JP2020189777A - 空孔欠陥形成方法 - Google Patents

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靖彦 下間
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清貴 三浦
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Norikazu Mizuochi
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正規 藤原
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Abstract

【課題】ダイヤモンドの黒鉛化を抑制した高濃度の空孔欠陥形成方法を提供する。【解決手段】ダイヤモンドの内部に空孔欠陥を形成する方法であって、ダイヤモンドの吸収波長に対して透明な波長を有するレーザーのパルス光をダイヤモンドの内部に複数回集光照射するステップを含み、レーザーのパルス幅は、空孔欠陥の形成がダイヤモンドの黒鉛化よりも優先的となるパルス幅であることを特徴とする、方法。【選択図】図7

Description

本発明は、ダイヤモンドの内部に空孔欠陥を形成する方法に関する。
ダイヤモンドは、その優れた光学的、電気的、熱的特性から、光学素子やエレクトロニクスデバイス等への応用が期待されている。特に近年、ダイヤモンド内部に存在するNVセンター(Nitrogen Vacancy center)と呼ばれている窒素−空孔中心が注目を集めている。NVセンターは、ダイヤモンド内部の窒素不純物とそれに隣接する空孔欠陥との対からなり、空孔に電子が捕獲された状態において、電子スピンと呼ばれる磁気的な性質を示す。NVセンター中の電子スピンは、室温下でも長いコヒーレンス時間を有し、そのスピン状態は室温下で制御および検出可能であることから、量子コンピューティングへの応用や、磁場、電場等の高感度量子センサー等としての応用が期待されている。
NVセンターをダイヤモンド内部に形成する手法としては、ダイヤモンドの合成中に取り込まれた不純物窒素がNVセンターとして存在する場合や、イオン注入や電子線照射によって人為的に欠陥を形成する方法が知られている。しかしながら、前者の手法の場合、不純物窒素は合成中に偶然取り込まれるため、欠陥の空間的な位置を制御することができない。また後者の手法の場合、イオンの注入位置や電子線の照射位置を制御する事で、サンプル表面の水平方向の位置制御は行えるものの、サンプル内部の深さ方向の位置制御は困難である。
NVセンターの形成に関するこのような問題に対し、下記特許文献1および非特許文献1には、レーザーをダイヤモンド内部に集光照射して、その後熱処理(アニーリング)を行うことにより、単一のNVセンターを形成する手法が提案されている。特許文献1および非特許文献1の手法では、ダイヤモンドの吸収波長に対して透明なレーザーを用いることにより、非線形吸収によってレーザーの集光点の近傍のみでダイヤモンドの改質を生じさせている。これにより、サンプル内部の深さ方向も含めた空間選択的な位置制御を可能としている。
特表2018−520085号公報
Yu-Chen Chen et al., "Laser writing of coherent colour centres in diamond", Nature Photonics, 2017, volume 11, pages 77-80.
一方で、ダイヤモンドにレーザーを照射することにより、ダイヤモンドを黒鉛化できることが知られている。この現象も、例えばダイヤモンド内部に導電回路を形成する等、応用上重要である。しかしながら、NVセンターをダイヤモンド内部に形成するためには、ダイヤモンドの結晶に欠陥を形成しつつもダイヤモンドが黒鉛化しないように、レーザーの照射を留めておく必要がある。
また、量子センサー等への応用では、センサーの測定感度を向上させるために、ダイヤモンドの内部に複数のNVセンターを形成して、NVセンターの濃度を高めることが有効になる。しかしながら、高濃度のNVセンターを形成しようとして、照射するレーザーのエネルギーを増大させると、NVセンターが形成されずダイヤモンドの黒鉛化が生じる可能性が高まる。
ダイヤモンドのNVセンターを量子センサー等へ応用するために、ダイヤモンドの黒鉛化を抑制しながらも、高濃度のNVセンターを形成する手法が求められている。しかしながら、特許文献1および非特許文献1の手法では、ダイヤモンドの黒鉛化を低減するために、ダイヤモンドの改質に使用される一般的なエネルギーよりも著しく低い、約15nJ未満程度のレーザーエネルギーを用いている。形成されるNVセンターの数も単一である。
本発明は、ダイヤモンドの黒鉛化を抑制した高濃度の空孔欠陥形成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、例えば以下に示す態様を含む。
(項1)
ダイヤモンドの内部に空孔欠陥を形成する方法であって、
前記ダイヤモンドの吸収波長に対して透明な波長を有するレーザーのパルス光を前記ダイヤモンドの内部に複数回集光照射するステップを含み、
前記レーザーのパルス光のパルス幅は、前記空孔欠陥の形成が前記ダイヤモンドの黒鉛化よりも優先的となるパルス幅であることを特徴とする、方法。
(項2)
前記レーザーのパルスエネルギーは、40nJないし100nJの範囲であり、
前記レーザーの前記パルス幅は200フェムト秒以下である、項1に記載の方法。
(項3)
前記レーザーのパルスエネルギーは、25nJないし200nJの範囲であり、
前記レーザーの前記パルス幅は100フェムト秒以下である、項1に記載の方法。
(項4)
前記レーザーのパルスエネルギーは、15nJないし320nJの範囲であり、
前記レーザーの前記パルス幅は40フェムト秒以下である、項1に記載の方法。
本発明によると、ダイヤモンドの黒鉛化を抑制した高濃度の空孔欠陥形成方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る空孔欠陥形成方法を実行する際に用いる光学システムの模式的な構成を示す図である。 レーザーが出力するパルス光Lpの時間波形の一例である。 レーザー照射領域の光学顕微鏡像である。 レーザー照射領域における蛍光マッピング像である。 マッピングの基準とするダイヤモンドの深さ方向の位置を説明するための図である。 レーザー照射領域における蛍光スペクトルである。 パルスエネルギーに対する蛍光強度および黒鉛化率の変化をパルス幅毎に示すグラフである。 パルスエネルギーに対する蛍光強度および黒鉛化率の変化をパルス幅毎に示すグラフである。 パルスエネルギーに対する蛍光強度の変化をパルス幅毎に示すグラフである。 パルス幅およびパルスエネルギーの変化に応じた欠陥の形成と黒鉛化との関係を説明するための模式図である。
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。
本発明によると、ダイヤモンドの内部に空孔欠陥を形成する方法が提供される。一実施形態に係る方法は、ダイヤモンドの吸収波長に対して透明な波長を有するレーザーのパルス光をダイヤモンドの内部に複数回集光照射するステップを含み、レーザーのパルス幅は、空孔欠陥の形成がダイヤモンドの黒鉛化よりも優先的となるパルス幅である。空孔欠陥の形成がダイヤモンドの黒鉛化よりも優先的になるとは、空孔欠陥の形成確率が50%以上であり黒鉛化の確率が50%以下であることを意味する。
図1は、本発明の一実施形態に係る空孔欠陥形成方法を実行する際に用いる光学システムの模式的な構成を示す図である。
光学システム10は、試料9を改質するための光源として用いるレーザー1と、レーザー光のパルス波形を整形するパルス整形器2と、波形が整形されたパルス光を試料9の内部に集光照射する対物レンズ3とを主に備える。レーザー1から照射されるパルス光Lpは、パルス整形器2においてパルス波形が整形されてパルス幅が制御され、対物レンズ3により集光されて試料9の内部の所定の深さに照射される。試料9はレーザー光の照射により改質される。レーザー1から照射されるパルス光Lpの進行方向は、全反射ミラー4により適宜調節される。
光学システム10は、改質された試料9を観察するための構成として、ダイクロイックミラー5と、CCDまたはCMOSイメージセンサ等の撮像素子6とをさらに備えることができる。レーザー1から出力されるパルス光Lpをパルス整形器2を通じて試料9に照射する光学系と、試料9からの反射光を撮像素子6を通じて観察する光学系とは、共焦点光学系となっている。このような光学システム10は、例えば共焦点顕微鏡を用いて構成することができる。なお、光学システム10は、試料9の内部を改質する際には、ダイクロイックミラー5および撮像素子6を備える必要はなく、共焦点光学系を構成する必要もない。
図2は、レーザーが出力するパルス光Lpの時間波形の一例である。図2の縦軸は、規格化された光強度を示す。本明細書中の以下の説明において特に言及しない限り、パルス幅は、パルスの半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を意味する。また、パルス幅の値は、パルス整形器2によりパルス波形を整形した後、対物レンズ3を通過した直後の値を意味する。
試料9には、本実施形態では合成ダイヤモンドを用いる。好ましくは、試料9は、窒素不純物の濃度が低い例えばIIa型のCVD単結晶合成ダイヤモンドである。より好ましくは、試料9に用いる合成ダイヤモンドの窒素濃度は約1ppm未満である。試料9は3軸ステージ(図示せず)上に載置されており、試料9上にレーザー光を照射する領域(X−Y平面)と、レーザー光の照射軸に沿った試料9の位置(Z軸)とが調節可能である。試料9へのレーザー光の照射は、大気中で室温下にて行うことができる。例示的に、室温は、約15℃ないし25℃の常温の範囲を含む約1℃ないし30℃の温度範囲を意味するが、これら温度範囲に限定されるものではない。
レーザー1は、フェムト秒の時間的なオーダーを有するパルス幅でパルス光Lpを出力する。レーザー1が出力するパルス光Lpは、試料9の吸収波長に対して透明な波長を有している。これにより、レーザー1は、非線形吸収によってレーザーの集光点の近傍において試料9の改質を生じさせて、試料9の深さ方向も含めた空間選択的な位置制御を可能としている。試料9の吸収波長に対してパルス光Lpが透明な波長を有するとは、パルス光Lpの波長帯域が、試料9にパルス光Lpを照射しても、試料9の吸収スペクトルにおいてスペクトル線が現れないような波長帯域であることを意味する。試料9に照射されるパルス光Lpのエネルギーは、試料9の結晶格子により非線形に吸収される。本実施形態では、パルス光Lpは直線偏光しており、レーザー1には、中心波長が約800nmのパルス光を出力する再生増幅型のチタンサファイアレーザーを用いている。
本実施形態では、パルス光を出力する際の繰り返し周波数は約250kHzであり、レーザー光を試料9に約1秒間照射している。すなわち、本実施形態では、レーザー1は約250×10個の複数個のパルス光Lpを出力している。一実施形態によると、レーザーのパルスエネルギーは、好ましくは約15nJないし320nJの範囲である。
パルス整形器2は、レーザー光のパルス波形を整形してパルス幅を制御する。パルス光の位相φはテイラー展開により多項式による近似をすることができる。
(式1)に示す多項式中、パルスの波形に寄与する項は二次関数以上の項である。よって、(式1)中のaの値を変更することにより、パルス幅を制御することができる。パルス整形器2は、空間光変調器と回折格子による分散素子とにより、(式1)に記載されている二次の位相の項を制御することによって、照射レーザーパルスの時間波形を変化させて、パルス幅を調整する。
一実施形態では、パルス整形器2は、レーザーのパルス幅を、空孔欠陥の形成がダイヤモンドの黒鉛化よりも優先的となるパルス幅に整形する。一実施形態によると、パルス整形器2は、レーザーのパルス幅を約200フェムト秒以下に整形することができる。好ましくは、パルス整形器2は、レーザーのパルス幅を約100フェムト秒以下に整形することができる。より好ましくは、パルス整形器2は、レーザーのパルス幅を約40フェムト秒以下に整形することができる。
対物レンズ3は、波形が整形されたパルス光を試料9の内部に集光照射する。本実施形態では、対物レンズ3は約50倍(開口数NA=0.80)の倍率を有し、試料9の表面から約50μmの深さに焦点を結ぶ。
以下の実施例では、上記説明した光学システム10を用いてレーザーのパルス幅およびパルスエネルギーを様々に変化させてダイヤモンドの内部にパルス光を照射して、ダイヤモンドの内部にNVセンターが形成されているか否かと、ダイヤモンドが黒鉛化しているか否かとを検証した。この検証結果に基づいて、空孔欠陥の形成が黒鉛化よりも優先的となるパルス幅を提案する。以下の検証において、NVセンターの形成が黒鉛化よりも優先的になるとは、NVセンターの形成に由来する蛍光が観測されており、かつ黒鉛化の確率が50%以下であること、すなわち、空孔欠陥の形成確率が50%以上であり黒鉛化の確率が50%以下であることを意味する。
図3は、レーザー照射領域の光学顕微鏡像である。(A)ではパルス幅が40フェムト秒であり、(B)ではパルス幅が1ピコ秒である。図中に符号「laser」を付して表す記号は、レーザー光の進行方向を示している。
レーザーのパルス光は、10nJないし1200nJにわたってパルスエネルギーを変化させて、ダイヤモンド上の焦点位置(X−Y平面)を変化させながら照射した。レーザーのパルス光は、各パルスエネルギーについて、ダイヤモンド上の異なる位置(10箇所)に同じパルスエネルギーで照射した。フェムト秒オーダーのパルス幅よりも長めの約1ピコ秒等のパルス幅は、レーザー1から入力されるパルスにパルス整形器2がチャープパルスを付加することにより生成した。
図3に示す光学顕微鏡像中に表れている黒い点は、NVセンターが形成されずダイヤモンドが黒鉛化していることを表している。例えば、(A)ではパルスエネルギーが900nJ以上の全ての照射位置において、(B)ではパルスエネルギーが800nJ以上の全ての照射位置において、NVセンターが形成されずダイヤモンドが黒鉛化している。
図4は、レーザー照射領域における蛍光マッピング像である。(A)ではパルス幅が40フェムト秒であり、(B)ではパルス幅が1ピコ秒である。(A)および(B)のそれぞれについて、図4に示す蛍光マッピング像の領域は、図3の光学顕微鏡像において破線で囲む領域に対応している。マッピングの基準とするダイヤモンドの深さ方向(Z軸方向)の位置は、図5に示すように、各パルス幅において最低のパルスエネルギーでの発光領域のうち、蛍光による発光強度が最大となる深さの位置としている。
図6は、レーザー照射領域における蛍光スペクトルである。図6中には参考に、レーザー未照射領域における蛍光スペクトルも符号「Pristine」を付して示している。図6中、電荷が中性の状態であるNVのゼロフォノン線のピークは約576nmであり、電荷が−1の状態であるNVのゼロフォノン線のピークは約638nmである。
図4に示す蛍光マッピング像は、ダイヤモンド上にレーザーパルスを照射した後のそれぞれのレーザーパルス照射位置について、共焦点顕微鏡を用いて励起波長532nmの光源を用いて得られた。蛍光マッピング像中の蛍光強度は、NVセンター由来の蛍光波長である約640nmないし660nmの範囲の蛍光強度の積算値であり、レーザーパルスを照射していないダイヤモンド上の領域における蛍光強度を用いて規格化している。レーザーパルスを照射していないダイヤモンド上の領域においても、ダイヤモンド中に存在する不純物由来のNVセンターによる蛍光スペクトルが確認されるからである。
図4の蛍光マッピング像に示すように、(A)および(B)のいずれにおいても、レーザーパルスのエネルギーを増大させると、或るエネルギーから蛍光強度の増大が見られる。図6に示す蛍光スペクトルから、この蛍光強度の増大は、NVセンターの形成に由来することが確認された。また、さらにレーザーパルスのエネルギーを増大させてゆくと、蛍光強度の低下が見られるようになった。NVセンターの形成よりも黒鉛化が優先的になると、NVセンターの形成に由来する蛍光の強度が低下するからである。
なお、図4ないし図6から理解されるように、本実施例では、ダイヤモンドにレーザーパルスを照射した後にダイヤモンドをアニーリングすることなく、NVセンターが形成されている。アニーリング工程が不要になると、NVセンターを含む量子センサー素子を工業的に製造する際に低温プロセスを採用することが可能になり、量子センサー素子を大気中で室温下で製造することが可能になる。
図7および図8は、パルスエネルギーに対する蛍光強度および黒鉛化率の変化をパルス幅毎に示すグラフである。図9は、パルスエネルギーに対する蛍光強度の変化をパルス幅毎に示すグラフである。
図7ないし図9を参照して、パルス幅の違いによる改質挙動の違いをより詳細に考察する。図7(B)に示すパルス幅が1ピコ秒の場合は、NVセンターの形成と共に黒鉛化の確率も急峻に増大し、その後黒鉛化が優先的となっている。これに対し、図7(A)に示すパルス幅が40フェムト秒の場合は、黒鉛化の確率はより緩やかに上昇している。図9にも示すように、蛍光強度についても、同じパルスエネルギーではより高い蛍光強度が得られている。よって、パルス幅の比較に基づくと、パルス幅が40フェムト秒の場合は、パルス幅がより長い1ピコ秒の場合と比較して、より高い蛍光強度の、すなわちより高濃度のNVセンターを形成可能であることが確認された。
40フェムト秒ないし1ピコ秒のパルス幅についても同様に考察する。図8の(A)ないし(C)および図9を参照すると、パルス幅が500フェムト秒から100フェムト秒と短くなるにつれ、黒鉛化の確率はより緩やかに上昇し、同じパルスエネルギーではより高い蛍光強度が得られている。
図7ないし図9に示す検証結果に基づく、NVセンターの形成がダイヤモンドの黒鉛化よりも優先的となるパルス幅およびパルスエネルギーの範囲を表1に示す。
表1に示すように、パルス幅を短くするにつれて、NVセンターの形成が黒鉛化よりも優先的となるパルスエネルギーの範囲が拡大している。得られている蛍光強度も増大しており、NVセンターも高濃度に形成されている。以上のことから、レーザーの短パルス化は、ダイヤモンド内部への優先的かつ高濃度のNVセンター形成に有効であることが確認された。
図10は、パルス幅およびパルスエネルギーの変化に応じた欠陥の形成と黒鉛化との関係を説明するための模式図である。本発明の方法におけるレーザーのパルス幅およびパルスエネルギーの組み合わせの位置づけを、図中に符号Aの矢印で示し、従来技術におけるレーザーのパルス幅およびパルスエネルギーの組み合わせの位置づけを、図中に符号Bの矢印で示す。
従来の特許文献1および非特許文献1の手法では、ダイヤモンドの黒鉛化を低減するために、ダイヤモンドの改質に使用される一般的なエネルギーよりも著しく低い、約15nJ未満程度のレーザーエネルギーを用いている。レーザーのパルス幅も、光学系を通過した後の試料の焦点面において約300フェムト秒である。
これに対し、本発明の方法では、レーザーのパルス幅を短くすることによって、より高いパルスエネルギーでダイヤモンドを改質して、より高濃度のNVセンターを形成している。レーザーのパルス幅も、対物レンズ3を通過した直後において約200フェムト秒以下である。本発明の方法では、レーザーのパルス幅を短くすることによって、ダイヤモンド内部への優先的かつ高濃度の三次元空間選択的なNVセンター形成を実現している。
[その他の形態]
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
上記した実施形態では、試料9としてダイヤモンドを用い、色中心として、ダイヤモンドの内部にNVセンターと呼ばれる窒素−空孔中心を形成しているが、ダイヤモンドの内部に形成する色中心はNVセンターに限定されない。NVセンターに代えて、珪素−空孔中心またはゲルマニウム-空孔中心をダイヤモンドの内部に形成してもよい。
上記した実施形態では、レーザー1およびパルス整形器2により生成されるパルス光Lpのパルス幅はフェムト秒の時間的なオーダーを有しているが、ダイヤモンドを改質するために照射されるレーザーのパルス幅は、フェムト秒の時間的なオーダーに限定されない。ダイヤモンドの内部に高濃度のNVセンターを優先的に形成することができる限り、フェムト秒(10−15秒)以下の例えばアト秒(10−18秒)等の時間的なオーダーを有するパルス幅のレーザーをダイヤモンドに照射することができる。
試料9に含まれている窒素不純物の濃度は、上記した実施形態において例示した濃度に限定されない。例えば量子センサーへの応用では、合成ダイヤモンドに含まれる窒素不純物の濃度は上記例示した約1ppm以上であってもよいし、合成ダイヤモンドもIIa型に限定されない。
1 レーザー(光源)
2 パルス整形器
3 対物レンズ
4 全反射ミラー
5 ダイクロイックミラー
6 撮像素子(CCD)
7 波長変換素子
8 分光器
9 試料
10 光学システム
Lp パルス光

Claims (4)

  1. ダイヤモンドの内部に空孔欠陥を形成する方法であって、
    前記ダイヤモンドの吸収波長に対して透明な波長を有するレーザーのパルス光を前記ダイヤモンドの内部に複数回集光照射するステップを含み、
    前記レーザーのパルス光のパルス幅は、前記空孔欠陥の形成が前記ダイヤモンドの黒鉛化よりも優先的となるパルス幅であることを特徴とする、方法。
  2. 前記レーザーのパルスエネルギーは、40nJないし100nJの範囲であり、
    前記レーザーの前記パルス幅は200フェムト秒以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記レーザーのパルスエネルギーは、25nJないし200nJの範囲であり、
    前記レーザーの前記パルス幅は100フェムト秒以下である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記レーザーのパルスエネルギーは、15nJないし320nJの範囲であり、
    前記レーザーの前記パルス幅は40フェムト秒以下である、請求項1に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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