JP2020506524A - フーリエ変換質量分析計 - Google Patents

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Abstract

一側面では、質量分析器が開示され、該質量分析器は、四重極を備え、該四重極は、イオンを受容するための入力端部と、出力端部とを有し、該出力端部を通してイオンが四重極から出射し得、該四重極は、複数のロッドを有し、該イオンが四重極を通して伝搬するにつれてイオンの半径方向閉じ込めを引き起こすための四重極場を生成し、さらに、該出力端部に近接してフリンジング場を生成するために、該複数のロッドのうちの少なくともいくつかにRF電圧が印加され得る。質量分析器はさらに、四重極を通過するイオンの少なくとも一部の半径方向発振をその永年周波数において励起するように、該ロッドのうちの少なくとも1つに電圧パルスを印加するための、少なくとも1つの電圧源を含み、半径方向に励起されるイオンは、それらの半径方向発振が軸方向発振に変換されるように、それらが四重極から出射するにつれてフリンジング場と相互作用する。

Description

(関連出願)
本願は、2017年2月1日に出願され“Fourier Transform Mass Spectrometer”と題された米国仮出願第62/453,167号に対する優先権を主張するものであり、これは、全体が参照により本明細書中に援用される。
本発明は、概して、質量分析器に関し、特に、種々の異なる質量分析計において採用され得るフーリエ変換質量分析器に関する。
質量分析法(MS)は、定量的および定性的用途の両方で試験物質の元素組成を決定するための分析技法である。例えば、MSは、未知の化合物を同定し、分子中の元素の同位体組成を決定し、その断片化を観察することによって特定の化合物の構造を決定し、およびサンプル中の特定の化合物の量を定量化するために使用されることができる。ある場合では、低分解能質量スペクトルが、上流のクロマトグラフ分離に続いて着目分析物を同定するために十分であり得る。
クロマトグラフ分離と組み合わせて使用され得る、好適な感度を伴う改良された走査型質量分析計の必要性が、依然としてある。
一側面では、質量分析器が開示され、該質量分析器は、四重極を備え、該四重極は、イオンを受容するための入力端部と、出力端部とを有し、該出力端部を通してイオンが四重極から出射し得、該四重極は、複数のロッドを有し、該イオンが四重極を通して伝搬するにつれてイオンの半径方向閉じ込めを引き起こすための四重極場を生成し、さらに、該出力端部に近接してフリンジング場を生成するために、該複数のロッドのうちの少なくともいくつかにRF電圧が印加され得る。質量分析器はさらに、四重極を通過するイオンの少なくとも一部の半径方向発振をその永年周波数において励起するように該ロッドのうちの少なくとも1つに電圧パルスを印加するための、少なくとも1つの電圧源を含み、半径方向に励起されるイオンの少なくとも一部は、それらの半径方向発振が軸方向発振に変換されるように、それらが四重極から出射するにつれてフリンジング場と相互作用する。
質量分析器はさらに、四重極から出射する該軸方向に発振するイオンを検出するために、四重極の出力端部の下流に配置される、検出器を含むことができる。検出器は、軸方向に発振するイオンの少なくとも一部の検出に応答して、時変信号を生成する。分析器は、検出器から時変信号を受信することができ、フーリエ変換を時変信号に適用し、周波数領域信号を生成することができる。分析器はさらに、周波数領域信号に作用し、検出されたイオンの質量スペクトルを生成することができる。
電圧パルスの振幅および持続時間は、例えば、特定の用途に基づいて選択されることができる。実施例として、電圧パルスは、約10ナノ秒(ns)〜約1ミリ秒の範囲内、例えば、約1マイクロ秒〜約100マイクロ秒の範囲内、または約5マイクロ秒〜約50マイクロ秒の範囲内、または約10マイクロ秒〜約30マイクロ秒の範囲内の持続時間を有することができる。さらに、電圧パルスは、例えば、約10ボルト〜約40ボルトの範囲内の振幅を有することができる。例えば、電圧パルスの振幅は、約20ボルト〜30ボルトの範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、電圧パルスは、双極電圧として、すなわち、1つのロッドへの正の電圧の印加および別のもの(典型的には、対角線的に対向するロッド)への負の電圧の印加を介して印加される。他の実施形態では、電圧パルスは、単一のロッドに印加されてもよい。
いくつかの実施形態では、四重極は、約1×10−6トル〜約1.5×10−3トルの範囲内の圧力に維持される。例えば、四重極は、約8×10−6トル〜約1×10−4トルの範囲内の圧力に維持されることができる。いくつかの実施形態では、四重極は、約1×10−6トル〜約9×10−3トルの範囲内の圧力に維持される。
四重極は、4つのロッド(本明細書では四重極ロッドと称される)を含むことができ、該4つのロッドは、該4つのロッドの間の経路を、該経路を通したイオンの通過のために提供するように配列される。四重極ロッドのうちの1つ以上のものへの1つ以上のRF電圧の印加は、四重極場を生成することができ、これは、イオンが四重極を通過するにつれてイオンの半径方向閉じ込めを促進することができる。いくつかの実施形態では、四重極は、複数の補助電極、例えば、四重極ロッドの間に散在する4つの補助電極を含む。いくつかのそのような実施形態では、電圧パルスは、補助電極のうちの少なくとも1つに印加される。例えば、双極電圧パルスが、2つの対角線的に対向する補助電極に印加されることができる。
いくつかの実施形態では、質量分析器は、入力レンズおよび/または出力レンズを含むことができる。分析器は、入力レンズおよび/または出力レンズのうちのいずれかにDC電圧を印加するためのDC電圧源を含むことができる。入力レンズは、四重極の中へのイオンの入射を促進するために、四重極の入力端部に近接して位置付けられることができ、出射レンズは、四重極からのイオンの出射を促進するために、四重極の出力端部に近接して位置付けられることができる。いくつかの実施形態では、四重極の出力端部に近接するフリンジング場を調節するために、誘引性DC電圧、例えば、四重極DCオフセットに対して誘引性の約−5〜−50Vの範囲内のDC電圧が、出射レンズに印加されることができる。いくつかの実施形態では、分析器は、入力レンズおよび/または出力レンズのうちのいずれかにRF電圧を印加するための、RF電圧源を備えることができる。いくつかの実施形態では、四重極の出力端部に近接するフリンジング場を調節するために、RF電圧、例えば、50kHz〜2MHzの範囲内の周波数を伴う約10Vp−p〜300Vp−pの範囲内のRF電圧が、出射レンズに印加されることができる。
本教示による質量分析器は、種々の異なる質量分析計に組み込まれることができる。例えば、そのような質量分析計は、本教示による質量分析器と、イオンを生成するためのイオン源と、例えば、質量分析器の上流に配置されるイオンを集束、誘導、選択、および/または解離するための要素とを含むことができる。実施例として、イオン集束四重極が、イオン源と本教示による質量分析器との間に配置されることができる。いくつかの実施形態では、衝突セルが、イオン源と四重極との間に配置されることができる。衝突セルは、イオン源からイオンを受容し、受容されたイオンの少なくとも一部の断片化を引き起こし、断片化されたイオンを生成することができ、断片化されたイオンの少なくとも一部が、四重極によって受容される。
関連する側面では、複数のロッドを備える四重極を通して複数のイオンを通過させることであって、該四重極は、イオンを受容するための入力端部と、出力端部とを有し、該出力端部を通してイオンが四重極から出射する、ことと、それらが四重極を通過するにつれてイオンの半径方向閉じ込めのための電磁場を生成するように、ロッドのうちの少なくとも1つに少なくとも1つのRF電圧を印加することとを含む、質量分析を実施する方法が、開示される。本方法はさらに、四重極を通過するイオンの少なくとも一部の半径方向発振をその永年周波数において励起するように、該複数のロッドの少なくとも1つの対を横断して電圧パルスを印加することであって、該出力端部に近接するフリンジング場は、励起されるイオンが四重極ロッドセットから出射するにつれて、該励起されるイオンの少なくとも一部の半径方向発振を軸方向発振に変換することができる、ことを含むことができる。
本方法はさらに、時変信号を生成するために、四重極ロッドセットから出射する軸方向に発振するイオンの少なくとも一部を検出することを含むことができる。時変信号のフーリエ変換が、周波数領域信号を生成するように取得されることができる。周波数領域信号は、次いで、検出されたイオンと関連付けられる質量スペクトルを生成するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、四重極に入射するイオンの運動エネルギーが、所望の分解能に対応する時変信号の時間的長さを取得するように選択され、分解能は、時変信号の時間的長さが増加するにつれて増加する。
本教示の種々の側面のさらなる理解が、下記に簡潔に説明される、関連付けられる図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって取得されることができる。
図1Aは、本教示のある実施形態による、質量分析器を図式的に描写する。 図1Bは、図1Aに描写される質量分析器の四重極ロッドの概略端面図である。 図2は、本教示による、質量分析器のいくつかの実施形態において使用するために好適な方形電圧パルスを図式的に描写する。 図3は、本教示による、質量分析器において使用するために好適な分析モジュールの一例示的実装を図式的に描写する。 図4Aは、分析器が4つの四重極ロッドと、4つの補助電極とを含む、ある実施形態による、質量分析器の側面概略図である。 図4Bは、図4Aに描写される質量分析器の端面図である。 図5は、本教示による質量分析器が組み込まれる、質量分析計の概略図である。 図6は、例証的データを取得するために使用される装置の概略図である。 図7は、本教示による、プロトタイプ質量分析器を使用して取得される時変イオン信号を示す。 図8は、図7に示される発振イオン信号のフーリエ変換である。 図9A−9Fは、質量分析器に入射する種々の異なるイオンエネルギーにおいて取得される一連の発振信号を提示する。 図10は、本教示のある実施形態による、質量分析器を使用してレセルピンm/z 609イオンの断片化によって生成される複数の生成イオンに対応する多くの周波数成分を伴う発振イオン信号を示す。 図11は、図10に示される発振イオン信号のフーリエ変換である。 図12Aおよび12Bは、1.4×10−3トルのチャンバ圧力における2つの衝突エネルギーにおける質量選択されたm/z 609レセルピンイオンの周波数スペクトルを示す。
本教示は、四重極ロットセットと、随意に、複数の補助電極とを含み得る、質量分析器に関する。1つ以上の四重極ロッドまたは補助電極のうちの1つ以上のものへの電圧パルスの印加は、四重極を通過するイオンの少なくとも一部の半径方向励起を引き起こすことができる。半径方向に励起されるイオンと四重極の出力端部の近傍のフリンジング場との相互作用は、励起されるイオンの少なくとも一部の半径方向発振を軸方向発振に変換することができる。軸方向に発振するイオンは、イオン信号を生成するために検出器によって検出されることができる。検出されたイオンの質量スペクトルが、イオン信号のフーリエ変換に基づいて計算されることができる。イオンは、最初に質量分析器内に閉じ込められることなく質量分析器を通過する。
種々の用語が、当技術分野におけるそれらの一般的意味と一貫して本明細書で使用される。用語「半径方向」は、四重極ロッドセットの軸方向寸法に垂直な(例えば、図1Aのz方向に沿った)平面内の方向を指すように本明細書で使用される。用語「半径方向励起」および「半径方向発振」は、それぞれ、半径方向における励起および発振を指す。数値を修飾するために本明細書で使用されるような用語「約」は、数値についての最大5パーセントの変動を表すことを意図している。
図1Aおよび1Bは、イオンを受容するために構成される入力端部(A)からそれを通してイオンが四重極ロッドセットから出射し得る出力端部(B)まで延在する四重極ロッドセット1002を含む、本教示のある実施形態による、質量分析器1000を図式的に描写する。本実施形態では、四重極ロッドセットは、それを通して四重極ロッドセットによって受容されたイオンが入力端部(A)から出力端部(B)まで伝搬し得る、通路をその間に提供するように相互に対して配列される、4つのロッド1004a、1004b、1004c、および1004d(本明細書では、集合的に四重極ロッド1004と称される)を含む。本実施形態では、四重極ロッド1004は、円形断面を有する一方、他の実施形態では、それらは、双曲等の異なる断面形状を有することができる。
質量分析器1000は、イオン源(本図に図示せず)によって生成されるイオン、例えば、イオンの連続流を受容することができる。種々の異なるタイプのイオン源が、採用されることができる。いくつかの好適な実施例は、限定ではないが、とりわけ、エレクトロスプレーイオン化デバイス、ネブライザ支援エレクトロスプレーデバイス、化学イオン化デバイス、ネブライザ支援霧化デバイス、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)イオン源、光イオン化デバイス、レーザイオン化デバイス、熱スプレーイオン化デバイス、誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、ソニックスプレーイオン化デバイス、グロー放電イオン源、および電子衝撃イオン源、DESIを含む。
四重極ロッド1004への無線周波数(RF)電圧の印加は、それらが四重極を通過するにつれてイオンの半径方向閉じ込めのための四重極場を提供することができる。RF電圧は、四重極ロッドのうちの1つ以上のものに並列して印加される選択可能な量の分解DC電圧の有無を問わずにロッドに印加されることができる。
いくつかの実施形態では、四重極ロッド1004に印加されるRF電圧は、約0.8MHz〜約3MHzの範囲内の周波数および約100ボルト〜約1,500ボルトの範囲内の振幅を有することができるが、他の周波数および振幅もまた、採用されることができる。本実施形態では、コントローラ1010の制御下で動作するRF電圧源1008が、要求されるRF電圧を四重極ロッド1004に提供する。
いくつかの実施形態では、四重極ロッドセット内の圧力は、約1×10−6トル〜約1.5×10−3トルの範囲内に、例えば、約8×10−6トル〜約5×10−4トルの範囲内に維持されることができる。いくつかの実施形態では、四重極は、約1×10−6トル〜約9×10−3トルの範囲内の圧力に維持される。
RF電圧の印加は、四重極ロッドセットの入力(入射)端部および出射端部の近傍のフリンジング場によって特徴付けられる、四重極内の四重極場の生成をもたらすことができる。下記により詳細に議論されるように、そのようなフリンジング場は、イオンの半径方向運動および軸方向運動を結合することができる。実施例として、四重極ロッドセットの出力端部(B)に近接する領域内の四重極電位の減少は、(z方向に沿った)四重極の縦方向に沿った成分を呈し得る、フリンジング場の生成をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、本電場の振幅は、四重極ロッドセットの中心から増加する半径方向距離の関数として増加することができる。
例証として、任意の特定の理論に限定されるわけではないが、四重極ロッドへのRF電圧の印加は、以下の関係において定義されるような2次元四重極電位の生成をもたらすことができる。
式中、
は、接地に対して測定された電位を表し、xおよびyは、イオンの伝搬の方向に垂直な(すなわち、z方向に垂直な)平面を定義するデカルト座標を表す。上記の電位によって生成される電磁場は、電位の空間勾配を取得することによって計算されることができる。
再び、任意の特定の理論に限定されるわけではないが、一次近似として、四重極の入力端部および出力端部の近傍のフリンジング場と関連付けられる電位は、下記に示されるように、関数f(z)による四重極の入力端部および出力端部の近傍の2次元四重極電位の減少によって特徴付けられてもよい。
式中、
は、フリンジング場と関連付けられる電位を表し、
は、上記に議論される2次元四重極電位を表す。2次元四重極場の減少に起因するフリンジング電場の軸方向成分(Ez,quad)は、以下のように説明されることができる。
下記により詳細に議論されるように、そのようなフリンジング場は、四重極ロッドのうちの1つ以上のもの(および/または1つ以上の補助電極)への電圧パルスの印加を介して励起されるイオンの半径方向発振を軸方向発振に変換することを可能にし、軸方向に発振するイオンは、検出器によって検出される。
継続して図1Aおよび1Bを参照すると、本実施形態では、質量分析器1000はさらに、四重極ロッドセットの入力端部に近接して配置される、入力レンズ1012と、四重極ロッドセットの出力端部に近接して配置される、出力レンズ1014とを含む。コントローラ1010の制御下で動作するDC電圧源1016は、例えば、四重極のDCオフセットに対して誘引性の約1〜50Vの範囲内の2つのDC電圧を入力レンズ1012および出力レンズ1014に印加することができる。いくつかの実施形態では、入力レンズ1012に印加されるDC電圧は、質量分析器の中へのイオンの入射を促進する、電場の生成を引き起こす。さらに、出力レンズ1014へのDC電圧の印加は、四重極ロッドセットからのイオンの出射を促進することができる。
レンズ1012および1014は、種々の異なる方法で実装されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、レンズ1012および1014は、それを通してイオンが通過する開口部を有する板の形態であり得る。他の実施形態では、レンズ1012および1014のうちの少なくとも一方(または両方)は、メッシュとして実装されることができる。また、四重極の入射端部および出射端部にRF専用ブルベーカレンズが存在することができる。
いくつかの実施形態では、DC電圧源は、所望のm/zウィンドウ内のイオンを選択するように、四重極ロッドのうちの1つ以上のものに分解DC電圧を印加することができる。いくつかの実施形態では、そのような分解DC電圧は、約10〜約150Vの範囲内であり得る。
継続して図1Aおよび1Bを参照すると、分析器1000はさらに、四重極ロッド1004のうちの少なくとも1つにパルス化電圧を印加するための、パルス化電圧源1018を含む。本実施形態では、パルス化電圧源1018は、双極パルス化電圧をロッド1004aおよび1004bに印加するが、他の実施形態では、双極パルス化電圧は、ロッド1004cおよび1004dに印加されることができる。
いくつかの実施形態では、印加されるパルス化電圧の振幅は、例えば、約10ボルト〜約40ボルトの範囲内または約20ボルト〜約30ボルトの範囲内であり得るが、他の振幅もまた、使用されることができる。さらに、パルス化電圧の持続時間(パルス幅)は、例えば、約10ナノ秒(ns)〜約1ミリ秒の範囲内、例えば、約1マイクロ秒〜約100マイクロ秒の範囲内、または約5マイクロ秒〜約50マイクロ秒の範囲内、または約10マイクロ秒〜約40マイクロ秒の範囲内であり得るが、他のパルス持続時間もまた、使用されることができる。一般に、種々のパルス振幅および持続時間が、採用されることができる。多くの実施形態では、パルス幅が長くなるほど、パルス振幅は小さくなる。四重極を通過するイオンは、通常、単一の励起パルスにのみ暴露される。いったん励起されるイオンの「スラグ」が四重極を通過すると、付加的励起パルスが、誘起される。これは、通常、約500〜1,000データ取得周期が毎秒収集されるように、1〜2ミリ秒毎に起こる。
電圧パルスと関連付けられる波形は、高速広帯域励起信号を提供することを目標として、種々の異なる形状を有することができる。実施例として、図2は、方形時間形状を有する例示的電圧パルスを図式的に示す。いくつかの実施形態では、電圧パルスの立ち上がり時間、すなわち、電圧パルスがゼロ電圧から増加し、その最大値に到達するためにかかる持続時間は、例えば、約1〜100ナノ秒の範囲内であり得る。他の実施形態では、電圧パルスは、異なる時間形状を有することができる。
任意の特定の理論に限定されるわけではないが、例えば、2つの対角線的に対向する四重極ロッドを横断する電圧パルスの印加は、四重極内に過渡電場を生成する。本過渡電場への四重極内のイオンの暴露は、それらのイオンの少なくとも一部をそれらの永年周波数において半径方向に励起することができる。そのような励起は、異なる質量/電荷(m/z)比を有するイオンを包含することができる。言い換えると、短い時間的持続時間を有する励起電圧パルスの使用は、四重極内のイオンの広帯域半径方向励起を提供することができる。
半径方向に励起されるイオンが、出力端部(B)の近傍の四重極ロッドセットの端部部分に到達するにつれて、それらは、出口フリンジング場と相互作用するであろう。再び、任意の特定の理論に限定されるわけではないが、そのような相互作用は、励起されるイオンの少なくとも一部の半径方向発振を軸方向発振に変換することができる。
再び図1Aおよび1Bを参照すると、軸方向に発振するイオンは、四重極ロッドセットおよび出射レンズ1014を離れ、コントローラ1010の制御下で動作する、検出器1020に到達する。検出器1020は、軸方向に発振するイオンの検出に応答して、時変イオン信号を生成する。種々の検出器が、採用されることができる。好適な検出器のいくつかの実施例は、限定ではないが、Photonis Channeltron Model 4822CおよびETP電子増倍管Model AF610を含む。
検出器1020と通信する分析器1022(本明細書では分析モジュールとも称される)が、検出された時変信号を受信し、その信号に作用し、検出されたイオンと関連付けられる質量スペクトルを生成することができる。より具体的には、本実施形態では、分析器1022は、周波数領域信号を生成するために、検出された時変信号のフーリエ変換を取得することができる。分析器は、次いで、マチウaおよびqパラメータとm/zとの間の関係を使用して、周波数領域信号を質量スペクトルに変換することができる。
式中、zは、イオン上の電荷であり、Uは、ロッド上のDC電圧であり、Vは、RF電圧振幅であり、Ωは、RFの角周波数であり、rは、四重極の特性寸法である。動径座標rは、以下によって与えられる。
加えて、q<約0.4であるとき、パラメータβは、以下によって与えられる。
基本永年周波数は、以下によって与えられる。
a=0およびq<約0.4の条件下で、永年周波数は、下記の近似関係によってm/zに関連する。
βの厳密な値は、aおよびqマチウパラメータに関する連続分数式である。本連続分数式は、参考文献J. Mass Spectrom. Vol 32, 351−369(1997)(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に見出されることができる。m/zと永年周波数との間の関係は、代替として、一連の周波数を以下の方程式に適合させることを通して決定されることができる。
式中、AおよびBは、決定される定数である。
いくつかの実施形態では、本教示による質量分析器は、時変励起イオン信号の長さに依存する分解能で質量スペクトルを生成するために採用されることができるが、分解能は、典型的には、約100〜約1,000の範囲内であり得る。
分析器1022は、種々の異なる方法でハードウェアおよび/またはソフトウェアにおいて実装されることができる。実施例として、図3は、分析器の動作を制御するためのプロセッサ1220を含む、分析器1200の実施形態を図式的に描写する。例示的分析器1200はさらに、命令およびデータを記憶するためのランダムアクセスメモリ(RAM)1240と、永続性メモリ1260とを含む。分析器1200はまた、(例えば、フーリエ変換を介して)検出器1180から受信された時変イオン信号に作用し、周波数領域信号を生成するためのフーリエ変換(FT)モジュール1280と、周波数領域信号に基づいて検出されたイオンの質量スペクトルを計算するためのモジュール1300とを含む。通信モジュール1320が、分析器が検出器1180と通信すること、例えば、検出されたイオン信号を受信することを可能にする。通信バス1340が、分析器の種々の構成要素が相互に通信することを可能にする。
いくつかの実施形態では、本教示による質量分析器は、四重極内のイオンの半径方向励起のために電圧パルスが印加され得る、四重極ロッドセットおよび1つ以上の補助電極を含むことができる。実施例として、図4Aおよび4Bは、4つのロッド2020a、2020b、2020c、および2020d(本明細書では、集合的に四重極ロッド2020と称される)から成る四重極ロッドセット2020を含む、そのような実施形態による質量分析器2000を図式的に描写する。本実施形態では、分析器2000はさらに、四重極ロッド2020の間に散在する、複数の補助電極2040a、2040b、2040c、および2040d(本明細書では、集合的に補助電極2040と称される)を含む。四重極ロッド2020と同様に、補助電極2040は、四重極の入力端部(A)からその出力端部(B)まで延在する。本実施形態では、補助電極2040は、四重極ロッド2020と実質的に類似する長さを有するが、他の実施形態では、それらは、異なる長さを有することができる。
前述の実施形態と同様に、RF電圧が、例えば、それを通して通過するイオンの半径方向閉じ込めのためにRF電圧源(図示せず)を介して、四重極ロッド2020に印加されることができる。四重極ロッドのうちの1つ以上のものに電圧パルスを印加するのではなく、本実施形態では、電圧パルスは、四重極を通過するイオンの少なくとも一部の半径方向励起を引き起こすために、補助電極のうちの1つ以上のものに印加されることができる。実施例として、本実施形態では、パルス化電圧源2060が、双極電圧パルスをロッド2040aおよび2040dに(例えば、正の電圧をロッド2040aに、負の電圧をロッド2040dに)印加することができる。
前述の実施形態と同様に、電圧パルスは、四重極を通過するイオンの少なくとも一部の半径方向励起を引き起こすことができる。上記に議論されるように、半径方向に励起されるイオンと四重極の出力端部に近接するフリンジング場との相互作用は、半径方向発振を軸方向発振に変換することができ、軸方向に発振するイオンは、検出器(本図に図示せず)によって検出されることができる。前述の実施形態と同様に、上記に議論される分析器1200等の分析器は、軸方向に発振するイオンの検出の結果として生成される時変イオン信号に作用し、周波数領域信号を生成することができ、周波数領域信号に作用し、検出されたイオンの質量スペクトルを生成することができる。
本教示による質量分析器は、種々の異なる質量分析計に組み込まれることができる。実施例として、図5は、イオン化チャンバ14内でイオンを生成するためのイオン源104と、それから受容されたイオンの初期処理のための上流区分16と、1つ以上の質量分析器、衝突セル、および本教示による質量分析器116を含有する下流区分18とを備える、そのような質量分析計100を図式的に描写する。
イオン源104によって生成されたイオンは、上流区分16の要素(例えば、カーテン板30、オリフィス板32、QJet 106、およびQ0 108)を通して連続的に透過され、高真空下流部分18内でのさらなる質量分析のために(例えば、中心縦方向軸に沿ったz方向に)狭く高度に集束されたイオンビームをもたらすことができる。描写される実施形態では、イオン化チャンバ14は、大気圧に維持されることができるが、いくつかの実施形態では、イオン化チャンバ14は、大気圧よりも低い圧力まで排気されることができる。カーテンチャンバ(すなわち、カーテン板30とオリフィス板32との間の空間)もまた、上昇圧力(例えば、ほぼ大気圧、上流区分16を上回る圧力)に維持されることができる一方、上流区分16および下流区分18は、1つ以上の真空ポンプポート(図示せず)を通した排気によって、1つ以上の選択された圧力(例えば、同一または異なる準大気圧、イオン化チャンバよりも低い圧力)に維持されることができる。質量分析計システム100の上流区分16は、典型的には、イオン移動のタイトな集束および制御を助長するように低減圧力において動作する、下流区分18の種々の圧力領域に対して、典型的には、1つ以上の上昇圧力に維持される。
その中でイオン源104から排出された流体サンプル内に含有される分析物がイオン化され得る、イオン化チャンバ14は、オリフィス板32のサンプリングオリフィスを介して上流区分と流体連通するカーテン板開口を画定するカーテン板30によって、ガスカーテンチャンバから分離される。本教示の種々の側面によると、カーテンガス供給源が、カーテン板30とオリフィス板32との間に(例えば、Nの)カーテンガス流を提供し、大型中性粒子を脱集塊化および排気することによって、質量分析計システムの下流区分を清浄に保つことを補助することができる。実施例として、カーテンガスの一部は、カーテン板開口からイオン化チャンバ14の中に流動し、それによって、カーテン板開口を通した液滴の進入を防止することができる。
下記に詳細に議論されるように、質量分析計システム100はまた、本教示の種々の側面による質量分析計システム100を動作させるように種々の構成要素に結合され得る、電力供給源およびコントローラ(図示せず)を含む。
示されるように、描写されるシステム100は、流体サンプルをイオン源104に提供するように構成される、サンプル源102を含む。サンプル源102は、当業者に公知の任意の好適なサンプル入口システムであり得、サンプル(例えば、着目分析物を含有する、またはそれを含有することが疑われる液体サンプル)を含有する、および/またはそれをイオン源104に導入するように構成されることができる。サンプル源102は、全て非限定的実施例として、分析されるサンプルのリザーバから、インライン液体クロマトグラフィ(LC)カラムから、キャピラリ電気泳動(CE)器具から、またはそれを通してサンプルが注入され得る入力ポートからイオン源102に(例えば、1つ以上の導管、チャネル、管類、パイプ、毛細管等を通して)液体サンプルを透過させるように、イオン源に流体的に結合されることができる。いくつかの側面では、サンプル源102は、サンプルのプラグが液体キャリアの中に断続的に注入され得る間、液体キャリアをイオン源104に連続的に流動させるための、注入ポンプ(例えば、シリンジまたはLCポンプ)を備えることができる。
イオン源104は、種々の構成を有することができるが、概して、サンプル(例えば、サンプル源102から受容される流体サンプル)内に含有される分析物からイオンを生成するように構成される。本実施形態では、イオン源104は、エレクトロスプレー電極を備え、これは、サンプル源102に流体的に結合される毛細管を備え得、これは、イオン化チャンバ14の中に少なくとも部分的に延在し、その中に液体サンプルを排出する出口端部において終端する。本教示に照らして当業者によって理解されるであろうように、エレクトロスプレー電極の出口端部は、イオン化チャンバ14の中に液体サンプルを霧化、エアロゾル化、噴射、または別様に排出(例えば、ノズルを用いて噴霧)し、概して、カーテン板開口に向かって(例えば、その近傍に)指向される複数の微小液滴を備えるサンプルプルームを形成することができる。当技術分野で公知であるように、微小液滴内に含有される分析物は、例えば、サンプルプルームが生成されるにつれて、イオン源104によってイオン化(すなわち、荷電)されることができる。いくつかの側面では、エレクトロスプレー電極の出口端部は、サンプルプルーム内に含有される微小液滴内の流体がイオン化チャンバ12内での脱溶媒和の間に蒸発するにつれて、裸荷電分析物イオンまたは溶媒和イオンが放出され、カーテン板開口に向かって、そしてそれを通して引き込まれるように、伝導性材料から作製され、コントローラ20に動作可能に結合される電力供給源(例えば、電圧源)に電気的に結合されることができる。いくつかの代替側面では、噴霧器の排出端部は、非伝導性であり得、スプレー荷電が、高電圧を液体流(例えば、毛細管の上流)に印加するために、伝導性融合部または接合部を通して起こり得る。イオン源104は、概して、エレクトロスプレー電極として本明細書に説明されるが、サンプル内の分析物をイオン化するために当技術分野で公知であり、本教示に従って修正される任意の数の異なるイオン化技法が、イオン源104として利用され得ることを理解されたい。非限定的実施例として、イオン源104は、とりわけ、エレクトロスプレーイオン化デバイス、ネブライザ支援エレクトロスプレーデバイス、化学イオン化デバイス、ネブライザ支援霧化デバイス、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)イオン源、光イオン化デバイス、レーザイオン化デバイス、熱スプレーイオン化デバイス、誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、ソニックスプレーイオン化デバイス、グロー放電イオン源、および電子衝撃イオン源、DESIであり得る。イオン源102は、イオン源104から排出されたプルームもまた、概して、カーテン板開口の面を横断して指向され、したがって、カーテンチャンバの中に引き込まれない液体液滴および/または大型中性分子が、イオン化チャンバ内の潜在的汚染物質の蓄積および/または再循環を防止するように、イオン化チャンバ14から除去され得るように、カーテン板開口およびイオン経路軸に対して直交に配置され得ることを理解されたい。種々の側面では、ネブライザガスもまた、噴霧器先端上の液滴の蓄積を防止する、および/またはカーテン板開口の方向にサンプルプルームを指向するために(例えば、イオン源102の排出端部を中心として)提供されることができる。
いくつかの実施形態では、オリフィス板32を通過することに応じて、イオンは、1つ以上の付加的真空チャンバおよび/または四重極(例えば、QJet(登録商標)の四重極)を横断し、下流高真空区分18の中に透過されることに先立って、ガス動態および無線周波数場の組み合わせを使用して、イオンビームの付加的集束およびそれに対するより微細な制御を提供することができる。本教示の種々の側面によると、また、本明細書に説明される例示的イオンガイドが、質量分析計システムの種々のフロントエンド場所に配置され得ることを理解されたい。非限定的実施例として、イオンガイド108は、QJet(登録商標)のイオンガイド(例えば、約1〜10トルの圧力において動作される)の従来の役割において、QJet(登録商標)のイオンガイドによって先行される従来のQ0集束イオンガイド(例えば、約3〜15ミリトルの圧力において動作される)として、組み合わせられたQ0集束イオンガイドおよびQJet(登録商標)のイオンガイド(例えば、約3〜15ミリトルの圧力において動作される)として、またはQJet(登録商標)のイオンガイドとQ0との間の中間デバイス(例えば、典型的なQJet(登録商標)のイオンガイドと典型的なQ0集束イオンガイドとの間の圧力において、数百ミリトルの圧力において動作される)としての役割を果たすことができる。
示されるように、システム100の上流区分16は、オリフィス板32を介してカーテンチャンバから分離され、概して、第1のRFイオンガイド106(例えば、SCIEXのQJet(登録商標))と、第2のRFガイド108(例えば、Q0)とを備える。いくつかの例示的側面では、第1のRFイオンガイド106は、ガス動態および無線周波数場の組み合わせを使用して、イオンを捕捉し、集束させるために使用されることができる。実施例として、イオンは、サンプリングオリフィスを通して透過されることができ、真空膨張が、オリフィス板32の両側上のチャンバ間の圧力差の結果として起こる。非限定的実施例として、第1のRFイオンガイドの領域内の圧力は、約2.5トル圧力に維持されることができる。QJet 106は、それによって受容されたイオンを、Q0 RFイオンガイド108等の後続イオン光学系へと、それらの間に配置されるイオンレンズIQ0 107を通して伝達する。Q0 RFイオンガイド108は、イオンを、中間圧力領域(例えば、約1ミリトル〜約10ミリトルの範囲内)を通して輸送し、イオンを、IQ1レンズ109を通してシステム100の下流区分18に送達する。
システム100の下流区分18は、概して、上流区分16から透過されるイオンのさらなる処理のための1つ以上の質量分析器を含有する、高真空チャンバを備える。図5に示されるように、例示的下流区分18は、質量分析器110(例えば、伸長ロッドセットQ1)と、衝突セルとして動作され得る第2の伸長ロッドセット112(例えば、q2)とを含む。下流区分はさらに、本教示による質量分析器114を含む。
質量分析器110および衝突セル112は、オリフィス板IQ2によって分離され、衝突セル112および質量分析器114は、オリフィス板IQ3によって分離される。例えば、108 Q0からレンズ109 IQ1の出射開口を通して透過された後、イオンは、RFイオンガイド107が配置されるチャンバのものよりも低い値に維持され得る圧力まで排気され得る真空チャンバ内に位置し得る、隣接する四重極ロッドセット110(Q1)に入射することができる。
非限定的実施例として、Q1を含有する真空チャンバは、約1×10−4トル未満の圧力(例えば、約5×10−5トル)に維持されることができるが、他の圧力も、本目的のために、または他の目的のために使用されることができる。当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセットQ1は、着目イオンおよび/またはある範囲の着目イオンを選択するために動作され得る、従来の透過RF/DC四重極質量フィルタとして動作されることができる。実施例として、四重極ロッドセットQ1は、質量分解モードにおける動作のために好適なRF/DC電圧を提供されることができる。理解されるはずであるように、Q1の物理的および電気的性質を考慮して、印加されるRFおよびDC電圧に関するパラメータは、Q1が選定されたm/z比の透過ウィンドウを確立し、したがって、これらのイオンが殆ど摂動されずにQ1を横断し得るように選択されることができる。しかしながら、ウィンドウ外に該当するm/z比を有するイオンは、四重極内で安定した軌道を達成せず、四重極ロッドセットQ1を横断しないように妨害され得る。本動作モードは、Q1に関する1つの可能性として考えられる動作モードにすぎないことを理解されたい。
四重極ロッドセットQ1を通過するイオンは、レンズIQ2を通して、隣接する四重極ロッドセットq2の中に通過することができ、これは、加圧されたコンパートメント内に配置されることができ、概算で約1ミリトル〜約10ミリトルの範囲内の圧力において衝突セルとして動作するように構成されることができるが、他の圧力も、本目的のために、または他の目的のために使用されることができる。好適な衝突ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)が、イオンビーム中のイオンを熱平衡化および/または断片化するために、ガス入口(図示せず)を用いて提供されることができる。
本実施形態では、衝突セル112から出射するイオンは、本教示による質量分析器114によって受容されることができる。上記に議論されるように、質量分析器114は、補助電極の有無を問わない四重極質量分析器として実装されることができる。四重極ロッドへの(選択可能分解DC電圧の有無を問わない)RF電圧の印加は、それらが四重極を通過するにつれてイオンの半径方向閉じ込めを提供することができ、RFロッドまたは補助電極のうちの1つ以上のものへのDC電圧パルスの印加は、イオンの少なくとも一部(好ましくは、全て)の半径方向励起を引き起こすことができる。上記に議論されるように、半径方向に励起されるイオンとそれらが四重極から出射する際のフリンジング場との相互作用は、イオンの少なくとも一部の半径方向励起を軸方向励起に変換することができる。イオンは、次いで、検出器118によって検出され、これは、時変イオン信号を生成する。検出器118と通信する分析器120が、時変イオン信号に作用し、上記に議論される様式で検出されたイオンの質量スペクトルを導出することができる。
以下の実施例は、本教示の種々の側面のさらなる解明のために提供され、必ずしも、本教示を実践する最適な方法または取得され得る最適な結果を提供することを意図していない。
4000 QTRAP(登録商標)(Sciex)質量分析計が、本教示による質量分析器を組み込むために修正され、図6に図式的に描写される。本システムは、主として、大気−真空界面が、オリフィス−QJet(登録商標)構成ではなく、オリフィス−スキマー構成を伴うことを除いて、上記に説明されるシステムと非常に類似する。イオンが、ネブライザ支援エレクトロスプレーイオン源(図示せず)によって生成され、オリフィスを通して約2トルの圧力において界面領域の中に進行する。そこから、イオンは、約8×10−3トルの圧力に維持されるQ0衝突集束領域に入射する。イオンは、次いで、四重極Q1、Q2、およびQ3を含有する主要真空チャンバの中に指向される。本チャンバの圧力は、公称で8×10−6トルであったが、これは、外部ガス供給源を使用して調節されることができる。封入されたQ2衝突セルは、約5×10−3トルの圧力において窒素ガスを含有する。Q1は、Q0領域から生じる殆どのイオンを下流に輸送するためにRF専用モードで使用されることができる、またはこれは、質量ウィンドウ選択を提供する四重極質量フィルタとして作用することができる。Q0、Q1、およびQ2のRF周波数は、約1MHzであった。Q3 RF周波数は、1.839MHzであった。それらがQ3を通過する際のイオンの励起は、四重極の2つの隣接するロッドに双極様式で印加された、Agilent 33220A関数発生器によって生成された方形パルスの増幅によって提供された。通常、双極パルスの正および負に向かう側は、増幅後にそれぞれ約20〜40Vである。
検出器においてもたらされる発振信号の実施例が、図7に示される。本信号は、0.17pmol/μLレセルピン溶液からのm/z 609のQ1質量選択ビームの励起(750ナノ秒、30V)双極パルスに続いて生成された。Q3 RF電圧は、m/zプロトン化分子イオンに関する0.174のq値に対応する640V(0ピーク)に固定された。発振信号は、約1ミリ秒にわたって持続する。本データファイルがFFTプログラム(DPlot Version 2.2.1.1, HydeSoft Computing, USA)にかけられたとき、図8に示される周波数スペクトルが、もたらされる。主要ピークは、114.1kHzの周波数に位置し、これは、規定された四重極条件下で609.28のm/zにおけるイオンに関して計算された113.7kHzの計算された永年周波数に非常に近似する。
発振信号の長さは、質量スペクトル分解能に上限を与える。この場合、図8に示されるピークは、1.4kHz幅であり、これは、(114.1kHz/1.4kHz)=81.5の分解能をもたらす。本解像力は、高くないが、混合物中の化合物の分離のために依然として有用である。解像力は、四重極を通過する運動エネルギーによって大部分が決定される発振信号の長さを増加させることによって、増加されることができる。図9A−9Fは、励起パルスに続く発振信号の長さに対するイオン運動エネルギーの影響を示す。イオン運動エネルギーが減少するにつれて、発振信号の長さは、増加し、分解能は、増加する。
本分析器は、連続的イオンビームと協働するため、いったん発信信号が漸減すると、別の励起パルスが、誘起され、別の発振信号が、取得されることができる。約1ミリ秒持続する信号に関して、約1,000個のそのようなトレースが、取得されることができ、より正確に言えば、データが、1kHz取得レートにおいて取得されることができる。四重極を通過する全てのイオンが励起および検出されるため、本質量分析器は、全ての励起パルスに関する完全な質量スペクトルを記録し、したがって、殆どのイオンは、浪費されない。したがって、本分析器は、高速かつ高感度の両方である。
多くの異なる質量/電荷比のイオンが存在するとき、結果として生じる発振信号は、図10に示されるように、非常に複雑であり得る。図10のトレースは、フラグメントイオンを生産するために42.5eVにおける加圧Q2衝突セルに加速されたm/z 609におけるQ1質量選択プロトン化レセルピン(0.17pmol/μL溶液)のイオンビームに関して取得された。Q3 RF電圧は、640V(0ピーク)に固定された。図10に描写されるデータがフーリエ変換されたとき、図11の周波数スペクトルが、取得された。これは、レセルピンの生成イオンスペクトルである。周波数および関連付けられるm/z値が、スペクトルにおいて示される。
本分析器は、通常、<1x10−4トルの圧力に制限される従来の四重極質量フィルタよりもはるかに高い動作圧力における性能の損失を事実上全く伴わずに機能することが見出されている。これは、m/z 609におけるレセルピンプロトン化分子イオンに関するフーリエ変換されたスペクトルが、2つの異なるQ2衝突エネルギー、すなわち、8eVおよび45eVに関して提示される図12Aおよび12Bに示される。Q1は、m/z 609レセルピンイオンの周囲に5amu幅のウィンドウを伝送するように設定され、Q3 RF電圧は、640V(0ピーク)に固定された。励起条件は、40Vにおいて750ナノ秒幅双極パルスである。チャンバ圧力は、外部窒素ガス供給源を使用して1.4×10−3トルまで増加された。高いチャンバ圧力にもかかわらず、非常に許容可能なスペクトルが、両方の衝突エネルギーにおいて取得された。
当業者は、種々の変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に行われ得ることを理解するであろう。さらに、当業者は、一実施形態の特徴が、別のものの特徴と組み合わせられ得ることを理解するであろう。

Claims (20)

  1. 質量分析器であって、
    四重極であって、前記四重極は、イオンを受容するための入力端部と、出力端部とを有し、前記出力端部を通してイオンが前記四重極から出射し得、前記四重極は、複数のロッドを有し、前記イオンが前記四重極を通して伝搬するにつれて前記イオンの半径方向閉じ込めを引き起こすための四重極場を生成し、さらに、前記出力端部に近接してフリンジング場を生成するために、前記複数のロッドのうちの少なくともいくつかにRF電圧が印加され得る、四重極と、
    前記四重極を通過する前記イオンの少なくとも一部の半径方向発振をその永年周波数において励起するように、前記ロッドのうちの少なくとも1つに電圧パルスを印加するための、少なくとも1つの電圧源と
    を備え、
    前記半径方向に励起されるイオンは、それらの半径方向発振が軸方向発振に変換されるように、それらが前記四重極から出射するにつれて前記フリンジング場と相互作用する、質量分析器。
  2. 前記四重極から出射する前記軸方向に発振するイオンを検出するために、前記四重極の出力端部の下流に配置される検出器をさらに備える、請求項1に記載の質量分析器。
  3. 前記検出器は、前記軸方向に発振するイオンの検出に応答して、時変信号を生成する、請求項2に記載の質量分析器。
  4. 周波数領域信号を生成するように、前記時変信号を受信し、フーリエ変換を前記時変信号に適用するための分析モジュールをさらに備える、請求項3に記載の質量分析器。
  5. 前記分析モジュールは、前記励起されるイオンの質量スペクトルを生成するように前記周波数領域信号に作用する、請求項4に記載の質量分析器。
  6. 前記電圧パルスは、約10ナノ秒〜約1ミリ秒の範囲内の持続時間を有する、請求項1に記載の質量分析器。
  7. 前記電圧パルスは、約1マイクロ秒〜約5マイクロ秒の範囲内の持続時間を有する、請求項6に記載の質量分析器。
  8. 前記電圧パルスは、約10ボルト〜約40ボルトの範囲内の振幅を有する、請求項1に記載の質量分析器。
  9. 前記電圧パルスは、約20ボルト〜約30ボルトの範囲内の振幅を有する、請求項1に記載の質量分析器。
  10. 前記四重極は、約1×10−6トル〜約9×10−3トルの範囲内の圧力に維持される、請求項1に記載の質量分析器。
  11. 前記四重極は、約8×10−6トル〜約1×10−4トルの範囲内の圧力に維持される、請求項10に記載の質量分析器。
  12. 前記複数のロッドは、4つのロッドを含み、前記4つのロッドは、それへの前記RF電圧の印加に応答して四重極場を生成するように配列される、請求項1に記載の質量分析器。
  13. 前記複数のロッドはさらに、少なくとも補助電極の対を含む、請求項12に記載の質量分析器。
  14. 前記電圧源は、前記補助電極の対を横断して前記電圧パルスを印加する、請求項10に記載の質量分析器。
  15. 前記四重極の出力端部に近接して配置される出射レンズをさらに備える、請求項1に記載の質量分析器。
  16. 前記少なくとも1つの電圧源は、前記四重極の出力端部に近接する前記フリンジング場を調節するように、前記出射レンズにDC電圧またはRF電圧を印加するように構成される、請求項12に記載の質量分析器。
  17. 質量分析を実施する方法であって、
    複数のロッドを備える四重極を通して複数のイオンを通過させることであって、四重極ロッドセットは、前記イオンを受容するための入力端部と、出力端部とを備え、前記出力端部を通してイオンが前記四重極から出射する、ことと、
    前記イオンが前記四重極を通過するにつれて前記イオンの半径方向閉じ込めのための場を生成するように、前記ロッドのうちの少なくとも1つに少なくとも1つのRF電圧を印加することと、
    前記四重極を通過する前記イオンの少なくとも一部の半径方向発振をその永年周波数において励起するように、前記複数のロッドの少なくとも1つの対を横断して電圧パルスを印加することであって、前記出力端部に近接するフリンジング場は、前記励起されるイオンが前記四重極ロッドセットから出射するにつれて、前記励起されるイオンの少なくとも一部の前記半径方向発振を軸方向発振に変換する、ことと、
    時変信号を生成するために、前記四重極ロッドセットから出射する前記軸方向に発振するイオンの少なくとも一部を検出することと
    を含む、方法。
  18. 周波数領域信号を生成するように前記時変信号のフーリエ変換を取得し、前記検出されたイオンと関連付けられる質量スペクトルを生成するために前記周波数領域信号を利用することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記四重極を通して前記イオンを通過させるステップは、前記四重極内に前記イオンを閉じ込めることなく達成される、請求項17に記載の方法。
  20. 所望の分解能に対応する前記時変信号の時間的長さを取得するように前記四重極に入射する前記イオンの運動エネルギーを選択することをさらに含み、前記分解能は、前記時変信号の時間的長さが増加するにつれて増加する、請求項17に記載の方法。
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