好適には、導入遺伝子または他の分子を運搬するレンチウイルスベクターは、LTR配列を提供するレンチウイルス由来の、例えばHIV由来のポリAを含有する。しかしながら、他のポリA源も、本発明の構築物中に含めるために容易に選択することができる。一実施態様において、ウシ増殖ホルモンのポリAが選択される。本発明のレンチウイルスベクターはまた、イントロン、望ましくはプロモーター/エンハンサー配列と導入遺伝子との間に配置されたイントロンを含有していてもよい。1つの可能性のあるイントロン配列はまた、SV−40由来のものであり、これはSV−40Tイントロン配列と称される。ベクターで使用できる別のエレメントは、内部リボソーム侵入部位(IRES)である。IRES配列は、単一の遺伝子転写物から1つより多くのポリペプチドを産生するために使用される。IRES配列は、1つより多くのポリペプチド鎖を含有するタンパク質を産生するために使用されると予想される。これらおよび他の一般的なベクターエレメントの選択は従来通りであり、多くのこのような配列が利用可能である(例えば、Sambrookら、およびそこで引用された文献、例えば、3.18〜3.26頁および16.17〜16.27頁ならびにAusubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY. John Wiley & Sons、New York、1989年を参照)。
一実施態様において、高レベルの構成的発現が望ましいと予想される。有用な構成的プロモーターの例としては、これらに限定されないが、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(必要に応じてRSVエンハンサーを含む)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(必要に応じてCMVエンハンサーを含む)(例えば、Boshartら、Cell、41巻:521〜530頁(1985年)を参照)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEFlαプロモーター(Invitrogen)が挙げられる。誘導性プロモーターは、外因的に供給された化合物によって調節されるものであり、これらもまた有用であり、その例としては、亜鉛誘導性ヒツジmetallothionine(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(Noら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93巻:3346〜3351頁(1996年))、テトラサイクリン抑制性系(Gossenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:5547〜5551頁(1992年))、テトラサイクリン誘導性系(Gossenら、Science. 268巻:1766〜1769頁(1995年)、Harveyら、Curr. Opin. Chem. Biol. 2巻:512〜518頁(1998年)も参照されたい)、RU486誘導性系(Wangら、Nat. Biotech. 15巻:239〜243頁(1997年)およびWangら、Gene Ther. 4巻:432〜441頁(1997年))、およびラパマイシン誘導性系(Magariら、J. Clin. Invest. 100巻:2865〜2872頁(1997年))が挙げられる。この状況において有用な可能性がある他のタイプの誘導性プロモーターは、特定の生理的な状態、例えば、温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって調節されるもの、または複製中の細胞でのみ調節されるものである。
別の実施態様において、導入遺伝子の天然のプロモーターが使用されると予想される。望ましくは導入遺伝子の発現が天然の発現を模擬すべき場合、天然のプロモーターが好ましい場合がある。導入遺伝子の発現が、一時的もしくは発生的に、または組織特異的な方式で、または特定の転写刺激に応答して調節されなければならない場合、天然のプロモーターを使用することができる。さらなる実施態様において、他の天然の発現制御エレメント、例えばエンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列も、天然の発現を模擬するために使用することができる。導入遺伝子の別の実施態様は、組織特異的プロモーターに作動可能に連結した導入遺伝子を含む。
全ての発現制御配列が、本発明の導入遺伝子の全てを発現するように等しくうまく機能するとは限らない。しかしながら、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの発現制御配列からの選択をなすことができる。当業者は、本出願によって提供される指針を使用することによって、好適なプロモーター/エンハンサー配列を選択することができる。このような選択は慣例的な作業であり、分子または構築物の限定ではない。例えば、1つまたは複数の発現制御配列を選択して、目的のコード配列に作動可能に連結させ、本発明の導入遺伝子、ベクター、および組換えウイルスに挿入することができる。本明細書で教示された、または当業界において教示されたレンチウイルスベクターをパッケージングするための方法の1つに従った後、in vitroまたはin vivoで好適な細胞に感染させることができる。細胞中のベクターのコピー数は、サザンブロッティングまたは定量PCRによってモニターすることができる。RNA発現のレベルは、ノーザンブロッティングまたは定量RT−PCRによってモニターすることができる。発現のレベルは、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学、ELISA、RIAまたは遺伝子産物の生物活性の試験によってモニターすることができる。したがって、特定の発現制御配列が、導入遺伝子によってコードされる具体的な生成物に好適であるかどうかを容易にアッセイすることができ、さらに最も適切な発現制御配列を選択することができる。代替として、例えば炭水化物、ポリペプチド、ペプチドなどの送達のための分子が発現を必要としない場合、発現制御配列は、必ずしもレンチウイルスベクターまたは他の分子の一部を形成していなくてもよい。
d)他のレンチウイルスのエレメント
必要に応じて、レンチウイルスベクターは、他のレンチウイルスのエレメント、例えば当業界において周知のものを含有していてもよく、それらの多くは、レンチウイルスパッケージング配列と関連して後述される。しかしながら、特筆すべきことに、レンチウイルスベクターは、レンチウイルスのエンベロープタンパク質を集合化させる能力を欠如している。このようなレンチウイルスベクターは、RREに相当するエンベロープ配列の一部を含有していてもよいが、他のエンベロープ配列を欠如している。しかしながら、より望ましくは、複製能を有するウイルスをもたらす組換え事象の可能性を実質的になくすために、レンチウイルスベクターは、いずれの機能的なレンチウイルスのエンベロープタンパク質をコードする配列も欠如している。
したがって、本発明のレンチウイルスベクターは、最低限でも、レンチウイルス5’ロングターミナルリピート(LTR)配列、(必要に応じて)ψ(プサイ)キャプシド化配列、宿主細胞への送達のための分子、およびレンチウイルス3’LTR配列の機能的部分を含有する。望ましくは、ベクターはさらに、RRE配列またはその機能的な均等物を含有する。好適には、本発明のレンチウイルスベクターは、ウイルスへのパッケージングのために、あらゆる好適な手段によって、例えば、レンチウイルスベクターを含む「裸の」DNA分子のトランスフェクションによって、または他のレンチウイルスのエレメントおよび上述した調節エレメント、同様に一般的にベクターに見出される他のあらゆるエレメントを含有し得るベクターによって宿主細胞に送達される。「ベクター」は、そこに搭載された配列または分子を細胞に送達することが可能なあらゆる好適なビヒクルであり得る。例えば、ベクターは、これらに限定されないが、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスなどから容易に選択することができる。プラスミドは、本発明での使用において特に望ましい。選択されたベクターは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合などのあらゆる好適な方法によって送達することができる。本発明によれば、レンチウイルスベクターは、以下のパートBに記載される方法を使用して、異種(すなわち非レンチウイルスの)エンベロープ中にパッケージングされて、本発明の組換えウイルスを形成する。
2.エンベロープタンパク質
レンチウイルスベクターがパッケージングされるエンベロープは、好適にはレンチウイルスのエンベロープタンパク質を含まず、少なくとも1つの異種エンベロープタンパク質の結合ドメインを含む。一実施態様において、エンベロープは、全体的にラブドウイルス糖タンパク質由来であってもよいし、または第2のウイルスのエンベロープタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドにフレーム内で融合した結合ドメインを含有するラブドウイルスエンベロープ(ラブドウイルスポリペプチドまたはペプチド)の断片を含有していてもよい。代替例において、エンベロープは、図4に示され以下で論じられるCD34+細胞形質導入決定基由来の配列を含むウイルスエンベロープタンパク質を含有していてもよい。別の実施態様において、エンベロープは、全体的にアレナウイルス糖タンパク質またはそれらの断片由来であってもよい。
a)ラブドウイルスエンベロープタンパク質
エンベロープタンパク質またはそのポリペプチドもしくはペプチド(例えば、結合ドメイン)をコードする配列を提供するラブドウイルス、ベシクロウイルスサブファミリー、例えばVSV−G(インディアナ)、モレトン、マラバ、コカール、アラゴアス(Alagoa)、カラジャス、VSV−G(アリゾナ)、イスファハン、VSV−G(ニュージャージー)、またはピリからのあらゆる好適な血清型由来であってもよい。エンベロープタンパク質をコードする配列は、ウイルス源への遺伝子工学技術の適用、化学合成技術、組換え生産またはそれらの組合せなどのあらゆる好適な手段により得ることができる。所望のウイルス配列の好適な源は当業界において周知であり、そのような源としては、様々なアカデミックな、非営利的な、商業的な供給源、および電子データベースが挙げられる。配列を得る方法は、本発明の限定ではない。1つの所望の実施態様において、異種エンベロープ配列は、ヒトCD34+細胞への形質導入を媒介できる全てのエンベロープタンパク質に見出されるが、ヒトCD34+細胞への形質導入を媒介しないものには見出されない、ヒトCD34+細胞形質導入決定基の31アミノ酸由来である。
したがって、一実施態様において、エンベロープタンパク質は、無傷のラブドウイルス糖タンパク質である。代替として、最低限でも、ヒトCD34+細胞形質導入決定基の31アミノ酸内に配置されているラブドウイルスエンベロープ糖タンパク質の結合ドメインを含有する選択されたラブドウイルスの断片を利用することが望ましい場合がある。好適には、このラブドウイルスタンパク質断片は、直接的または間接的に、リンカーを介して、第2の非レンチウイルスのエンベロープタンパク質またはその断片に融合している。この融合タンパク質は、得られたエンベロープタンパク質のパッケージング、収量、および/または精製を改善するために望ましい場合がある。第2の、非レンチウイルスのエンベロープタンパク質またはその断片は、最低限でも、膜ドメインを含有する。1つの所望の実施態様において、ヒトCD34+細胞形質導入決定基の31アミノ酸の短縮化された断片は、VSV−Gエンベロープタンパク質に融合している。当業者であれば、本発明に係るさらに他の融合(キメラ)タンパク質を生成することができる。
b)アレナウイルスのエンベロープタンパク質
別の実施態様において、エンベロープタンパク質は、無傷のアレナウイルスのエンベロープタンパク質、または最低限でもアレナウイルスのエンベロープ糖タンパク質の結合ドメインを含有する選択されたアレナウイルスのエンベロープタンパク質の断片である。好適には、このアレナウイルスタンパク質の断片は、直接的または間接的に、リンカーを介して、第2の非レンチウイルスのエンベロープタンパク質またはその断片に融合している。この融合タンパク質は、得られたエンベロープタンパク質のパッケージング、収量、および/または精製を改善するために望ましい場合がある。第2の非レンチウイルスのエンベロープタンパク質またはその断片は、最低限でも、膜ドメインを含有する。
アレナウイルスのエンベロープ糖タンパク質(GP)に対する中和抗体の防御免疫性は、最小限であり、これは、再感染が起こったとしても、それに対して最小限の抗体媒介性の防御しか感染によって生じないことを意味する。この特徴は、アレナウイルスのエンベロープタンパク質を含むベクターでの繰り返しの免疫化を可能にする。ヒト集団において、既存のアレナウイルスへの免疫性は低いかまたはごくわずかである。加えて、アレナウイルスは、一般的に非細胞溶解性の可能性があり(細胞を破壊しない)、ある特定の条件下で、動物において疾患を惹起することなく長期にわたる抗原発現を維持する可能性がある。
アレナウイルスのエンベロープタンパク質は、ラッサウイルス、ルナウイルス、ルジョウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、マラバ(Mobala)ウイルス、モペイア(Mopeia)ウイルス、イピー(Ippy)ウイルス、アマパリウイルス、フレクサルウイルス、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス、パラナウイルス、ピチンデウイルス、ピリタル(Pirital)ウイルス、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイルス、ベアーキャニオン(Bear Canyon)ウイルス、ホワイトウォーターアロヨウイルス、メリノウォーク(Merino walk)ウイルス、メネクレ(Menekre)ウイルス、モロゴロウイルス、グバグローベ(Gbagroube)ウイルス、コドコ(Kodoko)ウイルス、レムニスコミス属ウイルス、Mus minutoidesウイルス、ランク(Lunk)ウイルス、ジアロ(Giaro)ウイルス、およびオンシュウ(Wenzhou)ウイルス、パタワ(Patawa)ウイルス、パンパウイルス、トントグリーク(Tonto Creek)ウイルス、アルパフアヨウイルス、カタリナ(Catarina)ウイルス、スキナータンク(Skinner Tank)ウイルス、レアル・デ・カトルセウイルス、ビッグ・ブラッシータンク(Big Brushy Tank)ウイルス、カタリナウイルス、およびオコソコアウトラ・デ・エスピノサウイルス由来であってもよい。
c)キメラエンベロープ糖タンパク質
別の実施態様において、有用なエンベロープは、第2のエンベロープ糖タンパク質の断片またはラブドウイルスまたはアレナウイルスキャプシドタンパク質の非連続的な断片に融合した、ラブドウイルスまたはアレナウイルスのエンベロープ糖タンパク質の結合ドメインを含有するキメラ糖タンパク質であってもよい。例えば、選択されたラブドウイルスまたはアレナウイルス結合ドメインは、同じまたは別の選択されたラブドウイルスまたはアレナウイルス株の膜貫通ドメインに融合していてもよい。別の実施態様において、第2のタンパク質または断片は、別の非レンチウイルス源由来であってもよい。例えば、1つの好適なエンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)糖タンパク質(G)由来の膜ドメインを含有していてもよい。代替として、他の好適な断片は、所望のパッケージングレベルを提供する別の好適なウイルス源から選択してもよい。エンベロープが融合タンパク質である場合、リンカーは、ラブドウイルスまたはアレナウイルスのエンベロープタンパク質をコードする配列(またはその断片)と、第2のエンベロープタンパク質をコードする配列(またはその断片)との間に挿入されていてもよい。このようなリンカーは、発現されると、融合タンパク質であるエンベロープが産生されることを確認するために、望ましい場合がある。したがって、リンカーは、2つの配列が適切に翻訳されることを確実にするスペーサーであってもよい。このようなリンカーは、核酸(好ましくは非コード配列)であってもよいし、または化学物質または他の好適な成分であってもよい。このような融合タンパク質を設計するための好適な技術は、当業者に周知である。一般的に、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratories、Cold Spring Harbor. New Yorkを参照されたい。
3.CD34+細胞との結合のためのリガンド
レンチウイルス産生細胞でCD32+細胞と結合するためのリガンドの発現により、強化された造血幹細胞への形質導入を示すレンチウイルスの産生がもたらされた。CD34+造血幹細胞は、細胞表面上のリガンドに結合し、それにより形質導入のためのレンチウイルスの細胞表面への結合が容易になる。リガンドは、タンパク質、糖タンパク質、糖または脂質であり得る。CD34+細胞リガンドの特定の例は、L−セレクチンである。セレクチンは、α(2,3)結合型シアル酸置換およびα(1,3)結合型フコース改変を含有するシアロフコシル化からなる特殊化した炭水化物決定基に結合するレクチンであり、プロトタイプにおいては、四糖であるシアリルルイスX(sLex;Neu5Acα2−3Galβ1−4[Fucα1−3]GlcNAcβ1−))(1,6)として提示される。L−セレクチンは循環中の白血球上で発現され、レンチウイルス産生細胞中のL−セレクチンの発現は、CD34+造血幹細胞へのレンチウイルスによる形質導入を強化することが示された。
IV.組換え移入ウイルスの産生
本発明はさらに、選択された分子を宿主細胞に送達するために有用な組換えウイルスを産生する方法を含む。組換え移入ウイルスを産生するために、レンチウイルスは、同じまたは複数ベクターに、ウイルス構築物、gag、pol、エンベロープタンパク質およびrevを移入する。
組換え移入ウイルスは、in vitroとin vivoの両方において導入遺伝子の非分裂細胞への効率的な送達、組込みおよび長期発現を提供することが可能なレトロウイルスまたはレンチウイルスである。様々なレンチウイルスベクターは当業界において公知である。Naldiniら、(1996a、1996b、および1998);Zuffereyら、(1997年);Dullら、1998年、米国特許第6,013,516号;および5,994,136号を参照されたい。これらはいずれも、本発明のトランスファーベクターを産生するように適合させることができる。一般的に、これらのベクターは、プラスミドベースまたはウイルスベースであり、治療用ポリペプチドをコードする核酸の宿主細胞への移入に必須の配列を運搬するように設計される。
A.組換えレンチウイルスを産生する方法
組換えレンチウイルスは複製欠損型であり、それゆえにこのウイルスは、単一の細胞で必要な成分が提供される「プロデューサー細胞株」で産生される。用語「プロデューサー細胞株」は、本明細書で使用される場合、パッケージング細胞株およびパッケージングシグナルを含むトランスファーベクター構築物を含む組換えレトロウイルス粒子を産生することが可能な細胞株を指す。感染性ウイルス粒子およびウイルスストック溶液の製造は、従来の技術を使用して行ってもよい。ウイルスストック溶液を調製する方法は当業界において公知であり、例えば、Y. Soneokaら、(1995年)Nucl. Acids Res. 23巻:628〜633頁、およびN. R. Landauら、(1992年)J. Virol. 66巻:5110〜5113頁 によって例示される。感染性ウイルス粒子は、技術従来を使用してパッケージング細胞から収集してもよい。例えば、感染性粒子は、当業界において公知のように、細胞溶解、または細胞培養の上清の収集によって収集することができる。必要に応じて、収集されたウイルス粒子は、必要に応じて精製してもよい。好適な精製技術は当業者に周知である。
プロデューサー細胞株を生成するために、3つまたは4つの別個のプラスミド系が使用される。4つのプラスミド系は、3つのヘルパープラスミドおよび1つのトランスファーベクタープラスミドを含む。例えば、Gag−Pol発現カセットは、構造タンパク質および酵素をコードする。別のカセットは、ベクターゲノムの核外輸送に必要なアクセサリータンパク質であるRevをコードする。第3のカセットは、異種エンベロープタンパク質、例えば、レンチウイルス粒子の標的細胞への進入を可能にする、ベシクロウイルスまたはアレナウイルスのエンベロープタンパク質をコードする。トランスファーベクターカセットは、粒子に取り込むためのシグナルおよび導入遺伝子発現を駆動させる内部プロモーターを有するベクターゲノムそれ自体をコードする。トランスファーベクターは異種導入遺伝子を運搬し、この唯一の遺伝物質が標的細胞、例えばCD34+細胞に移入する。3つのプラスミド系は、gag−polおよびエンベロープ機能ならびにトランスファーベクターカセットをコードする2つのヘルパープラスミドを含む。Mertenら、Mol. Ther. Methods Clin. Dev. 3巻:16017頁、2016年を参照されたい。
複数の成分の発現カセットが、プロデューサー細胞中で一時的にまたは安定してトランスフェクトされる。一実施態様において、プロデューサー細胞株中で、必要な成分が連続的かつ構成的に産生される。プロデューサー細胞は、HEK293細胞、HEK293T細胞、293FT、293SF−3F6、SODk1細胞、CV−1細胞、COS−1細胞、HtTA−1細胞、STAR細胞、RD−MolPack細胞、Win−Pac、CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H10T1/2細胞、FLY細胞、Psi−2細胞、BOSC23細胞、PA317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC1細胞、BSC40細胞、BMT10細胞、VERO細胞、W138細胞、MRCS細胞、A549細胞、HT1080細胞、B−50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、Saos−2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞、および211A細胞であり得る。市販のレンチウイルスパッケージング系があり、例えばLentiSuiteキット(Systems Biosciences、Palo Alto、CA)、レンチ−Xパッケージング系(Takara Bio、Mountain View、CA)、ViraSafeパッケージング系(Cell Biolabs,Inc. San Diego、CA)、ViroPowerレンチウイルスパッケージングミックス(Invitrogen)およびMissionレンチウイルスパッケージングミックス(Millapore Sigma、Burlington、MA)がある。
別の実施態様において、プロデューサー細胞株は、パッケージング機能を発現させるための誘導性発現カセットを含む。例えば、TET−オフ系およびTET−オン系を含むプロデューサー細胞を生成するために、テトラサイクリン誘導性発現系が使用される。加えて、エクジソン誘導性系が使用される。
レンチウイルス産生は、ペトリ皿、T−フラスコ、マルチトレイシステム(Cell Factories、Cell Stacks)、またはHYPERフラスコ中で増殖させた表面接着細胞を使用して実行される。最適な密集度(<50%)で、従来のリン酸Caプロトコールまたは近年開発されたポリエチレンイミン(PEI)方法のいずれかを使用して細胞をトランスフェクトする。他の効率的な使用されるカチオン性トランスフェクション試薬としては、リポフェクトアミン(Thermo−Fisher)、fugene(Promega)、LV−MAX(Thermo−Fisher)、TransIT(Mirus)または293fectin(Thermo−Fisher)が挙げられる。
代替として、レンチウイルス産生は、振盪フラスコ、ガラスバイオリアクター、ステンレス鋼バイオリアクター、ウェーブバッグ、および使い捨ての撹拌タンクを使用する懸濁培養を使用して実行される。懸濁培養物は、リン酸Caまたはカチオン性ポリマー、および直鎖状ポリエチレンイミンを使用してトランスフェクトされる。また細胞は、エレクトロポレーションを使用してもトランスフェクトされる。
レンチウイルスの精製は、膜処理ステップ、例えば濾過/浄化、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)を使用する濃縮/透析濾過、もしくは膜ベースのクロマトグラフィー、および/またはクロマトグラフィー処理ステップ、例えばイオン交換クロマトグラフィー(IEX)、アフィニティークロマトグラフィー、およびサイズ排除クロマトグラフィーベースのプロセスステップを使用して行われる。これらの処理のあらゆる組合せが、レンチウイルスを精製するために使用される。汚染DNAの分解のためのベンゾナーゼ/DNアーゼ処理は、下流プロトコールの一部か、またはベクター産生中に実行されるかのいずれかである。
精製は、3つの相で行われる:(i)捕捉は、粗生成物または清澄化した細胞培養のいずれかからの標的分子の最初の精製であり、それにより主要な汚染物質をなくす。(ii)中間精製は、捕捉段階と精練段階との間に清澄化したフィードで実行されるステップからなり、それにより特異的な不純物(タンパク質、DNA、および内毒素)が除去される。(iii)精練は、微量の汚染物質や不純物を除去して、活性で安全な生成物を製剤またはパッケージングに好適な形態で残すことを目的とした最終ステップである。汚染物質は、多くの場合、標的分子に対する配座異性体、微量の他の不純物または漏出の疑いのある生成物である。あらゆるタイプのクロマトグラフィーおよび限外濾過プロセスが、中間体精製および最終的な精練ステップに使用される。
レンチウイルス精製のための例示的な標準プロセスは、以下を含む。i)細胞および死細胞片の除去は、前線濾過(0.45μm)または遠心分離で行われ、ii)捕捉クロマトグラフィーは、陰イオン交換クロマトグラフィー、例えばMustang QまたはDEAEセファロース、またはアフィニティークロマトグラフィー(ヘパリン)で行われ、iii)精練は、サイズ排除クロマトグラフィーで行われ、iv)濃縮および緩衝液交換は、タンジェンシャルフロー濾過または超遠心分離法で行われ、v)DNAの低減は、ベンゾナーゼで行われ、vi)滅菌は、0.2μmのフィルターで行われる。Mertenら、Mol. Ther Methods Clin Dev. 3巻:16017頁、2016年を参照されたい。
B.標的細胞への形質導入を強化する方法
形質導入の開始時に、ウイルス粒子の標的細胞への結合は、ウイルスエンベロープと細胞表面上の特異的な受容体との特異的な相互作用によって媒介される。しかしながら、数々の近年の研究によれば、ウイルス結合の最初のステップは、特異的なエンベロープ−受容体相互作用ではなく、むしろ受容体とは無関係の結合事象を伴うことが実証されている(Pizzato M、Marlow SA、Blair ED、Takeuchi Y. Initial binding of murine leukemia virus particles to cells does not require specific Env-receptor interaction. J.Virol. 1999年;73巻(10号):8599〜8611頁;Sharma S、Miyanohara A、Friedmann T. Separable mechanisms of attachment and cell uptake during retrovirus infection. J.Virol. 2000年;74巻(22号):10790〜10795頁)。この最初の事象、そしてその結果としてのレンチウイルスによる形質導入の効率は、負電荷を有する細胞と近づいてくるエンベロープウイルスとの間の強い静電反発によって低減する(Jensen TW、Chen Y、Miller WM. Small increases in pH enhance retroviral vector transduction efficiency of NIH-3T3 cells. Biotechnol.Prog. 2003年;19巻(1号):216〜223頁;Swaney WP、Sorgi FL、Bahnson AB、Barranger JA. The effect of cationic liposome pretreatment and centrifugation on retrovirus-mediated gene transfer. Gene Ther. 1997年;4巻(12号):1379〜1386頁)。この問題を克服するように設計された方法としては、低速でのウイルスを含む標的細胞の遠心分離、固定されたタンパク質上への細胞とウイルスの共局在化、および複数回の形質導入を採用することが挙げられる(Swaneyら、上記;O'Doherty U、Swiggard WJ、Malim MH. Human immunodeficiency virus type 1 spinoculation enhances infection through virus binding. J.Virol. 2000年;74巻(21号):10074〜10080頁)。重要なことに、正電荷を有するポリカチオン、例えばポリブレン、DEAE−デキストラン、硫酸プロタミン、ポリ−L−リシン、またはカチオン性リポソームの添加は、細胞とウイルスとの間の反発力を低減させ、レトロウイルス粒子の細胞表面への結合を媒介し、結果として、より高い効率の形質導入を引き起こす(Swaneyら、上記;Toyoshima K、Vogt PK. Enhancement and inhibition of avian sarcoma viruses by polycations and polyanions. Virology. 1969年;38巻(3号):414〜426頁;Le Doux JM、Landazuri N、Yarmush ML、Morgan JR. Complexation of retrovirus with cationic and anionic polymers increases the efficiency of gene transfer. Hum.Gene Ther. 2001年;12巻(13号):1611〜1621頁;Hodgson CP、Solaiman F. Virosomes: cationic liposomes enhance retroviral transduction. Nat.Biotechnol. 1996年;14巻(3号):339〜342頁;Cornetta K、Anderson WF. Enhanced in vitro and in vivo gene delivery using cationic agent complexed retrovirus vectors. Gene Ther. 1998年;5巻(9号):1180〜1186頁;Seitz B、Baktanian E、Gordon EM、Anderson WF、LaBree L、McDonnell PJ.)。
C.医薬組成物および製剤
本発明は、レンチウイルスによって形質導入された細胞、例えば造血幹細胞、より具体的には本明細書に記載される方法に従って産生されたCD34+細胞、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物および製剤を提供する。「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、および薬学的に許容される細胞培養培地を含む生理的に適合するその他同種のものを含む。
一実施態様において、担体を含む組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内または動脈内)、腹膜内または筋肉内投与に好適である。薬学的に許容される担体としては、滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末が挙げられる。このような薬学的に活性な物質のための媒体および薬剤の使用は当業界において周知である。いずれの従来の媒体または薬剤も、形質導入される細胞に不適合でない限り、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が意図される。
本発明の組成物は、単独で投与されるか、または同様に、例えばサイトカイン、増殖因子、ホルモン、小分子または様々な薬学的に活性な薬剤などの他の薬剤と組み合わせて投与される。同様に組成物中に含めることができる他の成分には実質的に限定はなく、ただし追加の薬剤は、意図した遺伝子治療を達成する組成物の能力に有害作用を与えない。
本発明の医薬組成物において、薬学的に許容される賦形剤および担体溶液の製剤が当業者に周知であり、例えば経口、非経口、静脈内、鼻腔内、および筋肉内投与および製剤を含む、様々な処置レジメンで本明細書に記載される特定の組成物を使用するための好適な投与および処置レジメンの開発も同様である。
ある特定の環境において、例えば米国特許第5,543,158号;米国特許第5,641,515号および米国特許第5,399,363号(それぞれ具体的にその全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるように、本明細書で開示された組成物を、非経口的に、静脈内に、筋肉内に、またはさらには腹腔内にも送達することが望ましいと予想される。遊離塩基または薬理学的に許容できる塩としての活性化合物の溶液は、水中で、好適には界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースが混合された水中で調製することができる。また分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中で調製することができ、さらに油中で調製することができる。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を予防するために保存剤を含有する。
注射可能な使用に好適な医薬の形態としては、滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末が挙げられる(米国特許第5,466,468号、具体的にその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。いずれの場合も、この形態は、滅菌されていると予想され、簡単に注射針を通過する程度に流体であると予想される。この形態は、製造および貯蔵条件下で安定であると予想され、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護されていると予想される。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、好適なそれらの混合物、および/または植物油を含有する溶媒または分散媒であってもよい。適した流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合は必要な粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用からの保護は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって促進することができる。多くの場合において、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいと予想される。注射用組成物の持続性吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によってもたらすことができる。
例えば、水溶液での非経口投与の場合、必要に応じて溶液を好適に緩衝化し、液体希釈剤をまず十分な生理食塩水またはグルコースで等張にすることが予想される。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹膜内投与に特に好適である。これに関して、採用できる滅菌水性媒体は、本発明の開示の観点から当業者に公知と予想される。例えば、1回の投薬量を1mlの等張NaCl溶液に溶解させ、1000mlの皮下注入用液に添加するかまたは輸注予定の部位に注射するかのいずれかであり得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版. Baltimore、Md.:Lippincott Williams & Wilkins、2000年を参照)。投薬量の多少の変更は、処置されている対象の状態に応じて必然的になされることになる。いずれの場合においても、投与に関与する人は、個々の対象に対して適切な用量を決定することになる。さらに、ヒトへの投与の場合、調製物は、FDA生物製剤局の基準が求める滅菌状態、発熱性、および全身の安全性および純度基準を満たすと予想される。
滅菌注射用溶液は、必要に応じて上記で列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒中に、活性化合物を必要な量で取り込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、基礎の分散媒および上記で列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、様々な滅菌した活性成分を取り込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、事前に滅菌濾過したそれらの溶液から、活性成分に加えてあらゆる追加の所望の成分の粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥技術である。
本明細書で開示された組成物は、中性または塩の形態で製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離のアミノ基と形成された)が挙げられ、これは、例えば塩化水素酸もしくはリン酸などの無機酸、または例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される。遊離のカルボキシル基と形成された塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、および例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。製剤化されたら、溶液は、投薬製剤に適合する方式で、治療上有効な量で投与されると予想される。製剤は、例えば注射用溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。
「担体」は、本明細書で使用される場合、ありとあらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。このような薬学的に活性な物質のための媒体および薬剤の使用は当業界において周知である。いずれの従来の媒体または薬剤も、活性成分に不適合でない限り、治療用組成物におけるその使用が意図される。また補足的な活性成分も組成物に取り込まれていてもよい。
語句「薬学的に許容される」は、ヒトに投与されるとアレルギー性または類似の好ましくない反応を生じない分子実体および組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含有する水性組成物の調製は、当業界においてよく理解されている。典型的には、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとしての注射可能物質として調製される。また、注射前の液体への溶解または液体への懸濁に好適な固体の形態を調製することもできる。調製物はまた、乳化されてもよい。
ある特定の実施態様において、組成物は、鼻腔内噴霧、吸入、および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達することができる。遺伝子、ポリヌクレオチド、およびペプチド組成物を鼻のエアロゾルスプレーを介して肺に直接送達するための方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および米国特許第5,804,212号(それぞれ具体的にその全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。同様に、鼻腔内微粒子樹脂(Takenagaら、1998年)およびリゾホスファチジル−グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、具体的にその全体が参照により本明細書に組み入れられる)を使用する薬物の送達も薬学分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroetheylene)支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達が、米国特許第5,780,045号(具体的にその全体が参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。
ある特定の実施態様において、送達は、好適な宿主細胞への本発明の組成物の導入のために、必要に応じてCPPポリペプチドなどと混合した、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、小胞の使用によって行ってもよい。特定には、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、ナノ粒子などのいずれかにカプセル化された状態での送達のために製剤化されてもよい。このような送達ビヒクルの製剤および使用は、公知の技術や従来の技術を使用して行うことができる。本発明の製剤および組成物は、本明細書に記載されるような様々なポリペプチド、ポリヌクレオチド、および小分子の組合せで構成される1種または複数のリプレッサーおよび/または活性化剤を含んでいてもよく、これらは、単独または1種または複数の他の療法様式との組合せのいずれかでの細胞または動物への投与のための、薬学的に許容される溶液または生理的に許容される溶液(例えば、培養培地)中に製剤化される。また必要に応じて、本発明の組成物は、同様に他の薬剤、例えば細胞、他のタンパク質もしくはポリペプチドまたは様々な医薬活性薬剤などと組み合わせて投与されてもよいことも理解される。
特定の実施態様において、本発明に係る製剤または組成物は、本明細書に記載されるような様々なポリペプチド、ポリヌクレオチド、および小分子の組合せと接触させた細胞を含む。
ある特定の態様において、本発明は、これに限定されないが、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターなどのウイルスベクター系(すなわち、ウイルス媒介形質導入)の送達に好適な製剤または組成物を提供する。
ex vivoでの送達のための例示的な製剤としてはまた、当業界において公知の様々なトランスフェクション剤、例えばリン酸カルシウム、エレクトロポレーション、熱ショックおよび様々なリポソーム製剤(すなわち、脂質媒介トランスフェクション)の使用も挙げることができる。リポソームは、以下でより詳細に記載されるように、水性流体の画分を閉じ込めた脂質二重層である。DNAはカチオン性リポソームの外部表面に自発的に会合し(その電荷のために)、これらのリポソームは、細胞膜と相互作用すると予想される。
ある特定の態様において、本発明は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤(例えば、薬学的に許容される細胞培養培地)と共に製剤化された本明細書に記載される治療有効量の1つまたは複数のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む薬学的に許容される組成物を提供する。
本発明の特定の実施態様は、他の製剤を含んでいてもよく、このような製剤は、例えば薬学分野において周知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Baltimore、Md.:Lippincott Williams & Wilkins、2000年に記載される製剤である。
D.処置方法
組換えレンチウイルスは、改善された遺伝子治療方法を提供する。用語「遺伝子治療」は、本明細書で使用される場合、遺伝子および/または遺伝子の発現を回復させる、修正する、または改変する、細胞のゲノムへのポリヌクレオチドの導入を指す。様々な実施態様において、本発明のウイルスベクターは、単一遺伝子による疾患、障害もしくは状態または造血系の疾患、障害もしくは状態と診断されていた、またはそれを有する疑いのある対象に、治癒的な、予防的な、または改善につながる利益を提供するポリペプチドをコードする治療的な導入遺伝子を発現する造血細胞発現制御配列を含む。加えて、本発明のベクターは、特定の集団または細胞の系統、例えば赤血球細胞を増加させたりまたは拡大したりするために、細胞中で短縮化されたエリスロポイエチン受容体を発現する別の発現制御配列を含む。ウイルスは、in vivo、ex vivoまたはin vitroで、細胞に感染してそれに形質導入することができる。ex vivoおよびin vitroでの実施態様において、形質導入される細胞は次いで、療法が必要な対象に投与することができる。本発明は、本発明のベクター系、ウイルス粒子、および形質導入された細胞が、対象における単一遺伝子による疾患、障害もしくは状態または造血系の疾患、障害もしくは状態、例えば異常ヘモグロビン症を処置する、予防する、および/または改善するために使用されることを意図する。
「造血」は、本明細書で使用される場合、前駆細胞からの血液細胞の形成および発達に加えて、幹細胞からの前駆細胞の形成を指す。血液細胞としては、これらに限定されないが、赤血球(erythrocyte)または赤血球(RBC:red blood cell)、網状赤血球、単球、好中球、巨核球、好酸球、好塩基球、B細胞、マクロファージ、顆粒球、肥満細胞、血小板、および白血球が挙げられる。
用語「異常ヘモグロビン症」または「異常血色素症の状態」は、本明細書で使用される場合、血液中の異常なヘモグロビン分子の存在に関連するあらゆる障害を含む。異常ヘモグロビン症の例としては、これらに限定されないが、ヘモグロビンC病、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、およびサラセミアが挙げられる。さらに、異常なヘモグロビンの組合せが血液中に存在する異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球/Hb−C病)も挙げられる。
用語「鎌状赤血球貧血」または「鎌状赤血球症」は、本明細書において、赤血球の鎌状化に起因するあらゆる症候的な貧血状態を含むと定義される。鎌状赤血球症の兆候としては、貧血;痛み;および/または臓器不全、例えば腎不全、網膜症、急性胸部症候群、虚血、陰茎強直症および卒中が挙げられる。用語「鎌状赤血球症」は、本明細書で使用される場合、特にHbSにおける鎌状赤血球置換に関してホモ接合体の対象における鎌状赤血球貧血に付随する様々な臨床上の問題を指す。鎌状赤血球症の用語の使用によって本明細書で言及される体質的な兆候としては、増殖および発達の遅延、特定には肺炎球菌によって重篤な感染を発生させる傾向の増加、再発性梗塞および最終的な脾臓組織の破壊を伴う、循環する細菌の有効なクリアランスを妨げる脾臓機能の著しい障害が挙げられる。用語「鎌状赤血球症」には、主として腰椎、腹部、および大腿骨骨幹部に影響を及ぼし、メカニズムと重症度の点で減圧痛と類似している筋骨格痛の急性事象も含まれる。成体では、このような発症は一般的に、数週間または数ヶ月の短い持続時間の軽度または中程度の発作として現れ、その間に平均して年に約1回襲われる5から7日間続く苦痛な発症が起こる。このような危機のきっかけとなることが公知の事象としては、アシドーシス、低酸素症および脱水が挙げられ、これらは全て、HbSの細胞内重合を増強する(J. H. Jandl、Blood:Textbook of Hematology、第2版、Little, Brown and Company、Boston、1996年、544〜545頁)。本明細書で使用される場合、用語「サラセミア」は、ヘモグロビン合成に影響を及ぼす突然変異に起因して起こる遺伝性貧血を包含する。したがって、この用語は、重度のまたはβ−サラセミア、重症型サラセミア、中間型サラセミア、α−サラセミア、例えばヘモグロビンH病などのサラセミアの状態の結果生じるあらゆる症候性貧血を含む。
「サラセミア」は、本明細書で使用される場合、ヘモグロビン産生の欠陥を特徴とする遺伝性障害を指す。サラセミアの例としては、αおよびβサラセミアが挙げられる。β−サラセミアは、ベータグロビン鎖における突然変異によって引き起こされ、重症型または軽症型で生じ得る。β−サラセミアの重症型において、子供は生まれたときは正常であるが、生後1年の間に貧血を発症する。β−サラセミアの軽症型は、小さい赤血球を産生する。
α−サラセミアは、グロビン鎖からの1つまたは複数の遺伝子の欠失によって引き起こされる。αサラセミアは、典型的には、HBA1およびHBA2遺伝子が関与する欠失に起因する。これらの遺伝子はどちらも、ヘモグロビンの構成要素(サブユニット)であるα−グロビンをコードする。各細胞ゲノム中には、HBA1遺伝子の2つのコピーおよびHBA2遺伝子の2つのコピーがある。結果として、α−グロビンを産生する4つの対立遺伝子がある。様々なタイプのα−サラセミアが、これらの対立遺伝子の一部または全ての損失に起因する。Hb Bart症候群は、α−サラセミアの最も重度の形態であり、これは、4つ全てのα−グロビン対立遺伝子の損失に起因する。HbH病は、4つのα−グロビン対立遺伝子のうち3つの損失によって引き起こされる。これらの2つの状態において、α−グロビンの不足は、細胞の正常なヘモグロビン生成を妨げる。その代わりに、細胞は、ヘモグロビンBart(Hb Bart)またはヘモグロビンH(HbH)と称されるヘモグロビンの異常な形態を産生する。これらの異常なヘモグロビン分子は、効果的に酸素を体の組織に運搬できない。正常なヘモグロビンのHb BartまたはHbHでの置換が、貧血やα−サラセミアに関連する他の重篤な健康問題を引き起こす。
特定の実施態様において、本発明の遺伝子治療の方法は、ヘモグロビンC病、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β−サラセミア、重症型サラセミア、中間型サラセミア、α−サラセミア、およびヘモグロビンH病からなる群から選択される異常ヘモグロビン症を処置する、予防する、または改善するために使用される。
様々な実施態様において、レンチウイルスベクターは、in vivoで遺伝子治療が必要な対象の細胞、組織、または臓器に直接注射によって投与される。様々な他の実施態様において、in vitroまたはex vivoで、細胞に本発明のベクターで形質導入し、必要に応じてex vivoで拡大する。次いで形質導入された細胞を遺伝子治療が必要な対象に投与する。
様々な実施態様において、造血幹細胞は、in vivoで特定の生物学的なニッシェに投与されると適切な細胞型に分化する能力を有するため、遺伝子治療の方法のための造血幹細胞の使用は好ましい。用語「幹細胞」は、(1)長期の自己再生、または元の細胞の少なくとも1つの同一なコピーを生成する能力、(2)複数の、一部の例では唯一の、特殊化した細胞型への単一細胞レベルでの分化、および(3)in vivoにおける機能的な組織再生が可能な未分化細胞である細胞を指す。幹細胞はさらに、それらの発生能力に従って、全能性、多能性、複能性および多/単分化能に分類される。「自己再生」は、不変の娘細胞を産生し、特殊化した細胞型を生成する独特な能力(潜在的能力)を有する細胞を指す。自己再生は、2つの方法で達成することができる。非対称細胞分裂は、親細胞に同一な1つの娘細胞と、親細胞と異なり、前駆または分化細胞である1つの娘細胞を産生する。非対称細胞分裂は、細胞の数を増加させない。対称的細胞分裂は、2つの同一な娘細胞を産生する。細胞の「増殖」または「拡大」は、対称的に分裂している細胞することを指す。
用語「多能性」は、本明細書で使用される場合、体または体細胞の全ての系統(すなわち胚本体(embryo proper))を形成する細胞の能力を意味する。例えば、胚性幹細胞は、3つの胚葉である外胚葉、中胚葉、および内胚葉のそれぞれから細胞を形成できる多能性幹細胞の一種である。本明細書で使用される場合、用語「複能性」は、1つの系統から複数の細胞型を形成する成体幹細胞の能力を指す。例えば、造血幹細胞は、血液細胞系統の全ての細胞、例えばリンパ球および骨髄細胞を形成することが可能である。
本明細書で使用される場合、用語「祖先」または「前駆細胞」は、自己復活し、より成熟した細胞に分化する能力を有する細胞を指す。前駆細胞は、多能性および複能性幹細胞と比較して低い効力を有する。多くの前駆細胞は、単一の系統に沿って分化するが、かなり大きい増殖能も有する場合がある。
造血幹細胞(HSC)は、生物の寿命にわたり成熟血液細胞の全レパートリーを生成することが可能な拘束された造血前駆細胞(HPC)を生じる。用語「造血幹細胞」または「HSC」は、例えば、骨髄(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、およびリンパ球系統(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)、および当業界において公知の他のもの(Fei, R.ら、米国特許第5,635,387号;McGlaveら、米国特許第5,460,964号;Simmons, P.ら、米国特許第5,677,136号;Tsukamotoら、米国特許第5,750,397号;Schwartzら、米国特許第5,759,793号;DiGuistoら、米国特許第5,681,599号;Tsukamotoら、米国特許第5,716,827号を参照)などの生物の全ての血液細胞型を生じる複能性幹細胞を指す。造血幹および前駆細胞は、致死的に放射線照射された動物またはヒトに移植されると、赤血球、好中球−マクロファージ、巨核球およびリンパ球造血細胞のプールに再生着することができる。
好ましい実施態様において、形質導入された細胞は、骨髄、臍帯血、または末梢循環から単離された造血幹および/または前駆細胞である。特定の好ましい実施態様において、形質導入された細胞は、骨髄、臍帯血、または末梢循環から単離された造血幹細胞である。
HSCは、ある特定の表現型または遺伝子型マーカーに従って同定することができる。例えば、HSCは、その小さいサイズ、系統(lin)マーカーの欠如、ローダミン123(ローダミンDULL、rholoとも称される)またはヘキスト33342などの生体色素での低い染色性(サイドポピュレーション)、および多くが表面抗原分類シリーズに属するその表面上の様々な抗原性マーカー(例えば、CD34、CD38、CD90、CD133、CD105、CD45、Ter119、およびc−kit、幹細胞因子の受容体)の存在によって同定することができる。HSCは、典型的には系統拘束を検出するために使用されるマーカーに関して主として陰性であり、したがってLin(−)細胞と称されることが多い。
一実施態様において、ヒトHSCは、CD34+、CD59+、Thy1/CD90+CD38−、C−kit/CD117+、CD49f+およびLin(−)と特徴付けることができる。しかしながら、ある特定のHSCはCD34−/CD38−であるように、必ずしも全ての幹細胞がこれらの組合せで網羅される訳ではない。また一部の研究からも、最も初期の幹細胞は、細胞表面上のc−kitを欠如している場合があることが示唆されている。ヒトHSCの場合、CD34+とCD34−HSCの両方がCD133+であることが示されていることから、CD133が初期マーカーの代表例の可能性がある。CD34+およびLin(−)細胞も造血前駆細胞を含むことが当業界において公知である。
前述の組成物、方法および使用は、例示であり、限定ではないことが意図される。本明細書で提供される教示を使用して、組成物、方法および使用の他のバリエーションが当業者にとって容易に利用可能であると予想される。
以下の実施例は、例示するために提供されるが、特許請求された発明を限定しない。
(実施例1)
より効率的なヒトCD34+細胞への形質導入を可能にするエンベロープタンパク質の同定、およびヒトL−セレクチンおよび/またはアレナウイルスのエンベロープタンパク質を発現することによるヒトCD34+細胞への改善された形質導入方法
方法
発現ベクターの構築。pHCMV VSV−Gインディアナエンベロープ発現ベクターをスタンフォードウイルスコアから得た、これは、ヒトCMV(HCMV)プロモーターの制御下でVSV−Gインディアナエンベロープタンパク質を含有する(図18;配列番号44)。5’非翻訳領域の一部、VSV−Gインディアナエンベロープタンパク質のコード配列、および3’非翻訳領域の一部を含有するpHCMV VSV−Gインディアナ中のApa I/Msc I制限断片を、合成された他のエンベロープタンパク質のコード領域(DNA 2.0,Inc.)で置き換え、エンベロープコード領域のみが変更されるように同じ5’および3’非翻訳領域を端部に配置した。このようなプラスミドの例は、pHCMVバスコンゴエンベロープ、pHCMVチャンディプラエンベロープ、pHCMVキュリオノポリス(Curionopolis)エンベロープ、pHCMVエクポマ−1エンベロープ、pHCMVエクポマ−2エンベロープ、pHCMVイスファハンエンベロープ、pHCMVカメセ(Kamese)エンベロープ、pHCMVコトンカン(Kontonkan)エンベロープ、pHCMVクワッタエンベロープ、pHCMVルダンテック(Le Dantec)エンベロープ、pHCMV狂犬病エンベロープ、pHCMV VSVアラゴアスエンベロープ、pHCMV VSVアリゾナエンベロープ、pHCMV VSVカラジャスエンベロープ、pHCMV VSVマラバエンベロープ、pHCMV VSVモレトンエンベロープ、pHCMV VSVニュージャージーエンベロープ、およびpHCMVマチュポエンベロープである。
ヒトL−セレクチン発現ベクターである、CMVプロモーターの制御下にヒトL−セレクチン(遺伝子記号:SELL)コード領域を含有するpCMV6−XL5ヒトSELLを、Origene,Incから購入した(図19;配列番号45)。eGFPレンチウイルスベクター(pCCL MNDU3eGFP)をDon Kohn(UCLA)から得た。このベクターのマップは、図20、さらに配列番号46の通りに設計である。β−グロビンレンチウイルスベクター(pCCL GLOBE1 βAS3)を、Fulvio Mavilio(Genethon)から得た(図21;配列番号47を参照)。
レンチウイルスの産生。293T細胞(American Type Culture Collection)を、75cm2フラスコ1つ当たり細胞1.2×107個の密度で、10%ウシ胎児血清(Hyclone)を含む12.5mlのDMEM培地(Invitrogen)でプレーティングした。細胞をプレーティングしてから24時間後、培地を除去し、細胞を5mlのゲンタマイシン含有X−VIVO15培地(Lonza)で洗浄し、次いで12.5mlの10mM HEPES含有X−VIVO15培地を添加した。単一のエンベロープタンパク質を有するウイルスの産生のために、100μlのOptiMem I培地(Invitrogen)、10μgのレンチウイルスベクタープラスミド、5μgのpRSV rev(図22;配列番号48)、5μgのpMDLg/pRRE(図23;配列番号49)、および5μgのエンベロープ発現プラスミドを100μgの直鎖状25kDalのPEI(VWR)と共に混合し、周囲温度で10分間インキュベートし、次いでその混合物を細胞に添加することによって細胞をトランスフェクトした。L−セレクチン発現の存在下でのウイルスの産生のために、上記の混合物に5μgのpCMV6−XL5ヒトSELL(図19)を添加し、エンベロープ発現プラスミドの量を典型的には5μgから1μgに低減した。トランスフェクションの開始から24時間後、培地をフラスコから除去し、4℃で貯蔵し、ゲンタマイシン、10mMのHEPESを含む12.5mlのX−VIVO15培地で交換した。トランスフェクションの開始から48時間後、培地をフラスコから除去し、第1の収穫物からの培地と共にプールした。細胞および死細胞片を、4℃、3,000×gで15分間遠心分離することによって培地からペレット化した。上清を滅菌した0.45μM孔サイズのフィルターユニット(Steri−flip;Millipore)に通過させて濾過し、あらゆる残存する293T細胞を除去した。これは、それらの一部は、ウイルス産生中に形質導入される可能性があり、形質導入された標的細胞と混同される可能性があったためである。粗製ウイルスを、ベンゾナーゼ(Sigma)を用いて、50U/mlの最終濃度で、37℃で30分間処理して、トランスフェクションから残存したプラスミドの量を低減させた。約0.2mlまでの再生セルロース膜を含有するAmicon Ultra−15ユニット(Millipore、100kDal分子量カットオフ)を使用する限外濾過によってウイルスをおよそ100倍に濃縮した。ウイルスを様々な1回使用分のサイズに等分し、使用するまで−80℃で貯蔵した。全てのウイルスを1回のみ融解させて使用した。p24キャプシドELISA(Clontech,Inc.)を使用してウイルス濃度を決定した。異なるエンベロープを含有するウイルスの感染力は、細胞が異なれば大きく異なる可能性があるため、培養細胞での感染タイターより「粒子数」を決定するアッセイ(p24キャプシドELISA)を使用して、既知量のウイルス粒子が形質導入に添加されたことを確認した。
ヒトCD34細胞への形質導入。骨髄由来ヒトCD34+細胞をLonzaから購入した。形質導入の2日前、未処理の48−ウェルプレート(VWRカタログ番号73521−144)を、20μg/mlレトロネクチン(Lonza)を含有する0.25mlのPBSで4℃で24時間コーティングした。PBS/レトロネクチンを除去し、プレートを、PBS、2%ウシ血清アルブミンで周囲温度で少なくとも30分間ブロッキングした。CD34+細胞を融解させ、ペレット化し、次いでゲンタマイシン、50ng/mlのヒトc−kitリガンド(R&D Systems)、20ng/mlのヒトIL−3(R&D Systems)、50ng/mlのヒトFlt−3リガンド(R&D Systems)、および50ng/mlのヒトトロンボポエチン(R&D Systems)を含むX−VIVO15培地に0.25ml/ウェルを使用して再懸濁した。細胞を37℃で24時間インキュベートした、次いで形質導入のために所望の量のレンチウイルスを添加した。細胞1×106個/mlより下の細胞密度を維持するために必要に応じて追加の培地を添加した。
eGFP発現カセットを含有するレンチウイルスベクターで形質導入されたCD34細胞中のeGFP+細胞の%の決定。ウイルス形質導入の開始から3日後、細胞を収集し、96ウェルのV底プレート中で、300×g、20℃で5分間ペレット化した。培地を除去し、細胞を200μlのPBS、1%FBSで洗浄した。細胞を、300×g、20℃で5分間ペレット化し、PBS、1%FBSを除去した。細胞を200μlのPBS、2%パラホルムアルデヒド、1%FBSに再懸濁した。Accuriフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用してeGFP+細胞の%を決定した。
形質導入されたヒトCD34細胞中のβ−グロビンミニ遺伝子を含有するレンチウイルスベクターの、組み込まれたベクターコピー数の決定。ウイルス形質導入の開始から3週間後、細胞を収集し、1.5mlのマイクロ遠心管中で、300×g、20℃で5分間ペレット化した。培地を除去し、細胞を200μlのPBSに再懸濁した。DNeasy血液および組織用キット(Qiagen,Inc.)を製造元の説明書に従って使用してゲノムDNAを調製した。ゲノムDNAを3回の定量ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)に供し、組み込まれたレンチウイルスのコピー数、単一コピー遺伝子のコピー数(試料中の細胞数を数えるため)、およびトランスフェクションから残った可能性があるプラスミドの量(これは、レンチウイルスのゲノムは導入遺伝子プラスミド内に完全に含有されるため、レンチウイルスのゲノムの正確な定量に干渉する可能性がある)を測定した。
Q−PCRに使用されるプライマーおよびプローブの配列は、以下の通りである。
組み込まれたレンチウイルスのコピー数の定量に関して、Q−PCRのための標的は、ウイルスRNAゲノムパッケージング配列(プサイ)とオーバーラップする配列であった。
使用されるフォワードプライマーの配列は、5’−ACTTGAAAGCGAAAGGGAAAC−3’(配列番号50)である。
使用されるリバースプライマーの配列は、5’−CGCACCCATCTCTCTCCTTCT−3’(配列番号51)である。
使用されるプローブの配列は、5’−6FAM−AGCTCTCTCGACGCAGGACTCGGC−TAMRA−3’(配列番号52)である。
標準として使用されるDNAは、pCCL−GLOBE1−βAS3(配列番号47)であった。
単一コピー遺伝子のコピー数の定量に関して、Q−PCRのための標的は、ヒトRNアーゼP遺伝子であった。Q−PCRには、予備混合したプライマーおよびプローブからなるTaqMan RNアーゼP検出試薬(Applied Biosystems)を使用した。標準として使用されるDNAは、試薬と共に提供されるヒトDNAであった。
残留したプラスミドの定量の場合、Q−PCRのための標的は、ウイルスRNAゲノムをコードする領域の外側のpCCLベースのレンチウイルスベクター骨格中に唯一見出されており、ウイルス産生に使用される他のいずれのプラスミドにも存在しないSV40複製起点中の配列であった。
使用されるフォワードプライマーの配列は、5’−CTCTGAGCTATTCCAGAAGTAGTG−3’(配列番号53)である。
使用されるリバースプライマーの配列は、5’−CAGTGAGCGCGCGTAATA−3’(配列番号X)である。
使用されるプローブの配列は、5’−6FAM−GACGTACCCAATTCGCCCTATAGTG−TAMRA−3’(配列番号54)である。
標準として使用されるDNAは、pCCL−GLOBE1−βAS3(配列番号47)であった。
Taqmanファストアドバンストマスターミックス、2×(Applied Biosystems)を使用し、Roche LightCyclerII装置でQ−PCRを実行した。単一コピー遺伝子のコピー数で割ったレンチウイルスのゲノムのコピー数(残留したプラスミドの量を引いた)が、形質導入された細胞1個当たりの平均ベクターコピー数(VCN)である。典型的には、残留したベクタープラスミドDNAの量はレンチウイルスのゲノムのコピー数の1%であったため、有意ではなかった。
ヒトL−セレクチンへの中和抗体によるヒトL−セレクチンで強化されたヒトCD34+細胞への形質導入の阻害。2ナノグラム(p24キャプシドELISAによって測定)のCCL−MNDU3−eGFPゲノムを有するVSV−Gインディアナシュードタイプレンチウイルスを、ヒトL−セレクチンの存在または非存在下で上記の通り産生した。ウイルスを、10μMの抗ヒトL−セレクチン抗体(クローンDREG56;Thermo Fisher)の存在下または非存在下で、37℃で30分間、体積20μlでインキュベートし、次いで上記の通り調製した0.25mlの培地中のサイトカインで刺激したヒトCD34+細胞に添加した。形質導入開始の3日後、eGFP+細胞の%を上述したように決定した。
結果
ヒトCD34細胞への形質導入を可能にするものに関してスクリーニングするためのラブドウイルスエンベロープ選択のための戦略。およそ6000種のラブドウイルスエンベロープ配列がGenBankで見出された。ヒトまたは霊長類から単離したもの、またはそれらが霊長類に感染できるという血清学的証拠があったもの、組換えレンチウイルスと共に集合化したことが一度もないもの、およびそれに関するコード領域の完全配列がエンベロープタンパク質発現ベクターを構築するために利用可能なものを決定することによって、その数を10種のエンベロープ配列に絞った。それらの基準満たした11種のエンベロープタンパク質は、以下のラブドウイルス:VSVアリゾナ、バスコンゴ、キュリオノポリス、エクポマ−1、エクポマ−2、イスファハン、カメセ、コトンカン、クワッタ、ルダンテック、および狂犬病に由来する。加えて、他者によってすでに試験されたチャンディプララブドウイルス由来のエンベロープタンパク質(Huら、2016年)も試験した。図1は、これらのウイルスエンベロープタンパク質、それらが属するラブドウイルスサブファミリー、およびVSVインディアナエンベロープタンパク質に対するそれらのアミノ酸同一性%の系統発生学的な関係を示す。
ほとんどのラブドウイルスサブファミリー由来の代表的なエンベロープタンパク質はヒトCD34+細胞への形質導入が可能ではない。上記で列挙したラブドウイルスエンベロープタンパク質のうち、ルダンテックを除くそれらの全てが、CCL−MNDU3−eGFPゲノムを有するレンチウイルスで293T細胞に形質導入することが可能であった(表1)。これは、ルダンテックエンベロープを除いて、発現プラスミドの全てが機能的なエンベロープタンパク質をコードすることを示す。これまでにチャンディプラおよび狂犬病での細胞株への形質導入が観察されている。イスファハンエンベロープでの293T細胞への形質導入のレベルは、これまでに報告されていないが、それが他の培養細胞株への形質導入に有用であり得ることを示唆する。
対照的に、VSVアリゾナおよびインディアナエンベロープタンパク質のみが、CCL MNDU3 eGFPゲノムを有するレンチウイルスでの効率的なヒトCD34+細胞への形質導入が可能であった(表2)。
レンチウイルスを、pCCL MNDU3 eGFPゲノムおよび示されたエンベロープタンパク質を使用して産生した。ウェル1つ当たり1ngのp24を使用して(24ウェルのプレートで)293T細胞に形質導入した。感染後1日でGFP+細胞の%を決定した。
レンチウイルスを、pCCL−MNDU3−eGFPゲノムおよび示されたエンベロープタンパク質を使用して産生した。サイトカインで刺激したヒトCD34+細胞に、ウェル1つ当たり10ngのp24を使用して(48ウェルのプレートで)形質導入した。感染後3日でGFP+細胞の%を決定した。
全ての新世界由来ベシクロウイルスエンベロープタンパク質がヒトCD34+細胞に形質導入する。VSV−Gインディアナの他にも別のベシクロウイルスエンベロープタンパク質(VSV−Gアリゾナ)がヒトCD34+細胞に形質導入したことから、完全コード領域が入手可能な全ての公知のベシクロウイルスの代表例を、それらがヒトに感染できるという証拠があるかどうかに関係なく、ヒトCD34+細胞への形質導入に関して試験した。試験した5つの追加のVSVエンベロープタンパク質は、以下のVSV株:アラゴアス、カラジャス、マラバ、モレトン、およびニュージャージー由来であった。これらのエンベロープタンパク質は、VSVインディアナエンベロープ配列に対するそれらのアミノ酸配列同一性において大きく異なる(表3)。これらのエンベロープタンパク質の全てが、効率は異なるもののヒトCD34+細胞への形質導入が可能であった(図2)。アラゴアス、ニュージャージー、およびカラジャスエンベロープタンパク質を有するレンチウイルスは、VSVインディアナエンベロープを有するものより低い効率でヒトCD34+細胞に形質導入したが、モレトン、アリゾナ、およびマラバエンベロープタンパク質を有するレンチウイルスは、VSVインディアナエンベロープを有するものより効率的にヒトCD34+細胞に形質導入した。
これらの結果と文献で公開された結果との間で、ヒトCD34+細胞への形質導入を不十分に媒介する3つのベシクロウイルスエンベロープ(イスファハン、ピリ、チャンディプラ)、および顕著に形質導入できる8つのベシクロウイルスエンベロープ(VSV(アリゾナ)、VSV(インディアナ)、VSV(ニュージャージー)、モレトン、マラバ、アラゴアス、カラジャス、コカール)がある。ヒトCD34+細胞への形質導入を不十分に媒介する3つのベシクロウイルスエンベロープは、旧世界ベシクロウイルス由来であり、一方でヒトCD34+細胞への形質導入を顕著に媒介できる8つのベシクロウイルスエンベロープは、新世界ベシクロウイルス由来である(図3)。
様々なベシクロウイルスエンベロープタンパク質のアミノ酸配列を比較したところ、ヒトCD34+細胞への形質導入を顕著に媒介する全てのエンベロープ中に見出される31アミノ酸が存在するが、その位置におけるこれらのアミノ酸はいずれも、ヒトCD34+細胞に不十分に形質導入するエンベロープに見出されない(図4)。この31アミノ酸のセットは、「CD34+細胞形質導入決定基」であり、これらは、将来的に発見されるいずれのベシクロウイルスエンベロープが、ヒトCD34+細胞への形質導入が可能であるかを予測することにおいて有用な可能性がある。さらにこれらのアミノ酸を、ヒトCD34細胞に不十分に形質導入するベシクロウイルスエンベロープに遺伝子工学的に組み込んで、それらをヒトCD34細胞への形質導入を媒介できるエンベロープタンパク質に変換できるようにすることができる。系統発生論と機能の相関は、旧世界および新世界ベシクロウイルスによる異なる受容体の結合に起因する可能性がある。コカールおよびVSVインディアナエンベロープタンパク質は、LDL−Rに結合して細胞に入ることが公知である。VSVアリゾナエンベロープによる形質導入が可溶性LDL−R(データ示さず)によって阻害されたことから、それもLDL受容体に結合する可能性があることが示唆される。それゆえに、新世界ベシクロウイルスの全てがLDL−Rに結合して細胞に入る一方で、旧世界ベシクロウイルスは異なる(現在のところ未同定の)受容体に結合し得ることも考えられる。CD34+細胞形質導入決定基を構成する31アミノ酸のほとんどが、VSV−Gインディアナの融合前の構造に埋め込まれている。VSV−Gインディアナの融合前の構造におけるCD34+細胞形質導入決定基の最も表面に露出したアミノ酸は、Asp290、Val291、Glu292、Ser305、およびGly365である(図5)。
新世界ベシクロウイルスエンベロープタンパク質間の系統発生学的な関係の調査から、それらは別個の分岐に分けられ、さらにそれらの分岐は、ヒトCD34+細胞への形質導入効率と相関する可能性があることが示唆された。アラゴアスおよびカラジャスエンベロープを含有する分岐上のエンベロープのヒトCD34+細胞への形質導入は、異なる分岐(マラバ、モレトン、インディアナ、およびコカール)上のエンベロープより低い効率であった。それゆえに、「CD34+細胞への形質導入効率決定基配列」も存在する可能性がある。
(実施例2)
L−セレクチンで強化された形質導入効率
CD34+細胞への形質導入をさらに改善するために、レンチウイルスの表面上に集合化でき、CD34+細胞の表面に結合できる非エンベロープタンパク質リガンドをスクリーニングした。CD34はCD34+細胞上で発現され、L−セレクチンはCD34と結合する公知のリガンドである。L−セレクチン発現の存在下におけるレンチウイルスの産生は、CD34+細胞への形質導入が改善されたレンチウイルスをもたらした(図6)。作用の規模は、形質導入された細胞における所望のVCNに依存していた。例えば、1のVCNを達成するために、L−セレクチンの存在下でウイルスが産生される場合、L−セレクチン非存在下と比較して5分の1のウイルスを使用することができた(図8)。この特定の実施例において、2のVCNを達成するために、8分の1のウイルスを使用することができた。293Tプロデューサー細胞におけるL−セレクチン発現は(例えば1μgのヒトL−セレクチン発現ベクターpCMV6−XL5 huSELLおよび5μgのVSV−Gインディアナエンベロープ発現ベクターpHCMVを使用して)、典型的には、ウイルス産生を1.0分の1から1.5分の1に低減した(データ示さず)。それゆえに、産生のわずかな低減があるにも関わらず、形質導入における正味の増加がそれでもなお生じると予想される。
CD52は、CD34+細胞上でも発現され、SIGLEC10は、CD52の公知のリガンドである。SIGLEC10発現の存在下におけるレンチウイルスの産生は、L−セレクチンの存在下で産生されたレンチウイルスと比較して、CD34+細胞への形質導入が改善されたレンチウイルスをもたらさなかった(図7)。さらに293Tプロデューサー細胞におけるSIGLEC10発現は、ウイルス産生を劇的に低減した(データ示さず)。したがってレンチウイルス産生中のSIGLEC10リガンドの共発現は、CD34+形質導入を強化しないようである。
L−セレクチンの存在下でウイルスを産生するための最適化された条件(1μgのVSV−Gインディアナプラスミド、5μgのL−セレクチンプラスミド)を、一般的に使用される最適化されたウイルス産生方法(5μgのVSV−Gインディアナプラスミドを含む)、およびVSV−Gインディアナプラスミドの量をL−セレクチンを含有する最適化された産生(1μgのVSV−Gインディアナプラスミド)における量に低減した方法と比較した。予想通りに、VSV−Gインディアナプラスミドの量を5μgから1μgに低減した場合、ヒトCD34+細胞への形質導入の効率におけるわずかな低減がみられた(図8)。しかしながら、5μgのL−セレクチン発現ベクターを添加したところ、このわずかな低減を補って余りあるほどであった。この実験において、L−セレクチンの存在下で産生されたVSV−Gインディアナエンベロープウイルスは、VSV−Gインディアナエンベロープウイルスより約5倍効率的であった。
5μgのL−セレクチン発現ベクターを5μgのVSV−Gインディアナ発現ベクターに追加することによる作用も評価した。5μgのL−セレクチン発現ベクターを5μgのVSV−Gインディアナ発現ベクターに添加することは、レンチウイルスの形質導入効率を増加させなかった(図9)。さらに5μgのL−セレクチン発現ベクターと5μgのVSV−Gインディアナ発現ベクターとの組合せは、ウイルス産生を3分の1に低減した。この実験において、L−セレクチンの存在下で産生されたVSV−Gインディアナエンベロープウイルスは、VSV−Gインディアナエンベロープウイルスより約6倍効率的であった。5μgのヒトL−セレクチンプラスミドの存在下で、ウイルスを産生するための使用されるpHMCV VSV−Gインディアナプラスミドの量の、5μgから1μgへの低減は、CD34+細胞への形質導入の強化を低減させなかったが、レンチウイルス産生を増加させたことから、エンベロープ発現ベクターの量をさらに低減させることによって、レンチウイルス産生をさらに増加させることができる可能背性がある。いずれのエンベロープタンパク質の非存在下で産生されたウイルスも、ウイルスを産生するために5μgのVSV−Gエンベロープ発現プラスミド(75cm2のフラスコ1つ当たり)を使用する場合より少なくとも2〜3倍多くのウイルス粒子を産生した。しかしながら、エンベロープ発現プラスミドの量を、エンベロープ発現プラスミドを使用しない場合に観察されるレベルに類似した完全に非毒性のレベルに低減させることができるのであれば、強化された形質導入は、ウイルス産生中にヒトL−セレクチン発現ベクターを含めることによって維持することができ、次いで強化されたCD34+細胞への形質導入だけでなく強化されたウイルス産生も可能にする。
またL−セレクチンは、マラバ(表4)、モレトン(図14)およびカラジャス(図15)ベシクロウイルスエンベロープタンパク質の形質導入効率も強化した。初期の実験において、マラバエンベロープによって媒介されたヒトCD34+細胞への形質導入の強化は、典型的には3から6倍であり、1つの実験において、モレトンエンベロープによって媒介されたヒトCD34+細胞への形質導入の10倍の強化がみられた。
(実施例3)
L−セレクチンはレンチウイルスに取り込まれ得る
レンチウイルス産生細胞におけるL−セレクチン発現は、このようなレンチウイルスでのCD34+細胞への形質導入を強化することができたが、そのメカニズムは、ウイルスへのL−セレクチンの取り込みが関与する可能性もあれば、関与しない可能性もある。なぜレンチウイルス産生細胞におけるL−セレクチン発現で強化されたCD34+細胞への形質導入を示すレンチウイルスが生じたのかに関する最も簡単な仮説は、L−セレクチンがウイルスに取り込まれ、さらにこの取り込みが、CD34+細胞への結合の改善をもたらしたというものである。ウイルスの細胞への結合は、形質導入の速度の律速段階であることが周知である。代替として、レンチウイルス産生細胞におけるL−セレクチン発現は、例えばVSV−Gの分解を低減させること、またはレンチウイルスへのVSV−Gの取り込みを強化することによって、レンチウイルスの感染力に間接的に影響を与える可能性がある。ウイルス上のVSV−Gまたは他のエンベロープの量は、その形質導入効率と相関することが公知である。
L−セレクチンがレンチウイルスに取り込まれ得るかどうかを決定するために、CCL−MNDU3−eGFPゲノムを有するレンチウイルスをヒトL−セレクチンの存在または非存在下で産生し、次いで各ウイルスを、ヒトL−セレクチンに対する10μMの中和抗体と共に、またはそれなしでインキュベートした。次いでこれらの試料を使用してサイトカインで刺激したCD34+細胞に形質導入し、形質導入の開始から3日後にeGFP+細胞の%を測定した。図10に結果を示す。第1に、ヒトL−セレクチンの存在下におけるレンチウイルスの産生は、形質導入を、16.2%のeGFP+細胞から27.1%のeGFP+細胞に約2倍強化した。第2に、ヒトL−セレクチンの非存在下で産生されたウイルスへのL−セレクチン中和抗体の添加は、CD34+細胞に形質導入するその能力を有意に低減させなかった(15.6%のeGFP+細胞)。しかしながら、ヒトL−セレクチンの存在下で産生されたウイルスへのL−セレクチン中和抗体の添加は、L−セレクチンによって強化されたCD34+形質導入の量(=27.1%−16.2%=10.9%)を、27.1%のeGFP+細胞から18.5%のeGFP+細胞に79%低減した(27.1%−18.5%=8.6%;8.6%/10.9%は、79%の低減である)。これは、ヒトL−セレクチンが、ウイルス産生細胞で発現されるとレンチウイルス粒子に取り込まれ得ること、さらに、このようなレンチウイルスによって強化されたCD34+細胞への形質導入への寄与において重要な役割を果たすことを示す。
(実施例4)
L−セレクチンを発現する細胞中でレンチウイルスが産生される場合、CD34を発現しない細胞への形質導入は強化されない
L−セレクチンがレンチウイルスに取り込まれる、より多くの証拠を提供するために、CD34を発現しない細胞(293T細胞)に、ヒトL−セレクチンの存在または非存在下で産生されたウイルス(CCL−MNDU3−eGFPゲノム)で形質導入した。ヒトL−セレクチンがレンチウイルスに取り込まれ、細胞へのレンチウイルスの結合を改善しているのであれば、ヒトL−セレクチンの存在下で産生されたウイルスは、ヒトL−セレクチンの非存在下で産生されたウイルスと比較して、より良好にこのようなCD34−細胞に形質導入することはないと予想される。図11で示されるように、ヒトL−セレクチンの存在下で産生されたウイルスは、ヒトL−セレクチンの非存在下で産生されたウイルスよりも良好に293T細胞(reCD34−である細胞)に形質導入することはなかった。L−セレクチン発現が、ウイルス中のVSVエンベロープの量を増加させることなどの間接的な手段によって感染力の増加を引き起こしたのであったなら、このようなウイルスは、VSVエンベロープレンチウイルスによる形質導入を受けやすい様々な細胞に対する感染力を増加させたはずである。
(実施例5)
レンチウイルス産生中のL−セレクチンタンパク質の共発現は、多くの様々なベシクロウイルスエンベロープタンパク質によるレンチウイルスベクターシュードタイプでの形質導入を改善する
レンチウイルス産生中のL−セレクチンの共発現がVSV−G(インディアナ)によって媒介されたヒトCD34+細胞への形質導入を改善したことから、本発明者らは、ベクター産生中に、他のベシクロウイルスエンベロープタンパク質で起こるこのL−セレクチン共発現による形質導入の強化作用を調査することを決定した。マラバエンベロープでシュードタイプ化されたレンチウイルスは、VSV−Gインディアナエンベロープと比較して改善されたCD34+細胞への形質導入を示すことから、マラバエンベロープが特に興味深い(図12)。293Tプロデューサー細胞のT−75フラスコへのトランスフェクション(レンチウイルスのヘルパープラスミドおよびpCCL−GLOBE1−bAS3での)のために、マラバエンベロープ発現プラスミドの量を変更し(1μgから0.25μgに)、それに対してL−セレクチン発現プラスミドの量を変更すること(5μgから1μg)によって、マラバエンベロープとL−セレクチンとの用量の関係を調査した。各産生条件からのレンチウイルスを上述したように処理し、1、3、10、30ngのp24gagでヒトCD34+細胞に形質導入するために使用した(図12)。興味深いことに、293T細胞にトランスフェクトしたマラバエンベローププラスミドの量が減少するほど、得られたマラバシュードタイプレンチウイルスは、VCN分析で測定したところ、改善されたCD34+細胞への形質導入を示した。したがって、293T細胞を産生するベクターをトランスフェクトするために使用されるL−セレクチン共発現プラスミドの量を減少させることも、得られたマラバシュードタイプレンチウイルスの形質導入効率を改善した(293T細胞のコトランスフェクション中に、0.25μgのマラバプラスミドと共に5μgまたは1μgのL−セレクチンプラスミドを使用して産生されたレンチウイルスを使用したVCN形質導入と比較した場合−図12、下のグラフ)。VCN形質導入の結果から、本明細書に記載されるトランスフェクション条件下で、レンチウイルス産生中のマラバエンベロープ発現プラスミドの最適な範囲が、0.25μgから0.5μgの間であり、一方でL−セレクチン発現プラスミドの最適な範囲は、1μgから2.5μgの間であることが示される。ベクター産生中にトランスフェクトされたベシクロウイルスエンベロープ:L−セレクチン発現プラスミドの比率は、最大の形質導入強化作用を達成するために、1:2から1:5の範囲内であると予想される。レンチウイルスをシュードタイプ化するための他の異種ウイルスエンベロープタンパク質の使用は、ウイルス形質導入の強化のためのウイルス産生のために、異なるエンベロープ:L−セレクチンプラスミドの比率を必要とする場合がある。
マラバエンベロープに加えてL−セレクチンによって媒介される、レンチウイルスによる形質導入はロバストであることを示すために、VSV−Gインディアナエンベロープ(プロトタイプの対照)またはマラバエンベロープとL−セレクチンでシュードタイプ化されたレンチウイルスの単一の調製物を使用して、3人の別個のドナー由来のCD34+細胞に形質導入した(図13)。CD34+細胞ゲノムDNAのVCN分析は、レンチウイルスがマラバエンベロープとL−セレクチンでシュードタイプ化された場合、対照VSV−Gシュードタイプレンチウイルスと比較してVCNが少なくとも2倍増加したことを示した。
またベクター産生中のL−セレクチンの共発現は、モレトン(図14)およびカラジャス(図15)などの他のベシクロウイルスエンベロープの形質導入も改善した。ベクター産生中のL−セレクチン共発現ありまたはなしでのカラジャスエンベロープでシュードタイプ化されたレンチウイルスを、VSV−Gインディアナエンベロープまたはアラゴアスエンベロープシュードタイプレンチウイルスと比較した(図15)。図2と類似して、カラジャスエンベロープレンチウイルスは、VSV−Gインディアナでシュードタイプ化されたレンチウイルスと類似する程度にCD34+細胞に形質導入するが、アラゴアスエンベロープレンチウイルスは、VSV−Gインディアナレンチウイルスと比較してより低いレベルでCD34+形質導入を媒介する。レンチウイルス産生中にL−セレクチンがカラジャスエンベロープと共発現されると、有意にCD34+形質導入は強化される。本発明者らは、レンチウイルス産生中にL−セレクチンが発現される場合、アラゴアスエンベロープが媒介するCD34+形質導入における強化をまったく観察しなかった。しかしながら、レンチウイルス産生中のアラゴアスエンベロープ発現のレベルまたはアラゴアスエンベロープ発現とL−セレクチン発現との比率が、この特定のベシクロウイルスエンベロープにとって最適ではない可能性がある。
まとめると、これらの結果は、以下を実証する。(1)新規のベシクロウイルスエンベロープ(マラバ、モレトン、VSV−Gアリゾナ、およびカラジャスエンベロープを含む)は、シュードタイプ化、およびプロトタイプのVSV−Gインディアナベシクロウイルスエンベロープと同じレベルまたはそれより高いレベルでの初代ヒトCD34+細胞への効率的なレンチウイルスによる形質導入の媒介が可能である。(2)レンチウイルスプロデューサー細胞におけるヒトL−セレクチンタンパク質の共発現は、CD34+細胞形質導入特性が改善されたVSV−Gシュードタイプレンチウイルスを生成する。(3)レンチウイルスプロデューサー細胞におけるL−セレクチンの共発現は、多くの様々なベシクロウイルスエンベロープタンパク質(マラバ、モレトンおよびカラジャスエンベロープを含む)でシュードタイプ化されたレンチウイルスのCD34+細胞への形質導入を改善することができる。(4)レンチウイルスプロデューサー細胞におけるベシクロウイルスエンベロープのL−セレクチン発現プラスミドに対する比率は、ヒト初代CD34+細胞へのレンチウイルスによる形質導入の強化の規模において重要な要因であり得る。(5)上記で記載された形質導入の改善は、GFP−レポーターレンチウイルスとヒトベータ−グロビン発現レンチウイルスの両方と共に機能することが示されており、したがっては、実験に使用される、または異常ヘモグロビン症(hemaglobinopathies)または他の臨床症状を処置するためのレンチウイルスに適用可能である。
(実施例6)
マチュポアレナウイルスのエンベロープタンパク質でシュードタイプ化されたレンチウイルスでのヒトCD34+細胞への形質導入。
CD34の他に、CD34+細胞上で発現される別の細胞表面タンパク質は、トランスフェリン受容体1型(CD71)であり、これは、ほとんどの哺乳類細胞で発現される。マチュポアレナウイルスはヒト病原体であり、ヒト細胞に感染するためにヒトトランスフェリン受容体1型を利用する。トランスフェリン(細胞培養培地の一般的な成分)は、マチュポウイルスによる細胞への感染を阻害しない(Radoshitzky, S.R.ら、2007年)。さらに、ヒトトランスフェリン受容体1型に結合したマチュポGP1エンベロープタンパク質(カルバロ株)の結晶構造が決定されている(Abraham J.ら、(2010年))。エンベロープタンパク質工学にも有用な可能性があることに加え、ヒトトランスフェリン受容体1型へのトランスフェリンの結合と矛盾しないと予想される領域で、マチュポエンベロープがヒトトランスフェリン受容体1型に結合することが、マチュポGP1エンベロープタンパク質−ヒトトランスフェリン受容体1型構造から理解でき、これは、Radoshitzkyによって報告された細胞培養実験を裏付ける。これらの特性のために、レンチウイルスをシュードタイプ化し、ヒトCD34+細胞への形質導入を媒介するマチュポウイルスエンベロープタンパク質の能力を試験することには大いに意義がある。VSV−Gインディアナエンベロープ(陽性対照;75cm2のフラスコ1つ当たり5μg)、およびマチュポエンベロープ(カルバロ株)と共に、2種の異なる量の発現プラスミド(75cm2のフラスコ1つ当たり1または5μg)を使用して、CCL GLOBE1 βAS3ゲノムを有するレンチウイルスを産生した。加えて、マチュポエンベロープ(カルバロ株)のための75cm2のフラスコ1つ当たり1μgの発現プラスミドと共に産生したレンチウイルスも、ヒトL−セレクチン発現(75cm2のフラスコ1つ当たり、1μgのエンベロープ発現プラスミドおよび5μgのヒトL−セレクチン発現プラスミド)存在下で産生した。マチュポウイルスエンベロープは、VSV−Gインディアナの場合とほぼ同程度に効率的なヒトCD34+細胞への形質導入の媒介、さらに、ウイルスプロデューサー細胞によって強化された形質導入におけるL−セレクチン(SELL)の共発現が可能であった(図16)。
アレナウイルスのエンベロープタンパク質は、系統発生学的に、旧世界または新世界のいずれかに由来する単離株に分類することができる(図17)。これは、それらの親和性および受容体の使用法と相関する。旧世界由来アレナウイルスのエンベロープタンパク質は、典型的には、細胞に感染するためにα−ジストログリカンを利用し、一方で新世界由来アレナウイルスのエンベロープタンパク質は、ヒト細胞に感染するためにトランスフェリン受容体1型を利用する可能性があり、受容体結合を決定する共通の配列を有すると考えられる(Radoshitzkyら、2011年)。これまでに、2つの旧世界由来アレナウイルスのエンベロープタンパク質(LCMVおよびラッサウイルス由来)がCD34+細胞への形質導入に関して試験されたが、極めてわずかしかヒトCD34+細胞に形質導入しないことが見出された(Sandrinら、2002年)。しかしながら、新世界由来アレナウイルスのエンベロープタンパク質(マチュポ)でシュードタイプ化されたレンチウイルスは、ヒトCD34細胞によく形質導入することができる(図16)。それゆえに、ベシクロウイルスエンベロープを用いた場合と同様に、他の新世界由来アレナウイルスのエンベロープタンパク質は、程度の差はあるがマチュポウイルスエンベロープより効率的にCD34+細胞に形質導入する可能性があり、試験する価値があると予想される。新世界由来アレナウイルスのエンベロープタンパク質内には様々な系統発生学的な下位分類があるとみられ(図17)、これらの異なる下位群は、程度の差はあるが他の下位群より効率的にCD34+細胞に形質導入する可能性がある。例えばマチュポ、フニン、オコソコアウトラ、およびタカリベエンベロープタンパク質が、効率は異なるがヒトCD34+細胞への形質導入を媒介できる1つのクレードを構成する可能性がある。
参考文献