JP2020186316A - アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマー、その製造方法、並びにそのようなポリマーを含有している有機半導体層及び有機電子デバイス - Google Patents

アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマー、その製造方法、並びにそのようなポリマーを含有している有機半導体層及び有機電子デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】優れた特性を有する新規のアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマー及び製造方法の提供。【解決手段】下記に示すn型半導体ポリマー、n型半導体ポリマーの製造方法、並びにn型半導体ポリマーを含有している有機半導体層及び有機電子デバイス:下記の式(1)で表される繰り返し単位を有しており、式(1)中、A1が、チオフェン誘導体に2つのチアゾールが結合した電子アクセプタ性構造単位であり、式(1)中、A2が、多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性構造単位であり、A1及びA2が、炭素−炭素結合によって直接結合している、アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマー。【選択図】なし

Description

本開示は、複数の電子アクセプタ性構造単位から構成されている繰り返し単位を有しているポリマー、及びこのようなポリマーを製造する方法に関する。さらに、本開示は、このようなポリマーを含有している有機半導体層及び有機電子デバイスにも関する。
有機半導体は、加工性、機械的柔軟性、軽量性、耐衝撃性、及びコスト性に優れており、例えばモバイル電子デバイスへの応用が期待されている。
非特許文献1は、n型半導体として、トリフルオロメチル化又はトリフルオロメトキシ化されたベンゾビスチアジアゾール誘導体を開示している。当該文献は、このn型半導体とp型有機半導体とを組み合わせた相補回路について記載している。
有機半導体としては、高分子系の開発も進められている。高分子系の有機半導体は、均一かつ平坦な薄膜の作製が比較的容易である。高分子系の有機半導体に関しては、特にp型半導体ポリマーの開発が比較的進んでいる。
特許文献1には、5員複素環、イミドチオフェン環、5員複素環、及び3つの5員環が縮合してなる環、をこの順に有している繰り返し単位が主鎖に導入されているポリマーを開示している。当該文献では、このポリマーがp型半導体として用いられることが記載されている。
n型半導体ポリマーの開発も行われており、特に、全アクセプタ型の構造単位から構成されるポリマーが注目されている。全アクセプタ型のポリマーは、複数の電子受容性構造単位(アクセプタ性構造単位)を有している一方で、電子供与性(ドナー性)の構造単位を有していないポリマーである。
非特許文献2には、イソインジゴ、及びベンゾチアヂアゾールから構成されている交互アクセプターアクセプター共重合体(PIIG−BT)が開示されている。当該文献には、この共重合体の移動度が0.22cm/Vsであったことが記載されている。
非特許文献3には、チアゾールに基づく全アクセプターポリマーが開示されている。当該文献では、このポリマーが、ボトムコンタクト/ボトムゲート有機薄膜トランジスタ(OTFT)において0.067cm/Vsを示したことが記載されている。
非特許文献4は、ビチオフェンイミド(BTI)に基づいている小分子BTI及びホモポリマーPBTI(n=1〜5)の合成について記載している。当該文献には、PBTIが3.71cm/Vsの移動度を有する単極性n型電荷輸送特性を示したことが記載されている。
特開2012−241017号公報
Chem.Mater.2015、27、141−147 Chem.Commun.2014、50、2180−2183 Chem.Mater.2016、28、6045−6049 J.Am.Chem.Soc.2018、140、6095−6108
例えば有機薄膜トランジスタにおける用途に関して、高い電子移動度、高いオン/オフ電流比、高い単極性、及び大気安定性を有している高性能のn型半導体ポリマーが求められている。
このような特性を有するポリマーを得るための1つのアプローチとして、アクセプタ−アクセプタ型の半導体ポリマーが注目されている。アクセプタ−アクセプタ型のポリマーは、電子受容性の構造単位を複数有しているポリマーである。一般に、「アクセプタ−アクセプタ」型のポリマーは、「アクセプタ−ドナー」型のポリマーと比較して、単極性n型半導体ポリマーとして比較的優れた特性を示す。
しかしながら、特に製造プロセスにおける制約から、アクセプタ−アクセプタ型半導体ポリマーの構成単位となるアクセプタ性モノマーの選択肢が限られていた。製造プロセスにおける制約とは、例えば、アクセプタ性モノマーが電子不足であることに起因して、クロスカップリング反応用の反応性基を導入することが比較的困難であることが挙げられる。さらに、カップリングされたアクセプタ性モノマーは、クロスカップリング反応における反応性が比較的低いため、高い分子量のポリマーを得ることが困難である、などの問題があった。
本開示は、このような観点から、優れた特性を有する新規のアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを提供すること、及びそのようなポリマーを製造する方法を提供することを目的とする。
本開示は、下記に示すn型半導体ポリマー、n型半導体ポリマーの製造方法、並びにn型半導体ポリマーを含有している有機半導体層及び有機電子デバイスを含む。
〈態様1〉
下記の式(1)で表される繰り返し単位を有しており、
式(1)中、Aが、下記の化学式(2)で表される電子アクセプタ性構造単位であり、
式(2)中、Rが、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基であり、
式(1)中、Aが、多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性構造単位であり、
及びAが、炭素−炭素結合によって直接結合している、
アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマー。
〈態様2〉
前記A構造単位に含まれる環構造が、カルボニル基、アミド基、シアノ基、トリアゾール基、イミド基、チアゾール環、及びチアジアゾール基から選択される部分構造又は置換基を少なくとも1つ有している、態様1に記載のn型半導体ポリマー。
〈態様3〉
前記A構造単位が、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ビスベンゾチアジアゾール誘導体、ナフトビスチアジアゾール誘導体、ナフタレンジイミド(NDI)誘導体、ベンゾビスチアジアゾール誘導体、ビチオフェンイミド(BTI)誘導体、チアゾロチエニルイミド(TzTI)誘導体、イソインジゴ(IIG)誘導体、ナフタルイミド誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシルジイミド誘導体、ピリジニウムフェニレン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、チエノピロールジオン誘導体、ジチアゾール−チエノピロールジオン誘導体、インデノフルオレンジオン誘導体、及びビスインデノフルオレンジオン誘導体から選ばれる、態様1又は2に記載のn型半導体ポリマー。
〈態様4〉
前記繰り返し単位が、下記の式(3)で表される、態様1〜3のいずれか一項に記載のn型半導体ポリマー:
1、2、及びRが、それぞれ独立に、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基である。
〈態様5〉
数平均分子量Mnが20,000以上である、態様1〜4のいずれか一項に記載のn型半導体ポリマー。
〈態様6〉
真空中で測定した場合の電子移動度μが1.0cm/Vs以上である、態様1〜5のいずれか一項に記載のn型半導体ポリマー。
〈態様7〉
態様1〜6のいずれか一項に記載のn型半導体ポリマーを含有している、有機半導体層。
〈態様8〉
態様7に記載の有機半導体層を有している、有機電子デバイス。
〈態様9〉
以下の工程を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを製造する方法:
(a)第一アクセプタ性モノマー、及び1分子中2つの炭素原子が臭素化された第二アクセプタ性モノマーを提供すること、
ここで、前記第一アクセプタ性モノマーが、下記の式(4)で表される化合物であり、式(4)中、Rが、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基であり、かつ前記第二アクセプタ性モノマーが、多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性を有している、
(b)前記第一アクセプタ性モノマーと、前記臭素化された第二アクセプタ性モノマーとを反応させて、前記第一アクセプタ性モノマーのチアゾール基の5位炭素原子と前記第二アクセプタ性モノマーの炭素原子とが直接に結合している、アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを得ること。
〈態様10〉
前記反応を、パラジウム含有触媒の存在下で行う、態様9に記載の方法。
〈態様11〉
前記反応を、溶媒中において行う、態様9又は10に記載の方法。
〈態様12〉
前記パラジウム含有触媒がPd(dba)又はPd二核錯体である、態様10又は11に記載の方法。
〈態様13〉
前記反応を、前記パラジウム含有触媒及びヨウ化銅(I)の存在下で行う、態様10〜12のいずれか一項に記載の方法。
〈態様14〉
前記溶媒がトルエンである、態様11〜13のいずれか一項に記載の方法。
〈態様15〉
前記第二アクセプタ性モノマーが、ナフタレンジイミド誘導体である、態様9〜14のいずれか一項に記載の方法。
本開示によれば、優れた特性を有する新規のアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを提供することができ、かつそのようなポリマーを製造する方法を提供することができる。
図1は、本開示に係るn型半導体ポリマーを構成する構成単位の化学式を示す。 図2は、比較例に係るポリマーを構成する構成単位の化学式を示す。 図3は、本開示の1つの実施態様に係る、トップコンタクト−ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタの概略図である。 図4は、本開示の1つの実施態様に係る、ボトムコンタクト−ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタの概略図である。 図5は、本開示の1つの実施態様に係る、ボトムコンタクト−トップゲート型の有機薄膜トランジスタの概略図である。 図6は、P1ポリマー(比較例)に係るHNMRスペクトルの計測結果である。 図7は、P2ポリマー(実施例)に係るHNMRスペクトルの計測結果である。 図8は、P1ポリマー及びP2ポリマーに関する熱重量分析の結果である。 図9は、P1ポリマー及びP2ポリマーに関する示差走査熱量分析の結果である。 図10は、P1ポリマー及びP2ポリマーに関するUV−vis−NIRスペクトルの計測結果である。 図11は、P1ポリマー及びP2ポリマーに関するサイクリックボルタンメトリー(CV)計測の結果である。 図12は、P1ポリマー及びP2ポリマーのフロンティア分子軌道のエネルギー準位に関する概念図である。 図13は、P1に基づいている有機薄膜トランジスタの真空中における伝達特性を示す。 図14は、P2に基づいている有機薄膜トランジスタの真空中における伝達特性を示す。 図15は、P1に基づいている有機薄膜トランジスタの真空中における出力特性を示す。 図16は、P2に基づいている有機薄膜トランジスタの真空中における出力特性を示す。 図17は、P1に基づいている有機薄膜トランジスタの空気中における伝達特性を示す。 図18は、P2に基づいている有機薄膜トランジスタの空気中における伝達特性を示す。 図19は、P1に基づいている有機薄膜トランジスタの空気中における出力特性を示す。 図20は、P2に基づいている有機薄膜トランジスタの空気中における出力特性を示す。 図21は、P2ポリマーに基づいている有機薄膜トランジスタにおいて計測された電子移動度の時間依存的な変化を計測した結果である。 図22は、P2に基づいている有機薄膜トランジスタの空気中における伝達特性の時間依存的な変化を示す。 図23は、P1ポリマーの薄膜の、面外方向(左図)及び面内方向(右図)における2D−GIWAXSの1Dプロファイルを示す。 図24は、P2ポリマーの薄膜の、面外方向(左図)及び面内方向(右図)における2D−GIWAXSの1Dプロファイルを示す。 図25は、P1ポリマーの薄膜のAFM画像を示す。 図26は、P2ポリマーの薄膜のAFM画像を示す。
≪n型半導体ポリマー≫
本開示のアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーは、
下記の式(1)で表される繰り返し単位を有しており、
式(1)中、Aが、下記の化学式(2)で表される電子アクセプタ性構造単位であり、
式(2)中、Rが、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基であり、
式(1)中、Aが、多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性構造単位であり、
及びAが、炭素−炭素結合によって直接結合している。
従来、n型半導体ポリマーとしては、ドナー−アクセプタ型の主鎖骨格からなるものがほとんどであった。一方で、すべての構成成分がアクセプタ性であるようなn型半導体ポリマーは、製造プロセスにおける制約等に起因して、バリエーションが限られていた。そのため、p型半導体ポリマーと比較して、高性能なn型半導体ポリマーの開発、具体的には、電子移動度、オン/オフ電流比、単極性、大気安定性、及び長期安定性などにおいて優れた特性を示すn型半導体ポリマーの開発が、比較的遅れていた。
これに対して、本件発明者らは、製造方法の詳細な検討などを通じて、ジチアゾール−チエノピロールジオン誘導体を構造単位として有している新規なアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーの開発に成功した。
本開示に係るアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーは、電子移動度、オン/オフ電流比、単極性、及び大気安定性といった特性において優れている。理論によって限定する意図はないが、この理由として、下記のことが挙げられる。
すなわち、本開示のn型半導体ポリマーのA構造単位においては、電子アクセプタ性を有しているチエノピロールジオン(TPD)誘導体に、チアゾール基(Tz)がさらに結合している。一般に、チアゾール系のポリマーは、対応するチオフェン系のポリマーと比較して、比較的深いHOMOエネルギー準位を有している。これは、大気中における安定性、及び電子輸送特性に関して、有利に働くと考えられる。さらに、チアゾール基に存在するS原子とN原子との間での分子間相互作用によって、ポリマーの凝集性及び結晶性が向上すると考えられる。
また、TPDに存在する2つのカルボニル基によって、高い電子アクセプタ性がもたらされると考えられる。これは、さらに低いHOMOエネルギー準位をもたらす。また、高い平面性を有しているチエノピロール環によって、ポリマー主鎖に沿う電子の非局在化、並びに分子内及び分子間相互作用が促進されると考えられる。
さらに、本開示に係るn型半導体ポリマーのA構造単位においては、チアゾール基とチエノピロールジオン部分とが、特定の様式で結合している。すなわち、図1で見られるように、本開示に係るn型半導体ポリマーのA構造単位においては、チアゾール基の2位の炭素原子が、チエノピロールジオン(TPD)部分に結合している(図1)。本件発明者らの実験によって、このような結合様式を有している場合には、チアゾール基の5位の炭素原子がTPDに結合している場合(図2)と比較して、n型半導体ポリマーとして優れた特性を示すことがわかった。
以上のように、本開示によれば、優れた特性を有する新規のアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを提供することができる。
本開示に係るn型半導体ポリマーは、フッ素原子を含んでいない。したがって、本開示に係るn型半導体ポリマーは、環境負荷が比較的低減された有機半導体層、及び有機半導体デバイスをもたらす。
〈n型半導体ポリマー〉
本開示に係るポリマーは、n型半導体ポリマーである。「n型半導体ポリマー」は、電子輸送型の半導体ポリマーである。本開示に係るn型半導体ポリマーは、好ましくは、本開示に係る方法によって製造される。
〈繰り返し単位〉
本開示に係るn型半導体ポリマーは、下記の式(1)で表される繰り返し単位を有している。
式(1)中、A及びAは、共に、電子アクセプタ性構造単位である。A及びAは、炭素−炭素結合によって直接に結合している。
〈A構造単位〉
上記の式(1)中、Aが、下記の化学式(2)で表される電子アクセプタ性構造単位である。
が、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基である。Rが、C〜C25の炭化水素基若しくはヘテロ原子を有しているC〜C25の炭化水素基であってよく、C〜C20の炭化水素基若しくはヘテロ原子を有しているC〜C20の炭化水素基であってよく、又はC10〜C16の炭化水素基若しくはヘテロ原子を有しているC10〜C16の炭化水素基であってよい。
炭化水素基は、直鎖であってよく、分岐していてよく、又は環状構造を有していてよい。
ヘテロ原子としては、N、O、S、P、Si、Se、As、Te、及びGeが挙げられる。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O、及びSである。
ヘテロ原子を有している炭化水素基は、例えば、炭素骨格に酸素原子又は硫黄原子が挿入されている構造を有する置換基である。
が、1〜30の炭素原子を有する直鎖アルキル基、分岐アルキル基、若しくは環状アルキル基、又はアルコキシ基であってよい。
〈A構造単位〉
上記の式(1)中、Aが、多環式化合物、特には縮合多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性構造単位である。
構造単位に含まれる環構造が、好ましくは、電子吸引性の構造を有している。A構造単位に含まれる環構造が、好ましくは、カルボニル基、アミド基、シアノ基、トリアゾール基、イミド基、チアゾール環、及びチアジアゾール基から選択される部分構造又は置換基を、少なくとも1つ有している。このような部分構造又は置換基は、A構造単位のアクセプタ性を向上させる。
構造単位としては、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ビスベンゾチアジアゾール誘導体、ナフトビスチアジアゾール誘導体、ナフタレンジイミド(NDI)誘導体、ベンゾビスチアジアゾール誘導体、ビチオフェンイミド(BTI)誘導体、チアゾロチエニルイミド(TzTI)誘導体、イソインジゴ(IIG)誘導体、ナフタルイミド誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシルジイミド誘導体、ペリレンジイミド誘導体、ペリノン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ピリジニウムフェニレン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、チエノピロールジオン誘導体、ジチアゾール−チエノピロールジオン誘導体、インデノフルオレンジオン誘導体、及びビスインデノフルオレンジオン誘導体が挙げられる。
構造単位は、さらに好ましくは、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ビスベンゾチアジアゾール誘導体、ナフトビスチアジアゾール誘導体、ナフタレンジイミド(NDI)誘導体、ベンゾビスチアジアゾール誘導体、ビチオフェンイミド(BTI)誘導体、チアゾロチエニルイミド(TzTI)誘導体、イソインジゴ(IIG)誘導体、ナフタルイミド誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシルジイミド誘導体、ピリジニウムフェニレン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、チエノピロールジオン誘導体、ジチアゾール−チエノピロールジオン誘導体、インデノフルオレンジオン誘導体、及びビスインデノフルオレンジオン誘導体から選ばれる。このような構造は、電子アクセプタ性を有しているため、好ましい。
構造単位が、1又は複数のチオフェン基又はチアゾール基が上記の誘導体に結合したものであってもよい。
構造単位は、好ましくは、下記の式(A01)〜(A27)からなる群から選択される。なお、式中「*」(アスタリスク)は、ポリマーにおいて隣り合っている構造単位を表している。
式(A01)〜(A27)中、R〜Rは、水素原子又は一価の置換基を表す。
ここで、一価の置換基は、A構造単位のアクセプタ性を過度に低減しない限り、特に制限されない。一価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I等)、ニトロ基、シアノ基、カルボニルオキシ基、カルボキシル基、スルホン基、アミノ基、及び一価の有機基等が挙げられる。
一価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アルキル及び/又はアリール置換シリル基、アルキル及び/又はアリール置換アミノ基、アミド基などが挙げられる。
〜Rがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の脂肪族炭化水素基、又はこれらの脂肪族炭化水素基をその構造内に含む基である場合、その脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってよく、分岐状であってよく、又は環状であってもよい。
〜Rに含まれる炭素数は、1以上、3以上、6以上、若しくは9以上であってよく、かつ/又は30以下、24以下、20以下、若しくは15以下であってよい。
〈ナフタレンジイミド誘導体を有するn型半導体ポリマー〉
本開示に係る1つの実施態様では、A構造単位が、ナフタレンジイミド(NDI)誘導体である。すなわち、本開示に係るn型半導体ポリマーに含まれる繰り返し単位が、下記の式(3)で表される。
上記の式(3)において、R、R、及びRが、それぞれ独立に、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基である。
、R、及びRが、それぞれ独立に、C〜C25の炭化水素基若しくはヘテロ原子を有しているC〜C25の炭化水素基であってよく、C〜C20の炭化水素基若しくはヘテロ原子を有しているC〜C20の炭化水素基であってよく、又はC10〜C16の炭化水素基若しくはヘテロ原子を有しているC10〜C16の炭化水素基であってよい。
炭化水素基は、直鎖であってよく、分岐していてよく、又は環状構造を有していてよい。
ヘテロ原子としては、N、O、S、P、Si、Se、As、Te、及びGeが挙げられる。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O、及びSである。
ヘテロ原子を有している炭化水素基は、例えば、炭素骨格に酸素原子又は硫黄原子が挿入されている構造を有している置換基である。
、R、及びRが、それぞれ独立に、1〜30の炭素原子を有する直鎖アルキル基、分岐アルキル基、若しくは環状アルキル基、又はアルコキシ基であってよい。
n型半導体ポリマーがA構造単位としてナフタレンジイミド誘導体を含んでいることによって、n型半導体ポリマーに、優れた電子移動度、単極性、及び大気安定性が付与されると考えられる。論理によって限定する意図はないが、これは、ナフタレンジイミド誘導体が高い電子受容特性を有しており、かつ深いHOMOエネルギー準位を有していることによると考えられる。
さらに、上記式(3)の繰り返し単位においては、チアゾール基の2位の炭素原子がチエノピロールジオン(TPD)部分に結合している(図1参照)。本件発明者らの実験によって、このような場合には、チアゾール基の5位の炭素原子がTPDに結合している場合(図2参照)と比較して、n型半導体ポリマーとして優れた特性を示すことがわかった。
さらに、上記式(3)で表されるポリマーからなる薄膜を基材上に堆積した場合に、ポリマーが基材に対して垂直な配向(エッジオン型の配向)を示すことがわかった。このようなポリマーの配向は、π−πスタッキングの方向と電流の方向との一致をもたらし、結果として、電子輸送を促進すると考えられる。
〈数平均分子量〉
本開示に係る1つの実施態様では、本開示に係るn型半導体ポリマーの数平均分子量Mnが、20,000以上である。
n型半導体ポリマーの数平均分子量Mnが、20,000以上、30,000以上、40,000以上、若しくは50,000以上であってよく、かつ/又は100,000以下、90,000以下、80,000以下、若しくは70,000以下であってよい。
ポリマーの数平均分子量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC法)によって測定される。具体的には、ポリスチレン標準を使用した慣用的な較正曲線に基づいて、下記の測定条件で計測される。
測定機器:GULLIVER 1500、日本分光株式会社
ポンプ :PU−2080 Plus、日本分光株式会社
検出器 :RI−2031 Plus、日本分光株式会社
カラム :Shodex(商標) GPC KF−803、昭和電工株式会社
(8.0mm I.D. × 300mm L)×2本
溶離液 :o−ジクロロベンゼン(40℃)
流量 :0.5mL/min
〈電子移動度〉
本開示に係る1つの実施態様では、n型半導体ポリマーの、真空中で測定した場合の電子移動度μが、1.0cm/Vs以上である。
本開示に関して、ポリマーの「電子移動度」は、当該ポリマーを有機半導体層に含有しているトップコンタクト−ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタにおいて計測される電子移動度を意味している。
本開示に係るn型半導体ポリマーの、真空中で測定した場合の電子移動度μが、0.5cm/Vs以上、1.0cm/Vs以上、1.5cm/Vs以上、1.8cm/Vs以上、2.0cm/Vs以上、若しくは2.5cm/Vs以上であってよく、かつ/又は5.0cm/Vs以下、4.0cm/Vs以下、若しくは3.0cm/Vs以下であってよい。
本開示に係る別の実施態様では、n型半導体ポリマーの、空気中で計測した場合の電子移動度μが、1.0cm/Vs以上、1.5cm/Vs以上、若しくは2.0cm/Vs以上であってよく、かつ/又は5.0cm/Vs以下、4.0cm/Vs以下、3.0cm/Vs以下、若しくは2.5cm/Vs以下であってよい。
n型半導体ポリマーの電子移動度μは、下記のようにして計測することができる。
++−Si/SiO基材上にTC/BG−TFT(トップコンタクト/ボトムゲート薄膜トランジスタ)デバイスを作成する。ここで、n++−Siは、ゲート電極であり、かつSiOは、ゲート誘電体である。基材を洗浄し、かつオクタデシルトリメトキシシラン(OTMS)で修飾して自己組織化単層(SAM)を形成する。処理された基材上に、ポリマーの薄膜を、アルゴン充填グローブボックス内においてポリマー溶液をスピン塗布することによって、堆積し、そして、250℃で10分にわたる熱アニール処理を行う。ポリマー薄膜の堆積後に、50nm厚の金を、シャドウマスクによってソース電極及びドレイン電極として堆積して、チャネル長100μm及びチャネル幅1mmを有している薄膜トランジスタデバイスを得る。そして、薄膜トランジスタデバイスの特性を、10−4mbar以下の真空下で計測し、下記の式に従って、飽和領域における値に基づいて電子移動度μを計算する。5つのTFTデバイスについて電子移動度μの算出を行い、これらの平均値を、電子移動度とする。
SD=(W/2L)Cμ(VGS−V
ここで、ISDが、飽和領域におけるドレイン電流であり、W及びLが、それぞれ、半導体チャネル幅及び半導体チャネル長であり、Cが、ゲート誘電体層の単位面積当たりのキャパシタンスであり、Cが、13.7nF/cm‐2であり、かつVGS及びVが、それぞれ、ゲート電圧及び閾値電圧である。
〈フロンティア軌道エネルギー〉
本開示に係る1つの実施態様では、n型半導体ポリマーの最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位が、好ましくは、−3.80eV以下であり、より好ましくは、−4.00eV以下であり、特に好ましくは−4.20eV以下である。LUMOエネルギー準位がこの範囲にある場合には、本開示に係るn型半導体ポリマーを含む有機半導体層の大気安定性の向上がもたらされる。
n型半導体ポリマーの最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位は、−6.00eV以上であってよく、−5.00eV以上であってよく、若しくは4.50eV以上であってよい。
本開示に係る1つの実施態様では、n型半導体ポリマーの最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位が、好ましくは、−6.00eV以下であり、より好ましくは、−6.20eVであり、特に好ましくは、−6.50eVである。HOMOエネルギー準位がこの範囲にある場合には、本開示に係るn型半導体ポリマーを有している有機半導体層の単極性が向上しうる。HOMOエネルギー準位が上記の範囲にあるポリマーを有しているn型薄膜トランジスタにおいては、電極からの正孔インジェクションが、効果的にブロックされる。
n型半導体ポリマーの最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位は、−8.00eV以上であってよく、−7.50eV以上であってよく、若しくは−7.00eV以上であってよい。
本開示に係るさらに別の実施態様では、n型半導体ポリマーの最低空分子軌道(LUMO)の値が、−3.80eV〜−4.20eVであり、かつn型半導体ポリマーの最高被占軌道(HOMO)の値が、−6.00eV〜−6.50eVである。本開示に係るn型半導体ポリマーがこのようなHOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位を有している場合には、ポリマーのn型特性が顕著になり、かつ同時にp型特性が抑制され、結果として、良好な単極性電子輸送性がもたらされる。
また、深いLUMOエネルギー準位及び深いHOMOエネルギー準位は、本開示に係るポリマーの高い大気安定性に寄与すると考えられる。一般に、ポリマーにおける電子移動度の経時的な劣化は、酸素及び湿分が半導体層に拡散することによって起こると考えられる。深いLUMOエネルギー準位は、空気安定性の高い電子輸送をもたらし、かつ電荷キャリア捕捉への高い耐性をもたらす。一方で、深いHOMOエネルギー準位は、高い酸化安定性をもたらす。
n型半導体ポリマーの最低空分子軌道(LUMO)及び最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位は、サイクリックボルタンメトリー(CV)によって、算出することができる。具体的には、慣用的な三電極セルにおいて、下記の条件に従って、サイクリックボルタンメトリー測定を行う:
サイクリックボルタンメトリーの測定条件:
作用電極: グラッシーカーボン電極
参照電極: Ag/AgCl/CHCN/nBuNPF
補助電極: 白金ワイヤ
なお、ポリマーフィルムを、CHCl溶液(約2g/L)によってコーティングする。
そして、下記の式に従って、HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位を算出する。
HOMO=−(φox+4.73)(eV)
LUMO=−(φre+4.73)(eV)
ここで、φoxは、Ag/AgClに対する立ち上がり酸化電位であり、φreは、Ag/AgClに対する立ち上がり還元電位である。
≪有機半導体層≫
本開示は、本開示に係るn型半導体ポリマーを含有している有機半導体層を含む。
本開示に関して、「有機半導体層」とは、半導体の特性を示す有機層のことである。有機半導体層は、本開示に係るn型半導体ポリマーからなっていてよく、又は本開示に係るn型半導体ポリマー以外の要素を含んでいてよい。本開示に係るn型半導体ポリマー以外の要素としては、例えば、電荷輸送特性、半導体特性、導体特性、光伝導特性及び/若しくは発光半導体特性を有するポリマー、又は正孔遮断特性を有するポリマーが挙げられる。
本開示に係るn型半導体ポリマーは、高い電子移動度、優れたオン/オフ比、及び大気中における高い安定性を有しており、有機半導体層として好適である。
有機半導体層は、好ましくは、有機薄膜の形状で実施される。有機半導体層は、例えば、基材上に堆積される。
≪有機電子デバイス≫
本開示は、本開示に係る有機半導体層を有している有機電子デバイスを含む。
本開示に係る有機半導体層は、電荷輸送性を有しているため、有機電子デバイスにおいて、電極から注入される電荷の輸送制御、又は光吸収によって発生した電荷の輸送制御などに好適に用いることができる。
有機電子デバイスは、例えば、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、集積回路(IC)、論理回路、キャパシタ、発光素子、光ダイオード、有機太陽光発電デバイス(OPV)、有機太陽電池(OSC)、有機薄膜太陽電池、有機光検出器(OPD)、有機記憶装置、ポリマー電解質膜(PEM)、有機熱電変換素子、及び光センサが挙げられる。好ましくは、本開示に係る有機電子デバイスが、有機薄膜トランジスタ(OTFT)である。
本開示に係る電界効果型トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁層、有機半導体層、ソース電極、及びドレイン電極を有しており、かつ、この有機半導体層が、本開示に係るn型半導体ポリマーを含んでいる。
本開示に係る有機薄膜トランジスタは、基材上にゲート電極、ゲート絶縁層、有機薄膜半導体層、ソース電極、及びドレイン電極を有しており、かつこの有機薄膜半導体層が、本開示に係るn型半導体ポリマーを含有している。
本開示に係るn型半導体ポリマーを含有している有機半導体層は、優れた電荷輸送性を示し、電極等から注入された電荷を効率よく輸送することができる。また、本開示に係るn型半導体ポリマーを含有している有機半導体層は、大気中における優れた安定性を示す。特に、TC/BG型薄膜トランジスタの場合には、有機半導体層が空気に露出され、かつn型材料の空気安定性は一般的に低いことから、大気安定性が高い本開示に係るn型半導体ポリマーは、有機薄膜トランジスタにおける有機半導体膜の構成材料として、好適である。
〈有機薄膜トランジスタ〉
有機薄膜トランジスタは、その有機半導体層において有機半導体を含有している薄膜トランジスタである。本開示に係る有機薄膜トランジスタ(OTFT)は、本開示に係るn型半導体ポリマーをその有機半導体層に有していること以外は、公知の構成であってよい。
図3に、本発明の有機薄膜トランジスタの1つの実施態様に係る層構成を示す。図3に示す有機薄膜トランジスタは、トップコンタクト−ボトムゲート構造を有している。基材20上に、ゲート電極12と、ゲート絶縁層22と、有機薄膜半導体層24と、ソース電極14およびドレイン電極16とが、積層されている。
ゲート電極12に電圧を印加すると、ゲート絶縁層22と有機薄膜半導体層24との界面に電荷が蓄積し、有機薄膜半導体層24の電気伝導度が上昇し、チャネルが形成される。ソース電極14とドレイン電極16との間に電圧を印加すると、チャネルを介してドレイン電流が流れる。このように、有機薄膜トランジスタでは、ゲート電極12への電圧の印加を介して、ソース電極とドレイン電極との間における電流が制御される。
トップコンタクト−ボトムゲート構造以外の構造として、図4及び図5に示すものが挙げられる。図4に示す有機TFTは、ボトムゲート−ボトムコンタクト型構造である。図5に示す有機TFTは、トップゲート−ボトムコンタクト型構造である。
基材が、ケイ素系無機化合物から成るシート若しくはフィルム、又は高分子化合物から成るシート若しくはフィルムを、少なくとも1つ含んでいてよい。
ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極は、それぞれ、金属、金属酸化物、炭素材料、導電性高分子化合物、及びシリコン材料から選択される少なくとも1つの材料を含んでいてよく、又はこれらから形成されていてよい。
金属としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、亜鉛、タンタル、マグネシウム、カルシウム、リチウム、コバルト、インジウム、スズ、シリコン、及びニッケル、並びにこれらの合金が挙げられる。それぞれの電極に含有される材料が、同じであってよく、又は異なっていてよい。金属酸化物としては、例えば、ススドープ酸化インジウム、酸化インジウム、酸化スズ、及び酸化亜鉛が挙げられる。炭素材料としては、例えば、グラファイト、及カーボンナノチューブが挙げられる。導電性高分子化合物としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、及びPEDOT・PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の混合物)が挙げられる。シリコン材料としては、例えば、ポリシリコン、及びアモルファスシリコンが挙げられる。
ゲート絶縁層は、金属酸化物、金属窒化物、又は非導電性高分子化合物を、少なくとも1つ含んでいる。金属酸化物及び金属窒化物が、SiO、Si、SiON、Al、及びTaからなる群から選ばれる少なくとも一種であってよい。非導電性高分子化合物が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルフェノール、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリフッ化炭素樹脂、ジビニルテトラメチルシロキサンベンゾシクロブテン樹脂ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリパラキシリレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、シクロブテン含有ポリマー、シクロオレフィン含有ポリマー、フルオレン含有ポリマー、シルセスキオキサン含有ポリマー、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルゴム、及びウレタンゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種であってよい。なお、ゲート絶縁層が、これらの材料のうち2種以上を化学的又は物理的に混合することによって作成される材料を含有していてもよい。
本開示に係る有機薄膜トランジスタは、公知の方法で製造することができる。基材上に有機半導体層を堆積する方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷などが挙げられる。
〈その他のデバイス〉
本開示に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、基材上に陽極、発光層、正孔輸送層及び電子輸送層、並びに陰極を有しており、かつこの電子輸送層が、本開示に係るn型半導体ポリマーを含有している。
本開示に係る有機太陽電池は、正極、負極、及び有機光電変換層を有しており、かつこの有機光電変換層が、本開示に係るn型半導体ポリマーを有している。
本開示に係る有機発光ダイオードOLEDは、電荷注入層を有しており、かつこの電荷注入層が、本開示に係るn型半導体ポリマーを含有している。
≪n型半導体ポリマーの製造方法≫
本開示は、以下の工程を有する、本開示に係るアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを製造する方法を、含んでいる:
(a)第一アクセプタ性モノマー、及び1分子中2つの炭素原子が臭素化された第二アクセプタ性モノマーを提供する、提供工程、
ここで、第一アクセプタ性モノマーが、下記の式(4)で表される化合物であり、式(4)中、Rが、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基であり、かつ第二アクセプタ性モノマーが、多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性を有している、
(b)第一アクセプタ性モノマーと、臭素化された第二アクセプタ性モノマーとを反応させて、第一アクセプタ性モノマーのチアゾール基の5位炭素原子と第二アクセプタ性モノマーの炭素原子とが直接結合している、アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを得る、反応工程。
理論によって限定する意図はないが、本開示に係る上記の方法では、第一アクセプタ性モノマーのチアゾール基の5位炭素原子に、第二アクセプタ性モノマーの臭素化されている炭素原子が直接に結合することによって、縮重合反応が進行すると考えられる。
また、本開示に係る方法によって得られるn型半導体ポリマーは、比較的高い電子移動度、優れた単極性、高いオン/オフ電流比、及び高い大気安定性を示す。
以上のように、本開示によれば、優れた特性を有する新規のアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを製造する方法を提供することができる。
本開示は、上記の反応をパラジウム含有触媒の存在下で行う方法を、含む。
すなわち本開示は、下記の工程を有している製造方法を含む:
(a)第一アクセプタ性モノマー、及び1分子中2つの炭素原子が臭素化された第二アクセプタ性モノマーを提供する、提供工程、
ここで、第一アクセプタ性モノマーが、下記の式(4)で表される化合物であり、式(4)中、Rが、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基であり、かつ第二アクセプタ性モノマーが、多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性を有している、
(b)第一アクセプタ性モノマーと、臭素化された第二アクセプタ性モノマーとを、パラジウム含有触媒の存在下で反応させて、第一アクセプタ性モノマーのチアゾール基の5位炭素原子と第二アクセプタ性モノマーの炭素原子とが直接結合している、アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを得る、反応工程。
n型半導体ポリマーとして、全アクセプタ型のポリマーが注目されている。しかしながら、全アクセプタ性のポリマーの開発は比較的遅れており、種類も限定されていた。
特に、構成単位がすべてアクセプタ性であるようなポリマーは、製造プロセスに制約があり、例えば、縮重合反応を進行させるために、C−H結合の配向性又は活性を高める追加的な置換基を導入する必要があった。
これに対して、本件発明者らは、触媒の種類及び触媒の濃度を詳細に検討することによって、追加的な置換基を必要とすることなく、高い分子量を有するアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを製造する方法を見出した。
理論によって限定する意図はないが、パラジウム含有触媒を使用する本開示に係る方法では、第一アクセプタ性モノマーのチアゾール基の5位炭素原子に、第二アクセプタ性モノマーの臭素化されている炭素原子が直接に結合することによって、縮重合反応が進行すると考えられる。
すなわち、パラジウム含有触媒を使用する本開示に係る方法では、第一アクセプタ性モノマーのチアゾール基の5位炭素原子における炭素−水素結合が、パラジウム含有触媒及び随意のヨウ化銅(I)の存在下で活性化されていると考えられる。そして、この活性化された炭素−水素結合が、第二アクセプタ性モノマーの臭素化されている炭素原子と反応することによって、縮重合反応が進行すると考えられる。
さらに、パラジウム含有触媒を使用する本開示に係る方法によって得られるn型半導体ポリマーは、比較的高い電子移動度、優れた単極性、高いオン/オフ電流比、及び高い大気安定性を示す。
以上のように、本開示によれば、優れた特性を有する新規のアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを製造する方法を提供することができる。
また、本開示に係る製造方法では、クロスカップリング反応において、スズを必要としない。また、本開示に係る製造方法においては、従来の方法と比較して、モノマー置換基を導入する工程を省くことが可能である。したがって、本開示に係る製造方法は、比較的低公害性であり、かつ効率が良い。
〈提供工程〉
本開示の方法に係る提供工程では、第一アクセプタ性モノマー、及び1分子中2つの炭素原子が臭素化された第二アクセプタ性モノマーを、提供する。
(第一アクセプタ性モノマー)
本開示の方法に係る提供工程で提供される第一アクセプタ性モノマーは、下記の式(4)で表される化合物である。
が、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基である。Rが、C〜C25の炭化水素基若しくはヘテロ原子を有しているC〜C25の炭化水素基であってよく、C〜C20の炭化水素基若しくはヘテロ原子を有しているC〜C20の炭化水素基であってよく、又はC10〜C16の炭化水素基若しくはヘテロ原子を有しているC10〜C16の炭化水素基であってよい。
炭化水素基は、直鎖であってよく、分岐していてよく、又は環状構造を有していてよい。
ヘテロ原子としては、N、O、S、P、Si、Se、As、Te、及びGeが挙げられる。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O、及びSである。
ヘテロ原子を有している炭化水素基は、例えば、炭素骨格に酸素原子又は硫黄原子が挿入されている構造を有する置換基である。
が、1〜30の炭素原子を有する直鎖アルキル基、分岐アルキル基、若しくは環状アルキル基、又はアルコキシ基であってよい。
上記の式(4)で表される第一アクセプタ性モノマーは、公知の方法によって提供してよい。例えば、式(4)で表される第一アクセプタ性モノマーを、臭素化されたチエノピロールジオン誘導体とトリブチルスズ化されたチアゾールとのスティルカップリング反応によって、合成してよい。
(第二アクセプタ性モノマー)
本開示の方法に係る提供工程で提供される第二アクセプタ性モノマーは、多環式化合物、特には縮合多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性を有している。
本開示の方法に係る提供工程で提供される第二アクセプタ性モノマーは、本開示に係るn型半導体ポリマーのA構造単位に関して既述したものを、公知の方法によって臭素化したものであってよい。
第二アクセプタ性モノマーにおいては、1分子中で、2つの炭素原子が、臭素化されている。第二アクセプタ性モノマーにおいて臭素化を受ける炭素原子の位置は、特に限定されない。例えば、本開示に係るn型半導体ポリマーのA構造単位に関して記載した式(A01)〜(A27)において、アステリスク(*)に連結している炭素原子が、臭素化される。
本開示の方法の1つの実施態様では、第二アクセプタ性モノマーが、ナフタレンジイミド誘導体である。
〈反応工程〉
本開示に係る方法の反応工程では、第一アクセプタ性モノマーと、臭素化された第二アクセプタ性モノマーとを反応させて、前記第一アクセプタ性モノマーのチアゾール基の5位炭素原子と第二アクセプタ性モノマーの炭素原子とが直接結合している、アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを得る。
本開示の1つの実施態様では、反応工程における反応を、パラジウム含有触媒存在下で行う。
本開示の1つの実施態様では、反応工程における反応を、溶媒中において行う。
本開示の反応工程では、例えば、第一アクセプタ性モノマー及び臭素化された第二アクセプタ性モノマーを、反応容器中において溶媒に溶解させ、かつ触媒を加えることによって、反応を行ってよい。溶媒へのモノマーの溶解は、溶媒の攪拌を伴うものであってよい。
本開示の反応工程に係る1つの実施態様では、第一アクセプタ性モノマー及び臭素化された第二アクセプタ性モノマーを、1:1のモル比で、反応容器中に加える。
反応の雰囲気は、特に限定されないが、空気中又は不活性雰囲気下で行う。好ましくは、反応を、不活性雰囲気下で行う。不活性雰囲気としては、アルゴンガス又は窒素ガスが挙げられる。
反応の温度は、特に限定されないが、20℃以上、若しくは40℃以上であってよく、かつ/又は200℃以下、若しくは150℃以下であってよい。好ましくは、反応を行う温度が、120℃である。
反応の時間は、特に限定されないが、1時間以上、5時間以上、若しくは10時間以上であってよく、かつ/又は120時間以下、72時間以下、若しくは48時間以下であってよい。好ましくは、反応を行う時間が、48時間である。
(パラジウム含有触媒)
パラジウム含有触媒としては、例えば、Pd(dba)、及びPd二核錯体(Hermann触媒:C4646Pd)が挙げられる。
本開示に係る方法の1つの実施態様では、パラジウム含有触媒が、Pd(dba)である。パラジウム含有触媒がPd(dba)であることによって、比較的高い分子量Mnを有しているn型半導体ポリマーを得ることが可能となる。分子量Mnが高い程、n型半導体ポリマーの結晶性が向上するため、結果として、n型半導体ポリマーの電子移動度がもたらされうる。
反応工程において使用されるパラジウム含有触媒の濃度は、特に限定されない。好ましくは、パラジウム含有触媒は、第一アクセプタ性モノマーに対して2.0mol%の量で使用される。パラジウム含有触媒は、第一アクセプタ性モノマーに対して、0.5mol%以上、1.0mol%以上、1.5mol%以上、若しくは2.0mol%以上であってよく、かつ/又は5.0mol%以下、4.0mol%以下、若しくは3.0mol%以下であってよい。
(ヨウ化銅(I))
本開示の反応工程の別の実施態様では、パラジウム含有触媒及びヨウ化銅(I)の存在下で反応を行う。
本開示に関して、反応工程において使用されるヨウ化銅(I)の濃度を、第一アクセプタ性モノマーに対するモル比(mol%)で表す。ヨウ化銅(I)は、好ましくは、第一アクセプタ性モノマーに対して20mol%の量で使用される。ヨウ化銅(I)は、第一アクセプタ性モノマーに対して、5mol%以上、8mol%以上、12mol%以上、15mol%以上、若しくは18mol%以上の量で使用されてよく、かつ/又は、40mol%以下、30mol%以下、28mol%以下、25mol%以下、若しくは22mol%以下の量で使用されてよい。ヨウ化銅(I)が上記範囲内であることによって、比較的高い分子量Mnを有しているn型半導体ポリマーを得ることが可能となる。分子量Mnが高い程、n型半導体ポリマーの結晶性が高まり、結果として、n型半導体ポリマーの電子移動度が向上しうる。
(溶媒)
本開示に係る方法の反応工程で使用する溶媒は、特に限定されないが、モノマー又はポリマーとの間で望ましくない反応を生じないもの、及びモノマー及びポリマーの溶解性が高いものが、好ましい。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、トリクロロメタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、キシレン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、安息香酸メチル、安息香酸エチル、メシチレン、及びトルエン、並びに/又はそれらの混合物を挙げることができる。
本開示に係る方法の1つの実施態様では、溶媒が、トルエンである。溶媒としてトルエンを使用することによって、比較的高い分子量Mnを有しているn型半導体ポリマーを得ることが可能となる。分子量Mnが高い程、n型半導体ポリマーの結晶性が高まり、結果として、n型半導体ポリマーの電子移動度が向上する。
(その他の添加剤)
本開示に係る反応工程の1つの実施態様では、モノマー及び触媒以外の添加物を、溶媒に添加してよい。そのような添加物としては、例えば、トリス(2−メトキシフェニル)フォスフィン、ピバル酸、及びCsCoが挙げられる。
(生成物)
本開示に係る方法の反応工程では、第一アクセプタ性モノマーのチアゾール基の5位炭素原子と第二アクセプタ性モノマーの炭素原子とが直接結合している、アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーが、得られる。
本開示の反応工程に係る1つの実施態様では、反応液から、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの慣用的な技術によって、生成したn型半導体ポリマーを単離・精製することができる。特には、有機溶媒によるソックスレー抽出によって、精製を行ってよい。これにより、溶解度の異なる不純物及びオリゴマーを除去し、n型半導体ポリマーの純度を向上させることができる。
≪ポリマーの合成及び評価≫
実施例1〜6及び比較例1〜6に係るポリマーを作成した。なお、比較例7及び8に関しては、反応のためのモノマーを提供することができず、ポリマーを得ることができなかった。表1に、ポリマーの合成に関するパラメータ、収率、及び分子量の計測結果を示す。
〈実施例1〉
本開示に係る製造方法に従って、第一アクセプタ性モノマーとしてのチエノピロールジオン−ビチアゾール(TPD−Tz)誘導体、及び臭素化された第二アクセプタ性モノマーとしてのナフタレンジイミド誘導体の臭化物(NDI−Br)を用いて、下記式(6)に示すアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーP2を製造した。
〈TPD−Tzの合成〉
5−オクチル−1,3−ジ(チアゾール−2−イル)−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−4,6(5H)−ジオン(TPD−Tz)を、下記のようにして合成した。
窒素雰囲気下で、0.11g(0.10mmol、0.1eq.)のPd(PPhを、0.42g(1.0mmol、1eq.)の1,3−ジブロモ−5−オクチル−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−4,6(5H)−ジオン(TPD−Br)(東京化成工業株式会社)、1.12g(3.00mmol、3eq.)の2−(トリ−n−ブチルスタニル)チアゾール、及び30mLのトルエンの混合物が入っている乾燥した二股フラスコに素早く添加し、そして、この混合物を、115℃で24時間にわたって、攪拌した。室温に冷却した後に、この混合物をジクロロメタンで抽出処理し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下においてろ過及び濃縮を行った。粗生成物を、100mLのメタノールに沈殿させて、灰色の固体を得た。この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:エチルアセテート/ジクロロメタン、v/v=1:10)によって、さらに精製して、0.35g(81%)の明黄色の固体を得た。
(ポリマーP2の合成)
アルゴン充填グローブボックスにおいて、第一アクセプタ性モノマーとしての86mg(0.20mmol)のTPD−Tz、1分子中2つの炭素原子が臭素化されている第二アクセプタ性モノマーとしての197mg(0.200mmol)の4,9−ジブロモ−2,7−ビス(2−オクチルドデシル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナンスロリン−1,3,6,8(2H,7H)−テトラオン(NDI−Br)(和光純薬株式会社)、触媒としての3.7mg(0.0040mmol)のPd(dba)、触媒としての7.6mg(0.040mmol)のヨウ化銅(I)(CuI)、5.6mg(0.016mmol)のトリス(2−メトキシフェニル)フォスフィン、6.1mg(0.060mml)のピバル酸、及び195mg(0.600mmol)のCsCOの混合物を、溶媒としての2mLのトルエンが入っているシュレンク管に添加した。そして、シュレンク管に栓をし、120℃で48時間にわたって攪拌した。室温に冷却した後に、反応混合物を、10mLのCHClで希釈し、200mLのメタノールに滴下して、暗紫色の固体を得た。ろ過した後に、得られた固体を、メタノール、アセトン、ヘキサン、及びジクロロメタンによって順にソックスレー抽出に供して、不純物及びオリゴマーを除去した。残存したポリマーをクロロホルムによって抽出し、メタノールに沈殿させた。固体をろ過し、かつ真空下で乾燥させて、239mgのメタリックパープル色のポリマーを得た。収率は95%であった。
〈実施例2〉
ヨウ化銅(I)を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、P2ポリマーを作成した。
〈実施例3〉
ヨウ化銅(I)の使用量を11.4mg(0.060mmol)にしたこと以外は実施例1と同様にして、P2ポリマーを作成した。
〈実施例4〉
触媒としてのPd(dba)の代わりにHermann’s触媒を使用したこと、及びヨウ化銅(I)を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、P2ポリマーを作成した。
〈実施例5〉
触媒としてのPd(dba)の代わりにHermann’s触媒を使用したこと以外は実施例1と同様にして、P2ポリマーを作成した。
〈実施例6〉
触媒としてのPd(dba)の代わりにHermann’s触媒を使用したこと、及びヨウ化銅(I)の使用量を11.4mg(0.060mmol)にしたこと以外は実施例1と同様にして、P2ポリマーを作成した。
〈比較例1〉
第一アクセプタ性モノマーとしてナフタレンジイミド−ビチアゾール(NDI−Tz)誘導体、及び臭素化された第二アクセプタ性モノマーとしてチエノピロールジオン誘導体の臭化物(TPD−Br)を用いて、下記式(7)に示すn型半導体ポリマーP1を製造した。
〈NDI−Tzの合成〉
2,7−ビス(2−オクチルドデシル)−4,9−ジ(チアゾール−2−イル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナンスロリン−1,3,6,8(2H,7H)−テラオン(NDI−Tz)を、下記のようにして合成した。
窒素雰囲気下で、乾燥した二股フラスコにおいて、0.28g(0.75mmol、3eq.)の2−トリ−n−ブチルスタニルチアゾールを、30mLの無水トルエンにおいて、0.25g(0.25mmol、1.0eq.)の4,9−ジブロモ−2,7−ビス(2−オクチルドデシル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナンスロリン−1,3,6,8(2H,7H)−テトラオン(NDI−Br)に加え、窒素流下において素早く0.0029g(0.025mmol、0.1eq.)のPd(PPhを添加し、かつ24時間にわたって115℃で攪拌した後に、冷却された反応混合物を、20mLのエチルアセテートで希釈し、水及び塩で洗浄し、かつNaSOで乾燥させた。ろ過後に、溶液を蒸留した。粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、クロロホルムにおける0〜10%エチルアセテートによって精製し、目的の化合物0.20g(81%)を、黄色の固体として、得た。
(ポリマーP1の合成)
アルゴン充填グローブボックスにおいて、199mg(0.200mmol)のNDI−Tz、85mg(0.20mmol)のTPD−Br、3.8mg(0.0040mmol)のHermann’s触媒、7.6mg(0.040mmol)のヨウ化銅(I)、2.8mg(0.0080mmol)のトリス(2−メトキシフェニル)フォスフィン、6.1mg(0.060mml)のピバル酸、及び195mg(0.600mmol)のCsCOの混合物を、2mLのトルエンが入っているシュレンク管に添加した。そして、シュレンク管に栓をし、120℃で48時間にわたって攪拌した。室温に冷却した後に、反応混合物を、10mLのCHClで希釈し、200mLのメタノールに滴下して、暗紫色の固体を得た。ろ過した後に、得られた固体を、メタノール、アセトン、ヘキサン、及びジクロロメタンによって順にソックスレー抽出に供して、不純物及びオリゴマーを除去した。残存したポリマーをクロロホルムによって抽出し、メタノールに沈殿させた。固体をろ過し、かつ真空下で乾燥させて、231mgのメタリックパープル色のポリマーを得た。収率は、92%であった。
〈比較例2〉
ヨウ化銅(I)の使用量を3.8mg(0.010mmol)にしたこと以外は、比較例1と同様にして、P1ポリマーを作成した。
〈比較例3〉
ヨウ化銅(I)の使用量を11.4mg(0.060mmol)にしたこと以外は、比較例1と同様にして、P1ポリマーを作成した。
〈比較例4〉
ヨウ化銅(I)を使用しなかったこと以外は、比較例1と同様にして、P1ポリマーを作成した。
〈比較例5〉
Hermann’s触媒の代わりにPd(Oac)を使用したこと及びヨウ化銅(I)を使用しなかったこと以外は、比較例1と同様にして、P1ポリマーを作成した。
〈比較例6〉
Hermann’s触媒の代わりにPd(dba)を使用したこと及びヨウ化銅(I)を使用しなかったこと以外は、比較例1と同様にして、P1ポリマーを作成した。
〈比較例7〉
スティル(Stille)縮重合によって、P1ポリマーの作成を試みた。具体的には、ナフタレンジイミド−ビチアゾール(NDI−Tz)の臭化物を用いる縮重合反応を試みた。
しかしながら、比較例7では、ナフタレンジイミド−ビチアゾール(NDI−Tz)の臭素化が、中性、塩基性、及び酸性条件下のいずれにおいても十分に進行しなかったため、P1ポリマーを作成することができなかった。
〈比較例8〉
さらに、ナフタレンジイミド−ビチアゾール(NDI−Tz)のスタンニル化物を用いる縮重合反応を試みた。
しかしながら、比較例8では、ナフタレンジイミド−ビチアゾール(NDI−Tz)のスタンニル化が、n−ブチルリチウム(n−BuLi)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、及びリチウムテトラメチルピペリジン(LTMP)のいずれを使用した場合にも、十分に進行しなかったため、P1ポリマーを作成することができなかった。
比較例7及び比較例8の結果に見られるように、従来のスティル縮重合では、P1ポリマーを合成することができなかった。
〈数平均分子量〉
実施例1〜6及び比較例1〜6のポリマーについて、数平均分子量Mnを、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC法)によって測定した。具体的には、ポリスチレン標準を使用した慣用的な較正曲線に基づいて、下記の測定条件で計測した。
測定機器:GULLIVER 1500、日本分光株式会社
ポンプ :PU−2080 Plus、日本分光株式会社
検出器 :RI−2031 Plus、日本分光株式会社
カラム :Shodex(商標) GPC KF−803、昭和電工株式会社
(8.0mm I.D. × 300mm L)×2本
溶離液 :o−ジクロロベンゼン(40℃)
流量 :0.5mL/min
結果を表1に示す。なお、表1において、PDIは、多分散度を表している。PDIは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で定義される。DPは、重合度を表している。
表1において見られるように、触媒としてPd(dba)を使用してP2ポリマーを作成した実施例1〜3では、触媒としてHermann’s触媒を使用してP2ポリマーを作成した実施例4〜6と比較して、得られたポリマーの数平均分子量Mnが大きかったことがわかった。
また、表1から、ヨウ化銅(I)が20mol%であった実施例1では、ヨウ化銅(I)の濃度が0又は30mol%であった実施例2及び3と比較して、得られたポリマーの数平均分子量Mnが大きかったことがわかった。
≪P1ポリマーとP2ポリマーの特性評価≫
比較例1に係るP1ポリマー及び実施例2に係るP2ポリマーに関して、NMR解析、FT−IR解析、TGA解析、及びDSC計測を行った。また、合成されたP1ポリマー及びP2ポリマーの光電子特性及びフロンティア分子軌道(FMO)エネルギー、並びにこれらのポリマーを有している薄膜トランジスタの性能を、評価した。
〈NMRスペクトル解析〉
TPD−Tzモノマー及びNDI−Tzモノマー、並びにP1ポリマー及びP2ポリマーに関して、核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、JEOLモデルAL300(300MHz)によって記録した。モノマーに関する計測は、室温で行った。一方で、ポリマーに関する計測は、110℃で行った。重水素化クロロホルム又は重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンを、溶媒として使用した。NMR化学シフトは、HNMR分光法に関しては、7.26ppm(クロロホルム)又は6.00ppm(1,1,2,2−テトラクロロエタン)における残存溶媒ピークに対して、ppm(パーツパーミリオン)で、記録した。NMR化学シフトは、13CNMR分光法に関しては、77.6ppm(クロロホルム)又は73.8ppm(1,1,2,2−テトラクロロエタン)における残存溶媒ピークに対して、ppm(パーツパーミリオン)で、記録した。
比較例1に係るP1ポリマーに関する核磁気共鳴(NMR)スペクトルを図6、及び下記に示す:
HNMR(300MHz、CCl、100℃):δ=9.23(br)、8.86(br)、4.19(br)、3.75(br)、2.06(br)、1.79(br)、1.48−0.85ppm(m)。
実施例2に係るP2ポリマーに関する核磁気共鳴(NMR)スペクトルを図7、及び下記に示す:
HNMR(300MHz、CCl、100℃):δ=8.89(br)、8.18(br)、4.18(br)、3.77(br)、2.08(br)、1.83(br)、1.47−0.81ppm(m)。
TPD−TzモノマーのHNMR及び13CNMRスペクトル解析結果を、下記に示す。
HNMR(300MHz、CDCl):δ=7.93(d,J=3.0Hz,2H),7.59(d,J=3.0Hz,2H)、3.73(t,J=6.0Hz,2H),1.77−1.63(m,2H)、1.46−1.17(m10H)、0.89ppm(t,J=6.0Hz、3H)。
13CNMR(75MHz、CDCl):δ=162.19,156.46、143.93、138.04、130.24、123.41、38.68、31.74、29.12、29.07、28.41、26.89、22.57、13.98ppm。
NDI−TzモノマーのHNMR及び13CNMRスペクトル解析結果を、下記に示す。
HNMR(300MHz、CDCl):δ=8.94(s,2H),8.04(d,J=3.0Hz,2H)、7.66(d,J=3.0Hz,2H),4.07(d,J=9.0Hz,4H),1.92(s,2H),1.48−1.15(m,64H),0.86(t,J=3.0Hz,6H),0.85ppm(t,J=3.0Hz,6H)。
13CNMR(75MHz、CDCl):δ=164.83,162.70、143.89、139.79、136.03、128.21、126.48、125.04、122.48、45.45、36.72、32.31、32.29、31.92、30.42、30.05、30.03、29.96、29.74、29.70、26.71、23.06、14.48ppm。
〈FT−IR(フーリエ変換赤外)スペクトル計測〉
TPD−Tzモノマー及びNDI−Tzモノマー、並びにP1ポリマー及びP2ポリマーに関して、フーリエ変換赤外スペクトルを、JASCO FT/IR−4100スペクトロメータによって、4000cm−1〜600cm−1の範囲で計測した。
比較例1に係るP1ポリマーに関して得られたIRスペクトルは、下記であった。
IR(ニート):ν=2926,2857,1702,1668,1576,1442,1379,1310,1253,1195,1091,1015,796,744cm−1
実施例2に係るP2ポリマーに関して得られたIRスペクトルは、下記であった。
IR(ニート):ν=2926,2857,1732,1657,1569,1437,1385,1316,1253,1188,1085,1015,791,739cm−1
TPD−Tzモノマーに関して得られたIRスペクトルは、下記であった。
IR(ニート):ν=3054、2938、2857、1699、1560、1471、1393、1288、1265、908、775、729、704、650、642cm−1
NDI−Tzモノマーに関して得られたIRスペクトルは、下記であった。
IR(ニート):ν=3099、2956、2920、2851、1711、1654、1590、1508、1451、1428、1377、1314、1258、1191、1134、795、761、725、665cm−1
〈MALDI−TOF MSスペクトル〉
TPD−Tzモノマー及びNDI−TzモノマーのMALDI−TOF MSスペクトルを、Kratos AXIMACFR(株式会社島津製作所)によって計測した。NDI−Tzモノマーに関する計測値は、Mw=993.5、m/z=994.5[M+H]であった。TPD−Tzモノマーに関する計測値は、Mw=431.6、m/z=431.9[M]であった。
〈熱重量分析〉
熱重量分析(TGA)を、10℃/minのスキャンレートで、窒素流の下で、Rigaku TG8120によって、行った。結果を、図8に示す。
図8において見られるように、比較例1に係るP1は、380℃において、5%の重量損失(Td)を示した。一方で、実施例2に係るP2は、425℃において、5%の重量損失(Td)を示した。この結果は、P1及びP2ともに、良好な熱安定性を有していることを示す。
〈示差走査熱量測定〉
示差走査熱量(DSC)測定を、10℃/minのスキャンレートで、窒素流の下で、Rigaku DSC8230によって、行った。
結果を、図9に示す。
図9において見られるように、比較例1のP1ポリマーに関しては、明らかな転移ピークが観察されなかった。一方で、実施例2のP2ポリマーは、180℃のガラス転移温度(Tg)を示すことが分かった。
〈光電子特性〉
比較例1のP1ポリマー及び実施例2のP2ポリマーの光電子特性を調べた。UV−vis−NIR(紫外可視近赤外)吸収スペクトルを、希釈CHCl溶液サンプル又は薄膜サンプルに関して、計測した。UV−vis−NIR吸収スペクトルは、JASCO V−670スペクトロフォトメータによって、計測した。
結果を図10に示す。
図10において見られるように、実施例2に係るP2ポリマーと比較して、比較例1に係るP1ポリマーは、希釈CHCl溶液、及び薄膜において、比較的赤方に偏移した吸収特性を示した。例えば、P1のICT吸収バンドが、578nm(λmax、薄膜)において観察された。これは、P2と比較して、43nm赤方に移動していた。
〈フロンティア分子軌道(FMO)エネルギー〉
比較例1に係るP1ポリマー及び実施例2に係るP2ポリマーのフロンティア分子軌道(FMO)エネルギーを、下記のようにしてCV計測から推定した。
(電気化学計測)
電気化学計測を、BAS電気化学分析器モデル612Cによって、室温で、慣用的な三電極セルにおいて行った。作用電極、参照電極、及び補助電極は、それぞれ、グラッシーカーボン電極、Ag/AgCl/CHCN/nBuNPF、及び白金ワイヤであった。電気化学計測用のポリマーフィルムを、CHCl溶液(約2g/L)でコーティングした。校正のために、フェロセン/フェロセ二ウム(Fc/Fc)の酸化還元電位を、同一の条件下で計測したところ、Ag/AgCl電極に対して0.07Vであった。Fc/Fcの酸化還元電位が真空に対して−4.80eVの絶対エネルギー準位を有していると仮定した。そして、HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位を、下記の式に従って算出した。
HOMO=−(φox+4.73)(eV)
LUMO=−(φre+4.73)(eV)
ここで、φoxは、Ag/AgClに対する立ち上がり酸化電位であり、φreは、Ag/AgClに対する立ち上がり還元電位である。
結果を図11及び図12並びに表2に示す。図11は、P1ポリマー及びP2ポリマーに関するサイクリックボルタンメトリー計測の結果である。
図12は、P1ポリマー及びP2ポリマーのフロンティア分子軌道のエネルギー準位に関する概念図である。図12、及び表2で見られるように、両ポリマーともに、−4.00eV以下の非常に深いLUMOエネルギー準位を示した。また、両ポリマーともに、−6.10eV以下の非常に深いHOMOエネルギー準位を示した。P1のHOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位は、共に、P2と比較して、比較的深かった。この差異は、P1の、比較的狭いバンドギャップをもたらす。これは、P1の比較的平面性の高い骨格に起因する可能性がある。
〈有機薄膜トランジスタ〉
比較例1に係るP1ポリマー及び実施例2に係るP2ポリマーの真空中における電荷輸送特性を、トップコンタクト/ボトムゲート(TC/BG)構成の有機薄膜トランジスタを製造して、調べた。
(有機薄膜トランジスタの作製)
++−Si/SiO基材上にTC/BG−OTFT(トップコンタクト/ボトムゲート有機薄膜トランジスタ)デバイスを作成した。ここで、n++−Siは、ゲート電極であり、かつSiOは、ゲート誘電体である。基材を洗浄し、かつオクタデシルトリメトキシシラン(OTMS)で修飾して自己組織化単層(SAM)を形成した。処理された基材上に、ポリマーの薄膜を、アルゴン充填グローブボックス内においてポリマー溶液をスピン塗布することによって、堆積し、そして、250℃で10分にわたる熱アニール処理を行った。ポリマー薄膜の堆積後に、50nm厚の金を、シャドウマスクによってソース電極及びドレイン電極として堆積して、チャネル長100μm及びチャネル幅1mmを有しているTFT装置を得た。
〈電子移動度の計測〉
TFTデバイスの特性を、10−4mbar以下の真空下で計測し、下記の式に従って、飽和領域における値に基づいて、電子移動度μを計算した:
SD=(W/2L)Cμ(VGS−V
ここで、ISDが、飽和領域におけるドレイン電流であり、W及びLが、それぞれ、半導体チャネル幅及び半導体チャネル長であり、Cが、ゲート誘電体層の単位面積当たりのキャパシタンスであり、Cが、13.7nF/cm‐2に等しく、かつVGS及びVが、それぞれ、ゲート電圧及び閾値電圧であった。
TFTデバイスの伝達特性を、ソース電極とドレイン電極との間に60Vの電圧を印加し、かつゲート電圧を変化させたときのドレイン電流IDSを計測することによって、調べた。
TFTデバイスの出力特性を、ゲート電圧VGSを各種の値とし、かつドレイン電圧VDSを0V〜80Vで掃引したときのドレイン電流IDSを計測することによって、調べた。
伝達特性及び出力特性の測定結果を、図13〜16に示す。図13は、P1に基づいている有機薄膜トランジスタの真空中における伝達特性を示すグラフである。図14は、P2に基づいている有機薄膜トランジスタの真空中における伝達特性を示すグラフである。図15は、P1に基づいている有機薄膜トランジスタの真空中における出力特性を示すグラフである。図16は、P2に基づいている有機薄膜トランジスタの真空中における出力特性を示すグラフである。
表2に、P1及びP2に係る有機薄膜トランジスタに関する真空中の特性パラメータ、すなわち電子移動度の最大値μmax、電子移動度の平均値μavg、しきい値電圧Vth、及びオン電流/オフ電流比(Ion/Ioff)を示す。なお、電子移動度の平均値μavgは、5つの有機薄膜トランジスタに関して計測した電子移動度の平均値である。
表2において見られるように、比較例1に係るP1に基づいているOTFT(P1系のOTFT)は、真空条件下(10−4mbar)で計測したときに、0.06cm/Vsの最大の電子移動度μmaxを示した。
これに対して、実施例2に係るP2に基づいているOTFT(P2系のOTFT)は、表2で見られるように、真空条件下で計測した時に、2.55cm/Vsの最大の電子移動度μmaxを示した。さらに、P2系のOTFTは、優れたオン/オフ電流比(Ion/Ioff)を示した。
(空気中における電子移動度)
比較例1に係るP1ポリマー及び実施例2に係るP2ポリマーの、空気中における電子移動度を計測した。計測は、空気中において計測を行ったこと以外は、真空中における電子移動度の計測に関して上述したのと同様にして、行った。
伝達特性及び出力特性の測定結果を、図17〜20に示す。図17は、P1に基づいている有機薄膜トランジスタの空気中における伝達特性を示すグラフである。図18は、P2に基づいている有機薄膜トランジスタの空気中における伝達特性を示すグラフである。図19は、P1に基づいている有機薄膜トランジスタの空気中における出力特性を示すグラフである。図20は、P2に基づいている有機薄膜トランジスタの空気中における出力特性を示すグラフである。
表2に、空気中における電子移動度の最大値μmax、電子移動度の平均値μavg、及びしきい値電圧Vthを示す。
表2において見られるように、実施例2に係るP2系のOTFTデバイスは、空気中において、1.87cm/Vsの最大の移動度、及び高いオン/オフ電流比を示した。したがって、実施例2に係るP2系のOTFTデバイスは、空気中で計測した場合にも、真空条件下の場合と比較して遜色ない特性を示すことが分かった。
(時間依存的な特性変化)
実施例2に係るP2系のOTFT装置の特性に関して、時間依存的な変化をさらに調べた。デバイスを、周囲実験室の空気条件下(RH=40〜60%)で保管した。そして、1週間後,2週間後、及び4週間後に、空気中において、上述したのと同様にして電子移動度の計測を行った。
結果を、図21及び図22に示す。
図21及び図22において見られるように、電子移動度は、1週間後に1.87cm/Vsから1.01cm/Vsにまで低下するが、その後は、ほとんど変化しなかった。したがって、P2系のOTFTデバイスは、電子移動度に関して、優れた長期安定性を示すことがわかった。
(繰り返し運用)
実施例2に係るP2系のOTFTデバイスに関して、繰り返し運用した場合の安定性を評価した。
その結果、100回のスイッチング後であっても、ISD値が比較的一定であった。実施例2に係るP2系のOTFT装置は、10秒にわたるタイムスケールにわたって、顕著なバイアスストレス安定性を示した。
以上のように、実施例2に係るP2ポリマーは、n型半導体ポリマーとして優れた特性を示すことが分かった。
〈薄膜構造の解析〉
二次元微小角入射広角X線散乱(GIWAXS)及び原子間力顕微鏡(AFM)計測によって、比較例1に係るP1ポリマーを含有している薄膜、及び実施例2に係るP2ポリマーを含有している薄膜の微小構造を解析した。
(二次元微小角入射広角X線散乱)
2D−GIWAXS計測におけるX線ビームの波長は、0.1nmであった。カメラ長は、340mmであった。2D散乱画像を、フォトンカウンティング検出器(Pilatus3X2M、Dectris、Ltd.)によって取得した。サンプルをヘリウムセルに載せて、放射損傷を低減した。データ取得時間は10秒であった。GIWAXSデータを、0.10°の入射角で計測した。これは、シリコン表面における全外部反射の臨界角度よりも小さく、かつサンプルの全外部反射の臨界角度に近かった。散乱ベクターqの、サンプル表面に対して平行な成分及び垂直な成分を、それぞれ、qxy及びqとした。GIWAXS計測のための薄膜サンプルは、OTFT装置に関して記載したのと同様にして、作製した。
結果を図23及び図24に示す。図23は、P1ポリマーの薄膜の、面外方向(左図)及び面内方向(右図)における2D−GIWAXSの1Dプロファイルを示す。図24は、P2ポリマーの薄膜の、面外方向(左図)及び面内方向(右図)における2D−GIWAXSの1Dプロファイルを示す。
図23において見られるように、P1の薄膜は、比較的非晶性の微小構造を示した。また、P1ポリマーの骨格が正面向きの配向(フェイス−オン配向)となる傾向があることがわかった。シェラー分析に従って、面外OOP(100)ブラッグ反射の結晶コヒーレンス長(CCL)を計算した結果、推定された層状充填層の数が、P1に関して、6であった。比較例1に係るP1は、正面向きの充填テクスチャを伴う比較的非晶性の微小構造が、その比較的低い電子移動性をもたらしていると考えられる。
これに対して、P2の薄膜は、図24において見られるように、比較的高い結晶性を有していることがわかった。また、ポリマー骨格が、基材に対して真横向きに配向していることが分かった。シェラー分析に従って、面外OOP(100)ブラッグ反射の結晶コヒーレンス長(CCL)を計算した結果、推定された層状充填層の数が、P2に関して、37であった。
以上により、実施例2に係るP2ポリマーの薄膜が、比較的高い薄膜結晶性、長距離にわたる規則性、比較的強い散乱ピーク、及び好ましい真横向きの充填配向を示すことが、わかった。これは、OTFTにおけるP2ポリマーの優れた電子輸送性特性をもたらしていると考えられる。
(原子間力顕微鏡(AFM)解析)
観察用サンプルを、Si/SiO基材上にポリマー溶液をスピンコーティングすることによって、調整した。そして、これを、Seiko Instruments DF=20 stiff cantileverを有しているSeiko Instruments SPA−400によって、分析した。
結果を、図25及び図26に示す。図25は、P1ポリマーの薄膜のAFM画像を示す。図26は、P2ポリマーの薄膜のAFM画像を示す。
図25において見られるように、P1は、比較的非晶性の微小構造を示した。P1は,比較的低いRMS値(0.61nm)を有していた。
これに対して、P2は、図26において見られるように、ナノファイバー様の表面形態を示した。P2は、比較的高いRMS値(1nm)を有していた。
12 ゲート電極
14 ソース電極
16 ドレイン電極
20 基材
22 ゲート絶縁層
24 有機薄膜半導体層

Claims (15)

  1. 下記の式(1)で表される繰り返し単位を有しており、
    式(1)中、Aが、下記の化学式(2)で表される電子アクセプタ性構造単位であり、
    式(2)中、Rが、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基であり、
    式(1)中、Aが、多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性構造単位であり、
    及びAが、炭素−炭素結合によって直接結合している、
    アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマー。
  2. 前記A構造単位に含まれる環構造が、カルボニル基、アミド基、シアノ基、トリアゾール基、イミド基、チアゾール環、及びチアジアゾール基から選択される部分構造又は置換基を少なくとも1つ有している、請求項1に記載のn型半導体ポリマー。
  3. 前記A構造単位が、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、ビスベンゾチアジアゾール誘導体、ナフトビスチアジアゾール誘導体、ナフタレンジイミド(NDI)誘導体、ベンゾビスチアジアゾール誘導体、ビチオフェンイミド(BTI)誘導体、チアゾロチエニルイミド(TzTI)誘導体、イソインジゴ(IIG)誘導体、ナフタルイミド誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシルジイミド誘導体、ピリジニウムフェニレン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、チエノピロールジオン誘導体、ジチアゾール−チエノピロールジオン誘導体、インデノフルオレンジオン誘導体、及びビスインデノフルオレンジオン誘導体から選ばれる、請求項1又は2に記載のn型半導体ポリマー。
  4. 前記繰り返し単位が、下記の式(3)で表される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のn型半導体ポリマー:
    1、2、及びRが、それぞれ独立に、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基である。
  5. 数平均分子量Mnが20,000以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のn型半導体ポリマー。
  6. 真空中で測定した場合の電子移動度μが1.0cm/Vs以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のn型半導体ポリマー。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のn型半導体ポリマーを含有している、有機半導体層。
  8. 請求項7に記載の有機半導体層を有している、有機電子デバイス。
  9. 以下の工程を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを製造する方法:
    (a)第一アクセプタ性モノマー、及び1分子中2つの炭素原子が臭素化された第二アクセプタ性モノマーを提供すること、
    ここで、前記第一アクセプタ性モノマーが、下記の式(4)で表される化合物であり、式(4)中、Rが、C〜C30の炭化水素基、又はヘテロ原子を有しているC〜C30の炭化水素基であり、かつ前記第二アクセプタ性モノマーが、多環式化合物であり、かつ電子アクセプタ性を有している、
    (b)前記第一アクセプタ性モノマーと、前記臭素化された第二アクセプタ性モノマーとを反応させて、前記第一アクセプタ性モノマーのチアゾール基の5位炭素原子と前記第二アクセプタ性モノマーの炭素原子とが直接に結合している、アクセプタ−アクセプタ型のn型半導体ポリマーを得ること。
  10. 前記反応を、パラジウム含有触媒の存在下で行う、請求項9に記載の方法。
  11. 前記反応を、溶媒中において行う、請求項9又は10に記載の方法。
  12. 前記パラジウム含有触媒がPd(dba)又はPd二核錯体である、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 前記反応を、前記パラジウム含有触媒及びヨウ化銅(I)の存在下で行う、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記溶媒がトルエンである、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記第二アクセプタ性モノマーが、ナフタレンジイミド誘導体である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
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