JP2020187060A - マルチチャネル型センサチップを用いた試料評価方法 - Google Patents

マルチチャネル型センサチップを用いた試料評価方法 Download PDF

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祥加 菅井
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峻介 冨田
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Abstract

【課題】特異的プローブに基づく分析の欠点を相補できる交差反応型センシング法に基づく、簡便かつ迅速な試料の評価方法。【解決手段】マルチチャネル型センサチップを用いた試料評価方法であって、前記マルチチャネル型センサチップが、試料の導入口と排出口に連通する流路と、前記流路を画定する表面に離間して配置された複数のチャネルとを含み、各チャネルが金薄膜に固定化されたプローブ群を備え、前記プローブ群が試料中の物質と非特異的に相互作用可能なプローブ分子を含み、前記複数のチャネルに固定化されたプローブ群が互いに異なっており、当該方法が、(1)前記マルチチャネル型センサチップに試料を導入するステップと、(2)前記センサチップの表面プラズモン共鳴応答パターンを得るステップと、(3)前記ステップ(2)により得られた表面プラズモン共鳴応答パターンに基づき、試料を評価するステップとを含む方法を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、表面プラズモン共鳴(SPR)の応答パターンを得ることができる、マルチチャネル型センサチップを用いた試料評価方法に関する。
培養細胞を用いた研究実験において、細胞の種類・状態・活性などの特徴を判別することは、基本的かつ重要な分析である。細胞の特徴付けの活用例としては、薬剤候補化合物のin vitro毒性・薬効評価や、日常的な細胞の管理、刺激に対する様々な細胞現象のモニタリングなど、多岐にわたる。細胞の特徴の判別には、従来、細胞内や細胞膜上に存在するマーカーに対して、特異的に結合する抗体や有機合成小分子などのプローブを使う分析法が用いられてきた。この方法は、マーカーと対象とする細胞の特徴との間に強い相関がある場合には、極めて有用である。しかし、マーカーに関する事前情報が乏しい場合や、マーカーが注目する細胞の特徴以外の現象とも相関があるときには、しばしば分析が困難となるといった課題がある。
従来法の適用限界を解決する可能性のある方法として、交差反応型センシング法により、夾雑系試料の複雑な組成情報を応答パターンとして出力する分析戦略が考えられる。この方法では、試料に対して多様な親和性を持つ複数種類の交差反応性プローブを用意し、それらのプローブが試料中の各成分と相互作用することで出力されるシグナルを検出する。シグナルは、試料中の各成分とプローブ間の相互作用の総和として観測されるため、試料の組成や性質を反映する固有の特徴パターンを有する。多次元で表現されたパターンは、多変量解析法を用いたデータ次元の圧縮を経て、特徴パターン間に有意な差があるかどうか確認される。こうして取得した特徴パターンは教師データとして、試料を識別するために利用される。すなわち、新たに用意したテストデータを教師データの特徴パターンに対して照合することで、未知試料の識別を行うことができる。この方法は、試料中成分の質的・量的情報を無視し、全体の特性をもとに試料を見分けるという特徴を有する。そのため、試料中の特定成分に特異的に相互作用するプローブを開発する必要がなく、細胞マーカーに関する情報がなくとも、開発が容易にできるという利点がある。
これまでに、交差反応型センシング法に基づいた細胞の特徴の判別に関する例がいくつか報告されている。がん細胞・正常細胞の識別や抗がん剤作用機構の識別が可能な金ナノ粒子と蛍光タンパク質の複合体が知られている(例えば、非特許文献1及び2を参照)。マーカーに関する情報が乏しい細胞の種類の識別が可能な酸化グラフェンと蛍光性ポリマーの複合体についても知られている(例えば、非特許文献3を参照)。また、本発明者らは、細胞の分化や老化過程をモニタリング可能な酵素とブロック重合体の複合体(例えば、非特許文献4及び5を参照)や疎水場感受性色素を有するカチオン性ポリマー(例えば、特許文献1を参照)を報告している。
細胞の特徴パターンは時間と共に変化していくため、その経時変化を検出できる分析法は細胞の評価にとって極めて有用である。表面プラズモン共鳴(SPR)を検出系とするセンサは、連続的なデータ取得に適した分析系の一つである。SPRセンサチップ上に細胞を播種し、その細胞の応答をリアルタイムモニタリングする例がこれまでにいくつか報告されている(例えば、非特許文献6及び7を参照)。一方、SPR検出に基づく交差反応型センシングには、吸着性タンパク質を固定化したチップを用いたサイグロブリンの組成の識別(例えば、非特許文献8を参照)や、糖鎖を固定化したチップを用いたタンパク質の種類の識別(例えば、非特許文献9を参照)が報告されている。
近年、可動部の無い単純な小型光学系でSPR測定が実現できる、オンサイト測定に適するバイオセンサーが開発され、微小流路中にDNAアプタマー等の複数種の補足因子を配置した自己送液型測定チップも知られている(例えば、非特許文献10)。
国際公開WO2018/088510
J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 8008. Nat. Nanotechnol. 2015, 10, 65. Biosensors and Bioelectronics, 2016, 81, 431. Chem. Sci. 2015, 6, 5831. Anal. Chem. 2018, 90, 6348. Biosensors Bioelectron. 2012, 32, 202. Sens. Actuators B Chem. 2011, 156, 798. Appl. Phys. Lett. 2014, 105, 143703. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 10394. 化学とマイクロ・ナノシステム第17巻、第2号、13-14頁 2018年9月
交差反応型センシング法に基づく細胞等の識別は、特異的プローブに基づく分析の欠点を相補できる有望な分析法である。しかし、非特許文献1〜3における技術は、いずれも交差反応性プローブと細胞膜との間の直接的な相互作用に伴って生じる応答パターンを用いる。そのため、評価後の細胞が継続利用できないという問題があった。
また、非特許文献1〜3及び特許文献1に見られる吸光度や蛍光を検出系に利用する交差反応型センシング法に基づく分析は、一般に複数種類のプローブにより得られる応答を必要とする。そのため、各プローブを異なる区画に配置して、試料と混合したときの応答をそれぞれ読み出すという、作業量の多い測定手順を要する。一回の測定で試料と複数のプローブとの間の応答を同時に読み取ることができれば、簡便かつ迅速に測定を行うことが可能となる。
本発明は、有機物を含む試料、例えば細胞培養液の特徴を識別するために使用可能な、表面プラズモン共鳴(SPR)の応答パターンを一回の測定で得ることができるマルチチャネル型センサチップを用いた試料評価方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、所定の構成を備えるマルチチャネル型センサチップを設計して、これを用いて表面プラズモン共鳴応答パターンを得ることにより、課題を解決するに至った。
すなわち、本発明は、一実施形態によれば、マルチチャネル型センサチップを用いた試料の評価方法であって、
前記マルチチャネル型センサチップが、
試料の導入口と排出口に連通する流路と、
前記流路を画定する表面に離間して配置された複数のチャネルと
を含み、各チャネルが金薄膜に固定化されたプローブ群を備え、前記プローブ群が試料中の物質と非特異的に相互作用可能なプローブ分子を含み、前記複数のチャネルに固定化されたプローブ群が互いに異なっており、
当該方法が、
(1)前記マルチチャネル型センサチップに試料を導入するステップと、
(2)前記マルチチャネル型センサチップの表面プラズモン共鳴応答パターンを得るステップと、
(3)前記ステップ(2)により得られた表面プラズモン共鳴応答パターンに基づき、試料を評価するステップと
を含む方法に関する。
本発明に係る方法によれば、所定のマルチチャネル型SPRセンサチップを用いることで、高価で作製が困難な抗体や合成プローブなどを必要とせず、一回の測定だけで試料の特徴パターンを簡便かつ迅速に取得することが可能である。特には、事前に教師データを得ることにより、特定のマーカーに関する事前情報を必要とせず、試料全体の性質に基づいて特徴を識別することができ、単純なタンパク質溶液に加え、夾雑系試料である細胞培養液等の試料に対しても精製等の煩雑な操作を必要とすることなく分析ができる。また、本発明の方法は非破壊的分析法であり、試料中に含まれる物質、例えば、タンパク質を分析対象とするため、培養液中の細胞自体を傷付けることなく実施可能である。このため、本発明の方法を実施した後に細胞を継続して使用し、例えば臨床使用することも可能となる。さらに、一回の測定に使用する試料の液量はわずか数十μL程度とすることができ、少量のサンプルと一つのセンサチップにより効率的に試料、例えば細胞の特徴パターンを取得することができる。これらの利点により、従来のエンドポイント的な細胞培養評価法では困難であった、培養細胞の経時モニタリングをはじめ、多様な試料に対する評価が実現可能となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る方法において使用することができる、マルチチャネル型センサチップを説明する概念図であり、図1(A)はチップ作製の工程を表す斜視図、図1(B)はチップ断面の模式図である。 図2は、図1に示すマルチチャネル型センサチップのセンサ基板部の製造工程を概念的に示す図である。 図3は、5種類のアルカンチオールを修飾したセンサチップを用いて、タンパク質溶液を分析した際に得られたSPRセンサグラムであり、図3(A)はBSA、図3(B)はCar、図3(C)はLys、図3(D)はCatを分析した際に得られたSPRセンサグラムを示す。 図4は、SPRセンサグラムに基づく解析結果を示す図であり、図4(A)はSPR応答値をヒートマップ形式で示したものであり、図4(B)は、応答パターンを線形判別分析により解析し、第三判別スコアまでをプロットした結果を示す図である。 図5は、5種類のシステイン誘導体を修飾したセンサチップを用いて、タンパク質溶液を分析した際に得られたSPRセンサグラムであり、図5(A)はBSA、図5(B)はCar、図5(C)はLys、図5(D)はCatを分析した際に得られたSPRセンサグラムを示す。 図6は、SPRセンサグラムに基づく解析結果を示す図であり、図6(A)は得られたSPR応答値をヒートマップ形式で示したものであり、図6(B)は、得られたパターンを線形判別分析により解析し、第三判別スコアまでをプロットした結果を示す。 図7は、5種類のシステイン誘導体を修飾したセンサチップを用いて、細胞培養液を測定したSPRセンサグラムであり、図7(A)はHepG2細胞、図7(B)はUE7T−13細胞、図7(C)はHepG2とUE7T−13の1:1混合細胞の培養液から得られたSPRセンサグラムである。 図8は、SPRセンサグラムに基づく解析結果を示す図であり、図8(A)は、Langmuir吸着モデルに基づく曲線近似により解析したSPR応答のパターンであり、図8(B)は、得られたパターンを線形判別分析により解析した結果を示す。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
本発明は、一実施形態によれば、マルチチャネル型センサチップを用いた試料評価方法に関する。本実施形態においては、所定のマルチチャネル型センサチップを用いて試料の表面プラズモン共鳴応答パターンを得る。
はじめに、本実施形態において用いるマルチチャネル型センサチップについて説明する。当該マルチチャネル型センサチップは、表面プラズモン共鳴応答測定に使用するものである。当該マルチチャネル型センサチップは、試料の導入口と排出口に連通する流路と、前記流路を画定する表面に離間して配置された複数のチャネルとを含んで構成される。そして、各チャネルは金薄膜に固定化されたプローブ群を備え、前記プローブ群は試料中の物質と非特異的に相互作用可能なプローブ分子を含む。そして、複数のチャネルに固定化されたプローブ群は互いに異なっている。
マルチチャネル型センサチップは、上記を満たすものであれば特には限定されず、様々な態様であってよい。一例として、ガラス等の透明基板上に直線状の微小流路が形成され、前記複数のチャネルが、前記透明基板上に、前記流路と交差する帯状に配置されたマルチチャネル型センサチップを用いることができる。以下、図面を参照して、本発明の一態様によるマルチチャネル型センサチップの構成並びにその製造方法を説明する。
図1は、本発明の一態様に係るマルチチャネル型センサチップを説明する概念図である。なお、図1は、装置の構成を説明するための概念図であって、各構成部材の相対的な大きさが正しく反映されていない場合がある。図1(A)及び(B)を参照すると、マルチチャネル型センサチップは、主として、第1基板1、金薄膜2、プローブ群3、両面テープ5、並びに第2基板4で構成されている。流路6は、第1基板1を底面とし、両面テープ5を側面とし、第2基板4を上面として画定される。第2基板4には、試料導入用チューブ接続口7、試料排出用チューブ接続口8となる孔が設けられ、センサチップの外部から流路6内に、好ましくは連続して、液体状の試料を導入し、排出することが可能な構成とされる。流路6の底面を構成する第1基板1上には、金薄膜2が設けられ、これに固定化されたプローブ群3とともにチャネル3/2を形成する。図示する実施態様において、5つのチャネル3a/2a、3b/2b、3c/2c、3d/2d、3e/2eが形成されている。これら5つのチャネルは、お互いに離間して設けられる。5つのチャネルは、流路6の長手方向に交差する向きに設けられ、試料が流路6を流れる際に、それぞれのチャネルのプローブ群3に接触可能に構成される。
各構成要素についてさらに説明する。第1基板1は、マルチチャネル型センサチップの底面を構成し、後述する表面プラズモン共鳴測定装置から表面プラズモン励起光線が照射される部位となる。したがって、第1基板1は、表面プラズモン励起光線を透過可能な平面基板であってよく、ガラスや、ポリカーボネート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポレオレフィンを材料とする基板であってよい。第2基板4は、流路6の上面を画定するとともに、マルチチャネル型センサチップの上面を構成し、かつ試料導入及び排出のための手段に接続可能な孔を備える部材である。第2基板4は、試料溶液に対して安定性を備えるものであればよく、所定の形状に加工しやすい、ポリジメチルシロキサンなどのプラスチック基板であってよい。両面テープ5は、第1基板1と第2基板4とのスペーサとして機能する。両面テープ5の厚みにより、流路6の高さ(第1基板1と第2基板4との距離)を、両面テープ5の中央に設ける孔により、流路の幅(短手方向の長さ)、長さ(長手方向の長さ)を所望の寸法に画定することができる。流路の容量は特には限定されないが、μLオーダーの微量な試料を保持可能とするように構成される微小流路(マイクロ流路)であると好ましい。なお、図示しない別の態様として、両面テープを使用せず、一方の面に流路に相当する形状のくぼみを形成した第2基板を作製し、第1基板と第2基板とを積層して、微小流路を備えるマルチチャネル型センサチップを構成することもできる。
第1基板1上に形成されるチャネルは、本態様によるセンサチップにおいて、プローブ群3を固定化した領域ということもできる。単一のセンサチップに、固定化されるプローブ群3が異なる複数のチャネルを設けることにより、単一のセンサチップの異なる領域から、異なる表面プラズモン共鳴応答値を得ることができ、そのパターンにより試料を評価することが可能になる。各チャネルは、流路6の長手方向に対して交差する向きに、かつ流路の幅方向にわたって幅が一定の帯状に設けられる。各チャネルの幅は、測定上は限定されない。しかしながら、作製工程の都合上0.2mm以上であると好ましい。これは、センサチップ作製過程において、チャネルを形成する金薄膜2上にプローブ群を構成する化合物の溶液を滴下する際に、隣接するチャネル間の溶液の混合を避けるためである。隣り合うチャネル間の領域には、プローブ群もしくはプローブ分子が存在せず、金薄膜も存在せず、第1基板の表面が露出していることが好ましい。なお、複数のチャネルの幅は、同一であっても異なってもよいが、同一であることが好ましい。
図示する態様のマルチチャネル型センサチップにおいては、チャネルが5つ設けられているが、チャネルは2以上であればよく、10以上、あるいは20以上とすることができ、チャネル数の理論上の上限は特には存在しない。また、複数のチャネルは、マルチチャネル型センサチップを第1基板1または第2基板4に垂直な方向から平面視した場合に、流路6内で、試料導入チューブ接続口7と試料排出用チューブ接続口8とを結ぶ線分上に配置されていることが好ましい。
チャネルを構成する金薄膜2は表面プラズモン共鳴測定を行うために用いており、第1基板1上に形成された、好ましくは35〜70nmの薄膜である。金薄膜2は、単一のセンサチップに含まれる複数のチャネルにおいて、組成及び厚みが同一でもよく、異なっていてもよいが、同一組成かつ同一の厚みに形成することが好ましい。
プローブ群3は金薄膜2に固定化された複数のプローブ分子の集まりであって、このプローブ群3が試料中の物質と非特異的に相互作用する。各プローブ分子は、金薄膜2に固定化可能な第1の官能基と、試料中の物質と非特異的に相互作用し得る第2の官能基とを備える分子であってよい。第1の官能基は、金薄膜2に結合可能な硫黄原子を含有する官能基を有するものが好ましく、SH基やSCN基等が挙げられるが、これらには限定されない。第2の官能基は、試料中の物質と非特異的に相互作用しうる官能基であればよく、特には限定されないが、各プローブ分子間で異なる特性をもつ官能基であることが好ましい。異なる特性としては、荷電状態や電荷数、極性の有無などが挙げられる。第2の官能基としては、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アルキル基等が挙げられ、芳香族環もしくは複素環であってもよい。ひとつのプローブ分子は、同一または異なる二種類以上の第2の官能基を備えていてもよい。
このようなプローブ分子としては、例えば、チオール化合物、例えばアルカンチオール化合物や、システイン誘導体等を用いることができる。アルカンチオール化合物は、自己組織化単分子膜を形成可能な化合物であってよく、例えば、一端に第1の官能基であるSH基を有し、他端に記第2の官能基を備える、炭素数10〜20程度の直鎖状アルカンであってよい。例示した以外にも様々なプローブ分子から構成されるプローブ群を調製することでライブラリを拡張し、広範で高精度なセンシングが実現可能になる。
ひとつのチャネルに固定されるプローブ群3に含まれる複数のプローブ分子は、単一種類の分子から構成されていてもよく、異なる二種以上のプローブ分子の組み合わせであってもよい。異なる二種以上のプローブ分子の組み合わせである場合、その組み合わせの比率は任意に決定することができる。
本発明において、「複数のチャネルに固定化されたプローブ群は互いに異なっている」とは、各チャネルに固定化されるプローブ群に含まれるプローブ分子の種類及び/または数が、複数のチャネル間において、完全に同一ではないことをいうものとする。ある実施形態においては、異なるチャネルには、それぞれ異なるプローブ分子からなるプローブ群が固定化されていてもよい。例えば、あるチャネルに固定化されるプローブ群に含まれる単一種類のプローブ分子と、別のチャネルに固定化されるプローブ群に含まれる単一種類のプローブ分子は、第1の官能基が同一で、分子骨格も同一で、第2の官能基が異なっていてもよい。また別の実施形態においては、あるチャネルに固定化されるプローブ群には複数種類のプローブ分子が含まれ、別のチャネルに固定化されるプローブ群にも複数種類のプローブ分子が含まれ、それぞれのチャネルに含まれるプローブ分子の種類は完全に一致しない態様であってもよい。プローブ群が異なると、試料中に含まれる物質との非特異的相互作用が異なりうることから、各チャネルに特徴的な非特異的相互作用に基づく表面プラズモン共鳴応答値を測定し、複数のチャネルから得られる応答値の組み合わせである、表面プラズモン共鳴応答パターンを得ることが可能となる。
単一のチャネルに固定されるプローブ分子の数は、プローブ分子の大きさや配向の規則性によって異なりうるため、特定の数値範囲に限定されるものではなく、当業者が適宜決定することができる。異なる複数のチャネル間において、固定されるプローブ分子の数は、同一であっても異なっていてもよい。また、単一のチャネル内において、プローブ分子は均一に分布していることが好ましい。
次に、本実施形態によるマルチチャネル型センサチップ製造方法について説明する。図2は、センサチップのうち、第1基板1と金薄膜2、プローブ群3から構成される基板部の製造を説明する概念図である。まず、第1基板1と、長方形状の穴を5つ有する二層に重ねたダイシングテープ11を準備する。長方形状の穴は、チャネルを形成するための型枠に相当する。したがって、長方形状の穴の配置並びに数は、チャネルの設計に応じて決定することができる。また、ダイシングテープ11には、長方形状の穴以外に、第1基板1の方向決め、またはチャネルの識別のための印を形成するための穴を設けてもよい。次いで、第1基板1に、当該ダイシングテープ11を貼り付ける(図2A)。なお、ダイシングテープに代えて、接着面が第1基板1と接着可能かつ非接着面が疎水性表面を有する、剥離可能な他の手段を用いることもできる。
次に、ダイシングテープ11を貼り付けた第1基板1に、金薄膜2を成膜する(図2B)。金薄膜2の成膜は、スパッタ装置等を用いて実施することができる。金薄膜2の成膜の前に、第1基板1上への金薄膜2の接合の目的で、チタンまたはクロム薄膜を第1基板1上に成膜する。チタンまたはクロム薄膜は、例えば3〜10nmとすることができ、スパッタ装置を用いて成膜することができる。金薄膜2の形成後、金薄膜2の親水化処理の目的で、UVオゾン洗浄装置を用いて表面処理を行う。その後、ダイシングテープ11の上部11aを剥離する(図2C)。これにより、第1基板1に、金薄膜2の層が形成される。
続いて、金薄膜2にプローブ群3を結合する(図2D)。プローブ群3の結合方法はプローブを構成する分子の性質によって異なる。例えば、プローブ群3がアルカンチオール誘導体の場合、露出した金薄膜2上に、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶媒中に溶解したアルカンチオールを少量ずつ滴下し、溶媒環境下において15〜60分程度室温放置することにより、金薄膜2をアルカンチオールで修飾することができる。例えば、各チャネルに固定するプローブ群3が、それぞれ異なるシステイン誘導体から構成される場合、露出した金薄膜2上に、リン酸緩衝液中に溶解したシステイン誘導体を少量ずつ滴下し、保湿環境下において、5〜15分程度室温放置することにより、金薄膜2をシステイン誘導体で修飾することができる。これらの操作により、金薄膜2上にプローブ群3を固定化することができる。これら以外のプローブ分子も、当業者には既知の各種の方法にて、適宜、金薄膜に結合することができる。次いで、純水洗浄後、残るダイシングテープの下部11bを剥がし取り、適宜エタノール溶液中で超音波洗浄することにより、第1基板1、金薄膜2及びプローブ群3から構成されるセンサ基板部を作製することができる。
そして、センサ基板部に、図1(A)に示すように、両面テープ5、第2基板4を順次積層し、固定することにより、本態様によるマルチチャネル型センサチップを製造することができる。なお、上記のマルチチャネル型センサチップ及びその製造方法は一例であって、本発明は、図示する特定の構造を持ち、特定の製造方法によって製造されたマルチチャネル型センサチップに限定されるものではない。また、センサ基板部、両面テープ、および第2基板を積層した状態では、両面テープが、流路以外の部分では、チャネルに対応して凹むように変形するとよい。
上記のように構成されたマルチチャネル型センサチップには、後述する液体試料を連続的に導入することができ、導入された試料は流路を流れて、排出口から排出することができる。その間に、試料中の物質が、各チャネルに固定化された、チャネルにより異なるプローブ群、すなわち多様な親和性を持つ複数種類の交差反応性分子の集まりと接触して非特異的に相互作用し、これに基づくシグナルを取り出すことが可能な状態となる。このようなマルチチャネル型センサチップによれば、一回の測定で複数の応答値データを同時に得ることができる。また、このようなセンサチップは、洗浄によるチップの繰り返し利用や、溶液循環によるモニタリング、検出装置の小型化など様々な利点が期待できる。
次に、マルチチャネル型センサチップを用いた、試料の評価の各ステップについて説明する。本発明において評価対象となる試料は、プローブ分子群を変えることで理論上あらゆる分子に適用可能である。一例として、液体中に有機物を含有する試料であってよい。有機物は、特には、生体由来物質であってよく、タンパク質、アミノ酸、脂質、糖質、核酸、細胞、生体組織またはそれらの断片を含み、あるいはこれらの任意の混合物を含んでもよい。評価対象となる試料は、特には、状態の異なる細胞や細胞分泌物を含みうる細胞培養液であってよい。
マルチチャネル型センサチップは、表面プラズモン共鳴応答測定装置とともに使用する。表面プラズモン共鳴応答測定装置は、マルチチャネル型センサチップの流路に沿って、ライン状に各チャネルの表面プラズモン共鳴応答値を検出することができるものであれば特には限定されない。例えば、Smart SPR SS−1001(NTT アドバンステクノロジ社製)を用いることができるが、特定の装置の利用には限定されない。
本実施形態による方法は、以下を含むことができる。
(1)マルチチャネル型センサチップに試料を導入するステップ
(2)センサチップの表面プラズモン共鳴応答パターンを得るステップ
(3)前記ステップ(2)により得られた表面プラズモン共鳴応答パターンに基づき、試料を評価するステップ
導入するステップ(1)では、先に述べた任意の試料をマルチチャネル型センサチップに導入する。センサチップへの試料の導入は、試料導入用チューブ接続口7、試料排出用チューブ接続口8にチューブを接続し、シリンジ等で行ってもよく、ポンプを用いてもよく、特には限定されない。本発明に係る方法では、マルチチャネル型センサチップに、試料を連続的に導入することができ、その導入速度は、1〜20μL/min程度とすることができるが、特定の速度範囲には限定されない。
表面プラズモン共鳴応答パターンを得るステップ(2)は、表面プラズモン共鳴応答測定装置を用いて、測定を実施することができる。具体的には、マルチチャネル型センサチップの第1基板1に対して、金薄膜2へ全反射条件で測定光を導入し、反射光の強度を測定することで、SPR角度変化量を得る。この変化量を、表面プラズモン共鳴応答値ということができる。本ステップにおいては、流路に沿って等分割した領域の表面プラズモン共鳴応答値をライン状に測定することができる。例えば、流路に沿って、50〜100等分した各領域(region of interest:ROI)の応答値を得て、この応答値の組み合わせである表面プラズモン共鳴応答パターンを得ることができる。あるいは、上記のように流路に沿って分割したある領域の経時的な応答値を得ることもできる。
上記測定された表面プラズモン共鳴応答値は、試料中に含まれる物質の状態、例えば、タンパク質の種類やその状態、細胞の種類やその状態に応じて変化する。そのため、本測定ステップにより、試料に固有の表面プラズモン共鳴応答パターンを得ることができる。また、測定に要する時間は、条件にもよるが、5〜30分程度の短時間で実施することができ、大きな利点となる。
次いで、評価するステップ(3)では、分析試料について得られた表面プラズモン共鳴応答パターンを多変量解析により次元数を圧縮し、特徴パターン間に有意な差があるかどうか確認することができる。多変量解析としては、好ましくは、主成分分析、線形判別分析、階層的クラスター分析などが挙げられるが、これらには限定されない。分析試料の特徴パターン間に有意な差を示し、試料を特徴付けること(例えば、種類、組成・濃度や状態など)が可能なデータの集まりは、未知試料を識別するための教師データとして使用することができる。事前に取得した教師データと同じ構成のセンサチップを使用して新たに取得した未知試料のテストデータの特徴パターンを、機械学習により統計的に比較、及び/または照合することで、試料の識別をすることができる。比較の方法の一例としては、マハラノビス距離を計算する方法が挙げられるが、特定の比較方法には限定されない。
本実施形態に係る評価方法において、試料を評価するとは、試料中の有機物、例えばタンパク質や細胞を判別し、分離し、定量し、あるいはそれらの経時変化を識別することを含む。より具体的には、試料が細胞培養液である場合に、本実施形態に係る評価方法は様々な細胞現象の評価に応用可能であり、種類の異なる培養細胞の識別、培養細胞の経時変化、細胞分泌タンパク質のプロフィールが変化することが知られている細胞現象(分化や老化)などの細胞状態のモニタリングが可能である。また、試料が、例えば薬物候補化合物と、細胞や生体組織との混合物の場合に、毒性評価や薬効評価等の初期スクリーンニングが可能である。
以下に、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
(1)センサチップの作製
マルチチャネル型SPRセンサチップは、以下の手順で作製した。図2に示す手順でセンサ基板部を作製した。カッティングプロッタ(GRAPHTEC社製)を用いて、二層に重ねたダイシングテープ(デンカ社製)を、6mm×0.88mmの長方形状の穴を5つ有する18mm×18mmに切断し、テープ11を作製した。隣り合う長方形状の穴は、0.54mmの距離で配置した。第1基板1(材質:S−BSL7、18mm×18mm、厚さ0.5mm、飯山特殊硝子社製)にテープ11を貼り付け(図2A)、スパッタ装置(ULVAC社製)を用いてチタンを5nm成膜した後、さらに金薄膜2を43nm成膜した(図2B)。金薄膜2を製膜した基板は、UVオゾン洗浄装置(セン特殊光源社製)を用いて10分間表面処理をした。その後、基板上から上部テープ11aを一枚剥がし取った(図2C)。
続いて、プローブ群3の修飾を行った。各チャネルに固定化するプローブ群3が、それぞれ種類の異なるアルカンチオール誘導体分子から構成される場合、露出した金薄膜2上に、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解した1mMアルカンチオールを0.2μLずつ滴下し、DMSO雰囲気下において30分間室温放置することにより、修飾を行った(図2D)。本実施例では、アルカンチオールには、11−アミノ−1−ウンデカンチオール(−NH)、10−アミド−1−デカンチオール(−CONH)、11−メルカプトウンデシルヒドロキノン(−quinone)、11−(1H−ピロール−1−イル)ウンデカンチオール(−pyrrol)、10−カルボキシ−1−デカンチオール(−COOH)を用い、試料の導入口に近いチャネルから排出口に近いチャネルに向かって、各チャネルに単一種類の分子を、この順で配置した。純水洗浄後、残る下部テープ11bを剥がし取り、エタノール溶液中で30分間超音波洗浄することにより、センサ基板部を作製した(図2E)。
各チャネルに固定化するプローブ群3が、それぞれ種類の異なるシステイン誘導体分子から構成される場合、露出した金薄膜2上に、10mM リン酸緩衝液(pH7.4)中に溶解した2mMシステイン誘導体を1μLずつ滴下し、保湿環境下において10分間室温放置することにより、修飾を行った(図2D)。システイン誘導体には、L−システイン(Cys)、N−アセチル−L−シスイテン(Ac−Cys)、L−システインエチルエステル(Cys−OEt)、N−三級ブトキシカルボニル−L−システイン(Boc−Cys)、グルタチオン(GSH)またはペニシラミン(Pen)(全てSigma社製)を用い、試料の導入口に近いチャネルから排出口に近いチャネルに向かって、各チャネルに単一種類の分子を、この順で配置した。その後、純水洗浄により未反応のシステイン誘導体を金薄膜2上から除去し、残る下部テープ11bを剥がし取ることで、センサ基板部を作製した(図2E)。
第2基板4(20mm×20mm×4mm)は、3Dプリンタで作製した鋳型に対してポリジメチルシロキサンおよび硬化剤(東レ・ダウコーニング社製)を流し込み、60°Cで12時間放置することにより硬化させ、その後、鋳型から剥がし取ることにより作製した。第2基板4には、ドリル(サカイマシンツール社製)を用いて二箇所の孔7、8を開け、試料の導入および排出のためのチューブ(φ0.12mm、ALS社製)の接続を可能とした。センサ基板部と第2基板4は、両面テープ5(18mm×18mm×85μm、中央部分に2×10mmの穴、NTT アドバンステクノロジ社製)を介して張り合わせ(図1参照)、微小流路6を有するマルチチャネル型SPRセンサチップを作製した。
作製したマルチチャネル型SPRセンサチップは、屈折率マッチングオイル(n=1.5160,Cargille Laboratories社製)を介して、SPR測定装置Smart SPR SS−1001(NTT アドバンステクノロジ社製)の検出部に取り付けた。SPR測定装置を用いて、プローブ群3を固定化した金薄膜2へ全反射条件で測定光を導入し、該装置内に組み込まれたCCDカメラで反射光の強度を測定しSPR角度変化量の測定を行った。
(2)アルカンチオール修飾チップを使ったタンパク質溶液の識別
はじめに、(1)で作製したマルチチャネル型SPRチップの性能を確認するために、単純なタンパク質溶液の識別を行った。分析対象とした4種類のタンパク質溶液は、ウシ血清アルブミン(BSA)、炭酸脱水酵素(Car)、リゾチーム(Lys)、カタラーゼ(Cat)(全てSigma社製)をそれぞれ50μg/mLの濃度で生理食塩水(PBS)に溶解することで調製した。
アルカンチオール修飾チップを使用した測定は、以下の手順で実施した。全ての溶液の導入は、シリンジポンプ(CMA社製)を用いて、流速5μL/minで行った。まず、PBSと10mg/mLドデシル硫酸ナトリウム溶液をそれぞれ5分および10分間導入し、センサチップ内の洗浄を行った。次に、PBSを5分間導入し、ベースラインを得た。その後、50μg/mLタンパク質溶液を5分間導入し、微小流路6に配置されたアルカンチオールをプローブ群3として有する金薄膜2のSPR角度変化をSPR装置により読み取った。各タンパク質溶液は、5回ずつ測定を行った。
図3は、5種類のアルカンチオール(−NH、−CONH、−quinone、−pyrrol、−COOH)を修飾したセンサチップを用いて、タンパク質溶液を分析した際に得られたSPRセンサグラムである。図3(A)はBSA、図3(B)はCar、図3(C)はLys、図3(D)はCatを分析した際に得られたSPRセンサグラムを示す。また、図4(A)は、SPRセンサグラムの1290秒におけるSPR応答値をヒートマップ形式で示したものである。図4(A)から、異なる官能基を末端に有するアルカンチオールは、各タンパク質に対して交差反応的に相互作用し、SPR応答に特徴パターンをもたらすことが明らかとなった。得られた応答パターンは、多変量解析法の一種である線形判別分析により解析した。図4(B)は、第三判別スコアまでをプロットした結果である。BSAとLysに対応するクラスターがわずかに重なったが、ジャックナイフ交差検定により解析したところ、80%の精度で各タンパク質を識別できることが確認された。以上の結果から、アルカンチオール修飾チップを用いたマルチチャネル型SPRセンサを用いて、タンパク質溶液を識別できることが確認された。
(3)システイン誘導体修飾チップを使ったタンパク質溶液の識別
次に、システイン誘導体修飾チップを用いて、上記(2)と同様にタンパク質溶液の識別を行った。システイン誘導体修飾チップを使用した測定は、全ての溶液導入の流速を5μL/minとし、以下の手順で実施した。まず、センサチップ内にPBSを5分間導入し、ベースラインを得た。その後、同流速で50μg/mLタンパク質溶液を5分間導入し、微小流路6に配置されたシステイン誘導体を有する金薄膜2のSPR角度変化をSPR装置により読み取った。
図5は、5種類のシステイン誘導体(Cys、Ac−Cys、Cys−OEt、Boc−Cys、GSH)を修飾したセンサチップを用いて、タンパク質溶液を分析した際に得られたSPRセンサグラムである。図5(A)はBSA、図5(B)はCar、図5(C)はLys、図5(D)はCatを分析した際に得られたSPRセンサグラムである。図5(A)〜図5(D)に見られるように、システイン誘導体は、各タンパク質に対して交差反応的に相互作用し、SPR応答に特徴パターンをもたらすことが明らかとなった。
SPR応答の特徴パターンを数値化するために、分析物(タンパク質)とプローブ分子(システイン誘導体)の間の結合挙動をLangmuir吸着モデルに基づいて解析した。なお、タンパク質とシステイン誘導体との間の結合挙動は交差反応的相互作用に基づくため、1:1結合に従うLangmuir吸着モデルは、厳密には適応できない。しかし、ここでは、SPR応答値と結合力を簡易的に見積るために、当該モデルを用いて解析した。
Langmuir吸着モデルにおいて、分析物とプローブ分子間の結合解離定数をk、結合解離定数をk、分析試料濃度をC、プローブ分子の全ての結合部位が占有されたときに得られる最大SPR応答をΔRmaxとすると、SPR応答ΔR(t)は次のように表される。
ここで、aとbを以下のように定める。
式2と3を用いると、式1は式4のように表される。
分析物とプローブ分子の間の結合に相当するSPRセンサグラム中350〜650secの曲線を、式4を用いて近似した。各試料は5回ずつ測定を行い、係数aとbから数値化したSPR応答パターンを得た。
得られたSPR応答パターンを図6(A)に示す。システイン誘導体のSPR応答は、タンパク質の種類に応じて異なる値を示した。得られたパターンを線形判別分析により解析し、第三判別スコアまでをプロットした結果を図6(B)に示す。各タンパク質に対応するクラスターは、それぞれスコアプロット上で重なることなく分布した。この結果は、特徴パターン間に統計的に有意な差があることを意味しており、ジャックナイフ交差検定における識別の正答率も100%と高い識別能を達成した。以上の結果から、システイン誘導体修飾チップを用いたマルチチャネル型SPRセンサを用いて、タンパク質溶液を高精度に識別できることが確認された。
(4)システイン誘導体修飾チップを使った細胞培養液の識別
続いて、(1)で作製したマルチチャネル型SPRチップを使用し、細胞培養液の識別を行った。ここでは、ヒト肝臓癌由来細胞株HepG2、ヒト骨髄由来葉間幹細胞株UE7T−13、そしてHepG2とUE7T−13の1:1混合細胞の3種類の細胞培養液を分析対象とした。
細胞培養液は、以下の手順で調製した。各細胞は、10%ウシ胎児血清(GE ヘルスケア社製)および1%ペニシリン・ストレプトマイシン・ネオマイシン混合液(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を含むダルベッコ改変イーグル培地(富士フイルム和光純薬社製)中に懸濁し、6.0×10cells/wellの細胞密度で24穴マイクロプレート(AGC テクノグラス社製)に播種した。これを37℃で24時間培養後、細胞をPBSで洗浄し、CD CHO培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を200μL添加した。48時間培養した後、得られた細胞培養液の上澄みを分析に用いた。
システイン誘導体修飾チップを使用した測定は、(3)に示した手順と同様に行った。ただし、ベースラインは、PBSではなくCD CHO培地を用いて測定した。各細胞培養液は、5回ずつ測定を行った。図7は、5種類のシステイン誘導体(Cys、Ac−Cys、Cys−OEt、Boc−Cys、Pen)を修飾したセンサチップを用いて、細胞培養液を測定したSPRセンサグラムである。図7(A)はHepG2細胞、図7(B)はUE7T−13細胞、図7(C)はHepG2とUE7T−13の1:1混合細胞の培養液から得られたSPRセンサグラムである。これらのSPRセンサグラムは、(3)と同様にLangmuir吸着モデルに基づく曲線近似により解析した。図8(A)は、係数aとbの値として表示したSPR応答パターンであり、細胞培養液の種類に応じて特徴的なパターンを示すことが明らかとなった。図8(B)は、線形判別分析によりSPR応答パターンを解析した結果を示す。図8(B)を参照すると、各細胞培養液に対応するクラスターは、スコアプロット上で重なることなく分布しており、特徴パターン間に統計的に有意な差があることが判明した。以上の結果から、システイン誘導体修飾チップを用いたマルチチャネル型SPRセンサを用いて、細胞培養液を識別できることが確認された。
1 第1基板、2 金薄膜、3 プローブ群、4 第2基板、5 両面テープ
6 流路、7 試料導入用チューブ接続口、8 試料排出用チューブ接続口
11 二層のダイシングテープ

Claims (6)

  1. マルチチャネル型センサチップを用いた試料評価方法であって、
    前記マルチチャネル型センサチップが、
    試料の導入口と排出口に連通する流路と、
    前記流路を画定する表面に離間して配置された複数のチャネルと
    を含み、各チャネルが金薄膜に固定化されたプローブ群を備え、前記プローブ群が試料中の物質と非特異的に相互作用可能なプローブ分子を含み、前記複数のチャネルに固定化されたプローブ群が互いに異なっており、
    当該方法が、
    (1)前記マルチチャネル型センサチップに試料を導入するステップと、
    (2)前記センサチップの表面プラズモン共鳴応答パターンを得るステップと、
    (3)前記ステップ(2)により得られた表面プラズモン共鳴応答パターンに基づき、試料を評価するステップと
    を含む方法。
  2. 前記流路が直線状の微小流路であり、各チャネルが、前記流路の表面のうち底面に、前記流路と交差する帯状に配置される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ステップ(2)が、前記流路に沿って分割した領域の表面プラズモン共鳴応答を測定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記試料が細胞培養液である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記ステップ(3)が、前記表面プラズモン共鳴応答パターンを多変量解析することにより行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記複数のチャネルに固定化されたプローブ群が、互いに異なる官能基を有するシステイン誘導体、または互いに異なる官能基を有するアルカンチオール化合物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113702338A (zh) * 2021-08-27 2021-11-26 深圳大学 一种多通道生物反应传感芯片及其制造方法与装置

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