JP2020518234A - 固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および特定する方法 - Google Patents

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Abstract

健康な対象者の固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および特定するための方法は、遺伝子安定性または不安定性状態の評価サイクルと、および少なくとも1つの前記評価の繰り返しサイクルと、を含む。繰り返しサイクルは、対象者に対し定期的に実施され、その頻度は、前のサイクルの結果に依存する。各サイクルは、次のステップを含む:−生体物質の試料を採取し、生体物質からDNAを単離し、単離DNAを増幅および塩基配列決定するステップ、−考慮している試料の所定の遺伝子セット中で選択された変異の存在を検証するステップであって、前記遺伝子セットおよび前記変異セットが固形腫瘍の発症に関連しているステップ、−所定の遺伝子セットが、1つまたは複数の固形腫瘍に関連する遺伝子もしくはホットスポットのパネルのサブセット、または固形腫瘍に関連する遺伝子の全パネルを含むステップ、−各遺伝子および各評価サイクルに対して検出された変異の頻度を検証するステップであって、変異が、上述の選択変異から選択されるステップ、−各遺伝子または遺伝子群およびそれらの頻度に対し検出された変異を記録するステップ、−各繰り返しサイクルで、検出された変異の頻度に基づいておよび変異の頻度の増加を基準にして、前記対象者の全体の総遺伝子不安定性指数(IT)または単一の遺伝子に対する遺伝子不安定性指数(IG)を決定または更新するステップ、−各繰り返しサイクルで、遺伝子不安定性指数(IT、IG)が、各単一遺伝子または遺伝子群に対し決定された閾値(ITS、IGS)を超えるのを基準にして、対象者の、1つまたは複数の固形腫瘍または固形腫瘍群の発症時の前駆的遺伝子状態への移行を評価するステップ。【選択図】図1

Description

本発明は一般に、癌予防の分野、より詳細には、固形腫瘍予防の分野に関する。
特に、本発明は、個体における固形腫瘍の発症の前駆的な遺伝子状態を探索および特定し、危険にさらされていると見なされる個体のこのような腫瘍に罹患する有意な可能性の存在の統計的予測を行う方法を含む。
固形腫瘍は、腫瘍細胞および間質からなる1つまたは複数の組織塊(さらには、異なる種類の細胞および細胞外マトリックスからなる)から構成され、異常で、無制御増殖を特徴とし、これは、いくつかの事例では、全身性症状を引き起こし得る。
腫瘍は、遺伝子異常により引き起こされる病態であり、それらは、時間的に連続した様々なステップで発生し、そこでは、一連の引き続いて起こる変異が1つまたは複数の細胞の遺伝形質中に蓄積する。
対象者の遺伝子異常の増加に付随する遺伝子不安定性状態は、特定の腫瘍形成リスクのマーカーである。これらの遺伝子異常は、キャリア細胞の腫瘍細胞株を生じるリスクを高める。
このプロセスは、結腸直腸癌に関して、十分に研究されてきた。これらの腫瘍の発生段階では、第一の変異は、遺伝子安定性の制御に関与するゲートキーパー/ケアテイカーと呼ばれる遺伝子を必要とし、正常な上皮細胞の増殖における選択優位性をもたらし、それを周囲細胞より優位にし、微視的なクローンにする。
結腸において最もよく知られたゲートキーパー遺伝子は、APC遺伝子である。
ほとんど全て(約80%)の結腸直腸腫瘍は、APC遺伝子の変異を特徴とする。この変異により引き起こされる小さい腺腫は極めてゆっくり増殖するが、別の遺伝子、例えば、KRAS遺伝子(またはAKT1など)に第2の変異が起こると、関与する細胞の数の増大を引き起こす、クローン増殖の新たな段階に発展する。APC変異のみを有する細胞は、腺腫中に留まることができるが、両方(またはより多く)の遺伝子の変異を伴う細胞についてはそれらの数は少ない。
連続的変異のこのプロセスは、その後にクローン増殖が生じ、続いてPIK3CA、SMAD4およびTP53などの他の遺伝子が変異し、高い確率で悪性新生物を生成し、下層の基底膜を通過して広がり、通常は最初に局所リンパ節、その後肝臓または肺などの遠隔器官に転移することがある。
最近の10年間で、網羅的な塩基配列決定により、ヒト癌の最も頻度の高い形態のゲノムの全景が開示された。多くの腫瘍のゲノムの塩基配列決定は、数千種の変異およびその他のゲノム異常に関連する情報をもたらした。現時点では、1万種を超える腫瘍ゲノムが配列決定され、塩基配列決定コストは徐々に低下してきていることに伴い、多くの他の腫瘍ゲノムが、近い将来に特徴付けられることになろう。
腫瘍ゲノムの塩基配列決定により、種々の「ドライバー変異を有する遺伝子」の分類が可能とされてきており、さらに、多くの他の分類が可能となるであろう。ドライバー変異は、増殖の点で大きな優位性をもたらす遺伝子内の変異である。
現在までに実施された研究で、約140種の遺伝子が特定され、これらは、変異が起こると、発癌を促進する、または「ドライブする」。典型的な腫瘍は、一般に、「ドライバー遺伝子」中に2個から8個の変異を含む。残りの変異は、一過性と見なすことができ、それらは、細胞増殖に何らの優位性ももたらさない。
ドライバー遺伝子は多くの場合、重要な細胞の分子経路に関与し、種々の形態およびモードで、3つの主要細胞プロセス:細胞分化、生存(アポトーシス促進性または抗アポトーシス性シグナルを介して)および維持、を調節する。現時点では、基礎的癌研究における最も差し迫った必要性の1つは、このような異なる経路の深い理解である。しかし、腫瘍ゲノムの構造においてこれまでに到達された理解の程度であっても、いくつかの現在の治療法選択の指針となるのに十分であり、癌の罹患率および死亡率を低減するより多くの効果的手法の開発が行われてきた。
スクリーニングおよび初期診断プログラムは、癌患者の健康な生存の改善および死亡率の低減において重要な役割を果たす。初期診断のための非侵襲的手法は、患者の協力を促進する一因となるので、それらをスクリーニングおよび予防プログラムに含めることが望ましいことは明らかである。
腫瘍病態の分子論的発症機序の知識の増加および分子分析の新技術の急速な発展は、体液中の初期分子異常の特定と分析法の開発および達成に寄与している。細胞外DNA(「セルフリーDNA」または「cfDNA」)を、血清、血漿、尿および他の体液中で見つけることができる。従って、cfDNAのサンプリングおよび分子解析は、一種の「リキッドバイオプシー」であり、種々の特殊な病状の一種の「循環像(circulating image)」と見なすことができる。
血液では、アポトーシスは、cfDNAを生成する最も高頻度のプロセスであると思われるが、癌患者では、壊死プロセスにより得られる部分も完全には無視できない。ステージ4結腸直腸癌に罹患した32人の患者の血漿由来のcfDNAを分析する興味深い研究では、患者の34.4%で、採取されたDNAは、2種の大きさ(166bpおよび332bp)を有したことが示された。
Strounらは、種々の癌の異常が患者のcfDNAにおいて特定できることを記載している。その後刊行された種々文献では、cfDNAは、腫瘍細胞に直接帰することができる特定の遺伝子の変異、メチル化およびコピー数の変化(「コピー数多型」またはCNV)などの、腫瘍の存在に相関する特定の異常を含み、従って、循環腫瘍DNA(ctDNA)の存在を確証していることが確認された。
選択組織および血漿試料の相関を示すことを目的とした種々の研究が、循環cfDNAの分析を診断用手段として使用できることを確認するために実施された。
転移性乳腺腫瘍の17人の患者由来の60種の腫瘍組織試料および31種の血漿試料中の2,800種のCOSMIC変異(Catalogue Of Somatic Mutations In Cancer−http://cancer.sanger.ac.uk/cosmic)を包含する50種の腫瘍遺伝子に対して実施されたNGS(次世代シーケンシング)を用いた評価は、組織と血漿との間の76%の一致を明らかにした。これらのデータから、著者は、血漿は、転移生検の代わりとして、腫瘍のスクリーニングのために採用した生物試料と見なすことができるという結論に至った。
上述の結果は、18種の異なるタイプの腫瘍に罹患している34人の患者群で確認された。この分析では、組織および血漿試料中の46種の遺伝子を含み、6,800種のCOSMIC変異を包含した。34人の患者の内の27人は、組織試料中で見つかった変異と、ctDNA中で見つかった変異との間で97%の一致を示した。従って、ctDNAベースのNGS分析は、治癒または転移の可能性のある癌病態に罹患している患者の管理を根底から変えてしまう可能性がある。
技術的な問題
リスク状態の評価は、試験手順および遺伝子解析の不可欠な要素である。極めて近い将来に、癌病態の評価の前に、このタイプの手法が系統的に実施されることになる可能性が高い。
他方では、「健康な」人が、深刻な病態に対する素因に関して、または前病理学的状態の検出のために、遺伝子検査を受けることを依頼する頻度がますます高くなる。また、この理由のために、医師は、定型的継続監視プログラム中に、リスクの決定および管理のための、および確実にまたは極めて可能性の高い前病理学的状態を特定するための技術を導入しなければならない。
遺伝的リスクは、決められた病態−特に本開示に関しては、癌病態−に特に関連し、この病態を実際に発症する変異の個々の保有者の可能性を意味する。他方では、前病理学的状態または病態の発症の前駆的状態の特定は、経時的に、その後の変化により、確実にまたは極めて高い可能性で、病態の発症を起こし得る、遺伝子不安定性状況を示す生体分子シグナルの検出に関する。
本明細書で既に数回指摘したように、発癌は、環境要因および遺伝的素因の両方により影響を受け、特定の異常と関連する遺伝的背景は、この特定の異常に相関するリスクの決定にかなりの影響を与える。
Wang E.らによれば、一連の(ネットワーク)特性要素に基づくアルゴリズムは、腫瘍の主要要素の遺伝的モデルの生成のために、および変異遺伝子型を臨床的表現型と結びつけるために採用できる。このパターン(および他の類似の)の使用は、患者ゲノム配列の個々のプロファイルを基準にして、可能な腫瘍治療標的、再発の可能性および腫瘍の発症のリスクの予測のための戦略を例示する。
まとめると、特性要素のネットワークに基づくモデルから引き出される予測法は、癌病態プログラムの診断および最適化管理ならびに予防に使用できる。
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本発明の目的
本発明の主目的は、臨床的に健康な個体の、1つの形態の固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態、すなわち、遅かれ早かれ、ほぼ確実に監視されている腫瘍の形態をその個体に発症させることになる状態への移行の評価を得ることができる監視方法を提供することである。
この目的および他の目的は、健康な個体における、脳腫瘍を除く固形腫瘍の発症の前駆的な遺伝子状態の探索および特定方法(アルゴリズムおよび関連データベースに基づく)に関する本発明により達成される。本方法は、前述の固形腫瘍の発症に関連する遺伝子から選択される遺伝子パネルに関連する変異頻度に関する一連の定期的評価サイクルに基づき上述の状態を規定する。
前記方法は、個体から生物試料(体液、例えば、血液、尿または髄液により構成される)を採取すること、DNAを単離することおよび増幅することならびにその塩基配列決定をすることを含む。その後の解析ステップは、監視遺伝子のための既知変異リストから選択される前述の遺伝子パネルに関連し、新生細胞の形成に向けた変化を示す、1つまたは複数の変異の存在の評価を含む。
特に、NGS技術(次世代シーケンシング)を用いた評価が、50種の遺伝子、およびCOSMICデータベース(Catalogue Of Somatic Mutations In Cancer−http://cancer.sanger.ac.uk/cosmic)で分類された合計2,800種の変異に対し実施される。
全ての監視遺伝子に対し、全ての評価サイクルは、既知のホットスポット(癌患者で高頻度で変異する位置)で発生する変異に対する特別の注意を払って、監視遺伝子に関連する変異の存在を検出する。変異の場合には、この検出変異が以前の評価サイクルで既に見つかっているかどうか、およびどのレベル(変異パーセンテージまたは比率−アレル頻度)で見つかっているかどうかをチェックする。以前に見つかっていない場合には、この遺伝子に関連する新規変異が登録され、アルゴリズムにより変異頻度で経時的に示される傾向を示す値が計算される。この値は、システムの「重要リスク指標」となる。この傾向は、数値で表され、変異頻度の最後の値と、以前の評価サイクルで得られた値との間の関係を計算することにより得られ、また、その傾向は、ダイアグラムで表され、遺伝子安定性または不安定性のレベルの指標を与える。
変異に頻度に対して決定された閾値レベルを超えたことが検出されると、本発明の特定方法に従って、遺伝子不安定性コースへの移行に関してレポートが発行され、その間、さらなる変異は、確実にまたは極めて高確率で、時間経過に伴い個体に固形腫瘍を発症させることになる。
全ての評価サイクルに対し考慮された遺伝子パネルおよびそれらの変異は、ここでも、全範囲の50種の固形腫瘍の発症に関連する遺伝子を含むことができ、またはいくつかの遺伝子のみおよび1つまたは複数の選択した腫瘍のみに関連するホットスポットを含むこともできる。
特に、不安定性が1種の腫瘍タイプのみまたは単一の腫瘍ファミリーのみの発症に関連する、個体の遺伝的状況を監視することができる。この場合には、解析される遺伝子の数は、その腫瘍またはその腫瘍グループに直接に関連するものに限定される。
本発明によると、解析されるべき遺伝子および変異のパネルは、家族歴調査により得られた対象者の既往歴に基づいて選択できる。
検出された変異の頻度が、所与の変異に対し、アレル頻度(上記で定義したものによる)の数の増大である所定の値、例えば、10%(数値は、数年にわたり蓄積されることになるデータに応じて、どのようにも更新できる)を超えて増大する傾向を示す(例えば、APC遺伝子の変異のアレル頻度はその後の試験の繰り返しで0.1%〜5%を超える)場合、監視システムは、変異の増加に関与する遺伝子に関して、検査されるパネルに関連する感度を100%まで高める(すなわち、システムは、今度は、第1のレベルの試験に比べて、より高い感度および解析的特異性を有する異なるパネルを用いて、試験を再度行うかを患者に尋ねる)。
方法は、選択した遺伝子パネルの解析サイクルの繰り返し頻度および解析される遺伝子に関連する感度などの評価パラメーターの連続的な更新を含む。特に、繰り返し頻度は、安定性指数を基準にして決定され、さらに正確には、不安定性指数のより高い値に対応して、より多い頻度で試験が繰り返される。理由は、不安定性状況は、自然に増加する傾向があり、新規の影響のある変異をより急速に有する確率が高くなることが想定されているためである。
本発明では、各評価サイクルに対し解析されるDNAに関連する全ての生データおよび得られた結果は、その後のサイクル中に記録され、処理されて、利用可能なデータの量が増加するのに伴い、評価の精度が改善される。
可能な限り少ない侵襲で、リスク状態の評価および予測を行うために、解析されるDNAを単離するために個体から採取された生物試料は、リキッドバイオプシー(既に本明細書で定義したとおり)により構成される。本発明の好ましい実施形態では、リキッドバイオプシーは、末梢血試料である。
本発明の一実施形態では、リキッドバイオプシーは、尿である。
生物試料から単離され、リスク状態の評価および予測のために使用されるDNAは、cfDNA(セルフリーDNA)である。
本発明の一実施形態では、cfDNAは、末梢血試料から分離された血漿から単離される。
本発明の別の実施形態では、cfDNAは、末梢血試料から分離された血漿から単離される。
本発明による方法は、収集されたリキッドバイオプシー中のctDNA(循環腫瘍DNA)を探索することも含む。
ctDNAが検出されると、リスクの評価および予測方法は、そのタスクの実施を実質的に停止する。理由は、それが、少なくとも1つの変異株が新生細胞の形成を生じたことを意味するためである。この時点で、リスク評価および予測のためのシステムは、個体の管理を、例えば、本出願者により開発され、使用されている、SCEDシステム(固形癌早期検出(Solid Cancer Early Detection))などの早期検出システムに移すことを目的とした情報を発行する。
特許請求の範囲から明らかとなる本発明の特徴は、添付図面に関連して、次の詳細説明で示される。
本発明の一般的実施形態により固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および特定する方法のフローチャーチを示す図である。 本発明の方法に従って、遺伝子安定性状態または不安定性状態を規定する変異の評価に関与する遺伝子パネルのリストを示す。
本発明は、前記状態への移行の可能性に関連して、個体の遺伝子安定性の傾向の変化を基準にして、個体の経時的監視のために、健康な個体の脳腫瘍を除く固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および識別する方法に関する。
脳腫瘍は通常、本発明による固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および特定する方法に使用される手法から除外される。現時点では、この手法を脳腫瘍に対しても使用可能とする科学的証拠は、十分ではない。このタイプの腫瘍の発症に関連する遺伝子セットは、現時点では、まだ、適切に特定されておらず、それらは、その配列の特定の変異ではなく、DNAメチル化状態に主に関連していると思われる。実際に、提案されたパネルは、DNAメチル化状態の評価に向いていない。さらに、 Bettegowda,C.らにより既に記載されているように(Bettegowda,C.et al.Detection of circulating tumor DNA in early− and late−stage human malignancies.Science translational medicine 6,224ra224,doi:10.1126/scitranslmed.3007094−2014)、血液脳関門が全身循環中のcfDNAの存在をかなり減らすフィルターを形成している可能性が高いことを明記する必要がある。従って、現在の抽出およびその後の解析技術は、腫瘍リスクの解析のために使用されるのに十分に強力なデータの提供を可能にしない。
本方法は、前述の固形腫瘍の発症に関連する遺伝子から選択される遺伝子パネルに関連する変異頻度の一連の定期的評価サイクルを、所定の間隔で実施することを含む。図1は、後ほど記載する方法のステップの可能なワークフローを例として示す。本発明の範囲から逸脱することなしに、ワークフローの基本的な変更は可能ではない。
別に定める場合を除き、本治療で使用される技術用語は、当業者に一般的におよび明確に既知の意味を有する(例えば、「リキッドバイオプシー」、「DNA単離」、「DNA増幅」、「DNA塩基配列決定法」、「ctDNA」、「cfDNA」、「循環性腫瘍細胞」、など)。また、本発明による方法を実施するために使用されると言及され、そのように意図されている分子生物学遺伝子工学の技術(例えば、「NGS−次世代シークエンシング」)は、実際によく使用される標準的技術であり、また、当業者によく知られている。
固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態の探索および特定の各サイクルに対し、本発明により提案される方法は、個体からの生物試料を採取すること、生物試料からDNAを単離すること、およびその後、DNAの該当画分を適切に増幅した後で、好ましくはNGS技術を用いてその塩基配列決定を行うことを含む。
可能な限り少ない侵襲で、リスク状態の評価および予測を行うために、DNAを単離して解析するために個体から採取された生物試料は、リキッドバイオプシーから構成される。リキッドバイオプシーは、個体内を循環している液体または半液体生体物質により実質的に形成され、実質的に体液の分泌または排泄により生成される。
本発明の好ましい実施形態では、リキッドバイオプシーは、末梢血試料であり、これは、採取され、処理されて、必要があれば、その後の使用に応じて、血漿または血清に分離される。
本発明の別の実施形態では、リキッドバイオプシーは、尿である。
本発明では、生物試料から単離され、リスク状態の評価および予測のために使用されるDNAは、cfDNA(セルフリーDNA)である。
循環遊離DNA、cfDNA(セルフリーDNA)は、MendelおよびMetisにより、約70年前に初めて示された。上述のDNAは、壊死細胞(成熟前の死)および/またはアポトーシス細胞(プログラム死)に由来し、通常、全ての種類の細胞により放出される。cfDNAの発見の約40年後、Strounらは、特定の発癌性異常がcfDNA中にも同様に特定され得ることを示した。その後、腫瘍に関連する特定の異常を研究することにより、循環腫瘍DNA(ctDNA)の存在を確証するいくつかの論文が刊行された。従って、Bettegowda,C.ら(Bettegowda,C.et al.Detection of circulating tumor DNA in early− and late−stage human malignancies.Science translational medicine 6,224ra224,doi :10.1126/scitranslmed.3007094−2014)により既に記載されたように、ctDNAは、総cfDNAの一部であり、極めて初期段階の0.01%〜1%から進行段階での40%までであると推定された。
既に述べたように、血液では、アポトーシスは、cfDNAを生成する最も高頻度のプロセスであると思われるが、癌患者では、壊死プロセスにより得られる部分も完全には無視できない。
血清および血漿中のcfDNAの量および変動性は、健康な対照より病気の患者で、特に、初期段階よりも進行段階の症例で、かなり大きいと思われる。
cfDNAの量は、炎症過程などの生理病理学的条件によっても影響を受け、また、cfDNAは安定性が極めて低く(15分から最大数時間まで)、従って、結果の信頼性および一貫性は必ずしも保証されるとは限らないことを考慮すべきである。この場合、試験の定期的繰り返しに基づく手法は、偽陰性の発生率が低いという利点がある。
60種の固形腫瘍および31種の血液腫瘍中の2,800種の変異(COSMIC)をカバーする癌に関与する50種の遺伝子(図2参照)を評価できるNGSパネルを用いた調査により、乳腺転移性腫瘍の17人の患者を解析し、組織と血漿との間の76%の一致が推定されている。これらのデータから、著者は、血漿は、転移生検の代わりとして、腫瘍のスクリーニングのために採用した生物試料と見なすことができるという結論に至った。
本発明の一実施形態では、cfDNAは、個体から採取した末梢血試料から分離された血漿から単離される。
本発明の別の実施形態では、cfDNAは、個体から採取した末梢血試料から分離された血清から単離される。
既知技術に従って、血漿中に存在するcfDNAは、シリカまたはシリコーン樹脂で被覆された磁気ビーズを用いて単離できる。両方の場合において、pHが7.5近傍の高濃度のカオトロピック塩の存在下で、DNA(負に帯電している)のシリカ(正に帯電している)と結合する能力が活用される(Chen and Thomas,1980;Marko et al.1982;Boom et al.1990)。DNAのシリカへの結合は、カオトロピック塩により、および弱い静電反発力と競合する水素結合の形成により誘導された脱水により誘導される(Melzak et al.1996)。その後に、過剰塩、タンパク質、炭水化物、代謝物およびその他の混入物質は、アルコール溶液による反復洗浄により除去される。最終的に、精製DNAが低イオン強度溶液(TE−バッファーまたは水などの)により溶出される。
本発明によるリスクの評価および予測方法の次のステップは、選択したホットスポット群に特別な注意を払った、選択した遺伝子パネル(図1)の解析からなり、このステップは、監視遺伝子のための既知変異リストから選択される、前述の遺伝子パネルに関連し、新生細胞の形成に向けた変化を示す、1つまたは複数の変異の存在の評価を含む。
例えば、米国および欧州の肺腫瘍(非小細胞型)を罹患している患者の約10%が、遺伝子の観点からEGFR遺伝子の変異により特徴付けられる(Lynch et al 2004 ;.Paez et al 2004 ;.Pao et al.,2004)。これらの変異は、主に、EGFRエキソン18〜21内で発生し、これはEGFRのチロシンキナーゼドメインの一部をコード化している。エキソン19に関連するこれらの変異の約90%は、欠失であるか、またはエキソン21ではSNVである(変異L858Rと同様)(Ladanyi and Pao 2008)。これらの変異は、EGFRタンパク質のチロシンキナーゼ活性を高め、腫瘍細胞の生存を更新させる細胞経路の過剰活性化を促す(Sordella et al.2004)。民族起源に関係なく、EGFR遺伝子の変異は、腺癌型組織を有する非喫煙女性患者(患者の全人生の間に100本未満のシガレット)でより高頻度に認められる(Lynch et al.2004)。しかし、EGFR遺伝子に関連するこれらの変異は、他の肺癌患者、すなわち喫煙者のサブグループでも見つけることができる。「健康な」ように見える患者のcfDNA中の上述の変異の存在は、腫瘍塊の存在を評価するために、必然的に監視および一連の完全な検査により追跡されなければならないという明白な警鐘である。
特に、cfDNAは、現時点で2,800種のCOSMIC変異(Catalogue Of Somatic Mutations In Cancer)をカバーする図2で与えられるリストの50種の遺伝子に対し、NGS技術(次世代シーケンシング)で評価される。
本発明の目的に関して、この分野ならびに利用可能な最近の塩基配列決定および解析技術の集中的研究により、1つまたは複数の固形腫瘍形態の発癌に関与する新規遺伝子、新規ホットスポットまたは新規変異の特定に至り得ることから、評価される遺伝子リストおよび変異のリストの両方は、変化のないものと考えるべきではないことは理解されよう。
各評価サイクルは、各監視遺伝子に対し、既知のホットスポットで発生する変異に特別の注意を払って、それに関連する変異(EGFRの上記例を参照)を探索する。有意な変異が存在する場合、これは、方法の計算処理ステップを実行するように物理的に指示されているコンピューター化システムの記憶領域に記録される(図1)。
各繰り返し試験サイクル、すなわち、最初のサイクル後の各サイクルでは、検出された変異が以前の評価サイクルで既に検出されているかどうかがチェックされる。以前に見つかっていない場合には、この遺伝子に関連する新規変異が登録され、アルゴリズムにより変異頻度が経時的に示す傾向を示す値が計算される。この値は、システムの「重要リスク指標」となる。
この傾向は、数値で表され、変異の最後の頻度値と、以前の評価サイクルで得られた値との間の関係を計算することにより得られ、また、その傾向は、ダイアグラムで表され、遺伝子安定性または不安定性のレベルの指標を与える。
本発明による方法の非制限的実施形態では、2つのチェック間の比較は、式(数1)による総遺伝子不安定性指数Iにより合計でき、式(数1)中、n:チェックが実施される遺伝子の数である。
この場合、総不安定性指数Iは、全体の状況を表し、特定の遺伝子の変化の間の区別はしないことに留意されたい。
同様にして、式(数2)に従って、特定の遺伝子の不安定性指数Iを定義でき、式(数2)中、n:チェックが実施される遺伝子の評価されたホットスポットの数である。
全ての評価サイクルに対し考慮された遺伝子パネルおよびそれらの変異は、ここでも、全範囲の50種の固形腫瘍(図2)の発症に関連する遺伝子を含むことができ、またはいくつかの遺伝子のみおよび1つまたは複数の選択した腫瘍のみに関連するホットスポットを含むこともできる。
特に、不安定性が1種の腫瘍タイプのみまたは単一腫瘍ファミリーのみの発症のリスクを監視することができる。この場合には、解析される遺伝子の数は、その腫瘍またはその腫瘍グループに直接に関連するものに限定される。
いずれの場合でも、上記のプロセスによる不安定性指数の定義は、予め固定された探索標的に応じて、単一遺伝子、特定の腫瘍または腫瘍ファミリーの発症に関連する遺伝子セットからなるパネル、または一般的固形腫瘍の発症に関連する50種の遺伝子(現時点で、または将来的に他の遺伝子が特定される場合には、より多くの遺伝子)からなる総パネルを含むことができる。
本発明によると、解析されるべき遺伝子および変異のパネルは、家族歴調査により得られた対象者の既往歴に基づいて選択できる。
評価サイクルにより検出された変異の頻度が、測定された変異に対し、アレル頻度の数の増大である所定の値、例えば、10%(数値は、数年にわたり蓄積されることになるデータに応じて更新できる)を超えて増大する傾向を表す(例えば、APC遺伝子の変異のアレル頻度はその後の試験の繰り返しで0.1%〜5%を超える)場合、監視システムは、変異の増加に関与する遺伝子に関して、検査されるパネルに関連する感度を100%まで高める(すなわち、システムは、今度は、第1のレベルの試験に比べて、より高い感度および解析的特異性を有する異なるパネルを用いて、試験を再度行うかを患者に尋ねる)。
例えば、パネルおよび市販の技術「Oncomine(登録商標)cfDNA」を用いて、0.05%の極めて低い検出レベルが得られる。これは、第1のレベルのスクリーニングとは異なる特定の化学(「Oncomine(登録商標)TagSequencing」)に基づいて、システムが、解析したDNA試料のわずかに0.05%で存在する変異を特定することができることを意味する。
方法は、選択した遺伝子パネルの解析サイクルの繰り返し頻度および解析される遺伝子に関連する感度などの評価パラメーターの連続的な更新を含む。特に、繰り返し頻度は、安定性指数(いくつかの遺伝子のパネルが解析されるか、または単一の遺伝子が解析されるかに応じて、IまたはI)を基準にして決定され、さらに正確には、不安定性指数の低い値は、試験の基準繰り返し頻度を示すものであり、これは、例えば、1年に1回の試験であり得る。このような指数値の中等度の増加であっても、繰り返し頻度の増加を提案できる。理由は、不安定性状況は自然に増加する傾向があり、より短い時間で、新規の有意な変異のより大きな可能性を意味するためである。不安定性指数I、Iの特定の閾値ITS、IGSの超過は、監視されている腫瘍または腫瘍群の発症時の前駆的遺伝子状態における変異の配列の変化と見なされ、すなわち、確実にまたは極めて高い確率で、上述の腫瘍、またはいずれの場合でも、監視腫瘍の少なくとも1種を発症するように個体を誘導する進路にあると見なされる。不安定性指数の閾値は、例えば、0.1に設定され得る。
本発明では、特定の変異が発生し、腫瘍形成の進行を示す場合、試験の繰り返し頻度の段階的に増加することで、個体の状況の最良の監視および理解が可能である。
本発明では、各評価サイクルに対し解析されるDNAに関連する全ての生データおよび得られた結果は、その後のサイクル中に記録され、修正されて、利用可能なデータの量が増加するのに伴い、評価の精度が改善される。
本発明の方法の別の特徴によると、体細胞変異の研究のためのcfDNAの塩基配列決定は、生殖細胞変異の解析と組み合わせられる。このために、既に記載されたことに従って、ホットスポット癌パネル(HSCP)を有するcfDNAが単離および配列決定され、1%の感度で、腫瘍形成過程に関与する50種の遺伝子中の2,800種の変異の調査を可能とする。
さらに、個体の生殖細胞DNA、例えば、リンパ球DNA、が単離および配列決定され、上述のDNA中の同じ変異の存在がチェックされる。本発明の目的に関しては、個体のリンパ球DNAは、同じリキッドバイオプシーから未分化で誘導でき、それから、cfDNAを採取および単離された、または別の最近のもしくは遙かに古い生検材料から単離された。理由は、リンパ球DNA中に存在する生殖細胞変異は、個体の遺伝形質の一部を形成するためである。
リンパ球DNAは、好ましくは、直接に比較できる結果を得るために、cfDNA塩基配列決定と同じ読み深さで配列決定がなされる。
従って、変異は、それがcfDNA解析で存在し、同じ読み深さで配列決定されたリンパ球DNAで存在しない場合、明確に体細胞性である。従って、次の変異セットが定義される:
セットA:cfDNA中に見出される変異からなる;
セットB:cfDNAで使用されたのと同じパネルにより解析されたリンパ球DNA中に見出される変化からなる;
セットC:cfDNA中に存在するが、リンパ球中には存在しない変異として定義される体細胞変異からなる。
体細胞変異が特定される(すなわち、解析で、セットCが空ではない)場合、このような体細胞変異が主に見出された組織は、既知の操作技術を用いて、COSMICデータベースにより評価される。
次のステップは、この場合にも同様に既知の操作技術を用いて、生殖細胞系列の解析から、これらの組織の腫瘍を発症するより高い確率があるかどうかを調査することである。上述の手法は、カスタマイズされたパネルにより実施され、そのパネルの定義は、見つかった体細胞変異または複数体細胞変異の関数であり、cfDNA中の変異遺伝子(または複数変異遺伝子)を基準にして特定の腫瘍に対する個体の感受性の評価を可能とする。
さらに、当該体細胞変異が肺、結腸または乳腺に関与する場合、循環DNAは、例えば、市販のパネルOncomine(登録商標)により、および市販の技術Tag_Seq(登録商標)を用いて、より高い感度(最大0.1%)で解析される。
これらの第1の解析が完了すると、評価は終了し、結果を説明し、評価し、個体を監視する新しい試験を計画するための腫瘍学的コンサルテーションの提案が行われる。
本発明による方法は、遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定を完成する追加の機能として、採取されたリキッドバイオプシー中のctDNA(循環腫瘍DNA)を探索することも含む。このような作業は、図1に示すように、計算された不安定性指数が予め固定した閾値ITS、IGSを超える場合のみに実施できるか、または不安定性指数の値がこの閾値未満である場合に、予防策として実施できる。
ctDNAが検出されると、遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定の方法は、その機能を終了する。理由は、それが、少なくとも1つの変異株が新生細胞の形成を生じたことを意味するためである。この時点で、遺伝子状態の評価のためのシステムは、個体の管理を、例えば、本出願者により開発され、使用されている、SCEDシステム(固形癌早期検出(Solid Cancer Early Detection))などの早期検出システムに移すための情報を提供する。
いくつかの用途は、単一固形腫瘍または固形腫瘍ファミリー、特に、肺、乳腺および卵巣、ならびに結腸直腸腫瘍に関連する遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定を重点的に、例として以下に記載される。
実施例1:肺腫瘍
本発明の一実施形態では、遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定方法は、肺腫瘍の発症に関連する遺伝子状態の監視に適用される。
肺腫瘍の発症に関する最も深刻なリスク因子は、シガレット喫煙である。喫煙者により吸入された煙の量とこのような腫瘍に罹患する確率の増加との間には、明確な対応が広く実証されており、既に事実と見なされている。
いくつかの調査は、肺腫瘍に罹患するリスクは非喫煙者より喫煙者で14倍高いことを報告している(1日当たり20本を超えるシガレットのヘビースモーカーでは、最高20倍まで)。シガレットの煙は、肺腫瘍10症例中8/9症例の原因であるが、環境汚染、このタイプの癌に対する家族的素因、および他の肺疾患の存在が腫瘍に罹患する可能性を高め得る。
肺腫瘍に関連する特定の遺伝子の特定の変異およびこのような変異の数と頻度が、将来的に腫瘍細胞を生じうる個人的リスクの定量化を基準にして、監視されている人に、適切な信頼性で、発症が検出されるかどうか、およびどの変化段階に達したかを知る可能性が提供される。
本方法では、この場合の腫瘍発症の前駆的状態の定義は、肺腫瘍に直接的に関与する11種の遺伝子、特に169種の種々のホットスポットの変異に関連付けられている。表1は、評価されるパネルを構成する遺伝子およびホットスポットのリストを示す。
健康な個体に対する肺腫瘍に関連するパネルに関する遺伝子不安定性の評価法の適用が例として記載される。
45歳の男性患者から10ccの末梢血を採取し;血液を遠心分離して、血球成分(リンパ球および赤血球)から血漿を分離する(循環遊離DNAを含有)。この患者では、4mlの血漿から出発して、14μLのcfDNAが2.36ng/μLの濃度で抽出される。20ngのcfDNAを用いて、いわゆる、「NGSライブラリー」、すなわち、明確に供試体を規定するバーコード(合成DNA配列)に関連付けられた一連のDNA断片を作製する。読み取り濃度(3390pM)を基準にして、このようなライブラリーは、その他の供試体(これらのそれぞれは異なるバーコードを有する)から得られたライブラリーと混合(プーリング)される。cfDNAは配列が決定され、表1(肺)の遺伝子およびホットスポットパネルが解析され;KRAS遺伝子の変異p.G12Dが0.49%で見つかる。
6ヶ月後、同じ解析を繰り返し、KRAS遺伝子の同じ変異p.G12Dが1.05%で見つかり、不安定性指数が式(数3)を用いて計算され、値0.047が得られる。指数値は0.1の閾値未満なので、6ヶ月後に試験が繰り返されることが推奨される。
実施例2:乳腺および卵巣腫瘍
本発明による方法を実施する遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定の試験は、特殊な方法で、ホルモン補充療法、避妊、または卵巣刺激を受けた、または過去に受けたことがある女性に適用される。
さらに、他の特定の監視および予防、例えば、子宮または卵巣腫瘍を発症する高いリスクを有する遺伝性BRCA 1|2変異を有する女性に対する予防プログラムの事例で都合よく使用できる。
この場合に使用された遺伝子および変異パネルは、表にリストされた10種の遺伝子および159種のホットスポットを含む(表2参照)。
乳腺−卵巣腫瘍に関連するパネルに関する遺伝子不安定性の評価方法の健康な個体に対する適用が例として記載される。
57歳の女性患者から10ccの末梢血を採取し;血液を遠心分離して、血球成分(リンパ球および赤血球)から血漿を分離する(循環遊離DNAを含有)。この患者では、4mlの血漿から出発して、14μLのcfDNAが1.71g/μLの濃度で抽出される。20ngのcfDNAを用いて、いわゆる、「NGSライブラリー」、すなわち、明確に供試体を規定するバーコード(合成DNA配列)に関連付けられた一連のDNA断片を作製する。読み取り濃度(3240pM)を基準にして、このようなライブラリーは、その他の供試体(これらのそれぞれは異なるバーコードを有する)から得られたライブラリーと混合(プーリング)される。cfDNAは配列が決定され、表2(乳腺および卵巣)の遺伝子およびホットスポットパネルが解析され;PIK3CA遺伝子の変異p.H1047Rが0.57%で見つかる。
6ヶ月後、同じ解析を繰り返し、PIK3CA遺伝子の変異p.H1047Rが1.75%で見つかり、さらに、TP53遺伝子の新規変異p.R175Hが0.34%で見つかり、不安定性指数が式(数4)を用いて計算され、値0.152が得られる。指数値は0.1の閾値を超えるので、3ヶ月後に試験が繰り返されることが推奨される。
実施例3:結腸および直腸腫瘍
結腸および直腸腫瘍のカテゴリーに関連する遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定は、それぞれのホットスポットに現時点で関連する全ての遺伝子をリストしている表3に示すように、14遺伝子および246ホットスポットの定期的解析を含む。
結腸直腸系に関連する腫瘍は、腸内粘膜中の大腸腺腫症などの良性病変の進展として発症する場合が多い。
腫瘍の形成は、肥満症またはカロリーおよび脂肪に富む食事、および低繊維、または遺伝的因子、例えば、病態の家族歴などのいくつかのリスク因子により促進され得る。さらに、年齢、慢性腸内炎症性病態およびポリープの病歴は同様に、腫瘍の発症の一因となり、発症の確率を高め得る。
良性新生物が悪性になるのに要する時間は、多くの場合極めて長く(7〜15年)、このような変化は、本発明の方法により提供される定期的試験の適用およびその結果のリスク状態の評価で都合よく追跡できる。
結腸直腸腫瘍に関連するパネルに関する遺伝子不安定性の評価方法の健康な個体に対する適用が例として記載される。
45歳の男性患者から10ccの末梢血を採取し;血液を遠心分離して、血球成分(リンパ球および赤血球)から血漿を分離する(循環遊離DNAを含有)。この患者では、4mlの血漿から出発して、14μLのcfDNAが1.49g/μLの濃度で抽出される。20ngのcfDNAを用いて、いわゆる、「NGSライブラリー」、すなわち、明確に供試体を規定するバーコード(合成DNA配列)に関連付けられた一連のDNA断片を作製する。読み取り濃度(8130pM)を基準にして、このようなライブラリーは、その他の供試体(これらのそれぞれは異なるバーコードを有する)から得られたライブラリーと混合(プーリング)される。cfDNAは配列が決定され、表1(肺)の遺伝子およびホットスポットパネルが解析され;APC遺伝子の変異p.R1450Terが0.15%で見つかる。
6ヶ月後、同じ解析を繰り返し、APC遺伝子の同じ変異p.R1450が1.05%で見つかり、不安定性指数が式(数3)を用いて計算され、値0.047が得られる。指数値は0.1の閾値未満なので、6ヶ月後に試験が繰り返されることが推奨される。

上記は、単なる非限定例として記載されてきたことは理解されよう。従って、本発明のあり得る変更および変種は、上述のおよび以下で請求された、本方法に許諾された保護範囲内であると見なされる。
本発明は一般に、癌予防の分野、より詳細には、固形腫瘍予防の分野に関する。
特に、本発明は、個体における固形腫瘍の発症の前駆的な遺伝子状態を探索および特定し、危険にさらされていると見なされる個体のこのような腫瘍に罹患する有意な可能性の存在の統計的予測を行う方法を含む。
固形腫瘍は、腫瘍細胞および間質からなる1つまたは複数の組織塊(さらには、異なる種類の細胞および細胞外マトリックスからなる)から構成され、異常で、無制御増殖を特徴とし、これは、いくつかの事例では、全身性症状を引き起こし得る。
腫瘍は、遺伝子異常により引き起こされる病態であり、それらは、時間的に連続した様々なステップで発生し、そこでは、一連の引き続いて起こる変異が1つまたは複数の細胞の遺伝形質中に蓄積する。
対象者の遺伝子異常の増加に付随する遺伝子不安定性状態は、特定の腫瘍形成リスクのマーカーである。これらの遺伝子異常は、キャリア細胞が腫瘍細胞株を生じるリスクを高める。
このプロセスは、結腸直腸癌に関して、十分に研究されてきた。これらの腫瘍の発生段階では、第1の変異は、遺伝子安定性の制御に関与するゲートキーパー/ケアテイカーと呼ばれる遺伝子を必要とし、正常な上皮細胞の増殖における選択優位性をもたらし、第一の変異を周囲細胞より優位にし、微視的なクローンにする。
結腸において最もよく知られたゲートキーパー遺伝子は、APC遺伝子である。
ほとんど全て(約80%)の結腸直腸腫瘍は、APC遺伝子の変異を特徴とする。この変異により引き起こされる微小腺腫は極めてゆっくり増殖するが、別の遺伝子、例えば、KRAS遺伝子(または、ATK1など)に第2の変異が起こると、関与する細胞の数の増大を引き起こすクローン増殖の新たな段階に発展する。APC変異のみを有する細胞は、腺腫中に留まることができるが、両方(またはより多く)の遺伝子の変異を伴う細胞についてはそれらの数は少ない。
連続的変異のこのプロセスは、その後にクローン増殖が生じ、続いてPIK3CA、SMAD4およびTP53などの他の遺伝子が変異し、高い確率で悪性新生物を生成し、下層の基底膜を通過して広がり、通常は最初に局所リンパ節、その後肝臓または肺などの遠隔器官に転移することがある。
最近の10年間で、網羅的な塩基配列決定により、ヒト癌の最も頻度の高い形態のゲノムの全景が開示された。多くの腫瘍のゲノムの塩基配列決定は、何千もの変異およびその他のゲノム異常に関連する情報をもたらした。現時点では、1万種を超える腫瘍ゲノムが配列決定され、塩基配列決定コストは徐々に低下してきていることに伴い、多くの他の腫瘍ゲノムが、近い将来に特徴付けられることになろう。
腫瘍ゲノムの塩基配列決定により、種々の「ドライバー変異を有する遺伝子」の分類が可能とされてきており、さらに、多くの他の分類が可能となるであろう。ドライバー変異は、増殖の点で大きな優位性をもたらす遺伝子内の変異である。
現在までに実施された研究で、約140種の遺伝子が特定され、これらは、変異が起こると、発癌を促進する、または「ドライブする」。典型的な腫瘍は、一般に、「ドライバー遺伝子」中に2個から8個の変異を含む。残りの変異は、一過性と見なされ、それらは、細胞増殖に何らの優位性ももたらさない。
ドライバー遺伝子は多くの場合、重要な細胞の分子経路に関与し、種々の形態およびモードで、3つの主要細胞プロセス:細胞分化、生存(アポトーシス促進性または抗アポトーシス性シグナルを介して)および維持、を調節する。現時点では、基礎的癌研究における最も差し迫った必要性の1つは、このような異なる経路の深い理解である。しかし、腫瘍ゲノムの構造においてこれまでに到達された理解の程度であっても、いくつかの現在の治療法選択の指針となるのに十分であり、癌の罹患率および死亡率を低減するより多くの効果的手法の開発が行われてきた。
スクリーニングおよび初期診断プログラムは、癌患者の健康な生存の改善および死亡率の低減において重要な役割を果たす。初期診断のための非侵襲的手法は、患者の協力を促進する一因となるので、それらをスクリーニングおよび予防プログラムに含めることが望ましいことは明らかである。
腫瘍病理の分子論的発症機序の知識の増加および分子分析の新技術の急速な発展は、体液中の初期分子異常の特定と分析法の開発および達成に寄与している。細胞外DNA(「セルフリーDNA」または「cfDNA」)を、血清、血漿、尿および他の体液中で見つけることができる。従って、cfDNAのサンプリングおよび分子解析は、一種の「リキッドバイオプシー」であり、種々の特殊な病状の一種の「循環像(circulating image)」と見なすことができる。
血液では、アポトーシスが、cfDNAを生成する最も高頻度のプロセスであると思われるが、癌患者では、壊死プロセスにより得られる部分も完全には無視できない。ステージ4結腸直腸癌に罹患した32人の患者の血漿由来のcfDNAを分析する興味深い研究では、患者の34.4%で、採取されたDNAは、2種の大きさ(166bpおよび332bp)を有したことが示された。
Strounらは、種々の癌の異常が患者のcfDNAにおいて特定できることを記載している。その後刊行された種々文献では、cfDNAは、腫瘍細胞に直接帰することができる特定の遺伝子の変異、メチル化およびコピー数の変化(「コピー数多型」またはCNV)などの、腫瘍の存在に相関する特定の異常を含み、従って、循環腫瘍DNA(ctDNA)の存在を確証していることが確認された。
種々の研究が、選択組織および血漿試料の相関を示すことを目的とし、循環cfDNAの分析を診断用手段として使用できることを確認するために実施されてきた。
転移性乳腺腫瘍の17人の患者由来の60種の腫瘍組織試料および31種の血漿試料中の2,800種のCOSMIC変異(Catalogue Of Somatic Mutations In Cancer−http://cancer.sanger.ac.uk/cosmic)を包含する50種の腫瘍遺伝子に対して実施されたNGS(次世代シーケンシング)を用いた評価は、組織と血漿との間の76%の一致を明らかにした。これらのデータから、著者は、血漿は、転移生検の代わりとして、腫瘍のスクリーニングのために採用した生物試料と見なすことができるという結論に至った。
上述の結果は、18種の異なるタイプの腫瘍に罹患している34人の患者群で確認された。この分析では、組織および血漿試料中の46種の遺伝子を含み、6,800種のCOSMIC変異を包含した。34人の患者の内の27人は、組織試料中で見つかった変異と、ctDNA中で見つかった変異との間で97%の一致を示した。従って、ctDNAベースのNGS分析は、治癒または転移の可能性のある癌病態に罹患している患者の管理を根底から変えてしまう可能性がある。
特許文献1は、疾患の分子および特に癌の分子マーカーの分類の方法を記載している。方法は、血液試料から得られる遺伝子パネルの分析を含む。合成したmRNAまたはcDNAは試料から得られ、パネルの遺伝子の変異状態が決定される。特定のパネル中の特定の遺伝子内の特定の変異状態の存在は、(a)患者が癌を有していた、および/または(b)患者はその特定の癌を有している、ことを示す。特許文献1で記載の方法により、既に癌を有する人、およびさらには、特定の癌を有している人を見つけることを目的として、スクリーニングが実施される。患者は既に疾患を発症していて、進行段階でさえある。特許文献1は、遺伝子不安定性指数も、1つまたは複数の以前の評価サイクルに対して、変異の頻度の増加を基準にして同様に決定できることを提示しておらず、また、この文献は、所定の遺伝子セットおよび選択された変異を対象者の既往歴を考慮して決定できることを示唆してもいない。特許文献1の方法により、変異が発生している遺伝子型は、どの腫瘍が見つかったかを決定し、進行中の病理学的過程の実際の真の診断が得られる。健康な対象者における固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態ではない。
特許文献2は、複数の遺伝子マーカーと種々の異なる癌の発癌リスクとの間の有意な統計的関連性を特定することにより、個々の対象者の異なるタイプの癌を発症するリスクを評価する方法を開示している。特に、特許文献2で開示の発明は、対象者の核酸試料から、複数の二対立遺伝子多型遺伝子座での遺伝子型を決定することにより、対象者のための個別化された発癌リスクレポートを生成する方法を提供している。リスクは、それぞれの複数の二対立遺伝子多型遺伝子座について決定された遺伝子型に基づいて計算される。
非特許文献1の論文は、例えば、血球減少症の患者を診断および管理するための方法を開示している。方法は、患者の末梢血血漿または血清からセルフリーDNA試料を得ること、選択遺伝子パネル上でセルフリーDNA試料の変異解析を実施すること、および血液系腫瘍の管理のために患者に治療を行うことを含む。
また、GAGANらにより開示された方法は、既に発症した疾患の治療に関し、健康な対象者の固形腫瘍の発症の前駆的状態を検出することを教示するものでも、示唆するものでもない。
非特許文献2の論文は、リキッドバイオプシーの分析に基づく癌の診断を開示しているが、一方、非特許文献3の論文は、腫瘍ゲノムを非侵襲的に探査し、腫瘍量を定量する方法を開示している。また、これらの文献では、開示された方法は、既に発症した疾患の治療に関するものであり、健康な対象者の固形腫瘍の発症の前駆的状態の検出に対しては、何らの教示もまたは示唆も与えられていない。
特許文献3は、骨髄異形成症候群およびその他の血液系腫瘍を治療、管理、診断および監視する方法を開示している。これらの方法は、末梢血血漿または血清由来のセルフリーDNAに対して行われる配列解析を含む。特許文献3で記載の方法により、診断および診断後治療が、既に癌を有する人を見つけることおよび治療することを目的として実施される。健康な対象者の固形腫瘍の発症の前駆的状態の検出に対しては、何らの教示もまたは示唆も与えられていない。
技術的な問題
リスク状態の評価は、試験手順および遺伝子解析の不可欠な要素である。極めて近い将来に、癌病態の評価の前に、このタイプの手法が系統的に実施されることになる可能性が高い。
他方では、「健康な」人が、深刻な病態に対する素因に関して、または前病理学的状態の検出のために、遺伝子検査を受けることを依頼する頻度がますます高くなる。また、この理由のために、医師は、定型的経過観察プログラム中に、リスクの決定および管理のための、および確実にまたは極めて可能性の高い前病理学的状態を特定するための技術を導入しなければならない。
遺伝的リスクは、決められた病態−特に本開示に関しては、癌病態−に特に関連し、この病態を実際に発症する変異の個々の保有者の可能性を意味する。他方では、前病理学的状態または病態の発症の前駆的状態の特定は、経時的に、その後の変化により、確実にまたは極めて高い可能性で、病態の発症を起こし得る、遺伝子不安定性状況を示す生体分子シグナルの検出に関する。
本明細書で既に数回指摘したように、発癌は、環境要因および遺伝的素因の両方により影響を受け、特定の異常と関連する遺伝的背景は、この特定の異常に相関するリスクの決定にかなりの影響を与える。
Wang E.らによれば、一連の(ネットワーク)特性要素に基づくアルゴリズムは、腫瘍の主要要素の遺伝的モデルの生成のために、および変異遺伝子型を臨床的表現型と結びつけるために採用できる。このパターン(および他の類似の)の使用は、患者ゲノム配列の個々のプロファイルを基準にして、可能な腫瘍治療標的、再発の可能性および腫瘍の発症のリスクの予測のための戦略を例示する。
まとめると、特性要素のネットワークに基づくモデルから引き出される予測法は、癌病態プログラムの診断および管理の最適化ならびに予防に使用できる。
正常細胞におけるゲノム不安定性は、遺伝的およびエピジェネティックな変化の蓄積を通して発生し、数年から数十年の範囲の様々な期間にわたり起こることが示されている(Gerlinger et al.,2012;Lengauer,Kinzler, & Vogelstein, 1998;Yates et al.,2015;Zhang et al.,2014)。
ゲノム不安定性特性を得た大多数の正常細胞は、免疫系により除去されると考えられるが、最小限の部分は、最終的に進行し、癌を生ずる可能性がある(Nakad & Schumacher,2016)。
癌の発生時には、特定のゲノム異常を特定して、特異的治療選択肢のための論理的根拠を提供するために使用できる。従って、ゲノム不安定性の監視は、癌を発症するより高いリスクに関連する初期変異イベントを特定するために極めて重要であり得るが、従来の組織ベースの手法を使用することは、実際問題として多くの場合実施可能ではない。対照的に、リキッドバイオプシーは、初期ゲノム異常を検出し、癌細胞の変化を理解する可能性を提供し得、長期的におよび低侵襲で癌細胞の探索を可能とする。リキッドバイオプシーは、最も一般的には血液であるが、唾液、尿およびその他の体液も含む、非固体生体組織のサンプリングを意味する広義の用語である。興味深いことに、癌患者は通常、健常者に比べて、高レベルの総循環cfDNA(セルフリーDNA)を示す(Alix−Panabieres & Pantel,2016;Bettegowda et al.,2014)。
循環中のcfDNAおよびctDNA(循環腫瘍DNA)を含む大部分のDNA断片は、180〜200ヌクレオチドの大きさである。この観察は、生理学的組織リモデリングイベントに関連する細胞死が、血流中で認められる大部分のDNA断片を生成する可能性があることを示唆している。逆に、ctDNAは、アポトーシスまたは壊死を受けている腫瘍細胞由来であり、総循環cfDNAのわずかな比率(0.1〜10%未満)を示すに過ぎない。cf/ctDNA分析の典型的出力は、多くの場合、デジタルPCRまたは次世代シーケンシング(NGS)などの感度の高い技術を用いることによる、明確な癌関連遺伝子の評価により生成される(Goowin:2016会計年度)。ctDNA解析は、療法に対する反応を監視するために、微小残存病変を検出するために、および療法に対する耐性の発生を評価するために適用されてきた(Diaz et al.,2012;Siravegna et al.,2015;Tokudome & Hayes,2013)。
現在では、最もよくあるリキッドバイオプシーの臨床使用は、治療法の決定に情報を提供するための、療法に応答した腫瘍量の監視および耐性に関連する遺伝子異常の特定である(Azad et al.,2015;Fribbens et al.,2016;Misale et al.,2012;Weigelt et al.,2017)。
分子バーコードの導入は、極端に高いレベルのシークエンシング深度(すなわち、約25,000カバレッジ)が求められることから追加のコストの代償を払って、塩基配列決定法の感度をかなり高めた(0.01%の変異アレル頻度まで下げた)(Kinde,Wu,Papadopoulos,Kinzler,& Vogelstein,2011;Newman et al.,2016;Schmitt et al.,2012)。
この、およびさらなる技術的進歩を利用して、多くの研究が、臨床的に意義のある、1ミリリットルの血漿当たり1個未満までもの変異体テンプレート分子の感度で、初期段階の癌の患者における遺伝子異常を記述している(Abbosh et al.,2017;Aravanis,Lee,& Klausner,2017;Bettegowda et al.,2014;Cohen et al.,2017;2018)。
の患者および健康な対照がこのような試験手法に必要とされる感度および特異性を確立するのに必要であることから、上記進歩があるにもかかわらず、ctDNA解析の潜在的臨床適用の中で、早期発見は、最も高い目標のままである(De Mattos−Arruda et al.,2014)。
さらに、無症候性患者における加齢関連クローン性造血もまた、擬陽性の結果の発生源の可能性があり(Cohen et al.,2018)、一般集団において完全には理解されていない現象であるが、血液癌血液癌から生存した(すなわち、臨床的に治癒したと見なされる)患者では確率されている(Cree et al.,2017;Genovese et al.,2014)。
重要なのは、健常者における全体ゲノム不安定性の監視が、早期アクセススクリーニング予防プログラムに参加しうる亜集団の特定に繋がり得ることである。それにもかかわらず、健常者のcfDNAの回収およびキャラクタリゼーションは、cfDNAがこれらの患者で量が少ないこと、および健康な対照におけるcfDNA解析を記載した研究はほんの僅かであることを考慮すると、難易度の高いものである可能性がある(Cohen et al.,2018;Cree et al.,2017)。従って、上述したモデルは、健常者から単離したcfDNAの抽出および解析が技術的に行い得ることが実証された適切な技術的検証の後でのみ成功し得ると言うことが、直感的にわかる。原理研究の我々の証拠としてこの目的を達成するために、我々は、採血時に臨床的健常者(すなわち、何らの顕在化した病状により影響を受けていない者)の採集物でcfDNAを探索できるかを調査した。第1に、我々は、組織学的に確定診断された乳腺癌または肺癌の患者から得たcfDNA試料を解析することにより、我々の試験戦略の信頼性を評価した。特に、我々は、対応する組織と血漿供試体における変異状態の一致を評価した。次に、我々は、1〜10年以内(平均=8.39年、表1)の追跡調査で何らの腫瘍を発症しなかった個体ならびに、追跡調査期間中に良性の新生物または癌を発症した個体の両方を含む健康なドナーの一群を解析した。全体として、我々の調査は、ゲノム異常を調査するために健常者のcfDNAを分子バーコード化ウルトラディープシークエンシングにより抽出および解析する技術的可能性を実証している。
米国特許出願公開第2013/143747号明細書 米国特許出願公開第2016/0102358号明細書 米国特許出願公開第2016/0130648号明細書
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本発明の目的
本発明の主目的は、臨床的に健康な個体の、1つの形態の固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態、すなわち、遅かれ早かれ、ほぼ確実に監視されている腫瘍の形態をその個体に発症させることになる状態への移行の評価を得ることができる監視方法を提供することである。
この目的および他の目的は、健康な個体における、脳腫瘍を除く固形腫瘍の発症の前駆的な遺伝子状態の探索および特定方法(アルゴリズムおよび関連データベースに基づく)に関する本発明により達成される。本方法は、前述の固形腫瘍の発症に関連する遺伝子から選択される遺伝子パネルに関連する変異頻度に関する一連の定期的評価サイクルに基づき上述の状態を規定する。
前記方法は、個体から生物試料(体液、例えば、血液、尿または髄液により構成される)を採取すること、DNAを単離することおよび増幅することならびにその塩基配列決定をすることを含む。その後の解析ステップは、監視遺伝子のための既知変異リストから選択される前述の遺伝子パネルに関連し、腫瘍性細胞の形成に向けた変化を示す、1つまたは複数の変異の存在の評価を含む。
特に、NGS技術(次世代シーケンシング)を用いた評価が、50種の遺伝子、およびCOSMICデータベース(Catalogue Of Somatic Mutations In Cancer−http://cancer.sanger.ac.uk/cosmic)で分類された合計2,800種の変異に対し実施される。
全ての監視遺伝子に対し、全ての評価サイクルは、既知のホットスポット(癌患者で高頻度で変異する位置)で発生する変異に対する特別の注意を払って、監視遺伝子に関連する変異の存在を検出する。変異の場合には、この検出変異が以前の評価サイクルで既に見つかっているかどうか、およびどのレベル(変異パーセンテージまたは比率−アレル頻度)で見つかっているかどうかをチェックする。以前に見つかっていない場合には、この遺伝子に関連する新規変異が登録され、アルゴリズムにより変異頻度で経時的に示される傾向を示す値が計算される。この値は、システムの「重要リスク指標」となる。この傾向は、数値で表され、変異頻度の最後の値と、以前の評価サイクルで得られた値との間の関係を計算することにより得られ、また、その傾向は、ダイアグラムで表され、遺伝子安定性または不安定性のレベルの指標を与える。
変異に頻度に対して決定された閾値レベルを超えたことが検出されると、本発明の特定方法に従って、遺伝子不安定性コースへの移行に関してレポートが発行され、その間、さらなる変異は、確実にまたは極めて高確率で、時間経過に伴い個体に固形腫瘍を発症させることになる。
全ての評価サイクルに対し考慮された遺伝子パネルおよびそれらの変異は、ここでも、全範囲の50種の固形腫瘍の発症に関連する遺伝子を含むことができ、またはいくつかの遺伝子のみおよび1つまたは複数の選択した腫瘍のみに関連するホットスポットを含むこともできる。
特に、不安定性が1種の腫瘍タイプのみまたは単一の腫瘍ファミリーのみの発症に関連する、個体の遺伝的状況を監視することができる。この場合には、解析される遺伝子の数は、その腫瘍またはその腫瘍グループに直接に関連するものに限定される。
本発明によると、解析されるべき遺伝子および変異のパネルは、家族歴調査により得られた対象者の既往歴に基づいて選択できる。
検出された変異の頻度が、所与の変異に対し、アレル頻度(上記で定義したものによる)の数の増大である所定の値、例えば、10%(数値は、数年にわたり蓄積されることになるデータに応じて、どのようにも更新できる)を超えて増大する傾向を示す(例えば、APC遺伝子の変異のアレル頻度はその後の試験の繰り返しで0.1%〜5%を超える)場合、監視システムは、変異の増加に関与する遺伝子に関して、検査されるパネルに関連する感度を100%まで高める(すなわち、システムは、今度は、第1のレベルの試験に比べて、より高い感度および解析的特異性を有する異なるパネルを用いて、試験を再度行うかを患者に尋ねる)。
方法は、選択した遺伝子パネルの解析サイクルの繰り返し頻度および解析される遺伝子に関連する感度などの評価パラメーターの連続的な更新を含む。特に、繰り返し頻度は、安定性指数を基準にして決定され、さらに正確には、不安定性指数のより高い値に対応して、より多い頻度で試験が繰り返される。理由は、不安定性状況は、自然に増加する傾向があり、新規の影響のある変異をより急速に有する確率が高くなることが想定されているためである。
本発明では、各評価サイクルに対し解析されるDNAに関連する全ての生データおよび得られた結果は、その後のサイクル中に記録され、処理されて、利用可能なデータの量が増加するのに伴い、評価の精度が改善される。
可能な限り少ない侵襲で、リスク状態の評価および予測を行うために、解析されるDNAを単離するために個体から採取された生物試料は、リキッドバイオプシー(既に本明細書で定義したとおり)により構成される。本発明の好ましい実施形態では、リキッドバイオプシーは、末梢血試料である。
本発明の一実施形態では、リキッドバイオプシーは、尿である。
生物試料から単離され、リスク状態の評価および予測のために使用されるDNAは、cfDNA(セルフリーDNA)である。
本発明の一実施形態では、cfDNAは、末梢血試料から分離された血漿から単離される。
本発明の別の実施形態では、cfDNAは、末梢血試料から分離された血漿から単離される。
本発明による方法は、収集されたリキッドバイオプシー中のctDNA(循環腫瘍DNA)を探索することも含む。
ctDNAが検出されると、リスクの評価および予測方法は、そのタスクの実施を実質的に停止する。理由は、それが、少なくとも1つの変異株が新生細胞の形成を生じたことを意味するためである。この時点で、リスク評価および予測のためのシステムは、個体の管理を、例えば、本出願者により開発され、使用されている、SCEDシステム(固形癌早期検出(Solid Cancer Early Detection))などの早期検出システムに移すことを目的とした情報を発行する。
特許請求の範囲から明らかとなる本発明の特徴は、添付図面に関連して、次の詳細説明で示される。
本発明の一般的実施形態により固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および特定する方法のフローチャーチを示す図である。 本発明の方法に従って、遺伝子安定性状態または不安定性状態を規定する変異の評価に関与する遺伝子パネルのリストを示す。
本発明は、前記状態への移行の可能性に関連して、個体の遺伝子安定性の傾向の変化を基準にして、個体の経時的監視のために、健康な個体の脳腫瘍を除く固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および識別する方法に関する。
脳腫瘍は通常、本発明による固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および特定する方法に使用される手法から除外される。現時点では、この手法を脳腫瘍に対しても使用可能とする科学的証拠は、十分ではない。このタイプの腫瘍の発症に関連する遺伝子セットは、現時点では、まだ、適切に特定されておらず、それらは、その配列の特定の変異ではなく、DNAメチル化状態に主に関連していると思われる。実際に、提案されたパネルは、DNAメチル化状態の評価に向いていない。さらに、Bettegowda,C.らにより既に記載されているように(Bettegowda,C.et al.Detection of circulating tumor DNA in early− and late−stage human malignancies.Science translational medicine 6,224ra224,doi:10.1126/scitranslmed.3007094−2014)、血液脳関門が全身循環中のcfDNAの存在をかなり減らすフィルターを形成している可能性が高いことを明記する必要がある。従って、現在の抽出およびその後の解析技術は、腫瘍リスクの解析のために使用されるのに十分に強力なデータを提供できない。
本方法は、前述の固形腫瘍の発症に関連する遺伝子から選択される遺伝子パネルに関連する変異頻度の一連の定期的評価サイクルを、所定の間隔で実施することを含む。図1は、後ほど記載する方法のステップの可能なワークフローを例として示す。本発明の範囲から逸脱することなしに、ワークフローの基本的な変更は可能ではない。
別に定める場合を除き、本治療で使用される技術用語は、当業者に一般的におよび明確に既知の意味を有する(例えば、「リキッドバイオプシー」、「DNA単離」、「DNA増幅」、「DNA塩基配列決定法」、「ctDNA」、「cfDNA」、「循環腫瘍細胞」、など)。また、本発明による方法を実施するために使用されると言及され、そのように意図されている分子生物学遺伝子工学の技術(例えば、「NGS−次世代シークエンシング」)は、実際によく使用される標準的技術であり、また、当業者によく知られている。
固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態の探索および特定の各サイクルで、本発明により提案される方法は、個体からの生物試料を採取すること、生物試料からDNAを単離すること、およびその後、DNAの該当画分を適切に増幅した後で、好ましくはNGS技術を用いてその塩基配列決定を行うことを含む。
可能な限り少ない侵襲で、リスク状態の評価および予測を行うために、DNAを単離して解析するために個体から採取された生物試料は、リキッドバイオプシーから構成される。リキッドバイオプシーは、個体内を循環している液体または半液体生体物質により実質的に形成され、実質的に体液の分泌または排泄により生成される。
本発明の好ましい実施形態では、リキッドバイオプシーは、末梢血試料であり、これは、採取され、処理されて、必要があれば、その後の使用に応じて、血漿または血清に分離される。
本発明の別の実施形態では、リキッドバイオプシーは、尿である。
本発明では、生物試料から単離され、リスク状態の評価および予測のために使用されるDNAは、cfDNA(セルフリーDNA)である。
循環遊離DNA、cfDNA(セルフリーDNA)は、MendelおよびMetisにより、約70年前に初めて示された。上述のDNAは、壊死細胞(成熟前の死)および/またはアポトーシス細胞(プログラム死)に由来し、通常、全ての種類の細胞により放出される。cfDNAの発見の約40年後、Strounらは、特定の発癌性異常がcfDNA中にも同様に特定され得ることを示した。その後、腫瘍に関連する特定の異常を研究することにより、循環腫瘍DNA(ctDNA)の存在を確証するいくつかの論文が刊行された。従って、Bettegowda,C.ら(Bettegowda,C.et al.Detection of circulating tumor DNA in early− and late−stage human malignancies.Science translational medicine 6,224ra224,doi :10.1126/scitranslmed.3007094−2014)により既に記載されたように、ctDNAは、総cfDNAの一部であり、極めて初期段階の0.01%〜1%から進行段階での40%までであると推定されている。
既に述べたように、血液では、アポトーシスは、cfDNAを生成する最も高頻度のプロセスであると思われるが、癌患者では、壊死プロセスにより得られる部分も完全には無視できない。
血清および血漿中のcfDNAの量および変動性は、健康な対照より病気の患者で、特に、初期段階よりも進行段階の症例で、かなり大きいと思われる。
cfDNAの量は、炎症過程などの生理病理学的条件によっても影響を受け、また、cfDNAは安定性が極めて低く(15分から最大数時間まで)、従って、結果の信頼性および一貫性は必ずしも保証されるとは限らないことを考慮すべきである。この場合、試験の定期的繰り返しに基づく手法は、偽陰性の発生率が低いという利点がある。
60種の固形腫瘍および31種の血液腫瘍中の2,800種の変異(COSMIC)をカバーする癌に関与する50種の遺伝子(図2参照)を評価できるNGSパネルを用いた調査により、乳腺転移性腫瘍の17人の患者を解析し、組織と血漿との間の76%の一致が推定されている。これらのデータから、著者は、血漿は、転移生検の代わりとして、腫瘍のスクリーニングのために採用した生物試料と見なすことができるという結論に至った。
本発明の一実施形態では、cfDNAは、個体から採取した末梢血試料から分離された血漿から単離される。
本発明の別の実施形態では、cfDNAは、個体から採取した末梢血試料から分離された血清から単離される。
既知技術に従って、血漿中に存在するcfDNAは、シリカまたはシリコーン樹脂で被覆された磁気ビーズを用いて単離できる。両方の場合において、pHが7.5近傍の高濃度のカオトロピック塩の存在下で、DNA(負に帯電している)のシリカ(正に帯電している)と結合する能力が活用される(Chen and Thomas,1980;Marko et al.1982;Boom et al.1990)。DNAのシリカへの結合は、カオトロピック塩により、および弱い静電反発力と競合する水素結合の形成により誘導された脱水により誘導される(Melzak et al.1996)。その後に、過剰塩、タンパク質、炭水化物、代謝物およびその他の混入物質は、アルコール溶液による反復洗浄により除去される。最終的に、精製DNAが低イオン強度溶液(TE−バッファーまたは水などの)により溶出される。
本発明によるリスクの評価および予測方法の次のステップは、選択したホットスポット群に特別な注意を払った、選択した遺伝子パネル(図1)の解析からなり、このステップは、監視遺伝子のための既知変異リストから選択される前述の遺伝子パネルに関連し、腫瘍性細胞の形成に向けた変化を示す、1つまたは複数の変異の存在の評価を含む。
例えば、米国および欧州の肺腫瘍(非小細胞型)を罹患している患者の約10%が、遺伝子の観点からEGFR遺伝子の変異により特徴付けられる(Lynch et al 2004 ;.Paez et al 2004 ;.Pao et al.,2004)。これらの変異は、主に、EGFRエキソン18〜21内で発生し、これはEGFRのチロシンキナーゼドメインの一部をコード化している。エキソン19に関連するこれらの変異の約90%は、欠失であるか、またはエキソン21ではSNVである(変異L858Rと同様)(Ladanyi and Pao 2008)。これらの変異は、EGFRタンパク質のチロシンキナーゼ活性を高め、腫瘍細胞の生存を亢進させる細胞経路の過剰活性化を促す(Sordella et al.2004)。民族起源に関係なく、EGFR遺伝子の変異は、腺癌型組織を有する非喫煙女性患者(患者の全人生の間に100本未満のシガレット)でより高頻度に認められる(Lynch et al.2004)。しかし、EGFR遺伝子に関連するこれらの変異は、他の肺癌患者、すなわち喫煙者のサブグループでも見つけることができる。「健康な」ように見える患者のcfDNA中の上述の変異の存在は、腫瘍塊の存在を評価するために、必然的に監視および一連の完全な検査により追跡されなければならないという明白な警鐘である。
特に、cfDNAは、現時点で2,800種のCOSMIC変異(Catalogue Of Somatic Mutations In Cancer)をカバーする図2で与えられるリストの50種の遺伝子に対し、NGS技術(次世代シーケンシング)で評価される。
本発明の目的に関して、この分野ならびに利用可能な最近の塩基配列決定および解析技術の集中的研究により、1つまたは複数の固形腫瘍形態の発癌に関与する新規遺伝子、新規ホットスポットまたは新規変異の特定に至り得ることから、評価される遺伝子リストおよび変異のリストの両方は、変化しないものと考えるべきではないことは理解されよう。
各評価サイクルは、各監視遺伝子に対し、既知のホットスポットで発生する変異に特別の注意を払って、それに関連する変異(EGFRの上記例を参照)を探索する。有意な変異が存在する場合、これは、方法の計算処理ステップを実行するように物理的に指示されているコンピューター化システムの記憶領域に記録される(図1)。
各繰り返し試験サイクル、すなわち、最初のサイクル後の各サイクルでは、検出された変異が以前の評価サイクルで既に検出されているかどうかがチェックされる。以前に見つかっていない場合には、この遺伝子に関連する新規変異が登録され、アルゴリズムにより変異頻度が経時的に示す傾向を示す値が計算される。この値は、システムの「重要リスク指標」となる。
この傾向は、数値で表され、変異の最後の頻度値と、以前の評価サイクルで得られた値との間の関係を計算することにより得られ、また、その傾向は、ダイアグラムで表され、遺伝子安定性または不安定性のレベルの指標を与える。
本発明による方法の非制限的実施形態では、2つのチェック間の比較は、式(数1)による総遺伝子不安定性指数Iにより合計できる。式(数1)中、nはチェックが実施される遺伝子の数である。
この場合、総不安定性指数Iは、全体の状況を表し、特定の遺伝子の変化の間の区別はしないことに留意されたい。
同様にして、式(数2)に従って、特定の遺伝子の不安定性指数Iを定義できる。式(数2)中、n:チェックが実施される遺伝子の評価されたホットスポットの数である。
全ての評価サイクルに対し考慮された遺伝子パネルおよびそれらの変異は、ここでも、全範囲の50種の固形腫瘍(図2)の発症に関連する遺伝子を含むことができ、またはいくつかの遺伝子のみおよび1つまたは複数の選択した腫瘍のみに関連するホットスポットを含むこともできる。
特に、不安定性が1種の腫瘍タイプのみまたは単一腫瘍ファミリーのみの発症のリスクを監視することができる。この場合には、解析される遺伝子の数は、その腫瘍またはその腫瘍グループに直接に関連するものに限定される。
いずれの場合でも、上記のプロセスによる不安定性指数の定義は、予め固定された探索標的に応じて、単一遺伝子、特定の腫瘍または腫瘍ファミリーの発症に関連する遺伝子セットからなるパネル、または一般的固形腫瘍の発症に関連する50種の遺伝子(現時点で、または将来的に他の遺伝子が特定される場合には、より多くの遺伝子)からなる総パネルを含むことができる。
本発明によると、解析されるべき遺伝子および変異のパネルは、家族歴調査により得られた対象者の既往歴に基づいて選択できる。
評価サイクルにより検出された変異の頻度が、測定された変異に対し、アレル頻度の数の増大である所定の値、例えば、10%(数値は、数年にわたり蓄積されることになるデータに応じて更新できる)を超えて増大する傾向を表す(例えば、APC遺伝子の変異のアレル頻度はその後の試験の繰り返しで0.1%〜5%を超える)場合、監視システムは、変異の増加に関与する遺伝子に関して、検査されるパネルに関連する感度を100%まで高める(すなわち、システムは、今度は、第1のレベルの試験に比べて、より高い感度および解析的特異性を有する異なるパネルを用いて、試験を再度行うかを患者に尋ねる)。
例えば、パネルおよび市販の技術「Oncomine(登録商標)cfDNA」を用いて、0.05%の極めて低い検出レベルが得られる。これは、システムが、第1のレベルのスクリーニングとは異なる特定の化学(「Oncomine(登録商標)TagSequencing」)に基づいて、解析したDNA試料のわずかに0.05%で存在する変異を特定することができることを意味する。
方法は、選択した遺伝子パネルの解析サイクルの繰り返し頻度および解析される遺伝子に関連する感度などの評価パラメーターの連続的な更新を含む。特に、繰り返し頻度は、安定性指数(いくつかの遺伝子のパネルが解析されるか、または単一の遺伝子が解析されるかに応じて、IまたはI)を基準にして決定され、さらに正確には、不安定性指数の低い値は、試験の基準繰り返し頻度を示すものであり、これは、例えば、1年に1回の試験であり得る。このような指数値の中等度の増加であっても、繰り返し頻度の増加を提案できる。理由は、不安定性状況は自然に増加する傾向があり、より短い時間で、新規の有意な変異のより大きな可能性を意味するためである。不安定性指数I、Iの特定の閾値ITS、IGSの超過は、監視されている腫瘍または腫瘍群の発症時の前駆的遺伝子状態における変異の配列の変化と見なされ、すなわち、確実にまたは極めて高い確率で、上述の腫瘍、またはいずれの場合でも、監視腫瘍の少なくとも1種を発症するように個体を誘導する進路にあると見なされる。不安定性指数の閾値は、例えば、0.1に設定され得る。
本発明では、特定の変異が発生し、腫瘍形成の進行を示す場合、試験の繰り返し頻度の段階的に増加することで、個体の状況の最良の監視および理解が可能である。
本発明では、各評価サイクルに対し解析されるDNAに関連する全ての生データおよび得られた結果は、その後のサイクル中に記録され、修正されて、利用可能なデータの量が増加するのに伴い、評価の精度が改善される。
本発明の方法の別の特徴によると、体細胞変異の研究のためのcfDNAの塩基配列決定は生殖細胞変異の解析と組み合わせられる。このために、既に記載されたことに従って、ホットスポット癌パネル(HSCP)を有するcfDNAが単離および配列決定され、1%の感度で、腫瘍形成過程に関与する50種の遺伝子中の2,800種の変異の調査を可能とする。
さらに、個体の生殖細胞DNA、例えば、リンパ球DNA、が単離および配列決定され、上述のDNA中の同じ変異の存在がチェックされる。本発明の目的に関しては、個体のリンパ球DNAは、同じリキッドバイオプシーから未分化で誘導でき、それから、cfDNAを採取および単離された、または別の最近のもしくは遙かに古い生検材料から単離された。理由は、リンパ球DNA中に存在する生殖細胞変異は、個体の遺伝形質の一部を形成するためである。
リンパ球DNAは、好ましくは、直接に比較できる結果を得るために、cfDNA塩基配列決定と同じ読み深さで配列決定がなされる。
従って、変異は、それがcfDNA解析で存在し、同じ読み深さで配列決定されたリンパ球DNAで存在しない場合、明確に体細胞性である。従って、次の変異セットが定義される:
セットA:cfDNA中に見出される変異からなる;
セットB:cfDNAで使用されたのと同じパネルにより解析されたリンパ球DNA中に見出される変異からなる;
セットC:cfDNA中に存在するが、リンパ球中には存在しない変異として定義される体細胞変異からなる。
体細胞変異が特定される(すなわち、解析で、セットCが空ではない)場合、このような体細胞変異が主に見出された組織は、既知の操作技術を用いて、COSMICデータベースにより評価される。
次のステップは、この場合にも同様に既知の操作技術を用いて、生殖細胞系列の解析から、これらの組織の腫瘍を発症するより高い確率があるかどうかを調査することである。上述の手法は、カスタマイズされたパネルにより実施され、そのパネルの定義は、見つかった体細胞変異または複数体細胞変異の関数であり、cfDNA中の変異遺伝子(または複数変異遺伝子)を基準にして特定の腫瘍に対する個体の感受性の評価を可能とする。
さらに、当該体細胞変異が肺、結腸または乳腺に関与する場合、循環DNAは、例えば、市販のパネルOncomine(登録商標)により、および市販の技術Tag_Seq(登録商標)を用いて、より高い感度(最大0.1%)で解析される。
これらの第1の解析が完了すると、評価は終了し、結果を説明し、評価し、個体を監視する新しい試験を計画するための腫瘍学的コンサルテーションの提案が行われる。
本発明による方法は、遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定を完結する追加の機能として、採取されたリキッドバイオプシー中のctDNA(循環腫瘍DNA)を探索することも含む。このような作業は、図1に示すように、計算された不安定性指数が予め固定した閾値ITS、IGSを超える場合のみに実施できるか、または不安定性指数の値がこの閾値未満である場合に、予防策として実施できる。
ctDNAが検出されると、遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定の方法は、その機能を終了する。理由は、それが、少なくとも1つの変異株が新生細胞の形成を生じたことを意味するためである。この時点で、遺伝子状態の評価のためのシステムは、個体の管理を、例えば、本出願者により開発され、使用されている、SCEDシステム(固形癌早期検出(Solid Cancer Early Detection))などの早期検出システムに移すための情報を提供する。
いくつかの用途は、単一固形腫瘍または固形腫瘍ファミリー、特に、肺、乳腺および卵巣、ならびに結腸直腸腫瘍に関連する遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定に重点を置いて、例として以下に記載される。
実施例1:肺腫瘍
本発明の一実施形態では、遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定方法は、肺腫瘍の発症に関連する遺伝子状態の監視に適用される。
肺腫瘍の発症に関する最も深刻なリスク因子は、シガレット喫煙である。喫煙者により吸入された煙の量とこのような腫瘍に罹患する確率の増加との間には、明確な対応関係が広く実証されており、既に事実と見なされている。
いくつかの調査は、肺腫瘍に罹患するリスクは非喫煙者より喫煙者で14倍高いことを報告している(1日当たり20本を超えるシガレットのヘビースモーカーでは、最高20倍まで)。シガレットの煙は、肺腫瘍10症例中8/9症例の原因であるが、環境汚染、このタイプの癌に対する家族的素因、および他の肺疾患の存在が腫瘍に罹患する可能性を高め得る。
肺腫瘍に関連する特定の遺伝子の特定の変異およびこのような変異の数と頻度が、将来的に腫瘍細胞を生じうる個人的リスクの定量化を基準にして、監視されている人に、適切な信頼性で、発生が検出されるかどうか、およびどの進展段階に達したかを知る可能性が提供される。
本方法では、この場合の腫瘍発症の前駆的状態の定義は、肺腫瘍に直接的に関与する11種の遺伝子、特に169種の種々のホットスポットの変異に関連付けられている。表1は、評価されるパネルを構成する遺伝子およびホットスポットのリストを示す。
健康な個体に対する肺腫瘍に関連するパネルに関する遺伝子不安定性の評価法の適用が例として記載される。
45歳の男性患者から10ccの末梢血を採取し;血液を遠心分離して、血球成分(リンパ球および赤血球)から血漿を分離する(循環遊離DNAを含有)。この患者では、4mlの血漿から出発して、14μLのcfDNAが2.36ng/μLの濃度で抽出される。20ngのcfDNAを用いて、いわゆる、「NGSライブラリー」、すなわち、明確に供試体を規定するバーコード(合成DNA配列)に関連付けられた一連のDNA断片を作製する。読み取り濃度(3390pM)を基準にして、このようなライブラリーは、その他の供試体(これらのそれぞれは異なるバーコードを有する)から得られたライブラリーと混合(プーリング)される。cfDNAの配列が決定され、表1(肺)の遺伝子およびホットスポットパネルが解析され;KRAS遺伝子の変異p.G12Dが0.49%で見つかる。
6ヶ月後、同じ解析を繰り返し、KRAS遺伝子の同じ変異p.G12Dが1.05%で見つかり、不安定性指数が式(数3)を用いて計算され、値0.047が得られる。指数値は0.1の閾値未満なので、6ヶ月後に試験が繰り返されることが推奨される。
実施例2:乳腺および卵巣腫瘍
本発明による方法を実施する遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定の試験は、特殊な方法で、ホルモン補充療法、避妊、または卵巣刺激を受けた、または過去に受けたことがある女性に適用される。
さらに、他の特定の監視および予防、例えば、子宮または卵巣腫瘍を発症する高いリスクを有する遺伝性BRCA 1|2変異を有する女性に対する予防プログラムの事例で有利に使用できる。
この場合に使用された遺伝子および変異パネルは、表にリストされた10種の遺伝子および159種のホットスポットを含む(表2参照)。
乳腺−卵巣腫瘍に関連するパネルに関する遺伝子不安定性の評価方法の健康な個体に対する適用が例として記載される。
57歳の女性患者から10ccの末梢血を採取し;血液を遠心分離して、血球成分(リンパ球および赤血球)から血漿を分離する(循環遊離DNAを含有)。この患者では、4mlの血漿から出発して、14μLのcfDNAが1.71g/μLの濃度で抽出される。20ngのcfDNAを用いて、いわゆる、「NGSライブラリー」、すなわち、明確に供試体を規定するバーコード(合成DNA配列)に関連付けられた一連のDNA断片を作製する。読み取り濃度(3240pM)を基準にして、このようなライブラリーは、その他の供試体(これらのそれぞれは異なるバーコードを有する)から得られたライブラリーと混合(プーリング)される。cfDNAの配列が決定され、表2(乳腺および卵巣)の遺伝子およびホットスポットパネルが解析され;PIK3CA遺伝子の変異p.H1047Rが0.57%で見つかる。
6ヶ月後、同じ解析を繰り返し、PIK3CA遺伝子の変異p.H1047Rが1.75%で見つかり、さらに、TP53遺伝子の新規変異p.R175Hが0.34%で見つかり、不安定性指数が式(数4)で計算され、値0.152が得られる。指数値は0.1の閾値を超えるので、3ヶ月後に試験が繰り返されることが推奨される。
実施例3:結腸および直腸腫瘍
結腸および直腸腫瘍のカテゴリーに関連する遺伝子安定性の評価および腫瘍形成の前駆期の特定は、それぞれのホットスポットに現時点で関連する全ての遺伝子をリストしている表3に示すように、14遺伝子および246ホットスポットの定期的解析を含む。
結腸直腸系に関連する腫瘍は、腸内粘膜中の大腸腺腫症などの良性病変の進展として発症する場合が多い。
腫瘍の形成は、肥満症またはカロリーおよび脂肪に富む食事、および低繊維、または遺伝的因子、例えば、病態の家族歴などのいくつかのリスク因子により促進され得る。さらに、年齢、慢性腸内炎症性病態およびポリープの病歴は同様に、腫瘍の発症の一因となり、発症の確率を高め得る。
良性新生物が悪性になるのに要する時間は、多くの場合極めて長く(7〜15年)、このような変化は、本発明の方法により提供される定期的試験の適用およびその結果のリスク状態の評価で有利に追跡できる。
結腸直腸腫瘍に関連するパネルに関する遺伝子不安定性の評価方法の健康な個体に対する適用が例として記載される。
65歳の男性患者から10ccの末梢血を採取し;血液を遠心分離して、血球成分(リンパ球および赤血球)から血漿を分離する(循環遊離DNAを含有)。この患者では、4mlの血漿から出発して、14μLのcfDNAが1.49g/μLの濃度で抽出される。20ngのcfDNAを用いて、いわゆる、「NGSライブラリー」、すなわち、明確に供試体を規定するバーコード(合成DNA配列)に関連付けられた一連のDNA断片を作製する。読み取り濃度(8130pM)を基準にして、このようなライブラリーは、その他の供試体(これらのそれぞれは異なるバーコードを有する)から得られたライブラリーと混合(プーリング)される。cfDNAの配列が決定され、表1(肺)の遺伝子およびホットスポットパネルが解析され;APC遺伝子の変異p.R1450Terが0.15%で見つかる。
6ヶ月後、同じ解析を繰り返し、APC遺伝子の同じ変異p.R1450が1.05%で見つかり、不安定性指数が式(数5)を用いて計算され、値0.026が得られる。指数値は0.1の閾値未満なので、6ヶ月後に試験が繰り返されることが推奨される。
上記は、単なる非限定例として記載されてきたことは理解されよう。従って、本発明のあり得る変更および変種は、上述のおよび以下で請求された、本方法に許諾された保護範囲内であると見なされる。
実施例4 方法の基本的事項に関する一般的研究
cfDNA抽出
血液試料を、EDTA中にまたはStreck(登録商標)DNAチューブに採集した。血漿画分は、2回連続での、室温下、1600xgで30分の遠心分離により分離した。収集した血漿を一定分量に分割し、−80℃で使用するまで貯蔵した。MagMaxセルフリー全核酸単離キット(Thermo Fisher Scientific)を用いて、製造者の説明書に従って、0.4〜5.5mlの範囲の体積のcfDNAを血漿から抽出した。cfDNAの量をdsDNA HSアッセイキットを用いて、QuBit 2.0蛍光光度計(Thermo Fisher)により評価した。cfDNAの品質を、Agilent High Sensitivity D1000 ScreenTape System(Agilent Technologies)を用いて評価した。140〜200bpの明確な断片サイズピークを有するcfDNA(補足ダイアグラム1)試料のみを解析用に選択した。
NGSライブラリー作製
Oncomine(登録商標)肺cfDNAアッセイ、Oncomine(登録商標)乳腺cfDNA研究アッセイv2およびOncomine(登録商標)汎癌セルフリーアッセイ(Thermo Fisher Scientific)にそれぞれ基づいて、HeliSmoker、HeliGynおよびHeliSafeのワークフロー(Bioscience Instituteにより特許化)に従って、2.5〜105.5ngのcfDNAからNGSライブラリーを作製した。手短に説明すると、64℃〜58℃の範囲で、2サイクルマルチプレックスタッチダウンPCR反応を総体積30μlで実施して、標的部位を増幅し、固有の分子識別子をPCR産物に導入した。次に、得られた100〜140bp長さのタグ付きアンプリコンをAmpureXPビーズ(Agencourt)を用いて、1.5Xのビーズの試料に対する比率で洗浄し、精製産物を24μlの低TEバッファーで溶出した。第2ラウンドのPCR(18サイクル)を総体積50μlで実施して精製アンプリコンを増幅し、試料特異的バーコードを含むIon Torrent(登録商標)タグシーケンシングアダプターを導入した。得られた標的DNA断片のライブラリーを、AmpureXPビーズ(Agencourt)を用いて、それぞれ1.15Xおよび1.0Xのビーズの試料に対する比率で2段階洗浄を行うことにより精製した。その後、精製ライブラリーを1:1000に希釈し、Ion Universal Quantitationキット(Thermo Fisher Scientific)を用いてqPCRにより定量化した。その後、下流のテンプレート作製のために、定量化したストックライブラリーを100pMに希釈した。
塩基配列決定
NGSライブラリーを、半導体シーケンシング技術を用いて、Ion S5(登録商標)装置(Thermo Fisher Scientific)で配列を決定した。手短に説明すると、塩基配列決定の実行をTorrent Suite Software(登録商標)v5.8で計画し、ライブラリーをプールし、Ion Chef(登録商標)装置(Thermo Fisher Scientific)を用いて、Ion 540(登録商標)チップにロードした。次に、ロードしたチップを初期化したIon S5(登録商標)装置に挿入し、標準的サンバフロー順の500フローを用いて配列を決定した。生データをTorrent Server(登録商標)上で自動的に処理し、基準hg19ゲノムに整列させた。次の基準値に基づき各サンプルについてQCをマニュアルで実施した:試料当たりのリード数>2,500,00(Oncomine(登録商標)肺cfDNAアッセイライブラリーに対し)、>4,000,000(Oncomine(登録商標)乳腺cfDNA研究アッセイv2ライブラリーに対し)、>15,000,000(Oncomine(登録商標)汎癌セルフリーアッセイライブラリー)、オンターゲットリード>90%、リードの均一性>90%、分子カバレッジ中央値>500x、リードカバレッジ中央値>15,000。その後、QC合格試料の塩基配列決定データを、バリアントコールおよびアノテーションのために、BAMフォーマットでIon Reporter(登録商標)Analysis Serverにアップロードした。
データ解析
バリアントコールをIon Reporter(登録商標)Analysis Software v5.6で、Oncomine TagSeq 汎癌リキッドバイオプシー w2.0およびOncomine TagSeq 乳腺 v2 リキッドバイオプシー w2.0ワークフローを用いて実施した。アライメントパイプラインはまた、シグナル伝達処理、ベースコーリング、品質スコア割り付け、アダプタートリミング、PCR重複除去およびマッピング品質管理を含んだ。ローカルリアライメント、重複除去および品質ベーススコア再較正も、Genome Analysis Toolkit(GATK)を用いて同様に実施した(McKenna et al.,2010)。Coverage Analysis Pluginソフトウェアv5.6.1(Thermo Fisher Scientific)を実施することにより、各アンプリコンに対するカバレッジ基準値を得た。特定されたバリアントは、バリアントが少なくとも3の分子カバレッジを有し、そのバリアントが3つの独立したテンプレート分子中で検出されたことを示す場合にのみ考慮した。この戦略は、特定の体細胞変異を0.01%までの分子アレル比率までコールすることを可能とする。最終的に、全ての候補変異は、Integrative Genomics Viewer(Thorvaldsdottir,Robinson,& Mesirov,2013)を用いて、マニュアルで再調査された。
結果:
血漿体積およびcfDNA量は、バリアントコールのためのLODを決定する。
最初に、我々は、健常者または癌患者の血漿からcfDNAの抽出のための堅牢なワークフローを確立することを試みた。表4は、解析したコホート特性をまとめたものである。標準的EDTA、または有核細胞の溶解を防止することにより細胞DNAによるcfDNAの汚染を防止できる保存剤溶液を含む市販の容器を用いて末梢全血の収集後、我々は、材料と方法セクションで詳細に記載の磁気ビーズベースのキットを用いてDNA抽出を行った。使用した血漿の量は、健常者で0.4〜2.0ml、および癌患者で1.5〜5.5mlの間で変動した(ダイアグラム1)。通常、癌患者コホートでは、2x10mlの全血が各患者で収集されたので、さらに多くの血漿が解析用に利用可能である。逆に、健常者からは1x10mlのみの全血が採取され、その一部がその他の解析に使用された。以前に観察されたように(最初は1977年に、(Leon,Shapiro,Sklaroff,& Yaros,1977))、血漿中の総cfDNA濃度は、健康な対象者に比べて癌患者において有意に高かった(p=0.0006、ダイアグラム1A)。血漿入力とcfDNA収量との間の有意な相関が、健康なドナー(r=0.244、p=0.0089、ダイアグラム1B)および癌患者(r=0.587、p<0.0001、ダイアグラム1C)から収集した試料中で観察された。次に、我々は、健康なおよび癌ドナー試料の処理中に生じた解析前の変数を比較した。最初に、我々は、cfDNA入力に対する濃度として表されたライブラリー出力の量を相関付けることを目的とした。NGSライブラリー濃度は、健康なおよび癌試料の両方で、cfDNA入力により有意に影響を受けた(それぞれ、r=0.348、p=0.0088およびr=0.699、p<0.0001、ダイアグラム2A〜B)。特に、健常者は通常、癌患者に比べて、より低いレベルのcfDNAを有するので(ダイアグラム1A)、限られたDNA入力をライブラリー作製に使用し、多くの場合、最小限の製造業者の推奨量(すなわち10ng)未満であった。固有のテンプレートDNAテンプレートDNA分子数の増加で、一定した量のマップされたリードが得られるため、cfDNAの量が多いことで直接的に分子カバレッジがより高くなった(ダイアグラム2E〜F)。逆に、使用した解析法で確実に検出できる最低の変異アレル頻度を示す検出限界(LOD)は、癌患者で有意に低かった(ダイアグラム2G)。我々は、健常者および癌患者の両方でLODは明確にcfDNA存在量により影響を受け(ダイアグラム2C〜D)、これらの2つの変数間で逆相関があることを示す。従って、我々のデータは、cfDNAの量は、塩基配列決定性能およびLODに直接影響することを示す。
癌患者のcfDNAプロファイリングおよび組織との一致
合成DNAプロファイリングを採用する場合、以前の研究で、固有の分子識別子(UMI)(Kinde et al.,2011;Kivioja et al.,2011;Schmitt et al.,2012)の使用による高い分析感度を実証した。ここで、我々は、対応する検出バリアントの観点から、同じ患者の原発腫瘍または転移由来の循環cfDNAと対応するFFPE組織との間の一致を調査することを試みた。この目的を達成するために、我々は、8人の乳癌患者から得たcfDNAをHeliGynプロトコル(Bioscience Instituteにより開発され、Oncomine cfDNA Breast v2 Assayに基づく)を用いて、および30人の非小細胞肺癌(NSCLC)患者から得たcfDNAをHeliSmokerプロトコル(Bioscience Instituteにより開発され、Oncomine cfDNA Lung Assayに基づく)を用いて解析し、好適なOncomine Assayを用いて、それを塩基配列決定FFPE組織により得られた結果と順次比較した(使用した遺伝子パネルに関する詳細は補足の表4に示す)。我々は、分子バーコード化ウルトラディープシークエンシング(Tag Sequencingバーコード)を使用して、我々のリキッドバイオプシー試料のプロファイリングを行った。cfDNAおよび組織に対し使用したパネルの遺伝子の内容は、完全には重なり合っていなかったので、我々は、cfDNAおよび組織パネルの両方に包含される臨床的に意味のある変異にのみ焦点を絞った(補足の表4)。我々のデータは、cfDNAと組織の生成変異プロファイル間で実質的レベルの一致(71%)を明確に示している(ダイアグラム3A)。このことは、cfDNA解析が組織ゲノムの特徴を確実に模倣するものであることを示唆している。一致の結果を示す26%の試料に対し、追加の臨床的に意味のある変異(ダイアグラム3D、例えば、EGFR中のT790M)をリキッドバイオプシーにより検出した(ダイアグラム3A、「プラス臨床的有用性」)。最も高頻度に報告されたバリアントは、乳癌に対するPIK3CA(考慮した全変異の33%)およびNSCLC供試体に対するEGFR(考慮した全変異の70%)のコード領域内で発生する変異であった(ダイアグラム3D)。検出された全ての変異は、一致行列にまとめられている(補足ダイアグラム2A〜B、それぞれ、乳癌および肺癌試料に関して)。組織と採血との間の時間間隔は、0〜70ヶ月間の範囲であり、腫瘍の進展が、組織とリキッドバイオプシー解析との間の不一致の根底にある理由であり得、腫瘍不均一性のみが理由ではないことを示唆している(補足ダイアグラム2C)。血漿のみで検出された変異の中で、T790M耐性変異は、最も高頻度であった(血漿で検出され、組織NGS解析で検出されなかった全変異の32%、ダイアグラム3D)。これらのデータは、特に、獲得療法耐性に関連する変異を検出するための、ならびに我々の試験戦略の有効性を見出すための、組織生検と並行したリキッドバイオプシー使用の潜在的臨床的価値を確証する。
健常者のcfDNAプロファイリング
最後に、我々は、血液採取の時点で(上記で定義のように)健康な個体のcfDNAをプロファイリングすることを試みた。我々の患者コホートは、対照スクリーニングマモグラフィー検査を受け、定期的に10年後まで追跡調査されたn=106人の女性から構成された(表4)。血液をマモグラフィースクリーニングと同時に収集した。この調査のために、我々は、健常者を追跡調査時に臨床状態に基づいて4つの群に分類した。群1(n=25)に属する個体は、追跡調査期間中に乳癌または他の悪性病変を何ら発症しなかった。群2では、個体(n=52)は、追跡調査期間中に、線維腺腫および過形成などの乳房の線維嚢胞性変化を経験した。群3(n=15)に割付けられた個体は、乳癌を発症し、群4(n=14)では、個体は、乳癌以外の固形腫瘍を発症した。プロファイリングの結果をダイアグラム4に要約する。最初の段落で報告したように、我々は、全ての血漿試料からのcfDNA抽出をうまく達成し、cfDNAの値は、1.7〜30.8ng/mlの範囲であった(ダイアグラム1A)。回収率およびcfDNAの品質(補足ダイアグラム1、物質および方法セクションに記載)に基づいて、我々は、さらなる分析のために55種の試料を選択し(群I=12/24;群II=23/52;群III=11/15;群IV=9/14;合計=55/106)、0.04〜0.34の範囲のLODを得た(ダイアグラム2C、補足ダイアグラム1D)。我々は、HeliGynワークフロー(補足の表4)を用いて単離cfDNAを配列決定し、我々は、HeliSafeプロトコル(Oncomine cfDNA汎癌Assay、補足の表4に基づいて。詳細は材料と方法に記載)を用いて、より広範囲の変異解析のために6種の試料を選択した。ほとんどの健常者(84%)のcfDNA中で遺伝子異常は見つからなかった(ダイアグラム4A)。しかも、解析した55症例の内の7症例で、我々は、臨床的に意味のある遺伝子変異、特に、40%を超えるアレル頻度の6種の既知生殖系列バリアントおよび4種の既知の癌ホットスポット変異を検出した(ダイアグラム4D、E)。重要なのは、血漿中のcfDNA濃度または達成された分子カバレッジを含む、解析前の変数に関して、4つの群間で有意差が認められなかったことである(ダイアグラム4B〜C)。結論として、我々の結果は、cfDNAを解析することにより、健常者で遺伝子異常が検出できるという証拠を提供する。
考察:
癌診断の分野では、最近、リキッドバイオプシーがかなりの注目を集めている。増え続けている多数の証拠は、費用対効果が大きく、高い感受性がある組織分子プロファイリングに対する補完的なツールとして、癌関連ホットスポット変異のctDNAベース解析を支持している(Forshew et al.,2012;Kimura et al.,2006;Lanman et al.,2015;Narayan et al.,2012;Newman et al.,2016)。現在、早期癌検出法(すなわち、癌関連症状が発生する前の方法)として、リキッドバイオプシーの実施にむけて意欲的な努力が行われており、既に、初期段階腫瘍における検出変異に対し適用されている(Abbosh et al.,2017;Cohen et al.,2017;2018;Phallen et al.,2017)。早期診断は、可能性としては、より良好な疾患転帰に匹敵するが、しかし、リキッドバイオプシーの適用の全潜在能力および限界をより良く理解するには、大規模検証試験が必要である(Cree et al.,2017)。無症候性個体の前癌病変のスクリーニングは、いくつかの難題により妨げられる。すなわち、血漿中に存在する変異体ctDNA分子の数は、腫瘍量にほぼ比例し(Bettegowda et al.,2014)、限局的な癌の患者および健常者における検出を特に問題があるものにする。別の課題は、腫瘍発生の分子的機序に関する知識の欠如によるものである。いくつかの研究は、年齢および組織増殖速度(Yizhak et al.,2018)に関連する健康な組織中の体細胞変異および関連クローン増殖の検出(Aghili,Foo,DeGregori,& De,2014;Beane et al.,2017;Krimmel et al.,2016;Martincorena et al.,2015)を報告している。これらの変異のいくつかは、癌発症のリスクを高めることが示された(Genovese et al.,2014;Jaiswal et al.,2014)。前癌ゲノムアトラスは、初期腫瘍段階形成における我々の前癌病変の役割の理解を大きく改善し、早期検出スクリーニングの特異性を改善するであろう。リキッドバイオプシーを低侵襲検出法として使用して、健康なボランティアの長期にわたる調査により、正常組織から癌発症への進行のイベントを特徴付けることができる。現在のリキッドバイオプシーは、主に、進行癌患者で使用されているが、しかし、健常者および初期段階腫瘍患者における循環セルフリーゲノムアトラス(CCGA)試験(GRAIL)およびCancerSEEKとしての初期スクリーニング方法の開発は、健常者および初期段階腫瘍患者のcfDNA試験のための道を開いている。我々の研究は、健常者のスクリーニングのためにリキッドバイオプシーの使用の技術的可能性を調査することにより、この分野への寄与すること目的としたものである。我々のコホートは、採血時に臨床的に健康な114人の個体、ならびに乳癌または胃癌と診断された63人の患者から構成される。予想通り、cfDNA濃度は、癌患者に比べて健常者で有意に低く(ダイアグラム1A)、健常者で血漿中に1〜16ng・ml −1 の範囲のcfDNA濃度であり(30ng・ml −1 の濃度の1つの試料を除く)、以前に発表された結果(Mouliere,Messaoudi,Pang,Dritschilo,& Thierry,2014;Mouliere et al.,2011)と一致した。低入力物質に関連する課題および低頻度変異の検出を可能とするという課題を克服するために、我々は、分子バーコード付与およびウルトラディープシークエンシングを実施した(Kinde et al.,2011;Kivioja et al.,2011;Newman et al.,2016;Schmitt et al.,2012、Salk,Schmitt,& Loeb,2018で概説されている)。我々は、組織および血漿試料のマッチングさせたゲノム解析により我々の方法の信頼性および精度を確証した(乳癌および肺癌患者の我々のコホートに対し、71%の一致、ダイアグラム3A)。予想通り、組織採取と血液採取の発生する時間間隔により腫瘍組織の不均一性がさらに増大するのと同じ理由で、我々は、完全な一致を観察するに至らなかった(補足ダイアグラム3C)。これらの結果は、65%と98%の感度を報告している以前の試験と一致する(Oxnard et al.,2016;Sacher et al.,2016;Schiavon et al.,2015;Thierry et al.,2014、Wan et al.,2017で概説されている)。我々は、cfDNAの単離に成功し、僅か0.9mLの血漿から機能的NGSライブラリーを作製し得たが、しかし、我々は、癌患者のcfDNAのより高い利用可能性により、癌患者と比べて、健康なドナーでより高いLOD(ダイアグラム2G)を観察した。健常者は、癌患者に比べてより低いレベルのcfDNAを示す(ダイアグラム1A)ので、我々は、健康なドナー由来のcfDNA解析に対しては、より多い量の血漿を使用することを推奨した。重要なのは、これが、低アレル頻度のバリアントの検出を可能にすることであり、これは初期ゲノム不安定性イベントの存在を発見するために特に重要であり得る(我々が特定した4種の癌ホットスポット変異により示されるように、ダイアグラム4D)。我々の解析により、我々は、リキッドバイオプシーの時点では臨床的に健康であると見なされた、評価可能cfDNAを有する55人の対象者の内の7人で遺伝子異常を検出した。これらの変異の内で、我々は、6種の生殖系列バリアントおよび4種の癌ホットスポット変異を見つけた。生殖系列バリアントの観察は、我々のcfDNA解析の副産物である。興味深いことに、我々の調査で検出された多くの生殖系列バリアントは、TP53コード領域中の変異である。これらの患者は、遺伝カウンセリングを受けるように推奨され得、経験のある認定遺伝学者の判断の際には、初期予防プログラム受けるように推奨され得る。検出された4種の癌ホットスポット変異は、頻発する遺伝子異常であり、臨床的には、病原性またはおそらく病原性として分類される。我々は、9年後までに、および0.08〜0.52%の範囲のアレイ頻度で、良性の乳疾患(グループII)または乳癌(グループIII)と診断された個体で癌ホットスポットバリアントを検出した(ダイアグラム4D)。健康なドナーのcfDNA中のこれらの変異の観察は、PIK3CA p.H1047Rバリアントに対し示されたように(Miller,2012)、ゲノム不安定性の間接的証拠と見なされ得る。しかし、病原性TP53変異が、腫瘍の反乱との相関なく、健康な対照のcfDNA中で検出できることも観察された(Fernandez−Cuesta et al.,2016)。従って、これらの知見の解釈は当然注意が必要であり、何らかの結論を出す前に、注意深く考慮する必要がある
長期の追跡調査時間および癌を発症した個体について利用可能な組織標本を用いた追加の大規模な前向き研究が、早期癌検出のためのツールとしてのリキッドバイオプシーの特異性および感度に取り組むために必要とされるであろう。結論として、この研究で、我々は、ゲノム異常を試験するために、我々に、健常者由来のcfDNAのデータを照会することを可能とする、迅速で、0.04%もの低いアレル頻度の検出限界を備えた、信頼性の高いワークフローを確立した。健常者の血液由来のcfDNAの照会は、ゲノム不安定性の徴候を検出し、腫瘍形成の初期イベントをより良く理解するための、期待が持てるツールであることを証明し得る。
ダイアグラム1.
健康なドナーまたは癌患者由来の血漿試料の総cfDNA収量。A.癌患者と比較した健常者の血漿中のcfDNA濃度(マン・ホイットニー p=0.0006)。中央値、四分位間範囲および最小/最大がボックスプロットで示されている。B.健康なドナーの血漿体積と総cfDNA出力との相関(n=114、スピアマンr=0.244、p=0.0089)。C.癌患者の血漿体積と総cfDNA出力との相関(n=63、スピアマンr=0.587、p=0.0001)。
ダイアグラム2.
健康なおよび癌ドナー試料由来の解析前変数の比較。A〜B.健常者(n=55、スピアマンr=0.348、p=0.0088)および癌患者(n=40、スピアマンr=0.699、p<0.0001)のライブラリー濃度とcfDNA入力との相関。C〜D.健康なドナー(n=55、スピアマン相関r=−0.551、p<0.0001)および癌ドナー(n=40、スピアマン相関r=0.790、p<0.0001)のLODとcfDNA入力との相関。E.健康なおよび癌ドナー由来の試料のマップされたリード(F)(マン・ホイットニー p=0.1422)。F〜G.健康なおよび癌ドナーの分子量カバレッジ中央値(マン・ホイットニー p<0.0001)およびLOD(マン・ホイットニー p<0.0001)。中央値、四分位間範囲および最小/最大がボックスプロットで示されている。
ダイアグラム3.
癌患者の液体および組織生検材料の一致解析。A.マッチングさせた組織およびリキッドバイオプシーの全体一致のパーセンテージの図。「+臨床的有用性」は、組織生検ではなく、リキッドバイオプシー(次のセクションの「血漿のみ」を参照)のNGS解析により検出された臨床的に意味のある追加の変異を意味する。29%の試料で一致が観察されなかったが、一方、71%の一致試料の内の26%は、血漿のみにより検出された臨床的に意味のある変異を有していた(+臨床的有用性)。B〜C.乳癌(B)および肺癌(C)試料に対し、観察されたバリアントの数。組織および血漿NGSパネルの両方に含まれる臨床的に意味のあるバリアントのみを解析用として考慮した。D.血漿のNGS解析により検出され、組織中には検出されなかった異常の分布。リキッドバイオプシーのNGS解析により検出され、組織生検では検出されなかった臨床的に意味のある変異の中で、最も高頻度(32%)なのは、EGFR中のT790Mである。
ダイアグラム4.
健常者のcfDNA中で検出された遺伝子異常。A.アッセイした試料の84%で遺伝子異常が検出されなかったが、しかし、我々は、7種の異なる試料中で、6種の生殖系列バリアントおよび4種のホットスポットバリアントを検出した。B〜C.血漿中のcfDNA濃度(B)としてのおよび4つの群の健康なドナーの分子カバレッジ中央値(C)としての解析前変数(それぞれ、クラスカルワリス検定p=0.9223およびp=0.7721)。群I:追跡調査期間での健常者;群II:追跡調査期間での良性の乳腺疾患患者;群III:跡調査期間での乳癌患者;群IV:跡調査期間での乳癌以外の固形腫瘍患者。中央値、四分位間範囲および最小/最大がボックスプロットで示されている。D.4つの群に属する健常者で検出されたバリアントを示す変異行列。各行は、患者を表す。黄色正方形はホットスポットバリアントを表し、灰色正方形は生殖系列バリアントを表す。E.健常者で検出されたホットスポットをまとめた表である。
補足ダイアグラム1.
健常者および癌患者のcfDNAのサイズ分布。A.健康なドナー(黄色、赤色、青色、緑色の線)と比較した癌患者(紫色の線)のcfDNAのサイズ分布。B.191および366bpの位置に明瞭な断片サイズピークを有する健康なドナー(cfDNA健康1、Aの赤色の線)のcfDNAプロファイル。C.cfDNAの予測された範囲に断片サイズピークを有さない健康なドナー(cfDNA健康4、Aの緑色の線)のcfDNAプロファイル。140〜200bpの明確な断片サイズピークを有するcfDNAのみの試料をNGS解析用に選択した。
補足ダイアグラム2.
乳癌および肺癌患者由来のマッチングさせた血漿および組織試料の一致解析。A〜B.乳癌(A)および肺癌(B)試料の一致行列で、各行は患者を表す。青色正方形は血漿のみで検出されたバリアントを表し、緑色の正方形は組織のみで検出されたバリアントを表し、黄色の正方形は血漿および組織の両方で検出されたバリアントを表す。C.採血と組織収集との間の時間間隔(n=29、クラスカルワリス検定p=0.4325;38試料の内の9試料で数値の欠損、一致群に対する中央値=3.8ヶ月、プラス臨床的有用性の群に対する中央値=12ヶ月、一致なし群に対する中央値=9ヶ月)。中央値および最小/最大は、プロットで表される。
補足の表1:cfDNAおよび組織解析のために使用したOncomine NGSパネルの遺伝子の内容。

Claims (19)

  1. 健康な対象者の固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および識別する方法であって、遺伝子安定性または不安定性状態の評価のための評価サイクルおよび少なくともこのような評価の1つの繰り返しサイクルを含み、前記繰り返しサイクルが前記対象者に対し定期的に実施され、各サイクルが、
    −前記対象者の生体物質の試料を採取し、前記生体物質からDNAを単離し、前記単離DNAを増幅および塩基配列決定するステップ、
    −前期考慮している試料の所定の遺伝子セット中で選択された変異の存在を検証するステップであって、前記遺伝子セットおよび前記変異セットが固形腫瘍の発症に関連しているステップ、
    −前記所定の遺伝子セットが、1つまたは複数の固形腫瘍に関連する遺伝子もしくはホットスポットのパネルのサブセット、または固形腫瘍に関連する遺伝子の全パネルを含むステップ、
    −各遺伝子および各評価サイクルに対して検出された変異の頻度を検証するステップであって、前記変異が、上述の選択変異から選択されるステップ、
    −各遺伝子または遺伝子群およびそれらの頻度に対し検出された変異を記録するステップ、
    −各繰り返しサイクルで、検出された変異の頻度に基づいておよび変異の頻度の増加を基準にして、前記対象者の全体の総遺伝子不安定性指数(I)または単一の遺伝子に対する遺伝子不安定性指数(I)を決定または更新するステップ、
    −各繰り返しサイクルで、前記遺伝子不安定性指数(I、I)が、各単一遺伝子または遺伝子群に対し決定された閾値(ITS、IGS)を超えるのを基準にして、前記対象者の、1つまたは複数の固形腫瘍または固形腫瘍群の発症の前駆的遺伝子状態への移行を評価するステップ、
    を含むことを特徴とする、方法。
  2. 前記遺伝子不安定性指数(I、T)が同様に、1つまたは複数の以前の繰り返しサイクルに対する変異の頻度の増加を基準にして決定される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記総遺伝子不安定性指数(I)が、各遺伝子に対する観察された変異の増加に応答する値(ΔF)と監視された総遺伝子群を考慮して評価される遺伝子の数との間の関係の合計として定義される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記単一遺伝子不安定性指数(I)が、各ホットスポットに対する観察された変異の増加に応答する値(ΔF)と監視された総ホットスポット群を考慮して評価されるホットスポットの数との間の関係の合計として定義される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記生物試料が、リキッドバイオプシーからなり、前記所定の遺伝子セット中の変異の存在の前記検証段階が、前記リキッドバイオプシーから単離されたDNA試料に対して実施され、その後、増殖および配列決定される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記リキッドバイオプシーが末梢血である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記リキッドバイオプシーが尿または髄液である、請求項5に記載の方法。
  8. 一部のcfDNAが解析されるDNA試料中で探索され、変異の存在が前記cfDNA画分中で検証される、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. リキッドバイオプシーから単離されたctDNAが同様に、解析されるDNA試料中で探索される、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 循環ctDNAの特定後、アドレス指定情報が早期検出システム(Early Detection)に送られる、請求項9に記載の方法。
  11. 解析される前記DNA試料中のctDNAの特定後に、前記リキッドバイオプシー中のCTC(「循環腫瘍細胞」)の存在が探索される、請求項9に記載の方法。
  12. 前記所定の遺伝子セットおよび選択される変異が、対象者の既往歴を考慮して決定される、請求項1に記載の方法。
  13. 前記所定の遺伝子セットおよび選択される変異が、特定のタイプの腫瘍に対するそれらの関連性を考慮して決定される、請求項1に記載の方法。
  14. 前記繰り返し期間が、現在のサイクルで計算された前記不安定性指数(I、I)の値および1回または複数回の前のサイクルで計算された同指数の値に応じて各繰り返しサイクル後に再計算される、請求項1に記載の方法。
  15. 1回または複数回の前のサイクルで計算された不安定性指数(I、I)の値に対して、同指数(I、I)の前記計算値の増加後に、前記監視遺伝子または遺伝子パネルに関連してより高い解析感度が、各繰り返しサイクルで設定される、請求項1に記載の方法。
  16. 前記評価および繰り返しサイクルのそれぞれにおいて、生殖細胞DNAも同様に単離および配列決定され、cfDNA中にのみ存在し、前記生殖細胞DNA中には存在しない変異がその後の不安定性指数の計算に対し考慮される、請求項1に記載の方法。
  17. 前記生殖細胞DNAが、前述のcfDNAの塩基配列決定と同じ読み深さで配列決定される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記生殖細胞DNAが、前述のcfDNAが採取されたのと同じリキッドバイオプシー由来である、請求項16に記載の方法。
  19. 健康な対象者の固形腫瘍の発症の前駆的遺伝子状態を探索および特定するためのシステムであって、遺伝子安定性または不安定性状態の評価サイクル、および請求項1に記載に従い定義された少なくとも1つの前記評価の繰り返しサイクルを実施することを目的とするコンピュータープログラムの命令セットを含む、システム。
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